JP6852397B2 - 分析用試料の調製方法および分析方法 - Google Patents

分析用試料の調製方法および分析方法 Download PDF

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Description

本発明は、糖ペプチドまたは糖タンパク質の分析用試料の調製方法、および分析方法に関する。
ペプチド鎖への糖鎖付加は、翻訳後修飾の中で最も重要なプロセスの1つである。ペプチド鎖に糖鎖が付加した糖タンパク質は、様々な生命現象に関わっている。生体内では、タンパク質に付加した糖鎖のわずかな構造の違いが精密に認識されることによって、細胞間のシグナル伝達や分子認識等が制御されていると考えられており、糖タンパク質や糖ペプチドの構造解析は、生命現象の解明や、創薬、バイオマーカー開発等に大きな貢献をもたらすことが期待される。
タンパク質に結合した糖鎖は、シアル酸を有することが多い。糖鎖のシアル酸は分子認識に直接関与するため、シアル酸の有無(シアル酸の数)やその結合様式を分析することは、糖タンパク質や糖ペプチドの構造解析において重要である。
糖鎖におけるシアル酸は、還元末端側の糖残基との結合様式がα2,3‐結合であるものとα2,6‐結合であるもの(結合異性)が存在する。生体では、シアル酸の結合様式の相違が様々な生命現象に関与することが知られており、例えば、癌化に伴ってシアル酸の結合様式が変化することが知られている。そのため、シアル酸の結合様式の違いを識別することは、バイオマーカーとしての利用や、バイオ医薬品の品質管理等においても注目されている。
糖鎖におけるシアル酸の結合様式を識別する方法として、シアル酸の結合様式に応じて異なる質量をもつように誘導体化を行い、質量分析を行う方法が提案されている。例えば、特許文献1では、1‐メチル‐3‐p‐トリルトリアゼン(MTT)を用いてシアル酸のメチルエステル化を行った後、酸性条件にする方法が提案されている。この方法では、酸性条件下でα2,3‐シアル酸のメチルエステルが選択的に脱メチル化されるため、α2,3‐シアル酸とα2,6‐シアル酸から質量の異なる誘導体が得られる。非特許文献1および非特許文献2では、脱水縮合剤とメタノールやエタノール等の求核剤との存在下で糖鎖を反応させることにより、α2,6‐シアル酸は求核剤との反応によりカルボキシ基がエステル化され、α2,3‐シアル酸は分子内脱水によりラクトン環を生成することが開示されている。非特許文献3および特許文献2では、脱水縮合剤および求核剤としてのアミンの存在下での反応により、α2,6‐シアル酸は求核剤との反応によりカルボキシ基がアミド化され、α2,3‐シアル酸は分子内脱水によりラクトン環を生成することが開示されている。
α2,3‐シアリル糖鎖の分子内脱水により生成したラクトンは不安定であり、MALDI-MSのマトリックスとの混合によりラクトンが開環して分析の定量性が損なわれる場合がある。特許文献2では、脱水縮合剤(N,N’‐ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)等のカルボジイミド)およびイソプロピルアミンの存在下での反応後に、ホスホニウム系脱水縮合剤とメチルアミンとの存在下でさらに反応を実施し、ラクトンを開環してメチルアミド化している。このように、α2,3‐シアリル糖鎖から生成したラクトンを開環してより安定な誘導体を生成することにより、分析の定量性を向上できる。
特開2013−76629号公報 特開2016−194500号公報
Wheeler, S. et al., Rapid Commun. Mass Spectrom., vol. 23 pp. 303-312 (2009年) Reiding, K. et al., Anal. Chem., vol. 86, pp. 5784-5793 (2014年) de Haan, N. et al., Anal. Chem., vol. 87, pp. 8284-8291 (2015年)
質量分析によるシアル酸の結合様式の識別に関する従来の報告は、遊離糖鎖に関するものが大半であり、糖タンパク質や糖ペプチドへの適用例の報告は限定的である。脱水縮合剤と求核剤との存在下では、シアル酸のカルボキシ基だけでなく、ペプチドC末端や酸性アミノ酸残基のカルボキシ基も脱水縮合剤と反応する場合がある。また、ペプチドN末端やリジン残基のアミノ基が、分子内のカルボキシ基と脱水縮合する場合がある。
これらのペプチド部分の副反応(脱水やカルボキシ基の修飾)は、糖鎖のシアル酸のカルボキシ基の修飾反応と並行して進行する。副反応はペプチド部分のアミノ酸配列や立体配座等に依存する。そのため、どのような副反応が生じるかの予測は容易ではなく、マススペクトルのピークの帰属等のデータ解析が煩雑となる。また、副反応が中途半端に進行している場合や、複数の副反応が競争的に生じる場合は、各生成物に対するイオン量のスプリットによる感度低下と糖鎖部分の構造の不均一性とが相俟って、極めて煩雑なマススペクトルを与える。そのため、定量性が失われるだけでなく、ピークの帰属すら不可能となる場合がある。
前述の特許文献2では、アミンおよび脱水縮合剤の存在下では、糖ペプチドのカルボキシ基がアミド化され難く、シアル酸のカルボキシ基が選択的に修飾(アミド化またはラクトン化)されることが記載されている。しかし、糖ペプチドのカルボキシ基をアミド化せず、シアル酸のカルボキシ基を選択的に修飾するためには、脱水縮合剤やアミンの種類および濃度、反応温度、ならびに反応時間等を、糖鎖の構造やペプチドのアミノ酸配列に応じて詳細に調整する必要がある。シアル酸のカルボキシ基の結合様式選択的な反応率が高くなるように反応条件を調整すると、ペプチド部分のカルボキシ基がアミド化されやすく、シアル酸の結合様式の識別とペプチド部分の副反応の抑制とを両立することは容易ではない。
非特許文献3では、IgG由来の糖ペプチドにおけるシアル酸の結合様式を識別した例が示されており、ペプチド中に存在するカルボキシ基の反応も明確に特定されている。具体的には、ペプチドN末端のグルタミン酸は分子内脱水(ピログル化)し、そのC末端側に隣接するグルタミン酸のカルボキシ基およびペプチドC末端のカルボキシ基はジメチルアミド化されることが示されている。
後に詳述するように、ペプチド部分のカルボキシ基の反応を制御できるのはIgG由来ペプチドのように、ペプチド部分が特定のアミノ酸配列を有する場合に限定される。大多数のアミノ酸配列においては、脱水縮合剤の存在下でのペプチド部分のカルボキシ基やアミノ基の反応を予測することは容易ではなく、競争的に生じる複数の副反応を制御することは困難である。すなわち、糖鎖部分のα2,3‐シアル酸とα2,6‐シアル酸から質量の異なる誘導体を得る反応が競争反応の制御に基づくものであり、シアル酸のカルボキシ基に対する競争反応と、ペプチド部分のカルボキシ基に対する競争反応の両方を同時に制御することは、IgG由来ペプチドのようにペプチド部分が特異的なアミノ酸配列を有する場合を除いて容易ではない。
上記に鑑み、本発明は、ペプチド部分のアミノ酸配列に依存せず、糖タンパク質または糖ペプチドの糖鎖部分のシアル酸の有無やシアル酸の結合様式を識別可能なユニバーサルな分析手法の提供を目的とする。
本発明は、糖タンパク質または糖ペプチドの分析用試料の調製方法に関し、シアル酸の結合様式特異的な反応を行う前に、糖ペプチドまたは糖タンパク質のペプチド部分に含まれる第一級アミノ基を、カルボキシ基と反応しないように修飾または除去することを特徴とする。
本発明の分析用試料の調製方法では、糖ペプチドまたは糖タンパク質のペプチド部分に含まれる少なくとも1つの第一級アミノ基を修飾または除去する第一反応、および糖鎖のシアル酸のカルボキシ基を修飾可能な第二反応、を順に実施する。
第二反応は、α2,3‐シアル酸とα2,6‐シアル酸とが質量の異なる誘導体を生成する反応であり、例えば、α2,3‐シアル酸を選択的にラクトン化し、α2,6‐シアル酸を選択的にアミド化またはエステル化する反応を含む。第二反応は、さらに、α2,3‐シアル酸から生成したラクトンと求核剤との反応により別の誘導体を生成する反応を含んでいてもよい。ラクトンと求核剤との反応においては、生成する誘導体が、α2,6‐シアル酸と求核剤との反応により生成する誘導体と異なる質量を有するように求核剤が選択される。
なお、第二反応は、糖鎖のシアル酸のカルボキシ基を修飾可能な反応であればよく、分析対象の糖ペプチドの糖鎖にシアル酸が含まれていない場合は、糖鎖のシアル酸のカルボキシ基が実際に修飾されることを要しない。この場合は、質量分析により糖鎖がシアル酸を含んでいないことを判別できる。糖鎖がα2,3‐シアル酸のみを含んでおりα2,6‐シアル酸を含んでいない場合、第二反応ではα2,6‐シアル酸の誘導体化は行われない。糖鎖がα2,6‐シアル酸のみを含んでおりα2,3‐シアル酸を含んでいない場合、第二反応ではα2,3‐シアル酸の誘導体化は行われない。
ペプチド部分に含まれる第一級アミノ基としては、リジン残基のε‐アミノ基およびペプチドN末端のα‐アミノ基が挙げられる。以下では特に断りのない限り、第一級アミノ基を単に「アミノ基」と記載する。
第二反応の前に行われる第一反応は、これらのアミノ基を修飾または除去する反応であり、アミノ基を修飾する反応が好ましい。アミノ基の修飾反応としては、アミノ基の窒素原子に少なくとも1つの窒素炭素結合を生成させる反応が挙げられる。中でも、グアニジル化および/またはジアルキル化が好ましい。
第一反応は、例えばペプチド部分に含まれるリジン残基のε‐アミノ基を修飾または除去する反応である。リジン残基のε‐アミノ基を選択的に修飾する場合はグアニジル化が好ましい。
第一反応は、好ましくはペプチド部分に含まれる全てのアミノ基を修飾する反応であり、アミノ基のジアルキル化が好ましく、中でもジメチル化が好ましい。
上記第一反応は、糖ペプチドまたは糖タンパク質を固相担体に固定した状態でおこなってもよい。第一反応後の糖ペプチドまたは糖タンパク質を固相担体に固定した状態で第二反応を行ってもよい。
さらに、本発明は上記方法により得られた試料の分析に関する。上記方法により得られた試料の質量分析により、糖タンパク質または糖ペプチドの糖鎖構造の解析が可能となる。
第一反応によりペプチドの第一級アミノ基を修飾または除去した後に、第二反応を実施することにより、第二反応におけるカルボキシ基とペプチドのアミンとの副反応を抑制できる。そのため、マススペクトルにおけるピークスプリットが低減し、糖タンパク質または糖ペプチドの糖鎖のシアル酸の有無の判別やシアル酸の結合様式の識別を、質量分析により簡便かつ高精度に実施できる。
実験例1−1のSGP誘導体のマススペクトルである。 実験例1−2のSGP誘導体のマススペクトルである。 実験例1−3のSGP誘導体のマススペクトルである。 実験例1−4のSGP誘導体のマススペクトルである。 実施例2のトランスフェリン消化物およびその誘導体のマススペクトルである。 実施例3のRNase B消化物およびその誘導体のマススペクトルである。
本発明は、糖ペプチドまたは糖タンパク質の糖鎖構造の解析を行うための分析用試料の調製方法に関する。本発明の方法により調製された試料は、シアル酸の有無やシアル酸の結合様式の分析に有用である。糖ペプチドまたは糖タンパク質としては、N‐結合型糖鎖やO‐結合型糖鎖等のシアル酸を有し得る糖鎖を含むものが好ましい。
糖タンパク質や糖ペプチドは、ペプチド鎖のアミノ酸残基数が多い場合は、プロテアーゼ消化等により、分析に適した長さにペプチド鎖を切断して用いることが好ましい。例えば、質量分析用の試料を調製する場合、ペプチド鎖のアミノ酸残基数は30以下が好ましく、20以下がより好ましく、15以下がさらに好ましい。一方、糖鎖が結合しているペプチドの由来を明確とすることが求められる場合には、ペプチド鎖のアミノ酸残基数は2以上が好ましく、3以上がより好ましい。
通常、プロテアーゼは、アミノ酸配列を認識し、特定の配列の特定の結合を選択的に切断する。プロテアーゼとしては、トリプシン、リジルエンドペプチダーゼ(Lys‐C)、アルギニンエンドペプチダーゼ、キモトリプシン、ペプシン等が用いられる。なお、プロテアーゼは2種以上を組み合わせて用いることもできる。また、サーモリシンやプロテイナーゼK,プロナーゼEのような特異性の低いプロテアーゼを用いてもよい。プロテアーゼ消化の条件は特に限定されず、使用するプロテアーゼに応じた適宜のプロトコールが採用される。プロテアーゼ消化に先だって、試料中のタンパク質およびペプチドの変性処理やアルキル化処理が行われてもよい。変性処理やアルキル化処理の条件は特に限定されず、公知の条件が適宜に採用される。第一反応および/または第二反応を実施後にプロテアーゼ消化を行ってもよい。
第一反応により分析対象の糖タンパク質または糖ペプチドのペプチド部分に含まれるアミノ基を修飾または除去した後に、第二反応が行われる。理解の容易化のため、以下では第二反応について説明した後、第一反応について説明する。
[第二反応]
第二反応は、糖鎖のシアル酸のカルボキシ基を修飾可能な反応であり、α2,3‐シアル酸のカルボキシ基とα2,6‐シアル酸のカルボキシ基に対して異なる反応(誘導体化)が生じる。その結果、α2,3‐シアル酸から生成する誘導体とα2,6‐シアル酸から生成する誘導体は異なる質量を有する。
α2,3‐シアル酸とα2,6‐シアル酸とが質量の異なる誘導体を生成する反応としては、具体的には、シアル酸のカルボキシ基のカルボニルへの求核反応が挙げられる。α2,3‐シアル酸のカルボキシ基は、α2,6‐シアル酸のカルボキシ基に比べて立体障害の大きな位置に存在し、求核剤による求核反応が生じ難い。そのため、アルコールやアミン等の求核剤との反応では、α2,6‐シアル酸が優先的に誘導体化され、エステルやアミドが生成する。このような反応性の差を応用すれば、α2,6‐シアル酸からは誘導体が生成し、α2,3‐シアル酸は誘導体化されないため、質量の異なる誘導体が生成する。
α2,6‐シアル酸のみを選択的に求核反応させ、α2,3‐シアル酸には求核反応が生じないようにする手法の他に、脱水縮合剤を用いて、α2,3‐シアル酸の分子内脱水によりラクトンを生成する手法が挙げられる。脱水縮合剤と求核剤との併存下では、分子内脱水によるラクトン環の生成と求核剤との反応が競争的に生じる。α2,6‐シアル酸のカルボキシ基の近傍には容易に分子内脱水しうる水酸基が存在しないため、求核剤の存在下では求核剤との縮合反応が優先的となる。一方、α2,3‐シアル酸は、カルボキシ基への求核剤のアクセスが立体障害により阻害され、かつ容易に分子内脱水しうる位置に水酸基が存在するため、分子内脱水によるラクトンの生成が優先的となる。そのため、α2,3‐シアル酸からは優先的にラクトンが生成し、α2,6‐シアル酸からは優先的にアミドやエステルが生成する。
シアル酸の結合様式に対する選択性が高いことから、第二反応は、脱水縮合剤と求核剤との存在下において、α2,3‐シアル酸を選択的にラクトン化し、α2,6‐シアル酸を選択的にアミド化またはエステル化する反応であることが好ましい。特に、求核剤としてアミンを用いて、α2,6‐シアル酸を選択的にアミド化する反応が好ましい。
α2,3‐シアル酸を選択的にラクトン化し、α2,6‐シアル酸を選択的にアミド化する反応において、脱水縮合剤としては、カルボジイミドが好ましく用いられる。カルボジイミドの例としては、N,N’‐ジシクロへキシルカルボジイミド(DCC)、N‐(3‐ジメチルアミノプロピル)‐N’‐エチルカルボジイミド(EDC)、N,N’‐ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)、1‐tert‐ブチル‐3‐エチルカルボジイミド(BEC)、N,N’‐ジ‐tert‐ブチルカルボジイミド、1,3‐ジ‐p‐トルイルカルボジイミド、ビス(2,6‐ジイソプロピルフェニル)カルボジイミド、ビス(トリメチルシリル)カルボジイミド、1,3‐ビス(2,2‐ジメチル‐1,3‐ジオキソラン‐4‐イルメチル)カルボジイミド(BDDC)や、これらの塩が挙げられる。
脱水縮合剤としてカルボジイミドを用い、求核剤としてアミンを用いたアミド化反応は、脱水縮合剤として、ホスホニウム系脱水縮合剤(いわゆるBOP試薬)やウロニウム系脱水縮合剤を用いた場合に比べて、α2,3‐シアル酸のアミド化が進行し難く、分子内脱水によるラクトン化が優先的に生じやすい。一方、α2,6‐シアル酸のカルボキシ基は、脱水縮合剤としてカルボジイミドを用いた場合でも、アミド化が進行しやすい。
脱水縮合を促進させるために、カルボジイミドに加えて、求核性の高い添加剤を用いることが好ましい。求核性の高い添加剤としては、1‐ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)、1‐ヒドロキシ‐7‐アザ‐ベンゾトリアゾール(HOAt)、4‐(ジメチルアミノ)ピリジン(DMAP)、2‐シアノ‐2‐(ヒドロキシイミノ)酢酸エチル(CHA; 商標名:OxymaPure)、N‐ヒドロキシ‐スクシンイミド(HOSu)、6‐クロロ‐1‐ヒドロキシ‐ベンゾトリアゾール(Cl-HoBt)、N‐ヒドロキシ‐3,4‐ジヒドロ‐4‐オキソ‐1,2,3‐ベンゾトリアジン(HOOBt)等が好ましく用いられる。
アミンとしては、アンモニア;メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、sec‐ブチルアミン、tert‐ブチルアミン等の第一級アルキルアミン;ジメチルアミン、エチルメチルアミン、ジエチルアミン、プロピルメチルアミン、イソプロピルメチルアミン等の第二級アルキルアミン;あるいはこれらの塩が好ましく用いられる。
α2,6‐シアル酸のカルボキシ基に対する反応性の高さから、アルキルアミンの炭素数(第二級アルキルアミンの場合は2つのアルキル基の炭素数の合計)は、5以下が好ましく、4以下がより好ましい。一方、α2,3‐シアル酸のカルボキシ基のアミド化を抑制し、ラクトンの生成特異性を高めるためには、アルキルアミンの炭素数は2以上が好ましい。
上記のアミンの中でも、第一級アミンを用いた場合に、反応時間を短縮できるとともに、α2,3‐シアル酸からのラクトンの生成特異性が高くなる傾向がある。また、分枝アルキル基を有するアルキルアミン、特に、イソプロピルアミンを用いた場合に、α2,3‐シアル酸からのラクトンの生成特異性が高くなる傾向がある。
脱水縮合剤およびアミンの存在下において、糖鎖のシアル酸が化学修飾され、シアル酸の結合様式に応じて異なる誘導体が生成する。液相で反応を行う場合、ジメチルスルホキシド(DMSO)やジメチルホルムアミド(DMF)等の非水系溶媒中で反応を行うことが好ましい。非水溶媒中で反応を行うことにより、副反応が抑制される傾向がある。
液相反応における各成分の濃度は特に限定されず、脱水縮合剤やアミンの種類等に応じて適宜に決定できる。脱水縮合剤の濃度は、例えば、1mM〜5Mが好ましく、10mM〜3Mがより好ましい。カルボジイミドとHOAtやHOBt等の求核性の高い添加剤とを併用する場合は、それぞれの濃度が上記範囲であることが好ましい。アミンの濃度は、0.01M〜20Mが好ましく、0.1M〜10Mがより好ましい。反応温度は、−20℃〜100℃程度が好ましく、−10℃〜50℃がより好ましい。反応温度を低くすると、α2,3‐シアル酸からのラクトンの生成特異性が高くなる傾向がある。一方、反応温度が過度に低いと、反応速度が低下し、未反応成分が残存しやすくなる。そのため、アミンの種類等に応じて、生成特異性が高く、かつ未反応成分の残存量が小さくなるように、反応温度や時間を調整することが好ましい。反応時間は、試料や試薬の濃度、反応温度等に応じて決定すればよい。
上記の様に、第二反応では、シアル酸のカルボキシ基に対して高い反応率を有するように脱水縮合剤および求核剤を選択することが好ましい。反応性の高い脱水縮合剤および求核剤を用いると、シアル酸のカルボキシ基に加えて、ペプチドC末端のカルボキシ基や酸性アミノ酸残基(グルタミン酸およびアスパラギン酸)のカルボキシ基も修飾される。
ペプチド部分のカルボキシ基の修飾を抑制しつつ、シアル酸のカルボキシ基を選択的に誘導体化するためには、反応条件の厳密なコントロールが要求される。反応を厳密にコントロールするために緩やかな反応条件を選択すると、反応に長時間を要する。また、シアル酸のカルボキシ基に対して高い反応率を示し、かつペプチドC末端や酸性アミノ酸残基等のペプチド部分に含まれるカルボキシ基の修飾を完全に抑制することは容易ではない。ペプチドに含まれるカルボキシ基の一部が修飾されずに未反応で残存していると、マススペクトルのピークスプリットに起因して、データ解析が困難となる場合がある。そのため、第二反応では、シアル酸のカルボキシ基に加えて、ペプチドに含まれるカルボキシ基も修飾することが好ましい。例えば、脱水縮合剤としてEDCを用いれば、α2,3‐シアル酸から選択的にラクトン誘導体を生成させ、α2,6‐シアル酸およびペプチドに含まれるカルボキシ基を選択的にアミド化し、かつ未反応の残存成分を低減できる。
脱水縮合剤の作用によりα2,3‐シアル酸から生成したラクトンは、加水分解を受けやすい。例えば、質量分析に液体マトリックスを用いると、測定前にラクトンが一部開環し、定量性が損なわれる場合がある。そのため、α2,3‐シアル酸から生成したラクトンから、より安定性の高い誘導体を生成する反応を行ってもよい。
ラクトンから生成する誘導体は、α2,6‐シアル酸のカルボキシ基と求核剤との反応により生成した誘導体と異なる質量を有するものであれば特に制限されない。ラクトンとの反応性が高いことから、求核剤との反応が好ましく、中でもアミンを用いたアミド化が好ましい。
ラクトンの開環アミド化を行う場合に用いるアミンが、先の誘導体化に用いたアミンと異なる分子量を有していれば、α2,6‐シアル酸とアミンとの反応により生成した誘導体とラクトンの開環アミド化により生成する誘導体とが異なる質量を有する。同位体ラベルしたアミンを用いて、質量の異なるアミド誘導体を得ることもできる。
反応の簡便性や定量性を高める観点から、α2,3‐シアル酸由来のラクトンの開環アミド化には、ラクトンのカルボニルに対する求核反応性の高いアミンが好ましく用いられる。α2,3‐シアル酸由来のラクトンのカルボニルは、立体障害が大きい部位に存在するため、カルボニルへのアミンの求核反応効率を高めるためには、分子体積が小さいアミンを用いることが好ましい。したがって、ラクトンの開環アミド化に用いられるアミンは、アンモニアまたは炭素原子数が5個以下のアルキルアミン、あるいはこれらの塩が好ましい。また、ラクトンの開環アミド化には、先の反応に用いたアミンよりも炭素原子数が少ないアミンを用いることが好ましい。
ラクトンの開環アミド化に用いるアミンの例としては、アンモニウム塩、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、sec‐ブチルアミン、tert‐ブチルアミン等の第一級アルキルアミン;ジメチルアミン、エチルメチルアミン、ジエチルアミン、プロピルメチルアミン、イソプロピルメチルアミン等の第二級アルキルアミン、あるいはこれらの塩が挙げられる。アルキルアミンの炭素数は4以下が好ましく、3以下がより好ましい。上記アミンの中でも、第一級アルキルアミンあるいはその塩が好ましく、第一級直鎖アルキルアミンあるいはその塩がより好ましく、メチルアミンまたはエチルアミンあるいはこれらの塩が特に好ましい。
ラクトンの開環アミド化は、脱水縮合剤の存在下で行われることが好ましい。脱水縮合剤としては、立体障害が大きい部位に存在するカルボニルに対しても、高い反応効率を示すものが好ましく、ホスホニウム系脱水縮合剤や、ウロニウム系脱水縮合剤が好ましい。
ホスホニウム系脱水縮合剤としては、(ベンゾトリアゾール‐1‐イルオキシ)トリス‐(ジメチルアミノ)ホスホニウム(BOP)、ベンゾトリアゾール‐1‐イルオキシトリス(ピロリジノ)ホスホニウムヘキサフルオロフォスフェイト(PyBOP)、ブロモトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフフェイト(BroP)、ブロモトリス(ピロリジノ)ホスホニウムヘキサフルオロフォスフェイト(PyBroP)、(7‐アザベンゾトリアゾール‐1‐イルオキシ)トリス(ピロリジノ)ホスホニウムヘキサフルオロフォスフェイト(PyAOP)、クロロ‐トリス‐ピロリジノホスホニウムヘキサフルオロフォスフェイト(PyCloP)等が挙げられる。これらは、「BOP試薬」と総称されるものであり、立体障害が大きい部位に存在するカルボニルに対しても、高い反応効率をもたらす。そのため、α2,3‐シアル酸のカルボキシ基や、α2,3‐シアル酸由来のラクトンのカルボニルのように、立体障害が大きい部位に対しても、高い反応率でアミド化を行うことができる。
ウロニウム系脱水縮合剤としては、(1‐シアノ‐2‐エトキシ‐2‐オキソエチリデンアミノオキシ)ジメチルアミノ‐モルホリノ‐カルベニウムヘキサフルオロリン酸塩(COMU)、2‐(1H‐ベンゾトリアゾール‐1‐イル)‐1,1,3,3ヘキサフルオロフォスフェイト(HBTU)、2‐(7‐アザベンゾトリアゾール‐1‐イル)‐1,1,3,3ヘキサフルオロフォスフェイト(HATU)、2‐(1H‐ベンゾトリアゾール‐1‐イル)‐1,1,3,3‐テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレイト(TBTU)、2‐(5‐ノルボルネン‐2,3‐ジカルボキシイミド)‐1,1,3,3‐テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレイト(TNTU)、O‐(N‐スクシミジル)‐1,1,3,3‐テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレイト(TSTU)等が挙げられる。これらのウロニウム塩の中では、COMUが特に好ましい。
上記の中でも、ラクトンのアミド化効率を高める観点からは、ホスホニウム系脱水縮合剤が好ましく用いられる。また、反応を加速させるために、N‐メチルモルホリン等の塩基を、反応系全体に対して0.01〜80重量%程度の濃度となるように加えることが望ましい。反応系に上記濃度範囲の塩基を加えることにより、反応効率が向上するとともに、副反応や他の試薬の析出等を抑制できる。反応系中に塩基としてN‐メチルモルホリンが含まれる場合、その濃度は1〜50重量%が好ましく、10〜40重量%がより好ましく、15〜30重量%がさらに好ましい。アミド化の条件(反応温度や反応時間等)は特に限定されず、従来公知のシアル酸のアミド化の条件をそのまま適用できる。
α2,3‐シアル酸由来のラクトンの加水分解による開環反応を行った後に、求核剤との反応による誘導体化を行ってもよい。上述のように、α2,3‐シアリル糖鎖の分子内脱水により生じるラクトンは、水中で加水分解する。ラクトンの開環を促進するためには、酸または塩基を用いることが好ましい。特に、ラクトンは塩基により加水分解しやすいことから、塩基が好ましく用いられる。なお、ラクトンの開環後にアミド化が行われる際に、残存した塩基がアミド化の阻害や、副反応を生じないことが好ましい。塩基として、開環後のアミド化に用いられるアミンと同一のアミンを用いれば、開環反応の残存塩基に起因する上記の問題を排除できる。なお、アミド化の際は塩酸塩が好ましく用いられるが、ラクトンの開環を促進するための塩基としては塩を形成していないアミンが好ましく用いられる。
アミド化の前にラクトンの開環を行うことにより、立体障害が低減し、シアル酸のカルボニルへのアミンのアクセスが容易となる。そのため、アミド化の前に開環を行うことにより、アミド化の反応効率が高められ、残存ラクトンが減少することから、分析の定量性がさらに高められる。
上記の様に、α2,3‐シアル酸とα2,6‐シアル酸とから質量の異なる誘導体を生成させることにより、質量分析により両者を分離して、シアル酸の結合様式を識別できる。また、糖鎖がシアル酸を有していない場合には、第二反応後の誘導体はα2,3‐シアル酸から生成する誘導体およびα2,6‐シアル酸から生成する誘導体のいずれとも異なる質量を有するため、シアル酸の有無も判定可能である。
しかしながら、糖ペプチドに対して上記の第二反応を実施すると、シアル酸のカルボキシ基と求核剤との反応およびシアル酸の分子内脱水によるラクトンの生成以外に、ペプチドのアミノ基およびカルボキシ基の修飾反応が進行する場合がある。このような副反応が中途半端に進行している場合や、複数の副反応が競争的に生じる場合は、各生成物に対するイオン量のスプリットによる感度の低下や定量性の低下を招く。また、ピークスプリットに起因してマススペクトルが煩雑となり、ピーク帰属等の解析が困難となる場合がある。
前述のように、ペプチドC末端のカルボキシ基や酸性アミノ酸残基のカルボキシ基は、第二反応において求核剤と反応させることにより、ピークスプリットを抑制できる。一方、ペプチドのアミノ基は、第二反応において、シアル酸のカルボキシ基およびペプチドのカルボキシと反応する場合がある。ペプチドのアミノ基によるカルボキシ基への求核反応と、第二反応に用いられる求核剤のカルボキシ基への求核反応とは、競争的であり、マススペクトルのピークスプリットの原因となる。そのため、従来のシアル酸結合様式の識別方法は、糖タンパク質や糖ペプチドへの適用が困難であった。
[第一反応]
本発明では、第二反応の前に、糖タンパク質または糖ペプチドに対して第一反応が行われ、ペプチド部分に含まれる少なくとも1つの第一級アミノ基が修飾または除去される。ペプチド部分に含まれるアミノ基が修飾または除去されることにより、その後の第二反応においてアミノ基とカルボキシ基との分子内脱水等の副反応が生じないため、ピークスプリットを抑制し、質量分析による分析精度を向上できるとともに、データ解析が容易となる。
アミノ基の除去としては、ホフマン脱離等のC−N結合を切断する処理、リジルエンドペプチダーゼ、トリプシン等のエンドペプチダーゼ、またはアミノペプチダーゼ、カルボキシペプチダーゼ等のエキソペプチダーゼを用いたプロテアーゼ消化により、リジン残基のC末端側またはN末端側の近傍でペプチドを切断してペプチド鎖からリジン残基を除去する処理が挙げられる。アミノ基の修飾としては、モノアルキル化、ジアルキル化、アセチル基等によるアミド化、グアニジル化、ニトロソ化、ジアゾ化、シアノ化等が挙げられる。
ペプチドのN末端のアミノ基にタグやリンカーを結合させることにより、アミノ基を修飾することもできる。リンカーとしては、例えば固相担体表面にペプチドのN末端のアミノ基を選択的に結合させる分子が挙げられる。タグとしては、iTRAQ, iCAT, TMT (Tandem Mass Tag)等のN‐ヒドロキシコハク酸イミド(NHS)エステルを含むラベル化試薬が挙げられる。
反応の容易性および確実性の観点から、第一反応はペプチドに含まれるアミノ基の修飾反応であることが好ましい。アミノ基の修飾反応の中でも、モノアルキル化、ジアルキル化、アミド化、グアニジル化、ニトロソ化等、アミノ基の窒素原子に少なくとも1つの窒素炭素結合を生成させる反応が好ましく、グアニジル化およびジアルキル化が特に好ましい。
アミノ基のグアニジル化は、公知のグアニジル化試薬を用いて実施できる。グアニジル化試薬としては、シアナミド、O‐アルキルイソ尿素、S‐アルキルイソチオ尿素、アミノイミノメタンスルホン酸、1,3‐ビス(tert‐ブトキシカルボニル)‐2‐(トリフルオロメチルスルホニル)グアニジン(Goodman試薬)、1‐アミジノピラゾール塩酸塩、N,N’‐ビス(tert‐ブトキシカルボニル)‐1H‐ピラゾール‐1‐カルボキサミジン、N,N’‐ビス(カルボベンゾキシ)‐1H‐ピラゾール‐1‐カルボキサミジン等が挙げられる。
グアニジル化試薬として、S‐アルキルイソチオ尿素やO‐アルキルイソ尿素等を用いる場合は、水酸化バリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、アンモニア水;トリエチルアミン、N,N‐ジメチルアニリン、N,N′‐ジメチルピペラジン、N‐メチルピペリジン等の3級アミン;ピリジン等の塩基の存在下で、0℃〜90℃程度で反応を行えばよい。
アミノ基のジアルキル化としては、ハロゲン化アルキルとの反応や、アルデヒドまたはケトンを用いた反応(還元的アミノ化)が挙げられる。中でも、副反応が少なく、かつ反応性に優れペプチドに含まれるすべてのアミノ基をジアルキル化できることから、還元的アミノ化が好ましい。
還元的アミノ化は、ヒドリド還元剤の存在下での、アルデヒドまたはケトンとアミンとの反応であり、ホルムアルデヒドを用いれば、アミノ基はジメチル化される。還元剤としてはシアノ水素化ホウ素ナトリウム、ナトリウムトリアセトキシボロヒドリド、ボランピリジン、ギ酸等が挙げられる。中でも、還元剤としてシアノ水素化ホウ素ナトリウムを用いる還元的アミノ化(Borch法)が、反応効率や信頼性の観点において好ましい。
糖タンパク質や糖ペプチドは、N末端にアミノ基を有しており、脱水縮合剤の存在下では、N末端のアミノ基のカルボニルへの求核反応によるペプチドの分子内環化が生じやすい。また、アミノ酸配列にリジンが含まれる場合は、N末端のアミノ基に加えてリジンのε‐アミノ基もカルボニルに求核反応して分子内環化が生じる。特に、リジンのε‐アミノ基は、α炭素から離れており自由度が高いため、ペプチドC末端、酸性アミノ酸残基、シアル酸等のカルボキシ基のカルボニルにアクセスしやすく、分子内環化が生じやすい。
プロテアーゼ消化によりペプチド断片を調製する場合、アミノ酸配列の認識性(配列特異性)が高いことから、トリプシンやLys‐Cを用いることが多い。トリプシンは、アルギニンおよびリジンのC末端側のペプチド結合を選択的に切断し、Lys‐CはリジンのC末端側のペプチド結合を選択的に切断する。そのため、プロテアーゼ消化により得られたペプチド断片は、C末端にリジンを有する場合が多い。
第二反応の前にリジン残基のε‐アミノ基を除去または修飾しておけば、第二反応においてリジン残基のアミノ基に起因する分子内脱水は生じない。そのため、副反応に起因するピークスプリットが生じ難く、質量分析による分析精度を向上できるとともに、データ解析が容易となる。
例えば、カルボキシエンドペプチダーゼを用いたプロテアーゼ消化により、C末端にリジンを有するペプチドからリジン残基を除去できる。Lys‐Cやトリプシン等による処理とカルボキシエンドペプチダーゼによる処理とを組み合わせることにより、ペプチドのC末端のリジン残基を除去して、リジン残基を含まないペプチドが得られる。
ペプチドのリジン残基のε‐アミノ基を選択的に修飾する方法としては、上述のグアニジル化が適している。O‐アルキルイソ尿素等を用いたグアニジル化は、リジン残基のε‐アミノ基に対する反応率をほぼ100%とすることが可能であり、かつペプチドN末端のアミノ基に対する反応はほとんど生じないため、第一反応に起因するピークスプリットを防止できる。
リジン残基のε‐アミノ基をグアニジル化することにより、ペプチド部分が正電荷を帯びるため、質量分析においてペプチド部分のイオン化が促進される。そのため、質量分析の検出感度が向上するとの利点がある。
第一反応では、ペプチド部分に含まれるリジン残基のアミノ基に加えて、ペプチドN末端のアミノ基も修飾または除去することが好ましい。すなわち、第一反応では、ペプチド部分に含まれるすべてのアミノ基を修飾することが好ましい。ペプチド部分に含まれるすべてのアミノ基を修飾する方法としては、前述のように還元的アミノ化によるアミノ基のジアルキル化が好ましく、中でもジメチル化が好ましい。前述のように、ペプチドのN末端にタグやNHS等を結合させることにより、ペプチドN末端のアミノ基を修飾してもよい。
リジン残基のアミノ基をグアニジル化し、ペプチドN末端のアミノ基を他の方法により修飾してもよい。例えば、リジン残基のアミノ基をグアニジル化した後に、還元的アミノ化等によりペプチドN末端のアミノ基を修飾してもよい。また、ペプチドN末端のアミノ基をタグやリンカー等と結合させた状態でリジン残基のアミノ基をグアニジル化することにより、ペプチドに含まれるすべてのアミノ基を修飾してもよい。前述のように、リジン残基のアミノ基をグアニジル化することにより、質量分析におけるイオン化効率が高められ、検出感度が向上する傾向がある。
上記の様に、第二反応の前に第一反応を実施することにより、第二反応における副反応や競争的な反応を抑制し、これによりマススペクトルのピークスプリットを低減できる。そのため、糖ペプチドや糖タンパク質における糖鎖構造の解析、具体的には糖鎖のシアル酸の有無やシアル酸の結合様式の識別を精度高く分析できる。
上述の非特許文献3(de Haan, N. et al.)では、本発明の第一反応に相当する反応を実施していないにも関わらず、ECD、HOBtおよびジメチルアミンの存在下でのIgG由来ペプチドの反応(第二反応に相当)により、副反応をほとんど生じることなく、シアル酸の結合様式を識別可能な誘導体が生成したことが報告されている。これは、分析対象の糖ペプチドのアミノ酸配列が、(1)リジン残基を有していないこと、および(2)C末端のアミノ酸がグルタミン酸であること、の両方を満たす特異的な配列であることに起因すると考えられる。
上記(1)(2)の両方を満たすアミノ酸配列では、ペプチドに含まれる唯一の第一級アミノ基がN末端のグルタミン酸のα‐アミノ基である。ペプチドN末端のグルタミン酸のα‐アミノ基は、グルタミン酸のカルボキシ基と反応してピログルタミン酸を生じる(ピログル化)。そのため、N末端のグルタミン酸のアミノ基は、他のカルボキシ基に対する求核反応が生じ難い。特に脱水縮合剤の存在下では、N末端のグルタミン酸はほぼ100%がピログル化するため、N末端のα‐アミノ基に起因するピークスプリットも生じない。
糖タンパク質または糖ペプチドが上記のような特異的なアミノ酸配列を有していない場合、すなわち一般的な糖タンパク質および糖ペプチドの大半は、脱水縮合剤の存在下で、ペプチドN末端のアミノ基がカルボキシ基と反応して分子内環化する。ペプチドN末端のアミノ基の反応による分子内環化は、リジン残基のアミノ基の反応による分子内環化に比べると生じ難い。しかしながら、N末端がグルタミン酸である場合(ピログル化する場合)を除いて、分子内環化を制御または抑制することは困難である。そのため、前述のように、第一反応により、ペプチド部分に含まれるすべての第一級アミノ基を修飾または除去することが好ましい。
[他の反応形態]
第一反応および第二反応を行った試料は、必要に応じて、精製、脱塩、可溶化、濃縮、乾燥等の処理を行ってもよい。これらの処理は、公知の方法を利用して行うことができる。
上記の第一反応および/または第二反応は、固相で行うこともできる。糖ペプチドまたは糖タンパク質を固相に固定した状態で第一反応を行う場合、第一反応後の糖ペプチドまたは糖タンパク質を固相に固定した状態を維持して、第二反応を行ってもよい。また、第一反応後の糖ペプチドまたは糖タンパク質を固相に固定して第二反応を行ってもよい。
固相担体としては、糖ペプチドまたは糖タンパク質を固定可能なものであれば、特に制限なく用いることができる。例えば、糖ペプチドや糖タンパク質を固定するためには、エポキシ基、トシル基、カルボキシ基、アミノ基等をリガンドとして有する固相担体を利用可能である。糖ペプチドや糖タンパク質と固相担体とは、例えば、N末端、C末端、SH基等を介して固定することができる。前述のように、NHSを有するリンカーを介して糖ペプチドまたは糖タンパク質のN末端のアミノ基を固相担体に固定してもよい。糖ペプチドの糖鎖を固定するためには、フェニルボロン酸等をリガンドとして有する固相担体が利用可能である。また、糖鎖部分を酸化することにより、ヒドラジド基、アミノオキシ基等をリガンドとして有する固相担体に糖ペプチドを固定することもできる。
固相担体に固定された糖タンパク質や糖ペプチドは、第一反応および/または第二反応を実施後に、化学的手法や酵素反応等により、担体から試料を遊離させて回収すればよい。例えば、担体に固定された糖タンパク質や糖ペプチドを、プロテアーゼ等により酵素的に切断し回収してもよく、酸や塩基によりリガンドと糖ペプチドまたは糖タンパク質との結合を低下させて、遊離回収してもよい。糖タンパク質や糖ペプチドを固相担体に固定した状態で反応を行うことにより、反応試薬の除去や脱塩精製が容易となり、試料の調製を簡素化できる。
[試料の分析]
上記方法により調製後の分析用試料を質量分析に供することにより、シアル酸の結合様式の識別や、結合様式の比率、シアル酸の有無等の糖鎖構造情報が得られる。質量分析のイオン化法としては、マトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)法、エレクトロスプレーイオン化(ESI)やナノエレクトロスプレーイオン化(nano−ESI)法等が挙げられる。特に、MALDI法が好適である。本発明の方法により得られる分析用試料は、正イオンモードおよび負イオンモードのいずれでも、シアル酸の結合様式を識別できる。
また、LCで分離されピークとして検出された試料を質量分析に供してもよい。LCにより試料の分離を行う場合、質量分析の前段としてLCを備えるLC-MSを用い、LCからの溶出液を直接イオン化して質量分析に供してもよい。また、LCからの溶出液を一度分取してから、質量分析に供してもよい。LCのカラムは特に限定されず、ペプチドの分析に一般的に用いられるC30,C18,C8,C4等の疎水カラム、糖鎖分析に好適に用いられるカーボンカラム、親水性アフィニティークロマトグラフィー用の担体等を適宜に選択して用いることができる。
質量分析は、MS以上の多段階で行ってもよい。MS以上の多段階質量分析を行うことにより、シアル酸の結合様式以外の糖鎖の構造や、糖鎖が結合しているペプチド部分の構造の解析を行うこともできる。スペクトルデータを用いたデータベース検索等により、構造解析を行ってもよい。
以下に、実施例を示して、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。なお、以下において、%の記載は特に断りがない限り重量%を表す。
[実施例1:シアリルグリコペプチド(SGP)の誘導体化]
実施例1では、α2,3‐SGPおよびα2,6‐SGPの誘導体化を行い、質量分析によるシアル酸結合様式の識別可否について検討を行った。α2,3‐SGPおよびα2,6‐SGPは、いずれも株式会社伏見製薬所の糖ペプチド標準品(2865.8Da)を用いた。水に溶解したSGPを1 nmolずつ分注して、遠心濃縮(SpeedVac)により溶媒を除き乾固させ、誘導体化を行った。
<実験例1−1:アミノ基を修飾せずにシアル酸を誘導体化>
(脱水縮合剤存在下でのイソプロピルアミンとの反応)
乾固したSGPに、イソプロピルアミン塩酸塩(iPA-HCl)、1‐エチル‐3‐(3‐(ジメチルアミノ)プロピル)カルボジイミド(EDC)塩酸塩、および1‐ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)を、終濃度がそれぞれ2M、500mM、および500mMとなるように調製したDMSO溶液を添加した。室温で1時間攪拌して反応させた後、130μLのアセトニトリル(ACN)、および30μLの80%ACN, 0.4%トリフルオロ酢酸(TFA)を加えて希釈した。
(試料の精製)
精製用の担体として、GL-Tip Amide (GLサイエンス製)を用いた。GL-Tip Amideを遠心アダプタに装着し、100μLの90%ACN, 0.1%TFAを加え、遠心により排出した。その後、水100μLを加え、遠心により排出することを3回繰り返した。さらに100μLの90%ACN, 0.1%TFAを加え、遠心により排出して担体の平衡化を行った。次いで希釈した反応溶液180μLを加えて担体に試料を吸着させ、遠心した。その後、180μLの90%ACN, 0.1%TFAを加え、遠心により排出することを3回繰り返し、洗浄を行った。最後に水10μLを加え,遠心により排出することを2回繰り返し、さらに10μLの0.1%TFA水溶液を加え遠心により排出し、試料を溶出させた。3回分の溶出液を合わせたものに、40%メチルアミン水溶液を適量加えてメチルアミン濃度を1%とし、SpeedVacにより乾固させた。
(メチルアミンとの反応および精製)
乾固した試料に、メチルアミン塩酸塩(MA-HCl)、ベンゾトリアゾール‐1‐イルオキシトリス(ピロリジノ)ホスホニウムヘキサフルオロフォスフェイト(PyBOP)、およびN-メチルモルホリン(NMM)を、終濃度がそれぞれ1M、250mM、および15%となるように調製したDMSO溶液を添加した。室温で1時間攪拌して反応させた後、130μLのACN、および30μLの80%ACN, 0.4%TFAを加えて希釈した。その後、GL-Tip Amideを用いて、イソプロピルアミンとの反応後と同様に精製および溶出を行い、溶出液をSpeedVacにより乾固させた。
(質量分析)
乾固した試料を10μLの水に再溶解させ、1μL(100pmol)をフォーカスプレートに滴下し、マトリックスとして、50% ACNに溶解させた10mg/mL 2,5‐ジヒドロキシ安息香酸(DHBA),0.1%メチレンジホスホン酸(MDPNA)を0.5μL加えた。自然乾燥により溶媒を除去した後、MALDI-QIT-TOF-MS (AXIMA-Resonance, Shimadzu/Kratos)により、正イオンモードで質量分析を行った。α2,3‐SGPの反応物のマススペクトルを図1(A)、α2,6‐SGPの反応物のマススペクトルを図1(B)に示す。
<実験例1−2:リジン残基のグアニジル化後にシアル酸を誘導体化>
(SGPのリジン残基のグアニジル化)
乾固したSGPに、10.5μLの3.5N水酸化アンモニウム、および1.5μLの50% O‐メチルイソ尿素水溶液を加え、ボルテックスにより溶解させた後、65℃のヒートブロック上で10分間加熱して反応させた。
(精製)
反応溶液に、15μLの10%TFA水溶液および水を加えて約50μLに希釈し、カーボンカラムを用いて脱塩精製した。カーボンカラムとして、エムポアディスクカーボン(3M製)を、直径約1mmに切り抜き、200μLのチップに詰めたStage Tip Carbonを用いた。Stage Tip Carbonに100μLのACNを加えた後、遠心により排出した。その後、100μLの1M NaOH、100μLの1M HCl、100μLの水、100μLの80% ACN, 0.1%TFA(2回)、および100μLの水(2回)を用いて、同様の操作を順に行い、カラム担体の洗浄と平衡化を行った。希釈後の反応溶液を平衡化後のカラムに加え、遠心により溶液を排出した。さらに150μLの水を加え、遠心により排出することを3回繰り返し、洗浄を行った。最後に、20μLの80%ACN, 0.1%TFAを加え、遠心により排出することを2回繰り返し、試料を溶出させた。2回分の溶出液を合わせて、SpeedVacにより乾固させた。
(誘導体化および質量分析)
O‐メチルイソ尿素との反応後の試料を用い、実験例1−1と同様に、イソプロピルアミンとの反応、およびメチルアミンとの反応による誘導体化を行い、正イオンモードで質量分析を行った。α2,3‐SGPの反応物のマススペクトルを図2(A)、α2,6‐SGPの反応物のマススペクトルを図2(B)に示す。
<実験例1−3:全てのアミノ基をジメチル化後に誘導体化>
(アミノ基のジメチル化)
乾固したSGPに、20μLの100mM重炭酸トリエチルアンモニウム(TEAB)緩衝溶液(pH 8.5)を加えた。ボルテックスにより溶解させた後、1.6μLの2% ホルムアルデヒド水溶液を加え、軽くボルテックスしてスピンダウンした。1.6μLの300mM シアノ水素化ホウ素ナトリウム水溶液を加え、室温で軽くボルテックスしながら1時間反応させた。その後、3.2μLの1%アンモニア水を加えてクエンチし、軽くボルテックスしてスピンダウンした。1.6μLのギ酸を加え、軽くボルテックスしてスピンダウンした後、72μLの水を加え、実験例1−2と同様に、カーボンカラムによる脱塩精製を行った。
(誘導体化および質量分析)
上記の還元的アミノ化反応を行った試料を用い、実験例1−1と同様に、イソプロピルアミンとの反応、およびメチルアミンとの反応による誘導体化を行い、正イオンモードで質量分析を行った。α2,3‐SGPの反応物のマススペクトルを図3(A)、α2,6‐SGPの反応物のマススペクトルを図3(B)に示す。
<実験例1−4:イソプロピルアミンとの反応時間の変更>
還元的アミノ化反応後の試料のイソプロピルアミンとの反応時間を1時間から3時間に変更したこと以外は、実験例1−3と同様にして試料を調製し、正イオンモードで質量分析を行った。α2,3‐SGPの反応物のマススペクトルを図4(A)、α2,6‐SGPの反応物のマススペクトルを図4(B)に示す。
<マススペクトルの評価>
図1(A)では誘導体化前のSGPよりも67Da大きいm/z 2932にピークが確認され、図1(B)では誘導体化前のSGPよりも123Da大きいm/z 2988にピークが確認された(図中の▼)。これらのピークの56Daの差は、イソプロピル基とメチル基との差の2倍である。α2,3‐SGPの2個のα2,3‐シアル酸のカルボキシ基がメチルアミド化されたのに対して、α2,6‐SGPの2個のα2,6‐シアル酸のカルボキシ基がイソプロピルアミド化されたことにより、m/zに差が生じていることが分かる。
具体的には、EDC、HOBtおよびiPA-HClの存在下で、α2,6‐シアル酸のカルボキシ基およびペプチドC末端のカルボキシ基はイソプロピルアミド化されるのに対して、α2,3‐シアル酸は分子内脱水によりラクトン化される。α2,3‐シアル酸から生じたラクトンは、PyBOPおよびNMM存在下でのMA-HClとの反応により開環し、メチルアミド化される。α2,6‐シアル酸およびペプチドC末端のカルボキシ基は、イソプロピルアミド化された後はメチルアミンと反応しない。そのため、シアル酸1個あたり、イソプロピル基とメチル基との差に対応する28Daの差異が生じる。
このように、α2,3‐シアル酸とα2,6‐シアル酸が異なる誘導体を生成するように誘導体化を行うことにより、シアル酸結合様式の識別が可能であるが、図1(A)および図1(B)では、上記のようなシアル酸の結合様式特異的な誘導体化によるピーク以外にも多数の夾雑ピークが確認された。
MS/MS測定(データ不図示)より、これらの夾雑ピークはすべてペプチド部分の副反応生成物に由来することが確認された。図1(A)のm/z 2873のピークおよび図1(B)のm/z 2929のピーク(図中の▽)は、イソプロピルアミンとの反応時に、ペプチドC末端のカルボキシ基がイソプロピルアミド化されずにペプチド中のアミノ基との脱水縮合により分子内環化した化合物に由来することが確認された。
図2(A)では誘導体化前のSGPよりも151Da大きいm/z 3016にピークが確認され、図2(B)では誘導体化前のSGPよりも207Da大きいm/z 3072にピークが確認された(図中の▼)。両者の差は、実験例1−1と同じく56Daであり、α2,3‐シアル酸がメチルアミド化され、α2,6‐シアル酸がイソプロピルアミド化されたことにより誘導体の分子量に差異が生じていることが分かる。
イソプロピルアミンとの反応前に、O‐メチルイソ尿素との反応を実施した実験例1−2(図2(A)および図2(B))では、実験例1−1(図1(A)および図1(B))に比べて誘導体の主ピークのm/zが84大きくなっていた。O‐メチルイソ尿素との反応後、イソプロピルアミンとの反応前のSGPの質量分析を実施したところ、α2,3‐SGPおよびα2,6‐SGPのいずれも、反応前と比較してm/zが84増加していた。この84Daの差異は、ペプチドに2個存在するリジン残基のアミノ基のグアニジル化(アミノ基1個あたり42Daの増加)によるものであり、ペプチドN末端のアミノ基は誘導体化されずにアミノ基として残存していることが確認された。
実験例1−2では、実験例1−1に比べて、副反応に由来するピークスプリットが抑制されており、ペプチドC末端のカルボキシ基の分子内環化によるピーク(図中の▽)が大幅に低減していた。これらの結果から、シアル酸の誘導体化を実施する前にペプチドのリジン残基のアミノ基をグアニジル化することにより、ペプチドのC末端とリジン残基のアミノ基との脱水縮合による分子内環化が抑制されることが分かる。分子内環化が抑制されることにより、ペプチド部分の副反応生成物に起因する夾雑ピークが低減するため、ピークの帰属が容易となることに加えて、分析の定量性を向上できる。
図3(A)では誘導体化前のSGPよりも151Da大きいm/z 3016にピークが確認され、図3(B)では誘導体化前のSGPよりも207Da大きいm/z 3072にピークが確認された(図中の▼)。両者の差は、実験例1−1および1−2と同じく56Daであり、α2,3‐シアル酸がメチルアミド化され、α2,6‐シアル酸がイソプロピルアミド化されたことにより誘導体の分子量に差異が生じていることが分かる。
イソプロピルアミンとの反応前に、シアノ水素化ホウ素ナトリウムを用いた還元的アミノ化(Borch反応)によるアミノ基のジメチル化を実施した実験例1−3(図3(A)および図3(B))では、実験例1−1(図1(A)および図1(B))に比べて誘導体主ピークのm/zが84大きくなっていた。還元的アミノ化後、イソプロピルアミンとの反応前のSGPの質量分析を実施したところ、α2,3‐SGPおよびα2,6‐SGPのいずれも、反応前と比較してm/zが84増加しており、副反応生成物のピークは確認されなかった。この84Daの差異は、ペプチドに2個存在するリジン残基のアミノ基およびペプチドN末端のアミノ基(計3個のアミノ基)が全てジメチル化(アミノ基1個あたり28Da増加)したことに由来している。
実験例1−3では、実験例1−1に比べて、副反応に由来するシグナルの分散が大幅に抑制されていた。ペプチドC末端のカルボキシ基の分子内環化によるピークは確認されず、実験例1−2と比較しても、シグナルの分散がさらに抑制されていることが分かる。
イソプロピルアミンとの反応時間を長くした実験例1−4では、実験例1−3よりもピークスプリットがさらに抑制されていた。これは、イソプロピルアミンとの反応における未反応のカルボキシ基が減少し、ペプチドC末端およびα2,6‐シアル酸のカルボキシ基がメチルアミド化された誘導体の生成が抑制されたことに起因する。
以上の結果から、α2,3‐シアル酸とα2,6‐シアル酸とが質量の異なる誘導体を生成する第二反応を実施する前に、第一反応によりペプチドに含まれるアミノ基を修飾することにより、マススペクトルは狙いとするm/zの主ピークに集約し、ピークスプリットが抑制されることが分かる。
[実施例2:トランスフェリンの誘導体化]
実施例2では、α2,6‐シアリル糖鎖が主成分であるヒトトランスフェリン由来の糖ペプチドの誘導体化を行い、質量分析によるシアル酸結合様式の識別可否について検討を行った。
<トランスフェリン由来糖ペプチドの準備>
SIGMAより購入したトランスフェリンを、6M 尿素、50mM 重炭酸アンモニウム、および5mM トリス(2‐カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩(TCEP)の存在下、室温で45分反応させ、変性および還元を行った。次いで、10mM ヨードアセトアミド(IAA)の存在下、室温遮光条件下で45分反応させアルキル化を行った後、10mM ジチオスレイトール(DTT)存在下、室温遮光条件で45分反応させ、余剰のIAAを不活性化した。その後、トリプシンを加え、37℃で一夜反応させ、プロテアーゼ消化を行った。プロテアーゼ消化後、液体クロマトグラフィーにより消化後のペプチドを分離して、図5(A)の正イオンマススペクトルを示す糖ペプチドを得た。
<実験例2−1:アミノ基を修飾せずにシアル酸を誘導体化>
上記実験例1−1と同様の手順で、イソプロピルアミン存在下での反応およびメチルアミン存在下での反応を順に実施し、正イオンモードで質量分析を行った。マススペクトルを図5(B)に示す。
<実験例2−2:全てのアミノ基をジメチル化後に誘導体化>
上記実験例1−3と同様の手順で、還元的アミノ化反応によるアミノ基のジメチル化を行った後に、イソプロピルアミン存在下での反応およびメチルアミン存在下での反応を順に実施し、正イオンモードで質量分析を行った。マススペクトルを図5(C)に示す
<マススペクトルの評価>
実験例2−1(図5(B))では、2個のα2,6‐シアル酸のカルボキシ基、グルタミン酸残基のカルボキシ基、およびペプチドC末端のカルボキシ基(計4個のカルボキシ基)がイソプロピルアミド化された誘導体に由来するm/z 3845のピーク(誘導体化前の糖ペプチドよりも164Da大きい)が確認された。しかしながら、他にも副反応生成物に由来する多数の夾雑ピークが確認され、これらの夾雑ピークは帰属困難であった。
一方、アミノ基のジメチル化を実施した実験例2−2(図5(C))では、誘導体化前(図5(A))に比べて220Da大きいm/z 3902に強いピークが確認され、副反応生成物に由来するピークスプリットはほとんど確認されなかった。m/z 3902のピークは、糖ペプチド中の計4個のカルボキシ基がイソプロピルアミド化され、リジン残基のアミノ基およびペプチドN末端のアミノ基がジメチル化した誘導体に帰属された。
実施例2においても、実施例1と同様、第二反応の前に、第一反応によりペプチドに含まれるアミノ基を修飾することにより、マススペクトルは狙いとするm/zの主ピークに集約し、ピークスプリットが抑制されることが分かる。実施例1および実施例2の結果から、本発明の試料調製方法は、ペプチド部分が異なるアミノ酸配列を有する場合でも、ピークスプリットを抑制可能であり、シアル酸の結合様式の識別に有用であることが分かる。
[実施例3:RNase Bの誘導体化]
実施例3では、RNase B由来の糖ペプチドの誘導体化を行い、シアル酸を含まない糖ペプチドの誘導体化の影響を検討した。
<RNase B由来糖ペプチドの準備>
SIGMAより購入したRNase Bを試料として、実施例2と同様の手順で還元アルキル化を行った後、リジルエンドペプチダーゼ(Lys-C)を加え、37℃で一夜反応させ、プロテアーゼ消化を行った。プロテアーゼ消化後、カーボンカラムによる脱塩精製を行い、次いでGL-Tip Amideを用いて精製および濃縮を行い、図6(A)に示す正イオンマススペクトルを示すハイマンノース型の5種類のグライコフォーム(マンノース数:5〜9、162Da間隔)からなる糖ペプチドを得た。
<実験例3−1:アミノ基を修飾せずにシアル酸を誘導体化>
上記実験例1−1と同様の手順で、イソプロピルアミン存在下での反応およびメチルアミン存在下での反応を順に実施し、正イオンモードで質量分析を行った。マススペクトルを図6(B)に示す
<実験例3−2:全てのアミノ基をジメチル化後に誘導体化>
上記実験例1−3と同様の手順で、還元的アミノ化反応によるアミノ基のジメチル化を行った後に、イソプロピルアミン存在下での反応およびメチルアミン存在下での反応を順に実施し、正イオンモードで質量分析を行った。マススペクトルを図6(C)に示す
<マススペクトルの評価>
実験例3−1(図6(B))では、反応前(図6(A))のm/z 1935のピーク強度が減少し、分子内環化により生じた誘導体由来のm/z 1917(−18)のピーク、およびイソプロピルアミド化により生じた誘導体由来のm/z 1976(+41)のピークが確認された。他のグライコフォームについても、未反応、分子内環化、およびイソプロピルアミド化が混在していた。このように、複数のグライコフォームのそれぞれが副反応に起因するピークスプリットを生じると、スペクトルが極めて煩雑となり、どのグライコフォームからどのピークが生じているかを帰属することは容易ではない。そのため、シアル酸の有無やシアル酸の結合様式を判別することも困難である。
一方、アミノ基のジメチル化を実施した実験例3−2(図6(C))では、誘導体化前(図6(A))に比べて、それぞれm/zが97大きい5種類の誘導体が確認された。これらは、ペプチドC末端のカルボキシ基がイソプロピルアミド化され、リジン残基のアミノ基およびペプチドN末端のアミノ基がジメチル化された誘導体に帰属された。分子内環化等の副反応生成物に由来するピークはほとんど確認されなかった。
図6(C)では、5種類のグライコフォームについて、誘導体前後のm/zの差が97であり、ペプチド部分の誘導体化(2つのアミノ基のジメチル化および1つのカルボキシ基のiPA化)に帰属されることから、糖ペプチドがシアル酸を有していないことを確認できる。
実施例3で分析対象とした糖ペプチドは、ペプチド部分に塩基性アミノ酸であるアルギニン残基を有している。第一反応ではアルギニンのグアニジル基の誘導体化は生じておらず、第二反応後のマススペクトル(図6(C))においてもアルギニンのグアニジル基のNHとカルボキシ基との分子内脱水生成物は確認されなかった。この結果から、第一反応では、ペプチドに含まれる第一級アミノ基、すなわち、リジン残基のε‐アミノ基とペプチドN末端のα‐アミノ基を修飾または除去すればよく、グアニジル基、第二級アミノ基、第三級アミノ基等の除去または誘導化は必要ないことが分かる。

Claims (12)

  1. 糖ペプチドまたは糖タンパク質の分析用試料の調製方法であって、
    糖ペプチドまたは糖タンパク質のペプチド部分に含まれる少なくとも1つの第一級アミノ基を修飾または除去する第一反応;および糖鎖のシアル酸のカルボキシ基を修飾可能な第二反応、を順に実施し、
    前記第二反応は、α2,3‐シアル酸とα2,6‐シアル酸とが質量の異なる誘導体を生成する反応であり、
    前記第一反応に用いる前記糖ペプチドまたは糖タンパク質は、ペプチド鎖のアミノ酸残基数が30以下であり、
    前記第一反応は、前記第二反応において前記糖ペプチドまたは糖タンパク質のペプチド部分に含まれる少なくとも1つの第一級アミノ基がカルボキシ基と反応しないように、前記糖ペプチドまたは糖タンパク質のペプチド部分に含まれる少なくとも1つの第一級アミノ基を修飾または除去する反応である、分析用試料の調製方法。
  2. 前記第一反応は、第一級アミノ基の窒素原子に少なくとも1つの窒素炭素結合を生成させる反応を含む、請求項1に記載の試料の調製方法。
  3. 前記第一反応は、第一級アミノ基のグアニジル化およびジアルキル化の少なくとも一方を含む、請求項1に記載の試料の調製方法。
  4. 前記第一反応は、少なくともペプチド部分に含まれるリジン残基の第一級アミノ基を修飾または除去する反応である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の分析用試料の調製方法。
  5. 前記第一反応は、少なくともペプチドのN末端の第一級アミノ基を修飾または除去する反応を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の分析用試料の調製方法。
  6. 前記第一反応は、ペプチド部分に含まれるすべての第一級アミノ基を修飾する反応である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の分析用試料の調製方法。
  7. 前記第一級アミノ基を修飾する反応が、ジアルキル化である、請求項6に記載の分析用試料の調製方法。
  8. 前記第二反応は、α2,3‐シアル酸を選択的にラクトン化し、α2,6‐シアル酸を選択的にアミド化またはエステル化する反応を含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の分析用試料の調製方法。
  9. 前記第二反応は、前記ラクトンと求核剤との反応により別の誘導体を生成する反応をさらに含み、
    前記ラクトンから生成する誘導体と前記α2,6‐シアル酸から生成する誘導体とが異なる質量を有するように、前記求核剤が選択される、請求項8に記載の分析用試料の調製方法。
  10. 前記糖ペプチドまたは糖タンパク質が固相担体に固定された状態で前記第一反応が行われる、請求項1〜9のいずれか1項に記載の分析用試料の調製方法。
  11. 前記第一反応後の糖ペプチドまたは糖タンパク質が固相担体に固定された状態で前記第二反応が行われる、請求項1〜10のいずれか1項に記載の分析用試料の調製方法。
  12. 請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法により試料を調製し、さらに、調製した試料を質量分析することを特徴とする、糖ペプチドまたは糖タンパク質の糖鎖構造の分析方法。
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