JP6907636B2 - 熱伝導シートの製造方法 - Google Patents
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Description
本発明の熱伝導シートの製造方法は、複数枚のプレ熱伝導シートを厚み方向に積層して積層体とする積層体形成工程と、上記積層体を積層方向にスライスして複数枚の熱伝導シートとするスライス工程とを備える。ここで、上記積層体形成工程は、真空雰囲気下において、複数枚のプレ熱伝導シートを一枚ずつ積層してプレスすることを特徴とする。これにより、プレ熱伝導シート間の空気を抜いてシート同士を良好に密着させて、高い機械特性を有するとともに、比較的低い圧力下で優れた熱伝導性を有する熱伝導シートを製造することができる。
まず、本発明の熱伝導シートの製造方法に用いるプレ熱伝導シートを用意する。このプレ熱伝導シートは、最終的に得られる熱伝導シートを構成するシートである。
プレ熱伝導シートは、面内方向の熱伝導率が、15W/m・K以上であることが好ましく、20W/m・K以上であることがより好ましく、30W/m・K以上であることがさらに好ましい。また、上記のプレ熱伝導シートの面内方向の熱伝導率は、通常は200W/m・K以下である。プレ熱伝導シートの面内方向の熱伝導率が15W/m・K以上とすることにより、得られた積層体を用いて熱伝導シートを作製したときに、当該熱伝導シートの厚み方向の熱伝導性を良好なものとすることができる。なお、プレ熱伝導シートの面内方向の熱伝導率は、例えば、シート作製時に用いる熱伝導性材料の種類、配合量を調節したり、シート状に成形する方法を適宜選択したりすることなどにより、調整することができる。
プレ熱伝導シートが含み得る樹脂としては、特に限定されることなく、常温常圧下で液体の樹脂、および常温常圧下で固体の樹脂が挙げられ、これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。特に、プレ熱伝導シートは、常温常圧下で液体の樹脂、および常温常圧下で固体の樹脂の両方を含むことが好ましい。
プレ熱伝導シートが含み得る常温常圧下で液体の樹脂は、プレ熱伝導シートおよび熱伝導シートにおいてマトリックス樹脂を構成し、後述する炭素材料などを結着する結着材として機能することができる。また、プレ熱伝導シートが常温常圧下で液体の樹脂を含むことにより、当該プレ熱伝導シート、ひいては熱伝導シートの柔軟性を良好にすることができ、例えば、熱伝導シートと、該熱伝導シートを接着させる被着体との間の密着性を高めて、熱伝導シートにより高い熱伝導性を発揮させることができる。
プレ熱伝導シートが含み得る常温常圧下で固体の樹脂は、プレ熱伝導シートおよび熱伝導シートにおいてマトリックス樹脂を構成し、後述する炭素材料などを結着する結着材として機能することができる。また、プレ熱伝導シートが常温常圧下で固体の樹脂を含むことにより、当該プレ熱伝導シートを用いてプレス前積層体を形成したとき、および当該プレス前積層体を加熱プレスしたときに、プレ熱伝導シートからの液垂れの発生を抑えて、作業環境の汚染を抑制することができる。
プレ熱伝導シートにおける樹脂全体の含有量は、20質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましく、また、80質量%以下であることが好ましく、70質量%以下であることが好ましい。樹脂の含有量が上記下限以上であれば、後述する炭素材料などを結着する結着材としての機能を十分にもたらすことができる。また、樹脂の含有量が上記上限以下であれば、プレ熱伝導シートの熱伝導性を良好に保持することができる。
プレ熱伝導シートが粒子状フィラーを含むことにより、プレ熱伝導シート、ひいては熱伝導シートの熱伝導性を向上させることができる。こうした粒子状フィラーとしては、高い熱伝導率を有する粒子状の炭素材料を好適に使用することができる。
粒子状炭素材料としては、特に限定されることなく、例えば、人造黒鉛、鱗片状黒鉛、薄片化黒鉛、天然黒鉛、酸処理黒鉛、膨張性黒鉛、膨張化黒鉛などの黒鉛;カーボンブラック;などを用いることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
また、プレ熱伝導シートは、任意に繊維状炭素材料を含んでもよい。この繊維状炭素材料としては、特に限定されることなく、例えば、カーボンナノチューブ(以下、「CNT」と称することがある。)、気相成長炭素繊維、有機繊維を炭化して得られる炭素繊維、およびそれらの切断物などを用いることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明の熱伝導シートの製造方法に用いられるプレ熱伝導シートは、例えば、樹脂および炭素材料などのフィラーと、更に添加剤などの任意成分とを含む組成物を調製し、この組成物を加圧してシート状に成形することにより、作製することができる。
組成物は、例えば、樹脂と、フィラーと、添加剤などの任意成分とを混合して調製することができる。ここで、樹脂およびフィラーとしては、プレ熱伝導シートに好ましく含まれる上述した樹脂およびフィラーを用いることができる。
そして、上述のようにして調製した組成物は、任意に脱泡および解砕した後に、加圧(一次加圧)してシート状に成形することができる。ここで、組成物は、圧力が負荷される成形方法であれば特に限定されることなく、プレス成形、圧延成形または押出し成形などの既知の成形方法を用いてシート状に成形することができる。中でも、組成物は、圧延成形によりシート状に形成することが好ましく、保護フィルムに挟んだ状態でロール間を通過させてシート状に圧延成形することがより好ましい。なお、保護フィルムとしては、特に限定されることなく、サンドブラスト処理を施したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等を用いることができる。また、ロール温度は5℃以上150℃とすることができる。
次に、上述のように用意した複数枚のプレ熱伝導シートを厚み方向に積層して積層体を形成する。ここで、上記積層体の形成は、真空雰囲気下において、上記複数枚のプレ熱伝導シートを一枚ずつ積層してプレスすることが肝要である。これにより、積層体から作製される熱伝導シートの機械特性を向上させることができる。機械特性が向上する理由としては、プレ熱伝導シートの積層を真空雰囲気下で行うことにより、プレ熱伝導シート間の空気が抜かれて、シート同士の密着性が向上するためと考えられる。
続いて、上述のように形成された積層体を、積層方向に対して所定の角度でスライスして複数枚の熱伝導シートとする。ここで、積層体をスライスする方法としては、特に限定されることなく、例えば、マルチブレード法、レーザー加工法、ウォータージェット法、ナイフ加工法等が挙げられる。中でも、熱伝導シートの厚みを均一にし易い点で、ナイフ加工法が好ましい。また、積層体をスライスする際の切断具としては、特に限定されることなく、スリットを有する平滑な盤面と、このスリット部より突出した刃部とを有するスライス部材(例えば、鋭利な刃を備えたカンナやスライサー)を用いることができる。
熱伝導シートの引張強度は、引張試験機(株式会社島津製作所製、商品名「AG−IS20kN」)を用いて測定した。具体的には、熱伝導シートを、JISK6251に準拠してダンベル2号にて打ち抜き成型して試料片を作製し、試料片の両末端から1cmの箇所をつまみ、試料温度23℃で、試料片の表面から出る法線に対して垂直な方向に、500mm/分の引張速度で引っ張り、破断強度(引張強度)を測定した。なお、上記測定は、熱伝導シートを構成する条片の積層方向に引っ張ったときの引張強度を測定するものであり、最も不利な条件での測定である。
熱伝導シートの熱抵抗値(厚さ方向)は、樹脂材料熱抵抗試験器(株式会社日立テクノロジーアンドサービス製、製品名「樹脂材料熱抵抗測定装置」)を用いて、定常法で測定した。具体的には、1cm角の略正方形に切り出した熱伝導シートを試料とし、測定時の試料温度を50℃として、熱伝導シートの表面に比較的低圧である0.05MPaを印加した時の熱抵抗値(℃/W)を測定した。熱抵抗値が小さいほど、熱伝導シートが熱伝導性等の熱特性に優れ、例えば、熱伝導性シートとして発熱体と放熱体との間に介在させて放熱装置とした際の放熱特性に優れていることを示す。
<<分散液の調製>>
繊維状の炭素ナノ構造体(SGCNT、日本ゼオン社製、比表面積:600m2/g)を400mg量り取り、溶媒としてのメチルエチルケトン2L中に混ぜ、ホモジナイザーにより2分間撹拌し、粗分散液を得た。次に、湿式ジェットミル(株式会社常光製、製品名「JN−20」)を使用し、得られた粗分散液を湿式ジェットミルの0.5mmの流路に100MPaの圧力で2サイクル通過させて、繊維状の炭素ナノ構造体をメチルエチルケトンに分散させた。そして、固形分濃度0.20質量%の分散液を得た。
その後、上述で得られた分散液をキリヤマろ紙(No.5A)を用いて減圧ろ過し、繊維状炭素材料としての、シート状の繊維状の炭素ナノ構造体の易分散性集合体を得た。
常温常圧下で液体の熱可塑性フッ素樹脂(ダイキン工業株式会社製、商品名「ダイエルG−101」)を70部と、常温常圧下で固体の熱可塑性フッ素樹脂(スリーエムジャパン株式会社製、商品名「ダイニオンFC2211」、ムーニー粘度:27ML1+4、100℃)を30部と、粒子状炭素材料としての膨張化黒鉛(伊藤黒鉛工業株式会社製、商品名「EC50」、体積平均粒子径:250μm)を50部と、繊維状炭素材料としての上述で得られた繊維状の炭素ナノ構造体の易分散性集合体を0.5部とを、加圧ニーダー(日本スピンドル製)を用いて、温度150℃にて20分間撹拌混合した。次に、得られた混合物を解砕機に投入して、10秒間解砕することにより、組成物を得た。
次いで、得られた組成物50gを、サンドブラスト処理を施した厚み50μmのPETフィルム(保護フィルム)で挟み、ロール幅300mm、ロール間隙550μm、ロール温度50℃、ロール線圧50kg/cm、ロール速度1m/分の条件にて圧延成形(一次加圧)し、厚み0.5mmのプレ熱伝導シートを得た。得られたプレ熱伝導シートを150×150×0.5mmに切断した。
(実施例1)
上述のように形成したプレ熱伝導シートを積層する際に、真空積層機(日機装製:ハイスタッカー)を用いて、真空雰囲気下において、300枚のプレ熱電シートを1枚ずつ積層してプレスし、積層体を形成した。その際、各積層時の圧力は0.1MPa、減圧度は−80kPaとした。得られた積層体を常温雰囲気下において、80℃で0.1MPaの圧力にて1分間熱プレスすることにより、積層体の高さを約5%圧縮した。
実施例1において、積層体の熱プレスを0.5MPaにて行った。その他の条件は実施例1と全て同じである。
実施例1において、積層体の熱プレスを0.5MPaにて2分間行った。その他の条件は実施例1と全て同じである。
実施例1において、プレ熱伝導シートの積層は、真空雰囲気下で行わずに、常圧で手積みにより行った。その他の条件は実施例1と全て同じである。
実施例1において、プレ熱伝導シートを積層する際に、プレ熱伝導シートを保持する位置をプレ熱伝導シートの外周から5cmの位置とした。その他の条件は実施例1と全て同じである。
実施例1において、各プレ熱伝導シートを積層した後のプレスを0.5MPaにて行った。その他の条件は実施例1と全て同じである。
実施例1において、各プレ熱伝導シートを積層する際の真空雰囲気の減圧度を−40kPaとした。その他の条件は実施例1と全て同じである。
上述のように得られた実施例1〜3、比較例1〜4の積層体の各々について、積層側面を0.3MPaの圧力で押し付けながら、木工用スライサー(株式会社丸仲鐵工所製、商品名「超仕上げかんな盤スーパーメカS」)を用いて、積層方向に対して0度の角度で(すなわち、積層されたプレ熱伝導シートの主面の法線方向に)スライスすることにより、縦150mm×横150mm×厚み0.15mmの熱伝導シートを得た。そして、得られた熱伝導シートについて、上述の方法に従って、引張強度および熱抵抗値を測定した。得られた結果を表1に示す。
表1から、実施例1〜3では、複数枚のプレ熱伝導シートを積層する際に真空雰囲気下で1枚ずつ積層してプレスしたため、プレ熱伝導シート間の密着性を向上させることができ、得られた積層体から作製された熱伝導シートは、高い引張強度と、比較的低い挟持圧力下での低い熱抵抗値とを有していることが分かる。一方、比較例1では、複数枚のプレ熱伝導シートを積層する際に、真空雰囲気下において行わず、常圧下で手積みで行ったため、プレ熱伝導シート間の空気を十分に抜くことができず、引張強度と、比較的低い挟持圧力下での熱伝導率の双方ともに実施例1〜3に劣ることが分かる。また、比較例2では、プレ熱伝導シートを積層する際の保持位置が、外周から5cmの位置としたため、プレ熱伝導シートの端部がたわんでしわが生じ、その結果、引張強度と、比較的低い挟持圧力下での熱伝導性の双方について実施例1〜3に劣ることが分かる。さらに、比較例3については、複数枚のプレ熱伝導シートを積層する際に、各プレ熱伝導シートをプレスする際の圧力が大きかったために、積層体が過度に圧縮されて積層体の形状が崩れ、得られた熱伝導シートの引張強度と、比較的低い挟持圧力下での熱伝導率の双方について実施例1〜3に劣ることが分かる。さらにまた、比較例4については、複数枚のプレ熱伝導シートを積層する際に、真空雰囲気の減圧度が低かったために、プレ熱伝導シート間の空気を十分に抜くことができず、引張強度と、比較的低い挟持圧力下での熱伝導率の双方について実施例1〜3に劣ることが分かる。
表1から、実施例1および2、比較例1および4では、積層体のエッジに損傷がなかったことが分かる。これに対して、実施例3では、積層体を熱プレスする際の時間が長かったために、積層体の圧縮率が高くなり、積層体の形状が崩れてエッジが損傷した。また、比較例2では、プレ熱伝導シートを積層する際に、シートの保持位置がシート外周から5cmと離れているため、シートがたわみ、その結果、積層体の形状が崩れてエッジが損傷した。さらに、比較例3では、各プレ熱伝導シートをプレスする際の圧力が高かったため、積層体が過度に圧縮され、結果として積層体の形状が崩れてエッジが損傷した。
2 複数枚のプレ熱伝導シート
3 搬送チャックA
3a 吸着パッド
4 位置決めステージ
5 位置決め爪
6 搬送チャックB
6a 積層吸着板
7 チャンバー
8 既に積層されたプレ熱伝導シート
9 台
10 昇降手段
S プレ熱伝導シート
Claims (6)
- 樹脂とフィラーとを含む組成物を加圧してシート状に成形し、フィラーをシート面内方向に配列させた複数枚のプレ熱伝導シートを真空雰囲気下において、厚み方向に一枚ずつ積層してプレスして積層体とする積層体形成工程と、
前記積層体を積層方向に対して所定の角度でスライスしてスライス面をシート表面として有する複数枚の熱伝導シートとするスライス工程とを備える熱伝導シートの製造方法。 - 前記真空雰囲気の減圧度が−40kPa超えである、請求項1に記載の熱伝導シートの製造方法。
- 前記プレ熱伝導シートをプレスする際に印加する圧力は0.5MPa未満である、請求項1または2に記載の熱伝導シートの製造方法。
- 前記積層体形成工程と前記スライス工程との間に、前記積層体を積層方向に圧縮率10%以下で圧縮する圧縮工程をさらに備える、請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱伝導シートの製造方法。
- 前記プレ熱伝導シートを積層する際に前記プレ熱伝導シートを保持する位置が、前記プレ熱伝導シートの外周から5cm未満の位置である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱伝導シートの製造方法。
- 前記フィラーが炭素材料を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の熱伝導シートの製造方法。
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