JP6912610B2 - 口腔内の細胞賦活化方法、及び口腔内用の細胞賦活化装置 - Google Patents
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Description
対向する電極間に、プラズマ生成用ガスを毎分0.1L以上5.0L以下で供給し、前記プラズマ発生ガスに周波数0.5kHz以上20kHz未満の電圧を5.0kVpss以上20kVpps未満で印加して、前記プラズマを前記細胞に照射する照射工程を有し、
前記照射工程を所定の期間を空けて2回以上行う、細胞賦活化方法。
<2>対向する電極と、
前記の対向する電極間に印加する電圧を周波数0.5kHz以上20kHz未満かつ電圧5.0kVpss以上20kVpps未満に制御する電源制御部と、
前記電極間へのプラズマ生成用ガスの導入量を毎分0.1L以上5.0L以下とする照射量制御部と、を有し、
前記電極間に電圧を印加してプラズマを生じ、前記プラズマを細胞に対して、所定の期間を空けて2回以上照射する、細胞賦活化装置。
[1]大気圧プラズマ生成用ガスが導入される管状誘電体と、前記管状誘電体の内空部において前記管状誘電体の軸線方向に延びる、コイル状又は表面に凹凸を有する形状の内部電極と、前記管状誘電体の外側に、前記内部電極に沿う外部電極と、を備えていることを特徴とするプラズマ装置。
[2] 前記外部電極の形状が、前記管状誘電体の外周部を取り巻く筒状であることを特徴とする[1]に記載のプラズマ装置。
[3] 前記大気圧プラズマ生成用ガスが窒素ガスであることを特徴とする[1]又は[2]に記載のプラズマ装置。
[4] 大気圧プラズマの照射口が、ヒトの口腔内に挿入され得る大きさであることを特徴とする[1]〜[3]の何れか一項に記載のプラズマ装置。
[5] 生成された大気圧プラズマが、細胞、生体組織又は生物個体の治療若しくは賦活に使用されることを特徴とする[1]〜[4]の何れか一項に記載のプラズマ装置。
[6] 生成された大気圧プラズマの照射量を制御する照射量制御機器をさらに備えたことを特徴とする[1]〜[5]の何れか一項に記載のプラズマ装置。
[7] [1]〜[6]の何れか一項に記載のプラズマ装置の使用方法であって、前記外部電極と前記内部電極の間に、20kVpp未満且つ20kHz未満の交流を印加することによって、大気圧プラズマを生成することを特徴とするプラズマ装置の使用方法。
[8] 前記管状誘電体に導入される前記大気圧プラズマ生成用ガスの導入量を制御することによって、照射口から照射される大気圧プラズマの照射量を毎分5.0L未満に制御することを特徴とする[7]に記載のプラズマ装置の使用方法。
[9] 大気圧プラズマの温度が、照射口から1mm以上10mm以下の距離において、40℃以下となる様に、前記交流及び前記大気圧プラズマ生成用ガスの導入量のうち少なくとも何れか一方を制御することを特徴とする[7]又は[8]に記載のプラズマ装置の使用方法。
[10] 細胞、生体組織又は生物個体に照射されたときに、その被照射部分を清浄化若しくは賦活化する又はその被照射部分にある傷若しくは異常の治癒を促進することを特徴とする窒素ガスプラズマ。
[11] 窒素ガスプラズマを細胞、生体組織又は生物個体に照射することによって、その被照射部分を清浄化若しくは賦活化する又はその被照射部分にある傷若しくは異常の治癒を促進することを特徴とする窒素ガスプラズマの照射方法(ただし、前記生物個体がヒトである場合を除く)。
[12] 窒素ガスプラズマを、歯周組織又は歯に照射することを特徴とする[11]に記載の窒素ガスプラズマの照射方法。
[13] 窒素ガスプラズマを、上皮組織に照射することを特徴とする[11]に記載の窒素ガスプラズマの照射方法。
本発明のプラズマ装置によれば低温の大気圧プラズマを照射できる。この大気圧プラズマを生体やソフトマテリアルに照射し、その被照射面を清浄化できる。さらに、当該プラズマ照射により、生体を治療したり、賦活したりすることができる。
本発明のプラズマ装置の使用方法によれば、プラズマ発生部に備えられた電極間に所定の交流を印加することによって、低温の大気圧プラズマを容易に発生することができる。
本発明の窒素ガスプラズマ及びその照射方法によれば、被照射部分を清浄化若しくは賦活化する又はその被照射部分にある傷若しくは異常の治癒を促進することができる。
本発明にかかる第一実施形態のプラズマ装置1の要部を図1に示す。
プラズマ装置1は、大気圧プラズマ生成用ガスGが電離されて大気圧プラズマPが発生するプラズマ発生部2と、大気圧プラズマPを外部へ向けて照射する照射口6と、を備える。
図3に示すように、管状誘電体3、外部電極5及び内部電極4の長手方向は、同一方向(矢印D1方向)に沿う。この断面において、管状誘電体3の管壁3aを挟んで内部電極4のコイルの外周面が外部電極5の内周面に対向し、近接する箇所4pは、複数存在している。各箇所4pは互いに離間し、分散して配置されている。
上記配置により、電圧を印加された内部電極4が局所的に過度に加熱されることが防止され、低温の大気圧プラズマPが容易に生成される。
また、長さ方向に直交する断面において内部電極4の外周面の複数箇所で外部電極5の内面に対向する形状であれば、その他のいかなる形状であってもよい。
上記配置により、電圧を印加された内部電極4’が局所的に過度に加熱されることが防止され、低温の大気圧プラズマPが容易に生成される。
図1のプラズマ装置1の使用方法を例示する。管状誘電体3の下端部(第一端部)からその内空部へ、ボンベから供給されるプラズマ生成用ガスGを導入する。内空部に導入されたプラズマ生成用ガスGは、管状誘電体3の先端部(第二端部)に設置された内部電極4と外部電極5が対向する複数の箇所4pにおいて電離され、大気圧プラズマPになる。この際、内部電極4と外部電極5の間には電圧が印加される。
内部電極4がコイル状である場合に限らず、表面に複数の凹凸が形成された前述の内部電極であれば同様に、低温の大気圧プラズマが容易に生成される。
一例として、外部電極5と内部電極4の間に、20kVpp未満且つ20kHz未満の範囲で制御された交流を印加することによって、例えば40℃以下の大気圧プラズマPを発生させることができる。
印加する交流電圧を上記各範囲の上限値未満にすることによって、発生する大気圧プラズマPの温度を低く抑えることができる。上記各範囲の下限値以上にすることによって、大気圧プラズマPを容易に発生させることができる。
交流の周波数を上記各範囲の上限値未満にすることによって、発生する大気圧プラズマPの温度を低く抑えることができる。上記各範囲の下限値以上にすることによって、大気圧プラズマPを容易に発生させることができる。
プラズマ装置1において、プラズマ生成用ガスGの導入量と、大気圧プラズマPの照射量とはほぼ1:1で対応している。上記導入量を毎分5.0L未満に制御することによって、上記照射量を毎分5.0L未満に制御することができる。
上記各範囲の下限値以上であると、大気圧プラズマPが被照射面に作用する効率が充分に高められる。
上記各範囲の上限値未満であると、大気圧プラズマPの被照射面の温度が過度に高まることを防止できる。さらに、被照射面が濡れている場合には、当該被照射面の急速な乾燥を防止できる。さらに、被照射面が患部である場合には、患者に痛みを与えることを防止できる。
例えば、前述した電圧、周波数の好適な範囲に設定するか、又は前述した導入量の好適な範囲に設定することによって、上記位置における大気圧プラズマPの温度を40℃以下に制御することができる。
なお、上記位置における大気圧プラズマPの温度は、照射口6から空気中に大気圧プラズマPを照射した状態で、照射口6から上記位置に棒状熱電対の先端部を設置して測定される。
プラズマ装置1のプラズマ発生部2は、前述した様に、内部電極4の複数の箇所4pにおいて窒素ガスを効率的に電離して、低温の窒素ガスプラズマを容易に生成できる。
管状誘電体3に導入する大気圧プラズマ生成用ガスGは、1種のガスでもよく、2種以上を混合したガスでもよい。
プラズマ装置1で発生する大気圧プラズマPは、細胞、生体組織、生物個体等の生体に照射する目的で使用されることが好ましい。生体に大気圧プラズマPを照射することによって、当該生体を治療若しくは賦活することができる。例えば、切傷、擦傷、火傷等の外傷又はその他の異常がある患部に大気圧プラズマPを照射することによって、当該外傷及び異常の治癒を促進する効果が得られる。
プラズマ装置1から照射される大気圧プラズマPの温度を40℃以下に設定できるので、照射口6を被照射部分に対して近づけた場合にも、被照射部分の温度が過度に高くなる恐れがない。したがって、被照射部分が患部である場合にも、当該患部に火傷を負わせることなく照射することができる。
前記生体組織としては、内蔵等の各器官、体表や体腔の内面をおおう上皮組織、歯肉、歯槽骨、歯根膜及びセメント質等の歯周組織、歯、骨等が挙げられる。
プラズマ装置1を使用して、8.2kVpp、7kHzの交流を外部電極5と内部電極4の間に印加して、大気圧の窒素ガスプラズマを発生させた。照射口6から2mm又は10mmの距離に設置した棒状熱電対の先端部に向けて、窒素ガスプラズマを毎分1Lで照射し、その温度を測定した。
その結果、照射口6から2mmの距離においては約36℃であり、照射口6から10mmの距離においては約32℃であった。
背中の2箇所に同等の創傷を負ったウサギを準備して、片方の創傷に対してのみ、約5mmの距離から大気圧の窒素ガスプラズマ(8.2kVpp、7kHz、毎分1L、40℃)を90秒間照射した。その結果、照射1日後には創傷の表面にかさぶたが形成され、照射3日後には創傷の面積が縮小し、治癒が進行していた。一方、比較対照のために窒素ガスプラズマを照射しなかった、残りの片方の創傷には、1日後には変化は無く、3日後以降にかさぶたが形成され始めた。
一方、窒素ガスプラズマを照射しなかった比較対照の創傷における7日後の細胞組織を観察したところ、薄い表皮が再生されていたが、線維芽細胞の増生及び血管の新生は見られなかった。
背中の2箇所に同等の創傷を負った別のウサギを準備して、片方の創傷に対してのみ、1日1回、7日間続けて、上記と同様の大気圧の窒素ガスプラズマを照射した。その創傷の7日後の細胞組織を観察したところ、1回だけ照射した場合よりも厚い表皮が再生されており、線維芽細胞の旺盛な増生があり、多数の血管の新生があることが確認された。
一方、窒素ガスプラズマを照射しなかった比較対照の創傷における7日後の細胞組織を観察したところ、薄い表皮が再生されていたが、線維芽細胞の増生は少なく、血管の新生は見られなかった。
背中の3箇所に同等の創傷を負った普通ラット(SDラット)を準備した。
第一の創傷に対しては、創傷を負った直後に1回のみ、約1mmの距離から大気圧の窒素ガスプラズマ(8.2kVpp、7.4kHz、毎分1L、35℃)を90秒間照射した。
第二の創傷に対しては、創傷を負った直後に1回と、その後5日間にわたって一日に1回照射して、合計5回の窒素ガスプラズマを上記と同じ条件で照射した。
第三の創傷に対しては、窒素ガスプラズマを照射しなかった。
創傷を負った日から5日後の状態を比較したところ、第二の創傷(毎日照射)、第一の創傷(1回のみ照射)、第三の創傷(照射なし)の順で治癒が進んでいた。
上記の結果から、窒素ガスプラズマの照射が創傷の治癒を促進したと考えられる。
糖尿病ラット(SDT Fatty)を用いて、上記の普通ラット(SDラット)と同様の試験を行った。その結果、上記と同様に、第二の創傷(毎日照射)、第一の創傷(1回のみ照射)、第三の創傷(照射なし)の順で治癒が進んでいたことを確認できた。
抜歯されたヒトの大臼歯について、超音波スケーラーを用いて歯石及び汚れを取り除き、歯面研磨剤を用いて機械的に歯面を研磨し、超音波洗浄機を用いて研磨剤等を取り除き、エチレンオキサイドガスを用いて滅菌することにより、実験用の歯材料を得た。
歯材料の表面に歯周病菌(P.Gingivalis)を付着させ、培養することにより、歯材料の表面の広範囲にバイオフィルム(プラーク)を形成した。
歯材料の表面にこびり付いたバイオフィルムに対して、約1mmの距離から大気圧の窒素ガスプラズマ(8.2kVpp、7.4kHz、毎分1L、35℃)を90秒間照射した。
照射後の歯材料を水中で軽く濯いだ後、歯表面を観察したところ、照射した箇所のバイオフィルムは洗い落とされていた。一方、窒素ガスプラズマを照射しなかった箇所のバイオフィルムは付着したままであった。
健康なハムスターの第一臼歯の周辺に歯周病菌を感染させて、後日のPCR検査により歯周病菌が増殖したことを確認した。このハムスターの炎症を起こしている歯肉に対して、約1mmの距離から大気圧の窒素ガスプラズマ(8.2kVpp、7.4kHz、毎分1L、35℃)を90秒間照射した。
1日後に照射した箇所の歯肉を観察したところ、明らかに炎症が改善されていた。一方、窒素ガスプラズマを照射しなかた箇所の歯肉の炎症は改善されていなかった。
上記と同じ歯周炎を起こしているハムスターの歯肉に対して、約1mmの距離から大気圧の窒素ガスプラズマ(8.2kVpp、7.4kHz、毎分1L、35℃)を90秒間照射した。その後7日間にわたって一日に1回照射して、合計7回の窒素ガスプラズマを上記と同じ条件で照射した。
1回目の照射から7日後に、照射した箇所の歯肉を観察したところ、炎症が治まり、治癒していた。一方、窒素ガスプラズマを照射しなかた箇所の歯肉の炎症は殆ど改善されていなかった。
4匹の健康なビーグル犬(体重約10kg)の左上の臼歯に糸を巻き、柔らかい餌を与えて、当該臼歯の周辺に汚れが付着し易い状態で21日間飼育することによって、当該臼歯の周辺に、触診により出血しない程度の歯肉炎を引き起こした。
1回目の照射から2週間後に、照射した箇所の歯肉を観察したところ、炎症が治まり、治癒していた。
1回目の吹き付けから2週間後に、吹き付けた箇所の歯肉を観察したところ、歯肉の炎症は改善されていなかった。
12ウェルプレートを使用して、ヒトの歯根膜細胞を石灰化用培地(細胞が石灰化すると赤く染まる試薬を含む)に播種し、公知方法により培養した。
3つのウェル内の培養細胞に対して、約1mm離れた上方から大気圧の窒素ガスプラズマ(8.2kVpp、7.4kHz、毎分1L、35℃)を90秒間照射した。翌日に当該ウェルを観察したところ、石灰化したことを示す赤色の細胞がウェル内の広い範囲に濃く観察された。
別の3つのウェル内の培養細胞に対して、約1mm離れた上方から単なる窒素ガス(毎分1L、20〜25℃)を90秒間吹き付けた。翌日に当該ウェルを観察したところ、石灰化したことを示す赤色の細胞がウェル内の一部の箇所に薄く観察された。
さらに別の3つのウェル内の培養細胞に対しては、何も処理を行わなかった。その翌日に当該ウェルを観察したところ、石灰化したことを示す赤色の細胞はウェル内に殆ど観察されなかった。
以上の結果から、上記窒素ガスプラズマの照射は、ヒトの歯根膜細胞を活性化し、その石灰化を促すことにより、歯槽骨と歯が接合して歯周病が改善されると考えられる。
Claims (4)
- 活性種を含むプラズマを照射して細胞を賦活化する、口腔内の細胞賦活化方法であって、
対向する電極間に、窒素ガスの含有量が90〜100体積%であるプラズマ生成用ガスを毎分0.1L以上5.0L未満で供給し、前記プラズマ生成用ガスに周波数0.5kHz以上20kHz未満の電圧を5.0kVpp以上20kVpp未満で印加して、前記活性種を含むプラズマを前記細胞に照射する照射工程を有し、
前記照射工程を所定の期間を空けて2回以上行う、口腔内の細胞賦活化方法(但し、ヒトに対する行為を除く)。 - 前記電極は、前記プラズマ生成用ガスの流れる方向に延びる内部電極と、前記内部電極と離間し、前記内部電極に沿って延びる外部電極とを有する、請求項1に記載の口腔内の細胞賦活化方法(但し、ヒトに対する行為を除く)。
- 対向する電極と、
前記の対向する電極間に印加する電圧を周波数0.5kHz以上20kHz未満かつ5.0kVpp以上20kVpp未満に制御する電源制御部と、
前記電極間への、窒素ガスの含有量が90〜100体積%であるプラズマ生成用ガスの導入量を毎分0.1L以上5.0L未満とする照射量制御部と、を有し、
前記電極間に電圧を印加してプラズマを生じ、活性種を含む前記プラズマを細胞に対して、所定の期間を空けて2回以上照射する、口腔内用の細胞賦活化装置。 - 前記電極は、前記プラズマ生成用ガスの流れる方向に延びる内部電極と、前記内部電極と離間し、前記内部電極に沿って延びる外部電極とを有する、請求項3に記載の口腔内用の細胞賦活化装置。
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