JP2017183679A - プレ熱伝導シートの製造方法および熱伝導シートの製造方法 - Google Patents

プレ熱伝導シートの製造方法および熱伝導シートの製造方法 Download PDF

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Naohiro Hazama
尚宏 挾間
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将純 小島
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康之 村上
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Takahiro Ogawa
貴弘 小川
圭佑 伊藤
Keisuke Ito
圭佑 伊藤
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Abstract

【課題】取扱い性に優れ、熱伝導性フィラーが水平面内方向に良好に配向したプレ熱伝導シートを連続製造できる、プレ熱伝導シートの製造方法、並びに、取扱い性及び熱伝導性に優れた熱伝導シートを連続製造できる、熱伝導シートの製造方法を提供する。
【解決手段】常温固体の熱可塑性フッ素樹脂と粒子状炭素材料とを含む組成物を調製する工程と、該組成物を少なくとも一対の圧延ロール間を通過させて圧延することによりプレ熱伝導シートを得る工程とを含み、該圧延を、該少なくとも一対の圧延ロール間の間隙幅を50〜2000μmとし該組成物が所定の粘度を示すようなロール温度及びロール速度を設定して行う、プレ熱伝導シートの製造方法。前記製造方法で製造したプレ熱伝導シートを用いて熱伝導シートを得る、熱伝導シートの製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、プレ熱伝導シートの製造方法および熱伝導シートの製造方法に関する。
近年、プラズマディスプレイパネル(PDP)や集積回路(IC)チップ等の電子部品は、高性能化に伴って発熱量が増大している。その結果、電子部品を用いた電子機器では、電子部品の温度上昇による機能障害対策を講じる必要が生じている。
電子部品の温度上昇による機能障害対策としては、一般に、電子部品等の発熱体に対し、金属製のヒートシンク、放熱板、放熱フィン等の放熱体を取り付けることによって、放熱を促進させる方法が採られている。そして、放熱体を使用する際には、発熱体から放熱体へと熱を効率的に伝えるために、熱伝導率が高いシート状の部材(熱伝導シート)を介し、この熱伝導シートに対して所定の圧力をかけることで発熱体と放熱体とを密着させている。そして、発熱体と放熱体との間に挟み込んで使用される熱伝導シートには、高い熱伝導率に加え、高い柔軟性を有することが求められてきた。
熱伝導シートは、一般に、柔軟性に優れる樹脂と熱伝導性に優れる炭素材料とを含む組成物から製造されている。そして、熱伝導シートの熱伝導率を高める目的で、熱伝導シートに含有される炭素材料として異方形状の炭素材料を使用し、当該炭素材料をシートの厚み方向に配向して含有する熱伝導シートを製造することが考えられてきた。
例えば、特許文献1では、アクリルゴムなどのガラス転移温度(Tg)が50℃以下である有機高分子化合物と、鱗片状黒鉛とを含む組成物を圧延することによって、一次シート(プレ熱伝導シート)を形成する一次シートの製造方法が開示されている。こうして形成された一次シートは、鱗片状黒鉛が一次シートに対して略水平方向に配向している。また、当該一次シートを積層又は捲回して、一次シート面から出る法線に対して所定の角度でスライスすることによって熱伝導シートを形成する、熱伝導シートの製造方法が開示されている。こうして製造された熱伝導シートは、鱗片状黒鉛が熱伝導シートの厚み方向に対して一定の角度に傾いて配向しているため、粘着性及び強度に優れ、実装工程で熱伝導シートの厚み方向に圧力が付加されても鱗片状黒鉛が挫屈せずに熱伝導性が維持できるというものである。
特開2015−84431号公報
しかしながら、特許文献1に記載の一次シートの製造方法により得られる一次シートは鱗片状黒鉛の配向が不充分な場合があり、また、熱伝導シートの製造方法により得られる熱伝導シートは粘着性、強度、及び熱伝導性にある程度優れたものではあるが、特に取扱い性や熱伝導性の点で改良の余地があった。
上記問題点に鑑み、本発明は、強度および取扱い性に優れ、熱伝導性フィラーが水平面内方向に良好に配向したプレ熱伝導シートを非常に効率的に製造することができる、プレ熱伝導シートの製造方法を提供することを目的とする。本発明でプレ熱伝導シート(一次シート)について用いられる「取扱い性に優れる」とは、硬さと粘着性とのバランスに優れており、使用時、例えば、プレ熱伝導シート製造時及び熱伝導シート製造時の作業性に優れることを意味する。
また、本発明は、強度、取扱い性及び熱伝導性に優れた熱伝導シートを非常に効率的に製造することができる、熱伝導シートの製造方法を提供することを目的とする。本発明で熱伝導シート(二次シート)について用いられる「取扱い性に優れる」とは、硬さと粘着性とのバランスに優れており、使用時、例えば、放熱装置などへの取り付け時及び交換時の作業性に優れることを意味する。
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を行った。そして、常温固体の熱可塑性フッ素樹脂と粒子状炭素材料とを含む組成物を、所定の粘度となるようにロール温度及びロール速度を設定して所定の間隙幅を有する少なくとも一対の圧延ロール間を通過させて圧延することにより、強度に優れ、粒子状炭素材料などの熱伝導性フィラーが水平面内方向に良好に配向したプレ熱伝導シートを非常に効率的に製造することができ、また、かかるプレ熱伝導シートを用いることにより、所望の熱伝導シートを非常に効率的に製造することができることを見いだし、本発明を完成させた。
即ち、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明のプレ熱伝導シートの製造方法は、常温固体の熱可塑性フッ素樹脂と、粒子状炭素材料とを含む組成物を調製する工程と、該組成物を、少なくとも一対の圧延ロール間を通過させて圧延することにより、プレ熱伝導シートを得る工程と、を含み、該圧延を、該少なくとも一対の圧延ロール間の間隙幅を50〜2000μmとし、レオメータで50〜250℃の温度範囲にてせん断速度を変えて該組成物の粘度を測定した場合に該粘度が8000〜12000Pa・sの範囲となる温度およびせん断速度に相当するロール温度およびロール速度で行うことを特徴とする。この構成とすることにより、強度および取扱い性に優れ、粒子状炭素材料などの熱伝導性フィラーが水平面内方向に良好に配向したプレ熱伝導シートを、非常に効率的に製造することができる。
本発明のプレ熱伝導シートの製造方法では、前記粒子状炭素材料が、膨張化黒鉛であることが好ましい。粒子状炭素材料が膨張化黒鉛であると、プレ熱伝導シートの熱伝導性を高め、ひいては熱伝導シートの熱伝導性を高めることができる。
本発明のプレ熱伝導シートの製造方法では、前記組成物中の前記粒子状炭素材料の含有割合が、前記常温固体の熱可塑性フッ素樹脂100質量部に対し、40〜900質量部であることが好ましい。組成物中の粒子状炭素材料の含有割合が上記範囲であると、プレ熱伝導シートの熱伝導性、柔軟性および強度をバランスよく高め、ひいては熱伝導シートの熱伝導率、柔軟性および強度をバランス良く高めることができるからである。
本発明の熱伝導シートの製造方法は、本発明のプレ熱伝導シートの製造方法によって製造されたプレ熱伝導シートを、厚み方向に複数枚積層して、或いは、折畳または捲回して、積層体を形成する工程と、該積層体を、積層方向に対して45°以下の角度でスライスして、熱伝導シートを得る工程と、を含むことを特徴とする。本発明のプレ熱伝導シートの製造方法によって製造された、支持フィルムを使用しないプレ熱伝導シートを用いることにより、プレ熱伝導シートの製造に続いて、製造ラインを停止させることなく、積層体形成工程を行うことができる。また、本発明の製造方法によって製造された、強度および取扱い性に優れ、粒子状炭素材料などの熱伝導性フィラーが水平面内方向に良好に配向しているプレ熱伝導シートから形成した積層体を、積層方向に対して45°以下の角度でスライスして熱伝導シートを得るため、強度、取扱い性および厚み方向の熱伝導性に優れた熱伝導シートを製造することができる。
本発明の熱伝導シートの製造方法では、前記積層体を、前記プレ熱伝導シートの折畳によって形成することが好ましい。プレ熱伝導シートの折畳によって積層体を非常に効率良く形成することができる。
本発明によれば、強度および取扱い性に優れ、粒子状炭素材料などの熱伝導性フィラーが水平面内方向に良好に配向したプレ熱伝導シートを非常に効率良く製造することができる、プレ熱伝導シートの製造方法を提供することができる。
また、本発明によれば、強度、取扱い性及び厚み方向の熱伝導性に優れた熱伝導シートを非常に効率良く製造することができる、熱伝導シートの製造方法を提供することができる。
本発明のプレ熱伝導シートの製造方法の一実施形態において、圧延条件の設定方法を説明するグラフである。 本発明のプレ熱伝導シートの製造方法の一実施形態において、圧延条件の設定方法を説明するグラフである。
以下、本発明をその実施形態に基づき詳細に例示説明する。
(プレ熱伝導シートの製造方法)
本発明のプレ熱伝導シートの製造方法は、常温固体の熱可塑性フッ素樹脂と、粒子状炭素材料とを含む組成物を調製する工程と、該組成物を、少なくとも一対の圧延ロール間を通過させて圧延することにより、プレ熱伝導シートを得る工程と、を含み、該圧延を、該少なくとも一対の圧延ロール間の間隙幅を50〜2000μmとし、レオメータで50〜250℃の温度範囲にてせん断速度を変えて該組成物の粘度を測定した場合に該粘度が8000〜12000Pa・sの範囲となる温度およびせん断速度に相当するロール温度およびロール速度で行うことを特徴とする。
本発明において、プレ熱伝導シートへ成形される組成物は、常温固体の熱可塑性フッ素樹脂と、粒子状炭素材料とを含む。プレ熱伝導シートが粒子状炭素材料を含有しない場合には、当該プレ熱伝導シートを用いて製造した熱伝導シートが十分な熱伝導性を有することができない。また、プレ熱伝導シートが常温固体の熱可塑性フッ素樹脂を含有しない場合には、製造過程及び生成物において十分な柔軟性が得られない。
[樹脂]
本発明のプレ熱伝導シートの製造方法において、プレ熱伝導シートへ成形される組成物は、樹脂として、常温固体の熱可塑性フッ素樹脂を含む。ここで、「常温」とは、23℃を指す。プレ熱伝導シートに成形される組成物は、樹脂として常温固体の熱可塑性フッ素樹脂を含むことにより、強度および取扱い性に優れたプレ熱伝導シートを得ることができる。また、ロール温度及びロール速度を制御することによって、圧延時の粘度を所望の範囲に制御することができ、粒子状炭素材料などの熱伝導性フィラーが水平面内方向に良好に配向したプレ熱伝導シートを非常に効率良く製造することができる。
なお、本発明において、ゴムおよびエラストマーは、「樹脂」に含まれるものとする。
[[常温固体の熱可塑性フッ素樹脂]]
本発明で樹脂として使用される常温固体の熱可塑性フッ素樹脂としては、特に限定されないが、例えば、フッ化ビニリデン系、テトラフルオロエチレン−プロピレン系、テトラフルオロエチレン−パーフルオロビニルエーテル系等、フッ素含有モノマーを重合して得られるエラストマーなどが挙げられる。より具体的には、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体、ポリビニリデンフルオライド、ポリクロロトリフルオロエチレン、エチレン−クロロフルオロエチレン共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロジオキソール共重合体、ポリビニルフルオライド、テトラフルオロエチレン−プロピレン共重合体、ビニリデンフルオライド−テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリテトラフルオロエチレンのアクリル変性物、ポリテトラフルオロエチレンのエステル変性物、ポリテトラフルオロエチレンのエポキシ変性物およびポリテトラフルオロエチレンのシラン変性物等が挙げられる。これらの中でも、加工性の観点から、ポリテトラフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレンのアクリル変性物、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、ビニリデンフルオライド−テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体が好ましい。
市販の常温固体の熱可塑性フッ素樹脂としては、例えば、ダイキン工業株式会社製のダイエル(登録商標)G−900シリーズ(パーオキサイド加硫・3元ポリマー;フッ化ビニリデン系フッ素樹脂)、ダイエルG−800シリーズ(パーオキサイド加硫・2元ポリマー;フッ化ビニリデン系フッ素樹脂)、ダイエルG−700シリーズ(ポリオール加硫・2元ポリマー;フッ化ビニリデン系フッ素樹脂)、ダイエルG−550シリーズ/G−600シリーズ(ポリオール加硫・3元ポリマー;フッ化ビニリデン系フッ素樹脂)、ALKEMA社製のKYNAR(登録商標)シリーズ(フッ化ビニリデン系フッ素樹脂)、KYNAR FLEX(登録商標)シリーズ(ビニリデンフロライド/テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレンの共重合体の三元系フッ素樹脂)が挙げられる。
[[常温液体の熱可塑性フッ素樹脂]]
また、本発明では、樹脂として、常温固体の熱可塑性フッ素樹脂と常温液体の熱可塑性フッ素樹脂とを併用してもよい。併用できる常温液体の熱可塑性フッ素樹脂は、常温(23℃)で液体状のフッ素樹脂であれば、特に限定されない。例えば、ビニリデンフルオライド/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロペンテン−テトラフルオロエチレン3元共重合体、パーフルオロプロペンオキサイド重合体、テトラフルオロエチレン−プロピレン−フッ化ビニリデン共重合体などが挙げられる。これら常温液状の熱可塑性フッ素樹脂として、例えば、バイトン(登録商標)LM(デュポン株式会社製)、ダイエルG−101(ダイキン工業株式会社製)、ダイニオンFC2210(スリーエム株式会社製)、SIFELシリーズ(信越化学工業株式会社製)などの市販品を使用することもできる。
常温液体の熱可塑性フッ素樹脂の粘度は、特には限定されないが、混練性、流動性、架橋反応性が良好で、成形性にも優れるという点から、105℃における粘度が、500〜30,000mPa・sであることが好ましく、550〜25,000mPa・sであることがより好ましい。
樹脂として併用する際の常温固体の熱可塑性フッ素樹脂と常温液体の熱可塑性フッ素樹脂との割合は、特に限定されないが、常温固体の熱可塑性フッ素樹脂100質量部に対し、常温液体の熱可塑性フッ素樹脂を、好ましくは25質量部以上、より好ましくは50質量部以上、好ましくは200質量部以下、より好ましくは150質量部以下の割合で組み合わせるのが好適である。
[[常温固体の熱可塑性樹脂]]
本発明では、任意により、樹脂として、プレ熱伝導シートや熱伝導シートの形成に使用され得る既知の常温固体の熱可塑性樹脂(常温固体の熱可塑性フッ素樹脂を除く。)を併用してもよい。そのような常温固体の熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリ(アクリル酸2−エチルヘキシル)、アクリル酸とアクリル酸2−エチルヘキシルとの共重合体、ポリメタクリル酸またはそのエステル、ポリアクリル酸またはそのエステルなどのアクリル樹脂;シリコーン樹脂;ポリエチレン;ポリプロピレン;エチレン−プロピレン共重合体;ポリメチルペンテン;ポリ塩化ビニル;ポリ塩化ビニリデン;ポリ酢酸ビニル;エチレン−酢酸ビニル共重合体;ポリビニルアルコール;ポリアセタール;ポリエチレンテレフタレート;ポリブチレンテレフタレート;ポリエチレンナフタレート;ポリスチレン;ポリアクリロニトリル;スチレン−アクリロニトリル共重合体;アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂);スチレン−ブタジエンブロック共重合体またはその水素添加物;スチレン−イソプレンブロック共重合体またはその水素添加物;ポリフェニレンエーテル;変性ポリフェニレンエーテル;脂肪族ポリアミド類;芳香族ポリアミド類;ポリアミドイミド;ポリカーボネート;ポリフェニレンスルフィド;ポリサルホン;ポリエーテルサルホン;ポリエーテルニトリル;ポリエーテルケトン;ポリケトン;ポリウレタン;液晶ポリマー;アイオノマー;などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
[[常温液体の熱可塑性樹脂]]
本発明では、任意により、樹脂として、常温液体の熱可塑性樹脂(常温液体の熱可塑性フッ素樹脂を除く。)を併用してもよい。併用できる常温液体の熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
[[熱硬化性樹脂]]
本発明では、本発明によって製造されるプレ熱伝導シートおよび熱伝導シートの特性および効果を失わないことを条件として、樹脂として、任意に熱硬化性樹脂を含むことができる。使用し得る熱硬化性樹脂としては、例えば、天然ゴム;ブタジエンゴム;イソプレンゴム;ニトリルゴム;水素化ニトリルゴム;クロロプレンゴム;エチレンプロピレンゴム;塩素化ポリエチレン;クロロスルホン化ポリエチレン;ブチルゴム;ハロゲン化ブチルゴム;ポリイソブチレンゴム;エポキシ樹脂;ポリイミド樹脂;ビスマレイミド樹脂;ベンゾシクロブテン樹脂;フェノール樹脂;不飽和ポリエステル;ジアリルフタレート樹脂;ポリイミドシリコーン樹脂;ポリウレタン;熱硬化型ポリフェニレンエーテル;熱硬化型変性ポリフェニレンエーテル;などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
[粒子状炭素材料]
粒子状炭素材料としては、特に限定されることなく、例えば、人造黒鉛、鱗片状黒鉛、薄片化黒鉛、天然黒鉛、酸処理黒鉛、膨張性黒鉛、膨張化黒鉛などの黒鉛;カーボンブラック;などを用いることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
中でも、粒子状炭素材料としては、膨張化黒鉛を用いることが好ましい。膨張化黒鉛を使用すれば、本発明によって製造されるプレ熱伝導シートおよび熱伝導シートの熱伝導性を向上させることができるからである。
[[膨張化黒鉛]]
ここで、粒子状炭素材料として好適に使用し得る膨張化黒鉛は、例えば、鱗片状黒鉛などの黒鉛を硫酸などで化学処理して得た膨張性黒鉛を、熱処理して膨張させた後、微細化することにより得ることができる。そして、膨張化黒鉛としては、例えば、伊藤黒鉛工業株式会社製のEC1500、EC1000、EC500、EC300、EC100、EC50(いずれも商品名)等が挙げられる。
[[粒子状炭素材料の性状]]
ここで、本発明で使用される粒子状炭素材料の平均粒子径は、0.1μm以上であることが好ましく、1μm以上であることがより好ましく、250μm以下であることが好ましい。粒子状炭素材料の平均粒子径が上記範囲内であれば、熱伝導シートの熱伝導性を向上させることができるからである。
また、本発明で使用される粒子状炭素材料のアスペクト比(長径/短径)は、1以上10以下であることが好ましく、1以上5以下であることがより好ましい。
なお、本発明において、「平均粒子径」は、プレ熱伝導シートまたは熱伝導シートをメチルエチルケトンなどの有機溶媒に溶かして得られた粒子状炭素材料分散液をレーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置を用いて測定し、体積基準のモード径の値で評価できる。
また、本発明において、「アスペクト比」は、プレ熱伝導シートの水平表面または熱伝導シートの厚み方向における断面をSEM(走査型電子顕微鏡)で観察し、任意の50個の粒子状炭素材料について、最大径(長径)と、最大径に直交する方向の粒子径(短径)とを測定し、長径と短径の比(長径/短径)の平均値を算出することにより求めることができる。
[[粒子状炭素材料の含有割合]]
そして、本発明でプレ熱伝導シートへ成形される組成物における粒子状炭素材料の含有割合は、常温固体の熱可塑性フッ素樹脂100質量部に対し、40質量部以上であることが好ましく、70質量部以上であることがより好ましく、100質量部以上であることが更に好ましく、900質量部以下であることが好ましく、400質量部以下であることがより好ましく、300質量部以下であることが更に好ましい。当該組成物中の粒子状炭素材料の含有割合が上記範囲であれば、製造した熱伝導シートの熱伝導率、柔軟性および強度をバランス良く十分に高めることができるからである。また、粒子状炭素材料の含有割合が900質量部以下であれば、粒子状炭素材料の粉落ちを十分に防止することができるからである。
[繊維状炭素材料]
本発明でプレ熱伝導シートへ成形される組成物は、任意に繊維状炭素材料を含有してもよい。任意に含有される繊維状炭素材料としては、特に限定されることなく、例えば、カーボンナノチューブ、気相成長炭素繊維、有機繊維を炭化して得られる炭素繊維、およびそれらの切断物などを用いることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
そして、本発明でプレ熱伝導シートへ成形される組成物に繊維状炭素材料を含有させれば、本発明によって製造されるプレ熱伝導シート及び熱伝導シートの熱伝導性を更に向上させることができると共に、粒子状炭素材料の粉落ちを防止することもできる。なお、繊維状炭素材料を配合することで粒子状炭素材料の粉落ちを防止することができる理由は、明らかではないが、繊維状炭素材料が三次元網目構造を形成することにより、熱伝導性や強度を高めつつ粒子状炭素材料の脱離を防止しているためであると推察される。
上述した中でも、繊維状炭素材料としては、カーボンナノチューブなどの繊維状の炭素ナノ構造体を用いることが好ましく、カーボンナノチューブを含む繊維状の炭素ナノ構造体を用いることがより好ましい。カーボンナノチューブなどの繊維状の炭素ナノ構造体を使用すれば、本発明によって製造されるプレ熱伝導シートの熱伝導性フィラー配向性および取扱い性ならびに熱伝導シートの熱伝導性および強度を更に向上させることができるからである。
[[カーボンナノチューブを含む繊維状の炭素ナノ構造体]]
ここで、繊維状炭素材料として好適に使用し得る、カーボンナノチューブを含む繊維状の炭素ナノ構造体は、カーボンナノチューブ(以下、「CNT」と称することがある。)のみからなるものであってもよいし、CNTと、CNT以外の繊維状の炭素ナノ構造体との混合物であってもよい。
なお、繊維状の炭素ナノ構造体中のCNTとしては、特に限定されることなく、単層カーボンナノチューブおよび/または多層カーボンナノチューブを用いることができるが、CNTは、単層から5層までのカーボンナノチューブであることが好ましく、単層カーボンナノチューブであることがより好ましい。単層カーボンナノチューブを使用すれば、多層カーボンナノチューブを使用した場合と比較し、本発明によって製造されるプレ熱伝導シートの熱伝導性フィラー配向性および取扱い性ならびに熱伝導シートの熱伝導性および強度を更に向上させることができるからである。
また、CNTを含む繊維状の炭素ナノ構造体としては、平均直径(Av)に対する、直径の標準偏差(σ)に3を乗じた値(3σ)の比(3σ/Av)が0.20超0.60未満の炭素ナノ構造体を用いることが好ましく、3σ/Avが0.25超の炭素ナノ構造体を用いることがより好ましく、3σ/Avが0.50超の炭素ナノ構造体を用いることが更に好ましい。3σ/Avが0.20超0.60未満のCNTを含む繊維状の炭素ナノ構造体を使用すれば、炭素ナノ構造体の配合量が少量であっても本発明によって製造されるプレ熱伝導シートの熱伝導性フィラー配向性および取扱い性ならびに熱伝導シートの熱伝導性および強度を十分に高めることができる。したがって、CNTを含む繊維状の炭素ナノ構造体の配合により本発明によって製造されるプレ熱伝導シートおよび熱伝導シートの硬度が上昇する(即ち、柔軟性が低下する)のを抑制して、本発明によって製造されるプレ熱伝導シートの硬さおよび粘着性ならびに熱伝導シートの熱伝導性および柔軟性を十分に高いレベルで並立させることができる。
なお、「繊維状の炭素ナノ構造体の平均直径(Av)」および「繊維状の炭素ナノ構造体の直径の標準偏差(σ:標本標準偏差)」は、それぞれ、透過型電子顕微鏡を用いて無作為に選択した繊維状の炭素ナノ構造体100本の直径(外径)を測定して求めることができる。そして、CNTを含む繊維状の炭素ナノ構造体の平均直径(Av)および標準偏差(σ)は、CNTを含む繊維状の炭素ナノ構造体の製造方法や製造条件を変更することにより調整してもよいし、異なる製法で得られたCNTを含む繊維状の炭素ナノ構造体を複数種類組み合わせることにより調整してもよい。
そして、CNTを含む繊維状の炭素ナノ構造体としては、前述のようにして測定した直径を横軸に、その頻度を縦軸に取ってプロットし、ガウシアンで近似した際に、正規分布を取るものが通常使用される。
更に、CNTを含む繊維状の炭素ナノ構造体は、ラマン分光法を用いて評価した際に、Radial Breathing Mode(RBM)のピークを有することが好ましい。なお、三層以上の多層カーボンナノチューブのみからなる繊維状の炭素ナノ構造体のラマンスペクトルには、RBMが存在しない。
また、CNTを含む繊維状の炭素ナノ構造体は、ラマンスペクトルにおけるDバンドピーク強度に対するGバンドピーク強度の比(G/D比)が1以上20以下であることが好ましい。G/D比が1以上20以下であれば、繊維状の炭素ナノ構造体の配合量が少量であっても本発明によって製造されるプレ熱伝導シートおよび熱伝導シートの熱伝導性および強度を十分に高めることができる。したがって、繊維状の炭素ナノ構造体の配合により熱伝導シートの硬度が上昇する(即ち、柔軟性が低下する)のを抑制して、本発明によって製造されるプレ熱伝導シートおよび熱伝導シートの熱伝導性および柔軟性を十分に高いレベルで並立させることができる。
更に、CNTを含む繊維状の炭素ナノ構造体の平均直径(Av)は、0.5nm以上であることが好ましく、1nm以上であることが更に好ましく、15nm以下であることが好ましく、10nm以下であることが更に好ましい。繊維状の炭素ナノ構造体の平均直径(Av)が0.5nm以上であれば、繊維状の炭素ナノ構造体の凝集を抑制して炭素ナノ構造体の分散性を高めることができる。また、繊維状の炭素ナノ構造体の平均直径(Av)が15nm以下であれば、本発明によって製造されるプレ熱伝導シートおよび熱伝導シートの熱伝導性および強度を十分に高めることができる。
また、CNTを含む繊維状の炭素ナノ構造体は、合成時における構造体の平均長さが100μm以上5000μm以下であることが好ましい。なお、合成時の構造体の長さが長いほど、分散時にCNTに破断や切断などの損傷が発生し易いので、合成時の構造体の平均長さは5000μm以下であることが好ましい。
更に、CNTを含む繊維状の炭素ナノ構造体のBET比表面積は、600m/g以上であることが好ましく、800m/g以上であることが更に好ましく、2500m/g以下であることが好ましく、1200m/g以下であることが更に好ましい。更に、繊維状の炭素ナノ構造体中のCNTが主として開口したものにあっては、BET比表面積が1300m/g以上であることが好ましい。CNTを含む繊維状の炭素ナノ構造体のBET比表面積が600m/g以上であれば、本発明によって製造されるプレ熱伝導シートおよび熱伝導シートの熱伝導性および強度を十分に高めることができる。また、CNTを含む繊維状の炭素ナノ構造体のBET比表面積が2500m/g以下であれば、繊維状の炭素ナノ構造体の凝集を抑制して本発明によって製造されるプレ熱伝導シートおよび熱伝導シート中のCNTの分散性を高めることができる。
なお、本発明において、「BET比表面積」とは、BET法を用いて測定した窒素吸着比表面積を指す。
更に、CNTを含む繊維状の炭素ナノ構造体は、後述のスーパーグロース法によれば、カーボンナノチューブ成長用の触媒層を表面に有する基材上に、基材に略垂直な方向に配向した集合体(配向集合体)として得られるが、当該集合体としての、繊維状の炭素ナノ構造体の質量密度は、0.002g/cm以上0.2g/cm以下であることが好ましい。質量密度が0.2g/cm以下であれば、繊維状の炭素ナノ構造体同士の結びつきが弱くなるので、熱伝導シート中で繊維状の炭素ナノ構造体を均質に分散させることができる。また、質量密度が0.002g/cm以上であれば、繊維状の炭素ナノ構造体の一体性を向上させ、バラけることを抑制できるため取り扱いが容易になる。
そして、上述した性状を有するCNTを含む繊維状の炭素ナノ構造体は、例えば、カーボンナノチューブ製造用の触媒層を表面に有する基材上に、原料化合物およびキャリアガスを供給して、化学的気相成長法(CVD法)によりCNTを合成する際に、系内に微量の酸化剤(触媒賦活物質)を存在させることで、触媒層の触媒活性を飛躍的に向上させるという方法(スーパーグロース法;国際公開第2006/011655号参照)に準じて、効率的に製造することができる。なお、以下では、スーパーグロース法により得られるカーボンナノチューブを「SGCNT」と称することがある。
ここで、スーパーグロース法により製造したCNTを含む繊維状の炭素ナノ構造体は、SGCNTのみから構成されていてもよいし、SGCNTに加え、例えば、非円筒形状の炭素ナノ構造体等の他の炭素ナノ構造体が含まれていてもよい。
[[繊維状炭素材料の性状]]
そして、プレ熱伝導シートへ成形される組成物に含まれうる繊維状炭素材料の平均繊維径は、1nm以上であることが好ましく、3nm以上であることがより好ましく、2μm以下であることが好ましく、1μm以下であることがより好ましい。繊維状炭素材料の平均繊維径が上記範囲内であれば、熱伝導シートの熱伝導性、柔軟性および強度を十分に高いレベルで並立させることができるからである。ここで、繊維状炭素材料のアスペクト比は、10を超えることが好ましい。
なお、本発明において、「平均繊維径」は、熱伝導シートの厚み方向における断面をSEM(走査型電子顕微鏡)又はTEM(透過型電子顕微鏡)で観察し、任意の50個の繊維状炭素材料について繊維径を測定し、測定した繊維径の個数平均値を算出することにより求めることができる。特に、繊維径が小さい場合は、同様の断面をTEM(透過型電子顕微鏡)にて観察することが好適である。
[[繊維状炭素材料の含有割合]]
そして、プレ熱伝導シートへ成形される組成物における繊維状炭素材料の含有割合は、常温固体の熱可塑性フッ素樹脂100質量部に対し、0.05質量部以上であることが好ましく、0.2質量部以上であることがより好ましく、5質量部以下であることが好ましく、3質量部以下であることがより好ましい。当該組成物中の繊維状炭素材料の含有割合が0.05質量部以上であれば、熱伝導シートの熱伝導性および強度を十分に向上させることができると共に、粒子状炭素材料の粉落ちを十分に防止することができるからである。更に、熱伝導シート中の繊維状炭素材料の含有割合が5質量部以下であれば、繊維状炭素材料の配合により熱伝導シートの硬度が上昇する(即ち、柔軟性が低下する)のを抑制して、熱伝導シートの熱伝導性および柔軟性を十分に高いレベルで並立させることができるからである。
[添加剤]
プレ熱伝導シートへ成形される組成物には、必要に応じて、熱伝導シートの形成に使用され得る既知の添加剤を配合することができる。そして、熱伝導シートに配合し得る添加剤としては、特に限定されることなく、例えば、脂肪酸エステルなどの可塑剤;赤りん系難燃剤、りん酸エステル系難燃剤などの難燃剤;ウレタンアクリレートなどの靭性改良剤;酸化カルシウム、酸化マグネシウムなどの吸湿剤;シランカップリング剤、チタンカップリング剤、酸無水物などの接着力向上剤;ノニオン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤などの濡れ性向上剤;無機イオン交換体などのイオントラップ剤;等が挙げられる。
<組成物調製工程>
常温固体の熱可塑性フッ素樹脂と、粒子状炭素材料とを含み、プレ熱伝導シートへ成形される組成物は、常温固体の熱可塑性フッ素樹脂および粒子状炭素材料と、任意に、その他の樹脂、繊維状炭素材料および添加剤とを混合して調製することができる。そして、樹脂、粒子状炭素材料、繊維状炭素材料および添加剤としては、本発明の製造方法で使用し得る樹脂、粒子状炭素材料、繊維状炭素材料および添加剤として上述したものを用いることができる。因みに、熱伝導シートの樹脂を架橋型の樹脂とする場合には、組成物に架橋型の樹脂を添加してもよいし、組成物に架橋可能な樹脂と硬化剤とを添加してプレ熱伝導シートを形成して、プレ熱伝導シート成形工程後に架橋可能な樹脂を架橋させることにより、熱伝導シートに架橋型の樹脂を含有させてもよい。
なお、上述した成分のうち、特に繊維状炭素材料は、凝集し易く、分散性が低いため、そのままの状態で樹脂や膨張化黒鉛などの他の成分と混合すると、組成物中で良好に分散し難い。一方、繊維状炭素材料は、溶媒(分散媒)に分散させた分散液の状態で樹脂や膨張化黒鉛などの他の成分と混合すれば凝集の発生を抑制することはできるものの、分散液の状態で混合した場合には混合後に固形分を凝固させて組成物を得る際などに多量の溶媒を使用するため、組成物の調製に使用する溶媒の量が多くなる虞が生じる。そのため、プレ熱伝導シートの形成に用いる組成物に繊維状炭素材料を配合する場合には、繊維状炭素材料は、溶媒(分散媒)に繊維状炭素材料を分散させて得た分散液から溶媒を除去して得た繊維状炭素材料の集合体(易分散性集合体)の状態で他の成分と混合することが好ましい。繊維状炭素材料の分散液から溶媒を除去して得た繊維状炭素材料の集合体は、一度溶媒に分散させた繊維状炭素材料で構成されており、溶媒に分散させる前の繊維状炭素材料の集合体よりも分散性に優れているので、分散性の高い易分散性集合体となる。従って、易分散性集合体と、樹脂や膨張化黒鉛などの他の成分とを混合すれば、多量の溶媒を使用することなく効率的に、組成物中で繊維状炭素材料を良好に分散させることができる。
ここで、繊維状炭素材料の分散液は、例えば、溶媒に対して繊維状炭素材料を添加してなる粗分散液を、キャビテーション効果が得られる分散処理または解砕効果が得られる分散処理に供して得ることができる。なお、キャビテーション効果が得られる分散処理は、液体に高エネルギーを付与した際、水に生じた真空の気泡が破裂することにより生じる衝撃波を利用した分散方法である。そして、キャビテーション効果が得られる分散処理の具体例としては、超音波ホモジナイザーによる分散処理、ジェットミルによる分散処理および高剪断撹拌装置による分散処理が挙げられる。また、解砕効果が得られる分散処理は、粗分散液にせん断力を与えて繊維状炭素材料の凝集体を解砕・分散させ、さらに粗分散液に背圧を負荷することで、気泡の発生を抑制しつつ、繊維状炭素材料を溶媒中に均一に分散させる分散方法である。そして、解砕効果が得られる分散処理は、市販の分散システム(例えば、商品名「BERYU SYSTEM PRO」(株式会社美粒製)など)を用いて行うことができる。
また、分散液からの溶媒の除去は、乾燥やろ過などの既知の溶媒除去方法を用いて行うことができるが、迅速かつ効率的に溶媒を除去する観点からは、減圧ろ過などのろ過を用いて行うことが好ましい。
常温固体の熱可塑性フッ素樹脂および粒子状炭素材料と、任意の、その他の樹脂、繊維状炭素材料および添加剤との混合は、特に限定されることなく、ニーダー、ロール、ヘンシェル(登録商標)ミキサー、ホバートミキサー等の既知の混合装置を用いて行うことができる。また、混合は、酢酸エチル等の溶媒の存在下で行ってもよい。溶媒に予め樹脂を溶解または分散させて樹脂溶液として、他の炭素材料および任意の添加剤と混合してもよい。混合時間は、例えば5分以上6時間以下とすることができる。また、混合温度は、例えば5℃以上150℃以下とすることができる。
上述のように混合して調製した組成物は、任意により脱泡および解砕した後に、後述するプレ熱伝導シート成形工程を行う。上記混合時に溶媒を用いている場合には、溶媒を除去してからプレ熱伝導シート成形工程を行うことが好ましい。例えば、真空乾燥を用いて乾燥を行えば、溶媒の除去を行うことができる。真空乾燥は、市販の真空乾燥機などを用いて行うことができる。真空乾燥時間は、例えば10分以上24時間以下とすることができる。
乾燥を行った後の組成物は、一般に塊状となり、そのままの状態で圧延ロール間を通過させると、成形されるプレ熱伝導シートが不均質となり得る。そのため、乾燥を行った後の組成物を解砕して粗粉体として、プレ熱伝導シート成形工程を行うことが好ましい。解砕は、市販の解砕機などを用いて行うことができる。解砕時間は、例えば5秒以上10分以下とすることができる。解砕して得られた粗粉体は、そのままの状態で次の工程に用いてもよいが、均質なプレ熱伝導シートを成形する観点から、ふるい掛けして粉体の大きさを均一にすることが好ましい。ふるい掛けは、手動でまたは市販のふるい機などを用いて行うことができる。使用するふるいの目開きは、例えば100μm以上2mm以下とすることができる。
<プレ熱伝導シート成形工程>
そして、上述のようにして調製した組成物を、少なくとも一対の圧延ロール間を通過させて圧延することにより、プレ熱伝導シートを成形する。前記圧延は、圧延ロール間の間隙幅を50〜2000μmとし、レオメータで50〜250℃の温度範囲にてせん断速度を変えて該組成物の粘度を測定した場合に該粘度が8000〜12000Pa・sの範囲となる温度およびせん断速度に相当するロール温度およびロール速度で行う。当該ロール温度およびロール速度で圧延を行うことにより、粒子状炭素材料などの熱伝導性フィラーをプレ熱伝導シートの水平面内方向に良好に配向させることができる。
上記圧延は、ロールプレス機(「ロール圧延機」とも称される)を用いて行うことができる。圧延に使用できるロールプレス機は、特に限定されず、例えば、縦型ロールプレス機(「縦型ロール圧延機」とも称される)、横型ロールプレス機(「横型ロール圧延機」とも称される)などが挙げられる。なお、圧延ロール対の2本のロールの回転軸が互いに略水平かつ互いに平行に配置された一対の圧延ロール(圧延ロール対とも称する)を備えるロールプレス機は、一般に、「縦型ロールプレス機」と称される。また、圧延ロール対の2本のロールの回転軸が、水平かつ水平面に対して略垂直な同一面上に互いに平行に配置された一対の圧延ロールを備えるロールプレス機は、一般に、「横型ロールプレス機」と称される。これらロールプレス機は、市販品として入手することができる。そして、ロールプレス機は、二対以上の圧延ロールを備える場合、二対以上の圧延ロール対は、縦型であっても、横型であっても、それらの組み合わせであってもよい。
[圧延ロール間の間隙幅]
上記圧延は、圧延ロール間の間隙幅を50〜2000μmとして行う。圧延ロール間の間隔幅を50〜2000μmとして圧延することにより、成形されるプレ熱伝導シートの厚みを50〜2000μmとすることができる。また、熱伝導シートの熱伝導性を更に向上させる観点からは、プレ熱伝導シートの厚みが、粒子状炭素材料の平均粒子径の20倍超5000倍以下となるように圧延ロール間の間隙幅を更に調節することが好ましい。
[ロール温度およびロール速度]
また、上記圧延は、プレ熱伝導シートへ成形される組成物(圧延対象の組成物とも称する)が所定の粘度を示すロール温度およびロール速度で行う。この圧延条件は、本発明者らの次のような検討および知見に基づき、導き出されたものである。本発明者らは、プレ熱伝導シートの製造において、粒子状炭素材料などの熱伝導性フィラーの水平面内方向への配向性をより向上させることを検討した。熱伝導性フィラーの水平面内方向への配向性を高めるには、圧延ロールによる圧延の際に組成物から成形されるプレ熱伝導シートに加えるせん断力を高める必要がある。それにはプレ熱伝導シートに対する荷重を大きくする必要があり、単に荷重をかけてもシート変形により力が逃げてしまうことがあるため、力が逃げないように圧延の際の組成物の粘度を適切なものにする必要がある。そして、圧延の際の組成物の粘度は、圧延の際に組成物に加えられる温度やせん断力に応じて変化するため、ロール圧延の場合には、ロール温度やロール速度といった圧延条件を適切なものにする必要がある。
そこで、本発明者らは、プレ熱伝導シートへ成形される組成物の粘度を、レオメータを用いて50〜250℃の温度範囲で任意に設定した所定の温度でせん断速度を変化させながら測定して、該粘度と該せん断速度との関係を求めたところ、せん断速度を横軸(X軸)とし粘度を縦軸(Y軸)とした両対数グラフにおいて、負の傾きを有する近似直線として示されることを見いだした(図1)。更に図1の結果において、せん断速度が30(1/s)の時の設定温度を横軸に、粘度を縦軸として書き換えたグラフが図2である。作用機序の詳細は不明であるが、圧延ロールのロール速度をせん断速度30(1/s)に相当するように設定し、圧延ロール間の間隙幅を一定にして、ロール温度を変えてプレ熱伝導シートの製造を行い、得られたプレ熱伝導シートにおける粒子状炭素材料の配向状態を調べたところ、ロール温度が、レオメータによる測定で組成物の粘度が8000〜12000Pa・sの範囲となる温度に相当する場合に、水平面内方向の配向性が大幅に向上することを見いだした。
上記知見に基づき、本発明のプレ熱伝導シートの製造方法では、使用する組成物の圧延を、レオメータで50〜250℃の温度範囲にてせん断速度を変えて組成物の粘度を測定した場合に該粘度が8000〜12000Pa・sの範囲となる温度およびせん断速度に相当するロール温度およびロール速度で行い、ロール成型する。
言い換えると、圧延は、レオメータで50〜250℃の温度範囲にてせん断速度を変えて圧延対象の組成物の粘度を測定した場合に該粘度が8000〜12000Pa・sの範囲となる温度およびせん断速度を付与することができるロール温度およびロール速度で行う。圧延対象の組成物がレオメータで50〜250℃の温度範囲にてせん断速度を変えて測定した場合に示す粘度は、8000〜12000Pa・sであるが、9000〜11000Pa・sであるのが好ましく、9500〜10500Pa・sであるのが最も好ましい。圧延対象の組成物の粘度を当該適切な範囲とすると、プレ熱伝導シートに対する荷重を大きくしてもシート変形により力が逃げないようにすることができ、粒子状炭素材料などの熱伝導性フィラーの水平面内方向への配向性をより一層高めることができるからである。
レオメータで50〜250℃の温度範囲にてせん断速度を変えて組成物の粘度を測定した場合に該粘度が8000〜12000Pa・sの範囲となる温度およびせん断速度は、圧延される組成物の組成に応じて異なり得るため、当該温度およびせん断速度に相当するロール温度およびロール速度も、圧延される組成物の組成に応じて異なり得る。そこで、圧延対象の組成物について、当該ロール温度およびロール速度は、次のように予め設定することができる。圧延対象の組成物の粘度を、レオメータを用いて50〜250℃の温度範囲で任意設定した複数の測定温度にてせん断速度を変えながら測定する。測定結果に基づき、所定の測定温度における粘度とせん断速度との関係を求める。例えば、所定の測定温度における粘度とせん断速度との関係は、せん断速度を横軸(X軸)とし、粘度を縦軸(Y軸)とし、測定された粘度値をプロットすることによって求めることができる。具体的には、粘度とせん断速度との関係は、図1に例示するように、近似直線として得られる。組成物に付与するせん断速度を大きくすると組成物の粘度は低くなるため、粘度とせん断速度との関係を示す近似直線は負の傾きを有する。また組成物は樹脂として常温固体の熱可塑性フッ素樹脂を含むため、測定温度を高くすると、粘度が低くなり、粘度とせん断速度との関係を示す近似直線は略平行に下方へ移動する(図1)。あるいは、レオメータを用いた上記測定結果から、所定のせん断速度における粘度と温度との関係を求めることもできる。例えば、図2に例示するように、温度を横軸(X軸)とし粘度を縦軸(Y軸)としたグラフに、所定のせん断速度で測定された粘度値をプロットすることで、近似曲線として得ることができる。このようにして求められた関係に基づき、圧延対象の組成物が、50〜250℃の温度範囲内で、8000〜12000Pa・sの範囲の粘度(例えば、図2では、網掛けによって示される)を示す温度およびせん断速度の組み合わせを設定し、これらに相当するロール温度およびロール速度を算出する。ここで、設定された温度は、そのままロール温度とすることができる。
一方、せん断速度とは、物体同士が任意の面に対して、面に平行に力が作用した際の速度である。レオメータでの測定時に接するのは圧延部と組成物、またロール成形において接するのは圧延ロール部と組成物であることから、レオメータにて設定されたせん断速度は圧延ロールのせん断速度に置き換えることが可能である。せん断速度は距離に対する速度勾配であり、圧延ロール部は回転体であるため、回転運動に換算する必要がある。単位時間当たりの回転量をΔθ、速度をv、ロール半径をrとすると、以下の関係式(A)が成り立つ。従って、圧延ロールのせん断速度は式(B)となる。ここで、速度vをロール速度とすることができる。
Figure 2017183679
Figure 2017183679
[プレ熱伝導シート]
上述する本発明によって製造されたプレ熱伝導シートは、粒子状炭素材料などの熱伝導性フィラーが、水平面内方向に良好に配向し、水平面内方向の熱伝導性に優れる。そして、本発明によって製造されたプレ熱伝導シートは、熱伝導シート(二次シート)の製造において、例えば、後述する積層体形成工程で一次シートとして用いられて、積層体を形成することができる。
尚、プレ熱伝導シートの密度は、組成物の組成および調製条件ならびに圧延で加えられる圧力などによって制御することができ、特に限定されないが、例えば、2.5g/cm以下が好ましく、2.0g/cm以下がより好ましい。汎用性が高く、例えば電子部品などの製品に実装した際に、かかる電子部品の軽量化に寄与することができる熱伝導シートの製造に好適に使用できるからである。
(熱伝導シートの製造方法)
<積層体形成工程>
積層体形成工程では、本発明のプレ熱伝導シートの製造方法で得られたプレ熱伝導シートを厚み方向に複数枚積層して、或いは、該プレ熱伝導シートを折畳または捲回して、積層体を得る。プレ熱伝導シートを複数枚積層することによる積層体の形成は、特に限定されることなく、プレ熱伝導シートを所望のサイズに手動でまたは市販の裁断機を用いて切断し、切断したプレ熱伝導シートを2枚以上1枚ずつ所望の高さまで手動でまたは市販の積層装置で積層することにより行うことができる。また、プレ熱伝導シートの折畳による積層体の形成は、特に限定されることなく、手動でまたは市販の折機を用いてプレ熱伝導シートを一定幅で折り畳むことにより行うことができる。また、プレ熱伝導シートの捲回による積層体の形成は、特に限定されることなく、プレ熱伝導シートの短手方向または長手方向に平行な軸の回りにプレ熱伝導シートを手動でまたは市販の巻取機を用いて捲き回すことにより行うことができる。巻取機は、市販のロールプレス機に付帯しているものを用いることもできる。これらの中でも、プレ熱伝導シートの折畳によって積層体を形成することが好ましい。折畳によって積層体を形成することにより、プレ熱伝導シートの製造におけるプレ熱伝導シート成形工程に続いて、製造ラインを停止させることなく、積層体形成工程を行うことができる。
[折畳方法]
本発明の熱伝導シートの製造方法の積層体形成工程で用いることができる折畳方法は、特に限定されず、既知の折畳方法のいずれかを用いることができる。例えば、折り目が外側に出るように折る山折り、折り目が内側に隠れるように折る谷折り、山折りと谷折りとを交互になるように繰り返して折る蛇腹折り、谷折りを繰り返して中に巻き込んでいく巻折りや巻々折り、これらの組み合わせなどが挙げられる。これらの折畳方法において、折り目は、特に限定されないが、例えば、プレ熱伝導シートの短手方向または長手方向に平行とすることができる。短手方向に平行な折り目での折畳方法と長手方向に平行な折り目での折畳方法とを組み合わせてもよい。例えば、プレ熱伝導シートの短手方向に平行な折り目で蛇腹折り、巻折りまたは巻々折りを行ってから、プレ熱伝導シートの長手方向に平行な折り目で山折りまたは谷折りを任意の回数で行うこともできる。これらの中でも、製造ラインを停止させることなく連続的に折り畳むことができるという観点から、プレ熱伝導シートの短手方向に平行な折り目での蛇腹折りによって折り畳むことが好ましい。
ここで、通常、積層体形成工程で得られる積層体において、プレ熱伝導シートの表面同士の接着力は、プレ熱伝導シートを積層する際の圧力や折畳または捲回する際の圧力により充分に得られる。しかし、接着力が不足する場合や、積層体の層間剥離を十分に抑制する必要がある場合には、プレ熱伝導シートの表面を溶剤で若干溶解させた状態で積層体形成工程を行ってもよいし、プレ熱伝導シートの表面に接着剤を塗布した状態またはプレ熱伝導シートの表面に接着層を設けた状態で積層体形成工程を行ってもよい。
なお、プレ熱伝導シートの表面を溶解させる際に用いる溶剤としては、特に限定されることなく、プレ熱伝導シート中に含まれている樹脂成分を溶解可能な既知の溶剤を用いることができる。
また、プレ熱伝導シートの表面に塗布する接着剤としては、特に限定されることなく、市販の接着剤や粘着性の樹脂を用いることができる。中でも、接着剤としては、プレ熱伝導シート中に含まれている樹脂成分と同じ組成の樹脂を用いることが好ましい。そして、プレ熱伝導シートの表面に塗布する接着剤の厚さは、例えば、10μm以上1000μm以下とすることができる。
更に、プレ熱伝導シートの表面に設ける接着層としては、特に限定されることなく、両面テープなどを用いることができる。
なお、層間剥離を抑制する観点からは、得られた積層体は、積層方向に0.05MPa以上1.0MPa以下の圧力で押し付けながら、20℃以上100℃以下で1〜30分プレスすることが好ましい。
なお、組成物に繊維状炭素材料を加えた場合、あるいは粒子状炭素材料として膨張化黒鉛を使用した場合には、プレ熱伝導シートを積層、折畳または捲回して得られる積層体にて、膨張化黒鉛や繊維状炭素材料が積層方向に略直交する方向に配列していると推察される。
<スライス工程>
スライス工程では、積層体形成工程で得られた積層体を、積層方向に対して45°以下の角度でスライスし、積層体のスライス片よりなる熱伝導シートを得る。ここで、積層体をスライスする方法としては、特に限定されることなく、例えば、マルチブレード法、レーザー加工法、ウォータージェット法、ナイフ加工法等が挙げられる。中でも、熱伝導シートの厚みを均一にし易い点で、ナイフ加工法が好ましい。また、積層体をスライスする際の切断具としては、特に限定されることなく、スリットを有する平滑な盤面と、このスリット部より突出した刃部とを有するスライス部材(例えば、鋭利な刃を備えたカンナやスライサー)を用いることができる。
当該刃部を構成する刃は、刃先の表裏両側が切刃となっている「両刃」であってもよく、刃の表側のみが切刃となっている「片刃」であってもよい。刃部の刃先の断面形状も、特に限定されず、刃先の最先端を通る中心軸に対して、非対称でも対称でもよい。刃は、1段刃でもよく、2段刃でもよい。
刃の枚数は、特に限定されず、例えば、1枚の刃からなる1枚刃で構成されていてもよく、2枚の刃からなる2枚刃で構成されていてもよい。2枚刃で構成される場合、2枚の刃は、それぞれ、片刃であっても両刃であってもよい。2枚の刃のうちの一方または両方の刃が両刃の場合、当該両刃は、対称刃であっても非対称刃であってもよい。また、2枚の刃は、それぞれ、1段刃であっても2段刃であってもよい。
また、刃の材質は特に特定されず、金属、セラミック、プラスチックいずれでもよいが、特に衝撃に耐える観点から超硬合金が望ましい。すべり性向上、切削性向上目的で、刃の表面にシリコーン、フッ素等をコーティングしてもよい。
なお、熱伝導シートの熱伝導性を高める観点からは、積層体をスライスする角度は、積層方向に対して30°以下であることが好ましく、積層方向に対して15°以下であることがより好ましく、積層方向に対して略0°である(即ち、積層方向に沿う方向である)ことが好ましい。
また、積層体を容易にスライスする観点からは、スライスする際の積層体の温度は−20℃以上40℃以下とすることが好ましく、10℃以上30℃以下とすることがより好ましい。更に、同様の理由により、スライスする積層体は、積層方向とは垂直な方向に圧力を負荷しながらスライスすることが好ましく、積層方向とは垂直な方向に0.1MPa以上0.5MPa以下の圧力を負荷しながらスライスすることがより好ましい。このようにして得られた熱伝導シート内では、粒子状炭素材料や繊維状炭素材料が厚み方向に配列していると推察される。従って、上述の工程を経て調製された熱伝導シートは、厚み方向の熱伝導性だけでなく、導電性も高い。
また、上述のように調製した熱伝導シートを厚み方向に複数枚重ね合わせて、所定の時間静置することによって一体化させたものを、熱伝導シートとして使用してもよい。このようにして得られた熱伝導シート内では、粒子状炭素材料や繊維状炭素材料が厚み方向に配列したままであると推察される。従って、上述のように調製した熱伝導シートを厚み方向に複数枚重ね合わせて一体化させることにより、厚み方向の熱伝導性や導電性を損なうことなく、使用目的に応じて所望の厚さの熱伝導シートを得ることができる。
[熱伝導シート]
本発明によって製造された熱伝導シートは、常温固体の熱可塑性フッ素樹脂と粒子状炭素材料とを含有し、粒子状炭素材料が厚み方向に良好に配向するため、強度、取扱い性及び厚み方向の熱伝導性に優れる。
そして、本発明によって製造された熱伝導シートは、特に限定されることなく、以下の性状を有していることが好ましい。
[[熱伝導シートの硬度]]
本発明によって製造された熱伝導シートは、25℃でのアスカーC硬度が、60以上であることが好ましく、65以上であることがより好ましく、70以上であることが更に好ましい。25℃でのアスカーC硬度が60以上であれば、室温で適度な硬さを有することができ、取り付け時及び交換時の作業性を良好なものとすることができる。
また、本発明によって製造された熱伝導シートは、25℃でのアスカーC硬度が、90以下であることが好ましく、80以下であることがより好ましい。25℃でのアスカーC硬度が90以下であれば、室温環境下で十分な粘着性を有することができ、取り付け時及び交換時の作業性をより向上させることができる。
尚、「アスカーC硬度」は、日本ゴム協会規格(SRIS)のアスカーC法に準拠し、硬度計を用いて所定の温度で測定することができる。
また、本発明によって製造された熱伝導シートは、70℃でのアスカーC硬度が、55以上であることが好ましく、60以上であることがより好ましい。70℃でのアスカーC硬度が55以上であれば、使用時(放熱時)の高温環境下でも十分な硬さを維持することができ、交換時の剥離性を十分なものとして、放熱装置の躯体に熱伝導シート成分を残留させることなく交換することができる。
また、本発明によって製造された熱伝導シートは、70℃でのアスカーC硬度が、70以下であることが好ましく、65以下であることがより好ましい。70℃でのアスカーC硬度が70以下であれば、使用時(放熱時)の高温環境下で十分な界面密着性を有することができ、熱伝導性をより向上させることができる。
[[熱伝導シートの熱抵抗]]
本発明によって製造された熱伝導シートは、0.5MPa加圧下の熱抵抗の値が0.20℃/W以下であり、0.15℃/W以下であることが好ましい。0.5MPa加圧下の熱抵抗の値が0.20℃/W以下であると、比較的高い圧力が加えられる使用環境下で、優れた熱伝導性を有することができる。
ここで、熱抵抗の値は、熱伝導シートの熱抵抗を測定するのに通常用いられる既知の測定方法を用いて測定することができ、樹脂材料熱抵抗試験器(例えば、株式会社日立テクノロジーアンドサービス製、商品名「C47108」)などで測定することができる。
また、本発明によって製造された熱伝導シートは、0.1MPa加圧下の熱抵抗の値が0.40℃/W以下であることが好ましく、0.35℃/W以下であることがより好ましい。0.1MPa加圧下の熱抵抗の値が0.40℃/W以下であると、比較的高い圧力が加えられる使用環境下で、優れた熱伝導性を維持することができる。
[[熱伝導シートのタック]]
本発明によって製造された熱伝導シートは、プローブタック試験で測定したタックが0.85N以下であることが好ましく、0.80N以下であることがより好ましい。「タック」とは、JIS Z0109:2015で規定される通り、軽い力で短時間に被着体に接着する特性を意味し、本明細書中では「接着性」とも称する。熱伝導シートのタックは、プローブタック試験で測定される。具体的には、25℃の温度条件で、φ10mmの平らなプローブを荷重0.5Nの圧力を加えながら測定対象の熱伝導シートに10秒間押し付けた後、プローブを該熱伝導シートから引き離すときに要する力として測定される。プローブタック試験で測定したタックが0.85N以下であると、使用時には良好な密着性を示しつつ、取り付け時および交換時に良好な剥離性を有し、発熱体や放熱体などの取付物から、熱伝導シートを破壊することなく、すなわち、当該取付物に熱伝導シート成分を残存させることなく、熱伝導シートを取り外すことができる。言い換えると、プローブタック試験で測定したタックの数値が小さい程、取扱い性に優れる。
なお、本発明によって製造された熱伝導シートのタックは、プローブタック試験機(例えば、株式会社レスカ製、商品名「TAC1000」)などで測定することができる。
[[熱伝導シートの熱伝導率]]
本発明によって製造された熱伝導シートは、厚み方向の熱伝導率が、25℃において、20W/m・K以上であることが好ましく、30W/m・K以上であることがより好ましく、40W/m・K以上であることが更に好ましい。熱伝導率が20W/m・K以上であれば、例えば熱伝導シートを発熱体と放熱体との間に挟み込んで使用した場合に、発熱体から放熱体へと熱を効率的に伝えることができる。ここで、熱伝導率の値は、熱伝導シートの熱伝導率を測定するのに通常用いられる既知の測定方法を用いて測定することができ、樹脂材料熱抵抗試験器(例えば、株式会社日立テクノロジーアンドサービス製、商品名「C47108」)などで測定することができる。
[[熱伝導シートの厚み]]
本発明によって製造された熱伝導シートの厚みは、好ましくは0.1mm〜10mmである。本発明によって製造された熱伝導シートは、取扱い性を損なわない限りにおいて、厚みを薄くする程、熱抵抗値を小さくすることができ、熱伝導性および放熱装置に使用した場合の放熱特性を向上させることができる。
[[熱伝導シートの密度]]
さらに、本発明によって製造された熱伝導シートは、密度が1.8g/cm以下であることが好ましく、1.6g/cm以下であることがより好ましい。このような熱伝導シートは、汎用性が高く、例えば電子部品などの製品に実装した際に、かかる電子部品の軽量化に寄与することができるからである。
(熱伝導シートの用途)
本発明によって製造された熱伝導シートは、熱伝導性、強度、導電性に優れている。従って、当該熱伝導シートは、例えば、各種機器および装置などにおいて使用される放熱材料、放熱部品、冷却部品、温度調節部品、電磁波シールド部材、電磁波吸収部材、被圧着物を加熱圧着する場合に被圧着物と加熱圧着装置との間に介在させる熱圧着用ゴムシートとして好適である。
ここで、各種機器および装置などとしては、特に限定されることなく、サーバー、サーバー用パソコン、デスクトップパソコン等の電子機器;ノートパソコン、電子辞書、PDA、携帯電話、ポータブル音楽プレイヤー等の携帯電子機器;液晶ディスプレイ(バックライトを含む)、プラズマディスプレイ、LED、有機EL、無機EL、液晶プロジェクタ、時計等の表示機器;インクジェットプリンタ(インクヘッド)、電子写真装置(現像装置、定着装置、ヒートローラ、ヒートベルト)等の画像形成装置;半導体素子、半導体パッケージ、半導体封止ケース、半導体ダイボンディング、CPU、メモリ、パワートランジスタ、パワートランジスタケース等の半導体関連部品;リジッド配線板、フレキシブル配線板、セラミック配線板、ビルドアップ配線板、多層基板等の配線基板(配線板にはプリント配線板なども含まれる);真空処理装置、半導体製造装置、表示機器製造装置等の製造装置;断熱材、真空断熱材、輻射断熱材等の断熱装置;DVD(光ピックアップ、レーザー発生装置、レーザー受光装置)、ハードディスクドライブ等のデータ記録機器;カメラ、ビデオカメラ、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、顕微鏡、CCD等の画像記録装置;充電装置、リチウムイオン電池、燃料電池等のバッテリー機器等が挙げられる。
更に、本発明によって製造された熱伝導シートを用いて、放熱装置を構成することもできる。前記放熱装置は、本発明によって製造された熱伝導シートを発熱体と放熱体の間に介在させてなることを特徴とする。前記放熱装置の使用温度は、250℃を超えないことが好ましく、−20〜200℃の範囲であるのがより好ましい。使用温度が250℃を超えると、樹脂成分の柔軟性が急激に低下し、放熱特性が低下する場合があるからである。当該使用温度の発熱体としては、例えば、半導体パッケージ、ディスプレイ、LED、電灯等が挙げられる。
一方、放熱体としては、例えば、アルミ、銅のフィン・板等を利用したヒートシンク、ヒートパイプに接続されているアルミや銅のブロック、内部に冷却液体をポンプで循環させているアルミや銅のブロック、ペルチェ素子及びこれを備えたアルミや銅のブロック等が挙げられる。
前記放熱装置は、発熱体と放熱体との間に、本発明によって製造された熱伝導性に優れる熱伝導シートを介在させてなるため、優れた放熱特性を有することができる。また、本発明によって製造された熱伝導シートは適度な硬さと粘着性とを併せ持ち、取扱い性に優れるため、当該熱伝導シートを用いた放熱装置は、製造、保守点検、修理などにおける作業性や、耐用性に優れる。
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下の説明において、量を表す「%」および「部」は、特に断らない限り、質量基準である。
実施例および比較例において、プレ熱伝導シートのXY面内(水平面内)方向の熱伝導率および強度は、それぞれ以下の方法を使用して測定または評価した。
<XY面内方向の熱伝導率>
プレ熱伝導シートについて、面方向の熱拡散率αXY(m/s)、定圧比熱Cp(J/g・K)および密度(比重)ρ(g/m)を以下の方法で測定した。
[熱拡散率αXY
熱物性測定装置(株式会社ベテル製、製品名「サーモウェーブアナライザTA35」)を使用して測定した。
[定圧比熱]
示差走査熱量計(株式会社Rigaku製、製品名「DSC8230」)を使用し、10℃/分の昇温条件下、温度25℃における比熱を測定した。
[密度(比重)]
自動比重計(東洋精機社製、商品名「DENSIMETER−H」)を用いて測定した。
そして、得られた測定値を用いて下記式(II):
λXY=αXY×Cp×ρ ・・・(II)
よりプレ熱伝導シートの面内方向の熱伝導率λXY(W/m・K)を求めた。
<強度>
プレ熱伝導シートを、JIS K6251に準拠してダンベル2号にて打ち抜き成型し、試料片を作製した。引張試験機(株式会社島津製作所製、商品名「AG−IS20kN」)を用い、試料片の両末端から1cmの箇所をつまみ、温度23℃で、試料片の表面から出る法線に対して垂直な方向に、500mm/分の引張速度で引っ張り、破断強度(引張強度)を測定した。
(CNTを含む繊維状の炭素ナノ構造体Aの調製)
国際公開第2006/011655号の記載に従って、スーパーグロース法によってSGCNTを含む繊維状の炭素ナノ構造体Aを得た。
得られた繊維状の炭素ナノ構造体Aは、G/D比が3.0、BET比表面積が800m/g、質量密度が0.03g/cmであった。また、透過型電子顕微鏡を用い、無作為に選択した100本の繊維状の炭素ナノ構造体Aの直径を測定した結果、平均直径(Av)が3.3nm、直径の標本標準偏差(σ)に3を乗じた値(3σ)が1.9nm、それらの比(3σ/Av)が0.58、平均長さが100μmであった。また、得られた繊維状の炭素ナノ構造体Aは、主に単層CNT(「SGCNT」とも称する)により構成されていた。
(繊維状の炭素ナノ構造体Aの易分散性集合体の調製)
<分散液の調製>
繊維状炭素材料としての繊維状の炭素ナノ構造体Aを400mg量り取り、溶媒としてのメチルエチルケトン2L中に混ぜ、ホモジナイザーにより2分間撹拌し、粗分散液を得た。湿式ジェットミル(株式会社常光製、商品名「JN−20」)を使用し、得られた粗分散液を湿式ジェットミルの0.5mmの流路に100MPaの圧力で2サイクル通過させて、繊維状炭素ナノ構造体Aをメチルエチルケトンに分散させた。そして、固形分濃度0.20質量%の分散液Aを得た。
<溶媒の除去>
その後、得られた分散液Aをキリヤマろ紙(No.5A)を用いて減圧ろ過し、シート状の易分散性集合体を得た。
<製造例1:粉末状組成物A>
繊維状炭素材料としての炭素ナノ構造体Aの易分散性集合体を0.1質量部と、粒子状炭素材料としての膨張化黒鉛(伊藤黒鉛工業株式会社製、商品名「EC−50」、平均粒子径:250μm)を130質量部と、樹脂としての常温固体の熱可塑性フッ素ゴム(ダイキン工業株式会社製、商品名「ダイエルG―912」)80質量部と、可塑剤としてのリン酸エステル(大八化学工業株式会社製、商品名「TCP」)10質量部とを、溶媒としての酢酸エチル100質量部の存在下においてホバートミキサー(株式会社小平製作所製、商品名「ACM−5LVT型」)を用いて5分攪拌混合した。得られた混合物を真空乾燥機に投入して30分酢酸エチルの除去を行って、組成物を得た。得られた組成物を解砕機(大阪ケミカル株式会社製、商品名「D3V−10」)に投入して10秒間解砕した後、ふるい(東京スクリーン株式会社製、目開き:850μm)に通して、粉末状組成物を得た。以下、これを粉末状組成物Aと称する。
(実施例1)
製造例1で調製した粉末状組成物Aを、縦型ロールプレス機(ヒラノ技研工業株式会社製)を用いて、プレス用ロール間の間隙幅500μm、レオメータにて該粉末状組成物Aが80℃の温度で10000Pa・sの粘度を示す温度およびせん断速度に相当するロール温度(80℃)及びロール速度(1m/分)で圧延して、プレ熱伝導シートを得た。得られたプレ熱伝導シートについて、XY面内方向の熱伝導率および強度を測定した結果を表1に示す。
なお、レオメータは、粘弾性測定装置:商品名「RPA−2000、ラバープロセスアナライザー」(アルファテクノロジーズ社製)を用いた。5gの前記粉末状組成物Aを2枚のPETフィルム(厚さ10μm)で挟み、50℃から250℃の温度範囲にて50℃刻みで粘度測定を行った。測定条件は、周波数1.67Hz、動的ひずみ6.97%、せん断速度0〜30s−1の範囲とし、得られる複素粘度ηを粘度とみなした。
(実施例2)
製造例1で調製した粉末状組成物Aを用い、該粉末状組成物Aが50℃の温度で12000Pa・sの粘度を示す温度およびせん断速度に相当するロール温度(50℃)およびロール速度1m/分とした以外は、実施例1と同様にしてプレ熱伝導シートとして得た。得られたプレ熱伝導シートについて、XY面内方向の熱伝導率および強度を測定した結果を表1に示す。
(実施例3)
製造例1で調製した粉末状組成物Aを用い、該粉末状組成物Aが150℃の温度で8000Pa・sの粘度を示す温度およびせん断速度に相当するロール温度150℃およびロール速度1m/分とした以外は、実施例1と同様にしてプレ熱伝導シートとして得た。得られたプレ熱伝導シートについて、XY面内方向の熱伝導率および強度を測定した結果を表1に示す。
<製造例2:粉末状組成物B>
繊維状炭素材料としての炭素ナノ構造体Aの易分散性集合体を0.1質量部と、粒子状炭素材料としての膨張化黒鉛(伊藤黒鉛工業株式会社製、商品名「EC−50」、平均粒子径:250μm)を130質量部と、樹脂としての常温固体の熱可塑性フッ素ゴム(ダイキン工業株式会社製、商品名「ダイエルG―912」)45質量部と、樹脂としての熱可塑性液状フッ素ゴム(ダイキン工業株式会社製、商品名「ダイエルG―101」)40質量部と、可塑剤としてのリン酸エステル(大八化学工業株式会社製、商品名「TCP」)10質量部とを、溶媒としての酢酸エチル100質量部の存在下においてホバートミキサー(株式会社小平製作所製、商品名「ACM−5LVT型」)を用いて5分攪拌混合した。得られた混合物を真空乾燥機に投入して30分酢酸エチルの除去を行って、組成物を得た。得られた組成物を解砕機(大阪ケミカル株式会社製、商品名「D3V−10」)に投入して10秒間解砕した後、ふるい(東京スクリーン株式会社製、目開き:850μm)に通して、粉末状組成物を得た。以下、これを粉末状組成物Bと称する。
(実施例4)
製造例2で調製した粉末状組成物Bを、縦型ロールプレス機(ヒラノ技研工業株式会社製)を用いて、プレス用ロール間の間隙幅500μm、該粉末状組成物Aが100℃の温度で10000Pa・sの粘度を示す温度およびせん断速度に相当するロール温度(100℃)及びロール速度(1m/分)で圧延して、プレ熱伝導シートを得た。得られたプレ熱伝導シートについて、XY面内方向の熱伝導率および強度を測定した結果を表1に示す。
(アクリル樹脂の調製)
反応器に、アクリル酸2−エチルヘキシル94部とアクリル酸6部とからなる単量体混合物100部、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.03部および酢酸エチル700部を入れて均一に溶解し、窒素置換した後、80℃で6時間重合反応を行った。なお、重合転化率は97%であった。そして、得られた重合体を減圧乾燥して酢酸エチルを蒸発させ、粘性のある固体状のアクリル樹脂を得た。アクリル樹脂の重量平均分子量(Mw)は270000であり、分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))は3.1であった。なお、重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、テトラヒドロフランを溶離液とするゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより、標準ポリスチレン換算で求めた。
<比較製造例1:粉末状組成物C>
繊維状炭素材料としての炭素ナノ構造体Aの易分散性集合体を0.1質量部と、粒子状炭素材料としての膨張化黒鉛(伊藤黒鉛工業株式会社製、商品名「EC−50」、平均粒子径:250μm)を130質量部と、樹脂として上記調製方法で得た常温固体の熱可塑性アクリル樹脂80質量部と、可塑剤としてのリン酸エステル(大八化学工業株式会社製、商品名「TCP」)10質量部とを、溶媒としての酢酸エチル100質量部の存在下においてホバートミキサー(株式会社小平製作所製、商品名「ACM−5LVT型」)を用いて5分攪拌混合した。得られた混合物を真空乾燥機に投入して30分酢酸エチルの除去を行って、組成物を得た。得られた組成物を解砕機(大阪ケミカル株式会社製、商品名「D3V−10」)に投入して10秒間解砕した後、ふるい(東京スクリーン株式会社製、目開き:850μm)に通して、粉末状組成物を得た。以下、これを粉末状組成物Cとした。
(比較例1)
比較製造例1で調製した粉末状組成物Cを、縦型ロールプレス機(ヒラノ技研工業株式会社製)を用いて、プレス用ロール間の間隙幅500μm、該粉末状組成物Cが50℃の温度で10000Pa・sの粘度を示す温度およびせん断速度に相当するロール温度50℃およびロール速度1m/分で圧延して、プレ熱伝導シートを得た。得られたプレ熱伝導シートについて、XY面内方向の熱伝導率および強度を測定した結果を表1に示す。
Figure 2017183679
表1より、常温固体の熱可塑性樹脂と粒子状炭素材料とを含む組成物である粉末状組成物AまたはBをロールプレス機で本願所定の圧延条件で圧延してプレ熱伝導シートを製造した実施例1〜4では、強度およびXY面内(水平面内)方向への熱伝導率に優れたプレ熱伝導シートを製造できたことが分かる。一方、樹脂として常温固体の熱可塑性アクリル樹脂を用いた比較例1では、XY面内(水平面内)方向への熱伝導率が高かったため、水平面内方向への粒子状炭素材料の水平面内方向への配向性が高いと推察されたが、強度が不充分であった。
本発明のプレ熱伝導シートの製造方法は、強度および取扱い性に優れ、熱伝導性フィラーが水平面内方向に良好に配向したプレ熱伝導シートを好適に提供することができる。当該プレ熱伝導シートは、熱伝導シートの製造において一次シートとして好適に用いることができる。
また本発明の熱伝導シートの製造方法は、強度、取扱い性および熱伝導性に優れた熱伝導シートを好適に提供することができる。当該熱伝導シートは、各種機器および装置などにおいて使用される放熱材料、放熱部品、冷却部品、温度調節部品、電磁波シールド部材、電磁波吸収部材、被圧着物を加熱圧着する場合に被圧着物と加熱圧着装置との間に介在させる熱圧着用ゴムシートとして好適に使用することができる。また、当該熱伝導シートは、発熱体と放熱体との間に介在させることによって、放熱装置の製造にも好適に使用することができる。

Claims (5)

  1. 常温固体の熱可塑性フッ素樹脂と、粒子状炭素材料とを含む組成物を調製する工程と、
    該組成物を、少なくとも一対の圧延ロール間を通過させて圧延することにより、プレ熱伝導シートを得る工程と、を含み、
    該圧延を、該少なくとも一対の圧延ロール間の間隙幅を50〜2000μmとし、レオメータで50〜250℃の温度範囲にてせん断速度を変えて該組成物の粘度を測定した場合に該粘度が8000〜12000Pa・sの範囲となる温度およびせん断速度に相当するロール温度及びロール速度で行う、
    プレ熱伝導シートの製造方法。
  2. 前記粒子状炭素材料が、膨張化黒鉛である、請求項1に記載のプレ熱伝導シートの製造方法。
  3. 前記組成物中の前記粒子状炭素材料の含有割合が、前記常温固体の熱可塑性フッ素樹脂100質量部に対し、40〜900質量部である、請求項1又は2に記載のプレ熱伝導シートの製造方法。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法によって製造されたプレ熱伝導シートを、厚み方向に複数枚積層して、或いは、折畳または捲回して、積層体を形成する工程と、
    該積層体を、積層方向に対して45°以下の角度でスライスして、熱伝導シートを得る工程と、
    を含む、熱伝導シートの製造方法。
  5. 前記積層体を、前記プレ熱伝導シートの折畳によって形成する、請求項4に記載の熱伝導シートの製造方法。
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