JP6897129B2 - 熱伝導シート - Google Patents

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本発明は、熱伝導シートに関するものである。
近年、プラズマディスプレイパネル(PDP)や集積回路(IC)チップ等の電子部品は、高性能化に伴って発熱量が増大している。その結果、電子部品を用いた電子機器では、電子部品の温度上昇による機能障害対策を講じる必要が生じている。
電子部品の温度上昇による機能障害対策としては、一般に、電子部品等の発熱体に対し、金属製のヒートシンク、放熱板、放熱フィン等の放熱体を取り付けることによって、放熱を促進させる方法が採られている。そして、放熱体を使用する際には、発熱体から放熱体へと熱を効率的に伝えるために、通常、熱伝導率が高いシート状の部材(熱伝導シート)を介在させた状態で発熱体と放熱体とを密着させている。
従って、発熱体と放熱体との間に挟み込んで使用される熱伝導シートには、挟み込まれることによる加圧下において優れた熱伝導性を発揮することが求められてきた。特に近年では、発熱体および放熱体などの被着体の間に挟み込んだ際に熱伝導シートにかかる圧力(以下、「挟持圧力」と称することがある。)が0.08MPa以下の比較的低圧で熱伝導シートを使用することがあり、比較的低い挟持圧力での使用に際しても優れた熱伝導性を発揮する熱伝導シートが求められている。
また、熱伝導シートには、安全性の観点から、高い難燃性を発揮することも求められてきた。
例えば、特許文献1には、フッ素樹脂と、膨張化黒鉛と、粘着性樹脂と、繊維状の炭素ナノ構造体とを含む、厚みが0.5mmの熱伝導シートが開示されている。そして、特許文献1では、上記構成を採用することにより、熱伝導シートの難燃性および耐久性を高めている。
国際公開第2016/185688号
しかしながら、特許文献1などに記載の従来の技術では、熱伝導シートに、優れた難燃性と優れた熱伝導性(特には、比較的低い挟持圧力での優れた熱伝導性)とを両立させることについて、更なる改善の余地があった。
そこで、本発明は、優れた難燃性を発揮し、且つ、比較的低い挟持圧力でも優れた熱伝導性を発揮し得る熱伝導シートを提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を行った。そして、本発明者らは、比較的低い挟持圧力において熱伝導シートに高い熱伝導性を発揮させるために、熱伝導シートを薄膜化し、熱伝導シートと被着体との密着性を高めることにより、挟み込まれることによる加圧下での熱伝導シートの熱抵抗値を低減させることを試みた。しかしながら、本発明者らが検討したところ、薄膜化された熱伝導シートは、比較的低い挟持圧力において優れた熱伝導性を発揮し得る一方、難燃性に劣る問題があることが明らかとなった。
ここで、本発明において、「比較的低い挟持圧力」とは、挟持圧力が0.08MPa以下(絶対圧)であることを指す。
そこで、本発明者らは、上記目的を達成するために更に鋭意検討を行った。そして、本発明者らは、熱伝導シートが、フッ素樹脂、膨張化黒鉛および繊維状炭素ナノ構造体を含み、厚みが所定以下であり、且つ、所定の接炎試験の後の熱伝導シートの残物に繊維状炭素ナノ構造体の網目状構造が存在していれば、比較的低い挟持圧力でも熱伝導性が良好であること、および難燃性に優れることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の熱伝導シートは、フッ素樹脂と、膨張化黒鉛と、繊維状炭素ナノ構造体と、を含む熱伝導シートであって、厚みが400μm以下であり、前記熱伝導シートを所定の条件で接炎させた後の残物中に、前記繊維状炭素ナノ構造体の網目状構造が存在することを特徴とする。このように、少なくともフッ素樹脂、膨張化黒鉛および繊維状炭素ナノ構造体を含み、厚みが上記所定以下であり、且つ、所定の条件での接炎後の残物が上記所定の構造を有する熱伝導シートであれば、優れた難燃性を有し、且つ、比較的低い挟持圧力で優れた熱伝導性を発揮することができる。従って、本発明の熱伝導シートを発熱体および放熱体の間に取り付けた際に、挟持圧力が比較的低い場合においても発熱体から効率的に熱を放散することができると共に、本発明の熱伝導シートを安全に使用することができる。
なお、本発明において、「所定の条件で接炎」とは、UL94規格V−0試験(垂直燃焼試験)に準拠した条件で接炎することであり、具体的には、本明細書の実施例に記載の方法に従って行うことができる。
また、本発明において、「網目状構造」とは、繊維状炭素ナノ構造体が複数本集まった束(バンドル)同士が三次元に絡み合った状態、並びに/或いは、当該バンドルおよび膨張化黒鉛が三次元に絡み合った状態の構造を指す。そして、本発明において、「網目状構造」は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察し得る。
また、本発明の熱伝導シートは、前記フッ素樹脂が常温常圧下で液体のフッ素樹脂であることが好ましい。常温常圧下で液体のフッ素樹脂を用いれば、熱伝導シートの柔軟性を高め、比較的低い挟持圧力での熱伝導シートの熱伝導性をより向上することができるからである。
なお、本明細書において、「常温」とは23℃を指し、「常圧」とは、1atm(絶対圧)を指す。
また、本発明の熱伝導シートは、前記熱伝導シートに含まれる前記繊維状炭素ナノ構造体の比表面積が300m/g以上であることが好ましい。繊維状炭素ナノ構造体の比表面積が上記下限以上であれば、比較的低い挟持圧力での熱伝導シートの熱伝導性を更に向上することができるからである。また、繊維状炭素ナノ構造体の比表面積が上記下限以上であれば、所定の条件で接炎させた後の残物中の繊維状炭素ナノ構造体が網目状構造をより良好に形成し、熱伝導シートがより優れた難燃性を示すからである。
なお、本発明において、「比表面積」とは、BET法を用いて測定した窒素吸着比表面積を指す。
また、本発明の熱伝導シートは、前記繊維状炭素ナノ構造体の含有量が、前記フッ素樹脂100質量部あたり0.4質量部以上3.0質量部以下であることが好ましい。フッ素樹脂に対する繊維状炭素ナノ構造体の含有量が上記範囲内であれば、熱伝導シートが更に優れた難燃性を有し、且つ、比較的低い挟持圧力での熱伝導シートの熱伝導性を更に向上させることができるからである。
また、本発明の熱伝導シートは、前記繊維状炭素ナノ構造体の含有割合が0.3質量%以上2.0質量%以下であることが好ましい。熱伝導シート中の繊維状炭素ナノ構造体の含有割合が上記範囲内であれば、熱伝導シートが更に優れた難燃性を有し、且つ、比較的低い挟持圧力での熱伝導シートの熱伝導性を更に向上させることができるからである。
そして、本発明の熱伝導シートは、0.05MPa加圧下での熱抵抗値が0.30℃/W以下であることが好ましい。熱伝導シートの熱抵抗値が上記上限以下であれば、比較的低い挟持圧力での使用に際して熱伝導シートが一層優れた熱伝導性を発揮することができるからである。
また、本発明において、「熱抵抗値」は、本明細書の実施例に記載の方法に従って測定することができる。
本発明によれば、優れた難燃性を発揮し、且つ、比較的低い挟持圧力でも優れた熱伝導性を発揮し得る熱伝導シートを提供することができる。
(a)実施例1、(b)実施例2、(c)実施例3、(d)比較例1、(e)比較例2に従った、熱伝導シートを所定の条件で接炎させた後の残物中の構造を観察した走査型電子顕微鏡(SEM)画像である(加速電圧:5kV、倍率:10000倍)。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
本発明の熱伝導シートは、例えば、発熱体に放熱体を取り付ける際に発熱体と放熱体との間に挟み込んで使用することができる。即ち、本発明の熱伝導シートは、ヒートシンク、放熱板、放熱フィン等の放熱体と共に放熱装置を構成することができる。
そして、本発明の熱伝導シートは、後述する通り、成分、厚みおよび所定の条件で接炎させた後の残物中の構造が所定の条件を満たす限りにおいて、任意の方法により製造することができる。
(熱伝導シート)
本発明の熱伝導シートは、少なくともフッ素樹脂、膨張化黒鉛および繊維状炭素ナノ構造体を含み、任意に添加剤を更に含み得る。また、本発明の熱伝導シートは、厚みが400μm以下である。更に、本発明の熱伝導シートでは、当該熱伝導シートを所定の条件で接炎させた後の残物中に、繊維状炭素ナノ構造体の網目状構造が存在する。そして、本発明の熱伝導シートは、上記所定の成分を含み、厚みが上記所定以下と薄く、且つ、上記残物が上記所定の構造を有するので、比較的低い挟持圧力での使用であっても熱伝導性に優れていると共に、優れた難燃性を発揮することができる。従って、本発明の熱伝導シートをヒートシンク、放熱板、放熱フィン等の放熱体と組み合わせて使用した場合には、熱伝導シートが発熱体と放熱体との間に比較的低い挟持圧力にて挟み込まれている場合であっても、当該熱伝導シートを介して発熱体から効果的に熱を放散することができる。また、本発明の熱伝導シートは、難燃性に優れているため、発熱体に接触させても安全に使用することができる。
<フッ素樹脂>
本発明の熱伝導シートが含むフッ素樹脂は、熱伝導シートのマトリックス樹脂を構成すると共に、熱伝導シート中で膨張化黒鉛および繊維状炭素ナノ構造体などを結着する結着材としても機能する。また、一般に、フッ素樹脂は、難燃性に加え、耐熱性、耐油性、耐薬品性などに優れている。
ここで、フッ素樹脂としては、特に限定されることなく、例えば、常温常圧下で液体のフッ素樹脂および常温常圧下で固体のフッ素樹脂を用いることができる。これらは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。中でも、熱伝導シートの柔軟性を高めて、例えば、被着体とより良好に密着させて比較的低い挟持圧力での熱伝導シートの熱伝導性をより向上させる観点からは、フッ素樹脂としては、少なくとも常温常圧下で液体のフッ素樹脂を用いることが好ましく、少なくとも常温常圧下で液体の熱可塑性フッ素樹脂を用いることがより好ましく、常温常圧下で液体の熱可塑性フッ素樹脂のみを用いることが更に好ましい。
<<常温常圧下で液体のフッ素樹脂>>
常温常圧下で液体のフッ素樹脂としては、例えば、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロペンテン−テトラフルオロエチレン3元共重合体、パーフルオロプロペンオキサイド重合体、テトラフルオロエチレン−プロピレン−フッ化ビニリデン共重合体などの、常温常圧下で液体の熱可塑性フッ素樹脂が挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
また、市販されている、常温常圧下で液体の熱可塑性フッ素樹脂としては、例えば、デュポン株式会社製のバイトン(登録商標)LM、ダイキン工業株式会社製のダイエル(登録商標)G−101、スリーエム株式会社製のダイニオン(登録商標)FC2210、信越化学工業株式会社製のSIFELシリーズなどが挙げられる。
ここで、常温常圧下で液体の熱可塑性フッ素樹脂の粘度は、特に制限されないが、混練性、流動性、架橋反応性が良好で、成形性にも優れる観点からは、温度80℃における粘度(粘度係数)が、500cP以上30000cP以下であることが好ましく、550cP以上25000cP以下であることがより好ましい。
<<常温常圧下で固体のフッ素樹脂>>
また、常温常圧下で固体のフッ素樹脂としては、例えば、フッ化ビニリデン系フッ素樹脂、テトラフルオロエチレン−プロピレン系フッ素樹脂、テトラフルオロエチレン−パープルオロビニルエーテル系フッ素樹脂等、フッ素含有モノマーを重合して得られるエラストマーなどが挙げられる。より具体的には、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体、ポリビニリデンフルオライド、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、エチレン−クロロフルオロエチレン共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロジオキソール共重合体、ポリビニルフルオライド、テトラフルオロエチレン−プロピレン共重合体、ポリテトラフルオロエチレンのアクリル変性物、ポリテトラフルオロエチレンのエステル変性物、ポリテトラフルオロエチレンのエポキシ変性物およびポリテトラフルオロエチレンのシラン変性物などの、常温常圧下で固体の熱可塑性フッ素樹脂が挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
なお、本発明において、エラストマーは、「樹脂」に含まれるものとする。
また、市販されている、常温常圧下で固体の熱可塑性フッ素樹脂としては、例えば、ダイキン工業株式会社製のダイエル(登録商標)G−300シリーズ/G−700シリーズ/G−7000シリーズ(ポリオール加硫・ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン2元系共重合体)、ダイエルG−550シリーズ/G−600シリーズ(ポリオール加硫・ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン3元系共重合体)、ダイエルG−800シリーズ(パーオキサイド加硫・ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン2元系共重合体)、ダイエルG−900シリーズ(パーオキサイド加硫・ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン3元系共重合体);ALKEMA社製のKYNAR(登録商標)シリーズ(フッ化ビニリデン系フッ素樹脂)、KYNAR FLEX(登録商標)シリーズ(ビニリデンフロライド−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン3元系共重合体);ケマーズ社製のA−100(ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン2元系共重合体);などが挙げられる。
<<フッ素樹脂の含有割合>>
そして、熱伝導シート中のフッ素樹脂の含有割合は、特に限定されることなく、例えば、30質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、80質量%以下であることが好ましく、70質量%以下であることがより好ましい。フッ素樹脂の含有割合が上記下限以上であれば、柔軟性の高い熱伝導シートを良好に形成して、例えば、被着体とより良好に密着し得ることにより、比較的低い挟持圧力下であっても熱伝導性をより高め得るからである。加えて、フッ素樹脂の含有割合が上記下限以上であれば、後述する繊維状炭素ナノ構造体と共に熱伝導シートの難燃性をより高め得るからである。また、フッ素樹脂の含有割合が上記上限以下であれば、後述する膨張化黒鉛および繊維状炭素ナノ構造体を十分に含有させて、熱伝導シートの熱伝導性を十分に高めることができるからである。
<膨張化黒鉛>
本発明の熱伝導シートが含む膨張化黒鉛は、例えば、鱗片状黒鉛などの黒鉛を硫酸などで化学処理して得た膨張性黒鉛を、熱処理して膨張させた後、微細化することにより得ることができる。そして、膨張化黒鉛としては、例えば、伊藤黒鉛工業社製のEC1500、EC1000、EC500、EC300、EC100、EC50(いずれも商品名)等が挙げられる。
ここで、一般に、熱伝導シートに対して接炎させた際には、炎により、熱伝導シートの成分(例えば樹脂成分)が分解したり構造が崩壊したりして、熱伝導シートに含まれている膨張化黒鉛が落下し易い(滴下物が生じ易い)。そして、このような接炎による膨張化黒鉛の落下の問題は、特に、熱伝導シートを薄くした際に顕著になる。しかしながら、本発明の熱伝導シートは、フッ素樹脂、膨張化黒鉛および繊維状炭素ナノ構造体を含み、所定の条件で接炎させた後の残物中に繊維状炭素ナノ構造体の網目状構造が存在するため、厚みが400μm以下に薄膜化されていても、所定の条件で接炎させた際に膨張化黒鉛が落下することなく、優れた難燃性を発揮する。
<<平均粒子径>>
また、膨張化黒鉛の平均粒子径は、体積平均粒子径で100μm以上であることが好ましく、150μm以上であることがより好ましく、500μm以下であることが好ましく、200μm以下であることがより好ましい。膨張化黒鉛の体積平均粒子径が上記下限以上であれば、熱伝導シート中に膨張化黒鉛の伝熱パスをより良好に形成し、比較的低い挟持圧力でも熱伝導シートに優れた熱伝導性をより発揮させ得るからである。また、膨張化黒鉛の体積平均粒子径が上記上限以下であれば、熱伝導シートに接炎させた際に膨張化黒鉛が落下することをより抑制し、熱伝導シートの難燃性をより向上し得るからである。
なお、本発明において「体積平均粒子径」は、例えば、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置(マイクロトラック・ベル社製、型番「マイクロトラックMT3000II」)を用いて、レーザー回折法を用いて測定された粒子径分布において、小径側から計算した累積体積が50%となるときの粒子径(D50)として求めることができる。ここで、膨張化黒鉛の体積平均粒子径の測定に際しては、特に限定されることなく、例えば熱伝導シートに含まれている樹脂に対する良溶媒を用いて樹脂を溶解させる等の任意の手法を用いて熱伝導シートから膨張化黒鉛を取り出して行うことができる。
<<アスペクト比>>
また、膨張化黒鉛のアスペクト比(長径/短径)は、1以上10以下であることが好ましく、1以上5以下であることがより好ましい。
なお、本発明において、「膨張化黒鉛のアスペクト比」は、熱伝導シートの厚み方向における断面をSEM(走査型電子顕微鏡)で観察し、任意の50個の膨張化黒鉛について、最大径(長径)と、最大径に直交する方向の粒子径(短径)とを測定し、長径と短径の比(長径/短径)の平均値を算出することにより求めることができる。
<<膨張化黒鉛の含有割合>>
そして、熱伝導シート中の膨張化黒鉛の含有割合は、特に限定されることなく、例えば、10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましく、60質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましい。膨張化黒鉛の含有割合が上記下限以上であれば、熱伝導シート中に膨張化黒鉛の伝熱パスをより良好に形成し、比較的低い挟持圧力でも熱伝導シートに優れた熱伝導性をより発揮させ得るからである。また、膨張化黒鉛の含有割合が上記上限以下であれば、接炎に際する熱伝導シートからの膨張化黒鉛の落下をより抑制して、熱伝導シートの難燃性をより向上し得るからである。
<繊維状炭素ナノ構造体>
本発明の熱伝導シートが含む繊維状炭素ナノ構造体は、当該熱伝導シートを所定の条件で接炎させた後の残物中で網目状構造を形成していることを必要とする。上記残物中に繊維状炭素ナノ構造体の網目状構造が存在していなければ、熱伝導シートに良好な難燃性を発揮させることができない。また、本発明の熱伝導シートが含む繊維状炭素ナノ構造体は一般に熱伝導性に優れるため、熱伝導シートにおいて上述した膨張化黒鉛と共に更に良好な伝熱パスを形成し、比較的低い挟持圧力下でも熱伝導シートの熱伝導性を更に向上させ得る。更に、繊維状炭素ナノ構造体は熱伝導シートの強度も向上させ得る。
<<残物中の繊維状炭素ナノ構造体>>
[繊維状炭素ナノ構造体の網目状構造]
本発明の熱伝導シートを所定の条件で接炎させた後の残物中に存在している繊維状炭素ナノ構造体の網目状構造は、例えば、図1(a)〜(c)のSEM画像に見られるように、上記残物中の繊維状炭素ナノ構造体同士並びに繊維状炭素ナノ構造体および膨張化黒鉛が三次元に絡み合った状態を有している。そして、本発明者らの推察によれば、上記残物中に繊維状炭素ナノ構造体の網目状構造が存在することによって、例えば、接炎により膨張化黒鉛同士を結着しているフッ素樹脂が分解、消失等した場合であっても、当該網目状構造が膨張化黒鉛の落下(滴下物の発生)を阻止することができるため、熱伝導シートに優れた難燃性を発揮させることができる。
一方、例えば、図1(d)のSEM画像に見られるように、残物中に繊維状炭素ナノ構造体の網目状構造が存在しない場合は、接炎による膨張化黒鉛の落下(滴下物の発生)を阻止することができず、熱伝導シートが優れた難燃性を発揮することができない。そして、熱伝導シートが薄膜化されるほど接炎による熱伝導シートの構造崩壊等が進行し易いため、このような滴下物の発生の問題も顕著になると推察される。
なお、熱伝導シートを所定の条件で接炎させた後の残物中に上述した繊維状炭素ナノ構造体の網目状構造が存在している場合は、通常、接炎前の熱伝導シート中にも、繊維状炭素ナノ構造体の網目状構造が存在しているものと考えられる。
ここで、本発明の熱伝導シートを所定の条件で接炎させた後の残物中に、繊維状炭素ナノ構造体の網目状構造が存在する理由は明らかではない。しかしながら、本発明者らは、上記理由は、例えば、熱伝導シートを形成するための組成物を調製する際、および/または、上記組成物を用いて熱伝導シートを形成する際などに、繊維状炭素ナノ構造体が膨張化黒鉛と絡み合いながらフッ素樹脂中で良好に流動、分散するためではないかと推察する。
そして、このような繊維状炭素ナノ構造体の網目状構造の形成は、例えば、繊維状炭素ナノ構造体の種類;比表面積、平均直径、平均長さ等の性状;含有量;上記組成物を調製するための混合条件;上記熱伝導シートを形成するための組成物の加圧条件;等を適宜調節することにより、良好に形成することができる。
[バンドル径]
また、所定の条件で接炎させた後の残物中に繊維状炭素ナノ構造体の網目状構造が存在する場合は、通常、当該繊維状炭素ナノ構造体は、繊維状炭素ナノ構造体が複数本集まった束(バンドル)を形成している。そして、上記残物中の繊維状炭素ナノ構造体のバンドルの直径(バンドル径)は、5μm以下であることが好ましく、1μm以下であることがよりこのましく、10nm以上であることが好ましい。上記残物中の繊維状炭素ナノ構造体のバンドル径が上記上限以下であれば、残物中の繊維状炭素ナノ構造体がより絡み合い易く、より良好な網目状構造を形成し得るため、熱伝導シートの難燃性がより向上し得るからである。また、上記残物中の繊維状炭素ナノ構造体のバンドル径が上記下限以上であれば、上記残物中の繊維状炭素ナノ構造体の網目状構造の強度を確保し得るからである。
なお、本発明において、「バンドル径」は、本明細書の実施例に記載の方法に従って測定することができる。
<<種類>>
ここで、繊維状炭素ナノ構造体としては、特に限定されることなく、例えば、カーボンナノチューブ、気相成長炭素繊維、有機繊維を炭化して得られる炭素繊維、およびそれらの切断物などを用いることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
なお、本発明において、「繊維状炭素ナノ構造体」は、通常、平均繊維径が1000nm以下である。
上述した中でも、繊維状炭素ナノ構造体としては、カーボンナノチューブ(以下、「CNT」と称することがある。)を含む繊維状炭素ナノ構造体を用いることが好ましい。CNTを含む繊維状炭素ナノ構造体を使用すれば、比較的低い挟持圧力での熱伝導シートの熱伝導性および強度を更に向上させることができるからである。また、CNTを含む繊維状炭素ナノ構造体を使用すれば、所定の条件で接炎させた後の残物中の繊維状炭素ナノ構造体の網目状構造がより良好に存在し、熱伝導シートの難燃性をより向上させ得るからである。
[CNTを含む繊維状炭素ナノ構造体]
繊維状炭素ナノ構造体として好適に使用し得る、CNTを含む繊維状炭素ナノ構造体は、CNTのみからなるものであってもよいし、CNTと、CNT以外の繊維状炭素ナノ構造体との混合物であってもよい。
なお、繊維状炭素ナノ構造体中のCNTとしては、特に限定されることなく、単層カーボンナノチューブ(単層CNT)および/または多層カーボンナノチューブ(多層CNT)を用いることができるが、CNTは、単層から5層までのカーボンナノチューブであることが好ましく、単層カーボンナノチューブであることがより好ましい。単層カーボンナノチューブを使用すれば、多層カーボンナノチューブを使用した場合と比較し、熱伝導シートの熱伝導性および強度を一層向上させることができるからである。
上記の点において、CNTを含む繊維状炭素ナノ構造体は、ラマン分光法を用いて評価した際に、Radial Breathing Mode(RBM)のピークを有することが好ましい。三層以上の多層カーボンナノチューブのみからなる繊維状炭素ナノ構造体のラマンスペクトルには、RBMが存在しない。
<<性状>>
[比表面積]
ここで、繊維状炭素ナノ構造体のBET比表面積は、300m/g以上であることが好ましく、400m/g以上であることがより好ましく、600m/g以上であることが更に好ましく、2500m/g以下であることが好ましい。繊維状炭素ナノ構造体のBET比表面積が上記下限以上であれば、所定の条件で接炎させた後の残物中の繊維状炭素ナノ構造体が網目状構造をより良好に形成し、熱伝導シートにより優れた難燃性を発揮させ得るからである。加えて、繊維状炭素ナノ構造体のBET比表面積が上記下限以上であれば、熱伝導シート中で繊維状炭素ナノ構造体が更に良好な伝熱パスを形成し得るため、比較的低い挟持圧力での熱伝導シートの熱伝導性を更に向上すると共に、強度をより高めることができるからである。また、繊維状炭素ナノ構造体のBET比表面積が上記上限以下であれば、繊維状炭素ナノ構造体の凝集を抑制して熱伝導シート中の繊維状炭素ナノ構造体の分散性を高めることができるからである。
[平均直径]
また、繊維状炭素ナノ構造体の平均直径(平均繊維径、Av)は、0.1nm以上であることが好ましく、1nm以上であることがより好ましく、通常、1000nm以下であり、100nm以下であることが好ましく、80nm以下であることがより好ましく、10nm以下であることが更に好ましい。繊維状炭素ナノ構造体の平均直径(Av)が上記下限以上であれば、所定の条件で接炎させた後の残物中で繊維状炭素ナノ構造体が網目状構造を更に良好に形成でき、熱伝導シートの難燃性を更に向上させることができるからである。加えて、繊維状炭素ナノ構造体の平均直径(Av)が上記下限以上であれば、繊維状炭素ナノ構造体の凝集を抑制して、繊維状炭素ナノ構造体の分散性を高めることができるからである。また、繊維状炭素ナノ構造体の平均直径(Av)が上記上限以下であれば、熱伝導シート中の伝熱パスをより良好にして熱伝導シートの熱伝導性をより高めると共に、強度もより高めることができるからである。
なお、「繊維状炭素ナノ構造体の平均直径(Av)」は、TEM(透過型電子顕微鏡)を用いて無作為に選択した繊維状炭素ナノ構造体100本の直径(外径)を測定して求めることができる。そして、繊維状炭素ナノ構造体の平均直径(Av)は、繊維状炭素ナノ構造体の製造方法や製造条件を変更することにより調整してもよいし、異なる製法で得られた繊維状炭素ナノ構造体を複数種類組み合わせることにより調整してもよい。
[アスペクト比]
また、繊維状炭素ナノ構造体のアスペクト比(長径/短径)は、10超であることが好ましい。
なお、本発明において、「繊維状炭素ナノ構造体のアスペクト比」は、TEM(透過型電子顕微鏡)を用いて無作為に選択した繊維状炭素ナノ構造体100本の最大径(長径)と、最大径に直交する方向の粒子径(短径)とを測定し、長径と短径の比(長径/短径)の平均値を算出することにより求めることができる。
[平均長さ]
また、繊維状炭素ナノ構造体の平均長さは100μm以上であることが好ましく、1500μm以上であることがより好ましく、5000μm以上であることが更に好ましい。繊維状炭素ナノ構造体の平均長さが上記下限以上であれば、繊維状炭素ナノ構造体同士並びに繊維状炭素ナノ構造体および膨張化黒鉛が熱伝導シート中でより絡み合い易いため、所定の条件で接炎させた後の残物中で繊維状炭素ナノ構造体が網目状構造を更に良好に形成でき、熱伝導シートの難燃性を更に向上させることができるからである。また、分散時にCNTなどの繊維状炭素ナノ構造体に破断や切断などの損傷が発生することを抑制する観点からは、繊維状炭素ナノ構造体の平均長さは10000μm以下であることが好ましい。
<<繊維状炭素ナノ構造体の含有量>>
そして、繊維状炭素ナノ構造体の含有量は、上述したフッ素樹脂100質量部あたり0.2質量部以上であることが好ましく、0.3質量部以上であることがより好ましく、0.4質量部以上であることが更に好ましく、10質量部以下であることが好ましく、3.0質量部以下であることがより好ましく、2.0質量部以下であることが更に好ましく、1.0質量部以下であることが一層好ましい。フッ素樹脂の含有量に対する繊維状炭素ナノ構造体の含有量が上記下限以上であれば、熱伝導シートの強度をより高め得ると共に、所定の条件で接炎させた後の残物中に十分な繊維状炭素ナノ構造体の網目状構造を形成できるため、熱伝導シートの難燃性をより高めることができるからである。また、フッ素樹脂の含有量に対する繊維状炭素ナノ構造体の含有量が上記上限以下であれば、熱伝導シートの柔軟性がより高まるため、例えば、比較的低い挟持圧力においても熱伝導シートと被着体との密着性がより高まり、熱伝導シートにより良好な熱伝導性を発揮させることができるからである。
また、繊維状炭素ナノ構造体の含有量は、上述した膨張化黒鉛100質量部あたり0.8質量部超であることが好ましく、0.9質量部超であることがより好ましく、1.0質量部以上であることが更に好ましく、6.0質量部以下であることが好ましく、3.0質量部以下であることがより好ましく、1.5質量部以下であることが更に好ましい。膨張化黒鉛の含有量に対する繊維状炭素ナノ構造体の含有量が上記下限超であれば、熱伝導シートの強度をより高め得ると共に、所定の条件で接炎させた後の残物中の膨張化黒鉛に対して十分な繊維状炭素ナノ構造体の網目状構造を形成できるため、熱伝導シートの難燃性をより高めることができるからである。また、膨張化黒鉛の含有量に対する繊維状炭素ナノ構造体の含有量が上記上限以下であれば、熱伝導シートの柔軟性がより高まるため、例えば、比較的低い挟持圧力においても熱伝導シートと被着体との密着性がより高まり、熱伝導シートにより良好な熱伝導性を発揮させることができるからである。
<<繊維状炭素ナノ構造体の含有割合>>
また、熱伝導シート中の繊維状炭素ナノ構造体の含有割合は、0.1質量%以上であることが好ましく、0.2質量%以上であることがより好ましく、0.3質量%以上であることが更に好ましく、10質量%以下であることが好ましく、2.0質量%以下であることがより好ましく、1.0質量%以下であることが更に好ましく、0.5質量%以下であることが一層好ましく、0.4質量%以下であることが特に好ましい。熱伝導シート中の繊維状炭素ナノ構造体の含有割合が上記下限以上であれば、熱伝導シートの強度をより高め得ると共に、所定の条件で接炎させた後の残物中に十分な繊維状炭素ナノ構造体の網目状構造を形成できるため、熱伝導シートの難燃性をより高めることができるからである。また、熱伝導シート中の繊維状炭素ナノ構造体の含有割合が上記上限以下であれば、熱伝導シートの柔軟性がより高まるため、例えば、比較的低い挟持圧力においても熱伝導シートと被着体との密着性がより高まり、熱伝導シートにより良好な熱伝導性を発揮させることができるからである。
<<繊維状炭素ナノ構造体の調製>>
そして、上述した性状を有する繊維状炭素ナノ構造体としては、市販品を用いてもよいし、例えば、CNT製造用の触媒層を表面に有する基材上に、原料化合物およびキャリアガスを供給して、化学的気相成長法(CVD法)によりCNTを合成する際に、系内に微量の酸化剤(触媒賦活物質)を存在させることで、触媒層の触媒活性を飛躍的に向上させるという方法(スーパーグロース法;国際公開第2006/011655号参照)に準じて、CNTを含む繊維状炭素ナノ構造体を効率的に製造してもよい。なお、以下では、スーパーグロース法により得られるカーボンナノチューブを「SGCNT」と称することがある。
ここで、スーパーグロース法により製造したSGCNTを含む繊維状炭素ナノ構造体は、SGCNTのみから構成されていてもよいし、SGCNTに加え、例えば、非円筒形状の炭素ナノ構造体等の他の炭素ナノ構造体が含まれていてもよい。
なお、繊維状炭素ナノ構造体は、一般に、凝集し易く、分散性が低いため、そのままの状態でフッ素樹脂や膨張化黒鉛などの他の成分と混合すると、組成物中で良好に分散し難い。一方、繊維状炭素ナノ構造体は、溶媒(分散媒)に分散させた分散液の状態でフッ素樹脂や膨張化黒鉛などの他の成分と混合すれば凝集の発生を抑制することはできるものの、分散液の状態で混合した場合には混合後に固形分を凝固させて組成物を得る際などに多量の溶媒を使用するため、組成物の調製に使用する溶媒の量が多くなる虞が生じる。そのため、繊維状炭素ナノ構造体を配合する場合には、繊維状炭素ナノ構造体は、溶媒(分散媒)に繊維状炭素ナノ構造体を分散させて得た分散液から溶媒を除去して得た繊維状炭素ナノ構造体の集合体(易分散性集合体)の状態で他の成分と混合することが好ましい。繊維状炭素ナノ構造体の分散液から溶媒を除去して得た繊維状炭素ナノ構造体の集合体は、一度溶媒に分散させた繊維状炭素ナノ構造体で構成されており、溶媒に分散させる前の繊維状炭素ナノ構造体の集合体よりも分散性に優れている。従って、熱伝導シートを所定の条件で接炎させた後の残物中において、繊維状炭素ナノ構造体が更に良好に、且つ、効率的に、網目状構造を形成し得るからである。
<添加剤>
熱伝導シートには、必要に応じて、熱伝導シートの形成に使用され得る既知の添加剤を配合することができる。そして、熱伝導シートに配合し得る添加剤としては、特に限定されることなく、例えば、粘着性樹脂;赤りん系難燃剤、リン酸エステル系難燃剤などの難燃剤;可塑剤;酸化カルシウム、酸化マグネシウムなどの吸湿剤;シランカップリング剤、チタンカップリング剤、酸無水物などの接着力向上剤;ノニオン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤などの濡れ性向上剤;無機イオン交換体などのイオントラップ剤;粒子状炭素材料;等が挙げられる。
ここで、本発明の熱伝導シートは、少なくともフッ素樹脂、膨張化黒鉛および繊維状炭素ナノ構造体を含み、後に詳述する残物中に繊維状炭素ナノ構造体の網目状構造が存在するため、例えば、上記難燃剤を配合しなくても、優れた難燃性を発揮することができる。
なお、粘着性樹脂としては、上述したフッ素樹脂以外の樹脂を用いることができる。具体的には、粘着性樹脂としては、例えば、ロジン系タッキファイヤー、テルペン系タッキファイヤー、石油樹脂系タッキファイヤーなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
また、粒子状炭素材料としては、上述した膨張化黒鉛以外の粒子状炭素材料を用いることができる。具体的には、粒子状炭素材料としては、例えば、人造黒鉛、鱗片状黒鉛、薄片化黒鉛、天然黒鉛、酸処理黒鉛、膨張性黒鉛などの、膨張化黒鉛以外の黒鉛;カーボンブラック;などを用いることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、熱伝導シート中の粒子状炭素材料の含有量は、膨張化黒鉛の含有量に応じて適宜調整することができる。
<熱伝導シートの形成方法>
本発明の熱伝導シートは、特に制限されることなく、例えば、特許文献1に記載の方法に従い、プレ熱伝導シート成形工程、積層体形成工程、スライス工程などを経て形成することができる。
<<プレ熱伝導シート成形工程>>
プレ熱伝導シート成形工程では、フッ素樹脂と、膨張化黒鉛と、繊維状炭素ナノ構造体とを含み、任意に、添加剤を更に含む組成物を加圧してシート状に成形し、プレ熱伝導シートを得る。
[組成物]
ここで、組成物は、フッ素樹脂と、膨張化黒鉛と、繊維状炭素ナノ構造体と、上述した任意成分(添加剤)とを混合して調製することができる。そして、フッ素樹脂、膨張化黒鉛、繊維状炭素ナノ構造体および任意の添加剤としては、本発明の熱伝導シートに含まれ得るフッ素樹脂、膨張化黒鉛、繊維状炭素ナノ構造体および任意の添加剤として上述したものを用いることができる。
また、上述した成分の混合は、特に限定されることなく、ニーダー、ロール、ミキサー等の既知の混合装置を用いて行うことができる。また、混合は、有機溶剤等の溶媒の存在下で行ってもよい。そして、混合時間は、例えば5分以上60分以下とすることができる。また、混合温度は、例えば5℃以上150℃以下とすることができる。
[組成物の成形]
そして、上述のようにして調製した組成物は、任意に脱泡および解砕した後に、加圧(一次加圧)してシート状に成形することができる。
ここで、組成物は、圧力が負荷される成形方法であれば特に限定されることなく、プレス成形、圧延成形または押出し成形などの既知の成形方法を用いてシート状に成形することができる。中でも、組成物は、圧延成形によりシート状に形成することが好ましく、保護フィルムに挟んだ状態でロール間を通過させてシート状に成形することがより好ましい。なお、保護フィルムとしては、特に限定されることなく、サンドブラスト処理を施したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等を用いることができる。また、ロール温度は5℃以上150℃とすることができる。
[プレ熱伝導シート]
そして、組成物を加圧してシート状に成形してなるプレ熱伝導シートでは、膨張化黒鉛および繊維状炭素ナノ構造体が主として面内方向に配列し、特に面内方向の熱伝導性が向上すると推察される。
なお、プレ熱伝導シートの厚みは、特に限定されることなく、例えば0.05mm以上2mm以下とすることができる。
<<積層体形成工程>>
積層体形成工程では、プレ熱伝導シート成形工程で得られたプレ熱伝導シートを厚み方向に複数枚積層して、或いは、プレ熱伝導シートを折畳または捲回して、積層体を得る。
ここで、積層体形成工程で得られる積層体において、プレ熱伝導シートの表面同士の接着力をより高めて、積層体の層間剥離を十分に抑制する場合には、プレ熱伝導シートの表面を溶剤で若干溶解させた状態で積層体形成工程を行ってもよいし、プレ熱伝導シートの表面に接着剤を塗布した状態またはプレ熱伝導シートの表面に接着層を設けた状態で積層体形成工程を行ってもよいし、プレ熱伝導シートを積層させた積層体を積層方向に更にプレス(二次加圧)してもよい。
なお、層間剥離を効率的に抑制する観点からは、得られた積層体を積層方向に二次加圧することが好ましい。そして、二次加圧の条件としては、特に限定されず、積層方向への圧力0.05MPa以上0.5MPa以下、温度80℃以上170℃以下で10秒〜30分間とすることができる。
そして、プレ熱伝導シートを積層、折畳または捲回して得られる積層体では、膨張化黒鉛および繊維状炭素繊維が積層方向に略直交する方向に配列していると推察される。
<<スライス工程>>
スライス工程では、積層体形成工程で得られた積層体を、積層方向に対して45°以下の角度でスライスし、積層体のスライス片よりなる熱伝導シートを得る。
ここで、積層体をスライスする方法としては、特に限定されることなく、例えば、マルチブレード法、レーザー加工法、ウォータージェット法、ナイフ加工法等が挙げられる。中でも、熱伝導シートの厚みを均一にし易い点で、ナイフ加工法が好ましい。また、積層体をスライスする際の切断具としては、特に限定されることなく、スリットを有する平滑な盤面と、このスリット部より突出した刃部とを有するスライス部材(例えば、鋭利な刃を備えたカンナやスライサー)を用いることができる。
なお、熱伝導シートの熱伝導性を高める観点からは、積層体をスライスする角度は、積層方向に対して30°以下であることが好ましく、積層方向に対して15°以下であることがより好ましく、積層方向に対して略0°である(即ち、積層方向に沿う方向である)ことが好ましい。
また、積層体を容易にスライスする観点からは、スライスする際の積層体の温度は−20℃以上30℃以下とすることが好ましい。更に、同様の理由により、スライスする積層体は、積層方向とは垂直な方向に圧力を負荷しながらスライスすることが好ましく、積層方向とは垂直な方向に0.1MPa以上0.5MPa以下の圧力を負荷しながらスライスすることがより好ましい。
<熱伝導シートの性状>
<<厚み>>
そして、本発明の熱伝導シートは、厚みが400μm以下である必要がある。また、熱伝導シートの厚みは、200μm以下であることが好ましく、160μm以下であることがより好ましく、50μm以上とすることができる。上述した所定の成分および所定の構造を有する熱伝導シートの厚みが400μm以下でなければ、例えば、比較的低い挟持圧力で熱伝導シートを被着体間に介在させて使用した際に、熱伝導シートに良好な熱伝導性を発揮させ難い。また、熱伝導シートの厚みが上記上限以下と更に薄膜化されていれば、例えば、比較的低い挟持圧力で熱伝導シートを被着体間に介在させて使用した場合でも、熱伝導シートが被着体の形状により良好に追従して密着性が高まるため、熱伝導シートの熱伝導性をより向上させ得るからである。また、熱伝導シートの厚みが上記下限以上であれば、熱伝導シートを過度に薄膜化させずに熱伝導シートの強度およびハンドリング性を確保できるからである。
ここで、上述した通り、通常、熱伝導シートを薄膜化するほど接炎による熱伝導シートの構造崩壊等が進行し易い。しかしながら、本発明の熱伝導シートは、フッ素樹脂、膨張化黒鉛および繊維状炭素ナノ構造体を含み、且つ、所定の条件で接炎させた後の残物中に繊維状炭素ナノ構造体の網目状構造が存在しているため、上記所定以下の厚みに薄膜化された場合であっても接炎による滴下物の発生を抑制することが出来る。
<<熱抵抗値>>
また、本発明の熱伝導シートは、0.05MPa加圧下での熱抵抗値が0.30℃/W以下であることが好ましく、0.20℃/W以下であることがより好ましく、0.14℃/W以下であることが更に好ましい。0.05MPa加圧下での熱抵抗値が上記上限以下であれば、比較的低い挟持圧力での使用に際して、熱伝導シートが確実に優れた熱伝導性を発揮することができるからである。
<所定の条件で接炎させた後の残物>
そして、熱伝導シートを所定の条件で接炎させた後の残物中には、上述した繊維状炭素ナノ構造体の網目状構造が存在する必要がある。上記残物中に繊維状炭素ナノ構造体の網目状構造が存在していなければ、熱伝導性シートが難燃性に劣る。
<<所定の接炎条件>>
ここで、接炎条件は、上述した通り、UL94規格V−0試験(垂直燃焼試験)に準拠した条件であり、具体的には、本明細書の実施例に記載の方法に従って評価することができる。
ここで、UL94規格V−0試験に従って熱伝導シートに接炎すると、例えば、熱伝導シートの厚みが400μm以下と薄い場合は、通常、熱伝導シートが滴下により構造崩壊し易く、上記試験に用いる固定用クランプまで炎が達し易いため、熱伝導シートが難燃性に劣る。しかしながら、本発明の熱伝導シートは、フッ素樹脂、膨張化黒鉛および繊維状炭素ナノ構造体を含み、且つ、上記残物中に繊維状炭素ナノ構造体の網目状構造が存在するため、上記所定以下の厚みに薄膜化されていても、接炎によって固定用クランプまで炎が達すること等がなく、良好な難燃性を示す。
以下、本発明について実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下の説明において、量を表す「%」及び「部」は、特に断らない限り、質量基準である。
そして、実施例および比較例において、熱伝導シートの厚み、熱抵抗値および難燃性;残物中における繊維状炭素ナノ構造体の網目状構造の確認;残物中の繊維状炭素ナノ構造体のバンドル径;は、それぞれ以下の方法に従って測定または評価した。
<厚み>
熱伝導シートの厚みは、膜厚計(ミツトヨ製、製品名「デジマチックインジケーター ID−C112XBS」)を用いて行った。そして、熱伝導シート表面上の任意の箇所5点について測定した値の平均値(μm)を、熱伝導シートの厚みとした。
<熱抵抗値>
熱伝導シートの熱抵抗値は、樹脂材料熱抵抗試験器(株式会社日立テクノロジーアンドサービス製、製品名「C47108」)を用いて測定した。ここで、1cm角の略正方形に切り出した熱伝導シートを試料とし、試料温度50℃において、比較的低圧である0.05MPaを加えた時の熱抵抗値(℃/W)を測定した。熱抵抗値が小さいほど熱伝導シートが熱伝導性に優れ、例えば、発熱体と放熱体との間に介在させて放熱装置とした際の放熱特性に優れていることを示す。
<難燃性>
熱伝導シートを長さ125mm×幅13mmの大きさに裁断した試験片を10枚用意した。そして、試験片5枚を、温度23℃、相対湿度50%の環境下で48時間保管(I)を行った。一方、残りの試験片5枚を、温度70℃の環境下で168時間保管してエージング処理(II)を行った。このようにして、2つの処理を施した5枚1組の試験片を2組用意した。
次に、各組の試験片を1枚ずつ垂直に持ち上げて固定用クランプで支持し、支持した試験片の約300mm下方に脱脂綿を置いた。また、ブンゼンバーナーの空気およびガスの流量を調整して高さ20mm程度の青色炎をつくり、垂直に支持した試験片の下端にブンゼンバーナーの炎をあてて(炎と試験片とが約10mm交わるように)10秒間保った後、試験片からブンゼンバーナーの炎を離した。その後、試験片の炎が消えれば直ちにブンゼンバーナーの炎を試験片に再びあて、更に10秒間保持した後、試験片とブンゼンバーナーの炎とを離した。そして、1回目の接炎後の残炎時間(炎を立てて燃焼する時間)、2回目の接炎後の残炎時間、2回目の無炎燃焼時間(炎を取り去った後炎を立てずに燃焼する時間)、試験片が固定用クランプまで燃えたか否か、試験片が脱脂綿を発火させる、または試験片が炎をあげながら滴下物を生じたか否か、を確認し、UL94規格V試験(垂直燃焼試験)に準拠して評価した。
具体的には、5枚2組の試験片に対して、(1)各試験片の1回目、2回目ともに接炎後の残炎時間が10秒以内であり、(2)5枚の接炎後の残炎時間の合計が50秒以内であり、(3)固定用クランプの位置まで燃焼または無炎燃焼する試験片が無く、(4)脱脂綿を発火させる滴下物が生じず、且つ、(5)2回目の接炎後の無炎燃焼時間が30秒以内であるかについて、上記5つの条件を満たすか否かを判定した。そして、上記条件を満たす場合に、V−0のグレードを満たすものとした。48時間保管(I)およびエージング処理(II)を施した試験片がいずれもV−0のグレードを満たす熱伝導シートは難燃性に優れていると言える。
V−0:V−0のグレードを満たす。
規格外:V−0のグレードを満たさない。
<繊維状炭素ナノ構造体の網目状構造の確認およびバンドル径>
残物中における繊維状炭素ナノ構造体の網目状構造の存在の確認は、走査型電子顕微鏡(SEM、日立ハイテクノロジーズ製、製品名「SU3500」)を用いて行った。また、試料としては、上述の通り、48時間保管(I)を施して難燃性試験を行って得られた残物を用いた。
そして、残物においてブンゼンバーナーの炎があたっていた箇所についてのSEM画像を、上記顕微鏡を用いて倍率2000倍で観察し、繊維状炭素ナノ構造体の網目状構造が確認できる部位を5点選択した。更に、当該5点の中で最も網目状構造が密集している点について、更に10000倍で観察した。このように、繊維状炭素ナノ構造体の網目状構造が確認できるか否かを判断した。
なお、上述の難燃性試験において、例えば、滴下物が生じて規格外であった試験片についても、燃焼試験で滴下しなかった部分の残物を見ることにより、繊維状炭素ナノ構造体の網目状構造の有無を確認した。
更に、上述で得られたSEM像画像で確認された、繊維状炭素ナノ構造体が複数本絡み合ったバンドルについて、SEM画像からバンドル径を測定した。
(実施例1)
<繊維状炭素ナノ構造体の易分散性集合体の調製>
<<分散液の調製>>
繊維状炭素ナノ構造体(単層のSGCNT、日本ゼオン社製、BET比表面積:600m/g、平均直径:3nm〜5nm)を400mg量り取り、溶媒としてのメチルエチルケトン2L中に混ぜ、ホモジナイザーにより2分間撹拌し、粗分散液を得た。次に、湿式ジェットミル(株式会社常光製、製品名「JN−20」)を使用し、得られた粗分散液を湿式ジェットミルの0.5mmの流路に100MPaの圧力で2サイクル通過させて、繊維状炭素ナノ構造体をメチルエチルケトンに分散させた。そして、固形分濃度0.20質量%の分散液を得た。
<<溶媒の除去>>
その後、上述で得られた分散液をキリヤマろ紙(No.5A)を用いて減圧ろ過し、シート状の繊維状炭素ナノ構造体の易分散性集合体を得た。
<組成物の調製>
フッ素樹脂としての常温常圧下で液体の熱可塑性フッ素樹脂(ダイキン工業株式会社製、商品名「ダイエルG―101」)を100部と、膨張化黒鉛(伊藤黒鉛工業株式会社製、商品名「EC100」、体積平均粒子径:190μm)を50部と、上述で得られた繊維状炭素ナノ構造体の易分散性集合体を0.5部とを、ホバートミキサー(株式会社小平製作所製、製品名「ACM−5LVT型」、容量:5L)を用いて、温度80℃にて、30分間撹拌混合した。そして、得られた混合物を解砕機(大阪ケミカル社製、商品名「ワンダークラッシュミルD3V−10」)に投入して、1分間解砕することにより、組成物を得た。
<プレ熱伝導シートの形成>
次いで、得られた組成物50gを、サンドブラスト処理を施した厚み50μmのPETフィルム(保護フィルム)で挟み、ロール間隙550μm、ロール温度50℃、ロール線圧50kg/cm、ロール速度1m/分の条件にて圧延成形(一次加圧)し、厚み0.5mmのプレ熱伝導シートを得た。
<積層体の形成>
続いて、得られたプレ熱伝導シートを縦150mm×横150mm×厚み0.5mmに裁断し、プレ熱伝導シートの厚み方向に120枚積層し、更に、温度120℃、圧力0.1MPaで3分間、積層方向にプレス(二次加圧)することにより、高さ約60mmの積層体を得た。
<熱伝導シートの形成>
その後、二次加圧された積層体の積層側面を0.3MPaの圧力で押し付けながら、木工用スライサー(株式会社丸仲鐵工所製、商品名「超仕上げかんな盤スーパーメカS」)を用いて、積層方向に対して0度の角度で(換言すれば、積層されたプレ熱伝導シートの主面の法線方向に)スライスすることにより、縦150mm×横60mm×厚み0.15mmの熱伝導シートを得た。
そして、得られた熱伝導シートについて、上述の方法に従って、熱抵抗値および難燃性を測定した。また、得られた熱伝導シートを上述の通り接炎させた後の残物について、上述の方法に従って、繊維状炭素ナノ構造体の網目状構造の確認および繊維状炭素ナノ構造体のバンドル径を求めた。結果を表1に示す。
なお、残物中に存在した、繊維状炭素ナノ構造体が複数本絡み合ったバンドルのバンドル径は、20nm〜250nmであった。
(実施例2)
組成物の調製において、繊維状炭素ナノ構造体の易分散性集合体の量を1.0部に変更した以外は実施例1と同様にして、繊維状炭素ナノ構造体の易分散性集合体、組成物、プレ熱伝導シート、積層体および熱伝導シートを製造した。
そして、実施例1と同様にして測定した。結果を表1に示す。
(実施例3)
組成物の調製において、繊維状炭素ナノ構造体の易分散性集合体の量を2.0部に変更した以外は実施例1と同様にして、繊維状炭素ナノ構造体の易分散性集合体、組成物、プレ熱伝導シート、積層体および熱伝導シートを製造した。
そして、実施例1と同様にして測定した。結果を表1に示す。
(比較例1)
組成物の調製において、繊維状炭素ナノ構造体(SGCNT)の易分散性集合体0.5部に替えて、多層カーボンナノチューブ(KUMHO PETROCHEMICAL社製、商品名「K−NANO」、BET比表面積:266m/g、平均直径:13nm)1.0部を用いた以外は実施例1と同様にして、組成物、プレ熱伝導シート、積層体および熱伝導シートを製造した。
そして、実施例1と同様にして測定した。結果を表1に示す。
なお、比較例1では、残物中に、繊維状炭素ナノ構造体が複数本絡み合ったバンドルは確認できなかった。
(比較例2)
組成物の調製において、フッ素樹脂として、常温常圧下で液体の熱可塑性フッ素樹脂に替えて、常温常圧下で固体の熱可塑性フッ素樹脂(ダイキン工業株式会社製、商品名「ダイエルG−912」)を90部使用した。また、膨張化黒鉛の量を130部に変更し、繊維状炭素ナノ構造体の易分散性集合体の量を1.0部に変更し、更に、添加剤としての粘着性樹脂(タッキファイヤー、荒川化学工業社製、商品名「KE−359」、超淡色ロジンエステル)を5部加え、加圧ニーダー(井上製作所製)を用いて、温度150℃にて5分間撹拌しながら混合、混練して混合物を得た。
また、熱伝導シートの形成において、シートの厚みが0.50mmとなるように調整して熱伝導シートを製造した以外は実施例1と同様にして、繊維状炭素ナノ構造体の易分散性集合体、組成物、プレ熱伝導シート、積層体および熱伝導シートを製造した。
そして、実施例1と同様にして測定した。結果を表1に示す。
Figure 0006897129
表1より、フッ素樹脂、膨張化黒鉛および繊維状炭素ナノ構造体を含み、厚みが400μm以下であり、且つ、所定の条件で接炎させた後の残物中に繊維状炭素ナノ構造体の網目状構造が存在している実施例1〜3の熱伝導シートは、0.05MPaの比較的低い挟持圧力下での熱伝導性に優れ、且つ、難燃性にも優れることが分かる。
一方、所定の条件で接炎させた後の残物中に繊維状炭素ナノ構造体の網目状構造の存在が確認できない比較例1の熱伝導シートは、難燃性に劣ることが分かる。
なお、厚みが400μm超である比較例2の熱伝導シートでは、難燃性の問題は見られないものの、0.05MPa下での熱抵抗値は高いことが分かる。
本発明によれば、優れた難燃性を発揮し、且つ、比較的低い挟持圧力でも優れた熱伝導性を発揮し得る熱伝導シートを提供することができる。

Claims (5)

  1. 常温常圧下で液体のフッ素樹脂と、膨張化黒鉛と、繊維状炭素ナノ構造体と、を含む熱伝導シートであって、
    厚みが400μm以下であり、
    前記熱伝導シートをUL94規格V−0試験(垂直燃焼試験)に準拠して接炎させた後の残物中に、前記繊維状炭素ナノ構造体の網目状構造が存在する、熱伝導シート。
  2. 前記熱伝導シートに含まれる前記繊維状炭素ナノ構造体の比表面積が300m/g以上である、請求項に記載の熱伝導シート。
  3. 前記繊維状炭素ナノ構造体の含有量が、前記フッ素樹脂100質量部あたり0.4質量部以上3.0質量部以下である、請求項1または2に記載の熱伝導シート。
  4. 前記繊維状炭素ナノ構造体の含有割合が0.3質量%以上2.0質量%以下である、請求項1〜のいずれか一項に記載の熱伝導シート。
  5. 0.05MPa加圧下での熱抵抗値が0.30℃/W以下である、請求項1〜のいずれか一項に記載の熱伝導シート。
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