以下、実施の形態について適宜図面を参照して説明する。なお、実施の形態を通して共通の構成には同一の符号を付すものとし、重複する説明は省略する。また、各図は実施の形態の説明とその理解を促すための模式図であり、その形状や寸法、比などは実際の装置と異なる個所があるが、これらは以下の説明と公知の技術とを参酌して、適宜設計変更することができる。
(第1の実施形態)
第1の実施形態に係る二次電池は、負極と、正極と、水系電解質とを備える。負極は、アルミニウムを含む負極集電体、及び、前記負極集電体上に設けられ、チタン含有酸化物を含む負極活物質含有層を備える。負極活物質含有層の表面の少なくとも一部は、アルミニウム含有化合物を含む被膜を備える。水系電解質は、亜鉛イオンと、芳香環及びヘテロ原子を有する複素環式化合物とを含む。水系電解質における、亜鉛イオンと複素環式化合物との重量比は0.4以上250以下の範囲内にある。
電極での水分解を抑制する方法の1つとして、活物質含有層表面に被膜を形成する方法が挙げられる。被膜としては、水素過電圧が高い金属を含む金属被膜が考えられる。しかしながら、金属被膜は密度が高い、即ち緻密な傾向があるため、厚すぎるとリチウムイオン伝導を妨げてしまい、電池特性が低下する可能性がある。それ故、金属被膜は薄膜である必要があるが、薄い金属被膜を活物質含有層の表面に均一に形成することは比較的困難である。
また、水系電解質を含む二次電池においては、活物質含有層を担持している集電体についても高い水素過電圧を有することが求められる。特に、チタン含有酸化物を含む負極では、リチウム電位基準にて約1.5V(vs.Li/Li+)でリチウムイオンの挿入脱離が生じるため、水の電気分解が生じやすい。高い水素過電圧を有する集電体として、亜鉛又は亜鉛を含む化合物からなる集電体、或いは、亜鉛めっきを表面に有する集電体が使用されることがある。しかしながら、柔軟性などの観点から、亜鉛を含む集電体に代えて、アルミニウムを含む集電体の使用が要望されている。ところが、金属アルミニウム表面では水の電気分解が生じやすいため、亜鉛を含む集電体を、アルミニウムを含む集電体に置き換えるのみでは、二次電池として動作させることができない。
本発明者らは、アルミニウムを含む集電体を使用した場合であっても、集電体表面での水の電気分解を抑制するべく鋭意研究した結果、実施形態に係る二次電池を見いだした。
実施形態に係る二次電池が備える水系電解質は、亜鉛イオンと、芳香環及びヘテロ原子を有する複素環式化合物とを含む。そして、水系電解質における、亜鉛イオンと、当該複素環式化合物との重量比は0.4以上250以下の範囲内にある。水系電解質は、アルミニウムイオンを更に含むことができる。このアルミニウムイオンは、例えば、アルミニウムを含む集電体から溶出したアルミニウムイオンであり得る。
芳香環及びヘテロ原子を有する複素環式化合物は、例えば、ヘテロ原子に由来する電子供与性部、及び、芳香環に由来する疎水性部を有する。本願明細書では、芳香環及びヘテロ原子を有する複素環式化合物を、単に「複素環式化合物」と呼ぶことがある。複素環式化合物は、アルミニウム集電体表面に吸着する性質を有しており、アルミニウム集電体表面上に疎水性被膜を形成し得る。疎水性被膜が形成されると、水分子はアルミニウム集電体表面に接近しにくくなるため、水の電気分解が抑制される。
しかしながら、負極が、チタン含有酸化物のような作動電位の低い活物質材料を含む場合、複素環式化合物を使用するのみではアルミニウム集電体における水分解を十分に抑制することができない。それ故、実施形態に係る二次電池が備える水系電解質は、亜鉛イオンを更に含んでいる。二次電池を組み立てた後に実施される初充電等の充電により、亜鉛イオンは、まず金属亜鉛として、集電体上に、又は、負極活物質含有層上に析出する。析出した金属亜鉛の少なくとも一部は、水系電解質に含まれる酸素によって酸化されて、酸化亜鉛及び水酸化亜鉛から選択される少なくとも1つとなる。金属亜鉛、又は、酸化亜鉛及び水酸化亜鉛などの亜鉛化合物は、負極集電体での水素発生過電圧を大きくすることができる。
詳細は明らかになっていないが、実施形態に係る二次電池が含む負極集電体上には、金属亜鉛又は亜鉛化合物からなる亜鉛含有被膜、複素環式化合物からなる疎水性被膜、並びに、亜鉛含有被膜と疎水性被膜とが混合した複合被膜の3種類の被膜が形成されていると考えられる。これら被膜は、いずれも水素過電圧を向上させることによる水分解抑制効果を奏する。この結果、アルミニウムを含む負極集電体における水の電気分解を抑制することができる。
しかしながら、3種類の被膜は、互いに電気伝導性が異なっており、その序列は、電気伝導性が高い順に、亜鉛含有被膜、亜鉛含有被膜と疎水性被膜とが混合した複合被膜、疎水性被膜であると考えられる。
上記3種類の被膜のうち、亜鉛含有被膜又は疎水性被膜が多く形成されすぎると、電極抵抗が高くなり、電極の導電性が低下するため、充放電効率が低下する。或いは、亜鉛イオンと複素環式化合物とは、水に対して不溶性の錯体を形成し得るため、これらのうちの一方の成分の含有量が過度に多いと、他方の成分が錯体形成に消費されてしまい、他方の成分による被膜形成効果が得られ難くなる。
水系電解質が含む亜鉛イオンと複素環式化合物との重量比(Zn2+/(複素環式化合物))が0.4以上250以下の範囲内にあることで、亜鉛含有被膜と疎水性被膜とが混合した複合被膜が適切な厚さで集電体表面に形成されるため、集電体からの水素発生を抑制することができる。当該重量比は、好ましくは0.4以上20以下の範囲内にあり、より好ましくは0.4以上10以下の範囲内にある。
一方で、負極活物質含有層の表面の少なくとも一部には、アルミニウム含有化合物を含む被膜が形成されている。アルミニウム含有化合物は、交換電流密度が小さく、高い水素発生過電圧を有する。それ故、負極活物質含有層において水の電気分解を抑制することができる。アルミニウム含有化合物を含む被膜は、後述するように、アルミニウムを含む集電体から溶出したアルミニウムイオンが、負極活物質含有層上に析出することにより形成され得る。
つまり、実施形態に係る二次電池では、負極集電体のみならず、負極活物質含有層における水の電気分解も抑制することができるため、負極全体からの水素発生を抑制して優れた充放電効率を達成することができる。そして、水の電気分解が抑制されることで、水の電気分解ではなく二次電池の充放電反応が優先的に生じるため、高い放電容量を得ることができる。
以下、実施形態に係る二次電池を詳細に説明する。
実施形態に係る二次電池は、正極と負極との間に配置されたセパレータを更に具備することができる。正極、負極及びセパレータは、電極群を構成することができる。水系電解質は、電極群に保持され得る。二次電池は、電極群及び水系電解質を収容可能な外装部材を更に具備することができる。また、二次電池は、負極に電気的に接続された負極端子及び正極に電気的に接続された正極端子を更に具備することができる。
以下、負極、正極、水系電解質、セパレータ、外装部材、負極端子及び正極端子について詳細に説明する。
(1)負極
負極は、アルミニウムを含む負極集電体と、チタン含有酸化物を含む負極活物質含有層とを備える。
負極活物質含有層は、例えば、負極集電体の少なくとも1つの面上に配置されている。負極集電体上の1つの面に負極活物質含有層が形成されていてもよく、負極集電体上の1つの面とその裏面とに負極活物質含有層が形成されていてもよい。
負極活物質含有層は、負極活物質の他に、導電剤及び結着剤などを含んでいてもよい。導電剤は、集電性能を高め、且つ活物質と集電体との接触抵抗を抑えるために、必要に応じて配合される。結着剤は、活物質、導電剤及び集電体を結着させる作用を有する。
負極活物質含有層の表面の少なくとも一部は、アルミニウム含有化合物を含む被膜を備えている。負極活物質含有層の表面の全面がアルミニウム含有化合物を含む被膜により被覆されていてもよい。アルミニウム含有化合物は、例えば、酸化物及び水酸化物からなる群より選択される少なくとも1種である。アルミニウム含有化合物は、例えば、酸化アルミニウム及び/又は水酸化アルミニウムなどであり、非金属被膜を構成する。アルミニウム含有化合物を含む被膜は、アルミニウム含有化合物からなっていてもよいし、他の元素を含む化合物も含んでいてもよい。
アルミニウム含有化合物を含む被膜は、物理的に存在する。例えば、アルミニウム含有化合物は、単結晶として、又は、微結晶が凝集した膜状として存在する。
アルミニウム含有化合物を含む被膜は、例えば、以下の機構で活物質含有層の表面上に析出した被膜であり得る。
まず、アルミニウムを含む負極集電体を備えた二次電池を組み立てる。二次電池の組み立てに使用する活物質粒子表面及び導電剤表面には、アルミニウム含有化合物を含む被膜が存在していないものを使用することが好ましい。活物質粒子表面などに、予めアルミニウム含有化合物を含む被膜が存在していると、二次電池を組み立てた後に、アルミニウム含有化合物を含む被膜上に、更にアルミニウム含有化合物が析出して、アルミニウム含有化合物を含む被膜が過度に厚くなる可能性がある。その結果、例えばリチウムイオンなどのキャリアイオンの挿入脱離が妨げられる傾向にあるため好ましくない。
二次電池を組み立てた後、アルミニウムを含む負極集電体から、アルミニウムイオンが水系電解質中に溶出し始める。水系電解質に溶出したアルミニウムは、例えば酸化アルミニウムとして負極活物質含有層の表面上に析出する。塩化アルミニウムなどの塩が水系電解質に含まれていてもよい。
集電体から溶出したアルミニウムイオンは、複素環式化合物が有する電子供与性部の電気的相互作用により安定化される。つまり、水系電解質が複素環式化合物を含んでいるため、アルミニウムイオンの電解質中での安定性が向上し、負極活物質含有層表面において、アルミニウム含有化合物を含む被膜が形成されやすくなる。
また、水系電解質は酸性であることが好ましい。複素環式化合物は、水系電解質中で集電体からのアルミニウムイオンの溶出を抑制する傾向があるが、水系電解質が酸性であると、集電体からアルミニウムイオンを溶出させ易くすることができる。溶出したアルミニウムイオンが水系電解質中の酸素によって酸化されることで、負極活物質含有層の表面が、アルミニウムの酸化物及び水酸化物から選択される少なくとも1つで被覆される。水系電解質のpHは、例えば7より小さいことが好ましく、5以下であることがより好ましい。水系電解質のpHの下限値は、例えば4である。一例によると、水系電解質のpHは、複素環式化合物の添加により7未満となり得る。水系電解質のpHは、他の化合物により調節してもよい。本願明細書及び特許請求の範囲において、水系電解質のpHは、20℃におけるpHの値を意味する。
複素環式化合物の含有量、及び、水系電解質のpHを調整することで、集電体から電解質中に溶出するアルミニウムイオンの量を調整することができる。或いは、電解質中の複素環式化合物の含有量を調整することにより、電解質中のアルミニウムイオンの安定性が変化するため、上述の通り、負極活物質含有層表面でのアルミニウム含有化合物を含む被膜の形成量を調整することができる。その結果、負極活物質含有層の表面における、チタン原子及びアルミニウム原子に対する、アルミニウム原子の比率({Al原子濃度/(Al原子濃度+Ti原子濃度)}×100)を調整することができる。本願明細書においては、アルミニウム原子及びチタン原子の原子濃度の和に対する、アルミニウム原子の原子濃度の比率を、比率(Al/Al+Ti)とも記載する。当該比率は、後述する走査電子顕微鏡-エネルギー分散型X線分光法(SEM-EDX:Scanning Electron Microscope-Energy Dispersive X-ray Spectroscopy)により測定することができる。
この比率が小さいと、負極活物質含有層上に存在するアルミニウム含有化合物被膜の厚みが小さい傾向があり、この比率が大きいと、当該厚みが大きい傾向がある。この比率(Al/Al+Ti)が、5atm%以上40atm%以下である場合、負極活物質と水系電解質とを接触しにくくすることができるため好ましい。アルミニウム含有化合物は絶縁性を有するため、比率(Al/Al+Ti)が40atm%を超えると、リチウムイオン伝導性が低下する可能性がある。
アルミニウム含有化合物の負極活物質含有層表面への析出は、二次電池を組み立てた後すぐに始まるため、組み立てた直後の二次電池の負極活物質含有層表面にもアルミニウム含有化合物は存在し得る。また、二次電池を組み立てた後に待機時間を設けることで、析出を更に促すことができる。待機時間は、例えば24時間以上とすることが好ましい。また、二次電池を組み立てた後に充放電を繰り返すことにより、析出を更に促すことができる。
アルミニウム含有化合物を含む被膜は、負極活物質含有層を構成する材料のうち、少なくとも、表面が露出している材料の表面に形成されていることが好ましい。これについて、図1及び図2を参照しながら説明する。図1は、二次電池が備える負極の一例を模式的に示す断面図である。図2は、二次電池が備える負極の他の例を模式的に示す断面図である。
図1及び図2に示す負極3は、負極集電体3aと、負極集電体3a上に形成された負極活物質含有層3bとを備える。負極活物質含有層3bは、活物質造粒体51と、アルミニウム含有化合物を含む被膜50とを含む。活物質造粒体51は、第1活物質粒子511と、第2活物質粒子512とを含む。図1及び図2では、導電剤及び結着剤の描写を省略しているが、負極活物質含有層3bは、導電剤及び結着剤を含むことができる。
図1では、負極活物質含有層3bを構成する材料のうち、表面が露出している材料の表面に、アルミニウム含有化合物を含む被膜50が形成されている。負極活物質含有層3bを構成する材料とは、例えば、活物質粒子、導電剤及び結着剤を含む。つまり、表面が露出している可能性がある材料として、負極活物質粒子のみならず、導電剤及び結着剤が含まれる。活物質造粒体51は、少なくとも第1活物質粒子511及び第2活物質粒子512を含む。活物質造粒体51は、第1活物質粒子511及び第2活物質粒子512の他に、複数の活物質粒子を含むことができる。活物質造粒体51は、互いに接する複数の活物質粒子を含むことが好ましい。例えば、図1に示しているように、第1活物質粒子511と第2活物質粒子512とが接していることが好ましい。言い換えると、活物質造粒体51は、隣り合う活物質粒子同士の間にアルミニウム含有化合物を含む被膜50を含まないことが好ましい。アルミニウム含有化合物を含む被膜50が隣り合う活物質粒子同士の間に存在していると、これら粒子間のリチウムイオンの導通が妨げられて、リチウムイオン伝導性が低下する傾向があるためである。
活物質造粒体51は、複数の活物質粒子が造粒されることにより構成されている。負極活物質含有層3bは、活物質造粒体51、導電剤及び結着剤に加えて、当該層の表面の少なくとも一部に形成されたアルミニウム含有化合物を含む被膜を含み得る。負極活物質含有層3bの表面は、図1に示すように、露出している部分の全面がアルミニウム含有化合物を含む被膜50で被覆されていることが好ましい。露出している部分の少なくとも一部がアルミニウム含有化合物を含む被膜50で被覆されていてもよい。
図1の構成とすると、複数の活物質粒子間におけるリチウムイオンの導通を妨げること無しに、水の電気分解を有意に抑制することができる。その結果、負極集電体3aからの負極活物質含有層3bの剥離を抑制することができるため、負極電位が、リチウム電位基準で1.5V(vs. Li/Li+)付近であっても充放電を行うことが可能である。即ち、負極が劣化しにくいため、優れた充放電効率及び寿命特性を達成することができる。図1に示す負極は、例えば、上述したように、二次電池を組み立てた後に集電体から溶出するアルミニウムイオンが負極活物質含有層の表面に析出することにより作製することができる。
図2に示す負極3は、活物質造粒体51が含む複数の活物質粒子間において、アルミニウム含有化合物を含む被膜50が存在していることを除いて、図1に示す負極3と同様の構成を有している。例えば、隣り合う第1活物質粒子511と第2活物質粒子512との間には、アルミニウム含有化合物を含む被膜50が存在している。図2に示す活物質造粒体51に含まれる活物質粒子のうちの少なくとも1つは、粒子表面の全面がアルミニウム含有化合物を含む被膜50で被覆されている。活物質造粒体51は、アルミニウム含有化合物を含む被膜により被覆されていない活物質粒子を含んでいてもよい。図2に示す活物質造粒体51は、表面がアルミニウム含有化合物を含む被膜50で被覆された複数の活物質粒子が、互いに造粒することにより構成され得る。図2に示す負極3の場合、リチウムイオン伝導性は、図1の場合と比較して劣る傾向にあるが、活物質粒子と水系電解質との副反応をより抑制できる傾向にある。図2に示す負極は、例えば、表面に予めアルミニウム含有化合物を含む被膜を設けた複数の活物質粒子を用いることにより作製することができる。
<SEM-EDX>
負極活物質含有層の表面における比率(Al/Al+Ti)の分析は、以下の手順でSEM-EDXにより行うことができる。
まず、二次電池を解体して負極を取り出す。取り出した負極を純水で洗浄した後、大気環境下で終夜乾燥させる。
こうして取り出した負極において、エネルギー分散型X線分析(EDX)の測定を行う。負極活物質含有層の表面上に対して無作為に5ヶ所選び、200倍の倍率で測定し、アルミニウムの原子比率({Al原子濃度/(Al原子濃度+Ti原子濃度)}×100)を算出する。EDXの測定視野には、複数の負極活物質粒子が含まれる。EDX分析で発生する特性X線の数は原子の濃度に比例する。それ故、各特性X線の強度(カウント数)を調べることで、分析対象である表面に含まれる原子の濃度が分かる。先に選出した5箇所のそれぞれにおいて、アルミニウム原子濃度及びチタン原子濃度を求め、それぞれの箇所における、チタン原子及びアルミニウム原子の原子濃度の和に対する、アルミニウム原子の原子濃度の比率({Al原子濃度/(Al原子濃度+Ti原子濃度)}×100)を算出する。そして、5箇所の値の平均を求めることで、比率(Al/Al+Ti)を算出する。
アルミニウムの原子比率が大きいほど、負極活物質含有層の表面に存在するアルミニウムが多いことを示すので、負極活物質含有層の表面におけるアルミニウム含有化合物の存在量が大きいと言い換えることもできる。
なお、活物質粒子自体がアルミニウムを含む場合には、オージェ電子分光を併せて実施することで、活物質含有層表面の比率(Al/Al+Ti)と、内部の比とが異なることを確認することができる。それらの結果から、活物質含有層表面に、アルミニウム含有化合物による被膜が形成されているか否かを確認することができる。
負極集電体はアルミニウムを含む。負極集電体は、例えば、アルミニウムからなる金属箔であるか、又は、マグネシウム(Mg)、チタン(Ti)、亜鉛(Zn)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、銅(Cu)及びケイ素(Si)から選択される少なくとも1種の元素を含むアルミニウム合金箔であることが好ましい。負極集電体の形態は、箔以外にも、例えばメッシュ及び多孔体などが挙げられる。エネルギー密度及び出力向上のためには、体積が小さく、表面積が大きい箔の形態が望ましい。
負極集電体の厚さは、5μm以上20μm以下であることが好ましい。このような厚さを有する集電体は、電極の強度と軽量化のバランスをとることができる。
また、負極集電体は、その表面に負極活物質含有層が形成されていない部分を含むことができる。この部分は、負極集電タブとして働くことができる。
上述したように、負極集電体表面の少なくとも一部には、金属亜鉛又は亜鉛化合物からなる亜鉛含有被膜、複素環式化合物からなる疎水性被膜、並びに、亜鉛含有被膜と疎水性被膜とが混合した複合被膜のうちの少なくとも1種類が存在し得る。負極集電体の全面は、これら被膜のうちのいずれかで被覆されていることが好ましい。
負極活物質としては、リチウムイオン吸蔵放出電位が、金属リチウムを基準とする電位で、1V(vs.Li/Li+)以上3V以下(vs.Li/Li+)であるチタン含有酸化物を用いることができる。実施形態に係る二次電池は、負極活物質含有層の表面の少なくとも一部にアルミニウム含有化合物を含む被膜が存在するため、負極活物質が、上記のような低い電位を有するチタン含有酸化物を含んでいても適切に充放電を行うことができる。
チタン含有酸化物としては、チタン酸化物、リチウムチタン複合酸化物、単斜晶型ニオブチタン複合酸化物、ナトリウムニオブチタン複合酸化物などを使用することができる。負極活物質は、チタン含有酸化物を1種、又は2種以上含むことができる。
チタン酸化物の例は、単斜晶構造のチタン酸化物、ルチル構造のチタン酸化物、アナターゼ構造のチタン酸化物を含む。各結晶構造のチタン酸化物は、充電前の組成をTiO2、充電後の組成をLixTiO2(xは0≦x≦1)で表すことができる。また、単斜晶構造のチタン酸化物の充電前構造をTiO2(B)と表すことができる。
リチウムチタン酸化物の例は、スピネル構造のリチウムチタン酸化物(例えば一般式Li4+xTi5O12(xは-1≦x≦3))、ラムスデライト構造のリチウムチタン酸化物(例えば、Li2+xTi3O7(-1≦x≦3))、Li1+xTi2O4(0≦x≦1)、Li1.1+xTi1.8O4(0≦x≦1)、Li1.07+xTi1.86O4(0≦x≦1)、LixTiO2(0<x≦1)などを含む。また、リチウムチタン酸化物は、異種元素が導入されているリチウムチタン複合酸化物であってもよい。
単斜晶型ニオブチタン複合酸化物の例として、LixTi1-yM1yNb2-zM2zO7+δで表される化合物が挙げられる。ここで、M1は、Zr,Si,及びSnからなる群より選択される少なくとも1つである。M2は、V,Ta,及びBiからなる群より選択される少なくとも1つである。組成式中のそれぞれの添字は、0≦x≦5、0≦y<1、0≦z<2、-0.3≦δ≦0.3である。単斜晶型ニオブチタン複合酸化物の具体例として、LixNb2TiO7(0≦x≦5)が挙げられる。
単斜晶型ニオブチタン複合酸化物の他の例として、LixTi1-yM3y+zNb2-zO7-δで表される化合物が挙げられる。ここで、M3は、Mg,Fe,Ni,Co,W,Ta,及びMoより選択される少なくとも1つである。組成式中のそれぞれの添字は、0≦x<5、0≦y<1、0≦z<2、-0.3≦δ≦0.3である。
単斜晶型ニオブチタン複合酸化物の具体的な例として、例えば、Nb2TiO7、Nb2Ti2O9、Nb10Ti2O29、Nb14TiO37及びNb24TiO62を挙げることができる。単斜晶型ニオブチタン複合酸化物は、Nb及び/又はTiの少なくとも一部が異種元素に置換された置換ニオブチタン複合酸化物であってもよい。置換元素の例は、Na、K、Ca、Co、Ni、Si、P、V、Cr、Mo、Ta、Zr、Mn、Fe、Mg、B、Pb及びAlなどである。置換ニオブチタン複合酸化物は、1種類の置換元素を含んでいてもよく、2種類以上の置換元素を含んでいてもよい。
ナトリウムチタン複合酸化物は、例えば、一般式Li2+VNa2―WM1XTi6-y-zNbyM2zO14+δ(0≦v≦4、0≦w<2、0≦x<2、0≦y<6、0≦z<3、-0.5≦δ≦0.5、M1はCs,K,Sr,Ba,Caより選択される少なくとも1つを含み、M2はZr,Sn,V,Ta,Mo,W,Fe,Co,Mn,Alより選択される少なくとも1つを含む)で表される直方晶(orthorhombic)型Na含有ニオブチタン複合酸化物を含む。
負極活物質としては、アナターゼ構造のチタン酸化物、単斜晶構造のチタン酸化物、スピネル構造のリチウムチタン酸化物又はこれらの混合物を用いることが好ましい。これらの酸化物を負極活物質として用いると、例えば正極活物質としてのリチウムマンガン複合酸化物と組み合わせることで、高い起電力を得ることができる。
負極活物質は、例えば粒子の形態で負極活物質含有層に含まれている。負極活物質粒子は、一次粒子、一次粒子の凝集体である二次粒子、あるいは、単独の一次粒子及び二次粒子の混合物であり得る。粒子の形状は、特に限定されるものではなく、例えば、球状、楕円形状、扁平形状、及び繊維状などにすることができる。
負極活物質の一次粒子の平均粒子径(直径)は3μm以下であることが好ましく、より好ましくは0.01μm以上1μm以下である。負極活物質の二次粒子の平均粒子径(直径)は30μm以下であることが好ましく、より好ましくは5μm以上20μm以下である。
この一次粒子径及び二次粒子径は、レーザー回折式の粒度分布測定装置により求めた粒度分布において、体積積算値が50%となる粒径を意味している。レーザー回折式の粒度分布測定装置としては、例えば、島津SALD-300を用いる。測定に際しては、2秒間隔で64回光度分布を測定する。この粒度分布測定を行う際の試料としては、負極活物質粒子の濃度が0.1重量%乃至1重量%となるようにN-メチル-2-ピロリドンで希釈した分散液を用いる。あるいは、測定試料としては、0.1gの負極活物質を、界面活性剤を含む1~2mlの蒸留水に分散させたものを用いる。
負極活物質含有層は、負極活物質の他に、導電剤及び結着剤などを含んでいてもよい。導電剤は、集電性能を高め、且つ活物質と集電体との接触抵抗を抑えるために、必要に応じて配合される。結着剤は、活物質、導電剤及び集電体を結着させる作用を有する。
導電剤は、集電性能を高め、且つ、活物質と集電体との接触抵抗を抑えるために配合される。導電剤の例には、気相成長カーボン繊維(Vapor Grown Carbon Fiber;VGCF)、アセチレンブラックなどのカーボンブラック及び黒鉛のような炭素質物が含まれる。これらの1つを導電剤として用いてもよく、或いは、2つ以上を組み合わせて導電剤として用いてもよい。あるいは、導電剤を用いる代わりに、活物質粒子の表面に、炭素コートや電子導電性無機材料コートを施してもよい。
結着剤は、分散された活物質の間隙を埋め、また、活物質と負極集電体とを結着させるために配合される。結着剤の例には、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroethylene;PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(polyvinylidenefluoride;PVdF)、フッ素系ゴム、スチレンブタジェンゴム、ポリアクリル酸化合物、イミド化合物、カルボキシルメチルセルロース(carboxymethylcellulose;CMC)、及びCMCの塩が含まれる。これらの1つを結着剤として用いてもよく、或いは、2つ以上を組み合わせて結着剤として用いてもよい。
負極活物質含有層中の負極活物質、導電剤及び結着剤の配合割合は、負極活物質が70質量%以上95質量%以下、導電剤が3質量%以上20質量%以下、結着剤が2質量%以上10質量%以下の範囲であることが好ましい。導電剤の配合割合が3質量%以上であると、負極活物質含有層の集電性能を向上させることができる。また、結着剤の配合割合が2質量%以上であると、十分な電極強度が得られ、10質量%以下であると電極の絶縁部を減少させることができる。
負極活物質含有層の密度(集電体を含まず)は、1.8g/cm3以上2.8g/cm3以下であることが好ましい。負極活物質含有層の密度がこの範囲内にある負極は、エネルギー密度と水系電解質の保持性とに優れている。負極活物質含有層の密度は、2.1g/cm3以上2.6g/cm3以下であることがより好ましい。
負極は、例えば次の方法により作製することができる。まず、負極活物質、導電剤及び結着剤を溶媒に懸濁してスラリーを調製する。活物質造粒体は、スラリー作製時に生成しうる。このスラリーを、負極集電体の片面又は両面に塗布する。次いで、塗布したスラリーを乾燥させて、負極活物質含有層と負極集電体との積層体を得る。その後、この積層体にプレスを施す。このようにして、負極を作製する。
(2)正極
正極は、正極集電体と、正極活物質含有層とを含むことができる。正極活物質含有層は、正極集電体の片面又は両面に形成され得る。正極活物質含有層は、正極活物質と、任意に導電剤及び結着剤を含むことができる。
正極活物質としては、例えば、酸化物又は硫化物を用いることができる。正極は、正極活物質として、1種類の化合物を単独で含んでいてもよく、或いは2種類以上の化合物を組み合わせて含んでいてもよい。酸化物及び硫化物の例には、アルカリ金属又はアルカリ金属イオンを挿入及び脱離させることができる化合物を挙げることができる。
このような化合物としては、例えば、二酸化マンガン(MnO2)、酸化鉄、酸化銅、酸化ニッケル、リチウムマンガン複合酸化物(例えばLixMn2O4又はLixMnO2;0<x≦1)、リチウムニッケル複合酸化物(例えばLixNiO2;0<x≦1)、リチウムコバルト複合酸化物(例えばLixCoO2;0<x≦1)、リチウムニッケルコバルト複合酸化物(例えばLixNi1-yCoyO2;0<x≦1、0<y<1)、リチウムマンガンコバルト複合酸化物(例えばLixMnyCo1-yO2;0<x≦1、0<y<1)、スピネル構造を有するリチウムマンガンニッケル複合酸化物(例えばLixMn2-yNiyO4;0<x≦1、0<y<2)、オリビン構造を有するリチウムリン酸化物(例えばLixFePO4;0<x≦1、LixFe1-yMnyPO4;0<x≦1、0<y<1、LixCoPO4;0<x≦1)、硫酸鉄(Fe2(SO4)3)、バナジウム酸化物(例えばV2O5)、及び、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(LixNi1-x-yCoxMnyO2;0<x≦1、0<y<1、0<z<1、y+z<1)が含まれる。
上記のうち、正極活物質としてより好ましい化合物の例には、スピネル構造を有するリチウムマンガン複合酸化物(例えばLixMn2O4;0<x≦1)、リチウムニッケル複合酸化物(例えばLixNiO2;0<x≦1)、リチウムコバルト複合酸化物(例えばLixCoO2;0<x≦1)、リチウムニッケルコバルト複合酸化物(例えばLixNi1-yCoyO2;0<x≦1、0<y<1)、スピネル構造を有するリチウムマンガンニッケル複合酸化物(例えばLixMn2-yNiyO4;0<x≦1、0<y<2)、リチウムマンガンコバルト複合酸化物(例えばLixMnyCo1-yO2;0<x≦1、0<y<1)、リチウムリン酸鉄(例えばLixFePO4;0<x≦1)、及び、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(LixNi1-x-yCoxMnyO2;0<x≦1、0<y<1、0<z<1、y+z<1)が含まれる。これらの化合物を正極活物質に用いると、正極電位を高めることができる。
電池の電解質として常温溶融塩を用いる場合、リチウムリン酸鉄、LixVPO4F(0≦x≦1)、リチウムマンガン複合酸化物、リチウムニッケル複合酸化物、リチウムニッケルコバルト複合酸化物、又はこれらの混合物を含む正極活物質を用いることが好ましい。これらの化合物は常温溶融塩との反応性が低いため、サイクル寿命を向上させることができる。常温溶融塩の詳細については、後述する。
正極活物質の一次粒径は、100nm以上1μm以下であることが好ましい。一次粒径が100nm以上の正極活物質は、工業生産上の取り扱いが容易である。一次粒径が1μm以下の正極活物質は、リチウムイオンの固体内拡散をスムーズに進行させることが可能である。
正極活物質の比表面積は、0.1m2/g以上10m2/g以下であることが好ましい。0.1m2/g以上の比表面積を有する正極活物質は、Liイオンの吸蔵・放出サイトを十分に確保できる。10m2/g以下の比表面積を有する正極活物質は、工業生産の上で取り扱い易く、かつ良好な充放電サイクル性能を確保できる。
結着剤は、分散された正極活物質の間隙を埋め、また、正極活物質と正極集電体とを結着させるために配合される。結着剤の例には、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroethylene;PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(polyvinylidenefluoride;PVdF)、フッ素系ゴム、ポリアクリル酸化合物、イミド化合物、カルボキシルメチルセルロース(carboxylmethylcellulose;CMC)、及びCMCの塩が含まれる。これらの1つを結着剤として用いてもよく、或いは、2つ以上を組み合わせて結着剤として用いてもよい。
導電剤は、集電性能を高め、且つ、正極活物質と正極集電体との接触抵抗を抑えるために配合される。導電剤の例には、気相成長カーボン繊維(Vapor Grown Carbon Fiber;VGCF)、アセチレンブラックなどのカーボンブラック及び黒鉛のような炭素質物が含まれる。これらの1つを導電剤として用いてもよく、或いは、2つ以上を組み合わせて導電剤として用いてもよい。また、導電剤を省略することもできる。
正極活物質含有層において、正極活物質及び結着剤は、それぞれ、80質量%以上98質量%以下、及び2質量%以上20質量%以下の割合で配合することが好ましい。
結着剤の量を2質量%以上にすることにより、十分な電極強度が得られる。また、結着剤は、絶縁体として機能し得る。そのため、結着剤の量を20質量%以下にすると、電極に含まれる絶縁体の量が減るため、内部抵抗を減少できる。
導電剤を加える場合には、正極活物質、結着剤及び導電剤は、それぞれ、77質量%以上95質量%以下、2質量%以上20質量%以下、及び3質量%以上15質量%以下の割合で配合することが好ましい。
導電剤の量を3質量%以上にすることにより、上述した効果を発揮することができる。また、導電剤の量を15質量%以下にすることにより、電解質と接触する導電剤の割合を低くすることができる。この割合が低いと、高温保存下において、電解質の分解を低減することができる。
正極集電体は、チタン、アルミニウム及びステンレスなどの金属箔、又は、Mg、Ti、Zn、Ni、Cr、Mn、Fe、Cu及びSiから選択される一以上の元素を含むアルミニウム合金箔であることが好ましい。集電体と電解質との反応による集電体の腐食を防止するため、集電体表面を異種元素で被覆してもよい。
正極集電体の厚さは、5μm以上20μm以下であることが好ましく、15μm以下であることがより好ましい。
また、正極集電体は、その表面に正極活物質含有層が形成されていない部分を含むことができる。この部分は、正極集電タブとして働くことができる。
正極は、例えば次の方法により作製することができる。まず、正極活物質、導電剤及び結着剤を溶媒に懸濁してスラリーを調製する。このスラリーを、正極集電体の片面又は両面に塗布する。次いで、塗布したスラリーを乾燥させて、正極活物質含有層と正極集電体との積層体を得る。その後、この積層体にプレスを施す。このようにして、正極を作製する。
或いは、正極は、次の方法により作製してもよい。まず、正極活物質、導電剤及び結着剤を混合して、混合物を得る。次いで、この混合物をペレット状に成形する。次いで、これらのペレットを正極集電体上に配置することにより、正極を得ることができる。
(3)水系電解質
水系電解質は、水系溶媒、電解質塩、亜鉛イオン、及び、芳香環及びヘテロ原子を有する複素環式化合物を含む。水系電解質は、例えば、液状である。液状水系電解質は、溶質としての電解質塩を水系溶媒に溶解することにより調製される水溶液である。水溶液は、溶質となる塩1molに対し、水系溶媒量が1mol以上であることが好ましく、3.5mol以上であることがさらに好ましい。
水系溶媒としては、水を含む溶液を用いることができる。ここで、水を含む溶液とは、純水であってもよく、水と有機溶媒との混合溶媒であってもよい。水系溶媒が含む水の割合は、例えば、50体積%以上の割合であり、好ましくは90体積%以上の割合である。
水系電解質は、ゲル状電解質であってもよい。ゲル状電解質は、上述した液状水系電解質と、高分子化合物とを混合して複合化することにより調製される。高分子化合物としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリアクリロニトリル(PAN)、及びポリエチレンオキシド(PEO)等を挙げることができる。
水系電解質に水が含まれていることは、GC-MS(ガスクロマトグラフィー-重量分析;Gas Chromatography-Mass Spectrometry)測定により確認できる。また、水系電解質中の塩濃度および水含有量は、例えばICP(誘導結合プラズマ;Inductively Coupled Plasma)発光分析などで測定することができる。水系電解質を規定量はかり取り、含まれる塩濃度を算出することで、モル濃度(mol/L)を算出できる。また水系電解質の比重を測定することで、溶質と溶媒のモル数を算出できる。
芳香環及びヘテロ原子を有する複素環式化合物は、水系電解質が含み得る亜鉛イオン及びアルミニウムイオンの安定性を向上させることができる。複素環式化合物は、ヘテロ原子に由来する電子供与性部と水分子との相互作用により、水分子を電解質中に拘束する。それ故、複素環式化合物を含む水系電解質によると、水分子の活物質粒子への接近を阻害することができ、水の電気分解を抑制することができる。ヘテロ原子の例には、窒素原子、硫黄原子及び酸素原子が含まれる。
芳香環及びヘテロ原子を有する複素環式化合物は、ベンゾトリアゾール、5-メチル-1H-トリアゾール、2-メルカプトベンゾチアゾール、2,5-ジメルカプトチアジアゾール、ベンズイミダゾール、2-ベンズイミダゾールチオール、ベンズオキサゾールチオール、2-メチルベンゾチアゾール、インドール、メルカプトチアゾリンからなる群より選択される少なくとも1種であり得る。
或いは、芳香環及びヘテロ原子を有する複素環式化合物は、下記式(A)で表される化合物群より選択される少なくとも1種であり得る。
式(A):
式(A)中、X1~X4のそれぞれは、水素原子、アルキル基又はカルボキシル基であり、Yは、水素原子又はアルコキシ基である。
アルキル基が含む炭素数は、例えば1~3である。カルボキシル基が含む炭素数は、例えば1~3である。アルコキシ基が含む炭素数は、例えば1~3である。
複素環式化合物として、上記の化合物群から選択される1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。
水系電解質が含む複素環式化合物の濃度は、例えば0.01重量%~1重量%の範囲内にあり、好ましくは0.01重量%~0.5重量%の範囲内にあり、より好ましくは0.1重量%~0.5重量%の範囲内にある。複素環式化合物の濃度が過度に低いと、集電体から溶出したアルミニウムイオンが複素環式化合物によって安定化されないため、負極活物質含有層の表面に、アルミニウム含有化合物を含む被膜が十分に形成されない可能性がある。或いは、集電体上に形成され得る複合被膜が不足するため、水素発生を十分に抑制することができず、二次電池の充放電効率が低下する傾向にある。複素環式化合物の濃度が過度に高いと、集電箔上に複素環式化合物による過剰な被膜が形成され、集電箔の導電性が低下する。また、集電箔からのアルミニウムの溶出が阻害され、負極上のアルミニウム含有化合物を含む被膜が形成されにくくなり、水分解抑制効果が低下する。以上のことから、電池特性が低下する傾向にある。
水系電解質が含む亜鉛イオンの濃度は、例えば0.1重量%~3重量%の範囲内にあり、好ましくは0.2重量%~3重量%の範囲内にあり、より好ましくは0.2重量%~1重量%の範囲内にある。当該濃度の上限値は2.5重量%であってもよい。亜鉛イオンの濃度が過度に低いと、集電体上に形成される複合被膜が不足するため、水素発生を十分に抑制することができず、二次電池の充放電効率が低下する傾向にある。亜鉛イオンの濃度が過度に高いと、負極活物質含有層上に形成されるアルミニウム含有化合物を含む被膜が十分に形成されない結果、充放電効率が低下する可能性がある。この場合、例えば、負極活物質含有層の表面において、比率({Al原子濃度/(Al原子濃度+Ti原子濃度)}×100)が5atm%未満となる可能性がある。
水系電解質が含む複素環式化合物の濃度は、イオンクロマトグラフ法により測定することができる。
水系電解質が含む亜鉛イオンの濃度は、ICP発光分光法により測定することができる。
電解質塩としては、例えば、リチウム塩、ナトリウム塩又はこれらの混合物を用いることができる。
リチウム塩として、例えば、塩化リチウム(LiCl)、臭化リチウム(LiBr)、水酸化リチウム(LiOH)、硫酸リチウム(Li2SO4)、硝酸リチウム(LiNO3)、酢酸リチウム(CH3COOLi)、シュウ酸リチウム(Li2C2O4)、炭酸リチウム(Li2CO3)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド)(LiTFSI;LiN(SO2CF3)2)、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI;LiN(SO2F)2)、及びリチウムビスオキサレートボラート(LiBOB:LiB[(OCO)2]2)などを用いることができる。
ナトリウム塩としては、塩化ナトリウム(NaCl)、硫酸ナトリウム(Na2SO4)、水酸化ナトリウム(NaOH)、硝酸ナトリウム(NaNO3)及びナトリウムトリフルオロメタンスルホニルアミド(NaTFSA)などを用いることができる。
水系電解質におけるリチウムイオン又はナトリウムイオンのモル濃度は、3mol/L以上であることが好ましく、6mol/L以上であることが好ましく、12mol/L以上であることが好ましい。水系電解質中のリチウムイオン又はナトリウムイオンの濃度が高いと、負極における水系溶媒の電気分解が抑制されやすく、負極からの水素発生が少ない傾向にある。
水系電解質のpHは、上述したように、7未満であることが好ましく、5以下であることがより好ましい。水系電解質のpHの下限値は、例えば4である。
水系電解質の界面張力は48mN/m以下が好ましい。48mN/m以下であることで、電極と水系電解質の親和性が向上し、電極でのリチウムイオンの出入りが促進される。界面張力が48mN/mを超えると、界面張力が高くなり過ぎ、電極と水系電解質の親和性が低く、電極でのリチウムイオンの出入りが妨げられるため、好ましくない。水系電解質の界面張力は25mN/m以上30mN/m以下であることがより好ましい。水系電解質と電極との相互作用は、大きすぎると電極での水分解反応が促進される。これは、界面張力が25mN/m以上30mN/m以下であることで、電極と水系電解質の親和性は向上するが、電極での水分解を防ぐことができるためである。
界面張力の測定では、電池の外装、例えば、円筒電池の底に穴をあけた後、電池を回収容器に収める。回収容器ごと電池を高速遠心機に導入して、遠心力により電池内から液状の水系電解質を回収容器へ抽出する。水系電解質の界面張力は、例えば、懸滴法を用いて求めることができる。測定装置としては、例えば、協和界面科学社製、自動接触角計Dme-201を用いることができる。
界面張力の算出には懸滴法を用い、下記式(1)から水系電解質の界面張力を算出する。界面張力(mN/M)=Δρg・de2(1/H)・・・・・(1)
式(1)における各記号の定義は、次の通りである:Δρ:密度差、g:重力加速度、de:懸滴の最大径、1/H:補正係数。例えば、測定を5回行い、その平均値を界面張力とみなす。
水系電解質のプロトン核磁気共鳴(1HNMR)スペクトルを測定することにより、複素環式化合物が芳香環とヘテロ原子とを含むことを確認することができる。1HNMRスペクトル測定に供する試料としては、例えば、電池から抽出した液状の水系電解質をそのまま用いることができる。水系電解質を重クロロホルム(CDCl3)に溶解させ、1HNMRスペクトルを測定する。
芳香環及びヘテロ原子を有する複素環式化合物が水系電解質中に含まれているか否かは、先述したGC-MSを用いて調べることができる。例えば、水系電解質をヘキサンで抽出し、水系電解質中の有機溶媒を取り分ける。この取り分けた有機溶媒に対してGC-MSとプロトン核磁気共鳴測定を行うことにより同定することができる。
(4)セパレータ
正極と負極との間にはセパレータを配置することができる。セパレータを絶縁材料で構成することで、正極と負極とが電気的に接触することを防止することができる。また、正極と負極との間を電解質が移動可能な形状のものを使用することが望ましい。セパレータの例に、不織布、フィルム、紙などが含まれる。セパレータの構成材料の例に、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン、セルロースが含まれる。好ましいセパレータの例に、セルロース繊維を含む不織布、ポリオレフィン繊維を含む多孔質フィルムを挙げることができる。セパレータの気孔率は60%以上にすることが好ましい。また、繊維径は10μm以下が好ましい。繊維径を10μm以下にすることで、電解質に対するセパレータの親和性が向上するので電池抵抗を小さくすることができる。繊維径のより好ましい範囲は3μm以下である。気孔率が60%以上のセルロース繊維含有不織布は、電解質の含浸性が良く、低温から高温まで高い出力性能を出すことができる。また、長期充電保存、フロート充電、過充電においても負極と反応せず、リチウム金属のデンドライト析出による負極と正極の短絡が発生しない。より好ましい範囲は62%~80%である。
セパレータは、厚さが20μm以上100μm以下、密度が0.2g/cm3以上0.9g/cm3以下であることが好ましい。この範囲であると、機械的強度と電池抵抗の軽減のバランスを取ることができ、高出力で内部短絡が抑制された二次電池を提供することができる。また、高温環境下でのセパレータの熱収縮が少なく、良好な高温貯蔵性能を出すことが出来る。
また、セパレータとして、固体電解質粒子を含む固体電解質層を使用することもできる。固体電解質層は、1種類の固体電解質粒子を含んでいても良く、複数種類の固体電解質粒子を含んでいてもよい。固体電解質層は、固体電解質粒子を含む固体電解質複合膜であってもよい。固体電解質複合膜は、例えば、固体電解質粒子を高分子材料を用いて膜状に成形したものである。固体電解質層は、可塑剤及び電解質塩からなる群より選択される少なくとも1つを含んでいても良い。固体電解質層が電解質塩を含んでいると、例えば、固体電解質層のアルカリ金属イオン伝導性をより高めることができる。
高分子材料の例は、ポリエーテル系、ポリエステル系、ポリアミン系、ポリエチレン系、シリコーン系及びポリスルフィド系を含む。
固体電解質としては、無機固体電解質を用いることが好ましい。無機固体電解質としては、例えば、酸化物系固体電解質、又は硫化物系固体電解質を挙げることができる。酸化物系固体電解質としては、NASICON型構造を有し、一般式LiM2(PO4)3で表されるリチウムリン酸固体電解質を用いることが好ましい。上記一般式中のMは、チタン(Ti)、ゲルマニウム(Ge)、ストロンチウム(Sr)、ジルコニウム(Zr)、スズ(Sn)、アルミニウム(Al)からなる群より選ばれる少なくとも一種類以上の元素であることが好ましい。元素Mは、Ge、Zr及びTiの何れか1つの元素と、Alとを含むことがより好ましい。
NASICON型構造を有するリチウムリン酸固体電解質の具体例としては、LATP(Li1+xAlxTi2-x(PO4)3)、Li1+xAlxGe2-x(PO4)3、Li1+xAlxZr2-x(PO4)3を挙げることができる。上記式におけるxは、0<x≦5の範囲内にあり、0.1≦x≦0.5の範囲内にあることが好ましい。固体電解質としては、LATPを用いることが好ましい。LATPは、耐水性に優れ、二次電池内で加水分解を生じにくい。
また、酸化物系固体電解質としては、アモルファス状のLIPON(Li2.9PO3.3N0.46)、又はガーネット型構造のLLZ(Li7La3Zr2O12)を用いてもよい。
また、固体電解質としては、ナトリウム含有固体電解質を用いてもよい。ナトリウム含有固体電解質は、ナトリウムイオンのイオン伝導性に優れている。ナトリウム含有固体電解質としては、β-アルミナ、ナトリウムリン硫化物、及びナトリウムリン酸化物などを挙げることができる。ナトリウムイオン含有固体電解質は、ガラスセラミックスの形態にあることが好ましい。
セパレータとして、上述した高分子材料及び上述した固体電解質を含む複合層と、多孔質自立膜とを備える複合固体電解質層を用いてもよい。多孔質自立膜とは、上述したポリエチレン又はポリプロピレンなどのポリオレフィン、或いは、セルロースからなる自立膜が含まれる。
(5)容器
正極、負極及び水系電解質が収容される容器には、金属製容器、ラミネートフィルム製容器、又は樹脂製容器を使用することができる。
金属製容器としては、ニッケル、鉄、及びステンレスなどからなる金属缶で角形、円筒形の形状のものが使用できる。樹脂製容器としては、ポリエチレン又はポリプロピレンなどからなるものを用いることができる。
樹脂製容器及び金属製容器のそれぞれの板厚は、0.05mm以上1mm以下の範囲内にあることが好ましい。板厚は、より好ましくは0.5mm以下であり、更に好ましくは0.3mm以下である。
ラミネートフィルムとしては、例えば、金属層を樹脂層で被覆した多層フィルムなどを挙げることができる。金属層の例に、ステンレス箔、アルミニウム箔、及びアルミニウム合金箔が含まれる。樹脂層には、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ナイロン、及びポリエチレンテレフタレート(PET)などの高分子を用いることができる。ラミネートフィルムの厚さは、0.01mm以上0.5mm以下の範囲内にあることが好ましい。ラミネートフィルムの厚さは、より好ましくは0.2mm以下である。
(6)負極端子
負極端子は、上述の負極活物質のLi吸蔵放出電位において電気化学的に安定であり、かつ導電性を有する材料から形成することができる。具体的には、負極端子の材料としては、銅、ニッケル、ステンレス若しくはアルミニウム、又は、Mg,Ti,Zn,Mn,Fe,Cu,及びSiからなる群より選択される少なくとも1種の元素を含むアルミニウム合金が挙げられる。負極端子の材料としては、アルミニウム又はアルミニウム合金を用いることが好ましい。負極端子は、負極集電体との接触抵抗を低減するために、負極集電体と同様の材料からなることが好ましい。
(7)正極端子
正極端子は、リチウムの酸化還元電位に対し2.5V以上5.5V以下の電位範囲(vs.Li/Li+)において電気的に安定であり、且つ導電性を有する材料から形成することができる。正極端子の材料としては、アルミニウム、或いは、Mg、Ti、Zn、Mn、Fe、Cu及びSiからなる群より選択される少なくとも1種の元素を含むアルミニウム合金が挙げられる。正極端子は、正極集電体との接触抵抗を低減するために、正極集電体と同様の材料から形成されることが好ましい。
(8)二次電池の形態
本実施形態に係る二次電池は、角形、円筒形、扁平型、薄型、コイン型等の様々な形態で使用され得る。また、バイポーラ構造を有する二次電池であってもよい。バイポーラ構造を有する二次電池には、複数直列のセルを1個のセルで作製できるという利点がある。
次に、実施形態に係る二次電池について、図面を参照しながらより具体的に説明する。 図3は、実施形態に係る二次電池の一例を概略的に示す断面図である。図4は、図3に示す二次電池のIV-IV線に沿った断面図である。
電極群1は、矩形筒状の金属製容器2内に収納されている。電極群1は、正極5及び負極3をその間にセパレータ4を介在させて偏平形状となるように渦巻き状に捲回した構造を有する。水系電解質(図示しない)は、電極群1に保持されている。図3に示すように、電極群1の端面に位置する正極5の端部の複数個所それぞれに帯状の正極側リード22が電気的に接続されている。また、この端面に位置する負極3の端部の複数個所それぞれに帯状の負極側リード23が電気的に接続されている。複数ある正極側リード22は、一つに束ねられた状態で正極タブ16と電気的に接続されている。また、複数ある負極側リード23は、一つに束ねられた状態で負極タブ17と接続されている。金属製の封口板10は、金属製容器2の開口部に溶接等により固定されている。正極タブ16及び負極タブ17は、それぞれ、封口板10に設けられた取出穴から外部に引き出されている。封口板10の各取出穴の内周面は、正極タブ16及び負極タブ17との接触による短絡を回避するために、絶縁部材で被覆されている。
図4に示すように、負極タブ17の他端は短冊状になっていて、電極群1の上側端面に位置する負極3の端部の複数個所それぞれに電気的に接続されている。また、図示してないが、同様に正極タブ16の他端は短冊状になっていて、電極群1の上側端面に位置する正極5の端部の複数個所それぞれに電気的に接続されている。
図3において、金属製の封口板10は、金属製容器2の開口部に溶接等により固定されている。正極側リード22及び負極側リード23は、それぞれ、封口板10に設けられた取出穴から外部に引き出されている。封口板10の各取出穴の内周面には、正極側リード22及び負極側リード23との接触による短絡を回避するために、それぞれ正極ガスケット18及び負極ガスケット19が配置されている。正極ガスケット18及び負極ガスケット19を配置することで、角型二次電池100の気密性を維持できる。
封口板10には制御弁11(安全弁)が配置されている。水系溶媒の電気分解により発生したガスに起因して電池セルにおける内圧が高まった場合には、制御弁11から発生ガスを外部へと放散できる。制御弁11としては、例えば内圧が設定値よりも高くなった場合に作動し、内圧が低下すると封止栓として機能する復帰式のものを使用することができる。或いは、一度作動すると封止栓としての機能が回復しない非復帰式の制御弁を使用してもよい。図3に示す二次電池100では、制御弁11が封口板10の中央付近に配置されているが、制御弁11の位置は封口板10の端部であってもよい。制御弁11は省略してもよい。
また、封口板10には注液口12が設けられている。水系電解質は、この注液口12を介して注液され得る。注液口12は、水系電解質が注液された後、封止栓13により塞がれ得る。注液口12及び封止栓13は省略してもよい。
図5は、実施形態に係る二次電池の他の例を概略的に示す部分切欠斜視図である。図6は、図5に示す二次電池のB部を拡大した断面図である。図5及び図6は、容器として、ラミネートフィルム製外装部材を用いた二次電池100の一例を示している。
図5及び図6に示す二次電池100は、図5及び図6に示す電極群1と、図5に示す外装部材2と、図示しない電解質とを具備する。電極群1及び電解質は、外装部材2内に収納されている。電解質は、電極群1に保持されている。
外装部材2は、2つの樹脂層とこれらの間に介在した金属層とを含むラミネートフィルムからなる。
電極群1は、図6に示すように、積層型の電極群である。積層型の電極群1は、負極3と正極5とをその間にセパレータ4を介在させながら交互に積層した構造を有している。
電極群1は、複数の負極3を含んでいる。複数の負極3は、それぞれが、負極集電体3aと、負極集電体3aの両面に担持された負極活物質含有層3bとを備えている。また、電極群1は、複数の正極5を含んでいる。複数の正極5は、それぞれが、正極集電体5aと、正極集電体5aの両面に担持された正極活物質含有層5bとを備えている。
各負極3の負極集電体3aは、その一辺において、いずれの表面にも負極活物質含有層3bが担持されていない部分3cを含む。この部分3cは、負極集電タブとして働く。図6に示すように、負極集電タブとして働く部分3cは、正極5と重なっていない。また、複数の負極集電タブ(部分3c)は、帯状の負極端子6に電気的に接続されている。帯状の負極端子6の先端は、外装部材2の外部に引き出されている。
また、図示しないが、各正極5の正極集電体5aは、その一辺において、いずれの表面にも正極活物質含有層5bが担持されていない部分を含む。この部分は、正極集電タブとして働く。正極集電タブは、負極集電タブ(部分3c)と同様に、負極3と重なっていない。また、正極集電タブは、負極集電タブ(部分3c)に対し電極群1の反対側に位置する。正極集電タブは、帯状の正極端子7に電気的に接続されている。帯状の正極端子7の先端は、負極端子6とは反対側に位置し、外装部材2の外部に引き出されている。
実施形態に係る二次電池は、組電池を構成していてもよい。組電池は、実施形態に係る二次電池を複数個具備している。
実施形態に係る組電池において、各単電池は、電気的に直列若しくは並列に接続して配置してもよく、又は直列接続及び並列接続を組み合わせて配置してもよい。
実施形態に係る組電池の一例について、図面を参照しながら説明する。
図7は、実施形態に係る組電池の一例を概略的に示す斜視図である。図7に示す組電池200は、5つの単電池100a~100eと、4つのバスバー21と、正極側リード22と、負極側リード23とを具備している。5つの単電池100a~100eのそれぞれは、実施形態に係る二次電池である。
バスバー21は、例えば、1つの単電池100aの負極端子6と、この単電池100aの隣に位置する単電池100bの正極端子7とを接続している。このようにして、5つの単電池100は、4つのバスバー21により直列に接続されている。すなわち、図7の組電池200は、5直列の組電池である。
図7に示すように、5つの単電池100a~100eのうち、左端に位置する単電池100aの正極端子7は、外部接続用の正極側リード22に接続されている。また、5つの単電池100a~100eうち、右端に位置する単電池100eの負極端子6は、外部接続用の負極側リード23に接続されている。
第1の実施形態によると、二次電池が提供される。二次電池は、負極と、正極と、水系電解質とを備える。負極は、アルミニウムを含む負極集電体、及び、前記負極集電体上に設けられ、チタン含有酸化物を含む負極活物質含有層を備える。負極活物質含有層の表面の少なくとも一部は、アルミニウム含有化合物を含む被膜を備える。水系電解質は、亜鉛イオンと、芳香環及びヘテロ原子を有する複素環式化合物とを含む。水系電解質における、亜鉛イオンと複素環式化合物との重量比は0.4以上250以下の範囲内にある。この二次電池は、負極における水の電気分解を抑制することができるため、優れた充放電効率を示す。
(第2の実施形態)
第2の実施形態によると、電池パックが提供される。この電池パックは、第1の実施形態に係る二次電池を具備している。この電池パックは、第2の実施形態に係る二次電池を1つ具備していてもよく、複数個の二次電池で構成された組電池を具備していてもよい。
第2の実施形態に係る電池パックは、保護回路を更に具備することができる。保護回路は、二次電池の充放電を制御する機能を有する。或いは、電池パックを電源として使用する装置(例えば、電子機器、自動車等)に含まれる回路を、電池パックの保護回路として使用してもよい。
また、第2の実施形態に係る電池パックは、通電用の外部端子を更に具備することもできる。通電用の外部端子は、外部に二次電池からの電流を出力するため、及び/又は二次電池に外部からの電流を入力するためのものである。言い換えれば、電池パックを電源として使用する際、電流が通電用の外部端子を通して外部に供給される。また、電池パックを充電する際、充電電流(自動車などの動力の回生エネルギーを含む)は通電用の外部端子を通して電池パックに供給される。
次に、第2の実施形態に係る電池パックの一例について、図面を参照しながら説明する。
図8は、第2の実施形態に係る電池パックの一例を概略的に示す分解斜視図である。図9は、図8に示す電池パックの電気回路の一例を示すブロック図である。
図8及び図9に示す電池パック300は、収容容器31と、蓋32と、保護シート33と、組電池200と、プリント配線基板34と、配線35と、図示しない絶縁板とを備えている。
図8に示す収容容器31は、長方形の底面を有する有底角型容器である。収容容器31は、保護シート33と、組電池200と、プリント配線基板34と、配線35とを収容可能に構成されている。蓋32は、矩形型の形状を有する。蓋32は、収容容器31を覆うことにより、上記組電池200等を収容する。収容容器31及び蓋32には、図示していないが、外部機器等へと接続するための開口部又は接続端子等が設けられている。
組電池200は、複数の単電池100と、正極側リード22と、負極側リード23と、粘着テープ24とを備えている。
複数の単電池100の少なくとも1つは、第1の実施形態に係る二次電池である。複数の単電池100は、外部に延出した負極端子6及び正極端子7が同じ向きになるように揃えて積層されている。複数の単電池100の各々は、図9に示すように電気的に直列に接続されている。複数の単電池100は、電気的に並列に接続されていてもよく、直列接続及び並列接続を組み合わせて接続されていてもよい。複数の単電池100を並列接続すると、直列接続した場合と比較して、電池容量が増大する。
粘着テープ24は、複数の単電池100を締結している。粘着テープ24の代わりに、熱収縮テープを用いて複数の単電池100を固定してもよい。この場合、組電池200の両側面に保護シート33を配置し、熱収縮テープを周回させた後、熱収縮テープを熱収縮させて複数の単電池100を結束させる。
正極側リード22の一端は、単電池100の積層体において、最下層に位置する単電池100の正極端子7に接続されている。正極側リード22の一端は、単電池100の積層体において、最上層に位置する単電池100の負極端子6に接続されている。
プリント配線基板34は、収容容器31の内側面のうち、一方の短辺方向の面に沿って設置されている。プリント配線基板34は、正極側コネクタ341と、負極側コネクタ342と、サーミスタ343と、保護回路344と、配線345及び346と、通電用の外部端子347と、プラス側配線348aと、マイナス側配線348bとを備えている。プリント配線基板34の一方の主面は、組電池200において負極端子6及び正極端子7が延出する面と向き合っている。プリント配線基板34と組電池200との間には、図示しない絶縁板が介在している。
正極側コネクタ341には、貫通孔が設けられている。この貫通孔に、正極側リード22の他端が挿入されることにより、正極側コネクタ341と正極側リード22とは電気的に接続される。負極側コネクタ342には、貫通孔が設けられている。この貫通孔に、負極側リード23の他端が挿入されることにより、負極側コネクタ342と負極側リード23とは電気的に接続される。
サーミスタ343は、プリント配線基板34の一方の主面に固定されている。サーミスタ343は、単電池100の各々の温度を検出し、その検出信号を保護回路344に送信する。
通電用の外部端子347は、プリント配線基板34の他方の主面に固定されている。通電用の外部端子347は、電池パック300の外部に存在する機器と電気的に接続されている。
保護回路344は、プリント配線基板34の他方の主面に固定されている。保護回路344は、プラス側配線348aを介して通電用の外部端子347と接続されている。保護回路344は、マイナス側配線348bを介して通電用の外部端子347と接続されている。また、保護回路344は、配線345を介して正極側コネクタ341に電気的に接続されている。保護回路344は、配線346を介して負極側コネクタ342に電気的に接続されている。更に、保護回路344は、複数の単電池100の各々と配線35を介して電気的に接続されている。
保護シート33は、収容容器31の長辺方向の両方の内側面と、組電池200を介してプリント配線基板34と向き合う短辺方向の内側面とに配置されている。保護シート33は、例えば、樹脂又はゴムからなる。
保護回路344は、複数の単電池100の充放電を制御する。また、保護回路344は、サーミスタ343から送信される検出信号、又は、個々の単電池100若しくは組電池200から送信される検出信号に基づいて、保護回路344と通電用の外部端子347との電気的な接続を遮断する。
サーミスタ343から送信される検出信号としては、例えば、単電池100の温度が所定の温度以上であることを検出した信号を挙げることができる。個々の単電池100若しくは組電池200から送信される検出信号としては、例えば、単電池100の過充電、過放電及び過電流を検出した信号を挙げることができる。個々の単電池100について過充電等を検出する場合、電池電圧を検出してもよく、正極電位又は負極電位を検出してもよい。後者の場合、参照極として用いるリチウム電極を個々の単電池100に挿入する。
なお、保護回路344としては、電池パック300を電源として使用する装置(例えば、電子機器、自動車等)に含まれる回路を用いてもよい。
また、この電池パック300は、上述したように通電用の外部端子347を備えている。したがって、この電池パック300は、通電用の外部端子347を介して、組電池200からの電流を外部機器に出力するとともに、外部機器からの電流を、組電池200に入力することができる。言い換えると、電池パック300を電源として使用する際には、組電池200からの電流が、通電用の外部端子347を通して外部機器に供給される。また、電池パック300を充電する際には、外部機器からの充電電流が、通電用の外部端子347を通して電池パック300に供給される。この電池パック300を車載用電池として用いた場合、外部機器からの充電電流として、車両の動力の回生エネルギーを用いることができる。
なお、電池パック300は、複数の組電池200を備えていてもよい。この場合、複数の組電池200は、直列に接続されてもよく、並列に接続されてもよく、直列接続及び並列接続を組み合わせて接続されてもよい。また、プリント配線基板34及び配線35は省略してもよい。この場合、正極側リード22及び正極側リード22を通電用の外部端子として用いてもよい。
このような電池パックは、例えば大電流を取り出したときにサイクル性能が優れていることが要求される用途に用いられる。この電池パックは、具体的には、電子機器の電源、定置用電池、及び各種車両の車載用電池として用いられる。電子機器としては、例えば、デジタルカメラを挙げることができる。この電池パックは、車載用電池として特に好適に用いられる。
第2の実施形態に係る電池パックは、第1の実施形態に係る二次電池を備えている。従って、第2の実施形態に係る電池パックは、充放電効率に優れている。
(第3の実施形態)
第3の実施形態によると、車両が提供される。この車両は、第2の実施形態に係る電池パックを搭載している。
第3の実施形態に係る車両において、電池パックは、例えば、車両の動力の回生エネルギーを回収するものである。車両は、車両の運動エネルギーを回生エネルギーに変換する機構を含み得る。
車両の例としては、例えば、二輪乃至四輪のハイブリッド電気自動車、二輪乃至四輪の電気自動車、アシスト自転車、及び鉄道用車両が挙げられる。
車両における電池パックの搭載位置は、特には限定されない。例えば、電池パックを自動車に搭載する場合、電池パックは、車両のエンジンルーム、車体後方又は座席の下に搭載することができる。
車両は、複数の電池パックを搭載してもよい。この場合、電池パックは、電気的に直列に接続されてもよく、電気的に並列に接続されてもよく、直列接続及び並列接続を組み合わせて電気的に接続されてもよい。
次に、第3の実施形態に係る車両の一例について、図面を参照しながら説明する。
図10は、第3の実施形態に係る車両の一例を概略的に示す断面図である。
図10に示す車両400は、車両本体40と、第2の実施形態に係る電池パック300とを含んでいる。図10に示す例では、車両400は、四輪の自動車である。
この車両400は、複数の電池パック300を搭載してもよい。この場合、電池パック300は、直列に接続されてもよく、並列に接続されてもよく、直列接続及び並列接続を組み合わせて接続されてもよい。
図10では、電池パック300が車両本体40の前方に位置するエンジンルーム内に搭載されている例を図示している。上述したとおり、電池パック300は、例えば、車両本体40の後方又は座席の下に搭載してもよい。この電池パック300は、車両400の電源として用いることができる。また、この電池パック300は、車両400の動力の回生エネルギーを回収することができる。
第3の実施形態に係る車両は、第2の実施形態に係る電池パックを搭載している。それ故、本実施形態によれば、充放電効率に優れた電池パックを具備した車両を提供することができる。
(第4の実施形態)
第4の実施形態によると、定置用電源が提供される。この定置用電源は、第2の実施形態に係る電池パックを搭載している。なお、この定置用電源は、第2の実施形態に係る電池パックの代わりに、第1の実施形態に係る二次電池又は組電池を搭載していてもよい。
図11は、第4の実施形態に係る定置用電源を含むシステムの一例を示すブロック図である。図11は、第2の実施形態に係る電池パック300A、300Bの使用例として、定置用電源112、123への適用例を示す図である。図11に示す一例では、定置用電源112,123が用いられるシステム110が示される。システム110は、発電所111、定置用電源112、需要家側電力系統113及びエネルギー管理システム(EMS)115を備える。また、システム110には、電力網116及び通信網117が形成され、発電所111、定置用電源112、需要家側電力系統113及びEMS115は、電力網116及び通信網117を介して、接続される。EMS115は、電力網116及び通信網117を活用して、システム110全体を安定化させる制御を行う。
発電所111は、火力及び原子力等の燃料源によって、大容量の電力を生成する。発電所111からは、電力網116等を通して電力が供給される。また、定置用電源112には、電池パック300Aが搭載される。電池パック300Aは、発電所111から供給される電力等を蓄電できる。また、定置用電源112は、電池パック300Aに蓄電された電力を、電力網116等を通して供給できる。システム110には、電力変換装置118が設けられる。電力変換装置118は、コンバータ、インバータ及び変圧器等を含む。したがって、電力変換装置118は、直流と交流との間の変換、互いに対して周波数が異なる交流の間の変換、及び、変圧(昇圧及び降圧)等を行うことができる。このため、電力変換装置118は、発電所111からの電力を、電池パック300Aへ蓄電可能な電力に変換できる。
需要家側電力系統113には、工場用の電力系統、ビル用の電力系統、及び、家庭用の電力系統等が、含まれる。需要家側電力系統113は、需要家側EMS121、電力変換装置122及び定置用電源123を備える。定置用電源123には、電池パック300Bが搭載される。需要家側EMS121は、需要家側電力系統113を安定化させる制御を行う。
需要家側電力系統113には、発電所111からの電力、及び、電池パック300Aからの電力が、電力網116を通して供給される。電池パック300Bは、需要家側電力系統113に供給された電力を蓄電できる。また、電力変換装置121は、電力変換装置118と同様に、コンバータ、インバータ及び変圧器等を含む。したがって、電力変換装置121は、直流と交流との間の変換、互いに対して周波数が異なる交流の間の変換、及び、変圧(昇圧及び降圧)等を行うことができる。このため、電力変換装置121は、需要家側電力系統113に供給された電力を、電池パック300Bへ蓄電可能な電力に変換できる。
なお、電池パック300Bに蓄電された電力は、例えば、電気自動車等の車両の充電等に用いることができる。また、システム110には、自然エネルギー源が設けられてもよい。この場合、自然エネルギー源は、風力及び太陽光等の自然エネルギーによって、電力を生成する。そして、発電所111に加えて自然エネルギー源からも、電力網116を通して、電力が供給される。
第4の実施形態に係る定置用電源は、第2の実施形態に係る電池パックを具備している。それ故、本実施形態によれば、充放電効率に優れた電池パックを具備した定置用電源を提供することができる。
以下に実施例を記載する。実施形態は、以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
<正極の作製>
正極活物質としてLiMn2O4、導電剤として黒鉛粉末、結着剤としてPVdF、及び、溶媒としてNMPを混合して、スラリーを作製した。このスラリーにおける正極活物質、導電剤、及び結着剤の質量比は100:5:10とした。このスラリーを、厚さ20μmのTi箔の片面上に塗布した。その後、溶媒を留去して積層体を得た。次いで、この積層体を圧延した。その後、この積層体を乾燥させることで正極を得た。
<負極の作製>
負極活物質としてLi4Ti5O12、導電剤として黒鉛粉末、結着剤としてPVdF、溶媒としてNMPを混合して、スラリーを作製した。このスラリーにおける負極活物質、導電剤、及び結着剤の質量比は100:10:10とした。このスラリーを、厚さ30μmのAl箔の片面上に塗布した。その後、溶媒を留去して積層体を得た。次いで、この積層体を圧延した。その後、この積層体を乾燥させることで負極を得た。
<水系電解質の調製>
1,2,3-ベンゾトリアゾール(BTA)を0.1重量%、ZnCl2を0.9重量%、LiClを12mol/L、NMPを10体積%含む水溶液を作製した。この溶液を実施例1の電解液とした。この電解液が含む亜鉛イオン(Zn2+)の濃度は0.43重量%である。なお、水系電解質のpHは5であった。実施例及び比較例におけるpH測定には、スティック状pH試験紙pH-Fixを用いた。
<評価用セルの作製>
プラスチック板上に、負極リードを固定し、その上に負極を固定した。別のプラスチック板上に正極リードを固定し、その上に正極を固定した。負極の上に、作成した電解質(180μL)を滴下し、その上に、Li1.3Al0.3Ti1.7(PO4)3(以下、LATPと略記する)と、高分子材料としてのポリビニルブチラールとを混合した、セパレータとしてのLATP固体電解質膜を置き、密着させた。このセパレータの逆側に、12mol/Lの塩化リチウム水溶液(180μL)を滴下し、その上から正極を置いて密着させ、さらにねじで固定した。その後、24時間待機した。
(実施例2)
水系電解質として以下に記載したものを用いたことを除いて、実施例1において記載したのと同様の方法により評価用セルを作製した。
BTAを0.5重量%、ZnCl2を0.5重量%、LiClを12mol/L、NMPを10体積%含む水溶液を作製した。この溶液を実施例2の電解液とした。この電解液が含む亜鉛イオン(Zn2+)の濃度は0.24重量%である。なお、水系電解質のpHは4であった。
(実施例3)
水系電解質として以下に記載したものを用いたことを除いて、実施例1において記載したのと同様の方法により評価用セルを作製した。
BTAを0.01重量%、ZnCl2を4.95重量%、LiClを12mol/L、NMPを10体積%含む水溶液を作製した。この溶液を実施例3の電解液とした。この電解液が含む亜鉛イオン(Zn2+)の濃度は2.4重量%である。なお、水系電解質のpHは7であった。
(比較例1)
水系電解質にBTAを含まないことを除いて、実施例1において記載したのと同様の方法により試験用セルを作製した。つまり比較例1に係る水系電解質として、ZnCl2を1重量%、LiClを12mol/L、NMPを10体積%含む水溶液を比較例1の電解液として使用した。この水系電解質が含む亜鉛イオン(Zn2+)の濃度は0.48重量%であり、pHは8であった。
(比較例2)
水系電解質として以下に記載したものを用いたことを除いて、実施例1において記載したのと同様の方法により評価用セルを作製した。
BTAを0.5重量%、ZnCl2を0.1重量%、LiClを12mol/L、NMPを10体積%含む水溶液を作製した。この溶液を比較例2の電解液とした。この電解液が含む亜鉛イオン(Zn2+)の濃度は0.05重量%である。なお、水系電解質のpHは3であった。
(比較例3)
電解質として以下に記載したものを用いたことを除いて、実施例1において記載したのと同様の方法により評価用セルを作製した。
BTAを0.005重量%、ZnCl2を4.75重量%、LiClを12mol/L、NMPを10体積%含む水溶液を作製した。この溶液を比較例3の電解液とした。この電解液が含む亜鉛イオン(Zn2+)の濃度は2.28重量%である。なお、水系電解質のpHは8であった。
<セル評価>
各例において作製した評価用セルについて、定電流充放電試験を行い、また負極に対して、エネルギー分散型X線分光(SEM-EDX)分析を行った。
<定電流充放電試験>
充電及び放電のいずれも0.5Cレートで行った。また、充電時は、電流値が0.25Cになるまで、充電時間が132分間になるまで、又は、充電容量が170mAh/gになるまでの3条件のうち、いずれか早い条件を終止条件とした。放電時は132分後を終止条件とした。
上記充電を1回行い、上記放電を1回行うことを充放電の1サイクルとし、充放電を20サイクル繰り返した。各充放電サイクルにおける充電容量および放電容量をそれぞれ測定した。得られた結果から、下記式(2)に従って充放電効率をサイクル毎に算出した。
充放電効率(%)=100×{放電容量(mAh/g)/充電容量(mAh/g)}・・・(2)
<エネルギー分散型X線分光(SEM-EDX)分析>
エネルギー分散型X線分光(SEM-EDX)分析は、日立ハイテクノロジーSU8020を用いて、実施形態に記載した方法に従って行った。倍率は200倍、電子線の加速電圧は15keVとし、平均的な視野5箇所を分析した。実施例1~3及び比較例1~3では、いずれの例においても、負極活物質含有層表面においてアルミニウム原子が検出された。即ち、実施例1~3及び比較例1~3のそれぞれにおいて、負極活物質含有層の少なくとも一部には、アルミニウム含有化合物を含む被膜が形成されていた。
以上の結果を下記表1に示す。
表1中、「ZnCl2」の列には、電解質が含むZnCl2の重量%濃度を示している。「Zn2+」の列には、電解質が含むZn2+の重量%濃度を示している。「Zn2+/複素環式化合物」の列には、電解質に含まれる亜鉛イオンと複素環式化合物との重量比を示している。「Al/(Al+Ti)」の列には、SEM-EDX分析で決定された、比率({Al原子濃度/(Al原子濃度+Ti原子濃度)}×100)の値を示している。「充放電効率」の列には、上述の定電流充放電試験により測定された、20サイクル目における充放電効率の値を百分率で示している。「放電容量」の列には、上述の定電流充放電試験により測定された、20サイクル目における放電容量の値を示している。「NA」は、二次電池が、20サイクルまでは正常に動作しなかったことを示している。
表1から以下のことが分かる。
水系電解質における、亜鉛イオンと複素環式化合物との重量比が0.4~240の範囲内にある実施例1~3は、優れた充放電効率を達成することができた。中でも、この重量比が0.4~10の範囲内にある実施例1及び2は、特に優れた充放電効率を達成した。
一方、水系電解質が複素環式化合物を含まない比較例1、並びに、亜鉛イオンと複素環式化合物との重量比が0.4~240の範囲内にない比較例2及び3は、充放電効率及び放電容量の双方が劣っていた。
実施例1~3に示すように、負極活物質含有層の表面において、チタン原子及びアルミニウム原子の原子濃度の和に対する、アルミニウム原子の原子濃度の比率({Al原子濃度/(Al原子濃度+Ti原子濃度)}×100)が5atm%以上40atm%以下である場合には、優れた充放電効率を示したことが分かる。
比較例2に示しているように、水系電解質における、亜鉛イオンと複素環式化合物との重量比が0.4未満であると、充放電効率は著しく低下する。これは、複素環式化合物からなる疎水性被膜と、亜鉛含有化合物及び複素環式化合物の複合被膜の形成量が不足しているため、集電体表面上での水分解を抑制できなことが原因と考えられる。
比較例3に示しているように、亜鉛イオンが過度に多いと、亜鉛の溶解析出が優先するため、活物質含有層上及び/又は集電体上への亜鉛の析出が阻害される。それ故、亜鉛含有被膜による水の電気分解抑制の効果が得られず、電池の充放電効率が低下するので、電池を安定的に動作できなくなったと考えられる。その結果、表1に記載しているように、二次電池を6サイクル以降動作させることができなかった。
以上述べた少なくとも1つの実施形態及び実施例によると、二次電池が提供される。二次電池は、負極と、正極と、水系電解質とを備える。負極は、アルミニウムを含む負極集電体、及び、前記負極集電体上に設けられ、チタン含有酸化物を含む負極活物質含有層を備える。負極活物質含有層の表面の少なくとも一部は、アルミニウム含有化合物を含む被膜を備える。水系電解質は、亜鉛イオンと、芳香環及びヘテロ原子を有する複素環式化合物とを含む。水系電解質における、亜鉛イオンと複素環式化合物との重量比は0.4以上250以下の範囲内にある。この二次電池は、負極における水の電気分解を抑制することができるため、優れた充放電効率を示す。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1] アルミニウムを含む負極集電体、及び、前記負極集電体上に設けられ、チタン含有酸化物を含む負極活物質含有層を備える負極と、
正極と、
水系電解質とを備え、
前記負極活物質含有層の表面の少なくとも一部は、アルミニウム含有化合物を含む被膜を備え、
前記水系電解質は、亜鉛イオンと、芳香環及びヘテロ原子を有する複素環式化合物とを含み、前記水系電解質における、前記亜鉛イオンと前記複素環式化合物との重量比は0.4以上250以下の範囲内にある二次電池。
[2] 前記負極活物質含有層の前記表面において、チタン原子及びアルミニウム原子の原子濃度の和に対する、アルミニウム原子の原子濃度の比率({Al原子濃度/(Al原子濃度+Ti原子濃度)}×100)は5atm%以上40atm%以下である[1]に記載の二次電池。
[3] 前記複素環式化合物は、下記式(A)で表される[1]又は[2]に記載の二次電池。
式(A):
式(A)中、X
1
~X
4
のそれぞれは、水素原子、アルキル基又はカルボキシル基であり、Yは、水素原子又はアルコキシ基である。
[4] 前記水系電解質中の前記亜鉛イオン濃度は、0.2重量%~3重量%の範囲内にある[1]~[3]の何れか1項に記載の二次電池。
[5] 前記水系電解質中の前記複素環式化合物の濃度は、0.01重量%~0.5重量%の範囲内にある[1]~[4]の何れか1項に記載の二次電池。
[6] 前記水系電解質のpHは7より小さい[1]~[5]の何れか1項に記載の二次電池。
[7][1]~[6]の何れか1項に記載の二次電池を具備した電池パック。
[8] 通電用の外部端子と、保護回路とを更に含む[7]に記載の電池パック。
[9] 複数の前記二次電池を具備し、前記二次電池が、直列、並列、又は、直列及び並列を組み合わせて電気的に接続されている[7]又は[8]に記載の電池パック。
[10] [7]~[9]の何れか1項に記載の電池パックを具備する車両。
[11] [7]~[9]の何れか1項に記載の電池パックを具備する定置用電源。