JP7275902B2 - 熱伝導シートおよびその製造方法 - Google Patents
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Description
しかし、従来の熱伝導シートを上記のように吸引して搬送すると、吸引停止後も熱伝導シートが吸引部から即座に脱離しない場合があった。このように、熱伝導シートが吸引部からの離脱性に劣ると、熱伝導シートを備える電子機器の生産効率が低下する。
なお、本発明において、「孔径が48μm以上500μm以下である」とは、孔の最大径と最小径の双方が48μm以上500μm以下であることを意味する。また、本発明において、「熱伝導率」および「微小孔の数」は、実施例に記載の方法を用いて測定することができる。
なお、本発明において、「平均厚み」は、実施例に記載の方法を用いて測定することができる。
なお、本発明において、切断刃の「逃げ面」とは、その一部をスライスにより切り出された樹脂ブロックが進行する側の面を意味し、切断刃の「すくい面」とは、スライスにより樹脂ブロックから切り出された部分が進行する側の面を意味する。
なお、本発明において、「静摩擦係数」は、実施例に記載の方法を用いて測定することができる。
ここで、本発明の熱伝導シートは、電子部品等の発熱体と、金属製のヒートシンク、放熱板、放熱フィン等の放熱体との間に挟み込んで使用されるものであり、例えば本発明の熱伝導シートの製造方法を用いて製造することができる。
本発明の熱伝導シートは、樹脂と、熱伝導性充填材とを含み、任意に添加剤を更に含み得る。また、本発明の熱伝導シートは、厚み方向の熱伝導率が15W/m・K以上であることを必要とする。更に、本発明の熱伝導シートは、当該シートを厚み方向に貫通する微小孔(孔径:48μm以上500μm以下)を、シートの平面視面積100cm2当たり3個以上40個以下有することを必要とする。厚み方向の伝導率が15W/m・K以上であり、且つ所定の微小孔が平面視面積100cm2当たり3個以上40個以下存在する熱伝導シートは、優れた熱伝導性および引張強度を有すると共に、吸引部を備える搬送装置を用いた搬送に際し、吸引停止時に容易に吸引部から脱離し得る。そのため、本発明の熱伝導シートを用いれば、熱伝導性および引張強度に優れる熱伝導シートを備える電子機器を効率良く生産することができる。
ここで、樹脂としては、常温常圧下で液体の樹脂と、常温常圧下で固体の樹脂との少なくとも一方を用いることができる。なお、本明細書において、「常温」とは23℃を指し、「常圧」とは、1atm(絶対圧)を指す。
そして、常温常圧下で液体の熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂などが挙げられる。
また、常温常圧下で液体の熱硬化性樹脂としては、例えば、天然ゴム;ブタジエンゴム;イソプレンゴム;ニトリルゴム;水素化ニトリルゴム;クロロプレンゴム;エチレンプロピレンゴム;塩素化ポリエチレン;クロロスルホン化ポリエチレン;ブチルゴム;ハロゲン化ブチルゴム;ポリイソブチレンゴム;エポキシ樹脂;ポリイミド樹脂;ビスマレイミド樹脂;ベンゾシクロブテン樹脂;フェノール樹脂;不飽和ポリエステル;ジアリルフタレート樹脂;ポリイミドシリコーン樹脂;ポリウレタン;熱硬化型ポリフェニレンエーテル;熱硬化型変性ポリフェニレンエーテル;などが挙げられる。
そして、常温常圧下で固体の熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリ(アクリル酸2-エチルヘキシル)、アクリル酸とアクリル酸2-エチルヘキシルとの共重合体、ポリメタクリル酸またはそのエステル、ポリアクリル酸またはそのエステルなどのアクリル樹脂;シリコン樹脂;フッ素樹脂;ポリエチレン;ポリプロピレン;エチレン-プロピレン共重合体;ポリメチルペンテン;ポリ塩化ビニル;ポリ塩化ビニリデン;ポリ酢酸ビニル;エチレン-酢酸ビニル共重合体;ポリビニルアルコール;ポリアセタール;ポリエチレンテレフタレート;ポリブチレンテレフタレート;ポリエチレンナフタレート;ポリスチレン;ポリアクリロニトリル;スチレン-アクリロニトリル共重合体;アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂);スチレン-ブタジエンブロック共重合体またはその水素添加物;スチレン-イソプレンブロック共重合体またはその水素添加物;ポリフェニレンエーテル;変性ポリフェニレンエーテル;脂肪族ポリアミド類;芳香族ポリアミド類;ポリアミドイミド;ポリカーボネート;ポリフェニレンスルフィド;ポリサルホン;ポリエーテルサルホン;ポリエーテルニトリル;ポリエーテルケトン;ポリケトン;ポリウレタン;液晶ポリマー;アイオノマー;などが挙げられる。
また、常温常圧下で固体の熱硬化性樹脂としては、例えば、天然ゴム;ブタジエンゴム;イソプレンゴム;ニトリルゴム;水素化ニトリルゴム;クロロプレンゴム;エチレンプロピレンゴム;塩素化ポリエチレン;クロロスルホン化ポリエチレン;ブチルゴム;ハロゲン化ブチルゴム;ポリイソブチレンゴム;エポキシ樹脂;ポリイミド樹脂;ビスマレイミド樹脂;ベンゾシクロブテン樹脂;フェノール樹脂;不飽和ポリエステル;ジアリルフタレート樹脂;ポリイミドシリコーン樹脂;ポリウレタン;熱硬化型ポリフェニレンエーテル;熱硬化型変性ポリフェニレンエーテル;などが挙げられる。
なお、上述した樹脂は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
熱伝導性充填材としては、特に限定されることなく、例えば、アルミナ粒子、酸化亜鉛粒子、窒化ホウ素粒子、窒化アルミニウム粒子、窒化ケイ素粒子、炭化ケイ素粒子、酸化マグネシウム粒子および粒子状炭素材料(例えば、人造黒鉛、鱗片状黒鉛、薄片化黒鉛、天然黒鉛、酸処理黒鉛、膨張性黒鉛、膨張化黒鉛、カーボンブラック等)などの粒子状材料、並びに、カーボンナノチューブ、気相成長炭素繊維、有機繊維を炭化して得られる炭素繊維、およびそれらの切断物などの繊維状材料が挙げられる。中でも、熱伝導性充填材としては、窒化ホウ素粒子、人造黒鉛、鱗片状黒鉛、膨張性黒鉛および膨張化黒鉛等の鱗片状粒子材料;並びに、カーボンナノチューブ(以下、「CNT」と称することがある。)などの繊維状炭素ナノ材料;からなる群より選択される少なくとも1種を用いることが好ましく、鱗片状粒子材料を用いることがより好ましく、鱗片状黒鉛および膨張化黒鉛等の異方性黒鉛を用いることが更に好ましく、膨張化黒鉛を用いることが特に好ましい。これらの熱伝導性充填材を用いれば、熱伝導シートの熱伝導性を更に高めることができる。
なお、熱伝導性充填材は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
また、熱伝導性充填材の含有量が上記上限値以下であれば、熱伝導シートの内部応力が過度に上昇することもなく、カールの発生による微小孔の増加を抑制することができる。結果として、熱伝導シートの引張強度を更に向上させることができる。
熱伝導シートに任意に含有させ得る添加剤としては、特に限定されることなく、例えば、難燃剤、可塑剤、靭性改良剤、吸湿剤、接着力向上剤、濡れ性向上剤、イオントラップ剤などが挙げられる。
[厚み方向の熱伝導率]
そして、本発明の熱伝導シートは、厚み方向の熱伝導率が15W/m・K以上であることが必要であり、20W/m・K以上であることが好ましく、25W/m・K以上であることがより好ましく、30W/m・K以上であることが更に好ましい。厚み方向の熱伝導率が上記下限値以上であれば、発熱体から放熱体へと良好に熱を伝えることができる。
また、本発明の熱伝導シートは、孔径が48μm以上500μm以下である微小孔を複数個有する。ここで、微小孔は、熱伝導シートを厚み方向に貫通する孔であり、即ち、微小孔は、熱伝導シートの一方の主面の開口部から他方の主面の開口部にかけて延在した開空間を形成する。この開空間は、例えば略円柱状であり、その側面は熱伝導シートに含まれる成分(例えば、樹脂、熱伝導性充填材、および/または任意に含有させ得る添加剤)により画定される。
そして、微小孔数/100cm2は、上述したカールの度合いを調整することにより制御することができる。例えば、熱伝導シート中に占める樹脂および/または熱伝導性充填材の割合、熱伝導性充填材のサイズ(体積平均粒子径)、熱伝導シートの平均厚み、並びに熱伝導シートの製造条件を変更することでカールの度合いを調整し、微小孔数/100cm2を制御することができる。
更に、熱伝導シートの引張強度は、0.45MPa以上であることが好ましく、0.50MPa以上であることがより好ましく、1.00MPa以下であることが好ましく、0.70MPa以下であることがより好ましい。引張強度が上記下限値以上であれば、十分な強度を確保することができる。また、引張強度が上記上限値以下であれば、熱伝導シートの製造が容易である。
なお、本発明において、「引張強度」および「面内の引張強度のバラツキ」は、実施例に記載の方法を用いて測定することができる。
熱伝導シートは、平面視における面積が3600mm2以上であることが好ましく、10000mm2以上であることがより好ましい。平面視面積が上記下限値以上であれば、生産性を高めることができる。
本発明の熱伝導シートの製造方法は、樹脂と、熱伝導性充填材とを含み、任意に添加剤を更に含有し得る熱伝導シートを製造する際に用いられる。中でも、本発明の熱伝導シートの製造方法は、上述した本発明の熱伝導シートを製造する際に好適に用いることができる。
ここで、熱伝導シートの材料となる樹脂ブロックは、樹脂と、熱伝導性充填材とを含有し、任意に添加剤を更に含有する。
なお、樹脂、熱伝導性充填材および添加剤としては、上述した本発明の熱伝導シートと同様のものを用いることができ、その好適な態様についても上述した本発明の熱伝導シートと同様であるため、以下では説明を省略する。
樹脂ブロックの形状は、特に限定されることなく、スライスした際に所望の形状の熱伝導シートが得られる形状とすることができる。具体的には、例えば、矩形状の熱伝導シートを製造する場合には、樹脂ブロックの形状は、直方体であることが好ましい。
なお、プレ熱伝導シートを積層してなる積層体では、通常、プレ熱伝導シートの表面同士の接着力は、プレ熱伝導シートを積層する際の圧力により充分に得られる。しかし、接着力が不足する場合や、積層体の層間剥離を十分に抑制する必要がある場合には、プレ熱伝導シートの表面を溶剤で若干溶解させた状態で積層を行ってもよいし、プレ熱伝導シートの表面に接着剤を塗布した状態またはプレ熱伝導シートの表面に接着層を設けた状態で積層を行ってもよいし、プレ熱伝導シートを積層させた積層体を積層方向に更にプレスしてもよい。
なお、プレ熱伝導シートの積層体を、積層体の積層方向、或いは、積層体の積層方向および積層体を構成するプレ熱伝導シートの双方に直交する方向にスライスして得た熱伝導シートは、積層体を構成していたプレ熱伝導シートのスライス片(樹脂と、熱伝導性充填材とを含む条片)が並列接合されてなる構成を有している。換言すれば、当該熱伝導シートは、樹脂および熱伝導性充填材を含み、積層体を構成していたプレ熱伝導シートの厚みと略等しい寸法の幅を有する条片が、条片の幅方向が熱伝導シートの厚み方向と直交する姿勢で、条片の幅方向に並列接合されてなる構成を有している。ここで、特にこのような構成を有する熱伝導シートでは、スライス時にカールすると隣接する条片同士の間で剥離が起こり易く、特にスライス時に切断刃の逃げ面が接触していた面側では、カールによる剥離の影響が顕著である。そして、一度カールしたシートは、押圧などの物理的な処理により平坦にすればカール自体は解消するが、一度剥離した条片同士を再結合させるのは困難である。しかし本発明の熱伝導シートの製造方法によれば、カールの発生を抑制することができるので、条片同士の剥離を抑制し、微小孔数/100cm2が過度に上昇することもなく引張強度に優れる熱伝導シートを得ることができる。
スライス機構は、少なくとも、支持台と、支持台のスライド面から刃先が突出した切断刃と、切断刃のすくい面に対向配置されたガイド部材とを備えることを必要とする。具体的には、スライス機構の一例は、例えば図1(a)~(c)に示すように、スライド面21を有する支持台20と、すくい面31と、逃げ面32と、すくい面31および逃げ面32の交差角部よりなる刃先とを有する切断刃30と、切断刃30のすくい面31に対向配置されたガイド部材40とを備えるかんなである。ここで、図示例においては、スライス機構は、更に、切断刃30のすくい面31に接して配置された補助ガイド部材50を備えている。また、図示例においては、切断刃30およびガイド部材40は、それぞれ支持台20に固定されている。そして、図1(b),(c)に示すように、スライス時に樹脂ブロック10から切り出された部分60は、補助ガイド部材50が設けられたすくい面31と、ガイド部材40のすくい面31側の表面41との間隙70を通過する。
なお、切断刃のすくい面に補助ガイド部材を設置する際は、補助ガイド部材は、通常、すくい面のスライド面から突出した部分(刃先付近)を覆わないように配置する。
ここで、上述したスライス機構を用いて樹脂ブロックをスライスするに際し、樹脂ブロックをスライド面に押圧する際の圧力は、0.05MPa以上であることが好ましく、0.10MPa以上であることがより好ましく、0.20MPa以上であることが特に好ましく、0.50MPa以下であることが好ましく、0.40MPa以下であることがより好ましい。圧力が上記下限値以上であれば、樹脂ブロックをスライスして得られる熱伝導シートの厚み精度を確保することができ、一方、圧力が上記上限値以下であれば、樹脂ブロックが潰れるのを抑制することができる。
なお、樹脂ブロックが上述した積層体である場合は、積層体である樹脂ブロックを、積層方向とは垂直な方向に圧力を負荷しながらスライスすることが好ましい。
そして、スライス時に切断刃と直接接触し得る部分が潰れたり、積層間が剥離して崩れたりすることを抑制する観点、および、スライスして得られる熱伝導シートに均一な厚みを付与し(シート全体のうねりを低減させ)、厚み精度を向上させる観点からは、スライス角度aは、0°超であることが好ましく、1°以上であることがより好ましく、5°以上であることが更に好ましく、30°以上であることが一層好ましく、40°以上であることが特に好ましく、90°未満であることが好ましく、89°以下であることがより好ましく、85°以下であることが更に好ましく、60°以下であることが一層好ましく、50°以下であることが特に好ましい。そして、スライス角度aは45°であることが最も好ましい。
なお、実施例および比較例において、熱伝導シートの熱伝導率、微小孔数/100cm2、引張硬度、面内の引張強度のバラツキ、平均厚み、熱抵抗値、および、吸引部からの離脱性、並びに、ガイド部材および補助ガイド部材の静摩擦係数は、それぞれ以下の方法を使用して測定した。
熱伝導シートについて、厚み方向の熱拡散率α(m2/s)、定圧比熱Cp(J/g・K)および比重ρ(g/m3)を、それぞれ、以下の方法で測定した。
[厚み方向の熱拡散率α]
熱拡散率・熱伝導率測定装置(株式会社アイフェイズ製、製品名「アイフェイズ・モバイル 1u」)を使用して、ISO 22007-3の規定に基づき測定した。
[定圧比熱Cp]
示差走査熱量計(Rigaku製、製品名「DSC8230」)を使用し、10℃/分の昇温条件下、25℃における比熱を測定した。
[比重ρ(密度)]
自動比重計(東洋精機社製、商品名「DENSIMETER-H」)を用いて測定した。
そして、各測定値を、下記式(I):
λ=α×Cp×ρ・・・(I)
に代入し、25℃における熱伝導シートの厚み方向の熱伝導率λ(W/m・K)を求めた。
<微小孔数/100cm2>
外観検査装置(長野オートメーション株式会社製、製品名「00-6724 外観検査装置」)を用いて測定した。具体的には、台座に設置した熱伝導シートの背面から、LEDライトで照らし、シート全体をカメラで撮影した。得られた画像を画像処理により二値化し、白色部を特定した。これらの白色部のうち、最大径と最小径の双方が48μm以上500μm以下であるものを微小孔とし、その個数を測定した。得られた熱伝導シート全体の微小孔の数と、熱伝導シートの平面視面積から、熱伝導シートの平面視面積100cm2当たりの微小孔の数を算出した。
<引張強度および面内の引張強度のバラツキ>
JIS K7113に準拠したダンベル2号(ダンベル型、幅:3mm、長さ70mm)を用いて熱伝導シートを打ち抜き成型し、試料片を5つ作製した。そして、引張試験機(株式会社島津製作所製、商品名「AG-IS20kN」)を用い、ロードセル:50N、チャック間距離:35mm、速度:25mm/分、温度:23℃の条件で引っ張り、破断強度(引張強度)を測定した。
なお、試料片を打ち抜く方向は、ダンベルの長軸が熱伝導シートを構成する条片に対して90度の角度で交差する方向とし、打ち抜き場所は、シート中央および4隅(角から内側に3cm以内の範囲にダンベルの一部が入る位置)の計5箇所とした。
5つの試料片の測定値の平均値を熱伝導シートの引張強度とし、最大値と最小値の差を熱伝導シートの面内の引張強度のバラツキとした。カールが生じた部位は引張強度が悪くなる傾向が見られた。
<平均厚み>
膜厚計(ミツトヨ製、製品名「デジマチックインジケーター ID-C112XBS」)を用いて、熱伝導シートの中心および四隅の計五点における厚みを測定し、測定した厚みの平均値(μm)を求めた。
<熱抵抗値>
熱伝導シートの熱抵抗値は、熱抵抗試験器(株式会社日立テクノロジーアンドサービス製、製品名「樹脂材料熱抵抗測定装置」)を用いて測定した。
具体的には、熱伝導シートから1cm角の大きさの略正方形状の試料を切り出し、試料温度50℃において、0.1MPaおよび0.9MPaの圧力を加えた時の熱抵抗値(℃/W)を測定した。熱抵抗値が小さいほど熱伝導シートが熱伝導性に優れ、例えば、発熱体と放熱体との間に介在させた際の放熱特性に優れていることを示す。
<吸引部からの離脱性(吸着試験)>
18cm×18cmのセラミック吸着プレート(株式会社ナベヤ製)に、ダイアフラム型ドライ真空ポンプ(ULVAC社製、製品名「DAP-12S」、吸引量=14L/分)を接続したものを試験装置とした。
水平台上に置いた150mm×150mmの熱伝導シートを、上記試験装置で5秒吸引し水平台から持ち上げ、その後、熱伝導シートが吸着した状態のセラミック吸着プレートを90°傾けた状態で、さらに5秒吸引し、吸引を終了した。
吸引終了後、セラミック吸着プレートから熱伝導シートが離れて水平台上に落下するまでの時間(秒)を測定した。この時間が短いほど、熱伝導シートが吸引部からの離脱性に優れることを示す。
<静摩擦係数>
静摩擦係数は、JIS K7312に準拠し、試験機(株式会社島津製作所製、商品名「AG-IS20kN」)を用いて測定した。
具体的には、テーブルに固定した約120×120mmの試験片上に、総重量を200gに調整した移動重錘を載せ、100mm/分の速度で試験片に対して水平に重錘を引っ張ることで、重錘を引っ張る際の試験力(N)を測定した。得られた試験力(N)を下記式:
μs=As/B
に代入し、静摩擦係数を求めた。ここで上記式中、μsは静摩擦係数、Asは始動時の最大引張試験力(N)、Bは重錘による重力(N)である。
<組成物の調製>
常温常圧下で液体の熱可塑性フッ素樹脂(ダイキン工業株式会社製、商品名「ダイエルG-101」)70部と、常温常圧下で固体の熱可塑性フッ素樹脂(スリーエムジャパン株式会社製、商品名「ダイニオンFC2211」)30部と、粒子状炭素材料としての膨張化黒鉛(伊藤黒鉛工業株式会社製、商品名「EC300」、体積平均粒子径:50μm)90部とを、加圧ニーダー(日本スピンドル製)を用いて、温度150℃にて20分間撹拌混合した。次に、得られた混合物を解砕機(大阪ケミカル社製、商品名「ワンダークラッシュミルD3V-10」)に投入して、10秒間解砕することにより、組成物を得た。
<プレ熱伝導シートの形成>
次いで、得られた組成物50gを、サンドブラスト処理を施した厚み50μmの保護フィルム(PETフィルム)で挟み、ロール間隙550μm、ロール温度50℃、ロール線圧50kg/cm、ロール速度1m/分の条件にて圧延成形(一次加圧)し、厚み0.9mmのプレ熱伝導シートを得た。なお、プレ熱伝導シートの引張強度を測定したところ、1.6MPaであった。
<積層体の形成>
続いて、得られたプレ熱伝導シートを縦150mm×横150mm×厚み0.9mmに裁断し、プレ熱伝導シートの厚み方向に167枚積層した。そして、温度120℃、圧力0.1MPaで3分間、積層方向にプレス(二次加圧)することにより、高さ約150mmの積層体を得た。
<熱伝導シートの形成>
スライド面を有する支持台と、図1に示す形状の切断刃を備える木工用スライサー(株式会社丸仲鐵工所製、商品名「超仕上げかんな盤スーパーメカS」)に対して、図1に示すようにガイド部材(長さ:3.5cm、静摩擦係数:0.1)および補助ガイド部材(静摩擦係数:0.1)を取り付けた。なお、ガイド部材と補助ガイド部材の間隔は、0.5mmに調整した。
上述のようにして準備したスライサー(かんな)の支持台のスライド面に、図1(a)のようにして、上述の二次加圧された積層体を積層側面がスライド面と接するように載置した。そして、積層体を0.3MPaの圧力でスライド面に押圧しながらスライドさせて、積層方向に対して0°の角度で(換言すれば、積層されたプレ熱伝導シートの主面の法線方向に)スライスして、縦150mm×横150mm×平均厚み0.10mmの熱伝導シートを得た。なお、積層体の積層方向と切断刃の延在方向とのなすスライス角度aは、45°とした。得られた熱伝導シートは、プレ熱伝導シートのスライス片(条片)が並列接合した構成を有していた。
そして、得られた熱伝導シートについて、各種評価を行った。結果を表1に示す。
ガイド部材(長さ:1.0cm、静摩擦係数:0.1)を用いた以外は実施例1と同様にして熱伝導シートを製造した。
そして、実施例1と同様にして各種評価を行った。結果を表1に示す。
ガイド部材と補助ガイド部材の間隔を1.0mmに変更した以外は実施例1と同様にして熱伝導シートを製造した。
そして、実施例1と同様にして各種評価を行った。結果を表1に示す。
積層体の積層方向と切断刃の延在方向とのなすスライス角度aを5°に変更した以外は実施例1と同様にして熱伝導シートを製造した。
そして、実施例1と同様にして各種評価を行った。結果を表1に示す。
ガイド部材および補助ガイド部材をスライサーに取り付けない以外は実施例1と同様にして熱伝導シートを製造した。
そして、実施例1と同様にして各種評価を行った。結果を表1に示す。
実施例1と同様にして、縦150mm×横150mm×平均厚み0.10mmの熱伝導シートを得た。この熱伝導シートについて、「微小孔数/100cm2」を測定する際の操作と同様の操作を行い微小孔の位置を特定し、微小孔をエポキシ系接着剤で塞いだ。そして、エポキシ系接着剤が硬化した後の熱伝導シートについて、実施例1と同様にして各種評価を行った。結果を表1に示す。
膨張化黒鉛(伊藤黒鉛工業株式会社製、商品名「EC300」、体積平均粒子径:50μm)90部に替えて膨張化黒鉛(伊藤黒鉛工業株式会社製、商品名「EC100」、体積平均粒子径:190μm)50部を使用し、そして、ガイド部材および補助ガイド部材をスライサーに取り付けず、スライス角度aを0度に変更した以外は実施例1と同様にして熱伝導シートを製造した。
そして、実施例1と同様にして各種評価を行った。結果を表1に示す。
一方、比較例1は、実施例1~4に比して、引張強度に劣ることが分かる。また、比較例2は、実施例1~4に比して、吸引部からの離脱性に劣ることが分かる。更に、比較例3は、実施例1~4に比して熱伝導性に劣ることが分かる。
11 プレ熱伝導シート
20 支持台
21 スライド面
30 切断刃
31 すくい面
32 逃げ面
40 ガイド部材
41 表面
50 補助ガイド部材
60 部分
70 間隙
a スライス角度
A 樹脂ブロック(積層体)の積層方向
B 切断刃の延在方向
Claims (7)
- 樹脂および熱伝導性充填材とを含む熱伝導シートであって、
厚み方向の熱伝導率が15W/m・K以上であり、
前記熱伝導シートを厚み方向に貫通し、孔径が48μm以上500μm以下である微小孔を複数有し、
そして、前記微小孔の数が、前記熱伝導シートの平面視面積100cm2当たり3個以上40個以下である、熱伝導シート。 - 前記熱伝導性充填材が粒子状炭素材料を含み、
前記粒子状炭素材料の体積平均粒子径が10μm以上100μm以下である、請求項1に記載の熱伝導シート。 - 平均厚みが200μm以下である、請求項1または2に記載の熱伝導シート。
- 樹脂と熱伝導性充填材とを含有する樹脂ブロックをスライス機構でスライスして熱伝導シートを得る工程を含む熱伝導シートの製造方法であって、
前記スライス機構が、
スライド面を有する支持台、
逃げ面と、すくい面と、前記逃げ面とすくい面との交差角部よりなる刃先とを有し、前記刃先が前記スライド面から突出するように配置された切断刃、および、
前記すくい面に対向配置されたガイド部材を備え、
前記スライスを、前記樹脂ブロックを前記スライド面に押圧しながらスライドさせて、前記樹脂ブロックから切り出された部分が前記すくい面と前記ガイド部材との間を通過するように行う、熱伝導シートの製造方法。 - 前記スライス機構が、更に、前記切断刃の前記すくい面に接しつつ前記ガイド部材に対向するよう配置された補助ガイド部材を備える、請求項4に記載の熱伝導シートの製造方法。
- 前記ガイド部材の長さが1.0cm以上である、請求項4または5に記載の熱伝導シートの製造方法。
- 前記すくい面に対向する前記ガイド部材の表面の静摩擦係数が、0.4以下である、請求項4~6の何れかに記載の熱伝導シートの製造方法。
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