<苗移植機の全体構成>
以下に、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記の実施形態では、作業車両を苗移植機として説明する。また、かかる実施形態により本発明が限定されるものではない。また、実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの或いは実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。また、下記の実施形態における構成要素は、適宜組み合わせることができる。
図1は、苗移植機の概略側面図、図2は、苗移植機の概略平面図、図3は、苗移植機の概略正面図である。なお、以下では、前後左右の方向基準を、操縦席からみて車体の走行方向を基準としている。
図1および図2に示すように、苗移植機1の走行車体2は、左右一対の前輪4と、左右一対の後輪5とを有しており、走行時には各車輪が駆動する四輪駆動車としている。走行車体2の後部には、苗植付部昇降機構50によって昇降可能な苗植付部40が植付作業を行う作業機として取付けられている。
走行車体2は、車体の略中央に配置されたメインフレーム7と、メインフレーム7の上に搭載されたエンジン10と、エンジン10の駆動力を駆動輪と苗植付部40とに伝える動力伝達機構15とを備える。すなわち、苗移植機1では、エンジン10の動力が走行車体2を前進や後進させるとともに、苗植付部40を駆動させる。なお、エンジン10には、ディーゼル機関やガソリン機関などの熱機関が用いられる。
エンジン10は、走行車体2の左右方向における略中央であって、作業者が乗車時に足を載せるフロアステップ26よりも上方へ突出させた状態で配される。また、フロアステップ26は、走行車体2の前部とエンジン10の後部との間にわたって設けられ、メインフレーム7上に取り付けられるとともに、左右側には乗降ステップ25がそれぞれ設けられる。なお、フロアステップ26の一部は、格子状になっており、作業者の靴に付着した泥などを圃場に落とすことができる。また、フロアステップ26の後方には、後輪5のフェンダを兼ねたリアステップ27が設けられる。リアステップ27は、後方に向かうにしたがって上方へ向かう方向へ傾斜した傾斜面を有し、エンジン10の左右それぞれの側方に配置される。
エンジン10は、フロアステップ26やリアステップ27から上方に突出しており、かかる突出した部分には、エンジン10を覆うエンジンカバー11が配設される。すなわち、エンジンカバー11は、フロアステップ26やリアステップ27から上方へ突出した状態でエンジン10を覆っている。
また、走行車体2には、エンジンカバー11の上部に操縦席28が設置されており、操縦席28の前方であって走行車体2の前側中央部には、操縦部30が配設される。操縦部30は、フロアステップ26の床面から上方に突出した状態で配置され、図3に示すように、フロアステップ26の前部側を左右に分断している。
操縦部30の内部には、各種の操作装置やエンジン燃料の燃料タンクなどが配設されており、操縦部30の前部には、開閉可能なフロントカバー31が設けられている。また、操縦部30の上部には、操作装置を作動させる操作レバーや計器類、ハンドル32が配設される。
ハンドル32は、作業者が前輪4を操舵操作することにより走行車体2を操舵する操舵部材として設けられ、操縦部30内の操作装置などを介して前輪4を転舵させる。
また、操作レバーとしては、走行車体2の前進および走行速度を操作する走行操作部材である変速レバー35が配設されている。また、操縦部30の上部ではないが、操縦席28の左側には、苗植付部40の動作状態を、少なくとも苗植付部昇降機構50による上昇状態を含んで切り替えることができる植付昇降レバー36が配設されている。植付昇降レバー36では、苗植付部40の作動状態を切り替えることが可能になっており、「上昇」、「停止」、「下降」、「植付」の各モードを切替設定することができるようになっている。また、同様に、操縦席28の左側には畦クラッチレバー(不図示)を設けることもできる。
また、操縦部30により前部側を左右に分断されたフロアステップ26の右側には、走行車体2の操作ペダルの一例であるブレーキペダル37が設けられている。
フロアステップ26における操縦部30の左右それぞれの側方に位置する部分には、補給用の苗や肥料袋等の作業資材を載せておく資材載置部13L,13Rが配置されている。なお、以下では左右の資材載置部13L,13Rを総称して資材載置部13と記す場合がある。
図3に示すように、右側の資材載置部13Rは、複数(ここでは2つ)の載置台130a,130bが積層されて構成されており、フロアステップ26の床面から突出した支持軸137に回動部138によって回転自在に支持される。なお、支持軸137は、資材載置部13Rの重心近傍に位置させることが好ましい。
他方、左側の資材載置部13Lは、これも複数(ここでは2つ)の載置台130c,130dが積層されているが、載置台130c,130dは固定されている。なお、以下では、複数の載置台130a〜130dを区別なく呼称する際には「載置台130」とする場合がある。
本実施形態に係る苗移植機1は、右側に設けられた資材載置部13Rを、2つの載置台130a,130bが積層された積層状態と、載置台130a,130bが列状に展開された展開状態とに切替可能な構成としている。右側の資材載置部13Rについては後に詳述する。
すなわち、可動式の右側の資材載置部13Rは、走行車体2の幅方向における右側に配置され、走行車体2の操作を行う変速レバー35や苗植付部40の操作を行うことができる植付昇降レバー36は、走行車体2の幅方向における左側に配置されている。
したがって、走行車体2の操作や苗植付部40の操作を行うことができる操作レバー(変速レバー35や植付昇降レバー36)が、資材載置部13Rと干渉するおそれがなく、接触などによるこれら操作レバーの誤操作の虞がなくなる。
一方、前述したように、走行車体2の操作を行うペダルの一例であるブレーキペダル37は、走行車体2の幅方向における右側に配置されている。このように、ブレーキペダル37が、走行車体2上で資材載置部13Rと同じ側に配置されることによって、資材載置部13Rと反対側、すなわち、フロアステップ26における左側の床面上に作業用の通路スペースが確保され、作業性および安全性を向上させることができる。
作業用の通路スペースを確保すためにブレーキペダル37のように走行車体2の操作を行うペダルのみならず、苗植付部40の操作を行うペダルを配置する場合でも、資材載置部13Rと同じ側にすることが好ましい。
動力伝達機構15は、主変速機としての油圧式無段変速機16と、油圧式無段変速機16にエンジン10からの動力を伝えるベルト式動力伝達機構17とを有する。油圧式無段変速機16は、HST(Hydro Static Transmission)と称する静油圧式の無段変速機である。このため、油圧式無段変速機16は、エンジン10からの動力で駆動する油圧ポンプによって油圧を発生させ、かかる油圧を油圧モータで機械的な力(回転力)へ変換して出力する。油圧式無段変速機16は、エンジン10よりも前方であって、フロアステップ26の床面よりも下方に配置され、走行車体2の上面からみて、エンジン10の前方に配置される。
ベルト式動力伝達機構17は、エンジン10の出力軸に取り付けたプーリと、油圧式無段変速機16の入力軸に取り付けたプーリと、双方のプーリに巻き掛けられたベルトと、かかるベルトの張力を調整するテンションプーリとを備える。これにより、ベルト式動力伝達機構17は、エンジン10で発生した動力を、ベルトを介して油圧式無段変速機16へ伝達する。
さらに、動力伝達機構15は、エンジン10からの出力がベルト式動力伝達機構17と油圧式無段変速機16とを介して伝達されるミッションケース18を有する。ミッションケース18は、メインフレーム7の前部に取り付けられる。ミッションケース18は、ベルト式動力伝達機構17と油圧式無段変速機16とを介して伝達されたエンジン10からの出力を、ミッションケース18内の副変速機で変速して、前輪4と後輪5への走行用動力と、苗植付部40への駆動用動力とに分けて出力する。
このうち、走行用動力は、一部が左右の前輪ファイナルケース21を介して前輪4へ伝達可能であり、残りが左右の後輪ギアケース22を介して後輪5へ伝達可能になっている。左右それぞれの前輪ファイナルケース21は、ミッションケース18の左右それぞれの側方に配設されており、左右の前輪4は、車軸を介して左右の前輪ファイナルケース21に連結される。また、前輪ファイナルケース21は、ハンドル32の操舵操作に応じて駆動し、前輪4を転舵させることが可能となっている。同様に、左右それぞれの後輪ギアケース22には、車軸を介して後輪5が連結される。一方、駆動用動力は、走行車体2の後部に設けた植付クラッチ(不図示)に伝達され、植付クラッチの係合時に植付伝動軸(不図示)によって苗植付部40へ伝達される。
また、走行車体2の後部に備えられる苗植付部40を昇降させる苗植付部昇降機構50は、昇降リンク51を有する。苗植付部40は、昇降リンク51を介して走行車体2に取り付けられる。昇降リンク51は、走行車体2の後部と苗植付部40とを連結する平行リンク機構であるリンク部材52を有する。リンク部材52は、略前後方向に向かって延在する2つの部材を有しており、相対的に上側に位置する上部リンク部材であるアッパーリンク53と、アッパーリンク53の下側に位置するロワーリンク54とを有する。アッパーリンク53およびロワーリンク54は、ともに左右一対ずつ設けられる。
リンク部材52は、アッパーリンク53とロワーリンク54とが、メインフレーム7の後部側に立設した背面視門型の後部フレームであるリンクベースフレーム55に回動自在に連結され、各リンクの他端側が、苗植付部40に回動自在に連結されることにより、苗植付部40を昇降可能に走行車体2に連結している。すなわち、リンクベースフレーム55は、走行車体2の後部に上下方向に延在して配設されており、リンク部材52が、リンクベースフレーム55から後方に向かって延在している。リンク部材52は、アッパーリンク53およびロワーリンク54がともに、前端側がリンクベースフレーム55に対して回動可能に連結されている。
苗植付部昇降機構50は、油圧によって伸縮する油圧昇降シリンダ56を有しており、油圧昇降シリンダ56の伸縮動作によって、苗植付部40を昇降させる。苗植付部昇降機構50は、昇降動作によって苗植付部40を非作業位置まで昇降させたり、対地作業位置(対地植付位置)まで下降させたりすることが可能になっている。
苗植付部40は、苗を植え付ける範囲を複数の区画、あるいは複数の列で植え付けることができ、本実施形態に係る苗移植機1では、苗を4つの区画で植え付ける、いわゆる4条植の苗植付部40になっている。苗植付部40は、植付装置41と、苗載せ部45と、フロート61を備える。苗載せ部45は、走行車体2の左右方向において仕切られた植付条数分の苗載せ面46を有しており、それぞれの苗載せ面46に土付きのマット状苗を載置することが可能になっている。これにより、苗載せ部45に載置した苗が植え付けられて無くなるたびに、たとえば圃場外に苗を取りに戻る必要がなく、連続した作業を行えるので、作業能率が向上する。
また、植付装置41は、苗載せ面46に載置された苗を圃場に植え付ける装置になっている。植付装置41は、2条ごとに1つずつ配置されており、2条分の植付爪42を備える。なお、図2に示すように、苗植付部40への駆動用動力は、エンジン10からの出力がシャフト48aを介して伝達される。植付装置41は、走行車体2の左右方向に延在しつつ内部に駆動軸を有する植付部支持パイプ48を有しており、かかる駆動軸の回転によって植付爪42が駆動される。また、フロート61は、走行車体2の移動とともに、圃場面上を滑走して整地し、走行車体2の左右方向における苗植付部40の中央に位置するセンターフロート62と、左右方向における苗植付部40の両側に位置するサイドフロート63とを有する。
フロート61は、植付深さ調節機構60によって苗植付部40で植え付ける苗の植付深さを調節する。植付深さ調節機構60は、圃場に対する苗植付部40の上下方向における位置を調節することにより、苗の植え付け深さを調節することが可能になっており、上下方向におけるフロート61と苗植付部40との相対的な位置を調節することにより、圃場に対する苗植付部40の上下位置を調節可能になっている。
苗植付部40の下方側の位置における前側には圃場の整地を行う整地装置である整地ロータ70が設けられる。整地ロータ70は、後輪ギアケース22および連動軸59を介して伝達されるエンジン10からの出力によって、走行車体2の左右方向に延在する回転軸を中心として回転可能に設けられる。なお、連動軸59の駆動源は、エンジン10に限らず、たとえば、エンジン10と別に設けられたモータなどであってもよい。この場合、連動軸59の回転数を、エンジン10の回転数から独立させて定めることが可能となる。これにより、走行車体2の速度が小さい(すなわち、エンジン10の回転数が低い)場合であっても、連動軸59(整地ロータ70)を高速で回転させることができる。したがって、荒れた圃場面であっても、走行車体2を低速で移動させながら、整地ロータ70を高速で回転させることができ、整地作業の確実性を向上させることができる。
苗植付部40の左右両側には、次の植付条に進行方向の目安になる線を形成する線引きマーカ159が備えられる。すなわち、線引きマーカ159は、苗移植機1が圃場内における直進前進時に、圃場の畦際で転回した後に直進前進する際の目印を圃場上に線引きする。線引きマーカ159は、走行車体2が旋回するごとに、左右の線引きマーカ159が入れ替わって作動することができるように設けられている。
また、操縦席28の後方には、施肥装置150が搭載される。施肥装置150は、肥料を貯蔵する肥料タンク151と、肥料タンク151内の肥料を一定量ずつ下方へ繰り出す肥料繰り出し部152と、繰り出された肥料を施肥ホース154によって苗植付部40側へ移送するブロア153とを有する。施肥装置150は、苗植付部40の下方に配置されるとともに、施肥ホース154によって肥料が移送される施肥ガイド155と、施肥ガイド155の前側に設けられるとともに、施肥ホース154によって移送された肥料を、苗植付部40の側部近傍に形成される施肥溝内に落とし込む作溝器156とを有している。
<資材載置部13>
ここで、前述した資材載置部13のうち、右側の資材載置部13Rの具体的な構成について図面を参照しながら説明する。図4は、側面視による右側の資材載置部13Rの姿勢の変化を示す説明図であり、図5は、平面視による右側の資材載置部13Rの姿勢の変化を示す説明図である。また、図6は、載置台の変位を規制するロック機構の模式的説明図である。
図4および図5に示すように、本実施形態に係る苗移植機1は、右側の資材載置部13Rが備える2つの載置台130a,130bが積層された積層状態と列状に展開された展開状態とに切替える切替部132と、この切替部132を外部操作する切替操作部131とを備える。
切替操作部131は、展開状態で先頭に位置する載置台130a、すなわち、積層状態では上段に位置する載置台130aの前部に設けられる。
切替部132は、複数(上下2段)の載置台130a,130bを連結するリンク機構133と、図6に示すロック機構134とを備える。
すなわち、リンク機構133は、図4に示すように、載置台130a,130bの前後方向における中央部分を互いに連結する一対のリンクアームで構成されている。そして、切替操作部131を構成するハンドル135を把持して前方へ引き出せば、二点鎖線で示すように、資材載置部13Rの姿勢を積層状態から展開状態に切り替えることができる。
ロック機構134は、図6に示すように、載置台支持部材134cに設けたロック孔134aにロックピン134bを係脱させて載置台130の変位を規制する周知の構造であり、ロックピン134bとハンドル135とは、自転車のブレーキ機構などに採用される周知構造の伝達機構1341を介して線条連結材136により連結されている。
線条連結材136は、切替操作部131の一部を構成する部材であり、例えば、これも自転車のブレーキ機構などに採用されるインナーワイヤおよびアウターワイヤを備える周知の連結部材である。
本実施形態では、ハンドル135を、図示しないスプリングなどにより、上方へ付勢した状態としながら上下揺動可能に設けている。そして、ハンドル135を下方へ回動させると、線条連結材136を介してロックピン134bがロック孔134aから抜けるようにする一方、ハンドル135を上方へ回動させると、線条連結材136を介してロックピン134bがロック孔134aに挿通されて係合するようにしている。なお、図6に示すように、ロックピン134aにはロック孔134aに干渉する鍔部1340が形成されているため、ロックピン134aはロック孔134aへ必要長さだけ挿入される。
したがって、ハンドル135を把持して下方へ押せば資材載置部13Rのロックが解除され、そのままハンドル135を把持した状態で前方へ引き出せば、載置台130a,130bが積層した状態から列状に延伸した状態に容易に切替えることができる。そして、ハンドル135から手を離すと、ハンドル135が上方へ回動して初期位置へ復帰し、ロックピン134bがロック孔134aに挿通されてロック状態となり、資材載置部13Rの姿勢が保持される。
このように、本実施形態に係る苗移植機1の右側の資材載置部13Rは、2つの載置台130a,130bが積層された積層状態と、列状に展開された展開状態とに切替える切替部132と、切替部132を外部操作する切替操作部131とを備えている。そして、切替操作部131を構成するハンドル135は、展開状態で先頭に位置する載置台130の前部に設けられている。
かかる構成により、本実施形態に係る苗移植機1では、例えば、機体外側から補助作業者がハンドル135を把持して資材載置部13Rの姿勢を、積層状態から展開状態へ、あるいはその逆の姿勢へ容易に姿勢変更をすることができる。そのため、肥料などを積込む作業が容易に行えるようになり、資材載置部13としての本来の役目を果たしやすくなって作業性が向上する。
切替操作部131の一部を構成するハンドル135は、図2および図5に示すように、略U字形状として把持し易い形状としている。そして、ハンドル135と載置台130aの先端縁との間の間隙には、図4に示すように、苗取板140を挿通することができる。すなわち、ハンドル135を、資材載置部13Rの姿勢を切り替える操作部材と苗取板140の収納部材との兼用部材としている。
なお、図1、図4に示すように、載置台130aの後部(操縦席28側)には、従来からの取っ手139が設けられているため、搭乗している作業者であっても資材載置部13Rの積層状態から展開状態への姿勢の切替を容易に行うことができる。
また、右側の資材載置部13Rは、列状に展開した状態において、図5に示すように、平面方向に回動可能に構成される(矢印A1参照)。すなわち、前述したように、右側の資材載置部13Rは、フロアステップ26の床面から突出した支持軸137に回転自在に軸支された回転テーブル138aを有する回動部138によって回転自在に支持されている(図3参照)。
回動部138は、形成資材載置部13Rの支軸回りの回動を、施肥装置150の手前で規制するように構成される。例えば、回転テーブル138aに、複数のピン挿通孔(不図示)を周方向に所定間隔で設け、ロック用のピンが挿通された状態では回動が禁止される構成となっている。なお、ピンは不図示のレバー操作に連動するように構成することができ、複数のピン挿通孔は、列状に展開された資材載置部13Rが、最大に回動した状態であっても肥料タンク151と干渉する手前で停止できる範囲内に設けている。
また、本実施形態では、施肥装置150において、側方へ突出するブロア153を、機体左側、すなわち、固定式とした左側の資材載置部13Lと同じ側に配置している。そのため、可動式である右側の資材載置部13Rを、ブロア153が存在しない分だけ作業者に近づけるように回動させることが可能となっている。
かかる構成により、肥料などの積込みおよび施肥装置150への投入に関する作業性が向上するとともに、資材載置部13Rを回動させても施肥装置150に干渉することがないので、両者の衝突や干渉によって、資材載置部13Rや施肥装置150が損傷するおそれもない。
また、図5から分かるように、資材載置部13Rの回動は、肥料タンク151と干渉する手前に規定された停止位置Rで規制されるが、その規制された位置において、資材載置部13Rの一部、すなわち、載置台130bの一部と走行車体2のフロアステップ26の一部とは重なっている。
すなわち、資材載置部13Rを、肥料タンク151とは干渉しない範囲で、極力操縦席28に接近可能としたため、作業者による肥料補給の能率が大きく向上する。
例えば、資材載置部13Rを展開したときに、前側に位置する載置台130aに肥料袋等を畦側から載置した場合でも、肥料袋を可及的に作業者の近くまで移動させることが可能となる。
なお、肥料袋等は、資材載置部13Rを展開した状態で後ろ側、すなわち支持軸137に近接する側に位置する載置台130bに載せてもよい。その場合、資材載置部13Rを回動すると、重量部分は、資材載置部13Rの重心近くを回動することになるため、負荷が少なく円滑に回動する。
ところで、展開した状態の資材載置部13Rの回動については、ブレーキペダル37の動作と関連付けることができる。
例えば、ブレーキペダル37を踏み込んでブレーキを作動させた位置でロック可能な構成にしておく。そして、ロック機構134のロックピン134bと、ブレーキペダル37とを、ケーブルなどを介して連動可能に構成し、ブレーキペダル37が踏み込まれてロック状態にあるときを除きロックピン134b自体がロックされる構成とするものである。
かかる構成とすれば、資材載置部13Rが展開された状態で苗移植機1が動いてしまうことなどがなく、例えば畦や畝などに位置する補助作業者に対し、安全を保つことができる。なお、ブレーキペダル37をロック可能にすることなく、所定の深さまで踏み込んだ状態を除きロックピン134b自体がロックされる構成としてもよい。
<他の実施形態>
ここで、他の実施形態に係る苗移植機1について、図7および図8を参照しながら説明する。図7は、他の実施形態に係る苗移植機1が備える施肥装置150のブロア153の変位を側面視で示す説明図、図8は、同上のブロア153の変位を平面視で示す説明図である。
図示するように、他の実施形態に係る苗移植機1は、走行車体2の左側、すなわち、施肥装置150のブロア153を配置する側に、作業者が乗降する際の補助となる手摺157が設けられている。
他方、施肥装置150が備えるブロア153は、送気管158を接続し、この送気管158に送風し、風に載せて施肥ホース154から肥料を圃場へ送給可能とした第1の位置P1と、送気管158と離脱した第2の位置P2との間で首振り自在に設けられる。
そして、ブロア153のモータ部153aが、第2の位置P2においては、図8に示すように、倒立したJ字状に形成された手摺157に形成されたブロアガード空間157a(図7参照)内に挿通された状態でガードされるようにしている。
すなわち、手摺157は、左右の棒状部材157L,157Rが、上方へ湾曲する逆J字状に形成されており、棒状部材157L,157Rに所定の幅を有するブロアガード空間157aが形成されている。
一方、ブロア153は、図8に示すように、鉛直方向に延在する回転軸153bを中心として首振り自在に構成されている。したがって、ブロア153は、送気管158が接続された第1の位置P1と、送気管158と離脱した第2の位置P2との間で水平方向へ回動する。
したがって、ブロア153や送気管158のメンテナンスなどの際に、ブロア153を第2の位置P2まで回動すると、ブロア153の駆動源となり、ブロア本体から突出したモータ部153aは、手摺157に形成されたブロアガード空間157aに位置することになる。
このように、他の実施形態に係る苗移植機1では、ブロア153や送気管158のメンテナンス性を向上させるとともに、第2の位置P2においては、ブロア153のモータ部153aを、手摺157を兼用する部材により保護することができる。
上述してき実施形態より、以下の苗移植機1が実現される。
(1)圃場を走行する走行車体2と、走行車体2の後部に取付けられた苗植付部40と、走行車体2に設けられ、それぞれ作業資材を載置可能な複数の載置台130を有する資材載置部13Rとを備え、資材載置部13Rは、複数の載置台130が積層された積層状態と、載置台130が列状に展開された展開状態とに切替える切替部132と、切替部132を外部操作する切替操作部131とを備え、切替操作部131は、展開状態で先頭に位置する載置台130の前部に設けられる苗移植機1。
(2)上記(1)において、切替部132は、複数の載置台130を連結するリンク機構133と、ロック孔134aにロックピン134bを係脱させて載置台130の変位を規制するロック機構134とを備え、切替操作部131は、載置台130に上下揺動可能に取付けられるハンドル135と、当該ハンドル135とロックピン134bとを連結し、ハンドル135の揺動に連動してロックピン134bをロック孔134aに係脱させる線条連結材136とを備える苗移植機1。
(3)上記(1)または(2)において、資材載置部13は、走行車体2の幅方向における一方側に配置され、走行車体2の操作または苗植付部40の操作を行うことができる変速レバー35、植付昇降レバー36が、走行車体2の幅方向における他方側に配置される苗移植機1。
(4)上記(3)において、走行車体2の操作または苗植付部40の操作を行うペダル(例えばブレーキペダル37)は、走行車体2の幅方向における一方側に配置される苗移植機1。
(5)上記(1)から(4)のいずれかにおいて、走行車体2に設けられ、圃場へ肥料を供給する施肥装置150と、複数の載置台130を列状に展開した状態で資材載置部13Rを支持軸137回りに回動させる回動部138とをさらに備え、回動部138は、資材載置部13Rの回動を、施肥装置150の手前で規制する苗移植機1。
(6)上記(5)において、走行車体2に乗降する際の補助となる手摺157を備えるとともに、施肥装置150が備えるブロア153は、接続した送気管158に送風可能な第1の位置P1と、送気管158と離脱した第2の位置P2との間で首振り自在に設けられており、前記第2の位置P2においては、突出状態で連接されたモータ部153aが手摺157を構成する左右の棒状部材157L,157R間に位置する苗移植機1。
なお、上述してきた実施形態のさらなる変形例や効果は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。