JP2015023878A - ショウガ抽出物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 6−ショウガオールの6−ジンゲロールに対する重量比が1.6以上であることを特徴とするショウガ抽出物とする。
【選択図】 図1
Description
ジンゲロールには、6−ジンゲロール、8−ジンゲロール、10−ジンゲロール等が含まれるが、その中で6−ジンゲロールが主成分である。
上記したように、6−ジンゲロールは経時的に6−ショウガオールに変換される。そのため、6−ジンゲロールが多い状態のショウガ抽出物を食品に添加した場合、時間経過とともに味が変化してしまう。つまり、長期間にわたって保存すると6−ショウガオールが徐々に増加して味が変化するという、品質の低下を招くこととなる。
しかし、特許文献1の開示技術を用いても長期間の保存安定性に優れるショウガ抽出物を得ることは困難であった。つまり、特許文献1の開示技術では、6−ジンゲロールが6−ショウガオールよりも多く残存したままであるため、時間経過とともに6−ショウガオールが増加することとなって品質の変化を防ぐことができなかった。
水あるいは溶媒抽出により得られたショウガ抽出物では、上記したように、6−ジンゲロールは6−ショウガオールよりも多く含まれている。6−ジンゲロールが6−ショウガオールよりも多く含まれる状態では、6−ジンゲロールが6−ショウガオールに変換されることとなり、保存中の6−ショウガオール(及び6−ジンゲロール)の量的な安定性を得ることはできなかった。従って、辛味(香味)成分の主成分として6−ジンゲロールと6−ショウガオールを含有するショウガ抽出物において、夫々の成分の量的な安定性が得られない、つまり風味の安定性が得られないことが問題となる。
特許文献2の開示技術を用いると6−ショウガオールの含有量を増加させることが可能となる。しかしながら、特許文献1の開示技術と同様に、6−ジンゲロールが6−ショウガオールよりも多く残存したままであるため、時間経過とともに6−ショウガオールが増加する虞があった。つまり、6−ジンゲロールと6−ショウガオールの含有比が平衡状態でないため、風味が変化するという品質の変化を防ぐことは困難であった。
根茎の形態は特に限定されないが、抽出効率を高めるために、すりおろした状態や粉砕した状態、圧搾して絞り汁とした状態とすることが好ましい。
有機溶媒としては、低級アルコール、ヘキサン、アセトン、酢酸エチル等が例示され、いずれも抽出溶媒としては好適である。しかし、後述のように、抽出物は食品や製剤に添加されるため、人体に無害なものであることが好ましく、エタノールが特に好ましく使用される。
抽出操作は、1回又はそれ以上の複数回行なうことが好ましい。抽出操作を繰り返すことで抽出効率を向上させることができる。
二酸化炭素を超臨界状態とする際の温度や圧力は適宜調節される。
得られた抽出物を密閉容器に封入して加熱する。このときの好適な加熱条件は、液状の抽出物の温度が100〜130℃とされ、この温度を維持したまま24〜60時間加熱する。
上記した条件の範囲で抽出物を加熱することにより、抽出物に含有される6−ジンゲロールが6−ショウガオールに変換されない量まで減少することとなる。つまり、もともと6−ショウガオールよりも含有量の多い6−ジンゲロールが減少し、その含有比が逆転して6−ショウガオールの6−ジンゲロールに対する含有量の比(重量比)が1.6以上となって、6−ショウガオールが多く含有される状態で平衡状態となる。
上記した加熱条件において、より好ましい条件は115〜125℃で40〜50時間である。この条件で抽出物を加熱すると、最も効率的に6−ジンゲロールと6−ショウガオールとの含有量を逆転させることができ、6−ショウガオールを多く含有した状態で安定化することができる。
6−ジンゲロールよりも6−ショウガオールが多い状態で平衡となると、6−ジンゲロールの含有量も6−ショウガオールの含有量も略変化することがない。そうすると、経時的に6−ショウガオールが産生されなくなるため、抽出物の成分比率、即ち、6−ジンゲロールと6−ショウガオールの含有比が変化することなく略一定の状態を維持することができる。
一方、130℃を超えて加熱すると、効率的且つ効果的に6−ショウガオールが産生される。しかし、生成した6−ショウガオールが分解したり、別の化合物に更に変換される可能性がある。また、抽出物が焦げる虞があり、例えば食品に添加した場合に焦げた味を呈することとなり好ましくない。従って、130℃を超える温度で短時間(例えば5時間)の加熱にとどめたとしても、6−ショウガオールが最も多く含有される状態とすることはできず、更に風味も劣化することとなる。
より具体的には、6−ショウガオールの6−ジンゲロールに対する含有量の比(重量比)が、1.6〜3である。このような含有比まで6−ジンゲロールを6−ショウガオールに変換すると抽出物中に6−ショウガオールを最も多く含んだ状態で平衡状態となり、成分比率が変化しない抽出物とすることができる。
上記した6−ジンゲロールと6−ショウガオールの重量比において、抽出物全量に対する含有量(重量%)は、6−ジンゲロールは7重量%以下であり、6−ショウガオールは10重量%以上である。より具体的には、6−ジンゲロールは0.1〜7重量%であり、6−ショウガオールは10〜50重量%の範囲で含有される。つまり、ショウガ抽出物中に含有される6−ジンゲロール及び6−ショウガオールの総量は、ショウガ抽出物全量に対して10.1〜57重量%である。
食品としては錠菓、飴(ハードキャンディ)、飲料等が例示され、製剤としては錠剤、エキス剤等の経口剤、軟膏のような非経口剤が例示されるが、これらに限定されない。
ショウガ抽出物の抽出原料として生のショウガ(Zingiber officinale)根茎を使用した。すりおろしたショウガ(Zingiber officinale)根茎120kgを乾燥し、乾燥物20kgを得た。乾燥物を、二酸化炭素を用いた超臨界抽出又は溶媒抽出により抽出し、抽出物1kgを得た。
尚、溶媒抽出により抽出する際、ヘキサンと酢酸エチルの比が3:1の混合液100kgを使用した。乾燥物20kgをヘキサンと酢酸エチルの混合液に投入し撹拌して抽出を行い、抽出物を得た。得られた抽出物を濃縮して、1kgの濃縮抽出物を得た。
得られた抽出物1kgを密閉容器に封入した。抽出物を100℃、120℃、130℃のいずれかの温度まで加熱し、温度を保持したままで24時間、27時間、48時間、60時間のいずれかの時間で加熱処理を施した。
加熱処理後の抽出物あるいは加速劣化試験後の抽出物中の6−ジンゲロール、6−ショウガオール夫々の含有量を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により定量した。
抽出物中の6−ジンゲロール、6−ショウガオール夫々の量は、クロマトグラムのピーク面積から算出した。
HPLC(島津製作所製、LC10AD)の測定条件を表1に示す。尚、検出器として吸光光度検出器(UV−vis検出器)を使用した。
超臨界抽出法で得られた抽出物を120℃、48時間加熱した。加熱処理後の抽出物中の6−ジンゲロール、6−ショウガオール夫々の含有量をHPLCにより定量した。
溶媒抽出法で得られた抽出物(濃縮物)を120℃、27時間加熱した。加熱処理後の抽出物中の6−ジンゲロール、6−ショウガオール夫々の含有量をHPLCにより定量した。
超臨界抽出法で得られた抽出物を130℃、24時間加熱した。加熱処理後の抽出物中の6−ジンゲロール、6−ショウガオール夫々の含有量をHPLCにより定量した。
溶媒抽出法で得られた抽出物を100℃、60時間加熱した。加熱処理後の抽出物中の6−ジンゲロール、6−ショウガオール夫々の含有量をHPLCにより定量した。
溶媒抽出法で得られた抽出物を130℃、60時間加熱した。加熱処理後の抽出物中の6−ジンゲロール、6−ショウガオール夫々の含有量をHPLCにより定量した。
実施例1と同じ方法により、抽出物を得た。得られた抽出物に対して、表2に示す条件で加熱処理を施した。実施例1と同様に、加熱処理後の抽出物中の6−ジンゲロール、6−ショウガオール夫々の含有量をHPLCにより定量した。HPLCの条件は、表1に示す通りである。
実施例1と同じ方法により抽出物を得た。得られた抽出物に対して加熱処理は施さずに、抽出物中の6−ジンゲロール、6−ショウガオール夫々の含有量をHPLCにより定量した。HPLCの条件は、表1に示す通りである。
参考例の結果より、加熱処理を施していないショウガ抽出物では、6−ジンゲロールの方が6−ショウガオールよりも多く含有されることがわかる。加熱処理を施すことによって抽出物中の6−ショウガオールの量が増加し、加熱処理を施していない状態よりも多く6−ショウガオールが含有されることが確認された。
つまり、100℃未満の温度で長時間(24時間以上)の加熱処理、例えば、85℃で24時間(比較例1参照)や90℃で150時間(比較例3参照)の加熱処理を施しても6−ショウガオールの量が6−ジンゲロールの量を上回ることがない。また、100℃以上130℃未満の温度で短時間(5時間未満)の加熱処理、例えば115℃で2時間(比較例4参照)の加熱処理を施しても6−ショウガオールの量が6−ジンゲロールの量を上回ることがない。
比較例1〜4の加熱条件では、6−ジンゲロールの量が6−ショウガオールよりも多いため、6−ジンゲロールが6−ショウガオールに経時的に変換される可能性があることがわかった。
つまり、比較例5の加熱条件では、6−ショウガオールの量が6−ジンゲロールの量を上回るが、6−ショウガオールの6−ジンゲロールに対する含有量の比は1.6以上とならない。150℃という温度で加熱することにより、生成した6−ショウガオールが分解、もしくは別の化合物に更に変換されたと考えられる。
実施例1、比較例1〜5の抽出物を配合したエマルションに対して加速劣化試験を行い、保存安定性について評価した。
加熱処理後の抽出物を使用し、表3に示す配合比でエマルションを調製した。
エマルションが55℃となるまで加温し、温度を保持したままで40日間若しくは63日間保存した。参考例においては、加熱処理を行わないままエマルションを調製した。
実施例1の抽出物を配合したエマルションを配合例1、比較例1〜5の抽出物を配合したものを比較配合例1〜5、参考例の抽出物を配合したものを参考配合例とした。
尚、55℃での保存は、常温を25℃とした場合に、1週間で常温180日間保存、2週間で常温360日間保存に相当する。
7日間保存、14日間、21日間、28日間、40日間、63日間におけるエマルション中の6−ジンゲロール、6−ショウガオール夫々の含有量をHPLCにより定量した。HPLCの条件は、表1に示す通りである。
図1(a)は、6−ジンゲロールの量の経時的な変化を示す図であり、図1(b)は6−ショウガオールの量の経時的な変化を示す図である。
一方、比較配合例1〜4では、7週間、14週間と保存期間が長くなるにつれて、6−ショウガオールの量が徐々に増加していき、6−ジンゲロールの量が徐々に減少していることがわかる。また、比較配合例5では、比較配合例1〜4程ではないが、経時的に6−ショウガオールの量が増加することが確認された。
一方、比較例1〜5の抽出物を配合した比較配合例1〜5では、25℃の保存において経時的に6−ショウガオールの含有量が増加するため、味が変化すると考えられる。
Claims (5)
- 6−ショウガオールの6−ジンゲロールに対する重量比が1.6以上であることを特徴とするショウガ抽出物。
- ショウガ抽出物全量に対する前記6−ジンゲロールの含有量が7重量%以下であり、前記6−ショウガオールの含有量が10重量%以上であることを特徴とする請求項1記載のショウガ抽出物。
- 25℃で2年間の保存において、前記6−ジンゲロール及び前記6−ショウガオールの変化量が夫々15%以下であることを特徴とする請求項1又は2記載のショウガ抽出物。
- ショウガ抽出物全量に対する糖質の含有量が10重量%以下であることを特徴とする請求項1乃至3いずれかに記載のショウガ抽出物。
- ショウガ(Zingiber officinale)から抽出した抽出物を、100〜130℃で24〜60時間、加熱する工程を含むことを特徴とするショウガ抽出物の製造方法。
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