以下、実施の形態について適宜図面を参照して説明する。なお、実施の形態を通して共通の構成には同一の符号を付すものとし、重複する説明は省略する。また、各図は実施の形態の説明とその理解を促すための模式図であり、その形状や寸法、比などは実際の装置と異なる個所があるが、これらは以下の説明と公知の技術とを参酌して、適宜設計変更することができる。
[第1の実施形態]
第1の実施形態によると二次電池が提供される。二次電池は、正極と、負極と、水系電解質とを具備している。負極は、チタン含有酸化物を含んでいる。水系電解質は、水および水溶性有機溶媒を含んだ溶媒と、アルカリ金属イオン又はアルカリ土類金属イオンとを含んでいる。水系電解質は、37mN/m以下の界面張力を示す。
スピネル型リチウムチタン酸化物Li4Ti5O12(LTO)を含め、多くのチタン含有酸化物の動作電位が水の電解電位よりも低い。そのため、例えば、LTOなどのチタン含有酸化物を負極活物質として用い且つ電解液に水を多く含む二次電池では、水の電気分解で発生した水素の気泡により負極活物質が剥離するだけでなく、負極活物質へのキャリア(例えば、リチウムイオン等のアルカリ金属イオンや、マグネシウムイオン等のアルカリ土類金属イオン)の挿入反応と水の電気分解によるプロトン(水素カチオン;H+)の還元反応とが競合する。その結果、二次電池の充放電効率や放電容量が低下する。
本実施形態では、水系電解質は、水および水溶性有機溶媒を含んだ溶媒と、アルカリ金属イオン又はアルカリ土類金属イオンとを含んでおり、37mN/m以下の界面張力を有する。水系電解質の界面張力は、34mN/m以下であり得る。このような水系電解質を用いることにより、二次電池の充放電効率などといった電池性能を改善することができる。また、優れたサイクル寿命性能を示す二次電池を得ることができる。
水系電解質が含む水は、例えば、純水であり得る。
アルカリ金属イオン及びアルカリ土類金属イオンは、電解質塩に由来するカチオンである。アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、及び電解質塩の詳細は、後述する。
水系電解質が含む水溶性有機溶媒としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン(N-methyl-2-pyrrolidone;NMP)、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブチルアルコール、sec-ブチルアルコール、tert-ブタノール、エチレングリコール、1,2-ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン(tetrahydrofuran;THF)、1,4-ジオキサン、アセトン、エチルメチルケトン、アセトニトリル(acetonitrile;AN)、ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルリン酸トリアミド、トリエチルアミン、ピリジン、及びジメチルスルホキサイドからなる群より選択される少なくとも1以上を用いることができる。
後述するとおり、正極および負極は、結着剤を含むことができる。結着剤として用いることのできる化合物には、上記水溶性有機溶媒との相性が優れないものがある。そのため、水溶性有機溶媒を含む水系電解質と接し得る電極(正極または負極)に用いる結着剤に留意する。
水系電解質は、中性から塩基性であることが好ましい。つまり、水系電解質のpHが7以上であることが好ましい。水系電解質は、例えば、LiOHのような塩基性化合物の添加によりpH調整された溶液であり得る。
界面張力が37mN/m以下である水系電解質は、電極(負極または正極)との親和性が高い。水系電解質の界面張力は、例えば、後述する懸滴法(ペンダントドロップ法)により測定することができる。
水系電解質の界面張力は、例えば、水系電解質に含まれている電解質塩の濃度、水系電解質のpH、並びに水系電解質に含まれている水溶性有機溶媒の種類および量の影響を受ける。
例えば、電解質塩濃度が12 mol/L、塩基性、有機溶媒含有率が10 vol%である水系電解質では、界面張力が50mN/m以下になり得る。NMPなどの水溶性有機溶媒の含有割合が増加するとともに、水系電解質の界面張力は低下する。また、水系電解質がより塩基性になるほど(pHが上昇するほど)、界面張力は低下する。一方で、電解質塩の濃度が増大するに伴って、界面張力は増大する。
また水系電解質は界面活性剤を含む第1化合物を含むことができる。第1化合物として、例えば、一分子中に親水性部と疎水性部とを含んでいる有機化合物を用いることができる。親水性部の具体例として、オキシエチレン基およびオキシアルキレン基などを挙げることができる。疎水性部の具体例として、アルキル基を挙げることができる。
アルキル基は、例えば炭素数が8〜16の炭化水素である。アルキル基は、直鎖状でもよく、枝分かれしていてもよい。アルキル基が含む水素原子のうちの一部は、フッ素などの第17族元素で置換されていてもよい。疎水基が含む水素原子の数に対して、置換されてもよい水素原子の数の割合は、例えば10%以上100%以下の範囲内にある。
有機電解液系(非水系)のリチウムイオン二次電池においても、電解液の表面エネルギーを低下させて電極と電解液との親和性を向上させる目的、又は電極表面に被膜を形成する目的で、界面活性剤が添加剤として用いられている。
また、亜鉛や亜鉛合金を負極活物質として用いアルカリ水溶液を電解液として用いたアルカリ電池においても、亜鉛の腐食反応およびガス発生を抑制するために添加する有機インヒビターとして界面活性剤が用いられている。一例では、ジポリオキシエチレンアルキルアミドのような炭化水素系界面活性剤を用いることで、負極活物質としての亜鉛の腐食を防止できる。一方で、炭化水素系界面活性剤は亜鉛に対し高い相互作用を示すため、亜鉛電極(亜鉛を活物質に用いる電極)の表面に過剰な被膜が形成され得る。過剰な被膜により亜鉛電極が不活性化される結果、放電性能が低下する。対処の一例として、炭化水素系界面活性剤とともに、ポリオキシエチレンフッ化アルキルエーテルのような防食効果が弱いものの放電性能への影響が小さいフッ素系界面活性剤を併用することが試みられている。
実施形態に係る二次電池の場合は、水系電解質に界面活性剤を含む第1化合物を添加することで、電極と電解液との親和性を向上させる効果に加え、水分解反応を抑制する効果を促進できる。そのため、第1化合物の添加により二次電池のサイクル安定性および充放電効率が向上する。
水系電解質に添加した界面活性剤は、例えば、疎水性部にて電極表面(電極活物質表面)に吸着し得る。チタン含有酸化物を含む負極を用いた二次電池では、チタン含有酸化物と界面活性剤との相互作用が強すぎず、過剰な被膜は形成されない。界面活性剤分子における親水性部と水分子との相互作用により、水分子は拘束される。そのため、水分子の電極活物質(例えば、チタン含有酸化物)表面への接近が阻害され、水の電気分解の抑制が促進される。
第1化合物として非イオン性の界面活性剤を用いることがより好ましい。非イオン性界面活性剤は、水素結合により水分子と相互作用する。そのため、非イオン性の界面活性剤は、電極活物質への水分子の接近をよりよく妨げることができる。
非イオン性界面活性剤の具体例として、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(例えば、C12H25O(CH2CH2O)nH;0.9<n≦2.1)及びポリオキシアルキレンアルキルエーテル(例えば、C12H25O[(CH2CH(CH3)O)m・(CH2CH2O)n]H;0<n<35、0<m≦40、或いは、C4H9O(CH2CH2O)n[(CH2CH(CH3)O)m]H;0<n≦35、0<m≦28)からなる群より選択される1以上を挙げることができる。なお、ポリオキシエチレンアルキルエーテルの化学式C12H25O(CH2CH2O)nHにおける添字nについての上記数値範囲は、0.89<n≦2.1を含む。また、化学式C12H25O[(CH2CH(CH3)O)m・(CH2CH2O)n]Hで表すポリオキシアルキレンアルキルエーテルの具体例として、添字n及びmがそれぞれ1.4≦n≦35及び8.4≦m≦40である化合物を挙げることができる。
第1化合物として、1種の化合物を単独で用いてもよい。或いは、2種以上の化合物を第1化合物として用いてもよい。1種の化合物を単独で第1化合物に用いた場合でも、上述した効果を発現させることができる。
第1化合物には、第1化合物の原料であるアルコール、或いは副生成物であるポリエーテルポリオールが含まれていても良い。
水系電解質への第1化合物の添加により、界面張力は変化し得る。例えば、第1化合物を添加することにより、水系電解質の界面張力が低下し得る。第1化合物の種類に応じて、界面張力の変化の度合いが異なる。
水系電解質における界面活性剤の種類を変更したり添加量を増加させたりしても、水系電解質の界面張力を20mN/m程度より低くすることは困難である。そのため、水系電解質の界面張力を20mN/m以上とすることで、第1化合物を過剰に用いないで済む。
第1化合物を水系電解質に添加することによる二次電池の性能向上の度合いは、第1化合物が一分子中に含んでいる親水性部の割合に応じて変化し得る。例えば、電池性能と水系電解質中の第1化合物のHLB(Hydrophilic-Lipophilic Balance)値とに相関があり得る。HLB値は、界面活性剤における親水性部の割合を表す指標で、次のとおり求められる:HLB値=20×[親水性部の分子量/全体の分子量]。
HLB値を算出する方法の具体例として、一例のポリオキシエチレンアルキルエーテルC12H25O(CH2CH2O)nH、及び二つの例のポリオキシアルキレンアルキルエーテルC12H25O[(CH2CH(CH3)O)m・(CH2CH2O)n]H及びC4H9O(CH2CH2O)n[CH2CH(CH3)O]mHを第1化合物に用いた場合の計算方法を説明する。
図12に示すポリオキシエチレンアルキルエーテルの化学式を用いて、当該化合物のHLB値の算出方法を説明する。ポリオキシエチレンアルキルエーテルの分子50の一端側を親水性部51とみなし、他端側を疎水性部52とみなす。例えば、化学式C12H25O(CH2CH2O)nHで表す化合物については、化学式における最初の酸素およびオキシエチレン基を含む部分(-O(CH2CH2O)nH)を親水性部51とみなす。この部分の分子量を、HLB値を算出する上記計算式における「親水性部の分子量」に用いる。化学式におけるアルキル基(C12H25-)を疎水性部52とみなす。親水性部51と疎水性部52を含んだ化合物全体(分子50全体)の分子量を、HLB値を算出する上記計算式における「全体の分子量」に用いる。
図13に示すポリオキシアルキレンアルキルエーテルの化学式を用いて、当該化合物のHLB値の算出方法を説明する。ポリオキシアルキレンアルキルエーテルの分子60の一端側を親水性部61とみなし、他端側を疎水性部62とみなす。例えば、化学式C12H25O[(CH2CH(CH3)O)m・(CH2CH2O)n]Hで表す化合物については、化学式におけるオキシアルキレン基(-[(CH2CH(CH3)O)m・(CH2CH2O)n]H)中のエチレンオキシドユニットを含む端部(-(CH2CH2O)nH)を親水性部61とみなす。この部分の分子量を、HLB値を算出する上記計算式における「親水性部の分子量」に用いる。化学式におけるアルキル基(C12H25-)からオキシアルキレン基に含まれているプロピレンオキシドユニット(-O(CH2CH(CH3)O)m-)までの端部(C12H25-O(CH2CH(CH3)O)m-)を疎水性部62とみなす。親水性部61と疎水性部62を含んだ化合物全体(分子60全体)の分子量を、HLB値を算出する上記計算式における「全体の分子量」に用いる。
他の例のポリオキシアルキレンアルキルエーテルのHLB値の算出方法を、図14を参照して説明する。化学式C4H9O(CH2CH2O)n[CH2CH(CH3)O]mHで表すポリオキシアルキレンアルキルエーテルについては、分子70の両端を疎水性部72とみなし、それらの間の部分を親水性部71とみなす。例えば、化学式における一端側のアルキル基(C4H9-)及び他端側のオキシプロピレン基を含む端部(-[CH2CH(CH3)O]mH)をそれぞれ疎水性部72と見なす。これらの間に在るオキシエチレン基(-(CH2CH2O)n-)の部分を親水性部71と見なす。この親水性部71の部分の分子量を、HLB値を算出する上記計算式における「親水性部の分子量」に用いる。親水性部71と疎水性部72を含んだ化合物全体(分子70全体)の分子量を、HLB値を算出する上記計算式における「全体の分子量」に用いる。
第1化合物は、分子量が200以上4000以下の範囲内にある非イオン性界面活性剤を1以上含むことが好ましい。分子量が400以上3500以下の範囲内にあることがより好ましく、1000以上3000以下の範囲内にあることがさらに好ましい。ここでいう分子量は、例えば、後述する方法により求めることができる。第1化合物の分子構造が分かっている、例えば、上記化学式における添字n及びmが分かっていると共にHLB値が判明している場合は、HLB値に基づいて分子量を算出することもできる。第1化合物に先述の好ましい範囲内にある分子量を有する非イオン界面活性剤を含むと、電池性能がさらに向上する。その理由を次に説明する。
先ず上述したとおり、水系電解質に第1化合物が添加されていることで、界面活性効果により電極と電解液との親和性が向上する。加えて第1化合物の界面活性剤は、例えば、疎水性部にて電極表面に吸着して電極表面に被膜を形成することで、水分解反応を抑制し得る。
分子量が適度に大きいことで、電極と電解液との親和性が高くなり過ぎない。水分子を電極に接近しにくくする観点からは、親和性は高過ぎない方が望ましい。また、分子量が一定以上の値を有することで、電極表面に形成され得る被膜の疎水性が十分に高くなる。そうすると、被膜により水分子の電極への接近を阻害する効果を確保できる。第1化合物の分子量が200未満であると、電極と電解液との親和性が高過ぎる。親和性が高過ぎると水分子が電極に接近しやすくなり水分解反応が促進されるため、好ましくない。さらに、分子量が200未満であると電極表面に形成され得る被膜の疎水性が低いため、水分子の電極への接近を阻害することが難しくなる。
界面活性剤の分子量がある程度抑えられていることで、電極表面に形成され得る被膜の疎水性が高くなり過ぎない。そのため、水の接近を阻害しつつも電極へのキャリアイオン(例えば、リチウムイオン)の挿入および脱離が妨げられない。また、より小さい分子量の化合物の方が電解液への溶解性が良く、第1化合物が溶液系外へ析出し難くなる。そのため、第1化合物が電極表面に析出および堆積することに起因するキャリアイオンの電極への挿入および脱離の妨げを気にしなくてもよい。第1化合物の分子量が4000より大きいと、電極表面に形成され得る被膜の疎水性が高いため水分子の接近は阻害することはできるが、キャリアイオンの電極への挿入脱離が妨げられる。また、分子量が4000を上回ると第1化合物の電解液への溶解性が低くなるため、第1化合物が溶液系外に析出しやすくなる。
分子量が400以上3500以下の範囲内にあることで、キャリアイオンの電極への出入りを妨げずに、水の接近をより良く抑制することができるため、より好ましい。さらに、分子量が1000以上3000以下の範囲内にあることで、キャリアイオンの電極への出入りを妨げずに、水の接近をさらに良く抑制することができるため、好ましい。
水系電解質は、高いぬれ性を有することが望ましい。ぬれ性が高い水系電解質を用いることで、良好な充放電性能を得ることができる。なお、ぬれ性が高い水系電解質は、接触角が低い。例えば、亜鉛箔に対する水系電解質の電極に対する接触角が32deg以上60deg以下であり得る。また、例えば、負極活物質としてLTOを用いた負極に対する接触角が40deg以上69deg以下であり得る。
水系電解質のぬれ性は、例えば、第1化合物の添加により制御できる。例えば、第1化合物を添加することにより、電極に対する水系電解質の接触角を低下させることができる。第1化合物を多く添加するほど、接触角は低下する。その他、電解質塩の濃度が低下したり、水溶性有機溶媒の含有割合が増加したりするとともに、接触角は低下する。
負極が亜鉛を含んでいることがより望ましい。亜鉛は、金属の亜鉛(亜鉛元素)又は亜鉛の化合物(例えば、酸化亜鉛、水酸化亜鉛)としてチタン含有酸化物の表面に存在し得る。また、負極の集電体として、亜鉛箔や亜鉛含有合金などといった亜鉛を含む材料を用いることができる。チタン含有酸化物の表面に存在する亜鉛は、例えば、亜鉛を含む集電体を負極に用いたときに、亜鉛集電体から溶出した亜鉛が初回充電時に負極にて析出したものであり得る。チタン含有酸化物の表面に存在する亜鉛は、負極の水素発生過電圧を上昇させる。そのため、水素発生を抑制する効果が得られる。
第1化合物を水系電解質に添加した場合は、第1化合物が電極に吸着することにより、電極表面の電位が均一化される。この場合、電極表面への亜鉛の析出が均一になる。その結果、電極表面での水素発生過電圧を均一に上昇させることができるため、水素発生を抑制する効果が向上する。そのため、第1化合物と亜鉛との両方を併せて用いることが好ましい。例えば、負極中の亜鉛に対し重量比率で1,000ppm以上100,000ppmの第1化合物を用いることができる。
[水系電解質の測定]
以下に、水系電解質の性質を測定する方法を説明する。
測定対象の水系電解質が、例えば、作製済みの電池に含まれている場合、次のようにして水系電解質を抽出する。
測定対象は、例えば、出荷前の電池など未使用の電池に含まれている水系電解質とする。電池の外装、例えば、円筒電池の底に穴をあけた後、電池を回収容器に収める。回収容器ごと電池を高速遠心機に導入して、遠心力により電池内から液状の電解質を回収容器へ抽出する。
<水系電解質のpH測定方法>
水系電解質のpHは、pH試験紙によって測定できる。pHの測定は、例えば、以下のように行う。
この測定には、例えば、MACHEREY-NAGEL製スティック状pH試験紙を使用する。pH試験紙を水系電解質に浸し、引き上げる。変色部分の色の変化が終了するまで待つ。変色が終了したら、最終的に得られた色を色見本と照らし合わせ、pHの値を決定する。
<水系電解質の界面張力の測定方法>
水系電解質の界面張力は、例えば、懸滴法を用いて求めることができる。測定装置としては、例えば、協和界面科学社製、自動接触角計Dme-201を用いることができる。測定条件としては、例えば、下記表1に示す条件を用いる。
界面張力の算出には懸滴法を用い、下記式(1)から水系電解質の界面張力を算出する。
式(1)における各記号は、次の通りである:
Δρ:密度差、g:重力加速度、de:懸滴の最大径、1/H:補正係数。
例えば、測定を5回行い、その平均値を界面張力とみなす。
<水系電解質の接触角の測定方法>
水系電解質の接触角は、例えば、液滴法により求めることができる。
測定装置としては、例えば、協和界面科学社製、自動接触角計Dme-201を用いることができる。測定条件としては、例えば、下記表2に示す条件を用いる。
<水溶性有機溶媒および第1化合物の測定>
水系電解質中の水溶性有機溶媒および第1化合物の同定および定量は、液体クロマトグラフィー/質量分析(Liquid Chromatography - Mass Spectrometry;LC/MS)分析により行うことができる。
先に説明したとおり電解質を抽出する。抽出した電解質を表3に示した条件で分析することで、電解質中の成分、例えば、有機溶媒、及び第1化合物などを同定、定量できる。
<第1化合物の分子量の測定>
第1化合物の分子量は、MALDI-TOF-MS(Matrix Assisted Laser Desorption/Ionization Time-of-Flight Mass Spectrometry)分析により測定できる。装置としては、例えば、日本電子社(JEOL)製JMS-S3000 Spiral TOFを用いることができる。データ解析には、例えば、日本電子社製MS Tornado Analysisを用いることができる。質量構成の外部標準には、ポリメタクリル酸メチル(サイズ排除クロマトグラフィー用分子量標準)が用いられる。
測定により得られるMALDI-MSスペクトルにおけるピークトップの位置の値を、分子量として記録する。
<非イオン性界面活性剤におけるポリオキシアルキレンユニット比の算出>
非イオン性界面活性剤のオキシエチレン基やオキシアルキレン基に含まれている各種ポリオキシアルキレンユニットの比率は、プロトン核磁気共鳴(1H NMR)分光測定に基づいて、以下の方法で算出できる。1H NMR測定に供する試料としては、例えば、電池から抽出した液状の電解質をそのまま用いることができる。
電解質の1H NMRスペクトルを測定する。得られたスペクトル中のピークは、化学シフト、および分離パターンなどから、アルキレンオキシドユニット毎に帰属できる。アルキレンオキシドユニットに帰属されたピークの積分比を算出し、この値からアルキレンオキシドの比率を求める。例えば、化学式C12H25O[(CH2CH(CH3)O)m・(CH2CH2O)n]Hで表されるポリオキシアルキレンアルキルエーテルを含む試料を測定して得られる1H NMRスペクトルに現れる各ピークは、アルキル基(C12H25-)、プロピレンオキシドユニット(-(CH2CH(CH3)O)-)、又はエチレンオキシドユニット(-(CH2CH2O)-)に帰属できるピークを含む。それぞれの帰属ピークの積分比を算出することで、添字m及びnの比を求めることができる。
実施形態に係る二次電池は、正極と負極との間に配置されたセパレータを更に具備することができる。正極、負極及びセパレータは、電極群を構成することができる。水系電解質は、電極群に保持され得る。二次電池は、電極群及び水系電解質を収容可能な外装部材を更に具備することができる。
また、二次電池は、負極に電気的に接続された負極端子及び正極に電気的に接続された正極端子を更に具備することができる。
以下、水系電解質、負極、正極、セパレータ、外装部材、負極端子及び正極端子について詳細に説明する。
(1)水系電解質
水系電解質は、水とアルカリ金属イオン又はアルカリ土類金属イオンとを含んでいる。また、水系電解質は、先に説明した水溶性有機溶媒を含む。加えて、水系電解質は、先に説明した第1化合物を含み得る。
後述するとおり適切なセパレータを用いた場合は、二次電池内または電極群における正極側と負極側とで異なる水系電解質を用いることができる。負極と接し得ない水系電解質(例えば、後述の第2水系電解質のように、正極側に隔離された水系電解質)からは、水溶性有機溶媒を省略してもよい。また、負極と接し得ない水系電解質の界面張力は37mN/mを超えていても構わない。一方で、負極と接し得る水系電解質は、水溶性有機溶媒を含み、界面張力が37mN/m以下あることが望ましい。また、負極と接する水系電解質(例えば、後述する第1水系電解質)は、pHが7以上であることが好ましい。
アルカリ金属イオン及びアルカリ土類金属イオンは、例えば、電解質塩に由来するカチオンである。アルカリ金属イオンの例は、リチウムイオン及びナトリウムイオンなどを含む。アルカリ土類金属イオンの例は、マグネシウムイオン及びカルシウムイオンなどを含む。水系電解質は、リチウムイオン、ナトリウムイオン、マグネシウムイオン、及びカルシウムイオンの何れか1種を含んでいてもよい。或いは、水系電解質は、これらカチオンを2種以上含んでいてもよい。水系電解質がリチウムイオンを含んでいることが好ましい。
電解質塩としては、例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、マグネシウム塩、及びカルシウム塩を挙げることができる。
リチウム塩の例は、LiCl、LiBr、LiOH、Li2SO4、LiNO3、LiN(SO2CF3)2(LiTFSI:リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド)、LiN(SO2F)2(LiFSI:リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド)、及びLiB[(OCO)2]2(LiBOB:リチウムビスオキサレートボラート)などを含む。使用するリチウム塩の種類は、1種類であってもよく、2種類以上であってもよい。
ナトリウム塩の例は、NaCl、Na2SO4、NaOH、NaNO3及びNaTFSA(ナトリウムトリフルオロメタンスルホニルアミド)などを含む。使用するナトリウム塩の種類は、1種類であってもよく、2種類以上であってもよい。
マグネシウム塩の例は、MgCl2, MgSO4, Mg(NO3)2, Mg(ClO4)2などを含む。使用するマグネシウム塩の種類は、1種類であってもよく、2種類以上であってもよい。
カルシウム塩の例は、CaCl2, Ca(NO3)2, Ca(ClO4)2などを含む。使用するカルシウム塩の種類は、1種類であってもよく、2種類以上であってもよい。
水系電解質は、リチウム、ナトリウム、マグネシウム、又はカルシウムを含んでいない電解質塩を含んでいてもよい。
水系電解質は、液体(水系電解液)であってもよく、水系電解液と高分子材料とを複合化したゲル状であってもよい。高分子材料としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリエチレンオキサイド(PEO)等を挙げることができる。ただし、高分子材料には、上記した水溶性有機溶媒との相性に優れない物がある。例えば、PVdFとNMPとの組み合わせでは、ゲルを形成しにくい。そのため、水系電解液中の水溶性有機溶媒の種類と高分子材料の種類との組合せに留意する。
水系電解質は、溶質である電解質塩1molに対し、水量(例えば、純水の量)が1mol以上であることが好ましい。電解質塩1molに対して溶媒量が3.5mol以上であることがより好ましい。
水系電解質は、例えば、電解質塩を6mol/L〜12mol/Lの濃度で水および水溶性有機溶媒を含んだ溶媒に溶解することにより調製される。水系電解質中の電解質塩のモル濃度は、9M以上であることが好ましい。この場合、水の電気分解反応に対して、キャリアイオンであるアルカリ金属イオンやアルカリ土類金属イオンの活物質への挿入脱離反応が優位になるため好ましい。
水系電解質中の電解質塩のモル濃度が過度に低いと、電荷担体が不足するか、又は、負極へのアルカリ金属イオンやアルカリ土類金属イオンの挿入よりも水分解が優先的に生じることにより、二次電池として動作しない可能性がある。
水系電解質に水が含まれていることは、GC−MS(ガスクロマトグラフィー−質量分析;Gas Chromatography - Mass Spectrometry)測定により確認できる。また、水系電解質中の塩濃度および水含有量は、例えばICP(誘導結合プラズマ;Inductively Coupled Plasma)発光分析などで測定することができる。水系電解質を規定量はかり取り、含まれる塩濃度を算出することで、モル濃度(mol/L)を算出できる。また水系電解質の比重を測定することで、溶質と溶媒のモル数を算出できる。
(2)負極
負極は、負極集電体と、負極集電体の片面又は両面に担持され、活物質、導電剤及び結着剤を含む負極活物質含有層とを有する。
負極集電体は、負極活物質にアルカリ金属イオン又はアルカリ土類金属イオンが挿入及び脱離される電位において電気化学的に安定である材料が用いられる。例えば、負極集電体は、亜鉛、銅、ニッケル、ステンレス又はアルミニウム、或いは、マグネシウム(Mg)、チタン(Ti)、亜鉛(Zn)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、銅(Cu)及びケイ素(Si)から選択される一以上の元素を含むアルミニウム合金から作られることが好ましい。アルミニウム合金箔は、これら元素を1種類のみ含んでいてもよく、2種類以上含んでいてもよい。負極集電体は、多孔体又はメッシュなどの他の形態であってもよい。負極集電体は、Znを含むことがより好ましい。
負極集電体の厚さは、5μm以上20μm以下であることが好ましい。このような厚さを有する負極集電体は、負極の強度と軽量化のバランスをとることができる。
また、負極集電体は、その表面に負極活物質含有層が担持されていない部分を含むことができる。この部分は、負極集電タブとして働くことができる。
負極活物質含有層は、負極集電体の少なくとも1つの面上に配置されている。例えば、負極集電体上の1つの面に負極活物質含有層が配置されていてもよく、負極集電体上の1つの面とその裏面とに負極活物質含有層が配置されていてもよい。
負極活物質としては、チタン酸化物、リチウムチタン酸化物、ニオブチタン酸化物、直方晶型(orthorhombic)チタン複合酸化物などのチタン含有酸化物を使用することができる。チタン含有酸化物のLi吸蔵電位は、例えば、1V(vs.Li/Li+)以上3V(vs.Li/Li+)以下である。チタン含有酸化物のLi吸蔵電位は、好ましくは、1.2V(vs.Li/Li+)以上2.0V(vs.Li/Li+)以下である。負極活物質は、これらチタン含有酸化物を1種、又は2種以上含むことができる。
チタン酸化物は、例えば、単斜晶構造のチタン酸化物、ルチル構造のチタン酸化物、アナターゼ構造のチタン酸化物を含む。各結晶構造のチタン酸化物は、充電前の組成をTiO2、充電後の組成をLixTiO2(xは0≦x≦1)で表すことができる。また、単斜晶構造のチタン酸化物の充電前構造をTiO2(B)と表すことができる。
リチウムチタン酸化物は、例えば、スピネル構造のリチウムチタン酸化物(例えば、一般式Li4+xTi5O12(xは−1≦x≦3))、ラムスデライト構造のリチウムチタン酸化物(例えば、Li2+xTi3O7(−1≦x≦3))、Li1+xTi2O4(0≦x≦1)、Li1.1+xTi1.8O4(0≦x≦1)、Li1.07+xTi1.86O4(0≦x≦1)、LixTiO2(0<x≦1)などを含む。また、リチウムチタン酸化物は、異種元素が導入されているリチウムチタン複合酸化物であってもよい。チタン複合酸化物の一例として、ホランダイト型チタン複合酸化物を挙げることができる。
ニオブチタン酸化物は、例えば、LiaTiMbNb2±βO7±σ(0≦a≦5、0≦b≦0.3、0≦β≦0.3、0≦σ≦0.3、MはFe,V,Mo及びTaよりなる群から選択される少なくとも1種の元素)で表されるものを含む。
直方晶型チタン含有複合酸化物は、例えば、Li2+aM(I)2-bTi6-cM(II)dO14+σで表される化合物を含む。ここで、M(I)は、Sr,Ba,Ca,Mg,Na,Cs,Rb及びKからなる群より選択される少なくとも1つでる。M(II)はZr,Sn,V,Nb,Ta,Mo,W,Y,Fe,Co,Cr,Mn,Ni,及びAlからなる群より選択される少なくとも1つである。組成式中のそれぞれの添字は、0≦a≦6、0≦b<2、0≦c<6、0≦d<6、−0.5≦σ≦0.5である。直方晶型チタン含有複合酸化物の具体例として、Li2+aNa2Ti6O14(0≦a≦6)が挙げられる。
負極活物質は、例えば粒子の形態で負極に含まれている。負極活物質粒子は、単独の一次粒子、一次粒子の凝集体である二次粒子、あるいは、単独の一次粒子と二次粒子の混合物であり得る。粒子の形状は、特に限定されるものではなく、例えば、球状、楕円形状、扁平形状、繊維状等にすることができる。
導電剤は、集電性能を高め、且つ、活物質と集電体との接触抵抗を抑えるために配合される。導電剤の例には、気相成長カーボン繊維(Vapor Grown Carbon Fiber;VGCF)、アセチレンブラックなどのカーボンブラック及び黒鉛のような炭素質物が含まれる。これらの1つを導電剤として用いてもよく、或いは、2つ以上を組み合わせて導電剤として用いてもよい。あるいは、導電剤を用いる代わりに、活物質粒子の表面に、炭素コートや電子導電性無機材料コートを施してもよい。
結着剤は、分散された活物質の間隙を埋め、また、活物質と負極集電体を結着させるために配合される。結着剤の例には、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoro ethylene;PTFE)、フッ素系ゴム、スチレンブタジェンゴム、ポリアクリル酸化合物、イミド化合物、カルボキシルメチルセルロース(carboxyl methyl cellulose;CMC)、及びCMCの塩が含まれる。これらの1つを結着剤として用いてもよく、或いは、2つ以上を組み合わせて結着剤として用いてもよい。
負極活物質含有層中の負極活物質、導電剤及び結着剤の配合割合は、負極活物質が70質量%以上95質量%以下、導電剤が3質量%以上20質量%以下、結着剤が2質量%以上10質量%以下の範囲であることが好ましい。導電剤の配合割合が3質量%以上であると、負極活物質含有層の集電性能を向上させることができる。また、結着剤の配合割合が2質量%以上であると、十分な電極強度が得られ、10質量%以下であると電極の絶縁部を減少させることができる。
負極活物質含有層の密度(集電体を含まず)は、1.8g/cm3以上2.8g/cm3以下であることが好ましい。負極活物質含有層の密度がこの範囲内にある負極は、エネルギー密度と水系電解質の保持性とに優れている。負極活物質含有層の密度は、2.1g/cm3以上2.6g/cm3以下であることがより好ましい。
負極は、例えば次の方法により作製することができる。まず、負極活物質、導電剤及び結着剤を溶媒に懸濁してスラリーを調製する。このスラリーを、負極集電体の片面又は両面に塗布する。次いで、塗布したスラリーを乾燥させて、負極活物質含有層と負極集電体との積層体を得る。その後、この積層体にプレスを施す。このようにして、負極を作製する。
或いは、負極は、次の方法により作製してもよい。まず、負極活物質、導電剤及び結着剤を混合して、混合物を得る。次いで、この混合物をペレット状に成形する。次いで、これらのペレットを負極集電体上に配置することにより、負極を得ることができる。
(3)正極
正極は、正極集電体と、正極活物質含有層とを含むことができる。正極活物質含有層は、正極集電体の片面又は両面に形成され得る。正極活物質含有層は、正極活物質と、任意に導電剤及び結着剤を含むことができる。
正極集電体は、チタン、アルミニウム、又は、Mg、Ti、Zn、Ni、Cr、Mn、Fe、Cu及びSiから選択される一以上の元素を含むアルミニウム合金であることが好ましい。
正極集電体の厚さは、5μm以上20μm以下であることが好ましく、15μm以下であることがより好ましい。
また、正極集電体は、その表面に正極活物質含有層が形成されていない部分を含むことができる。この部分は、正極集電タブとして働くことができる。
正極活物質含有層は、正極集電体の少なくとも1つの面上に配置されている。例えば、正極集電体上の1つの面に正極活物質含有層が配置されていてもよく、正極集電体上の1つの面とその裏面とに正極活物質含有層が配置されていてもよい。
正極活物質としては、例えば、酸化物又は硫化物を用いることができる。正極は、正極活物質として、1種類の化合物を単独で含んでいてもよく、或いは2種類以上の化合物を組み合わせて含んでいてもよい。酸化物及び硫化物の例には、アルカリ金属又はアルカリ金属イオン、或いはアルカリ土類金属又はアルカリ土類金属イオンを挿入及び脱離させることができる化合物を挙げることができる。
このような化合物としては、例えば、二酸化マンガン(MnO2)、酸化鉄、酸化銅、酸化ニッケル、リチウムマンガン複合酸化物(例えば、LixMn2O4又はLixMnO2;0<x≦1)、リチウムニッケル複合酸化物(例えばLixNiO2;0<x≦1)、リチウムコバルト複合酸化物(例えば、LixCoO2;0<x≦1)、リチウムニッケルコバルト複合酸化物(例えば、LixNi1-yCoyO2;0<x≦1、0<y<1)、リチウムマンガンコバルト複合酸化物(例えばLixMnyCo1-yO2;0<x≦1、0<y<1)、スピネル構造を有するリチウムマンガンニッケル複合酸化物(例えば、LixMn2-yNiyO4;0<x≦1、0<y<2)、オリビン構造を有するリチウムリン酸化物(例えば、LixFePO4;0<x≦1、LixFe1-yMnyPO4;0<x≦1、0<y<1、LixCoPO4;0<x≦1)、硫酸鉄(Fe2(SO4)3)、バナジウム酸化物(例えば、V2O5)、及び、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(LixNi1-y-zCoyMnzO2;0<x≦1、0<y<1、0<z<1、y+z<1)が含まれる。
上記のうち、正極活物質としてより好ましい化合物の例には、スピネル構造を有するリチウムマンガン複合酸化物(例えばLixMn2O4;0<x≦1)、リチウムニッケル複合酸化物(例えばLixNiO2;0<x≦1)、リチウムコバルト複合酸化物(例えばLixCoO2;0<x≦1)、リチウムニッケルコバルト複合酸化物(例えばLixNi1-yCoyO2;0<x≦1、0<y<1)、スピネル構造を有するリチウムマンガンニッケル複合酸化物(例えばLixMn2-yNiyO4;0<x≦1、0<y<2)、リチウムマンガンコバルト複合酸化物(例えばLixMnyCo1-yO2;0<x≦1、0<y<1)、リチウムリン酸鉄(例えばLixFePO4;0<x≦1)、及び、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(LixNi1-y-zCoyMnzO2;0<x≦1、0<y<1、0<z<1、y+z<1)が含まれる。これらの化合物を正極活物質に用いると、正極電位を高めることができる。
正極活物質の一次粒径は、100nm以上1μm以下であることが好ましい。一次粒径が100nm以上の正極活物質は、工業生産上の取り扱いが容易である。一次粒径が1μm以下の正極活物質は、アルカリ金属イオン及びアルカリ土類金属イオンの固体内拡散をスムーズに進行させることが可能である。
正極活物質の比表面積は、0.1m2/g以上10m2/g以下であることが好ましい。0.1m2/g以上の比表面積を有する正極活物質は、アルカリ金属イオン及びアルカリ土類金属イオンの吸蔵・放出サイトを十分に確保できる。10m2/g以下の比表面積を有する正極活物質は、工業生産の上で取り扱い易く、かつ良好な充放電サイクル性能を確保できる。
結着剤は、分散された正極活物質の間隙を埋め、また、正極活物質と正極集電体とを結着させるために配合される。結着剤の例には、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoro ethylene;PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene fluoride;PVdF)、フッ素系ゴム、ポリアクリル酸化合物、イミド化合物、カルボキシルメチルセルロース(carboxyl methyl cellulose;CMC)、及びCMCの塩が含まれる。これらの1つを結着剤として用いてもよく、或いは、2つ以上を組み合わせて結着剤として用いてもよい。
導電剤は、集電性能を高め、且つ、正極活物質と正極集電体との接触抵抗を抑えるために配合される。導電剤の例には、気相成長カーボン繊維(Vapor Grown Carbon Fiber;VGCF)、アセチレンブラックなどのカーボンブラック及び黒鉛のような炭素質物が含まれる。これらの1つを導電剤として用いてもよく、或いは、2つ以上を組み合わせて導電剤として用いてもよい。また、導電剤を省略することもできる。
正極活物質含有層において、正極活物質及び結着剤は、それぞれ、80質量%以上98質量%以下、及び2質量%以上20質量%以下の割合で配合することが好ましい。
結着剤の量を2質量%以上にすることにより、十分な電極強度が得られる。また、結着剤は、絶縁体として機能し得る。そのため、結着剤の量を20質量%以下にすると、電極に含まれる絶縁体の量が減るため、内部抵抗を減少できる。
導電剤を加える場合には、正極活物質、結着剤及び導電剤は、それぞれ、77質量%以上95質量%以下、2質量%以上20質量%以下、及び3質量%以上15質量%以下の割合で配合することが好ましい。
導電剤の量を3質量%以上にすることにより、上述した効果を発揮することができる。また、導電剤の量を15質量%以下にすることにより、電解質と接触する導電剤の割合を低くすることができる。この割合が低いと、高温保存下において、電解質の分解を低減することができる。
正極は、例えば次の方法により作製することができる。まず、正極活物質、導電剤及び結着剤を溶媒に懸濁してスラリーを調製する。このスラリーを、正極集電体の片面又は両面に塗布する。次いで、塗布したスラリーを乾燥させて、正極活物質含有層と正極集電体との積層体を得る。その後、この積層体にプレスを施す。このようにして、正極を作製する。
或いは、正極は、次の方法により作製してもよい。まず、正極活物質、導電剤及び結着剤を混合して、混合物を得る。次いで、この混合物をペレット状に成形する。次いで、これらのペレットを正極集電体上に配置することにより、正極を得ることができる。
(4)セパレータ
正極と負極の間にはセパレータを配置することができる。セパレータは、例えば、ポリエチレン(polyethylene;PE)、ポリプロピレン(polypropylene;PP)、セルロース、若しくはポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene fluoride;PVdF)を含む多孔質フィルム、又は合成樹脂製不織布から形成される。
セパレータは、イオン交換膜又は固体電解質であってもよい。イオン交換膜又は固体電解質をセパレータとして用いた場合、2つの異なる水系電解質を正極側および負極側にそれぞれ用いてもよい。例えば、負極側の水系電解質を第1水系電解質とし、正極側の水系電解質を第2水系電解質とし、イオン交換膜又は固体電解質により第1水系電解質と第2水系電解質とを隔離することができる。即ち、適切なセパレータを用いることにより、第1水系電解質のみ負極に接している電池を得ることができる。同様に、第2水系電解質のみ正極に接している電池を得ることができる。
イオン交換膜は、例えば1価選択制の陽イオン交換膜である。これを用いると、アルカリ金属イオンのみが選択的にイオン交換膜を透過し得る。水系電解質に含まれている他のイオン、例えば、アニオン種は、この陽イオン交換膜を透過しない。アルカリ金属イオンの例は、リチウムイオン及び/又はナトリウムイオンを含む。
或いはイオン交換膜は、例えば2価選択制の陽イオン交換膜である。これを用いると、アルカリ土類金属イオンのみが選択的にイオン交換膜を透過し得る。水系電解質に含まれている他のイオン、例えば、アニオン種は、この陽イオン交換膜を透過しない。アルカリ土類金属イオンの例は、マグネシウムイオン及び/又はカルシウムイオンを含む。
固体電解質は、例えば、アルカリ金属イオン伝導度が10-10S/cm以上の化合物を含む。アルカリ金属イオン伝導度が10-10S/cm以上である化合物は、例えば、硫化物系のLi2SeP2S5系ガラスセラミックス、ペロブスカイト型構造を有する無機化合物、LiSICON型構造を有する無機化合物、NASICON型骨格を有する無機化合物(例えば、後述するLATP)、アモルファス状のLIPON、及びガーネット型構造を有する無機化合物からなる群より選ばれる少なくとも1つである。
固体電解質は、好ましくは、NASICON型骨格を有するLATP(Li1+xAlxTi2-x(PO4)3;0.1≦x≦0.4)、Li2.9PO3.3N0.46などアモルファス状のLIPON(LixPOyNz;2.6≦x≦3.5、1.9≦y≦3.8、0.1≦z≦1.3)、ガーネット型のLi7La3Zr2O12(LLZ)などの酸化物である。
固体電解質は、これらの中でもガーネット型構造を有する無機化合物を含むことが好ましい。ガーネット型構造を有する無機化合物は、Liイオン伝導性及び耐還元性が高く、電気化学窓が広いため好ましい。ガーネット型構造を有する無機化合物としては、例えば、Li5+xAyLa3-yM2O12(AはCa,Sr及びBaからなる群より選ばれる少なくとも1つであり、MはNb及びTaからなる群より選ばれる少なくとも1つである)、Li3M2-xZr2O12(MはTa及びNbからなる群より選ばれる少なくとも1つである)、Li7-3xAlxLa3Zr3O12、及びLi7La3Zr2O12(LLZ)が挙げられる。上記において、xは、例えば0〜0.8であり、好ましくは、0〜0.5である。yは、例えば0〜2である。ガーネット型構造を有する無機化合物は、これら化合物のうちの1種からなっていてもよく、これら化合物の2種以上を混合して含んでいてもよい。これらの中でもLi6.25Al0.25La3Zr3O12及びLi7La3Zr2O12はイオン伝導性が高く、電気化学的に安定なため、放電性能とサイクル寿命性能に優れる。
(5)外装部材
正極、負極及び水系電解質が収容される外装部材には、金属製容器、ラミネートフィルム製容器、又は樹脂製容器を使用することができる。
金属製容器としては、ニッケル、鉄、及びステンレスなどからなる金属缶で角形、円筒形の形状のものが使用できる。樹脂製容器としては、ポリエチレン又はポリプロピレンなどからなるものを用いることができる。
樹脂製容器及び金属製容器のそれぞれの板厚は、0.05mm以上1mm以下の範囲内にあることが好ましい。板厚は、より好ましくは0.5mm以下であり、更に好ましくは0.3mm以下である。
ラミネートフィルムとしては、例えば、金属層を樹脂層で被覆した多層フィルムなどを挙げることができる。金属層の例に、ステンレス箔、アルミニウム箔、及びアルミニウム合金箔が含まれる。樹脂層には、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ナイロン、及びポリエチレンテレフタレート(PET)などの高分子を用いることができる。ラミネートフィルムの厚さは、0.01mm以上0.5mm以下の範囲内にあることが好ましい。ラミネートフィルムの厚さは、より好ましくは0.2mm以下である。
(6)負極端子
負極端子は、例えば、上述の負極活物質のアルカリ金属イオン吸蔵放出電位において電気化学的に安定であり、かつ導電性を有する材料から形成されることができる。具体的には、負極端子の材料としては、亜鉛、銅、ニッケル、ステンレス若しくはアルミニウム、又は、Mg,Ti,Zn,Mn,Fe,Cu,及びSiからなる群より選択される少なくとも1種の元素を含むアルミニウム合金が挙げられる。負極端子の材料としては、亜鉛又は亜鉛合金を用いることが好ましい。負極端子は、負極集電体との接触抵抗を低減するために、負極集電体と同様の材料からなることが好ましい。
(7)正極端子
正極端子は、例えば、リチウムの酸化還元電位に対し3V以上4.5V以下の電位範囲(vs.Li/Li+)において電気的に安定であり、且つ導電性を有する材料から形成することができる。正極端子の材料としては、チタン、アルミニウム、或いは、Mg、Ti、Zn、Mn、Fe、Cu及びSiからなる群より選択される少なくとも1種の元素を含むアルミニウム合金が挙げられる。正極端子は、正極集電体との接触抵抗を低減するために、正極集電体と同様の材料から形成されることが好ましい。
(8)二次電池の詳細の説明
本実施形態に係る二次電池は、角形、円筒形、扁平型、薄型、コイン型等の様々な形態で使用され得る。また、バイポーラ構造を有する二次電池であってもよい。バイポーラ構造を有する二次電池には、複数直列のセルを1個のセルで作製できるという利点がある。
以下、第1の実施形態に係る二次電池の詳細を、図1〜図5を参照しながら説明する。
図1は、第1の実施形態に係る二次電池の一例を概略的に示す断面図である。図2は、図1に示す二次電池のIII−III線に沿った断面図である。
電極群1は、外装部材2としての矩形筒状の金属製容器内に収納されている。電極群1は、正極5及び負極3をその間にセパレータ4を介在させて偏平形状となるように渦巻き状に捲回した構造を有する。水系電解質(図示しない)は、電極群1に保持されている。図1に示すように、電極群1の端面に位置する正極5の端部の複数個所それぞれに帯状の正極タブ16が電気的に接続されている。また、この端面に位置する負極3の端部の複数個所それぞれに帯状の負極タブ17が電気的に接続されている。この複数ある正極タブ16は、一つに束ねられた状態で正極側リード22と電気的に接続されている。正極タブ16と正極側リード22とから正極端子が構成されている。また、負極タブ17は、一つに束ねられた状態で負極側リード23と接続されている。負極タブ17と負極側リード23とから負極端子が構成されている。金属製の封口板10は、金属製容器(外装部材2)の開口部に溶接等により固定されている。正極側リード22及び負極側リード23は、それぞれ、封口板10に設けられた取出穴から外部に引き出されている。封口板10の各取出穴の内周面は、正極側リード22及び負極側リード23との接触による短絡を回避するために、絶縁部材で被覆されている。
図2に示すように、負極タブ17の他端は短冊状になっていて、電極群1の上側端面に位置する負極3の端部の複数個所それぞれに電気的に接続されている。また、図示してないが、同様に正極タブ16の他端は短冊状になっていて、電極群1の上側端面に位置する正極5の端部の複数個所それぞれに電気的に接続されている。
図1において、金属製の封口板10は、金属製容器(外装部材2)の開口部に溶接等により固定されている。正極側リード22及び負極側リード23は、それぞれ、封口板10に設けられた取出穴から外部に引き出されている。封口板10の各取出穴の内周面には、正極側リード22及び負極側リード23との接触による短絡を回避するために、それぞれ正極ガスケット18及び負極ガスケット19が配置されている。正極ガスケット18及び負極ガスケット19を配置することで、角型二次電池100の気密性を維持できる。
封口板10には制御弁11(安全弁)が配置されている。水系溶媒の電気分解により発生したガスに起因して電池セルにおける内圧が高まった場合には、制御弁11から発生ガスを外部へと放散できる。制御弁11としては、例えば内圧が設定値よりも高くなった場合に作動し、内圧が低下すると封止栓として機能する復帰式のものを使用することができる。或いは、一度作動すると封止栓としての機能が回復しない非復帰式の制御弁を使用してもよい。図1では、制御弁11が封口板10の中央に配置されているが、制御弁11の位置は封口板10の端部であってもよい。制御弁11は省略してもよい。
また、封口板10には注液口12が設けられている。水系電解質は、この注液口12を介して注液され得る。注液口12は、水系電解質が注液された後、封止栓13により塞がれ得る。注液口12及び封止栓13は省略してもよい。
図3は、第1の実施形態に係る二次電池の他の例を概略的に示す部分切欠斜視図である。図4は、図3に示す二次電池のB部を拡大した断面図である。図3及び図4は、容器として、ラミネートフィルム製外装部材を用いた二次電池100の一例を示している。
図3及び図4に示す二次電池100は、図3及び図4に示す電極群1と、図3に示す外装部材2と、図示しない水系電解質とを具備する。電極群1及び水系電解質は、外装部材2内に収納されている。水系電解質は、電極群1に保持されている。
外装部材2は、2つの樹脂層とこれらの間に介在した金属層とを含むラミネートフィルムからなる。
電極群1は、図4に示すように、積層型の電極群である。積層型の電極群1は、負極3と正極5とをその間にセパレータ4を介在させながら交互に積層した構造を有している。
電極群1は、複数の負極3を含んでいる。複数の負極3は、それぞれが、負極集電体3aと、負極集電体3aの両面に担持された負極活物質含有層3bとを備えている。また、電極群1は、複数の正極5を含んでいる。複数の正極5は、それぞれが、正極集電体5aと、正極集電体5aの両面に担持された正極活物質含有層5bとを備えている。
各負極3の負極集電体3aは、その一辺において、いずれの表面にも負極活物質含有層3bが担持されていない部分を含む。この部分、即ち負極タブ部3cは、負極集電タブとして働く。図4に示すように、負極タブ部3cは、正極5と重なっていない。また、複数の負極タブ部3cは、帯状の負極端子6に電気的に接続されている。帯状の負極端子6の先端は、外装部材2の外部に引き出されている。
また、図示しないが、各正極5の正極集電体5aは、その一辺において、いずれの表面にも正極活物質含有層5bが担持されていない部分を含む。この部分は、正極集電タブとして働く。正極集電タブは、負極集電タブ(負極タブ部3c)と同様に、負極3と重なっていない。また、正極集電タブは、負極集電タブ(負極タブ部3c)に対し電極群1の反対側に位置する。正極集電タブは、帯状の正極端子7に電気的に接続されている。帯状の正極端子7の先端は、負極端子6とは反対側に位置し、外装部材2の外部に引き出されている。
図5は、実施形態に係る二次電池の更に他の例を概略的に示す断面図である。
図5に示す二次電池100は、負極3、正極5、セパレータ4、第1水系電解質8、第2水系電解質9、及び外装部材2を具備している。負極3は、負極集電体3aと、負極集電体3aの両面の一部に設けられた負極活物質含有層3bとを含んでいる。負極集電体3aは、負極活物質含有層3bで被覆されていない負極タブ部3cを含んでいる。正極5は、正極集電体5aと、正極集電体5aの両面の一部に設けられた正極活物質含有層5bとを含んでいる。正極集電体5aは、正極活物質含有層5bで被覆されていない正極タブ部5cを含んでいる。
負極3は、負極タブ部3cが外部に突出した状態で外装部材2に収容されている。正極5は、正極タブ部5cが外部に突出した状態で外装部材2に収容されている。第1水系電解質8は、その少なくとも一部が負極3と接するように外装部材2に収容されている。第2水系電解質9は、その少なくとも一部が正極5と接するように外装部材2に収容されている。
図5では一例として、第1水系電解質8が水溶性有機溶媒を含み、第2水系電解質9が水溶性有機溶媒を含んでいない例を示している。また、図5では、第1水系電解質8及び第2水系電解質9が液体の場合を示している。
セパレータ4は、図5に示すように、外装部材2の内部から外部に向かって延出していてもよく、外装部材2の内部に備えられていても良い。この例では、セパレータ4は、イオン交換膜または固体電解質である。
第1の実施形態に係る二次電池は、上述した水系電解質を備えている。この水系電解質を用いることにより、水の電気分解を抑制できる。したがって、優れた充放電性能および優れたサイクル性能を示すことができる。
[第2の実施形態]
第2の実施形態によると、組電池が提供される。第2の実施形態に係る組電池は、第1の実施形態に係る二次電池を複数個具備している。
第2の実施形態に係る組電池において、各単電池は、電気的に直列若しくは並列に接続して配置してもよく、又は直列接続及び並列接続を組み合わせて配置してもよい。
次に、第2の実施形態に係る組電池の一例について、図面を参照しながら説明する。
図6は、第2の実施形態に係る組電池の一例を概略的に示す斜視図である。図6に示す組電池200は、5つの単電池100a〜100eと、4つのバスバー21と、正極側リード22と、負極側リード23とを具備している。5つの単電池100a〜100eのそれぞれは、第1の実施形態に係る二次電池である。
バスバー21は、例えば、1つの単電池100aの負極端子6と、隣に位置する単電池100bの正極端子7とを接続している。このようにして、5つの単電池100は、4つのバスバー21により直列に接続されている。すなわち、図6の組電池200は、5直列の組電池である。
図6に示すように、5つの単電池100a〜100eのうち、左端に位置する単電池100aの正極端子7は、外部接続用の正極側リード22に接続されている。また、5つの単電池100a〜100eのうち、右端に位置する単電池100eの負極端子6は、外部接続用の負極側リード23に接続されている。
第2の実施形態に係る組電池は、第1の実施形態に係る二次電池を具備する。したがって、第2の実施形態に係る組電池は、優れた充放電性能および優れたサイクル性能を示すことができる。
[第3の実施形態]
第3の実施形態によると、電池パックが提供される。この電池パックは、第2の実施形態に係る組電池を具備している。この電池パックは、第2の実施形態に係る組電池の代わりに、単一の第1の実施形態に係る二次電池を具備していてもよい。
第3の実施形態に係る電池パックは、保護回路を更に具備することができる。保護回路は、二次電池の充放電を制御する機能を有する。或いは、電池パックを電源として使用する装置(例えば、電子機器、自動車等)に含まれる回路を、電池パックの保護回路として使用してもよい。
また、第3の実施形態に係る電池パックは、通電用の外部端子を更に具備することもできる。通電用の外部端子は、外部に二次電池からの電流を出力するため、及び/又は二次電池に外部からの電流を入力するためのものである。言い換えれば、電池パックを電源として使用する際、電流が通電用の外部端子を通して外部に供給される。また、電池パックを充電する際、充電電流(自動車などの動力の回生エネルギーを含む)は通電用の外部端子を通して電池パックに供給される。
次に、第3の実施形態に係る電池パックの一例について、図面を参照しながら説明する。
図7は、第3の実施形態に係る電池パックの一例を概略的に示す分解斜視図である。図8は、図7に示す電池パックの電気回路の一例を示すブロック図である。
図7及び図8に示す電池パック300は、収容容器31と、蓋32と、保護シート33と、組電池200と、プリント配線基板34と、配線35と、図示しない絶縁板とを備えている。
図7に示す収容容器31は、長方形の底面を有する有底角型容器である。収容容器31は、保護シート33と、組電池200と、プリント配線基板34と、配線35とを収容可能に構成されている。蓋32は、矩形型の形状を有する。蓋32は、収容容器31を覆うことにより、上記組電池200等を収容する。収容容器31及び蓋32には、図示していないが、外部機器等へと接続するための開口部又は接続端子等が設けられている。
組電池200は、複数の単電池100と、正極側リード22と、負極側リード23と、粘着テープ24とを備えている。
複数の単電池100の少なくとも1つは、第1の実施形態に係る二次電池である。複数の単電池100は、外部に延出した負極端子6及び正極端子7が同じ向きになるように揃えて積層されている。複数の単電池100の各々は、図8に示すように電気的に直列に接続されている。複数の単電池100は、電気的に並列に接続されていてもよく、直列接続及び並列接続を組み合わせて接続されていてもよい。複数の単電池100を並列接続すると、直列接続した場合と比較して、電池容量が増大する。
粘着テープ24は、複数の単電池100を締結している。粘着テープ24の代わりに、熱収縮テープを用いて複数の単電池100を固定してもよい。この場合、組電池200の両側面に保護シート33を配置し、熱収縮テープを周回させた後、熱収縮テープを熱収縮させて複数の単電池100を結束させる。
正極側リード22の一端は、単電池100の積層体において、最下層に位置する単電池100の正極端子7に接続されている。負極側リード23の一端は、単電池100の積層体において、最上層に位置する単電池100の負極端子6に接続されている。
プリント配線基板34は、収容容器31の内側面のうち、一方の短辺方向の面に沿って設置されている。プリント配線基板34は、正極側コネクタ341と、負極側コネクタ342と、サーミスタ343と、保護回路344と、配線345及び346と、通電用の外部端子347と、プラス側配線348aと、マイナス側配線348bとを備えている。プリント配線基板34の一方の主面は、組電池200において負極端子6及び正極端子7が延出する面と向き合っている。プリント配線基板34と組電池200との間には、図示しない絶縁板が介在している。
正極側コネクタ341には、貫通孔が設けられている。この貫通孔に、正極側リード22の他端が挿入されることにより、正極側コネクタ341と正極側リード22とは電気的に接続される。負極側コネクタ342には、貫通孔が設けられている。この貫通孔に、負極側リード23の他端が挿入されることにより、負極側コネクタ342と負極側リード23とは電気的に接続される。
サーミスタ343は、プリント配線基板34の一方の主面に固定されている。サーミスタ343は、単電池100の各々の温度を検出し、その検出信号を保護回路344に送信する。
通電用の外部端子347は、プリント配線基板34の他方の主面に固定されている。通電用の外部端子347は、電池パック300の外部に存在する機器と電気的に接続されている。
保護回路344は、プリント配線基板34の他方の主面に固定されている。保護回路344は、プラス側配線348aを介して通電用の外部端子347と接続されている。保護回路344は、マイナス側配線348bを介して通電用の外部端子347と接続されている。また、保護回路344は、配線345を介して正極側コネクタ341に電気的に接続されている。保護回路344は、配線346を介して負極側コネクタ342に電気的に接続されている。更に、保護回路344は、複数の単電池100の各々と配線35を介して電気的に接続されている。
保護シート33は、収容容器31の長辺方向の両方の内側面と、組電池200を介してプリント配線基板34と向き合う短辺方向の内側面とに配置されている。保護シート33は、例えば、樹脂又はゴムからなる。
保護回路344は、複数の単電池100の充放電を制御する。また、保護回路344は、サーミスタ343から送信される検出信号、又は、個々の単電池100若しくは組電池200から送信される検出信号に基づいて、保護回路344と通電用の外部端子347との電気的な接続を遮断する。
サーミスタ343から送信される検出信号としては、例えば、単電池100の温度が所定の温度以上であることを検出した信号を挙げることができる。個々の単電池100若しくは組電池200から送信される検出信号としては、例えば、単電池100の過充電、過放電及び過電流を検出した信号を挙げることができる。個々の単電池100について過充電等を検出する場合、電池電圧を検出してもよく、正極電位又は負極電位を検出してもよい。後者の場合、参照極として用いるリチウム電極を個々の単電池100に挿入する。
なお、保護回路344としては、電池パック300を電源として使用する装置(例えば、電子機器、自動車等)に含まれる回路を用いてもよい。
また、この電池パック300は、上述したように通電用の外部端子347を備えている。したがって、この電池パック300は、通電用の外部端子347を介して、組電池200からの電流を外部機器に出力するとともに、外部機器からの電流を、組電池200に入力することができる。言い換えると、電池パック300を電源として使用する際には、組電池200からの電流が、通電用の外部端子347を通して外部機器に供給される。また、電池パック300を充電する際には、外部機器からの充電電流が、通電用の外部端子347を通して電池パック300に供給される。この電池パック300を車載用電池として用いた場合、外部機器からの充電電流として、車両の動力の回生エネルギーを用いることができる。
なお、電池パック300は、複数の組電池200を備えていてもよい。この場合、複数の組電池200は、直列に接続されてもよく、並列に接続されてもよく、直列接続及び並列接続を組み合わせて接続されてもよい。また、プリント配線基板34及び配線35は省略してもよい。この場合、正極側リード22及び負極側リード23を通電用の外部端子として用いてもよい。
このような電池パックは、例えば大電流を取り出したときにサイクル性能が優れていることが要求される用途に用いられる。この電池パックは、具体的には、電子機器の電源、定置用電池、及び各種車両の車載用電池として用いられる。電子機器としては、例えば、デジタルカメラを挙げることができる。この電池パックは、車載用電池として特に好適に用いられる。
第3の実施形態に係る電池パックは、第1の実施形態に係る二次電池又は第2の実施形態に係る組電池を備えている。したがって、第3の実施形態に係る電池パックは、優れた充放電性能および優れたサイクル性能を示すことができる。
[第4の実施形態]
第4の実施形態によると、車両が提供される。この車両は、第3の実施形態に係る電池パックを搭載している。
第4の実施形態に係る車両において、電池パックは、例えば、車両の動力の回生エネルギーを回収するものである。第4の実施形態に係る車両は、車両の運動エネルギーを回生エネルギーに変換する機構を含む。
第4の実施形態に係る車両の例としては、例えば、二輪乃至四輪のハイブリッド電気自動車、二輪乃至四輪の電気自動車、アシスト自転車、及び鉄道用車両が挙げられる。
第4の実施形態に係る車両における電池パックの搭載位置は、特には限定されない。例えば、電池パックを自動車に搭載する場合、電池パックは、車両のエンジンルーム、車体後方又は座席の下に搭載することができる。
第4の実施形態に係る車両は、複数の電池パックを搭載してもよい。この場合、電池パックは、電気的に直列に接続されてもよく、電気的に並列に接続されてもよく、直列接続及び並列接続を組み合わせて電気的に接続されてもよい。
次に、第4の実施形態に係る車両の一例について、図面を参照しながら説明する。
図9は、第4の実施形態に係る車両の一例を概略的に示す断面図である。
図9に示す車両400は、車両本体40と、第3の実施形態に係る電池パック300とを含んでいる。図9に示す例では、車両400は、四輪の自動車である。
この車両400は、複数の電池パック300を搭載してもよい。この場合、電池パック300は、直列に接続されてもよく、並列に接続されてもよく、直列接続及び並列接続を組み合わせて接続されてもよい。
図9では、電池パック300が車両本体40の前方に位置するエンジンルーム内に搭載されている例を図示している。上述したとおり、電池パック300は、例えば、車両本体40の後方又は座席の下に搭載してもよい。この電池パック300は、車両400の電源として用いることができる。また、この電池パック300は、車両400の動力の回生エネルギーを回収することができる。
第4の実施形態に係る車両は、第3の実施形態に係る電池パックを搭載している。したがって、電池パックが優れた充放電性能を示せるため、高性能な車両を得ることができる。また、電池パックが優れたサイクル性能を示せるため、車両の信頼性が高い。
[第5の実施形態]
第5の実施形態によると、定置用電源が提供される。この定置用電源は、第3の実施形態に係る電池パックを搭載している。なお、この定置用電源は、第3の実施形態に係る電池パックの代わりに、第2の実施形態に係る組電池又は第1の実施形態に係る二次電池を搭載していてもよい。
第5の実施形態に係る定置用電源は、第3の実施形態に係る電池パックを搭載している。したがって、第5の実施形態に係る定置用電源は、優れた充放電性能および優れたサイクル性能を示すことができる。
図10は、第5の実施形態に係る定置用電源を含むシステムの一例を示すブロック図である。図10は、第3の実施形態に係る電池パック300A、300Bの使用例として、定置用電源112、123への適用例を示す図である。図10に示す一例では、定置用電源112,123が用いられるシステム110が示される。システム110は、発電所111、定置用電源112、需要家側電力系統113及びエネルギー管理システム(EMS)115を備える。また、システム110には、電力網116及び通信網117が形成され、発電所111、定置用電源112、需要家側電力系統113及びEMS115は、電力網116及び通信網117を介して、接続される。EMS115は、電力網116及び通信網117を活用して、システム110全体を安定化させる制御を行う。
発電所111は、火力及び原子力等の燃料源によって、大容量の電力を生成する。発電所111からは、電力網116等を通して電力が供給される。また、定置用電源112には、電池パック300Aが搭載される。電池パック300Aは、発電所111から供給される電力等を蓄電できる。また、定置用電源112は、電池パック300Aに蓄電された電力を、電力網116等を通して供給できる。システム110には、電力変換装置118が設けられる。電力変換装置118は、コンバータ、インバータ及び変圧器等を含む。したがって、電力変換装置118は、直流と交流との間の変換、互いに対して周波数が異なる交流の間の変換、及び、変圧(昇圧及び降圧)等を行うことができる。このため、電力変換装置118は、発電所111からの電力を、電池パック300Aへ蓄電可能な電力に変換できる。
需要家側電力系統113には、工場用の電力系統、ビル用の電力系統、及び、家庭用の電力系統等が、含まれる。需要家側電力系統113は、需要家側EMS121、電力変換装置122及び定置用電源123を備える。定置用電源123には、電池パック300Bが搭載される。需要家側EMS121は、需要家側電力系統113を安定化させる制御を行う。
需要家側電力系統113には、発電所111からの電力、及び、電池パック300Aからの電力が、電力網116を通して供給される。電池パック300Bは、需要家側電力系統113に供給された電力を蓄電できる。また、電力変換装置122は、電力変換装置118と同様に、コンバータ、インバータ及び変圧器等を含む。したがって、電力変換装置122は、直流と交流との間の変換、互いに対して周波数が異なる交流の間の変換、及び、変圧(昇圧及び降圧)等を行うことができる。このため、電力変換装置122は、需要家側電力系統113に供給された電力を、電池パック300Bへ蓄電可能な電力に変換できる。
なお、電池パック300Bに蓄電された電力は、例えば、電気自動車等の車両の充電等に用いることができる。また、システム110には、自然エネルギー源が設けられてもよい。この場合、自然エネルギー源は、風力及び太陽光等の自然エネルギーによって、電力を生成する。そして、発電所111に加えて自然エネルギー源からも、電力網116を通して、電力が供給される。
[実施例]
以下に実施例を説明するが、実施形態は、以下に記載される実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
<正極の作製>
以下のようにして正極を作製した。
プラスチック製軟膏容器に、正極活物質としてLiMn2O4(5.0g)、導電剤としてアセチレンブラック(0.25g)、及び、結着剤(バインダー樹脂)としてPVDF分散液(固形分率8%のNMP溶液, 6.25g)を入れた。この混合物を、混練機(シンキー社製 練太郎 ARV−310)を用いて3分間混合して、黒色の粘稠性スラリーを得た。このスラリーを、ギャップ厚が180μmのアプリケーターにカプトン(Du Pont社の登録商標)テープを貼ったものを用いて、厚さ20μmのTi箔の片面上に塗布した。その後、120℃のホットプレート上で溶媒を留去して積層体を得た。次いで、この積層体を、小型ロールプレスを用いて、初期荷重10kN/cm2、延伸速度0.5mm/secで圧延した。その後、この積層体を120℃の真空オーブン中で16時間に亘り乾燥させた後、直径10mmの円形に打ち抜いた。得られた正極の目付は、116g/m2であった。
<負極の作製>
以下にようにして負極を作製した。
プラスチック製軟膏容器に、負極活物質としてLi4Ti5O12(10.0g)、導電剤としてグラファイト(1.0)g、結着剤(バインダー樹脂)としてPTFE分散液(固形分40重量%, 1.0g)、及び、NMP(N−メチル−2−ピロリドン)8.0gを入れた。この混合物を、混練機(練太郎 ARV−310)を用いて3分間混合して、灰色のスラリーを得た。このスラリーを、ギャップ厚が120μmのアプリケーターを用いて、厚さ50μmのZn箔の片面上に塗布した。その後、120℃のホットプレート上で溶媒を留去して積層体を得た。次いで、この積層体を、小型ロールプレスを用いて、初期荷重14kN/cm2、挿引速度0.5mm/secで圧延した。その後、この積層体を120℃の真空オーブン中で3時間乾燥させた後、直径10mmの円形に打ち抜いた。得られた負極の目付は、35g/m2であった。
<電解液の調製>
磁気撹拌子を入れたビーカー(500mL)に、純水300mLを入れた。純水を撹拌しながら、ここに254.3g(6mol)の塩化リチウムを少しずつ添加すると、穏やかな発熱を伴って完全に溶解した。この溶液をメスフラスコ(500mL)に移し、純水を標線まで添加することで、12mol/Lの塩化リチウム溶液を得た。この塩化リチウム12mol/L水溶液180mLに、10.2g(0.24mol)の塩化リチウム及び8.39g(0.20mol)の水酸化リチウム一水和物を入れ、良く撹拌することで均一な溶液を得た。得られた溶液とN-メチル-2-ピロリドンを、体積比率9対1で混合することで、比較例1の電解液を得た。比較例1の電解液(9.9g)に、第1化合物として化合物A(0.1g)を添加することで、実施例1の電解液(第1水系電解質)を得た。
<試験用電池の作製>
プラスチック板上に、陽極酸化処理されたアルミニウム板を固定し、その上に負極を固定した。別のプラスチック板上にTi板を固定し、その上に正極を固定した。負極の上に、先に作製した電解液を滴下し、その上にLATP(Li1.3Al0.3Ti1.7(PO4)3)固体電解質膜を置き、密着させた。負極上に滴下した電解液の量は、化合物Aの量が0.0025gになるよう調整した。同じLATP膜の逆側に、第2水系電解質として12mol/Lの塩化リチウム水溶液を滴下し、その上から正極を置いて密着させ、さらにねじで固定した。
上記のとおり作製した試験用電池では、亜鉛集電体に対する第1化合物Aの含有量は、重量比率で9×104ppmだった。そして、負極活物質(LTO)に対する第1化合物Aの含有量は、重量比率で83×104ppmだった。
(実施例2)
第一化合物として化合物Aに代え、化合物B(0.1g)を添加したことを除いて、実施例1において記載したのと同様の方法により試験用電池を作製した。
(実施例3)
第一化合物として化合物Aに代え、化合物C(0.1g)を添加したことを除いて、実施例1において記載したのと同様の方法により試験用電池を作製した。
(実施例5)
第一化合物として化合物Aに代え、化合物E(0.1g)を添加したことを除いて、実施例1において記載したのと同様の方法により試験用電池を作製した。
(実施例6)
第一化合物として化合物Aに代え、化合物E(0.01g)を添加したことを除いて、実施例1において記載したのと同様の方法により試験用電池を作製した。
(実施例7)
第1化合物としての化合物Aの添加量を0.02gに変更したことを除いて、実施例1において記載したのと同様の方法により試験用電池を作製した。
(実施例8)
第1化合物として化合物Aに代え、化合物F(0.1g)を添加したことを除いて、実施例1において記載したのと同様の方法により試験用電池を作製した。
(実施例9)
第1化合物として化合物Aに代え、化合物F(0.05g)を添加したことを除いて、実施例1において記載したのと同様の方法により試験用電池を作製した。
(比較例1)
第1化合物を添加しなかったことを除いて、実施例1において記載したのと同様の方法により試験用電池を作製した。
(比較例2)
第1化合物としての化合物Aの添加量を0.001gに変更したことを除いて、実施例1において記載したのと同様の方法により試験用電池を作製した。
各実施例および各比較例にて用いた第1化合物の詳細を表4にまとめる。表4には、第1化合物の添加量、HLB値、分子式、及び分子量を示す。なお、比較例1では第1化合物を添加しなかったため、第1化合物の添加量、HLB値、分子式、分子量については適用不可(Not Applicable)として、N/Aと表記する。
表4に示す分子量は、先に説明した方法で求めた分子量である。分子式中のオキシアルキレン基中の各アルキレンオキシドユニットの量論比を表す添字m及びnについては、先に説明した方法に基づく値を表4に示す。
<電解液の界面張力および接触角測定>
各実施例および各比較例において調製した電解液(負極側の水系電解質)について、先に説明したとおり電解液の界面張力を求めた。測定は5回行い、平均値を算出した。
また、それぞれの電解液について、液滴法により亜鉛箔上の接触角および負極電極上の接触角を測定した。
<定電流充放電試験>
各実施例および各比較例について、試験用電池作製後、待機時間無しで速やかに試験を開始した。充電及び放電のいずれも0.5Cレートで行った。また、充電時は、電流値が0.25Cになるまで、充電時間が132分間になるまで、充電容量が170mAh/gになるまで、のいずれか早いものを終止条件とした。放電時は132分後を終止条件とした。
上記充電を1回行い上記放電を1回行うことを充放電の1サイクルとし、充放電を20サイクル繰り返した。各充放電サイクルにおける充電容量および放電容量をそれぞれ測定した。得られた結果から、下記式(2)に従って充放電効率をサイクル毎に算出した。
ただし、比較例1で作製した試験用電池については、6サイクル目までは安定に充放電できたものの、その後は動作が停止した。そのため、その時点で試験を中断した。
各実施例および各比較例について、調製した電解液の測定結果、並びに作製した試験用電池の評価結果を表5にまとめる。電解液については、界面張力、亜鉛箔上の接触角、及びLTO負極(実施例1と同様に作製した負極)上の接触角を示す。評価結果については、動作が停止するまでに充放電できたサイクル数、充放電のサイクル安定性、及び充放電効率を示す。なお、実施例1〜3及び5〜6では、34回目の充放電サイクル後も動作が停止しなかった。そのため、充放電できたサイクル数は34より多いと表記している。サイクル安定性については、20サイクル以上安定に充放電動作した場合を○、それ以前に動作が停止した場合を×としている。充放電効率は、1サイクル目から20サイクル目までの平均値を示す。ただし、20サイクル目より前に動作が停止した試験用電池については、安定に動作した充放電サイクルにおける平均値をそれぞれ示す。
表6には、各実施例および各比較例について、1サイクル目から20サイクル目までの各サイクルにおける充放電効率の値を示している。表6の内容をグラフとして図11に示す。図11のグラフでは、横軸をサイクル数、縦軸を充放電効率として、各実施例および各比較例1〜2に係る充放電効率を示している。
表5及び表6から明らかなように、水系電解質の界面張力が34mN/m以下にある実施例1〜3及び5〜7では、サイクル性能、及び充放電効率が優れていた。これらの結果から、各実施例では水の電気分解反応が抑制されて負極活物質へのキャリア(リチウムイオン)の挿入および脱離が効率的に行われたと推測できる。
実施例8及び9についても、水系電解質の界面張力が37mN/m以下だった。これらの実施例においても、サイクル性能および充放電効率が優れており、実施例1〜3及び5〜7と同様の効果が得られたことがわかる。
これに対し、比較例1では充放電を6サイクル行った後動作が停止し、サイクル安定性が低かった。また、比較例2では充放電を2サイクル行ったあと動作が停止し、サイクル安定性が低かった。電解液中の水の電気分解反応が起こり、水素発生などに起因して充放電ができなくなったと推察される。また、充放電効率も低かった。これは、水の電気分解反応と負極活物質へのキャリアの挿入・脱離反応とが競合したためと推察される。
以上述べた少なくとも1つの実施形態および少なくとも1つの実施例によれば、正極と、負極と、水系電解質とを含む二次電池が提供される。負極は、チタン含有酸化物を含む。水系電解質は、水および水溶性有機溶媒を含んだ溶媒とアルカリ金属イオン又はアルカリ土類金属イオンとを含み、37mN/m以下の界面張力を示す。このような構成により、二次電池は、優れた充放電性能および優れたサイクル性能を示すことができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。