JP2019178264A - 粉体組成物および熱伝導シートの製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
なお、本発明において、粉体組成物の「D10」、「D50」、および「D90」の値は、本明細書の実施例に記載の手法により得られる個数基準の粒度分布から求めることができる。ここで、(D90−D10)/D50の値は、「スパン値」とも呼ばれ、粒度分布の分布幅、即ち、粉体組成物を構成する複合粒子などの粒子の大きさのバラつきを表す指標となる。そして、スパン値が1.10以下であることは、粉体組成物の粒度分布がシャープになることを意味する。
また、本発明の熱伝導シートの製造方法によれば、熱伝導性に優れる熱伝導シートを効率良く製造することができる。
本発明の粉体組成物は、液状樹脂を含む樹脂と無機粒子とが複合化された複合粒子を含有する組成物である。そして、本発明の粉体組成物は、個数基準の粒度分布において、粒径の小さい方から累積10個数%、累積50個数%、累積90個数%に相当する粒径を、それぞれ、D10、D50、D90とする場合に、D50が0.80mm以上であり、(D90−D10)/D50の値が1.10以下である。
本発明の粉体組成物を成形して得られる1次シートは、粘着性に優れ、またこの1次シートを、例えば、積層等し、得られた積層体をスライスすれば、熱伝導性に優れる熱伝導シートを得ることができる。
粉体組成物に含まれる複合粒子は、少なくとも液状樹脂を含む樹脂と無機粒子とが複合化されてなる粒子である。即ち、液状樹脂を含む樹脂と無機粒子とが物理的に一体となることで、複合粒子を形成する。なお、複合粒子には、樹脂および無機粒子に加え、繊維状炭素材料や添加剤が複合化されていてもよい。
複合粒子に含まれる樹脂としては、少なくとも液状樹脂を用いる。液状樹脂を用いなければ、複合粒子を含む粉体組成物が硬くなるため、加圧により十分に平滑な1次シートを得ることができない。表面の起伏が激しい1次シートは、接着対象との接地面積が小さくなるため、結果として十分な粘着性を発揮することができない。なお、樹脂としては、液状樹脂のみを用いてもよいし、液状樹脂と固体樹脂の双方を用いてもよい。
液状樹脂としては、常温常圧下で液体である限り、特に限定されることなく、例えば、常温常圧下で液体の熱可塑性樹脂を用いることができる。
なお、本発明において、「常温」とは23℃を指し、「常圧」とは、1atm(絶対圧)を指す。
液状樹脂としては、例えば、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。中でも、液状樹脂としては、シリコーン樹脂およびフッ素樹脂の少なくともいずれかを含むことが好ましく、フッ素樹脂を含むことがより好ましい。液状樹脂がシリコーン樹脂およびフッ素樹脂の少なくともいずれかを含めば、得られる熱伝導シートの難燃性を向上させることができる。また、液状樹脂としてフッ素樹脂を用いれば、得られる熱伝導シートの耐熱性、耐油性、および耐薬品性を向上させることができる。
固体樹脂としては、常温常圧下で液体でない限り、特に限定されることなく、例えば、常温常圧下で固体の熱可塑性樹脂、常温常圧下で固体の熱硬化性樹脂、を用いることができる。
常温常圧下で固体の熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリ(アクリル酸2−エチルヘキシル)、アクリル酸とアクリル酸2−エチルヘキシルとの共重合体、ポリメタクリル酸またはそのエステル、ポリアクリル酸またはそのエステルなどのアクリル樹脂;シリコーン樹脂;フッ素樹脂;ポリエチレン;ポリプロピレン;エチレン−プロピレン共重合体;ポリメチルペンテン;ポリ塩化ビニル;ポリ塩化ビニリデン;ポリ酢酸ビニル;エチレン−酢酸ビニル共重合体;ポリビニルアルコール;ポリアセタール;ポリエチレンテレフタレート;ポリブチレンテレフタレート;ポリエチレンナフタレート;ポリスチレン;ポリアクリロニトリル;スチレン−アクリロニトリル共重合体;アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(ニトリルゴム);アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂);スチレン−ブタジエンブロック共重合体またはその水素添加物;スチレン−イソプレンブロック共重合体またはその水素添加物;ポリフェニレンエーテル;変性ポリフェニレンエーテル;脂肪族ポリアミド類;芳香族ポリアミド類;ポリアミドイミド;ポリカーボネート;ポリフェニレンスルフィド;ポリサルホン;ポリエーテルサルホン;ポリエーテルニトリル;ポリエーテルケトン;ポリケトン;ポリウレタン;液晶ポリマー;アイオノマー;などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
なお、本発明において、ゴムは、「樹脂」に含まれるものとする。
常温常圧下で固体の熱硬化性樹脂としては、例えば、天然ゴム;ブタジエンゴム;イソプレンゴム;ニトリルゴム;水素化ニトリルゴム;クロロプレンゴム;エチレンプロピレンゴム;塩素化ポリエチレン;クロロスルホン化ポリエチレン;ブチルゴム;ハロゲン化ブチルゴム;ポリイソブチレンゴム;エポキシ樹脂;ポリイミド樹脂;ビスマレイミド樹脂;ベンゾシクロブテン樹脂;フェノール樹脂;不飽和ポリエステル;ジアリルフタレート樹脂;ポリイミドシリコーン樹脂;ポリウレタン;熱硬化型ポリフェニレンエーテル;熱硬化型変性ポリフェニレンエーテル;などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
複合粒子を含む粉体組成物中の樹脂の含有割合は、特に制限されることなく、35質量%以上であることが好ましく、95質量%以下であることが好ましい。粉体組成物中に占める樹脂の割合が35質量%以上であれば、複合粒子を含む粉体組成物を用いて一次シートおよび熱伝導シートを成形する際の加工性を向上させることができる。一方、粉体組成物中に占める樹脂の割合が95質量%以下であれば、複合粒子を含む粉体組成物のブロッキングを抑制することができる。
また、樹脂中における液状樹脂の含有割合は、特に制限されることなく、40質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、100質量%以下であり、99質量%以下であることが好ましく、90質量%以下であることがより好ましい。樹脂中に占める液状樹脂の含有割合が40質量%以上であれば、複合粒子を含む粉体組成物を用いて一次シートおよび熱伝導シートを成形する際の加工性を向上させつつ、得られる熱伝導シートの熱伝導性を更に向上させることができる。一方、樹脂中に占める液状樹脂の含有割合が99質量%以下であれば、複合粒子のブロッキングを十分に抑制することができる。
複合粒子に含まれる無機粒子としては、熱伝導シートに熱伝導性を付与し得る任意の無機粒子を用いることができる。このような無機粒子としては、粒子状炭素材料、窒化ホウ素、窒化アルミニウムが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。そしてこれらの中でも、得られる熱伝導シートの熱伝導性を更に向上させる観点からは、粒子状炭素材料が好ましい。
粒子状炭素材料としては、特に限定されることなく、例えば、人造黒鉛、鱗片状黒鉛、薄片化黒鉛、天然黒鉛、酸処理黒鉛、膨張性黒鉛、膨張化黒鉛などの黒鉛;カーボンブラック;などを用いることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
中でも、粒子状炭素材料としては、膨張化黒鉛を用いることが好ましい。膨張化黒鉛を使用すれば、得られる熱伝導シートの熱伝導性をより一層向上させることができる。
ここで、無機粒子の粒子径は、体積平均粒子径で、50μm以上であることが好ましく、150μm以上であることがより好ましく、200μm以上であることが更に好ましく、400μm以下であることが好ましく、300μm以下であることがより好ましい。無機粒子の粒子径が50μm以上であれば、得られる熱伝導シート中で無機粒子同士の熱伝導パスを良好に形成することができるため、当該熱伝導シートの熱伝導性を更に向上させることができる。一方、無機粒子の粒子径が400μm以下であれば、1次シートの平滑性を十分に確保することで、結果として当該1次シートに一層優れた粘着性を発揮させることができる。
なお、本発明において、無機粒子の「体積平均粒子径」は、例えば、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置(堀場製作所製、型式「LA−960」)を用いて、レーザー回折法を用いて測定された粒子径分布において、小径側から計算した累積体積が50%となるときの粒子径として求めることができる。
ここで、無機粒子の体積平均粒子径や後述するアスペクト比を測定する際には、特に限定されることなく、例えば、粉体組成物(複合粒子)に含まれている樹脂に対する良溶媒を用いて樹脂を溶解させる、または、樹脂を熱分解させる等の任意の手法を用いて、粉体組成物(複合粒子)を調製する際に用いる複合混合物から無機粒子を取り出して行うことができる。
また、無機粒子のアスペクト比(長径/短径)は、1以上10以下であることが好ましく、1以上5以下であることがより好ましい。
なお、本発明において、「無機粒子のアスペクト比」は、無機粒子をSEM(走査型電子顕微鏡)で観察し、任意の50個の無機粒子について、最大径(長径)と、最大径に直交する方向の粒子径(短径)とを測定し、長径と短径の比(長径/短径)の平均値を算出することにより求めることができる。
複合粒子を含む粉体組成物中の無機粒子の含有割合は、特に制限されることなく、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、50質量%以下であることが好ましく、45質量%以下であることがより好ましい。粉体組成物中に占める無機粒子の割合が5質量%以上であれば、得られる熱伝導シートの熱伝導性を更に向上させることができる。一方、粉体組成物中に占める無機粒子の割合が50質量%以下であれば、複合粒子を含む粉体組成物を用いて一次シートおよび熱伝導シートを成形する際の加工性を向上させることができる。
複合粒子が任意に含みうる繊維状炭素材料としては、特に限定されることなく、例えば、カーボンナノチューブ(以下、「CNT」と称することがある。)、気相成長炭素繊維、有機繊維を炭化して得られる炭素繊維、およびそれらの切断物などを用いることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
複合粒子に繊維状炭素材料を含有させれば、得られる熱伝導シートの熱伝導性を更に向上させることができると共に、無機粒子の粉落ちを防止することもできる。なお、繊維状炭素材料を配合することで無機粒子の粉落ちを防止することができる理由は、明らかではないが、繊維状炭素材料が三次元網目構造を形成することにより、熱伝導性や強度を高めつつ無機粒子の脱離を防止しているためであると推察される。
なお、繊維状炭素材料のアスペクト比(長径/短径)は、通常10超である。そして、繊維状炭素材料のアスペクト比は、上述した無機粒子のアスペクト比と同様にして測定することができる。
―性状―
ここで、繊維状炭素材料として好適に使用し得る、カーボンナノチューブを含む繊維状炭素ナノ構造体は、CNTのみからなるものであってもよいし、CNTと、CNT以外の繊維状炭素ナノ構造体との混合物であってもよい。
なお、3層以上の多層カーボンナノチューブのみからなる繊維状炭素ナノ構造体のラマンスペクトルには、RBMが存在しない。従って、CNTを含む繊維状炭素ナノ構造体は、ラマン分光法を用いて評価した際に、Radial Breathing Mode(RBM)のピークを有することが好ましい。
なお、「繊維状炭素ナノ構造体の平均直径(Av)」および「繊維状炭素ナノ構造体の直径の標準偏差(σ:標本標準偏差)」は、それぞれ、透過型電子顕微鏡を用いて無作為に選択した繊維状炭素ナノ構造体100本の直径(外径)を測定して求めることができる。そして、CNTを含む繊維状炭素ナノ構造体の平均直径(Av)および標準偏差(σ)は、CNTを含む繊維状炭素ナノ構造体の製造方法や製造条件を変更することにより調整してもよいし、異なる製法で得られたCNTを含む繊維状炭素ナノ構造体を複数種類組み合わせることにより調整してもよい。
なお、本発明において、「BET比表面積」とは、BET法を用いて測定した窒素吸着比表面積を指す。
そして、上述した性状を有するCNTを含む繊維状炭素ナノ構造体は、例えば、カーボンナノチューブ製造用の触媒層を表面に有する基材上に、原料化合物およびキャリアガスを供給して、化学的気相成長法(CVD法)によりCNTを合成する際に、系内に微量の酸化剤(触媒賦活物質)を存在させることで、触媒層の触媒活性を飛躍的に向上させるという方法(スーパーグロース法;国際公開第2006/011655号参照)に準じて、効率的に製造することができる。なお、以下では、スーパーグロース法により得られるカーボンナノチューブを「SGCNT」と称することがある。
複合粒子を含む粉体組成物中の繊維状炭素材料の含有割合は、0.01質量%以上であることが好ましく、0.05質量%以上であることがより好ましく、1質量%以下であることが好ましく、0.2質量%以下であることがより好ましい。粉体組成物中に占める繊維状炭素材料の割合が0.01質量%以上であれば、得られる熱伝導シートの熱伝導性および強度を更に向上させることができると共に、無機粒子の粉落ちを十分に防止できる。一方、粉体組成物中に占める繊維状炭素材料の割合が1質量%以下であれば、複合粒子を含む粉体組成物を用いて一次シートおよび熱伝導シートを成形する際の加工性を確保することができる。
複合粒子が任意に含みうる添加剤としては、特に限定されることなく、例えば、脂肪酸エステルなどの可塑剤;赤リン系難燃剤、リン酸エステル系難燃剤などの難燃剤;フッ素オイル(ダイキン工業株式会社製のデムナムシリーズ)のように可塑剤と難燃剤とを兼ねる添加剤;ウレタンアクリレートなどの靭性改良剤;酸化カルシウム、酸化マグネシウムなどの吸湿剤;シランカップリング剤、チタンカップリング剤、酸無水物などの接着力向上剤;ノニオン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤などの濡れ性向上剤;無機イオン交換体などのイオントラップ剤;等が挙げられる。なお、添加剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
なお、粉体組成物は、複合粒子以外の成分を含んでいてもよい。複合粒子以外の成分としては、例えば、複合粒子を含む粉体組成物の製造過程(特には、複合化を行う製造工程)において複合粒子に包含されず、複合粒子とは別個に存在する樹脂、無機粒子、繊維状炭素材料、および添加剤が挙げられる。しかしながら、本発明の粉体組成物中における複合粒子以外の成分の含有割合は、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることが更に好ましく、0質量%以下である(即ち、粉体組成物は複合粒子のみからなる)ことが特に好ましい。
ここで、粉体組成物は、個数基準の粒度分布から得られるD50が、0.80mm以上であることが必要であり、1.00mm以上であることが好ましく、1.50mm以上であることがより好ましく、2.50mm以上であることが更に好ましく、2.80mm以上であることが特に好ましく、5.00mm以下であることが好ましく、4.50mm以下であることがより好ましく、4.20mm以下であることが更に好ましい。D50が0.80mm以上の粉体組成物を用いることで、粉体組成物中を1次シートに成形する際に、粉体組成物に良好にせん断が加わり、無機粒子を良好に配向させることができる。結果として、1次シートを用いて得られる熱伝導シートに優れた熱伝導性を発揮させることができる。一方、D50が5.00mm以下の粉体組成物を用いれば、1次シートへの成形が容易となり、また1次シートの粘着性を十分に確保しつつ、1次シートの比重を高めて耐引っ張り性を向上させることができる。
なお、粉体組成物のD50は、例えば、後述する分級の条件を変更することにより適宜調整することができる。
なお、粉体組成物のスパン値は、例えば、後述する分級の条件を変更することにより適宜調整することができる。
そして、D50が0.80mm以上であること、スパン値が1.10以下であることの双方を満たす粉体組成物を成形して得られる1次シートは、優れた粘着性を発揮することができる。
複合粒子を含む粉体組成物の調製方法は、液状樹脂を含む樹脂と無機粒子を複合化させることができ、そして、得られる粉体組成物の粒度分布(個数基準)から得られるD50を所定の値以上とし且つスパン値を所定の値以下とできれば、特に限定されない。粉体組成物は、例えば、液状樹脂を含む樹脂と無機粒子を複合化して複合混合物を得る工程(複合工程)と、複合工程において得られた複合混合物を粉砕して粉砕物を得る工程(粉砕工程)と、粉砕工程において得られた粉砕物を少なくとも2つの粒子群に分級する工程(分級工程)とを経て製造することができる。
複合工程では、液状樹脂を含む樹脂と、無機粒子と、任意に用いられるその他の成分とを複合化して複合混合物を得る。複合化の方法としては、特に限定されないが、上述した成分をニーダーなどの既知の混練装置を用いて混練する方法が好ましい。混練は、酢酸エチルやメチルエチルケトン等の溶媒の存在下で行ってもよい。また、混練温度は、例えば5℃以上200℃以下とすることができる。
粉砕工程では、複合工程で得られた複合混合物を粉砕することで、粉砕物を得る。複合混合物を粉砕する方法としては、特に限定されず、既知の粉砕装置を用いて行うことができる。
なお、粉砕工程時に追添加する無機粒子は、複合混合物に含まれる無機粒子と同じ種類の無機粒子であってもよく、異なる種類の無機粒子であってもよい。
また、粉砕工程における粉砕条件は、粉砕後の所望の粒子径に合わせて粉砕装置、粉砕強度などを適宜調整すればよい。
分級工程では、粉砕工程において得られた粉砕物を少なくとも2つの粒子群に分級する。分級工程を経ることで、所望のD50およびスパン値を有する本発明の粉体組成物を容易に調製することができる。
ここで、分級は、粉砕物を粒子径の範囲が異なる複数の粒子群に分離可能であれば特に限定されることなく、例えば、ふるい分法、強制渦流型遠心分級機(ミクロンセパレーター、ターボプレックス、ターボクラシファイアー、スーパーセパレーター)、慣性分級機(改良型バーチュウアルインパクター、エルボジェット)等の気流分級機が使用できる。また湿式の沈降分離法や遠心分級法等も使用可能である。中でも、作業の簡便性の観点より、所望の目開きを有するふるい分法が好ましく、当該ふるい分法は手作業で行うことがより好ましい。
ここで、分級温度は、特に制限なく、例えば25℃下で行うことができる。
上述した本発明の粉体組成物を用いて、熱伝導シートを製造することができる。例えば、上述した本発明の粉体組成物を加圧して1次シートを得る工程(加圧工程)と、1次シートを厚み方向に複数枚積層して、或いは、1次シートを折り畳むまたは捲き回して、積層体を得る工程(積層工程)と、積層体を積層方向に対して45°以下の角度でスライスする工程(スライス工程)とを含む、本発明の熱伝導シートの製造方法により、熱伝導性に優れる熱伝導シートを効率良く製造することができる。
加圧工程では、複合粒子を含む粉体組成物を、加圧してシート状に成形することにより1次シートを得る。
なお、1次シートの厚みは、特に限定されることなく、例えば、0.05mm以上2mm以下とすることができる。また、1次シートの比重は、特に限定されることなく、1.50g/cm3以上2.50g/cm3以下とすることができる。
積層工程では、上述の加圧工程で得られた1次シートを厚み方向に複数枚積層して、或いは、上述の加圧工程で得られた1次シートを折り畳みまたは捲き回して、積層体を得る。ここで、1次シートの積層による積層体の形成は、特に限定されることなく、積層装置を用いて行ってもよく、手作業にて行ってもよい。また、熱伝導シートの折り畳みによる積層体の形成は、特に限定されることなく、折り畳み機を用いて1次シートを一定幅で折り畳むことにより行うことができる。さらに、1次シートの捲き回しによる積層体の形成は、特に限定されることなく1次シートの短手方向または長手方向に平行な軸の回りに1次シートを捲き回すことにより行うことができる。
スライス工程では、上述の積層工程で得られた積層体を、積層方向に対して45°以下の角度でスライスし、積層体のスライス片よりなる熱伝導シートを得る。ここで、積層体をスライスする方法としては、特に限定されることなく、例えば、ワイヤーソー法、マルチブレード法、レーザー加工法、ウォータージェット法、ナイフ加工法等が挙げられる。中でも、熱伝導シートの厚みを均一にし易い点で、ナイフ加工法が好ましい。また、積層体をスライスする際の切断具としては、特に限定されることなく、スリットを有する平滑な盤面と、当該スリット部より突出した刃部とを有するスライス部材(例えば、鋭利な刃を備えたカッター、カンナ、スライサー)を用いることができる。
実施例および比較例において、粉体組成物の粒度分布(D10、D50、D90およびスパン値)、1次シートの粘着性、耐引っ張り性、および比重、熱伝導シートの熱伝導性は、それぞれ以下の方法に従って測定または評価した。
得られた粉体組成物0.2〜0.5gについて、粒状物外観測定器(サタケ社製、「グレインスキャナー」)にて粉体組成物中の粒子の長軸の長さを測定して、個数基準の粒度分布を得た。得られた粒度分布から、D10、D50、D90を求め、スパン値((D90−D10)/D50)を算出した。
<1次シートの粘着性>
1次シートの粘着性は、プローブタック試験機(レスカ社製、製品名「TAC1000」)を使用して測定した。まず、1次シートの略中心箇所に対して、温度23℃、圧力0.1MPaの条件で、直径10mmの平らなプローブを10秒間押し付けた。そして、1次シートに押しつけたプローブを複合シートから引き離す際に要する力(剥離強度、N)を測定した。引き離す際に要する力が大きいほど、1次シートが粘着性に優れることを示す。
<1次シートの耐引っ張り性>
1次シートを、JIS K6251に準拠してダンベル2号にて打ち抜き、試料片を作製した。引っ張り試験機(島津製作所社製、製品名「AG−IS20kN」)を用い、試料片の両末端から1cmの箇所をつまみ、温度23℃で、試料片の表面から出る法線に対して垂直な方向(すなわち、表面と平行な方向)に、25mm/分の引っ張り速度で引っ張り、引っ張り強度(破断強度、МPa)を測定した。引っ張り強度の値が大きいほど、1次シートが耐引っ張り性に優れることを示す。
<1次シートの比重>
自動比重計(東洋精機社製、製品名「DENSIMETER−H」)を用いて測定した。
<熱伝導シートの熱伝導性>
熱伝導シートの熱抵抗値を、樹脂材料熱抵抗試験器(日立テクノロジーアンドサービス社製、製品名「C47108」)を用いて測定した。まず、1cm角の略正方形に切り出した熱伝導シートを試料とし、試料温度50℃において、0.10MPaを加えた時の熱抵抗値(℃/W)を測定した。熱抵抗値が小さいほど熱伝導シートが熱伝導性に優れ、例えば、発熱体と放熱体との間に介在させて放熱装置とした際の放熱特性に優れていることを示す。
<CNT易分散集合体の調製>
上述のスーパーグロース法によってSGCNTを含む繊維状炭素材料を得た。得られた繊維状炭素材料は、BET比表面積が800m2/gであった。また、透過型電子顕微鏡を用い、無作為に選択した100本の繊維状炭素材料の直径および長さを測定した結果、平均直径が3.3nm、平均長さが100μmであった。更に、得られた繊維状炭素材料は、主に単層CNTにより構成されていた。
次に、得られた繊維状炭素材料を、分散媒としてのメチルエチルケトンに分散させて得た分散液から、ろ紙(桐山社製、No.5A)を用いて減圧ろ過して溶媒を除去することにより、繊維状炭素材料としての、SGCNTを含むCNT易分散集合体を得た。CNTなどの繊維状炭素材料は一般的に凝集し易いため、このように易分散性集合体の状態にすることにより、他の成分との混合を容易にすることができる。
<複合工程>
常温常圧下で液体の熱可塑性フッ素樹脂(ダイキン工業社製、商品名「ダイエルG−101」)80部と、常温常圧下で固体の熱可塑性フッ素樹脂(スリーエムジャパン社製、商品名「ダイニオンFC2211」、ムーニー粘度:27ML1+4(100℃))20部と、粒子状炭素材料としての膨張化黒鉛(伊藤黒鉛工業社製、商品名「EC100」、体積平均粒子径:250μm)45部と、繊維状炭素材料としての上述したCNT易分散集合体0.1部と、を、加圧ニーダー(日本スピンドル社製)を用いて、温度150℃にて20分間撹拌混合して、複合混合物を得た。
<粉砕工程>
上記複合工程で得られた複合混合物を、粉砕装置としてのFMミキサ(日本コークス工業社製「FM150」)により回転速度2100rpmで粉砕しながら、上記と同様の膨張化黒鉛5部を更に投入し、材料温度を60℃に保った状態で撹拌して(撹拌熱で温度上昇するため装置温度は5℃とした)、粉砕物を得た。
<分級工程>
上記粉砕工程で得られた粉砕物を、ふるい(東京スクリーン製、目開き:上から、3400μm、2800μm、2000μm、1000μm、810μm)を用いて25℃にて分級することにより、粒子群A(目開き810μmのふるい上)、粒子群B(目開き1000μmのふるい上)、粒子群C(目開き2000μmのふるい上)、粒子群D(目開き2800μmのふるい上)、粒子群E(目開き3400μmのふるい上)、の5つの粒子群を得た。これらのうち粒子群A(目開き810μmのふるい上)を複合粒子からなる粉体組成物とし、粒度分布(D10、D50、D90およびスパン値)を測定した。結果を表1に示す。
<加圧工程>
上述の通り得られた複合粒子からなる粉体組成物50gを、サンドブラスト処理を施した厚さ50μmのPETフィルム(保護フィルム)2枚で挟み、ロール間隙350μm、ロール温度70℃、ロール線圧50kg/cm、ロール速度1m/分の条件にて圧延成形することにより、厚さ0.5mmの1次シートを得た。得られた1次シートについて、粘着性、耐引っ張り性、および比重を測定または評価した。結果を表1に示す。
<積層工程>
上述の通り得られた1次シートを縦50mm×横50mm×厚さ0.5mmに裁断し、裁断後の1次シートを、1次シートの厚み方向に120枚積層した。積層後、更に、温度23℃、圧力0.1MPaで1分間、積層方向に加圧することにより、高さが約60mmの積層体を得た。
<スライス工程>
その後、スライスに必要な長さを残して、得られた積層体の上面の全体を金属板で押え、積層方向に(即ち、上から)0.1MPaの圧力をかけて、積層体を固定した。なお、積層体の側面、背面の固定は行わなかった。このとき、積層体の温度は25℃であった。
次いで、サーボプレス機(放電精密加工研究所製)のプレス部分に、図1に示す形状の切断刃10(両刃、刃角2θ:20°、刃部の最大厚み:3.5mm、材質:超鋼、ロックウェル硬度:91.5、刃面のシリコン加工:なし、全長:200mm)を取り付け、スライス速度200mm/秒、スライス幅100μmの条件で積層体の積層方向(換言すれば、積層された1次シートの主面の法線方向)にスライスして、縦50mm×横60mm×厚み0.15mmの熱伝導シート30を得た。なお、スライス時の切断刃の姿勢は、図1に示す角度αが10°になり、刃面11の延在方向が積層体20のスライス面21と平行な方向になる姿勢とした。
そして、得られた熱伝導シートについて、熱伝導性を評価した。結果を表1に示す。
分級工程において得られた粒子群B(目開き1000μmのふるい上)を複合粒子からなる粉体組成物とした以外は、実施例1と同様にして、1次シート、熱伝導シートを作製した。そして、各種測定および評価を行った。結果を表1に示す。
分級工程において得られた粒子群C(目開き2000μmのふるい上)を複合粒子からなる粉体組成物とした以外は、実施例1と同様にして、1次シート、熱伝導シートを作製した。そして、各種測定および評価を行った。結果を表1に示す。
分級工程において得られた粒子群D(目開き2800μmのふるい上)を複合粒子からなる粉体組成物とした以外は、実施例1と同様にして、1次シート、熱伝導シートを作製した。そして、各種測定および評価を行った。結果を表1に示す。
分級工程において得られた粒子群E(目開き3400μmのふるい上)を複合粒子からなる粉体組成物とした以外は、実施例1と同様にして、1次シート、熱伝導シートを作製した。そして、各種測定および評価を行った。結果を表1に示す。
粉砕工程において得られた粉砕物を、分級工程を経ずにそのまま複合粒子からなる粉体組成物とした以外は、実施例1と同様にして、1次シート、熱伝導シートを作製した。そして、各種測定および評価を行った。結果を表1に示す。
以下のようにして調製した粉体組成物を用いた以外は、実施例1と同様にして、1次シート、熱伝導シートを作製した。そして、各種測定および評価を行った。結果を表1に示す。
なお、得られた粉体組成物について、別途実施例1と同様に分級を試みたが、粉体同士の凝集が激しく、分級することができなかった。
<粉体組成物の調製>
常温常圧下で液体の熱可塑性フッ素樹脂(ダイキン工業社製、商品名「ダイエルG−101」)80部と、常温常圧下で固体の熱可塑性フッ素樹脂(スリーエムジャパン社製、商品名「ダイニオンFC2211」、ムーニー粘度:27ML1+4、100℃)20部と、粒子状炭素材料としての膨張化黒鉛(伊藤黒鉛工業社製、商品名「EC100」、体積平均粒子径:250μm)50部と、繊維状炭素材料としての上述したCNT易分散集合体0.1部とを、加圧ニーダー(日本スピンドル製)を用いて、温度150℃にて20分間撹拌混合して、複合混合物を得た。次に、得られた複合混合物を粉砕機に投入して、10秒間解砕することにより、粉体組成物を得た。
複合工程において、常温常圧下で液体の熱可塑性フッ素樹脂80部に替えて、常温常圧下で固体の熱可塑性フッ素樹脂(スリーエムジャパン社製、商品名「ダイニオンFC2211」、ムーニー粘度:27ML1+4、100℃)80部を用いた以外は、実施例4と同様にして、粉体組成物、1次シート、熱伝導シートを作製した。そして、各種測定および評価を行った。結果を表1に示す。
一方、表1より、(D90−D10)/D50の値が所定の値超である粉体組成物を用いた比較例1は、実施例1〜5に比して、1次シートの粘着性および熱伝導シートの熱伝導性に劣ることが分かる。
また、表1より、D50が所定の値未満である粉体組成物を用いた比較例2は、実施例1〜5に比して、熱伝導シートの熱伝導性に劣ることが分かる。
更に、表1より、液状樹脂を用いず、固体樹脂と無機粒子とを複合してなる複合粒子を用いた比較例3は、実施例1〜5に比して、1次シートの粘着性および熱伝導シートの熱伝導性に劣ることが分かる。
また、本発明の熱伝導シートの製造方法によれば、熱伝導性に優れる熱伝導シートを効率良く製造することができる。
11 刃面
20 積層体
21 スライス面
30 熱伝導シート
Claims (5)
- 液状樹脂を含む樹脂と、無機粒子とが複合化された複合粒子を含み、
個数基準の粒度分布において、粒径の小さい方から累積10個数%、累積50個数%、累積90個数%に相当する粒径を、それぞれ、D10、D50、D90とする場合に、D50が0.80mm以上であり、(D90−D10)/D50の値が1.10以下である、粉体組成物。 - 前記(D90−D10)/D50の値が、0.60以下である、請求項1に記載の粉体組成物。
- 前記液状樹脂がシリコーン樹脂とフッ素樹脂の少なくとも何れかを含む、請求項1または2に記載の粉体組成物。
- 前記無機粒子が粒子状炭素材料を含む、請求項1〜3の何れかに記載の粉体組成物。
- 請求項1〜4の何れかに記載の粉体組成物を加圧して1次シートを得る工程と、
前記1次シートを厚み方向に複数枚積層して、或いは、前記1次シートを折り畳むまたは捲き回して、積層体を得る工程と、
前記積層体を積層方向に対して45°以下の角度でスライスする工程と、
を含む、熱伝導シートの製造方法。
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