JP6883183B2 - 回路部材の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、光硬化性材料を含むインクと、金属ナノ粒子を含むインクとを用いた回路部材の製造方法に関する。
回路基板に配線パターンを形成したり、電極の導電層を形成したりする際に、金属ナノ粒子を含む組成物が使用されている。例えば、特許文献1には、金属ナノ粒子と、有機高分子と、分散媒とを含む組成物を基材上にスプレーコーティングなどにより塗布して、焼成することにより、太陽電池用の電極を作製することが提案されている。
近年、このような金属ナノ粒子を含む組成物を、三次元造形物の表面への配線パターンの形成や、多層基板の作製などに用いることが検討されている。
表面に配線パターンを有する三次元造形物としては、例えば、特許文献2には、金属粒子と水と分散剤とを配合した導電性インクを、樹脂からなる三次元形状領域に塗布し、焼成して、配線パターンを形成する技術が開示されている。また、特許文献3には、導電性粒子を水や有機溶剤に分散させたインクを、ノズル経由で三次元構造材料に押し出す方法が提案されている。
一方、特許文献4には、導電性ナノ粒子を溶剤中に分散させた導電性インクを、インクジェットヘッドから基板上に吐出し、乾燥させて配線パターンを形成した後、層間導通が必要な場所に前記導電性インクを続けて吐出し、乾燥させて所望の高さの層間導通ポストを形成する方法が開示されている。層間導通ポストを形成した後、絶縁膜を形成するためのインクを、層間導通ポスト以外の部分に塗布し、乾燥させて層間絶縁膜を形成し、この層間絶縁膜の上に、再び配線パターンを形成する。この工程を繰り返すことにより、多層基板が得られる。
特開2013−140991号公報 特開2014−3107号公報 特表2016−531770号公報 特開2003−309369号公報
金属ナノ粒子を含むインク(金属ナノインク)を用いて、基材上に配線パターンを形成する場合、精巧な配線パターンを形成するためには、金属ナノインクを基材上に塗布した際に、金属ナノインクの濡れ広がりを抑制することが必要である。
しかし、特許文献4のように、絶縁膜を形成するためのインクを乾燥させて層間絶縁膜を形成する場合、乾燥が不十分では、金属ナノインクが過度にはじかれ、もしくは過度に濡れ広がるため、精巧な配線パターンを形成することが困難になる。一方、絶縁膜を形成するためのインクを乾燥させる時間が長くなると、生産性が大きく低下する。
本発明は、金属ナノインクと、光硬化性材料を含むインクとを併用することにより、三次元造形物の表面への配線パターンの形成や、多層基板の作製などを効率よく行うことができる回路部材の製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、基材上に、インクAを塗布して、未硬化樹脂パターンを形成し、前記未硬化樹脂パターンに光照射して硬化樹脂パターンを形成する工程と、前記基材上に、インクBを塗布して、金属パターンを形成する工程と、を含む回路部材の製造方法であって、前記インクAは、光硬化性材料を含み、25℃において5〜1000mPa・sの粘度を有し、前記インクBは、金属ナノ粒子および有機溶媒を含み、25℃において1〜1000mPa・sの粘度を有し、前記インクBを前記硬化樹脂パターンの表面に塗布した後、25℃で1分間経過した後の前記インクBの前記硬化樹脂パターンに対する接触角は、5〜30°であり、前記硬化樹脂パターンを形成する工程と、その後、前記硬化樹脂パターンの少なくとも一部を覆うように前記金属パターンを形成する工程との連続が1回以上繰り返され、前記インクAの塗布および前記インクBの塗布の少なくとも一方を非接触のジェット塗布によって行う、回路部材の製造方法に関する。
本発明に係る回路部材の製造方法によれば、基板上に精巧な配線パターンを、効率よく形成することができる。
本発明の一実施形態に係る回路部材の製造方法において、光硬化性材料を含むインクAと金属ナノ粒子を含むインクBとを塗布して、基板上に配線パターンを形成する工程を説明するための基材および回路部材の模式図である。 本発明の一実施形態に係る回路部材の製造方法において、光硬化性材料を含むインクAと金属ナノ粒子を含むインクBとを塗布して、多層基板を作製する工程を説明するための基材および回路部材の模式図である。
本発明の実施形態に係る回路部材の製造方法は、基材上に、インクAを塗布して、未硬化樹脂パターンを形成し、未硬化樹脂パターンに光照射して硬化樹脂パターンを形成する工程、および基材上に、インクBを塗布して、金属パターンを形成する工程を含む。インクAは、光硬化性材料を含み、25℃において5〜1000mPa・sの粘度を有し、インクBは、金属ナノ粒子および有機溶媒を含み、25℃において1〜1000mPa・sの粘度を有する。
インクBを硬化樹脂パターンの表面に塗布した後、25℃で1分間経過した後のインクBの硬化樹脂パターンに対する接触角は、5〜30°である。また、本発明の製造方法においては、硬化樹脂パターンを形成する工程と、その後、硬化樹脂パターンの少なくとも一部を覆うように金属パターンを形成する工程との連続が、1回以上繰り返される。
インクBを硬化樹脂パターンの表面に塗布した後、25℃で1分間経過した後のインクBの硬化樹脂パターンに対する接触角を5〜30°とすることにより、断線などのない精巧な金属パターンを形成することができる。
インクAおよびインクBは、いずれも非接触のジェット塗布に適したインクであり、インクAの塗布およびインクBの塗布の少なくとも一方は、非接触のジェット塗布によって行われる。非接触のジェット塗布とは、エアー圧力、ばね弾性、ピエゾ素子(圧電素子)の振動などを利用してインクをインクの被着体に飛ばす塗布方法であり、例えばメカ式またはピエゾ式の非接触ジェットディスペンサを用いて塗布が行われる。非接触のジェット塗布は、三次元造形物の表面への配線パターンの形成や、多層基板の作製などに適している。ここで、三次元造形物とは、三次元構造を有する回路部材の基材となる材料をいう。
さらに、インクBに含まれる有機溶媒の種類を限定することにより、ジェット塗布に用いるときのヘッドの詰まりを抑制することができる。
以上により、本実施形態によれば、精巧な金属パターンが形成された回路基材を、従来に比べて少ない工程で効率良く製造することが可能になる。
以下、インクA、インクBおよび回路部材の製造方法について、より詳細に説明する。
[インクA]
インクAは、光硬化性材料および光重合開始剤を含む。光重合開始剤は、光の作用により活性化し、光硬化性材料の重合を進行させる。インクAを基材などの表面に塗布することにより、未硬化樹脂パターンを形成することができる。その後、得られた未硬化樹脂パターンに光を照射することによって光硬化性材料の重合が進行し、硬化樹脂パターンが形成される。光照射により硬化を進行させて硬化樹脂パターンを形成すると、加熱などにより溶媒を蒸発させて樹脂パターンを形成する場合に比べて、硬化速度(乾燥速度)が速いため、ボイドの少ない、膜厚の均一な樹脂パターンを得ることができる。また、生産性も高くなる。
インクAは、25℃において5〜1000mPa・sの粘度を有する。このような粘度であれば、基材上に塗布した際に、基材上に良く濡れ広がるため、硬化樹脂パターンの薄膜化や均一化が容易になる。したがって、硬化樹脂パターンの表面にインクBを塗布して形成される金属パターンは、精巧なパターンを示す。また、上記範囲の粘度を有するインクAは、取り扱いやすく、種々の方法で基材などの表面へ塗布することが可能になる。特に、三次元造形物の表面への硬化樹脂パターンの形成や、多層基板の作製などに適した、非接触のジェット塗布に利用しやすい。
また、インクAから形成される硬化樹脂パターンの表面には、インクBを塗布した後、25℃で1分間経過した後のインクBの硬化樹脂パターンに対する接触角が5〜30°となるような、適度な表面撥液性が必要となる。表面撥液性が低い場合には、接触角が低くなり、インクBが濡れ広がって精巧な金属パターンを形成することが難しくなる。一方、表面撥液性が高い場合には、接触角が高くなり、互いに連ならない液滴が生じ、金属パターンは断線した状態で形成される。すなわち、接触角が5〜30°のとき、精巧な金属パターンを形成することができる。
(光硬化性材料)
光硬化性材料としては、光重合開始剤の作用によって反応が開始し、重合反応や架橋反応が進行し、硬化性樹脂を形成することが可能な化合物が用いられる。このような化合物としては、硬化性樹脂の原料となるラジカル重合性モノマー、カチオン重合性モノマーまたはアニオン重合性モノマーが用いられる。また、これらのモノマーのいずれかが、いくつか重合したオリゴマーなども、光硬化性材料として用いることができる。
このような光硬化性材料としては、少なくとも一つの脂環式骨格を有する化合物が挙げられる。少なくとも一つの脂環式骨格を有する化合物を用いることにより、インクAを基材上に塗布した際に、基材上に良く濡れ広がり、硬化樹脂パターンの薄膜化や均一化が容易になる。
少なくとも一つの脂環式骨格を有する化合物としては、例えば、シクロヘキサン骨格、シクロペンタン骨格、1,7,7−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン骨格、トリシクロデカン骨格、ジシクロペンタン骨格、アダマンタン骨格などを有する(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリレート、エポキシ化合物などが挙げられる。中でも、硬化樹脂パターンの薄膜化が容易な点で、トリシクロデカン骨格を有する(メタ)アクリレートやジ(メタ)アクリレートが好ましい。なお、アクリレートおよびメタクリレートを(メタ)アクリレートと総称し、ジアクリレートおよびジメタクリレートをジ(メタ)アクリレートと総称する。
具体的には、シクロヘキサン骨格を有するアルコキシ化シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレートや水添ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカン骨格を有するトリシクロデカンジ(メタ)アクリレートやトリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタン骨格を有するジシクロペンテニル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
ファンクリルFA−511AS、ファンクリルFA−512AS、ファンクリルFA−513AS、ファンクリルFA−512M、ファンクリルFA−512MT、ファンクリルFA−513M((メタ)アクリレート、いずれも日立化成(株)製);KAYARAD R−684(ジアクリレート、日本化薬(株)製);セロキサイド2021P(エポキシ化合物、(株)ダイセル製)の商品名で市販されている脂環式骨格を有する化合物を用いてもよい。
光硬化性材料は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
インクAから良好な硬化樹脂パターンを得るためには、インクA中、光硬化性材料の含有量は、好ましくは20〜98質量%、より好ましくは50〜98質量%である。
(光重合開始剤)
光重合開始剤としては、光の作用により、塩基(またはアニオン)や酸(またはカチオン)を生成したり、ラジカルを生成したりする化合物であれば、特に限定されず、光硬化性材料の種類に応じて、公知のラジカル重合開始剤やイオン重合開始剤を用いることができる。
中でも、α―アミノアルキルフェノン系開始剤、α−ヒドロキシアルキルフェノン系開始剤、フェニルグリオキシレート系開始剤、オキシフェニル酢酸エステル系開始剤、アシルホスフィンオキサイド系開始剤が好ましく、特にフェニルグリオキシレート系開始剤、オキシフェニル酢酸エステル系開始剤およびアシルホスフィンオキサイド系開始剤が、光硬化性材料の硬化性に優れる点で好ましい。
光重合開始剤としては、ベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、キサントン、チオキサントン、イソプロピルキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−エチルアントラキノン、アセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−4’−イソプロピルプロピオフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、イソプロピルベンゾインエーテル、イソブチルベンゾインエーテル、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、カンファーキノン、ベンズアントロン、2−ヒロドキシ−1−[4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル]−2−メチル−プロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−(ジメチルアミノ)−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタン−1−オン、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルフォリニル)フェニル]−1−ブタノン、オキシ−フェニル−酢酸2−[2−オキソ−2−フェニル−アセトキシ−エトキシ]−エチルエステル、オキシ−フェニル−酢酸2−(2−ヒドロキシ−エトキシ)エチルエステル、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、4,4’−ジ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,4,4’−トリ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(t−ヘキシルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’−ジ(メトキシカルボニル)−4,4’−ジ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,4’−ジ(メトキシカルボニル)−4,3’−ジ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、4,4’−ジ(メトキシカルボニル)−3,3’−ジ(t−チルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2−(4’−メトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(3’,4’−ジメトキシスチリ−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(2’,4’−ジメトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(2’−メトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4’−ペンチルオキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、4−[p−N,N−ジ(エトキシカルボニルメチル)]−2,6−ジ(トリクロロメチル)−s−トリアジン、1,3−ビス(トリクロロメチル)−5−(2’−クロロフェニル)−s−トリアジン、1,3−ビス(トリクロロメチル)−5−(4’−メトキシフェニル)−s−トリアジン、2−(p−ジメチルアミノスチリル)ベンズオキサゾール、2−(p−ジメチルアミノスチリル)ベンズチアゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、3,3’−カルボニルビス(7−ジエチルアミノクマリン)、2−(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2−クロロフェル)−4,4’,5,5’−テトラキス(4−エトキシカルボニルフェニル)−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4−ジブロモフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4,6−トリクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、3−(2−メチル−2−ジメチルアミノプロピオニル)カルバゾール、3,6−ビス(2−メチル−2−モルフォリノプロピオニル)−9−n−ドデシルカルバゾール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイドなどが挙げられる。
CPI−100P、CPI−100A、CPI−110P、CPI−210S、CPI−200K(いずれもサンアプロ(株)製);サイラキュア光硬化開始剤UVI−6992、サイラキュア光硬化開始剤UVI−6976(いずれもダウ・ケミカル日本(株)製);アデカオプトマーSP−150、アデカオプトマーSP−152、アデカオプトマーSP−170、アデカオプトマーSP−172(いずれも旭電化工業(株)製);CI−5102、CI−2855(いずれも日本曹達(株)製);エサキュア1064、エサキュア1187(いずれもランベルティ(株)製);オムニキャット550(アイジーエム レジン(株)製);イルガキュア250、イルガキュア754(いずれもBASFジャパン(株)製);ロードシル フォトイニシエーター2074(ローディア・ジャパン(株)製)の商品名で市販されている重合開始剤を用いてもよい。
この中でも、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−4'−イソプロピルプロピオフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、オキシ−フェニル−酢酸2−[2−オキソ−2−フェニル−アセトキシ−エトキシ]−エチルエステル、オキシ−フェニル−酢酸2−(2−ヒドロキシ−エトキシ)エチルエステル、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイドおよび2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイドが好ましい。
光重合開始剤は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
昨今、省エネルギーの観点から、UV−LED技術が光硬化の手段として使われるようになっている。UV−LEDは現状のところ長波長(365−405nm)の発光波長を有するものが多い。そのため、未硬化樹脂パターンにUV−LEDを照射して光硬化性材料を硬化させる場合には、365〜405nmの光を吸収するα―アミノアルキルフェノン系およびアシルフォスフィンオキサイド系の光重合開始剤が好ましい。
インクAを基材上に塗布した後、インクAに含まれる光硬化性材料を十分に硬化させるためには、インクA中の光重合開始剤の含有量は、0.1〜20質量%であることが好ましく、1〜7質量%であることがさらに好ましい。
(表面調整剤)
インクAには、表面調整剤を含ませることが好ましい。表面調整剤により、インクAから形成される硬化樹脂パターンの表面張力が均一化され、インクBを塗布後、25℃で1分間経過した後の硬化樹脂パターンに対する接触角が5〜30°になるように、表面撥液性を制御することができる。
表面調整剤としては、フッ素系化合物、シリコーン系化合物、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ソルビタン誘導体、スルホン酸塩、ポリアクリレートなどを用いることができる。
具体的には、フルオロアルキルベンゼンスルホン酸塩、フルオロアルキルカルボン酸塩、フルオロアルキルポリオキシエチレンエーテル、ヨウ化フルオロアルキルアンモニウム、フルオロアルキルベタイン、フルオロアルキルスルホン酸塩、ジグリセリンテトラキス(フルオロアルキルポリオキシエチレンエーテル)、フルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩、フルオロアルキルアミノスルホン酸塩、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンナフチルエーテル、ポリオキシエチレンラウレート、ポリオキシエチレンオレエート、ポリオキシエチレンステアレート、ポリオキシエチレンラウリルアミン、ソルビタンラウレート、ソルビタンパルミテート、ソルビタンステアレート、ソルビタンオレエート、ポリオキシエチレンソルビタンラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンオレエート、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩などが例示される。
また、ディスパーベイク(Disperbyk)161、ディスパーベイク162、ディスパーベイク163、ディスパーベイク164、ディスパーベイク166、ディスパーベイク170、ディスパーベイク180、ディスパーベイク181、ディスパーベイク182、BYK−300、BYK−306、BYK−310、BYK−320、BYK−330、BYK−344、BYK−346、BYK−UV−3570、BYK−UV−3576(シリコーン系化合物、いずれもビックケミー・ジャパン(株)製);KP−341、KP−358、KP−368、KF−96−50CS、KF−50−100CS(シリコーン系化合物、いずれも信越化学工業(株)製);TEGO Rad 2200N、TEGO Rad 2250、TEGO Rad 2300、TEGO Rad 2500(シリコーン系化合物、いずれもエボニック デグサ ジャパン(株)製);サーフロンSC−101、サーフロンKH−40(フッ素系化合物、いずれもセイミケミカル(株)製);フタージェント222F、フタージェント251、FTX−218(フッ素系化合物、いずれも(株)ネオス製);EFTOP EF−351、EFTOP EF−352、EFTOP EF−601、EFTOP EF−801、EFTOP EF−802(フッ素系化合物、いずれも三菱マテリアル(株)製);RS-72K、RS−211K、メガファックF−171、メガファックF−177、メガファックF−475、メガファックR−08、メガファックR−30(フッ素系化合物、いずれもDIC(株)製);ポリフローNo.45、ポリフローKL−245、ポリフローNo.75、ポリフローNo.90、ポリフローNo.95(ポリアクリレート、いずれも共栄社化学工業(株)製)の商品名で市販されている表面調整剤を用いてもよい。インクAに含まれる表面調整剤は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
硬化樹脂パターンの表面撥液性をより高くするためには、反応性基を有するフッ素系化合物またはシリコーン系化合物を用いることが好ましい。前記反応性基としては、(メタ)アクリロイル基、エポキシ基、オキセタニル基が挙げられる。
反応性基として(メタ)アクリロイル基を有するフッ素系化合物しては、商品名RS-72Kなどが例示される。(メタ)アクリロイル基を有するシリコーン系化合物としては、商品名BYK−UV−3570、BYK−UV−3576、TEGO Rad 2200N、TEGO Rad 2250、TEGO Rad 2300、TEGO Rad 2500などが例示される。また、反応性基としてエポキシ基を有するシリコーン系化合物としては、RS−211Kなどが例示される。
特に、インクAが硬化性の高いインクとなる点で、(メタ)アクリロイル基を有するシリコーン系化合物を用いることが好ましい。
インクAにおいて、表面調整剤の含有量は、0.01〜10質量%、好ましくは0.1〜1質量%である。表面調整剤の含有量が上記範囲のとき、インクAに含まれる硬化性材料は十分に硬化し、さらに、形成される硬化樹脂パターンの撥液性が高くなる。
(その他)
インクAには、光硬化性材料、光重合開始剤、表面調整剤以外に、必要に応じて、公知の添加剤を含ませることもできる。例えば、光硬化性材料の種類に応じた硬化促進剤や反応性希釈剤、重合禁止剤、無機フィラー、顔料などを添加することができる。これらの添加剤を含ませる場合、インクA中の添加剤の量は、0.1〜80質量%、好ましくは0.5〜50質量%である。
(インクAの調製)
インクAは、光硬化性材料、光重合開始剤、表面調整剤、および必要により添加剤を混合することにより得ることができる。構成成分をより均一に分散させるため、公知の攪拌機、ミキサーなどが用いられる。
インクAの25℃における粘度は、5〜1000mPa・s、好ましくは5〜200mPa・sになるように調整する。粘度が上記範囲のとき、基材上に塗布した際に、基材上に良く濡れ広がるため、形成される硬化樹脂パターンの薄膜化や均一化が容易になる。したがって、硬化樹脂パターンの表面にインクBを塗布して形成される金属パターンは、精巧なパターンを示す。また、上記範囲の粘度を有するインクAは、取り扱いやすく、種々の方法で基材などの表面へ塗布することが可能になる。特に、非接触のジェット塗布に適用する場合に、ノズルから吐出しやすくなる。粘度の調整は、光硬化性材料として低粘度のモノマーを選択的に使用するか、または溶媒を用いて希釈することにより行われる。
[インクB]
インクBは、例えば、金属ナノ粒子と、有機溶媒とを含む焼成型の金属ナノインクであればよい。焼成型の金属ナノインクとは、基材などの表面に塗布して形成された塗膜を焼成することにより、金属パターンを形成させるインクである。インクBには、金属ナノ粒子および有機溶媒以外に、重合反応性化合物、重合開始剤などの任意成分を含ませてもよい。重合反応性化合物および重合開始剤は、インクBの所望の物性に応じて、公知の重合反応性化合物および重合開始剤から適宜選択することができる。
(金属ナノ粒子)
金属ナノ粒子を形成する金属材料としては、金属単体や合金などが用いられる。
金属単体または合金に含まれる金属元素としては、典型金属元素、遷移金属元素などが挙げられる。典型金属元素としては、例えば、Zn、Al、Ga、In、Ge、Sn、Pb、Sb、Biなどが挙げられる。遷移金属元素としては、例えば、Ti、Zr、V、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Auなどが挙げられる。合金は、これらの金属元素を二種以上含むものが好ましい。金属元素としては、Al、Sn、Ti、Ni、Pt、Cu、Ag、Auなどが好ましい。金属材料としては、Cu単体、Ag単体、Cu合金、Ag合金などが好ましく、中でも、AgまたはAg合金が好ましい。
インクBは、材料が異なる複数種の金属ナノ粒子を含んでいてもよい。例えば、インクBは、AgまたはAg合金で形成された第1金属ナノ粒子と、前記例示の金属のうちAg以外の金属単体またはAg合金以外の合金で形成された第2金属ナノ粒子とを組み合わせて含んでもよい。この場合、金属ナノ粒子全体に占める第1金属ナノ粒子の割合は、80質量%以上であることが好ましく、80〜99質量%または85〜99質量%であってもよい。
金属ナノ粒子の平均粒子径は、5nm以上1000nm未満の範囲から選択できる。平均粒子径は、5〜500nmであることが好ましく、5〜200nmまたは5〜100nmであることがさらに好ましい。このような平均粒子径を有する金属ナノ粒子を用いることで、金属ナノ粒子間の接触を高めることができるとともに、比較的低い温度でも金属ナノ粒子同士が融着しやすくなるため、金属ナノインクを用いて形成される金属パターンの導電性が高まりやすい。
なお、本明細書中、平均粒子径とは、体積粒度分布の累積体積50%における粒径(D50)である。平均粒子径(D50)は、レーザー回折式の粒度分布測定装置を用いて、レーザー回折散乱法によって測定することができる。また、金属ナノ粒子の平均粒子径は、金属ナノインクの塗膜の走査型電子顕微鏡(SEM)写真において、任意に選択した複数(例えば、10個)の金属ナノ粒子の外縁で囲まれた領域と同じ面積を有する相当円の直径を求め、平均化することにより算出してもよい。
金属ナノ粒子の形状は、特に制限されず、球状、楕円球状、多角柱状、多角錐状、扁平形状(薄片状、鱗片状、フレーク状など)、またはこれらの類似する形状などのいずれの形状であってもよい。金属ナノ粒子間の接触を高めやすい観点からは、球状、楕円球状、扁平形状、もしくはこれらに類似する形状であることが好ましい。
金属ナノ粒子としては、市販のものを用いてもよく、金属材料を蒸発させることにより形成したものを用いてもよい。また、液相や気相中で化学反応を利用して作製した金属ナノ粒子を用いてもよい。
(有機溶媒)
インクBに含まれる有機溶媒としては、アルカノール、エーテル、エステル、ケトン、炭化水素などが挙げられる。
アルカノールとしては、例えば、メタノール、エタノールなどのC1-6アルカノールが挙げられる。
エーテルとしては、ジエチルエーテルなどの脂肪族エーテル、テトラヒドロフランなどの環状エーテルが例示できる。
エステルとしては、脂肪族エステル、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、酪酸エチルなどのC1-4カルボン酸のアルキルエステル(例えば、C1-4アルキルエステルなど)などが挙げられる。
ケトンとしては、例えば、アセトン、エチルメチルケトンなどの脂肪族ケトン(炭素数3〜6の脂肪族ケトンなど)、シクロヘキサノンなどの脂環族ケトン(C5-6シクロアルカノンなど)などが挙げられる。
炭化水素としては、例えば、ヘキサンなどのC6-10アルカン、シクロヘキサンなどのC5-8シクロアルカン、ベンゼン、トルエンなどが挙げられる。
ただし、後述する分散剤としてC6-10アルキルアミンなどの炭素数が少ないアミンを用いる場合、遊離のアミンが生成しやすいことから、有機溶媒としては、エステルやケトン以外のものを用いることが好ましい。遊離のアミンは、エステルやケトンと反応する場合があるためである。
インクBは、ハンセン溶解度パラメータ(HSP)の水素結合項dHが2〜12(Mpa)1/2であり、極性項dPが2(Mpa)1/2以上である有機溶媒を1種類以上含むことが好ましい。ここで、溶解度パラメータは、物質間の親和性の尺度を表すものであり、HSPは、金属ナノ粒子の有機溶媒中の分散安定性を示す指標となる。水素結合項dHおよび極性項dPが上記範囲のとき、金属ナノ粒子の分散安定性は高くなりやすい。よって、導電性の高い精巧な金属パターンを形成することが可能となる。
このような有機溶媒としては、エチレングリコールモノ−tert−ブチルエーテル、エチレングリコールモノ(2−エチルヘキシル)エーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノノルマルヘキシルエーテル、ジエチレングルコールモノベンジルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、1−オクタノール、ドデカノール、1,4−ブタンジオールジアセテートなどが挙げられる。有機溶媒は、一種を単独で、または二種以上を組み合わせて用いてもよい。
有機溶媒は、インクBの塗膜が形成されてから金属パターンが形成されるまでの過程で除去されるため、揮発性である。ただし、保管する場合を考慮して、インクBは室温では液体であることが望ましい。また、有機溶媒の沸点は、100〜300℃であることが好ましく、150〜250℃であることが、さらに好ましい。沸点が上記範囲より低いと、インクBをジェット塗布する場合、ヘッドで有機溶媒が揮発し、金属膜が形成されてヘッドが詰まってしまう可能性がある。
インクB中の有機溶媒の割合は、25〜95質量%であることが好ましく、25〜90質量%であってもよい。有機溶媒の割合がこのような範囲である場合、インクBに含まれる金属ナノ粒子などの構成成分が有機溶媒中に分散しやすく、良好な塗工性を確保しやすい。そのため、インクBをジェット塗布などにも適用できる。
(分散剤)
インクBは、分散剤を含んでもよい。分散剤を用いることで、インクB中で金属ナノ粒子が凝集することが抑制され、金属ナノ粒子を安定化することができる。
分散剤は、金属ナノインクを調製する際に添加してもよいが、金属ナノ粒子に配位させた状態で使用することが好ましい。分散剤は、金属ナノ粒子とともに混合し、必要により加熱することで金属ナノ粒子に配位させてもよく、金属ナノ粒子の作製過程で分散剤を用いることにより金属ナノ粒子に配位させてもよい。
分散剤としては、例えば、金属ナノ粒子に配位する極性の官能基と疎水性の有機基とを有する有機化合物が用いられる。極性の官能基としては、例えば、アミノ基、メルカプト基、ヒドロキシル基(フェノール性ヒドロキシル基を含む)、カルボニル基、エステル基、カルボキシル基などの酸素含有基などが挙げられる。分散剤は、極性の官能基を一種含んでいてもよく、二種以上含んでいてもよい。
中でも、室温安定性の点で、アミノ基を含む化合物である有機アミンを用いることが好ましい。有機アミンは、一級アミン、二級アミン、三級アミンのいずれであってもよく、環状アミンおよび鎖状アミンのいずれであってもよい。金属ナノ粒子に配位しやすい点では、一級アミン(中でも、一級鎖状アミン)が好ましい。有機アミンとしては、例えば、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、ミリスチルアミンなどのアルキルアミンが好ましい。金属ナノ粒子の分散安定性が高く、金属パターンの作製過程で除去しやすい点で、C6-14アルキルアミンまたはC8-12アルキルアミンが好ましい。また、炭素数が少ないアミン(例えば、C6-10アルキルアミン)は反応性が高いため、低温焼成などにより、温和な条件下で重合反応を行うことができる。そのため、特にC8-10アルキルアミンが好ましい。
一方で、炭素数の少ないアミンは、反応性が高いため、インクBの保存安定性が低下する場合がある。しかし、インクB中に、重合反応性化合物としてシクロアルケンオキサイド型の脂環式エポキシ樹脂を含ませる場合は、このような炭素数が少ないアミンを用いても、高い保存安定性を確保することができる。
分散剤は、金属パターンの形成過程の適当な段階で除去されることが好ましいため、低分子化合物(例えば、分子量500以下の化合物)であることが好ましい。
インクB中に含まれる分散剤(好ましくは、金属ナノ粒子に配位した分散剤)の量は、金属ナノ粒子100質量部に対して、例えば、0.1〜10質量部であり、0.5〜5質量部であることが好ましい。分散剤の量がこのような範囲である場合、インクB中で金属ナノ粒子を安定化しやすく、分散剤の除去も容易である。
(ポリエーテル化合物)
インクBは、ポリオキシアルキレンユニットを有するポリエーテル化合物を含んでもよい。この場合、金属パターンの硬化樹脂パターンなどに対する高い密着性をさらに確保しやすくなる。特に、インクB中に、重合反応性化合物として、シクロアルケンオキサイド型の脂環式エポキシ樹脂を含ませる場合には、金属パターンが硬くなりやすい。このような場合には、ポリエーテル化合物を用いることで密着性をより確保しやすくなる。
ポリオキシアルキレンユニットとしては、ポリオキシエチレンユニット、ポリオキシプロピレンユニット、ポリオキシトリメチレンユニット、ポリオキシテトラメチレンユニットなどのポリ(オキシC2-4アルキレン)ユニットが好ましい。ポリエーテル化合物は、これらのポリオキシアルキレンユニットを一種含んでもよく、二種以上含んでもよい。
ポリエーテル化合物は、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリトリメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール(PTMG)などの単独重合体であってもよい。また、ポリエーテル化合物は、ポリオキシアルキレンユニットを含む共重合体であってもよい。共重合体としては、二種以上のポリオキシアルキレンユニットを含むものが好ましい。このような共重合体としては、例えば、エチレングリコール−プロピレングリコール共重合体、テトラメチレングリコール−エチレングリコール共重合体、テトラメチレングリコール−プロピレングリコール共重合体などが挙げられる。
中でも、少なくともポリオキシテトラメチレンユニットを含むポリエーテル化合物が好ましい。このようなポリエーテル化合物としては、PTMGの他、テトラメチレングリコール−エチレングリコール共重合体、テトラメチレングリコール−プロピレングリコール共重合体などのテトラメチレングリコールとC2-3アルキレングリコールとの共重合体などが例示される。
ポリエーテル化合物の数平均分子量は、例えば、500〜7000の範囲から選択でき、1000〜5000が好ましく、1000〜3000がさらに好ましい。数平均分子量がこのような範囲である場合、得られる金属パターンの導電性と、硬化樹脂パターンなどの表面に対する密着性とのバランスを取りやすい。
(その他)
インクBは、必要に応じて、公知の添加剤を含んでもよい。例えば、インクBが重合反応性化合物および重合開始剤を含む場合、重合反応性化合物の種類に応じて、硬化促進剤、反応性希釈剤などを含んでもよい。インクB中の添加剤の量は、重合開始剤および重合反応性化合物100質量部に対して、例えば、10質量部以下が好ましく、5質量部以下であることがより好ましい。
(インクBの調製)
インクBは、金属ナノ粒子、有機溶媒、および必要により、重合開始剤、重合反応性化合物、分散剤、ポリエーテル化合物、添加剤を混合することにより得ることができる。構成成分をより均一に分散させるため、公知の攪拌機、ミキサーなどが用いられる。
構成成分の混合順序は特に制限されない。例えば、一部の成分を予め混合し、残りの成分を添加してさらに混合してもよい。各成分は、一度に添加してもよく、複数回に分けて添加してもよい。金属ナノ粒子は固体であるため、予め有機溶媒中に分散させておくことが好ましい。例えば、有機溶媒に金属ナノ粒子を予め分散した分散液に、重合開始剤および重合反応性化合物を添加し、混合することにより金属ナノインク(インクB)を調製することができる。分散剤を用いる場合、金属ナノ粒子に予め分散剤を配位させた後、有機溶媒に分散させて、これに重合開始剤および重合反応性化合物を添加、混合してもよい。
(粘度)
上記方法により調製されたインクBは、25℃における粘度が1〜1000mPa・sである。好ましくは3〜300mPa・sである。粘度が上記範囲のとき、インクBの基材への塗布を非接触のジェット塗布で行う際に、ノズルから吐出しやすくなる。
(接触角)
インクBは、インクAから形成される硬化樹脂パターンの少なくとも一部を覆うように塗布され、金属パターンを形成する。インクBの硬化樹脂パターンに対する接触角は、塗布後、1分経過するまで(初期)は、5〜30°であることが好ましい。また、塗布後、25℃で1分間経過した後の硬化樹脂パターンに対するインクBの接触角は、5〜30°である。このとき、形成される金属パターンは、精巧な配線パターンとなる。上記接触角が30°より大きい場合は、インクBが硬化樹脂パターンに塗布されると、互いに連ならない液滴が生じ、金属パターンは断線した状態で形成される。接触角が5°未満の場合、インクBが硬化樹脂パターン上に濡れ広がりすぎることで、精巧な金属パターンを得ることが難しくなる。
(表面張力)
インクBの表面張力は、25〜40mN/mであることが好ましく、より好ましくは27〜37mN/mである。このとき、形成される金属パターンは、精巧な配線パターンとなる。表面張力が40mN/mより大きい場合には、インクBが硬化樹脂パターンに塗布されると、互いに連ならない液滴が生じ、断線した金属パターンが形成されることになる。また、25mN/m未満の場合には、インクBが硬化樹脂パターン上に濡れ広がりすぎることで、精巧な配線パターンを得ることが難しくなる。
[回路部材の製造方法]
本発明の回路部材の製造方法を、図1および図2を用いて説明する。図1および図2は、非接触のジェット塗布によって基材上に硬化樹脂パターンを形成したのち、金属パターンを形成する工程を説明する図であるが、本発明は以下の工程に限定されるものではない。
(硬化樹脂パターンの形成)
図1に示すように、まず、基材1上に、インクジェット装置2のヘッドからインクA3を塗布し(a)、未硬化樹脂パターンを形成する。基材1としては、目的とする回路部材に適していれば、材質および形状は特に限定されず、例えば、ガラス、シリコン、プラスチックなどの平面材料や三次元造形物などを用いることができる。
基材1上へのインクAの塗布は、非接触のジェット塗布に限定されず、スピンコート、スプレーコート、ブレードコート、スクリーン印刷などの公知の塗布方法により行うことができる。三次元造形物の表面への配線パターンの形成や、多層基板の作製を少ない工程数で効率良く行うためには、非接触のジェット塗布方法により行うことが好ましい。
続いて、未硬化樹脂パターン上に光照射装置から光を照射して硬化樹脂パターン4を形成させる(b)。光照射装置としては、例えば、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、ハロゲンランプ、LEDランプなどを用いることができる。光照射装置は、インクジェット装置2に備え付けられていてもよく、インクジェット装置2とは独立した装置であってもよい。照射する光の波長は、200〜400nmであることが好ましい。照射時間は、インクAに含まれる光硬化性材料の種類などによって適宜設定することができる。
硬化樹脂パターン4の膜厚は、特に限定されないが、1〜100μmであることが、回路部材の絶縁層として好ましい。所望の膜厚を得るために、インクAの塗布および硬化を繰り返し行ってもよい。
(金属パターンの形成)
さらに、硬化樹脂パターン4の少なくとも一部を覆うようにインクB5が塗布される(c)。ここでは、インクB5が、金属ナノ粒子、有機溶媒、重合反応性化合物および重合開始剤を含む場合について説明する。インクB5の塗布も、インクA3の塗布と同様に、非接触のジェット塗布、スピンコート、スプレーコート、ブレードコート、スクリーン印刷などの公知の塗布方法により行うことができる。三次元造形物の表面への配線パターンの形成や、多層基板の作製を少ない工程数で効率良く行うためには、非接触のジェット塗布方法により行うことが好ましい。
インクB5の塗膜が形成された後、この塗膜は焼成され、金属パターン6が形成される(d)。塗膜は、焼成前に必要に応じて、揮発性の有機溶媒を除去するために、乾燥されてもよい。乾燥温度は、焼成温度よりも低いことが望ましい。焼成は、インクB5の金属ナノ粒子の種類、および硬化樹脂パターン4の耐熱性を考慮して、熱焼成または光焼成により行われる。
焼成工程では、塗膜を有する基材1を焼成する。焼成により、塗膜内に含まれる金属ナノ粒子同士が融着して、得られる金属パターン6の抵抗を大幅に低減することができる。金属ナノ粒子のナノサイズ効果により、金属の融点よりも低い温度で融着するため、焼成温度が比較的低温であっても十分に融着し、金属パターン6の抵抗を低減する効果が得られる。
焼成工程が熱焼成の場合、焼成温度は、金属ナノ粒子の金属の種類、および硬化樹脂パターンの耐熱性に応じて適宜選択でき、例えば、50〜250℃で行ってもよく、100〜250℃または150〜250℃で行ってもよい。分散剤として炭素数の少ないアミンを用いると、温和な条件下でも金属パターン6を形成することができる。この場合、焼成温度は、150℃以下(例えば、50〜150℃)であることが好ましく、100〜150℃であってもよい。焼成は、必要に応じて、還元剤の存在下で行なってもよい。また、焼成は、不活性ガス雰囲気下で行ってもよく、大気中で行ってもよい。焼成時間は、特に制限されないが、例えば、5〜120分であってもよい。
インクB5の重合開始剤として、熱の作用により活性化するものを用いる場合には、乾燥工程および/または焼成工程で加えられる熱により活性化させ、重合反応性化合物の重合を進行させてもよい。すなわち、乾燥工程および/または焼成工程において、重合反応性化合物が重合することで、金属ナノ粒子を硬化樹脂パターン4に密着させるバインダとして機能する高分子が形成される。
インクB5の重合開始剤として、光の作用により活性化するものを用いる場合には、塗膜形成後から焼成工程までの適当な段階で塗膜に光を照射することが好ましい。乾燥工程および/または焼成工程を、光照射下で行ってもよい。照射する光の波長や照射量は、重合開始剤の種類に応じて適宜決定できる。このように、適当な段階で塗膜を光に暴露することで、重合反応性化合物の重合が進行し、バインダとして機能する高分子が形成される。
光焼成は、例えば、硬化樹脂パターン4の耐熱性が低い場合などに選択される。光焼成は、キセノンフラッシュライトなどを光源とし、瞬間加熱により焼成を行うものである。したがって、基材1や硬化樹脂パターン4への熱による影響を抑制することができる。
このようにして、インクB5から得られる金属パターン6には、重合反応性化合物の重合により得られた高分子からなるバインダが生成しているため、硬化樹脂パターン4と金属パターン6との高い密着性を確保することができる。
金属パターン6の膜厚は、特に限定されないが、0.1〜20μmであることが、配線パターンとして好ましい。所望の膜厚を得るために、インクBの塗布および焼成を繰り返し行ってもよい。
インクA3の塗布およびインクB5の塗布の少なくとも一方は、非接触のジェット塗布により行う。少なくとも一方の塗布を、非接触のジェット塗布で行うことにより、三次元造形物の表面への配線パターンの形成や、多層基板の作製をより少ない工程数で効率良く行うことができる。
本発明の回路部材の製造方法においては、基材1上に、インクA3を1回以上塗布して硬化樹脂パターン4を形成する工程と、その後、硬化樹脂パターン4の少なくとも一部を覆うように、インクB5を塗布して金属パターン6を形成する工程との連続が1回以上繰り返される。例えば、図2に示すように、図1の(d)で得られた基材上の少なくとも一部を覆うように、インクA3を塗布し(e)、硬化させると新たな硬化樹脂パターン4が形成される。さらに、硬化樹脂パターン4の少なくとも一部を覆うように、インクB5を塗布し(f)、焼成することにより、新たな金属パターン6が形成される(g)。このように、硬化樹脂パターン4を形成する工程と、金属パターン6を形成する工程との連続を2回以上繰り返すことにより、(g)に示されるような多層基板を作製することが可能となる。
[実施例]
以下、本発明を実施例および比較例に基づいて具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(1)インクA(硬化性材料を含むインク)の調製
(インクA1)
光硬化性材料として、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(SR833S、アルケマ(株)製)およびジシクロペンテニルアクリレート(FA−511AS、日立化成(株)製)を、光重合開始剤として、アシルホスフィンオキサイド系の光重合開始剤である2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド(IrgacureTPO、BASF社製)を、表面調整剤として、シリコーン変性アクリレート系のBYK−UV−3576(ビッグケミー・ジャパン(株)製)を用いてインクA1を調製した。SR833S、FA−511AS、IrgacureTPO、BYK−UV−3576の質量比は、70:30:4:0.5とした。
これらの光硬化性材料、光重合開始剤および表面調整剤を、遊星式撹拌装置((株)シンキー製、ARV−310)を用いて攪拌し、インクA1を調製した。
インクA1の25℃における粘度は70mPa・sであった。粘度については、E型粘度計 (東機産業(株)製、TVE−20)を用いて、20rpm回転数時の数値を読み取った。
(インクA2)
表面調整剤を用いなかったこと以外は、インクA1と同様にして、インクA2を調製した。SR833S、FA−511AS、IrgacureTPOの質量比は、70:30:4とした。インクA2の25℃における粘度は69mPa・sであった。
(インクA3)
表面調整剤として、BYK−UV−3576の代わりにポリアクリレート系のBYK−350(ビッグケミー・ジャパン(株)製)を用いたこと以外は、インクA1と同様にしてインクA3を調製した。SR833S、FA−511AS、IrgacureTPO、BYK−350の質量比は、70:30:4:0.5とした。インクA3の25℃における粘度は70mPa・sであった。
(インクA4)
表面調整剤として、BYK−UV−3576の代わりにポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン系のBYK−UV−3500(ビッグケミー・ジャパン(株)製)を用いたこと以外は、インクA1と同様にしてインクA4を調製した。SR833S、FA−511AS、IrgacureTPO、BYK−UV−3500の質量比は、70:30:4:0.2とした。インクA4の25℃における粘度は70mPa・sであった。
(2)インクB(金属ナノインク)の調製
(2−1)金属ナノ粒子の作製
硝酸銀20g、イソブタノール100g、オクチルアミン(分散剤)80gを混合した。得られた混合物を、温度が100℃になるまで加熱し、5時間還流した。得られた混合物中の固形分を遠心分離で沈降させて回収した。回収した固形分を、メタノールで3回洗浄したのち、遠心分離することにより、オクチルアミンが配位した銀ナノ粒子を回収した。回収した銀ナノ粒子を、ジエチレングリコールモノブチルエーテル中に、3本ロールを用いて分散させることにより、分散ペーストを調製した。銀ナノ粒子と銀ナノ粒子に配位したオクチルアミンとの質量比は、100:3であった。また、銀ナノ粒子(オクチルアミンが配位した銀ナノ粒子)とジエチレングリコールモノブチルエーテルとの質量比は、85:15であった。
得られた分散ペーストをスピンコートで基材に塗布し、銀ナノ粒子のSEM写真を撮影した。この撮影画像において、上記の方法により銀ナノ粒子の平均粒子径を算出したところ、約40nmであった。
(2−2)インクBの調製
上記(2−1)で得られた金属ナノ粒子を含むペーストを、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(HSPの水素結合項dH:10.6(Mpa)1/2、極性項dP:7(Mpa)1/2)に、超音波分散機を用いて分散させた後、5umのディスクフィルターを用いてろ過し、インクBを調製した。
得られたインクBの25℃における粘度は10mPa・s、表面張力は28mN/mであった。表面張力は、接触角計(協和界面科学(株)製、DM−501)を用いて、懸滴法により、数値を求めた。
[実施例1]
(I)硬化樹脂パターンの形成
インクA1を、インクジェットヘッドの径が20umのインクジェット装置を用いて基材上に塗布し、未硬化樹脂パターンを形成した。なお、基材については4インチ四方のガラスを用い、10x10mmの範囲を全面塗布した。
続いて、形成した未硬化樹脂パターンに光を照射し、硬化樹脂パターンを形成した。UV露光には、水銀ランプを用いた。365nmの照度計を用いて、光強度が50mW/cmになるように水銀ランプの高さを調整し、60秒間光照射を行った。
(II)金属パターンの形成
上記(I)で形成した硬化樹脂パターンの表面の少なくとも一部を覆うように、上記(2−2)で調製したインクBを、インクジェットヘッドの径が20umのインクジェット装置を用いて塗布し、塗膜を形成させた。その後、基材を加熱し、塗膜を乾燥させ、次いで、120℃のオーブンの中で1時間焼成して、金属パターンを形成することにより、回路部材を作製した。
(III)評価
(a)接触角
インクBを、インクA1から形成される硬化樹脂パターンの表面に塗布した後、初期および25℃で1分間経過した後のインクBの硬化樹脂パターンに対する接触角を測定した。接触角は、接触角計(共和界面科学(株)製、DM−501)を用いて横からの観察にて計測を行った。
(b)金属パターンの性能
インクBを硬化樹脂パターン上に塗布したときの状態、および金属パターンの形成状態を評価した。
(c)配線抵抗値
テスターを用いて、10mm長さの抵抗値を測定した。導通がとれなかったものは測定不能とした。
(a)〜(c)の評価結果を、表1に示す。
[比較例1]
硬化性材料を含むインクAとして、インクA1の代わりにインクA2を用いた以外は実施例1と同様にして、回路部材を作製した。評価結果を表1に示す。
[比較例2]
硬化性材料を含むインクAとして、インクA1の代わりにインクA3を用いた以外は実施例1と同様にして、回路部材を作製した。評価結果を表1に示す。
[比較例3]
硬化性材料を含むインクAとして、インクA1の代わりにインクA4を用いた以外は実施例1と同様にして、回路部材を作製した。評価結果を表1に示す。
Figure 0006883183
実施例1では、インクBを、硬化樹脂パターンの表面に塗布した後、25℃で1分間経過した後のインクBの硬化樹脂パターンに対する接触角は23°であった。このとき、配線可能な金属パターンを得ることができた。
一方、比較例1および比較例2では、インクBを硬化樹脂パターン上に塗布した際に液滴が濡れ広がってしまい、配線可能な金属パターンを得ることができなかった。また、比較例3においては、インクBを、硬化樹脂パターンの表面に塗布した際に、基材上ではじかれてしまうため、25℃で1分間経過した後のインクBの硬化樹脂パターンに対する接触角が39°と高くなった。したがって、液滴同士が連なることができず、配線可能な金属パターンを得ることができなかった。
本発明に係る回路部材の製造方法によれば、絶縁層および精巧な配線パターンを、簡便な工程で形成することが可能となる。したがって、三次元造形物の表面への配線パターンの形成や、多層基板の作製などに有用である。
1:基材、2:インクジェット装置、3:インクA、4:硬化樹脂パターン、5:インクB、6:金属パターン

Claims (5)

  1. 基材上に、インクAを塗布して、未硬化樹脂パターンを形成し、前記未硬化樹脂パターンに光照射して硬化樹脂パターンを形成する工程と、
    前記基材上に、インクBを塗布して、金属パターンを形成する工程と、を含む回路部材の製造方法であって、
    前記インクAは、光硬化性材料を含み、25℃において5〜1000mPa・sの粘度を有し、
    前記インクBは、金属ナノ粒子および有機溶媒を含み、25℃において1〜1000mPa・sの粘度を有し、
    前記インクBを前記硬化樹脂パターンの表面に塗布した後、25℃で1分間経過した後の前記インクBの前記硬化樹脂パターンに対する接触角は、5〜30°であり、
    前記硬化樹脂パターンを形成する工程と、その後、前記硬化樹脂パターンの少なくとも一部を覆うように前記金属パターンを形成する工程との連続が1回以上繰り返され、
    前記インクAの塗布および前記インクBの塗布の少なくとも一方を非接触のジェット塗布によって行う、回路部材の製造方法。
  2. 前記インクAが、光硬化性材料として、少なくとも一つの脂環式骨格を有する化合物を含む、請求項1に記載の回路部材の製造方法。
  3. 前記インクAが、撥液成分として表面調整剤を含む、請求項1または2に記載の回路部材の製造方法。
  4. 前記インクBの表面張力が、25〜40mN/mである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の回路部材の製造方法。
  5. 前記インクBが、ハンセン溶解度パラメータ(HSP)の水素結合項dHが2〜12(Mpa)1/2であり、極性項dPが2(Mpa)1/2以上である有機溶媒を1種類以上含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の回路部材の製造方法。
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