JP7119386B2 - 複合材料シートの製造方法 - Google Patents
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Description
しかしながら、特許文献1に記載の方法において、粉砕条件を変更して比較的大きいサイズの粉体(例えば、粉体の重量平均粒子径が2mm程度)を準備し、当該粉体を圧延すると、得られる複合材料シート表面の起伏が激しくなり(すなわち、複合材料シートの平滑性が低下し)、シートの外観が損なわれるという新たな問題が生じた。
前記粉体組成物は、樹脂と無機粒子とが複合化された複合粒子を含有し、重量平均粒子径が1mm以上4mm以下であり、
複数回行う前記圧延ごとの一対のロールの間隙幅の中で、最大の間隙幅をCmax、最小の間隙幅をCminとした場合、下記式(I)で算出される間隙差が0μm以上200μm以下である、ことを特徴とする。
間隙差=Cmax-Cmin・・・(I)
このように、樹脂と無機粒子とを含む複合材料シートを製造する際の材料として、重量平均粒子径が上記範囲内であり且つ樹脂と無機粒子が複合化された複合粒子を含有する粉体組成物を使用すると共に、当該粉体組成物を上記式(I)が成立する条件下で複数回圧延すれば、粉飛散や粉落ちを抑制して高い製造効率で複合材料シートを製造することができ、また得られる複合材料シートの平滑性を確保することができる。
なお、本発明において、粉体組成物の重量平均粒子径は、本明細書の実施例に記載したふるい分級による測定方法に従って測定することができる。
また、本発明において、一対のロールの間隙幅とは、2つのロールの表面が最も接近する箇所における当該2つのロールの表面の間の距離をいい、隙間ゲージを用いて測定することができる。
ここで、本発明において、複数回行う各圧延で間隙幅が全て同一の値である場合、最大の間隙幅Cmaxおよび最小の間隙幅Cminは何れも当該同一の値であるものとする(即ち、間隙差は0μmであるものとする)。
なお、本発明において、ロール温度とは、圧延に用いる2つのロールの表面温度の平均値である。
本発明の複合材料シートの製造方法は、樹脂と無機粒子を含む複合材料シートを製造する際に用いることができる。
なお、本発明の製造方法は、圧延成形工程以外の工程(その他の工程)を含んでいてもよい。
本発明の製造方法に用いる粉体組成物は、樹脂と無機粒子とが複合化された複合粒子を含む組成物である。ここで、粉体組成物は、複合粒子以外の成分を含んでいてもよい。複合粒子以外の成分としては、例えば、複合粒子を含む粉体組成物の製造過程において複合粒子に包含されず、複合粒子とは別個に存在する樹脂、無機粒子、後述するその他の成分が挙げられる。しかしながら、本発明の製造方法に用いる粉体組成物中における複合粒子以外の成分の含有割合は、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることが更に好ましく、0質量%以下である(即ち、粉体組成物は複合粒子のみからなる)ことが特に好ましい。
粉体組成物に含まれる複合粒子は、少なくとも、樹脂と無機粒子とが複合化されてなる粒子である。即ち、樹脂と無機粒子とが物理的に一体となることで、複合粒子を形成する。なお、複合粒子には、樹脂および無機粒子に加え、その他の成分が複合化されていてもよい。
複合粒子に含まれる樹脂としては、特に限定されず、任意の樹脂を用いることができる。例えば、樹脂としては、液状樹脂および固体樹脂の何れも用いることができるが、複合材料シートの製造効率を高めつつ、当該シートの平滑性を十分に確保する観点から、液状樹脂が好ましい。なお、樹脂は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
液状樹脂としては、常温常圧下で液体である限り、特に限定されることなく、例えば、常温常圧下で液体の熱可塑性樹脂を用いることができる。
なお、本発明において、「常温」とは23℃を指し、「常圧」とは、1atm(絶対圧)を指す。
固体樹脂としては、常温常圧下で液体でない限り、特に限定されることなく、例えば、常温常圧下で固体の熱可塑性樹脂、常温常圧下で固体の熱硬化性樹脂、を用いることができる。
常温常圧下で固体の熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリ(アクリル酸2-エチルヘキシル)、アクリル酸とアクリル酸2-エチルヘキシルとの共重合体、ポリメタクリル酸またはそのエステル、ポリアクリル酸またはそのエステルなどのアクリル樹脂;シリコーン樹脂;フッ素樹脂;ポリエチレン;ポリプロピレン;エチレン-プロピレン共重合体;ポリメチルペンテン;ポリ塩化ビニル;ポリ塩化ビニリデン;ポリ酢酸ビニル;エチレン-酢酸ビニル共重合体;ポリビニルアルコール;ポリアセタール;ポリエチレンテレフタレート;ポリブチレンテレフタレート;ポリエチレンナフタレート;ポリスチレン;ポリアクリロニトリル;スチレン-アクリロニトリル共重合体;アクリロニトリル-ブタジエン共重合体(ニトリルゴム);アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂);スチレン-ブタジエンブロック共重合体またはその水素添加物;スチレン-イソプレンブロック共重合体またはその水素添加物;ポリフェニレンエーテル;変性ポリフェニレンエーテル;脂肪族ポリアミド類;芳香族ポリアミド類;ポリアミドイミド;ポリカーボネート;ポリフェニレンスルフィド;ポリサルホン;ポリエーテルサルホン;ポリエーテルニトリル;ポリエーテルケトン;ポリケトン;ポリウレタン;液晶ポリマー;アイオノマー;などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
なお、本発明において、ゴムは、「樹脂」に含まれるものとする。
常温常圧下で固体の熱硬化性樹脂としては、例えば、天然ゴム;ブタジエンゴム;イソプレンゴム;ニトリルゴム;水素化ニトリルゴム;クロロプレンゴム;エチレンプロピレンゴム;塩素化ポリエチレン;クロロスルホン化ポリエチレン;ブチルゴム;ハロゲン化ブチルゴム;ポリイソブチレンゴム;エポキシ樹脂;ポリイミド樹脂;ビスマレイミド樹脂;ベンゾシクロブテン樹脂;フェノール樹脂;不飽和ポリエステル;ジアリルフタレート樹脂;ポリイミドシリコーン樹脂;ポリウレタン;熱硬化型ポリフェニレンエーテル;熱硬化型変性ポリフェニレンエーテル;などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
複合粒子を含む粉体組成物中の樹脂の含有割合は、特に制限されることなく、35質量%以上であることが好ましく、95質量%以下であることが好ましい。粉体組成物中に占める樹脂の割合が35質量%以上であれば、複合粒子を含む粉体組成物を複合材料シートに成形する際の加工性を向上させることができる。一方、粉体組成物中に占める樹脂の割合が95質量%以下であれば、複合粒子を含む粉体組成物のブロッキングを抑制することができる。
また、樹脂中における液状樹脂の含有割合は、特に制限されることなく、60質量%以上であることが好ましく、90質量%以下であることが好ましい。樹脂中に占める液状樹脂の含有割合が60質量%以上であれば、複合粒子を含む粉体組成物を複合材料シートに成形する際の加工性を向上させつつ、得られる複合材料シートの平滑性を十分に確保することができる。一方、樹脂中に占める液状樹脂の含有割合が90質量%以下であれば、複合粒子のブロッキングを抑制することができる。
複合粒子に含まれる無機粒子としては、特に限定されることなく、複合粒子を含む粉体組成物を用いて得られる複合材料シートに付与したい所望の特性を発揮し得る任意の無機粒子とすることができる。このような無機粒子としては、例えば、粒子状炭素材料、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、酸化チタンが挙げられる。なお、無機粒子は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
そして、例えば、複合材料シートに高い熱伝導性を付与する場合には、上述した中でも、無機粒子が、粒子状炭素材料、窒化ホウ素、および/または窒化アルミニウムであることが好ましい。また、例えば、複合材料シートに高い光反射性を付与する場合には、上述した中でも、無機粒子が酸化チタンであることが好ましい。
以下、本発明の製造方法により得られる複合材料シートを、熱伝導シートとして使用する例について記載する場合があるが、本発明はこの一例に限られない。
粒子状炭素材料としては、特に限定されることなく、例えば、人造黒鉛、鱗片状黒鉛、薄片化黒鉛、天然黒鉛、酸処理黒鉛、膨張性黒鉛、膨張化黒鉛などの黒鉛;カーボンブラック;などを用いることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
中でも、粒子状炭素材料としては、膨張化黒鉛を用いることが好ましい。膨張化黒鉛を使用すれば、複合材料シートの熱伝導性を向上させることができる。
ここで、無機粒子の粒子径は、体積平均粒子径で、150μm以上であることが好ましく、200μm以上であることがより好ましく、400μm以下であることが好ましく、300μm以下であることがより好ましい。無機粒子の粒子径が150μm以上であれば、得られる複合材料シートの強度を向上させることができる。一方、無機粒子の粒子径が400μm以下であれば、例えば、液状樹脂および無機粒子を混合する際の混合容易性を高めることができ、また、複合粒子を含む粉体組成物をシート化する際の成形性を向上させることができる。
なお、本発明において、「体積平均粒子径」は、例えば、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置(堀場製作所製、型式「LA-960」)を用いて、レーザー回折法を用いて測定された粒子径分布において、小径側から計算した累積体積が50%となるときの粒子径(D50)として求めることができる。
ここで、無機粒子の体積平均粒子径を測定する際には、特に限定されることなく、例えば、粉体組成物(複合粒子)に含まれている樹脂に対する良溶媒を用いて樹脂を溶解させる、または、樹脂を熱分解させる等の任意の手法を用いて、粉体組成物(複合粒子)を調製する際に用いる複合混合物から無機粒子を取り出して行うことができる。
複合粒子を含む粉体組成物中の無機粒子の含有割合は、特に制限されることなく、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、50質量%以下であることが好ましく、45質量%以下であることがより好ましい。粉体組成物中に占める無機粒子の割合が5質量%以上であれば、得られる複合材料シートに、熱伝導性などの所望の特性を十分に発揮させることができる。一方、粉体組成物中に占める無機粒子の割合が50質量%以下であれば、複合粒子を含む粉体組成物を複合材料シートに成形する際の加工性を向上させることができる。
複合粒子が更に含み得るその他の成分としては、カーボンナノチューブ(CNT)等の繊維状炭素材料や、任意の添加剤が挙げられる。添加剤としては、特に限定されることなく、例えば、脂肪酸エステルなどの可塑剤;赤リン系難燃剤、リン酸エステル系難燃剤などの難燃剤;フッ素オイル(ダイキン工業株式会社製のデムナムシリーズ)のように可塑剤と難燃剤とを兼ねる添加剤;ウレタンアクリレートなどの靭性改良剤;酸化カルシウム、酸化マグネシウムなどの吸湿剤;シランカップリング剤、チタンカップリング剤、酸無水物などの接着力向上剤;ノニオン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤などの濡れ性向上剤;無機イオン交換体などのイオントラップ剤;等が挙げられる。なお、その他の成分は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
複合粒子を含む粉体組成物の調製方法は、樹脂と無機粒子を複合化させることができ、そして、重量平均粒子径が1mm以上4mm以下の粉体組成物を得ることができれば、特に限定されない。粉体組成物は、例えば、樹脂および無機粒子を複合化して複合混合物を得る工程(複合工程)と、複合工程において得られた複合混合物を粉砕する工程(粉砕工程)を経て製造することができる。
複合工程では、樹脂と、無機粒子と、任意に用いられるその他の成分とを複合化して複合混合物を得る。複合化の方法としては、特に限定されないが、上述した成分をニーダーなどの既知の混練装置を用いて混練する方法が好ましい。混練は、酢酸エチルやメチルエチルケトン等の溶媒の存在下で行ってもよい。また、混練温度は、例えば5℃以上200℃以下とすることができる。
粉砕工程では、複合工程で得られた複合混合物を粉砕することで、複合粒子を含む粉体組成物を得る。複合混合物を粉砕する方法としては、特に限定されず、既知の粉砕装置を用いて行うことができる。
なお、粉砕工程時に追添加する無機粒子は、複合混合物に含まれる無機粒子と同じ種類の無機粒子であってもよく、異なる種類の無機粒子であってもよい。
複合粒子を含む粉体組成物は、重量平均粒子径が、1mm以上4mm以下の範囲内であることが必要であり、2mm以上3mm以下であることが好ましい。粉体組成物の重量平均粒子径が1mm未満であると、粉飛散や粉落ちが抑制できず、複合材料シートを効率良く製造することができない。また、粉体組成物を基材と共に圧延した場合に、得られる複合材料シートから基材を剥離するのが困難となる。一方、粉体組成物の重量平均粒子径が4mm超であると、複数回圧延した場合であっても得られる複合材料シートの平滑性を確保することが難しくなり、また当該シートの強度が低下する。
そして、圧延成形工程において、上述した粉体組成物を一対のロール間の間隙(ロール間隙)を通過させて複数回圧延する。この複数回の圧延において、圧延対象である粉体組成物の厚みは、通常、圧延ごとに小さくなる。そして、複数回の圧延を経て、粉体組成物を所望の厚みを有する複合材料シートに成形することができる。複合材料シートの厚みは、複合材料シートの用途などに応じて適宜設定しうるが、例えば、100μm以上2000μm以下とすることができる。
ここで、複数回の圧延においては、圧延ごとにロール間隙の幅(間隙幅)を設定する。そして、複数回の圧延におけるそれぞれの間隙幅のうち、最大の間隙幅をCmax、最小の間隙幅をCminとした場合、上述した式(I)で求められる間隙差(Cmax-Cmin)が、0μm以上200μm以下である必要がある。間隙差が200μmを越えると、得られる複合材料シートの平滑性を確保することができない。また、間隙差が200μmを越えると、前段階で比較的厚く成型したシートを無理に薄膜に成型する必要が生じる。そのため成形時に基材であるフィルムに対する負荷がかかって基材が変形する等の現象が起こり、結果として搬送が困難になる場合がある。
なお、最大の間隙幅Cmaxは、例えば、250μm以上とすることができ、300μm以上とすることができ、350μm以上とすることができ、700μm以下とすることができ、600μm以下とすることができ、500μm以下とすることができる。
また、最小の間隙幅Cminは、例えば、50μm以上とすることができ、100μm以上とすることができ、150μm以上とすることができ、500μm以下とすることができ、400μm以下とすることができ、300μm以下とすることができる。
また、二回目以降の圧延の間隙幅は、特に限定されないが、直前の圧延の間隙幅以下であることが好ましく、直前の圧延の間隙幅未満であることがより好ましい。例えば、二回目の圧延の間隙幅は、一回目の圧延の間隙幅以下であることが好ましく、一回目の圧延の間隙幅未満であることがより好ましい。また例えば、三回目の圧延の間隙幅は、二回目の圧延の間隙幅以下であることが好ましく、二回目の圧延の間隙幅未満であることがより好ましい。
圧延回数は、複合材料シートの製造効率を確保しつつ、圧延成形工程後に得られる複合材料シートから基材を良好に剥離する観点からは、圧延回数は少ない方が好ましい。一方で、得られる複合材料シートの平滑性を十分に確保すると共に、無機粒子をMD方向に良好に配向させる観点からは、圧延回数は多い方が好ましい。このような観点から、圧延回数は二回又は三回であることが好ましく、特に製造効率を十分に確保する観点から、二回であることがより好ましい。
ロール温度は、特に限定されないが、複数回行う圧延のうち、少なくとも一回の圧延のロール温度が50℃以上であることが好ましい。そして、複数回行う圧延のロール温度の何れもが、50℃以上であることが好ましく、50℃以上90℃以下であることがより好ましい。ロール温度を50℃以上とすれば、粉体組成物を良好に圧延して、得られる複合材料シートの平滑性を十分に確保することができる。また、得られる複合材料シート中で無機粒子をMD方向に良好に配向させることができる。一方、ロール温度90℃以下とすれば、粉体組成物の過度な流動性上昇を抑制して、得られる複合材料シートの平滑性を十分に確保することができる。また、粉体組成物に良好にせん断をかけることが可能となり、無機粒子をMD方向に良好に配向させることができる。加えて、粉体組成物を基材と共に圧延した場合には、基材の熱変形を防ぐことができる。
また、特に二回目以降の圧延におけるロール温度は、50℃以上であることが好ましく、60℃以上であることがより好ましく、70℃以上であることが更に好ましく、100℃以下であることが好ましく、90℃以下であることがより好ましく、80℃以下であることが更に好ましい。二回目以降の圧延におけるロール温度が上述した範囲内であれば、粉体組成物に良好にせん断をかけることが可能となり、無機粒子をMD方向に良好に配向させることができる。
上述した圧延成形工程以外に、本発明の製造方法が含み得るその他の工程は特に限定されない。例えば、圧延成形工程において粉体組成物を二枚の基材間に挟持して圧延を行った場合、本発明の製造方法は、圧延成形工程後に、複合材料シートから二枚の基材を剥離する工程(剥離工程)を含んでいてもよい。
そして、実施例および比較例において、粉体組成物の重量平均粒子径、複合材料シートの表面粗さおよびMD方向の熱拡散率、複合材料シートと基材の剥離性は、それぞれ以下の方法に従って測定または評価した。
粉体組成物の重量平均粒子径は、以下の手順により音波式ふるい分け粒度分布測定器(セイシン企業社製「PRS-105」)を用いて粒度分布を測定して、得られたデータを元に算出した。
音波強度60、周波数51Hz、立ち上げ時間0.1分、分級時間3.0分の条件で、粉体組成物3g~5g程度を分級した。使用したふるいの目開きは、上から5600μm、4750μm、4000μm、3350μm、2360μm、1700μm、1000μm、500μmであった。各ふるい上に留まった粉体組成物の重量を測定し、それぞれのふるいにおける粉体組成物の累積重量(当該ふるい上に留まった粉体組成物の重量と、当該ふるいより上側のふるい上に留まった粉体組成物の重量との合計)を算出した。次いで、ふるいの目開き(μm)を横軸、粉体組成物全体の重量に占める累積重量の割合(%)を縦軸にプロットし、互いに隣接するプロットを直線で結び、折れ線グラフを得た。この折れ線グラフ上で、縦軸の値が50%となる横軸の値(μm)を、重量平均粒子径とした。
<表面粗さ>
複合材料シートについて、25mm×25mmの範囲のシート厚みを、形状測定機(株式会社キーエンス製、製品名「高精度形状測定システムKS-1100」)を用いて測定ピッチ100μmで測定した。測定結果から得られたシート厚みのσ(μm)を、表面粗さの指標とした。σの値が小さい程、複合材料シートが平滑性に優れることを示す。
<MD方向の熱拡散率>
複合材料シートのMD方向の熱拡散率(m2/s)を、熱物性測定装置(株式会社ベテル製「サーモウェーブアナライザTA35」)を使用して測定した。MD方向の熱拡散率の値が大きい程、ロールのせん断を受けて、無機粒子である膨張化黒鉛がより良好にMD方向に配向していると解釈することができる。
<剥離性>
二枚のPETフィルムに複合材料シートが挟まれてなる積層体について、圧延時に粉体組成物の上側に配置されていたPETフィルムを剥離し、試験体とした。この試験体のPETフィルムと複合材料シート間の剥離力(N/mm)を、引張り試験機(島津製作所社製、製品名「オートグラフAG-IS」)を用いて、剥離速度300mm/分、剥離角度180°の条件で測定した。剥離力の値が小さい程、基材であるPETフィルムを剥離し易いと解釈することができる。
A:剥離力0.1N/mm以下
B:剥離力0.1N/mm超
<粉体組成物(複合粒子)の調製>
常温常圧下で液体の熱可塑性フッ素樹脂(ダイキン工業社製、商品名「ダイエルG-101」)80部と、常温常圧下で固体の熱可塑性フッ素樹脂(スリーエムジャパン社製、商品名「ダイニオンFC2211」、ムーニー粘度:27ML1+4(100℃))20部と、粒子状炭素材料としての膨張化黒鉛(伊藤黒鉛工業社製、商品名「EC100」、重量平均粒子径:250μm)45部とを、加圧ニーダー(日本スピンドル社製)を用いて、温度150℃にて20分間撹拌混合して、複合混合物を得た。
得られた複合混合物を、粉砕装置としてのFMミキサ(日本コークス工業社製「FM150」)により回転速度2100rpmで粉砕しながら、上記と同様の膨張化黒鉛5部を更に投入し、材料温度を60℃に保った状態で撹拌して(撹拌熱で温度上昇するため装置温度は5℃とした)、複合粒子からなる粉体組成物を得た。
得られた粉体組成物の重量平均粒子径を測定したところ、2mmであった。
次いで、得られた複合粒子からなる粉体組成物5gを、基材としてのサンドブラスト処理を施したPETフィルム(厚み:50μm)二枚で挟み、間隙幅:400μm、ロール温度:70℃、ロール線圧:50kg/cm、ロール速度:1m/分の条件で一回目の圧延を行った。一回目の圧延後、間隙幅:300μm、ロール温度:70℃、ロール線圧:50kg/cm、ロール速度:1m/分の条件で二回目の圧延を行い、二枚のPETフィルムに複合材料シートが挟まれてなる積層体を得た。なお、ロール温度は、ロール内に設置した熱電対でロール内部の温度を調整することにより所望の値に制御した(以下同じ)。
得られた積層体を用いて、複合材料シートと基材の剥離性を評価した。また、基材剥離後の複合材料シート(厚み:500μm)について、表面粗さおよびMD方向の熱拡散率を評価した。結果を表1に示す。
なお、複合粒子を含み且つ重量平均粒子径が2mmの粉体組成物を用いたため、複合材料シートの製造段階における粉飛散や粉落ちが十分に抑制されていることを確認した。(同様の粉体組成物を用いた実施例2~8、並びに比較例1および4について同じ。)
複合材料シートの形成に際し、一回目の圧延の間隙幅を350μm、二回目の圧延の間隙幅を350μmに変更した以外は、実施例1と同様にして、複合粒子からなる粉体組成物の調製、および複合材料シートの形成を行った。
そして、実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
複合材料シートの形成に際し、一回目の圧延の間隙幅を375μm、二回目の圧延の間隙幅を325μmに変更した以外は、実施例1と同様にして、複合粒子からなる粉体組成物の調製、および複合材料シートの形成を行った。
そして、実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
複合材料シートの形成に際し、一回目の圧延の間隙幅を425μm、二回目の圧延の間隙幅を275μmに変更した以外は、実施例1と同様にして、複合粒子からなる粉体組成物の調製、および複合材料シートの形成を行った。
そして、実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
複合材料シートの形成に際し、一回目の圧延の間隙幅を450μm、二回目の圧延の間隙幅を250μmに変更し、また二回目の圧延のロール温度を90℃に変更した以外は、実施例1と同様にして、複合粒子からなる粉体組成物の調製、および複合材料シートの形成を行った。
そして、実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
複合材料シートの形成に際し、二回目の圧延のロール温度を50℃に変更した以外は、実施例1と同様にして、複合粒子からなる粉体組成物の調製、および複合材料シートの形成を行った。
そして、実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
複合材料シートの形成に際し、一回目の圧延のロール温度を50℃に変更した以外は、実施例1と同様にして、複合粒子からなる粉体組成物の調製、および、複合材料シートの形成を行った。
そして、実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
<粉体組成物(複合粒子)の調製>
実施例1と同様にして、複合粒子からなる粉体組成物(重量平均粒子径:2mm)を得た。
次いで、得られた複合粒子からなる粉体組成物5gを、基材としてのサンドブラスト処理を施したPETフィルム(厚み:50μm)二枚で挟み、間隙幅:450μm、ロール温度:70℃、ロール線圧:50kg/cm、ロール速度:1m/分の条件で一回目の圧延を行った。一回目の圧延後、間隙幅:350μm、ロール温度:70℃、ロール線圧50kg/cm、ロール速度:1m/分の条件で二回目の圧延を行った。二回目の圧延後、間隙幅:250μm、ロール温度:70℃、ロール線圧50kg/cm、ロール速度:1m/分の条件で三回目の圧延を行い、二枚のPETフィルムに複合材料シートが挟まれてなる積層体を得た。
得られた積層体を用いて、複合材料シートと基材の剥離性を評価した。また、基材剥離後の複合材料シート(厚み:500μm)について、表面粗さおよびMD方向の熱拡散率を評価した。結果を表1に示す。
<粉体組成物(複合粒子)の調製>
実施例1と同様にして、複合粒子からなる粉体組成物(重量平均粒子径:2mm)を得た。
<複合材料シートの形成(一回圧延)>
次いで、得られた複合粒子からなる粉体組成物5gを、基材としてのサンドブラスト処理を施したPETフィルム(厚み:50μm)二枚で挟み、間隙幅:350μm、ロール温度:70℃、ロール線圧:50kg/cm、ロール速度:1m/分の条件にて圧延を行い、二枚のPETフィルムに複合材料シートが挟まれてなる積層体を得た
得られた積層体を用いて、複合材料シートと基材の剥離性を評価した。また、基材剥離後の複合材料シート(厚み:500μm)について、表面粗さおよびMD方向の熱拡散率を評価した。結果を表1に示す。
<粉体組成物の調製>
繊維状の炭素ナノ構造体(スーパーグロース法(国際公開第2006/011655号参照)により得られたカーボンナノチューブ(SGCNT)、日本ゼオン社製、比表面積:600m2/g)を400mg量り取り、溶媒としてのメチルエチルケトン2L中に混ぜ、ホモジナイザーにより2分間撹拌し、粗分散液を得た。次に、湿式ジェットミル(常光社製「JN-20」)を使用し、得られた粗分散液を湿式ジェットミルの0.5mmの流路に100MPaの圧力で2サイクル通過させて、繊維状の炭素ナノ構造体をメチルエチルケトンに分散させた。そして、固形分濃度0.20質量%の分散液を得た。
その後、上述で得られた分散液をキリヤマろ紙(No.5A)を用いて減圧ろ過し、繊維状炭素材料としての、シート状の繊維状の炭素ナノ構造体の易分散性集合体を得た。
次いで、常温常圧下で液体の熱可塑性フッ素樹脂(ダイキン工業社製、商品名「ダイエルG-101」)70部と、常温常圧下で固体の熱可塑性フッ素樹脂(スリーエムジャパン社製、商品名「ダイニオンFC2211」、ムーニー粘度:27ML1+4(100℃))30部と、粒子状炭素材料としての膨張化黒鉛(伊藤黒鉛工業社製、商品名「EC50」、体積平均粒子径:250μm)50部と、繊維状炭素材料としての上述で得られた繊維状の炭素ナノ構造体の易分散性集合体0.5部とを、加圧ニーダー(日本スピンドル社製)を用いて、温度150℃にて20分間撹拌混合した。次に、得られた混合物を粉砕装置に投入して、10秒間粉砕することにより、粉体組成物を得た。
得られた粉体組成物の重量平均粒子径を測定したところ、1mm未満であった。
<複合材料シートの形成(二回圧延)>
粉体組成物(重量平均粒子径:2mm)に替えて、上述のようにして得られた粉体組成物(重量平均粒子径:1mm未満)を使用した以外は、実施例1と同様にして、複合材料シートの形成を行った。
得られた積層体を用いて、複合材料シートと基材の剥離性を評価した。また、基材剥離後の複合材料シート(厚み:500μm)について、表面粗さおよびMD方向の熱拡散率を評価した。結果を表1に示す。
なお、重量平均粒子径が1mm未満の粉体組成物を用いたため、複合材料シートの製造段階における粉飛散や粉落ちを十分に抑制することはできなかった。(同様の粉体組成物を用いた比較例3について同じ。)
<粉体組成物の調製>
比較例2と同様にして、粉体組成物(重量平均粒子径:1mm未満)を得た。
<複合材料シートの形成(一回圧延)>
得られた粉体組成物5gを、基材としてのサンドブラスト処理を施したPETフィルム(厚み:50μm)二枚で挟み、間隙幅:350μm、ロール温度:70℃、ロール線圧:50kg/cm、ロール速度:1m/分の条件にて圧延を行い、二枚のPETフィルムに複合材料シートが挟まれてなる積層体を得た。
得られた積層体を用いて、複合材料シートと基材の剥離性を評価した。また、基材剥離後の複合材料シート(厚み:500μm)について、表面粗さおよびMD方向の熱拡散率を評価した。結果を表1に示す。
<粉体組成物(複合粒子)の調製>
実施例1と同様にして、複合粒子からなる粉体組成物(重量平均粒子径:2mm)を得た。
<複合材料シートの形成(二回圧延)>
一回目の圧延の間隙幅を475μm、二回目の圧延の間隙幅を225μmに変更した以外は、実施例1と同様にして複合材料シートの形成を試みた。しかしながら、間隙差が250μmと大きくロールおよび圧延装置に過度な負荷がかかるためと考えられるが、二枚のPETシートに挟まれた粉体組成物の搬送が困難であり、粉体組成物を良好なシート状に成形することができなかった。
Claims (4)
- 複合材料シートの製造方法であって、
粉体組成物を、一対のロール間の間隙を通過させる圧延を、材料を追加せずに複数回行うことによりシート状に成形する圧延成形工程を含み、
前記粉体組成物は、樹脂と無機粒子とが複合化された複合粒子を含有し、重量平均粒子径が1mm以上4mm以下であり、
複数回行う前記圧延ごとの一対のロールの間隙幅の中で、最大の間隙幅をCmax、最小の間隙幅をCminとした場合、下記式(I)で算出される間隙差が0μm以上200μm以下である、複合材料シートの製造方法。
間隙差=Cmax-Cmin・・・(I) - 複数回行う前記圧延のうち、少なくとも一回の圧延を、ロール温度50℃以上で行う、請求項1に記載の複合材料シートの製造方法。
- 複数回行う前記圧延の全てを、ロール温度50℃以上90℃以下で行う、請求項1に記載の複合材料シートの製造方法。
- 前記間隙差が10μm以上200μm以下である、請求項1~3の何れかに記載の複合材料シートの製造方法。
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