本発明は、カルボキシ基を有する高分子と、前記カルボキシ基と水素結合を形成する官能基を有しかつ液晶性を有する化合物と、が水素結合を形成してなる複合樹脂であって、前記水素結合は光照射により切断されうる結合である、複合樹脂である。かような構成を有する本発明の複合樹脂は、より低い温度での加工が可能となり、加工後にも優れた耐久性を有する。
なぜ、本発明の複合樹脂により上記効果が得られるのか、詳細は不明であるが、下記のようなメカニズムが考えられる。なお、下記のメカニズムは推測によるものであり、本発明は下記メカニズムに何ら制限されるものではない。また、本明細書では、カルボキシ基を有する高分子を単に「カルボキシ基含有高分子」または「高分子」とも称し、前記カルボキシ基と水素結合を形成する官能基を有しかつ液晶性を有する化合物を単に「液晶性化合物」とも称する。
図1は、本発明の一形態による複合樹脂の効果発現のメカニズムを示す模式図である。
カルボキシ基含有高分子と液晶性化合物とを混合すると、カルボキシ基含有高分子中のカルボキシ基(図1中の黒塗り部分)と、液晶性化合物中の前記カルボキシ基と水素結合を形成する官能基(図1中の灰色塗り部分)との水素結合が形成され、液晶性化合物によって、その一部が架橋構造となった複合樹脂が形成される。この際、カルボキシ基含有高分子と水素結合を形成しない液晶性化合物も存在し、その液晶性化合物は、分子間相互作用により互いに集まりやすく結晶構造をとる。よって、複合樹脂全体としては結晶性樹脂としての挙動を示す(図1中の1)。そこに液晶性化合物の吸収波長の光(たとえば紫外光)を照射すると、液晶性化合物は幾何異性体の混合物へと構造が変化し、また、その構造変化により高分子中のカルボキシ基と液晶性化合物中の官能基とで形成されている水素結合が切断され、複合樹脂の分子運動の自由度が増加する。このように、幾何異性体の混合物となった部分は、異方性(結晶性)が低下し液晶性(液性)を示すようになり、いわば複合樹脂の可塑剤として働くため、複合樹脂の軟化温度やガラス転移温度が低下する(図1中の2)。よって、本発明の複合樹脂は、より低い温度での加工が可能となる。本発明の複合樹脂がトナーに用いられる場合は、複合樹脂を軟化させた後加圧することにより、記録媒体上にトナーが定着する(図1中の3)。
さらに、軟化した複合樹脂に可視光を照射すると、幾何異性体の混合物の状態であった液晶性化合物は、元の幾何異性を有する化合物へと再び構造変化し、切断されていた水素結合も再形成されるため、複合樹脂の強度は回復する(図1中の4)。このような強度が回復した本発明の複合樹脂に加圧や摩擦など物理的な力を加えても、液晶性化合物が染み出すなどの現象も見られない。すなわち、本発明の複合樹脂は、加工後の耐久性に優れる。
以下、本発明の好ましい実施形態を説明する。なお、本明細書において、範囲を示す「X〜Y」は「X以上Y以下」を意味する。また、本明細書において、特記しない限り、操作および物性等の測定は、室温(20〜25℃)/相対湿度40〜50%RHの条件で行う。
[複合樹脂の構成]
<カルボキシ基を有する高分子(カルボキシ基含有高分子)>
カルボキシ基含有高分子の例としては、カルボキシ基およびエチレン性不飽和基を有する単量体の付加重合体が挙げられる。カルボキシ基およびエチレン性不飽和基を有する単量体と、該単量体と共重合可能な他の単量体とを適宜組み合わせて共重合することにより、共重合体の形態であるカルボキシ基含有高分子を得ることができる。また、カルボキシ基およびエチレン性不飽和基を有する単量体の単独重合体を用いることもできる。
カルボキシ基およびエチレン性不飽和基を有する単量体の例としては、たとえば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、イタコン酸モノエステル、マレイン酸、マレイン酸モノエステル、フマル酸、フマル酸モノエステル等が挙げられる。
共重合可能な他の単量体の例としては、たとえば、エチレン、プロピレン等のα−オレフィン、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等のスチレン単量体、ビニルシクロヘキサン、ビニルナフタレン、ビニルナフタレン誘導体、アクリル酸アルキルエステル、アクリル酸アリールエステル、メタクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アリールエステル、クロトン酸アルキルエステル、イタコン酸ジアルキルエステル、マレイン酸ジアルキルエステル等が挙げられる。
カルボキシ基含有高分子として用いられる共重合体の例は、エチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体、ビニルナフタレン−アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−メタクリル酸共重合体、アクリル酸アルキルエステル−アクリル酸共重合体、メタクリル酸アルキルエステル−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸アルキルエステル−メタクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸アルキルエステル−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸アリールエステル−メタクリル酸共重合体等が挙げられる。中でも、液晶性化合物との水素結合を形成しやすいという観点から、エチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体が好ましい。エチレン由来の構成単位を含む共重合体は、立体障害が少なく液晶性化合物との水素結合を形成しやすいと考えられ、スチレン由来の構成単位を含む共重合体は、液晶性化合物とのπ−π相互作用により、液晶性化合物との水素結合を形成しやすいと考えられるからである。これら共重合体は、さらに、ポリオキシエチレン基やヒドロキシ基を有する単量体を適宜共重合成分として含むこともできる。また、これら共重合体は、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体、交互共重合体等、いずれの形態であってもよい。
カルボキシ基含有高分子として用いられる単独重合体の例は、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアルギン酸等が挙げられ、立体障害が少なく液晶性化合物との水素結合を形成しやすいという観点から、好ましくはポリアクリル酸である。なお、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース等のセルロース誘導体も上記高分子として使用することができる。
上記カルボキシ基含有高分子は、市販品を用いてもよいし合成品を用いてもよい。合成する場合は、乳化重合、懸濁重合、溶液重合、または塊状重合など公知の重合方法を適宜採用することができる。
カルボキシ基含有高分子の重量平均分子量は、1000〜100000が好ましく、3000〜10000がより好ましい。この範囲であれば、カルボキシ基を有する高分子と、前記カルボキシ基と水素結合を形成する官能基を有しかつ液晶性を有する化合物とが効率よく水素結合を形成することができる。
なお、カルボキシ基含有高分子の重量平均分子量は、ポリスチレンを標準物質としたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定することができる。より具体的には、装置「HLC−8120GPC」(東ソー株式会社製)およびカラム「TSKguardcolumn+TSKgelSuperHZ−M3連」(東ソー株式会社製)を用い、カラム温度を40℃に保持しながら、キャリア溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を流速0.2mL/minで流す。測定試料(高分子)を、室温において超音波分散機を用いて5分間処理を行う溶解条件で、濃度1mg/mlになるようにテトラヒドロフランに溶解させる。次いで、ポアサイズ0.2μmのメンブランフィルターで処理して試料溶液を得、この試料溶液10μLを上記のキャリア溶媒と共に装置内に注入し、屈折率検出器(RI検出器)を用いて検出し、測定試料の有する分子量分布を単分散のポリスチレン標準粒子を用いて測定した検量線を用いて算出する。検量線測定用のポリスチレンとしては10点用いる。
<液晶性化合物>
液晶性化合物は、上記高分子が有するカルボキシ基と水素結合を形成する官能基を有しかつ液晶性を有する化合物である。また、この水素結合は、光照射により切断されうる比較的弱い結合である。該液晶性化合物は、硬直なπ共役骨格と柔軟な長鎖アルキル基とを組み合わせた構造を有する。
具体的には、液晶性化合物は、下記化学式(1)で表される化合物であることが好ましい。
上記化学式(1)中、
Xは、CHまたは窒素原子であり、
Y1およびY2は、それぞれ独立して、カルボキシ基を有する高分子中のカルボキシ基と水素結合を形成しうる基であり、
ArおよびAr’は、それぞれ独立して、置換または非置換のフェニレン基または2価の複素環基であり、
R1〜R8は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、チオール基、シアノ基、または置換もしくは非置換のアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アミノ基、アリール基もしくは複素環基であり、互いに連結して環状構造を形成してもよく、
nおよびmは、それぞれ独立して、3以上10以下の整数である。
なお、上記化学式(1)で表される化合物中のX同士の二重結合の幾何異性はE型であるが、Z型の液晶性化合物を用いてもよい。
上記化学式(1)中のXは、CHまたは窒素原子である。XがCHであれば、化学式(1)で表される化合物はスチルベン誘導体となり、Xが窒素原子であれば、化学式(1)で表される化合物はアゾベンゼン誘導体となる。ここで、Xは窒素原子であることが好ましい。すなわち、上記化学式(1)で表される化合物は、アゾベンゼン誘導体であることが好ましい。アゾベンゼン誘導体であれば、光に対する感度が向上し、幾何異性体混合物への構造変化がより速い速度で起き、加工時の温度が低下しやすくなる。
上記化学式(1)中のY1およびY2で表されるカルボキシ基と水素結合を形成しうる基の具体例としては、カルボキシ基、窒素原子を含有する複素環基、ヒドロキシ基、カルボニル基、ハロゲン基等が挙げられる。これらの中でも、窒素原子を含有する複素環基が好ましい。複素環基に含まれる窒素原子は、求核性が弱いことから、高分子中のカルボキシ基と適度な強度で水素結合を形成するからである。
窒素原子を含有する複素環基の具体例としては、ピリジル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、ピラジニル基、ピラニル基、チオピラニル基、チオキサンテニル基、イミダゾリル基、ピラゾリニル基、ベンゾピラゾリニル基、ピラゾリジニル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基、オキサチアゾリル基、オキサチアジニル基、ベンゾキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、チアナフテル基、チアジアゾリル基、トリアジニル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾイソオキサゾリル基、ベンゾイソチアゾリル基、フラザニル基、ピリジニル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、インドリジニル基、インドリル基、イソインドリル基、インダゾリル基、プリニル基、キノリジニル基、キノリニル基、イソキノリニル基、ナフチジニル基、フタラジニル基、キノキサリニル基、シンノリニル基、ベンゾキサジニル基、プテリジニル基、カルバゾリル基、フェナントリジニル基、アクリジニル基、ペリミジニル基、フェナントロリニル基、フェナジニル基、フェノテルラジニル基、フェノセレナジニル基、フェノチアジニル基、フェノキサジニル基、アンチリジニル基、キナゾリニル基、アゼチジニル基、ピロリジニル基、ピロリニル基、ピペリジニル基、ピペラジニル基、モルホリニル基、チオモルホリニル基、プリニル基、ナフチリジニル基、ピリドピリミジニル基等が挙げられる。
前記窒素原子を含有する複素環基の1つ以上の水素原子は、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、ニトロ基、シアノ基、−NH2基、−NH(R)基(Rは炭素数1〜10の直鎖状または分枝状のアルキル基である)、−N(R’)(R”)基、(R’およびR”は互いに独立して、炭素数1〜10の直鎖状または分枝状のアルキル基である)、アミジノ基、ヒドラジン基、ヒドラゾン基、カルボキシ基、スルホン酸基、燐酸基、炭素数1〜20の直鎖状もしくは分枝状のアルキル基、炭素数1〜20の直鎖状もしくは分枝状のハロゲン化アルキル基、炭素数2〜20の直鎖状もしくは分枝状のアルケニル基、炭素数2〜20の直鎖状もしくは分枝状のアルキニル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアリールアルキル基、窒素原子、酸素原子、リン原子、および硫黄原子からなる群より選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含む炭素数5〜20のヘテロアリール基、または窒素原子、酸素原子、リン原子、および硫黄原子からなる群より選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含む炭素数6〜20のヘテロアリールアルキル基等の置換基で置換されうる。
上記の窒素原子を含有する複素環基の中でも、水素結合の結合強度がより適度なものになるという観点から、イミダゾリル基またはピリジル基が好ましく、イミダゾリル基がより好ましい。
ArおよびAr’は、それぞれ独立して、置換または非置換のフェニレン基または2価の複素環基である。2価の複素環基の例としては、ピリジンジイル基、ジアザフェニレン基、キノリンジイル基、キノキサリンジイル基、アクリジンジイル基、ビピリジルジイル基等が挙げられる。アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アミノ基、アリール基または複素環基は置換されていてもよい。ArおよびAr’で用いられうるフェニレン基または2価の複素環基は置換されていてもよい。置換基の例としては、上記窒素原子を含有する複素環基で説明した置換基と同様のものが挙げられるため、ここでは説明を省略する。
R1〜R8で用いられうるアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチルオ基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n−へキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基等の炭素数1〜10のアルキル基が挙げられる。
R1〜R8で用いられうるアルケニル基の例としては、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、1,3−ブテニル基、1−ペンテニル基、1−ヘキセニル基、1−ヘプテニル基、1−オクテニル基、1−ノネニル基、1−デセニル基等の炭素数2〜10のアルケニル基が挙げられる。
R1〜R8で用いられうるアルコキシ基の例としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、s−ブトキシ基、t−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、n−へキシルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、n−ノニルオキシ基、n−デシルオキシ基等の炭素数2〜10のアルコキシ基が挙げられる。
R1〜R8で用いられうるアリール基の例としては、フェニル基、ベンジル基、フェネチル基、o−,m−もしくはp−トリル基、2,3−もしくは2,4−キシリル基、メシチル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ビフェニリル基、ベンズヒドリル基、トリチル基、ピレニル基等の炭素数6〜20のアリール基が挙げられる。
R1〜R8で用いられうる複素環基の例としては、フラニル基、ピラニル基、テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロ−2H−ピラニル基、ジオキサニル基等の酸素原子を含有する複素環基が挙げられる。
R1〜R8で用いられうるアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アミノ基、アリール基または複素環基は置換されていてもよい。置換基の例としては、上記窒素原子を含有する複素環基で説明した置換基と同様のものが挙げられるため、ここでは説明を省略する。なお、これらの基は、同一の置換基で置換されることはない。たとえば、R1〜R8で用いられるアルキル基は、アルキル基で置換されることはない。
上記化学式(1)中のR1〜R4は、水素原子であることが好ましい。R1〜R4が水素原子であることにより、液晶性化合物の分子間の疎水性相互作用が生じて液晶性化合物の分子がスタックしやすくなって液晶性(液性)をより示しやすくなり、可塑剤としての働きをより得やすくなる。よって、複合樹脂のガラス転移温度が低下しやすくなり、より低い温度での加工が可能となる。
上記化学式(1)中のZ1およびZ2は、カルボキシ基含有高分子との相溶性の観点から、酸素原子、またはR5〜R8が水素原子である基すなわちメチレン基が好ましく、酸素原子がより好ましい。
mおよびnは、それぞれ独立して、3以上10以下の整数であるが、4以上8以下の整数が好ましく、5以上7以下の整数がより好ましい。この範囲であれば、液晶性(液性)をより示しやすくなり、可塑剤としての働きをより得やすくなる。よって、複合樹脂のガラス転移温度が低下しやすくなり、よい低い温度での加工が可能となる。
液晶性化合物のより具体的な例としては、下記のような化合物が挙げられる。
液晶性化合物は、単独でもまたは2種以上組み合わせても用いることができる。また、液晶性化合物は、市販品を用いてもよいし、合成品を用いてもよい。合成する場合は、公知の合成方法を適宜採用することができる。
アゾベンゼン構造を有する液晶性化合物(一般式(1)中のXが窒素原子である化合物)は、たとえば、高分子と水素結合を形成しうる基を有する化合物、ジハロゲン化アルキル、およびジヒドロキシアゾベンゼンを適宜反応させることにより、合成することができる(下記反応式(1)参照)。
また、スチルベン構造を有する液晶性化合物(一般式(1)中のXがCHである化合物)は、たとえば、4−ヒドロキシベンズアルデヒドからスチルベンを得た後、高分子と水素結合を形成しうる基を有する化合物を反応させることにより、合成することができる(下記反応式(2)参照)。
複合樹脂中の液晶性化合物の含有量は、複合樹脂全体を100質量%として、好ましくは1〜50質量%、より好ましくは1〜10質量%である。
〔複合樹脂の製造方法〕
本発明の複合樹脂の製造方法は、特に制限されない。たとえば、カルボキシ基含有高分子と液晶性化合物とを溶媒中で混合した後、乾燥等により溶媒を除去することにより、複合樹脂を得ることができる。該溶液を、ガラス基板等の基板上に塗布し、乾燥して溶媒を除去すれば、フィルム状の複合樹脂を得ることができる。
用いられる溶媒の例としては、たとえば、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン、トリクロロエタン、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素類;n−ヘキサン、n−ヘプタン等の炭化水素類;酢酸メチル、酢酸エチルなどのエステル類;アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルアセトアミド(DMA)、スルホラン等の非プロトン性極性溶媒;ジエチルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、1,2−ジメトキシエタン等のエーテル類等が挙げられる。これら溶媒は、単独でもまたは2種以上を混合して用いてもよい。
上記したように、本発明の複合樹脂は光(好ましくは紫外光)を照射することにより、ガラス転移温度が低下し、より低い温度での加工が可能となる。本発明の複合樹脂において、紫外光照射前のガラス転移温度に対する紫外光照射後のガラス転移温度の低下幅は、5℃以上であることが好ましく、10℃以上であることがより好ましく、15℃超であることがさらに好ましい。ガラス転移温度の低下幅の上限は、特に制限されないが、50℃以下であることが好ましい。
本発明の複合樹脂は、紫外光を照射して軟化させた後、可視光を照射することにより固化(硬化)させることができる。このようにして得られる可視光照射後(硬化後)の複合樹脂のガラス転移温度は、40〜200℃の範囲であることが好ましく、60〜150℃の範囲であることがより好ましい。このような範囲であれば、加工後の耐久性に優れた複合樹脂となる。
複合樹脂のガラス転移温度は、示差走査熱量測定(DSC)により測定することができ、より具体的には実施例に記載の方法により測定することができる。
複合樹脂の水素結合を切断し軟化(溶融)させる場合は、好ましくは300nm以上400nm未満の範囲内、より好ましくは330nm以上390nm未満の範囲内の波長を有する紫外光を照射する。また、この際、紫外光の照射量は、好ましくは0.1〜200J/cm2の範囲内、より好ましくは0.5〜100J/cm2の範囲内、さらに好ましくは1.0〜70J/cm2の範囲内である。上記範囲の光の波長および光照射量であれば、幾何異性体の混合物への構造変化が効率よく進み、水素結合も効率よく切断されうる。
複合樹脂を軟化(溶融)させた後固化(硬化)させる場合は、好ましくは400nm以上800nm以下の範囲内、より好ましくは450nm以上650nm以下の範囲内の波長を有する可視光を照射する。また、この際、可視光の照射量は、好ましくは0.1〜200J/cm2の範囲内、より好ましくは0.5〜100J/cm2の範囲内、さらに好ましくは1.0〜70J/cm2の範囲内である。上記範囲の光の波長および光照射量であれば、幾何異性体の混合物から元の幾何異性を有する化合物への構造変化が効率よく進み、水素結合も効率よく再形成されうる。
[用途]
本発明の複合樹脂は、電子写真用トナーや、光照射により液化と固化とを繰り返す光制御接着剤等に好適に用いられうる。中でも、画像形成時における省エネルギー化や、操作性向上等のメリットが得られることから、電子写真用トナーに用いられることが好ましい。すなわち、本発明は、上記複合樹脂を含む電子写真用トナーをも提供する。
以下、本発明の複合樹脂を含む電子写真用トナー(以下、単に「本発明に係るトナー」、または「トナー」とも称する)について説明する。
本発明に係るトナーは、本発明の複合樹脂をトナーの全質量に対して10質量%以上含むことが好ましく、20質量%以上含むことがより好ましい。なお、本発明の複合樹脂は、それ自身単独でトナーとして用いられうるため、トナー中の複合樹脂の好ましい含有量の上限は100質量%である。
本発明に係るトナーは、複合樹脂以外に、結着樹脂、着色剤、離型剤、荷電制御剤、外添剤等、他の成分を含んでもよい。以下、これら他の成分について説明する。
<結着樹脂>
本発明に係るトナーは、結着樹脂を含んでもよい。かような結着樹脂は、一般にトナーを構成する結着樹脂として用いられている樹脂を制限なく用いることができる。具体的には、たとえば、スチレン樹脂、アクリル樹脂、スチレンアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、オレフィン樹脂、アミド樹脂、およびエポキシ樹脂などが挙げられる。これら結着樹脂は、単独でもまたは2種以上組み合わせても用いることができる。
これらの中でも、溶融すると低粘度になり、かつ高いシャープメルト性を有するという観点から、結着樹脂は、スチレン樹脂、アクリル樹脂、スチレンアクリル樹脂、およびポリエステル樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、スチレンアクリル樹脂およびポリエステル樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含むことがより好ましい。
以下では、好ましい結着樹脂であるスチレンアクリル樹脂およびポリエステル樹脂について説明する。
(スチレンアクリル樹脂)
本発明でいうスチレンアクリル樹脂とは、少なくともスチレン単量体と(メタ)アクリル酸エステル単量体とを用いて、重合を行うことにより形成されるものである。ここで、スチレン単量体とは、CH2=CH−C6H5の構造式で表されるスチレンの他、スチレン構造中に公知の側鎖や官能基を有する構造のものも含まれる。
また、(メタ)アクリル酸エステル単量体とは、エステル結合を有する官能基を側鎖に有するものである。具体的には、CH2=CHCOOR(Rはアルキル基)で表されるアクリル酸エステル単量体の他、CH2=C(CH3)COOR(Rはアルキル基)で表されるメタクリル酸エステル単量体などのビニル系エステル化合物が含まれる。
以下に、スチレンアクリル樹脂を形成することが可能なスチレン単量体および(メタ)アクリル酸エステル単量体の具体例を示すが、以下に示すものに限定されるものではない。
スチレン単量体としては、たとえば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−フェニルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレンなどが挙げられる。
また、(メタ)アクリル酸エステル単量体は、以下に示すアクリル酸エステル単量体およびメタクリル酸エステル単量体が代表的なもので、アクリル酸エステル単量体としては、たとえば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、n−オクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ステアリルアクリレート、ラウリルアクリレート、フェニルアクリレートフェニルなどが挙げられる。メタクリル酸エステル単量体としては、たとえば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、n−オクチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレートなどが挙げられる。
これらのスチレン単量体、アクリル酸エステル単量体、またはメタクリル酸エステル単量体は、単独でもまたは2種以上を組み合わせても使用することができる。
また、スチレンアクリル共重合体には、上述したスチレン単量体および(メタ)アクリル酸エステル単量体のみで形成された共重合体の他に、これらスチレン単量体および(メタ)アクリル酸エステル単量体に加えて、一般のビニル単量体を併用して形成されるものもある。以下に、本発明でいうスチレンアクリル共重合体を形成する際に併用可能なビニル単量体を例示するが、併用可能なビニル単量体は以下に示すものに限定されるものではない。
(1)オレフィン類
エチレン、プロピレン、イソブチレン等
(2)ビニルエステル類
プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル、ベンゾエ酸ビニル等
(3)ビニルエーテル類
ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル等
(4)ビニルケトン類
ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルヘキシルケトン等
(5)N−ビニル化合物類
N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドン等
(6)その他
ビニルナフタレン、ビニルピリジン等のビニル化合物類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド等のアクリル酸あるいはメタクリル酸誘導体等。
また、多官能性ビニル単量体を使用して、架橋構造の樹脂を作製することも可能である。さらに、側鎖にイオン性解離基を有するビニル単量体を使用することも可能である。イオン性解離基の具体例としては、たとえば、カルボキシ基、スルホン酸基、リン酸基などが挙げられる。以下に、これらイオン性解離基を有するビニル単量体の具体例を示す。
カルボキシ基を有するビニル単量体の具体例としては、たとえば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、ケイ皮酸、フマル酸、マレイン酸モノアルキルエステル、イタコン酸モノアルキルエステルなどが挙げられる。
スチレンアクリル樹脂の形成方法は、特に制限されず、公知の油溶性あるいは水溶性の重合開始剤を使用して単量体を重合する方法が挙げられる。必要に応じてたとえば、n−オクチルメルカプタンなどの公知の連鎖移動剤を使用してもよい。
本発明に使用されるスチレンアクリル樹脂を形成する場合、スチレン単量体およびアクリル酸エステル単量体の含有量は特に限定されるものではなく、結着樹脂の軟化温度やガラス転移温度を制御する観点から適宜調整することが可能である。具体的には、スチレン単量体の含有量は、単量体全体に対し40〜95質量%が好ましく、50〜80質量%がより好ましい。また、アクリル酸エステル単量体の含有量は、単量体全体に対し5〜60質量%が好ましく、10〜50質量%がより好ましい。
スチレンアクリル樹脂の形成方法は、特に制限されず、公知の油溶性あるいは水溶性の重合開始剤を使用して単量体を重合する方法が挙げられる。油溶性の重合開始剤としては、具体的には、以下に示すアゾ系またはジアゾ系重合開始剤や過酸化物系重合開始剤がある。
アゾ系またはジアゾ系重合開始剤としては、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリルなどが挙げられる。
過酸化物系重合開始剤としては、ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、クメンヒドロパーオキサイド、t−ブチルヒドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、2,2−ビス−(4,4−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、トリス−(t−ブチルパーオキシ)トリアジンなどが挙げられる。
また、乳化重合法でスチレンアクリル樹脂粒子を形成する場合は水溶性ラジカル重合開始剤が使用可能である。水溶性ラジカル重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩、アゾビスアミノジプロパン酢酸塩、アゾビスシアノ吉草酸およびその塩、過酸化水素などが挙げられる。
重合温度は、用いる単量体や重合開始剤の種類によっても異なるが、50〜100℃であることが好ましく、55〜90℃であることがより好ましい。また、重合時間は、用いる単量体や重合開始剤の種類によっても異なるが、たとえば2〜12時間であることが好ましい。
乳化重合法により形成されるスチレンアクリル樹脂粒子は、組成の異なる樹脂よりなる2層以上の構成とすることもできる。この場合の製造方法としては、常法に従った乳化重合処理(第1段重合)により調製した樹脂粒子の分散液に、重合開始剤と重合性単量体とを添加し、この系を重合処理(第2段重合)する多段重合法を採用することができる。
(ポリエステル樹脂)
ポリエステル樹脂は、2価以上のカルボン酸(多価カルボン酸成分)と、2価以上のアルコール(多価アルコール成分)との重縮合反応によって得られる公知のポリエステル樹脂である。なお、ポリエステル樹脂は、非晶性であってもよいし結晶性であってもよい。
多価カルボン酸成分および多価アルコール成分の価数としては、好ましくはそれぞれ2〜3であり、特に好ましくはそれぞれ2であるため、特に好ましい形態として価数がそれぞれ2である場合(すなわち、ジカルボン酸成分、ジオール成分)について説明する。
ジカルボン酸成分としては、たとえば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9−ノナンジカルボン酸、1,10−デカンジカルボン酸(ドデカン二酸)、1,11−ウンデカンジカルボン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸、1,13−トリデカンジカルボン酸、1,14−テトラデカンジカルボン酸、1,16−ヘキサデカンジカルボン酸、1,18−オクタデカンジカルボン酸などの飽和脂肪族ジカルボン酸;メチレンコハク酸、フマル酸、マレイン酸、3−ヘキセンジオイック酸、3−オクテンジオイック酸、ドデセニルコハク酸などの不飽和脂肪族ジカルボン酸;フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、t−ブチルイソフタル酸、テトラクロロフタル酸、クロロフタル酸、ニトロフタル酸、p−フェニレン二酢酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸などの不飽和芳香族ジカルボン酸;などが挙げられ、また、これらの低級アルキルエステルや酸無水物を用いることもできる。ジカルボン酸成分は、単独でもまたは2種以上混合して用いてもよい。
その他、トリメリット酸、ピロメリット酸などの3価以上の多価カルボン酸、および上記のカルボン酸化合物の無水物、あるいは炭素数1〜3のアルキルエステルなども用いることができる。
ジオール成分としては、たとえば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,13−トリデカンジオール、1,14−テトラデカンジオール、1,18−オクタデカンジオール、1,20−エイコサンジオール、ネオペンチルグリコールなどの飽和脂肪族ジオール;2−ブテン−1,4−ジオール、3−ブテン−1,4−ジオール、2−ブチン−1,4−ジオール、3−ブチン−1,4−ジオール、9−オクタデセン−7,12−ジオールなどの不飽和脂肪族ジオール;ビスフェノールA、ビスフェノールFなどのビスフェノール類、およびこれらのエチレンオキサイド付加物、プロピレンオキサイド付加物などのビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物などの芳香族ジオールが挙げられ、また、これらの誘導体を用いることもできる。ジオール成分は、単独でもまたは2種以上混合して用いてもよい。
ポリエステル樹脂の製造方法は特に制限されず、公知のエステル化触媒を利用して、上記多価カルボン酸成分および多価アルコール成分を重縮合する(エステル化する)ことによりを製造することができる。
ポリエステル樹脂の製造の際に使用可能な触媒としては、ナトリウム、リチウムなどのアルカリ金属化合物;マグネシウム、カルシウムなどの第2族元素を含む化合物;アルミニウム、亜鉛、マンガン、アンチモン、チタン、スズ、ジルコニウム、ゲルマニウムなどの金属の化合物;亜リン酸化合物;リン酸化合物;およびアミン化合物などが挙げられる。具体的には、スズ化合物としては、酸化ジブチルスズ(ジブチル錫オキサイド)、オクチル酸スズ、ジオクチル酸スズ、これらの塩などを挙げることができる。チタン化合物としては、テトラノルマルブチルチタネート(Ti(O−n−Bu)4)、テトライソプロピルチタネート、テトラメチルチタネート、テトラステアリルチタネートなどのチタンアルコキシド;ポリヒドロキシチタンステアレートなどのチタンアシレート;チタンテトラアセチルアセトナート、チタンラクテート、チタントリエタノールアミネートなどなどのチタンキレートなどを挙げることができる。ゲルマニウム化合物としては、二酸化ゲルマニウムなどを挙げることができる。さらにアルミニウム化合物としては、ポリ水酸化アルミニウム、アルミニウムアルコキシド、トリブチルアルミネートなどを挙げることができる。これらは1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
重合温度は特に限定されるものではないが、70〜250℃であることが好ましい。また、重合時間も特に限定されるものではないが、0.5〜10時間であることが好ましい。重合中には、必要に応じて反応系内を減圧にしてもよい。
本発明のトナーが結着樹脂を含む場合の含有割合は、複合樹脂:結着樹脂=5:95〜80:20(質量比)の範囲が好ましい。この範囲であれば、複合樹脂の光相転移が生じやすく、トナーの光照射による軟化速度が十分なものとなる。
なお、本発明の複合樹脂および結着樹脂を含むトナーは、単層構造であってもよいしコアシェル構造であってもよい。コアシェル構造のコア粒子およびシェル部に用いられる結着樹脂の種類は、特に制限されない。
<着色剤>
本発明に係るトナーは着色剤を含有してもよい。着色剤としては、一般に知られている染料および顔料を用いることができる。
黒色のトナーを得るための着色剤としては、カーボンブラック、磁性体、鉄・チタン複合酸化物ブラックなどが挙げられ、カーボンブラックとしてはチャンネルブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラックなどが挙げられる。また、磁性体としてはフェライト、マグネタイトなどが挙げられる。
イエローのトナーを得るための着色剤としては、C.I.ソルベントイエロー19、同44、同77、同79、同81、同82、同93、同98、同103、同104、同112、同162などの染料;C.I.ピグメントイエロー14、同17、同74、同93、同94、同138、同155、同180、同185などの顔料が挙げられる。
マゼンタのトナーを得るための着色剤としては、C.I.ソルベントレッド1、同49、同52、同58、同63、同111、同122などの染料;C.I.ピグメントレッド5、同48:1、同53:1、同57:1、同122、同139、同144、同149、同166、同177、同178、同222などの顔料が挙げられる。
シアンのトナーを得るための着色剤としては、C.I.ソルベントブルー25、同36、同60、同70、同93、同95などの染料;C.I.ピグメントブルー1、同7、同15、同60、同62、同66、同76などの顔料が挙げられる。
各色のトナーを得るための着色剤は、各色について、1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
着色剤の含有割合は、トナー中0.5〜20質量%であることが好ましく、2〜10質量%であることがより好ましい。
<離型剤>
本発明に係るトナーは、離型剤を含有してもよい。使用される離型剤は、特に限定されるものではなく、公知の種々のワックスを用いることができる。ワックスとしては、低分子量ポリプロピレン、ポリエチレン、または酸化型の低分子量ポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン、パラフィン、合成エステルワックスなどが挙げられ、特に、低融点および低粘度であることから、合成エステルワックスを用いることが好ましく、合成エステルワックスとしてベヘン酸ベヘニル、グリセリントリベヘネート、ペンタエリスリトールテトラベヘネートなどを用いることが特に好ましい。
離型剤の含有割合は、トナー中1〜30質量%の範囲内であることが好ましく、3〜15質量%の範囲内であることがより好ましい。
<荷電制御剤>
本発明に係るトナーは、荷電制御剤を含有してもよい。使用される荷電制御剤は、摩擦帯電により正または負の帯電を与えることのできる物質であり、かつ無色のものであれば特に限定されず、公知の種々の正帯電性の荷電制御剤および負帯電性の荷電制御剤を用いることができる。
荷電制御剤の含有割合は、トナー中0.01〜30質量%の範囲内であることが好ましく、0.1〜10質量%の範囲内であることがより好ましい。
<外添剤>
トナーの流動性、帯電性、クリーニング性等を改良するために、トナー粒子に、いわゆる後処理剤である流動化剤、クリーニング助剤等の外添剤を添加して本発明に係るトナーを構成してもよい。
外添剤としては、たとえば、シリカ粒子、アルミナ粒子、酸化チタン粒子などの無機酸化物粒子、ステアリン酸アルミニウム粒子、ステアリン酸亜鉛粒子などの無機ステアリン酸化合物粒子、チタン酸ストロンチウム粒子、チタン酸亜鉛粒子などの無機チタン酸化合物粒子などの無機粒子が挙げられる。これらは単独でもまたは2種以上を組み合わせても用いることができる。
これら無機粒子は、シランカップリング剤やチタンカップリング剤、高級脂肪酸、シリコーンオイルなどによって、耐熱保管性や環境安定性の向上のために、表面処理が行われていてもよい。
これら外添剤の添加量は、トナー中0.05〜5質量%であることが好ましく、0.1〜3質量%であることがより好ましい。
<トナーの平均粒径>
トナーの平均粒径は、体積基準のメジアン径(D50)で4〜10μmであることが好ましく、6〜9μmであることがより好ましい。体積基準のメジアン径(D50)が上記の範囲にあることにより、転写効率が高くなりハーフトーンの画質が向上し、細線やドット等の画質が向上する。
本発明において、トナーの体積基準のメジアン径(D50)は、「コールターカウンター3」(ベックマン・コールター株式会社製)に、データ処理用ソフト「Software V3.51」を搭載したコンピューターシステム(ベックマン・コールター株式会社製)を接続した測定装置を用いて測定・算出されるものである。
具体的には、測定試料(トナー)0.02gを、界面活性剤溶液20mL(トナー粒子の分散を目的として、たとえば界面活性剤成分を含む中性洗剤を純水で10倍希釈した界面活性剤溶液)に添加して馴染ませた後、超音波分散を1分間行い、トナー分散液を調製し、このトナー分散液を、サンプルスタンド内の「ISOTONII」(ベックマン・コールター株式会社製)の入ったビーカーに、測定装置の表示濃度が8%になるまでピペットにて注入する。
ここで、この濃度範囲にすることにより、再現性のある測定値を得ることができる。そして、測定装置において、測定粒子カウント数を25000個、アパーチャー径を50μmにし、測定範囲である1〜30μmの範囲を256分割しての頻度値を算出し、体積積算分率の大きい方から50%の粒径が体積基準のメジアン径(D50)とされる。
[トナーの製造方法]
本発明に係るトナーの製造方法は特に制限されない。たとえば、複合樹脂のみでトナーとする場合は、上記の製造方法により得られた複合樹脂を、ハンマーミル、フェザーミル、カウンタージェットミルなどの装置を用いて粉砕した後、スピンエアーシーブ、クラッシール、マイクロンクラッシファイアーなどの乾式分級機を用いて所望の粒径になるように分級することを含む製造方法が好ましい。
複合樹脂および着色剤を含み結着樹脂を含まないトナーを製造する場合は、複合樹脂および着色剤がともに溶解する溶媒を用いて、複合樹脂および着色剤を溶解させ溶液とした後、脱溶媒し、その後上記した方法と同様の方法で、粉砕・分級することを含む製造方法が好ましい。
複合樹脂、着色剤、および結着樹脂を含むトナーを製造する場合は、粒径および形状の制御が容易な乳化凝集法を利用した製造方法であることが好ましい。
かような製造方法は、
(1A)結着樹脂粒子の分散液を調製する結着樹脂粒子分散液調製工程
(1B)着色剤粒子の分散液を調製する着色剤粒子分散液調製工程
(1C)複合樹脂粒子の分散液を調製する複合樹脂粒子分散液調製工程
(2)結着樹脂粒子、着色剤粒子および複合樹脂粒子が存在している水系媒体中に、凝集剤を添加し、塩析を進行させると同時に凝集・融着を行い、会合粒子を形成する会合工程
(3)会合粒子の形状制御をすることによりトナー粒子を形成する熟成工程
(4)水系媒体からトナー粒子を濾別し、当該トナー粒子から界面活性剤等を除去する濾過、洗浄工程
(5)洗浄処理されたトナー粒子を乾燥する乾燥工程
(6)乾燥処理されたトナー粒子に外添剤を添加する外添剤添加工程
の各工程を含むことが好ましい。以下、(1A)〜(1C)の工程について説明する。
(1A)結着樹脂粒子分散液調製工程
本工程では、従来公知の乳化重合などにより樹脂粒子を形成し、この樹脂粒子を凝集、融着させて結着樹脂粒子を形成する。一例として、結着樹脂を構成する重合性単量体を水系媒体中へ投入、分散させ、重合開始剤によりこれら重合性単量体を重合させることにより、結着樹脂粒子の分散液を作製する。
また、結着樹脂粒子分散液を得る方法として、上記の水系媒体中で重合開始剤により重合性単量体を重合させる方法の他に、たとえば、溶媒を用いることなく、水性媒体中において分散処理を行う方法、あるいは結晶性樹脂を酢酸エチルなどの溶媒に溶解させて溶液とし、分散機を用いて当該溶液を水性媒体中に乳化分散させた後、脱溶媒処理を行う方法などが挙げられる。
この際、必要に応じ、結着樹脂には離型剤を予め含有させておいてもよい。また、分散のために、適宜公知の界面活性剤(たとえば、ポリオキシエチレン(2)ドデシルエーテル硫酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸などのアニオン系界面活性剤)の存在下で重合させることも好ましい。
分散液中の結着樹脂粒子の体積基準のメジアン径は、50〜300nmが好ましい。分散液中の結着樹脂粒子の体積基準のメジアン径は、「マイクロトラックUPA−150」(日機装株式会社製)を用いて動的光散乱法によって測定することができる。
(1B)着色剤粒子分散液調製工程
この着色剤粒子分散液調製工程は、着色剤を水系媒体中に微粒子状に分散させて着色剤粒子の分散液を調製する工程である。
着色剤の分散は、機械的エネルギーを利用して行うことができる。分散液中の着色剤粒子の個数基準のメジアン径は、10〜300nmであることが好ましく、50〜200nmであることがより好ましい。着色剤粒子の個数基準のメジアン径は、電気泳動光散乱光度計「ELS−800」(大塚電子株式会社製)を用いて測定することができる。
(1C)複合樹脂粒子分散液調製工程
この複合樹脂粒子分散液調製工程は、複合樹脂を水系媒体中に微粒子状に分散させて複合樹脂粒子の分散液を調製する工程である。複合樹脂粒子分散液を調製するにあたり、まず、複合樹脂乳化液を調製する。複合樹脂乳化液の調製方法としては、たとえば、有機溶媒に複合樹脂を溶解させた複合樹脂液を得た後、該複合樹脂液を水系媒体中で乳化させる方法が挙げられる。
複合樹脂を有機溶媒に溶解する方法は、特に制限されず、たとえば、複合樹脂を有機溶媒に添加して、複合樹脂が溶解するように攪拌混合する方法がある。複合樹脂の添加割合は、有機溶媒100質量部に対して、好ましくは5質量部以上100質量部以下、より好ましくは10質量部以上50質量部以下である。
次に、複合樹脂液と水系媒体とを混合し、ホモジナイザーなどの公知の分散機を用いて攪拌する。これにより、複合樹脂が液滴となって、水系媒体中に乳化され、複合樹脂乳化液が調製される。
複合樹脂液の添加割合は、水系媒体100質量部に対して、好ましくは10質量部以上90質量部以下、より好ましくは30質量部以上70質量部以下である。
また、複合樹脂液と水系媒体との混合時における、複合樹脂液および水系媒体のそれぞれの温度は、有機溶媒の沸点未満となる温度範囲であって、好ましくは20℃以上80℃以下、より好ましくは30℃以上75℃以下である。複合樹脂液と水系媒体との混合時における、複合樹脂液の温度と水系媒体の温度とは、互いに同一であっても異なっていてもよく、好ましくは互いに同一である。
分散機の攪拌条件は、たとえば、容量が1〜3Lの場合、その回転数が7000rpm以上20000rpm以下であることが好ましく、また、その攪拌時間が10分以上30分以下であることが好ましい。
複合樹脂粒子分散液は、複合樹脂乳化液から有機溶媒を除去することにより調製される。複合樹脂乳化液から有機溶媒を除去する方法としては、たとえば、送風、加熱、減圧、またはこれらの併用など、公知の方法が挙げられる。
一例として、複合樹脂乳化液は、たとえば、窒素などの不活性ガス雰囲気下において、好ましくは25℃以上90℃以下、より好ましくは30℃以上80℃以下で、初期の有機溶媒量の80質量%以上95質量%以下程度が除去されるまで加熱されることにより、有機溶媒が除去される。これにより、水系媒体から有機溶媒が除去されて、複合樹脂粒子が水系媒体中に分散された複合樹脂粒子分散液が調製される。
複合樹脂粒子分散液中の複合樹脂粒子の質量平均粒径は、90nm以上1200nm以下が好ましい。複合樹脂粒子の質量平均粒径は、複合樹脂粒子を有機溶媒に配合したときの粘度、複合樹脂液と水との配合割合、複合樹脂乳化液を調製するときの分散機の攪拌速度などを適宜調節することにより、上記範囲内に設定することができる。複合樹脂粒子分散液中の複合樹脂粒子の質量平均粒径は、電気泳動光散乱光度計「ELS−800」(大塚電子株式会社製)を用いて測定することができる。
<有機溶媒>
本工程で用いられる有機溶媒は、本発明の複合樹脂を溶解させることができれば特に制限されず使用することができる。具体的には、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、ヘキサン、ヘプタンなどの飽和炭化水素類、ジクロロメタン、ジクロロエタン、四塩化炭素などのハロゲン化炭化水素類が挙げられる。
このような有機溶媒は、単独でもまたは2種以上混合しても用いることができる。これら有機溶媒の中でも、ケトン類、ハロゲン化炭化水素類が好ましく、メチルエチルケトン、ジクロロメタンがより好ましい。
<水系媒体>
本工程で用いられる水系媒体は、水、または水を主成分として、アルコール類、グリコール類などの水溶性溶媒や、界面活性剤、分散剤などの任意成分が配合されている水系媒体などが挙げられる。水系媒体は、好ましくは水と界面活性剤とを混合したものが用いられる。
界面活性剤としては、たとえば、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤などが挙げられる。カチオン性界面活性剤としては、たとえば、ドデシルアンモニウムクロライド、ドデシルアンモニウムブロマイド、ドデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、ドデシルピリジニウムクロライド、ドデシルピリジニウムブロマイド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイドなどが挙げられる。アニオン性界面活性剤としては、たとえば、ステアリン酸ナトリウム、ドデカン酸ナトリウムなどの脂肪酸石けん、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウムなどが挙げられる。また、ノニオン性界面活性剤としては、たとえば、ポリオキシエチレンドデシルエーテル、ポリオキシエチレンヘキサデシルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレアートエーテル、モノデカノイルショ糖などが挙げられる。
このような界面活性剤は、単独でもまたは2種以上組み合わせても用いることができる。界面活性剤の中では、好ましくはアニオン性界面活性剤、より好ましくはドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムが使用される。
界面活性剤の添加量は、水系媒体100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上10質量部以下、より好ましくは0.04質量部以上1質量部以下である。
(2)会合工程から(6)外添剤添加工程までの工程については、従来公知の種々の方法に従って行うことができる。
なお、(2)会合工程において使用される凝集剤は、特に限定されるものではないが、金属塩から選択されるものが好適に使用される。金属塩としては、たとえばナトリウム、カリウム、リチウムなどのアルカリ金属の塩等の一価の金属塩;カルシウム、マグネシウム、マンガン、銅などの二価の金属塩;鉄、アルミニウムなどの三価の金属塩などが挙げられる。具体的な金属塩としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、硫酸銅、硫酸マグネシウム、硫酸マンガンなどを挙げることができ、これらの中で、より少量で凝集を進めることができることから、二価の金属塩を用いることが特に好ましい。これらは単独でもまたは2種以上組み合わせても用いることができる。
[現像剤]
本発明に係るトナーは、たとえば磁性体を含有させて一成分磁性トナーとして使用する場合、いわゆるキャリアと混合して二成分現像剤として使用する場合、非磁性トナーを単独で使用する場合などが考えられ、いずれも好適に使用することができる。
上記磁性体としては、たとえばマグネタイト、γ−ヘマタイト、または各種フェライトなどを使用することができる。
二成分現像剤を構成するキャリアとしては、鉄、鋼、ニッケル、コバルト、フェライト、マグネタイトなどの金属、それらの金属とアルミニウム、鉛などの金属との合金などの従来公知の材料からなる磁性粒子を用いることができる。
キャリアとしては、磁性粒子の表面を樹脂等の被覆剤で被覆したコートキャリアや、バインダー樹脂中に磁性体粉末を分散してなるいわゆる樹脂分散型キャリアを用いることが好ましい。被覆用の樹脂としては、特に限定はないが、たとえば、オレフィン樹脂、スチレン樹脂、スチレンアクリル樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂またはフッ素樹脂などが用いられる。また、樹脂分散型キャリアを構成するための樹脂としては、特に限定されず公知のものを使用することができ、たとえば、アクリル樹脂、スチレンアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂など使用することができる。
キャリアの体積基準のメジアン径は、20〜100μmであることが好ましく、25〜80μmであることがより好ましい。キャリアの体積基準のメジアン径は、代表的には湿式分散機を備えたレーザー回折式粒度分布測定装置「ヘロス(HELOS)」(シンパテック(SYMPATEC)社製)により測定することができる。
トナーのキャリアに対する混合量は、トナーとキャリアとの合計質量を100質量%として、2〜10質量%であることが好ましい。
[画像形成方法]
本発明に係るトナーは、電子写真方式の公知の種々の画像形成方法において用いることができる。たとえば、モノクロの画像形成方法やフルカラーの画像形成方法に用いることができる。フルカラーの画像形成方法では、イエロー、マゼンタ、シアン、およびブラックの各々に係る4種類のカラー現像装置と、1つの感光体とにより構成される4サイクル方式の画像形成方法や、各色に係るカラー現像装置および感光体を有する画像形成ユニットを、それぞれ色別に搭載するタンデム方式の画像形成方法など、いずれの画像形成方法にも適用することができる。
図2は、本発明の一実施形態による画像形成方法で用いられる画像形成装置100を示す概略構成図である。ただし、本発明に用いられる画像形成装置としては、下記の形態および図示例に限定されるものではない。図2には、モノクロの画像形成装置100の例を示すが、カラーの画像形成装置にも本発明を適用することができる。
画像形成装置100は、記録媒体としての記録用紙Sに画像を形成する装置であって、画像読取装置71および自動原稿送り装置72を備え、用紙搬送系7により搬送される記録用紙Sに対し画像形成部10、第1照射部40a、圧着部9、および第2照射部40bにより画像形成を行う。以下、第1照射部40aおよび第2照射部40bをまとめて称するときには、照射部40と呼ぶ。
また、記録媒体として、画像形成装置100では記録用紙Sを用いているが、画像形成を行う対象とされる媒体は、用紙以外でもよい。
自動原稿送り装置72の原稿台上に載置された原稿dは、画像読取装置71の走査露光装置の光学系により走査露光されてイメージセンサーCCDに読み込まれる。イメージセンサーCCDにより光電変換されたアナログ信号は、画像処理部20において、アナログ処理、A/D変換、シェーディング補正、画像圧縮処理等が行われた後、画像形成部10の露光器3に入力される。
用紙搬送系7は、複数のトレイ16、複数の給紙部11、搬送ローラー12、搬送ベルト13等を備えている。トレイ16は、決められたサイズの記録用紙Sをそれぞれ収容しており、制御部90からの指示に応じて定められたトレイ16の給紙部11を作動させ、記録用紙Sを供給する。搬送ローラー12は、給紙部11によってトレイ16から送り出された記録用紙Sまたは手差し給紙部15から搬入された記録用紙Sを画像形成部10へ搬送する。
画像形成部10は、感光体1の周りに、感光体1の回転方向に沿って、帯電器2、露光器3、現像部4、転写部5、除電部6およびクリーニング部8がこの順番に配置されて構成されている。
像担持体である感光体1は、表面に光導電層の形成された像担持体であり、図示しない駆動装置により図2中の矢印方向に回転可能に構成されている。感光体1の近傍には、画像形成装置100内の温度や湿度を検知する温湿度計17が設けられている。
帯電器2は、感光体1の表面に均一に電荷を与え、感光体1の表面を一様に帯電させる。露光器3は、レーザーダイオード等のビーム発光源を備え、帯電された感光体1の表面にビーム光を照射することで照射部分の電荷を消失させ、感光体1上に画像データに応じた静電潜像を形成する。現像部4は、内部に収容されるトナーを感光体1に供給して、感光体1表面上に静電潜像に基づくトナー像を作像する。
転写部5は、記録用紙Sを介して感光体1と対向し、トナー像を記録用紙Sに転写する。除電部6は、トナー像を転写した後の感光体1上の除電を行う。クリーニング部8は、ブレード85を備える。ブレード85により、感光体1表面をクリーニングして感光体1の表面に残留した現像剤を除去する。
トナー像が転写された記録用紙Sは、搬送ベルト13により圧着部9へ搬送される。圧着部9は、任意に設置されるものであり、トナー像が転写された記録用紙Sに対し、加圧部材91および92によって圧力のみまたは熱および圧力を加えて定着処理を施し、これにより記録用紙S上に画像を定着させる。画像が定着された記録用紙Sは、搬送ローラーによって排紙部14に搬送され、排紙部14から機外へ排出される。
また、画像形成装置100は用紙反転部24を備えており、加熱定着処理がなされた記録用紙Sを排紙部14の手前で用紙反転部24に搬送し、表裏を反転して排出するか、または表裏を反転した記録用紙Sを再度画像形成部10に搬送し記録用紙Sの両面に画像形成を行うことを可能としている。
<照射部>
図3は、画像形成装置100における照射部40の概略構成図である。
本発明の一実施形態による画像形成装置100は、第1照射部40aおよび第2照射部40bを含む照射部40を備える。照射部40を構成する装置の例としては、発光ダイオード(LED)、レーザー光源などが挙げられる。
第1照射部40aは、現像剤に含まれる光吸収により相転移する物質(本発明の複合樹脂)を溶融させるものであって、好ましくは300nm以上400nm未満の範囲内、より好ましくは330nm以上390nm未満の範囲内の波長を有する紫外光を照射する。第1照射部40aにおける紫外光の照射量は、好ましくは0.1〜200J/cm2の範囲内、より好ましくは0.5〜100J/cm2の範囲内、さらに好ましくは、1.0〜50J/cm2の範囲内である。
第2照射部40bは、複合樹脂を硬化させるものであって、好ましくは400nm以上800nm以下の範囲内、より好ましくは450nm以上650nm以下の範囲内の波長を有する可視光を照射する。第2照射部40bにおける可視光の照射量は、好ましくは0.1〜200J/cm2、より好ましくは0.5〜100J/cm2、さらに好ましくは、1.0〜50J/cm2である。
すなわち、本発明の一実施形態による画像形成方法は、記録媒体上に本発明の電子写真用トナーからなるトナー像を形成する工程と、前記トナー像に対して、300nm以上400nm未満の波長を有する光を照射して前記トナー像を軟化させる工程と、軟化した前記トナー像に対して、400nm以上800nm以下の波長を有する光を照射して前記トナー像を固化させ記録媒体に定着させる工程と、を含む。
第1照射部40aおよび第2照射部40bはトナー像を保持する記録用紙Sにおける感光体側の第1面に向かって光を照射するものであり、感光体1と転写ローラー50とにニップされた記録用紙S面に対して感光体側に配置されている。また、記録用紙Sの搬送方向(用紙搬送方向)に沿って、第1照射部40a、第2照射部40bの順に配置されている。
第1照射部40aは、感光体1と転写ローラー40とのニップ位置に対して、用紙搬送方向下流側、かつ圧着部9に対して用紙搬送方向上流側に配置されている。
第2照射部40bは、第1照射部40aに対して用紙搬送方向下流側、かつ排紙部14に対して用紙搬送方向上流側に設置される。第2照射部40bは、用紙搬送方向において、圧着部9と排紙部14との間に設置することができる。
本発明の一実施形態による画像形成方法によれば、帯電器2により感光体1に一様な電位を付与して帯電させた後、原画像データに基づいて露光器3により照射した光束で感光体1上を走査し、静電潜像を形成する。次に現像部4により光吸収により相転移する化合物を含む現像剤を感光体1上に供給する。
感光体1の表面に担持されたトナー像が、感光体1の回転によって転写部材50の位置に至るタイミングに合わせて、トレイ16から記録用紙Sを画像形成部10に搬送すると、転写部材50に印加される転写バイアスにより、感光体1上のトナー像が、転写部材50と感光体1とにニップされた記録用紙S上に転写される。
また、転写部材50は、加圧部材を兼ねており、感光体1から記録用紙Sにトナー像を転写させながら、トナー像に含まれる複合樹脂を確実に記録用紙Sに密着させることができる。
トナー像が記録用紙Sに転写された後に、クリーニング部8のブレード85は、感光体1表面に残留する現像剤を除去する。
トナー像が転写された記録用紙Sが搬送ベルト13により圧着部9に搬送される過程において、第1照射部40aは、記録用紙S上に転写されたトナー像に対して、300nm以上400nm未満の波長を有する紫外光を照射する。第1照射部40aにより記録用紙Sの第1面上のトナー像に向かって紫外光を照射することにより、トナー像をより確実に溶融させることができ、トナー像の記録用紙Sに対する定着性を向上させることができる。
トナー像が保持された記録用紙Sが、搬送ベルト13により圧着部9に至ると、加圧部材91および92が、トナー像を記録用紙Sの第1面に圧着する。圧着部9により定着処理が施される前に、トナー像が第1照射部40aによる紫外光照射により軟化するため、記録用紙Sに対する画像圧着の省エネルギー化を図ることができる。すなわち、本発明の画像形成方法は、400nm以上800nm以下の波長を有する可視光を照射して、トナー像を固化(硬化)させ記録媒体に定着させる工程の前に、軟化したトナー像を加圧部材により加圧する工程をさらに含むことが好ましい。
また、加圧部材91は、記録用紙Sが加圧部材91および92の間を通過する際に、記録用紙S上のトナー像を加熱することができる。光照射によって軟化したトナー像は、この加熱によりさらに軟化され、その結果、トナー像の記録用紙Sへの定着性がより向上する。加熱する場合の加圧部材91の温度は、30℃以上100℃以下が好ましく、40℃以上100℃以下が好ましい。
加圧部材91および92の間を通過した記録用紙Sが、排紙部14に至るまでに、記録用紙S上のトナー像に対して400nm以上800nm以下の波長を有する可視光を照射するように第2照射部40bを設ける。この第2照射部40bから可視光を照射することで、記録用紙S上のトナー像をより確実に硬化させることができ、トナー像の記録用紙Sに対する定着性をより向上させることができる。
記録用紙Sの両面に画像を形成する場合、圧着処理がなされた記録用紙Sを排紙部14の手前で用紙反転部24に搬送し、表裏を反転して排出するか、または表裏を反転した記録用紙Sを再度画像形成部10に搬送する。
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。
なお、カルボキシ基含有高分子の重量平均分子量は、以下のようにして測定した。
装置「HLC−8120GPC」(東ソー株式会社製)およびカラム「TSKguardcolumn+TSKgelSuperHZ−M3連」(東ソー株式会社製)を用い、カラム温度を40℃に保持しながら、キャリア溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を流速0.2mL/minで流した。測定試料(高分子)を、室温において超音波分散機を用いて5分間処理を行う溶解条件で、濃度1mg/mlになるようにテトラヒドロフランに溶解させた。次いで、ポアサイズ0.2μmのメンブランフィルターで処理して試料溶液を得、この試料溶液10μLを上記のキャリア溶媒と共に装置内に注入し、屈折率検出器(RI検出器)を用いて検出し、測定試料の有する分子量分布を単分散のポリスチレン標準粒子を用いて測定した検量線を用いて算出した。検量線測定用のポリスチレンとしては10点用いた。
(実施例1)
<カルボキシ基を有する高分子の準備>
重量平均分子量が5000であるポリアクリル酸(1)(和光純薬工業株式会社製)を準備した。
<液晶性化合物1の合成>
イミダゾールに対して1当量のナトリウムヒドリドをTHFに懸濁させ、この懸濁液を0℃に冷却後、イミダゾールのTHF溶液を滴下し、室温(25℃)で30分攪拌した。次いで、1当量の1,6−ジブロモヘキサンのTHF溶液を系内に添加し、室温(25℃)で18時間攪拌した。攪拌後、ロータリーエバポレーターで溶液を濃縮乾固し、クロロホルム:メタノール=20:1〜5:1(体積比)の混合溶媒を展開液とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、化合物Aを56%の収率で得た。
4,4’−ジヒドロキシアゾベンゼン、および4,4’−ジヒドロキシアゾベンゼンに対して2.2当量の化合物Aをアセトン中で混合し、さらに4,4’−ジヒドロキシアゾベンゼンに対して3当量の炭酸カリウムを加え、室温(25℃)で17時間攪拌した。その後、ロータリーエバポレーターで溶液を濃縮乾固し、酢酸エチルおよび水を用いて分液精製した。得られた有機層を濃縮乾固した後、酢酸エチル:ヘプタン=1:3(体積比)の混合溶媒を展開液とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、38%の収率で液晶性化合物1(化合物1)を得た。化合物1の構造は、1H−NMRにて確認した。
<複合樹脂の合成>
ポリアクリル酸(1) 500mg、および液晶性化合物1 10mgを、クロロホルム2mlに溶解し、得られた溶液をガラス基板にスピンコート法で塗布した後風乾し(乾燥時間6時間)、フィルム状の複合樹脂1(厚さ20μm)を得た。
(実施例2)
ポリアクリル酸(1)の代わりに、重量平均分子量が6500であるスチレン−アクリル酸共重合体(2)(星光PMC株式会社製)を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で、フィルム状の複合樹脂2を得た。
(実施例3)
ポリアクリル酸(1)の代わりに、重量平均分子量が10000であるスチレン−アクリル酸共重合体(3)(星光PMC株式会社製)を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で、フィルム状の複合樹脂3を得た。
(実施例4)
ポリアクリル酸(1)の代わりに、重量平均分子量が15000であるエチレン−アクリル酸共重合体(4)を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で、フィルム状の複合樹脂4を得た。
(実施例5)
ポリアクリル酸(1)の代わりに、重量平均分子量が12000であるスチレン−マレイン酸共重合体(5)(星光PMC株式会社製)を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で、フィルム状の複合樹脂5を得た。
(実施例6)
液晶性化合物1の代わりに、下記の方法で合成した液晶性化合物2を用いたこと以外は、実施例3と同様の方法で、フィルム状の複合樹脂6を得た。
<液晶性化合物2の合成>
4−ヒドロキシベンズアルデヒドに対して1.2当量のビスシクロペンタジエニルチタニウムクロライド、2.4当量のマンガン、および2.4当量の亜鉛を、THF中、0℃で1時間攪拌した後、4−ヒドロキシベンズアルデヒドのTHF溶液を加え、加熱還流下4時間攪拌した。その後、t−ブチルメチルエーテルを加え、分液ロートに移し、1N塩酸と飽和食塩水とで洗浄後、有機層を濃縮乾固し、酢酸エチル:ヘプタン=1:2(体積比)の混合溶媒を展開液とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、化合物Bを得た。
得られた化合物B、および化合物Bに対して2.2当量の化合物Aをアセトン中で混合し、化合物Bに対して3当量の炭酸カリウムを加え室温(25℃)で17時間攪拌した後、ロータリーエバポレーターで溶液を濃縮乾固し、酢酸エチルおよび水を用いて分液精製した。得られた有機層を濃縮乾固した後、酢酸エチル:ヘプタン=1:3(体積比)の混合溶媒を展開液とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、62%の収率で液晶性化合物2(化合物2)を得た。化合物2の構造は、1H−NMRにより確認した。
(実施例7)
実施例1の<液晶性化合物1の合成>において、1,6−ジブロモヘキサンの代わりに1,4−ジブロモブタンを用いたこと以外は、同様にして液晶性化合物3を合成した。
得られた液晶性化合物3を、液晶性化合物1の代わりに用いたこと以外は、実施例3と同様の方法で、フィルム状の複合樹脂7を得た。
(実施例8)
実施例1の<液晶性化合物1の合成>において、1,6−ジブロモヘキサンの代わりに1,10−ジブロモデカンを用いたこと以外は、同様にして液晶性化合物4を合成した。
得られた液晶性化合物4を、液晶性化合物1の代わりに用いたこと以外は、実施例3と同様の方法で、フィルム状の複合樹脂8を得た。
(実施例9)
液晶性化合物1の代わりに、下記の方法で合成した液晶性化合物5を用いたこと以外は、実施例3と同様の方法で、フィルム状の複合樹脂9を得た。
<液晶性化合物5の合成>
イミダゾールに対して1当量のナトリウムヒドリドをTHFに懸濁させ、この懸濁液を0℃に冷却後、イミダゾールのTHF溶液を滴下し、室温(25℃)で30分攪拌した。次いで、1当量の1,3−ジブロモプロパンのTHF溶液を系内に添加し、室温(25℃)で18時間攪拌した。攪拌後、ロータリーエバポレーターで溶液を濃縮乾固し、クロロホルム:メタノール=10:1(体積比)の混合溶媒を展開液とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、化合物Cを68%の収率で得た。
4,4’−ジヒドロキシアゾベンゼン、および4,4’−ジヒドロキシアゾベンゼンに対して1.1当量の化合物Cをアセトン中で混合し、さらに4,4’−ジヒドロキシアゾベンゼンに対して1.5当量の炭酸カリウムを加え、室温(25℃)で17時間攪拌した。ロータリーエバポレーターで溶液を濃縮乾固し、酢酸エチルおよび水を用いて分液精製した。得られた有機層を濃縮乾固した後、酢酸エチル:ヘプタン=1:2(体積比)の混合溶媒を展開液とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、62%の収率で化合物Dを得た。
得られた化合物D、および化合物Dに対して1.5当量の化合物Cをアセトン中で混合し、化合物Dに対して1.5当量の炭酸カリウムを加え室温(25℃)で17時間攪拌した後、ロータリーエバポレーターで溶液を濃縮乾固し、酢酸エチルおよび水を用いて分液精製した。得られた有機層を濃縮乾固した後に、酢酸エチル:ヘプタン=1:3(体積比)の混合溶媒を展開液とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、65%の収率で液晶性化合物5(化合物5)を得た。化合物5の構造は、1H−NMRにより確認した。
(実施例10)
液晶性化合物1の代わりに、下記の方法で合成した液晶性化合物6を用いたこと以外は、実施例3と同様の方法で、フィルム状の複合樹脂10を得た。
<液晶性化合物6の合成>
4,4’−ジヒドロキシアゾベンゼン、および4,4’−ジヒドロキシアゾベンゼンに対して2.2当量の7−ブロモヘプタン酸エチルをアセトン中で混合し、さらに4,4’−ジヒドロキシアゾベンゼンに対して3当量の炭酸カリウムを加え、室温(25℃)で17時間攪拌した。ロータリーエバポレーターで溶液を濃縮乾固し、酢酸エチルおよび水を用いて分液精製した。得られた有機層を濃縮乾固した後、酢酸エチル:ヘプタン=1:5(体積比)の混合溶媒を展開液とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、52%の収率で化合物Eを得た。
化合物EのDMF溶液に、10当量の水酸化ナトリウム水溶液(1N)を加え6時間攪拌後、1Nの塩酸を反応溶液が酸性になるまで加え、酢酸エチルにて分液した。得られた有機層を濃縮乾固した後、酢酸エチル:ヘプタン=1:1(体積比)の混合溶媒で再結晶を行い、40%の収率で液晶性化合物6(化合物6)を得た。化合物6の構造は、1H−NMRにて確認した。
(比較例1)
スチレン−アクリル酸共重合体(3)を、上記と同様の方法でフィルム状とした。
(比較例2)
ポリアクリル酸(1)の代わりに、重量平均分子量が10000であるポリスチレン(6)(Scientific Polymer, Inc.社製)を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で、複合樹脂11を得た。
(比較例3)
液晶性化合物1の代わりに、下記の方法で合成した液晶性化合物8を用いたこと以外は、実施例3と同様の方法で、フィルム状の複合樹脂12を得た。
4,4’−ジヒドロキシアゾベンゼン、および4,4’−ジヒドロキシアゾベンゼンに対して4当量の1−ブロモヘキサンをアセトン中で混合し、さらに4,4’−ジヒドロキシアゾベンゼンに対して6当量の炭酸カリウムを加え室温(25℃)で17時間攪拌した。ロータリーエバポレーターで溶液を濃縮乾固し、酢酸エチルおよび水を用いて分液精製した。得られた有機層を濃縮乾固した後、酢酸エチル:ヘプタン=1:4(体積比)の混合溶媒を展開液とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、58%の収率で液晶性化合物8(化合物8)を得た。化合物8の構造は、1H−NMRにより確認した。
(比較例4)
ポリアクリル酸(1)の代わりに、重量平均分子量が7000であるカルボキシ基を有さないポリエチレンテレフタラート(PET)(7)を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で、フィルム状の複合樹脂13を得た。
[評価]
<ガラス転移温度(Tg)>
上記実施例および比較例で作製したフィルム状の複合樹脂または樹脂のガラス転移温度を、示差走査熱量計を用いて、以下のように測定した。測定機器としては、「ダイヤモンドDSC」(株式会社パーキンエルマージャパン製)を用いた。大気圧、常温(25℃)での紫外光照射前のTg(常態Tg)の測定は、紫外光照射前の各フィルムを2mm角に切りだし測定用パンに封入して、リファレンスは空のアルミニウム製パンを使用した。測定条件としては、測定温度0℃〜150℃、昇温速度10℃/分、降温速度10℃/分で、Heat−cool−Heatの温度制御で行い、その2nd.Heatにおけるデータをもとに解析を行い、第1の吸熱ピークの立ち上がり前のベースラインの延長線と、第1のピークの立ち上がり部分からピーク頂点までの間で最大傾斜を示す接線とを引き、その交点をガラス転移温度(Tg)とした。
紫外光照射後のTg(紫外光照射後Tg)の測定は、各フィルムを2mm角に切りだし、紫外光(波長369nm、ランプの照度100mW/cm2)を10分間照射したフィルムを測定用パンに封入し、上記と同様の測定条件で行った。
可視光照射後のTgの測定は、各フィルムを2mm角に切りだし、紫外光(波長369nm、ランプの照度100mW/cm2)を10分間照射した後、さらに可視光(波長499nm、ランプの照度100mW/cm2)を10分間照射したフィルムを測定用パンに封入し、上記と同様の測定条件で行った。
ガラス転移温度の測定結果を下記表1に示す。なお、下記表1中の「Tg低下度」とは、常態Tgから紫外光照射後Tgを引いたガラス転移温度の低下幅であり、この低下幅が大きいほどより低い温度での加工が可能である、すなわち低温加工性に優れた樹脂であることを示す。欄中、◎は低下幅が20℃以上、○は低下幅が10℃以上20℃未満、△は低下幅が5℃以上10℃未満、×は低下幅が5℃未満であることをそれぞれ示しており、◎〜△であれば実用可能であることを示す。
<加圧転写評価>
紫外光および可視光照射後に、各樹脂フィルムを1cm角に切りだし上質紙A(コニカミノルタ株式会社製、Jペーパー)上に設置した。このサンプルを、上記で測定した常態Tgより10℃高い温度で加熱しつつ、紫外光(波長369nm、ランプの照度100mW)を10分間照射した後、室温(25℃)で可視光(波長499nm、ランプの照度100mW)を10分間照射し、さらに上質紙B(コニカミノルタ株式会社製、Jペーパー)を重ね、樹脂フィルムの部分を0.5MPaで加圧し、添加した液晶性化合物の上質紙Bへの移動の有無を顕微鏡にて目視で確認した。下記表1中、○は液晶性化合物の上質紙Bへの移動が無かったことを、×は液晶性化合物の上質紙Bへの移動があったことをそれぞれ表し、○であれば、トナーとしての耐久性に優れていると言える。
上記表1から明らかなように、実施例の複合樹脂は、紫外光を照射した後、より低い温度での加工が可能となり、加工後の耐久性にも優れていることが示唆された。
また、本発明の複合樹脂は、可視光照射後に加圧しても液晶性化合物の染み出しが見られず、トナーとして用いた場合の耐久性に優れていることが示唆された。