以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
(第1実施形態)
図1〜17を参照して、本発明の第1実施形態に係るパワーステアリング装置100について説明する。
パワーステアリング装置100は、車両に搭載されドライバーが操舵ハンドルに加える操舵力を補助する装置である。
図1及び図2に示すように、パワーステアリング装置100は、電動モータ7の出力軸に連結され電動モータ7の駆動に伴って回転するウォームシャフト2と、ウォームシャフト2と噛み合い、車輪6を転舵するラック軸8に電動モータ7の回転力を伝達するためのウォームホイール1と、を備える。電動モータ7の駆動に伴ってウォームシャフト2が回転し、ウォームシャフト2の回転が減速してウォームホイール1に伝達される。ウォームホイール1とウォームシャフト2にてウォーム減速機が構成される。
図1に示すように、操舵ハンドル10にはステアリングシャフト20が連結され、ステアリングシャフト20は操舵ハンドル10の回転に伴って回転する。ステアリングシャフト20は、操舵ハンドル10に連係する入力軸21と、ラック軸8に連係する出力軸22と、入力軸21と出力軸22を連結するトーションバー23と、を備える。ウォームホイール1は出力軸22に設けられる。
パワーステアリング装置100は、運転者によるステアリング操作に伴う入力軸21と出力軸22との相対回転によってトーションバー23に作用する操舵トルクを検出するトルクセンサ24と、トルクセンサ24にて検出された操舵トルクに基づいて電動モータ7の駆動を制御するコントローラ25と、をさらに備える。電動モータ7から出力されたトルクは、ウォームシャフト2からウォームホイール1に伝達されて出力軸22にアシストトルクとして付与される。このように、パワーステアリング装置100は、トルクセンサ24の検出結果に基づいて電動モータ7の駆動をコントローラ25にて制御して運転者のステアリング操作を補助する。
図2に示すように、ウォームシャフト2は金属製のギヤケース3に収容され、電動モータ7はギヤケース3に取り付けられる。ギヤケース3は、ウォームシャフト2を囲む周壁3bと、ウォームシャフト2の先端に対向する底壁3cと、有する。周壁3bと底壁3cとは一体に形成される。このように、ギヤケース3は、底部の開口部43を蓋によって封止する構成ではなく、袋状構造であるため防水性に優れる。なお、ギヤケース3は樹脂製であってもよい。また、ギヤケース3は、周壁3bと底壁3cの一体構造に代えて、周壁3bの開口端部を蓋によって封止する構造であってもよい。
ウォームシャフト2の一部には、ウォームホイール1の歯部と噛み合う歯部2aが形成される。ギヤケース3におけるウォームシャフト2側の周壁3bには歯部2aに対応する位置に開口部43が形成され、その開口部43を通じてウォームシャフト2の歯部2aとウォームホイール1の歯部とが噛み合う。
ウォームシャフト2の電動モータ7側である基端側は、第1軸受4によって回転自在に支持される。第1軸受4は、環状の内輪と外輪の間にボールが介在されるボールベアリングである。第1軸受4の外輪は、ギヤケース3に形成された段部3aとギヤケース3内に締結されたロックナット5との間で挟持される。第1軸受4の内輪は、ウォームシャフト2の段部2bとウォームシャフト2の端部に圧入されるジョイント9との間で挟持される。これにより、ウォームシャフト2の軸方向への移動が規制される。
ウォームシャフト2の先端側は、第2軸受11によって回転自在に支持される。第2軸受11は、環状の外輪11aと内輪11bの間にボール11cが介在されるボールベアリングである。第2軸受11はホルダ30に収容され、ホルダ30はギヤケース3の底部側に形成された円形の内周面を有する収容孔3d内に配置される。
以下、ホルダ30の具体的構成について説明する。
なお、以下では、図2に示すように、ウォームシャフト2の中心軸(第2軸受11の中心軸)に沿った方向(図2中左右方向)を「第1方向」、ウォームホイール1の中心軸に沿った方向(図2中紙面垂直方向)を「第2方向」、ウォームシャフト2の中心軸及びウォームホイール1の中心軸の両方に垂直な方向(図2中上下方向)を「第3方向」とも称する。つまり、第1方向、第2方向、第3方向は、互いに直交する直交3軸に沿った方向である。また、第3方向において、第2軸受11からみてウォームホイール1側である一方側(図2中上方側)を「ギヤ側」、ギヤ側の反対方向である他方側(図2中下方側)を「反ギヤ側」と称する。
ホルダ30は、主に図2及び図3に示すように、第2軸受11を保持する保持部42を有する第1ホルダ40と、ウォームホイール1へ向かう第2軸受11の移動を案内するガイド部62を有する第2ホルダ60と、第1ホルダ40を介して第2軸受11をウォームホイール1へ向けて付勢する付勢部材としてのコイルスプリング(以下、単に「スプリング」と称する。)70と、第1ホルダ40と第2ホルダ60とを係止し一体化する係止部材として円弧状のクリップ80と、を有する。第1ホルダ40及び第2ホルダ60は、樹脂製である。
図4から図6に示すように、第1ホルダ40は、板状の第1ホルダ本体部41と、第1ホルダ本体部41に設けられる保持部42と、第2軸受11の外周面の一部を露出させる開口部43と、スプリング70を収容するスプリング収容凹部55が形成される支持部50と、を有する。
第1ホルダ本体部41は、互いに平行な一対の平行面が形成されたいわゆる二面幅形状を有する板状に形成される。第1ホルダ本体部41には、中央に設けられる円形の凹部41aと、凹部41aの底部に形成され第1ホルダ本体部41を厚さ方向(第1方向)に貫通する中央孔41bと、を有する。
凹部41aは、図2に示すように、第2軸受11の内輪11bに対向するように設けられ、内輪11bよりも大きな内径に形成される。凹部41aによって、第2軸受11の内輪11bと第1ホルダ本体部41との接触が回避される。これにより、第1ホルダ40により第2軸受11の内輪11bの回転が阻害されず、ウォームシャフト2がスムーズに回転することができる。
中央孔41bは、第2軸受11によって支持されるウォームシャフト2の端部の径よりも大きな内径に形成され、ウォームシャフト2の端部の一部が挿通する。ウォームシャフト2の端部がホルダ30の第1ホルダ本体部41を挿通することで、ウォームシャフト2の軸方向においてパワーステアリング装置100を小型化することができる。
保持部42は、図4から図6に示すように、第2軸受11の中心軸を挟んで互いに対向して設けられる第1保持部42a及び第2保持部42bからなる。第1保持部42a及び第2保持部42bは、第2軸受11の中心軸に沿って(第1方向に沿って)第1ホルダ本体部41から同一方向に突出して設けられる。第1保持部42a及び第2保持部42bは、第3方向において互いに対向する。第1保持部42a及び第2保持部42bは、径方向内側が第2軸受11の外輪11aに対応する円弧形状に形成され、外側が収容孔3dの内周面に対応する円弧形状に形成される。第1保持部42a及び第2保持部42bは、その内側に収容される第2軸受11の外輪11aの外周面の一部を保持する。第1保持部42a及び第2保持部42bは、第1保持部42aが相対的にギヤ側に設けられ、第2保持部42bが相対的に反ギヤ側に設けられる。
開口部43は、第2軸受11の周方向において第1保持部42a及び第2保持部42bによって区画される第1開口部43a及び第2開口部43bからなる。第1開口部43a及び第2開口部43bは、第2軸受11の中心軸に対して第2方向の両側に設けられる。第1開口部43a及び第2開口部43bは、第2軸受11を収容する第1保持部42a及び第2保持部42bの内側の空間に連通する。これにより、図6に示すように、第1開口部43a及び第2開口部43bは、第1保持部42a及び第2保持部42bによって保持された第2軸受11の外輪11aの外周面の一部を外部に露出させる。
支持部50は、図5に示すように、第1ホルダ本体部41における保持部42とは反対側の面に設けられる。支持部50は、第1方向に垂直な断面が、一対の平行面を有する二面幅形状に形成される(図10参照)。支持部50は、スプリング70を収容するスプリング収容凹部55を有する。スプリング70は、第1保持部42a及び第2保持部42bによって保持される第2軸受11とは第1ホルダ本体部41における反対側に設けられる。よって、スプリング70は、第2軸受11とは、軸方向(第1方向)に並ぶように設けられる。
図7及び図8に示すように、第2ホルダ60は、円板状の第2ホルダ本体部61と、第2ホルダ本体部61に設けられるガイド部62と、第1ホルダ40の保持部42及び第2軸受11の通過を許容するホルダ開口部63と、ギヤケース3の収容孔3dの底壁3cに設けられる位置決め孔3e(図2参照)に挿入される位置決め凸部64と、を有する。
第2ホルダ本体部61は、第1ホルダ40の支持部50を収容する受容部65と、周方向に延びて外周面に形成される円弧状の溝部61aと、を有する。
受容部65は、第3方向のギヤ側において、第2ホルダ本体部61の外周面に開口する外周開口部65aを有する凹部である。また、受容部65は、第2ホルダ本体部61の一方の端面に開口する。受容部65には、外周開口部65aを通じて第1ホルダ40の支持部50が挿入される。受容部65は、第1ホルダ40の支持部50との間でスプリング70を支持する(図10参照)。
溝部61aは、図8に示すように、両端が隔壁部61bによって周方向に隔てられるC字状の円弧溝である。また、溝部61aは、図7に示すように、受容部65の外周開口部65aと連通する。言い換えれば、溝部61aは、外周開口部65aによって2つに隔てられる。隔壁部61bは、外周開口部65aに対して第2軸受11の中心軸を挟んで第3方向の反対側に設けられる。
ガイド部62は、図7から図9に示すように、第2軸受11を挟んで互いに対向する第1ガイド部62a及び第2ガイド部62bからなる。第1ガイド部62a及び第2ガイド部62bは、第2軸受11の中心軸に沿って第2ホルダ本体部61から同一方向に突出して形成される(図7及び図8参照)。なお、図9では、第2軸受11を簡略化して表す。
第1ガイド部62a及び第2ガイド部62bには、第3方向に延び互いに平行な平面である一対のガイド面62c,62dが形成される。一対のガイド面62c,62dの間の距離は、第2軸受11の外輪11aの外径よりもわずかに大きく形成される。第2軸受11は、外輪11aの外周面が一対のガイド面62c,62dに接触し、一対のガイド面62c,62dによってウォームホール1へ向かう第3方向沿った移動が案内される。
第1ガイド部62a及び第2ガイド部62bが第2ホルダ本体部61から突出する長さ(第1方向の長さ)は、第2軸受11の厚さ(軸方向長さ)よりも大きく形成される。また、第1ガイド部62a及び第2ガイド部62bの先端には、図7に示すように、第2軸受11の中心軸に向けて延びる爪部62e,62fが形成される。爪部62e,62fによって、第1ホルダ40に保持される第2軸受11が第1ホルダ40から軸方向(第1方向)に脱落することが防止される(図3参照)。
ホルダ開口部63は、図7に示すように、第2軸受11の周方向において第1ガイド部62a及び第2ガイド部62bによって区画される第1ホルダ開口部63a及び第2ホルダ開口部63bからなる。つまり、第2ホルダ60では、第1ガイド部62a及び第2ガイド部62bの周方向の間を切り欠くようにして、第1ホルダ開口部63a及び第2ホルダ開口部63bが形成される。第1ホルダ開口部63a及び第2ホルダ開口部63bは、第1ホルダ開口部63aが相対的に第3方向のギヤ側に設けられ、第2ホルダ開口部63bが相対的に第3方向の反ギヤ側に設けられる。第1ホルダ開口部63a及び第2ホルダ開口部63bは、それぞれ第1ホルダ40の第1保持部42a及び第2保持部42bと、第1ホルダ40に保持される第2軸受11と、の通過を許容する。
図3及び図9に示すように、第1ホルダ40と第2ホルダ60とを組み立てた状態では、第1ホルダ40の第1保持部42a及び第2保持部42bは、第2ホルダ60の第1ホルダ開口部63a及び第2ホルダ開口部63b(図7及び図8参照)を通じて、第2軸受11の周方向において第1ガイド部62a及び第2ガイド部62bに隣接する。言い換えれば、第2ホルダ60の第1ガイド部62a及び第2ガイド部62bは、第1ホルダ40の第1開口部43a及び第2開口部43b(図4参照)を通じて、第2軸受11の周方向において、第1保持部42a及び第2保持部42bと隣接する。さらに言えば、第1保持部42a、第2保持部42b、第1ガイド部62a、第2ガイド部62bは、それぞれギヤケース3の収容孔3dの内周面に対峙する。これにより、第2軸受11と収容孔3dとの径方向の間において、第1ホルダ40と第2ホルダ60とは、互いに重ならないように設けられる。したがって、第2軸受11の径方向においてホルダ30をコンパクトな構成とすることができる。
位置決め凸部64は、図8に示すように、ガイド部62とは軸方向の反対側において第2ホルダ本体部61に接続して設けられる。位置決め凸部64は、第2軸受11の中心軸から径方向に離れた位置に設けられる。位置決め凸部64は、収容孔3dの底壁3cに形成される位置決め孔3e(図2参照)に隙間を持って嵌合する。これにより、ホルダ30がギヤケース3に対して位置決めされ、収容孔3d内でのホルダ30の回転が規制される。
スプリング70は、図10に示すように、第1ホルダ40の支持部50と第2ホルダ60の受容部65との間に圧縮状態で保持される。スプリング70は、第1ホルダ40と第2ホルダ60とが第3方向に沿って互いに離間するような付勢力を発揮する。これにより、スプリング70は、ウォームシャフト2の歯部2aとウォームホイール1の歯部との隙間が小さくなる方向に第2軸受11を付勢する。つまり、スプリング70は、第2軸受11を介してウォームシャフト2をウォームホイール1に向けて付勢するものである。スプリング70の支持構造については、後に詳細に説明する。
クリップ80は、図10及び図11に示すように、円形断面を有する金属製のC字状の部材である。クリップ80は、受容部65の外周開口部65aにわたって溝部61aに装着される。これにより、第2軸受11及び第1ホルダ40が、スプリング70の付勢力によって受容部65の外周開口部65a及び第1ホルダ開口部63aを通じて第2ホルダ60から脱落することが規制される。このようにして、クリップ80により、第1ホルダ40と第2ホルダ60とが係止される。
なお、本明細書において、第1ホルダ40と第2ホルダ60とが係止されるとは、ギヤケース3の収容孔3dにホルダ30を取り付けていない状態において、スプリング70の付勢力によって、第1ホルダ40が第2ホルダ60の内側から抜け出る(分離する)ことを規制した状態を指すものである。
第1ホルダ40の支持部50の第3方向の幅は、図10に示すように、第2ホルダ60の受容部65の第3方向の幅よりも小さい。よって、第1ホルダ40と第2ホルダ60とがクリップ80により係止された状態では、支持部50は、クリップ80と受容部65との間で、第3方向に移動可能である。つまり、ホルダ30を収容孔3dに組み付けていない状態では、第1ホルダ40は、支持部50がクリップ80に接触する状態と、支持部50が第2ホルダ60の受容部65の内周面に接触する状態と、の間で、第3方向に移動可能である。クリップ80による第1ホルダ40と第2ホルダ60との係止構造については、後に詳細に説明する。
第1ホルダ40と第2ホルダ60とを組み立てた状態では、図9に示すように、第1開口部43a及び第2開口部43bから露出する第2軸受11の外周面は、第1ガイド部62a及び第2ガイド部62bのガイド面62c,62dに接触する。スプリング70は、第1ホルダ40と第2ホルダ60との間に設けられ、第1ホルダ40と第2ホルダ60とを互いに離間するように付勢する。よって、第2軸受11は、互いに平行な一対のガイド面62c,62dによって移動が直接案内される。このように、本実施形態では、金属製の第2軸受11と樹脂製の第2ホルダ60とが、硬度差をもって接触する。
以上のように、ホルダ30では、第2軸受11がガイド部62に直接接触するため、第1ホルダ40の寸法精度が、ウォームホイール1とウォームシャフト2の噛み合い精度に影響することを抑制することができる。
次に、第1ホルダ40と第2ホルダ60によってスプリング70を支持する支持構造について、詳細に説明する。
支持部50は、図5及び図10に示すように、ガイド部62によって第2軸受11が案内される第3方向に対して傾斜する第1付勢方向に付勢力を発揮するようにスプリング70を支持可能な第1支持部51と、第3方向に対して傾斜すると共に第1付勢方向とは異なる第2付勢方向に付勢力を発揮するようにスプリング70を支持可能な第2支持部52と、を有する。
スプリング収容凹部55は、第3方向において反ギヤ側に開口すると共に、第1方向に垂直な支持部50の端面50aに開口する。第1ホルダ本体部41の中央孔41bは、スプリング収容凹部55に開口する。
スプリング収容凹部55は、第1付勢方向に付勢力を発揮するスプリング70を収容可能な第1収容凹部56と、第2付勢方向に付勢力を発揮するようにスプリング70を収容可能な第2収容凹部57と、を有する。第1収容凹部56は、第1支持部51によって、区画される。第2収容凹部57は、第2支持部52によって区画される。
図10に示すように、第1支持部51(第1収容凹部56)及び第2支持部52(第2収容凹部57)は、第3方向に平行な基準面Mに対して鏡面対称に設けられる。第1収容凹部56と第2収容凹部57とは、交差して設けられ、互いに連通する。第1収容凹部56と第2収容凹部57とは、中央孔41bに対向する位置で互いに交差する。
第1支持部51は、第1付勢方向に垂直な第1着座面51aと、第1付勢方向に延びる平面状の第1側壁面51b,51cと、第1付勢方向に垂直な断面が円弧状に形成される第1周壁面51dと、を有する。一方の第1側壁面51bは、第1着座面51aから形成され、第1収容凹部56に収容されるスプリング70を挟んで対向する。他方の第1側壁面51cは、第2支持部52によって区画される第2収容凹部57によって、第1着座面51aとは隔てられる。第1周壁面51dは、第1着座面51a及び第1側壁面51b,51cにそれぞれ接続する。第1収容凹部56に収容されたスプリング70は、第1支持部51によって、第1付勢方向に対して傾斜するような移動が規制される。
第2支持部52は、第2付勢方向に垂直な第2着座面52aと、第2付勢方向に延びる平面状の第2側壁面52b,52cと、第2付勢方向に垂直な断面が円弧状に形成される第2周壁面52dと、によって、構成される。一方の第2側壁面52bは、第2着座面52aから形成され、第2収容凹部57に収容されるスプリング70を挟んで対向する。他方の第2側壁面52cは、第1支持部51によって区画される第1収容凹部56によって、第2着座面52aとは隔てられる。第2周壁面52dは、第2着座面52a及び第2側壁面52b,52cにそれぞれ接続する。第2収容凹部57に収容されたスプリング70は、第2支持部52によって、第2付勢方向に対して傾斜するような移動が規制される。
図10に示すように、第2ホルダ60の受容部65は、第1付勢方向に垂直な第1受容面67と、第2付勢方向に垂直な第2受容面68と、を有する。第1支持部51によって支持されるスプリング70は、第1受容面67に着座する。第2支持部52によって支持されるスプリング70は、第2受容面68に着座する。なお、受容部65の形状は、これに限らず、第1支持部51によって支持されるスプリング70と、第2支持部52によって支持されるスプリング70と、がそれぞれ着座可能であればよい。例えば、第1受容面67と第2受容面68とは、互いに連続する円弧面に形成されてもよい。
支持部50の端面50aに対するスプリング収容凹部55の開口は、受容部65の側面65b(図7参照)によって塞がれる。これにより、第1支持部51又は第2支持部52によって支持されるスプリング70は、その中心軸周りの四方から、第1側壁面51b,51c又は第2側壁面52b,52c、第1周壁面51d又は第2周壁面52d、及び受容部65の側面65bによって囲まれる。したがって、スプリング70が安定して支持される。
また、支持部50には、スプリング70を誤った付勢方向に組み付ける誤組み付けを防止する誤組防止部としての突起58が設けられる。本実施形態では、スプリング70が第1支持部51によって支持されるため、図10に示すように、突起58が、第2支持部52の第2周壁部52dから第1方向に突出して設けられる。これにより、本来、第1支持部51によって支持されるべきスプリング70が、第2支持部52によって支持された場合、スプリング70は、突起58によって第2周壁面52dから浮き上がり、支持部50の端面50aからスプリング70の一部が突出する。この状態となると、スプリング70と共に支持部50を受容部65に挿入することができず、第1ホルダ40と第2ホルダ60とを組み付けることができなくないため、誤組み付けを検知することができる。このように、突起58により、本来スプリング70を支持しない第2支持部52によってスプリング70が支持されている場合に、第1ホルダ40と第2ホルダ60との組み付けが阻害され、誤組み付けを防止することができる。
なお、第2支持部52によってスプリング70を支持する場合には、第1支持部51の第1周壁面51dに突起58が設けられる。また、突起58は、第1周壁面51d又は第2周壁面52dに限らず、第1,第2着座面51a,52a、第1,第2側壁面51b,51c,52b,52cに設けられてもよい。突起58は、スプリング70の浮き上がり量が大きくしてより確実に誤組み付けを防止するためには、突起58は、第1,第2着座面51a,52aから可能な限り離れた位置、例えば、中央孔41bよりも第1,第2着座面51a,52aから離れた位置に設けられることが望ましい。また、突起58は、第1ホルダ40に限らず、第2ホルダ60の受容部65に設けられてもよい。
ここで、ウォームホイール1からウォームシャフト2への反力は、ウォームシャフト2の回転方向に応じて、異なる方向に作用する。このため、ウォームホイール1からの反力に対抗しつつウォームシャフト2とウォームホイール1の噛み合い部に適切な付勢力を与えるために、スプリング70は、ウォームホイール1とウォームシャフト2の軸間方向(第3方向)に対して傾斜してウォームシャフト2を付勢するように配置することが望ましい。
一方、パワーステアリング装置100は、右ハンドル車に搭載される場合と左ハンドル車に搭載される場合とで、構成が異なる。具体的には、ラック軸8に対する出力軸22の傾斜角度が車両中心に対して反転するため、ウォームホイール1のねじれ方向が互いに反対となる。このため、スプリング70が噛み合い部に付与する適切な付勢力の方向は、右ハンドル車と左ハンドル車とにおいても、互いに異なる。
これに対し、本実施形態では、スプリング70は、第1支持部51と第2支持部52によって選択的に支持される。第1支持部51及び第2支持部52は、第1付勢方向と第2付勢方向との二つの方向に付勢力を発揮できるように、スプリング70を支持可能である。このため、第1付勢方向を右ハンドル車において噛み合い部に適切な付勢力を発揮する方向とし、第2付勢方向を左ハンドル車において噛み合い部に適切な付勢力を発揮する方向とすることで、パワーステアリング装置100が右ハンドル車と左ハンドル車のいずれに搭載される場合であっても、共通のホルダ30を使用することができる。
共通のホルダ30を使用することができるため、ホルダ30を製造するための金型等も共通化でき、製造コストを低減することができる。なお、上記のように、誤組防止部として突起58を設ける場合であっても、突起58を形成するための型を金型内に挿入すればよいため、金型自体は共通化できる。よって、誤組防止部としての突起58を形成する場合であっても、製造コストを低減することができる。
また、第1収容凹部56と第2収容凹部57とは、中央孔41bに対向する位置で交差する。このため、スプリング70は、第1支持部51に支持される場合と第2支持部52に支持される場合とのいずれであっても、中央孔41bに臨むように支持される。よって、第1ホルダ40、第2ホルダ60、及び第2軸受11を組み立てて一体化したあとであっても、第2軸受11の内輪11bの孔及び中央孔41bを通じてスプリング70の傾斜(付勢)方向を目視できる。これにより、ホルダ30の組み立て後であっても、スプリング70が第1支持部51及び第2支持部52のいずれによって支持されているかを容易に確認することができる。このように、スプリング70の付勢方向を確認することで、車両のハンドル位置とスプリング70の付勢方向とが適切な組み合わせであるかを容易に確認でき、誤組み付けを防止することができる。
次に、第1ホルダ40と第2ホルダ60を係止する係止構造について、詳細に説明する。
クリップ80は、図11に示すように、一様な円形断面を有する線材をC字状に折り曲げて形成される。クリップ80の線材径(太さ)は、周方向に均一である。
第2ホルダ60の溝部61aの深さは、クリップ80の線材径よりわずかに大きく、周方向に均一である。溝部61aの底部の曲率半径R1(図10参照)は、自然状態のクリップ80の内周の曲率半径R2(図11参照)よりも大きく形成される。これにより、クリップ80を拡張しながら溝部61aに装着すると、図10に示すように、クリップ80は、両端部が溝部61aの底部に接触し、両端部を支点として弾性変形した状態となる。クリップ80では、受容部65の外周開口部65aの周方向両側の位置(図10中A部)が最も大きく膨出し、一部が第2ホルダ本体部61の外周面から径方向外側に突出する。このため、ホルダ30の全体としての外径、具体的には、第2ホルダ本体部61とクリップ80の外周との間の最大幅が、収容孔3dの内径よりも大きくなる。
ギヤケース3の収容孔3dへのホルダ30の組み付けの際には、クリップ80において第2ホルダ本体部61の外周面から径方向外側へ膨出する部分は、径方向内側に押し込まれる。よって、図12に示すように、径方向内側に押し込まれたクリップ80は、第2ホルダ本体部61に接触し押圧する(図12中B部)。これにより、第2ホルダ60は、クリップ80において最も大きく膨出する部分から弾性力を受けて、ウォームホイール1から離れるように反ギヤ側へ向けて第3方向に付勢される。このようにして、ホルダ30は、クリップ80の弾性力により、収容孔3dに対して弾性支持される。
また、第2ホルダ60の第2ホルダ本体部61は、クリップ80の弾性力(付勢力)を受けて、収容孔3dの内周面に押し付けられる。より具体的には、第2ホルダ本体部61において、隔壁部61b及び隔壁部61bから軸方向に延びる外周の一部が、収容孔3dの内周面に押し付けられる。
ここで、第2ホルダ60が収容孔3dの反ギヤ側の内周面に接触していない場合、ウォームホイール1からウォームシャフト2へ反力が作用すると、第1ホルダ40がスプリング70の付勢力に抗して反ギヤ側へ移動すると共に、第2ホルダ60もクリップ80の弾性力に抗して反ギヤ側へ移動する。このように、スプリング70を支持する第1ホルダ40及び第2ホルダ60の両方が移動してしまうため、スプリング70が発揮する付勢力がばらついて、安定しなくなる。
これに対し、本実施形態のように、ウォームホイール1からウォームシャフト2に反力が作用していない静止状態で第2ホルダ60が収容孔3dの内周面に接触するため、ウォームホイール1から反力が作用しても、ウォームホイール1から離れる方向への第2ホルダ60のそれ以上の移動は規制される。スプリング70の一端を支持する第2ホルダ60の移動が規制されることで、スプリング70の一端が接地された状態となるため、ウォームホイール1の反力に抗して安定した付勢力を発揮することができる。このため、バックラッシュをより確実に低減させることができる。
なお、クリップ80及び第2ホルダ60の溝部61aは、第2ホルダ60を収容孔3dの内周面に反ギヤ側へ向けて押し付ける弾性力(付勢力)が、第2ホルダ60が収容孔3dの内周面に向かう際に生じる摩擦力よりも大きくなるように設定される。具体的には、クリップ80及び溝部61aは、第2ホルダ60と第1ホルダ40との間に生じる摩擦力と、第2ホルダ60の第1,第2ガイド部62a,62bと第2軸受11との間に生じる摩擦力と、の合力よりも、クリップ80が第2ホルダ60を付勢する付勢力が大きくなるように、構成される。さらに言えば、クリップ80及び溝部61aは、第1ホルダ40及び第2軸受11に対して第2ホルダ60に生じる摩擦力に打ち勝つように、クリップ80が第2ホルダ60に対して付勢力を発揮するように構成される。これにより、クリップ80によって第2ホルダ60を収容孔3dの内周面に対して反ギヤ側へより確実に押し付けることができる。
また、上述のように、第1ホルダ40と第2ホルダ60は、第2軸受11の径方向に重ならないように構成されると共に、スプリング70は、第1ホルダ40と第2ホルダ60の間に設けられ第2軸受11とは軸方向に離間する。これにより、ホルダ30をコンパクトな構成とすることができる。一方、このような構成とすることで、第1ホルダ40は、第2ホルダ60から抜け出るようにスプリング70の付勢力をうける。これに対し、本実施形態では、第1ホルダ40がスプリング70の付勢力を受けて互いに分離しないように、第1ホルダ40と第2ホルダ60とがクリップ80によって係止される。クリップ80によって第1ホルダ40、第2ホルダ60、及び第2軸受11がクリップ80によって一体化されることで、これらを一体としてギヤケース3の収容孔3dに組み付けることができ、組み立て性が向上する。したがって、ホルダ30がコンパクトな構成となると共に、収容孔3dへの組み立て性も向上する。
さらに、ホルダ30を一体化させるクリップ80によって、ホルダ30を弾性支持するため、部品点数を増加させずに、収容孔3dに対するホルダ30の保持力を確保することができる。また、クリップ80の弾性力によって第2ホルダ60を収容孔3dの内周面に押し付けるため、スプリング70の付勢力を安定させることができる。
以上のように、第1ホルダ40と第2ホルダ60を第2軸受11の径方向外側で重ならないように構成し、クリップ80によって第1ホルダ40と第2ホルダ60とを係止すると共にホルダ30を弾性支持することにより、部品点数を増加させずに、構成のコンパクト化、収容孔3dへのホルダ30の組み立て性の確保、ホルダ30の保持力の確保、スプリング70の付勢力の安定化、といった効果を一体的に奏することができる。
また、溝部61aは、クリップ80のC字形状に対応するように、隔壁部61bによって両端が隔てられ、クリップ80の形状に対応するようなC字状に形成される。よって、溝部61aに収容されたクリップ80は、その両端が溝部61aの端部にある隔壁部61bに当接することで、周方向の移動が規制される。つまり、隔壁部61bによってクリップ80と第2ホルダ60との相対回転が規制されるため、クリップ80が常に受容部65の外周開口部65aに臨むように装着される。これにより、受容部65の外周開口部65aを通じた第1ホルダ40及び第2軸受11の脱落が、より確実に防止される。
なお、これに限らず、第2ホルダ60には隔壁部61bが設けられず、溝部61aは環状の溝であってもよい。この場合、クリップ80の両端部間における周方向の隙間は、外周開口部65aの幅(第2軸受11の外径)よりも小さいことが望ましい。これによれば、クリップ80の隙間と外周開口部65aとが重なった場合であっても、この隙間を通じて第2軸受11及び第1ホルダ40が脱落することが抑制される。なお、クリップ80の隙間と外周開口部65aとが重なり第2軸受11及び第1ホルダ40が脱落するおそれがない場合には、溝部61aを環状に形成し、クリップ80の隙間が外周開口部65a(第2軸受11の外径)より大きいものであってもよい。
次に、ホルダ30及びパワーステアリング装置100の組み立てについて説明する。
ホルダ30と第2軸受11の組み立てでは、図13に示すように、まず、第2軸受11を第1ホルダ40の第1保持部42a及び第2保持部42bの内側に収容し、第1保持部42a及び第2保持部42bによって第2軸受11を保持する。この状態では、第1開口部43a及び第2開口部43bによって、第2軸受11の外周面の一部が露出している。また、スプリング70を第1ホルダ40の支持部50におけるスプリング収容凹部55に収容し、第1支持部51によってスプリング70を支持する。
次に、第1開口部43a及び第2開口部43bから露出する第2軸受11の外周面が第1ガイド部62a及び第2ガイド部62bのガイド面62c,62d(図9等参照)に接触するように、第1ホルダ40及び第2軸受11を第2ホルダ60に組み付ける。より具体的には、図14に示すように、第2軸受11の径方向から外周開口部65aを通じて第1ホルダ40の支持部50及びスプリング70を第2ホルダ60の受容部65に挿入する。このように、スプリング70の付勢方向と第2ホルダ60への第1ホルダ40及び第2軸受11の挿入方向とが略一致するため、容易に組み立てを行うことができる。
次に、クリップ80を拡径しながら第2ホルダ60の外周に掛回し、クリップ80を溝部61aに装着する。これにより、第1ホルダ40と第2ホルダ60とは、クリップ80によって分離が防止され、クリップ80を介して係止される。また、上述のように、クリップ80の曲率半径R2は、溝部61aの曲率半径R1よりも小さく形成される。よって、ホルダ30をギヤケース3に取り付けていない状態では、クリップ80の一部は、第2ホルダ60の外周面からわずかに突出する(図10参照)。
次に、ホルダ30をギヤケース3の収容孔3dに組み付ける。この際、クリップ80において溝部61aから突出した部分が径方向内側に押し込まれ、クリップ80によって第2ホルダ60がウォームホイール1から離れるように第3方向に付勢される。よって、ホルダ30は、クリップ80の付勢力により、収容孔3dに対して弾性支持される。
このようにしてホルダ30をギヤケース3に組み付けた後、ウォームシャフト2の先端部を第2軸受11の中心の中空部内に挿入することによって、パワーステアリング装置100の組み立てが完了する。
ウォームシャフト2は、第2軸受11に挿入された状態において、第1ホルダ40及び第2軸受11を介して、スプリング70からウォームホイール1へ向かう付勢力を受ける。これにより、ウォームシャフト2とウォームホイール1との間のバックラッシュが低減され、ウォームシャフト2とウォームホイール1との噛み合い精度が確保される。
ウォームシャフト2が第2軸受11に挿入された状態では、第1ホルダ40は、収容孔3dの内周面には接触せず、離間している(図2参照)。ウォームシャフト2の回転が繰り返されウォームシャフト2とウォームホイール1の噛み合い部が摩耗するのに伴い、第1ホルダ40は、スプリング70の付勢力を受けて収容孔3dの内周面に接近する。これにより、ウォームシャフト2とウォームホイール1の噛み合い部が摩耗しても、バックラッシュを低減することができる。第1ホルダ40は、収容孔3dの内周面に接触するまで、ウォームホイール1側へ向けて移動可能である。言い換えれば、第1ホルダ40は、収容孔3dの内周面によって、ギヤ側へ向かう第3方向の移動が規制される。
次に、本実施形態の変形例について説明する。以下のような変形例も本発明の範囲内であり、以下の変形例と上記実施形態の各構成とを組み合わせたり、以下の変形例と後述の他の実施形態及びその変形例と組み合わせたり、以下の変形例同士を組み合わせたりすることも可能である。また、上記実施形態の説明において記載された変形例についても同様に、他の変形例や他の実施形態と組み合わせることが可能である。
まず、図15から図17を参照して、クリップ80による第1ホルダ40と第2ホルダ60の係止構造の変形例について説明する。なお、図15及び図16では、クリップ80と第2ホルダ60のみを図示し、その他の構成は、図示を省略する。
上記実施形態では、クリップ80は、線材径が均一に形成され、溝部61aは、深さが均一に形成される。クリップ80の内周の曲率半径R2は、溝部61aの底部の曲率半径R1よりも小さく形成される。また、ホルダ30は、クリップ80によって収容孔3dに対して弾性支持される。これに対し、ホルダ30は、収容孔3dに対して必ずしも弾性支持されていなくてもよい。
また、ホルダ30を弾性支持する場合、必ずしも、クリップ80によって第2ホルダ60を収容孔3dの内周面に押し付けなくてもよい。また、第2ホルダ60を収容孔3dの内周面に押し付ける場合であっても、上記実施形態に限らず、クリップ80及び溝部61aは任意の構成とすることができる。収容孔3dにホルダ30を組み付ける前の状態において、クリップ80の一部が径方向外側に膨出し、収容孔3dにホルダ30を組み付ける際、クリップ80が収縮されて第2ホルダ60を収容孔3dの内周面に向けて付勢する構成であればよい。
例えば、クリップ80の線材径や溝部61aの底部の深さ(径)が、周方向に変化するように構成してもよい。溝部61aの底部の深さが変化する場合を例に説明すると、図15に示すように、溝部61aの底部の径が隔壁部61bから周方向に離間するにつれて、浅くなるように形成される。言い換えれば、溝部61aの底部の曲率中心が、第2ホルダ60における第2ホルダ本体部61の外周面の曲率中心に対し、第3方向のギヤ側に偏心するように形成される。これによれば、クリップ80を溝部61aに装着すると、溝部61aにおいて深さが浅い部位に装着されるクリップ80の一部が、溝部61aから径方向外側に膨出する。
クリップ80を溝部61aに装着してホルダ30を収容孔3dに組み付ける際には、クリップ80の外周が収容孔3dの内周面に対して接触する。このため、ホルダ30を収容孔3dに組み付けると、クリップ80の内周によって、深さが浅いギヤ側から反ギヤ側へ向けて第2ホルダ本体部61が押し付けられる。これにより、上記実施形態と同様に、ホルダ30をクリップ80によって弾性支持すると共に、第2ホルダ60を収容孔3dの内周面に押し付けることができる。この場合には、クリップ80の曲率半径と溝部61aの底部の曲率半径とが同じであってもよい。クリップ80の線材径を周方向に変化させる場合も同様に、ギヤ側となる部位の線材径を大きくするように構成すればよい。この場合には、クリップ80を溝部61aに装着した状態において、クリップ80の外周の曲率中心が、第2ホルダ本体部61の外周面に対して第3方向のギヤ側に偏心する。なお、クリップ80の線材径及び溝部61aの深さの両方を、周方向に変化させるように構成してもよい。
また、例えば、図16に示すように、クリップ80の内周又は溝部61aの底部には、クリップ80を径方向外側に膨出させる隆起部80aが設けられていてもよい。隆起部80aは、クリップ80に設けられる場合には、クリップ80の内周から径方向内側に隆起する(図16参照)。また、図示を省略するが、隆起部80aは、溝部61aに設けられる場合には、底部から径方向外側に隆起、又は、溝部61aの側部から内側に隆起して設けられる。クリップ80又は溝部61aに隆起部80aが設けられることにより、クリップ80を溝部61aに装着すると、隆起部80aによってクリップ80が径方向外側に膨出する。これにより、上記実施形態と同様に、ホルダ30をクリップ80によって弾性支持すると共に、第2ホルダ60を収容孔3dの内周面に押し付けることができる。隆起部80aは、上記実施形態と同様に、第2ホルダ60の受容部65における外周開口部65aの周方向両側に設けられることが望ましい。隆起部80aは、クリップ80及び溝部61aの両方に設けられてもよい。
また、クリップ80及び/または溝部61aを正円弧形状ではなく、楕円やその他の形状に構成してもよい。その他の形状としては、例えば図17に示すように、クリップ80は、溝部61aの曲率半径R1よりも小さい曲率半径R2で形成される一対の円弧部80bと、一対の円弧部80bを繋ぐ直線状の接続部80cと、を有していてもよい。この場合、クリップ80を溝部61aに装着すると、一対の円弧部80bと接続部80cとの間の境界部分(接続部分)の2か所が径方向外側に膨出する。よって、クリップ80において膨出する2か所の境界部分によって、ホルダ30がギヤケース3に対して弾性支持される。この場合でも、上記実施形態と、同様の効果を奏する。
以上のように、ホルダ30を収容孔3dに対して弾性支持する場合には、上記実施形態における構成に限らず、その他の構成であってもよい。
また、クリップ80の弾性力によって第2ホルダ60を収容孔3dの内周面に押し付ける場合、上記実施形態のように、クリップ80は、第2開口部43bの周方向両側の2箇所が大きく膨出し、ホルダ30には2つの方向から弾性力が作用することが望ましい。これによれば、円形の第2ホルダ60をウォームホイール1とは反対側に向けて収容孔3dの内周面に対して安定して押し付けることができる。なお、これに限らず、クリップ80及び溝部61aは、第2ホルダ60が1箇所または3箇所以上から弾性力を受けるように構成されてもよい。
次に、本実施形態におけるその他の変形例について説明する。
上記実施形態では、第1ホルダ40の第1保持部42aは、第2ホルダ60の第1ホルダ開口部63aを通過可能であり、第1ホルダ開口部63aを通じて収容孔3dの内周面に当接可能に設けられる。これに対し、第2ホルダ60が第1ホルダ開口部63a及び第2ホルダ開口部63bを有する構成は、必須のものではない。つまり、第2ホルダ60は、ガイド部62が、一対のガイド面62c,62dを有する円筒状に形成されるものでもよい。少なくとも、第1ホルダ40によって保持される第2軸受11の外輪11aが、一対のガイド面62c,62dに直接接触するものであれば、ホルダ30の構成をコンパクトにすると共にウォームホイール1とウォームシャフト2の噛み合い精度を向上させることができる。
また、上記実施形態では、スプリング70は、第1ホルダ40の支持部50と第2ホルダ60の受容部65との間に圧縮状態で保持される。これに対し、少なくとも第1ホルダ40を介して第2軸受11にスプリング70の付勢力が作用する構成であればよい、例えば、第1ホルダ40とギヤケース3の収容孔3dの内周面との間でスプリング70が保持されるものでもよい。また、第2軸受11とスプリング70とが、第2軸受11の軸方向に離間する構成に限らず、第2軸受11の径方向外側にスプリング70が設けられる構成であってもよい。
また、上記実施形態では、第1支持部51は、第1着座面51a、第1側壁面51b,51c、及び第1周壁面51dを有する。第2支持部52は、第2着座面52a、第2側壁面52b,52c、及び第2周壁面52dを有する。つまり、第1支持部51及び第2支持部52は、スプリング70を収容するスプリング収容凹部55を区画する壁面によって構成される。これに対し、第1支持部51及び第2支持部52は、スプリング70を第1付勢方向及び第2付勢方向に付勢力を発揮するように支持できる限りは、上記構成に限らず、任意の構成とすることができる。例えば、第1支持部51及び第2支持部52は、スプリング70の内側に挿通してスプリング70を内周支持する突起であってもよい。この場合、突起は、第1ホルダ40の支持部50及び第2ホルダ60の受容部65のいずれに設けられてもよい。
以上の第1実施形態によれば、以下に示す効果を奏する。
パワーステアリング装置100では、第2軸受11は、第2ホルダ60における第1ガイド部62a及び第2ガイド部62bのガイド面62c,62dに直接接触して移動が案内される。このように、第2軸受11が第1ホルダ40を介して移動が案内されるものではなく、第1ガイド部62a及び第2ガイド部62bによって直接案内される構成であるため、第1ホルダ40の寸法精度が噛み合い精度に影響することを抑制できる。したがって、ウォームホイール1とウォームシャフト2との噛み合い精度を向上させることができる。
また、スプリング70は、第1ホルダ40と第2ホルダ60とによって保持される。スプリング70は、第2軸受11と径方向に並んで径方向外側から第2軸受11を付勢するものではなく、第2軸受11とは軸方向に並んで第1ホルダ40を介して第2軸受11を付勢する。このため、第2軸受11の径方向での大型化を防止することができる。
また、ホルダ30は、第1付勢方向に付勢力を発揮するようにスプリング70を支持する第1支持部51と、第2付勢方向に付勢力を発揮するようにスプリング70を支持する第2支持部52と、を有する。このため、パワーステアリング装置100が左ハンドル車と右ハンドル車のいずれに搭載される場合であっても、共通のホルダ30によってハンドル位置に応じたスプリング70に適切な方向の付勢力を発揮させることができる。よって、車種ごとにホルダ30を製造する必要がなく、ホルダ30を製造する金型が共通化されるため、製造コストを低減することができる。
また、ホルダ30は、突起58を備えるため、スプリング70を支持しない第1支持部51及び第2支持部52の一方によってスプリング70が支持された場合に、誤組み付けであることを容易に検知することができる。
また、第1ホルダ40は、ウォームシャフト2の干渉を回避する中央孔41bを有し、中央孔41bを通じてスプリング70の付勢方向を目視することができる。よって、第1ホルダ40と第2ホルダ60とを組み立てた状態であっても、中央孔41bを通じた目視によって、スプリング70の付勢方向が異なる誤組み付けを容易に検知することができる。
また、ホルダ30では、第2ホルダ60が、第1ホルダ40の保持部42及び第2軸受11の通過を許容するホルダ開口部63を有し、第1ホルダ40の保持部42は、ホルダ開口部63を通じて収容孔3dの内周面に臨む。第1ホルダ40の移動は、第1開口部43a及び第2開口部43bを通じて、第1保持部42a及び第2保持部42bが収容孔3dの内周面に接触することで規制される。よって、ホルダ30では、第1ホルダ40の第1保持部42a及び第2保持部42bが、第2ホルダ60の第1開口部43a及び第2開口部43bを通じて、第1ガイド部62aと第2ガイド部62bに周方向に並ぶように構成される。このように、第2軸受11の径方向において、第1ホルダ40と第2ホルダ60とが重ならないため、ホルダ30の構成をコンパクトにすることができる。さらに、第3方向におけるウォームホイール1とウォームシャフト2との噛み合い精度は、第2ホルダ60の寸法精度に影響されないため、より一層向上する。
また、ホルダ30では、クリップ80によって第1ホルダ40と第2ホルダ60が係止され、ホルダ開口部63を通じて第1ホルダ40及び第2軸受11が第2ホルダ60から脱落することが規制される。クリップ80は、ホルダ30を収容孔3dに対して弾性支持する。これにより、単一のクリップ80によって第1ホルダ40と第2ホルダ60を係止すると共に、収容孔3dに対するホルダ30の保持力を確保することができ、部品点数を削減することができる。
また、ホルダ30では、クリップ80の弾性力によって、第2ホルダ60がウォームホイール1から離れる方向に付勢され収容孔3dの内周面に押し付けられる。これにより、スプリング70によってウォームシャフト2をウォームホイール1へ付勢する付勢力が、クリップ80の弾性力の影響を受けないため、安定的にウォームシャフト2を付勢することができる。
(第2実施形態)
次に、図18及び図19を参照して、本発明の第2実施形態について説明する。以下では、上記第1実施形態と異なる点を中心に説明し、上記第1実施形態と同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
第2実施形態では、第1ホルダ40と第2ホルダ60を係止する構造が、上記第1実施形態とは異なる。上記第1実施形態では、第1ホルダ40と第2ホルダ60とを係止する係止部材は、C字状のクリップ80であるのに対し、第2実施形態のホルダ130は、クリップ80に代えて、係止部材としての弾性リング180を備える。以下、具体的に説明する。なお、第1ホルダ40と第2ホルダ60との係止構造以外の構成については、上記第1実施形態と同様の構成であるため、説明及び図示を適宜省略する。
図18に示すように、第2ホルダ160の第2ホルダ本体部161の外周面には、円環状の環状溝161aが形成される。環状溝161aは、円弧断面を有する。環状溝161aは、第2ホルダ本体部61の中心に対して第3方向の反ギヤ側が最も深い最深部161bとなり、ギヤ側が最も浅い最浅部161cとなる。環状溝161aの深さは、最深部161bから最浅部161cに向けて、徐々に浅くなる。環状溝161aは、受容部65の外周開口部65aに連通し、外周開口部65aによって隔てられる。よって、環状溝161aの底部の曲率中心O1は、第2ホルダ60における第2ホルダ本体部61の外周面の曲率中心O2に対して、第3方向のギヤ側に偏心する。
弾性リング180は、円形断面を有する樹脂製のOリングである。弾性リング180の線材径は、均一に形成される。図19に示すように、弾性リング180を環状溝161aに装着した状態では、弾性リング180の外周の曲率中心O3は、環状溝161aの曲率中心O1と一致し、第2ホルダ本体部61の外周面の曲率中心O2に対して第3方向のギヤ側に偏心する。
上記第1実施形態と同様に、第1ホルダ40を第2ホルダ160に組み付けた状態で、弾性リング180を環状溝161aに装着することにより、外周開口部65aを通じて第1ホルダ40が第2ホルダ160から抜け出ることが規制される。このようにして、弾性リング180により第1ホルダ40と第2ホルダ160とが係止される。
弾性リング180を環状溝161aに装着すると、弾性リング180の一部が第2ホルダ本体部161の外周面から径方向外側に突出する。環状溝161aの最深部161bでは、弾性リング180は、第2ホルダ本体部161の外周面から突出しない。反対に、弾性リング180は、最浅部161cにおいて最も大きく突出する。
ホルダ30をギヤケース3の収容孔3dに組み付ける際、環状溝161aから径方向外側へ突出する弾性リング180の一部は、径方向内側に押し込まれて圧縮される。よって、圧縮される弾性リング180の弾性力が第2ホルダ160に作用する。弾性リング180は、最浅部161cにおいて最も大きく圧縮され、最深部161bにむかうにつれて圧縮量は小さくなる。このため、第2ホルダ160は、圧縮された弾性リング180によってウォームホイール1から離れるように第3方向の反ギヤ側に付勢される。これにより、上記第1実施形態におけるクリップ80による係止構造と同様に、ホルダ130は、弾性リング180の弾性力により、収容孔3dに対して弾性支持される。
また、第2ホルダ160の第2ホルダ本体部161は、弾性リング180の弾性力を受けて、収容孔3dの内周面に押し付けられる。よって、第2実施形態に係るパワーステアリング装置100は、上記第1実施形態におけるクリップ80による係止構造が奏する効果と同様の効果を奏する。
次に、第2実施形態の変形例について説明する。
上記第2実施形態では、弾性リング180の線材径が均一に形成され、環状溝161aの深さが周方向に変化するように形成される。これに対し、弾性リング180の線材径を周方向に変化させ、環状溝161aの深さを均一としてよい。この場合にも、上記実施形態と同様に、環状溝161aに装着された弾性リング180の外周面の曲率中心O3は、第2ホルダ本体部161の外周面の曲率中心O2に対して偏心する。この場合、第2ホルダ160が第3方向の反ギヤ側に向けて収容孔3dの内周面に押し付けられるようにするには、弾性リング180において線材径が太い部分がギヤ側に位置するように取り付ける必要がある。このため、組み立て工程が複雑化するものの、上記実施形態と同様の効果を奏することができる。また、環状溝161aの深さ及び弾性リング180の線材径の両方を周方向に変化するように構成してもよい。
また、上記第1実施形態と同様であるため、図示及び詳細な説明は省略するが、弾性リング180及び/又は環状溝161aに隆起部80aを設けて、弾性リング180によってホルダ130を弾性支持すると共に、第2ホルダ160を収容孔3dの内周面に押し付けるように構成してもよい。また、弾性リング180を、正円形状以外の楕円形状やその他の形状に形成してもよい。
以上の第2実施形態によれば、上記第1実施形態と同様の効果を奏する。
(第3実施形態)
次に、図20〜図26を参照して、本発明の第3実施形態について説明する。以下では、上記第1実施形態と異なる点を中心に説明し、上記第1実施形態と同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
第3実施形態では、ホルダ230は、図20及び図21に示すように、第2軸受11を保持する保持部242を有する第1ホルダ240と、ウォームホイール1へ向かう第2軸受11の移動を案内するガイド部62を有する第2ホルダ260と、第1ホルダ240と第2ホルダ260との間に圧縮状態で設けられ第1ホルダ240を介して第2軸受11をウォームホイール1へ向けて付勢するスプリング70と、を有する。
図22及び図23に示すように、第1ホルダ240は、板状の第1ホルダ本体部241と、第1ホルダ本体部241に設けられる保持部242と、第2軸受11の外輪11aの外周面の一部を露出させる開口部243と、スプリング70の一端が着座する着座部245と、を有する。第1ホルダ本体部241には、上記第1実施形態と同様に、中央孔41bが形成される。
保持部242は、図20及び図22に示すように、第2軸受11よりも第3方向の反ギヤ側に設けられる単一の壁部である。保持部242は、第2軸受11の中心軸に沿って第1ホルダ本体部241から突出する。保持部242は、径方向内側が第2軸受11の外輪11aに対応するような円弧形状に形成され、外側が収容孔3dの内周面に対応するような円弧形状に形成される。
開口部243は、保持部242の周方向に設けられる。第1ホルダ240では、約120°の範囲で保持部242が形成され、残りの240°の範囲は、開口部243として形成される。開口部243は、円筒状の壁部の周方向の一部を内外周面に開口するように切り欠いて形成される。言い換えれば、第3実施形態の第1ホルダ40は、第1実施形態における第1ホルダ40において、第1保持部42aを設けず、第1開口部43aと第2開口部43bとを開口で繋げた形状に形成される。第3実施形態における開口部243も、保持部242によって保持された第2軸受11の外輪11aの外周面の一部を外部に露出させる。
着座部245は、第1ホルダ本体部41において、保持部242とは反対側において第1ホルダ本体部241に接続して設けられる。着座部245は、第3方向の位置が、第2軸受11の中心軸を挟んで保持部242とは反対側となるように設けられる。つまり、第2軸受11に対して、保持部242が第3方向の反ギヤ側に設けられ、着座部245がギヤ側に設けられる。
本実施形態では、後述する間座部266によって、スプリング70は、第1付勢方向に付勢力を発揮するように、支持される。よって、図23及び図26に示すように、第1ホルダ40には、第1付勢方向に付勢力を発揮するスプリング70が着座する単一の着座部245が設けられる。着座部245は、図23に示すようにスプリング70が支持される方向に対応する着座部245のみが設けられてもよい。また、上記第1実施形態の第1受容面67及び第2受容面68のように、着座部245は、スプリング70が第1付勢方向及び第2付勢方向のいずれに付勢力を発揮する場合でも、スプリング70の一端が着座するように構成してもよい。
図24及び図25に示すように、第2ホルダ260は、円板状の第2ホルダ本体部261と、第2ホルダ本体部261に設けられるガイド部62と、ガイド部62に接続し第1ホルダ40の保持部42と共に第2軸受11を保持する補助保持部262と、スプリング70の両端部70a,70bの間の中間部70cが着座する間座部266と、ギヤケース3の位置決め孔3eに挿入される位置決め凸部64と、を有する。
第2ホルダ本体部261は、第1ホルダ240の着座部245の通過を許容する通過孔261aと、ガイド部62及び補助保持部262とは軸方向の反対側に形成され、第3方向に延びる切欠267と、を有する。
通過孔261aは、切欠267と連通する。第1ホルダ240の着座部245は、通過孔261aを通じて、第2ホルダ本体部261の切欠267内に挿入される。
切欠267には、スプリング70が収容される。切欠267は、図25及び図26に示すように、第1付勢方向に延びる第1壁面267aと、第2付勢方向に延びる第2壁面267bと、によって区画される。切欠267は、第1付勢方向及び第2付勢方向のいずれに付勢力を発揮する場合にも、スプリング70を収容可能である。
ガイド部62は、上記第1実施形態と同様に、第1ガイド部62a及び第2ガイド部62bを有する。第1ガイド部62a及び第2ガイド部62bは、互いに平行に設けられる一対のガイド面62c,62dと、爪部62e,62fと、をそれぞれ有する。本実施形態においても、第1ホルダ240の開口部243を通じて露出した第2軸受11の外輪11aの一部は、第1ガイド部62a及び第2ガイド部62bに直接接触する。
補助保持部262は、第2軸受11の中心軸よりも第3方向のギヤ側に設けられる円弧状の壁部である。第2軸受11は、第1ホルダ240の保持部242と第2ホルダ260の補助保持部262とによって保持される。補助保持部262は、第1ガイド部62a及び第2ガイド部62bを周方向に接続する。
補助保持部262とは反対側の第1ガイド部62aと第2ガイド部62bとの周方向の間には、ホルダ開口部263が設けられる。第1ホルダ240の保持部242は、ホルダ開口部263を通じて収容孔3dの内周面に臨む(図26参照)。このように、本実施形態においても、上記第1実施形態と同様に、第2軸受11と収容孔3dの内周面との間において、第1ホルダ240と第2ホルダ260とが、径方向に重ならないように構成される。よって、ホルダ230をコンパクトに構成することができる。
間座部266は、切欠267を構成する第1壁面267a及び第2壁面267bを接続するように、切欠267内に設けられる。間座部266には、切欠267内に収容されるスプリング70の中間部70cが着座する。間座部266は、第1付勢方向に垂直な第1間座部266aと、第2付勢方向に垂直な第2間座部266bと、を有する。スプリング70を第1間座部266aと第2間座部266bのいずれに着座させるかによって、スプリング70の付勢方向を変えることができる。このように、第3実施形態においては、間座部266(第1間座部266a,第2間座部266b)が、スプリング70を第1付勢方向及び第2付勢方向に付勢力を発揮するように支持する支持部(第1支持部,第2支持部)に相当する。
図26に示すように、スプリング70の一端部70aは、第1ホルダ240の着座部245に着座し、他端部70bは、収容孔3dの内周面に着座する。スプリング70の一端部70aと中間部70cとの間、及び、他端部70bと中間部70cとの間は、それぞれ圧縮された状態で保持される。スプリング70では、中間部70cが間座部266に着座するため、一端部70aに作用する軸力は、他端部70bには作用せず、その反対も同様である。よって、スプリング70では、一端部70aと中間部70cとの間で一つのばね作用が発揮され、中間部70cと他端部70bとの間で一つのばね作用が発揮されて、独立した2つのばね作用が見掛け上発揮される。
本実施形態では、一端部70aと中間部70cとの間のスプリング70によって、第1ホルダ240の保持部242と第2ホルダ260の補助保持部262とが互いに近づくような付勢力が作用する。このため、保持部242及び補助保持部262が第2軸受11の外輪11aに押し付けられる。これにより、第1ホルダ240、第2ホルダ260、及び第2軸受11が分離せず、一体化される。つまり、スプリング70の一端部70aと中間部70cとの間の一部が、第1ホルダ240及び第2ホルダ260を係止する係止部材として機能する。
また、一端部70aと中間部70cとの間のスプリング70は、第2ホルダ260に対して第1ホルダ240をギヤ側へ向けて付勢する付勢力を発揮する。よって、スプリング70は、付勢部材としても機能する。
さらに、スプリング70の他端部70bと中間部70cとの間の一部が、ホルダ230を収容孔3dに対して弾性支持する機能を発揮する。
このように、本実施形態では、付勢部材と係止部材とが一つのスプリング70として一体に構成される。
ここで、一端部70aと中間部70cとの間のスプリング70は、図26に示すように、反ギヤ側へ向かう方向の付勢力(以下、「第1付勢力F1」と称する。)を第2ホルダ260に対して発揮する。他端部70bと中間部70cとの間のスプリング70は、ギヤ側へ向かう方向の付勢力(以下、「第2付勢力F2」と称する。)を第2ホルダ260に対して発揮する。第1付勢力F1が第2付勢力F2よりも大きい場合には、第2ホルダ260が反ギヤ側に向けて移動するように付勢されるため、ウォームシャフト2をギヤ側へ向けて確実に付勢することができなくなる。そこで、ホルダ230では、ウォームシャフト2及び第2軸受11をギヤ側に向けて付勢するために、第2付勢力F2が第1付勢力F1よりも大きくなるように構成される。具体的には、スプリング70において間座部266に着座する中間部70cの位置(言い換えれば、一端部70aと中間部70cとの間及び他端部70bと中間部70cとの間における圧縮量)、スプリング70のピッチ、スプリング70の巻き径といったスプリング70の形状や取付構造を適切に設定し、第2付勢力F2が第1付勢力F1よりも大きくなるように構成される。これにより、第2ホルダ260が反ギヤ側へ移動することが防止され、ウォームシャフト2及び第2軸受11をギヤ側へ向けてより確実に付勢することができる。
ホルダ230の組み立てでは、まず、第1ホルダ240の着座部245が第2ホルダ260の通過孔261aを挿通するように、第1ホルダ240と第2ホルダ260を組み合わせる。また、第1ホルダ240の保持部242と第2ホルダ260の補助保持部262との間に第2軸受11を収容する。次に、スプリング70の中間部70cを第1間座部266aに着座させ、一端部70aを所定量だけ圧縮して着座部245に着座させる。このようにして、ホルダ230が組み立てられる。第3実施形態では、上記第1実施形態とは異なり、第2軸受11の軸方向に沿って第1ホルダ240と第2ホルダ260とを組み付ける。
ホルダ230を収容孔3dに組み付けるには、位置決め凸部64を位置決め孔3eに挿入するように、スプリング70の他端部70bを押し縮めながらホルダ230を収容孔3dに収容する。これにより、ホルダ230は、スプリング70の中間部70cと他端部70bとの間の付勢力によって、収容孔3dに対して弾性支持される。
以上のような第3実施形態においても、第2軸受11が第2ホルダ260のガイド部62に直接接触するため、ウォームホイール1とウォームシャフト2の噛み合い精度は、第1ホルダ40の寸法精度の影響は受けない。
また、スプリング70が、第1ホルダ40を介して第2軸受11を付勢する付勢部材と、第1ホルダ40と第2ホルダ60とを係止する係止部材と、の両方の機能を発揮するため、部品点数を削減することができる。
なお、スプリング70は、他端が収容孔3dの内周面に着座するため、第2ホルダ60を収容孔3dの内周面に押し付ける機能は発揮しないものの、その他は、上記第1実施形態と同様の効果を奏する。
以下、本発明の実施形態の構成、作用、及び効果をまとめて説明する。
パワーステアリング装置100は、電動モータ7の駆動に伴って回転するウォームシャフト2と、ウォームシャフト2に噛み合うウォームホイール1と、ウォームシャフト2の先端側を回転自在に支持する第2軸受11と、ウォームシャフト2を収容するギヤケース3と、ギヤケース3に設けられる収容孔3dに収容され、第2軸受11を収容するホルダ30,130,230と、を備え、ホルダ30,130,230は、第2軸受11の外周を保持する保持部42,242及び第2軸受11の外周の一部を露出させる開口部43,243を有する第1ホルダ40,240と、開口部43,243を通じて第2軸受11の外周が接触しウォームホイール1へ向かう第2軸受11の移動を案内するガイド部62を有する第2ホルダ60,160,260と、第1ホルダ40,240を介して第2軸受11をウォームホイール1へ向けて付勢するスプリング70と、を有する。
この構成では、第2軸受11は、第2ホルダ60,160,260のガイド部62に直接接触して移動が案内される。このように、第2軸受11が第1ホルダ40,240を介して移動が案内されるものではなく、ガイド部62によって直接案内される構成であるため、第1ホルダ40,240の寸法精度が噛み合い精度に影響することが抑制される。したがって、パワーステアリング装置100においてウォームシャフト2とウォームホイール1との噛み合い精度を向上させることができる。
パワーステアリング装置100は、ガイド部62が第2軸受11を案内する方向への第2軸受11及び第1ホルダ40の保持部42の通過を許容するホルダ開口部63を有する。
この構成では、第1ホルダ40によって保持される第2軸受11を、ホルダ開口部63を通じて第2ホルダ60内に挿入することができる。これにより、第2ホルダ60への第1ホルダ40及び第2軸受11の組付け方向と、付勢部材による付勢方向(第2軸受11の移動方向)とが一致するため、組み付け性が向上する。
パワーステアリング装置100では、第1ホルダ40,240の保持部42,242は、ホルダ開口部63,263を通じて収容孔3dの内周面に臨む。
この構成では、第1ホルダ40,240の保持部42,242が、第2ホルダ60,260に接触して移動が規制されるものではなく、収容孔3dの内周面に直接臨んでいる。このため、第2軸受11の移動方向における第2ホルダ60,260の寸法精度が、ウォームシャフト2とウォームホイール1との噛み合い精度に影響することが抑制される。したがって、より一層噛み合い精度を向上させることができる。
パワーステアリング装置100では、第2ホルダ60のガイド部62は、それぞれ第2軸受11の外周面に接触し第2軸受11の中心軸を挟んで互いに平行に設けられるガイド面62c,62dを有する第1ガイド部62a及び第2ガイド部62bからなり、第2ホルダ60のホルダ開口部63は、それぞれ第1ガイド部62a及び第2ガイド部62bの周方向の間に設けられる第1ホルダ開口部63a及び第2ホルダ開口部63bからなり、第1ホルダ40の保持部42は、第2軸受11の中心軸を挟んで互いに対向して設けられる第1保持部42a及び第2保持部42bからなり、第1保持部42a及び第2保持部42bは、それぞれ第1開口部43a及び第2開口部43bを通じて、第1ガイド部62a及び第2ガイド部62bと周方向に並んで設けられる。
この構成では、第2軸受11と収容孔3dの内周面との間において、第1ホルダ40の構成と第2ホルダ60の構成とが第2軸受11の径方向に重ならないため、ホルダ30をコンパクトに構成することができる。
パワーステアリング装置100では、スプリング70は、第1ホルダ40と第2ホルダ60との間に圧縮状態で保持される。
パワーステアリング装置100では、第1ホルダ40は、第2軸受11の軸方向に保持部42と並んで設けられスプリング70を支持する支持部50を有し、第2ホルダ60は、第2軸受11の軸方向にガイド部62と並んで設けられ付勢部材を支持する受容部65を有し、スプリング70は、第1ホルダ40の支持部50と第2ホルダ60の受容部65との間に圧縮状態で保持される。
これらの構成では、スプリング70は、第2軸受11に対して軸方向に並ぶように設けられ、第2軸受11を径方向に付勢する。このため、第2軸受11の径方向において、パワーステアリング装置100の構成をコンパクトにすることができる。
また、本明細書には、以下の発明が含まれる。
パワーステアリング装置100は、電動モータ7の駆動に伴って回転するウォームシャフト2と、ウォームシャフト2に噛み合うウォームホイール1と、ウォームシャフト2の先端側を回転自在に支持する第2軸受11と、ウォームシャフト2を収容する収容孔3dが設けられるギヤケース3と、ギヤケース3に設けられる収容孔3dに収容され、第2軸受11を収容するホルダ30,130,230と、を備え、ホルダ30,130,230は、第2軸受11を保持する第1ホルダ40,240と、ウォームホイール1へ向かう第2軸受11の移動を案内するガイド部62を有する第2ホルダ60,160,260と、第1ホルダ40,240と第2ホルダ60,160,260との間に圧縮状態で設けられ第1ホルダ40,240をウォームホイール1に向けて付勢するスプリング70と、を有し、第2ホルダ60は、ガイド部62が第2軸受11を案内する方向への第2軸受11及び第1ホルダ40,240の通過を許容するホルダ開口部63,263を有し、第1ホルダ40,240は、ホルダ開口部63,263を通じて収容孔3dの内周面に臨む。
この構成では、第2ホルダ60,160,260のホルダ開口部63,263を通じて第1ホルダ40,140は収容孔3dの内周面に臨む。このように、ガイド部62が案内する方向において、第1ホルダ40,140及び第2ホルダ60,160,260が重ならずに構成されるため、ホルダ30,130,230をコンパクトに構成することができる。したがって、パワーステアリング装置100を小型化することができる。
パワーステアリング装置100では、ホルダ30,130,230は、第1ホルダ40と第2ホルダ60とを係止する係止部材(クリップ80、弾性リング180、スプリング70)をさらに有し、係止部材(クリップ80、弾性リング180、スプリング70)は、収容孔3dに対してホルダ30,130,230を弾性支持する。
この構成では、係止部材(クリップ80、弾性リング180、スプリング70)によって収容孔3dに対するホルダ30の保持力が確保されるため、部品点数を削減することができる。
パワーステアリング装置100では、第2ホルダ60,160は、係止部材(クリップ80、弾性リング180)によって、ウォームホイール1から離れる方向に付勢され収容孔3dの内周面に押し付けられる。
この構成では、スプリング70の付勢力が係止部材(クリップ80、弾性リング180)による弾性力の影響を受けないため、スプリング70の付勢力を安定させることができる。
パワーステアリング装置100では、第2ホルダ60は、外周面に円弧状に延びる溝部61aを有し、係止部材は、溝部61aに収容される円弧状のクリップ80である。
パワーステアリング装置100では、クリップ80は、周方向に線材径が変化する。
パワーステアリング装置100では、溝部61aは、周方向に深さが変化する。
パワーステアリング装置100では、溝部61a及びクリップ80の少なくとも一方には、クリップ80を径方向外側に膨出させる隆起部80aが設けられる。
パワーステアリング装置100では、クリップ80は、円弧状に形成される一対の円弧部80bと、一対の円弧部80bを繋ぐ直線状の接続部80cと、を有する。
第2実施形態に係るパワーステアリング装置100では、第2ホルダ160は、外周面に環状溝161aを有し、係止部材は、環状溝161aに収容される円環状の弾性リング180である。
第2実施形態に係るパワーステアリング装置100では、環状溝161aは、周方向に深さが変化する。
第3実施形態に係るパワーステアリング装置100では、付勢部材と係止部材とは、一体に形成されるスプリング70として構成され、スプリング70は、一端部70aが第1ホルダ240に着座すると共に他端部70bが収容孔3dの内周面に着座し、第1ホルダ240は、第2軸受11を保持する保持部242と、スプリング70の一端部70aが着座する着座部245と、を有し、第2ホルダ260は、保持部242と共に第2軸受11を保持する補助保持部262と、スプリング70の一端部70aと他端部70bとの間の中間部70cが着座する間座部266と、を有し、スプリング70の一端部70aと中間部70cとの間の付勢力によって、保持部242及び補助保持部262が第2軸受11に押し付けられて第1ホルダ240及び第2ホルダ260が互いに係止される。
この構成では、スプリング70が付勢部材及び係止部材の両方の機能を発揮するため、部品点数を削減することができる。
パワーステアリング装置100は、電動モータ7の駆動に伴って回転するウォームシャフト2と、ウォームシャフト2に噛み合うウォームホイール1と、ウォームシャフト2の先端側を回転自在に支持する第2軸受11と、ウォームシャフト2を収容するギヤケース3と、ギヤケース3内に配置され、第2軸受11を収容するホルダ30,130,230と、を備え、ホルダ30,130,230は、第2軸受11を保持する第1ホルダ40,240と、ウォームホイール1へ向かう第2軸受11の移動を案内するガイド部62を有する第2ホルダ60,160,260と、第1ホルダ40,240と第2ホルダ60,160,260との間に圧縮状態で設けられるスプリング70と、第1ホルダ40,240及び第2ホルダ60,160,260のいずれかに設けられスプリング70を支持する支持部(支持部50,間座部266)を有し、支持部(支持部50,間座部266)は、第1付勢方向に付勢力を発揮するようにスプリング70を支持可能な第1支持部(第1支持部51,第1間座部266a)と、第1付勢方向とは異なる第2付勢方向に付勢力を発揮するようにスプリング70を支持可能な第2支持部(第2支持部52,第2間座部266b)と、を有し、スプリング70は、第1支持部(第1支持部51,第1間座部266a)及び第2支持部(第2支持部52,第2間座部266b)のいずれかによって支持される。
この構成では、付勢部材は第1ホルダ40,240と第2ホルダ60,160,260との間に設けられ、支持部(支持部50,間座部266)は第1ホルダ40,240及び第2ホルダ60,160,260のいずれかに設けられる。また、第1支持部(第1支持部51,第1間座部266a)及び第2支持部(第2支持部52,第2間座部266b)のいずれによりスプリング70を支持するかによって、スプリング70による付勢方向を変更することができる。このように、ホルダ30,130,230の構成によってスプリング70の付勢方向を変えることができるため、左ハンドル車及び右ハンドル車のそれぞれに対して共通のホルダ30,130,230を使用することができると共に、装置構成の共通化のためにギヤケース3に加工を施す必要もない。したがって、パワーステアリング装置100の製造コストを低減することができる。
パワーステアリング装置100では、支持部50は、第1ホルダ40に設けられ、スプリング70は、支持部50に設けられるスプリング収容凹部55に収容され、スプリング収容凹部55は、第1支持部51によって区画される第1収容凹部56と、第2支持部52によって区画される第2収容凹部52と、を有し、第1収容凹部56と第2収容凹部56とは、互いに交差するように設けられる。
パワーステアリング装置100では、第1ホルダ40及び第2ホルダ60のいずれか一方には、付勢部材を支持していない第1支持部51及び第2支持部52の一方が付勢部材を支持した場合に、第1ホルダ40と第2ホルダ60との組み付けを阻害する誤組み防止部が形成される。
この構成では、ホルダ30の組立時において、付勢部材の組付け方向の誤りを容易に検知することができる。
パワーステアリング装置100では、第1ホルダ40,240には、ウォームシャフト2との干渉を回避する中央孔41bが形成され、付勢部材は、中央孔41bに臨んで第1支持部(第1支持部51,第1間座部266a)又は第2支持部(第2支持部52,第2間座部266b)によって支持される。
この構成では、ホルダ30,130,230を組み立てた後であっても、中央孔41bからの目視によってスプリング70の付勢方向を確認することで、スプリング70の組付け方向の誤りを容易に検知することができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
上記各実施形態では、ウォームホイール1はステアリングシャフトの出力軸に設けられる。この構成に代え、ウォームホイール1を、ステアリングシャフトとは別体に設けられラック軸に噛み合うピニオン軸に設けるようにしてもよい。