以下、実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、実施の形態を通して共通の構成には同一の符号を付すものとし、重複する説明は省略する。また、各図は実施の形態の説明とその理解を促すための模式図であり、その形状や寸法、比などは実際の装置と異なる個所があるが、これらは以下の説明と公知の技術とを参酌して、適宜設計変更することができる。
(第1の実施形態)
非水系二次電池の課題を解決させるために、電解質の水溶液化の検討がなされている。水溶液電解質では、電池の充放電を実施する電位範囲を、溶媒として含まれている水の電気分解反応が起こらない電位範囲に留める必要がある。例えば、正極活物質としてリチウムマンガン酸化物および負極活物質としてリチウムバナジウム酸化物を用いることで、水溶媒の電気分解を回避できる。これらの組み合わせでは、1~1.5V程度の起電力が得られるものの、電池として十分なエネルギー密度が得られにくい。
正極活物質にリチウムマンガン酸化物、負極活物質としてLiTi2O4、Li4Ti5O12などといったリチウムチタン酸化物を用いると、理論的には2.6~2.7V程度の起電力が得られ、エネルギー密度の観点からも魅力的な電池になりうる。このような正負極材料の組み合わせを採用した非水系のリチウムイオン電池では優れた寿命性能が得られ、このような電池は既に実用化されている。しかしながら、水溶液電解質においては、リチウムチタン酸化物のリチウム挿入脱離の電位は、リチウム電位基準にて約1.5V(vs.Li/Li+)であるため、水溶液電解質の電気分解が起こりやすい。特に負極においても、負極集電体、或いは負極と電気的に接続されている金属製の外装缶の表面での電気分解による水素発生が激しく、その影響で集電体から活物質が容易に剥離し得る。そのため、このような電池では動作が安定せず、満足な充放電が不可能であった。
電極での水分解を抑制する方法としては、電極表面に被膜を形成する方法が考えられる。被膜としては、水素過電圧が高い金属を用いる金属被膜が考えられる。しかし金属被膜は緻密であるため、厚すぎるとリチウムイオン伝導を妨げ、電池特性が低下する。金属被膜は薄膜である必要があるが、金属薄膜を均一に形成することは困難である。
発明者らは、この課題を解決すべく鋭意研究した結果、第1の実施形態に係る二次電池を発明した。
第1の実施形態に係る二次電池は、正極と、アルミニウムを含む化合物を備える負極集電体及び負極集電体の上にチタンを含む負極活物質を備える負極と、水系電解質を含む電解質と、を具備し、負極活物質の造粒体の表面の少なくとも一部にアルミニウムを含む化合物が存在し、負極の表面のチタンの原子及びアルミニウムの原子の原子濃度の和に対するアルミニウムの原子濃度の比率({Al原子濃度/(Al原子濃度+Ti原子濃度)}×100)が3atm%以上30atm%以下である。
負極は集電体と前記集電体の上に配置される負極活物質を含む負極活物質層を備える。負極活物質層にはTi含有複合酸化物を含む負極活物質が含まれる。この負極の表面には、アルミニウムを含む化合物が存在する。アルミニウムを含む化合物とは、酸化物、または水酸化物のうち少なくとも1種を形成し、これが表面に析出する。アルミニウムを含む化合物は、負極集電体と、負極活物質層の集電体とは反対側の表面に露出している負極活物質、負極の導電剤、結着剤の表面上に存在することになる。負極の表面とは負極活物質層の集電体とは反対側の表面に露出している負極活物質、負極の導電剤、結着剤の表面を総称している。アルミニウムを含む化合物は物理的に存在する。物理的にとは、単結晶、あるいは微結晶が凝集し、膜状として存在する。アルミニウムを含む化合物は、交換電流密度が小さく、高い水素発生過電圧を有する。そのため、負極において水素発生を抑制することができる。負極活物質の造粒体とは、複数の第1の負極活物質と複数の負極活物質の凝集体の外周にある第2の負極活物質からなる。電解質について、詳しくは後述する。
アルミニウムを含む化合物は、例えば酸化アルミニウムや水酸化アルミニウムである。そのため、本実施形態に係る二次電池の備える負極の表面には非金属被膜を有する。この非金属被膜は、負極の表面のチタンの原子及びアルミニウムの原子に対するアルミニウムの原子の比率で定義される比率({Al原子濃度/(Al原子濃度+Ti原子濃度)}×100)が、3atm%以上30atm%以下である。このアルミニウムの原子比率が30atm%より多いと、負極活物質の造粒体の表面に存在するアルミニウムを含む化合物が過多になるため、Liイオン伝導が妨げられ、電池特性が低下する。一方、アルミニウムの原子比率が3atm%より小さいと、負極活物質の造粒体の表面に存在するアルミニウムを含む化合物が少なすぎるため水分解抑制をすることができず、電池特性が低下する。アルミニウムの原子比率は10 atm%以上21atm%以下であることがより好ましい。負極の表面のアルミニウムの原子比率は10 atm%以上21atm%以下であることで、よりリチウムイオン伝導を妨げずに、電極での水分解抑制をすることができるためである。
ここで、アルミニウムを含む化合物が表面に析出される流れを説明する。
アルミニウムが負極集電体に含まれる二次電池を組み立てる。このとき、組み立てた二次電池に用いられた活物質や導電剤などの表面にはアルミニウムを含む化合物は存在しない。活物質がアルミニウムを含む化合物で被覆されている場合、二次電池を組み立てた後にさらに活物質表面が被覆されるため、アルミニウムを含む化合物の層が厚くなる。このようになると、キャリアイオン、例えばLiイオンの挿入脱離の妨げが生じやすくなる。
二次電池に組み立てた後、アルミニウムは電解質中に溶出し始める。このように電解質に溶出したアルミニウムが、例えば酸化アルミとして負極の表面に析出する。この集電体からのアルミニウムの溶出は、例えば界面活性剤によって促進される。界面活性剤によって電解質の集電体に対する親和性が向上し、アルミニウムがより電解質中に溶出し易くなる。
アルミニウムの電解質への溶出は、電解質の性質によっても促進される。電解質が塩基性であると、集電体からアルミニウムが溶出し易く、溶出したアルミニウムが電解質中の酸素によって酸化されることで、負極の表面が酸化物や水酸化物で被覆される。電解質の塩基性は、pH7より大きければよい。より好ましくはpH10以上である。
このように電解質に溶出するアルミニウムの濃度を調整することで、負極の表面のチタンの原子及びアルミニウムの原子に対するアルミニウムの原子の比率で定義される比率({Al原子濃度/(Al原子濃度+Ti原子濃度)}×100)を、3atm%以上30atm%以下にすることができる。
アルミニウムを含む化合物の負極の表面への析出は、二次電池を組み立てた後すぐに始まるため、組み立てた後すぐの二次電池の負極の表面にもアルミニウムを含む化合物は存在することができる。
また、組み立て後に待機時間を設けることでより負極の表面へ析出させることができる。この待機時間は24時間程度あるとよい。
組み立て後に充放電を繰り返す間にも酸化によって、さらにアルミニウムを含む化合物を負極の表面に存在させることもできる。
このように、二次電池を組み立てた後にアルミニウムを含む化合物を負極の表面に存在させることで、活物質の電解質と接している部分にはアルミニウムを含む化合物が存在し、活物質同士が接している部分にはアルミニウムを含む化合物が存在しない。アルミニウムを含む化合物は絶縁物であるため、アルミニウムを含む化合物が活物質間に存在すると、活物質同士の接触が妨げられ、Liイオン伝導性が低下する。そのため、本実施形態に係る二次電池のように、負極活物質同士が接していない部分にアルミニウムを含む化合物を存在させることで、活物質でのLiイオンの挿入脱離といった電池反応を阻害せずに、水分解を抑制できる。
本実施形態に係る二次電池は、アルミニウムを含むことにより、負極の表面にアルミニウムを含む化合物を存在させることができ、負極集電体からの負極活物質の剥離を抑制できる。図1は第1の実施形態に係る二次電池が備える電極の断面模式図である。図1aは本実施形態に係る二次電池の備える電極の断面模式図である。図1bは従来の二次電池の備える電極の断面模式図である。図1a、図1bを比較すると、図1aに示されるように、活物質造粒体101は、第1の活物質1011と第2の活物質1012からなり、第1の活物質1011と第2の活物質1012が直接接することができる。言い換えるとアルミニウムを含む化合物100が活物質造粒体101の電解質と接している部分を覆う、つまり活物質101同士が直接することができる。そのため、アルミニウムを含む化合物が活物質同士の間に存在することにより生じる抵抗を抑えることができる。そのため、リチウム電位基準にて1.5V(vs.Li/Li+)付近においても、水系溶媒中でのチタン酸化物、リチウムチタン酸化物、リチウムチタン複合酸化物への充放電が可能となる。103は集電体である。アルミニウムは二次電池において、集電体に加え、電解質、負極に含ませることができる。対して、図1bでは第1の活物質1011と第2の活物質1012の間にアルミニウムを含む化合物100が存在するため、Liイオン伝導性が低下する。
ここで、アルミニウムの元素比率の測定方法を説明する。
まず、二次電池を分解する。例えば、二次電池を解体して、負極を取り出す。取り出した負極を純水で洗浄した後、大気環境下で終夜乾燥させる。
このようにして取り出した負極において、エネルギー分散型X線分析 (Energy dispersive X-ray spectrometry;EDS)の測定を行う。負極に対して無作為に5ヶ所選び、200倍の倍率で測定し、アルミニウムの原子比率({Al原子濃度/(Al原子濃度+Ti原子濃度)}×100)を導出する。EDSの測定視野は負極活物質よりも大きい。EDS分析で発生する特性X線の数は原子の濃度に比例する。各特性X線の強度(カウント数)を調べることで、含有原子の濃度が分かる。このようにして、負極の表面でのアルミニウムの原子濃度及びチタンの原子濃度を5カ所求め、5カ所でのチタンの原子及びアルミニウムの原子の原子濃度の和に対するアルミニウムの原子濃度の比率({Al原子濃度/(Al原子濃度+Ti原子濃度)}×100)の平均を求めることで、負極でのアルミニウムの原子比率を導出する。
アルミニウムの原子比率が大きいほど、負極の表面に存在するアルミニウムが多いことを示すので、アルミニウムを含む化合物の負極の表面における存在量が大きいと置き換えることもできる。
なお、今まで負極の表面におけるアルミニウムを含む化合物の存在を説明してきたが、アルミニウムを含む化合物は負極集電体上にも存在することができる。詳しくは後述する。
第1の実施例に係る二次電池において用いることができる各部材の材料について詳しく説明する。
1)負極
負極は、負極集電体と、負極集電体上に配置されている負極活物質層とを含む。負極活物質層は、負極集電体の少なくとも1つの面上に配置されている。例えば、負極集電体上の1つの面に負極活物質層が配置されていてもよく、または負極集電体上の1つの面とその裏面とに負極活物質層が配置されていてもよい。
負極活物質層は、チタン酸化物、リチウムチタン酸化物、およびリチウムチタン複合酸化物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物を含む負極活物質を含む。これら酸化物は1種類で用いることもできるし、複数種類を用いても良い。これらの酸化物では、リチウム電位基準にて1V以上2V以下(vs.Li/Li+)の範囲内でLi挿入脱離反応が起こる。そのため、二次電池の負極活物質としてこれらの酸化物を用いた場合には、充放電に伴う体積膨張収縮変化が小さいことから長寿命を実現することができる。
負極集電体には、アルミニウムを用いることができる。また、アルミニウムに加え、Ga、In、Bi、Tl、Sn、Pb、Tiからなる群の元素Aより選ばれる少なくとも1種の元素を集電体内にさらに含んでもよい。これらの元素は、これらの1種類で用いることもできるし、複数種類の元素を用いても良く、金属または金属合金として含むことができる。このような金属および金属合金は、単独で含まれていてもよく、或いは2種以上を混合して含んでいてもよい。これらの元素Aを集電体内に含んだ場合、集電体の機械的強度が高められ、加工性能が向上する。さらに、水系溶媒の電気分解を抑制し、水素発生を抑制させる効果が増加する。上記元素のなかでも、Pb、Tiがより好ましい。
集電体は、例えばアルミニウムからなる金属箔である。また、集電体は、例えばアルミニウムを含んだ合金からなる箔である。このような箔は、アルミニウムに加え、元素A以外の元素を1種または2種以上含み得る。金属体の形状としては、箔以外にも、例えばメッシュや多孔体などが挙げられる。エネルギー密度や出力向上のためには、体積が小さく、表面積が大きい箔の形状が望ましい。
また、負極集電体は、アルミニウムとは異なる金属を含んだ基板を含むことができる。このような場合、この基板の表面の少なくとも一部にアルミニウムを含む化合物が存在することで、水素発生を抑制できる。表面に存在するアルミニウムを含む化合物は、負極活物質層と接するように配置されていることが望ましい。例えば基板にアルミニウムのメッキを施して、基板の表面にアルミニウムを存在させることができる。または、基板の表面にアルミニウムを含む合金を用いたメッキ処理を施すことができる。基板には、アルミニウムに加えて、前述した元素Aを存在させてもよい。
集電体は、元素Aからなる群より選択される少なくとも1種の化合物を含んでいてもよい。これら元素A酸化物、および/または元素A水酸化物、および/または塩基性炭酸元素A化合物、および/または元素Aの硫酸化合物は、集電体の表面領域の少なくとも一部において、表面から深さ方向へ5nm以上1μm以下までの深さ領域において含まれていることが好ましい。
集電体の表層部分に元素Aの酸化物、元素Aの水酸化物、元素Aの塩基性炭酸化合物、および元素Aの硫酸化合物の何れかが少なくとも1種存在すると、水素発生を抑制することができる。また、これらの化合物が集電体の表層部分に存在すると、集電体と活物質との密着性が向上し、電子伝導のパスを増やすことができることからサイクル特性の向上と、低抵抗化が可能である。さらに、集電体上での水素発生を抑制することもできる。
基板は、Al、Fe、Cu、Ni、Tiから選択される少なくとも1種の金属を含むことが好ましい。これらの金属は、合金として含むこともできる。また、基板は、このような金属および金属合金を単独で含むことができ、或いは2種以上を混合して含むことができる。軽量化の観点から、基板がAl、Ti、またはこれらの合金を含むことが好ましい。
集電体に元素Aより選択される少なくとも1種の化合物を含んでいるかどうかは、先述したように電池を分解し、その後、例えばエネルギー分散型X線分光(Energy Dispersive X-ray Spectroscopy :SEM-EDX)や、X線光電子分光法(X-ray Photoelectron Spectroscopy:XPS)を行うことで、調べることができる。
負極活物質は、チタン酸化物、リチウムチタン酸化物、およびリチウムチタン複合酸化物からなる群より選択される1種類又は2種類以上の化合物を含む。リチウムチタン複合酸化物の例に、ニオブチタン酸化物およびナトリウムニオブチタン酸化物が含まれる。これらの化合物のLi吸蔵電位は、1V(vs.Li/Li+)以上3V(vs.Li/Li+)以下の範囲であることが望ましい。
チタン酸化物の例に、単斜晶構造のチタン酸化物、ルチル構造のチタン酸化物、アナターゼ構造のチタン酸化物が含まれる。各結晶構造のチタン酸化物は、充電前の組成がTiO2、充電後の組成がLixTiO2(xは0≦x)で表すことができる。また、単斜晶構造のチタン酸化物の充電前構造をTiO2(B)と表すことができる。
リチウムチタン酸化物の例に、スピネル構造リチウムチタン酸化物(例えば一般式Li4+xTi5O12(xは-1≦x≦3))、ラムスデライト構造のリチウムチタン酸化物(例えば、Li2+xTi3O7(-1≦x≦3))、Li1+xTi2O4(0≦x≦1)、Li1.1+xTi1.8O4(0≦x≦1)、Li1.07+xTi1.86O4(0≦x≦1)、LixTiO2(0<x)などが含まれる。
ニオブチタン酸化物の例に、LiaTiMbNb2±βO7±σ(0≦a≦5、0≦b≦0.3、0≦β≦0.3、0≦σ≦0.3、MはFe、V、Mo及びTaよりなる群から選択される少なくとも1種の元素)で表されるものが含まれる。
ナトリウムニオブチタン酸化物の例に、一般式Li2+vNa2-wM1xTi6-y-zNbyM2zO14+δ(0≦v≦4、0<w<2、0≦x<2、0<y<6、0≦z<3、y+z<6、-0.5≦δ≦0.5、M1はCs、K、Sr、Ba、Caより選択される少なくとも1つを含み、M2はZr、Sn、V、Ta、Mo、W、Fe、Co、Mn、Alより選択される少なくとも1つを含む)で表される斜方晶型Na含有ニオブチタン複合酸化物が含まれる。
負極活物質として好ましい化合物に、アナターゼ構造のチタン酸化物、単斜晶構造のチタン酸化物、スピネル構造のリチウムチタン酸化物が含まれる。各化合物は、Li吸蔵電位が1.4V(vs.Li/Li+)以上2V(vs.Li/Li+)以下の範囲であるため、例えば正極活物質としてのリチウムマンガン酸化物と組み合わせることで、高い起電力を得ることができる。これらの中でも、スピネル構造のリチウムチタン酸化物は、充放電反応による体積変化が極めて少ないため、より好ましい。
負極活物質は、粒子の形態で負極活物質層に含有され得る。負極活物質粒子は、単独の一次粒子、一次粒子の凝集体である二次粒子、あるいは、単独の一次粒子と二次粒子の混合物であり得る。粒子の形状は、特に限定されるものではなく、例えば、球状、楕円形状、扁平形状、繊維状等にすることができる。
負極活物質の二次粒子の平均粒子径(直径)が、3μm以上であることが好ましい。より好ましくは5μm以上20μm以下である。この範囲であると、活物質の表面積が小さいため、水素発生を抑制する効果を高めることができる。
二次粒子の平均粒子径が3μm以上の負極活物質は、例えば、次の方法で得られる。先ず、活物質原料を反応合成して平均粒子径1μm以下の活物質前駆体を作製する。その後、活物質前駆体に対し焼成処理を行い、ボールミルやジェトミルなどの粉砕機を用いて粉砕処理を施す。次いで焼成処理において、活物質前駆体を凝集して粒子径の大きい二次粒子に成長させる。
負極活物質の一次粒子の平均粒子径は1μm以下とすることが望ましい。これにより、活物質内部でのLiイオンの拡散距離が短くなり、比表面積が大きくなる。そのため、優れた高入力性能(急速充電性能)が得られる。一方、平均粒子径が小さいと、粒子の凝集が起こりやすくなり、電解質の分布が負極に偏って正極での電解質の枯渇を招く恐れがあることから、下限値は0.001μmにすることが望ましい。さらに好ましい平均粒子径は、0.1μm以上0.8μm以下である。
造粒体は、負極活物質、導電剤及び結着剤を混錬する際、つまり負極を作製するためのスラリーを作製する際に生じる。
負極活物質粒子は、N2析出によるBET法での比表面積が3m2/g以上200m2/g以下の範囲であることが望ましい。これにより、負極と電解質との親和性をさらに高くすることができる。
負極活物質層(集電体を除く)の比表面積は、3m2/g以上50m2/g以下の範囲であることが望ましい。比表面積のより好ましい範囲は、5m2/g以上50m2/g以下である。負極活物質層は、集電体上に担持された負極活物質、導電剤及び結着剤を含む多孔質の層であり得る。
負極の多孔度(集電体を除く)は、20~50%の範囲にすることが望ましい。これにより、負極と電解質との親和性に優れ、かつ高密度な負極を得ることができる。多孔度のさらに好ましい範囲は、25~40%である。
導電剤としては、アセチレンブラック、カーボンブラック、コークス、炭素繊維、黒鉛などの炭素材料やニッケル、亜鉛などの金属粉末を挙げることができる。導電剤の種類は1種類または2種類以上にすることができる。炭素材料は、それ自身から水素が発生するため、導電剤として金属粉末を使用してもよい。
結着剤としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、フッ素系ゴム、エチレン-ブタジエンゴム、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリイミド(PI)、ポリアクリルイミド(PAI)などが挙げられる。結着剤の種類は1種類または2種類以上にすることができる。
負極活物質、導電剤及び結着剤の負極活物質層における配合比については、負極活物質は70重量%以上95重量%以下、導電剤は3重量%以上20重量%以下、結着剤は2重量%以上10重量%以下の範囲にすることが好ましい。導電剤の配合比が3重量%以上であれば負極の導電性を良好にすることができ、20重量%以下であれば導電剤表面での電解質の分解を低減することができる。結着剤の配合比が2重量%以上であれば十分な電極強度が得られ、10重量%以下であれば電極の絶縁部を減少させることが出来る。導電剤でも水分解は生じうるので、導電剤上にもアルミニウムが存在したほうが好ましい。
負極は、例えば次のようにして作製することができる。先ず、負極活物質、導電剤及び結着剤を適切な溶媒に分散させてスラリーを調製する。このスラリーを集電体に塗布し、塗膜を乾燥させることで集電体上に負極活物質層を形成する。ここで、例えばスラリーを集電体上の1つの面に塗布してもよく、またはスラリーを集電体上の1つの面とその裏面とに塗布してもよい。次いで、集電体と負極活物質層とに対し、例えば加熱プレスなどのプレスを施すことにより負極を作製することができる。
2)正極
この正極は、正極集電体と、正極集電体の片面もしくは両面に担持され、活物質、導電剤および結着剤を含む正極層とを有することができる。
正極集電体としてはステンレス、Al、Tiなどの金属からなる箔、多孔体、メッシュを用いることが好ましい。集電体と電解質との反応による集電体の腐食を防止するため、集電体表面を異種元素で被覆してもよい。
正極活物質には、リチウムやナトリウムを吸蔵放出可能なものが使用され得る。正極は、1種類の正極活物質を含んでも良く、或いは2種類以上の正極活物質を含むことができる。正極活物質の例には、リチウムマンガン複合酸化物、リチウムニッケル複合酸化物、リチウムコバルトアルミニウム複合酸化物、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物、スピネル型リチウムマンガンニッケル複合酸化物、リチウムマンガンコバルト複合酸化物、リチウム鉄酸化物、リチウムフッ素化硫酸鉄、オリビン結晶構造のリン酸化合物(例えば、LixFePO4(0≦x≦1)、LixMnPO4(0≦x≦1))などが含まれる。オリビン結晶構造のリン酸化合物は、熱安定性に優れている。
高い正極電位の得られる正極活物質の例を以下に記載する。例えばスピネル構造のLixMn2O4(0<x≦1)、LixMnO2(0<x≦1)などのリチウムマンガン複合酸化物、例えばLixNi1-yAlyO2(0<x≦1、0<y≦1)などのリチウムニッケルアルミニウム複合酸化物、例えばLixCoO2(0<x≦1)などのリチウムコバルト複合酸化物、例えばLixNi1-y-zCoyMnzO2(0<x≦1、0<y≦1、0≦z≦1)などのリチウムニッケルコバルト複合酸化物、例えばLixMnyCo1-yO2(0<x≦1、0<y≦1)などのリチウムマンガンコバルト複合酸化物、例えばLixMn2-yNiyO4(0<x≦1、0<y<2)などのスピネル型リチウムマンガンニッケル複合酸化物、例えばLixFePO4(0<x≦1)、LixFe1-yMnyPO4(0<x≦1、0≦y≦1)、LixCoPO4(0<x≦1)などのオリビン構造を有するリチウムリン酸化物、フッ素化硫酸鉄(例えばLixFeSO4F(0<x≦1))が挙げられる。
また、ナトリウムマンガン複合酸化物、ナトリウムニッケル複合酸化物、ナトリムコバルト複合酸化物、ナトリムニッケルコバルトマンガン複合酸化物、ナトリウム鉄複合酸化物、ナトリウムリン酸化物(例えば、ナトリウムリン酸鉄、ナトリウムリン酸バナジウム)、ナトリウム鉄マンガン複合酸化物、ナトリウムニッケルチタン複合酸化物、ナトリウムニッケル鉄複合酸化物、ナトリウムニッケルマンガン複合酸化物などが含まれる。
好ましい正極活物質の例に、鉄複合酸化物(例えばNayFeO2、0≦y≦1)、鉄マンガン複合酸化物(例えばNayFe1-xMnxO2、0<x<1、0≦y≦1)、ニッケルチタン複合酸化物(例えばNayNi1-xTixO2、0<x<1、0≦y≦1)、ニッケル鉄複合酸化物(例えばNayNi1-xFexO2、0<x<1、0≦y≦1)、ニッケルマンガン複合酸化物(例えばNayNi1-xMnxO2、0<x<1、0≦y≦1)、ニッケルマンガン鉄複合酸化物(例えばNayNi1-x-zMnxFezO2、0<x<1、0≦y≦1、0<z<1、0<1-x-z<1)、リン酸鉄(例えばNayFePO4、0≦y≦1)が含まれる。
正極活物質の粒子は、単独の一次粒子、一次粒子の凝集体である二次粒子、または単独の一次粒子と二次粒子の双方を含むものであり得る。正極活物質の一次粒子の平均粒子径(直径)は10μm以下であることが好ましく、より好ましくは0.1μm~5μmである。正極活物質の二次粒子の平均粒子径(直径)は100μm以下であることが好ましく、より好ましくは10μm~50μmである。
正極活物質の粒子表面の少なくとも一部が炭素材料で被覆されていてもよい。炭素材料は、層構造、粒子構造、あるいは粒子の集合体の形態をとり得る。
正極層の電子伝導性を高め、集電体との接触抵抗を抑えるための導電剤としては、例えば、アセチレンブラック、カーボンブラック、黒鉛、平均繊維径1μm以下の炭素繊維等を挙げることができる。導電剤の種類は1種類又は2種類以上にすることができる。
活物質と導電剤とを結着させるための結着剤は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、フッ素系ゴム、エチレン-ブタジエンゴム(SBR)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリイミド(PI)、ポリアクリルイミド(PAI)を含む。結着剤の種類は1種類又は2種類以上にすることができる。
正極活物質、導電剤及び結着剤の正極層における配合比については、正極活物質は70重量%以上95重量%以下、導電剤は3重量%以上20重量%以下、結着剤は2重量%以上10重量%以下の範囲にすることが好ましい。導電剤の配合比が3重量%以上であれば正極の導電性を良好にすることができ、20重量%以下であれば導電剤表面での電解質の分解を低減することができる。結着剤の配合比が2重量%以上であれば十分な電極強度が得られ、10重量%以下であれば電極の絶縁部を減少させることが出来る。
正極は、例えば次のようにして作製することができる。先ず、正極活物質、導電剤及び結着剤を適切な溶媒に分散させてスラリーを調製する。このスラリーを集電体に塗布し、塗膜を乾燥させることで集電体上に正極層を形成する。ここで、例えばスラリーを集電体上の1つの面に塗布してもよく、またはスラリーを集電体上の1つの面とその裏面とに塗布してもよい。次いで、集電体と正極層とに対し、例えば加熱プレスなどのプレスを施すことにより正極を作製することができる。
3)水系電解質
水系電解質には、水系溶媒と第1の電解質とを含む液状水系電解質、およびこの液状水系電解質に高分子材料を複合化したゲル状電解質が挙げられる。水系には第1化合物が含まれていてもよい。
第1化合物は、分子内に疎水性部と親水性部を有し、例えば、疎水性部にて電極表面(電極活物質表面)に吸着し得る。チタン含有酸化物を含む負極を用いた二次電池では、チタン含有酸化物と第1化合物との相互作用が強すぎず、過剰な被膜は形成されない。第1化合物における親水性部と水分子との相互作用により、水分子は拘束される。そのため、水分子の電極活物質(例えば、チタン含有酸化物)表面への接近が阻害され、水の電気分解の抑制が促進される。
第1化合物として非イオン性の界面活性剤を用いることがより好ましい。非イオン性界面活性剤は、水素結合により水分子と相互作用する。そのため、非イオン性の界面活性剤は、電極活物質への水分子の接近をよりよく妨げることができる。第1化合物としては、例えばC12H25-O‐(CH2CH(CH3)O)y‐(CH2CH2O)xH、C4H9O‐(CH2CH2O)x‐[CH2CH(CH3)O]yH、OH‐(CH2CH2O)z‐(CH2CH(CH3)O)y‐(CH2CH2O)xHなどを用いることができる。
第1化合物として、1種の化合物を単独で用いてもよい。或いは、2種以上の化合物を第1化合物として用いてもよい。1種の化合物を単独で第1化合物に用いた場合でも、上述した効果を発現させることができる。
第1化合物には、第1化合物の原料であるアルコール、或いは副生成物であるポリエーテルポリオールが含まれていても良い。
水系電解質への第1化合物の添加により、界面張力は変化し得る。例えば、第1化合物を添加することにより、水系電解質の界面張力が低下し得る。第1化合物の種類に応じて、界面張力の変化の度合いが異なる。
水系電解質における界面活性剤の種類を変更したり添加量を増加させたりしても、水系電解質の界面張力を20mN/m程度より低くすることは困難である。そのため、水系電解質の界面張力を20mN/m以上とすることで、第1化合物を過剰に用いずに済む。
また、水系電解質の界面張力は48mN/m以下が好ましい。48mN/m以下であることで、電極と水系電解質の親和性が向上し、電極でのリチウムイオンの出入りが促進される。界面張力が48mN/mを超えると、界面張力が高くなり過ぎ、電極と水系電解質の親和性が低く、電極でのリチウムイオンの出入りが妨げられるため、好ましくない。水系電解質の界面張力は25mN/m以上30mN/m以下であることがより好ましい。水系電解質と電極との相互作用は、大きすぎると電極での水分解反応が促進される。これは、界面張力が25mN/m以上30mN/m以下であることで、電極と水系電解質の親和性は向上するが、電極での水分解を防ぐことができるためである。
測定では、電池の外装、例えば、円筒電池の底に穴をあけた後、電池を回収容器に収める。回収容器ごと電池を高速遠心機に導入して、遠心力により電池内から液状の水系電解質を回収容器へ抽出する。水系電解質の界面張力は、例えば、懸滴法を用いて求めることができる。測定装置としては、例えば、協和界面科学社製、自動接触角計Dme-201を用いることができる。
界面張力の算出には懸滴法を用い、下記式(1)から水系電解質の界面張力を算出する。
界面張力(mN /M)=Δρg de2(1/H)・・・・・(1)
式(1)における各記号は、次の通りである:
Δρ:密度差、g:重力加速度、de:懸滴の最大径、1/H:補正係数。
例えば、測定を5回行い、その平均値を界面張力とみなす。
第1化合物が親水性部と疎水性部とを含むことは、水系電解質のプロトン核磁気共鳴(1H NMR)スペクトルを測定することで確認できる。1H NMRスペクトル測定に供する試料としては、例えば、電池から抽出した液状の水系電解質をそのまま用いることができる。水系電解質を重クロロホルム(CDCl3)に溶解させ、1H NMRスペクトルを測定する。得られたスペクトルにおいて、0.8~1.4 ppmに疎水性基由来のメチル基およびメチレン基に、3~4 ppmにエチレンオキサイドに帰属できるピークが観測される。
第1化合物の分子量を測定する場合はMALDI-TOF-MS(Matrix Assisted Laser Desorption/Ionization Time-of-Flight Mass Spectrometry)分析により測定できる。装置としては、例えば、日本電子社(JEOL)製JMS-S3000 Spiral TOFを用いることができる。データ解析には、例えば、日本電子社製MS Tornado Analysisを用いることができる。質量構成の外部標準には、ポリメタクリル酸メチル(サイズ排除クロマトグラフィー用分子量標準)が用いられる。
水系溶媒としては、水を含む溶液を用いることができる。ここで、水を含む溶液とは、純水であってもよく、或いは水と水以外の物質との混合溶液や混合溶媒であってもよい。
上記水系電解質は、溶質となる塩1molに対し、水溶媒量(例えば水系溶媒中の水量)が1mol以上であることが好ましい。さらに好ましい形態は、溶質となる塩1molに対する水溶媒量が3.5mol以上である。
第1の電解質としては、水系溶媒に溶解したときに解離して上記アニオンを生じさせるものを用いることができる。特に、Liイオンと上記アニオンとに解離するリチウム塩が好ましい。具体的には、第1の電解質は、NO3-、Cl-、LiSO4- 、SO42-、およびOH-からなる群より選択される少なくとも1種のアニオンを含む。水系中に含まれるこれらのアニオンは、1種でもよく、或いは、2種以上のアニオンが含まれていてもよい。このようなリチウム塩としては、例えばLiNO3、LiCl、Li2SO4、LiOHなどを挙げることができる。なお、液状水系電解質とゲル状電解質を総称するために用いた水系電解質と、溶質としての電解質を区別するために便宜上溶質としての電解質を第1の電解質と称している。
また、Liイオンと上記アニオンへと解離するリチウム塩は、水系溶媒における溶解度が比較的高い。そのため、アニオンの濃度が1-10Mと高く、Liイオン拡散性が良好である水系電解質を得ることができる。
NO3
-及び/又はCl-を含む水系電解質は、0.1-10M程度の幅広いアニオン濃度の範囲で用いることができる。イオン伝導度と、リチウム平衡電位の両立の観点から、これらのアニオンの濃度が3-12Mと高いことが好ましい。NO3
-またはCl-を含む水系電解質のアニオン濃度が8-12Mであることがより好ましい。
LiSO4
-及び/又はSO4
2-を含む水系電解質は、0.05-2.5M程度のアニオン濃度の範囲で用いることができる。イオン伝導度の観点から、これらのアニオンの濃度が1.5-2.5Mと高いことが好ましい。
水系電解質中のOH-濃度は、10-10-0.1Mであることが望ましい。
また、水系電解質はリチウムイオンとナトリウムイオンとの両方を含むことができる。
水系電解質のpHは、4以上13以下であることが望ましい。pHが4未満であると、水系電解質が酸性であるため、活物質の分解が進行しやすくなる。pHが13を超えると、正極での酸素発生過電圧が低下するため、水系溶媒の電気分解が進行しやすくなる。
水系電解質中の溶質、即ち第1の電解質は、例えばイオンクロマトグラフ法により定性および定量することができる。イオンクロマトグラフ法は、感度が高いため、分析手法として特に好ましい。
イオンクロマトグラフ法による水系電解質に含まれる溶質の定性定量分析の具体的な測定条件の例を以下に示す:
システム: Prominence HIC-SP
分析カラム: Shim-pack IC-SA3
ガードカラム: Shim-pack IC-SA3(G)
溶離液: 3.6 mmol/L 炭酸ナトリウム水溶液
流量: 0.8 mL/min
カラム温度: 45℃
注入量: 50μL
検出: 電気伝導度
水系電解質中に水が含まれているかは、ガスクロマトグラフィー質量分析(Gas Chromatography - Mass Spectrometry;GC-MS)測定により確認できる。また、水系電解質中の水含有量の算出は、例えばICPの発光分析などで測定することができる。また水系電解質の比重を測定することで、溶媒のモル数を算出できる。水系電解質は正極側と負極側で同じものを用いてもよいし、異なるものを用いてもよい。この場合、正極の水系電解質のpHは1以上7以下であることが好ましい。正極の水系電解質のpHが8以上となると水の電気分解に起因する酸素発生反応が有利に進み、pH1未満だと活物質の分解が進行するため、好ましくない。負極の水系電解質はpH7より大きいことが好ましく7以下では水の電気分解に起因する水素発生反応が有利に進むため、好ましくない。
前述の高分子材料としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリエチレンオキサイド(PEO)等を挙げることができる。
水系電解質には添加剤を添加することもできる。たとえば、界面活性剤や前述した元素Aを含む金属を添加することができる。界面活性剤は、例えばポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、チオ尿素、3、3‘-ジチオビス(1-プロパンホス酸) 2ナトリウム、ジメルカプトチアジアゾール、ホウ酸、シュウ酸、マロン酸、サッカリン、ナフタレンスルホン酸ナトリウム、ゼラチン、硝酸カリウム、芳香族アルデヒド、複素環アルデヒドなどの非イオン性界面活性剤などが挙げられる。界面活性剤は単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いることもできる。
添加剤として、水系電解質または負極活物質層中にアルミニウム、ジルコニア、チタンのいずれか1つを含んでも良い。これにより、上述したものと同様の効果、すなわち、活物質の、他の活物質と接していない部分に添加金属を含む皮膜が形成され、これにより水分解が抑制されると考えられる。添加する金属の形態は、金属単体であっても良いし、酸化物、塩化物、硫化物、硝酸塩、硫酸塩、水酸化物塩のうちのどれか一つ、または2つ以上組み合わせても良い。また、添加金属は水系電解質中にイオンでも固体でも存在することができる。負極活物質層中に含ませる場合は、スラリーを作製する際に添加金属を加えてよい。水系電解質中に添加する場合は、水系電解質中に含まれる金属の濃度が過剰になると、集電体からの金属イオンの析出が抑制され、負極内部での活物質被覆が妨げられ、水分解抑制の効果が低下する可能性がある。水系電解質中の金属イオンが負極内部に到達するには時間を要するため、負極内部での金属化合物被覆は、集電体から溶出する金属イオンにより成されると推測される。しかし、予め水系電解質中に過剰の金属イオンが存在すると、溶解度の関係から、集電体からの金属イオンの溶出が抑制されると考えられる。溶出が抑制されると、活物質の表面にアルミニウムを含む化合物で被覆されにくくなり、好ましくない。また、金属を加えることにより、水系電解質のpHが大きく変動しないように注意する。例えば塩化アルミニウムは、加水分解によりpHを酸性側に移動させる。負極の水系電解質が酸性側に移動するほど、負極反応に対して水分解が有利になるため、好ましくない。
界面活性剤が水系電解質中に含まれているかは、先述したGC-MSを用いて調べることができる。例えば、水系電解質をヘキサンで抽出し、水系電解質中の有機溶媒を取り分ける。この取り分けた有機溶媒に対してGC-MSと核磁気共鳴測定(NMR)を行うことにより特定することができる。また、添加金属はICPにより調べることができる。
水系電解質は有機溶媒を含み得る。
4)セパレータ
正極と負極との間にはセパレータを配置することができる。セパレータを絶縁材料で構成することで、正極と負極とが電気的に接触することを防止することができる。また、正極と負極との間を電解質が移動可能な形状のものを使用することが望ましい。セパレータの例に、不織布、フィルム、紙などが含まれる。セパレータの構成材料の例に、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン、セルロースが含まれる。好ましいセパレータの例に、セルロース繊維を含む不織布、ポリオレフィン繊維を含む多孔質フィルムを挙げることができる。セパレータの気孔率は60%以上にすることが好ましい。また、繊維径は10μm以下が好ましい。繊維径を10μm以下にすることで、電解質に対するセパレータの親和性が向上するので電池抵抗を小さくすることができる。繊維径のより好ましい範囲は3μm以下である。気孔率が60%以上のセルロース繊維含有不織布は、電解質の含浸性が良く、低温から高温まで高い出力性能を出すことができる。また、長期充電保存、フロート充電、過充電においても負極と反応せず、リチウム金属のデンドライト析出による負極と正極の短絡が発生しない。より好ましい範囲は62%~80%である。
また、セパレータとして、固体電解質を使用することもできる。固体電解質としては、NASICON型構造を有し、一般式LiM2(PO4)3で表されるリチウムリン酸固体電解質を用いることが好ましい。上記一般式中のMは、チタン(Ti)、ゲルマニウム(Ge)、ストロンチウム(Sr)、ジルコニウム(Zr)、スズ(Sn)、アルミニウム(Al)からなる群より選ばれる少なくとも一種類以上の元素であることが好ましい。元素Mは、Ge、Zr及びTiの何れか1つの元素と、Alとを含むことがより好ましい。NASICON型骨格を有するリチウムリン酸固体電解質の具体例としては、LATP(Li1+xAlxTi2-x(PO4)3;0.1≦x≦0.4)を挙げることができる。アモルファス状のLIPON(Li2.9PO3.3N0.46)、ガーネット型のLLZ(Li7La3Zr2O12)などの酸化物が好ましい。
また、βアルミナ、Na1+xZr2SixP3-xO12(0≦x≦3)、NaAlSi3O8などもあげることができる。
セパレータは、厚さが20μm以上100μm以下、密度が0.2g/cm3以上0.9g/cm3以下であることが好ましい。この範囲であると、機械的強度と電池抵抗の軽減のバランスを取ることができ、高出力で内部短絡が抑制された二次電池を提供することができる。また、高温環境下でのセパレータの熱収縮が少なく、良好な高温貯蔵性能を出すことが出来る。
セパレータは、多孔質自立膜と固体電解質層と第1結着剤とを含むものでもよい。セパレータは、多孔質自立膜と、多孔質自立膜の一方の主面上に設けられた固体電解質層との二層構造を有している。多孔質自立膜と固体電解質層との積層体は、固体電解質層に含まれる結着剤と同じ材料の結着剤により結着され、一体化している。固体電解質層は、固体電解質を含む。
この多孔質自立膜と固体電解質層と第1結着剤とを含むものセパレータの膜厚は、100μm以下であることが好ましく、70μm以下であることがより好ましい。このセパレータは、多孔質自立膜と固体電解質層との二層構造であるため、その膜厚を薄くしても、遮水性と十分な強度とを両立させることができる。なお、セパレータの膜厚は、機械的強度を高めるという観点からは、50μm以上であることが好ましい。セパレータは、可撓性を有していることが好ましい。
このセパレータの固体電解質層は第2結着剤を含みうる。第1結着剤、第2結着剤は高分子材料である。高分子材料は、単一のモノマーユニットからなる重合体(ポリマー)、複数のモノマーユニットからなる共重合体(コポリマー)、又はこれらの混合物であり得る。高分子材料は、酸素(O)、硫黄(S)、窒素(N)、及びフッ素(F)からなる群より選ばれる1種類又は2種類以上の元素を含む官能基を有する炭化水素で構成されるモノマーユニットを含んでいることが好ましい。高分子材料において、モノマーユニットで構成された部分が占める割合は70モル%以上であることが好ましい。
多孔質自立膜は、例えば、多孔質フィルム又は不織布である。多孔質フィルム又は不織布の材料としては、例えば、ポリエチレン(polyethylene;PE)、ポリプロピレン(polypropylene;PP)、セルロース、又はポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene fluoride;PVdF)を用いることができる。多孔質フィルムは、セルロース製の不織布であることが好ましい。、例えば、3μm以上50μm以下であり、好ましくは5μm以上30μm以下である。
固体電解質層は、1価の陽イオンを透過させることができる。1価の陽イオンとしては、例えば、リチウムイオンやナトリウムイオンなどのアルカリ金属イオンを挙げることができる。固体電解質層の膜厚は、例えば、3μm以上90μm以下であり、好ましくは5μm以上70μm以下である。
5)容器
正極、負極及び電解質が収容される容器には、金属製容器や、ラミネートフィルム製容器、ポリエチレンやポリプロピレンなどの樹脂容器を使用することができる。
金属製容器としては、ニッケル、鉄、ステンレス、亜鉛などからなる金属缶で角形、円筒形の形状のものが使用できる。
樹脂製容器、金属製容器それぞれの板厚は、1mm以下にすることが望ましく、さらに好ましい範囲は0.5mm以下である。さらに好ましい範囲は0.3mm以下である。また、板厚の下限値は、0.05mmにすることが望ましい。
ラミネートフィルムとしては、例えば、金属層を樹脂層で被覆した多層フィルムなどを挙げることができる。金属層の例に、ステンレス箔、アルミニウム箔、アルミニウム合金箔が含まれる。樹脂層には、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート(PET)などの高分子を用いることができる。ラミネートフィルムの厚さの好ましい範囲は、0.5mm以下である。より好ましい範囲は0.2mm以下である。また、ラミネートフィルムの厚さの下限値は、0.01mmにすることが望ましい。
実施形態に係る二次電池は、角形、円筒形、扁平型、薄型、コイン型等の様々な形態の二次電池に適用することが可能である。さらにバイポーラ構造を有する二次電池であってもよい。これにより複数直列のセルを1個のセルで作製できる利点がある。
実施形態に係る二次電池の一例を図2~図5を参照して説明する。
図2及び図3に、金属製容器を用いた二次電池の一例を示す。
電極群1は、矩形筒状の金属製容器2内に収納されている。電極群1は、正極3及び負極4をその間にセパレータ5を介在させて偏平形状となるように渦巻き状に捲回した構造を有する。電解質(図示しない)は、電極群1に保持されている。図3に示すように、電極群1の端面に位置する正極3の端部の複数個所それぞれに帯状の正極リード6が電気的に接続されている。また、この端面に位置する負極4の端部の複数個所それぞれに帯状の負極リード7が電気的に接続されている。この複数ある正極リード6は、一つに束ねられた状態で正極導電タブ8と電気的に接続されている。正極リード6と正極導電タブ8から正極端子が構成されている。また、負極リード7は、一つに束ねられた状態で負極導電タブ9と接続されている。負極リード7と負極導電タブ9から負極端子が構成されている。金属製の封口板10は、金属製容器2の開口部に溶接等により固定されている。正極導電タブ8及び負極導電タブ9は、それぞれ、封口板10に設けられた取出穴から外部に引き出されている。封口板10の各取出穴の内周面は、正極導電タブ8及び負極導電タブ9との接触による短絡を回避するために、絶縁部材11で被覆されている。
図4及び図5に、ラミネートフィルム製外装部材を用いた二次電池の一例を示す。
積層型電極群1は、2枚の樹脂フィルムの間に金属層を介在したラミネートフィルムからなる袋状容器2内に収納されている。積層型電極群1は、図5に示すように正極3と負極4とをその間にセパレータ5を介在させながら交互に積層した構造を有する。正極3は複数枚存在し、それぞれが集電体3aと、集電体3aの両面に形成された正極活物質含有層3bとを備える。負極4は複数枚存在し、それぞれが集電体4aと、集電体4aの両面に形成された負極活物質含有層4bとを備える。各負極4の集電体4aは、一辺が正極3から突出している。突出した集電体4aは、帯状の負極端子12に電気的に接続されている。帯状の負極端子12の先端は、容器2から外部に引き出されている。また、図示しないが、正極3の集電体3aは、集電体4aの突出辺と反対側に位置する辺が負極4から突出している。負極4から突出した集電体3aは、帯状の正極端子13に電気的に接続されている。帯状の正極端子13の先端は、負極端子12とは反対側に位置し、容器2の辺から外部に引き出されている。
図2~図5に示す二次電池には、容器内に発生した水素ガスを外部に放出させるための安全弁を設けることができる。安全弁は、内圧が設定値よりも高くなった場合に作動し、内圧が低下すると封止栓として機能する復帰式、一度作動すると封止栓としての機能が回復しない非復帰式のいずれでも使用可能である。また、図2~図5に示す二次電池は、密閉式であるが、水素ガスを水に戻す循環システムを備える場合には開放系とすることが可能である。
以上説明した実施形態によれば、二次電池は正極と、アルミニウムを含む化合物を備える負極集電体及び負極集電体の上にチタンを含む負極活物質を備える負極と、水系電解質を含む電解質と、を具備し、負極活物質の造粒体の表面の少なくとも一部にアルミニウムを含む化合物が存在し、負極の表面のチタンの原子及びアルミニウムの原子の原子濃度の和に対するアルミニウムの原子濃度の比率({Al原子濃度/(Al原子濃度+Ti原子濃度)}×100)が3atm%以上30atm%以下ある。本実施形態に係る二次電池を備えることで、充放電効率に優れた二次電池を提供することができる。
(第2の実施形態)
第2の実施形態によれば、二次電池を単位セルとする組電池を提供することができる。二次電池には、第1の実施形態の二次電池を用いることができる。
組電池の例には、電気的に直列又は並列に接続された複数の単位セルを構成単位として含むもの、電気的に直列接続された複数の単位セルからなるユニットまたは電気的に並列接続された複数の単位セルからなるユニットを含むもの等を挙げることができる。
組電池は、筐体に収容されていても良い。筐体は、アルミニウム合金、鉄、ステンレスなどからなる金属缶、プラスチック容器等が使用できる。また、容器の板厚は、0.5mm以上にすることが望ましい。
二次電池の複数個を電気的に直列又は並列接続する形態の例には、それぞれが容器を備えた複数の二次電池を電気的に直列又は並列接続するもの、共通の筐体内に収容された複数の電極群を電気的に直列又は並列接続するものが含まれる。前者の具体例は、複数個の二次電池の正極端子と負極端子を金属製のバスバー(例えば、アルミニウム、ニッケル、銅)で接続するものである。後者の具体例は、1個の筐体内に複数個の電極群を隔壁により電気化学的に絶縁した状態で収容し、これら電極群を電気的に直列接続するものである。電気的に直列接続する電池個数を5~7の範囲にすることにより、鉛蓄電池との電圧互換性が良好になる。鉛蓄電池との電圧互換性をより高くするには、単位セルを5個または6個直列接続した構成が好ましい。
組電池の一例を図6を参照して説明する。図6に示す組電池31は、第1の実施形態に係る角型の二次電池(例えば図2、図3)321~325を単位セルとして複数備える。電池321の正極導電タブ8と、その隣に位置する電池322の負極導電タブ9とが、リード33によって電気的に接続されている。さらに、この電池322の正極導電タブ8とその隣に位置する電池323の負極導電タブ9とが、リード33によって電気的に接続されている。このように電池321~325間が直列に接続されている。
第2の実施形態の組電池によれば、第1の実施形態に係る二次電池含んでいるため、充放電効率に優れた組電池を提供することができる。
(第3の実施形態)
第3の実施形態によれば、電池パックが提供される。この電池パックは、第1の実施形態に係る二次電池を具備している。
第3の実施形態に係る電池パックは、先に説明した第1の実施形態に係る二次電池(単位セル)を1個または複数個具備することができる。第3の実施形態に係る電池パックに含まれ得る複数の二次電池は、電気的に直列、並列、又は直列および並列を組み合わせて接続されることができる。また、複数の二次電池は、電気的に接続された組電池を構成することもできる。複数の二次電池から組電池を構成する場合、第2の実施形態の組電池を使用することができる。
第3の実施形態に係る電池パックは、保護回路をさらに具備することができる。保護回路は、二次電池の充放電を制御するものである。或いは、電池パックを電源として使用する装置(例えば、電子機器、自動車等)に含まれる回路を、電池パックの保護回路として使用することができる。
また、第3の実施形態に係る電池パックは、通電用の外部端子をさらに具備することもできる。通電用の外部端子は、二次電池からの電流を外部に出力するため、及び/又は単位セル51に電流を入力するためのものである。言い換えれば、電池パックを電源として使用する際、電流が通電用の外部端子を通して外部に供給される。また、電池パックを充電する際、充電電流(自動車などの動力の回生エネルギーを含む)は通電用の外部端子59を通して電池パックに供給される。
第3の実施形態に係る電池パックの例を、図7を参照して説明する。図7は、電池パックの一例を示す模式的な斜視図である。
電池パック40は、図4に示す二次電池からなる組電池を備える。電池パック40は、筐体41と、筐体41内に収容された組電池42とを含む。組電池42は、複数(例えば5個)の二次電池431~435が電気的に直列に接続されたものである。二次電池431~435は、厚さ方向に積層されている。筐体41は、上部及び4つの側面それぞれに開口部44を有している。二次電池431~435の正負極端子12、13が突出している側面が、筐体41の開口部44に露出している。組電池42の出力用正極端子45は、帯状をなし、一端が二次電池431~4355のいずれかの正極端子13と電気的に接続され、かつ他端が筐体41の開口部44から突出して筐体41の上部から突き出ている。一方、組電池42の出力用負極端子46は、帯状をなし、一端が二次電池431~435のいずれかの負極端子12と電気的に接続され、かつ他端が筐体41の開口部44から突出して筐体41の上部から突き出ている。
第3の実施形態に係る電池パックの別の例を図8および図9を参照して詳細に説明する。図8は、第3の実施形態に係る他の例の電池パックの分解斜視図である。図9は、図8の電池パックの電気回路を示すブロック図である。
扁平型の二次電池から構成される複数の単位セル51は、外部に延出した負極端子52および正極端子53が同じ向きに揃えられるように積層され、粘着テープ54で締結することにより組電池55を構成している。これらの単位セル51は、図9に示すように互いに電気的に直列に接続されている。
プリント配線基板56は、負極端子52および正極端子53が延出する単位セル51側面と対向して配置されている。プリント配線基板56には、図9に示すようにサーミスタ57、保護回路58及び通電用の外部端子59が搭載されている。なお、組電池55と対向するプリント配線基板56の面には組電池55の配線と不要な接続を回避するために絶縁板(図示せず)が取り付けられている。
正極リード60は、組電池55の最下層に位置する正極端子53に接続され、その先端はプリント配線基板56の正極コネクタ61に挿入されて電気的に接続されている。負極リード62は、組電池55の最上層に位置する負極端子52に接続され、その先端はプリント配線基板56の負極側コネクタ63に挿入されて電気的に接続されている。これらのコネクタ61、63は、プリント配線基板56に形成された配線64、65を通して保護回路58に接続されている。
サーミスタ57は、単位セル51の温度を検出し、その検出信号は保護回路58に送信される。保護回路58は、所定の条件で保護回路58と通電用の外部端子59との間のプラス配線66aおよびマイナス配線66bを遮断できる。所定の条件とは、例えばサーミスタ57の検出温度が所定温度以上になったときである。また、所定の条件とは単位セル51の過充電、過放電、過電流等を検出したときである。この過充電等の検出は、個々の単位セル51もしくは組電池55について行われる。個々の単位セル51を検出する場合、電池電圧を検出してもよいし、正極電位もしくは負極電位を検出してもよい。後者の場合、個々の単位セル51中に参照極として用いるリチウム電極が挿入される。図8および図9の場合、単位セル51それぞれに電圧検出のための配線67を接続し、これら配線67を通して検出信号が保護回路58に送信される。
正極端子53および負極端子52が突出する側面を除く組電池55の三側面には、ゴムもしくは樹脂からなる保護シート68がそれぞれ配置されている。
組電池55は、各保護シート68およびプリント配線基板56と共に収納容器69内に収納される。すなわち、収納容器69の長辺方向の両方の内側面と短辺方向の内側面それぞれに保護シート68が配置され、短辺方向の反対側の内側面にプリント配線基板56が配置される。組電池55は、保護シート68およびプリント配線基板56で囲まれた空間内に位置する。蓋70は、収納容器69の上面に取り付けられている。
なお、組電池55の固定には粘着テープ54に代えて、熱収縮テープを用いてもよい。この場合、組電池の両側面に保護シートを配置し、熱収縮テープを周回させた後、熱収縮テープを熱収縮させて組電池を結束させる。
図8、図9では単位セル51を直列接続した形態を示したが、電池容量を増大させるためには並列に接続してもよい。或いは、直列接続と並列接続とを組み合わせてもよい。さらに、組み上がった電池パックを直列および/または並列に接続することもできる。
また、電池パックの態様は用途により適宜変更される。電池パックの用途としては、大電流での充放電が望まれるものが好ましい。具体的には、デジタルカメラの電源用や、二輪乃至四輪のハイブリッド電気自動車、二輪乃至四輪の電気自動車、アシスト自転車、鉄道用車両等の車両の車載用、並びに定置用電池としての用途が挙げられる。特に、車載用が好適である。
第3の実施形態に係る電池パックを搭載した自動車等の車両において、電池パックは、例えば車両の動力の回生エネルギーを回収するものである。
以上説明した第3の実施形態の電池パックによれば、第1の実施形態の二次電池を含むため、充放電効率に優れた電池パックを提供することができる。
(第4の実施形態)
第4の実施形態によると、車両が提供される。この車両は、第3の実施形態に係る電池パックを搭載している。
第4の実施形態に係る車両において、電池パックは、例えば、車両の動力の回生エネルギーを回収するものである。
第4の実施形態に係る車両の例としては、例えば、二輪乃至四輪のハイブリッド電気自動車、二輪乃至四輪の電気自動車、アシスト自転車、及び鉄道用車両が挙げられる。
第4の実施形態に係る車両における電池パックの搭載位置は、特には限定されない。例えば、電池パックを自動車に搭載する場合、電池パックは、車両のエンジンルーム、車体後方又は座席の下に搭載することができる。
次に、第4の実施形態に係る車両の一例について、図面を参照しながら説明する。
図10は、第4の実施形態に係る車両の一例を概略的に示す断面図である。
図10に示す車両200は、車両本体201と、電池パック202とを含んでいる。電池パック202は、第3の実施形態に係る電池パックであり得る。
図10に示す車両200は、四輪の自動車である。車両200としては、例えば、二輪乃至四輪のハイブリッド電気自動車、二輪乃至四輪の電気自動車、アシスト自転車、及び鉄道用車両を用いることができる。
この車両200は、複数の電池パック202を搭載してもよい。この場合、電池パック202は、直列に接続されてもよく、並列に接続されてもよく、直列接続及び並列接続を組み合わせて接続されてもよい。
電池パック202は、車両本体201の前方に位置するエンジンルーム内に搭載されている。電池パック202の搭載位置は、特に限定されない。電池パック202は、車両本体201の後方又は座席の下に搭載してもよい。この電池パック202は、車両200の電源として用いることができる。また、この電池パック202は、車両200の動力の回生エネルギーを回収することができる。
次に、図11を参照しながら、第4の実施形態に係る車両の実施態様について説明する。
図11は、第4の実施形態に係る車両の他の例を概略的に示した図である。図11に示す車両300は、電気自動車である。
図11に示す車両300は、車両本体301と、車両用電源302と、車両用電源302の上位制御手段である車両ECU(ECU:Electric Control Unit;電気制御装置)380と、外部端子(外部電源に接続するための端子)370と、インバータ340と、駆動モータ345とを備えている。
車両300は、車両用電源302を、例えばエンジンルーム、自動車の車体後方又は座席の下に搭載している。なお、図11に示す、車両300では、車両用電源302の搭載箇所については概略的に示している。
車両用電源302は、複数(例えば3つ)の電池パック312a、312b及び312cと、電池管理装置(BMU:Battery Management Unit)311と、通信バス310と、を備えている。
3つの電池パック312a、312b及び312cは、電気的に直列に接続されている。電池パック312aは、組電池314aと組電池監視装置(VTM:Voltage Temperature Monitoring)313aと、を備えている。電池パック312bは、組電池314bと組電池監視装置313bと、を備えている。電池パック312cは、組電池314cと組電池監視装置313cと、を備えている。電池パック312a、312b、及び312cは、それぞれ独立して取り外すことが可能であり、別の電池パック312と交換することができる。
組電池314a~314cのそれぞれは、直列に接続された複数の単電池を備えている。複数の単電池の少なくとも1つは、第1の実施形態に係る二次電池である。組電池314a~314cは、それぞれ、正極端子316及び負極端子317を通じて充放電を行う。
電池管理装置311は、車両用電源302の保全に関する情報を集めるために、組電池監視装置313a~313cとの間で通信を行い、車両用電源302に含まれる組電池314a~314cに含まれる単電池の電圧、及び温度などに関する情報を収集する。
電池管理装置311と組電池監視装置313a~313cとの間には、通信バス310が接続されている。通信バス310は、1組の通信線を複数のノード(電池管理装置と1つ以上の組電池監視装置と)で共有するように構成されている。通信バス310は、例えばCAN(Control Area Network)規格に基づいて構成された通信バスである。
組電池監視装置313a~313cは、電池管理装置311からの通信による指令に基づいて、組電池314a~314cを構成する個々の単電池の電圧及び温度を計測する。ただし、温度は1つの組電池につき数箇所だけで測定することができ、全ての単電池の温度を測定しなくてもよい。
車両用電源302は、正極端子316と負極端子317との接続を入り切りするための電磁接触器(例えば図11に示すスイッチ装置333)を有することもできる。スイッチ装置333は、組電池314a~314cへの充電が行われるときにオンするプリチャージスイッチ(図示せず)、及び電池出力が負荷へ供給されるときにオンするメインスイッチ(図示せず)を含んでいる。プリチャージスイッチおよびメインスイッチは、スイッチ素子の近傍に配置されたコイルに供給される信号によりオン又はオフされるリレー回路(図示せず)を備えている。
インバータ340は、入力された直流電圧を、モータ駆動用の3相の交流(AC)の高電圧に変換する。インバータ340の3相の出力端子は、駆動モータ345の各3相の入力端子に接続されている。インバータ340は、電池管理装置311あるいは車両全体動作を制御するための車両ECU380からの制御信号に基づいて、出力電圧を制御する。
駆動モータ345は、インバータ340から供給される電力により回転する。この回転は、例えば差動ギアユニットを介して車軸および駆動輪Wに伝達される。
また、図示はしていないが、車両300は、回生ブレーキ機構を備えている。回生ブレーキ機構は、車両300を制動した際に駆動モータ345を回転させ、運動エネルギーを電気エネルギーとしての回生エネルギーに変換する。回生ブレーキ機構で回収した回生エネルギーは、インバータ340に入力され、直流電流に変換される。直流電流は、車両用電源302に入力される。
車両用電源302の負極端子317には、接続ラインL1の一方の端子が、電池管理装置311内の電流検出部(図示せず)を介して接続されている。接続ラインL1の他方の端子は、インバータ340の負極入力端子に接続されている。
車両用電源302の正極端子316には、接続ラインL2の一方の端子が、スイッチ装置333を介して接続されている。接続ラインL2の他方の端子は、インバータ340の正極入力端子に接続されている。
外部端子370は、電池管理装置311に接続されている。外部端子370は、例えば、外部電源に接続することができる。
車両ECU380は、運転者などの操作入力に応答して他の装置とともに電池管理装置311を協調制御して、車両全体の管理を行なう。電池管理装置311と車両ECU380との間では、通信線により、車両用電源302の残容量など、車両用電源302の保全に関するデータ転送が行われる。
第4の実施形態に係る車両は、第3の実施形態に係る電池パックを具備している。即ち、充放電効率と貯蔵性能の高い電池パックを備えているため、第4の実施形態に係る車両は充放電効率に優れているため、信頼性が高い車両を提供することができる。
(第5の実施形態)
第5の実施形態によると、定置用電源が提供される。この定置用電源は、第3の実施形態に係る電池パックを搭載している。なお、この定置用電源は、第3の実施形態に係る電池パックの代わりに、第2の実施形態に係る組電池又は第1の実施形態に係る二次電池を搭載していてもよい。
第5の実施形態に係る定置用電源は、第3の実施形態に係る電池パックを搭載している。したがって、第5の実施形態に係る定置用電源は、長寿命を実現することができる。
図12は、第5実施形態に係る定置用電源を含むシステムの一例を示すブロック図である。図12は、第3の実施形態に係る電池パック40A、40Bの使用例として、定置用電源112、123への適用例を示す図である。図12に示す一例では、定置用電源112,123が用いられるシステム110が示される。システム110は、発電所111、定置用電源112、需要家側電力系統113及びエネルギー管理システム(EMS)115を備える。また、システム110には、電力網116及び通信網117が形成され、発電所111、定置用電源112、需要家側電力系統113及びEMS115は、電力網116及び通信網117を介して、接続される。EMS115は、電力網116及び通信網117を活用して、システム110全体を安定化させる制御を行う。
発電所111は、火力及び原子力等の燃料源によって、大容量の電力を生成する。発電所111からは、電力網116等を通して電力が供給される。また、定置用電源112には、電池パック40Aが搭載される。電池パック40Aは、発電所111から供給される電力等を蓄電できる。また、定置用電源112は、電池パック40Aに蓄電された電力を、電力網116等を通して供給できる。システム110には、電力変換装置118が設けられる。電力変換装置118は、コンバータ、インバータ及び変圧器等を含む。したがって、電力変換装置118は、直流と交流との間の変換、互いに対して周波数が異なる交流の間の変換、及び、変圧(昇圧及び降圧)等を行うことができる。このため、電力変換装置118は、発電所111からの電力を、電池パック40Aへ蓄電可能な電力に変換できる。
需要家側電力系統113には、工場用の電力系統、ビル用の電力系統、及び、家庭用の電力系統等が、含まれる。需要家側電力系統113は、需要家側EMS121、電力変換装置122及び定置用電源123を備える。定置用電源123には、電池パック40Bが搭載される。需要家側EMS121は、需要家側電力系統113を安定化させる制御を行う。
需要家側電力系統113には、発電所111からの電力、及び、電池パック40Aからの電力が、電力網116を通して供給される。電池パック40Bは、需要家側電力系統113に供給された電力を蓄電できる。また、電力変換装置121は、電力変換装置118と同様に、コンバータ、インバータ及び変圧器等を含む。したがって、電力変換装置121は、直流と交流との間の変換、互いに対して周波数が異なる交流の間の変換、及び、変圧(昇圧及び降圧)等を行うことができる。このため、電力変換装置121は、需要家側電力系統113に供給された電力を、電池パック40Bへ蓄電可能な電力に変換できる。
なお、電池パック40Bに蓄電された電力は、例えば、電気自動車等の車両の充電等に用いることができる。また、システム110には、自然エネルギー源が設けられてもよい。この場合、自然エネルギー源は、風力及び太陽光等の自然エネルギーによって、電力を生成する。そして、発電所111に加えて自然エネルギー源からも、電力網116を通して、電力が供給される。
以下に実施例を説明するが、実施形態は、以下に掲載される実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
<正極の作製>
正極活物質としてLiMn2O4 (4.0 g)、導電剤としてアセチレンブラック (0.20 g)、及び、結着剤としてPVDF分散液(固形分率8 %のNMP (N-メチル-2-ピロリドン)溶液, 5.0 g)、およびNMP (0.5 g)を入れた。この混合物を、混練機を用いて3分間混合して、粘稠性スラリーを得た。このスラリーを、厚さ20 μmのTi箔の片面上に塗布した。その後、溶媒を留去して積層体を得た。次いで、この積層体を、圧延した。その後、この積層体を130 ℃の真空オーブン中で2時間乾燥させた後、直径10 mmの円形に打ち抜いた。得られた正極の目付は、150 g /m2、密度は1.94 g /cm3であった。
<負極の作製>
負極活物質としてLi4Ti5O12 (4.0 g)、導電剤としてグラファイト (0.40 g)、結着剤としてPolyvinyl butyralのNMP (N-メチル-2-ピロリドン)溶液(固形分15重量%, 0.29 g)、及び、NMP (2.0 g)を入れた。この混合物を、混練機を用いて3分間混合して、スラリーを得た。このスラリーを、厚さ30 μmのAl箔の片面上に塗布した。その後、溶媒を留去して積層体を得た。次いで、この積層体を、圧延した。その後、この積層体を130 ℃の真空オーブン中で3時間乾燥させた後、直径10 mmの円形に打ち抜いた。得られた負極の目付は50 g /m2、密度は2.1 g /cm3であった。
<電解質の調製>
12 mol /Lの塩化リチウム溶液を用意し、塩化リチウム12 mol /L水溶液 (180 mL)に、塩化リチウム (10.17 g)、水酸化リチウム一水和物 (8.39 g, 0.20 mol)、およびNMP (20 mL)を入れ、良く攪拌することで溶液を得た。ここに第一化合物として化合物A(C12H25-O‐(CH2CH(CH3)O)y‐(CH2CH2O)xH)を1重量%添加することで、実施例1の電解質を得た。
<評価セルの作製>
プラスチック板上に、陽極酸化処理されたアルミニウム板を固定し、その上に負極を固定した。別のプラスチック板上にTi板を固定し、その上に正極を固定した。負極の上に、作成した電解質(180 μL)を滴下し、その上にLi1.3Al0.3Ti1.7(PO4)3 (以降LATPと略記)固体電解質膜を置き、密着させた。同じLATP膜の逆側に、12 mol /Lの塩化リチウム水溶液 (180 μL)を滴下し、その上から正極を置いて密着させ、さらにねじで固定した。その後、24時間待機した。
<セル評価>
このように作製した評価セルについて、定電流充放電試験、エネルギー分散型X線分光(SEM-EDX)分析、電解質の界面張力の測定を行った。結果は表1にまとめた。電池特性、およびSEM-EDX分析から得られたアルミニウムの原子比率({Al原子濃度/(Al原子濃度+Ti原子濃度)}×100)を示した。なお、比較例2は電池にアルミニウムを含まないため、アルミニウムの原子比率に関しては、適用不可(NotApplicable)として、N/Aと表記する。
表1には後述する実施例2~4及び比較例1、2も合わせて記載した。
<定電流充放電試験>
充電及び放電のいずれも1Cレートで行った。また、充電時は、電流値が0.5 Cになるまで、充電時間が70分間になるまで、充電容量が170 mAh /gになるまでの、いずれか早いものを終止条件とした。放電時は70分後を終止条件とした。
上記充電を1回行い上記放電を1回行うことを充放電の1サイクルとし、充放電を20サイクル繰り返した。各充放電サイクルにおける充電容量および放電容量をそれぞれ測定した。得られた結果から、下記式(1)に従って充放電効率をサイクル毎に算出した。
充放電効率(%)= 100 ×{放電容量(mAh/g)/充電容量(mAh/g)}・・・(1)
こうして得た充放電効率の、5サイクル目から20サイクル目までの平均値を求め、表1に示した。
<エネルギー分散型X線分光(SEM-EDX)分析>
エネルギー分散型X線分光(SEM-EDX)分析は、日立ハイテクノロジーSU8020を用いて行った。倍率は200倍、電子線の加速電圧は15k eVとし、平均的な視野5箇所を分析した。Alのピークが検出されない場合は、適用不可(NotApplicable)として、N/Aと表記した。
(実施例2)
電解質に第一化合物として化合物B(C4H9O‐(CH2CH2O)x‐[CH2CH(CH3)O]yH)を添加したことを除いて、実施例1において記載したのと同様の方法により試験用電池を作製し、試験を行った。
(実施例3)
電解質に第一化合物として化合物C(OH‐(CH2CH2O)z‐(CH2CH(CH3)O)y‐(CH2CH2O)xH)を添加したことを除いて、実施例1において記載したのと同様の方法により試験用電池を作製し、試験を行った。
(実施例4)
電解質に第一化合物を添加しないことを除いて、実施例1において記載したのと同様の方法により試験用電池を作製し、試験を行った。
(比較例1)
負極集電体として亜鉛(Zn)箔(厚さ50μm)を用いたことを除いて、実施例1において記載したのと同様の方法により試験用電池を作製し、試験を行った。
(比較例2)
負極集電体としてZn箔(厚さ50μm)を用い、かつ電解質に第一化合物を添加しないことを除いて、実施例1において記載したのと同様の方法により試験用電池を作製し、試験を行った。
表1から明らかなように、アルミニウムの原子比率が3atm%以上30atm%以下である実施例1~4は比較例1および2よりも充電放電効率が優れていた。この結果から、実施例では水の電気分解反応が抑制されて負極活物質へのキャリア(リチウムイオン)の挿入および脱離が効率的に行われたことが推測できる。
また、アルミニウムの原子比率が10atm%以上21atm%以下であることで、より優れた充放電効率を達成することができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。