以下、実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、実施の形態を通して共通の構成には同一の符号を付すものとし、重複する説明は省略する。また、各図は実施の形態の説明とその理解を促すための模式図であり、その形状や寸法、比などは実際の装置と異なる個所があるが、これらは以下の説明と公知の技術とを参酌して、適宜設計変更することができる。
(第1の実施形態)
非水系二次電池の課題を解決させるために、電解質の水溶液化の検討がなされている。水溶液電解質では、電池の充放電を実施する電位範囲を、溶媒として含まれている水の電気分解反応が起こらない電位範囲に留める必要がある。例えば、正極活物質としてリチウムマンガン酸化物および負極活物質としてリチウムバナジウム酸化物を用いることで、水溶媒の電気分解を回避できる。これらの組み合わせでは、1〜1.5V程度の起電力が得られるものの、電池として十分なエネルギー密度が得られにくい。
正極活物質にリチウムマンガン酸化物、負極活物質としてLiTi2O4、Li4Ti5O12などといったリチウムチタン酸化物を用いると、理論的には2.6〜2.7V程度の起電力が得られ、エネルギー密度の観点からも魅力的な電池になりうる。このような正負極材料の組み合わせを採用した非水系のリチウムイオン電池では優れた寿命性能が得られ、このような電池は既に実用化されている。しかしながら、水溶液電解質においては、リチウムチタン酸化物のリチウム挿入脱離の電位は、リチウム電位基準にて約1.5V(vs.Li/Li+)であるため、水溶液電解質の電気分解が起こりやすい。特に負極においても、負極集電体、或いは負極と電気的に接続されている金属製の外装缶の表面での電気分解による水素発生が激しく、その影響で集電体から活物質が容易に剥離し得る。そのため、このような電池では動作が安定せず、満足な充放電が不可能であった。
先行技術では、集電体に亜鉛を含ませることで十分なエネルギー密度を有し、充放電効率および寿命性能に優れ、且つ安価で安全性の高いリチウム二次電池を提供することができたが、充放電効率と貯蔵性能の点については改良の余地があった。
発明者らは、この課題を解決すべく鋭意研究した結果、第1の実施形態に係る二次電池を発明した。
第1の実施形態に係る二次電池は、水系電解質と、正極と、Ti含有複合酸化物を含む負極活物質を備える負極と、を備え、負極の表面にHg、Pb、Zn及びBiからなる群れより選ばれる少なくとも1種の元素Aが存在し、負極の表面を走査型電子顕微鏡法‐エネルギー分散型X線分光法(Scanning Electron Microscopy‐Energy Dispersive X-ray Spectroscopy;SEM−EDS)で複数測定して得られる元素Aのmol量とTiのmol量との合計量に対する元素Aのmol比率(A/(A+Ti))の平均が5%以上40%以下である。
負極は集電体と前記集電体の上に配置される負極活物質を含む負極活物質層を備える。負極活物質層にはTi含有複合酸化物を含む負極活物質が含まる。この負極の表面に元素Aは、元素Aを含む化合物として存在する。元素Aを含む化合物とは、元素Aの金属単体、酸化物、塩化物、硝酸塩、硫酸塩、または水酸化物のうち少なくとも1種を形成し、これが表面に析出する。ここでは便宜上金属単体も化合物と称する。負極活物質層の集電体とは反対側の表面に露出している負極活物質、負極の導電助剤、バインダーの表面上に元素Aを含む化合物は存在することになる。このとき元素Aを含む化合物は物理的に存在する。元素Aを含む化合物は、交換電流密度が小さく、高い水素発生過電圧を有する。そのため、負極において水素発生を抑制することができる。
図1は、第1の実施形態における負極表面を300倍で測定したSEM(Scanning Electron Microscopy:走査電子顕微鏡)画像、図2は、第2の実施形態における負極表面を1000倍で測定したSEM画像である。負極の表面などに存在する元素Aを含む化合物は、図1で白く示され、負極の表面は黒く示されるように、負極の表面に部分的に存在する。部分的に存在することで、負極の表面を完全に覆うことなく、元素Aを含む化合物の存在量を増やすことができる。そのため、負極表面に元素Aを含む化合物が存在することで生じる抵抗を抑制しながら、負極における水素発生を抑制することができる。また、元素Aの種類や処理条件により、図2で示されるように、針状に存在する場合がある。元素Aを含む化合物が針状に存在する場合も前述と同様に負極の表面において元素Aを含む化合物が存在する部分と、元素Aを含む化合物が存在しない部分がある。そのため、本実施形態に係る二次電池の負極の表面での元素AとTiのmol比率は5%以上40%以下となる。
このように、負極の表面での元素AとTiのmol比率が5%以上40%以下となる領域を含むことで、負極からの水素発生を抑制でき、集電体と活物質の結着性を向上させ、電子伝導のパスを増やすことができる。このことからサイクル特性の向上と、低抵抗化が可能である。そのため、充放電効率と貯蔵性能を向上させることができる。
さらに、元素Aを含む化合物が針状に存在している場合、針状に存在している部分に関しても、負極と電解質が接することができる部分ができると考えられる。そのため、元素Aを含む化合物を針状に存在させたほうが、サイクル特性の向上と、低抵抗化が可能である。そのため、充放電効率と貯蔵性能を向上させることができる。
また、元素Aのmol比率が10%以上20%以下の領域を含むと、より好ましい。これは、負極活物質、バインダー、導電助剤、集電体どうしの密着性が向上し、負極の集電体からの剥離を抑制することができることに加え、電極内での抵抗が均一になるため、局所的な発熱とそれに伴う局所的な劣化等を防ぐことができるため、サイクル特性をさらに向上させることができる。また、上記の範囲で元素Aを含む化合物が負極活物質、導電助剤、集電体上に存在することにより、水素発生の原因となる負極活物質と電解質の接触を減らすことができ、それにより充放電効率、貯蔵性能が向上する。上記範囲においては、リチウムまたはナトリウム伝導を阻害することなく元素Aを含む化合物を存在させることができるため、レート特性を向上させることができる。
mol比率(A/(A+Ti))が5%以上40%以下の範囲に入らない場合、5%未満においては、負極からの水素発生を抑制できないため貯蔵性能が良くならず、40%を超えると元素Aを含む化合物の被覆によりリチウムの挿入脱離が阻害され、抵抗が大きく上昇し、レート特性が低下するため、好ましくない。
今まで負極表面における元素Aを含む化合物の存在について述べたが、負極内部の負極活物質、導電助剤、バインダーの表面にも同様に存在させることもできる。内部においても存在させることができることで、電極内部からの水素発生も抑制することができる。そのため、水素発生による電極の剥離や割れによる導電パスの減少防ぐことができ、サイクル特性を向上させることができる。
元素Aを含む化合物は例えば、製造時に負極表面に析出により形成することができる。さらに負極の表面の存在の状態や、表面の存在量は、主に、初回充電時のレートと、電解質の組成、サイクル数が重要である。また、電解質に含まれる金属量も重要であり、電解質中の元素Aの濃度も金属被覆を行う際に重要なパラメータとなる。電解質中に元素Aを添加せず、例えば元素Aを含む化合物を集電体として用いる際は、電池を組み立ててから初回充放電を行うまでの時間により、電解質中の元素Aの量をコントロールすることができる。
ここで、元素Aを含む化合物が表面に析出される流れを説明する。
元素Aが負極集電体に含まれる二次電池を組み立てる。この際、元素Aは電解質中に溶出する。組み立てた二次電池の初回充放電を行うまでの時間を制御することにより、電解質に溶出した元素Aが、充電反応時において負極活物質などの表面に析出する。析出する元素Aは、充電反応により元素Aを含む化合物を形成し、これが負極表面に析出する。本実施形態に係る二次電池は、待機時間を長く、初期充放電レートを高く設定することで、負極表面に元素Aを含む化合物を析出させることができる。また電解質に元素Aを含ませた場合についても、同様に充電反応により元素Aを含む化合物を形成し、これを負極表面に析出させることができる。また、簡便な方法として例えば、電解質中に界面活性剤を添加することをあげることができる。界面活性剤を添加することで、表面形状制御と被膜物性制御をすることができる。表面形状制御では、界面活性剤のめっき表面への析出による促進作用、あるいは電気消耗により元素Aを含む化合物の析出反応を促進することができる。被膜物性制御により、メッキ皮膜の硬さや電気伝導性を変化させることができる。界面活性剤については後述する。
本実施形態に係る二次電池は、元素Aを含むことにより、負極表面に元素Aを含む化合物を存在させることができるため、負極集電体からの負極活物質の剥離を抑制できる。さらに、元素Aを含む化合物が負極の表面をすべて覆わないことにより、元素Aを含む化合物が存在することにより生じる抵抗を抑えることができる。その結果、リチウム電位基準にて1.5V(vs.Li/Li+)付近においても、水系溶媒中でのチタン酸化物、リチウムチタン酸化物、リチウムチタン複合酸化物への充放電が可能となる。元素Aは二次電池において、例えば集電体や電解質、負極に含ませることができる。
ここで、元素AとTiのmol比率の測定方法を説明する。
まず、二次電池を分解する。例えば、初回充電を実施済みの二次電池を放電した後、この電池を解体して負極を取り出す。取り出した負極を純水で30分間洗浄した後、80℃の温度環境下で24時間真空乾燥させる。乾燥後、温度を25℃に戻し、負極を取り出す。
このようにして取り出した負極において、EDSの測定を4mm×4mmの視野で、無作為に10ヶ所行い、元素AとTiのmol比率(A/(A+Ti))を導出する。測定の際、それぞれのEDSのピーク強度比と面積比率から元素Aのmol比率を求める。そして、10か所のうち元素Aのmol比率がもっとも低い視野を、さらに0.2mm×0.2mmの視野で400枚に分割する。この400枚の視野において更にEDS測定を前述のピークを用いて行い、元素Aのmol比率が高い20%と、低い20%を無視した、残り60%の視野における元素Aのmol比率の平均より、元素AとTiのmol比率を算出することができる。このmol比率を、調べた負極における元素AとTiのmol比率(A/(A+Ti))とする。
また、400枚の視野に分割後に測定されるmol比率(A/(A+Ti))における最大値と最小値の差が3%以上であると好ましい。最小値と比較して少なくても3%以上元素Aが存在していることは、電極面積の大半に元素Aが十分に存在していることを意味し、自己放電率が大きく改善するためである。
元素Aのmol比率が大きいほど、負極の表面に存在する元素Aが多いことを示すので、元素Aを含む化合物の負極の表面における存在量と置き換えることもできる。
なお、今まで負極表面における元素Aを含む化合物の存在を説明してきたが、元素Aを含む化合物は負極集電体上にも存在することができる。詳しくは後述する。
第1の実施例に係る二次電池において用いることができる各部材の材料について詳しく説明する。
1)負極
負極は、負極集電体と、負極集電体上に配置されている負極活物質層とを含む。負極活物質層は、負極集電体の少なくとも1つの面上に配置されている。例えば、負極集電体上の1つの面に負極活物質層が配置されていてもよく、または負極集電体上の1つの面とその裏面とに負極活物質層が配置されていてもよい。
負極活物質層は、チタン酸化物、リチウムチタン酸化物、およびリチウムチタン複合酸化物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物を含む負極活物質を含む。これら酸化物は1種類で用いることもできるし、複数種類を用いても良い。これらの酸化物では、リチウム電位基準にて1V以上2V以下(vs.Li/Li+)の範囲内でLi挿入脱離反応が起こる。そのため、二次電池の負極活物質としてこれらの酸化物を用いた場合には、充放電に伴う体積膨張収縮変化が小さいことから長寿命を実現することができる。
負極集電体には、Zn、Ga、In、Bi、Tl、Sn、Pb、Ti、Alから選ばれる少なくとも1種の元素を集電体内に含むことが好ましい。これらの元素は、これらの1種類で用いることもできるし、複数種類の元素を用いても良く、金属または金属合金として含むことができる。このような金属および金属合金は、単独で含まれていてもよく、或いは2種以上を混合して含んでいてもよい。これらの元素Aを集電体内に含んだ場合、集電体の機械的強度が高められ、加工性能が向上する。さらに、水系溶媒の電気分解を抑制し、水素発生を抑制させる効果が増加する。上記元素のなかでも、Zn、Pb、Ti、Alがより好ましい。
集電体は、例えばこれらの金属からなる金属箔である。また、集電体は、例えばこれらの金属を含んだ合金からなる箔である。このような箔は、元素A以外に例えば後述する元素を1種または2種以上含み得る。金属体の形状としては、箔以外にも、例えばメッシュや多孔体などが挙げられる。エネルギー密度や出力向上のためには、体積が小さく、表面積が大きい箔の形状が望ましい。
また、負極集電体は、元素Aとは異なる金属を含んだ基板を含むことができる。このような場合、この基板の表面の少なくとも一部に元素Aを含む化合物が存在することで、水素発生を抑制できる。表面に存在する元素Aを含む化合物は、負極活物質層と接するように配置されていることが望ましい。例えば基板に元素Aのメッキを施して、基板の表面に元素Aを存在させることができる。または、基板の表面に元素Aを含む合金を用いたメッキ処理を施すことができる。
集電体は、元素Aからなる群より選択される少なくとも1種の化合物を含んでいてもよい。これら元素A酸化物、および/または元素A水酸化物、および/または塩基性炭酸元素A化合物、および/または元素Aの硫酸化合物は、集電体の表面領域の少なくとも一部において、表面から深さ方向へ5nm以上1μm以下までの深さ領域において含まれていることが好ましい。なお、元素Aの酸化物の例としてはZnO、元素Aの水酸化物の例としてはZn(OH)2、元素Aの塩基性炭酸化合物の例としては2ZnCO3・3Zn(OH)2、元素Aの硫酸化合物の例としては、ZnSO4・7H2Oなどが挙げられる。
集電体の表層部分に元素Aの酸化物、元素Aの水酸化物、元素Aの塩基性炭酸化合物、および元素Aの硫酸化合物の何れかが少なくとも1種存在すると、水素発生を抑制することができる。また、これらの化合物が集電体の表層部分に存在すると、集電体と活物質との密着性が向上し、電子伝導のパスを増やすことができることからサイクル特性の向上と、低抵抗化が可能である。
基板は、Al、Fe、Cu、Ni、Tiから選択される少なくとも1種の金属を含むことが好ましい。これらの金属は、合金として含むこともできる。また、基板は、このような金属および金属合金を単独で含むことができ、或いは2種以上を混合して含むことができる。軽量化の観点から、基板がAl、Ti、またはこれらの合金を含むことが好ましい。
集電体に元素Aからなる群より選択される少なくとも1種の化合物を含んでいるかどうかは、先述したように電池を分解し、その後、例えば誘導結合プラズマ(Inductively Coupled Plasma;ICP)発光分析を行うことで、調べることができる。
負極活物質は、チタン酸化物、リチウムチタン酸化物、およびリチウムチタン複合酸化物からなる群より選択される1種類又は2種類以上の化合物を含む。リチウムチタン複合酸化物の例に、ニオブチタン酸化物およびナトリウムニオブチタン酸化物が含まれる。これらの化合物のLi吸蔵電位は、1V(vs.Li/Li+)以上3V(vs.Li/Li+)以下の範囲であることが望ましい。
チタン酸化物の例に、単斜晶構造のチタン酸化物、ルチル構造のチタン酸化物、アナターゼ構造のチタン酸化物が含まれる。各結晶構造のチタン酸化物は、充電前の組成がTiO2、充電後の組成がLixTiO2(xは0≦x)で表すことができる。また、単斜晶構造のチタン酸化物の充電前構造をTiO2(B)と表すことができる。
リチウムチタン酸化物の例に、スピネル構造リチウムチタン酸化物(例えば一般式Li4+xTi5O12(xは−1≦x≦3))、ラムスデライト構造のリチウムチタン酸化物(例えば、Li2+xTi3O7(−1≦x≦3))、Li1+xTi2O4(0≦x≦1)、Li1.1+xTi1.8O4(0≦x≦1)、Li1.07+xTi1.86O4(0≦x≦1)、LixTiO2(0<x)などが含まれる。
ニオブチタン酸化物の例に、LiaTiMbNb2±βO7±σ(0≦a≦5、0≦b≦0.3、0≦β≦0.3、0≦σ≦0.3、MはFe、V、Mo及びTaよりなる群から選択される少なくとも1種の元素)で表されるものが含まれる。
ナトリウムニオブチタン酸化物の例に、一般式Li2+vNa2−wM1xTi6−y−zNbyM2zO14+δ(0≦v≦4、0<w<2、0≦x<2、0<y<6、0≦z<3、y+z<6、−0.5≦δ≦0.5、M1はCs、K、Sr、Ba、Caより選択される少なくとも1つを含み、M2はZr、Sn、V、Ta、Mo、W、Fe、Co、Mn、Alより選択される少なくとも1つを含む)で表される斜方晶型Na含有ニオブチタン複合酸化物が含まれる。
負極活物質として好ましい化合物に、アナターゼ構造のチタン酸化物、単斜晶構造のチタン酸化物、スピネル構造のリチウムチタン酸化物が含まれる。各化合物は、Li吸蔵電位が1.4V(vs.Li/Li+)以上2V(vs.Li/Li+)以下の範囲であるため、例えば正極活物質としてのリチウムマンガン酸化物と組み合わせることで、高い起電力を得ることができる。これらの中でも、スピネル構造のリチウムチタン酸化物は、充放電反応による体積変化が極めて少ないため、より好ましい。
負極活物質は、粒子の形態で負極活物質層に含有され得る。負極活物質粒子は、単独の一次粒子、一次粒子の凝集体である二次粒子、あるいは、単独の一次粒子と二次粒子の混合物であり得る。粒子の形状は、特に限定されるものではなく、例えば、球状、楕円形状、扁平形状、繊維状等にすることができる。
負極活物質の二次粒子の平均粒子径(直径)が、3μm以上であることが好ましい。より好ましくは5μm以上20μm以下である。この範囲であると、活物質の表面積が小さいため、水素発生を抑制する効果を高めることができる。
二次粒子の平均粒子径が3μm以上の負極活物質は、例えば、次の方法で得られる。先ず、活物質原料を反応合成して平均粒子径1μm以下の活物質前駆体を作製する。その後、活物質前駆体に対し焼成処理を行い、ボールミルやジェトミルなどの粉砕機を用いて粉砕処理を施す。次いで焼成処理において、活物質前駆体を凝集して粒子径の大きい二次粒子に成長させる。
負極活物質の一次粒子の平均粒子径は1μm以下とすることが望ましい。これにより、活物質内部でのLiイオンの拡散距離が短くなり、比表面積が大きくなる。そのため、優れた高入力性能(急速充電性能)が得られる。一方、平均粒子径が小さいと、粒子の凝集が起こりやすくなり、電解質の分布が負極に偏って正極での電解質の枯渇を招く恐れがあることから、下限値は0.001μmにすることが望ましい。さらに好ましい平均粒子径は、0.1μm以上0.8μm以下である。
負極活物質粒子は、N2析出によるBET法での比表面積が3m2/g以上200m2/g以下の範囲であることが望ましい。これにより、負極と電解質との親和性をさらに高くすることができる。
負極活物質層(集電体を除く)の比表面積は、3m2/g以上50m2/g以下の範囲であることが望ましい。比表面積のより好ましい範囲は、5m2/g以上50m2/g以下である。負極活物質層は、集電体上に担持された負極活物質、導電剤及び結着剤を含む多孔質の層であり得る。
負極の多孔度(集電体を除く)は、20〜50%の範囲にすることが望ましい。これにより、負極と電解質との親和性に優れ、かつ高密度な負極を得ることができる。多孔度のさらに好ましい範囲は、25〜40%である。
導電剤としては、アセチレンブラック、カーボンブラック、コークス、炭素繊維、黒鉛などの炭素材料やニッケル、亜鉛などの金属粉末を挙げることができる。導電剤の種類は1種類または2種類以上にすることができる。炭素材料は、それ自身から水素が発生するため、導電剤には金属粉末を使用することが望ましい。
結着剤としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、フッ素系ゴム、エチレン−ブタジエンゴム、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリイミド(PI)、ポリアクリルイミド(PAI)などが挙げられる。結着剤の種類は1種類または2種類以上にすることができる。
負極活物質、導電剤及び結着剤の負極活物質層における配合比については、負極活物質は70重量%以上95重量%以下、導電剤は3重量%以上20重量%以下、結着剤は2重量%以上10重量%以下の範囲にすることが好ましい。導電剤の配合比が3重量%以上であれば負極の導電性を良好にすることができ、20重量%以下であれば導電剤表面での電解質の分解を低減することができる。結着剤の配合比が2重量%以上であれば十分な電極強度が得られ、10重量%以下であれば電極の絶縁部を減少させることが出来る。
負極は、例えば次のようにして作製することができる。先ず、負極活物質、導電剤及び結着剤を適切な溶媒に分散させてスラリーを調製する。このスラリーを集電体に塗布し、塗膜を乾燥させることで集電体上に負極活物質層を形成する。ここで、例えばスラリーを集電体上の1つの面に塗布してもよく、またはスラリーを集電体上の1つの面とその裏面とに塗布してもよい。次いで、集電体と負極活物質層とに対し、例えば加熱プレスなどのプレスを施すことにより負極を作製することができる。
2)正極
この正極は、正極集電体と、正極集電体の片面もしくは両面に担持され、活物質、導電剤および結着剤を含む正極層とを有することができる。
正極集電体としてはステンレス、Al、Tiなどの金属からなる箔、多孔体、メッシュを用いることが好ましい。集電体と電解質との反応による集電体の腐食を防止するため、集電体表面を異種元素で被覆してもよい。
正極活物質には、リチウムやナトリウムを吸蔵放出可能なものが使用され得る。正極は、1種類の正極活物質を含んでも良く、或いは2種類以上の正極活物質を含むことができる。正極活物質の例には、リチウムマンガン複合酸化物、リチウムニッケル複合酸化物、リチウムコバルトアルミニウム複合酸化物、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物、スピネル型リチウムマンガンニッケル複合酸化物、リチウムマンガンコバルト複合酸化物、リチウム鉄酸化物、リチウムフッ素化硫酸鉄、オリビン結晶構造のリン酸化合物(例えば、LixFePO4(0≦x≦1)、LixMnPO4(0≦x≦1))などが含まれる。オリビン結晶構造のリン酸化合物は、熱安定性に優れている。
高い正極電位の得られる正極活物質の例を以下に記載する。例えばスピネル構造のLixMn2O4(0<x≦1)、LixMnO2(0<x≦1)などのリチウムマンガン複合酸化物、例えばLixNi1−yAlyO2(0<x≦1、0<y≦1)などのリチウムニッケルアルミニウム複合酸化物、例えばLixCoO2(0<x≦1)などのリチウムコバルト複合酸化物、例えばLixNi1−y−zCoyMnzO2(0<x≦1、0<y≦1、0≦z≦1)などのリチウムニッケルコバルト複合酸化物、例えばLixMnyCo1−yO2(0<x≦1、0<y≦1)などのリチウムマンガンコバルト複合酸化物、例えばLixMn2−yNiyO4(0<x≦1、0<y<2)などのスピネル型リチウムマンガンニッケル複合酸化物、例えばLixFePO4(0<x≦1)、LixFe1−yMnyPO4(0<x≦1、0≦y≦1)、LixCoPO4(0<x≦1)などのオリビン構造を有するリチウムリン酸化物、フッ素化硫酸鉄(例えばLixFeSO4F(0<x≦1))が挙げられる。
また、ナトリウムマンガン複合酸化物、ナトリウムニッケル複合酸化物、ナトリムコバルト複合酸化物、ナトリムニッケルコバルトマンガン複合酸化物、ナトリウム鉄複合酸化物、ナトリウムリン酸化物(例えば、ナトリウムリン酸鉄、ナトリウムリン酸バナジウム)、ナトリウム鉄マンガン複合酸化物、ナトリウムニッケルチタン複合酸化物、ナトリウムニッケル鉄複合酸化物、ナトリウムニッケルマンガン複合酸化物などが含まれる。
好ましい正極活物質の例に、鉄複合酸化物(例えばNayFeO2、0≦y≦1)、鉄マンガン複合酸化物(例えばNayFe1−xMnxO2、0<x<1、0≦y≦1)、ニッケルチタン複合酸化物(例えばNayNi1−xTixO2、0<x<1、0≦y≦1)、ニッケル鉄複合酸化物(例えばNayNi1−xFexO2、0<x<1、0≦y≦1)、ニッケルマンガン複合酸化物(例えばNayNi1−xMnxO2、0<x<1、0≦y≦1)、ニッケルマンガン鉄複合酸化物(例えばNayNi1−x−zMnxFezO2、0<x<1、0≦y≦1、0<z<1、0<1−x−z<1)、リン酸鉄(例えばNayFePO4、0≦y≦1)が含まれる。
正極活物質の粒子は、単独の一次粒子、一次粒子の凝集体である二次粒子、または単独の一次粒子と二次粒子の双方を含むものであり得る。正極活物質の一次粒子の平均粒子径(直径)は10μm以下であることが好ましく、より好ましくは0.1μm〜5μmである。正極活物質の二次粒子の平均粒子径(直径)は100μm以下であることが好ましく、より好ましくは10μm〜50μmである。
正極活物質の粒子表面の少なくとも一部が炭素材料で被覆されていることが好ましい。炭素材料は、層構造、粒子構造、あるいは粒子の集合体の形態をとり得る。
正極層の電子伝導性を高め、集電体との接触抵抗を抑えるための導電剤としては、例えば、アセチレンブラック、カーボンブラック、黒鉛、平均繊維径1μm以下の炭素繊維等を挙げることができる。導電剤の種類は1種類又は2種類以上にすることができる。
活物質と導電剤とを結着させるための結着剤は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、フッ素系ゴム、エチレン-ブタジエンゴム(SBR)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリイミド(PI)、ポリアクリルイミド(PAI)を含む。結着剤の種類は1種類又は2種類以上にすることができる。
正極活物質、導電剤及び結着剤の正極層における配合比については、正極活物質は70重量%以上95重量%以下、導電剤は3重量%以上20重量%以下、結着剤は2重量%以上10重量%以下の範囲にすることが好ましい。導電剤の配合比が3重量%以上であれば正極の導電性を良好にすることができ、20重量%以下であれば導電剤表面での電解質の分解を低減することができる。結着剤の配合比が2重量%以上であれば十分な電極強度が得られ、10重量%以下であれば電極の絶縁部を減少させることが出来る。
正極は、例えば次のようにして作製することができる。先ず、正極活物質、導電剤及び結着剤を適切な溶媒に分散させてスラリーを調製する。このスラリーを集電体に塗布し、塗膜を乾燥させることで集電体上に正極層を形成する。ここで、例えばスラリーを集電体上の1つの面に塗布してもよく、またはスラリーを集電体上の1つの面とその裏面とに塗布してもよい。次いで、集電体と正極層とに対し、例えば加熱プレスなどのプレスを施すことにより正極を作製することができる。
3)電解質
電解質には、水系溶媒と第1の電解質とを含む電解液と、この電解液に高分子材料を複合化したゲル状電解質が挙げられる。前述の高分子材料としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリエチレンオキサイド(PEO)等を挙げることができる。ここでは、電解液について説明する。電解質は、NO3 −、Cl−、LiSO4 −、SO4 2−、およびOH−からなる群より選択される少なくとも1種のアニオンを含む。電解質中に含まれるこれらのアニオンは、1種でもよく、或いは、2種以上のアニオンが含まれていてもよい。なお、電解液とゲル状電解質を総称するために用いた電解質と、溶質としての電解質を区別するために便宜上溶質としての電解質を第1の電解質と称している。
水系溶媒としては、水を含む溶液を用いることができる。ここで、水を含む溶液とは、純水であってもよく、或いは水と水以外の物質との混合溶液や混合溶媒であってもよい。
上記電解質は、溶質となる塩1molに対し、水溶媒量(例えば水系溶媒中の水量)が1mol以上であることが好ましい。さらに好ましい形態は、溶質となる塩1molに対する水溶媒量が3.5mol以上である。
第1の電解質としては、水系溶媒に溶解したときに解離して上記アニオンを生じさせるものを用いることができる。特に、Liイオンと上記アニオンとに解離するリチウム塩が好ましい。このようなリチウム塩としては、例えばLiNO3、LiCl、Li2SO4、LiOHなどを挙げることができる。
また、Liイオンと上記アニオンへと解離するリチウム塩は、水系溶媒における溶解度が比較的高い。そのため、アニオンの濃度が1−10Mと高く、Liイオン拡散性が良好である電解質を得ることができる。
NO3 −及び/又はCl−を含む電解質は、0.1−10M程度の幅広いアニオン濃度の範囲で用いることができる。イオン伝導度と、リチウム平衡電位の両立の観点から、これらのアニオンの濃度が3−12Mと高いことが好ましい。NO3−またはCl−を含む電解質のアニオン濃度が8−12Mであることがより好ましい。
LiSO4 −及び/又はSO4 2−を含む電解質は、0.05−2.5M程度のアニオン濃度の範囲で用いることができる。イオン伝導度の観点から、これらのアニオンの濃度が1.5−2.5Mと高いことが好ましい。
電解質中のOH−濃度は、10−10−0.1Mであることが望ましい。
また、電解質はリチウムイオンとナトリウムイオンとの両方を含むことができる。
電解質のpHは、4以上13以下であることが望ましい。pHが4未満であると、電解質が酸性であるため、活物質の分解が進行しやすくなる。pHが13を超えると、正極での酸素発生過電圧が低下するため、水系溶媒の電気分解が進行しやすくなる。
電解質中の溶質、即ち第1の電解質は、例えばイオンクロマトグラフ法により定性および定量することができる。イオンクロマトグラフ法は、感度が高いため、分析手法として特に好ましい。
イオンクロマトグラフ法による電解質に含まれる溶質の定性定量分析の具体的な測定条件の例を以下に示す:
システム: Prominence HIC-SP
分析カラム: Shim-pack IC-SA3
ガードカラム: Shim-pack IC-SA3(G)
溶離液: 3.6 mmol/L 炭酸ナトリウム水溶液
流量: 0.8 mL/min
カラム温度: 45℃
注入量: 50μL
検出: 電気伝導度
電解質中に水が含まれているかは、ガスクロマトグラフィー質量分析(Gas Chromatography - Mass Spectrometry;GC−MS)測定により確認できる。また、電解質中の水含有量の算出は、例えばICPの発光分析などで測定することができる。また電解質の比重を測定することで、溶媒のモル数を算出できる。電解質は正極側と負極側で同じものを用いてもよいし、異なるものを用いてもよい。この場合、正極の電解質のpHは1以上7以下であることが好ましい。正極の電解質のpHが8以上となると水の電気分解に起因する酸素発生反応が有利に進み、pH1未満だと活物質の分解が進行するため、好ましくない。負極の電解質はpH7以上、14以下であることが好ましく7未満では水の電気分解に起因する水素発生反応が有利に進むため、好ましくない。
電解質には添加剤を添加することもできる。たとえば、界面活性剤や元素Aを含む金属を添加することができる。界面活性剤は、例えばポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、チオ尿素、3、3‘−ジチオビス(1-プロパンホス酸) 2ナトリウム、ジメルカプトチアジアゾール、ホウ酸、シュウ酸、マロン酸、サッカリン、ナフタレンスルホン酸ナトリウム、ゼラチン、硝酸カリウム、芳香族アルデヒド、複素環アルデヒドなどの非イオン性界面活性剤などが挙げられる。界面活性剤は単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いることもできる。
元素Aを含む金属を電解質への添加剤(添加金属)として用いる場合、電解質中に含まれる金属の濃度が過剰になると、金属析出により負極活物質と電解質との間でイオンの授受ができず、二次電池として動作しないことがあるため、電解質中の金属濃度が過剰にならないように注意する。また、金属を加えることにより、電解質のpHが大きく変動しないように注意する。元素Aを添加するには、負極のスラリーを作製する際に加えるか、電解質に添加するか、あるいはその両方を同時に用いてもよい。ただし、元素AのうちHgを用いる際は、負極を作製する際に活物質、導電助剤、バインダーと共にHgを混ぜ込む。添加する金属の形態は、金属単体であっても良いし、酸化物、塩化物、硫化物、硝酸塩、硫酸塩、水酸化物塩のうちのどれか一つ、または2つ以上組み合わせても良い。また、添加金属は電解質中にイオンでも固体でも存在することができる。
界面活性剤電解質中に含まれているかは、先述したGC−MSを用いて調べることができる。例えば、電解質をヘキサンで抽出し、電解質中の有機溶媒を取り分ける。この取り分けた有機溶媒に対してGC−MSと核磁気共鳴測定(NMR)を行うことにより特定することができる。また、添加金属はICPにより調べることができる。
4)セパレータ
正極と負極との間にはセパレータを配置することができる。セパレータを絶縁材料で構成することで、正極と負極とが電気的に接触することを防止することができる。また、正極と負極との間を電解質が移動可能な形状のものを使用することが望ましい。セパレータの例に、不織布、フィルム、紙などが含まれる。セパレータの構成材料の例に、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン、セルロースが含まれる。好ましいセパレータの例に、セルロース繊維を含む不織布、ポリオレフィン繊維を含む多孔質フィルムを挙げることができる。セパレータの気孔率は60%以上にすることが好ましい。また、繊維径は10μm以下が好ましい。繊維径を10μm以下にすることで、電解質に対するセパレータの親和性が向上するので電池抵抗を小さくすることができる。繊維径のより好ましい範囲は3μm以下である。気孔率が60%以上のセルロース繊維含有不織布は、電解質の含浸性が良く、低温から高温まで高い出力性能を出すことができる。また、長期充電保存、フロート充電、過充電においても負極と反応せず、リチウム金属のデンドライト析出による負極と正極の短絡が発生しない。より好ましい範囲は62%〜80%である。
また、セパレータとして、固体電解質を使用することもできる。固体電解質としてはNASICON型骨格を有するLATP(Li1+xAlxTi2−x(PO4)3;0.1≦x≦0.4)、アモルファス状のLIPON(Li2.9PO3.3N0.46)、ガーネット型のLLZ(Li7La3Zr2O12)などの酸化物が好ましい。
また、βアルミナ、Na1+xZr2SixP3−xO12(0≦x≦3)、NaAlSi3O8などもあげることができる。
セパレータは、厚さが20μm以上100μm以下、密度が0.2g/cm3以上0.9g/cm3以下であることが好ましい。この範囲であると、機械的強度と電池抵抗の軽減のバランスを取ることができ、高出力で内部短絡が抑制された二次電池を提供することができる。また、高温環境下でのセパレータの熱収縮が少なく、良好な高温貯蔵性能を出すことが出来る。
5)容器
正極、負極及び電解質が収容される容器には、金属製容器や、ラミネートフィルム製容器、ポリエチレンやポリプロピレンなどの樹脂容器を使用することができる。
金属製容器としては、ニッケル、鉄、ステンレス、亜鉛などからなる金属缶で角形、円筒形の形状のものが使用できる。
樹脂製容器、金属製容器それぞれの板厚は、1mm以下にすることが望ましく、さらに好ましい範囲は0.5mm以下である。さらに好ましい範囲は0.3mm以下である。また、板厚の下限値は、0.05mmにすることが望ましい。
ラミネートフィルムとしては、例えば、金属層を樹脂層で被覆した多層フィルムなどを挙げることができる。金属層の例に、ステンレス箔、アルミニウム箔、アルミニウム合金箔が含まれる。樹脂層には、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート(PET)などの高分子を用いることができる。ラミネートフィルムの厚さの好ましい範囲は、0.5mm以下である。より好ましい範囲は0.2mm以下である。また、ラミネートフィルムの厚さの下限値は、0.01mmにすることが望ましい。
実施形態に係る二次電池は、角形、円筒形、扁平型、薄型、コイン型等の様々な形態の二次電池に適用することが可能である。さらにバイポーラ構造を有する二次電池であることが好ましい。これにより複数直列のセルを1個のセルで作製できる利点がある。
実施形態に係る二次電池の一例を図3〜図6を参照して説明する。
図3及び図4に、金属製容器を用いた二次電池の一例を示す。
電極群1は、矩形筒状の金属製容器2内に収納されている。電極群1は、正極3及び負極4をその間にセパレータ5を介在させて偏平形状となるように渦巻き状に捲回した構造を有する。電解質(図示しない)は、電極群1に保持されている。図4に示すように、電極群1の端面に位置する正極3の端部の複数個所それぞれに帯状の正極リード6が電気的に接続されている。また、この端面に位置する負極4の端部の複数個所それぞれに帯状の負極リード7が電気的に接続されている。この複数ある正極リード6は、一つに束ねられた状態で正極導電タブ8と電気的に接続されている。正極リード6と正極導電タブ8から正極端子が構成されている。また、負極リード7は、一つに束ねられた状態で負極導電タブ9と接続されている。負極リード7と負極導電タブ9から負極端子が構成されている。金属製の封口板10は、金属製容器2の開口部に溶接等により固定されている。正極導電タブ8及び負極導電タブ9は、それぞれ、封口板10に設けられた取出穴から外部に引き出されている。封口板10の各取出穴の内周面は、正極導電タブ8及び負極導電タブ9との接触による短絡を回避するために、絶縁部材11で被覆されている。
図5及び図6に、ラミネートフィルム製外装部材を用いた二次電池の一例を示す。
積層型電極群1は、2枚の樹脂フィルムの間に金属層を介在したラミネートフィルムからなる袋状容器2内に収納されている。積層型電極群1は、図6に示すように正極3と負極4とをその間にセパレータ5を介在させながら交互に積層した構造を有する。正極3は複数枚存在し、それぞれが集電体3aと、集電体3aの両面に形成された正極活物質含有層3bとを備える。負極4は複数枚存在し、それぞれが集電体4aと、集電体4aの両面に形成された負極活物質含有層4bとを備える。各負極4の集電体4aは、一辺が正極3から突出している。突出した集電体4aは、帯状の負極端子12に電気的に接続されている。帯状の負極端子12の先端は、容器2から外部に引き出されている。また、図示しないが、正極3の集電体3aは、集電体4aの突出辺と反対側に位置する辺が負極4から突出している。負極4から突出した集電体3aは、帯状の正極端子13に電気的に接続されている。帯状の正極端子13の先端は、負極端子12とは反対側に位置し、容器2の辺から外部に引き出されている。
図3〜図6に示す二次電池には、容器内に発生した水素ガスを外部に放出させるための安全弁を設けることができる。安全弁は、内圧が設定値よりも高くなった場合に作動し、内圧が低下すると封止栓として機能する復帰式、一度作動すると封止栓としての機能が回復しない非復帰式のいずれでも使用可能である。また、図3〜図6に示す二次電池は、密閉式であるが、水素ガスを水に戻す循環システムを備える場合には開放系とすることが可能である。
以上説明した実施形態によれば、水系電解質と、正極と、Ti含有複合酸化物を含む負極活物質を備える負極と、を備え、負極の表面にHg、Pb、Zn及びBiからなる群れより選ばれる少なくとも1種の元素Aが存在し、負極の表面を走査型電子顕微鏡法‐エネルギー分散型X線分光法で測定して得られる元素Aのmol量とTiのmol量との合計量に対する元素Aのmol比率(A/(A+Ti))を複数測定した平均が5%以上40%以下である元素A元素A元素A二次電池が提供される。このようなmol比率で元素Aを存在させることができることにより、負極からの水素発生を抑制でき、集電体と活物質の結着性を向上させ、さらに電子伝導のパスを増やすことができる。そのため、充放電効率と貯蔵性能の高い二次電池を提供することができる。
(第2の実施形態)
第2の実施形態によれば、二次電池を単位セルとする組電池を提供することができる。二次電池には、第1の実施形態の二次電池を用いることができる。
組電池の例には、電気的に直列又は並列に接続された複数の単位セルを構成単位として含むもの、電気的に直列接続された複数の単位セルからなるユニットまたは電気的に並列接続された複数の単位セルからなるユニットを含むもの等を挙げることができる。
組電池は、筐体に収容されていても良い。筐体は、アルミニウム合金、鉄、ステンレスなどからなる金属缶、プラスチック容器等が使用できる。また、容器の板厚は、0.5mm以上にすることが望ましい。
二次電池の複数個を電気的に直列又は並列接続する形態の例には、それぞれが容器を備えた複数の二次電池を電気的に直列又は並列接続するもの、共通の筐体内に収容された複数の電極群を電気的に直列又は並列接続するものが含まれる。前者の具体例は、複数個の二次電池の正極端子と負極端子を金属製のバスバー(例えば、アルミニウム、ニッケル、銅)で接続するものである。後者の具体例は、1個の筐体内に複数個の電極群を隔壁により電気化学的に絶縁した状態で収容し、これら電極群を電気的に直列接続するものである。電気的に直列接続する電池個数を5〜7の範囲にすることにより、鉛蓄電池との電圧互換性が良好になる。鉛蓄電池との電圧互換性をより高くするには、単位セルを5個または6個直列接続した構成が好ましい。
組電池の一例を図7を参照して説明する。図7に示す組電池31は、第1の実施形態に係る角型の二次電池(例えば図3、図4)321〜325を単位セルとして複数備える。電池321の正極導電タブ8と、その隣に位置する電池322の負極導電タブ9とが、リード33によって電気的に接続されている。さらに、この電池322の正極導電タブ8とその隣に位置する電池323の負極導電タブ9とが、リード33によって電気的に接続されている。このように電池321〜325間が直列に接続されている。
第2の実施形態の組電池によれば、第1の実施形態に係る二次電池含んでいるため、充放電効率と貯蔵性能の高い組電池を提供することができる。
(第3の実施形態)
第3の実施形態によれば、電池パックが提供される。この電池パックは、第1の実施形態に係る二次電池具備している。
第3の実施形態に係る電池パックは、先に説明した第1の実施形態に係る二次電池(単位セル)を1個または複数個具備することができる。第3の実施形態に係る電池パックに含まれ得る複数の二次電池は、電気的に直列、並列、又は直列および並列を組み合わせて接続されることができる。また、複数の二次電池は、電気的に接続された組電池を構成することもできる。複数の二次電池から組電池を構成する場合、第2の実施形態の組電池を使用することができる。
第3の実施形態に係る電池パックは、保護回路をさらに具備することができる。保護回路は、二次電池の充放電を制御するものである。或いは、電池パックを電源として使用する装置(例えば、電子機器、自動車等)に含まれる回路を、電池パックの保護回路として使用することができる。
また、第3の実施形態に係る電池パックは、通電用の外部端子をさらに具備することもできる。通電用の外部端子は、二次電池からの電流を外部に出力するため、及び/又は単位セル51に電流を入力するためのものである。言い換えれば、電池パックを電源として使用する際、電流が通電用の外部端子を通して外部に供給される。また、電池パックを充電する際、充電電流(自動車などの動力の回生エネルギーを含む)は通電用の外部端子59を通して電池パックに供給される。
第3の実施形態に係る電池パックの例を、図8を参照して説明する。図8は、電池パックの一例を示す模式的な斜視図である。
電池パック40は、図5、6に示す二次電池からなる組電池を備える。電池パック40は、筐体41と、筐体41内に収容された組電池42とを含む。組電池42は、複数(例えば5個)の二次電池431〜435が電気的に直列に接続されたものである。二次電池431〜435は、厚さ方向に積層されている。筐体41は、上部及び4つの側面それぞれに開口部44を有している。二次電池431〜435の正負極端子12、13が突出している側面が、筐体41の開口部44に露出している。組電池42の出力用正極端子45は、帯状をなし、一端が二次電池431〜4355のいずれかの正極端子13と電気的に接続され、かつ他端が筐体41の開口部44から突出して筐体41の上部から突き出ている。一方、組電池42の出力用負極端子46は、帯状をなし、一端が二次電池431〜435のいずれかの負極端子12と電気的に接続され、かつ他端が筐体41の開口部44から突出して筐体41の上部から突き出ている。
第3の実施形態に係る電池パックの別の例を図9および図10を参照して詳細に説明する。図9は、第3の実施形態に係る他の例の電池パックの分解斜視図である。図10は、図9の電池パックの電気回路を示すブロック図である。
扁平型の二次電池から構成される複数の単位セル51は、外部に延出した負極端子52および正極端子53が同じ向きに揃えられるように積層され、粘着テープ54で締結することにより組電池55を構成している。これらの単位セル51は、図10に示すように互いに電気的に直列に接続されている。
プリント配線基板56は、負極端子52および正極端子53が延出する単位セル51側面と対向して配置されている。プリント配線基板56には、図10に示すようにサーミスタ57、保護回路58及び通電用の外部端子59が搭載されている。なお、組電池55と対向するプリント配線基板56の面には組電池55の配線と不要な接続を回避するために絶縁板(図示せず)が取り付けられている。
正極リード60は、組電池55の最下層に位置する正極端子53に接続され、その先端はプリント配線基板56の正極コネクタ61に挿入されて電気的に接続されている。負極リード62は、組電池55の最上層に位置する負極端子52に接続され、その先端はプリント配線基板56の負極側コネクタ63に挿入されて電気的に接続されている。これらのコネクタ61、63は、プリント配線基板56に形成された配線64、65を通して保護回路58に接続されている。
サーミスタ57は、単位セル51の温度を検出し、その検出信号は保護回路58に送信される。保護回路58は、所定の条件で保護回路58と通電用の外部端子59との間のプラス配線66aおよびマイナス配線66bを遮断できる。所定の条件とは、例えばサーミスタ57の検出温度が所定温度以上になったときである。また、所定の条件とは単位セル51の過充電、過放電、過電流等を検出したときである。この過充電等の検出は、個々の単位セル51もしくは組電池55について行われる。個々の単位セル51を検出する場合、電池電圧を検出してもよいし、正極電位もしくは負極電位を検出してもよい。後者の場合、個々の単位セル51中に参照極として用いるリチウム電極が挿入される。図9および図10の場合、単位セル51それぞれに電圧検出のための配線67を接続し、これら配線67を通して検出信号が保護回路58に送信される。
正極端子53および負極端子52が突出する側面を除く組電池55の三側面には、ゴムもしくは樹脂からなる保護シート68がそれぞれ配置されている。
組電池55は、各保護シート68およびプリント配線基板56と共に収納容器69内に収納される。すなわち、収納容器69の長辺方向の両方の内側面と短辺方向の内側面それぞれに保護シート68が配置され、短辺方向の反対側の内側面にプリント配線基板56が配置される。組電池55は、保護シート68およびプリント配線基板56で囲まれた空間内に位置する。蓋70は、収納容器69の上面に取り付けられている。
なお、組電池55の固定には粘着テープ54に代えて、熱収縮テープを用いてもよい。この場合、組電池の両側面に保護シートを配置し、熱収縮テープを周回させた後、熱収縮テープを熱収縮させて組電池を結束させる。
図9、図10では単位セル51を直列接続した形態を示したが、電池容量を増大させるためには並列に接続してもよい。或いは、直列接続と並列接続とを組み合わせてもよい。さらに、組み上がった電池パックを直列および/または並列に接続することもできる。
また、電池パックの態様は用途により適宜変更される。電池パックの用途としては、大電流での充放電が望まれるものが好ましい。具体的には、デジタルカメラの電源用や、二輪乃至四輪のハイブリッド電気自動車、二輪乃至四輪の電気自動車、アシスト自転車、鉄道用車両等の車両の車載用、並びに定置用電池としての用途が挙げられる。特に、車載用が好適である。
第3の実施形態に係る電池パックを搭載した自動車等の車両において、電池パックは、例えば車両の動力の回生エネルギーを回収するものである。
以上説明した第3の実施形態の電池パックによれば、第1の実施形態の二次電池を含むため、充放電効率と貯蔵性能の高い電池パックを提供することができる。
(第4の実施形態)
第4の実施形態によると、車両が提供される。この車両は、第3の実施形態に係る電池パックを搭載している。
第4の実施形態に係る車両において、電池パックは、例えば、車両の動力の回生エネルギーを回収するものである。
第4の実施形態に係る車両の例としては、例えば、二輪乃至四輪のハイブリッド電気自動車、二輪乃至四輪の電気自動車、アシスト自転車、及び鉄道用車両が挙げられる。
第4の実施形態に係る車両における電池パックの搭載位置は、特には限定されない。例えば、電池パックを自動車に搭載する場合、電池パックは、車両のエンジンルーム、車体後方又は座席の下に搭載することができる。
次に、第4の実施形態に係る車両の一例について、図面を参照しながら説明する。
図11は、第4の実施形態に係る車両の一例を概略的に示す断面図である。
図11に示す車両200は、車両本体201と、電池パック202とを含んでいる。電池パック202は、第3の実施形態に係る電池パックであり得る。
図11に示す車両200は、四輪の自動車である。車両200としては、例えば、二輪乃至四輪のハイブリッド電気自動車、二輪乃至四輪の電気自動車、アシスト自転車、及び鉄道用車両を用いることができる。
この車両200は、複数の電池パック202を搭載してもよい。この場合、電池パック202は、直列に接続されてもよく、並列に接続されてもよく、直列接続及び並列接続を組み合わせて接続されてもよい。
電池パック202は、車両本体201の前方に位置するエンジンルーム内に搭載されている。電池パック202の搭載位置は、特に限定されない。電池パック202は、車両本体201の後方又は座席の下に搭載してもよい。この電池パック202は、車両200の電源として用いることができる。また、この電池パック202は、車両200の動力の回生エネルギーを回収することができる。
次に、図12を参照しながら、第4の実施形態に係る車両の実施態様について説明する。
図12は、第4の実施形態に係る車両の他の例を概略的に示した図である。図12に示す車両300は、電気自動車である。
図12に示す車両300は、車両本体301と、車両用電源302と、車両用電源302の上位制御手段である車両ECU(ECU:Electric Control Unit;電気制御装置)380と、外部端子(外部電源に接続するための端子)370と、インバータ340と、駆動モータ345とを備えている。
車両300は、車両用電源302を、例えばエンジンルーム、自動車の車体後方又は座席の下に搭載している。なお、図12に示す、車両300では、車両用電源302の搭載箇所については概略的に示している。
車両用電源302は、複数(例えば3つ)の電池パック312a、312b及び312cと、電池管理装置(BMU:Battery Management Unit)311と、通信バス310と、を備えている。
3つの電池パック312a、312b及び312cは、電気的に直列に接続されている。電池パック312aは、組電池314aと組電池監視装置(VTM:Voltage Temperature Monitoring)313aと、を備えている。電池パック312bは、組電池314bと組電池監視装置313bと、を備えている。電池パック312cは、組電池314cと組電池監視装置313cと、を備えている。電池パック312a、312b、及び312cは、それぞれ独立して取り外すことが可能であり、別の電池パック312と交換することができる。
組電池314a〜314cのそれぞれは、直列に接続された複数の単電池を備えている。複数の単電池の少なくとも1つは、第1の実施形態に係る二次電池である。組電池314a〜314cは、それぞれ、正極端子316及び負極端子317を通じて充放電を行う。
電池管理装置311は、車両用電源302の保全に関する情報を集めるために、組電池監視装置313a〜313cとの間で通信を行い、車両用電源302に含まれる組電池314a〜314cに含まれる単電池の電圧、及び温度などに関する情報を収集する。
電池管理装置311と組電池監視装置313a〜313cとの間には、通信バス310が接続されている。通信バス310は、1組の通信線を複数のノード(電池管理装置と1つ以上の組電池監視装置と)で共有するように構成されている。通信バス310は、例えばCAN(Control Area Network)規格に基づいて構成された通信バスである。
組電池監視装置313a〜313cは、電池管理装置311からの通信による指令に基づいて、組電池314a〜314cを構成する個々の単電池の電圧及び温度を計測する。ただし、温度は1つの組電池につき数箇所だけで測定することができ、全ての単電池の温度を測定しなくてもよい。
車両用電源302は、正極端子316と負極端子317との接続を入り切りするための電磁接触器(例えば図12に示すスイッチ装置333)を有することもできる。スイッチ装置333は、組電池314a〜314cへの充電が行われるときにオンするプリチャージスイッチ(図示せず)、及び電池出力が負荷へ供給されるときにオンするメインスイッチ(図示せず)を含んでいる。プリチャージスイッチおよびメインスイッチは、スイッチ素子の近傍に配置されたコイルに供給される信号によりオン又はオフされるリレー回路(図示せず)を備えている。
インバータ340は、入力された直流電圧を、モータ駆動用の3相の交流(AC)の高電圧に変換する。インバータ340の3相の出力端子は、駆動モータ345の各3相の入力端子に接続されている。インバータ340は、電池管理装置311あるいは車両全体動作を制御するための車両ECU380からの制御信号に基づいて、出力電圧を制御する。
駆動モータ345は、インバータ340から供給される電力により回転する。この回転は、例えば差動ギアユニットを介して車軸および駆動輪Wに伝達される。
また、図示はしていないが、車両300は、回生ブレーキ機構を備えている。回生ブレーキ機構は、車両300を制動した際に駆動モータ345を回転させ、運動エネルギーを電気エネルギーとしての回生エネルギーに変換する。回生ブレーキ機構で回収した回生エネルギーは、インバータ340に入力され、直流電流に変換される。直流電流は、車両用電源302に入力される。
車両用電源302の負極端子317には、接続ラインL1の一方の端子が、電池管理装置311内の電流検出部(図示せず)を介して接続されている。接続ラインL1の他方の端子は、インバータ340の負極入力端子に接続されている。
車両用電源302の正極端子316には、接続ラインL2の一方の端子が、スイッチ装置333を介して接続されている。接続ラインL2の他方の端子は、インバータ340の正極入力端子に接続されている。
外部端子370は、電池管理装置311に接続されている。外部端子370は、例えば、外部電源に接続することができる。
車両ECU380は、運転者などの操作入力に応答して他の装置とともに電池管理装置311を協調制御して、車両全体の管理を行なう。電池管理装置311と車両ECU380との間では、通信線により、車両用電源302の残容量など、車両用電源302の保全に関するデータ転送が行われる。
第4の実施形態に係る車両は、第3の実施形態に係る電池パックを具備している。即ち、充放電効率と貯蔵性能の高い電池パックを備えているため、第4の実施形態に係る車両は充放電効率と貯蔵性能に優れおり、且つ電池パックが寿命性能に優れているため、信頼性が高い車両を提供することができる。
(第5の実施形態)
第5の実施形態によると、定置用電源が提供される。この定置用電源は、第3の実施形態に係る電池パックを搭載している。なお、この定置用電源は、第3の実施形態に係る電池パックの代わりに、第2の実施形態に係る組電池又は第1の実施形態に係る二次電池を搭載していてもよい。
第5の実施形態に係る定置用電源は、第3の実施形態に係る電池パックを搭載している。したがって、第5の実施形態に係る定置用電源は、長寿命を実現することができる。
図13は、第5実施形態に係る定置用電源を含むシステムの一例を示すブロック図である。図13は、第3の実施形態に係る電池パック40A、40Bの使用例として、定置用電源112、123への適用例を示す図である。図13に示す一例では、定置用電源112,123が用いられるシステム110が示される。システム110は、発電所111、定置用電源112、需要家側電力系統113及びエネルギー管理システム(EMS)115を備える。また、システム110には、電力網116及び通信網117が形成され、発電所111、定置用電源112、需要家側電力系統113及びEMS115は、電力網116及び通信網117を介して、接続される。EMS115は、電力網116及び通信網117を活用して、システム110全体を安定化させる制御を行う。
発電所111は、火力及び原子力等の燃料源によって、大容量の電力を生成する。発電所111からは、電力網116等を通して電力が供給される。また、定置用電源112には、電池パック40Aが搭載される。電池パック40Aは、発電所111から供給される電力等を蓄電できる。また、定置用電源112は、電池パック40Aに蓄電された電力を、電力網116等を通して供給できる。システム110には、電力変換装置118が設けられる。電力変換装置118は、コンバータ、インバータ及び変圧器等を含む。したがって、電力変換装置118は、直流と交流との間の変換、互いに対して周波数が異なる交流の間の変換、及び、変圧(昇圧及び降圧)等を行うことができる。このため、電力変換装置118は、発電所111からの電力を、電池パック40Aへ蓄電可能な電力に変換できる。
需要家側電力系統113には、工場用の電力系統、ビル用の電力系統、及び、家庭用の電力系統等が、含まれる。需要家側電力系統113は、需要家側EMS121、電力変換装置122及び定置用電源123を備える。定置用電源123には、電池パック40Bが搭載される。需要家側EMS121は、需要家側電力系統113を安定化させる制御を行う。
需要家側電力系統113には、発電所111からの電力、及び、電池パック40Aからの電力が、電力網116を通して供給される。電池パック40Bは、需要家側電力系統113に供給された電力を蓄電できる。また、電力変換装置121は、電力変換装置118と同様に、コンバータ、インバータ及び変圧器等を含む。したがって、電力変換装置121は、直流と交流との間の変換、互いに対して周波数が異なる交流の間の変換、及び、変圧(昇圧及び降圧)等を行うことができる。このため、電力変換装置121は、需要家側電力系統113に供給された電力を、電池パック40Bへ蓄電可能な電力に変換できる。
なお、電池パック40Bに蓄電された電力は、例えば、電気自動車等の車両の充電等に用いることができる。また、システム110には、自然エネルギー源が設けられてもよい。この場合、自然エネルギー源は、風力及び太陽光等の自然エネルギーによって、電力を生成する。そして、発電所111に加えて自然エネルギー源からも、電力網116を通して、電力が供給される。
以下に実施例を説明するが、実施形態は、以下に掲載される実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
以下の手順で二次電池を作製した。
<正極の作製>
正極活物質として平均粒子径10μmのスピネル構造のリチウムマンガン酸化物(LiMn2O4)、導電剤として黒鉛粉末、および結着剤としてポリアクリルイミド(PAI)を用いた。これら正極活物質、導電剤、および結着剤を、それぞれ80重量%、10重量%、および10重量%の割合で配合し、NMP溶媒に分散してスラリーを調製した。調製したスラリーを、正極集電体としての厚さ12μmのTi箔に両面塗布し、塗膜を乾燥することで正極層を形成した。正極集電体とその上の正極層とのプレス工程を経て、電極密度3.0g/cm3(集電体を含まず)の正極を作製した。
<負極の作製>
負極活物質として平均二次粒子径(直径)15μmのLi4Ti5O12粉末、導電剤として黒鉛粉末、および結着剤としてPAIを用いた。これら負極活物質、導電剤、および結着剤を、それぞれ80重量%、10重量%、および10重量%の割合で配合し、Nーメチル−2ーピロリドン(NMP)溶媒に分散してスラリーを調製した。得られたスラリーを、負極集電体としての厚さ50μmのZn箔に塗布し、塗膜を乾燥することで負極活物質層を形成した。なお、スラリーをZn箔に塗布する際、作製する負極のうち、電極群の最外周に位置する部分についてはZn箔の片面にのみスラリーを塗布し、それ以外の部分についてはZn箔の両面にスラリーを塗布した。負極集電体とその上の負極活物質層とのプレス工程を経ることにより、電極密度2.0g/cm3(集電体を含まず)の負極を作製した。
<電極群の作製>
上記のとおり作製した正極と、Li 1.3 Al 0.3 Ti 1.7 (PO 4 ) 3 からなるセパレータと、上記のとおり作製した負極と、もう一つのLi 1.3 Al 0.3 Ti 1.7 (PO 4 ) 3 からなるセパレータとを、この順序で積層して積層体を得た。次に、この積層体を、負極が最外周に位置するように渦巻き状に捲回して電極群を作製した。これを90℃で加熱プレスすることにより、偏平状電極群を作製した。得られた電極群を、厚さが0.25mmのステンレスからなる薄型の金属缶からなる容器に収納した。金属缶として、内圧が2気圧以上になるとガスをリークする弁が設置されているものを用いた。
<電解質の調整>
LiClを水に12mol/L溶解させて、溶液を調整した。この溶液に、NMPを得溶液全体に対して10体積%になるように混合した。得られた電解質に対して、1体積%のポリオキシアルキレンアルキルエーテルを加えた。
次に作製したセルの評価方法を示す。結果は表1に記載した。
<貯蔵性能評価>
(初期放電容量)
二次電池を、セルを組んでからの待機時間12時間を空けた後、25℃環境下で2Cのレートにおいて(負極活物質換算)の定電流で2.6Vまで充電した後、2.2Vまで1Cでの放電を実施して初期の放電容量を測定した。
(自己放電率)
初期放電容量測定後、1Cレートにおいて所定のサイクル数の充放電測定を繰り返した後、1Cレート(負極活物質換算)の定電流で2.6Vまで充電した後、24時間放置した後に2.2Vまで1Cでの放電を実施する。貯蔵性能の指標として、自己放電率(%)を下記式より算出した。下記式により算出される自己放電率は、その値が低い程貯蔵性能が優れていることを示す。
(自己放電率) = 100−(24時間後の放電容量÷初期の放電容量)×100
<元素AとTiのmol比率測定>
セルを解体し、負極表面のEDS測定を行うことにより、元素AとTiの負極の表面におけるmol比率の測定を行った。測定は第1の実施形態に示したとおり行った。
実施例2〜47、及び比較例1〜3は表1〜3に従って、負極活物質の種類、正極活物質の種類、セパレータ、電解質の種類及び濃度、負極集電体の金属種、添加剤の種類及び量、添加金属の種類及び濃度、セルを組んでからの待機時間、初回の充放電レートを変更したことを除いて、実施例1と同様の方法で二次電池の作成を行い、評価し、結果は表4〜6に記載した。
なお、表中の「-」は添加していないなどの空欄を示す。
実施例1〜49と比較例1〜3を比較すると、実施例の方が元素AとTiのmol比率において、高い値を示し、かつ低い自己放電率を示した。これは、実施例では元素Aを含む化合物が負極の表面に多く存在していることで、負極からの水素発生を抑制することができたため、負極集電体と負極との剥離を抑制できた。また、元素AとTiのmol比率(A/(A+Ti))の最大値と最小値の差が3%以上あることは、電極表面に元素Aが十分に存在していることを意味し、電極表面からの水素発生を抑制できた。そのため、充放電効率と貯蔵性能を向上させることができた。
以上に説明した少なくとも1つの実施形態及び実施例によると、二次電池が提供される。この二次電池は水系電解質と、正極と、Ti含有複合酸化物を含む負極活物質を備える負極と、を備え、負極の表面にHg、Pb、Zn及びBiからなる群れより選ばれる少なくとも1種の元素Aが存在し、負極の表面を走査型電子顕微鏡法‐エネルギー分散型X線分光法で複数測定して得られる元素Aのmol量とTiのmol量との合計量に対する元素Aのmol比率(A/(A+Ti))の平均が5%以上40%以下である。そのため、充放電効率及び貯蔵性能に優れた二次電池を提供することができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。