JP2021004283A - 熱伝導シートおよびその製造方法 - Google Patents

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Yasuyuki Murakami
康之 村上
みずき 松下
Mizuki Matsushita
みずき 松下
秀親 秋山
Hidechika Akiyama
秀親 秋山
暁 永尾
Akira Nagao
暁 永尾
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Abstract

【課題】熱伝導性および表面平滑性に優れる薄厚の熱伝導シートを提供する。【解決手段】樹脂と、体積平均粒子径が150μm以下の粒子状熱伝導性充填材とを含有する樹脂ブロックを片刃の切断刃でスライスして熱伝導シートを得る工程を含み、切断刃が、刃先を備える刃部と、刃部の刃先側とは反対側に位置する平板状の平部とを有し、平部は、刃厚方向一方側に位置する第一面と、刃厚方向他方側に位置する第二面とを有し、刃先は、第一面よりも刃厚方向一方側に位置し、刃部は、刃先を通って第一面に平行な仮想面よりも刃厚方向他方側に位置し、第一面と刃先との間に亘って延在する逃げ面と、第二面と刃先との間に亘って延在するすくい面とを有する、熱伝導シートの製造方法。【選択図】図1

Description

本発明は、熱伝導シートおよび熱伝導シートの製造方法に関するものである。
近年、プラズマディスプレイパネル(PDP)や集積回路(IC)チップ等の電子部品は、高性能化に伴って発熱量が増大している。その結果、電子部品を用いた電子機器では、電子部品の温度上昇による機能障害対策を講じる必要が生じている。
電子部品の温度上昇による機能障害対策としては、一般に、電子部品等の発熱体に対し、金属製のヒートシンク、放熱板、放熱フィン等の放熱体を取り付けることによって、放熱を促進させる方法が採られている。そして、放熱体を使用する際には、発熱体から放熱体へと熱を効率的に伝えるために、熱伝導率が高いシート状の部材(熱伝導シート)を介在させた状態で発熱体と放熱体とを密着させている。
従って、発熱体と放熱体との間に挟み込んで使用される熱伝導シートには、優れた熱伝導性を発揮することが求められている。
そして、優れた熱伝導性を発揮し得る熱伝導シートの製造方法としては、樹脂および粒子状炭素材料を含むプレ熱伝導シートの積層体よりなる樹脂ブロックをカンナや片刃の切断刃等の切断具を用いてスライスして熱伝導シートを得る方法が知られている(例えば、特許文献1,2参照)。
特開2018−129377号公報 国際公開第2017/145956号
ここで、上記従来の製造方法で得られた熱伝導シートには、表面の平滑性を向上させるという点において改善の余地があった。
そこで、本発明者は、熱伝導シートの表面平滑性を向上させる手法として、粒子径の小さな粒子状熱伝導性充填材を使用することに着想した。
しかし、本発明者が更に検討を重ねたところ、片刃の切断刃を用いて樹脂ブロックをスライスする上記従来の熱伝導シートの製造方法では、体積平均粒子径の小さな粒子状熱伝導性充填材を含む樹脂ブロックを薄くスライスすることができず、薄厚で表面が平滑な熱伝導シートを得ることができないことが分かった。
そこで、本発明は、熱伝導性および表面平滑性に優れる薄厚の熱伝導シートを提供することを目的とする。
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討を行なった。そして、本発明者は、所定の形状を有する片刃の切断刃を使用すれば、体積平均粒子径の小さな粒子状熱伝導性充填材を含む樹脂ブロックを薄くスライスして、熱伝導性および表面平滑性に優れる薄厚の熱伝導シートを得ることができることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の熱伝導シートは、樹脂と粒子状熱伝導性充填材とを含む熱伝導シートであって、前記粒子状熱伝導性充填材の体積平均粒子径が150μm以下であり、厚み方向の熱伝導率が15W/m・K以上であり、平均厚みが30μm以上100μm以下であることを特徴とする。このような性状を有する熱伝導シートは、熱伝導性および表面平滑性に優れており、また、薄厚である。
なお、本発明において、「体積平均粒子径」、「熱伝導率」および「平均厚み」は、それぞれ、実施例に記載の方法を用いて測定することができる。
ここで、本発明の熱伝導シートは、厚みの分布が3μm以下であることが好ましい。厚みの分布が上記範囲内であれば、平滑な発熱体と平滑な放熱体との間に挟んで実装した際に、厚みのバラツキが無いことからいずれの面に対しても過不足なく密着することができる。
なお、本発明において、「厚みの分布」は、実施例に記載の方法を用いて測定することができる。
また、本発明の熱伝導シートは、表面粗さSaが両面共に2.0μm以下であることが好ましい。表面粗さSaが両面共に上記上限値以下であれば、発熱体や放熱体との密着が良好になり、界面抵抗を減らすことができるので、全体の熱特性を向上させることが出来る。
なお、本発明において、「表面粗さSa」は、実施例に記載の方法を用いて測定することができる。
更に、本発明の熱伝導シートは、一方の表面の表面粗さSaと、他方の表面のSaとの差が絶対値で0.20μm以下であることが好ましい。一方の表面と他方の表面との表面粗さの差が上記上限値以下であれば、実装時に熱伝導シートの表と裏を気にすることなく使用することができ、結果として作業性が高まる。
そして、本発明の熱伝導シートは、前記樹脂100質量部当たり、前記粒子状熱伝導性充填材を40質量部以上130質量部以下含むことが好ましい。粒子状熱伝導性充填材の含有量が上記下限値以上であれば、熱伝導シートの熱伝導性を更に高めることができる。また、粒子状熱伝導性充填材の含有量が上記上限値以下であれば、熱伝導シートの表面平滑性を良好に向上させることができる。
また、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の熱伝導シートの製造方法は、上述した熱伝導シートの製造方法であって、樹脂と、体積平均粒子径が150μm以下の粒子状熱伝導性充填材とを含有する樹脂ブロックを片刃の切断刃でスライスして熱伝導シートを得る工程を含み、前記切断刃が、刃先を備える刃部と、前記刃部の前記刃先側とは反対側に位置する平板状の平部とを有し、前記平部は、刃厚方向一方側に位置する第一面と、刃厚方向他方側に位置する第二面とを有し、前記刃先は、前記第一面よりも刃厚方向一方側に位置し、前記刃部は、前記刃先を通って前記第一面に平行な仮想面よりも刃厚方向他方側に位置し、前記第一面と前記刃先との間に亘って延在する逃げ面と、前記第二面と前記刃先との間に亘って延在するすくい面とを有することを特徴とする。このように、所定の形状を有する片刃の切断刃を使用すれば、体積平均粒子径が150μm以下の粒子状熱伝導性充填材を含有する樹脂ブロックであっても良好にスライスし、熱伝導性および表面平滑性に優れる薄厚の熱伝導シートを得ることができる。
ここで、前記逃げ面は、前記刃先を通って前記仮想面と交差する方向に延在する第一逃げ面と、前記第一面と同一平面上で、前記第一逃げ面の前記刃先側とは反対側の端縁と前記第一面との間で延在する第二逃げ面とを有することが好ましい。逃げ面が上述した形状であれば、樹脂ブロックを更に良好にスライスすることができる。
また、前記すくい面は、前記第二面と平行な面に対する交差角が互いに異なる2以上の傾斜面からなることが好ましい。すくい面が上述した構成を有していれば、切断刃の剛性が良好になり、スライス時に刃が撓まなくなることで、厚みのバラツキの少ない熱伝導シートを得ることができる。
本発明によれば、熱伝導性および表面平滑性に優れる薄厚の熱伝導シートを提供することができる。
(a)〜(c)は、本発明に従う熱伝導シートの製造方法の一例を用いて熱伝導シートを製造する過程を模式的に示す説明図である。 片刃の切断刃の一例の刃厚方向に沿う断面図である。 片刃の切断刃の他の例の刃厚方向に沿う断面図である。 比較例で用いた片刃の切断刃の刃厚方向に沿う断面図である。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
ここで、本発明の熱伝導シートは、電子部品等の発熱体と、金属製のヒートシンク、放熱板、放熱フィン等の放熱体との間に挟み込んで使用されるものであり、例えば本発明の熱伝導シートの製造方法を用いて製造することができる。
(熱伝導シート)
本発明の熱伝導シートは、樹脂と、粒子状熱伝導性充填材とを含み、任意に繊維状熱伝導性充填材および/または添加剤を更に含み得る。また、本発明の熱伝導シートは、粒子状熱伝導性充填材の体積平均粒子径が150μm以下であり、厚み方向の熱伝導率が15W/m・K以上であり、平均厚みが30μm以上100μm以下であることを必要とする。粒子状熱伝導性充填材の体積平均粒子径が150μm以下であれば、平均厚みが30μm以上100μm以下の薄厚の熱伝導シートであっても、表面平滑性を十分に向上させることができる。また、厚み方向の熱伝導率が15W/m・K以上であれば、優れた熱伝導性を発揮することができる。
<樹脂>
ここで、樹脂としては、常温常圧下で液体の樹脂と、常温常圧下で固体の樹脂との少なくとも一方を用いることができる。なお、本明細書において、「常温」とは23℃を指し、「常圧」とは、1atm(絶対圧)を指す。
常温常圧下で液体の樹脂としては、常温常圧下で液体の熱可塑性樹脂および常温常圧下で液体の熱硬化性樹脂が挙げられる。
そして、常温常圧下で液体の熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂などが挙げられる。
また、常温常圧下で液体の熱硬化性樹脂としては、例えば、天然ゴム;ブタジエンゴム;イソプレンゴム;ニトリルゴム;水素化ニトリルゴム;クロロプレンゴム;エチレンプロピレンゴム;塩素化ポリエチレン;クロロスルホン化ポリエチレン;ブチルゴム;ハロゲン化ブチルゴム;ポリイソブチレンゴム;エポキシ樹脂;ポリイミド樹脂;ビスマレイミド樹脂;ベンゾシクロブテン樹脂;フェノール樹脂;不飽和ポリエステル;ジアリルフタレート樹脂;ポリイミドシリコーン樹脂;ポリウレタン;熱硬化型ポリフェニレンエーテル;熱硬化型変性ポリフェニレンエーテル;などが挙げられる。
また、常温常圧下で固体の樹脂としては、常温常圧下で固体の熱可塑性樹脂および常温常圧下で固体の熱硬化性樹脂が挙げられる。
そして、常温常圧下で固体の熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリ(アクリル酸2−エチルヘキシル)、アクリル酸とアクリル酸2−エチルヘキシルとの共重合体、ポリメタクリル酸またはそのエステル、ポリアクリル酸またはそのエステルなどのアクリル樹脂;シリコン樹脂;フッ素樹脂;ポリエチレン;ポリプロピレン;エチレン−プロピレン共重合体;ポリメチルペンテン;ポリ塩化ビニル;ポリ塩化ビニリデン;ポリ酢酸ビニル;エチレン−酢酸ビニル共重合体;ポリビニルアルコール;ポリアセタール;ポリエチレンテレフタレート;ポリブチレンテレフタレート;ポリエチレンナフタレート;ポリスチレン;ポリアクリロニトリル;スチレン−アクリロニトリル共重合体;アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂);スチレン−ブタジエンブロック共重合体またはその水素添加物;スチレン−イソプレンブロック共重合体またはその水素添加物;ポリフェニレンエーテル;変性ポリフェニレンエーテル;脂肪族ポリアミド類;芳香族ポリアミド類;ポリアミドイミド;ポリカーボネート;ポリフェニレンスルフィド;ポリサルホン;ポリエーテルサルホン;ポリエーテルニトリル;ポリエーテルケトン;ポリケトン;ポリウレタン;液晶ポリマー;アイオノマー;などが挙げられる。
また、常温常圧下で固体の熱硬化性樹脂としては、例えば、天然ゴム;ブタジエンゴム;イソプレンゴム;ニトリルゴム;水素化ニトリルゴム;クロロプレンゴム;エチレンプロピレンゴム;塩素化ポリエチレン;クロロスルホン化ポリエチレン;ブチルゴム;ハロゲン化ブチルゴム;ポリイソブチレンゴム;エポキシ樹脂;ポリイミド樹脂;ビスマレイミド樹脂;ベンゾシクロブテン樹脂;フェノール樹脂;不飽和ポリエステル;ジアリルフタレート樹脂;ポリイミドシリコーン樹脂;ポリウレタン;熱硬化型ポリフェニレンエーテル;熱硬化型変性ポリフェニレンエーテル;などが挙げられる。
中でも、樹脂としては、常温常圧下で液体のフッ素樹脂と、常温常圧下で固体のフッ素樹脂とを用いることが好ましい。
なお、上述した樹脂は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
<粒子状熱伝導性充填材>
粒子状熱伝導性充填材としては、特に限定されることなく、例えば、アルミナ粒子、酸化亜鉛粒子、窒化ホウ素粒子、窒化アルミニウム粒子、窒化ケイ素粒子、炭化ケイ素粒子、酸化マグネシウム粒子および粒子状炭素材料(例えば、人造黒鉛、鱗片状黒鉛、薄片化黒鉛、天然黒鉛、酸処理黒鉛、膨張性黒鉛、膨張化黒鉛、カーボンブラック等)などが挙げられる。中でも、粒子状熱伝導性充填材としては、窒化ホウ素粒子、人造黒鉛、鱗片状黒鉛、膨張性黒鉛および膨張化黒鉛等の鱗片状粒子材料を用いることが好ましく、鱗片状黒鉛および膨張化黒鉛等の異方性黒鉛を用いることがより好ましく、膨張化黒鉛を用いることが更に好ましい。これらの粒子状熱伝導性充填材を用いれば、熱伝導シートの熱伝導性を更に高めることができる。
なお、粒子状熱伝導性充填材は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
なお、粒子状炭素材料などの粒子状熱伝導性充填材の体積平均粒子径は、150μm以下であることが必要であり、10μm以上100μm以下であることが好ましく、30μm以上80μm以下であることがより好ましい。体積平均粒子径が上記上限値以下であれば、熱伝導シートの表面平滑性を十分に向上させることができる。また、体積平均粒子径が上記範囲内であれば、熱伝導シートの熱伝導性を更に高めることができる。
そして、粒子状熱伝導性充填材の含有量は、特に限定されることなく、例えば、上述した樹脂100質量部当たり、40質量部以上とすることが好ましく、50質量部以上とすることがより好ましく、80質量部以上とすることが更に好ましく、130質量部以下とすることが好ましく、120質量部以下とすることがより好ましく、100質量部以下とすることが更に好ましい。粒子状熱伝導性充填材の含有量が上記下限値以上であれば、熱伝導シートの熱伝導性を十分に高めることができる。また、粒子状熱伝導性充填材の含有量が上記上限値以下であれば、熱伝導シートの表面平滑性を良好に向上させることができる。
<繊維状熱伝導性充填材>
熱伝導シートに任意に含有させ得る繊維状熱伝導性充填材としては、カーボンナノチューブ、気相成長炭素繊維、有機繊維を炭化して得られる炭素繊維、およびそれらの切断物などが挙げられる。中でも、繊維状熱伝導性充填材としては、カーボンナノチューブ(以下、「CNT」と称することがある。)を用いることが好ましい。これらの繊維状熱伝導性充填材を用いれば、熱伝導シートの熱伝導性を更に高めることができる。
なお、繊維状熱伝導性充填材は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
<添加剤>
熱伝導シートに任意に含有させ得る添加剤としては、特に限定されることなく、例えば、難燃剤、可塑剤、靭性改良剤、吸湿剤、接着力向上剤、濡れ性向上剤、イオントラップ剤などが挙げられる。
<熱伝導シートの性状>
そして、本発明の熱伝導シートは、厚み方向の熱伝導率が15W/m・K以上であり、且つ、平均厚みが30μm以上100μm以下であることを必要とし、更に以下の性状を有することが好ましい。
[厚み方向の熱伝導率]
熱伝導シートの厚み方向の熱伝導率は、20W/m・K以上であることが好ましく、25W/m・K以上であることがより好ましく、30W/m・K以上であることが更に好ましい。厚み方向の熱伝導率が上記下限値以上であれば、発熱体から放熱体へと良好に熱を伝えることができる。
[表面粗さSa]
熱伝導シートは、両方の主面(表面および裏面)の表面粗さSaが、1.0μm以上2.0μm以下であることが好ましい。表面粗さSaが上記上限値以下であれば、発熱体や放熱体との密着が良好になり、界面抵抗を減らすことができるので、全体の熱特性を向上させることが出来る。また、表面粗さSaが上記下限値以上であれば、熱伝導シートの製造が容易である。
また、熱伝導シートの一方の表面の表面粗さSaと、他方の表面のSaとの差(=Sa−Sa)は、絶対値で、0.20μm以下であることが好ましく、0.10μm以下であることがより好ましく、0.05μm以下であることが更に好ましい。一方の表面と他方の表面との表面粗さの差が上記上限値以下であれば、実装時に熱伝導シートの表と裏を気にすることなく使用することができ、結果として作業性が高まる。
[形状]
熱伝導シートは、平面視における面積が3600mm以上であることが好ましく、10000mm以上であることがより好ましい。平面視面積が上記下限値以上であれば、生産性を高めることができる。
また、熱伝導シートは、平均厚みが、30μm以上100μm以下であることを必要とし、40μm以上80μm以下であることが好ましい。平均厚みが上記上限値以下であれば、熱伝導シートを十分に薄厚化し、熱伝導シートの実装時のデバイス内における配置の自由度を高めることができる。また、平均厚みが上記下限値以上であれば、熱伝導シートの強度を十分に高めることができる。
更に、熱伝導シートは、厚みの分布が、3μm以下であることが好ましく、2.5μm以下であることがより好ましく、1.7μm以下であることが更に好ましく、1.2μm以下であることが特に好ましい。厚みの分布が上記範囲内であれば、平滑な発熱体と平滑な放熱体との間に挟んで実装した際に、厚みのバラツキが無いことからいずれの面に対しても過不足なく密着することできる。
なお、本発明の熱伝導シートは、例えば本発明の熱伝導シートの製造方法を用いて製造することができ、特に限定されることなく、樹脂と粒子状熱伝導性充填材とを含む条片が条片の幅方向に並列接合された構成を有し得る。
(熱伝導シートの製造方法)
本発明の熱伝導シートの製造方法は、上述した本発明の熱伝導シートを製造する際に用いられる。具体的には、本発明の熱伝導シートの製造方法は、樹脂と、粒子状熱伝導性充填材とを含み、任意に繊維状熱伝導性充填材および/または添加剤を更に含有し得る熱伝導シートを製造する際に用いられる。
そして、本発明の熱伝導シートの製造方法は、樹脂と、体積平均粒子径が150μm以下の粒子状熱伝導性充填材とを含有する樹脂ブロックを片刃の切断刃でスライスして熱伝導シートを得る工程を含む。また、本発明の熱伝導シートの製造方法では、片刃の切断刃として、刃先を備える刃部と、刃部の刃先側とは反対側に位置する平板状の平部とを有し、平部は、刃厚方向一方側に位置する第一面と、刃厚方向他方側に位置する第二面とを有し、刃先は、第一面よりも刃厚方向一方側に位置し、刃部は、刃先を通って第一面に平行な仮想面よりも刃厚方向他方側に位置し、第一面と刃先との間に亘って延在する逃げ面と、第二面と刃先との間に亘って延在するすくい面とを有する切断刃を使用することを必要とする。
このように、刃部と平部とを有し、刃先が第一面よりも刃厚方向一方側に位置し、且つ、刃部が刃先を通って第一面に平行な仮想面よりも刃厚方向他方側に位置する切断刃を使用すれば、体積平均粒子径の小さな粒子状熱伝導性充填材を含む樹脂ブロックであっても薄くスライスすることができる。従って、薄厚で表面が平滑な熱伝導シートを得ることができる。
なお、切断刃が上述した形状を有していることで体積平均粒子径の小さな粒子状熱伝導性充填材を含む樹脂ブロックであっても薄くスライスすることができる理由は、明らかではないが、スライス中に逃げ面と樹脂ブロックとが接触して樹脂ブロックの位置がずれるのを防止することができるためであると推察される。
<樹脂ブロック>
ここで、熱伝導シートの材料となる樹脂ブロックは、樹脂と、体積平均粒子径が150μm以下の粒子状熱伝導性充填材とを含有し、任意に繊維状熱伝導性充填材および/または添加剤を更に含有する。
なお、樹脂、粒子状熱伝導性充填材、繊維状熱伝導性充填材および添加剤としては、上述した本発明の熱伝導シートと同様のものを用いることができ、その好適な態様についても上述した本発明の熱伝導シートと同様であるため、以下では説明を省略する。
[樹脂ブロックの形状および構造]
樹脂ブロックの形状は、特に限定されることなく、スライスした際に所望の形状の熱伝導シートが得られる形状とすることができる。具体的には、例えば、矩形状の熱伝導シートを製造する場合には、樹脂ブロックの形状は、直方体であることが好ましい。
また、樹脂ブロックの構造は、特に限定されることなく、樹脂と、体積平均粒子径が150μm以下の粒子状熱伝導性充填材とを含有し、任意に繊維状熱伝導性充填材および/または添加剤を更に含有する樹脂組成物を金型などの既知の成形装置を用いて所望の形状に成形してなる構造であってもよいし、樹脂と、体積平均粒子径が150μm以下の粒子状熱伝導性充填材とを含有し、任意に繊維状熱伝導性充填材および/または添加剤を更に含有する樹脂組成物をシート状に成形して得たシートを積層、折畳または捲回してなる構造であってもよい。
なお、シートを積層してなる積層体では、通常、シートの表面同士の接着力は、シートを積層する際の圧力により充分に得られる。しかし、接着力が不足する場合や、積層体の層間剥離を十分に抑制する必要がある場合には、シートの表面を溶剤で若干溶解させた状態で積層を行ってもよいし、シートの表面に接着剤を塗布した状態またはシートの表面に接着層を設けた状態で積層を行ってもよいし、シートを積層させた積層体を積層方向に更にプレスしてもよい。
中でも、樹脂ブロックの構造は、例えば図1(a)〜(c)に示す樹脂ブロック10のような、樹脂と、体積平均粒子径が150μm以下の粒子状熱伝導性充填材とを含有し、任意に繊維状熱伝導性充填材および/または添加剤を更に含有する樹脂組成物を加圧してシート状に成形し、樹脂と、粒子状熱伝導性充填材と、任意の繊維状熱伝導性充填材および/または添加剤とを含有するシート11を得た後、得られたシート11を厚み方向に複数枚積層してなる構造、或いは、得られたシート11を折畳または捲回してなる構造であることが好ましい。樹脂組成物を加圧してシート状に成形してなるシートでは、フィラーがシートの面内方向に配向するため、得られたシートを積層、折畳または捲回してなる積層体をスライスすれば、熱伝導性に異方性を有する熱伝導シートを得ることができるからである。具体的には、粒子状熱伝導性充填材を含む樹脂組成物を加圧してシート状に成形してなるシートでは、粒子状熱伝導性充填材が面内方向に配向し、面内方向の熱伝導性が向上する。従って、当該シートの積層体を積層体の積層方向、或いは、積層体の積層方向および積層体を構成するシートの双方に直交する方向にスライスすれば、厚さ方向の熱伝導性に優れる熱伝導シートを得ることができる。
なお、シートの積層体を、積層体の積層方向、或いは、積層体の積層方向および積層体を構成するシートの双方に直交する方向にスライスして得た熱伝導シートは、積層体を構成していたシートのスライス片(樹脂と、粒子状熱伝導性充填材とを含む条片)が並列接合されてなる構成を有している。換言すれば、当該熱伝導シートは、樹脂および粒子状熱伝導性充填材を含み、積層体を構成していたシートの厚みと略等しい寸法の幅を有する条片が、条片の幅方向が熱伝導シートの厚み方向と直交する姿勢で、条片の幅方向に並列接合されてなる構成を有している。
<切断刃>
片刃の切断刃は、所定の形状を有する刃部と、平板状の平部とを有している。具体的には、片刃の切断刃の一例は、例えば図2に刃厚方向に沿う断面を示すように、長さ方向(図2では上下方向)の一方側(図2では下側)に位置して刃先21を備える刃部23と、長さ方向に見て刃部23の刃先21側とは反対側に位置する平板状の平部22とを有している。また、平部22は、刃厚方向一方側(図2では右側)に位置する第一面22Aと、刃厚方向他方側(図2では左側)に位置する第二面22Bとを有している。更に、切断刃20は、刃先21が、第一面22Aよりも刃厚方向一方側に位置しており、且つ、刃厚方向他方側に位置する逃げ面24,25と、刃厚方向一方側に位置するすくい面26,27,28とを有している。そして、平部22の第一面22Aの端縁(図2では下側の端縁)と刃先21との間に亘って延在する逃げ面24,25は、刃先21を通って第一面22Aに平行な仮想面(図2では刃先21を通って上下に延びる線となる)よりも刃厚方向他方側(図2では左側)に位置しており、刃先21を通って第一面22Aに平行な仮想面と角度βで交差する方向に延在する第一逃げ面25と、第一面22Aと同一平面上で、第一逃げ面25の刃先21側とは反対側(図2では上側)の端縁と第一面22Aとの間で延在する第二逃げ面24とで構成されている。また、平部22の第二面22Bの端縁(図2では下側の端縁)と刃先21との間に亘って延在するすくい面26,27,28は、平部22の第二面22Bと平行な面に対する交差角が互いに異なる2以上(図示例では3つ)の傾斜面からなり、刃角がα1となるように(即ち、第二面22Bと平行な面に対する交差角がα1+βとなるように)第一逃げ面25と交差する第一すくい面26と、第二面22Bと平行な面に対する交差角がα2となるように第一すくい面26と交差する第二すくい面27と、第二面22Bと平行な面に対する交差角がα3となるように第二すくい面27と交差する第三すくい面28とで構成されている。なお、第一すくい面26の長さはn1であり、第二すくい面27の長さはn2であり、第三すくい面28の長さはn3である。また、刃先21を通って第一面22Aに平行な仮想面と、第一面22Aとの間の刃厚方向に沿う距離はmである。
ここで、特に限定されることなく、平部22の厚みは、例えば5mm以上20mm以下とすることができる。平部22の厚みが上記下限値以上であれば、切断刃20の強度を十分に確保することができる。また、平部22の厚みが上記上限値以下であれば、樹脂ブロックを良好にスライスすることができる。
また、平部22の長さ(図2では上下方向の寸法)は、特に限定されることなく、例えば10mm以上100mm以下とすることができる。
また、刃部23の逃げ面について、刃先21を通って第一面22Aに平行な仮想面と、第一面22Aとの間の刃厚方向に沿う距離mは、特に限定されることなく、10μm以上であることが好ましく、30μm以上であることがより好ましく、500μm以下であることが好ましく、100μm以下であることがより好ましい。距離mが上記下限値以上であれば、スライス中に逃げ面24,25と樹脂ブロックとが接触して樹脂ブロックの位置がずれるのをより確実に防止することができる。また、距離mが上記上限値以下であれば、切断刃20の強度を十分に確保することができる。
更に、角度βは、特に限定されることなく、5°以上20°以下であることが好ましく、6°以上20°以下であることがより好ましい。角度βが上記下限値以上であれば、スライス中に逃げ面24,25と樹脂ブロックとが接触して樹脂ブロックの位置がずれるのをより確実に防止することができる。また、角度βが上記上限値以下であれば、切断刃20の強度を十分に確保することができる。
また、刃角α1は、特に限定されることなく、10°以上25°以下であることが好ましい。刃角α1が上記下限値以上であれば、切断刃20の強度を十分に確保することができる。また、刃角α1が上記上限値以下であれば、樹脂ブロックを良好にスライスすることができる。
更に、第一すくい面26の長さn1は、特に限定されることなく、0.05mm以上0.1mm以下であることが好ましい。長さn1が上記下限値以上であれば、切断刃20の強度を十分に確保することができる。また、長さn1が上記上限値以下であれば、熱伝導シートの表面平滑性を更に向上させることができる。
また、角度α2は、特に限定されることなく、刃角α1との差(α1−α2)が0°以上5°以下となる角度(α1−5°≦α2≦α1)であることが好ましい。角度α2が上記範囲内であれば、樹脂ブロックを良好にスライスすることができる。
更に、第二すくい面27の長さn2は、特に限定されることなく、0.5mm以上2.0mm以下であることが好ましい。長さn2が上記範囲内であれば、樹脂ブロックを良好にスライスすることができる。
また、角度α3は、特に限定されることなく、角度α2との差(α2−α3)が1°以上5°以下となる角度(α2−5°≦α3≦α2−1°)であることが好ましい。角度α3が上記範囲内であれば、樹脂ブロックを良好にスライスすることができる。
更に、第三すくい面28の長さn3は、特に限定されることなく、2mm以上40mm以下であることが好ましい。長さn3が上記範囲内であれば、樹脂ブロックを良好にスライスすることができる。
なお、本発明の熱伝導シートの製造方法で使用し得る片刃の切断刃は、上記一例の切断刃20に限定されるものではない。
具体的には、片刃の切断刃としては、図3に示すような切断刃20Aを用いることもできる。ここで、切断刃20Aは、すくい面が第一すくい面26と第二すくい面27とで構成されており、第三すくい面28を有さない以外は切断刃20と同様の構成を有している。
また、片刃の切断刃は、すくい面が4つ以上の傾斜面で構成されていてもよいし、逃げ面が第一面に平行な仮想面と交差する方向に延在する面を2つ以上含んでいてもよい。なお、すくい面が複数の傾斜面を有していれば、切断刃の剛性が良好になり、スライス時に刃が撓まなくなることで、厚みのバラツキの少ない熱伝導シートを得ることができる。
<スライス>
切断刃を用いて樹脂ブロックをスライスする方向は、特に限定されることなく、スライスされた樹脂ブロックの端面(スライス面)と、片刃の切断刃の平部の刃厚方向一方側(図2,3では右側)に位置する第一面との間の角度が5°以下、特には0°となる方向とすることができる。そして、本発明の熱伝導シートの製造方法では、例えば、図1(a)〜(b)に示すようにして、片刃の切断刃20をスライス方向(図示例では下方)に移動させて樹脂ブロック10を切断刃20でスライスし、樹脂ブロック10のスライス片よりなる熱伝導シート30を得た後、図1(c)に示すようにして、切断刃20を図示例では上方の待避位置に移動させると共に、樹脂ブロック10を所望の熱伝導シートの厚さ分だけ切断位置側(図示例では左側)に移動させるという操作を繰り返すことにより、樹脂ブロック10から複数枚の熱伝導シート30を得ることができる。
なお、図1(c)では樹脂ブロック10を所望の熱伝導シートの厚さ分だけ移動させているが、本発明の熱伝導シートの製造方法では、切断刃20を所望の熱伝導シートの厚さ分だけ樹脂ブロック10側(図示例では右側)に移動させてもよいし、切断刃20および樹脂ブロック10の両方を移動させてもよい。
ここで、上述した切断刃を用いた樹脂ブロックのスライスは、特に限定されることなく、樹脂ブロックに対して圧力を負荷しながら行うことが好ましく、0.1MPa以上1.0MPa以下の圧力を負荷しながら行うことがより好ましい。
また、樹脂ブロックを容易にスライスする観点からは、スライスする際の樹脂ブロックの温度は、−20℃以上30℃以下とすることが好ましい。
更に、樹脂ブロックのスライス速度は、特に限定されることなく、50mm/秒以上とすることが好ましく、100mm/秒以上とすることがより好ましく、200mm/秒以上とすることが更に好ましい。スライス速度を上記下限値以上にすれば、熱伝導シートの生産性を高めることができると共に、得られる熱伝導シートの厚さの均一性および表面平滑性を更に向上させることができる。
なお、樹脂ブロックのスライス速度は、通常、600mm/秒以下である。スライス速度を上記上限値以下にすれば、切断刃の移動を容易に制御することができると共に、スライス時の衝撃によって樹脂ブロックを押してしまうのを防止することができる。
以下、本発明について実施例を用いて更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
なお、実施例および比較例において、粒子状熱伝導性充填材の体積平均粒子径、切断刃の形状、スライスの可否、並びに、熱伝導シートの熱伝導率、表面粗さSa、平均厚みおよび厚みの分布は、それぞれ以下の方法を使用して測定した。
<体積平均粒子径>
熱伝導シート1gを溶媒としてのメチルエチルケトン中に入れ、熱伝導シートの樹脂成分等を溶解することにより、熱伝導シートに含まれる粒子状炭素材料(膨張化黒鉛)を分離および分散させた懸濁液を得た。次に、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置(堀場製作所製、型式「LA960」)を用いて、当該懸濁液に含まれる粒子状炭素材料の粒子径を測定した。そして、得られた粒子径を横軸とし、体積換算した粒子の頻度を縦軸とした粒度分布曲線を作成した。
また、当該粒度分布曲線において、小径側から計算した累積体積が50%となる粒子径(D50)を求め、当該粒子状炭素材料の体積平均粒子径の値とした。
<切断刃の形状>
切断刃の形状は、形状解析レーザー顕微鏡(キーエンス製、製品名「VK-X1000」)を用いて測定した。
具体的には、台座の上に刃先が真上になるように切断刃を設置した後、切断刃全体の角度を逃げ面側に10度傾けた。そして、刃先近辺を倍率50倍にて観察し、切断刃の形状を測定した。
<スライスの可否>
切断刃でスライスした際に、得られた熱伝導シートの中心膜厚が50±5μmであり、且つ、得られた熱伝導シートの面積が元の切断面に対して80%以上である場合に「スライスできる(○)」と判定した。
一方、スライス途中で切断刃が抜ける、得られた熱伝導シートの中心膜厚が45μm未満または55μm超である、並びに、得られた熱伝導シートの面積が元の切断面に対して80%未満である、の少なくとも一つに該当する場合には、「スライスできない(×)」と判断した。
<熱伝導率>
熱伝導シートについて、厚み方向の熱拡散率α(m/s)、定圧比熱Cp(J/g・K)および比重ρ(g/m)を、それぞれ、以下の方法で測定した。
[厚み方向の熱拡散率α]
熱拡散・熱伝導率測定装置(株式会社アイフェイズ製、製品名「アイフェイズ・モバイル 1u」)を使用して、ISO 22007−3の規定に基づき測定した。
[定圧比熱Cp]
示差走査熱量計(Rigaku製、製品名「DSC8230」)を使用し、10℃/分の昇温条件下、25℃における比熱を測定した。
[比重ρ(密度)]
自動比重計(東洋精機社製、商品名「DENSIMETER−H」)を用いて測定した。
そして、各測定値を、下記式(I):
λ=α×Cp×ρ・・・(I)
に代入し、25℃における熱伝導シートの厚み方向の熱伝導率λ(W/m・K)を求めた。
<表面粗さSa>
熱伝導シートの表面粗さSaは、三次元形状測定機(株式会社キーエンス製、製品名「ワンショット3D測定マクロスコープ」)を用いて測定した。
具体的には、熱伝導シートの評価対象の表面から抽出した5点の解析範囲(1cm×1cm)について、三次元形状を測定した。なお、5点抽出する際に各解析範囲は0.5cm以上離れていることが望ましいが、熱伝導シートのサイズが小さい場合は、解析範囲の一部が重なっていても構わない。また、熱伝導シートのサイズが小さく、1cm×1cmの解析範囲を確保できない場合には、解析範囲を0.3cm×0.3cmまで小さくしてもよい。
更に、三次元形状の測定結果に対してソフトウェアでフィルター処理(2.5mm)を行い、うねり成分を取り除くことにより、表面粗さSa(μm)を自動計算し、5点の解析範囲の平均値を熱伝導シートの表面粗さSaとした。
なお、三次元形状の測定は、A面(スライス時に切断刃のすくい面が接触していた面)およびB面(スライス時に切断刃の逃げ面が接触していた面)のそれぞれに対して行った。
また、A面とB面の表面粗さSaの差を算出した。
<平均厚み>
膜厚計(ミツトヨ製、製品名「デジマチックインジケーター ID−C112XBS」)を用いて、熱伝導シートの中心および四隅の計5点における厚みを測定し、測定した厚みの平均値(μm)を求めた。
<厚みの分布>
上記<平均厚み>で測定した計5点の厚みについて、最大値と最小値の差を算出し、これを厚みの分布とした。
(実施例1)
<組成物の調製>
常温常圧下で液体の熱可塑性フッ素樹脂(ダイキン工業株式会社製、商品名「ダイエルG−101」)70部と、常温常圧下で固体の熱可塑性フッ素樹脂(スリーエムジャパン株式会社製、商品名「ダイニオンFC2211」)30部と、粒子状炭素材料としての膨張化黒鉛(伊藤黒鉛工業株式会社製、商品名「EC300」、体積平均粒子径:50μm)90部とを、加圧ニーダー(日本スピンドル製)を用いて、温度150℃にて20分間撹拌混合した。次に、得られた混合物を解砕機(大阪ケミカル社製、商品名「ワンダークラッシュミルD3V−10」)に投入して、10秒間解砕することにより、組成物を得た。
<プレ熱伝導シートの形成>
次いで、得られた組成物50gを、サンドブラスト処理を施した厚み50μmの保護フィルム(PETフィルム)で挟み、ロール間隙1000μm、ロール温度50℃、ロール線圧50kg/cm、ロール速度1m/分の条件にて圧延成形(一次加圧)し、厚み0.8mmのプレ熱伝導シートを得た。
<積層体の形成>
続いて、得られたプレ熱伝導シートを縦150mm×横150mm×厚み0.8mmに裁断し、プレ熱伝導シートの厚み方向に188枚積層した。そして、温度120℃、圧力0.1MPaで3分間、積層方向にプレス(二次加圧)することにより、高さ約150mmの積層体(樹脂ブロック)を得た。
<熱伝導シートの形成>
その後、スライスに必要な長さを残して、得られた積層体の上面の全体を金属板で押え、積層方向に(即ち、上から)0.1MPaの圧力をかけて、積層体を固定した。なお、積層体の側面、背面の固定は行わなかった。このとき、積層体の温度は25℃であった。
次いで、サーボプレス機(放電精密加工研究所製)のプレス部分に、表1および図2に示す形状の切断刃20(片刃、材質:超鋼、ロックウェル硬度:91.5、刃面のシリコン加工:なし、全長:200mm)を取り付け、スライス速度200mm/秒、スライス幅50μmの条件で積層体の積層方向(換言すれば、積層されたプレ熱伝導シートの主面の法線に一致する方向に)にスライスして、縦150mm×横150mm×厚み0.05mmの熱伝導シートを得た。
なお、スライス時の切断刃の姿勢は、平部の第一面の延在方向が積層体のスライス面と平行な方向になる姿勢とした。また、得られた熱伝導シートは、プレ熱伝導シートのスライス片(条片)が並列接合した構成を有していた。
そして、得られた熱伝導シートについて、各種評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例2)
切断刃として表1および図3に示す形状の切断刃20A(片刃、材質:超鋼、ロックウェル硬度:91.5、刃面のシリコン加工:なし、全長:200mm)を用いた以外は実施例1と同様にして熱伝導シートを製造した。
そして、実施例1と同様にして各種評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例3〜4)
切断刃20の形状を表1に示すように変更した切断刃を用いた以外は実施例1と同様にして熱伝導シートを製造した。
そして、実施例1と同様にして各種評価を行った。結果を表1に示す。
(比較例1)
切断刃として表1および図4に示す形状の切断刃40(片刃、材質:超鋼、ロックウェル硬度:91.5、刃面のシリコン加工:なし、全長:200mm)を用いた以外は実施例1と同様にして熱伝導シートを製造しようとしたが、積層体をスライスできなかった。
なお、図4に示す切断刃40は、スライス方向(図4では上下方向)に平行な第一逃げ面42(長さL:0.5mm)と、第一逃げ面42に対して刃角θ(=20°)で交差するすくい面43と、第一逃げ面42とすくい面43との交差角部よりなる刃先41と、第一逃げ面42の刃先41側とは反対側の端縁から延在して第一逃げ面42よりもすくい面43側(図4では左側)に位置する第二逃げ面44(刃厚方向に沿う長さ:0.05mm)とを備えている。そして、スライス時の切断刃40の姿勢は、第一逃げ面42の延在方向が積層体のスライス面と平行な方向になる姿勢(逃げ角:0°)とした。
(比較例2)
組成物の調製時に、粒子状炭素材料として膨張化黒鉛(伊藤黒鉛工業株式会社製、商品名「EC300」、体積平均粒子径:50μm)90部に替えて膨張化黒鉛(伊藤黒鉛工業株式会社製、商品名「EC100」、体積平均粒子径:190μm)50部を用いた以外は比較例1と同様にして熱伝導シートを製造した。
そして、実施例1と同様にして各種評価を行った。結果を表1に示す。
(比較例3)
スライス時の切断刃の姿勢を、第一逃げ面42の延在方向が積層体のスライス面に対して5°になる姿勢(逃げ角:5°)とした以外は比較例1と同様にして熱伝導シートを製造しようとしたが、積層体をスライスできなかった。
Figure 2021004283
表1より、実施例1〜4では、体積平均粒子径の小さな粒子状熱伝導性充填材を含む積層体(樹脂ブロック)を薄くスライスすることができ、熱伝導性および表面平滑性に優れる薄厚の熱伝導シートが得られることが分かる。また、表1より、図4に示す切断刃を用いた比較例1および3では、体積平均粒子径の小さな粒子状熱伝導性充填材を含む積層体(樹脂ブロック)を薄くスライスすることができないことが分かる。更に、表1の比較例2より、体積平均粒子径の大きな粒子状熱伝導性充填材を含む積層体(樹脂ブロック)であれば、図4に示す切断刃を用いても薄くスライスすることができるが、熱伝導シートの表面平滑性が低下することが分かる。
本発明によれば、熱伝導性および表面平滑性に優れる薄厚の熱伝導シートを提供することができる。
10 樹脂ブロック
11 シート
20,20A 切断刃
21 刃先
22 平部
22A 第一面
22B 第二面
23 刃部
24 第二逃げ面
25 第一逃げ面
26 第一すくい面
27 第二すくい面
28 第三すくい面
30 熱伝導シート
40 切断刃
41 刃先
42 第一逃げ面
43 すくい面
44 第二逃げ面

Claims (8)

  1. 樹脂と粒子状熱伝導性充填材とを含む熱伝導シートであって、
    前記粒子状熱伝導性充填材の体積平均粒子径が150μm以下であり、
    厚み方向の熱伝導率が15W/m・K以上であり、
    平均厚みが30μm以上100μm以下である、熱伝導シート。
  2. 厚みの分布が3μm以下である、請求項1に記載の熱伝導シート。
  3. 表面粗さSaが両面共に2.0μm以下である、請求項1または2に記載の熱伝導シート。
  4. 一方の表面の表面粗さSaと、他方の表面のSaとの差が絶対値で0.20μm以下である、請求項1〜3の何れかに記載の熱伝導シート。
  5. 前記樹脂100質量部当たり、前記粒子状熱伝導性充填材を40質量部以上130質量部以下含む、請求項1〜4の何れかに記載の熱伝導シート。
  6. 請求項1〜5の何れかに記載の熱伝導シートの製造方法であって、
    樹脂と、体積平均粒子径が150μm以下の粒子状熱伝導性充填材とを含有する樹脂ブロックを片刃の切断刃でスライスして熱伝導シートを得る工程を含み、
    前記切断刃が、刃先を備える刃部と、前記刃部の前記刃先側とは反対側に位置する平板状の平部とを有し、
    前記平部は、刃厚方向一方側に位置する第一面と、刃厚方向他方側に位置する第二面とを有し、
    前記刃先は、前記第一面よりも刃厚方向一方側に位置し、
    前記刃部は、前記刃先を通って前記第一面に平行な仮想面よりも刃厚方向他方側に位置し、前記第一面と前記刃先との間に亘って延在する逃げ面と、前記第二面と前記刃先との間に亘って延在するすくい面とを有する、熱伝導シートの製造方法。
  7. 前記逃げ面は、前記刃先を通って前記仮想面と交差する方向に延在する第一逃げ面と、前記第一面と同一平面上で、前記第一逃げ面の前記刃先側とは反対側の端縁と前記第一面との間で延在する第二逃げ面とを有する、請求項6に記載の熱伝導シートの製造方法。
  8. 前記すくい面は、前記第二面と平行な面に対する交差角が互いに異なる2以上の傾斜面からなる、請求項6または7に記載の熱伝導シートの製造方法。
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