JP2019156956A - 複合材料シートの製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
そして、厚みの大きいプレ熱伝導シートを得るためには、例えば、プレ熱伝導シートを圧延により得る際の、一対のロール間の間隙(ロール間隙)を広げればよい。しかしながら、ロール間隙を広げて圧延を行うと、プレ熱伝導シートの密度が低下してしまう。そして密度が低下したプレ熱伝導シートを積層して得られる熱伝導シートについても、十分に高密度化することは困難であった。
なお、本発明において、粉体組成物の重量平均粒子径は、本明細書の実施例に記載したふるい分級による測定方法に従って測定することができる。
なお、本発明において、加圧温度とは、加圧に用いる装置の、加圧対象に接する表面の平均値を意味し、例えば、圧延により加圧を行う場合は、加圧温度(ロール温度)は、圧延に用いる2つのロールの表面温度の平均値である。
本発明の複合材料シートの製造方法は、樹脂と無機粒子を含む複合材料シートを製造する際に用いることができる。
なお、本発明の製造方法は、第一の加圧工程および第二の加圧工程以外の工程(その他の工程)を含んでいてもよい。
第一の加圧工程では、第一の樹脂と第一の無機粒子を含有する第一の粉体組成物を加圧して一次シートを得る。
第一の粉体組成物は、少なくとも第一の樹脂と第一の無機粒子を含有し、任意にその他の成分を含有する組成物である。
第一の粉体組成物に含まれる第一の樹脂としては、特に限定されず、任意の樹脂を用いることができる。例えば、第一の樹脂としては、液状樹脂および固体樹脂の何れも用いることができるが、得られる複合材料シートの平滑性を向上させる観点から、液状樹脂が好ましい。なお、第一の樹脂としては、1種の樹脂を単独で使用してもよいし、2種以上の樹脂を併用してもよい。
液状樹脂としては、常温常圧下で液体である限り、特に限定されることなく、例えば、常温常圧下で液体の熱可塑性樹脂を用いることができる。
なお、本発明において、「常温」とは23℃を指し、「常圧」とは、1atm(絶対圧)を指す。
固体樹脂としては、常温常圧下で液体でない限り、特に限定されることなく、例えば、常温常圧下で固体の熱可塑性樹脂、常温常圧下で固体の熱硬化性樹脂、を用いることができる。
常温常圧下で固体の熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリ(アクリル酸2−エチルヘキシル)、アクリル酸とアクリル酸2−エチルヘキシルとの共重合体、ポリメタクリル酸またはそのエステル、ポリアクリル酸またはそのエステルなどのアクリル樹脂;シリコーン樹脂;フッ素樹脂;ポリエチレン;ポリプロピレン;エチレン−プロピレン共重合体;ポリメチルペンテン;ポリ塩化ビニル;ポリ塩化ビニリデン;ポリ酢酸ビニル;エチレン−酢酸ビニル共重合体;ポリビニルアルコール;ポリアセタール;ポリエチレンテレフタレート;ポリブチレンテレフタレート;ポリエチレンナフタレート;ポリスチレン;ポリアクリロニトリル;スチレン−アクリロニトリル共重合体;アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(ニトリルゴム);アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂);スチレン−ブタジエンブロック共重合体またはその水素添加物;スチレン−イソプレンブロック共重合体またはその水素添加物;ポリフェニレンエーテル;変性ポリフェニレンエーテル;脂肪族ポリアミド類;芳香族ポリアミド類;ポリアミドイミド;ポリカーボネート;ポリフェニレンスルフィド;ポリサルホン;ポリエーテルサルホン;ポリエーテルニトリル;ポリエーテルケトン;ポリケトン;ポリウレタン;液晶ポリマー;アイオノマー;などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
なお、本発明において、ゴムは、「樹脂」に含まれるものとする。
常温常圧下で固体の熱硬化性樹脂としては、例えば、天然ゴム;ブタジエンゴム;イソプレンゴム;ニトリルゴム;水素化ニトリルゴム;クロロプレンゴム;エチレンプロピレンゴム;塩素化ポリエチレン;クロロスルホン化ポリエチレン;ブチルゴム;ハロゲン化ブチルゴム;ポリイソブチレンゴム;エポキシ樹脂;ポリイミド樹脂;ビスマレイミド樹脂;ベンゾシクロブテン樹脂;フェノール樹脂;不飽和ポリエステル;ジアリルフタレート樹脂;ポリイミドシリコーン樹脂;ポリウレタン;熱硬化型ポリフェニレンエーテル;熱硬化型変性ポリフェニレンエーテル;などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
第一の粉体組成物中の第一の樹脂の含有割合は、特に制限されることなく、35質量%以上であることが好ましく、95質量%以下であることが好ましい。第一の粉体組成物中に占める第一の樹脂の割合が35質量%以上であれば、第一の粉体組成物をシート状に成形する際の成形性を向上させることができる。一方、粉体組成物中に占める第一の樹脂の割合が95質量%以下であれば、第一の粉体組成物中の粉体同士のブロッキング(特に後述する第一の複合粒子同士のブロッキング)を抑制することができる。
また、樹脂中における液状樹脂の含有割合は、特に制限されることなく、60質量%以上であることが好ましく、90質量%以下であることが好ましい。樹脂中に占める液状樹脂の含有割合が60質量%以上であれば、第一の粉体組成物をシート状に成形する際の成形性を高めつつ、得られる複合材料シートの平滑性を向上させることができる。一方、第一の樹脂中に占める液状樹脂の含有割合が90質量%以下であれば、第一の粉体組成物中の粉体同士のブロッキング(特に後述する第一の複合粒子同士のブロッキング)を抑制することができる。
第一の粉体組成物に含まれる第一の無機粒子としては、特に限定されることなく、得られる複合材料シートに付与したい所望の特性を発揮し得る任意の無機粒子とすることができる。このような無機粒子としては、例えば、粒子状炭素材料、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、酸化チタンが挙げられる。なお、第一の無機粒子としては、1種の無機粒子を単独で使用してもよいし、2種以上の無機粒子を併用してもよい。
そして、例えば、複合材料シートに高い熱伝導性を付与する場合には、上述した中でも、第一の無機粒子が、粒子状炭素材料、窒化ホウ素、および/または窒化アルミニウムであることが好ましい。また、例えば、複合材料シートに高い光反射性を付与する場合には、上述した中でも、第一の無機粒子が酸化チタンであることが好ましい。
以下、本発明の製造方法により得られる複合材料シートを、熱伝導シートとして使用する例について記載する場合があるが、本発明はこの一例に限られない。
粒子状炭素材料としては、特に限定されることなく、例えば、人造黒鉛、鱗片状黒鉛、薄片化黒鉛、天然黒鉛、酸処理黒鉛、膨張性黒鉛、膨張化黒鉛などの黒鉛;カーボンブラック;などを用いることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
中でも、粒子状炭素材料としては、膨張化黒鉛を用いることが好ましい。膨張化黒鉛を使用すれば、複合材料シートの熱伝導性を向上させることができる。
ここで、第一の無機粒子の粒子径は、体積平均粒子径で、150μm以上であることが好ましく、200μm以上であることがより好ましく、400μm以下であることが好ましく、300μm以下であることがより好ましい。第一の無機粒子の粒子径が150μm以上であれば、得られる複合材料シートの強度を向上させることができる。一方、第一の無機粒子の粒子径が400μm以下であれば、例えば、第一の無機粒子を液状樹脂と混合する際の混合容易性を高めることができ、また、第一の粉体組成物をシート状に成形する際の成形性を向上させることができる。
なお、本発明において、「体積平均粒子径」は、例えば、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置(堀場製作所製、型式「LA−960」)を用いて、レーザー回折法を用いて測定された粒子径分布において、小径側から計算した累積体積が50%となるときの粒子径(D50)として求めることができる。
ここで、第一の無機粒子の体積平均粒子径を測定する際には、特に限定されることなく、例えば、第一の粉体組成物(第一の複合粒子)に含まれている第一の樹脂に対する良溶媒を用いて樹脂を溶解させる、または、第一の樹脂を熱分解させる等の任意の手法を用いて、第一の粉体組成物(第一の複合粒子)を調製する際に用いる複合混合物から第一の無機粒子を取り出して行うことができる。
第一の粉体組成物中の第一の無機粒子の含有割合は、特に制限されることなく、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、50質量%以下であることが好ましく、45質量%以下であることがより好ましい。第一の粉体組成物中に占める第一の無機粒子の割合が5質量%以上であれば、得られる複合材料シートに、熱伝導性などの所望の特性を十分に発揮させることができる。一方、第一の粉体組成物中に占める第一の無機粒子の割合が50質量%以下であれば、第一の粉体組成物をシート化する際の成形性を向上させることができる。
第一の粉体組成物が更に含み得るその他の成分としては、カーボンナノチューブ(CNT)等の繊維状炭素材料や、任意の添加剤が挙げられる。添加剤としては、特に限定されることなく、例えば、脂肪酸エステルなどの可塑剤;赤リン系難燃剤、リン酸エステル系難燃剤などの難燃剤;フッ素オイル(ダイキン工業株式会社製のデムナムシリーズ)のように可塑剤と難燃剤とを兼ねる添加剤;ウレタンアクリレートなどの靭性改良剤;酸化カルシウム、酸化マグネシウムなどの吸湿剤;シランカップリング剤、チタンカップリング剤、酸無水物などの接着力向上剤;ノニオン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤などの濡れ性向上剤;無機イオン交換体などのイオントラップ剤;等が挙げられる。なお、その他の成分は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
ここで、第一の粉体組成物中においては、上述した第一の樹脂と第一の無機粒子が物理的に一体となることで複合化されて、粒子を形成していることが好ましい。すなわち、第一の粉体組成物は、第一の樹脂と第一の無機粒子が複合化された第一の複合粒子を含んでいることが好ましい。第一の樹脂と第一の無機粒子が複合化された第一の複合粒子を含む第一の粉体組成物を用いれば、複合材料シートの製造に際し、粉飛散や粉落ちを抑制することができる。
第一の粉体組成物の重量平均粒子径が、1mm以上であることが好ましく、2mm以上であることがより好ましく、4mm以下であることが好ましく、3mm以下であることがより好ましい。第一の粉体組成物の重量平均粒子径が1mm以上であれば、複合材料シートの製造に際し、粉飛散や粉落ちを抑制することができる。一方、第一の粉体組成物の重量平均粒子径が4mm以下であれば、得られる複合材料シートの平滑性を向上させることができ、また当該シートの強度を確保することができる。
第一の樹脂と第一の無機粒子を含有する第一の粉体組成物を調製する方法は、特に限定されない。例えば、第一の樹脂と第一の無機粒子が複合化された第一の複合粒子を含む第一の粉体組成物は、第一の樹脂および第一の無機粒子を複合化して複合混合物を得る工程(複合工程)と、複合工程において得られた複合混合物を粉砕する工程(粉砕工程)を経て製造することができる。
複合工程では、第一の樹脂と、第一の無機粒子と、任意に用いられるその他の成分とを複合化して複合混合物を得る。複合化の方法としては、特に限定されないが、上述した成分をニーダーなどの既知の混練装置を用いて混練する方法が好ましい。混練は、酢酸エチルやメチルエチルケトン等の溶媒の存在下で行ってもよい。また、混練温度は、例えば5℃以上200℃以下とすることができる。
粉砕工程では、複合工程で得られた複合混合物を粉砕することで、第一の複合粒子を含む第一の粉体組成物を得る。複合混合物を粉砕する方法としては、特に限定されず、既知の粉砕装置を用いて行うことができる。
なお、粉砕工程時に追添加する第一の無機粒子は、複合混合物に含まれる第一の無機粒子と同じ種類の第一の無機粒子であってもよく、異なる種類の第一の無機粒子であってもよい。
上述した第一の粉体組成物を加圧してシート状に成形し、一次シートを得る。ここで、第一の粉体組成物を加圧成形する方法は、圧力が負荷される成形方法であれば特に限定されず、プレスや圧延が挙げられるが、圧延が好ましい。すなわち、第一の加圧工程では、第一の粉体組成物を圧延して一次シートを得ることが好ましい。
圧延は、第一の粉体組成物を、ロール間隙を通過させることにより行う。なお、第一の粉体組成物は、二枚の基材間に挟持され、これら二枚の基材と共に圧延されることが好ましい。第一の粉体組成物を二枚の基材の間に挟みながら圧延した場合、圧延後には、基材と、一次シートと、基材とが、この順に積層してなる積層体を得ることができる。基材としては、特に限定されず、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等の既知の基材を用いることができる。基材の厚みは、例えば、一枚当たり10μm以上150μm以下とすることができる。また、第一の粉体組成物を二枚の基材間に挟持して圧延を行った場合は、後述する第二の加圧工程に先んじて、得られる一次シートから少なくとも一枚の基材を剥離することが必要である。
なお、本発明において、一対のロールの間隙幅とは、2つのロールの表面(基材を用いて圧延する場合は、基材の表面。以下同じ)が最も接近する箇所における当該2つのロールの表面の間の距離をいい、隙間ゲージを用いて測定することができる。
ここで、第一の粉体組成物を加圧して一次シートに成形する際の加圧温度は、特に限定されないが、50℃以上であることが好ましく、60℃以上であることがより好ましく、90℃以下であることが好ましく、80℃以下であることがより好ましい。加圧温度を50℃以上とすれば、第一の粉体組成物を良好に加圧して、結果として得られる複合材料シートの平滑性を向上させることができる。加えて、圧延により加圧を行った場合には、得られる複合材料シート中で、無機粒子をMD方向に良好に配向させることができる。一方、加圧温度を90℃以下とすれば、例えば、第一の粉体組成物を基材と共に加圧した場合に、基材の熱変形を抑制して作業性を確保することができる。
第二の加圧工程では、第一の加圧工程で得られた一次シートを、第二の樹脂と第二の無機粒子を含有する第二の粉体組成物と共に加圧する。なお、一次シートと第二の粉体組成物を共に加圧することで成形されるシート(二次シート)を、そのまま複合材料シートとして使用してもよいし、必要に応じて、後述するその他の工程を経た後に得られるシートを、複合材料シートとして使用してもよい。
第二の粉体組成物は、少なくとも第二の樹脂と第二の無機粒子を含有し、任意にその他の成分を含有する組成物である。ここで、第二の粉体組成物は、第一の粉体組成物と同じ組成物であってもよく、異なる組成物であってもよいが、同じ組成物であることが好ましい。
第二の樹脂、第二の無機粒子、およびその他の成分の具体例としては、「第一の粉体組成物」で上述した、第一の樹脂、第一の無機粒子、およびその他の成分と同様のものが挙げられる。そして、第二の樹脂、第二の無機粒子、およびその他の成分の好適例、好適な性状、および第二の粉体組成物中における好適な含有割合は、「第一の粉体組成物」で上述した、第一の樹脂、第一の無機粒子、およびその他の成分の好適例、好適な性状、および第一の粉体組成物中における好適な含有割合と同様である。
また、第二の粉体組成物中においては、上述した第二の樹脂と第二の無機粒子が物理的に一体となることで複合化されて、粒子を形成していることが好ましい。すなわち、第二の粉体組成物は、第二の樹脂と第二の無機粒子が複合化された第二の複合粒子を含んでいることが好ましい。第二の樹脂と第二の無機粒子が複合化された第二の複合粒子を含む第二の粉体組成物を用いれば、複合材料シートの製造に際し、粉飛散や粉落ちを抑制することができる。第二の粉体組成物は、第一の粉体組成物と同様の理由で、第二の樹脂と第二の無機粒子が複合化された第二の複合粒子を含んでいることが好ましい。
第二の粉体組成物の重量平均粒子径が、1mm以上であることが好ましく、2mm以上であることがより好ましく、4mm以下であることが好ましく、3mm以下であることがより好ましい。第二の粉体組成物の重量平均粒子径が1mm以上であれば、複合材料シートの製造に際し、粉飛散や粉落ちを抑制することができる。一方、第二の粉体組成物の重量平均粒子径が4mm以下であれば、得られる複合材料シートの平滑性を向上させることができ、また当該シートの強度を確保することができる。
第二の樹脂と第二の無機粒子を含有する第二の粉体組成物を調製する方法は、特に限定されない。第二の粉体組成物は、第一の樹脂を第二の樹脂に変更し、第一の無機粒子を第二の無機粒子に変更した以外は、「第一の粉体組成物の調製方法」で例示した方法と同様にして、調製することができる。
上述した第二の粉体組成物を、第一の加圧工程で得られた一次シートと共に加圧してシート状に成形し、二次シートを得る。ここで、一次シートおよび第二の粉体組成物を加圧成形する方法は、圧力が負荷される成形方法であれば特に限定されず、プレスや圧延が挙げられるが、圧延が好ましい。すなわち、第二の加圧工程では、一次シートを第二の粉体組成物と共に圧延して二次シートを得ることが好ましい。
圧延は、一次シートおよび第二の粉体組成物と同時にロール間隙を通過させることにより行う。例えば、搬送される一次シートの表面に第二の粉体組成物を供給し、表面に第二の粉体組成物が供給された一次シートがロール間隙を通過することで、二次シートが形成される。
なお、表面に第二の粉体組成物が供給された一次シートは、二枚の基材間に挟持され、これら二枚の基材と共に圧延されることが好ましい。一次シートおよび第二の粉体組成物を二枚の基材の間に挟みながら圧延した場合、圧延後には、基材と、二次シートと、基材とが、この順に積層してなる積層体を得ることができる。なお、基材としては、「第一の加圧工程」で上述したものと同様のものを用いることができる。また、一次シートおよび第二の粉体組成物を二枚の基材間に挟持して圧延を行った場合は、得られる二次シートから少なくとも一枚の基材を剥離してもよい。
ここで、一次シートおよび第二の粉体組成物を加圧して二次シートに成形する際の加圧温度は、特に限定されないが、50℃以上であることが好ましく、60℃以上であることがより好ましく、90℃以下であることが好ましく、80℃以下であることがより好ましい。加圧温度を50℃以上とすれば、一次シートおよび第二の粉体組成物を良好に加圧して、結果として得られる複合材料シートの平滑性を向上させることができる。加えて、圧延により加圧を行った場合には、得られる複合材料シート中で、無機粒子をMD方向に良好に配向させることができる。一方、加圧温度を90℃以下とすれば、例えば、一次シートおよび第二の粉体組成物を基材と共に加圧した場合に、基材の熱変形を抑制して作業性を確保することができる。
上述した第一の加圧工程および第二の加圧工程以外に、本発明の製造方法が含み得るその他の工程は、特に限定されない。
その他の工程としては、例えば、第二の加圧工程において得られた二次シートを加圧して三次シートを得る工程(第三の加圧工程)を挙げることができる。なお、第三の加圧工程では、二次シートを、第三の樹脂と第三の無機粒子を含有する第三の粉体組成物と共に加圧してもよい。ここで、第三の粉体組成物としては、例えば「第一の粉体組成物」および/または「第二の粉体組成物」と同じものを使用することができる。また、第三の加圧工程の加圧条件(例えば、加圧温度や、一対のロールの間隙幅)は、第一の加圧工程および/または第二の加圧工程と同様のものを採用することができる。そして、二次シートおよび任意に用いられる第三の粉体組成物を二枚の基材間に挟持して圧延を行った場合は、得られる三次シートから少なくとも一枚の基材を剥離してもよい。このように基材が剥離された三次シートを、複合材料シートとして使用することができる。
上述した本発明の製造方法によって得られる複合材料シートの厚みは、特に限定されない。複合材料シートの厚みは、例えば、100μm以上とすることができ、500μm以上とすることができ、700μm以上とすることができ、900μm以上とすることができ、1200μm以上とすることができ、1400μm以上とすることができ、2000μm以下とすることができる。
ここで、一般に、複合材料シートの厚みを大きくすればするほど、複合材料シートの高密度化が困難となる。しかしながら、本発明の製造方法によれば、得られる複合材料シートの厚みを大きくした場合であっても、当該複合材料シートの密度が過度に低下することもない。このような効果を一層享受する観点からは、複合材料シートの厚みは、700μm以上2000μm以下とすることが好ましい。
そして、実施例および比較例において、粉体組成物の重量平均粒子径、複合材料シートを製造する際の生産性および作業性、得られる複合材料シートの密度、表面粗さ、およびMD方向の熱拡散率は、それぞれ以下の方法に従って測定または評価した。
粉体組成物の重量平均粒子径は、以下の手順により音波式ふるい分け粒度分布測定器(セイシン企業社製「PRS−105」)を用いて粒度分布を測定して、得られたデータを元に算出した。
音波強度60、周波数51Hz、立ち上げ時間0.1分、分級時間3.0分の条件で、粉体組成物3g〜5g程度を分級した。使用したふるいの目開きは、上から5600μm、4750μm、4000μm、3350μm、2360μm、1700μm、1000μm、500μmであった。各ふるい上に留まった粉体組成物の重量を測定し、それぞれのふるいにおける粉体組成物の累積重量(当該ふるい上に留まった粉体組成物の重量と、当該ふるいより上側のふるい上に留まった粉体組成物の重量との合計)を算出した。次いで、ふるいの目開き(μm)を横軸、粉体組成物全体の重量に占める累積重量の割合(%)を縦軸にプロットし、互いに隣接するプロットを直線で結び、折れ線グラフを得た。この折れ線グラフ上で、縦軸の値が50%となる横軸の値(μm)を、重量平均粒子径とした。
<生産性>
合計6kgの粉体組成物を、加圧による成形等を経て複合材料シートに成型するまでの一連の作業に要する時間T(分)を測定し、以下の基準で評価した。時間Tが短いほど、複合材料シートを製造する際の生産性に優れることを示す。
A:Tが50分未満
B:Tが50分以上60分未満
C:Tが60分以上
<作業性>
複合材料シートが2枚の基材に挟持されてなる積層体の状態を確認し、以下の基準で評価した。
A:複合材料シートのシワ、および基材の複合材料シートへの過度な付着が確認されず、問題なくハンドリング可能であった。
B:加圧温度が高温であるため基材の一部が柔らかくなり、複合材料シートにシワが入った。
C:加圧温度が高温であるため基材全体が柔らかくなり、複合材料シートが基材に過度に付着しこれらの剥離が困難であった。
<密度>
自動比重計(東洋精機社製「DENSIMETER−H」)を用いて測定した。
<表面粗さ>
複合材料シートについて、25mm×25mmの範囲のシート厚みを、形状測定機(株式会社キーエンス製、製品名「高精度形状測定システムKS−1100」)を用いて測定ピッチ100μmで測定した。測定結果から得られたシート厚みのσ(μm)を、表面粗さの指標とした。σの値が小さい程、複合材料シートが平滑性に優れることを示す。
<MD方向の熱拡散率>
複合材料シートのMD方向の熱拡散率(m2/s)を、熱物性測定装置(株式会社ベテル製「サーモウェーブアナライザTA35」)を使用して測定した。MD方向の熱拡散率の値が大きい程、無機粒子である膨張化黒鉛がより良好にMD方向に配向していると解釈することができる。
<粉体組成物の調製>
常温常圧下で液体の熱可塑性フッ素樹脂(ダイキン工業社製、商品名「ダイエルG−101」)80部と、常温常圧下で固体の熱可塑性フッ素樹脂(スリーエムジャパン社製、商品名「ダイニオンFC2211」、ムーニー粘度:27ML1+4(100℃))20部と、粒子状炭素材料としての膨張化黒鉛(伊藤黒鉛工業社製、商品名「EC100」、重量平均粒子径:250μm)45部とを、加圧ニーダー(日本スピンドル社製)を用いて、温度150℃にて20分間撹拌混合して、複合混合物を得た。
得られた複合混合物を、粉砕装置としてのFMミキサ(日本コークス工業社製「FM150」)により回転速度2100rpmで粉砕しながら、上記と同様の膨張化黒鉛5部を更に投入し、材料温度を60℃に保った状態で撹拌して(撹拌熱で温度上昇するため装置温度は5℃とした)、複合粒子からなる粉体組成物を得た。
得られた粉体組成物の重量平均粒子径を測定したところ、2mmであった。
<第一の加圧工程>
上述のようにして得られた複合粒子からなる粉体組成物(第一の粉体組成物)3kgを、基材としての離型剤付きPETフィルム(厚み:100μm)二枚で挟み、ロール幅:400mm、間隙幅:350μm、ロール温度:70℃、ロール線圧:50kg/cm、ロール速度:1m/分の条件で圧延を行い、二枚の基材に一次シートが挟まれてなる積層体(一次積層体)を得た。なお、ロール温度は、ロール内に設置した熱電対でロール内部の温度を調整することにより所望の値に制御した(以下同じ)。
<第二の加圧工程>
一次積層体から基材を一枚剥離し、上述のようにして得られた複合粒子(第二の粉体組成物)3kgを一次シートの上に供給し、更にその上から第一の加圧工程と同じ基材を供給して、一次シートおよび第二の粉体組成物が二枚の基材に挟まれた状態で、ロール幅:400mm、間隙幅:850μm、ロール温度:70℃、ロール線圧:50kg/cm、ロール速度:1m/分の条件で圧延を行い、二枚の基材に二次シートが挟まれてなる積層体(二次積層体)を得た。
合計6kgの粉体組成物を成型して二次シート(二次積層体)を得るのに要した時間をT(分)として、生産性を評価した。また、得られた二次積層体の状態を確認し、作業性を評価した。そして、得られた二次積層体から二枚の基材を剥離して、複合材料シート(二次シート、厚み:1000μm)の密度、表面粗さ、およびMD方向の熱拡散率を評価した。結果は何れも表1に示す。
なお、複合粒子を含み且つ重量平均粒子径が2mmの粉体組成物を用いたため、複合材料シートの製造段階における粉飛散や粉落ちが十分に抑制されていることを確認した。(同様の粉体組成物を用いた実施例3〜7、比較例1〜3について同じ。)
<粉体組成物の調製>
常温常圧下で液体の熱可塑性フッ素樹脂(ダイキン工業社製、商品名「ダイエルG−101」)70部と、常温常圧下で固体の熱可塑性フッ素樹脂(スリーエムジャパン社製、商品名「ダイニオンFC2211」、ムーニー粘度:27ML1+4(100℃))30部と、粒子状炭素材料としての膨張化黒鉛(伊藤黒鉛工業社製、商品名「EC100」、重量平均粒子径:250μm)50部とを、加圧ニーダー(日本スピンドル社製)を用いて、温度150℃にて20分間撹拌混合した。得られた混合物を粉砕機に投入し、10秒間粉砕して、粉体組成物を得た。
得られた粉体組成物の重量平均粒子径を測定したところ、1mm未満であった。
<第一および第二の加圧工程>
第一および第二の粉体組成物として、上述のようにして得られた粉体組成物を用いた以外は、実施例1と同様にして、二次積層体(二次シートの厚み:1000μm)を得た。そして、実施例1と同様にして各種評価を行った。結果を表1に示す。
なお、重量平均粒子径が1mm未満の粉体組成物を用いたため、複合材料シートの製造段階において、粉飛散や粉落ちが、製造に問題を及ぼさない範囲で確認された。
第二の加圧工程において、ロール温度をそれぞれ90℃(実施例3)、50℃(実施例4)に変更した以外は、実施例1と同様にして、二次積層体(二次シートの厚み:1000μm)を得た。そして、実施例1と同様にして各種評価を行った。結果を表1に示す。
<粉体組成物の調製>
実施例1と同様にして、複合粒子からなる粉体組成物(重量平均粒子径:2mm)を得た。
<第一の加圧工程>
上述のようにして得られた複合粒子からなる粉体組成物(第一の粉体組成物)2kgを、基材としての離型剤付きPETフィルム(厚み:100μm)二枚で挟み、ロール幅:400mm、間隙幅:150μm、ロール温度:70℃、ロール線圧:50kg/cm、ロール速度:1m/分の条件で圧延を行い、二枚の基材に一次シートが挟まれてなる積層体(一次積層体)を得た。
<第二の加圧工程>
一次積層体から基材を一枚剥離し、上述のようにして得られた複合粒子(第二の粉体組成物)2kgを一次シートの上に供給し、更にその上から第一の加圧工程と同じ基材を供給して、一次シートおよび第二の粉体組成物が二枚の基材に挟まれた状態で、ロール幅:400mm、間隙幅:450μm、ロール温度:70℃、ロール線圧:50kg/cm、ロール速度:1m/分の条件で圧延を行い、二枚の基材に二次シートが挟まれてなる積層体(二次積層体)を得た。
<第三の加圧工程>
得られた二次積層体から基材を一枚剥離し、上述のようにして得られた複合粒子(第三の粉体組成物)2kgを二次シートの上に供給し、更にその上から第一の加圧工程と同じ基材を供給して、二次シートおよび第三の粉体組成物が二枚の基材に挟まれた状態で、ロール幅:400mm、間隙幅:850μm、ロール温度:70℃、ロール線圧:50kg/cm、ロール速度:1m/分の条件で圧延を行い、二枚の基材に三次シートが挟まれてなる積層体(三次積層体)を得た。
合計6kgの粉体組成物を成型して三次シート(三次積層体)を得るのに要した時間をT(分)として、生産性を評価した。また、得られた三次積層体の状態を確認し、作業性を評価した。そして、得られた三次積層体から二枚の基材を剥離して、複合材料シート(三次シート、厚み:1500μm)の密度、表面粗さ、およびMD方向の熱拡散率を評価した。結果は何れも表1に示す。
第一の加圧工程において、間隙幅をそれぞれ650μm(実施例6)、150μm(実施例7)に変更した以外は、実施例1と同様にして、二次積層体(二次シートの厚み:1000μm)を得た。そして、実施例1と同様にして各種評価を行った。結果を表1に示す。
<粉体組成物の調製>
実施例1と同様にして調製した粉体組成物(粉体組成物A)と、実施例2と同様にして調製した粉体組成物(粉体組成物B)を、粉体組成物A:粉体組成物B=1:1(質量比)となるように混合した。
粉体組成物Aと粉体組成物Bを混合して得られた粉体組成物の重量平均粒子径を測定したところ、1.2mmであった。
<第一および第二の加圧工程>
第一および第二の粉体組成物として、上述のようにして得られた粉体組成物を用いた以外は、実施例7と同様にして、二次積層体(二次シートの厚み:1000μm)を得た。そして、実施例1と同様にして各種評価を行った。結果を表1に示す。
なお、複合粒子を含み且つ重量平均粒子径が1.2mmの粉体組成物を用いたため、複合材料シートの製造段階における粉飛散や粉落ちが十分に抑制されていることを確認した。
<粉体組成物の調製>
実施例1と同様にして、複合粒子からなる粉体組成物(重量平均粒子径:2mm)を得た。
<第一の加圧工程>
上述のようにして得られた複合粒子からなる粉体組成物(第一の粉体組成物)6kgを、基材としての離型剤付きPETフィルム(厚み:100μm)二枚で挟み、ロール幅:400mm、間隙幅:850μm、ロール温度:70℃、ロール線圧:50kg/cm、ロール速度:1m/分の条件で圧延を行い、二枚の基材に一次シートが挟まれてなる積層体(一次積層体)を得た。
合計6kgの粉体組成物を成型して一次シート(一次積層体)を得るのに要した時間をT(分)として、生産性を評価した。また、得られた一次積層体の状態を確認し、作業性を評価した。そして、得られた一次積層体から二枚の基材を剥離して、複合材料シート(一次シート、厚み:1000μm)の密度、表面粗さ、およびMD方向の熱拡散率を評価した。結果は何れも表1に示す。
<粉体組成物の調製>
実施例1と同様にして、複合粒子からなる粉体組成物(重量平均粒子径:2mm)を得た。
<第一の加圧工程(A)>
上述のようにして得られた複合粒子からなる粉体組成物(第一の粉体組成物)3kgを、離型剤付きPETフィルム(厚み:100μm)二枚で挟み、ロール幅:400mm、間隙幅:350μm、ロール温度:70℃、ロール線圧:50kg/cm、ロール速度:1m/分の条件で圧延を行い、二枚の基材に一次シートが挟まれてなる積層体(一次積層体)を得た。
得られた一次積層体から片面の基材を剥離して、片面基材付き一次シート(A)(一次シート(A)の厚み:500μm)を得た。
<第一の加圧工程(B)>
第一の加圧工程(A)と同様にして、片面基材付き一次シート(B)(一次シート(B)の厚み:500μm)を得た。
<第二の加圧工程(2枚の一次シートの積層による二次シートの作製)>
得られた片面基材付き一次シート(A)と片面基材付き一次シート(B)を、双方の一次シート同士が接するように積層し、二枚の一次シートが基材に挟まれた状態で、ロール幅:400mm、間隙幅:850μm、ロール温度:70℃、ロール線圧:50kg/cm、ロール速度:1m/分の条件で圧延を行い、二枚の基材に二次シートが挟まれてなる積層体(二次積層体)を得た。
合計6kgの粉体組成物を成型して二次シート(二次積層体)を得るのに要した時間をT(分)として、生産性を評価した。また、得られた二次積層体の状態を確認し、作業性を評価した。そして、得られた二次積層体から二枚の基材を剥離して、複合材料シート(二次シート、厚み:1000μm)の密度、表面粗さ、およびMD方向の熱拡散率を評価した。結果は何れも表1に示す。
<粉体組成物の調製>
実施例1と同様にして、複合粒子からなる粉体組成物(重量平均粒子径:2mm)を得た。
<第一の加圧工程>
上述のようにして得られた複合粒子からなる粉体組成物(第一の粉体組成物)6kgを、基材としての離型剤付きPETフィルム(厚み:100μm)二枚で挟み、ロール幅:400mm、間隙幅:1350μm、ロール温度:70℃、ロール線圧:50kg/cm、ロール速度:1m/分の条件で圧延を行い、二枚の基材に一次シートが挟まれてなる積層体(一次積層体)を得た。
合計6kgの粉体組成物を成型して一次シート(一次積層体)を得るのに要した時間をT(分)として、生産性を評価した。また、得られた一次積層体の状態を確認し、作業性を評価した。そして、得られた一次積層体から二枚の基材を剥離して、複合材料シート(一次シート、厚み:1500μm)の密度、表面粗さ、およびMD方向の熱拡散率を評価した。結果は何れも表1に示す。
一方、表1より、第一の加圧工程のみを経て複合材料シートを製造した比較例1では、同じ厚みの複合材料シートを製造した実施例1〜4および6〜8に比して、複合材料シートの密度が低下してしまうことが分かる。
また、表1より、第一の加圧工程(A)と(B)により2枚の一次シートを作製し、第二の加圧工程で2枚の1次シートを重ねて圧延して複合材料シートを製造した比較例2では、生産性が低下してしまうことが分かる。比較例2の生産性の低下は、2枚の一次シートを、これらの間にエアーが噛み込まれないよう積層するのが困難であることに起因する。
さらに、表1より、第一の加圧工程のみを経て複合材料シートを製造した比較例3では、同じ厚みの複合材料シートを製造した実施例5に比して、複合材料シートの密度およびMD方向の熱拡散率が低下してしまうことが分かる。
Claims (3)
- 第一の樹脂と第一の無機粒子を含有する第一の粉体組成物を加圧して一次シートを得る工程と、
前記一次シートを、第二の樹脂と第二の無機粒子を含有する第二の粉体組成物と共に加圧する工程と、
を含む、複合材料シートの製造方法。 - 前記第一の粉体組成物が、前記第一の樹脂と前記第一の無機粒子が複合化された第一の複合粒子を含み、前記第一の粉体組成物の重量平均粒子径が1mm以上4mm以下であり、且つ、
前記第二の粉体組成物が、前記第二の樹脂と前記第二の無機粒子が複合化された第二の複合粒子を含み、前記第二の粉体組成物の重量平均粒子径が1mm以上4mm以下である、請求項1に記載の複合材料シートの製造方法。 - 前記第一の粉体組成物を加圧する際の加圧温度が50℃以上90℃以下であり、且つ、
前記一次シートを前記第二の粉体組成物と共に加圧する際の加圧温度が、50℃以上90℃以下である、請求項1または2に記載の複合材料シートの製造方法。
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