JP2021091862A - 光応答性重合体、接着剤、光スイッチング材料、トナーおよび画像形成方法 - Google Patents

光応答性重合体、接着剤、光スイッチング材料、トナーおよび画像形成方法 Download PDF

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優咲子 草野
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優咲子 草野
治男 堀口
Haruo Horiguchi
治男 堀口
宏二 須釜
Koji Sugama
宏二 須釜
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Toyoko Shibata
豊子 芝田
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Tomohiro Oshiyama
智寛 押山
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Abstract

【課題】光照射により流動化し、可逆的に非流動化するとともに、靱性に優れ、かつ著しい着色のない重合体を提供する。【解決手段】所定の構造単位を含み、光照射により流動化し、可逆的に非流動化する光応答性重合体であって、所定の式で求められる活性化エネルギーEaが60kJ/mol以上であることを特徴とする、光応答性重合体である。【選択図】なし

Description

本発明は、光照射により流動化し、可逆的に非流動化する、光応答性重合体、これを用いた接着剤、光スイッチング材料およびトナー、ならびに上記トナーを用いた画像形成方法に関する。
光照射により流動性が変化する材料として光応答性液晶材料が知られている。例えば、特許文献1、2では、アゾベンゼン誘導体を用いた高分子液晶材料が提案されている。これらは光に応答してアゾベンゼン部位のシス−トランス異性化反応を起こす。これによる分子構造変化が固体状態から流動性状態への相転移を誘起すると考えられている。また、波長を変えて再光照射するか、加熱するか、或いは、暗所に室温で放置することで、逆反応が起きて再び固化するというものである。
特開2011−256155号公報 特開2011−256291号公報
しかしながら、上記特許文献1、2に記載されているアゾベンゼン誘導体は比較的低分子量であるため、材料としての靱性が低いという問題点があった。また、上記特許文献1、2に記載されているアゾベンゼン誘導体はいずれも黄色〜橙色の着色が有り、トナーや接着剤、光スイッチング材料など工業製品に応用する際に所望の色を再現できないという問題があった。さらに、本発明者らの検討によれば、アゾベンゼン誘導体の置換基を変化させることにより、黄色〜橙色の着色につき、多少色を調整することはできても、根本的に無色もしくは無色に近い状態にすることは不可能であることも分かった。
そこで、本発明では、光照射により流動化し、可逆的に非流動化し、靱性が高く、かつ著しい着色のない重合体を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意研究を積み重ねた。その結果、アゾメチン構造を有する基を含む構造単位を含み、前記アゾメチン構造を有する基に水素原子が結合した化合物のシス体からトランス体への異性化の活性化エネルギーが所定の範囲である重合体とすることで、上記課題が解決することを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち本発明は、下記一般式(1)で表される構造単位を含み、光照射により流動化し、可逆的に非流動化する光応答性重合体であって、
Figure 2021091862
一般式(1)中、rは水素原子またはメチル基であり、
Aは下記一般式(2)で表されるアゾメチン構造を有する基であり、
Figure 2021091862
一般式(2)中、ZおよびZは、それぞれ独立して、NまたはCHであり、かつZ≠Zであり、
は、それぞれ独立して、置換もしくは非置換の2価の芳香族炭化水素基または置換もしくは非置換の2価の芳香族複素環基であり、
は、それぞれ独立して、置換もしくは非置換の1価の芳香族炭化水素基または置換もしくは非置換の1価の芳香族複素環基であり、
は、それぞれ独立して、炭素数1〜18のアルキレン基であり、
一般式(1)におけるAに結合した酸素原子の代わりに水素原子を結合させた化合物の下記式(1)で表される活性化エネルギーEaが60kJ/mol以上であることを特徴とする、光応答性重合体である。
式(1):Ea(kJ/mol)=(TSの全エネルギー(kJ/mol))−(シス体の全エネルギー(kJ/mol))
上記式(1)中、TSは、一般式(3)で表される遷移状態を指し、シス体は一般式(4)で表される異性体を指す。
Figure 2021091862
本発明によれば、光照射により流動化し、可逆的に非流動化し、靱性に優れ、かつ著しい着色のない重合体を提供できる。
本発明の一実施形態による画像形成方法で用いられる画像形成装置100を示す概略構成図である。 画像形成装置100における照射部40の概略構成図である。 実施例の光応答接着試験で用いた重合体の光照射に伴う接着性の変化を測定する装置の概略図である。
本発明は、下記一般式(1)で表される構造単位を含み、光照射により流動化し、可逆的に非流動化する光応答性重合体であって、
Figure 2021091862
一般式(1)中、rは水素原子またはメチル基であり、
Aは下記一般式(2)で表されるアゾメチン構造を有する基であり、
Figure 2021091862
一般式(2)中、ZおよびZは、それぞれ独立して、NまたはCHであり、かつZ≠Zであり、
は、それぞれ独立して、置換もしくは非置換の2価の芳香族炭化水素基または置換もしくは非置換の2価の芳香族複素環基であり、
は、それぞれ独立して、置換もしくは非置換の1価の芳香族炭化水素基または置換もしくは非置換の1価の芳香族複素環基であり、
は、それぞれ独立して、炭素数1〜18のアルキレン基であり、
一般式(1)におけるAに結合した酸素原子の代わりに水素原子を結合させた化合物の下記式(1)で表される活性化エネルギーEaが60kJ/mol以上であることを特徴とする、光応答性重合体である。
式(1):Ea(kJ/mol)=(TSの全エネルギー(kJ/mol))−(シス体の全エネルギー(kJ/mol))
上記式(1)中、TSは、一般式(3)で表される遷移状態を指し、シス体は一般式(4)で表される異性体を指す。
Figure 2021091862
上記一般式(1)で表されるアゾメチン構造を有する基を含む構造単位を含み、上記一般式(2)で表される構造に水素原子が結合した化合物が所定のシス−トランス異性化の活性化エネルギーを有する重合体を用いることで、光照射により流動化し、可逆的に非流動化し、靱性に優れ、かつトナーや接着剤、光スイッチング材料に応用する際に所望の色の再現に影響しない程度に着色の少ない光応答性重合体を実現することができる。
なぜ、本発明の重合体により上記効果が得られるのか、詳細は不明であるが、下記のようなメカニズムが考えられる。なお、下記のメカニズムは推測によるものであり、本発明は下記メカニズムに何ら制限されるものではない。以下の説明では、上記一般式(1)で表される構造単位を「アゾメチン構造を有する基を含む構造単位」とも称する。
末端に長鎖のアルキル鎖を有するアゾベンゼン誘導体は、光を吸収し固体状態から軟化(光相転移)する、すなわち、光照射により流動化する材料であることが知られており、その光相転移は、シス−トランス異性化により結晶構造が崩れることで生じていると考えられる。特許文献1または2に記載のアゾベンゼン誘導体では、光照射による異性化反応に伴って相変化を起こすが、これらの化合物は、比較的低分子量であるため、材料としての靱性が低いという問題点があった。また、可視光領域にn−π遷移に由来する強い吸収を示し、橙色に着色しているため、工業製品に適用する際に所望の色を再現しにくいという点で問題があった。
本発明では、アゾメチン構造を有する基を含む構造単位(アゾメチン誘導体に由来する構造単位)を含む重合体を用いることで、光照射により流動化し、可逆的に非流動化し、靱性が高く、かつ著しい着色のない重合体を提供することを実現した。アゾメチン構造を有する基を含む構造単位を導入することで、アゾベンゼン誘導体における強いn−π吸収を大幅に弱めることができるため、著しい着色のない重合体を実現できる。
アゾメチン構造を有する基を含む構造単位を含む重合体においては、アゾメチン誘導体が光吸収して、光励起・失活過程で放出される熱エネルギーが結合する繰り返しユニット(構造単位)に伝わること(光熱変換)により流動化・非流動化現象を誘起する。特に、当該重合体に含まれるアゾメチン誘導体がトランス体であると、前述の光熱変換に加えて、非流動性のトランス体(E)が光照射され、シス体(Z)へ異性化し、多くのトランス体がTgの低いシス体へと変化していくことで規則構造が崩れ相転移変化し、流動化現象を誘起できると考えられる。また、シス体がトランス体へと戻っていくことで、再び規則構造が形成され、非流動化現象を誘起できると考えられる。したがって、流動化現象を誘起するためには、多くのトランス体(E)がシス体(Z)へ異性化する必要があると考えられる。しかしながら、一般的にアゾメチン誘導体は、アゾベンゼン誘導体に比べてシス体からトランス体への異性化の速度が速いことが知られており、C=N結合の両端に非置換のベンゼン環が結合したアゾメチン誘導体では流動化およびその後の可逆的な非流動化を誘起するには不利になることが予想された。
Z体からE体への異性化の速度が速いということは、Z体からE体への異性化反応におけるエネルギー障壁が低いために素早くトランス体(E)に戻っているものと考えられる。本発明者らは、Z体からE体への異性化反応におけるエネルギー障壁(活性化エネルギーEa)をコントロールすることでZ体からE体への異性化の速度をコントロールできると考えた。そして、Z体からE体への異性化反応におけるエネルギー障壁(活性化エネルギーEa)を60kJ/mol以上とすることで、Z体からE体への異性化反応の反応速度をコントロールすることができ、光照射により流動化させ、可逆的に非流動化させることができることを見出した。
ここで、光照射により流動化し、可逆的に非流動化するとは、光照射によって非流動状態から流動状態へと変化し、さらに非流動状態へと戻ることを指す。
さらに、アゾメチン誘導体を高分子化することで、アゾメチン誘導体が光吸収して、光励起・失活過程で放出される熱エネルギーが、結合する構造単位に伝わること(光熱変換)により、効果的に溶融または軟化させることができたものと考えられる。さらに高分子化することで、材料としての靭性も向上しうる。そのため、特にトナーに用いた際に優れた定着性(画像強度)を得ることができると考えられる。
また、アゾメチン構造を有する基を含む構造単位を導入することで、アゾベンゼン誘導体における強いn−π吸収を大幅に弱めることができるため、著しい着色のない重合体を実現できる。
上記の理由から、本発明のアゾメチン構造を有する基を含む構造単位を有する重合体は光異性化に伴い流動化および可逆的な非流動化の現象を誘起することができるものと考えられる。また、本発明の重合体は、靱性に優れ、著しい着色がないことから、トナーや光応答性接着剤、光スイッチング材料に好適に使用できる。
なお、本発明における流動状態とは、外力なし、または小さい外力で変形する状態のことを指す。
以下、本発明の好ましい実施形態を説明する。なお、本明細書において、範囲を示す「X〜Y」は「X以上Y以下」を意味する。また、本明細書において、特記しない限り、操作および物性等の測定は、室温(20〜25℃)/相対湿度40〜50%RHの条件で行う。
<アゾメチン構造を有する基を含む構造単位を含む重合体>
本発明の重合体は、下記一般式(1)で表される構造単位を含み、光照射により流動化し、可逆的に非流動化する重合体である。
Figure 2021091862
一般式(1)中、rは水素原子またはメチル基であり、
Aは下記一般式(2)で表されるアゾメチン構造を有する基であり、
Figure 2021091862
一般式(2)中、ZおよびZは、それぞれ独立して、NまたはCHであり、かつZ≠Zであり、
は、それぞれ独立して、置換もしくは非置換の2価の芳香族炭化水素基または置換もしくは非置換の2価の芳香族複素環基であり、
は、それぞれ独立して、置換もしくは非置換の1価の芳香族炭化水素基または置換もしくは非置換の1価の芳香族複素環基であり、
は、それぞれ独立して、炭素数1〜18のアルキレン基である。
本発明の重合体は、一般式(1)におけるAに結合した酸素原子の代わりに水素原子を結合させた化合物の下記式(1)で表される活性化エネルギーEaが60kJ/mol以上であることを特徴とする、光応答性重合体である:
式(1):Ea(kJ/mol)=(TSの全エネルギー(kJ/mol))−(シス体の全エネルギー(kJ/mol))
上記式(1)中、TSは、一般式(3)で表される遷移状態を指し、シス体は一般式(4)で表される異性体を指す。
Figure 2021091862
本発明の重合体は、上記一般式(2)で表される構造に水素原子が結合した化合物のシス体からトランス体への異性化反応におけるエネルギー障壁(活性化エネルギーEa)を60kJ/mol以上とすることで、Z体からE体への異性化反応の反応速度が低下し、光照射時のシス体量が相対的に増加し、光異性化反応に伴った流動化を効果的に誘起することができるものと考えられる。本発明の重合体は、特に限定されないが、アゾメチン基を分子中に確実に導入しやすくして、流動化および可逆的な非流動化を効率的に誘起させる観点から、アゾメチン構造を有する基を含む構造単位を含む重合体であることが好ましい。
また、アゾメチン基部分で分子間のパッキング(π−π相互作用)を発現しながら、トランス体からシス体に異性化した際には高い熱運動性を示すため、本発明の重合体は、材料としての強度を高めながら、流動化現象を誘起しやすくなるものと考えられる。
上記式(1)で表される活性化エネルギーEaが60kJ/molを下回ると、シス体からトランス体への異性化反応の障壁が低いため、光照射によりシス体に異性化してもトランス体に素早く戻ってしまうため、光照射による流動化およびその後の可逆的な非流動化が実現できない。
好ましくは、上記活性化エネルギーEaは、63kJ/mol以上であり、より好ましくは65kJ/mol以上であり、さらに好ましくは67kJ/mol以上である。また、上記活性化エネルギーEaは、トランス体への戻りやすさから、100kJ/mol以下が好ましく、より好ましくは、95kJ/mol以下であり、さらに好ましくは90kJ/mol以下である。このようにすることで、本発明の効果がより容易に得られうる。
本発明においては、式(1)に示すように、シス体からトランス体への異性化反応におけるエネルギー障壁(活性化エネルギーEa)は、一般式(1)において、アゾメチン構造を有する基Aに結合した酸素原子の代わりに水素原子を結合させた化合物の遷移状態の全エネルギーからシス体の全エネルギーを差し引いた値として求められる。上記遷移状態の構造は一般式(3)で、シス体の構造は一般式(4)でそれぞれ表すことができる。なお、一般式(3)および(4)は、Z=Z結合に対するBおよびBの配置(位置)を示すものであって、H、r−H、O−r−Hの部分の位置はBの構造を含むアゾメチン構造を有する基Aの構造に依存するものである。
ここで、上記化合物のシス体の分子構造と全エネルギーおよび遷移状態の分子構造と全エネルギーの算出には、米国Gaussian社製のGaussian 16 (Revision B.01, M. J. Frisch, G. W. Trucks, H. B. Schlegel, G. E. Scuseria, M. A. Robb, J. R. Cheeseman, G. Scalmani, V. Barone, G. A. Petersson, H. Nakatsuji, X. Li, M. Caricato, A. V. Marenich, J. Bloino, B. G. Janesko, R. Gomperts, B. Mennucci, H. P. Hratchian, J. V. Ortiz, A. F. Izmaylov, J. L. Sonnenberg, D. Williams−Young, F. Ding, F. Lipparini, F. Egidi, J. Goings, B. Peng, A. Petrone, T. Henderson, D. Ranasinghe, V. G. Zakrzewski, J. Gao, N. Rega, G. Zheng, W. Liang, M. Hada, M. Ehara, K. Toyota, R. Fukuda, J. Hasegawa, M. Ishida, T. Nakajima, Y. Honda, O. Kitao, H. Nakai, T. Vreven, K. Throssell, J. A. Montgomery, Jr., J. E. Peralta, F. Ogliaro, M. J. Bearpark, J. J. Heyd, E. N. Brothers, K. N. Kudin, V. N. Staroverov, T. A. Keith, R. Kobayashi, J. Normand, K. Raghavachari, A. P. Rendell, J. C. Burant, S. S. Iyengar, J. Tomasi, M. Cossi, J. M. Millam, M. Klene, C. Adamo, R. Cammi, J. W. Ochterski, R. L. Martin, K. Morokuma, O. Farkas, J. B. Foresman, and D. J. Fox, Gaussian, Inc., Wallingford CT, 2016.)ソフトウェアを用いることができ、計算手法として密度汎関数法(B3LYP/6−31G(d))を用いることができる。シス体の分子構造としては、一般式(4)で表される異性体の最安定な分子構造、すなわち最も全エネルギーの低い分子構造を算出し、この全エネルギーをシス体の全エネルギーとする。遷移状態の分子構造としては、一般式(3)で表される遷移状態について、対応する分子構造の鞍点を算出し、このとき得られた全エネルギーを遷移状態の全エネルギーとする。なお、ソフトウェアや計算手法に特に限定はなく、いずれを用いても同様の値を得ることができる。このようにして得られた計算値から、上記式(1)に従って活性化エネルギーEaの値を求めることができる。
本発明の重合体において、上記一般式(1)のBおよびBの構造を適宜選択することで、上記式(1)で表される活性化エネルギーEaを60kJ/mol以上に制御することができる。
具体的には、アゾメチン構造を有する基Aに電子供与性構造を導入することでアゾメチン部位の電子密度を上げ、活性化エネルギーEaを高くすることができる。例えば、BおよびBの少なくとも一方を電子供与性の高い芳香族複素環基とすることで活性化エネルギーEaを高くすることができる。また、BおよびBとしての芳香族炭化水素基または芳香族複素環基に電子供与性の高い置換基を導入することで活性化エネルギーEaを高くすることができる。
ここで、芳香族炭化水素基としては、特に制限されないが、炭素数6〜30のアリール基が好ましく、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基、ピレニル基(Bにおいては、これらの基に由来する2価の基)などが挙げられる。なかでも流動化、非流動化が効果的に生じることからフェニル基(Bにおいては、フェニレン基)が好ましい。
芳香族複素環基としては、特に制限されないが、炭素数2〜30のものが好ましい。また、電子供与性の高いものが好ましく、例えば、チエニル基、フラニル基、ピロリル基、ピラゾリル基、イミダゾリル基、ピリジル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、トリアジニル基、ベンゾチエニル基、ベンズイミダゾリル基、インドリル基、イソインドリル基、キノリニル基、イソキノリニル基、キナゾリニル基、キノキサリニル基、ナフチリジニル基、アクリジニル基、カルバゾリル基、ジベンゾチエニル基(Bにおいては、これらの基に由来する2価の基)などが挙げられるがこれらに制限されない。なかでも、活性化エネルギーが高くなり、流動化、非流動化が効果的に生じることから、チエニル基、ピロリル基、ピラゾリル基、イミダゾリル基、インドリル基、カルバゾリル基(Bにおいては、これらの基に由来する2価の基)が好ましい。
上記の芳香族炭化水素基または芳香族複素環基は、それぞれ、置換基を有していてもよい。置換基としては特に制限されないが、例えば、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のアルコキシ基、炭素数1〜10のアルキルアミノ基、炭素数2〜10のジアルキルアミノ基、炭素数2〜19のアシル基、および炭素数2〜19のアルコキシカルボニル基などが挙げられる。好ましくは、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のアルコキシ基、炭素数2〜10のジアルキルアミノ基、炭素数2〜19のアシル基、および炭素数2〜19のアルコキシカルボニル基である。
上記のように、アゾメチン誘導体の光相転移はアゾベンゼン誘導体と同様、シス−トランス異性化により結晶構造が崩れることで生じていると考えられる。一般的に分子間のπ−π相互作用が強いため、光相転移は結晶構造の極最表面でしか生じない。ここで、上記一般式(1)のBおよびBで表される芳香族炭化水素基または芳香族複素環基が置換基を有すると、本発明のアゾメチン構造を有する基を含む構造単位を含む重合体は、π−π相互作用が支配的な周期構造中に、これらの置換基の熱運動によって等方的に乱れた構造が共存する特異的な結晶構造を形成する。そのため、局所的にシス−トランス異性化反応が進行しアゾメチン誘導体の部分のπ−π相互作用が低減すると、系全体で連鎖的に等方的な融解を生じる。そのため、シス−トランス異性化がより進行しやすくなり、流動化が発現しやすくなると考えられる。
この際、上記置換基の少なくとも1つが、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のアルコキシ基、炭素数2〜10のジアルキルアミノ基、炭素数2〜18のアシル基、または炭素数2〜18のアルコキシカルボニル基であることが好ましい。このような構造とすることで、シス−トランス異性化がより進行しやすくなり、流動化が発現しやすくなると考えられる。このうち、熱運動性が高いことから、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のアルコキシ基、炭素数2〜10のジアルキルアミノ基であることがより好ましい。
上記置換基の炭素数としては、より好ましくは、上記アルキル基は、炭素数1〜12のアルキル基であり、さらに好ましくは、炭素数4〜12のアルキル基である。また、より好ましくは、上記アルコキシ基は、炭素数1〜12のアルコキシ基であり、さらに好ましくは炭素数4〜12のアルコキシ基である。また、より好ましくは、上記ジアルキルアミノ基は、炭素数2〜8のジアルキルアミノ基であり、さらに好ましくは炭素数4〜6のジアルキルアミノ基である。より好ましくは、上記アシル基は、炭素数2〜13のアシル基であり、さらに好ましくは炭素数5〜13のアシル基である。また、より好ましくは、上記アルコキシカルボニル基は、炭素数2〜13のアルコキシカルボニル基であり、さらに好ましくは炭素数5〜13のアルコキシカルボニル基がさらに好ましい。このように、長鎖置換基を導入することで結晶が崩れやすく、光溶融性がよくなり、定着性がよくなる。
炭素数1〜18のアルキル基の例としては、特に制限されるものではなく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基などの直鎖状のアルキル基;イソプロピル基、sec−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、1−メチルペンチル基、4−メチル−2−ペンチル基、3,3−ジメチルブチル基、2−エチルブチル基、1−メチルヘキシル基、t−オクチル基、1−メチルヘプチル基、2−エチルヘキシル基、2−プロピルペンチル基、2,2−ジメチルヘプチル基、2,6−ジメチル−4−ヘプチル基、3,5,5−トリメチルヘキシル基、1−メチルデシル基、1−ヘキシルヘプチル基などの分枝状のアルキル基が挙げられる。
炭素数1〜18のアルコキシ基の例としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基、n−ヘキシルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、n−ノニルオキシ基、n−デシルオキシ基、n−ウンデシルオキシ基、n−ドデシルオキシ基、n−トリデシルオキシ基、n−テトラデシルオキシ基、n−ペンタデシルオキシ基、n−ヘキサデシルオキシ基などの直鎖状のアルコキシ基:1−メチルペンチルオキシ基、4−メチル−2−ペンチルオキシ基、3,3−ジメチルブチルオキシ基、2−エチルブチルオキシ基、1−メチルヘキシルオキシ基、t−オクチルオキシ基、1−メチルヘプチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、2−プロピルペンチルオキシ基、2,2−ジメチルヘプチルオキシ基、2,6−ジメチル−4−ヘプチルオキシ基、3,5,5−トリメチルヘキシルオキシ基、1−メチルデシルオキシ基、1−ヘキシルヘプチルオキシ基などの分枝状のアルコキシ基が挙げられる。
炭素数1〜10のアルキルアミノ基の例としては、例えば、メチルアミノ基、エチルアミノ基、n−プロピルアミノ基、n−ブチルアミノ基、イソブチルアミノ基、n−ヘキシルアミノ基、n−ヘプチルアミノ基、n−オクチルアミノ基、n−ノニルアミノ基、n−デシルアミノ基などが挙げられる。
炭素数2〜10のジアルキルアミノ基の例としては、例えば、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジ−n−プロピルアミノ基、ジ−n−ブチルアミノ基、ジ−イソブチルアミノ基、メチルエチルアミノ基などが挙げられる。
炭素数2〜19のアシル基の例としては、飽和または不飽和の直鎖または分岐鎖のアシル基であり、例えば、アセチル基、プロパノイル基(プロピオニル基)、ブタノイル基(ブチリル基)、イソブタノイル基(イソブチリル基)、ペンタノイル基(バレリル基)、イソペンタノイル基(イソバレリル基)、sec−ペンタノイル基(2−メチルブチリル基)、t−ペンタノイル基(ピバロイル基)、ヘキサノイル基、ヘプタノイル基、オクタノイル基、t−オクタノイル基(2,2−ジメチルヘキサノイル基)、2−エチルヘキサノイル基、ノナノイル基、イソノナノイル基、デカノイル基、イソデカノイル基、ウンデカノイル基、ラウロイル基、ミリストイル基、パルミトイル基、ステアロイル基、ベヘノイル基、ウンデシレノイル基およびオレオイル基等が挙げられる。
炭素数2〜19のアルコキシカルボニル基の例としては、直鎖状若しくは分岐状であり、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基、n−ヘキシルオキシカルボニル基、n−ヘプチルオキシカルボニル基、n−オクチルオキシカルボニル基、n−ノニルオキシカルボニル基、n−デシルオキシカルボニル基、n−ウンデシルオキシカルボニル基、n−ドデシルオキシカルボニル基、n−トリデシルオキシカルボニル基、n−テトラデシルオキシカルボニル基、n−ペンタデシルオキシカルボニル基、n−ヘキサデシルオキシカルボニル基などの直鎖状のアルコキシカルボニル基:1−メチルペンチルオキシカルボニル基、4−メチル−2−ペンチルオキシカルボニル基、3,3−ジメチルブチルオキシカルボニル基、2−エチルブチルオキシカルボニル基、1−メチルヘキシルオキシカルボニル基、t−オクチルオキシカルボニル基、1−メチルヘプチルオキシカルボニル基、2−エチルヘキシルオキシカルボニル基、2−プロピルペンチルオキシカルボニル基、2,2−ジメチルヘプチルオキシカルボニル基、2,6−ジメチル−4−ヘプチルオキシカルボニル基、3,5,5−トリメチルヘキシルオキシカルボニル基、1−メチルデシルオキシカルボニル基、1−ヘキシルヘプチルオキシカルボニル基などの分枝状のアルコキシカルボニル基が挙げられる。
上記一般式(1)に示される構造単位においては、1つの上記アゾメチン部分を有する基に対して重合性基を1つ有する。これにより、低い光照射エネルギー量であっても、溶融しやすい重合体が得られやすい。
一般式(1)に示される光応答性重合体を合成(重合)するためのモノマーにおける重合性基は、下記式(i)〜(iii)のいずれかで表される基を有する。これらの重合性基を有する基を有すると重合体の合成に好適であるため好ましい。これにより、一般式(1)におけるAが、それぞれ、一般式(2−a)、(2−b)、(2−c)で表される重合体が得られうる。それぞれ、なかでも、軟化溶融のしやすさの観点から、(ii)または(iii)で表される基を有することが好ましく、(iii)で表される基を有することがさらに好ましい。すなわち、上記一般式(1)において、Aは、上記一般式(2−b)または(2−c)で表されるアゾメチン構造を有する基であることが好ましく、一般式(2−c)で表されるアゾメチン構造を有する基であることがより好ましい。
Figure 2021091862
上記式(i)〜(iii)において、rは、一般式(1)のrに相当し、それぞれ独立して、水素原子またはメチル基である。rは、一般式(2−b)および(2−c)のrに相当し、それぞれ独立して、炭素数1〜18のアルキレン基である。好ましくは、rは炭素数3〜12のアルキレン基である。上記アルキレン基は、直鎖状であってもよいし、分岐状であってもよく、好ましくは直鎖状である。上記アルキレン基の一部は、置換基で置換されていてもよい。置換基の例としては、ハロゲン基、ニトロ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基などが挙げられる。
本発明の重合体は、特に制限されるものではなく、任意の方法で調製することができるが、例えば、下記式(i−2)、(ii−2)、または(iii−2)で表される単量体を重合することで、上記一般式(1)におけるAが、それぞれ、上記一般式(2−a)、(2−b)、または(2−c)で表される重合体を得ることができる。下記式(i−2)、(ii−2)、および(iii−2)において、Z、Z、B、Bは上記一般式(1)と同様であり、rおよびrは、上記一般式(1)ならびに上記式(i)、(ii)、および(iii)と同様である。すなわち、本発明の一実施形態において、本発明の重合体は、下記式(i−2)、(ii−2)、または(iii−2)で表される重合性基を有するアゾメチン誘導体に由来する構造単位を含む。
Figure 2021091862
好ましくは、前記一般式(1)において、前記Bは、それぞれ独立して、置換もしくは非置換のフェニレン基または置換もしくは非置換の2価の芳香族複素環基であり、前記Bは、それぞれ独立して、置換もしくは非置換のフェニル基または置換もしくは非置換の1価の芳香族複素環基である。このような構成とすることで、流動化、非流動化がより効果的に生じうる。特にBまたはBが芳香族複素環基である場合、BとBがフェニル基である場合に比べ、溶液中のモル吸光係数が小さいため光を照射したときに、より深い方向にまで光が到達できるため、上層のみでなくより下層まで光溶融させることができ、流動化を誘起するために有利であると考えられる。
また、本発明の好ましい一実施形態は、前記一般式(1)において、Bは、それぞれ独立して、Zに対してパラ位で酸素原子((2−a)または(2−c)の場合)またはr((2−b)の場合)に結合するフェニレン基であり、Bは、それぞれ独立して、非置換であるか、もしくはZに対してパラ位に炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のアルコキシ基、および炭素数2〜10のジアルキルアミノ基から選択される置換基を有するフェニル基である、重合体である。この際、Bは、Zまたは酸素原子((2−a)または(2−c)の場合)もしくはr((2−b)の場合)に結合する炭素原子以外の炭素原子上に置換基を有していてもよい。ここで、それぞれの置換基の具体的な形態は上記の通りである。
C=N結合の両端にベンゼン環を導入したアゾメチン誘導体では、いずれか一方が電子供与性の芳香族複素環基である場合と比較して、アゾメチン部位の電子密度が低くなり、活性化エネルギーが低くなりやすいが、上記の置換基を導入することでアゾメチン部位の電子密度を高めて活性化エネルギーを所定の範囲に制御し、流動化および可逆的な非流動化現象を効果的に誘起することができる。また、シス−トランス異性化に有利に作用する格子欠陥の生成や自由体積の発現、π−π相互作用の低減等が生じる。ゆえに、シス−トランス異性化がより進行しやすくなり、流動化が発現しやすくなると考えられる。
すなわち、C=N結合の両端にベンゼン環を有するアゾメチン誘導体においては、Bが非置換のフェニル基であるか、1以上の電子供与性の置換基(アルコキシ基、ジアルキルアミノ基など)を有するフェニル基であると、電子吸引性の置換基のみを有する場合と比較して、アゾメチン部位の電子密度が高くなる。そのため活性化エネルギーが高くなりやすく、流動化および可逆的な非流動化現象を効果的に誘起することができるため好ましい。
上記のように、Bが、非置換であるか、または、Zに対するパラ位に炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のアルコキシ基、および炭素数2〜10のジアルキルアミノ基から選択される置換基を有するフェニル基であると、結晶が崩れやすく、光溶融性がよくなり、トナーとして用いたときに優れた定着性が得られうる。このようなパラ位の置換基としては、長鎖置換基を導入することで結晶が崩れやすく、光溶融性がよくなる効果が高いことから、炭素数4〜12のアルキル基、炭素数4〜12のアルコキシ基、または炭素数4〜10のジアルキルアミノ基であることがより好ましい。
この際、BおよびBの少なくとも一方は、ZまたはZに対する2つのオルト位および2つのメタ位が置換されていないか、またはハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、および炭素数2〜10のジアルキルアミノ基から選択される基で置換されていることが好ましい。すなわち、2つのオルト位および2つのメタ位の計4つの炭素原子がすべて非置換であってもよく、上記の計4つの炭素原子がそれぞれハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基および炭素数2〜10のジアルキルアミノ基から選択される基で置換されていてもよく、上記の計4つの炭素原子のうちの一部が非置換であり、残りがハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、および炭素数2〜10のジアルキルアミノ基から選択される基で置換されていてもよい。また、置換されている場合、ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、および炭素数2〜10のジアルキルアミノ基から選択されるものであれば、それぞれ同一の基で置換されていても異なる基で置換されていてもよい。なお、アルキル基、アルコキシ基は直鎖状であっても分岐していてもよい。このような構成とすることで、C=N結合の近傍の立体障害を制御でき、流動化、非流動化が効果的に発現しうる。また化合物の融点を好適な範囲に制御できるため好ましい。
したがって、本発明の好ましい実施形態によれば、一般式(1)のアゾメチン構造を有する基Aにおける−B−Z=Z−Bは、下記構造を有する。
Figure 2021091862
式中、ZおよびZは、NまたはCHであり、かつ、Z≠Zであり、
53は、一般式(1)において酸素原子((2−a)または(2−c)の場合)またはr((2−b)の場合)との連結部分であり、
56〜R60がいずれも水素原子であるか、または、R58は、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のアルコキシ基、もしくは炭素数2〜10のジアルキルアミノ基であり、好ましくは、炭素数4〜12のアルキル基、炭素数4〜12のアルコキシ基、もしくは炭素数4〜10のジアルキルアミノ基であり、R56、R57、R59、R60は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のアルコキシ基、炭素数1〜10のアルキルアミノ基、炭素数2〜10のジアルキルアミノ基、炭素数2〜19のアシル基、または炭素数2〜19のアルコキシカルボニル基であり、
51、R52、R54、R55は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のアルコキシ基、炭素数1〜10のアルキルアミノ基、炭素数2〜10のジアルキルアミノ基、炭素数2〜19のアシル基、または炭素数2〜19のアルコキシカルボニル基である。
より好ましくは、上記式において、さらに以下の少なくとも1つを満たすことが好ましい:
51、R52、R54、R55は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、または炭素数2〜10のジアルキルアミノ基である(好ましい一実施形態においてR51、R52、R54、R55は、すべて水素原子である);または、
56、R57、R59、R60は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、または炭素数2〜10のジアルキルアミノ基である(好ましい一実施形態においてR56、R57、R59、R60は、すべて水素原子である)。
本発明の他の好ましい実施形態は、前記一般式(1)において、Bが、それぞれ独立して、Zに対してパラ位で酸素原子((2−a)または(2−c)の場合)またはr((2−b)の場合)に結合するフェニレン基であり、Bが、それぞれ独立して、非置換であるか、または、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のアルコキシ基、炭素数2〜10のジアルキルアミノ基、炭素数2〜19のアシル基もしくは炭素数2〜19のアルコキシカルボニル基のいずれかで置換された芳香族複素環基である、重合体である。
上記構成により、アゾメチン部位の電子密度を高めて活性化エネルギーを所定の範囲に制御し、光照射による流動化および可逆的な非流動化の現象を効果的に誘起することができる。また、シス−トランス異性化に有利に作用する格子欠陥の生成や自由体積の発現、π−π相互作用の低減等が生じる。ゆえに、シス−トランス異性化がより進行しやすくなり、流動化が発現しやすくなると考えられる。ここで、芳香族複素環基やそれぞれの置換基の具体的な形態は上記と同様である。
が、Zに対してパラ位で酸素原子((2−a)または(2−c)の場合)またはr((2−b)の場合)に結合するフェニレン基であると、Zに対してパラ位に長鎖置換基を有することで結晶が崩れやすく、光溶融性がよくなり、トナーに用いたときに定着性がよくなる。
さらには、Bの芳香族複素環基は非置換であるか、または、前記芳香族複素環基が、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のアルコキシ基、炭素数2〜10のジアルキルアミノ基、炭素数2〜19のアシル基もしくは炭素数2〜19のアルコキシカルボニル基で置換されていることが好ましい。上記構成により、活性化エネルギーを所定の範囲に容易に制御し、流動化および可逆的な非流動化現象を効果的に誘起することができる。また、シス−トランス異性化に有利に作用する格子欠陥の生成や自由体積の発現、π−π相互作用の低減等が生じる。ゆえに、シス−トランス異性化がより進行しやすくなり、流動化が発現しやすくなると考えられる。
ここで、Bがフェニレン基、Bが芳香族複素環基である当該実施形態においては、ZがNであり、ZがCHであることが好ましい。また、当該実施形態においては、Bの芳香族複素環基としては、置換もしくは非置換のチエニル基、ピロリル基、ピラゾリル基、イミダゾリル基、または、フラニル基であることが好ましい。
このような構造単位では、シス体からトランス体への異性化の活性化エネルギーが60kJ/mol以上に容易に制御できるため、戻り反応の速さを制御でき、十分なシス体が得られるものと考えられる。
上記の本発明の好ましい実施形態によれば、一般式(1)のアゾメチン構造を有する基Aにおける−B−Z=Z−Bの構造の例としては、下記構造が挙げられる。
Figure 2021091862
式中、ZおよびZは、NまたはCHであり、かつ、Z≠Zであり、
53は、一般式(1)において酸素原子((2−a)または(2−c)の場合)またはr((2−b)の場合)との連結部分であり、
Xは、S、O、またはNR61であり、好ましくはSまたはNR61であり、R61は、水素原子、炭素数1〜18のアルキル基、または炭素数2〜19のアルコキシカルボニル基であり、
62〜R64は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のアルコキシ基、炭素数2〜10のジアルキルアミノ基、炭素数2〜19のアシル基、または炭素数2〜19のアルコキシカルボニル基であり(一実施形態において、R62〜R64がいずれも水素原子であり)、
51、R52、R54、R55は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のアルコキシ基、炭素数1〜10のアルキルアミノ基、炭素数2〜10のジアルキルアミノ基、炭素数2〜19のアシル基、または炭素数2〜19のアルコキシカルボニル基である。
上記の本発明の好ましい実施形態によれば、一般式(1)のアゾメチン構造を有する基Aにおける−B−Z=Z−Bの構造の他の例としては、下記構造が挙げられる。
Figure 2021091862
式中、Z、Z、X、R51〜R55は上記構造例2と同様であり、
65〜R67は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のアルコキシ基、炭素数2〜10のジアルキルアミノ基、炭素数2〜19のアシル基、または炭素数2〜19のアルコキシカルボニル基であり、一実施形態において、R65〜R67がいずれも水素原子である。
上記の本発明の好ましい実施形態によれば、一般式(1)のアゾメチン構造を有する基Aにおける−B−Z=Z−Bの構造の他の例としては、下記構造が挙げられる。
Figure 2021091862
式中、Z、Z、R51〜R55は上記構造例2と同様であり、
68〜R70は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のアルコキシ基、炭素数2〜10のジアルキルアミノ基、炭素数2〜19のアシル基、または炭素数2〜19のアルコキシカルボニル基であり、一実施形態において、R68〜R70がいずれも水素原子である。
上記の本発明の好ましい実施形態によれば、一般式(1)のアゾメチン構造を有する基Aにおける−B−Z=Z−Bの構造の他の例としては、下記構造が挙げられる。
Figure 2021091862
式中、Z、Z、R51〜R55は上記構造例2と同様であり、
71〜R73は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のアルコキシ基、炭素数2〜10のジアルキルアミノ基、炭素数2〜19のアシル基、または炭素数2〜19のアルコキシカルボニル基であり、一実施形態において、R71〜R73がいずれも水素原子である。
本発明のさらに他の好ましい実施形態は、前記一般式(1)において、Bが、置換もしくは非置換の2価の芳香族複素環基であって、Zとの結合位置と隣接しない位置で酸素原子((2−a)または(2−c)の場合)またはr((2−b)の場合)と結合し、Bが、それぞれ独立して、非置換であるか、または、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のアルコキシ基、炭素数2〜10のジアルキルアミノ基、炭素数2〜19のアシル基もしくは炭素数2〜19のアルコキシカルボニル基のいずれかで置換されたフェニル基である、重合体である。上記構成により、アゾメチン部位の電子密度を高めて活性化エネルギーを所定の範囲に制御し、光照射による流動化および可逆的な非流動化の現象を効果的に誘起することができる。また、シス−トランス異性化に有利に作用する格子欠陥の生成や自由体積の発現、π−π相互作用の低減等が生じる。ゆえに、シス−トランス異性化がより進行しやすくなり、流動化が発現しやすくなると考えられる。またBの芳香族複素環基において、Zとの結合位置と隣接しない位置に重合性基を導入することにより、重合体としたときに立体障害が小さくなるため溶融軟化がしやすくなるものと考えられる。光溶融性をより向上させる観点から、Bは、炭素数4〜12のアルキル基、炭素数4〜12のアルコキシ基、または炭素数4〜10のジアルキルアミノ基で置換された2価の芳香族複素環基であることがより好ましい。ここで、芳香族複素環基やそれぞれの置換基の具体的な形態は上記と同様である。
この際、Bは、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のアルコキシ基、または炭素数2〜10のジアルキルアミノ基で置換されたフェニル基であることが好ましい。これにより、シス−トランス異性化に有利に作用する格子欠陥の生成や自由体積の発現、π−π相互作用の低減等が生じる。ゆえに、シス−トランス異性化がより進行しやすくなり、流動化が発現しやすくなるものと考えられる。
ここで、Bが芳香族複素環基、Bがフェニル基である当該実施形態においては、ZがCHであり、ZがNであることが好ましい。また、当該実施形態においては、Bの芳香族複素環基としては、置換もしくは非置換のチオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、フラン環を有する基であることが好ましい。
このような構造単位では、シス体からトランス体への異性化の活性化エネルギーが60kJ/mol以上であるため、戻り反応の速さを制御でき、十分なシス体が得られるとともに、BとBが六員環を有する場合に比べ、溶液中のモル吸光係数が小さいため、光を照射したときに、より深い方向にまで光が到達できるため、上層のみでなくより下層まで光溶融させることができ、流動化を誘起するために有利であると考えられる。
本発明のさらに他の好ましい実施形態は、前記一般式(1)において、Bが、それぞれ独立して、置換もしくは非置換の2価の芳香族複素環基であって、Zとの結合位置と隣接しない位置で酸素原子((2−a)または(2−c)の場合)またはr((2−b)の場合)と結合し、Bは、それぞれ独立して、非置換であるか、または、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のアルコキシ基、炭素数2〜10のジアルキルアミノ基、炭素数2〜19のアシル基もしくは炭素数2〜19のアルコキシカルボニル基で置換された芳香族複素環基である、重合体である。
上記構成により、アゾメチン部位の電子密度を高めて活性化エネルギーを所定の範囲に制御し、光照射による流動化および可逆的な非流動化の現象を効果的に誘起することができる。また、シス−トランス異性化に有利に作用する格子欠陥の生成や自由体積の発現、π−π相互作用の低減等が生じる。ゆえに、シス−トランス異性化がより進行しやすくなり、流動化が発現しやすくなると考えられる。またBの芳香族複素環基において、Zとの結合位置と隣接しない位置に重合性基を導入することにより、重合体としたときに立体障害が小さくなるため溶融軟化がしやすくなるものと考えられる。ここで、BおよびBを構成する芳香族複素環基は同一の環構造を有するものであっても互いに異なる環構造を有するものであってもよい。
このとき、好ましくは、Bが、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のアルコキシ基、および炭素数2〜10のジアルキルアミノ基から選択される少なくとも1つの置換基を有する芳香族複素環基である。このような構成とすることで、流動化、非流動化が効果的に発現しうる。また化合物の融点を好適な範囲に制御できるため好ましい。
なお、光溶融性をより向上させる観点から、BおよびBの少なくとも一方は、炭素数4〜12のアルキル基、炭素数4〜12のアルコキシ基、または炭素数4〜10のジアルキルアミノ基で置換されていることがより好ましい。
およびBを構成する芳香族複素環基やそれぞれの置換基の具体的な形態は上記と同様である。
ここで、BおよびBが芳香族複素環基である当該実施形態においては、BおよびBの芳香族複素環基としては、それぞれ、置換もしくは非置換のチオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、またはフラン環を有する基であることが特に好ましい。
上記の本発明の好ましい実施形態によれば、一般式(1)のアゾメチン構造を有する基Aにおける−B−Z=Z−Bの構造の例としては、下記構造が挙げられる。
Figure 2021091862
式中、ZおよびZは、NまたはCHであり、かつ、Z≠Zであり、
62およびR63は、それぞれ独立して、一般式(1)において酸素原子((2−a)または(2−c)の場合)またはr((2−b)の場合)との連結部分、または、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のアルコキシ基、炭素数2〜10のジアルキルアミノ基、炭素数2〜19のアシル基、または炭素数2〜19のアルコキシカルボニル基であり、R62およびR63のいずれか一方は、一般式(1)において酸素原子((2−a)または(2−c)の場合)またはr((2−b)の場合)との連結部分であり、
64は、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のアルコキシ基、炭素数2〜10のジアルキルアミノ基、炭素数2〜19のアシル基、または炭素数2〜19のアルコキシカルボニル基であり、
Xは、S、O、またはNR61であり、好ましくはSまたはNR61であり、R61は、水素原子、炭素数1〜18のアルキル基、または炭素数2〜19のアルコキシカルボニル基であり、
68〜R70がいずれも水素原子であるか、または、R68〜R70は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のアルコキシ基、炭素数2〜10のジアルキルアミノ基、炭素数2〜19のアシル基、または炭素数2〜19のアルコキシカルボニル基である。
上記の本発明の好ましい実施形態によれば、一般式(1)のアゾメチン構造を有する基Aにおける−B−Z=Z−Bの構造の他の例としては、下記構造が挙げられる。
Figure 2021091862
式中、ZおよびZは、NまたはCHであり、かつ、Z≠Zであり、
62およびR63は、それぞれ独立して、一般式(1)において酸素原子((2−a)または(2−c)の場合)またはr((2−b)の場合)との連結部分、または、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のアルコキシ基、炭素数2〜10のジアルキルアミノ基、炭素数2〜19のアシル基、または炭素数2〜19のアルコキシカルボニル基であり、R62およびR63のいずれか一方は、一般式(1)において酸素原子((2−a)または(2−c)の場合)またはr((2−b)の場合)との連結部分であり、
64は、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のアルコキシ基、炭素数2〜10のジアルキルアミノ基、炭素数2〜19のアシル基、または炭素数2〜19のアルコキシカルボニル基であり、
Xは、S、O、またはNR61であり、好ましくはSまたはNR61であり、R61は、水素原子、炭素数1〜18のアルキル基、または炭素数2〜19のアルコキシカルボニル基であり、
71〜R73がいずれも水素原子であるか、または、R71〜R73は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のアルコキシ基、炭素数2〜10のジアルキルアミノ基、炭素数2〜19のアシル基、または炭素数2〜19のアルコキシカルボニル基である。
上記の本発明の好ましい実施形態によれば、一般式(1)のアゾメチン構造を有する基Aにおける−B−Z=Z−Bの構造の他の例としては、下記構造が挙げられる。
Figure 2021091862
式中、ZおよびZは、NまたはCHであり、かつ、Z≠Zであり、
R’68およびR’69は、それぞれ独立して、一般式(1)において酸素原子((2−a)または(2−c)の場合)またはr((2−b)の場合)との連結部分、または、水素原子、炭素数1〜18のアルキル基、または炭素数2〜19のアルコキシカルボニル基であり、R’68およびR’69のいずれか一方は、一般式(1)において酸素原子((2−a)または(2−c)の場合)またはr((2−b)の場合)との連結部分であり、
R’70は、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のアルコキシ基、炭素数2〜10のジアルキルアミノ基、炭素数2〜19のアシル基、または炭素数2〜19のアルコキシカルボニル基であり、
71は、水素原子、炭素数1〜18のアルキル基、または炭素数2〜19のアルコキシカルボニル基であり、
72、R73がいずれも水素原子であるか、または、R72、R73は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のアルコキシ基、炭素数2〜10のジアルキルアミノ基、炭素数2〜19のアシル基、または炭素数2〜19のアルコキシカルボニル基である。
なお、本発明の重合体において、一般式(1)で表される構造単位は、1種類であってもまたは2種以上組み合わせて用いてもよい。
一般式(1)で表される構造単位の具体例としては、下記表に表される構造単位が挙げられる。併せて、これらの構造単位を含む化合物(一般式(1)におけるAに結合した酸素原子の代わりに水素原子を結合させた化合物)のシス体からトランス体への光異性化の活性化エネルギーEaの値を示す。
Figure 2021091862
Figure 2021091862
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Figure 2021091862
Figure 2021091862
Figure 2021091862
<重合性基を有するアゾメチン誘導体の調製方法>
重合性基を有するアゾメチン誘導体の調製方法は特に制限されない。例えば、はじめに所望のアゾメチン誘導体を準備し、得られたアゾメチン誘導体に重合性基を導入することで調製することができる。
例えば、チオフェン環を含むアゾメチン誘導体を調製する場合、第1段階として、アニリン誘導体と、チオフェン環を有する化合物としてチオフェンカルボキシアルデヒド誘導体とを反応させる。この際、原料であるアニリン誘導体またはチオフェンカルボキシアルデヒド誘導体のいずれかに置換基としてOH基を有する場合、上記OH基の位置に重合性基を容易に導入できる。
例えば、上記一般式(1)のZがNであり、ZがCHであり、XがSであり、Bがフェニレン基であり、当該フェニレン基においてZに対してパラ位に重合性基が導入され、Bが2−メチルチエニル基であり、5位でZに結合するアゾメチン誘導体の場合、下記反応式により中間体Aを得ることができる。
具体的には、エタノール(EeOH)またはメタノール(MeOH)などの溶媒中、4−ヒドロキシアニリンと5−メチルチオフェン−2−カルボキシアルデヒドを処理(加熱還流して反応させ)、反応液をろ過し、得られた粉末を冷却エタノールで洗浄し、メタノール/エタノールで再結晶)すれば、目的物を得ることができる。
Figure 2021091862
その後、第2段階として、上記中間体Aに対して重合性基を導入する。重合性基を導入する方法も特に制限されない。例えば、上記中間体Aに対してリンカー部−C12−を導入する場合は、ハロゲン化アルコール化合物として、例えばCl−C12−OHを作用させて下記の中間体Bを得る。
反応条件としては特に制限されないが、例えばジメチルホルムアミド(DMF)などの溶媒中、炭酸カリウムおよびヨウ化カリウムの存在下、好ましくは0℃以上100℃以下の範囲内、より好ましくは0℃以上60℃以下の範囲内、さらに好ましくは、0℃以上40℃以下の範囲内で反応させることが好ましい。
Figure 2021091862
その後、第3段階として、中間体Bに、重合性基を構成するための化合物、例えば、アクリル酸塩化物またはメタクリル酸塩化物を反応させる。反応条件は特に限定されない。例えば公知の有機溶媒中で、トリエチルアミン、トリエタノールアミンなどの三級アミン類の存在下で反応を行うことが好ましい。好ましくは、上記中間体B、三級アミン類、および溶媒を含む混合液を0〜10℃に保ちながら、この混合液にアクリル酸塩化物またはメタクリル酸塩化物などの重合性基を構成するための化合物を滴下して混合する。その後、混合液を例えば室温で5〜10時間程度反応させて、重合性基を有するアゾメチン誘導体を得ることができる。
Figure 2021091862
なお、上記の第1段階において、使用する原料を他の化合物に変更することで、所望の置換基を有するアゾメチン誘導体を得ることができる。例えば、ベンズアルデヒド誘導体とアミノチオフェン誘導体とを反応させることで、一般式(1)のZがCHであり、ZがNであり、Bがフェニレン基であり、Bがチエニル基であるアゾメチン誘導体を得ることができる。また、原料としてチオフェン環を有する化合物(チオフェンカルボキシアルデヒド誘導体)に代えて、他の芳香族炭化水素化合物、芳香族複素環化合物(カルボキシアルデヒド誘導体)を用いることで、Bの構造が異なるアゾメチン誘導体を得ることができる。同様に、原料であるアニリン誘導体を他のアミノ基を有する芳香族炭化水素化合物、芳香族複素環化合物に変更することで、Bの構造が異なるアゾメチン誘導体を得ることができる。
また、第2段階、第3段階で添加する化合物を変化させることで異なる構造の重合性基を有する基を導入することができる。当業者であれば、上記変更を適宜行い、適当な反応条件を選択することで、所望の重合性基を有するアゾメチン誘導体を合成することができる。
また、上記の第1段階において、使用する原料を適当に選択することで第2段階を行わずに中間体Aに重合性基を導入することもできる。
<アゾメチン構造を有する基を含む構造単位以外の構造単位>
本発明の重合体は、上記一般式(1)で表される重合性基を有するアゾメチン構造を有する基を含む構造単位以外の構造単位(他の構造単位)を含んでもよい。他の構造単位を含む共重合体である場合、共重合体の繰り返し単位の配列形態も特に制限されず、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体のいずれであってもよい。
上記他の構造単位としては、アゾメチン基を含まないものが好ましく、加熱により軟化する熱可塑性樹脂を構成する構造単位であることがより好ましい。
上記他の構造単位としては、共重合体の合成が容易であることから、ビニル系重合性基を有するものであることが好ましい。具体的には、例えば、スチレン誘導体、(メタ)アクリル酸誘導体、オレフィン誘導体、ビニルエステル誘導体、ビニルエーテル誘導体、ビニルケトン誘導体等が用いられ、スチレン誘導体、(メタ)アクリル酸誘導体、またはオレフィン誘導体に由来する構造単位であることが好ましい。
スチレン誘導体としては、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−フェニルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレンなどが挙げられる。
(メタ)アクリル酸誘導体としては、(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
オレフィン誘導体としては、エチレン、プロピレン、n−ブチレン、イソブチレン、n−ペンテン、3−メチル−1−ペンテンなどが挙げられる。オレフィン誘導体は、直鎖状であっても分岐鎖であってもよく、炭素鎖数も特に限定されない。
ビニルエステル誘導体としては、プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル、ベンゾエ酸ビニルなどが挙げられる。ビニルエーテル誘導体としては、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテルなどが挙げられる。ビニルケトン誘導体としては、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルヘキシルケトンなどが挙げられる。
重合体における上記他の構造単位の含有量は特に制限されず、適宜選択されうるが、重合体を構成する全構造単位の合計量100質量%に対して、70質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましい。
本発明の重合体の数平均分子量Mnは、特に制限されないが、好ましくは1000以上であり、より好ましくは3500以上であり、さらに好ましくは3500〜100000であり、さらにより好ましくは3500〜70000であり、さらにより好ましくは3500〜50000であり、特に好ましくは5000〜50000である。重合体の数平均分子量が3500以上であれば、靱性に優れ、トナーとして用いた場合に定着性に優れるトナー像がより容易に得られるため好ましい。また、数平均分子量が100000以下であれば異性化および軟化溶融の効率が高くなるため好ましい。
本発明の重合体の数平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定することができる。具体的には、後述の実施例に記載の方法で測定することができる。
<重合体の調製方法>
本発明の重合体の合成方法は特に制限されず、アニオン重合、カチオン重合、リビングラジカル重合など、公知の重合開始剤を使用して、単量体としての上記の重合性基を有するアゾメチン誘導体を重合する方法が用いられうる。必要に応じて公知の連鎖移動剤を使用してもよい。
重合開始剤としては、たとえば、以下に示すアゾ系またはジアゾ系重合開始剤や過酸化物系重合開始剤が用いられる。
アゾ系またはジアゾ系重合開始剤としては、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリルなどが挙げられる。
過酸化物系重合開始剤としては、ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、クメンヒドロパーオキサイド、t−ブチルヒドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、2,2−ビス−(4,4−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、トリス−(t−ブチルパーオキシ)トリアジンなどが挙げられる。
連鎖移動剤としては、例えば、ジチオ安息香酸ベンジル、1−フェニルエチルジチオ安息香酸塩、2−フェニルプロプ−2−イルジチオ安息香酸塩、1−アセトキシルエチルジチオ安息香酸塩、ヘキサキス(チオベンゾイルチオメチル)ベンゼン、1,4−ビス(チオベンゾイルチオメチル)ベンゼン、1,2,4,5−テトラキス(チオベンゾイルチオメチル)ベンゼン、1,4−ビス−(2−(チオベンゾイルチオ)プロプ−2−イル)ベンゼン、1−(4−メトキシフェニル)エチルジチオ安息香酸塩、ジチオ酢酸ベンジル;エトキシカルボニルメチルジチオアセタート、2−(エトキシカルボニル)プロプ−2−イルジチオベンゾアート、2−シアノプロプ−2−イルジチオベンゾアート、t−ブチルジチオベンゾアート、2,4,4−トリメチルペント−2−イルジチオベンゾアート、2−(4−クロロフェニル)プロプ−2−イルジチオベンゾアート、3−および4−ビニルベンジルジチオベンゾアート、S−ベンジルジエトキシホスフィニルジチオフォルマート、t−ブチルトリチオペルベンゾアート、2−フェニルプロプ−2−イル4−クロロジチオベンゾアート、2−フェニルプロプ−2−イル1−ジチオナフタラート、4−シアノペンタン酸ジチオベンゾアート、ジベンジルテトラチオテレフタラート、ジベンジルトリチオカーボネート、カルボキシメチルジチオベンゾアートなどが挙げられる。
重合温度は、用いる単量体や重合開始剤の種類によっても異なるが、50〜100℃であることが好ましく、55〜90℃であることがより好ましい。また、重合時間は、用いる単量体や重合開始剤の種類によっても異なるが、たとえば2〜60時間であることが好ましい。
なお、上記一般式(1)で表されるアゾメチン構造を有する基を含む構造単位以外の構造単位(他の構造単位)を含む共重合体についても、その調製方法は特に制限されない。
例えば、ランダム共重合体を調製する場合は、原料となる単量体として、一般式(1)で表される構造単位を構成するための単量体に加えて、上記他の構造単位を構成するための単量体を、連鎖移動剤、重合開始剤などと混合し、重合反応を行うことで所望の共重合体を得ることができる。他の構造単位を構成するための単量体の具体的な形態は上述した通りである。
本発明の重合体の好ましい一実施形態は、下記一般式(5)で表される重合体(ブロック共重合体)である。
Figure 2021091862
上記一般式(5)中、αは前記一般式(1)で表される構造単位を含む重合体ブロックであり、βは前記一般式(1)におけるアゾメチン構造(B−Z=Z−B)を含まない重合体ブロックである。
本発明の重合体は高分子化することでアゾメチン構造の部分が光吸収して、光励起・失活過程で放出される熱エネルギーが、結合する繰り返しユニット(構造単位)に伝わること(光熱変換)により溶融または軟化が進行しうる。また、ブロック共重合体を形成することで、アゾメチン構造の部分が重合体内でドメインを形成しやすくなり、軟化・溶融を効率的に誘起すると考えられる。そのため、本発明の効果がより一層顕著に得られうる。
上記のブロック共重合体構造のうち、軟化溶融のしやすさとトナーとして用いたときの画像強度の観点から、α−β−α(2α−βとも表す)またはβ−α−β(2β−αとも表す)のブロック共重合体構造であることが好ましく、α−β−αのブロック共重合体構造であることがより好ましい。
重合体ブロックαを構成する、前記一般式(1)で表される構造単位の具体的な形態は上記の通りである。
重合体ブロックβを構成する構造単位は、前記一般式(1)におけるアゾメチン構造(B−Z=Z−B)を含まないものである。具体的には、上記のアゾメチン構造を有する基を含む構造単位以外の構造単位として説明した形態が好ましく用いられうる。特には、ATRP法、ARGET−ATRP法またはRAFT法などのリビングラジカル重合法によるブロック共重合体の合成に適用する観点から、ビニル系重合性基を有するものであることが好ましい。具体的には、例えば、スチレン誘導体、(メタ)アクリル酸誘導体、オレフィン誘導体、ビニルエステル誘導体、ビニルエーテル誘導体、ビニルケトン誘導体等が用いられ、スチレン誘導体、(メタ)アクリル酸誘導体、またはオレフィン誘導体であることが好ましい。すなわち、重合体ブロックβは、スチレン誘導体、(メタ)アクリル酸誘導体、およびオレフィン誘導体に由来する構造単位のうち少なくとも1種を含む重合体ブロックであることが好ましい。
一般式(5)で表される重合体に含まれる重合体ブロックαの数平均分子量(合計の数平均分子量)は、特に制限されないが、好ましくは1000以上であり、より好ましくは1000〜100000であり、さらに好ましくは1000〜70000であり、さらにより好ましくは1000〜50000であり、特に好ましくは3000〜50000である。重合体ブロックαの合計の数平均分子量が1000以上であれば、トナーとして用いたときに定着性に優れるトナー像がより容易に得られるため好ましい。また、重合体ブロックαの合計の数平均分子量が100000以下であれば軟化溶融の効率が高くなるため好ましい。ここで、重合体ブロックαの合計の数平均分子量は、一般式(5)で表される重合体が単一の重合体ブロックαを含む場合は当該重合体ブロックαの数平均分子量を指し、複数の重合体ブロックαを含む場合、各重合体ブロックαの数平均分子量の総和を意味する。
一般式(5)で表される重合体に含まれる重合体ブロックβの数平均分子量(合計の数平均分子量)は、特に制限されないが、好ましくは1000以上であり、より好ましくは1000〜100000であり、さらに好ましくは1000〜70000であり、さらにより好ましくは1000〜50000であり、特に好ましくは3000〜50000である。重合体ブロックβの合計の数平均分子量が1000以上であれば、トナーとして用いたときに定着性に優れるトナー像がより容易に得られるため好ましい。また、重合体ブロックβの合計の数平均分子量が100000以下であれば軟化溶融の効率が高くなるため好ましい。ここで、重合体ブロックβの合計の数平均分子量は、一般式(5)で表される重合体が単一の重合体ブロックβを含む場合は当該重合体ブロックβの数平均分子量を指し、複数の重合体ブロックβを含む場合、各重合体ブロックβの数平均分子量の総和を意味する。
また、一般式(5)で表される重合体の全数平均分子量Mnは、好ましくは3500以上であり、より好ましくは3500〜100000であり、さらに好ましくは3500〜70000であり、さらにより好ましくは3500〜50000であり、特に好ましくは5000〜50000である。一般式(5)で表される重合体の全数平均分子量が3500以上であれば、トナーとして用いたときに定着性に優れるトナー像がより容易に得られるため好ましい。また、全数平均分子量が100000以下であれば軟化溶融の効率が高くなるため好ましい。
したがって、本発明の好ましい一実施形態によれば、一般式(5)で表される重合体に含まれる重合体ブロックαの合計の数平均分子量が1000以上であり、重合体ブロックβの合計の数平均分子量が1000以上であり、前記一般式(5)で表される重合体の全数平均分子量Mnが3500以上である。
一般式(5)で表される重合体において、重合体ブロックαの合計の数平均分子量と重合体ブロックβの合計の数平均分子量との比は特に制限されないが、軟化溶融のしやすさおよび画像強度の観点から、重合体ブロックαの合計の数平均分子量:重合体ブロックβの合計の数平均分子量の比は、1:20〜20:1であることが好ましく、1:15〜15:1であることがより好ましい。
一般式(5)で表される重合体の全数平均分子量、重合体ブロックαおよびβの合計の数平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定することができる。具体的には、後述の実施例に記載の方法で測定することができる。
一般式(5)で表されるブロック共重合体の合成方法は特に制限されず、アニオン重合、カチオン重合、リビングラジカル重合などの公知の方法が用いられうる。中でも、簡便な合成方法として原子移動ラジカル重合法(ATRP法)、ARGET−ATRP法またはRAFT法といったリビングラジカル重合法が好適に用いられうる。
ATRP法を例にとれば、開始剤として、1官能、2官能、3官能、または4官能のハロゲン元素を含む化合物を出発物質にして、重合体ブロックαまたはβの構造単位となるモノマーを触媒下で重合させる、等の方法により行うことができる。
モノマーを重合する段階においては、例えば、開始剤、触媒および配位子の存在下で重合体ブロックαまたはβのいずれか一方(ブロック共重合体のコア部分となるブロック)の構造単位となるモノマーを重合してマクロ開始剤を製造する。
前記開始剤としては、例えば、2−ブロモイソ酪酸ブチル、2−ブロモイソ酪酸エチル、エチレンビス(2−ブロモイソブチレート)、1,1,1−トリス(2−ブロモイソブチリルオキシメチル)エタン、ペンタエリスリトールテトラキス(2−ブロモイソブチレート)、α,α’−ジブロモ−p−キシレン、ブロモ酢酸エチル、2−ブロモイソブチリルブロミドまたはこれらの混合物などを例示することができるが、これに限定されるものではない。
触媒としては銅(I)触媒、鉄(II)触媒などがあり、例えば、Cu(I)Cl、Cu(I)Br、Fe(II)Cl、Fe(II)Brまたはこれらの混合物などを例示することができる。
配位子としては公知のものを使用することができるが、2,2’−ビピリジル、4,4’−ジメチル−2,2’−ビピリジル、4,4’−ジ−tert−ブチル−2,2’−ビピリジル、1,1,4,7,10,10−ヘキサメチルトリエチレンテトラミン、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジエチレントリアミン、シクラム(1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカン)、1,4,8,11−テトラメチルシクラム(1,4,8,11−テトラメチル−1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカン)、トリス[2−(ジメチルアミノ)エチル]アミンなどからなる群より選ばれる1種類以上が好ましい。
上記触媒および配位子の使用量は特に制限されず、従来公知の知見を参照して適宜決定することができる。
次に、上記重合により得られたマクロ開始剤を単離して開始剤として用い、再び触媒および配位子の存在下で、重合体ブロックαまたはβの構造単位となるモノマーのうち、マクロ開始剤の合成で使用していない方のモノマーの重合を行う。もしくは、マクロ開始剤の合成でモノマーをほぼすべて消費した段階で、マクロ開始剤を単離せずそのまま、マクロ開始剤の合成で使用していない方のモノマーを追加して、重合を続けてもよい。これらの操作により目的とするブロック共重合体を得ることができる。
上記の各反応は、窒素、またはアルゴン等の希ガス類など不活性雰囲気で行うことが好ましい。上記の各反応は、例えば、25〜160℃、好ましくは35〜130℃の温度で実行することができる。また、上記の各反応は、溶媒を用いずに行ってもよく、有機溶媒などの溶媒中で行ってもよい。
なお、重合体ブロックαまたはβのいずれか一方の構造単位となるモノマーを重合してマクロ開始剤を得る反応と、該マクロ開始剤を他方の重合体ブロックの構造単位となるモノマーと反応させてブロック共重合体を得る反応において、使用する触媒や配位子の種類や使用量、反応時の温度などの条件は同一であっても異なるものであってもよい。
<光照射による流動化および可逆的な非流動化>
光照射により本発明の重合体が流動化する際の照射光の波長は、好ましくは280nm以上480nm以下の範囲、より好ましくは300nm以上420nm以下の範囲内、さらに好ましくは330nm以上420nm以下の範囲内である。上記範囲であれば結晶が崩れやすく(光溶融性が良く)なり、定着性がよくなる。また、流動化させる際には、光照射に加え、熱や圧力を加えて流動化を促進させてもよい。上記波長の照射光を照射することにより、熱や圧力を加える場合であっても、より少ない熱や圧力で流動化させることができる。そのため、本発明の重合体をトナーに導入することで、上記波長での定着が可能となり、定着性に優れ、かつ色再現性の高いトナーを得ることができる。
なお、上記波長範囲には、可視光の一部が含まれる。そのため、本発明の重合体は、太陽光(自然光)や蛍光灯などの照明による光を受けただけでは流動化せず、かつ出来るだけ照射量及び照射時間を抑えた低コスト条件でより流動化するのが望ましい。かかる観点から、上記重合体が流動化する際の照射光の照射条件としては、照射量は、好ましくは0.1J/cm以上200J/cm以下の範囲内、より好ましくは0.1J/cm以上100J/cm以下の範囲内、さらに好ましくは、0.1J/cm以上50J/cm以下の範囲内である。
重合体を流動化させる際に、光照射とともに、重合体を加熱してもよい。これにより、より低い照射量で流動化させることができる。この際の加熱温度としては、例えば、20℃以上200℃以下の範囲内であり、好ましくは20℃以上150℃以下の範囲内である。
一方、本発明の重合体を非流動化(再固化)する条件は、室温(25±15℃の範囲)で放置(自然環境下)が好ましい。この際は、暗所におくのが良いが、自然光や蛍光灯などの可視光を受けていてもよい。非流動化させる過程で、熱を加えるとより好ましい。また光を加えても良い。
前記重合体を加熱して非流動化させる場合、加熱温度としては、好ましくは0℃以上200℃以下の範囲内、より好ましくは20℃以上150℃以下の範囲内である。
[トナーの構成]
本発明の一実施形態は、本発明の重合体を含む、トナーである。本発明の重合体をトナーに導入することで、光照射により定着可能であり、定着性に優れ、色再現性の高いトナーを得ることができる。なお、トナーとは、トナー母体粒子またはトナー粒子の集合体をいう。トナー粒子とは、トナー母体粒子に外添剤を添加したものであることが好ましいが、トナー母体粒子をそのままトナー粒子として用いることもできる。なお、本発明において、トナー母体粒子、トナー粒子およびトナーを特に区別する必要がない場合、単に「トナー」ともいう。
トナー中の前記重合体の含有量は、一般式(1)におけるアゾメチン構造(B−Z=Z−B)や他の構造単位の種類によるが、効率的な流動化および画像強度の観点から、トナーを構成する結着樹脂、着色剤、離型剤、本発明の重合体の総量に対して、例えば5〜95質量%の範囲である。
<結着樹脂>
本発明のトナーは、結着樹脂をさらに含んでもよい。結着樹脂は、アゾメチン誘導体に由来する構造を有しない樹脂、すなわち、アゾメチン構造(B−Z=Z−B)を含まない樹脂であって、一般にトナーを構成する結着樹脂として用いられている樹脂を制限なく用いることができる。結着樹脂としては、たとえば、スチレン樹脂、アクリル樹脂、スチレンアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、オレフィン樹脂、アミド樹脂、およびエポキシ樹脂などが用いられうる。これら結着樹脂は、単独でもまたは2種以上組み合わせても用いることができる。
これらの中でも、溶融すると低粘度になり、かつ高いシャープメルト性を有するという観点から、結着樹脂は、スチレン樹脂、アクリル樹脂、スチレンアクリル樹脂、およびポリエステル樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、スチレンアクリル樹脂およびポリエステル樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含むことがより好ましい。
(スチレンアクリル樹脂)
本発明でいうスチレンアクリル樹脂とは、少なくとも、スチレン単量体に由来する構造単位と、(メタ)アクリル酸エステル単量体に由来する構造単位とを含む重合体である。ここで、スチレン単量体とは、CH=CH−Cの構造式で表されるスチレンの他、スチレン構造中に公知の側鎖や官能基を有する構造のものも含まれる。
スチレン単量体の例としては、前述の重合体を構成しうるスチレン単量体と同様のものが挙げられる。
また、(メタ)アクリル酸エステル単量体とは、エステル結合を有する官能基を側鎖に有するものである。具体的には、CH=CHCOOR(Rはアルキル基)で表されるアクリル酸エステル単量体の他、CH=C(CH)COOR(Rはアルキル基)で表されるメタクリル酸エステル単量体などのビニル系エステル化合物が含まれる。なお、(メタ)アクリル酸エステル単量体における(メタ)アクリル酸は、アクリル酸およびメタクリル酸を意味する。
(メタ)アクリル酸エステル単量体の例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
スチレン単量体および(メタ)アクリル酸エステル単量体は、それぞれ単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。
スチレンアクリル樹脂におけるスチレン単量体に由来する構造単位および(メタ)アクリル酸エステル単量体に由来する構造単位の含有量は、特に限定されず、結着樹脂の軟化点やガラス転移温度を制御する観点から適宜調整されうる。具体的には、スチレン単量体に由来する構造単位の含有量は、スチレンアクリル樹脂を構成する全構造単位に対して40〜95質量%であることが好ましく、50〜90質量%であることがより好ましい。また、(メタ)アクリル酸エステル単量体に由来する構造単位の含有量は、スチレンアクリル樹脂を構成する全構造単位に対して5〜60質量%であることが好ましく、10〜50質量%であることがより好ましい。
スチレンアクリル樹脂は、必要に応じて、スチレン単量体および(メタ)アクリル酸エステル単量体以外の他の単量体に由来する構造単位をさらに含んでもよい。他の単量体の例としては、ビニル単量体が挙げられる。以下に、本発明でいうスチレンアクリル共重合体を形成する際に併用可能なビニル単量体を例示するが、併用可能なビニル単量体は以下に示すものに限定されるものではない。
(1)オレフィン類
エチレン、プロピレン、イソブチレンなど
(2)ビニルエステル類
プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル、ベンゾエ酸ビニルなど
(3)ビニルエーテル類
ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテルなど
(4)ビニルケトン類
ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルヘキシルケトンなど
(5)N−ビニル化合物類
N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドンなど
(6)その他
ビニルナフタレン、ビニルピリジンなどのビニル化合物類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミドなどのアクリル酸あるいはメタクリル酸誘導体など。
また、多官能性ビニル単量体を使用して、架橋構造の樹脂を作製することも可能である。さらに、側鎖にイオン性解離基を有するビニル単量体を使用することも可能である。イオン性解離基の具体例としては、たとえば、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基などが挙げられる。以下に、これらイオン性解離基を有するビニル単量体の具体例を示す。
カルボキシル基を有するビニル単量体の具体例としては、たとえば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、ケイ皮酸、フマル酸、マレイン酸モノアルキルエステル、イタコン酸モノアルキルエステルなどが挙げられる。
本発明に使用されるスチレンアクリル樹脂を形成する場合、スチレン単量体および(メタ)アクリル酸エステル単量体の含有量は特に限定されるものではなく、結着樹脂の軟化点温度やガラス転移温度を制御する観点から適宜調整することが可能である。具体的には、スチレン単量体の含有量は、スチレンアクリル樹脂を構成する単量体全体に対し40〜95質量%が好ましく、50〜90質量%がより好ましい。また、(メタ)アクリル酸エステル単量体の含有量は、スチレンアクリル樹脂を構成する単量体全体に対し5〜60質量%が好ましく、10〜50質量%がより好ましい。
スチレンアクリル樹脂の形成方法は、特に制限されず、公知の油溶性あるいは水溶性の重合開始剤を使用して単量体を重合する方法が挙げられる。必要に応じてたとえば、n−オクチルメルカプタンなどの公知の連鎖移動剤を使用してもよい。油溶性の重合開始剤としては、たとえば、以下に示すアゾ系またはジアゾ系重合開始剤や過酸化物系重合開始剤が用いられる。
アゾ系またはジアゾ系重合開始剤としては、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリルなどが挙げられる。
過酸化物系重合開始剤としては、ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、クメンヒドロパーオキサイド、t−ブチルヒドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、2,2−ビス−(4,4−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、トリス−(t−ブチルパーオキシ)トリアジンなどが挙げられる。
また、乳化重合法でスチレンアクリル樹脂粒子を形成する場合は水溶性ラジカル重合開始剤が使用可能である。水溶性ラジカル重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩、アゾビスアミノジプロパン酢酸塩、アゾビスシアノ吉草酸およびその塩、過酸化水素などが挙げられる。
重合温度は、用いる単量体や重合開始剤の種類によっても異なるが、50〜100℃であることが好ましく、55〜90℃であることがより好ましい。また、重合時間は、用いる単量体や重合開始剤の種類によっても異なるが、たとえば2〜12時間であることが好ましい。
乳化重合法により形成されるスチレンアクリル樹脂粒子は、組成の異なる樹脂よりなる2層以上の構成とすることもできる。この場合の製造方法としては、常法に従った乳化重合処理(第1段重合)により調製した樹脂粒子の分散液に、重合開始剤と重合性単量体とを添加し、この系を重合処理(第2段、第3段重合)する多段重合法を採用することができる。
(ポリエステル樹脂)
ポリエステル樹脂は、2価以上のカルボン酸(多価カルボン酸成分)と、2価以上のアルコール(多価アルコール成分)との重縮合反応によって得られるポリエステル樹脂である。なお、ポリエステル樹脂は、非晶性であってもよいし、結晶性であってもよい。
多価カルボン酸成分および多価アルコール成分の価数は、好ましくはそれぞれ2〜3であり、より好ましくはそれぞれ2である。すなわち、多価カルボン酸成分は、ジカルボン酸成分を含むことが好ましく、多価アルコール成分は、ジアルコール成分を含むことが好ましい。
ジカルボン酸成分としては、たとえば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9−ノナンジカルボン酸、1,10−デカンジカルボン酸(ドデカン二酸)、1,11−ウンデカンジカルボン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸、1,13−トリデカンジカルボン酸、1,14−テトラデカンジカルボン酸、1,16−ヘキサデカンジカルボン酸、1,18−オクタデカンジカルボン酸などの飽和脂肪族ジカルボン酸;メチレンコハク酸、フマル酸、マレイン酸、3−ヘキセンジオイック酸、3−オクテンジオイック酸、ドデセニルコハク酸などの不飽和脂肪族ジカルボン酸;フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、t−ブチルイソフタル酸、テトラクロロフタル酸、クロロフタル酸、ニトロフタル酸、p−フェニレン二酢酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸などの不飽和芳香族ジカルボン酸;などが挙げられ、また、これらの低級アルキルエステルや酸無水物を用いることもできる。ジカルボン酸成分は、単独でもまたは2種以上混合して用いてもよい。
その他、トリメリット酸、ピロメリット酸などの3価以上の多価カルボン酸、およびその無水物、あるいは炭素数1〜3のアルキルエステルなども用いることができる。
ジオール成分としては、たとえば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,13−トリデカンジオール、1,14−テトラデカンジオール、1,18−オクタデカンジオール、1,20−エイコサンジオール、ネオペンチルグリコールなどの飽和脂肪族ジオール;2−ブテン−1,4−ジオール、3−ブテン−1,4−ジオール、2−ブチン−1,4−ジオール、3−ブチン−1,4−ジオール、9−オクタデセン−7,12−ジオールなどの不飽和脂肪族ジオール;ビスフェノールA、ビスフェノールFなどのビスフェノール類、およびこれらのエチレンオキサイド付加物、プロピレンオキサイド付加物などのビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物などの芳香族ジオールが挙げられ、また、これらの誘導体を用いることもできる。ジオール成分は、単独でもまたは2種以上混合して用いてもよい。
ポリエステル樹脂の製造方法は特に制限されず、公知のエステル化触媒を利用して、上記多価カルボン酸成分および多価アルコール成分を重縮合する(エステル化する)ことによりを製造することができる。
ポリエステル樹脂の製造の際に使用可能な触媒としては、ナトリウム、リチウムなどのアルカリ金属化合物;マグネシウム、カルシウムなどの第2族元素を含む化合物;アルミニウム、亜鉛、マンガン、アンチモン、チタン、スズ、ジルコニウム、ゲルマニウムなどの金属の化合物;亜リン酸化合物;リン酸化合物;およびアミン化合物などが挙げられる。具体的には、スズ化合物としては、酸化ジブチルスズ(ジブチル錫オキサイド)、オクチル酸スズ、ジオクチル酸スズ、これらの塩などを挙げることができる。チタン化合物としては、テトラノルマルブチルチタネート(Ti(O−n−Bu))、テトライソプロピルチタネート、テトラメチルチタネート、テトラステアリルチタネートなどのチタンアルコキシド;ポリヒドロキシチタンステアレートなどのチタンアシレート;チタンテトラアセチルアセトナート、チタンラクテート、チタントリエタノールアミネートなどなどのチタンキレートなどを挙げることができる。ゲルマニウム化合物としては、二酸化ゲルマニウムなどを挙げることができる。さらにアルミニウム化合物としては、ポリ水酸化アルミニウム、アルミニウムアルコキシド、トリブチルアルミネートなどを挙げることができる。これらは1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
重合温度は特に限定されるものではないが、70〜250℃であることが好ましい。また、重合時間も特に限定されるものではないが、0.5〜10時間であることが好ましい。重合中には、必要に応じて反応系内を減圧にしてもよい。
本発明のトナーが本発明の重合体に加えて結着樹脂を含む場合、前記重合体と結着樹脂との含有割合は特に制限されない。
トナーのガラス転移温度(Tg)は、定着性や耐熱保管性などの観点から、25〜100℃であることが好ましく、30〜80℃であることがより好ましい。トナーのガラス転移温度(Tg)は、重合体の分子量、アゾメチン構造を有する基を含む構造単位以外の構造単位を含む場合はその種類や含有量などによって調整することができる。トナーが結着樹脂を含む場合は、さらに上記重合体と結着樹脂との含有比率や、結着樹脂の種類、および分子量などによって調整することができる。
なお、本発明のトナーは、単層構造を有する粒子であってもよいし、コアシェル構造を有する粒子であってもよい。コアシェル構造のコア粒子およびシェル部に用いられる結着樹脂の種類は、特に制限されない。
<着色剤>
本発明のトナーは、着色剤をさらに含んでいてもよい。本発明の重合体は著しい着色がないため、着色剤の色再現性の高いトナーを得ることができる。着色剤としては、一般に知られている染料および顔料を用いることができる。
黒色のトナーを得るための着色剤としては、カーボンブラック、磁性体、鉄・チタン複合酸化物ブラックなどが挙げられ、カーボンブラックとしてはチャンネルブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラックが含まれる。また、磁性体としてはフェライト、マグネタイトなどが挙げられる。
イエローのトナーを得るための着色剤としては、C.I.ソルベントイエロー19、同44、同77、同79、同81、同82、同93、同98、同103、同104、同112、同162などの染料;C.I.ピグメントイエロー14、同17、同74、同93、同94、同138、同155、同180、同185などの顔料が挙げられる。
マゼンタのトナーを得るための着色剤としては、C.I.ソルベントレッド1、同49、同52、同58、同63、同111、同122などの染料;C.I.ピグメントレッド5、同48:1、同53:1、同57:1、同122、同139、同144、同149、同166、同177、同178、同222などの顔料が挙げられる。
シアンのトナーを得るための着色剤としては、C.I.ソルベントブルー25、同36、同60、同70、同93、同95などの染料;C.I.ピグメントブルー1、同7、同15、同15:3、同60、同62、同66、同76などの顔料が挙げられる。
各色のトナーを得るための着色剤は、各色について、1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
着色剤の含有量は、外添剤の添加前のトナー粒子(トナー母体粒子)中0.5〜20質量%であることが好ましく、2〜10質量%であることがより好ましい。
<離型剤>
本発明に係るトナーは、離型剤をさらに含んでもよい。離型剤をトナーに導入することで、光照射と共に熱定着を行う場合に、より定着性に優れ色再現性の高いトナーを得ることができる。
使用される離型剤は、特に限定されるものではなく、公知の種々のワックスを用いることができる。ワックスとしては、低分子量ポリプロピレン、ポリエチレン、または酸化型の低分子量ポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン、パラフィンワックス、合成エステルワックスなどが挙げられる。中でも、トナーの保存安定性を向上させる観点から、パラフィンワックスを用いることが好ましい。
離型剤の含有量は、トナー母体粒子中1〜30質量%であることが好ましく、3〜15質量%であることがより好ましい。
<荷電制御剤>
本発明に係るトナーは、荷電制御剤を含有してもよい。使用される荷電制御剤は、摩擦帯電により正または負の帯電を与えることのできる物質であり、かつ無色のものであれば特に限定されず、公知の種々の正帯電性の荷電制御剤および負帯電性の荷電制御剤を用いることができる。
荷電制御剤の含有量は、トナー母体粒子中0.01〜30質量%であることが好ましく、0.1〜10質量%であることがより好ましい。
<外添剤>
トナーの流動性、帯電性、クリーニング性等を改良するために、トナー母体粒子に、いわゆる後処理剤である流動化剤、クリーニング助剤等の外添剤を添加して本発明に係るトナーを構成してもよい。
外添剤としては、たとえば、シリカ粒子、アルミナ粒子、酸化チタン粒子などの無機酸化物粒子、ステアリン酸アルミニウム粒子、ステアリン酸亜鉛粒子などの無機ステアリン酸化合物粒子、チタン酸ストロンチウム粒子、チタン酸亜鉛粒子などの無機チタン酸化合物粒子などの無機粒子が挙げられる。必要に応じてこれらの無機粒子は疎水化処理されていてもよい。これらは単独でもまたは2種以上を組み合わせても用いることができる。
これらの中でも、外添剤としては、例えば、ゾルゲルシリカ粒子や、表面を疎水化処理したシリカ粒子(疎水性シリカ粒子)または酸化チタン粒子(疎水性酸化チタン粒子)が好ましく、これらのうち少なくとも2種以上の外添剤を使用することがより好ましい。
外添剤の数平均一次粒子径は、1〜200nmの範囲内であることが好ましく、10〜180nmであることがより好ましい。
これら外添剤の添加量は、トナー中0.05〜5質量%であることが好ましく、0.1〜3質量%であることがより好ましい。
<トナーの平均粒径>
トナーの平均粒径(およびトナー母体粒子の平均粒径)は、体積基準のメジアン径(D50)で4〜20μmであることが好ましく、5〜15μmであることがより好ましい。体積基準のメジアン径(D50)が上記範囲にあると、転写効率が高くなり、ハーフトーンの画質が向上し、細線やドット等の画質が向上する。
体積基準のメジアン径(D50)は、「コールターカウンター3」(ベックマン・コールター株式会社製)に、データ処理用ソフト「Software V3.51」を搭載したコンピューターシステム(ベックマン・コールター株式会社製)を接続した測定装置を用いて測定・算出することができる。
具体的には、測定試料(トナー、またはトナー母体粒子)0.02gを、界面活性剤溶液20mL(トナー粒子の分散を目的として、たとえば界面活性剤成分を含む中性洗剤を純水で10倍希釈した界面活性剤溶液)に添加して馴染ませた後、超音波分散を1分間行い、分散液を調製する。この分散液を、サンプルスタンド内の「ISOTONII」(ベックマン・コールター株式会社製)の入ったビーカーに、測定装置の表示濃度が8%になるまでピペットにて注入する。
ここで、表示濃度を上記値にすることで、再現性のある測定値を得ることができる。そして、測定装置において、測定粒子カウント数を25000個、アパーチャー径を50μmにし、測定範囲である1〜30μmの範囲を256分割して頻度値を算出し、体積積算分率の大きい方から50%の粒径を体積基準のメジアン径(D50)とする。
[トナーの製造方法]
本発明のトナーの製造方法は特に制限されない。例えば、本発明の重合体のみでトナーとする場合は、前記重合体を、ハンマーミル、フェザーミル、カウンタージェットミルなどの装置を用いて粉砕した後、スピンエアーシーブ、クラッシール、マイクロンクラッシファイアーなどの乾式分級機を用いて所望の粒径になるように分級することを含む製造方法を用いることができる。着色剤をさらに含むトナーを製造する場合は、本発明の重合体および着色剤がともに溶解する溶媒を用いて、前記重合体および着色剤を溶解させて溶液とした後、脱溶媒し、その後上記と同様の方法で、粉砕・分級することができる。
特には、本発明の重合体ならびに必要に応じて結着剤および着色剤を含むトナーは、粒径および形状の制御が容易な乳化凝集法を利用した製造方法により製造することが好ましい。
かような製造方法は、
(1A)必要に応じて、結着樹脂粒子の分散液を調製する結着樹脂粒子分散液調製工程 (1B)本発明の重合体の粒子の分散液を調製する重合体粒子分散液調製工程
(1C)必要に応じて、着色剤粒子の分散液を調製する着色剤粒子分散液調製工程
(2)重合体粒子、ならびに必要に応じて結着樹脂粒子および着色剤粒子が存在している水系媒体中に、凝集剤を添加し、塩析を進行させると同時に凝集および融着を行い、会合粒子を形成する会合工程
(3)会合粒子の形状制御をすることによりトナー母体粒子を形成する熟成工程
(4)水系媒体からトナー母体粒子を濾別し、当該トナー母体粒子から界面活性剤等を除去する濾過、洗浄工程
(5)洗浄処理されたトナー母体粒子を乾燥する乾燥工程
(6)乾燥処理されたトナー母体粒子に外添剤を添加する外添剤添加工程
の各工程を含むことが好ましい。
以下、(1A)〜(1C)の工程について説明する。
(1A)結着樹脂粒子分散液調製工程
本工程では、従来公知の乳化重合などにより樹脂粒子を形成し、この樹脂粒子を凝集、融着させて結着樹脂粒子を形成する。一例として、結着樹脂を構成する重合性単量体を水系媒体中へ投入、分散させ、重合開始剤によりこれら重合性単量体を重合させることにより、結着樹脂粒子の分散液を作製する。
また、結着樹脂粒子分散液を得る方法として、上記の水系媒体中で重合開始剤により重合性単量体を重合させる方法の他に、たとえば、溶媒を用いることなく、水性媒体中において分散処理を行う方法、あるいは結晶性樹脂を酢酸エチルなどの溶媒に溶解させて溶液とし、分散機を用いて当該溶液を水性媒体中に乳化分散させた後、脱溶媒処理を行う方法などが挙げられる。
この際、必要に応じ、結着樹脂には離型剤を予め含有させておいてもよい。また、分散のために、適宜公知の界面活性剤(たとえば、ポリオキシエチレン(2)ドデシルエーテル硫酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸などのアニオン系界面活性剤)の存在下で重合させることも好ましい。
分散液中の結着樹脂粒子の体積基準のメジアン径は、50〜300nmであることが好ましい。分散液中の結着樹脂粒子の体積基準のメジアン径は、「マイクロトラックUPA−150」(日機装株式会社製)を用いて動的光散乱法によって測定することができる。
(1B)重合体粒子分散液調製工程
この重合体粒子分散液調製工程は、本発明の重合体を、水系媒体中に微粒子状に分散させて、前記重合体の粒子の分散液を調製する工程である。
前記重合体の粒子の分散液を調製するにあたり、まず、前記重合体の乳化液を調製する。前記重合体の乳化液は、例えば有機溶媒に前記重合体を溶解させた後、得られた溶液を水系媒体中で乳化させる方法が挙げられる。
前記重合体を有機溶媒に溶解させる方法は、特に制限されず、たとえば、前記重合体を有機溶媒に添加して、前記重合体が溶解するように攪拌混合する方法が挙げられる。前記重合体の添加量は、有機溶媒100質量部に対して、好ましくは5質量部以上100質量部以下、より好ましくは10質量部以上50質量部以下である。
次に、得られた前記重合体の溶液と水系媒体とを混合し、ホモジナイザーなどの公知の分散機を用いて攪拌する。これにより、前記重合体が液滴となって、水系媒体中に乳化され、前記重合体の乳化液が調製される。
前記重合体の溶液の添加量は、水系媒体100質量部に対して、好ましくは10質量部以上110質量部以下である。
前記重合体の溶液と水系媒体との混合時における、前記重合体の溶液および水系媒体の温度は、それぞれ有機溶媒の沸点未満となる温度範囲であって、好ましくは20℃以上80℃以下、より好ましくは30℃以上75℃以下である。前記重合体の溶液と水系媒体の混合時における、前記重合体の溶液の温度と水系媒体の温度とは、互いに同一であっても異なっていてもよく、好ましくは互いに同一である。
分散機の攪拌条件は、例えば攪拌容器の容量が1〜3Lである場合、回転数は7000rpm以上20000rpm以下であることが好ましく、攪拌時間は10分以上30分以下であることが好ましい。
前記重合体の粒子の分散液は、前記重合体の乳化液から有機溶媒を除去することによって調製される。前記重合体の乳化液から有機溶媒を除去する方法としては、たとえば、送風、加熱、減圧、またはこれらの併用など、公知の方法が挙げられる。
一例として、前記重合体の乳化液は、たとえば、窒素などの不活性ガス雰囲気下において、好ましくは25℃以上90℃以下、より好ましくは30℃以上80℃以下で、たとえば初期の有機溶媒量の80質量%以上95質量%以下が程度が除去されるまで、加熱されることにより、有機溶媒が除去される。これにより、水系媒体から有機溶媒が除去されて、前記重合体の粒子が水系媒体中に分散された前記重合体の粒子の分散液が調製される。
前記重合体の粒子の分散液中の前記重合体の粒子の質量平均粒径は、90nm以上1200nm以下であることが好ましい。上記質量平均粒径は、前記重合体を有機溶媒に配合したときの粘度、前記重合体の溶液と水系媒体との配合割合、前記重合体の乳化液を調製するときの分散機の攪拌速度などを適宜調節することにより、上記範囲内に設定することができる。前記重合体の粒子の分散液中の前記重合体の粒子の質量平均粒径は、電気泳動光散乱光度計「ELS−800」(大塚電子株式会社製)を用いて測定することができる。
<有機溶媒>
本工程で用いられる有機溶媒は、前記重合体を溶解させることができれば、特に制限されず使用することができる。具体的には、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、ヘキサン、ヘプタンなどの飽和炭化水素類、ジクロロメタン、ジクロロエタン、四塩化炭素などのハロゲン化炭化水素類が挙げられる。
このような有機溶媒は、単独でもまたは2種以上混合しても用いることができる。これら有機溶媒の中でも、ケトン類、ハロゲン化炭化水素類が好ましく、メチルエチルケトン、ジクロロメタンがより好ましい。
<水系媒体>
本工程で用いられる水系媒体は、水、または水を主成分として、アルコール類、グリコール類などの水溶性溶媒や、界面活性剤、分散剤などの任意成分が配合されている水系媒体などが挙げられる。水系媒体は、好ましくは水と界面活性剤とを混合したものが用いられる。
界面活性剤としては、たとえば、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤などが挙げられる。カチオン性界面活性剤としては、たとえば、ドデシルアンモニウムクロライド、ドデシルアンモニウムブロマイド、ドデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、ドデシルピリジニウムクロライド、ドデシルピリジニウムブロマイド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイドなどが挙げられる。アニオン性界面活性剤としては、たとえば、ステアリン酸ナトリウム、ドデカン酸ナトリウムなどの脂肪酸石けん、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウムなどが挙げられる。また、ノニオン性界面活性剤としては、たとえば、ポリオキシエチレンドデシルエーテル、ポリオキシエチレンヘキサデシルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレアートエーテル、モノデカノイルショ糖などが挙げられる。
このような界面活性剤は、単独でもまたは2種以上組み合わせても用いることができる。界面活性剤の中では、好ましくはアニオン性界面活性剤、より好ましくはドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムが使用される。
界面活性剤の添加量は、水系媒体100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上10質量部以下、より好ましくは0.04質量部以上1質量部以下である。
(1C)着色剤粒子分散液調製工程
この着色剤粒子分散液調製工程は、着色剤を水系媒体中に微粒子状に分散させて着色剤粒子の分散液を調製する工程である。
着色剤の分散は、機械的エネルギーを利用して行うことができる。分散液中の着色剤粒子の個数基準のメジアン径は、10〜300nmであることが好ましく、50〜200nmであることがより好ましい。着色剤粒子の個数基準のメジアン径は、電気泳動光散乱光度計「ELS−800」(大塚電子株式会社製)を用いて測定することができる。
(2)会合工程から(6)外添剤添加工程までの工程については、従来公知の種々の方法に従って行うことができる。
なお、(2)会合工程において使用される凝集剤は、特に限定されるものではないが、金属塩から選択されるものが好適に使用される。金属塩としては、たとえばナトリウム、カリウム、リチウムなどのアルカリ金属の塩等の一価の金属塩;カルシウム、マグネシウム、マンガン、銅などの二価の金属塩;鉄、アルミニウムなどの三価の金属塩などが挙げられる。具体的な金属塩としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、硫酸銅、硫酸マグネシウム、硫酸マンガンなどを挙げることができ、これらの中で、より少量で凝集を進めることができることから、二価の金属塩を用いることが特に好ましい。これらは単独でもまたは2種以上組み合わせても用いることができる。
[現像剤]
本発明に係るトナーは、たとえば磁性体を含有させて一成分磁性トナーとして使用する場合、いわゆるキャリアと混合して二成分現像剤として使用する場合、非磁性トナーを単独で使用する場合などが考えられ、いずれも好適に使用することができる。
上記磁性体としては、たとえば、マグネタイト、γ−ヘマタイト、または各種フェライトなどを使用することができる。
二成分現像剤に含まれるキャリアとしては、鉄、鋼、ニッケル、コバルト、フェライト、マグネタイトなどの金属、それらの金属とアルミニウム、鉛などの金属との合金などの従来公知の材料からなる磁性粒子を用いることができる。
キャリアとしては、磁性粒子の表面を樹脂等の被覆剤で被覆したコートキャリアであってもよいし、バインダー樹脂中に磁性体粉末を分散させた樹脂分散型キャリアであってもよい。被覆用の樹脂としては、特に限定はないが、たとえば、オレフィン樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、スチレンアクリル樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂またはフッ素樹脂などが用いられる。また、樹脂分散型キャリア粒子を構成するための樹脂としては、特に限定されず公知のものを使用することができ、たとえば、アクリル樹脂、スチレンアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂などを使用することができる。
キャリアの体積基準のメジアン径は、20〜100μmであることが好ましく、25〜80μmであることがより好ましい。キャリアの体積基準のメジアン径は、代表的には湿式分散機を備えたレーザー回折式粒度分布測定装置「ヘロス(HELOS)」(シンパテック(SYMPATEC)社製)により測定することができる。
トナーの混合量は、トナーとキャリアとの合計質量を100質量%として、2〜10質量%であることが好ましい。
[画像形成方法]
本発明のトナーは、電子写真方式の公知の種々の画像形成方法において用いることができる。たとえば、モノクロの画像形成方法やフルカラーの画像形成方法に用いることができる。フルカラーの画像形成方法では、イエロー、マゼンタ、シアン、およびブラックの各々に係る4種類のカラー現像装置と、1つの感光体とにより構成される4サイクル方式の画像形成方法や、各色に係るカラー現像装置および感光体を有する画像形成ユニットを、それぞれ色別に搭載するタンデム方式の画像形成方法など、いずれの画像形成方法にも適用することができる。
すなわち、本発明の一実施形態による画像形成方法は、1)記録媒体上に本発明のトナーからなるトナー像を形成する工程と、2)前記トナー像に光を照射して、前記トナー像を軟化させる工程とを含む。
1)の工程について
本工程では、本発明のトナーからなるトナー像を、記録媒体上に形成する。
(記録媒体)
記録媒体は、トナー画像を保持するための部材である。記録媒体の例としては、普通紙、上質紙、アート紙、コート紙などの塗工された印刷用紙、市販の和紙やはがき用紙、OHP用または包装材用の樹脂フィルム、および布などが挙げられる。
記録媒体は、所定の大きさを有するシート状(枚葉状)であってもよいし、トナー像が定着された後にロール状に巻き取られる長尺状であってもよい。
トナー像の形成は、後述するように、例えば感光体上のトナー像を記録媒体上に転写することにより行うことができる。
2)の工程について
本工程では、形成されたトナー像に光を照射してトナー像を軟化させる。これにより記録媒体上にトナー像を接着させることができる。光照射とともに加熱をさらに行ってもよい。
照射する光の波長は、トナー中の前記重合体による光熱変換などにより、トナー像を十分に軟化させうる程度であれば特に制限されないが、好ましくは280nm以上480nm以下である。上記範囲であればトナー像をより効率的に軟化させることができる。また、光の照射量は、同様の観点から、好ましくは0.1〜200J/cm、より好ましくは0.1〜100J/cm、さらに好ましくは0.1〜50J/cmである。
光の照射は、後述するように、例えば発光ダイオード(LED)やレーザー光源などの光源を用いて行うことができる。
2)の工程の後、必要に応じて、3)軟化させたトナー像を加圧する工程をさらに行ってもよい。
3)の工程について
本工程では、軟化させたトナー像を加圧する。
記録媒体上のトナー像を加圧する際の圧力は、特に限定されないが、0.01〜5.0MPaであることが好ましく、0.05〜1.0MPaであることがより好ましい。圧力を0.01MPa以上とすることで、トナー像の変形量を大きくしうるため、トナー像と記録用紙Sとの接触面積が増加し、画像の定着性をさらに高めやすい。また、圧力を5.0MPa以下とすることで、加圧時のショックノイズを抑制できる。
当該加圧工程は、光照射し、トナー像を軟化させる工程(前述の2)の工程)の前または同時に行ってもよいが、光照射した後に行うほうが、あらかじめ軟化した状態のトナー像に加圧することができ、この結果、画像の定着性がより向上するため好ましい。
また、加圧する工程において、軟化させたトナー像をさらに加熱してもよい。すなわち、加圧工程は、トナー像を加熱しながら行ってもよい。
トナー像の加熱温度(加熱時のトナー像の表面温度)は、トナーのガラス転移温度をTgとしたとき、(Tg+20)〜(Tg+100)℃であることが好ましく、(Tg+25)〜(Tg+80)℃であることがより好ましい。トナー像の表面温度が(Tg+20)℃以上であれば、加圧によってトナー像を変形させやすく、(Tg+100)℃以下であれば、ホットオフセットを抑制しやすい。なお、ホットオフセットとは、定着工程において、ローラーなどの加圧部材にトナーの一部が転移してしまい、トナー層が分断してしまう現象をいう。
また、2)の工程の前に、必要に応じて4)予めトナー像を加熱する工程をさらに行ってもよい。このように、2)の工程の前に4)予めトナー像を加熱する工程をさらに行うことで、本発明の重合体の光に対する感受性をより高めることができる。それにより、高分子であっても光に対する感受性は損なわれにくいため、光照射によるトナー像の溶融または軟化を促進しやすい。
本発明の画像形成方法は、例えば以下の画像形成装置を用いることにより行うことができる。
図1は、本発明の一実施形態による画像形成方法で用いられる画像形成装置100を示す概略構成図である。ただし、本発明に用いられる画像形成装置としては、下記の形態および図示例に限定されるものではない。図1には、モノクロの画像形成装置100の例を示すが、カラーの画像形成装置にも本発明を適用することができる。
画像形成装置100は、記録媒体としての記録用紙Sに画像を形成する装置であって、画像読取装置71および自動原稿送り装置72を備え、用紙搬送系7により搬送される記録用紙Sに対し画像形成部10、照射部40、および圧着部9により画像形成を行う。
また、記録媒体として、画像形成装置100では記録用紙Sを用いているが、画像形成を行う対象とされる媒体は、用紙以外でもよい。
自動原稿送り装置72の原稿台上に載置された原稿dは、画像読取装置71の走査露光装置の光学系により走査露光されてイメージセンサーCCDに読み込まれる。イメージセンサーCCDにより光電変換されたアナログ信号は、画像処理部20において、アナログ処理、A/D変換、シェーディング補正、画像圧縮処理等が行われた後、画像形成部10の露光器3に入力される。
用紙搬送系7は、複数のトレイ16、複数の給紙部11、搬送ローラー12、搬送ベルト13等を備えている。トレイ16は、決められたサイズの記録用紙Sをそれぞれ収容しており、制御部90からの指示に応じて定められたトレイ16の給紙部11を作動させ、記録用紙Sを供給する。搬送ローラー12は、給紙部11によってトレイ16から送り出された記録用紙Sまたは手差し給紙部15から搬入された記録用紙Sを画像形成部10へ搬送する。
画像形成部10は、感光体1の周りに、感光体1の回転方向に沿って、帯電器2、露光器3、現像部4、転写部5およびクリーニング部8がこの順番に配置されて構成されている。
像担持体である感光体1は、表面に光導電層の形成された像担持体であり、図示しない駆動装置により図1中の矢印方向に回転可能に構成されている。感光体1の近傍には、画像形成装置100内の温度や湿度を検知する温湿度計17が設けられている。
帯電器2は、感光体1の表面に均一に電荷を与え、感光体1の表面を一様に帯電させる。露光器3は、レーザーダイオード等のビーム発光源を備え、帯電された感光体1の表面にビーム光を照射することで照射部分の電荷を消失させ、感光体1上に画像データに応じた静電潜像を形成する。現像部4は、内部に収容されるトナーを感光体1に供給して、感光体1表面上に静電潜像に基づくトナー像を作像する。
転写部5は、記録用紙Sを介して感光体1と対向し、トナー像を記録用紙Sに転写する。クリーニング部8は、ブレード85を備える。ブレード85により、感光体1表面をクリーニングして感光体1の表面に残留した現像剤を除去する。
トナー像が転写された記録用紙Sは、搬送ベルト13により圧着部9へ搬送される。圧着部9は、任意に設置されるものであり、トナー像が転写された記録用紙Sに対し、加圧部材91および92によって圧力のみまたは熱および圧力を加えて定着処理を施し、これにより記録用紙S上に画像を定着させる。画像が定着された記録用紙Sは、搬送ローラーによって排紙部14に搬送され、排紙部14から機外へ排出される。
また、画像形成装置100は用紙反転部24を備えており、加熱定着処理がなされた記録用紙Sを排紙部14の手前で用紙反転部24に搬送し、表裏を反転して排出するか、または表裏を反転した記録用紙Sを再度画像形成部10に搬送し記録用紙Sの両面に画像形成を行うことを可能としている。
<照射部>
図2は、画像形成装置100における照射部40の概略構成図である。
本発明の一実施形態による画像形成装置100は、照射部40を備える。照射部40は、記録用紙S上に形成されたトナー像に光を照射する。照射部40を構成する装置の例としては、発光ダイオード(LED)、レーザー光源などが挙げられる。
照射部40は、記録媒体上に形成されたトナー像に光を照射して、トナー像を軟化させる。光照射の条件は、現像剤のトナーに含まれる本発明の重合体を溶融、流動化させるものであれば特に制限されない。トナー像に照射する光の波長は、前記重合体を十分に流動化させうる程度であればよく、好ましくは280nm以上480nm以下の範囲内、より好ましくは300nm以上420nm以下の範囲内、さらに好ましくは330nm以上420nm以下の範囲内である。照射部における光の照射量も、十分に流動化させうる程度であればよく、例えば0.1J/cm以上200J/cm以下の範囲内、好ましくは0.1J/cm以上100J/cm以下の範囲内、より好ましくは、0.1J/cm以上50J/cm以下の範囲内である。
照射部40によりトナー像に光を照射してトナー像を軟化させる際に、光照射とともに、加熱部材(図示せず)によりトナー像を加熱してもよい。これにより、より効率的にトナー像の軟化、溶融が進行しうる。この際の加熱温度としては、例えば、20℃以上200℃以下の範囲内であり、好ましくは20℃以上150℃以下の範囲内である。
軟化した前記トナー像に対して、室温(25±15℃の範囲)で放置する、加熱する、または可視光照射することで、前記トナー像を固化させ記録媒体に定着させることができる。なお、後述のように、定着させる工程においては、軟化した前記トナー像を加圧する工程をさらに含むことが好ましい。前記加圧する工程では、軟化した前記トナー像をさらに加熱することが好ましい。
照射部40はトナー像を保持する記録用紙Sにおける感光体側の第1面に向かって光を照射するものであり、感光体1と転写部(転写ローラー)5とにニップされた記録用紙S面に対して感光体側に配置されている。
照射部40は、感光体1と転写部5とのニップ位置に対して、用紙搬送方向下流側、かつ圧着部9に対して用紙搬送方向上流側に配置されている。
本発明の一実施形態による画像形成方法によれば、帯電器2により感光体1に一様な電位を付与して帯電させた後、原画像データに基づいて露光器3により照射した光束で感光体1上を走査し、静電潜像を形成する。次に現像部4により本発明のトナーを含む現像剤を感光体1上に供給する。
感光体1の表面に担持されたトナー像が、感光体1の回転によって転写部5の位置に至るタイミングに合わせて、トレイ16から記録用紙Sを画像形成部10に搬送すると、転写部5に印加される転写バイアスにより、感光体1上のトナー像が、転写部5と感光体1とにニップされた記録用紙S上に転写される。
また、転写部5は、加圧部材を兼ねており、感光体1から記録用紙Sにトナー像を転写させることができながら、トナー像に含まれる前記重合体を確実に記録用紙Sに密着させることができる。
トナー像が記録用紙Sに転写された後に、クリーニング部8のブレード85は、感光体1表面に残留する現像剤を除去する。
トナー像が転写された記録用紙Sが搬送ベルト13により圧着部9に搬送される過程において、照射部40は、記録用紙S上に転写されたトナー像に対して光を照射する。照射部40により記録用紙Sの第1面上のトナー像に向かって光を照射することにより、トナー像をより確実に溶融させることができ、トナー像の記録用紙Sに対する定着性を向上させることができる。
トナー像が保持された記録用紙Sが、搬送ベルト13により圧着部9に至ると、加圧部材91および92が、トナー像を記録用紙Sの第1面に圧着する。圧着部9により定着処理が施される前に、トナー像が照射部40による光照射により軟化するため、記録用紙Sに対する画像圧着の省エネルギー化を図ることができる。
トナー像を加圧する際の圧力は、前述の通りである。なお、該加圧工程は、光を照射して、トナー像を軟化させる工程の前または同時に行ってもよい、後に行ってもよい。あらかじめ軟化した状態のトナー像に加圧することができ、画像強度を高めやすい観点では、加圧工程は、光照射後に行うほうが好ましい。
また、加圧部材91は、記録用紙Sが加圧部材91および92の間を通過する際に、記録用紙S上のトナー像を加熱することができる。光照射によって軟化したトナー像は、この加熱によりさらに軟化され、その結果、トナー像の記録用紙Sへの定着性がより向上する。
トナー像の加熱温度は、前述の通りである。トナー像の加熱温度(トナー像の表面温度)は、非接触温度センサーにて測定することができる。具体的には、たとえば、加圧部材から記録媒体が排出される位置に非接触温度センサーを設置して、記録媒体上のトナー像の表面温度を測定すればよい。
加圧部材91および92によって圧着されたトナー像は、固化されて記録用紙S上に定着される。
(光応答性接着剤)
本発明の重合体は光照射により流動化し、可逆的に非流動化するため、本発明の重合体を用いて繰り返しの利用が可能な光応答性接着剤(感光性接着剤)を作製することができる。例えば、粘度(摩擦係数)の変化に対応して、繰り返しの光脱着可能な光応答性接着剤として各種の接着技術に応用することが可能である。すなわち、本発明の一実施形態は、本発明の重合体を含む、光応答性接着剤である。
本発明の光応答性接着剤は、繰り返しの利用が可能な仮止めに使えるほか、リサイクル利用にも適しているが、これらに何ら制限されるものではない。
(光スイッチング材料)
本発明の重合体は光照射により流動化し、可逆的に非流動化するため、本発明の重合体を用いて光スイッチング材料を作製することができる。例えば、光異性化に伴う色や極性の変化、物質移動、配向の変化、粘度の変化、表面張力の変化を利用して光スイッチング材料を作製することができる。例えば、液晶材料などにおいて、光異性化に伴う分子の配向の変化に対応して、繰り返しの書き換えが可能なパターニング描画に応用することが可能である。また、例えば、光照射に伴う表面張力の変化やこれによる物質移動を利用して、高分子膜の表面の微細加工を行うことができる。すなわち、本発明の一実施形態は、本発明の重合体を含む、光スイッチング材料である。
本発明の光スイッチング材料は、液晶ディスプレイ材料や、高分子膜の表面加工に使用できるが、これらに何ら制限されるものではない。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[実施例4]
<アゾメチン誘導体モノマー6の合成>
100mlの4頭フラスコに、4−アミノフェノール(5g、0.046mol)と5−メチルチオフェン−2−カルボキシアルデヒド(5.8g、0.046mol)とエタノール100mlとを投入し、加熱攪拌した。反応液を吸引ろ過し、得られた粉末を冷却エタノールで洗浄した。さらに、メタノール/エタノールで再結晶を行い、目的物1を得た。
Figure 2021091862
次いで、200mlの4頭フラスコにおいて、上記で得られた目的物1(5g、0.023mol)を、ジメチルホルムアミド(DMF)25mlに溶解させた。これに、炭酸カリウム4.88g(0.035mol)を加え、30℃に保ちながら撹拌した。これに、ヨウ化カリウム10.2mg(0.06mmol)、6−クロロ−1−ヘキサノール(3.54g、0.026mol)を添加し、110℃で反応させた。これを、室温まで冷却し、650gの氷に添加した後、ろ過した。結晶を水400mlに分散させ、一晩攪拌して洗浄し、ろ過して乾燥させた。さらに、エタノールにて再結晶を行い、目的物2を得た。
Figure 2021091862
次に、100mlの4頭フラスコに、上記で得られた目的物2(3g、0.001mol)、トリエチルアミン1.34ml(0.001mol)およびジクロロメタン30mlを投入した。この時、原料は分散状態であった。内温を0℃に保ちながら、アクリル酸クロライド1.04g(0.011mol)をジクロロメタン10mlに溶かした溶液を、内温を0〜5℃を保ちながら滴下した。滴下していくと、原料は溶解した。
滴下終了後、反応液を室温に戻して攪拌を行った。反応終了後、ジクロロメタンを濃縮して除去し、酢酸エチルに溶解して、希塩酸、炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水にて洗浄し、有機層を硫酸マグネシウムにて乾燥させた後、濃縮した。得られたオレンジ色の結晶をシリカゲルカラム(酢酸エチル/へプタン=1/5)にて精製し、下記表1において構造単位6を有するアゾメチン誘導体モノマー6を得た。
Figure 2021091862
<重合体4の合成>
100mlの4頭フラスコにおいて、上記で得られたアゾメチン誘導体モノマー6を1.5g(4.04mmоl)、4−シアノペンタン酸ジチオベンゾアートを5mg(0.023mmоl)およびAIBN1mg(0.006mmоl)を、アニソール4mlに溶解させた。そして、凍結脱気によりアルゴンガス雰囲気にした後、75℃に昇温し、攪拌することで重合させた。得られたポリマー溶液に、メタノール40mlを徐々に滴下した後、THFを加えて、未反応のアゾメチン誘導体モノマー6を除去した。分取したポリマー溶液は、40℃の真空乾燥炉内にて24時間乾燥させて、重合体4を得た。得られた重合体4の数平均分子量MnをGPC法で測定したところ7300であった。
Figure 2021091862
<重合体粒子分散液4の調製>
ジクロロメタン80質量部と、上記で得られた重合体4を20質量部とを、50℃で加熱しながら混合攪拌し、重合体4を含む溶液を得た。得られた溶液100質量部に、50℃に温めた蒸留水99.5質量部と、20質量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液0.5質量部との混合液を添加した。その後、シャフトジェネレーター18Fを備えるホモジナイザー(ハイドルフ社製)により16000rpmで20分間攪拌して乳化させ、重合体4の乳化液を得た。
得られた乳化液をセパラブルフラスコへ投入し、窒素を気相中へ送気しながら40℃で90分間加熱攪拌して有機溶媒を除去して、重合体粒子分散液4を得た。重合体粒子分散液4中の重合体粒子の粒径を、電気泳動光散乱光度計「ELS−800」(大塚電子株式会社製)を用いて測定したところ、質量平均粒径で155nmであった。
(ブラック着色剤粒子分散液(Bk−1)の調製)
n−ドデシル硫酸ナトリウム11.5質量部を純水160質量部に溶解し、カーボンブラック「モーガルL(キャボット社製)」25質量部を徐々に添加し、次いで、「クレアミックス(登録商標)WモーションCLM−0.8(エム・テクニック株式会社製)」を用いて分散処理することにより、ブラック着色剤粒子分散液(Bk−1)を調製した。ブラック着色剤粒子分散液(Bk−1)における着色剤粒子の体積基準のメジアン径は、110nmであった。
<トナー4の作製>
上記で作製した重合体粒子分散液4を固形分換算で602質量部、ブラック着色剤粒子分散液(Bk−1)を固形分換算で52質量部、およびイオン交換水900質量部を、攪拌装置、温度センサー、および冷却管を装着した反応装置に投入した。容器内の温度を30℃に保持して、5モル/リットルの水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを10に調整した。
次に、塩化マグネシウム・6水和物2質量部をイオン交換水1000質量部に溶解した水溶液を攪拌下、10分間かけて滴下した後、昇温を開始し、この系を60分間かけて70℃まで昇温し、70℃を保持したまま粒子成長反応を継続した。この状態で「マルチサイザー3」(ベックマン・コールター株式会社製)にて会合粒子の粒径を測定し、体積基準のメジアン径(D50)が6.5μmになった時点で、塩化ナトリウム190質量部をイオン交換水760質量部に溶解した水溶液を添加して粒子成長を停止させた。70℃で1時間攪拌した後、さらに昇温を行い、75℃の状態で加熱攪拌することにより、粒子の融着を進行させた。その後、30℃まで冷却することにより、トナー母体粒子の分散液を得た。
得られたトナー母体粒子の分散液を、遠心分離機で固液分離し、トナー母体粒子のウェットケーキを形成した。該ウェットケーキを、遠心分離機で濾液の電気伝導度が5μS/cmになるまで35℃のイオン交換水で洗浄し、その後「フラッシュジェットドライヤー(株式会社セイシン企業製)」に移し、水分量が0.5質量%になるまで乾燥して、トナー母体粒子を作製した。
得られたトナー母体粒子100質量%に対して、疎水性シリカ(数平均一次粒径:12nm)1質量%、および疎水性チタニア(数平均一次粒径:20nm)0.3質量%を添加し、ヘンシェルミキサー(登録商標)を用いて混合することにより、トナー4を得た。
[実施例1〜3、5〜19]
それぞれ対応する原料を用い、上記実施例4と同様の手法を用いて、下記表1に示す構造単位1、2、3、7、8、10、12、14、15、16、17、19、22、24、28、32、34を有するアゾメチン誘導体モノマー1、2、3、7、8、10、12、14、15、16、17、19、22、24、28、32、34をそれぞれ合成した。次いで、実施例4においてアゾメチン誘導体モノマー6に代えて上記のアゾメチン誘導体モノマー1、2、3、7、8、10、12、14、15、16、17、19、22、24、28、32、34を用いたこと以外は同様の方法で、下記表2に示す重合体1〜3、5〜19を得た。次いで、重合体4に代えて重合体1〜3、5〜19を用いたことを除いては実施例4と同様の方法でトナー1〜3、5〜19をそれぞれ作製した。ただし、アゾメチン誘導体モノマー1、2、3、7、8、10、12、14、15、16、17、19、22、24、28、32、34ならびに重合体1〜3、5〜19の調製においては各原料の添加量や反応条件は適宜調整した。
なお、重合体19は、重合体12と同様の原料を用い、重合時間を適宜調節することで、重合体12と同じ構造単位を有し、数平均分子量の異なる重合体とした。
[実施例20]
実施例12の重合体12の合成において、アゾメチン誘導体モノマー17を1.5gから1.2gに変更し、スチレンを0.3g加えたこと以外は同様にして重合体20を得た。重合体12に代えて重合体20を用いたこと以外は実施例12と同様にトナー20を作製した。
[実施例21]
実施例20の重合体20の合成において、スチレンをエチルアクリレートに変更したこと以外は同様にして重合体21を得た。重合体20に代えて重合体21を用いたこと以外は実施例20と同様にトナー21を作製した。
[実施例22]
実施例20の重合体20の合成において、スチレンをn−ブチルメタクリレートに変更したこと以外は同様にして重合体22を得た。重合体20に代えて重合体22を用いたこと以外は実施例20と同様にトナー22を作製した。
[実施例23]
実施例20の重合体20の合成において、スチレンを0.3gから0.15gに変更し、メチルアクリレートを0.15g加えたこと以外は同様に重合体23を得た。重合体20に代えて重合体23を用いたこと以外は実施例20と同様にトナー23を作製した。
[実施例24]
<マクロ開始剤24の合成>
100mlのナスフラスコにおいて、2,2’−ビピリジル(230mg、1.47mmol)を入れ、窒素雰囲気下のグローブボックス内でさらにCu(I)Br(95mg、0.66mmol)、スチレン(15g、144mmol)、2−ブロモイソ酪酸エチル(35mg、0.18mmol)を加えて密閉した。これを100℃のオイルバスで加熱攪拌した。その後、テトラヒドロフランを適量加え、中性アルミナカラムに通した。これをメタノールで再沈殿・遠心分離して精製し、マクロ開始剤24を得た。得られたマクロ開始剤24の数平均分子量(β Mn)をGPC法で測定したところ1000であった。
<重合体24の合成>
100mlのナスフラスコにおいて、上記で得られたアゾメチン誘導体モノマー17(16g、38mmol)、および上記のマクロ開始剤24(0.92g、0.18mmol)を入れ、窒素雰囲気下のグローブボックス内でさらにCu(I)Cl(29mg、0.29mmol)、1,1,4,7,10,10−ヘキサメチルトリエチレンテトラミン(136mg、0.59mmol)、溶媒としてのアニソール(4.9g、41.1mmol)を加えて密閉した。そして、80℃のオイルバスで加熱攪拌した。その後、クロロホルムを適量加え、塩基性アルミナカラムに通した。これをメタノールで再沈殿・遠心分離して精製し、重合体24を得た。得られた重合体24の全数平均分子量MnをGPC法で測定したところ5400であった。これより、アゾメチン構造を有する基を含む構造単位(アゾメチン誘導体に由来する構造単位)の数平均分子量(α Mn)を4400と求められる。
重合体1に代えて重合体24を用いたこと以外は実施例1と同様にトナー24を作製した。
[実施例25]
<マクロ開始剤25の合成>
マクロ開始剤24の合成において、2−ブロモイソ酪酸エチルをα,α’−ジブロモ−p−キシレンに変更した以外は同様な方法でマクロ開始剤25を得た。
<重合体25の合成>
重合体24の合成において、マクロ開始剤24をマクロ開始剤25に変更した以外は同様な方法で重合体25を得た。
ただし、マクロ開始剤25、および後述のマクロ開始剤26〜35、ならびに重合体25および後述の重合体26〜35の調製においては各原料の添加量や反応条件は適宜調整した。
次いで、重合体1に代えて重合体25を用いたこと以外は実施例1と同様にトナー25を作製した。
[実施例26]
<マクロ開始剤26の合成>
マクロ開始剤24の合成において、2−ブロモイソ酪酸エチルをエチレンビス(2−ブロモイソ酪酸)(ethylene bis(2−bromoisobutyrate))に変更し、2,2’−ビピリジルを1,1,4,7,10,10−ヘキサメチルトリエチレンテトラミンに変更し、スチレンをアゾメチン誘導体モノマー17に変更し、さらにアニソールを加えた以外は同様な方法でマクロ開始剤26を得た。
<重合体26の合成>
重合体24の合成において、マクロ開始剤24をマクロ開始剤26に変更し、1,1,4,7,10,10−ヘキサメチルトリエチレンテトラミンを2,2’−ビピリジルに変更し、アゾメチン誘導体モノマー17をスチレンに変更し、アニソールを除いたこと以外は同様な方法で重合体26を得た。
次いで、重合体1に代えて重合体26を用いたこと以外は実施例1と同様にトナー26を作製した。
[実施例27]
<マクロ開始剤27の合成>
マクロ開始剤24の合成において、2−ブロモイソ酪酸エチルを1,1,1−トリス(2−ブロモイソブチリルオキシメチル)エタンに変更した以外は同様な方法でマクロ開始剤27を得た。
<重合体27の合成>
重合体24の合成において、マクロ開始剤24をマクロ開始剤27に変更した以外は同様な方法で重合体27を得た。
次いで、重合体1に代えて重合体27を用いたこと以外は実施例1と同様にトナー27を作製した。
[実施例28]
<マクロ開始剤28の合成>
マクロ開始剤26の合成において、エチレンビス(2−ブロモイソ酪酸)を1,1,1−トリス(2−ブロモイソブチリルオキシメチル)エタンに変更した以外は同様な方法でマクロ開始剤28を得た。
<重合体28の合成>
重合体26の合成において、マクロ開始剤26をマクロ開始剤28に変更した以外は同様な方法で重合体28を得た。
次いで、重合体1に代えて重合体28を用いたこと以外は実施例1と同様にトナー28を作製した。
[実施例29]
<マクロ開始剤29の合成>
マクロ開始剤24の合成において、2−ブロモイソ酪酸エチルをペンタエリスリトールテトラキス(2−ブロモイソブチレート)に変更した以外は同様な方法でマクロ開始剤29を得た。
<重合体29の合成>
重合体24の合成において、マクロ開始剤24をマクロ開始剤29に変更した以外は同様な方法で重合体29を得た。
次いで、重合体1に代えて重合体29を用いたこと以外は実施例1と同様にトナー29を作製した。
[実施例30]
<マクロ開始剤30の合成>
マクロ開始剤26の合成において、エチレンビス(2−ブロモイソ酪酸)をペンタエリスリトールテトラキス(2−ブロモイソブチレート)に変更した以外は同様な方法でマクロ開始剤30を得た。
<重合体30の合成>
重合体26の合成において、マクロ開始剤26をマクロ開始剤30に変更した以外は同様な方法で重合体30を得た。
次いで、重合体1に代えて重合体30を用いたこと以外は実施例1と同様にトナー30を作製した。
[実施例31]
<マクロ開始剤31の合成>
マクロ開始剤24の合成において、100℃のオイルバスで加熱攪拌する時間を適宜調節することで、マクロ開始剤24と同様の構造で数平均分子量(β Mn)が5000であるマクロ開始剤31を得た。
<重合体31の合成>
重合体24の合成において、80℃のオイルバスで加熱攪拌する時間を適宜調節することで、重合体24と同様の構造単位から構成され、全数平均分子量Mnが5500である重合体31を得た。重合体31において、アゾメチン構造を有する基を含む構造単位(アゾメチン誘導体に由来する構造単位)の数平均分子量(α Mn)は500であった。
次いで、重合体1に代えて重合体31を用いたこと以外は実施例1と同様にトナー31を作製した。
[実施例32]
<マクロ開始剤32の合成>
マクロ開始剤25の合成において、スチレンをメチルアクリレートに変更した以外は同様な方法でマクロ開始剤32を得た。
<重合体32の合成>
重合体25の合成において、マクロ開始剤25をマクロ開始剤32に変更した以外は同様な方法で重合体32を得た。
次いで、重合体1に代えて重合体32を用いたこと以外は実施例1と同様にトナー32を作製した。
[実施例33]
<マクロ開始剤33の合成>
マクロ開始剤25の合成において、スチレンをn−へキシルメタクリレートに変更した以外は同様な方法でマクロ開始剤33を得た。
<重合体33の合成>
重合体25の合成において、マクロ開始剤25をマクロ開始剤33に変更した以外は同様な方法で重合体33を得た。
次いで、重合体1に代えて重合体33を用いたこと以外は実施例1と同様にトナー33を作製した。
[実施例34]
<マクロ開始剤34の合成>
マクロ開始剤25の合成において、スチレンを3−メチル−1−ペンテンに変更した以外は同様な方法でマクロ開始剤34を得た。
<重合体34の合成>
重合体25の合成において、マクロ開始剤25をマクロ開始剤34に変更した以外は同様な方法で重合体34を得た。
次いで、重合体1に代えて重合体34を用いたこと以外は実施例1と同様にトナー34を作製した。
[実施例35]
<マクロ開始剤35の合成>
マクロ開始剤25の合成において、スチレンを、スチレン:メチルアクリレートのモル比が5:5となる混合物に変更したこと以外は同様な方法でマクロ開始剤35を得た。
<重合体35の合成>
重合体25の合成において、マクロ開始剤25をマクロ開始剤35に変更した以外は同様な方法で重合体35を得た。
次いで、重合体1に代えて重合体35を用いたこと以外は実施例1と同様にトナー35を作製した。
[実施例36]
トナー12の作製において、重合体粒子分散液12を固形分換算で602質量部から421質量部に変更し、以下のスチレンアクリル樹脂粒子分散液を固形分換算で181質量部添加した以外は同様な方法でトナー36を得た。
<スチレンアクリル樹脂粒子分散液の調製>
(第1段重合)
攪拌装置、温度センサー、冷却管、および窒素導入装置を取り付けた反応容器に、ドデシル硫酸ナトリウム8質量部をイオン交換水3000質量部に溶解させた溶液を仕込み、窒素気流下230rpmの攪拌速度で攪拌しながら、内温を80℃に昇温させた。昇温後、過硫酸カリウム10質量部をイオン交換水200質量部に溶解させた溶液を添加し、再度液温を80℃とし、スチレン480質量部、n−ブチルアクリレート250質量部、メタクリル酸68.0質量部、およびn−オクチル−3−メルカプトプロピオネート16.0質量部よりなる重合性単量体溶液を1時間かけて滴下後、80℃にて2時間加熱、攪拌することにより重合を行い、スチレンアクリル樹脂粒子(1a)を含有するスチレンアクリル樹脂粒子分散液(1A)を調製した。
(第2段重合)
攪拌装置、温度センサー、冷却管、および窒素導入装置を取り付けた反応容器に、ポリオキシエチレン(2)ドデシルエーテル硫酸ナトリウム7質量部をイオン交換水800質量部に溶解させた溶液を仕込み、98℃に加熱後、上記で得られたスチレンアクリル樹脂粒子分散液(1A)260質量部、スチレン245質量部、n−ブチルアクリレート120質量部、n−オクチル−3−メルカプトプロピオネート1.5質量部、離型剤であるパラフィンワックス「HNP−11」(日本精蝋株式会社製)67質量部を90℃にて溶解させた重合性単量体溶液を添加し、循環経路を有する機械式分散機「CREARMIX(登録商標)」(エム・テクニック株式会社製)により1時間混合分散させ、乳化粒子(油滴)を含む分散液を調製した。次いで、この分散液に、過硫酸カリウム6質量部をイオン交換水200質量部に溶解させた開始剤溶液を添加し、この系を82℃にて1時間にわたって加熱攪拌することにより重合を行い、スチレンアクリル樹脂粒子(1b)を含むスチレンアクリル樹脂粒子分散液(1B)を調製した。
(第3段重合)
得られたスチレンアクリル樹脂粒子分散液(1B)に、過硫酸カリウム11質量部をイオン交換水400質量部に溶解させた溶液を添加し、次いで、82℃の温度条件下で、スチレン435質量部、n−ブチルアクリレート130質量部、メタクリル酸33質量部およびn−オクチル−3−メルカプトプロピオネート8質量部からなる重合性単量体溶液を1時間かけて滴下した。滴下終了後、2時間にわたって加熱攪拌することにより重合を行った後、28℃まで冷却しスチレンアクリル樹脂1を含有するスチレンアクリル樹脂粒子分散液を得た。また、スチレンアクリル樹脂1のガラス転移温度(Tg)を測定したところ、45℃であった。
[実施例37]
トナー12の作製において、重合体粒子分散液12を固形分換算で602質量部から421質量部に変更し、以下のポリエステル樹脂粒子分散液を固形分換算で181質量部添加した以外は同様な方法でトナー37を得た。
(ポリエステル樹脂を含有するポリエステル樹脂粒子分散液の調製)
窒素導入管、脱水管、攪拌器、および熱電対を備えた容量10リットルの四つ口フラスコに、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物 524質量部、テレフタル酸 105質量部、フマル酸 69質量部、およびオクチル酸スズ(エステル化触媒)2質量部を投入し、温度230℃で8時間の重縮合反応を行った。さらに、8kPaで1時間重縮合反応を継続後、160℃に冷却し、ポリエステル樹脂1を得た。ポリエステル樹脂1 100質量部を、「ランデルミル 形式:RM」(株式会社徳寿工作所製)で粉砕し、予め作製した0.26質量%のラウリル硫酸ナトリウム水溶液 638質量部と混合し、攪拌しながら超音波ホモジナイザー「US−150T」(株式会社日本精機製作所製)を用いて、V−LEVEL、300μAで30分間超音波分散し、ポリエステル樹脂粒子分散液を得た。上記ポリエステル樹脂粒子分散液中のポリエステル樹脂粒子の粒径を「マイクロトラックUPA−150」(日機装株式会社製)を用いて動的光散乱法によって測定したところ、体積基準のメジアン径で135nmであった。また、このポリエステル樹脂1のガラス転移温度(Tg)を測定したところ、42℃であった。
[比較例1]
対応する原料を用い、上記実施例4と同様の手法を用いて、下記表1に示す比較例1の構造単位37を有する比較例1のアゾメチン誘導体モノマー37を合成した。次いで、実施例4においてアゾメチン誘導体モノマー6に代えて比較例1のアゾメチン誘導体モノマー37を用いたこと以外は同様の方法で比較例1の重合体(重合体36とも表す)を得た。次いで、重合体4に代えて比較例1の重合体(重合体36)を用いたことを除いては実施例4と同様の方法で比較例1のトナー(トナー38とも表す)を作製した。
[比較例2]
<比較化合物(アゾベンゼン誘導体)>
特開2014−191078号公報の段落0217〜0227に記載の方法で、以下の比較化合物(アゾベンゼン誘導体、数平均分子量Mn:2870)を得た。
Figure 2021091862
<比較化合物分散液の調製>
実施例4の<重合体粒子分散液4の調製>において、重合体4を比較化合物(アゾベンゼン誘導体)に変更した以外は同様に比較化合物分散液を得た。
<比較例2のトナーの作製>
実施例4の重合体粒子分散液4を上記で作製した比較化合物分散液に変更した以外は同様な方法で比較例2のトナー(トナー39とも表す)を得た。
[理論計算]
各実施例の重合体、および比較例1の重合体において、その構造単位中のアゾメチン誘導体の光異性化の活性化エネルギーEa(シス体からトランス体への異性化反応におけるエネルギー障壁)を計算した。詳細には、それぞれの重合体について、上記一般式(1)のアゾメチン構造を有する基Aに結合した酸素原子の代わりに水素原子を結合させた化合物の遷移状態の全エネルギーとシス体の全エネルギーを算出し、その差を活性化エネルギーとした。ここで、上記化合物の遷移状態は上記一般式(3)で表され、シス体は上記一般式(4)でそれぞれ表される。なお、一般式(3)および(4)は、Z=Z結合に対するBおよびBの配置(位置)を示すものであって、H、r−H、O−r−Hの部分の位置はBの構造を含むアゾメチン構造を有する基Aの構造に依存するものである。
上記化合物の最安定な分子構造(シス体の分子構造)およびシス体の全エネルギーならびに遷移状態の分子構造および遷移状態の全エネルギーの算出には、米国Gaussian社製のGaussian16 (Revision B.01, M. J. Frisch, G. W. Trucks, H. B. Schlegel, G. E. Scuseria, M. A. Robb, J. R. Cheeseman, G. Scalmani, V. Barone, G. A. Petersson, H. Nakatsuji, X. Li, M. Caricato, A. V. Marenich, J. Bloino, B. G. Janesko, R. Gomperts, B. Mennucci, H. P. Hratchian, J. V. Ortiz, A. F. Izmaylov, J. L. Sonnenberg, D. Williams−Young, F. Ding, F. Lipparini, F. Egidi, J. Goings, B. Peng, A. Petrone, T. Henderson, D. Ranasinghe, V. G. Zakrzewski, J. Gao, N. Rega, G. Zheng, W. Liang, M. Hada, M. Ehara, K. Toyota, R. Fukuda, J. Hasegawa, M. Ishida, T. Nakajima, Y. Honda, O. Kitao, H. Nakai, T. Vreven, K. Throssell, J. A. Montgomery, Jr., J. E. Peralta, F. Ogliaro, M. J. Bearpark, J. J. Heyd, E. N. Brothers, K. N. Kudin, V. N. Staroverov, T. A. Keith, R. Kobayashi, J. Normand, K. Raghavachari, A. P. Rendell, J. C. Burant, S. S. Iyengar, J. Tomasi, M. Cossi, J. M. Millam, M. Klene, C. Adamo, R. Cammi, J. W. Ochterski, R. L. Martin, K. Morokuma, O. Farkas, J. B. Foresman, and D. J. Fox, Gaussian, Inc., Wallingford CT, 2016.)ソフトウェアを用いて行った。計算手法として密度汎関数法(B3LYP/6−31G(d))を用いた。得られた計算値から、上記式(1)に従って活性化エネルギーEaの値を求めた。
シス体の分子構造としては、上記一般式(4)で表される異性体の最安定な分子構造、すなわち最も全エネルギーの低い分子構造を算出し、この全エネルギーをシス体の全エネルギーとした。遷移状態の分子構造としては、一般式(3)で表される遷移状態について、対応する分子構造の鞍点を算出し、このとき得られた全エネルギーを遷移状態の全エネルギーとした。このようにして得られた計算値から、上記式(1)に従って活性化エネルギーEaの値を求めた。
実施例1〜19および比較例1の重合体を構成する構造単位、および上記一般式(2)で表される構造に水素原子が結合した化合物の活性化エネルギーを下記表1に示す。
(数平均分子量Mn)
重合体1〜35、比較例1の重合体、および比較化合物(アゾベンゼン誘導体)の数平均分子量Mnは、GPC法により測定した。具体的には、装置「HLC−8120GPC」(東ソー株式会社製)およびカラム「TSKguardcolumn+TSKgelSuperHZ−M3連」(東ソー株式会社製)を用い、カラム温度を40℃に保持しながら、キャリア溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を流速0.2mL/分で流した。測定試料は、濃度1mg/mlになるようにテトラヒドロフランに溶解させた。当該溶液の調製は、超音波分散機を用いて、室温にて5分間処理を行うことにより行った。次いで、ポアサイズ0.2μmのメンブランフィルターで処理して試料溶液を得、この試料溶液10μLを上記のキャリア溶媒と共に装置内に注入し、屈折率検出器(RI検出器)を用いて検出した。単分散のポリスチレン標準粒子を用いて作成された検量線に基づいて、測定試料の分子量分布を算出した。上記検量線測定用のポリスチレンとしては10点用いた。
なお、重合体24〜35においては、全数平均分子量の他、マクロ開始剤の数平均分子量についても上記の方法で測定した。また、マクロ開始剤の数平均分子量を重合体ブロックαまたはβの数平均分子量として、ブロック構造ごとに、重合体の全数平均分子量から(マクロ開始剤の数平均分子量×ブロック数)を差し引くことで他方の重合体ブロックの合計の数平均分子量(他方の重合体ブロックの数平均分子量×ブロック数)を得た。結果を下記表2に示す。表2中、Mnは重合体の全数平均分子量、α Mnは重合体ブロックαの合計の数平均分子量、β Mnは重合体ブロックβの合計の数平均分子量をそれぞれ表す。
(ガラス転移温度(Tg))
結着樹脂のガラス転移温度(Tg)は日立ハイテクサイエンス社製のDSC7000Xにて測定した。具体的には、結着樹脂約3mgを小数点以下2桁まで精秤し、アルミニウム製パンに封入して、セットした。リファレンスは、空のアルミニウム製パンを使用した。昇温速度10℃/分にて0℃から200℃まで昇温する第1昇温過程;降温速度10℃/分にて200℃から0℃まで冷却する冷却過程;および昇温速度10℃/分にて0℃から200℃まで昇温する第2昇温過程をこの順に経る測定条件とした。そして、第2昇温過程におけるデータを基に解析を行った。第1の吸熱ピークの立ち上がり前のベースラインの延長線と、第1の吸熱ピークの立ち上がり部分からピーク頂点までの間における最大傾斜を示す接線との交点の値をガラス転移温度とした。なお、各実施例、比較例で作製した重合体およびトナーのガラス転移温度も同様の方法で測定することができる。
[評価:重合体の光応答接着試験]
各実施例で調製した重合体1〜35、比較例1で合成した比較例1の重合体、および比較例2で合成したアゾベンゼン誘導体の光照射に伴う接着性の変化を図3に示す装置を用いて、以下の光応答接着試験で評価した。図3に示すように、18mm角のカバーガラス1に重合体2mgをガラス中心から半径6mm内に載せ、同サイズのカバーガラス2を、カバーガラス1に対して平行方向に約4mmずらした位置で、重合体をすべて覆いかぶせるように被せた。これを加熱し、試料を溶融させ、カバーガラス1とカバーガラス2とを接着させた。得られた各サンプルを下記の非流動性→流動性の試験に供し、その後、下記の流動性→非流動性の試験に供した。
<非流動性→流動性の試験(流動化試験)>
図3に示す(A)部分を台にセロハンテープで固定し、(C)部分には100gのおもりを装着した長さ30cmのビニール紐をセロハンテープで固定した。(B)部分に波長365nmの光を照射量30J/cmで照射し、カバーガラス2がカバーガラス1から剥がれるかを確認し、下記の評価基準に従って判定した。得られた結果を下記表2に示す。
−非流動性→流動性の試験(流動化試験)の評価基準−
〇:カバーガラス2がカバーガラス1から完全に剥がれた
△:カバーガラス2がずれた
×:カバーガラス2は動かなかった。
<流動性→非流動性の試験(非流動化試験)>
非流動性→流動性試験終了後、カバーガラス2が完全に剥がれた試料とずれた試料について以下の実験を行った。なお、ずれた試料については、手でカバーガラス1と2を剥がした。非流動性→流動性試験の光照射終了5分(5分は、室温暗室で放置した)後に、上記試験で使用したカバーガラス1の試料部分((B)部分))を覆いかぶせるようにカバーガラス3(カバーガラス1、2と同サイズ)をのせ、カバーガラス1とカバーガラス3とが接着するかを確認し、下記の評価基準に従って判定した。得られた結果を表2に示す。
−流動性→非流動性の試験(非流動化試験)の評価基準−
〇:接着しなかった(非流動化していた)
△:一部接着した(一部、流動化状態が保たれていた)
×:接着した(流動化状態が保たれていた)。
なお、上記流動性→非流動性(戻り)の試験の評価で○であった実施例1〜31で調製した重合体1〜35については、いずれも非流動性→流動性試験実施後、再固化していることが確認できた。
[評価:定着性試験]
(現像剤の作製)
上記で作製したトナー1〜35、および比較例1、2のトナーについて、シクロヘキサンメタクリレートとメチルメタクリレートとの共重合体樹脂(モノマー質量比1:1)で被覆した体積平均粒径が30μmのフェライトキャリア粒子を、トナー粒子濃度が6質量%となるように混合し、現像剤1〜35および比較例1、2の現像剤を得た。混合は、V型混合機を用いて30分間行った。
(定着性試験)
定着性試験は、上記で得られた現像剤1〜35、比較例1、2の現像剤を用いて、常温常湿環境下(温度20℃、相対湿度50%RH)で行った。一方に現像剤、他方に記録媒体としての普通紙(坪量:64g/m)を設置した一対の平行平板(アルミ)電極間に、現像剤を磁力によって摺動させながら配置し、電極間ギャップが0.5mm、DCバイアスとACバイアスとはトナー付着量6g/mとなる条件でトナーを現像させ、上記普通紙の表面にトナー層を形成し、各定着装置にて定着して印刷物を得た(画像形成)。この印刷物の1cm角のトナー画像を、「JKワイパー(登録商標)」(日本製紙クレシア株式会社製)で50kPaの圧力をかけて11回こすり、画像の定着率を評価した。定着率60%以上を合格とした。なお、画像の定着率とは、印刷後の画像およびこすった後の画像の反射濃度を、蛍光分光濃度計「FD−7」(コニカミノルタ株式会社製)で測定し、こすった後のベタ画像の反射濃度を、印刷後のベタ画像の反射濃度で除した値を百分率で表した数値である。
定着装置は、図2に示す装置を適宜改変して構成された下記3種の定着装置を用いた:
No.1:図2の圧着部9がなく、照射部40から照射される紫外光の波長は365nmであり(光源:発光波長が365nm±10nmのLED光源)、照射量は11J/cmである;
No.2:図2の圧着部9があり、加圧部材91の温度は20℃であり、加圧時の圧力は0.2MPaである。照射部40の光源および照射量はNo.1と同様である;
No.3:図2の圧着部9があり、加圧部材91の温度は80℃であり、加圧時の圧力は0.2MPaである。照射部40の光源および照射量はNo.1と同様である;
No.4:図2の圧着部9がなく、照射部40による光照射と同時に図示しない加熱部材により50℃に加熱し、照射部40の波長および照射量はNo.1と同様である。
[色再現性評価]
上記で得られた実施例、比較例の画像について色再現性を、10名のモニターによる目視評価により下記評価基準に従って評価した。具体的には、評価比較用サンプルとして、実施例32のトナー32において重合体12をすべてスチレンアクリル樹脂に変更したトナーを作製した。これを用いて上記と同様に現像剤を作製し、上記の定着性試験における画像形成と同様に現像し、下記の定着装置No.5にて定着を行った:
定着装置No.5:図2の圧着部9があり、加圧部材91の温度は150℃であり、加圧時の圧力は0.2MPaであり、光照射は実施しない。
10名のモニターに対して、前記評価比較用サンプルと上記の実施例、比較例で得られた画像とを順番に見せ、2つの画像の色が明らかに異なるか質問した。下記色再現性の評価基準による判定結果を下記表3に示す:
−色再現性の評価基準−
◎:2名以下が明らかに異なると答えた
○:3〜4名が明らかに異なると答えた
△:5〜7名が明らかに異なると答えた
×:8名以上が明らかに異なると答えた。
Figure 2021091862
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Figure 2021091862
Figure 2021091862
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Figure 2021091862
Figure 2021091862
Figure 2021091862
Figure 2021091862
表2から明らかなように、上記一般式(1)で表される構造単位を含み、上記一般式(2)で表される構造に水素原子が結合した化合物のシス体からトランス体への異性化反応における活性化エネルギーEaが60kJ/mol以上である各実施例の重合体は、光の照射により流動化し、可逆的に非流動化することが確認された。これに対して、比較例1で作製した重合体は、そのアゾメチン構造に対応する化合物のシス体からトランス体への異性化反応における活性化エネルギーEaが60kJ/molよりも低い。このような重合体では、光照射による流動化、非流動化は生じないことがわかった。また、比較例2における比較化合物(アゾベンゼン誘導体)では流動化の後の可逆的な非流動化が確認されなかった。
また、表3に示されるように、各実施例で作製した重合体を用いたトナーは、いずれも光照射により定着を行うことができ、高い定着性と優れた色再現性を示した。一方、比較例1で作製した重合体を用いたトナーは定着性が不十分であった。また、比較例2における比較化合物(アゾベンゼン誘導体)を用いたトナーは定着性、色再現性が低いことがわかった。定着性試験で用いられた紫外線の光源および紫外線の照射条件は一定であることから、各実施例のトナーは比較例1、2のトナーに比べて、光照射により流動化し、可逆的に非流動化し、かつ著しい着色のない重合体による効果が十分に発現されたものといえる。
定着装置の比較をすると、同じトナー12を用い、同じ条件で紫外線照射し、加圧部材を用いないNo.1の定着装置よりも、加圧部材で加圧したNo.2の定着装置、更には加圧部材で加熱しつつ加圧したNo.3の定着装置を用いた方が、より高い定着性が得られることがわかった(実施例12、38、39の比較)。
各実施例に示されるように、アゾメチン構造を有する基を含む一般式(1)で表される構造単位を含み、当該アゾメチン構造に水素原子が結合した化合物のシス体からトランス体への異性化反応における活性化エネルギーEaが60kJ/mol以上である重合体であれば、いずれも光照射により流動化し、可逆的に非流動化し、着色が少なく、これを用いたトナーによるトナー画像の定着性試験において60%以上の優れた定着率を示すことがわかる。
各実施例のトナーの定着性の比較から、一般式(1)の構造単位においてBまたはBのいずれかに芳香族複素環基を有すると、両方が芳香族炭化水素基である場合よりも定着性が高い傾向にある。また、実施例4〜9の比較から、Bがフェニレン基であり、Bが芳香族複素環基である場合、実施例4〜8のように、BがZに対してパラ位で重合性基に結合すると、より定着性が高くなる傾向にある。実施例10、11の比較から、Bが2価の芳香族複素環基であって、Bが1価の芳香族複素環基である場合、実施例10のようにBがZとの結合位置と隣接しない位置で重合性基に結合すると、より定着性が高くなる傾向にある。
アゾメチン構造を有する基を含む構造単位だけでなく、他の構造単位を組み合わせても同様に光照射による流動化および可逆的な非流動化が得られる。また、トナーに用いたときに良好な定着率が得られる。この際、ランダム共重合体であってもブロック共重合体であっても優れた性能が得られることがわかった。特にブロック共重合体では定着性がより優れることがわかった。
さらに、実施例12と実施例19の比較から、同じ構造単位を有する重合体であっても、数平均分子量が3500以上である実施例12の重合体のほうが、トナーの定着性に優れることがわかった。
ブロック共重合体の場合、実施例24と実施例31の比較から、同じ構造単位を有する重合体であっても、一般式(1)で表される構造単位を含む重合体ブロックαの数平均分子量が1000以上であり、アゾメチン構造を含まない重合体ブロックβの数平均分子量が1000以上である実施例24の重合体のほうが、トナーの定着性に優れることがわかった。
また、重合体だけでなく、結着樹脂をトナーにさらに含有させることができる。結着樹脂をさらに用いた場合も同様に良好な定着率および色再現性が得られることが確認された。上記重合体を用いることで、結着樹脂の含有比率が少なくても良好な定着率が得られうる。
なかでも、表1に示す構造単位6、7、12、17、19をそれぞれ有する重合体を用いた実施例4、5、8、12、13のトナーでは、特に画像の定着率が良好であった。また、構造単位17を含むブロック共重合体を有する実施例24〜26のトナーも優れた定着率を示した。
1 感光体、
2 帯電器、
3 露光器、
4 現像部、
5 転写部、
7 用紙搬送系、
8 クリーニング部、
9 圧着部、
10 画像形成部、
11 給紙部、
12 搬送ローラー、
13 搬送ベルト、
14 排紙部、
15 手差し給紙部、
16 トレイ、
17 温湿度計、
20 画像処理部、
24 用紙反転部、
40 照射部、
71 画像読取装置、
72 自動原稿送り装置、
85 ブレード、
90 制御部、
91、92 加圧部材、
100 画像形成装置、
d 原稿、
S 記録用紙。

Claims (24)

  1. 下記一般式(1)で表される構造単位を含み、光照射により流動化し、可逆的に非流動化する光応答性重合体であって、
    Figure 2021091862

    一般式(1)中、rは水素原子またはメチル基であり、
    Aは下記一般式(2)で表されるアゾメチン構造を有する基であり、
    Figure 2021091862

    一般式(2)中、ZおよびZは、それぞれ独立して、NまたはCHであり、かつZ
    ≠Zであり、
    は、それぞれ独立して、置換もしくは非置換の2価の芳香族炭化水素基または置換もしくは非置換の2価の芳香族複素環基であり、
    は、それぞれ独立して、置換もしくは非置換の1価の芳香族炭化水素基または置換もしくは非置換の1価の芳香族複素環基であり、
    は、それぞれ独立して、炭素数1〜18のアルキレン基であり、
    一般式(1)におけるAに結合した酸素原子の代わりに水素原子を結合させた化合物の下記式(1)で表される活性化エネルギーEaが60kJ/mol以上であることを特徴とする、光応答性重合体:
    式(1):Ea(kJ/mol)=(TSの全エネルギー(kJ/mol))−(シス体の全エネルギー(kJ/mol))
    上記式(1)中、TSは、一般式(3)で表される遷移状態を指し、シス体は一般式(4)で表される異性体を指す。
    Figure 2021091862
  2. 前記Bは、それぞれ独立して、置換もしくは非置換のフェニレン基または置換もしくは非置換の2価の芳香族複素環基であり、前記Bは、それぞれ独立して、置換もしくは非置換のフェニル基または置換もしくは非置換の1価の芳香族複素環基である、請求項1に記載の重合体。
  3. は、それぞれ独立して、Zに対してパラ位で酸素原子((2−a)または(2−c)の場合)またはr((2−b)の場合)に結合するフェニレン基であり、Bは、それぞれ独立して、非置換であるか、もしくはZに対してパラ位に炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のアルコキシ基、および炭素数2〜10のジアルキルアミノ基から選択される置換基を有するフェニル基である、請求項2に記載の重合体。
  4. およびBの少なくとも一方は、ZまたはZに対する2つのオルト位および2つのメタ位が置換されていないか、またはハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、および炭素数2〜10のジアルキルアミノ基から選択される基で置換される、請求項3に記載の重合体。
  5. が、それぞれ独立して、Zに対してパラ位で酸素原子((2−a)または(2−c)の場合)またはr((2−b)の場合)に結合するフェニレン基であり、
    が、それぞれ独立して、非置換であるか、または、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のアルコキシ基、炭素数2〜10のジアルキルアミノ基、炭素数2〜19のアシル基もしくは炭素数2〜19のアルコキシカルボニル基のいずれかで置換された芳香族複素環基である、請求項2に記載の重合体。
  6. が、それぞれ独立して、置換もしくは非置換の2価の芳香族複素環基であって、Zとの結合位置と隣接しない位置で酸素原子((2−a)または(2−c)の場合)またはr((2−b)の場合)と結合し、
    が、それぞれ独立して、非置換であるか、または、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のアルコキシ基、炭素数2〜10のジアルキルアミノ基、炭素数2〜19のアシル基もしくは炭素数2〜19のアルコキシカルボニル基のいずれかで置換されたフェニル基である、請求項2に記載の重合体。
  7. が、それぞれ独立して、置換もしくは非置換の2価の芳香族複素環基であって、Zとの結合位置と隣接しない位置で酸素原子((2−a)または(2−c)の場合)またはr((2−b)の場合)と結合し、
    は、それぞれ独立して、非置換であるか、または、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のアルコキシ基、炭素数2〜10のジアルキルアミノ基、炭素数2〜19のアシル基もしくは炭素数2〜19のアルコキシカルボニル基で置換された芳香族複素環基である、請求項2に記載の重合体。
  8. 数平均分子量Mnが3500以上である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の重合体。
  9. ビニル系重合性基を有する他の構造単位をさらに含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の重合体。
  10. 前記重合体は、前記他の構造単位として、スチレン誘導体、アクリル酸誘導体、メタクリル酸誘導体またはオレフィン誘導体に由来する構造単位を含む、請求項9に記載の重合体。
  11. 下記一般式(5)で表される、請求項1〜8のいずれか1項に記載の重合体:
    Figure 2021091862

    上記一般式(5)中、αは前記一般式(1)で表される構造単位を含む重合体ブロック
    であり、βは前記一般式(1)におけるアゾメチン構造(B−Z=Z−B)を含まない重合体ブロックである。
  12. 前記一般式(5)で表される重合体に含まれる重合体ブロックαの合計の数平均分子量が1000以上であり、重合体ブロックβの合計の数平均分子量が1000以上であり、前記一般式(5)で表される重合体の全数平均分子量が3500以上である、請求項11に記載の重合体。
  13. 前記重合体ブロックβは、スチレン誘導体、(メタ)アクリル酸誘導体、およびオレフィン誘導体に由来する構造単位のうち少なくとも1種を含む重合体ブロックである、請求項11または12に記載の重合体。
  14. 前記光の波長は、280nm以上480nm以下である請求項1〜13のいずれか1項に記載の重合体。
  15. 請求項1〜14のいずれか1項に記載の重合体を含む、トナー。
  16. さらに結着樹脂を含む、請求項15に記載のトナー。
  17. 前記結着樹脂は、スチレンアクリル樹脂及びポリエステル樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項15または16に記載のトナー。
  18. 請求項15〜17のいずれか1項に記載のトナーからなるトナー像を記録媒体上に形成する工程と、前記トナー像に光を照射して、前記トナー像を軟化させる工程とを含む、画像形成方法。
  19. 前記光の波長は、280nm以上480nm以下である、請求項18に記載の画像形成方法。
  20. 前記トナー像を加圧する工程をさらに含む、請求項18または19に記載の画像形成方法。
  21. 前記加圧する工程では、前記トナー像をさらに加熱する、請求項20に記載の画像形成方法。
  22. 前記トナー像に光を照射して、前記トナー像を軟化させる工程において、光照射とともに前記トナー像を加熱する、請求項18〜21のいずれか1項に記載の画像形成方法。
  23. 請求項1〜14のいずれか1項に記載の重合体を用いた光応答性接着剤。
  24. 請求項1〜14のいずれか1項に記載の重合体を用いた光スイッチング材料。
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