JP2017088792A - 複合粒子およびその製造方法、複合材料シートおよびその製造方法、並びに、熱伝導シートの製造方法 - Google Patents

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大介 内海
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Abstract

【課題】成形体の熱伝導性などを更に向上させ得る複合材料および熱伝導性などに優れる成形体を提供する。
【解決手段】樹脂と、粒子状炭素材料と、繊維状炭素ナノ構造体とを含有する複合粒子であって、繊維状炭素ナノ構造体が表層部に偏在している、複合粒子。樹脂と、粒子状炭素材料とを含有する粒子本体を調製する工程と、粒子本体の表面に繊維状炭素ナノ構造体を付着させる工程とを含む、複合粒子の製造方法。複合粒子を含むシート材料を加圧してシート状に成形する工程を含む、複合材料シートの製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、複合粒子および複合粒子の製造方法、複合材料シートおよび複合材料シートの製造方法、並びに、熱伝導シートの製造方法に関するものである。
近年、導電性、熱伝導性および機械的特性などの各種特性に優れる材料として、樹脂と、カーボンナノチューブ(以下、「CNT」と称することがある。)等の繊維状炭素ナノ構造体とを複合化してなる複合材料が注目されている。
そして、例えば特許文献1には、CNTの分散液とゴムのラテックスとの混合物中の固形分を凝固させて得た複合材料を成形することにより、導電性に優れる成形体を得る技術が開示されている。
また、例えば特許文献2には、エラストマーと、磁性金属粒子と、CNTとをオープンロールで混練して得た複合材料を成形することにより、強度に優れる成形体を得る技術が開示されている。
国際公開第2013/080912号 特開2005−200594号公報
ここで、近年、複合材料を用いて形成した成形体には、熱伝導性および導電性などの特性を更に向上させることが求められている。
そこで、本発明は、成形体の熱伝導性などを更に向上させ得る複合材料および熱伝導性などに優れる成形体を提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決することを目的として鋭意検討を行った。そして、本発明者は、樹脂と、粒子状炭素材料と、繊維状炭素ナノ構造体とを含有する複合粒子であって表層部に繊維状炭素ナノ構造体を偏在させた複合粒子を加圧成形してなるシートが優れた熱伝導性を発揮することを見出し、本発明を完成させた。
即ち、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の複合粒子は、樹脂と、粒子状炭素材料と、繊維状炭素ナノ構造体とを含有する複合粒子であって、前記繊維状炭素ナノ構造体が表層部に偏在していることを特徴とする。このように、樹脂と、粒子状炭素材料と、繊維状炭素ナノ構造体とを含有させ、且つ、繊維状炭素ナノ構造体を表層部に偏在させれば、複合粒子を用いて形成した成形体の熱伝導性を十分に向上させることができる。
また、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の複合粒子の製造方法は、樹脂と、粒子状炭素材料と、繊維状炭素ナノ構造体とを含有する複合粒子の製造方法であって、樹脂と、粒子状炭素材料とを含有する粒子本体を調製する工程(A)と、前記粒子本体の表面に繊維状炭素ナノ構造体を付着させる工程(B)とを含むことを特徴とする。このように、樹脂および粒子状炭素材料を含有する粒子本体の表面に繊維状炭素ナノ構造体を付着させれば、熱伝導性に優れる成形体の形成に使用し得る複合粒子が容易に得られる。
ここで、本発明の複合粒子の製造方法は、前記工程(B)が、繊維状炭素ナノ構造体と分散媒とを含む分散液を前記粒子本体の表面に塗布する工程(C)と、塗布した分散液を乾燥させる工程(D)とを含むことが好ましい。繊維状炭素ナノ構造体と分散媒とを含む分散液を塗布および乾燥させれば、粒子本体の表面に繊維状炭素ナノ構造体を容易かつ良好に付着させることができる。
そして、前記分散液中の前記繊維状炭素ナノ構造体の平均粒子径は、100μm以下であることが好ましく、5μm以上であることがより好ましく、10μm以上であることが更に好ましい。分散液中の繊維状炭素ナノ構造体の平均粒子径が上記範囲内であれば、製造される複合粒子を用いて形成した成形体の熱伝導性を更に向上させることができる。
なお、本発明において、「分散液中の繊維状炭素ナノ構造体の平均粒子径」とは、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置を用いて測定した体積基準のモード径を指す。
また、前記分散液中の分散剤の量は、前記繊維状炭素ナノ構造体100質量部当たり30質量部以下であることが好ましい。分散液中の分散剤の量が繊維状炭素ナノ構造体100質量部当たり30質量部以下であれば、製造される複合粒子を用いて形成した成形体の熱伝導性を更に向上させることができる。
更に、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の複合材料シートの製造方法は、樹脂と、粒子状炭素材料と、繊維状炭素ナノ構造体とを含有する複合材料シートの製造方法であって、上述した複合粒子または上述した複合粒子の製造方法の何れかを用いて製造した複合粒子を含むシート材料を加圧してシート状に成形する工程を含むことを特徴とする。このように、上述した複合粒子を含むシート材料を加圧してシート状に成形すれば、特に面内方向の熱伝導性に優れる複合材料シートを得ることができる。
また、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の熱伝導シートの製造方法は、上述した複合材料シートの製造方法を用いて製造した複合材料シートを厚み方向に複数枚積層して、或いは、前記複合材料シートを折畳または捲回して、積層体を得る工程と、前記積層体を、積層方向に対して45°以下の角度でスライスし、熱伝導シートを得る工程とを含むことを特徴とする。このように、上述した複合材料シートよりなる積層体を積層方向に対して45°以下の角度でスライスすれば、特に厚み方向の熱伝導性に優れる熱伝導シートを容易に製造することができる。
そして、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の複合材料シートは、樹脂と、粒子状炭素材料と、繊維状炭素ナノ構造体とを含有する複合材料シートであって、L値が47以下であることを特徴とする。
ここで、前記粒子状炭素材料は、膨張化黒鉛であることが好ましい。
なお、本発明において、「L値」は、JIS Z8729に準拠し、色彩色差計を用いて測定することができる。
本発明によれば、熱伝導性に優れる成形体の形成に使用し得る複合材料としての複合粒子が得られる。
また、本発明によれば、熱伝導性に優れる成形体として、複合材料シートおよび熱伝導シートが得られる。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
ここで、本発明の複合粒子は、シート等の成形体の形成に用いることができ、特に限定されることなく、例えば本発明の複合粒子の製造方法を用いて製造することができる。また、本発明の複合材料シートは、例えば本発明の複合材料シートの製造方法に従い、本発明の複合粒子を用いて製造することができる。そして、本発明の複合材料シートの製造方法により製造された複合材料シートは、本発明の熱伝導シートの製造方法に従って熱伝導シートを製造する際に用いることができる。
なお、本発明の製造方法に従って製造した複合材料シートおよび熱伝導シートは、熱伝導性、強度、導電性に優れている。従って、複合材料シートおよび熱伝導シートは、例えば、各種機器および装置などにおいて使用される放熱材料、放熱部品、冷却部品、温度調節部品、電磁シールド部品として好適である。ここで、各種機器および装置などとしては、特に限定されることなく、サーバー、サーバー用パソコン、デスクトップパソコン等の電子機器;ノートパソコン、電子辞書、PDA、携帯電話、ポータブル音楽プレイヤー等の携帯電子機器;液晶ディスプレイ(バックライトを含む)、プラズマディスプレイ、LED、有機EL、無機EL、液晶プロジェクタ、時計等の表示機器;インクジェットプリンタ(インクヘッド)、電子写真装置(現像装置、定着装置、ヒートローラ、ヒートベルト)等の画像形成装置;半導体素子、半導体パッケージ、半導体封止ケース、半導体ダイボンディング、CPU、メモリ、パワートランジスタ、パワートランジスタケース等の半導体関連部品;リジッド配線板、フレキシブル配線板、セラミック配線板、ビルドアップ配線板、多層基板等の配線基板(配線板にはプリント配線板なども含まれる);真空処理装置、半導体製造装置、表示機器製造装置等の製造装置;断熱材、真空断熱材、輻射断熱材等の断熱装置;DVD(光ピックアップ、レーザー発生装置、レーザー受光装置)、ハードディスクドライブ等のデータ記録機器;カメラ、ビデオカメラ、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、顕微鏡、CCD等の画像記録装置;充電装置、リチウムイオン電池、燃料電池等のバッテリー機器等が挙げられる。
(複合粒子)
本発明の複合粒子は、樹脂と、粒子状炭素材料と、繊維状炭素ナノ構造体とを含有しており、シート等の成形体を形成する際の材料(複合材料)として用いることができる。そして、本発明の複合粒子は、複合粒子の表層部に繊維状炭素ナノ構造体が偏在していることを特徴とする。
なお、本発明の複合粒子は、必要に応じて、シート等の成形体の形成に用いられる複合材料に一般に配合され得る既知の添加剤を含有することができる。
ここで、本発明の複合粒子は、樹脂と、粒子状炭素材料と、繊維状炭素ナノ構造体とを含有しており、且つ、表層部に繊維状炭素ナノ構造体が偏在しているので、複合粒子を用いて形成した成形体に優れた熱伝導性を発揮させることができる。この理由は、明らかではないが、以下の通りであると推察される。
即ち、一般に、樹脂と、粒子状炭素材料と、繊維状炭素ナノ構造体とを含有する複合材料を用いて形成した成形体では、粒子状炭素材料および繊維状炭素ナノ構造体が互いに接触して熱伝導性に優れる伝熱経路が形成されることにより、熱伝導率が向上する。しかし、樹脂中に粒子状炭素材料および繊維状炭素ナノ構造体が均一に分散した複合材料を用いて形成した成形体では、繊維状炭素ナノ構造体が樹脂で包埋されていまい、粒子状炭素材料と繊維状炭素ナノ構造体との接触が阻まれ、伝熱経路を良好に形成できない場合がある。一方で、樹脂粒子の表面に粒子状炭素材料および繊維状炭素ナノ構造体を偏在させた複合粒子(複合材料)を用いて形成した成形体では、成形体中で粒子状炭素材料および繊維状炭素ナノ構造体が偏在し、粒子状炭素材料および繊維状炭素ナノ構造体が偏在する領域では伝熱経路を良好に形成することができるものの、樹脂のみからなる領域(粒子状炭素材料および繊維状炭素ナノ構造体が存在しない領域)の割合も多くなるため、成形体全体としての熱伝導性を高めることができない。これに対し、樹脂と、粒子状炭素材料と、繊維状炭素ナノ構造体とを含有しており、且つ、表層部に繊維状炭素ナノ構造体が偏在している複合粒子を用いて形成した成形体では、成形体中で粒子状炭素材料を適度に分散させて樹脂のみからなる領域を低減しつつ繊維状炭素ナノ構造体を適度に偏在させることができるので、伝熱経路を良好に形成し、熱伝導性を高めることができる。
なお、粒子状炭素材料および繊維状炭素ナノ構造体により形成される伝熱経路は導電経路としても機能し得るので、本発明の複合粒子を用いて形成した成形体は導電性も向上すると推察される。
<樹脂>
複合粒子の樹脂としては、特に限定されることなく、シート等の成形体の形成に使用され得る既知の樹脂を用いることができる。具体的には、樹脂としては、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂を用いることができる。なお、本発明において、ゴムおよびエラストマーは、「樹脂」に含まれるものとする。また、熱可塑性樹脂と、熱硬化性樹脂とは併用してもよい。
[熱可塑性樹脂]
ここで、熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリ(アクリル酸2−エチルヘキシル)、アクリル酸とアクリル酸−2−エチルヘキシルとの共重合体、ポリメタクリル酸またはそのエステル、ポリアクリル酸またはそのエステルなどのアクリル樹脂;シリコーン樹脂;ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレンのアクリル変性物、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、ビニリデンフルオライド−テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体などのフッ素樹脂;ポリエチレン;ポリプロピレン;エチレン−プロピレン共重合体;ポリメチルペンテン;ポリ塩化ビニル;ポリ塩化ビニリデン;ポリ酢酸ビニル;エチレン−酢酸ビニル共重合体;ポリビニルアルコール;ポリアセタール;ポリエチレンテレフタレート;ポリブチレンテレフタレート;ポリエチレンナフタレート;ポリスチレン;ポリアクリロニトリル;スチレン−アクリロニトリル共重合体;アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂);スチレン−ブタジエンブロック共重合体またはその水素添加物;スチレン−イソプレンブロック共重合体またはその水素添加物;ポリフェニレンエーテル;変性ポリフェニレンエーテル;脂肪族ポリアミド類;芳香族ポリアミド類;ポリアミドイミド;ポリカーボネート;ポリフェニレンスルフィド;ポリサルホン;ポリエーテルサルホン;ポリエーテルニトリル;ポリエーテルケトン;ポリケトン;ポリウレタン;液晶ポリマー;アイオノマー;などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
[熱硬化性樹脂]
また、熱硬化性樹脂としては、例えば、天然ゴム;ブタジエンゴム;イソプレンゴム;ニトリルゴム;水素化ニトリルゴム;クロロプレンゴム;エチレンプロピレンゴム;塩素化ポリエチレン;クロロスルホン化ポリエチレン;ブチルゴム;ハロゲン化ブチルゴム;ポリイソブチレンゴム;エポキシ樹脂;ポリイミド樹脂;ビスマレイミド樹脂;ベンゾシクロブテン樹脂;フェノール樹脂;不飽和ポリエステル;ジアリルフタレート樹脂;ポリイミドシリコーン樹脂;ポリウレタン;熱硬化型ポリフェニレンエーテル;熱硬化型変性ポリフェニレンエーテル;などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
上述した中でも、複合粒子の樹脂としては、熱可塑性樹脂を用いることが好ましく、フッ素樹脂を用いることがより好ましい。フッ素樹脂などの熱可塑性樹脂を用いれば、複合粒子を用いて形成した成形体の柔軟性を更に向上させることができるからである。
<粒子状炭素材料>
複合粒子の粒子状炭素材料としては、特に限定されることなく、例えば、人造黒鉛、鱗片状黒鉛、薄片化黒鉛、天然黒鉛、酸処理黒鉛、膨張性黒鉛、膨張化黒鉛などの黒鉛;カーボンブラック;などを用いることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
中でも、粒子状炭素材料としては、膨張化黒鉛を用いることが好ましい。膨張化黒鉛を使用すれば、複合粒子を用いて形成した成形体の熱伝導性を更に向上させることができるからである。
[膨張化黒鉛]
ここで、粒子状炭素材料として好適に使用し得る膨張化黒鉛は、例えば、鱗片状黒鉛などの黒鉛を硫酸などで化学処理して得た膨張性黒鉛を、熱処理して膨張させた後、微細化することにより得ることができる。そして、膨張化黒鉛としては、例えば、伊藤黒鉛工業社製のEC1500、EC1000、EC500、EC300、EC100、EC50(いずれも商品名)等が挙げられる。
[粒子状炭素材料の性状]
ここで、複合粒子に含有されている粒子状炭素材料の平均粒子径は、0.1μm以上であることが好ましく、1μm以上であることがより好ましく、500μm以下であることが好ましく、250μm以下であることがより好ましい。粒子状炭素材料の平均粒子径が上記範囲内であれば、複合粒子を用いて形成した成形体の熱伝導性を更に向上させることができるからである。
また、本発明の複合粒子に含有されている粒子状炭素材料のアスペクト比(長径/短径)は、1以上10以下であることが好ましく、1以上5以下であることがより好ましい。
なお、本発明において「粒子状炭素材料の平均粒子径」とは、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置を用いて測定した体積基準のモード径を指す。また、本発明において、「アスペクト比」は、任意の50個の粒子状炭素材料について、SEM(走査型電子顕微鏡)を用いて最大径(長径)と、最大径に直交する方向の粒子径(短径)とを測定し、長径と短径の比(長径/短径)の平均値を算出することにより求めることができる。
ここで、複合粒子中に含まれている粒子状炭素材料の「平均粒子径」および「アスペクト比」の測定は、特に限定されることなく、例えば複合粒子に含まれている樹脂に対する良溶媒を用いて樹脂を溶解させる、または、樹脂を熱分解させる等の任意の手法を用いて複合粒子から粒子状炭素材料を取り出して行うことができる。
[粒子状炭素材料の配合量]
そして、複合粒子は、粒子状炭素材料の含有量が、樹脂100質量部当たり、50質量部以上であることが好ましく、80質量部以上であることがより好ましく、90質量部以上であることが更に好ましく、250部以下であることが好ましく、200質量部以下であることがより好ましく、180質量部以下であることが更に好ましい。樹脂100質量部当たりの粒子状炭素材料の含有量が50質量部以上であれば、複合粒子を用いて形成した成形体の熱伝導性を十分に高めることができる。また、樹脂100質量部当たりの粒子状炭素材料の含有量が250質量部以下であれば、成形体を良好に形成することができると共に、複合粒子を用いて形成した成形体の耐久性を十分に高めることができる。更に、複合粒子を用いて形成した成形体の硬度が上昇する(即ち、柔軟性が低下する)のを抑制することができる。
<繊維状炭素ナノ構造体>
複合粒子の繊維状炭素ナノ構造体としては、特に限定されることなく、熱伝導性を有する任意の繊維状炭素ナノ構造体を用いることができる。具体的には、繊維状炭素ナノ構造体としては、特に限定されることなく、例えば、カーボンナノチューブ(CNT)等の円筒形状の炭素ナノ構造体、および、炭素の六員環ネットワークが扁平筒状に形成されてなる炭素ナノ構造体等の非円筒形状の炭素ナノ構造体を用いることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
そして、上述した中でも、繊維状炭素ナノ構造体としては、CNTを含む繊維状炭素ナノ構造体を用いることがより好ましい。CNTを含む繊維状炭素ナノ構造体を使用すれば、複合粒子を用いて形成した成形体の熱伝導性を更に向上させることができるからである。
ここで、CNTを含む繊維状炭素ナノ構造体は、CNTのみからなるものであってもよいし、CNTと、CNT以外の繊維状炭素ナノ構造体との混合物であってもよい。
そして、繊維状炭素ナノ構造体中のCNTとしては、特に限定されることなく、単層カーボンナノチューブおよび/または多層カーボンナノチューブを用いることができるが、CNTは、単層から5層までのカーボンナノチューブであることが好ましく、単層カーボンナノチューブであることがより好ましい。カーボンナノチューブの層数が少ないほど、複合粒子を用いて形成した成形体の熱伝導性が向上するからである。
なお、CNTを含む繊維状炭素ナノ構造体は、特に限定されることなく、アーク放電法、レーザーアブレーション法、化学的気相成長法(CVD法)などの既知のCNTの合成方法を用いて製造することができる。具体的には、CNTを含む繊維状炭素ナノ構造体は、例えば、カーボンナノチューブ製造用の触媒層を表面に有する基材上に原料化合物およびキャリアガスを供給し、化学的気相成長法(CVD法)によりCNTを合成する際に、系内に微量の酸化剤(触媒賦活物質)を存在させることで、触媒層の触媒活性を飛躍的に向上させるという方法(スーパーグロース法;国際公開第2006/011655号参照)に準じて、効率的に製造することができる。なお、以下では、スーパーグロース法により得られるカーボンナノチューブを「SGCNT」と称することがある。
そして、スーパーグロース法により製造したCNTを含む繊維状炭素ナノ構造体は、SGCNTのみから構成されていてもよいし、SGCNTに加え、例えば、非円筒形状の炭素ナノ構造体等の他の繊維状炭素ナノ構造体を含んでいてもよい。
[繊維状炭素ナノ構造体の性状]
また、繊維状炭素ナノ構造体の平均直径は、0.5nm以上であることが好ましく、1nm以上であることがより好ましく、15nm以下であることが好ましく、10nm以下であることがより好ましい。繊維状炭素ナノ構造体の平均直径が0.5nm以上であれば、繊維状炭素ナノ構造体の凝集を抑制して、複合粒子を用いて形成した成形体の熱伝導性を更に向上させることができる。また、繊維状炭素ナノ構造体の平均直径が15nm以下であれば、繊維状炭素ナノ構造体に優れた熱伝導性を発揮させ、複合粒子を用いて形成した成形体の熱伝導性を更に高めることができる。
なお、繊維状炭素ナノ構造体の平均直径は、繊維状炭素ナノ構造体の製造方法や製造条件を変更することにより調整してもよいし、異なる製法で得られた繊維状炭素ナノ構造体を複数種類組み合わせることにより調整してもよい。
更に、繊維状炭素ナノ構造体は、通常、アスペクト比が10超である。そして、繊維状炭素ナノ構造体は、合成時における構造体の平均長さが、1μm以上であることが好ましく、100μm以上であることがより好ましく、5000μm以下であることが好ましい。合成時の構造体の平均長さが1μm以上であれば、複合粒子を用いて形成した成形体中において伝熱経路を良好に形成することができる。なお、合成時の構造体の長さが長いほど、複合粒子を形成する過程で繊維状炭素ナノ構造体に破断や切断などの損傷が発生し易いので、合成時の構造体の平均長さは5000μm以下であることが好ましい。
また、熱伝導性に優れる成形体を形成可能な複合粒子を得る観点からは、繊維状炭素ナノ構造体は、BET比表面積が、200m2/g以上であることが好ましく、800m2/g以上であることが更に好ましく、2500m2/g以下であることが好ましく、1200m2/g以下であることが更に好ましい。繊維状炭素ナノ構造体のBET比表面積が200m2/g以上であれば、繊維状炭素ナノ構造体に優れた熱伝導性を発揮させ、複合粒子を用いて形成した成形体の熱伝導性を十分に高めることができる。また、繊維状炭素ナノ構造体のBET比表面積が2500m2/g以下であれば、繊維状炭素ナノ構造体の凝集を抑制して、複合粒子を用いて形成した成形体の熱伝導性を更に向上させることができる。
ここで、本発明において、繊維状炭素ナノ構造体の「平均直径」、「アスペクト比」および「平均長さ」は、TEM(透過型電子顕微鏡)またはSEM(走査型電子顕微鏡)等の顕微鏡を用いて、無作為に選択した繊維状炭素ナノ構造体100本の直径(外径)および長さを測定して求めることができる。また、本発明において、繊維状炭素ナノ構造体の「BET比表面積」とは、とは、BET法を用いて測定した窒素吸着比表面積を指す。
そして、複合粒子中に含まれている繊維状炭素ナノ構造体の「平均直径」、「アスペクト比」および「BET比表面積」の測定は、特に限定されることなく、例えば複合粒子に含まれている樹脂に対する良溶媒を用いて樹脂を溶解させる、または、樹脂を熱分解させる等の任意の手法を用いて複合粒子から繊維状炭素ナノ構造体を取り出して行うことができる。
[繊維状炭素ナノ構造体の配合量]
そして、複合粒子は、繊維状炭素ナノ構造体の含有量が、樹脂100質量部当たり、0.05質量部以上であることが好ましく、0.5質量部以上であることがより好ましく、5.0質量部以下であることが好ましく、3.0質量部以下であることがより好ましい。樹脂100質量部当たりの繊維状炭素ナノ構造体の含有量が0.05質量部以上であれば、複合粒子を用いて形成した成形体の熱伝導性を十分に高めることができる。また、成形体を良好に形成することができると共に、粒子状炭素材料の粉落ちを防止することができる。更に、樹脂100質量部当たりの繊維状炭素ナノ構造体の含有量が5.0質量部以下であれば、繊維状炭素ナノ構造体の配合により成形体の硬度が上昇する(即ち、柔軟性が低下する)のを抑制することができる。
<添加剤>
複合粒子に任意に配合し得る添加剤としては、特に限定されることなく、例えば、赤りん系難燃剤、リン酸エステル系難燃剤などの難燃剤;可塑剤;酸化カルシウム、酸化マグネシウムなどの吸湿剤;シランカップリング剤、チタンカップリング剤、酸無水物などの接着力向上剤;ノニオン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤などの濡れ性向上剤;無機イオン交換体などのイオントラップ剤;等が挙げられる。
<複合粒子の構造>
また、複合粒子は、表層部に繊維状炭素ナノ構造体が偏在している構造を有する。このように、繊維状炭素ナノ構造体が表層部に偏在していることで、複合粒子を用いて形成した成形体において繊維状炭素ナノ構造体を適度に偏在させて伝熱経路を良好に形成し、成形体の熱伝導性を高めることができる。
ここで、表層部に繊維状炭素ナノ構造体が偏在している複合粒子の具体的な構造としては、例えば、樹脂と、粒子状炭素材料とを含有し、任意に添加剤を更に含有する粒子本体の表層部に繊維状炭素ナノ構造体が偏在している構造が挙げられる。そして、複合粒子を用いて形成した成形体の熱伝導性を更に向上させる観点からは、繊維状炭素ナノ構造体は、複合粒子の表面から複合粒子の半径の10%以下の範囲内のみに偏在していることが好ましく、複合粒子の表面から複合粒子の半径の5%以下の範囲内のみに偏在していることがより好ましく、粒子本体の表面に付着しており、粒子本体の内部には存在しないことが更に好ましい。
なお、複合粒子の構造は、例えばSEM(走査型電子顕微鏡)を用いて複合粒子の断面を観察することにより、確認することができる。
<複合粒子の粒子径>
また、複合粒子を用いて形成した成形体の熱伝導性を更に向上させる観点からは、複合粒子の体積平均粒子径は、1000μm以下であることが好ましく、850μm以下であることがより好ましく、500μm以下であることが更に好ましい。更に、複合粒子の表層部に繊維状炭素ナノ構造体を良好に偏在させる観点からは、複合粒子の体積平均粒子径は、50μm以上であることが好ましく、100μm以上であることがより好ましく、150μm以上であることが更に好ましい。
なお、複合粒子の体積平均粒子径は、複合粒子の調製条件の変更および調製した複合粒子の分級などにより、調整することができる。また、本発明において「複合粒子の体積平均粒子径」とは、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置を用いて測定した粒子径分布(体積基準)において、小径側から計算した累積体積が50%となる粒子径(メジアン径)を指す。
(複合粒子の製造方法)
本発明の複合粒子の製造方法は、樹脂と、粒子状炭素材料と、繊維状炭素ナノ構造体とを含有し、任意に添加剤を更に含有する複合粒子を製造する方法であり、本発明の複合粒子の製造方法を用いて製造した複合粒子は、シート等の成形体を形成する際の材料(複合材料)として用いることができる。そして、本発明の複合粒子の製造方法は、樹脂と、粒子状炭素材料とを含有し、任意に添加剤を更に含有する粒子本体を調製する工程(A)(以下、「粒子本体調製工程」と称する。)と、粒子本体の表面に繊維状炭素ナノ構造体を付着させる工程(B)(以下、「付着工程」と称する。)とを含むことを特徴とする。
なお、本発明の複合粒子の製造方法で用いられる「樹脂」、「粒子状炭素材料」、「繊維状炭素ナノ構造体」および「添加剤」は、上述した本発明の複合粒子に含まれている「樹脂」、「粒子状炭素材料」、「繊維状炭素ナノ構造体」および「添加剤」と同様のものであるので、以下では説明を省略する。
<粒子本体調製工程>
ここで、粒子本体調製工程では、既知の手法を用いて樹脂と粒子状炭素材料とを複合化し、粒子本体を得ることができる。具体的には、粒子本体調製工程では、特に限定されることなく、例えば以下の(I)または(II)の方法を用いて粒子本体を調製することができる。
(I)樹脂と、粒子状炭素材料と、任意の添加剤とを混練した後、得られた混練物を粉砕し、任意に分級して粒子本体を得る。
(II)樹脂と、粒子状炭素材料と、任意の添加剤とを含む分散液を乾燥造粒し、任意に分級して粒子本体を得る。
[調製方法(I)]
ここで、上記(I)の方法を用いて粒子本体を調製する場合、樹脂と、粒子状炭素材料と、任意の添加剤との混練は、ニーダー、ローラー、バンバリーミキサーなどの任意の混練機を用いて行うことができる。
なお、混練は、例えばホバートミキサーやハイスピードミキサーなどの混練機を使用し、溶媒(例えば、酢酸エチル等)の存在下で行ってもよい。そして、混練時に溶媒を用いる場合には、溶媒を除去してから粉砕を行うことが好ましい。溶媒の除去は既知の乾燥方法にて行える。
また、混練物の粉砕は、カッターミル、ハンマーミル、ロールミル、ボールミル、ジェットミルなどの既知の粉砕機を用いて行うことができる。
そして、混練物を粉砕して得られた粒子の分級は、篩、遠心分級機などの既知の分級装置を用いて行うことができる。
[調製方法(II)]
また、上記(II)の方法を用いて粒子本体を調製する場合、樹脂と、粒子状炭素材料と、任意の添加剤とを含む分散液は、特に限定されることなく、例えば樹脂の溶液またはラテックス中に粒子状炭素材料および任意の添加剤を添加し、混合することにより調製することができる。なお、混合には、ボールミル、サンドミル、ビーズミル、顔料分散機、らい潰機、超音波分散機、ホモジナイザー、プラネタリーミキサー、フィルミックスなどの既知の混合機を用いることができる。
更に、分散液の乾燥造粒は、噴霧乾燥機、転動造粒機などの乾燥造粒装置を用いて行うことができる。
そして、分散液を乾燥造粒して得られた粒子の分級は、篩、遠心分級機などの既知の分級装置を用いて行うことができる。
[粒子本体の粒子径]
また、複合粒子を用いて形成した成形体の熱伝導性を十分に向上させ得る複合粒子を製造する観点からは、粒子本体の体積平均粒子径は、1000μm以下であることが好ましく、850μm以下であることがより好ましく、500μm以下であることが更に好ましい。更に、粒子本体の表面に繊維状炭素ナノ構造体を良好に偏在させる観点からは、粒子本体の体積平均粒子径は、50μm以上であることが好ましく、100μm以上であることがより好ましく、150μm以上であることが更に好ましい。
なお、本発明において「粒子本体の体積平均粒子径」とは、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置を用いて測定した粒子径分布(体積基準)において、小径側から計算した累積体積が50%となる粒子径(メジアン径)を指す。
<付着工程>
付着工程では、粒子本体調製工程で調製した粒子本体の表面に、繊維状炭素ナノ構造体を付着させる。なお、付着工程では、粒子本体を構成する樹脂の溶解または溶融などによって繊維状炭素ナノ構造体の一部が粒子本体の表層部に入り込んでもよい。また、付着工程において、粒子本体の表面に繊維状炭素ナノ構造体を付着させてなる粒子同士が凝集してしまった場合には、当該凝集物は解砕してから複合粒子として用いることができる。
ここで、付着工程では、粒子本体と繊維状炭素ナノ構造体とを任意の方法で接触させて粒子本体の表面に繊維状炭素ナノ構造体を付着させることができる。しかし、複合粒子を用いて形成した成形体の熱伝導性を十分に向上させ得る複合粒子を製造する観点からは、付着工程では、繊維状炭素ナノ構造体を良好に分散させた状態で粒子本体の表面に付着させることが好ましい。
具体的には、付着工程では、特に限定されることなく、繊維状炭素ナノ構造体と分散媒とを含む分散液を粒子本体の表面に塗布する工程(C)(以下、「塗布工程」と称する。)と、塗布した分散液を乾燥させる工程(D)(以下、「乾燥工程」と称する。)とを実施して、繊維状炭素ナノ構造体を良好に分散させた状態で粒子本体の表面に付着させることが好ましい。
[塗布工程]
塗布工程では、粒子本体に対して分散液を塗布し、粒子本体の表面に分散液の被膜を形成する。
[[分散液]]
ここで、塗布工程において粒子本体の表面に塗布する分散液としては、分散媒と、分散媒中に分散した繊維状炭素ナノ構造体とを含有し、任意に分散剤を更に含有する分散液を用いることができる。
−分散媒−
繊維状炭素ナノ構造体を分散させる分散媒としては、特に限定されることなく、例えば、水;メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、アミルアルコールなどのアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類;ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル類;N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド系極性有機溶媒;トルエン、キシレン、クロロベンゼン、オルトジクロロベンゼン、パラジクロロベンゼンなどの芳香族炭化水素類;などが挙げられる。これらは1種類のみを単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。上述した中でも、分散媒としては、分散液を塗布する粒子本体に含まれている樹脂に対して貧溶媒である分散媒(例えば、Hoy法によるSP値が、樹脂のSP値に対して、1.0(cal/cm31/2以上、好ましくは3.5(cal/cm31/2以上、より好ましくは5.0(cal/cm31/2以上離れている分散媒)が好ましい。
−繊維状炭素ナノ構造体−
また、繊維状炭素ナノ構造体としては、前述した繊維状炭素ナノ構造体を用いることができる。
なお、繊維状炭素ナノ構造体は、直径がナノメートルサイズの微細な構造体であるため、分散液中で凝集し易い。しかし、繊維状炭素ナノ構造体を良好に分散させた状態で粒子本体の表面に付着させる観点からは、繊維状炭素ナノ構造体は分散液中で良好に分散していることが好ましい。具体的には、繊維状炭素ナノ構造体は、分散液中において、体積換算の平均粒子径が100μm以下となる程度まで分散していることが好ましく、60μm以下となる程度まで分散していることがより好ましく、40μm以下となる程度まで分散していることが更に好ましい。分散液中における繊維状炭素ナノ構造体の平均粒子径が100μm以下であれば、複合粒子を用いて形成した成形体の熱伝導性を十分に向上させ得る複合粒子を製造することができる。また、繊維状炭素ナノ構造体は、分散液中において、例えば、体積換算の平均粒子径が0.5μm以上となる程度に分散させることができ、体積換算の平均粒子径が5μm以上となる程度に分散していることが好ましく、10μm以上となる程度に分散していることがより好ましく、20μm以上となる程度に分散していることが更に好ましい。分散液中における繊維状炭素ナノ構造体の平均粒子径が上記下限値以上であれば、繊維状炭素ナノ構造体を分散させるための分散剤の使用量を低減またはゼロにすると共に、複合粒子を用いて形成した成形体中で繊維状炭素ナノ構造体を適度に集合させて伝熱経路を良好に形成することができる。従って、複合粒子を用いて形成した成形体の熱伝導性を十分に向上させ得る複合粒子を製造することができる。
−分散剤−
更に、分散剤としては、繊維状炭素ナノ構造体を分散可能であり、前述した分散媒に溶解可能であれば、特に限定されないが、界面活性剤、合成高分子または天然高分子を用いることができる。
具体的には、界面活性剤としては、ドデシルスルホン酸ナトリウム、デオキシコール酸ナトリウム、コール酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどが挙げられる。
また、合成高分子としては、例えば、ポリエーテルジオール、ポリエステルジオール、ポリカーボネートジオール、ポリビニルアルコール、部分けん化ポリビニルアルコール、アセトアセチル基変性ポリビニルアルコール、アセタール基変性ポリビニルアルコール、ブチラール基変性ポリビニルアルコール、シラノール基変性ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン−ビニルアルコール−酢酸ビニル共重合樹脂、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、アクリル系樹脂、エポキシ樹脂、変性エポキシ系樹脂、フェノキシ樹脂、変性フェノキシ系樹脂、フェノキシエーテル樹脂、フェノキシエステル樹脂、フッ素系樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂、フェノール樹脂、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドンなどが挙げられる。
更に、天然高分子としては、例えば、多糖類であるデンプン、プルラン、デキストラン、デキストリン、グアーガム、キサンタンガム、アミロース、アミロペクチン、アルギン酸、アラビアガム、カラギーナン、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、カードラン、キチン、キトサン、セルロース、並びに、その塩または誘導体が挙げられる。なお、「誘導体」とは、エステルやエーテルなどの従来公知の化合物を意味する。
上述した中でも、分散剤としては、セルロースの誘導体が好ましく、カルボキシメチルセルロースがより好ましい。
これらの分散剤は、1種単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
なお、分散液中の分散剤の量は、繊維状炭素ナノ構造体100質量部当たり、例えば1000質量部以下とすることができ、200質量部以下であることが好ましく、100質量部以下であることがより好ましく、30質量部以下であることが更に好ましく、分散液は分散剤を含有しないことが特に好ましい。分散液中に含まれている分散剤の量を低減すれば、粒子本体に分散液を塗布および乾燥して調製した複合粒子に含まれる分散剤の量を低減し、当該複合粒子を用いて形成した成形体の熱伝導性が分散剤の混入によって低下するのを抑制することができるからである。
−分散液の調製方法−
そして、分散液は、特に限定されることなく、分散媒に対して繊維状炭素ナノ構造体および任意の分散剤を添加し、任意にホモジナイザーなどの混合器を用いて混合することにより粗分散液を得た後、粗分散液に分散処理を施して繊維状炭素ナノ構造体を分散させることにより、調製することができる。
ここで、粗分散液中の繊維状炭素ナノ構造体を分散させる際の分散処理としては、特に限定されることなく、既知の分散処理を用いることができる。具体的には、分散処理としては、キャビテーション効果または解砕効果が得られる分散処理を用いることができる。なお、キャビテーション効果が得られる分散処理は、液体に高エネルギーを付与した際、液中に生じた真空の気泡が破裂することにより生じる衝撃波を利用した分散方法である。そして、キャビテーション効果が得られる分散処理の具体例としては、超音波ホモジナイザーによる分散処理、ジェットミルによる分散処理および高剪断撹拌装置による分散処理が挙げられる。また、解砕効果が得られる分散処理は、粗分散液にせん断力を与えて繊維状炭素ナノ構造体の凝集体を解砕・分散させ、さらに粗分散液に背圧を負荷することで、気泡の発生を抑制しつつ、繊維状炭素ナノ構造体を分散媒中に均一に分散させる分散方法である。そして、解砕効果が得られる分散処理は、市販の分散システム(例えば、製品名「BERYU SYSTEM PRO」(株式会社美粒製)など)を用いて行うことができる。
[[塗布方法]]
また、分散液を粒子本体の表面に塗布する方法としては、特に限定されることなく、例えばスプレー塗布、ロールコート、ハケ塗りなどの任意の塗布方法を用いることができる。中でも、繊維状炭素ナノ構造体の分散性を確保しつつ分散液を塗布する観点からは、塗布方法としてはスプレー塗布を用いることが好ましい。
[乾燥工程]
乾燥工程では、粒子本体の表面に塗布された分散液を乾燥させ、分散媒を除去することにより、粒子本体の表面に繊維状炭素ナノ構造体を付着させる。
なお、乾燥方法としては、特に限定されることなく、例えば温風、熱風、低湿風による乾燥法、真空乾燥法、赤外線、電子線、マイクロ波などの照射による乾燥法などの任意の乾燥方法を用いることができる。
そして、上述した複合粒子の製造方法によれば、樹脂および粒子状炭素材料を含有する粒子本体の表面に繊維状炭素ナノ構造体が付着してなる複合粒子が容易に得られる。また、この製造方法に従って製造した、上記構造を有する複合粒子を使用すれば、熱伝導性に優れる成形体を形成することができる。
(複合材料シートの製造方法)
本発明の複合材料シートの製造方法では、前述した複合粒子または前述した複合粒子の製造方法を用いて製造した複合粒子を用いて複合材料シートを製造する。従って、本発明の複合材料シートの製造方法により製造された複合材料シートは、少なくとも、樹脂と、粒子状炭素材料と、繊維状炭素ナノ構造体とを含有し、任意に添加剤を更に含有する。そして、本発明の複合材料シートの製造方法は、前述した複合粒子を含むシート材料または前述した複合粒子の製造方法を用いて製造した複合粒子を含むシート材料を加圧してシート状に成形する工程を含むことを特徴とする。
なお、シート材料としては、上述した複合粒子のみを用いてもよいし、上述した複合粒子と、他の複合材料(例えば、上述した粒子本体等の樹脂と粒子状炭素材料とを含む粒子や、樹脂と繊維状炭素ナノ構造体とを含む粒子など)との混合物を用いてもよい。但し、熱伝導性に優れる複合材料シートを得る観点からは、シート材料中の上述した複合粒子の割合は、50質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、100質量%であることが更に好ましい。
ここで、複合粒子を含むシート材料は、圧力が負荷される成形方法であれば特に限定されることなく、プレス成形、圧延成形または押し出し成形などの既知の成形方法を用いてシート状に成形することができる。中でも、複合粒子を含むシート材料は、圧延成形によりシート状に形成することが好ましく、保護フィルムに挟んだ状態でロール間を通過させてシート状に成形することがより好ましい。なお、保護フィルムとしては、特に限定されることなく、サンドブラスト処理を施したポリエチレンテレフタレートフィルム等を用いることができる。また、ロール温度は5℃以上150℃とすることができる。
そして、上述した複合粒子を含むシート材料を加圧し、シート状に成形して得た複合材料シートでは、粒子状炭素材料および繊維状炭素ナノ構造体が主として面内方向に配列する。更に、当該複合材料シートでは、均一に分散した粒子状炭素材料と、適度に偏在する繊維状炭素ナノ構造体とによって面内方向に伝熱経路が良好に形成される。従って、上記製造方法を用いて製造された複合材料シートは、面内方向の熱伝導性に特に優れている。
また、一般に、複合材料を用いて形成した複合材料シートでは熱伝導性および強度を向上させると硬度も増加し、柔軟性が低下するが、上記製造方法を用いて製造された複合材料シートでは、原因は明らかではないが、高い熱伝導性と、高い強度と、優れた柔軟性とを並立させることもできる。
(複合材料シート)
また、本発明の複合材料シートは、例えば上述した複合材料シートの製造方法を用いて製造することができ、樹脂と、粒子状炭素材料と、繊維状炭素ナノ構造体とを含有し、任意に添加剤を更に含有する。そして、本発明の複合材料シートは、通常、L値が47以下であり、当該複合材料シートのL値は、43以上であることが好ましい。
なお、本発明の複合材料シートでは、均一に分散した粒子状炭素材料と、適度に偏在する繊維状炭素ナノ構造体とによって面内方向に伝熱経路が良好に形成されているために、例えば膨張化黒鉛などの黒色度の低い粒子状炭素材料を使用した場合であっても、L値が47以下と低くなると推察される。
(熱伝導シートの製造方法)
そして、本発明の熱伝導シートの製造方法では、上述した複合材料シートの製造方法に従って製造した複合材料シートを用いて積層体を形成する工程(積層体形成工程)と、積層体をスライスする工程(スライス工程)とを経て製造することができる。
以下、各工程について具体的に説明する。
<積層体形成工程>
積層体形成工程では、上述した複合材料シートの製造方法を用いて製造した複合材料シートを厚み方向に複数枚積層して、或いは、上述した複合材料シートの製造方法を用いて製造した複合材料シートを折畳または捲回して、積層体を得る。ここで、複合材料シートの積層による積層体の形成は、特に限定されることなく、スタック装置を用いて行うことができる。更に、複合材料シートの折畳による積層体の形成は、特に限定されることなく、折畳機を用いて複合材料シートを一定幅で折り畳むことにより行うことができる。また、複合材料シートの捲回による積層体の形成は、特に限定されることなく、複合材料シートの短手方向または長手方向に平行な軸の回りに複合材料シートを捲き回すことにより行うことができる。
ここで、通常、積層体形成工程で得られる積層体において、複合材料シートの表面同士の接着力は、複合材料シートを積層する際の圧力や折畳または捲回する際の引っ張り力により充分に得られる。しかし、接着力が不足する場合や、積層体の層間剥離を十分に抑制する必要がある場合には、複合材料シートの表面を溶剤で若干溶解させた状態で積層体形成工程を行ってもよいし、複合材料シートの表面に接着剤を塗布した状態または複合材料シートの表面に接着層を設けた状態で積層体形成工程を行ってもよい。
なお、複合材料シートの表面を溶解させる際に用いる溶剤としては、特に限定されることなく、複合材料シート中に含まれている樹脂を溶解可能な既知の溶剤を用いることができる。中でも、溶解性と揮発性の観点からはメチルエチルケトンを用いることが好ましい。
また、複合材料シートの表面に塗布する接着剤としては、特に限定されることなく、市販の接着剤や粘着性の樹脂を用いることができる。中でも、接着剤としては、複合材料シート中に含まれている樹脂と同じ組成の樹脂を用いることが好ましい。そして、複合材料シートの表面に塗布する接着剤の厚さは、例えば、10μm以上1000μm以下とすることができる。
更に、複合材料シートの表面に設ける接着層としては、特に限定されることなく、両面テープなどを用いることができる。
ここで、接着剤や接着層には、得られる熱伝導シートが硬くなりすぎない範囲で熱伝導性フィラーが配合されていてもよい。
なお、層間剥離を抑制する観点からは、得られた積層体は、積層方向に0.1MPa以上0.5MPa以下の圧力で押し付けながら、80℃以上170℃以下で2〜8時間加熱してもよい。
そして、複合材料シートを積層、折畳または捲回して得られる積層体では、粒子状炭素材料および繊維状炭素ナノ構造体が積層方向に略直交する方向に配列していると推察される。また、当該積層体では、均一に分散した粒子状炭素材料と、適度に偏在する繊維状炭素ナノ構造体とによって形成される伝熱経路が、主に積層方向に略直交する方向に配列していると推察される。
<スライス工程>
スライス工程では、積層体形成工程で得られた積層体を、積層方向に対して45°以下の角度でスライスし、積層体のスライス片よりなる熱伝導シートを得る。ここで、積層体をスライスする方法としては、特に限定されることなく、例えば、マルチブレード法、レーザー加工法、ウォータージェット法、ナイフ加工法等が挙げられる。中でも、熱伝導シートの厚みを均一にし易い点で、ナイフ加工法が好ましい。また、積層体をスライスする際の切断具としては、特に限定されることなく、スリットを有する平滑な盤面と、このスリット部より突出した刃部とを有するスライス部材(例えば、鋭利な刃を備えたカンナやスライサー)を用いることができる。
なお、熱伝導シートの熱伝導性を高める観点からは、積層体をスライスする角度は、積層方向に対して30°以下であることが好ましく、積層方向に対して15°以下であることがより好ましく、積層方向に対して略0°である(即ち、積層方向に沿う方向である)ことが好ましい。
また、積層体を容易にスライスする観点からは、スライスする際の積層体の温度は−20℃以上20℃以下とすることが好ましく、−10℃以上0℃以下とすることがより好ましい。更に、同様の理由により、スライスする積層体は、積層方向とは垂直な方向に圧力を負荷しながらスライスすることが好ましく、積層方向とは垂直な方向に0.1MPa以上0.5MPa以下の圧力を負荷しながらスライスすることがより好ましい。
そして、上記積層体をスライスして得た熱伝導シートでは、粒子状炭素材料および繊維状炭素ナノ構造体が熱伝導シートの厚み方向に配列していると推察される。また、当該熱伝導シートでは、均一に分散した粒子状炭素材料と、適度に偏在する繊維状炭素ナノ構造体とによって形成される伝熱経路が、主に熱伝導シートの厚み方向に配列していると推察される。従って、当該熱伝導シートは、厚み方向の熱伝導性に優れている。
また、前述した複合材料シートは強度および柔軟性にも優れているので、当該複合材料シートを用いて形成した熱伝導シートも、強度および柔軟性に優れている。
以下、本発明について実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下の説明において、量を表す「%」および「部」は、特に断らない限り、質量基準である。
実施例および比較例において、粒子本体の体積平均粒子径、分散液中の繊維状炭素ナノ構造体の平均粒子径、複合材料シートの強度、L値および導電率、並びに、熱伝導シートの熱伝導率は、それぞれ以下の方法を使用して測定または評価した。
<粒子本体の体積平均粒子径>
レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置(日機装製、製品名「マイクロトラックMT3300EXII」)を用いて粒子本体の粒子径分布(体積基準)を測定した。そして、得られた粒子径分布において、小径側から計算した累積体積が50%となる粒子径(メジアン径)を求めた。
<分散液中の繊維状炭素ナノ構造体の平均粒子径>
レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装(堀場製作所製、製品名「LA−960」)を用いて分散液中の繊維状炭素ナノ構造体の体積換算の粒子径分布を測定した。そして、得られた粒子径分布からモード径(体積換算値)を求めた。
<複合材料シートの強度>
複合材料シートを20mm×80mmのサイズで打ち抜き、試験体を得た。
得られた試験体に対し、小型卓上試験機(日本電産シンポ製、製品名「FGS−500TV」;デジタルフォースゲージとしてFGP−50を使用)を用いて引張試験(引張速度:20mm/分、チャック間距離:60mm)を行い、引張強度および破断距離を測定した。
<複合材料シートのL値>
複合材料シートの表面を色彩色差計(コニカミノルタ製、製品名「CR−400」)にて測定し、L値を測定した。
<複合材料シートの導電率>
複合材料シートから寸法10mm×10mmの正方形の試験片を4個切り出し、測定サンプルとした。
そして、低抵抗率計(三菱化学アナリテック社製、製品名「ロレスタ(登録商標)GPMCP−T610」)を用い、JIS K7194に準拠した方法で測定サンプルの導電率を測定した。具体的には、測定サンプルを絶縁ボードの上に固定し、測定サンプルの中心位置(縦5mm、横5mmの位置)にプローブを押し当て、10Vの電圧をかけて各測定サンプルの導電率を測定した。そして、測定値の平均値を求めて複合材料シートの導電率とした。
<熱伝導シートの熱伝導率>
熱伝導シートについて、厚み方向の熱拡散率α(m2/s)、定圧比熱Cp(J/g・K)および比重ρ(g/m3)を以下の方法で測定した。
[熱拡散率]
熱物性測定装置(株式会社ベテル製、製品名「サーモウェーブアナライザTA35」)を使用して温度25℃における熱拡散率を測定した。
[定圧比熱]
示差走査熱量計(Rigaku製、製品名「DSC8230」)を使用し、10℃/分の昇温条件下、温度25℃における比熱を測定した。
[比重]
自動比重計(東洋精機社製、商品名「DENSIMETER−H」)を用いて測定した。
そして、得られた測定値を用いて下記式(I):
λ=α×Cp×ρ ・・・(I)
より温度25℃における熱伝導シートの厚み方向の熱伝導率λ(W/m・K)を求めた。
(実施例1)
<粒子本体の調製>
樹脂としてのフッ素樹脂(ダイキン工業社製、製品名「Daiel−G912」)80部と、粒子状炭素材料としての膨張化黒鉛(伊藤黒鉛工業株式会社製、製品名「EC−50」、平均粒子径:250μm)を130部と、添加剤としてのリン酸エスエテル(大八化学工業株式会社製、製品名「TCP」)を10部とを、ニーダーを用いて30分間混練し、混練物を得た。
得られた混練物をコーヒーミル(株式会社カリタ製、製品名「CM−50」)に投入し、30秒間粉砕した。そして、混練物を粉砕して得られた粒子を、目開き250μmおよび150μmの篩(東京スクリーン株式会社製)を用いて分級し、目開き150μmの篩上の粒子よりなる粒子本体を得た。
そして、粒子本体の体積平均粒子径を測定した。結果を表1に示す。
<CNTを含む繊維状炭素ナノ構造体の調製>
国際公開第2006/011655号の記載に従い、スーパーグロース法によってSGCNTを含む繊維状炭素ナノ構造体を得た。
得られた繊維状炭素ナノ構造体は、BET比表面積が800m2/gであった。また、透過型電子顕微鏡を用い、無作為に選択した100本の繊維状炭素ナノ構造体の直径を測定した結果、平均直径が3.3nm、平均長さが100μmであった。また、得られた繊維状炭素ナノ構造体は、主に単層CNTにより構成されていた。
<分散液の調製>
繊維状炭素ナノ構造体を400mg量り取り、分散媒としての蒸留水2L中に投入し、ホモジナイザーにより2分間撹拌して、粗分散液を得た。
次に、得られた粗分散液を湿式ジェットミル(株式会社常光製、製品名「JN−20」)の流路(内径:0.5mm)に100MPaの圧力で2サイクル通過させ、繊維状炭素ナノ構造体を蒸留水に分散させて、固形分濃度0.20%の分散液を得た。
そして、分散液中の繊維状炭素ナノ構造体の平均粒子径を測定した。結果を表1に示す。
<複合粒子の調製>
トレイ内で、粒子本体10gに対し、分散液21.67gをスプレー塗布した。即ち、粒子本体中のフッ素樹脂80部当たりの繊維状炭素ナノ構造体の量が1部となる量の分散液を粒子本体に対して塗布した。
そして、撹拌下、温度120℃のホットプレート上でトレイを加熱し、水を除去した。
更に、得られた乾燥物をコーヒーミル(株式会社カリタ製、製品名「CM−50」)で3秒間解砕し、複合粒子を得た。
<複合材料シートの作製>
シート材料としての複合粒子10gを、サンドブラスト処理を施した厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(保護フィルムA)と、片面にシリコーン離型処理を施した厚さ75μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(保護フィルムB)とで挟み、ロール間隙350μm、ロール温度50℃、ロール線圧50kg/cm、ロール速度1m/分の条件にて圧延成形した。その後、保護フィルムAおよび保護フィルムBを剥がして、厚さ0.5mmの複合材料シートを得た。
そして、複合材料シートの強度、L値および導電率を測定した。結果を表1に示す。
<熱伝導シートの作製>
合計120枚の複合材料シートを厚さ10μmの両面テープ(日栄化工株式会社製、製品名「NeoFix10」)を介して複合材料シートの厚み方向に貼り合わせ、厚さ約6cmの積層体を得た。そして、得られた積層体を手で押して圧縮し、密着させた。
その後、得られた積層体を、木工用スライサー(株式会社丸仲鐵工所製、製品名「超仕上げかんな盤スーパーメカ」、スリット部からの刀部の突出長さ:0.11mm)を用いて、積層方向に対して0度の角度で(即ち、積層方向に平行に)スライスし、厚さ0.5mmの熱伝導シートを得た。
そして、熱伝導シートの熱伝導率を測定した。結果を表1に示す。
(実施例2)
分散液の調製時に、粗分散液中に分散剤としてのカルボキシメチルセルロース(ダイセルファインケム製、重量平均分子量(Mw):300000)400mgを更に添加し、湿式ジェットミルに粗分散液を通過させる回数を40サイクルに変更した以外は実施例1と同様にして、粒子本体、CNTを含む繊維状炭素ナノ構造体、分散液、複合粒子、複合材料シートおよび熱伝導シートを作製した。そして、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例3)
複合材料シートの作製時に、複合粒子10gに替えて、複合粒子5gと、実施例1と同様にして調製した目開き150μmの篩上の粒子よりなる粒子本体5gとの混合物をシート材料として用いた以外は実施例1と同様にして、粒子本体、CNTを含む繊維状炭素ナノ構造体、分散液、複合粒子、複合材料シートおよび熱伝導シートを作製した。そして、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例4)
粒子本体の調製時に、混練物を粉砕して得られた粒子を、目開き850μmおよび500μmの篩(東京スクリーン株式会社製)を用いて分級し、目開き500μmの篩上の粒子よりなる粒子本体を得た以外は実施例1と同様にして、粒子本体、CNTを含む繊維状炭素ナノ構造体、分散液、複合粒子、複合材料シートおよび熱伝導シートを作製した。そして、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
(比較例1)
CNTを含む繊維状炭素ナノ構造体、分散液および複合粒子を調製することなく、複合材料シートの作製時に、複合粒子10gに替えて、実施例1と同様にして調製した目開き150μmの篩上の粒子よりなる粒子本体10gをシート材料として用いた以外は実施例1と同様にして、粒子本体、複合材料シートおよび熱伝導シートを作製した。そして、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
(比較例2)
粒子本体を調製することなく、以下のようにして調製した複合粒子を使用した以外は実施例1と同様にして、CNTを含む繊維状炭素ナノ構造体、分散液、複合粒子、複合材料シートおよび熱伝導シートを作製した。そして、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
<複合粒子の調製>
樹脂としてのフッ素樹脂(ダイキン工業社製、製品名「Daiel−G912」)80部と、粒子状炭素材料としての膨張化黒鉛(伊藤黒鉛工業株式会社製、製品名「EC−50」、平均粒子径:250μm)を130部と、実施例1と同様にして調製した分散液をろ過して得た繊維状炭素ナノ構造体の集合体1部と、添加剤としてのリン酸エスエテル(大八化学工業株式会社製、製品名「TCP」)を10部とを、ニーダーを用いて30分間混練し、混練物を得た。
得られた混練物をコーヒーミル(株式会社カリタ製、製品名「CM−50」)に投入し、30秒間粉砕した。そして、混練物を粉砕して得られた粒子を、目開き250μmおよび150μmの篩(東京スクリーン株式会社製)を用いて分級し、目開き150μmの篩上の粒子よりなる比較例複合粒子(繊維状炭素ナノ構造体均一混合粒子)を得た。
なお、比較例複合粒子の体積平均粒子径は175μmであった。
(比較例3)
CNTを含む繊維状炭素ナノ構造体、分散液および複合粒子を調製することなく、複合材料シートの作製時に、複合粒子10gに替えて、実施例3と同様にして調製した目開き500μmの篩上の粒子よりなる粒子本体10gをシート材料として用いた以外は実施例1と同様にして、粒子本体、複合材料シートおよび熱伝導シートを作製した。そして、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
Figure 2017088792
表1の実施例1〜3および比較例1〜2、並びに、実施例4および比較例3より、繊維状炭素ナノ構造体が表層部に偏在している複合粒子を使用して形成した熱伝導シートは、熱伝導性に優れていることが分かる。また、表1より、繊維状炭素ナノ構造体が表層部に偏在している複合粒子を使用して形成した複合材料シートは、強度および導電性にも優れていることが分かる。
また、表1の実施例1〜4より、分散液中の繊維状炭素ナノ構造体の平均粒子径、分散液中の分散剤量、シート材料中の複合粒子の割合および粒子本体の体積平均粒子径を調整することにより、熱伝導シートの熱伝導性および複合材料シートの導電性を更に向上させ得ることが分かる。
本発明によれば、熱伝導性に優れる成形体の形成に使用し得る複合粒子が得られる。
また、本発明によれば、熱伝導性に優れる複合材料シートおよび熱伝導シートが得られる。

Claims (11)

  1. 樹脂と、粒子状炭素材料と、繊維状炭素ナノ構造体とを含有する複合粒子であって、
    前記繊維状炭素ナノ構造体が表層部に偏在している、複合粒子。
  2. 樹脂と、粒子状炭素材料と、繊維状炭素ナノ構造体とを含有する複合粒子の製造方法であって、
    樹脂と、粒子状炭素材料とを含有する粒子本体を調製する工程(A)と、
    前記粒子本体の表面に繊維状炭素ナノ構造体を付着させる工程(B)と、
    を含む、複合粒子の製造方法。
  3. 前記工程(B)が、繊維状炭素ナノ構造体と分散媒とを含む分散液を前記粒子本体の表面に塗布する工程(C)と、塗布した分散液を乾燥させる工程(D)とを含む、請求項2に記載の複合粒子の製造方法。
  4. 前記分散液中の前記繊維状炭素ナノ構造体の平均粒子径が100μm以下である、請求項3に記載の複合粒子の製造方法。
  5. 前記分散液中の前記繊維状炭素ナノ構造体の平均粒子径が5μm以上である、請求項4に記載の複合粒子の製造方法。
  6. 前記分散液中の前記繊維状炭素ナノ構造体の平均粒子径が10μm以上である、請求項5に記載の複合粒子の製造方法。
  7. 前記分散液中の分散剤の量が前記繊維状炭素ナノ構造体100質量部当たり30質量部以下である、請求項3〜6の何れかに記載の複合粒子の製造方法。
  8. 樹脂と、粒子状炭素材料と、繊維状炭素ナノ構造体とを含有する複合材料シートの製造方法であって、
    請求項1に記載の複合粒子または請求項2〜7の何れかに記載の複合粒子の製造方法を用いて製造した複合粒子を含むシート材料を加圧してシート状に成形する工程を含む、複合材料シートの製造方法。
  9. 請求項8に記載の複合材料シートの製造方法を用いて製造した複合材料シートを厚み方向に複数枚積層して、或いは、前記複合材料シートを折畳または捲回して、積層体を得る工程と、
    前記積層体を、積層方向に対して45°以下の角度でスライスし、熱伝導シートを得る工程と、
    を含む、熱伝導シートの製造方法。
  10. 樹脂と、粒子状炭素材料と、繊維状炭素ナノ構造体とを含有する複合材料シートであって、
    L値が47以下である、複合材料シート。
  11. 前記粒子状炭素材料が膨張化黒鉛である、請求項10に記載の複合材料シート。
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