本発明は、分岐構造を有する前駆体高分子を架橋してなる架橋高分子を含有するトナーであって、前記前駆体高分子は、末端にのみトリフェニルイミダゾール基を有する分岐鎖を少なくとも1つ有し、前記架橋は、前記トリフェニルイミダゾール基同士の結合による分子間の架橋を含み、前記架橋高分子は、紫外線照射によって前記架橋が開裂し固体状態から液体状態に変化し、前記紫外線照射を停止することによって前記架橋が再び形成され固体状態に変化する高分子である、トナーである。かような本発明のトナーを用いることにより、光照射による定着において、画像強度が向上する。
本発明のトナーにより、上記効果が得られる理由の詳細は不明であるが、以下のメカニズムによるものと考えられる。ただし、下記メカニズムは推測によるものであり、その正誤が本形態の技術的範囲に影響を及ぼすものではない。
特許文献1および2に記載の現像剤に含まれる相転移化合物は、低分子量の材料であるため、用紙に定着される固体状態となっても、画像強度が低いという問題があった。また、特許文献1および2に記載の現像剤においては、軟化させる際には紫外線を照射し、用紙に定着させて固化させる際には可視光を照射するというように、画像形成装置の構成や溶融・定着の際の制御が煩雑になるという問題もあった。
一方、本発明のトナーに含まれる架橋高分子は、紫外線を照射することで解架橋し、固体状態から液体状態へ変化する。該架橋高分子は、紫外線照射されると解架橋が起こり、解架橋が起こったあとの分子は分子量が比較的小さく、また分子間の相互作用も比較的小さいため、安定な液体状態となる。紫外線照射を停止すると、解架橋した分子は再び架橋し、固体状態の高分子体となる。よって、かような架橋高分子を含む本発明のトナーを用いることにより、優れた画像強度を得ることができる。
さらに、上述したように該架橋高分子は、紫外線照射の有無のみによって流動状態を制御できることから、該架橋高分子を含む本発明のトナーを用いることにより、画像形成装置の構成や溶融・定着の際の制御が簡便になるという利点も有する。
以下、本発明の好ましい実施形態を説明する。なお、本明細書において、範囲を示す「X~Y」は「X以上Y以下」を意味する。また、本明細書において、特記しない限り、操作および物性等の測定は、室温(20~25℃)/相対湿度40~50%RHの条件で行う。
[トナーの構成]
<架橋高分子>
本発明に係る架橋高分子は、分岐構造を有する前駆体高分子を架橋してなり、該前駆体高分子は、末端にのみトリフェニルイミダゾール基を有する分岐鎖を少なくとも1つ有する。架橋高分子は、このトリフェニルイミダゾール基同士の結合によって、分子間で架橋した構造を有するものである。ここで、前駆体高分子は、たとえば5~50℃の温度において流動性を有する、すなわち液体状態の化合物であり、これが分子間で架橋することによって非流動性である固体の架橋高分子が得られる。
そして、当該架橋高分子に紫外線照射を行うことによって、前記トリフェニルイミダゾール基における架橋(共有結合)が開裂し、固体状態から液体状態に変化し得ることを特徴とする。さらに、当該紫外線照射を停止し室温(たとえば20~25℃)で放置することによって、自発的に再度架橋が形成されて、固体状態の架橋高分子に戻ることができる。かかる現象を利用して、架橋高分子の流動性を紫外線照射によって可逆的に制御することができる。
なお、本発明において、「紫外線照射により固体状態から液体状態へ変化する架橋高分子」とは、次のような方法により、目視で流動化が確認される架橋高分子を指す。すなわち、固体状態の架橋高分子をスライドガラス上にのせ、最大発光波長が365nmのLED光源を用いて、積算光量が10J/cm2となるように架橋高分子へ紫外線を照射した後、目視で観察する方法である。
本発明で用いられる紫外線の波長範囲は、好ましくは10~400nmであり、より好ましくは200~400nmであり、さらに好ましくは300nm以上400nm未満であり、特に好ましくは330nm以上390nm未満である。また、紫外線照射は、10~60℃の温度条件下で行うことが好ましい。
本発明で用いられる前駆体高分子の主鎖を構成する骨格高分子は、常温で流動性を有する液体状態であるものが用いられる。かかる骨格高分子としては、当該技術分野において公知のものを用いることができ、たとえば、ポリアクリレート構造、ポリメタクリレート構造、ポリスチレン構造、ポリエチレン構造、ポリアミド構造、ポリエステル構造、ポリウレタン構造、またはポリシロキサン構造を有するものを用いることができる。好ましくは、ポリアクリレート構造またはポリシロキサン構造であり、より好ましくはポリ(アルキルアクリレート)構造またはポリジメチルシロキサン(PDMS)構造である。また、前駆体高分子は分岐構造を有するものであり、好ましくは4分岐構造を有する。4分岐構造を有することにより、トリフェニルイミダゾール基の導入や他の置換基の導入など分子設計の自由度が増し、架橋高分子の3次元構造を制御しやすくなる。したがって、固体状態での画像強度や液体状態での流動性を制御することができるという利点が得られる。
本発明に係る前駆体高分子は、常温で流動性を有する液体状態であるという観点から、好ましくは1,000~500,000、より好ましくは3,000~100,000の範囲の数平均分子量(Mn)を有する。なお、前駆体高分子の数平均分子量(Mn)は、ポリスチレンを標準物質としたGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)を用いて測定することができる。
本発明で用いられる前駆体高分子は、末端にのみトリフェニルイミダゾール基を有する分岐鎖を少なくとも1つ有する。当該トリフェニルイミダゾール基は、2,4,5-トリフェニルイミダゾール基であり、以下の構造を有する。
当該トリフェニルイミダゾール基における各フェニル基は、それぞれ独立して、1~5の同一または異なる置換基で置換されていてもよい。置換基の例としては、たとえば、ハロゲン原子、それぞれ置換されていてもよいアルキル基、アルケニル基、アリール基、スルホ基、カルボキシル基、エステル基、アミド基からなる群より選択される置換基が挙げられる。本明細書中において、「アルキル基」は直鎖状、分枝鎖状、環状、またはそれらの組み合わせからなる脂肪族炭化水素基のいずれであってもよい。アルキル基の炭素数は特に制限されないが、たとえば炭素数1~20個、炭素数3~15個、炭素数5~10個である。本明細書中において、「アリール基」は単環式または縮合多環式の芳香族炭化水素基のいずれであってもよく、環構成原子としてヘテロ原子(たとえば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子など)を1個以上含む芳香族複素環であってもよい。この場合、これを「ヘテロアリール基」または「ヘテロ芳香族基」と呼ぶ場合もある。アリール基が単環および縮合環のいずれであっても、全ての可能な位置で結合しうる。
当該トリフェニルイミダゾール基は、上記前駆体高分子が有する分岐鎖の少なくとも1つの末端に導入されるが、2以上の分岐鎖の末端に導入されることが好ましい。たとえば、4分岐構造を有するポリアクリレートの場合には、4つの分岐鎖のそれぞれの末端にトリフェニルイミダゾール基が導入されることが好ましい。かかるトリフェニルイミダゾール基の数は、架橋高分子における所望の物性等に応じて変更することができる。
本発明の効果をより得やすいという観点から、本発明に係る前駆体高分子としては、下記化学式(1)で表される高分子が好ましく挙げられる。
上記化学式(1)中、Rはカルボン酸エステル基であり、nは2~200の整数であり、4つの分岐鎖はいずれも同じ構造を有する。
上記化学式(1)中、Rは、カルボン酸エステル基である。当該カルボン酸エステル基の例としては、たとえば、メトキシカルボニル基(-COOCH3)、エトキシカルボニル基(-COOC2H5)、n-ブトキシカルボニル基(-COO(n-C4H9))、n-ヘキシルオキシカルボニル基(-COO(n-C6H13))が挙げられ、好ましくはn-ブトキシカルボニル基(-COO(n-C4H9))である。
nは2~200の整数であり、好ましくは2~20の整数である。
なお、上記化学式(1)中の4つの分岐鎖はいずれも同じ構造を有している(Rおよびnが4つの分岐鎖で同一である)が、本発明で用いられる前駆体高分子は、必ずしも全ての分岐鎖(ポリアクリレート鎖)の末端にトリフェニルイミダゾール基を有する必要はない。また、分岐鎖(ポリアクリレート鎖)の長さ、すなわちnの値も各分岐鎖において必ずしも同一である必要はなく、異なるものとすることもできる。
上記化学式(1)で表される4分岐構造を有するポリアクリレートを前駆体高分子として用い、トリフェニルイミダゾール基において分子間で架橋した架橋高分子は、下記化学式(A)で表される構造を有する。
上記化学式(A)中、Rおよびnは、化学式(1)と同様の定義である。
また、本発明で用いられる前駆体高分子の他の具体例としては、末端にトリフェニルイミダゾール基を有する下記化学式(2)で表される高分子を好ましく挙げることができる。
上記化学式(2)中、Rは水素原子またはアルキル基であり、nは2~200の整数であり、4つの分岐鎖はいずれも同じ構造を有する。
上記化学式(2)中、Rは、水素原子またはアルキル基である。Rで用いられるアルキル基の例としては、たとえば、メチル基、エチル基、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基等が挙げられ、好ましくはメチル基である。nは2~200の整数であり、好ましくは2~20の整数である。
なお、上記化学式(2)中の4つの分岐鎖はいずれも同じ構造を有している(Rおよびnが4つの分岐鎖で同一である)が、本発明で用いられる前駆体高分子は、必ずしも全ての分岐鎖(ポリシロキサン鎖)の末端にトリフェニルイミダゾール基を有する必要はない。また、分岐鎖(ポリシロキサン鎖)の長さ、すなわちnの値も各分岐鎖において必ずしも同一である必要はなく、異なるものとすることもできる。
上記化学式(1)で表される前駆体高分子の合成方法は、特に制限されず、従来公知の合成方法を適用することができる。たとえば、ペンタエリスリトールテトラキス(2-ブロモイソブチレート)に対してn-ブチルアクリレートを、臭化銅(I)および4,4’-ジノニル-2,2’-ビピリジルの存在下で付加重合させ、末端臭素型のポリ(n-ブチルアクリレート)を得る。その後、アジ化ナトリウムをエンドキャッピング剤として作用させ、末端アジド型のポリ(n-ブチルアクリレート)を得る。得られた末端アジド型のポリ(n-ブチルアクリレート)とトリフェニルイミダゾール誘導体とでヒュスゲン環化付加反応を行うことにより、上記化学式(1)で表される前駆体高分子を得ることができる。
また、上記化学式(2)で表される前駆体高分子の合成方法も、特に制限されず、従来公知の合成方法を適用することができる。たとえば、ペンタエリスリトールに対してヘキサメチルシクロトリシロキサンを付加させ、末端水素型ポリ(ジメチルシロキサン)を得る。その後、4-アリルオキシベンズアルデヒドを作用させ、末端アルデヒド型ポリ(ジメチルシロキサン)を得る。得られた末端アルデヒド型ポリジメチルシロキサンと、ベンジルおよび酢酸アンモニウムとを反応させることにより、上記化学式(2)で表される前駆体高分子を得ることができる。
上記化学式(1)および(2)で表される前駆体高分子を架橋させて本発明に係る架橋高分子を得る方法も特に制限されず、たとえば酸化剤を用いる架橋反応が挙げられる。酸化剤の例としては、フェリシアン化カリウム、フェリシアン化ナトリウムなどのフェリシアン化塩類、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウムなどの次亜塩素酸塩類、亜塩素酸カリウム、亜塩素酸ナトリウムなどの亜塩素酸塩類、塩素酸カリウム、塩素酸バリウム、塩素酸カルシウム、塩素酸ナトリウム、塩素酸アンモニウムなどの塩素酸塩類、過塩素酸カリウム、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸アンモニウムなどの過塩素酸塩類、過マンガン酸カリウム、過マンガン酸アンモニウム、過マンガン酸ナトリウムなどの過マンガン酸塩類、臭素酸カリウム、臭素酸ナトリウム、臭素酸マグネシウムなどの臭素酸塩類、重クロム酸カリウム、重クロム酸アンモニウムのような重クロム酸塩類、ヨウ素酸塩類、過ヨウ素酸塩類、ホウ素酸塩類、過ホウ素酸塩類、過炭酸塩類、過酢酸塩類、過酸化水素、有機過酸化物類などの過酸化物、硝酸カリウム、硝酸ナトリウム、硝酸バリウム、硝酸アンモニウムなどの硝酸塩類、亜硝酸塩類等が挙げられる。これら酸化剤は、単独でもまたは2種以上混合しても使用することもできる。
本発明に係る架橋高分子は、単独でもまたは2種以上組み合わせても使用することができる。
<結着樹脂>
本発明のトナーは、結着樹脂をさらに含むことが好ましい。トナーの製造方法として後述の乳化凝集法を利用することにより、略均一な粒径および形状を有するトナー粒子を作製できることが一般的に知られている。本発明に係る架橋高分子単独では、分子の構造上、乳化凝集法における塩析を用いてトナー粒子を作製することができないが、架橋高分子と結着樹脂とを併用することにより、乳化凝集法における塩析を用いて略均一な粒径および形状を有するトナー粒子の作製を行うことができる。よって、架橋高分子および結着樹脂を含むトナーは、電子写真用トナーにより容易に適用することができる。
かような結着樹脂は、一般にトナーを構成する結着樹脂として用いられている樹脂を制限なく用いることができる。具体的には、たとえば、スチレン樹脂、アクリル樹脂、スチレンアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、オレフィン樹脂、アミド樹脂、およびエポキシ樹脂などが挙げられる。これら結着樹脂は、単独でもまたは2種以上組み合わせても用いることができる。
これらの中でも、溶融すると低粘度になり、かつ高いシャープメルト性を有するという観点から、結着樹脂は、スチレン樹脂、アクリル樹脂、スチレンアクリル樹脂、およびポリエステル樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、スチレンアクリル樹脂およびポリエステル樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含むことがより好ましい。
以下では、より好ましい結着樹脂であるスチレンアクリル樹脂およびポリエステル樹脂について説明する。
(スチレンアクリル樹脂)
本発明でいうスチレンアクリル樹脂とは、少なくともスチレン単量体と(メタ)アクリル酸エステル単量体とを用いて、重合を行うことにより形成されるものである。ここで、スチレン単量体とは、CH2=CH-C6H5の構造式で表されるスチレンの他、スチレン構造中に公知の側鎖や官能基を有する構造のものも含まれる。
また、(メタ)アクリル酸エステル単量体とは、エステル結合を有する官能基を側鎖に有するものである。具体的には、CH2=CHCOOR(Rはアルキル基)で表されるアクリル酸エステル単量体の他、CH2=C(CH3)COOR(Rはアルキル基)で表されるメタクリル酸エステル単量体などのビニル系エステル化合物が含まれる。
以下に、スチレンアクリル樹脂を形成することが可能なスチレン単量体および(メタ)アクリル酸エステル単量体の具体例を示すが、以下に示すものに限定されるものではない。
スチレン単量体としては、たとえば、スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、α-メチルスチレン、p-フェニルスチレン、p-エチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、p-n-ヘキシルスチレン、p-n-オクチルスチレン、p-n-ノニルスチレン、p-n-デシルスチレン、p-n-ドデシルスチレンなどが挙げられる。
また、(メタ)アクリル酸エステル単量体は、以下に示すアクリル酸エステル単量体およびメタクリル酸エステル単量体が代表的なもので、アクリル酸エステル単量体としては、たとえば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n-プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、tert-ブチルアクリレート、n-オクチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、ステアリルアクリレート、ドデシルアクリレート、フェニルアクリレートフェニルなどが挙げられる。メタクリル酸エステル単量体としては、たとえば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n-プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、tert-ブチルメタクリレート、n-オクチルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレートなどが挙げられる。
これらのスチレン単量体、アクリル酸エステル単量体、またはメタクリル酸エステル単量体は、単独でもまたは2種以上を組み合わせても使用することができる。
また、スチレンアクリル共重合体には、上述したスチレン単量体および(メタ)アクリル酸エステル単量体のみで形成された共重合体の他に、一般のビニル単量体をともに用いて形成されるものもある。以下に、本発明でいうスチレンアクリル共重合体を形成する際に併用可能なビニル単量体を例示するが、併用可能なビニル単量体は以下に示すものに限定されるものではない。
(1)オレフィン類
エチレン、プロピレン、イソブチレン等
(2)ビニルエステル類
プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル、ベンゾエ酸ビニル等
(3)ビニルエーテル類
ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル等
(4)ビニルケトン類
ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルヘキシルケトン等
(5)N-ビニル化合物類
N-ビニルカルバゾール、N-ビニルインドール、N-ビニルピロリドン等
(6)その他
ビニルナフタレン、ビニルピリジン等のビニル化合物類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド等のアクリル酸あるいはメタクリル酸誘導体等。
また、多官能性ビニル単量体を使用して、架橋構造の樹脂を作製することも可能である。さらに、側鎖にイオン性解離基を有するビニル単量体を使用することも可能である。イオン性解離基の具体例としては、たとえば、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基などが挙げられる。一例として、カルボキシル基を有するビニル単量体の具体例を挙げれば、たとえば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、ケイ皮酸、フマル酸、マレイン酸モノアルキルエステル、イタコン酸モノアルキルエステルなどがある。
スチレンアクリル樹脂の形成方法は、特に制限されず、公知の油溶性あるいは水溶性の重合開始剤を使用して単量体を重合する方法が挙げられる。必要に応じてたとえば、n-オクチルメルカプタン、n-オクチル-3-メルカプトプロピオネートなどの公知の連鎖移動剤を使用してもよい。
本発明に使用されるスチレンアクリル樹脂を形成する場合、スチレン単量体および(メタ)アクリル酸エステル単量体の含有量は特に限定されるものではなく、結着樹脂の軟化点やガラス転移温度を制御する観点から適宜調整することが可能である。具体的には、スチレン単量体の含有量は、単量体全体に対し40~95質量%が好ましく、50~80質量%がより好ましい。また、(メタ)アクリル酸エステル単量体の含有量は、単量体全体に対し5~60質量%が好ましく、10~50質量%がより好ましい。
スチレンアクリル樹脂の形成方法は、特に制限されず、公知の油溶性あるいは水溶性の重合開始剤を使用して単量体を重合する方法が挙げられる。油溶性の重合開始剤としては、具体的には、以下に示すアゾ系またはジアゾ系重合開始剤や過酸化物系重合開始剤がある。
アゾ系またはジアゾ系重合開始剤としては、2,2’-アゾビス-(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2’-アゾビス-4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリルなどが挙げられる。
過酸化物系重合開始剤としては、ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、クメンヒドロパーオキサイド、tert-ブチルヒドロパーオキサイド、ジ-tert-ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、2,2-ビス-(4,4-tert-ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、トリス-(tert-ブチルパーオキシ)トリアジンなどが挙げられる。
また、乳化重合法でスチレンアクリル樹脂粒子を形成する場合は水溶性ラジカル重合開始剤が使用可能である。水溶性ラジカル重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩、アゾビスアミノジプロパン酢酸塩、アゾビスシアノ吉草酸およびその塩、過酸化水素などが挙げられる。
重合温度は、用いる単量体や重合開始剤の種類によっても異なるが、50~120℃であることが好ましく、55~100℃であることがより好ましい。また、重合時間は、用いる単量体や重合開始剤の種類によっても異なるが、たとえば2~12時間であることが好ましい。
乳化重合法により形成されるスチレンアクリル樹脂粒子は、組成の異なる樹脂よりなる2層以上の構成とすることもできる。この場合の製造方法としては、常法に従った乳化重合処理(第1段重合)により調製した樹脂粒子の分散液に、重合開始剤、重合性単量体、および必要に応じて離型剤を添加し、この系を重合処理(第2段重合、第3段重合)する多段重合法を採用することができる。
(ポリエステル樹脂)
ポリエステル樹脂は、2価以上のカルボン酸(多価カルボン酸成分)と、2価以上のアルコール(多価アルコール成分)との重縮合反応によって得られる公知のポリエステル樹脂である。なお、ポリエステル樹脂は、非晶性であってもよいし結晶性であってもよい。
多価カルボン酸成分および多価アルコール成分の価数としては、好ましくはそれぞれ2~3であり、特に好ましくはそれぞれ2であるため、特に好ましい形態として価数がそれぞれ2である場合(すなわち、ジカルボン酸成分、ジオール成分)について説明する。
ジカルボン酸成分としては、たとえば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9-ノナンジカルボン酸、1,10-デカンジカルボン酸(ドデカン二酸)、1,11-ウンデカンジカルボン酸、1,12-ドデカンジカルボン酸、1,13-トリデカンジカルボン酸、1,14-テトラデカンジカルボン酸、1,16-ヘキサデカンジカルボン酸、1,18-オクタデカンジカルボン酸などの飽和脂肪族ジカルボン酸;メチレンコハク酸、フマル酸、マレイン酸、3-ヘキセンジオイック酸、3-オクテンジオイック酸、ドデセニルコハク酸などの不飽和脂肪族ジカルボン酸;フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、tert-ブチルイソフタル酸、テトラクロロフタル酸、クロロフタル酸、ニトロフタル酸、p-フェニレン二酢酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ビフェニルジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸などの不飽和芳香族ジカルボン酸;などが挙げられ、また、これらの低級アルキルエステルや酸無水物を用いることもできる。ジカルボン酸成分は、単独でもまたは2種以上混合して用いてもよい。
その他、トリメリット酸、ピロメリット酸などの3価以上の多価カルボン酸、および上記のカルボン酸化合物の無水物、あるいは炭素数1~3のアルキルエステルなども用いることができる。
ジオール成分としては、たとえば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,13-トリデカンジオール、1,14-テトラデカンジオール、1,18-オクタデカンジオール、1,20-エイコサンジオール、ネオペンチルグリコールなどの飽和脂肪族ジオール;2-ブテン-1,4-ジオール、3-ブテン-1,4-ジオール、2-ブチン-1,4-ジオール、3-ブチン-1,4-ジオール、9-オクタデセン-7,12-ジオールなどの不飽和脂肪族ジオール;ビスフェノールA、ビスフェノールFなどのビスフェノール類、およびこれらのエチレンオキサイド付加物、プロピレンオキサイド付加物などのビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物などの芳香族ジオールが挙げられ、また、これらの誘導体を用いることもできる。ジオール成分は、単独でもまたは2種以上混合して用いてもよい。
ポリエステル樹脂の製造方法は特に制限されず、公知のエステル化触媒を利用して、上記多価カルボン酸成分および多価アルコール成分を重縮合する(エステル化する)ことによりを製造することができる。
ポリエステル樹脂の製造の際に使用可能な触媒としては、ナトリウム、リチウムなどのアルカリ金属化合物;マグネシウム、カルシウムなどの第2族元素を含む化合物;アルミニウム、亜鉛、マンガン、アンチモン、チタン、スズ、ジルコニウム、ゲルマニウムなどの金属の化合物;亜リン酸化合物;リン酸化合物;およびアミン化合物などが挙げられる。具体的には、スズ化合物としては、酸化ジブチルスズ(ジブチル錫オキサイド)、オクチル酸スズ、ジオクチル酸スズ、これらの塩などを挙げることができる。チタン化合物としては、テトラノルマルブチルチタネート(Ti(O-n-Bu)4)、テトライソプロピルチタネート、テトラメチルチタネート、テトラステアリルチタネートなどのチタンアルコキシド;ポリヒドロキシチタンステアレートなどのチタンアシレート;チタンテトラアセチルアセトナート、チタンラクテート、チタントリエタノールアミネートなどなどのチタンキレートなどを挙げることができる。ゲルマニウム化合物としては、二酸化ゲルマニウムなどを挙げることができる。さらにアルミニウム化合物としては、ポリ水酸化アルミニウム、アルミニウムアルコキシド、トリブチルアルミネートなどを挙げることができる。これらは1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
重合温度は特に限定されるものではないが、70~250℃であることが好ましい。また、重合時間も特に限定されるものではないが、0.5~10時間であることが好ましい。重合中には、必要に応じて反応系内を減圧にしてもよい。
本発明のトナーが結着樹脂を含む場合の含有割合は、架橋高分子:結着樹脂=5:95~80:20(質量比)の範囲が好ましい。この範囲であれば、架橋高分子の解架橋が生じやすく、トナーの紫外線照射による軟化速度が十分なものとなる。
トナーのガラス転移温度(Tg)は、定着性や耐熱保管性などの観点から、35~70℃の範囲が好ましく、40~60℃の範囲がより好ましい。
トナーのガラス転移温度(Tg)は、結着樹脂中の単量体の種類の選択や、単量体の共重合比(質量比)および分子量の調節等によって、制御することができる。たとえば、スチレンアクリル樹脂を例にとると、単量体全体に対し、ガラス転移温度の低いn-ブチルアクリレートの共重合比(質量比)を大きくすることによりガラス転移温度を低くすることができる。また、ガラス転移温度の高いスチレンの共重合比(質量比)を大きくすることにより、Tgを高くすることができる。また、ポリエステル樹脂を例にとると、ジカルボン酸単量体およびジオール単量体の種類、ならびにこれらの混合比率(質量比)を調節することにより、ガラス転移温度を制御することができる。たとえば、トリメリット酸のような3官能以上の多官能単量体を任意の重合比(質量比)で共重合させることにより、分子内や分子間で架橋を生じさせることができ、ガラス転移温度を高くすることができる。
なお、トナーのガラス転移温度は、実施例に記載の方法により測定することができる。
架橋高分子および結着樹脂を含むトナーは、単層構造であってもよいしコアシェル構造であってもよい。コアシェル構造のコア粒子およびシェル部に用いられる結着樹脂の種類は、特に制限されない。
本発明に係るトナーは、着色剤、離型剤、荷電制御剤、外添剤等、他の成分を含んでもよい。以下、これら他の成分について説明する。
<着色剤>
本発明のトナーは、着色剤を含んでもよい。着色剤としては、一般に知られている染料および顔料を用いることができる。
黒色のトナーを得るための着色剤としては、カーボンブラック、磁性体、鉄・チタン複合酸化物ブラックなどが挙げられ、カーボンブラックとしてはチャンネルブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラックなどが挙げられる。また、磁性体としてはフェライト、マグネタイトなどが挙げられる。
イエローのトナーを得るための着色剤としては、C.I.ソルベントイエロー19、同44、同77、同79、同81、同82、同93、同98、同103、同104、同112、同162などの染料;C.I.ピグメントイエロー14、同17、同74、同93、同94、同138、同155、同180、同185などの顔料が挙げられる。
マゼンタのトナーを得るための着色剤としては、C.I.ソルベントレッド1、同49、同52、同58、同63、同111、同122などの染料;C.I.ピグメントレッド5、同48:1、同53:1、同57:1、同122、同139、同144、同149、同166、同177、同178、同222などの顔料が挙げられる。
シアンのトナーを得るための着色剤としては、C.I.ソルベントブルー25、同36、同60、同70、同93、同95などの染料;C.I.ピグメントブルー1、同7、同15、同60、同62、同66、同76などの顔料が挙げられる。
各色のトナーを得るための着色剤は、各色について、1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
着色剤の含有割合は、トナー中0.5~20質量%であることが好ましく、2~10質量%であることがより好ましい。
<離型剤>
本発明に係るトナーは、離型剤を含んでもよい。使用される離型剤は、特に限定されるものではなく、公知の種々のワックスを用いることができる。ワックスとしては、低分子量ポリプロピレン、ポリエチレン、または酸化型の低分子量ポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン、パラフィンワックス、合成エステルワックスなどが挙げられる。中でも、トナーの保存安定性を向上させる観点から、パラフィンワックスを用いることが好ましい。
離型剤の含有割合は、トナー中1~30質量%の範囲内であることが好ましく、3~15質量%の範囲内であることがより好ましい。
<荷電制御剤>
本発明に係るトナーは、荷電制御剤を含んでもよい。使用される荷電制御剤は、摩擦帯電により正または負の帯電を与えることのできる物質であり、かつ無色のものであれば特に限定されず、公知の種々の正帯電性の荷電制御剤および負帯電性の荷電制御剤を用いることができる。
荷電制御剤の含有割合は、トナー中0.01~30質量%の範囲内であることが好ましく、0.1~10質量%の範囲内であることがより好ましい。
<外添剤>
トナーの流動性、帯電性、クリーニング性等を改良するために、トナー粒子に、いわゆる後処理剤である流動化剤、クリーニング助剤等の外添剤を添加して本発明のトナーを構成してもよい。
外添剤としては、たとえば、シリカ粒子、アルミナ粒子、酸化チタン粒子などの無機酸化物粒子、ステアリン酸アルミニウム粒子、ステアリン酸亜鉛粒子などの無機ステアリン酸化合物粒子、チタン酸ストロンチウム粒子、チタン酸亜鉛粒子などの無機チタン酸化合物粒子などの無機粒子が挙げられる。これらは単独でもまたは2種以上を組み合わせても用いることができる。
これら無機粒子は、耐熱保管性や環境安定性の向上のために、シランカップリング剤やチタンカップリング剤、高級脂肪酸、シリコーンオイルなどによって、表面の疎水化処理が施されていてもよい。
これら外添剤の添加量は、トナー中0.05~5質量%であることが好ましく、0.1~3質量%であることがより好ましい。
<トナーの平均粒径>
トナーの平均粒径は、体積基準のメジアン径(D50)で4~20μmであることが好ましく、5~15μmであることがより好ましい。体積基準のメジアン径(D50)が上記の範囲にあることにより、転写効率が高くなりハーフトーンの画質が向上し、細線やドット等の画質が向上する。
本発明において、トナーの体積基準のメジアン径(D50)は、「コールターカウンター3」(ベックマン・コールター株式会社製)に、データ処理用ソフト「Software V3.51」を搭載したコンピューターシステム(ベックマン・コールター株式会社製)を接続した測定装置を用いて測定・算出されるものである。
具体的には、測定試料(トナー)0.02gを、界面活性剤溶液20mL(トナー粒子の分散を目的として、たとえば界面活性剤成分を含む中性洗剤を純水で10倍希釈した界面活性剤溶液)に添加して馴染ませた後、超音波分散を1分間行い、トナー分散液を調製し、このトナー分散液を、サンプルスタンド内の「ISOTONII」(ベックマン・コールター株式会社製)の入ったビーカーに、測定装置の表示濃度が8%になるまでピペットにて注入する。
ここで、この濃度範囲にすることにより、再現性のある測定値を得ることができる。そして、測定装置において、測定粒子カウント数を25000個、アパーチャー径を50μmにし、測定範囲である1~30μmの範囲を256分割しての頻度値を算出し、体積積算分率の大きい方から50%の粒径が体積基準のメジアン径(D50)とされる。
[トナーの製造方法]
本発明のトナーの製造方法は特に制限されない。たとえば、架橋高分子のみでトナーとする場合は、上記の合成方法で得られた架橋高分子を、ハンマーミル、フェザーミル、カウンタージェットミルなどの装置を用いて粉砕した後、スピンエアーシーブ、クラッシール、マイクロンクラッシファイアーなどの乾式分級機を用いて所望の粒径になるように分級することを含む製造方法が好ましい。
架橋高分子および着色剤を含み結着樹脂を含まないトナーを製造する場合は、架橋高分子および着色剤がともに溶解する溶媒を用いて、架橋高分子および着色剤を溶解させ溶液とした後、脱溶媒し、その後上記した方法と同様の方法で、粉砕・分級することを含む製造方法が好ましい。
架橋高分子、着色剤、および結着樹脂を含むトナーを製造する場合は、粒径および形状の制御が容易な乳化凝集法を利用した製造方法であることが好ましい。本発明の一実施形態によるトナーの製造方法は、より具体的には、
(1A)結着樹脂粒子の分散液を調製する結着樹脂粒子分散液調製工程
(1B)架橋高分子粒子の分散液を調製する架橋高分子粒子分散液調製工程
(2)結着樹脂粒子、架橋高分子粒子、および必要に応じて含まれる着色剤粒子が存在している水系媒体中に、凝集剤を添加し、塩析を進行させると同時に凝集・融着を行い、会合粒子を形成する会合工程
(3)会合粒子の形状制御をすることによりトナー粒子を形成する熟成工程
(4)水系媒体からトナー粒子を濾別し、当該トナー粒子から界面活性剤等を除去する濾過、洗浄工程
(5)洗浄処理されたトナー粒子を乾燥する乾燥工程
(6)乾燥処理されたトナー粒子に外添剤を添加する外添剤添加工程
の各工程を含むことが好ましい。該トナーが着色剤を含む場合は、(2)会合工程の前に、(1C)着色剤粒子の分散液を調製する着色剤粒子分散液調製工程、を行うことが好ましい。以下、(1A)~(1C)の工程について説明する。
(1A)結着樹脂粒子分散液調製工程
本工程では、従来公知の乳化重合などにより樹脂粒子を形成し、この樹脂粒子を凝集、融着させて結着樹脂粒子を形成する。一例として、結着樹脂を構成する重合性単量体を水系媒体中へ投入、分散させ、重合開始剤によりこれら重合性単量体を重合させることにより、結着樹脂粒子の分散液を作製する。
また、結着樹脂粒子分散液を得る方法として、上記の水系媒体中で重合開始剤により重合性単量体を重合させる方法の他に、たとえば、溶媒を用いることなく、水性媒体中において分散処理を行う方法、あるいは結晶性樹脂を酢酸エチルなどの溶媒に溶解させて溶液とし、分散機を用いて当該溶液を水性媒体中に乳化分散させた後、脱溶媒処理を行う方法などが挙げられる。
この際、必要に応じ、結着樹脂には離型剤を予め含有させておいてもよい。また、分散のために、適宜公知の界面活性剤(たとえば、ポリオキシエチレン(2)ドデシルエーテル硫酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸などのアニオン系界面活性剤)の存在下で重合させることも好ましい。
分散液中の結着樹脂粒子の体積基準のメジアン径は、50~300nmが好ましい。分散液中の結着樹脂粒子の体積基準のメジアン径は、「マイクロトラックUPA-150」(日機装株式会社製)を用いて動的光散乱法によって測定することができる。
(1B)架橋高分子粒子分散液調製工程
本工程は、架橋高分子を水系媒体中に微粒子状に分散させて架橋高分子粒子の分散液を調製する工程である。架橋高分子粒子分散液を調製するにあたり、まず、架橋高分子乳化液を調製する。架橋高分子乳化液の調製方法としては、たとえば、有機溶媒に架橋高分子を溶解させ架橋高分子液を得た後、該架橋高分子液を水系媒体中で乳化させる方法が挙げられる。
架橋高分子を有機溶媒に溶解する方法は、特に制限されず、たとえば、架橋高分子を有機溶媒に添加して、架橋高分子が溶解するように攪拌混合する方法がある。架橋高分子の添加割合は、有機溶媒100質量部に対して、好ましくは5質量部以上100質量部以下、より好ましくは10質量部以上50質量部以下である。
次に、架橋高分子液と水系媒体とを混合し、ホモジナイザーなどの公知の分散機を用いて攪拌する。これにより、架橋高分子が液滴となって、水系媒体中に乳化され、架橋高分子乳化液が調製される。
架橋高分子液の添加割合は、水系媒体100質量部に対して、好ましくは10質量部以上90質量部以下、より好ましくは30質量部以上70質量部以下である。
また、架橋高分子液と水系媒体との混合時における、架橋高分子液および水系媒体のそれぞれの温度は、有機溶媒の沸点未満となる温度範囲であって、好ましくは20℃以上80℃以下、より好ましくは30℃以上75℃以下である。架橋高分子液と水系媒体との混合時における、架橋高分子液の温度と水系媒体の温度とは、互いに同一であっても異なっていてもよく、好ましくは互いに同一である。
分散機の攪拌条件は、たとえば、容量が1~3Lの場合、その回転数が7000rpm以上20000rpm以下であることが好ましく、また、その攪拌時間が10分以上30分以下であることが好ましい。
架橋高分子粒子分散液は、架橋高分子乳化液から有機溶媒を除去することにより調製される。架橋高分子乳化液から有機溶媒を除去する方法としては、たとえば、送風、加熱、減圧、またはこれらの併用など、公知の方法が挙げられる。
一例として、架橋高分子乳化液は、たとえば、窒素などの不活性ガス雰囲気下において、好ましくは25℃以上90℃以下、より好ましくは30℃以上80℃以下で加熱されることにより、有機溶媒が除去される。これにより、水系媒体から有機溶媒が除去されて、架橋高分子粒子が水系媒体中に分散された架橋高分子粒子分散液が調製される。
架橋高分子粒子分散液中の架橋高分子粒子の質量平均粒径は、90nm以上1200nm以下が好ましい。架橋高分子粒子の質量平均粒径は、架橋高分子を有機溶媒に配合したときの粘度、架橋高分子液と水との配合割合、架橋高分子乳化液を調製するときの分散機の攪拌速度などを適宜調節することにより、上記範囲内に設定することができる。架橋高分子粒子分散液中の架橋高分子粒子の質量平均粒径は、電気泳動光散乱光度計「ELS-800」(大塚電子株式会社製)を用いて測定することができる。
<有機溶媒>
本工程で用いられる有機溶媒は、架橋高分子を溶解させることができれば特に制限されず使用することができる。具体的には、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、ヘキサン、ヘプタンなどの飽和炭化水素類、ジクロロメタン、ジクロロエタン、四塩化炭素などのハロゲン化炭化水素類が挙げられる。
このような有機溶媒は、単独でもまたは2種以上混合しても用いることができる。これら有機溶媒の中でも、ケトン類、ハロゲン化炭化水素類が好ましく、メチルエチルケトン、ジクロロメタンがより好ましい。
<水系媒体>
本工程で用いられる水系媒体は、水、または水を主成分として、アルコール類、グリコール類などの水溶性溶媒や、界面活性剤、分散剤などの任意成分が配合されている水系媒体などが挙げられる。水系媒体は、好ましくは水と界面活性剤とを混合したものが用いられる。
界面活性剤としては、たとえば、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤などが挙げられる。カチオン性界面活性剤としては、たとえば、ドデシルアンモニウムクロライド、ドデシルアンモニウムブロマイド、ドデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、ドデシルピリジニウムクロライド、ドデシルピリジニウムブロマイド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイドなどが挙げられる。アニオン性界面活性剤としては、たとえば、ステアリン酸ナトリウム、ドデカン酸ナトリウムなどの脂肪酸石けん、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウムなどが挙げられる。また、ノニオン性界面活性剤としては、たとえば、ポリオキシエチレンドデシルエーテル、ポリオキシエチレンヘキサデシルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレアートエーテル、モノデカノイルショ糖などが挙げられる。
このような界面活性剤は、単独でもまたは2種以上組み合わせても用いることができる。界面活性剤の中では、好ましくはアニオン性界面活性剤、より好ましくはドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムが使用される。
界面活性剤の添加量は、水系媒体100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上10質量部以下、より好ましくは0.04質量部以上1質量部以下である。
(1C)着色剤粒子分散液調製工程
この着色剤粒子分散液調製工程は、着色剤を水系媒体中に微粒子状に分散させて着色剤粒子の分散液を調製する工程である。
着色剤の分散は、機械的エネルギーを利用して行うことができる。分散液中の着色剤粒子の個数基準のメジアン径は、10~300nmであることが好ましく、50~200nmであることがより好ましい。着色剤粒子の個数基準のメジアン径は、電気泳動光散乱光度計「ELS-800」(大塚電子株式会社製)を用いて測定することができる。
(2)会合工程から(6)外添剤添加工程までの工程については、従来公知の種々の方法に従って行うことができる。
なお、(2)会合工程において使用される凝集剤は、特に限定されるものではないが、金属塩から選択されるものが好適に使用される。金属塩としては、たとえばナトリウム、カリウム、リチウムなどのアルカリ金属の塩等の一価の金属塩;カルシウム、マグネシウム、マンガン、銅などの二価の金属塩;鉄、アルミニウムなどの三価の金属塩などが挙げられる。具体的な金属塩としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、硫酸銅、硫酸マグネシウム、硫酸マンガンなどを挙げることができ、これらの中で、より少量で凝集を進めることができることから、二価の金属塩を用いることが特に好ましい。これらは単独でもまたは2種以上組み合わせても用いることができる。
[現像剤]
本発明に係るトナーは、たとえば磁性体を含有させて一成分磁性トナーとして使用する場合、いわゆるキャリアと混合して二成分現像剤として使用する場合、非磁性トナーを単独で使用する場合などが考えられ、いずれも好適に使用することができる。
上記磁性体としては、たとえばマグネタイト、γ-ヘマタイト、または各種フェライトなどを使用することができる。
二成分現像剤を構成するキャリアとしては、鉄、鋼、ニッケル、コバルト、フェライト、マグネタイトなどの金属、それらの金属とアルミニウム、鉛などの金属との合金などの従来公知の材料からなる磁性粒子を用いることができる。
キャリアとしては、磁性粒子の表面を樹脂等の被覆剤で被覆したコートキャリアや、バインダー樹脂中に磁性体粉末を分散してなるいわゆる樹脂分散型キャリアを用いることもできる。被覆用の樹脂としては、特に限定はないが、たとえば、オレフィン樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、スチレンアクリル樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂またはフッ素樹脂などが用いられる。また、樹脂分散型キャリアを構成するための樹脂としては、特に限定されず公知のものを使用することができ、たとえば、アクリル樹脂、スチレンアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂など使用することができる。
キャリアの体積基準のメジアン径は、20~100μmであることが好ましく、25~80μmであることがより好ましい。キャリアの体積基準のメジアン径は、代表的には湿式分散機を備えたレーザー回折式粒度分布測定装置「ヘロス(HELOS)」(シンパテック(SYMPATEC)社製)により測定することができる。
トナーのキャリアに対する混合量は、トナーとキャリアとの合計質量を100質量%として、2~10質量%であることが好ましい。
[画像形成方法]
本発明のトナーは、電子写真方式の公知の種々の画像形成方法において用いることができる。たとえば、モノクロの画像形成方法やフルカラーの画像形成方法に用いることができる。フルカラーの画像形成方法では、イエロー、マゼンタ、シアン、およびブラックの各々に係る4種類のカラー現像装置と、1つの感光体とにより構成される4サイクル方式の画像形成方法や、各色に係るカラー現像装置および感光体を有する画像形成ユニットを、それぞれ色別に搭載するタンデム方式の画像形成方法など、いずれの画像形成方法にも適用することができる。
図1は、本発明の一実施形態による画像形成方法で用いられる画像形成装置100を示す概略構成図である。ただし、本発明に用いられる画像形成装置としては、下記の形態および図示例に限定されるものではない。図1には、モノクロの画像形成装置100の例を示すが、カラーの画像形成装置にも本発明を適用することができる。
画像形成装置100は、記録媒体としての記録用紙Sに画像を形成する装置であって、画像読取装置71および自動原稿送り装置72を備え、用紙搬送系7により搬送される記録用紙Sに対し画像形成部10、照射部40、および圧着部9により画像形成を行う。
また、記録媒体として、画像形成装置100では記録用紙Sを用いているが、画像形成を行う対象とされる媒体は、用紙以外でもよい。
自動原稿送り装置72の原稿台上に載置された原稿dは、画像読取装置71の走査露光装置の光学系により走査露光されてイメージセンサーCCDに読み込まれる。イメージセンサーCCDにより光電変換されたアナログ信号は、画像処理部20において、アナログ処理、A/D変換、シェーディング補正、画像圧縮処理等が行われた後、画像形成部10の露光器3に入力される。
用紙搬送系7は、複数のトレイ16、複数の給紙部11、搬送ローラー12、搬送ベルト13等を備えている。トレイ16は、決められたサイズの記録用紙Sをそれぞれ収容しており、制御部90からの指示に応じて定められたトレイ16の給紙部11を作動させ、記録用紙Sを供給する。搬送ローラー12は、給紙部11によってトレイ16から送り出された記録用紙Sまたは手差し給紙部15から搬入された記録用紙Sを画像形成部10へ搬送する。
画像形成部10は、感光体1の周りに、感光体1の回転方向に沿って、帯電器2、露光器3、現像部4、転写部5、除電部6およびクリーニング部8がこの順番に配置されて構成されている。
像担持体である感光体1は、表面に光導電層の形成された像担持体であり、図示しない駆動装置により図1中の矢印方向に回転可能に構成されている。感光体1の近傍には、画像形成装置100内の温度や湿度を検知する温湿度計17が設けられている。
帯電器2は、感光体1の表面に均一に電荷を与え、感光体1の表面を一様に帯電させる。露光器3は、レーザーダイオード等のビーム発光源を備え、帯電された感光体1の表面にビーム光を照射することで照射部分の電荷を消失させ、感光体1上に画像データに応じた静電潜像を形成する。現像部4は、内部に収容されるトナーを感光体1に供給して、感光体1表面上に静電潜像に基づくトナー像を作像する。
転写部5は、記録用紙Sを介して感光体1と対向し、トナー像を記録用紙Sに転写する。除電部6は、トナー像を転写した後の感光体1上の除電を行う。クリーニング部8は、ブレード85を備える。ブレード85により、感光体1表面をクリーニングして感光体1の表面に残留した現像剤を除去する。
トナー像が転写された記録用紙Sは、搬送ベルト13により圧着部9へ搬送される。圧着部9は、任意に設置されるものであり、トナー像が転写された記録用紙Sに対し、加圧部材91および92によって圧力のみまたは熱および圧力を加えて定着処理を施し、これにより記録用紙S上に画像を定着させる。画像が定着された記録用紙Sは、搬送ローラーによって排紙部14に搬送され、排紙部14から機外へ排出される。
また、画像形成装置100は用紙反転部24を備えており、加熱定着処理がなされた記録用紙Sを排紙部14の手前で用紙反転部24に搬送し、表裏を反転して排出するか、または表裏を反転した記録用紙Sを再度画像形成部10に搬送し記録用紙Sの両面に画像形成を行うことを可能としている。
<照射部>
図2は、画像形成装置100における照射部40の概略構成図である。
本発明の一実施形態による画像形成装置100は、照射部40を備える。照射部40を構成する装置の例としては、発光ダイオード(LED)、レーザー光源などが挙げられる。
照射部40は、現像剤に含まれる本発明に係る架橋高分子を解架橋させるものであって、紫外線を照射する。該紫外線の波長範囲は、好ましくは10~400nmであり、より好ましくは200~400nmであり、さらに好ましくは300nm以上400nm未満であり、特に好ましくは330nm以上390nm未満である。また、照射部40における紫外線の照射量は、好ましくは0.1~200J/cm2の範囲内、より好ましくは0.5~100J/cm2の範囲内、さらに好ましくは1.0~50J/cm2の範囲内である。
上記で説明した画像形成装置を用いることにより、本発明のトナーを用いた画像形成を行うことができる。すなわち、本発明の一実施形態による画像形成方法は、記録媒体上に本発明のトナーからなるトナー像を形成する工程と、前記トナー像に対して紫外線を照射して前記トナー像を軟化させる工程と、前記紫外線の照射を停止して前記トナー像を固化させる工程と、を含む。また、本発明の他の実施形態による画像形成方法は、前記紫外線の波長が300nm以上400nm未満である画像形成方法である。
照射部40は、トナー像を保持する記録用紙Sにおける感光体側の第1面に向かって光を照射するものであり、感光体1と転写ローラー50とにニップされた記録用紙S面に対して感光体側に配置されている。
また、照射部40は、感光体1と転写ローラー50とのニップ位置に対して、用紙搬送方向下流側、かつ圧着部9に対して用紙搬送方向上流側に配置されている。
本発明の一実施形態による画像形成方法によれば、帯電器2により感光体1に一様な電位を付与して帯電させた後、原画像データに基づいて露光器3により照射した光束で感光体1上を走査し、静電潜像を形成する。次に現像部4により光吸収により相転移する化合物を含む現像剤を感光体1上に供給する。
感光体1の表面に担持されたトナー像が、感光体1の回転によって転写ローラー50の位置に至るタイミングに合わせて、トレイ16から記録用紙Sを画像形成部10に搬送すると、転写ローラー50に印加される転写バイアスにより、感光体1上のトナー像が、転写部材50と感光体1とにニップされた記録用紙S上に転写される。
また、転写ローラー50は、加圧部材を兼ねており、感光体1から記録用紙Sにトナー像を転写させつつ、トナー像に含まれる架橋高分子を確実に記録用紙Sに密着させることができる。
トナー像が記録用紙Sに転写された後に、クリーニング部8のブレード85は、感光体1表面に残留する現像剤を除去する。
トナー像が転写された記録用紙Sが搬送ベルト13により圧着部9に搬送される過程において、照射部40は、記録用紙S上に転写されたトナー像に対して、紫外線(好ましくは300nm以上400nm未満の波長を有する紫外線)を照射する。照射部40により記録用紙Sの第1面上のトナー像に向かって紫外線を照射することにより、トナー像をより確実に溶融させることができ、トナー像の記録用紙Sに対する定着性を向上させることができる。
トナー像が保持された記録用紙Sが、搬送ベルト13により圧着部9に至ると、加圧部材91および92が、トナー像を記録用紙Sの第1面に圧着する。圧着部9により定着処理が施される前に、トナー像が照射部40からの紫外線照射により軟化するため、記録用紙Sに対する画像圧着の省エネルギー化を図ることができる。すなわち、本発明の画像形成方法は、前記トナー像を軟化する工程の後であって前記トナー像を固化させる工程の前に、トナー像を加圧する加圧工程をさらに含むことが好ましい。
トナー像を加圧する際の圧力は特に限定されないが、記録媒体上に転写されたトナー像を0.01MPa以上1.0MPa以下の範囲内で加圧することが好ましく、0.05MPa以上0.8MPa以下の範囲内で加圧することが好ましい。かような範囲で加圧することで、トナー像の変形量が大きくなるため、トナー像と記録用紙Sとの接触面積が増加し、画像強度が向上する。また、画像の光沢が大きくなることを抑制することができる。
なお、該加圧工程は、紫外線を照射しトナー像を軟化する工程の前に行ってもよいが、紫外線を照射した後に行うほうが、あらかじめ軟化した状態のトナー像に加圧することができ、この結果、画像強度がより向上するため好ましい。
加圧部材91は、記録用紙Sが加圧部材91および92の間を通過する際に、記録用紙S上のトナー像を加熱することができる。紫外線照射によって軟化したトナー像は、この加熱によりさらに軟化され、その結果、トナー像の記録用紙Sへの定着性(画像強度)がより向上する。すなわち、本発明の他の実施形態による画像形成方法において、前記加圧工程は、トナー像を加熱することを含むことが好ましい。
トナー像を加熱する場合、トナー像の表面温度は、トナーのガラス転移温度+20℃以上トナーのガラス転移温度+100℃以下の範囲が好ましい。トナー像の表面温度は、より好ましくはトナーのガラス転移温度+25℃以上トナーのガラス転移温度+80℃以下の範囲である。トナー像の表面温度がトナーのガラス転移温度+20℃以上であれば、本発明の効果をより向上させることができる。また、トナー像の表面温度がトナーのガラス転移温度+100℃以下であれば、ホットオフセットを抑制することができる。なお、ホットオフセットとは、定着工程において、ローラー等の加圧部材にトナーの一部が転移してしまい、トナー層が分断してしまう現象をいう。
トナー像の表面温度は、非接触温度センサーにて測定することができる。具体的には、たとえば、加圧部材から記録媒体が排出される位置に非接触温度センサーを設置して、記録媒体上のトナー像の表面温度を測定すればよい。
加圧部材91および92の間を通過した記録用紙S上のトナー像に対する紫外線照射は停止されていることから、トナー像に含まれる解架橋した分子は再び架橋し架橋高分子となり、トナー像は固化する。
記録用紙Sの両面に画像を形成する場合、圧着処理がなされた記録用紙Sを排紙部14の手前で用紙反転部24に搬送し、表裏を反転して排出するか、または表裏を反転した記録用紙Sを再度画像形成部10に搬送する。
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。
なお、結着樹脂またはトナーのガラス転移温度(Tg)は、下記の方法により測定した。
<ガラス転移温度(Tg)>
結着樹脂またはトナーのガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量測定装置「DSC 8500」(パーキンエルマー社製)を用いて測定した。具体的には、測定試料(例えば、トナー)4.5mgを小数点以下2桁まで精秤し、アルミニウム製パンに封入して、DSC-7サンプルホルダーにセットした。リファレンスは、空のアルミニウム製パンを使用し、測定温度0~200℃、昇温速度10℃/分、降温速度10℃/分にて、Heat-Cool-Heatの温度制御を行い、その2nd.Heatにおけるデータを基に解析を行った。第1の吸熱ピークの立ち上がり前のベースラインの延長線と、第1の吸熱ピークの立ち上がり部分からピーク頂点までの間における最大傾斜を示す接線との交点の値をガラス転移温度とした。
[架橋高分子の合成]
<合成例1:化合物1-1の合成>
1.前駆体高分子の合成
末端にトリフェニルイミダゾール基を有する4分岐構造のポリアクリレートを、以下に示すような方法で合成した。
工程a:末端臭素型ポリ(n-ブチルアクリレート)(化合物A-1)の合成
ペンタエリスリトールテトラキス(2-ブロモイソブチレート)10g、n-ブチルアクリレート 16.4mL、臭化銅(I) 780mg、4,4’-ジノニル-2,2’-ビピリジル(dNbpy)4.46g、およびトルエン 24mLを混合し、80℃で4時間、原子移動ラジカル重合を行った。反応混合物をアルミナカラムクロマトグラフィにより精製し、4分岐構造を有する末端臭素型ポリ(n-ブチルアクリレート)(化合物A-1、n=2)を18.3g得た。得られた化合物A-1の数平均分子量(Mn)を、ポリスチレンを標準物質としたGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定したところ、1,800であった。
工程b:末端アジド型ポリ(n-ブチルアクリレート)(化合物B-1)の合成
上記工程aで得られた化合物A-1に、アジ化ナトリウムをエンドキャッピング剤として作用させ、化合物B-1を得た。
工程aで得られた4分岐構造を有する末端臭素型ポリ(n-ブチルアクリレート)(化合物A-1)10.8g、アジ化ナトリウム 4.6g、およびN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)30mLを混合し、室温(25℃)で14時間攪拌した。得られた反応混合物を多量の水に加え、クロロホルムによる抽出を経て、4分岐構造を有する末端アジド型ポリ(n-ブチルアクリレート)(化合物B-1)を8.9g得た。
工程c:末端トリフェニルイミダゾール型ポリ(n-ブチルアクリレート)(化合物C-1)の合成
工程bで得られた化合物B-1とトリフェニルイミダゾール誘導体とのヒュスゲン環化付加反応により、末端にトリフェニルイミダゾール基を導入した化合物C-1を得た。
工程bで得られた末端アジド型ポリ(n-ブチルアクリレート)(化合物B-1)7.6g、2-(4’-プロピニルオキシフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール 4.4g、臭化銅(I)1.9g、N,N,N’,N’’,N’’-ペンタメチルジエチレントリアミン 2.6mL、およびN,N-ジメチルホルムアミド 40mLを混合し、室温(25℃)で3時間攪拌した。反応混合物をアルミナカラムクロマトグラフィにより精製し、4分岐構造を有する末端トリフェニルイミダゾール型ポリ(n-ブチルアクリレート)(化合物C-1)を5.2g得た。
2.架橋高分子の合成
工程cで得られた化合物C-1を分子間で架橋させ、架橋高分子(化合物1-1)を得た。
工程cで得られた末端トリフェニルイミダゾール型ポリ(n-ブチルアクリレート)(化合物C-1)3.9gのトルエン溶液40mLに、水 60mL、水酸化ナトリウム 2.5g、およびフェリシアン化カリウム 13.2gを加え、0℃で30分間激しく攪拌した。得られた反応混合物の有機層を水で洗浄したのち濃縮し、減圧で乾燥することで、架橋高分子(化合物1-1)を2.2g得た。
<合成例2:化合物1-2の合成>
上記工程aのn-ブチルアクリレートの使用量を65.6mLに変更したこと以外は、上記合成例1と同様にして、架橋高分子(化合物1-2)を3.7g得た。なお、工程aで得られた化合物(化合物A-2とする)の数平均分子量(Mn)を、ポリスチレンを標準物質としたGPCにより測定したところ、4,800であった(化学式中のn=8)。
<合成例3:化合物2-1の合成>
1.前駆体高分子の合成
末端にトリフェニルイミダゾール基を有する4分岐型ポリシロキサンを、以下に示すような方法で合成した。
工程d:末端水素型ポリ(ジメチルシロキサン)の合成(化合物D-1)
ペンタエリスリトール 0.5g、ヘキサメチルシクロトリシロキサン 6.0g、N,N-ジメチルホルムアミド 40mL、およびテトラヒドロフラン 20mLを混合した後、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン 20mgのTHF溶液 2mLを加え、室温(25℃)で30分間攪拌した。得られた反応混合物に、ヘキサメチルシクロトリシロキサン 26.8gのトルエン溶液 80mLを加え22時間攪拌した。さらに、反応混合物にトリエチルアミン 22mLを加えて3分間攪拌した後、クロロジメチルシラン 8.4mLを加えてさらに30分間攪拌した。反応混合物を抽出により精製し、4分岐構造を有する末端水素型ポリ(ジメチルシロキサン)(化合物D-1、n=17)を20.8g得た。得られた化合物D-1の数平均分子量(Mn)を、ポリスチレンを標準物質としたGPCにより測定したところ、9,500であった。
工程e:末端アルデヒド型ポリ(ジメチルシロキサン)(化合物E-1)
工程dで得られた化合物D-1に、4-アリルオキシベンズアルデヒドを作用させ、化合物E-1を得た。
工程dで得られた末端水素型ポリ(ジメチルシロキサン)(化合物E-1) 11.6g、4-アリルオキシベンズアルデヒド 3.4mL、およびトルエン 40mLを混合した後、白金(0)-1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体のキシレン溶液 100μLを加え、70℃で2.5時間攪拌した。抽出により反応混合物を精製し、4分岐構造を有する末端アルデヒド型ポリ(ジメチルシロキサン)(化合物E-1)を9.1g得た。
工程f:末端トリフェニルイミダゾール型ポリ(ジメチルシロキサン)(化合物F-1)
工程eで得られた化合物E-1とベンジルとの反応により、末端にトリフェニルイミダゾール基を導入した化合物F-1を得た。
工程eで得られた末端アルデヒド型ポリ(ジメチルシロキサン)(化合物E-1)8.0g、ベンジル 6.2g、酢酸アンモニウム 6.8g、トルエン 20mL、およびメタノール 10mLを混合し、70℃で4時間攪拌した。抽出により反応混合物を精製し、4分岐構造を有する末端トリフェニルイミダゾール型ポリ(ジメチルシロキサン)(化合物F-1)を4.2g得た。
2.架橋高分子の合成
工程fで得られた化合物F-1を分子間で架橋させ、架橋高分子(化合物2-1)を得た。
工程fで得られた末端トリフェニルイミダゾール型ポリ(ジメチルシロキサン)(化合物F-1)2.7gのヘキサン溶液 20mLに、水 60mL、水酸化ナトリウム 2.6g、およびフェリシアン化カリウム 14.8gを加え、室温(25℃)で60分間激しく攪拌した。反応混合物の有機層を水で洗浄した後、濃縮し、減圧で乾燥させることで架橋高分子(化合物2-1)を2.2g得た。
<合成例4:化合物2-2の合成>
上記工程dのヘキサメチルシクロトリシロキサンの使用量を7.0gに変更したこと以外は、合成例3と同様にして、架橋高分子(化合物2-2)を2.8g得た。なお、工程dで得られた化合物(化合物D-2とする)の数平均分子量(Mn)を、ポリスチレンを標準物質としたGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定したところ、11,000であった(化学式中のn=20)。
<合成例5:化合物3の合成、および化合物3粒子分散液の調製>
特開2013-25179号公報の段落「0087」および「0088」と同様の方法で、下記一般式(1)に示すような架橋構造を有する化合物3を含有する分散液(化合物3粒子分散液)を調製した。その後、化合物3粒子分散液を100℃で3時間乾燥させた後得られた融着した粉末を、ハンマーミルにて粒径が1mm以下となるように粗粉砕した。次いで、高圧気体を用いた衝突式気流粉砕機を用いて微粉砕し、化合物3の粉砕物を得た。次に、クラッシール(高効率精密気流分級機、株式会社セイシン企業製)を用いて微粉および粗粉を同時に分級除去し、化合物3を得た。得られた化合物3の数平均分子量(Mn)は、6,500であった。
上記一般式(1)中、R1およびR2は水素原子である。
<合成例6:化合物4の合成、および化合物4粒子分散液の調製>
特開2014-191078号公報の段落「0217」~「0227」に記載の「(1-1)UV軟化材料懸濁液Aの調製」と同様の方法で、化合物4(下記化学式参照)を合成し、さらに化合物4を含有する懸濁液(化合物4粒子分散液)を調製した。
[前駆体高分子の解架橋試験]
上記で得られた架橋高分子(化合物1-1、1-2、2-1、2-2、3)に対して紫外線を照射した際、解架橋が起きて、固体状態の化合物が液体状態に変化するかどうかを目視で観察した。
具体的には、固体状態の架橋高分子をスライドガラス上にのせ、最大発光波長が365nmのLED光源を用いて、積算光量が10J/cm2となるように架橋高分子へ紫外線を照射し、その後目視による観察を行った。
解架橋試験の結果を下記表1に示す。
上記表1から明らかなように、化合物1-1、1-2、2-1、および2-2については、紫外線照射により固体状態から液体状態への変化が見られたが、化合物3は固体状態のままであった。
[トナーの作製]
<トナー1~4、10、12の作製>
上記で得られた化合物1-1をハンマーミルにて粒径が1mm以下となるように粗粉砕し、次いで、高圧気体を用いた衝突式気流粉砕機を用いて微粉砕し、化合物1-1の粉砕物を得た。次に、クラッシール(高効率精密気流分級機、株式会社セイシン企業製)を用いて微粉および粗粉を同時に分級除去し、トナー1を得た。
また、化合物1-2、化合物2-1、化合物2-2、化合物3、および化合物4を、上記と同様にしてハンマーミルを用いて粉砕した後クラッシールで分級し、トナー2~4、10、および12を得た。これらトナーの体積基準のメジアン径(D50)(トナーの平均粒径)を、下記表2に示す。
<トナー5の作製>
(結着樹脂の作製)
≪スチレンアクリル樹脂1を含有するスチレンアクリル樹脂粒子分散液1の調製≫
(第1段重合)
攪拌装置、温度センサー、冷却管、および窒素導入装置を取り付けた反応容器に、ドデシル硫酸ナトリウム 8質量部をイオン交換水 3000質量部に溶解させた溶液を仕込み、窒素気流下230rpmの攪拌速度で攪拌しながら、内温を80℃に昇温させた。昇温後、過硫酸カリウム 10質量部をイオン交換水 200質量部に溶解させた溶液を添加し、再度液温を80℃とし、スチレン 480質量部、n-ブチルアクリレート 250質量部、メタクリル酸 68.0質量部、およびn-オクチル-3-メルカプトプロピオネート 16.0質量部よりなる重合性単量体溶液を1時間かけて滴下後、80℃にて2時間加熱、攪拌することにより重合を行い、スチレンアクリル樹脂粒子(1a)を含有するスチレンアクリル樹脂粒子分散液(1A)を調製した。
(第2段重合)
攪拌装置、温度センサー、冷却管、および窒素導入装置を取り付けた反応容器に、ポリオキシエチレン(2)ドデシルエーテル硫酸ナトリウム 7質量部をイオン交換水 800質量部に溶解させた溶液を仕込み、98℃に加熱後、上記で得られたスチレンアクリル樹脂粒子分散液(1A)260質量部、スチレン 245質量部、n-ブチルアクリレート 120質量部、n-オクチル-3-メルカプトプロピオネート 1.5質量部、離型剤であるパラフィンワックス「HNP-11」(日本精蝋株式会社製)67質量部を90℃にて溶解させた重合性単量体溶液を添加し、循環経路を有する機械式分散機「CREARMIX(登録商標)」(エム・テクニック株式会社製)により1時間混合分散させ、乳化粒子(油滴)を含む分散液を調製した。
次いで、この分散液に、過硫酸カリウム 6質量部をイオン交換水 200質量部に溶解させた開始剤溶液を添加し、この系を82℃にて1時間にわたって加熱攪拌することにより重合を行い、スチレンアクリル樹脂粒子(1b)を含有するスチレンアクリル樹脂粒子分散液(1B)を調製した。
(第3段重合)
上記で得られたスチレンアクリル樹脂粒子分散液(1B)に過硫酸カリウム 11質量部をイオン交換水 400質量部に溶解させた溶液を添加し、次いで、82℃の温度条件下で、スチレン 435質量部、n-ブチルアクリレート 130質量部、メタクリル酸 33質量部およびn-オクチル-3-メルカプトプロピオネート 8質量部からなる重合性単量体溶液を1時間かけて滴下した。滴下終了後、2時間にわたって加熱攪拌することにより重合を行った後、28℃まで冷却しスチレンアクリル樹脂1を含有するスチレンアクリル樹脂粒子分散液1を得た。また、スチレンアクリル樹脂1のガラス転移温度(Tg)を測定したところ、45℃であった。
≪イエロー着色剤分散液の調製≫
n-ドデシル硫酸ナトリウム 11.5質量部を純水 1600質量部に溶解し、C.I.ピグメントイエロー74 25質量部を徐々に添加し、次いで、「クレアミックス(登録商標)WモーションCLM-0.8(エム・テクニック株式会社製)」を用い、イエロー着色剤分散液を調製した。分散液中のC.I.ピグメントイエロー74粒子の粒径を電気泳動光散乱光度計「ELS-800」(大塚電子株式会社製)を用いて測定したところ、個数基準におけるメジアン径で122nmであった。
≪化合物1-1粒子分散液の調製≫
ジクロロメタン 80質量部と、化合物1-1 20質量部と、を50℃で加熱しながら混合攪拌し、化合物1-1を含む溶液を得た。得られた溶液 100質量部に、50℃に温めた蒸留水 99.5質量部と、20質量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液0.5質量部との混合液を添加した。その後、シャフトジェネレーター18Fを備えるホモジナイザー(ハイドルフ社製)により16000rpmで20分間攪拌して乳化させ、化合物1-1の乳化液を得た。
得られた化合物1-1の乳化液をセパラブルフラスコへ投入し、窒素を気相中へ送気しながら40℃で90分間加熱攪拌して有機溶媒を除去して、化合物1-1粒子分散液を得た。化合物1-1粒子分散液中の化合物1-1粒子の粒径を、電気泳動光散乱光度計「ELS-800」(大塚電子株式会社製)を用いて測定したところ、質量平均粒径で172nmであった。
≪凝集・融着≫
上記で作製したスチレンアクリル樹脂粒子分散液1を固形分換算で144質量部、化合物1-1粒子分散液を固形分換算で576質量部、イオン交換水900質量部、およびイエロー着色剤分散液を固形分換算で70質量部を、攪拌装置、温度センサー、および冷却管を装着した反応装置に投入した。容器内の温度を30℃に保持して、5モル/リットルの水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを10に調整した。
次に、塩化マグネシウム・6水和物 2質量部をイオン交換水1000質量部に溶解した水溶液を攪拌下、10分間かけて滴下した後、昇温を開始し、この系を60分間かけて70℃まで昇温し、70℃を保持したま粒子成長反応を継続した。この状態で「マルチサイザー3」(ベックマン・コールター株式会社製)にて会合粒子の粒径を測定し、体積基準のメジアン径(D50)が6.5μmになった時点で、塩化ナトリウム190質量部をイオン交換水760質量部に溶解した水溶液を添加して粒子成長を停止させた。70℃で1時間攪拌した後、さらに昇温を行い、75℃の状態で加熱攪拌することにより、粒子の融着を進行させた。その後、30℃まで冷却することにより、トナー粒子の分散液を得た。
上記で得られたトナー粒子の分散液を遠心分離機で固液分離し、トナー粒子のウェットケーキを形成した。該ウェットケーキを、前記遠心分離機で濾液の電気伝導度が5μS/cmになるまで35℃のイオン交換水で洗浄し、その後「フラッシュジェットドライヤー(株式会社セイシン企業製)」に移し、水分量が0.5質量%になるまで乾燥して、トナー粒子を作製した。
得られたトナー粒子に、疎水性シリカ(数平均一次粒径:12nm)1質量%、および疎水性チタニア(数平均一次粒径:20nm)0.3質量%を添加し、ヘンシェルミキサー(登録商標)を用いて混合することにより、トナー5を作製した。
トナー5の体積基準のメジアン径(D50)(トナーの平均粒径)を、「コールターカウンター3(ベックマン・コールター株式会社製)」を用いて測定したところ、9.7μmであった。また、トナー5のガラス転移温度(Tg)は45℃であった。
<トナー6の作製>
≪凝集・融着≫におけるスチレンアクリル樹脂粒子分散液1の使用量を固形分換算で288質量部とし、化合物1-1粒子分散液の使用量を固形分換算で432質量部としたこと以外は、上記<トナー5の作製>と同様にして、トナー6を作製した。
トナー6の体積基準のメジアン径(D50)(トナーの平均粒径)を、「コールターカウンター3(ベックマン・コールター株式会社製)」を用いて測定したところ、8.8μmであった。また、トナー6のガラス転移温度(Tg)は45℃であった。
<トナー7の作製>
スチレンアクリル樹脂粒子分散液1の代わりに、下記のようにして調製したポリエステル樹脂粒子分散液1を用いたこと以外は、上記<トナー5の作製>と同様にして、トナー7を作製した。得られたトナー7の体積基準のメジアン径(D50)を、「コールターカウンター3(ベックマン・コールター株式会社製)」を用いて測定したところ、10.0μmであった。また、トナー7のガラス転移温度(Tg)は42℃であった。
≪ポリエステル樹脂1を含有するポリエステル樹脂粒子分散液1の調製≫
窒素導入管、脱水管、攪拌器、および熱電対を備えた容量10リットルの四つ口フラスコに、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物 524質量部、テレフタル酸 105質量部、フマル酸 69質量部、およびオクチル酸スズ(エステル化触媒)2質量部を投入し、温度230℃で8時間の重縮合反応を行った。さらに、8kPaで1時間重縮合反応を継続後、160℃に冷却し、ポリエステル樹脂1を得た。ポリエステル樹脂1 100質量部を、「ランデルミル 形式:RM」(株式会社徳寿工作所製)で粉砕し、予め作製した0.26質量%のドデシル硫酸ナトリウム水溶液 638質量部と混合し、攪拌しながら超音波ホモジナイザー「US-150T」(株式会社日本精機製作所製)を用いて、V-LEVEL、300μAで30分間超音波分散し、ポリエステル樹脂粒子分散液1を得た。また、ポリエステル樹脂1のガラス転移温度(Tg)を測定したところ、42℃であった。
<トナー8の作製>
化合物1-1粒子分散液の代わりに、下記のようにして作製した化合物2-1粒子分散液を用いたこと以外は、上記<トナー5の作製>と同様にして、トナー8を作製した。得られたトナー8の体積基準のメジアン径(D50)(トナーの平均粒径)を、「コールターカウンター3(ベックマン・コールター株式会社製)」を用いて測定したところ、9.6μmであった。また、トナー8のガラス転移温度(Tg)は45℃であった。
≪化合物2-1粒子分散液の調製≫
ジクロロメタン 80質量部と、化合物2-1 20質量部と、を50℃で加熱しながら混合攪拌し、化合物2-1を含む溶液を得た。得られた溶液 100質量部に、50℃に温めた蒸留水 99.5質量部と、20質量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液0.5質量部との混合液を添加した。その後、シャフトジェネレーター18Fを備えるホモジナイザー(ハイドルフ社製)により16000rpmで20分間攪拌して乳化させ、化合物2-1の乳化液を得た。
得られた化合物2-1の乳化液をセパラブルフラスコへ投入し、窒素を気相中へ送気しながら40℃で90分間加熱攪拌して有機溶媒を除去して、化合物2-1粒子分散液を得た。化合物2-1粒子分散液中の化合物2-1粒子の粒径を、電気泳動光散乱光度計「ELS-800」(大塚電子株式会社製)を用いて測定したところ、質量平均粒径で198nmであった。
<トナー9の作製>
化合物1-1粒子分散液の代わりに、上記の化合物2-1粒子分散液を用いたこと以外は、上記<トナー6の作製>と同様にして、トナー9を作製した。得られたトナー6の体積基準のメジアン径(D50)(トナーの平均粒径)を、「コールターカウンター3(ベックマン・コールター株式会社製)」を用いて測定したところ、9.8μmであった。また、トナー9のガラス転移温度(Tg)は45℃であった。
<トナー11の作製>
化合物1-1粒子分散液の代わりに、上記の化合物4粒子分散液を用いたこと以外は、上記<トナー5の作製>と同様にして、トナー11を作製した。得られたトナー11の体積基準のメジアン径(D50)(トナーの平均粒径)を、「コールターカウンター3(ベックマン・コールター株式会社製)」を用いて測定したところ、9.7μmであった。また、トナー11のガラス転移温度(Tg)は45℃であった。
<トナー13の作製>
化合物1-1粒子分散液の代わりに、上記の化合物3粒子分散液を用いたこと以外は、上記<トナー5の作製>と同様にして、トナー13を作製した。得られたトナー13の体積基準のメジアン径(D50)(トナーの平均粒径)を、「コールターカウンター3(ベックマン・コールター株式会社製)」を用いて測定したところ、9.6μmであった。また、トナー13のガラス転移温度(Tg)は45℃であった。
[現像剤の作製]
上記のように作製したトナー1~13について、シクロヘキサンメタクリレートとメチルメタクリレートとの共重合体樹脂(モノマー質量比1:1)で被覆した体積平均粒径が30μmのフェライトキャリアを、トナー濃度が6質量%となるように混合し、現像剤1~13を製造した。混合は、V型混合機を用いて30分間行った。
(実施例1~16、比較例1~4)
下記表2に示すように、トナーの種類および定着装置の条件を種々変更して、下記の定着性試験を行った。
[評価:定着性試験]
定着性試験は、上記で得られた現像剤1~13を用いて、常温常湿環境下(温度20℃、相対湿度50%RH)で行った。一方に現像剤、他方に普通紙(坪量:64g/m2)を設置した一対の平行平板(アルミ)電極間に、現像剤を磁力によって摺動させながら配置し、電極間ギャップが0.5mm、DCバイアスとACバイアスとはトナー付着量4g/m2となる条件でトナーを現像させ、紙の表面にトナー層を形成し、各定着装置にて定着した印刷物を用いて行った。この印刷物の1cm角の画像を、「JKワイパー(登録商標)」(日本製紙クレシア株式会社製)で10kPaの圧力をかけて5回こすり、画像の定着率で評価した。定着率70%以上を合格とする。なお、画像の定着率とは、プリント後の画像およびこすった後の画像の反射濃度を蛍光分光濃度計「FD-7」(コニカミノルタ株式会社製)で測定し、こすった後のベタ画像の反射濃度を、プリント後のベタ画像の反射濃度で除した値を百分率で表した数値である。
定着装置は、図2に示す装置を適宜改変して構成された下記3種の装置を用いた:
No.1:図2の圧着部9がなく、照射部40から照射される紫外光の波長は365nmであり(光源:発光波長が365nm±10nmのLED光源)、照射量は10J/cm2である;
No.2:図2の圧着部9があり、加圧部材91の温度は20℃であり、加圧時の圧力は0.2MPaである。照射部40の光源および照射量はNo.1と同様である;
No.3:図2の圧着部9があり、加圧部材91の温度は80℃であり、加圧時の圧力は0.2MPaである。照射部40の光源および照射量はNo.1と同様である。
評価結果を下記表2に示す。
上記表2から明らかなように、実施例のトナーは優れた画像強度(定着性)を示した。一方、比較例1および2のトナーでは、画像強度は低下した。また、比較例3および4のトナーは、紫外線照射による溶融が起こらず、定着できなかった。
さらに紫外線の光源および紫外線の照射条件は、実施例および比較例を通して一定であることから、実施例のトナーは比較例のトナーに比べて、軟化速度が速いと言える。
定着装置の比較をすると、No.1よりもNo.2を用いたほうが、またNo.2よりもNo.3を用いたほうが、画像強度が向上する傾向にあると言える。