JP2015164801A - 熱伝導性シートの製造方法及び熱伝導性シート - Google Patents

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Abstract

【課題】高温使用時にも接着力が劣化しにくい熱伝導性シート及び熱伝導性シートの製造方法を提供する。【解決手段】フッ素樹脂と熱伝導性フィラーとを含む熱伝導性多孔質シート(10)を準備する。厚さ5〜200μmの熱可塑性フッ素樹脂シート(12)を準備する。熱伝導性多孔質シート(10)の少なくとも片面に熱可塑性フッ素樹脂シート(12)を積層する。積層したシートに対して、加熱処理及び加圧処理を施すことで熱伝導性多孔質シート(10)と熱可塑性フッ素樹脂シート(12)とを一体化させる。これにより、熱伝導性シート(16)が得られる。【選択図】図1

Description

本発明は、熱伝導性シート及びその製造方法に関する。
近年、電子機器の小型化や性能向上、電気自動車などに用いるためのモーターの高出力化などが求められている。このような高性能且つ高出力の電子機器やモーターでは、電気抵抗や摩擦による発熱量が増大する傾向がある。これらの熱の蓄積は周辺の電子機器や樹脂パーツなどの不具合につながる場合があるため、これらの熱を除去するための方法が検討されている。
このような熱の蓄積又は発熱した高温の部材から放熱する方法としては、一般に熱伝導率の高い部材(放熱部材)を高温の部材に密着させて分散冷却する方法、ファンなどで空気循環を促進する空冷法、液体を循環させる部位を設けて熱移動を促進する水冷法などが適宜用途に合わせて用いられている。なかでも、可動部がなく、設置空間を小さくすることができる密着型の放熱部材による放熱方法が多く用いられている。このような放熱部材としては、金属板や多面積化構造材などが各種知られている。なかでも、樹脂マトリクス中に熱伝導性フィラーを分散させたシート状の放熱部材が好ましく用いられている。特に車両用途では、放熱対象物自体又はその周辺部材において油脂類が多く用いられるため、さらに高い耐油性が求められる。そのため、耐熱性と耐油性を兼ね備えたフッ素樹脂を用いた放熱部材が知られている(例えば、特許文献1参照)。
このような放熱部材を、例えば車両用モーターの放熱に使用する場合、使用時の振動などが加わってもずれることなく、放熱部材を適切な位置に固定しておくことのできる技術が必要となる。従来からこのような要求に対して、熱伝導性のグリースなどを放熱対象物と放熱部材との間に適用して放熱部材を放熱対象物に密着させる方法が知られている。しかしながら、このような方法では、グリースと放熱部材との接着力が十分でなく、また、グリースと対象物との接着力が十分ではないため、放熱部材の位置ずれが生じやすい。また、グリース自体が熱伝導の抵抗となってしまうという課題がある。そこで近年では、多孔質放熱部材の孔中にシリコーンやエポキシ樹脂などの接着剤を含浸させる方法も開示されている(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、このような方法では、パワー半導体用途などで見られる高温と低温が繰り返されるような特殊な用途においては接着力が不足し、高温使用時に剥離が生じる場合がある。
特開2010−137562号公報 特開2013−082767号公報
本発明は、高温使用時にも接着力が劣化しにくい熱伝導性シート及び熱伝導性シートの製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、鋭意検討の結果、次の発明により前記課題を解決できることを見出した。
本発明は、
フッ素樹脂と熱伝導性フィラーとを含む熱伝導性多孔質シートを準備する工程と、
厚さ5〜200μmの熱可塑性フッ素樹脂シートを準備する工程と、
前記熱伝導性多孔質シートの少なくとも片面に前記熱可塑性フッ素樹脂シートを積層する工程と、
前記積層したシートに対して、加熱処理及び加圧処理を施すことで前記熱伝導性多孔質シートと前記熱可塑性フッ素樹脂シートとを一体化させる工程と、
を含む、熱伝導性シートの製造方法を提供する。
別の側面において、本発明は、
フッ素樹脂と熱伝導性フィラーとを含む熱伝導性多孔質シートと、
前記熱伝導性多孔質シートの少なくとも片面における少なくとも表面近傍の部分に含浸及び固定された熱可塑性フッ素樹脂と、
を備えた、熱伝導性シートを提供する。
前記熱可塑性フッ素樹脂はパーフルオロアルコキシアルカン(PFA)又はエチレン・テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)であってもよい。
前記加熱処理の温度が180〜400℃であってもよく、前記加圧処理の圧力が1〜10MPaであってもよい。前記加熱処理と前記加圧処理とを同時に10秒間〜1時間実施することができる。
前記熱伝導性多孔質シートに含まれた前記フッ素樹脂は、ポリテトラフルオロエチレンと、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)又はエチレン・テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)との混合物でありうる。
前記熱伝導性フィラーは、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、アルミナ、窒化ケイ素及び酸化マグネシウムからなる群より選ばれる少なくとも1つの材料を含んでいてもよい。熱伝導性フィラーの質量割合は、熱伝導性多孔質シートの質量に対して40%以上90%以下でありうる。
前記熱伝導性シートは、10〜500μmの厚さを有する金属層をさらに備えていてもよい。金属層は、前記熱可塑性フッ素樹脂を被覆するように配置されうる。
本発明の熱伝導性シートに使用された熱可塑性フッ素樹脂は、優れた耐熱性を持っており、高温下でも十分な接着性を示す。したがって、本発明によれば、パワーモジュールなどの高電圧や大電流の装置内での使用に好適な熱伝導性シートであって、過酷な高温環境下での使用においても良好な接着力及び熱伝導性を発揮する熱伝導性シートを提供しうる。
実施形態に係る熱伝導性シートの製造方法を説明する図 熱伝導性シートの概略断面図 熱伝導性シートの別の概略断面図
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されない。
図1に示すように、本実施形態の熱伝導性シートの製造方法は、フッ素樹脂と熱伝導性フィラーとを含む熱伝導性多孔質シート10を準備する工程と、厚さ5〜200μmの熱可塑性フッ素樹脂シート12を準備する工程と、熱伝導性多孔質シート10の少なくとも片面に熱可塑性フッ素樹脂シート12を積層する工程と、積層したシート14に対して、加熱処理及び加圧処理を施すことで熱伝導性多孔質シート10と熱可塑性フッ素樹脂シート12とを一体化させる工程とを含む。これにより、熱伝導性シート16が得られる。熱伝導性多孔質シート10の両面に熱可塑性フッ素樹脂シート12を積層させてもよい。
図2Aに示すように、本実施形態の熱伝導性シート16は、フッ素樹脂及び熱伝導性フィラーを含む熱伝導性多孔質シート10と、その熱伝導性多孔質シート10の少なくとも片面に形成された熱可塑性フッ素樹脂層12aとを備えたものである。熱伝導性多孔質シート10の少なくとも表面近傍の部分に、熱可塑性フッ素樹脂(熱可塑性フッ素樹脂層12a)の少なくとも一部が含浸及び固定されていることが好ましい。熱可塑性フッ素樹脂の全量が熱伝導性多孔質シート10の孔内に含浸していてもよい。
具体的に、熱伝導性多孔質シート10の表層部10aは、熱伝導性多孔質シート10の細孔に熱可塑性フッ素樹脂を含浸させることによって形成された部分(高密度部分)であり、熱伝導性多孔質シート10を構成する材料と熱可塑性フッ素樹脂シート12を構成する熱可塑性フッ素樹脂との両方を含んでいる。表層部10aの厚さは、例えば、50〜5000μmである。熱可塑性フッ素樹脂層12aは、熱可塑性フッ素樹脂シート12を構成する熱可塑性フッ素樹脂で形成された部分である。熱可塑性フッ素樹脂層12aは、典型的には、熱可塑性フッ素樹脂のみで形成されうる。
熱伝導性シート16は、図2Bに示す構造を有する場合もある。図2Bに示す例において、熱伝導性シート16は、第一層10b及び第二層10cを有する。第二層10cは第一層10bに一体化されている。第一層10bは、熱伝導性多孔質シート10に由来する部分であり、フッ素樹脂及び熱伝導性フィラーを含む。第二層10cは、熱伝導性多孔質シート10の表層部と熱可塑性フッ素樹脂シート12とに由来する部分である。第二層10cは、熱伝導性多孔質シート10を構成する材料(フッ素樹脂及び熱伝導性フィラー)と、熱可塑性フッ素樹脂シート12を構成する材料(熱可塑性フッ素樹脂)とを含む。熱可塑性フッ素樹脂シート12を構成する熱可塑性フッ素樹脂の全量が熱伝導性多孔質シート10の細孔に含浸された場合、図2Bに示す構造が形成されうる。
上記のような熱伝導性シート16には、熱伝導性能(熱伝導率)と接着性能(接着力)との両立が求められる。熱伝導率としては、1[W/m・K]以上あることが好ましく、4[W/m・K]以上あることがより好ましい。熱伝導性能が高ければ高いほど対象物の放熱に寄与しやすくなる。熱伝導率の上限は特に限定されず、例えば、10[W/m・K]である。また、接着力としては、例えば銅箔(後述する金属層18)との180°ピール試験において、3N/10mm以上あれば位置ずれが生じにくく、さらに6N/10mm以上あることが好ましい。接着力の上限も特に限定されず、例えば、上記のピール試験において、20N/10mmである。特に、本実施形態によれば、熱伝導性シート16の表面を形成する熱可塑性フッ素樹脂に起因して、130℃以上の高温状態においても優れた性能(特に、接着性能)を発揮できることが分かっている。
熱伝導性フィラー及びフッ素樹脂を含む熱伝導性シート16の厚さは、ハンドリング性の観点から、50μm以上が好ましく、100μm以上がより好ましい。一方で熱伝導性の観点からは3000μm以下が好ましく、1000μm以下がより好ましい。
熱伝導性多孔質シート10を形成するフッ素樹脂としては、必要とされる耐熱性、耐油性、耐候性を有するものであれば特に限定されるものではないが、なかでもポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を含む材料が好ましい。PTFEを用いることで熱伝導性フィラーをより高い含有率で混合することが可能となるため、より高い熱伝導性能が得られやすくなる。PTFE以外のフッ素樹脂としては、溶融性フッ素樹脂を好ましく用いることができる。この溶融性フッ素樹脂を用いることで、シート化をより容易に実施することができる。この溶融性フッ素樹脂としては特に限定されるものではないが、ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)、四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合体(FEP)、又はエチレン・テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)が好ましく、これらを適宜組み合わせて使用してもよい。
熱伝導性多孔質シート10におけるフッ素樹脂の含有率は、熱伝導性フィラーの使用量に応じて適宜調整されるが、熱伝導性多孔質シート10の全質量に対して5〜50質量%程度の範囲にあることが好ましい。また、熱伝導性多孔質シート10の材料としてPTFEと溶融性フッ素樹脂とを組み合わせて用いる場合、フッ素樹脂の全質量に対する溶融性フッ素樹脂の割合は、5〜70質量%程度が好ましく、より好ましくは10〜50質量%である。このようにPTFEと溶融性フッ素樹脂とを混合して用いることで熱伝導性能が向上することがわかっている。
熱伝導性多孔質シート10を形成する熱伝導性フィラーとしては、十分な熱伝導性を有するとともに、フッ素樹脂と混合してシート形成が可能なものであれば特に限定されるものではない。例えば、熱伝導性フィラー単体での熱伝導率が1W/m・K以上であり、好ましくは100W/m・K以上のもので、200W/m・K以下程度のものを用いることができる。
熱伝導性フィラーの導電性能については用途に応じて適宜決定でき、特に限定されるものではない。絶縁性材料であれば、体積抵抗率が1010〜1017Ω・cm程度であって、特に1014Ω・cm以上のものが好ましい。絶縁性の熱伝導性フィラーは、例えば、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、アルミナ、窒化ケイ素、又は、酸化マグネシウムで作られている。これらの材料でできた熱伝導性フィラーのいずれか1種類又は複数種類を組み合わせて用いることができる。このような絶縁性材料で熱伝導性フィラーができている場合、熱伝導性シート16を電子機器の内部、ハイブリッド車用のモーター、発電機など高電圧の場所に使用することができる。また、導電性材料としては、体積抵抗率が106Ω・cm以下のものが好ましい。導電性の熱伝導性フィラーは、例えば、グラファイト、カーボンブラック、カーボン繊維、金属繊維(アルミ繊維、銅繊維など)、又は、金属粒子(金、銀、銅、パラジウム、白金など)である。これらの熱伝導性フィラーのいずれか1種類又は複数種類を組み合わせて用いることができる。特に本実施形態では、電子機器の内部や電気部品などの用途において、熱伝導性シート16が電気部品などに確実に固定されることが求められるため、その用途で必要となる絶縁性材料を用いることが好ましい。また、なかでも高い放熱性能を有する一方で、比較的接着力を確保することが難しい、窒化ホウ素を用いた形態において特に本実施形態が有用である。
熱伝導性フィラーの形状は、特に限定されず、球状及び非球状のフィラーを用いることができる。なかでも、フッ素樹脂と熱伝導性フィラーとの混合物を圧縮して平板状に加工する圧延処理によって、熱伝導性フィラーをその面方向に整列させることで熱伝導異方性を付与することができることから、平板状及び鱗片状の熱伝導性フィラーを用いることが好ましい。また、同様の理由から、熱伝導性フィラー自体が熱伝導異方性を有していることが好ましい。また、熱伝導性シート16の厚さ方向の熱伝導率を向上させるために、市販の凝集形状の熱伝導性フィラーを用いてもよい。
熱伝導性フィラーの粒径は特には限定されるものではなく、0.2〜500μm程度であって、フッ素樹脂のマトリクスから脱落しないことが必要である。ここでの粒径とは、レーザ回折・散乱式粒子径・粒度分布測定装置(例えば、日機装株式会社製「マイクロトラック」)によって測定される値のことである。詳細には、粒度分布測定装置によって測定された粒度分布において、累積体積百分率が50%に相当する粒径(D50)のことを意味する。
熱伝導性フィラーの含有割合は熱伝導性多孔質シート10の質量に対して40%以上であることが好ましく、60%以上とすることがより好ましい。熱伝導性フィラーの含有割合が高いほど熱伝導性能が高くなるため、熱伝導性フィラーの含有量はできるだけ多いことが好ましい。一方で熱伝導性フィラーの含有割合が多くなりすぎると、価格が高くなるとともに、加工のし易さ及び接着性能に悪影響を与える傾向がある。そのため熱伝導性多孔質シート10における熱伝導性フィラーの質量割合としては、90%以下が好ましく、85%以下とすることがより好ましい。熱伝導性フィラーの質量割合は断面写真からの測定や、各材料の仕込み量、密度及び熱伝導性多孔質シート10の気孔率などをもとに算出することができる。
熱伝導性多孔質シート10を準備する工程としては、特に限定されることなく、市販の熱伝導性多孔質シート10を用いてもよく、自ら作製してもよい。ここに熱伝導性多孔質シート10の製造方法の一例を示す。
まず、フッ素樹脂、熱伝導性フィラー及び成形助剤を混合し、ペースト状にした後、押出成形やロール成形などによりシート状に成形する。このシート状成形体の厚さは0.5〜5mm程度である。この混合の際にはPTFEの繊維化を抑制するべく、混合時のミキサーの回転数を小さくし、混合時間を短くする必要がある。成形助剤としては、熱伝導性フィラーとフッ素樹脂との混合物をシート状に成形することのできる化合物を必要に応じて適宜使用すればよい。炭素数8〜20程度の油脂類を成形助剤として使用することで成形が容易になることが分かっている。具体的には、成形助剤として、デカンやドデカンなどの飽和炭化水素を用いることが好ましい。成形助剤は、フッ素樹脂、熱伝導性フィラー及び成形助剤を含む混合物の全質量に対して20〜55%用いればよい。
次に、このシート状成形体から圧延積層シートを作製することが好ましい。こうすることにより、より熱伝導率の高いシートを得ることができる。この圧延積層シートを得る方法としては、まず上記のシート状成形体を複数枚準備して積層し、所定の間隔で準備されたロール間を通すことで圧延して圧延積層シートを得る。この方法に用いるシート状成形体の枚数は2枚以上あればよく、最終的に必要となる厚さや必要となる性能に応じて適宜決定すればよい。また、この圧延積層シートを切断し、切断された圧延積層シート同士をさらに積層して圧延する作業を複数回繰り返してもよい。この工程の繰り返し回数もハンドリング性、放熱性、価格などの要因に応じて適宜決定できるが、好ましい繰り返し回数としては2〜12回程度である。これによりシート強度を向上させることができるとともに、熱伝導性フィラーをフッ素樹脂マトリクスにより強固に固定することができるため、熱伝導性フィラーの配合率が高く、可とう性の高いシートを得ることができる。圧延積層シートを複数回圧延する場合には、圧延方向を90度回転させて圧延することが好ましい。これによりシートの全体強度がより強固となる。5〜20枚程度のシート状成形体を一度に重ね、ロール間を複数回通過させて圧延する方法を用いてもよい。
この圧延積層シートにおいて、最終的なシート状成形体の構成層数は2〜5000層程度であり、十分なシート強度を得るためには4層以上とすることが好ましく、必要以上に厚くならないためには1500層以下とすることが好ましい。これにより、最終的に0.05〜3mm程度の圧延積層シートとすることが好ましい。
このような圧延積層シートにおいては、圧延されて極薄化された複数のシートが互いに密着及び積層されている。これにより、各シートに分散した熱伝導性フィラー同士の距離が近くなり、従来の熱伝導性シートよりも熱伝導性を高めることができるものと考えられる。
さらに、圧延積層シートから成形助剤を除去する。得られるシートは、熱伝導性多孔質シート10であってもよく、熱伝導性無孔シートであってもよく、必要特性に応じて適宜設計すればよい。本実施形態では、熱伝導性多孔質シート10を採用し、この熱伝導性多孔質シート10に熱可塑性フッ素樹脂シート12を含浸及び固定させることが好ましい。成形助剤を除去する方法は特に限定されるものではなく、公知の方法を適宜使用すればよい。一般に、シートを加熱して乾燥除去する方法が用いられる。
熱伝導性多孔質シート10に対して、さらに加圧成形処理を施してもよい。加圧成形は、例えば、温度320〜400℃、圧力0.05〜50MPaで1〜15分間にわたって熱伝導性多孔質シート10を加熱及び加圧することにより行うことができる。例えば、加圧成形前の熱伝導性多孔質シート10の気孔率が50〜80%であるとき、加圧成形によって気孔率を40%以下程度まで下げることができる。これにより熱伝導性フィラー同士がより密に存在するようになるため、熱伝導率をさらに高めた熱伝導性シート16を得ることができる。
熱伝導性多孔質シート10の表面には各種表面処理を施してもよい。例えば、熱伝導性多孔質シート10の熱可塑性フッ素樹脂シート12との接触面に対して表面粗し加工を施すことによって、熱伝導性多孔質シート10に対する熱可塑性フッ素樹脂シート12の投錨性を高めることができる。表面粗し加工としては、例えばサンドブラスト処理やスパッタエッチング処理を用いることができる。
一方、熱可塑性フッ素樹脂シート12としては、熱可塑性フッ素樹脂からなる厚さ5μm以上200μm以下のシートであれば、市販のものなど特に限定されることなく用いることができる。この熱可塑性フッ素樹脂シート12の厚さは、シートとしての自立性を保持できる限りできるだけ薄い方がよく、150μm以下が好ましく、100μm以下が特に好ましい。特に、熱伝導性多孔質シート10に対する投錨性を向上させるためには、溶融性のフッ素樹脂を含むシート12を用いることが好ましい。この溶融性フッ素樹脂としては特に限定されるものではないが例えば、ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)、四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合体(FEP)、エチレン・テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)などが挙げられる。なかでもPFA又はETFEを60質量%以上、好ましくは85質量%以上含むフッ素樹脂シート12を用いることで130℃以上の高温環境下でも良好な接着力を保持することができる。さらには接着性を付与する官能基を導入するために、接着性の官能基を有するモノマーと熱可塑性フッ素樹脂を形成しうるモノマーとを共重合させてもよい。接着性の官能基を有することにより、熱可塑性フッ素樹脂の接着性を高めることができる。接着性の官能基としては例えばカルボニル基などが挙げられる。さらに、熱可塑性フッ素樹脂には、グラフト重合によって接着性の官能基が導入されていてもよい。つまり、熱可塑性フッ素樹脂は、グラフト化熱可塑性フッ素樹脂でありうる。
熱可塑性フッ素樹脂シート12の製造方法は特に限定されるものではないが、例えば、基材や型枠を用いて乾燥固化させるキャスティング法、ダイなどを用いる押出し成型法、固形物を円柱ロールを用いて平板化するロール法などを用いることができる。
熱伝導性多孔質シート10の少なくとも片面に熱可塑性フッ素樹脂シート12を積層し、これら積層したシートを一体化させる。一体化させる方法としては、積層したシートに加熱処理及び加圧処理を施すことで熱伝導性多孔質シート10と熱可塑性フッ素樹脂シート12とを一体化させる方法を用いることができる。このときの加熱温度(例えば、圧力を加えるための金型の表面温度)としては、熱可塑性フッ素樹脂が少なくとも軟化可能な温度であり、例えば、180〜400℃程度である。加圧時の圧力としては1〜10MPaである。加熱及び加圧時間としては10秒間〜1時間程度で適宜調整できる。熱伝導性多孔質シート10と熱可塑性フッ素樹脂シート12との積層体(積層したシート14)に熱と圧力とが同時に加わるように、加熱処理及び加圧処理を同時に実施することができる。
以上の工程を経て、熱伝導性シート16が得られる。
また、図1に示すように、熱伝導性シート16をシート本体16として使用し、そのシート本体16の表面に金属層18を設けることによって、金属層18を有する熱伝導性シート20を得ることができる。金属層18は、熱可塑性フッ素樹脂シート12に由来する部分と同じ側に位置するように設けられている。
具体的には、シート本体16の表面に金属層18をなす金属箔18を積層及び一体化させる。言い換えれば、熱可塑性フッ素樹脂シート12に由来する部分が金属箔18によって被覆されるように、熱伝導性多孔質シート10と熱可塑性フッ素樹脂シート12とを一体化させる工程を経て得られたシート本体16に金属箔18を積層する。金属箔18の種類としては、特に限定されるものではないが熱伝導性能の高いものであって、腐食しにくく耐侯性の高いものがよく、銅箔やアルミニウム箔が例示できる。金属箔18の厚さも特に限定されるものではなく必要な用途に応じて適宜決定すればよいが、熱伝導性シートとしての効果を妨げないためには10〜500μm程度であって、好ましくは10〜250μmである。シート本体16と金属箔18との積層体に加熱処理及び加圧処理を施すことによって、シート本体16に金属箔18を一体化させることができる。加熱処理及び加圧処理の条件としては、熱伝導性多孔質シート10と熱可塑性フッ素樹脂シート12との積層体を加熱処理及び加圧処理したときと同程度の条件を採用できる。このような順番で金属層18を形成すると、熱可塑性フッ素樹脂シート12を構成する樹脂を熱伝導性多孔質シート10の細孔に十分に含浸させることができる。
また、熱伝導性多孔質シート10、熱可塑性フッ素樹脂シート12及び金属箔18をこの順番で積層し、得られた積層体に対して加熱処理及び加圧処理を施すことによって3層を一体化させる方法を用いてもよい。すなわち、熱伝導性多孔質シート10と金属箔18との間に熱可塑性フッ素樹脂シート12が配置されるように、熱伝導性多孔質シート10、熱可塑性フッ素樹脂シート12及び金属箔18をこの順番で積層する。得られた積層体(積層したシート)は、熱伝導性多孔質シート10、熱可塑性フッ素樹脂シート12及び金属箔18を含む。積層体に加熱処理及び加圧処理を施すことによって、熱伝導性多孔質シート10、熱可塑性フッ素樹脂シート12及び金属箔18が一体化される。このような順番によれば、加熱処理及び加圧処理の回数が1回で済むので、コスト削減及び生産性の向上を期待できる。
さらに、熱可塑性フッ素樹脂シート12と金属箔18とを予め一体化させてもよい。具体的には、熱可塑性フッ素樹脂シート12に金属箔18を積層する。熱可塑性フッ素樹脂シート12と金属箔18との積層体に加熱処理及び加圧処理を施し、熱可塑性フッ素樹脂シート12と金属箔18とを一体化させる。さらに、熱伝導性多孔質シート10と金属箔18との間に熱可塑性フッ素樹脂シート12が配置されるように、金属箔18が一体化された熱可塑性フッ素樹脂シート12を熱伝導性多孔質シート10に積層する。その後、加熱処理及び加圧処理を行い、金属箔18が一体化された熱可塑性フッ素樹脂シート12を熱伝導性多孔質シート10に一体化させる。このような順番によっても、熱伝導性シート20を得ることができる。
金属層18を有する熱伝導性シート20は、例えば、熱伝導性の絶縁層(シート本体16)を有する回路基板として使用することができる。シート本体16と金属層18との間に空隙が形成されて絶縁性が低下することを防ぐために、シート本体16と金属層18との間の接着性が重要である。金属層18をパターニングして導体回路を形成することが可能である。あるいは、金属層18をそのまま導体回路の一部として使用してもよい。
熱伝導性シートの別の例において、金属層18は、シート本体16の両面に設けられていてもよい。また、熱伝導性シートのさらに別の例において、熱伝導性多孔質シート10の両面に熱可塑性フッ素樹脂シート12が積層及び一体化された構造を有するシート本体の片面にのみ金属層18が設けられていてもよい。この場合、金属層18が設けられていない側の面は、熱可塑性フッ素樹脂シート12に由来する優れた接着性を発揮しうるので、この面を接着面として使用し、ヒートシンクなどに当該熱伝導性シートを直接接着させることができる。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
(熱伝導性多孔質シートの製造)
窒化ホウ素粉末(水島合金鉄社製、HP−40)とPTFE粉末(ダイキン工業社製、F104U)とPFA粉末(三井・デュポンフロロケミカル社製、MP−10)とを、85:9:6の質量割合で混合し、この混合物100質量部に対して成形助剤(エクソンモービル社製、アイソパーM)40質量部をさらに加えて混練することでペースト状の混合物を得た。得られたペースト状混合物を金属ロール間で圧延することによって厚さが1mmのシート状成形体を得た。そのシート状成形体を16枚重ねて複数回の圧延を繰り返すことで厚さが約0.28mmの圧延積層シートを得た。得られた圧延積層シートを150℃で20分間加熱して成形助剤を除去し、その後380℃、7MPaで1分間加熱及び加圧して、厚さが約0.2mmのシート状多孔質母材(熱伝導性多孔質シート)を得た。
(熱伝導性多孔質シートと熱可塑性フッ素樹脂シートとの積層及び一体化)
得られた熱伝導性多孔質シートと厚さ50μmの熱可塑性フッ素樹脂シート(AH−2000:旭硝子社製)とを重ね合わせ、温度250℃、圧力3MPaで10秒間加熱及び加圧することで、厚さ200μmの熱伝導性シート(シート本体)を得た。さらに、熱可塑性フッ素樹脂シートに由来する部分が被覆されるように、シート本体の表面に厚さ40μmの銅箔(古川電工社製:GTS−STD)を重ね合わせて、温度350℃、圧力15MPaで1分間程度加熱及び加圧することで、厚さ230μmの熱伝導性シートを得た。
(実施例2)
実施例1の熱伝導性多孔質シートの製造において、PFA粉末を混合せず、窒化ホウ素粉末(水島合金鉄社製、HP−40)とPTFE粉末(ダイキン工業社製、F104U)を、80:20の質量割合で混合したこと以外は実施例1と同様にして厚さ230μmの熱伝導性シートを得た。
(比較例1)
実施例2において、熱可塑性フッ素樹脂シートを用いることなく、熱伝導性多孔質シートに直接銅箔を貼り合わせたこと以外は実施例2と同様にして熱伝導性シートを得た。
(比較例2)
実施例1において、熱伝導性多孔質シートに熱可塑性フッ素樹脂シートを重ね合わせ、温度を上げずに常温にて圧力3MPaで10秒間加圧することで、厚さ200μmの熱伝導性シートを得た。しかしながら、熱伝導性多孔質シートと熱可塑性フッ素樹脂シートの界面から剥がれてしまったため、熱伝導率測定を行うことができなかった。
実施例及び比較例で得られた熱伝導性シートについて、以下の評価を行った。その結果を表1に示す。
(厚さ測定)
ダイヤルシックネスゲージ(ピーコック尾崎製作所社製:Model H0.01−10mm)を用いて測定を行った。
(熱伝導率測定)
熱伝導率計(NETZSCH社製:キセノンフラッシュアナライザー LFA447 NanoFlash)を用いて、シート厚さ方向の熱拡散率(α)を測定し、式λ=α・Cp・ρを用いて熱伝導率(λ)を求めた。なお、比熱(Cp)は示差走査熱量計(NETZSCH社製:DSC200F3)、比重(ρ)は式ρ=サンプル重量/(厚さ×面積)、により求めた数値を用いた。
(剥離強度測定)
幅10mm、長さ40mmに切断したサンプルを、剥離試験機(旭精工株式会社製:温度調節変角ピール測定機)を用いて、雰囲気温度23℃及び150℃の環境下において180°剥離試験(剥離速度300mm/分)での測定を行った。具体的には、JIS Z0237に記載された方法に準拠して、シート本体と銅箔(金属層)との間の剥離強度を測定した。
Figure 2015164801
表1に示すように、実施例1,2の熱伝導性シートによれば、熱伝導率の低下を抑制する一方で高温時にも強力な接着力を維持することができた。
金属層18を有さない熱伝導性シート16を電気部品などの放熱対象物に固定したとき、熱伝導性シート16と放熱対象物との接着強度が重要となる。このことから、実施例1,2で得られた効果が金属層18を有さない熱伝導性シート16においても得られることは明らかである。
本発明の熱伝導性シートは、車両用モーターの表面など、高温やオイルによる腐食劣化の生じやすい環境下や、電子機器など長期安定性の求められる環境下での放熱部材として好適に用いることができる。
10 熱伝導性多孔質シート
10a 熱伝導性多孔質シートの表層部
12 熱可塑性フッ素樹脂シート
12a 熱可塑性フッ素樹脂層
16,20 熱伝導性シート
18 金属層

Claims (13)

  1. フッ素樹脂と熱伝導性フィラーとを含む熱伝導性多孔質シートを準備する工程と、
    厚さ5〜200μmの熱可塑性フッ素樹脂シートを準備する工程と、
    前記熱伝導性多孔質シートの少なくとも片面に前記熱可塑性フッ素樹脂シートを積層する工程と、
    前記積層したシートに対して、加熱処理及び加圧処理を施すことで前記熱伝導性多孔質シートと前記熱可塑性フッ素樹脂シートとを一体化させる工程と、
    を含む、熱伝導性シートの製造方法。
  2. 前記熱可塑性フッ素樹脂が、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)又はエチレン・テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)である、請求項1に記載の熱伝導性シートの製造方法。
  3. 前記加熱処理の温度が180〜400℃であり、
    前記加圧処理の圧力が1〜10MPaであり、
    前記加熱処理と前記加圧処理とを同時に10秒間〜1時間実施する、請求項1又は2に記載の熱伝導性シートの製造方法。
  4. 前記熱伝導性多孔質シートに含まれた前記フッ素樹脂が、ポリテトラフルオロエチレンと、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)又はエチレン・テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)との混合物である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱伝導性シートの製造方法。
  5. 前記熱可塑性フッ素樹脂シートに由来する部分が金属箔によって被覆されるように、前記熱伝導性多孔質シートと前記熱可塑性フッ素樹脂シートとを一体化させる工程を経て得られたシート本体に金属箔を積層する工程と、
    前記シート本体と前記金属箔との積層体に加熱処理及び加圧処理を施す工程と、
    をさらに含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱伝導性シートの製造方法。
  6. 前記熱可塑性フッ素樹脂シートに金属箔を積層する工程と、
    前記熱可塑性フッ素樹脂シートと前記金属箔との積層体に加熱処理及び加圧処理を施す工程と、
    をさらに含み、
    前記熱伝導性多孔質シートに前記熱可塑性フッ素樹脂シートを積層する工程は、前記熱伝導性多孔質シートと前記金属箔との間に前記熱可塑性フッ素樹脂シートが配置されるように、前記金属箔が一体化された前記熱可塑性フッ素樹脂シートを前記熱伝導性多孔質シートに積層する工程である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱伝導性シートの製造方法。
  7. 前記熱伝導性多孔質シートに前記熱可塑性フッ素樹脂シートを積層する工程は、前記熱伝導性多孔質シートと金属箔との間に前記熱可塑性フッ素樹脂シートが配置されるように、前記熱伝導性多孔質シート、前記熱可塑性フッ素樹脂シート及び前記金属箔をこの順番で積層する工程であり、
    前記積層したシートは、前記熱伝導性多孔質シート、前記熱可塑性フッ素樹脂シート及び前記金属箔を含み、前記加熱処理及び前記加圧処理によって、前記熱伝導性多孔質シート、前記熱可塑性フッ素樹脂シート及び前記金属箔が一体化される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱伝導性シートの製造方法。
  8. 前記熱伝導性フィラーが、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、アルミナ、窒化ケイ素及び酸化マグネシウムからなる群より選ばれる少なくとも1つの材料を含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の熱伝導性シートの製造方法。
  9. 前記熱伝導性多孔質シートに含まれた前記熱伝導性フィラーの質量割合が前記熱伝導性多孔質シートの質量に対して40%以上90%以下である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の熱伝導性シートの製造方法。
  10. フッ素樹脂と熱伝導性フィラーとを含む熱伝導性多孔質シートと、
    前記熱伝導性多孔質シートの少なくとも片面における少なくとも表面近傍の部分に含浸及び固定された熱可塑性フッ素樹脂と、
    を備えた、熱伝導性シート。
  11. 前記熱可塑性フッ素樹脂が、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)又はエチレン・テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)である、請求項10に記載の熱伝導性シート。
  12. 前記熱伝導性多孔質シートに含まれた前記フッ素樹脂が、ポリテトラフルオロエチレンと、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)又はエチレン・テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)との混合物である、請求項10又は11に記載の熱伝導性シート。
  13. 前記熱可塑性フッ素樹脂を被覆するように配置され、10〜500μmの厚さを有する金属箔をさらに備えた、請求項10〜12のいずれか1項に記載の熱伝導性シート。
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