JP2015535304A - 固相グリカンおよび糖ペプチド分析、ならびにグライコミクス抽出用マイクロ流体チップ、これを使用するための分析および方法 - Google Patents

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Abstract

固相システムを使用してグリカンおよびプロテオグリカンを分析するための高度に特異的な新規の固相法が提供されている。本発明は、オンチップグリカン抽出、修飾および分離のためのハイスループットグリカン単離および逆相液体クロマトグラフィー(RPLC)を含む集積装置および使用法も提供する。本発明のGIG−チップ−LC装置によって検出されるN−グリカンのカバー率は、特に低豊富な種について著しく改善されうる。PGCによるチップ−LCは、画分中のグリカン濃度のダイナミックレンジを最小限にし、低存在量グリカンの検出をもたらす。グリカン異性体は、装置のチップ−LC部分によって分離されうる。本発明のGIG−チップ−LC装置は、組織および血清試料に由来するグリカンを分析するのに使用することができ、したがって、グライコミクス分析のための信頼できるツールをもたらす。組織試料に由来するユニークなグリカンを検出する再現可能な性能および能力は、疾患状態に関連した異常なグリカンを発見するための強力な手段を提供する。【選択図】図1

Description

関連出願の参照
本願は、2012年9月10日に出願された米国仮特許出願第61/699,178号、2013年2月27日に出願された同第61/770,151号、および2013年6月6日に出願された同第61/831,731号に基づく利益を主張する。これらのすべては、本明細書に完全に示されているかのように、すべての目的に関して参照により本明細書に組み込まれる。
政府の権利についての陳述
本発明は、NIHによって授与された認可番号CA152813および同第HL107153の下での政府支援ととともに行われた。政府は、本発明のある特定の権利を有する。
タンパク質グリコシル化は、複合グリカンが糖タンパク質に付着した最も一般的で多様なタンパク質修飾の1つである。全ヒトタンパク質の70%超がグリコシル化されていると推定されている。グリカン生合成は、グリコシルトランスフェラーゼおよびグリコシダーゼを伴う多数の高度に競合的なプロセス、基質利用性、ならびに糖化タンパク質およびグリコシル化部位の発現および構造を利用する。したがって、タンパク質グリコシル化は、その生化学的環境に大いに依存する。異常グリコシル化は、多くの疾患、例えば、がん、炎症、ヒト免疫不全ウイルスおよびアテローム性動脈硬化症などの存在と関連していると考えられており、したがってグライコミクス分析は、新規の疾患バイオマーカーまたは治療剤の発見に寄与しうる。さらに、グリカンは、タンパク質の安定性、結合および免疫原性に影響し、モノクローナル抗体などの糖タンパク質治療剤の開発において極めて重要な役割を果たす。しかし、ゲノミクスおよびプロテオミクスと比較して、グライコミクスのための分析技法は、はるかに遅れを取っている。
グリカン分析のためのいくつかの方法が開発されている。一般に、グリカンは、N結合型グリカンについてのペプチド:N−グリコシダーゼF(PNGase F、Peptide:N−Glycosidase F)などの酵素によって、またはO結合型グリカンについてのβ脱離のような化学物質反応によって糖タンパク質または糖ペプチドから最初に放出される。放出されると、グリカンは、質量スペクトル分析のために脱塩され、酵素、化学物質、およびそれらの連結ペプチドから精製される。グリカンは、様々な方法、例えば、アフィニティーカラム、逆相高速液体クロマトグラフィー、キャピラリー電気泳動、親水性相互作用クロマトグラフィーまたは多次元分離などを使用してペプチドおよび他の非グリカン分子から分離することによって精製されるが、これらの方法の主な障害は、これらが、他の種、特に、非グリコシル化ペプチドからグリカンまたは糖ペプチドを分離することができないことである。グリカン精製の観点から、グラファイトガードカラムは、主に塩および小分子を除去するためのグリカン精製に広く使用されている媒体である。しかし、グラファイトカラムは、疎水性に基づいて複雑な試料中のグリカンおよび他の分子を分離し、カラムは、グリカン画分中の非特異的な親水性種および低分子量のペプチドも単離する。結果として、複雑な糖タンパク質試料から回収されるグリカンの収率および特異性は、低いままである。
質量分析法は、定量的なグリカン構造を分析するための新興技術である。しかし、グリカン、特にシアル化グリカンの同定および正確な定量化は、難題である。これは、シアル化グリカンが中性グリカンと比較してイオン化効率が減少した負電荷を有するという事実に起因する。シアル酸の不安定な性質も、グリカンイオンが検出器に到達する前にMS分析中にグリカン内のシアル酸が損失することに起因してグリカンの分析を難題にする。中和でシアル酸を修飾するように適合され、グリカンMSを円満にするいくつかの方法がある。過メチル化も、グリカンのヒドロキシル、アミノ、カルボニルおよびカルボキシ部分をメチル基で修飾することによってグリカンの酸性成分を安定化する広く使用された方法である。このメチル組込みは、グリカンイオン化をより効率的にし、シアル酸の損失も防止する。シアル酸を修飾するのにエステル化、アミド化およびオキシム形成反応を含めた他の手法も報告されている。
複雑な生体試料からのグリカンの迅速な単離および分離は、種々の計測器、例えば、蛍光分光法および質量分析法(MS:mass spectrometry)などによってグリカンを分析するためのグライコミクス分析にとって非常に重要である。レクチンは、親和性相互作用によってグリカンを濃縮することができるが、それぞれのレクチンは、ある特定のタイプのグリカンにのみ有効となり得、その結果これは、包括的なグリカン濃縮および後続のグリカンプロファイリングの能力を欠いている。
サイズ排除および親水性カラムなどのクロマトグラフィー法がグリカンの濃縮および分離に一般に使用される。グリカン分析の検出性および定量性を増大させるために、グリカン、特にシアル化グリカンは、さらなる修飾を必要とする。このプロセスの間、試料損失は不可避である。化学選択的手法を介した固相グライコミクス分析は、グリカン単離に関して最近普及した。例えば、ヒドラジド官能化ビーズは、グリカンの還元末端のアルデヒド基と反応し、他の非コンジュゲート分子は、ヒドラゾン加水分解を介してビーズからグリカンを放出する前に、精製のために除去される。
一方、グリカンの単離、修飾、分離は、クロマトグラフィー手法によって広く実現されてきており、この手法では、グリカンは、LC−MSの前に、酵素消化によって糖タンパク質から最初に脱グリコシル化され、タンパク質から分離され、カラムによって精製され、過メチル化、還元末端標識またはシアル酸修飾によって誘導体化される。これらのグライコミクス分析手順は、時間がかかり、多段階の試料の取り扱いの間に試料損失を引き起こしうる。
正常および疾患検体からのグリカンの定量分析は、疾患の発症および進行の洞察をもたらしうる。グリカン定量化は通常、光学的測定用発色性もしくは蛍光性タグ、または質量分光学分析用同位体タグを用いたグリカンの修飾を必要とする。解像度、感度および速度における質量分析器の急速な進歩に起因して、MSベース法は、過去10年でグリカン分析のためにますます普及してきた。しかし、グリカン標識用の現在の同位体タグは、質量差タグに主に制限されており、これは、定量化のために前駆体イオン中に質量差を生じさせるが、質量スペクトルを占有することによって質量分析法結果を複雑にしうる。
米国特許仮出願第61/699,178号明細書 米国特許仮出願第61/770,151号明細書 米国特許仮出願第61/831,731号明細書
Lab Chip、2009、9、50〜55 Anal.Chem.、2009、81、2545〜2554
したがって、複合混合物からシアル化グリカンを含めたグリカンまたは糖ペプチドを特異的に単離することができる分析法、および生物学的または臨床試料からグリカンを包括的に分析するための費用効果的で感度のよいハイスループット法を開発する必要性が依然として存在する。
一実施形態によれば、本発明は、生体試料中のグリカンを単離する方法であって、a)糖タンパク質を含む生体試料を得るステップと、b)a)の試料を変性して糖タンパク質および/または糖ペプチドを変性するステップと、c)還元的アミノ化でb)からの変性糖タンパク質および/または糖ペプチドを固体支持体上のアルデヒド基にコンジュゲートするステップと、d)還元的アミノ化で固体支持体上の未反応アルデヒド基をブロックするステップと、e)非コンジュゲート糖タンパク質および/または糖ペプチド、ならびに残りの成分を除去するステップと、f)c)の固体支持体に結合した糖タンパク質および/または糖ペプチドからグリカンを放出するステップと、g)f)から放出したグリカンを単離するステップとを含む、方法を提供する。
一実施形態によれば、本発明は、生体試料中のグリカンを分析する方法であって、a)糖タンパク質を含む生体試料を得るステップと、b)a)の試料を変性して糖タンパク質および/または糖ペプチドを変性するステップと、c)還元的アミノ化でb)からの変性糖タンパク質および/または糖ペプチドを固体支持体上のアルデヒド基にコンジュゲートするステップと、d)還元的アミノ化で固体支持体上の未反応アルデヒド基をブロックするステップと、e)非コンジュゲート糖タンパク質および/または糖ペプチド、ならびに残りの成分を除去するステップと、f)c)の固体支持体に結合した糖タンパク質および/または糖ペプチドからグリカンを放出するステップと、g)f)から放出したグリカンを単離するステップと、h)g)のグリカンを分析するステップとを含む、方法を提供する。
別の実施形態によれば、本発明は、生体試料中のグリカンを単離する方法であって、a)糖タンパク質を含む生体試料を得るステップと、b)a)の試料を変性して糖タンパク質および/または糖ペプチドを変性するステップと、c)b)の糖タンパク質および/または糖ペプチドをグアニジンと反応させて、リシンをホモアルギニンに変換するステップと、d)還元的アミノ化でb)からの変性糖タンパク質および/または糖ペプチドを固体支持体上のアルデヒド基にコンジュゲートするステップと、e)還元的アミノ化で固体支持体上の未反応アルデヒド基をブロックするステップと、f)同位元素を使用してアニリンによってアスパラギン酸基を標識するステップと、g)Asp−N消化(Asp−N digest)を実施していずれの未標識アスパラギン酸残基も除去するステップと、h)PNGase Fを使用してc)の固体支持体に結合した糖タンパク質および/または糖ペプチドからN−グリカンを放出するステップと、i)Asp−Nでビーズ上の糖タンパク質および/または糖ペプチドを消化してグリコシル化モチーフ(黒三角NXT/S)のN−末端のN−糖ペプチドを放出するステップと、j)h)から放出された単離されたグリカンを単離するステップとを含む、方法を提供する。
別の実施形態によれば、本発明は、生体試料中のグリカンを分析する方法であって、a)糖タンパク質を含む生体試料を得るステップと、b)a)の試料を変性して糖タンパク質および/または糖ペプチドを変性するステップと、c)b)の糖タンパク質および/または糖ペプチドをグアニジンと反応させて、リシンをホモアルギニンに変換するステップと、d)還元的アミノ化でb)からの変性糖タンパク質および/または糖ペプチドを固体支持体上のアルデヒド基にコンジュゲートするステップと、e)還元的アミノ化で固体支持体上の未反応アルデヒド基をブロックするステップと、f)同位元素を使用してアニリンによってアスパラギン酸基を標識するステップと、g)Asp−N消化を実施していずれの未標識アスパラギン酸残基も除去するステップと、h)PNGase Fを使用してc)の固体支持体に結合した糖タンパク質および/または糖ペプチドからN−グリカンを放出するステップと、i)Asp−Nでビーズ上の糖タンパク質および/または糖ペプチドを消化してグリコシル化モチーフ(黒三角NXT/S)のN−末端のN−糖ペプチドを放出するステップと、j)h)から放出された単離されたグリカンを単離するステップと、j)g)のグリカンを分析するステップとを含む、方法を提供する。
いくつかの実施形態では、本発明は、シアル化グリカンを安定化および標識するための方法であって、N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N−エチルカルボジイミド(EDC)の存在下でp−トルイジンを用いてシアル化グリカンのアミド化誘導体を調製するステップを含む、方法を提供する。
一実施形態では、本発明は、生体試料中のシアル化グリカンを単離する方法であって、a)糖タンパク質を含む生体試料を得るステップと、b)a)の試料を変性して糖タンパク質および/または糖ペプチドを変性するステップと、c)還元的アミノ化でb)からの変性糖タンパク質および/または糖ペプチドを固体支持体上のアルデヒド基にコンジュゲートするステップと、d)還元的アミノ化で固体支持体上の未反応アルデヒド基をブロックするステップと、e)非コンジュゲート糖タンパク質および/または糖ペプチド、ならびに残りの成分を除去するステップと、f)p−トルイジンでc)の変性糖タンパク質および/または糖ペプチドを誘導体化するステップと、g)c)の固体支持体に結合した糖タンパク質および/または糖ペプチドからグリカンを放出するステップと、h)g)からの放出されたグリカンを単離するステップとを含む、方法を提供する。
別の実施形態では、本発明は、生体試料中のシアル化グリカンを分析するための方法であって、a)糖タンパク質を含む生体試料を得るステップと、b)a)の試料を変性して糖タンパク質および/または糖ペプチドを変性するステップと、c)還元的アミノ化でb)からの変性糖タンパク質および/または糖ペプチドを固体支持体上のアルデヒド基にコンジュゲートするステップと、d)還元的アミノ化で固体支持体上の未反応アルデヒド基をブロックするステップと、e)非コンジュゲート糖タンパク質および/または糖ペプチド、ならびに残りの成分を除去するステップと、f)p−トルイジンでc)の変性糖タンパク質および/または糖ペプチドを誘導体化するステップと、g)c)の固体支持体に結合した糖タンパク質および/または糖ペプチドからグリカンを放出するステップと、h)g)からの放出されたグリカンを単離するステップと,i)h)のグリカンを分析するステップとを含む、方法を提供する。
さらなる実施形態では、本発明は、生体試料中の単離されたシアル化グリカン上のシアル酸残基の数を判定するための方法であって、a)糖タンパク質を含む生体試料を得るステップと、b)a)の試料を変性して糖タンパク質および/または糖ペプチドを変性するステップと、b1)b)の変性試料を2つ以上のアリコートに分割するステップと、c)還元的アミノ化でb)からの変性糖タンパク質および/または糖ペプチドのそれぞれのアリコートを固体支持体上のアルデヒド基にコンジュゲートするステップと、d)還元的アミノ化で固体支持体上の未反応アルデヒド基をブロックするステップと、e)非コンジュゲート糖タンパク質および/または糖ペプチド、ならびに残りの成分を除去するステップと、f)軽質p−トルイジンでc)の変性糖タンパク質および/または糖ペプチドの少なくとも1つのアリコートを誘導体化し、重質p−トルイジンでc)の変性糖タンパク質および/または糖ペプチドの少なくとも1つの他のアリコートを誘導体化するステップと、g)c)の固体支持体に結合した糖タンパク質および/または糖ペプチドのそれぞれのアリコートからグリカンを放出するステップと、h)g)のそれぞれのアリコートから放出されたグリカンを単離するステップとを含む、方法を提供する。
さらに別の実施形態では、本発明は、生体試料中の単離されたシアル化グリカン上のシアル酸残基の数を判定するための方法であって、a)糖タンパク質を含む生体試料を得るステップと、b)a)の試料を変性して糖タンパク質および/または糖ペプチドを変性するステップと、b1)b)の変性試料を2つ以上のアリコートに分割するステップと、c)還元的アミノ化でb)からの変性糖タンパク質および/または糖ペプチドのそれぞれのアリコートを固体支持体上のアルデヒド基にコンジュゲートするステップと、d)還元的アミノ化で固体支持体上の未反応アルデヒド基をブロックするステップと、e)非コンジュゲート糖タンパク質および/または糖ペプチド、ならびに残りの成分を除去するステップと、f)軽質p−トルイジンでc)の変性糖タンパク質および/または糖ペプチドの少なくとも1つのアリコートを誘導体化し、重質p−トルイジンでc)の変性糖タンパク質および/または糖ペプチドの少なくとも1つの他のアリコートを誘導体化するステップと、g)c)の固体支持体に結合した糖タンパク質および/または糖ペプチドのそれぞれのアリコートからグリカンを放出するステップと、h)g)のそれぞれのアリコートから放出されたグリカンを単離するステップと、i)h)のグリカンを分析するステップとを含む、方法を提供する。
いくつかの実施形態では、本発明は、試料からグリカンまたは糖ペプチドのライブラリーを調製するための方法であって、対象から試料を得るステップと、上述した方法を使用して試料中のグリカンまたは糖ペプチドを分析するステップとを含む、方法を提供する。
他の実施形態では、本発明は、試料からグリカンプロファイルを調製するための方法であって、対象から試料を得るステップと、上述した方法を使用して試料中のグリカンを分析することによってグリカンプロファイルを作成するステップとを含む、方法を提供する。
一実施形態では、本発明は、試料中のグリカンを分析するための装置であって、a)少なくとも第1および第2の層を有するチップの形態での基板であり、第1の層は、少なくとも第1および第2のチャネルを有する流体層であり、それぞれのチャネルは、入口および出口を有し、チャネルのそれぞれは、分離部および拘束部を有し、第1のチャネルは、グリカンの液体クロマトグラフ分離のための固定相を含み、第2のチャネルは、アルデヒド活性アガロースビーズ樹脂を含み、第2のチャネルの出口は、第1のチャネルと交差し、第1のチャネルの入口に近位の位置で第1のチャネルと連通しており、b)第2の層は、流体層の頂部に収められたカバースリップ層であり、入口または出口へのアクセスを閉じる脱着可能なキャップをそれぞれ有する少なくとも3つのリザーバーを有し、第1のリザーバーは、第1のチャネルの入口と連通しており、第2のリザーバーは、第2のチャネルの入口と連通しており、第3のリザーバーは、第1のチャネルの出口と連通しており、c)第2の層は、液封を作るように第1の層に結合している、基板を備える装置、を提供する。
別の実施形態では、本発明は、試料中のグリカンを分析するための方法であって、a)第1のチャネルの入口を開放し、第1のチャネルの出口を閉じた状態で、本発明の装置の第2のチャネルの入口内にグリカンを含有する試料を注入するステップと、b)第2のチャネル内で試料中の任意のタンパク質をアルデヒド活性アガロースビーズ樹脂にコンジュゲートさせるステップと、c)第2のチャネル内で、還元試薬でコンジュゲートしたタンパク質を還元し、樹脂上の任意の遊離アルデヒド基をブロックするステップと、d)水で第2のチャネルを洗浄するステップと、e)第2のチャネル内で放出剤を用いてグリカンを放出するステップと、f)第1のチャネルの入口に近位の位置で第1のチャネル内に第2のチャネルの出口を介してグリカンを流すステップと、g)第2のチャネルの入口を閉じ、第1のチャネルの入口内に移動相をポンプ移送しながら、第1のチャネルの出口から溶離液を収集するステップと、h)溶離液中のグリカンを分析するステップとを含む、方法を提供する。
さらなる実施形態では、本発明は、試料からグリカンまたは糖ペプチドのライブラリーを調製するための方法であって、対象から試料を得るステップと、本発明の装置および/または方法を使用して試料中のグリカンまたは糖ペプチドを分析することによってグリカンライブラリーを作成するステップと含む、方法を提供する。
さらに別の実施形態では、本発明は、試料からグリカンプロファイルを調製するための方法であって、対象から試料を得るステップと、上述した方法を使用して試料中のグリカンを分析することによってグリカンプロファイルを作成するステップとを含む、方法を提供する。
なおさらなる実施形態では、本発明は、対象における疾患または状態を診断するための、上述した方法を使用して調製されるグリカンまたは糖ペプチドプロファイルの使用であって、対象からのグリカンまたは糖ペプチドプロファイルを正常試料または疾患試料からのグリカンプロファイルと比較するステップと、対象の試料が疾患または状態を有するか否かを判定するステップとを含む、使用を提供する。
図1は、固相グリカン抽出(SPGE)法を使用するグリカン捕捉および放出の模式図である。 図2は、固体支持体上のグリカンのSPGEおよび修飾を使用するSGPからのグリカンの分析を示す図である。固体支持体への6時間のコンジュゲーション反応の前(A)および後(B)のSGP糖ペプチド(m/z=2865.8Da)の質量スペクトル。ノイラミニダーゼ処理の前(C)および後(D)のSGPペプチドからの放出されたグリカン。 図3は、SPGE法を使用して単離された、RNase B 1μgからの抽出された高マンノースグリカンの質量スペクトルを示す図である。RNase Bの5種すべての以前に報告されたマンノースグリカンが観察された。 図4は、SPGEを使用するヒト血清からのグリカン分析を示す図である。 図5は、低質量範囲(上)および高質量範囲(下)でのSPGE法を使用して4種の前立腺がん細胞株から抽出されたグリカンのMALDI−MSスペクトルを示す図である。 図6は、AALレクチン(A)、ConAレクチン(B)およびタンパク質染色(C)を使用する4種の前立腺がん細胞株に対する糖タンパク質の分析を示す図である。 図7は、本発明の糖ペプチドおよびグリカンの固相抽出(SPEGAG)法の概略図である。 図8Aは、本発明のSPEGAG法の代替の実施形態の概略図を示す図である。 図8Bは、図8Aの方法を使用して単離されたフェチュイン由来のN−糖ペプチドおよびN−グリカンのMALDI−MSスペクトルを示す図である。 図9は、代替の糖ペプチドおよびグリカンの固相抽出(SPEGAG)法を使用するウシフェチュイン由来のN−糖ペプチドNCSVRQQTQHAVEG.Dの1つのMS/MSスペクトルを示す図である。 図10は、シアル酸の固相標識および質量分析法によるシアル化グリカンの定量分析のためのスキームストラテジーを表す図である。タンパク質は、固体支持体にコンジュゲートされている。結合タンパク質は、軽質または重質p−トルイジンで標識されている。N−グリカンは、PNGase Fを使用してタンパク質から放出される。N−グリカンは、MALDI−MSを使用して分析される。 図11は、ウシフェチュイン由来のNグリカンのShimadzu AXIMA Resonance MALDI質量分析計からの質量スペクトルを示す図である。N−グリカンのシアル酸は、EDCの存在下でp−トルイジンでアミド化した。グリカンを、陽イオンモードによってDHB/DMAマトリックスで分析した。1000ショットを獲得した。正確な質量に基づく最ももっともらしい構造の説明のためにGlycoworkbenchを使用した。濃い正方形は、GlcNAcを表し、濃灰色の円は、マンノースを表し、薄灰色の円は、ガラクトースを表し、濃い三角形は、フコースを表し、薄い菱形は、p−トルイジンで修飾されたシアル酸を表す。 図12は、ヒト血清由来のN−グリカンのMALDI−MSスペクトルを表す図である。血清タンパク質の2つの等しいアリコートをビーズに結合させ、1つのアリコートは、軽質p−トルイジンで標識し、第2のアリコートは、重質p−トルイジンD9で標識した。N−グリカンは、PNGase Fを使用して放出させた。グリカンの混合物をMALDI−MS分析に付した。12A)軽質標識モノシアル化N−グリカン。12B)重質標識モノシアル化N−グリカン。12C)軽質および重質標識モノシアル化グリカンの1:1混合物のMSスペクトル。12D)血清N−グリカンの質量スペクトル、軽質および重質標識シアル酸からのピーク対間の差異は、N−グリカン構造中に存在するシアル酸の数を表す。正確な質量および二重線間の差異に基づく最ももっともらしい構造の絵のためにGlycoworkbenchを使用した。 図13は、1,3,4−O−Bu3ManNAcで処理された膵がん細胞株SW1990由来のタンパク質のN結合型グリカンを示す図である。13A)1,3,4−O−Bu3ManNAcで処理され、重質p−トルイジンで標識されたSW1990細胞由来のN−グリカンの質量スペクトル。13B)対照として1,3,4−O−Bu3ManNAcで処理されていない、軽質p−トルイジンで標識されたSW1990細胞由来のN−グリカンの質量スペクトル。13C)1,3,4−O−Bu3ManNAcを用いておよび用いないで処理され、それぞれ重質および軽質p−トルイジンで標識され、次いで1:1比で混合されたSW1990細胞由来のN−グリカンの質量スペクトル。 図14は、ウシフェチュイン由来の無修飾N−グリカンのShimadzu AXIMA Resonance MALDI質量分析計からの質量スペクトルを表す図である。グリカンを、陽イオンモードによってDHB/DMAマトリックスで分析した。1000ショットを獲得した。 図15は、ウシフェチュイン由来のN−グリカンのShimadzu AXIMA Resonance MALDI質量分析計からの質量スペクトルを示す図である。N−グリカンのシアル酸をEDCの存在下、アセトヒドラジドでアミド化した。グリカンを、陽イオンモードによってDHB/DMAマトリックスで分析した。1000ショットを獲得した。 図16は、ウシフェチュイン由来のN−グリカンのShimadzu AXIMA Resonance MALDI質量分析計からの質量スペクトルを表す図である。N−グリカンのシアル酸をEDCの存在下、アニリンでアミド化した。グリカンを、陽イオンモードによってDHB/DMAマトリックスで分析した。1000ショットを獲得した。 図17は、本発明の一実施形態を例示する図である。(1A)グリカン捕捉および分離のためのGIG−チップ−LC装置の流体層、ならびにリザーバーおよび針挿入のためのA、B、Cの場所の模式図。(1B)装置のカバースリップ層、および針を伴ったポートA〜Cを表す模式図。 図18は、グリカン分析のための本発明のGIG−チップ−LC装置の実施形態の操作を表す模式図である。(A)Aminolinkビーズが充填された第2のチャネル内にタンパク質を注入することによるタンパク質の捕捉。(B)第1のチャネル内での多孔質黒鉛化炭素粒子中の放出されたグリカンの分離。 図19は、チップ−LC部を使用することなく装置のGIG部を用いて分離することによるマウス血清または心臓組織由来のN−グリカンを示す図である。マウス血清(MBS)(A)およびマウス心臓組織(MT)(B)をGIGおよびMSによって分析した。表6に示すいくつかのN−グリカンの数値表現。ここでMan5−Man9は、オリゴマンノースである。 図20は、本発明のGIG−チップ−LC装置および方法の使用によるマウス血清または心臓組織由来のN−グリカンのプロファイリングを表す図である。マウス血清(MBS)(A)およびマウス心臓組織(MT)(B)をGIG−チップ−LCおよびMSによって分析した。オリゴマンノースは、21%および22%のアセトニトリル濃度を有する2つの画分中に存在し、シアル化グリカンは、溶離液25%〜28%および30%〜35%で検出され、三分岐および四分岐シアル化グリカンは、40%以上で検出された。 図21は、ヒト血清からのN−グリカンのカバー率を示す図である。合計65種のN−グリカン質量を、LC分画を用いることなくチップのGIG部を使用してヒト血清から検出した(A)。合計148種のN−グリカン質量をGIG−チップ−LCを一緒に使用してヒト血清から検出した(B)。GIGを使用してヒト血清から抽出したN−グリカンを、MALDI−MSによって直接分析した。 図22は、GIG−マイクロチップによるリボヌクレアーゼBから単離されたN−グリカンを示す図である。5種のオリゴマンノースグリカンがマイクロチップのGIG部から溶出され、MALDI−MSによって検出された。 図23は、GIG−チップLCによる再現可能なN−グリカン分画を表す図である。マウス血清(MBS)のN−グリカン。(A)血清タンパク質400μg(B)血清タンパク質200μgを、GIG−チップ−LC装置および方法を使用して抽出した。分画されたN−グリカンをShimadzu AXIMA Resonance MALDI−MSによって検出した。
炭水化物を分析する改良法を対象とする方法が本明細書に提供されている。本明細書において、用語「炭水化物」は、多価アルコールのアルデヒドまたはケトン誘導体のクラスのいずれかを含むように意図されている。したがって、炭水化物には、デンプン、セルロース、ゴムおよびサッカリドが含まれる。説明のために、用語「サッカリド」または「グリカン」が以下に示されているが、これは、限定的であるように意図されていない。本明細書で提供される方法は、任意の炭水化物を対象とすることができることが意図されており、特定の炭水化物の使用は、その炭水化物のみに限定していることを意味しない。
本明細書において、用語「サッカリド」は、1種または複数のモノサッカリド基を含むポリマーを指す。したがって、サッカリドには、モノ−、ジ−、トリ−およびポリサッカリド(またはグリカン)が含まれる。グリカンは、分岐状または分岐状でありうる。非サッカリド部分、例えば、脂質またはタンパク質など(複合糖質として)に共有結合的に連結したグリカンを見つけることができる。これらの共有結合性コンジュゲートとしては、糖タンパク質、糖ペプチド、ペプチドグリカン、プロテオグリカン、糖脂質およびリポ多糖がある。これらの用語のいずれか1つの使用も、限定的であるように意図されておらず、その理由は、その記載が例示的な目的で示されているためである。複合糖質の一部として見出されるグリカンに加えて、グリカンは、遊離形態(すなわち、別の部分から分離し、それに付随していない)でも存在しうる。用語ペプチドの使用は、限定的であるように意図されていない。本明細書で提供される方法は、「ペプチド」が列挙されているタンパク質を含むようにも意図されている。
固相グリカン抽出(SPGE:Solid−Phase Glycan Extraction)を使用して複雑な試料からタンパク質にコンジュゲートしたグリカンをハイスループットで分析するための新規方法が本明細書に記載されている。糖タンパク質または糖ペプチドが固体支持体上に固定化され、他の分子が除去され、次いでグリカンが糖タンパク質/糖ペプチドから放出され、質量分析によって分析された。本発明の方法は、ヒト血清および細胞由来のグリカンの分析に適用された。4タイプのがん細胞から抽出されたグリカンは、フコシル化および高マンノースグリカンは、アンドロゲン非依存性細胞内で異なって発現されることを示した。
SPGEは、グリカン分析にとっていくつかの利点を有する。いずれの特定の例にも限定されることなく、特定のグリカンがさらに精製されることなく直接分析された。これは、C−18およびグラファイトカラムを使用する伝統的なグリカン精製ステップを排除することによって、グリカン単離からの高収率、および高感度の検出、ならびに時間およびコストの低減を可能にする。さらに、固相捕捉方法は、酵素または化学物質を使用するグリカン修飾のためのプラットフォームを提供する。本発明では、本発明者らは、エキソグリコシダーゼ消化が効率的である一方、糖化タンパク質は、固体支持体に結合されることを示した。酵素および化学物質は、容易に除去することができ、他の試薬を添加することができ、複雑な試料からのグリカンの修飾または誘導体化のための特異的で迅速な方法をもたらす。したがって、本発明は、化学物質および酵素の組合せを使用するグリカン配列決定または標的化グリカン合成のためのプラットフォームを提供する。さらに、SPGE手順は、定量的であり、単離されるグリカンは、現在の下流分析プラットフォームに適合性である。本発明の方法では、単離されたグリカンは、無標識定量化を使用してMSによって分析されたが、本方法は、グリカンの安定同位体標識とともに使用して正確な定量を得ることができる。グリカンは、クロマトグラフィーまたは電気泳動分析のために蛍光タグで標識することもできる。SPGEによってSPGから捕捉されたグリカンを試験した。分析の繰り返しのCVは、12.87%であり、SPGEを使用するグリカン単離は、定量的であることを示した。
一実施形態によれば、本発明は、生体試料中のグリカンを単離する方法であって、a)糖タンパク質を含む生体試料を得るステップと、b)a)の試料を変性して糖タンパク質および/または糖ペプチドを変性するステップと、c)還元的アミノ化でb)からの変性糖タンパク質および/または糖ペプチドを固体支持体上のアルデヒド基にコンジュゲートするステップと、d)還元的アミノ化で固体支持体上の未反応アルデヒド基をブロックするステップと、e)非コンジュゲート糖タンパク質および/または糖ペプチド、ならびに残りの成分を除去するステップと、f)c)の固体支持体に結合した糖タンパク質および/または糖ペプチドからグリカンを放出するステップと、g)f)から放出したグリカンを単離するステップとを含む、方法を提供する。
別の実施形態では、単離されたグリカンは、分析ステップに付される。
本発明の方法のいくつかでは、N結合型およびO結合型糖タンパク質の両方が還元的アミノ化によって固体支持体にコンジュゲートされる。N−グリカンは、PNGase Fによって固体支持体から特異的に放出されることが実証された。N−グリカンを放出した後、O−グリカンを分析のためにビーズから放出することができる。しかし、インタクトなO結合型グリカンを除去するのに、PNGase Fに匹敵する酵素はまったくない。O結合型オリゴサッカリドを順調に放出するために、Galβ1,3GalNAcコアのみがセリンまたはトレオニン残基に付着したままになるまで、エキソグリコシダーゼのパネルを使用することによってモノサッカリドを順次除去する必要がある。次いでコアをO−グリコシダーゼによって放出することができる。すべてのO結合型オリゴサッカリドがこのコア構造を含有するわけではないので、β−脱離などの化学的方法が、以前にO結合したグリコシル化ペプチドの放出にとってより一般的かつ有効でありうる。タンパク質の固相捕捉も、他のタンパク質翻訳後修飾、例えば、アシル化、リン酸化およびユビキチン化などを研究するための強力なプラットフォームをもたらす。
別の実施形態によれば、本発明は、生体試料中のグリカンを単離する方法を提供する:本発明は生体試料中のグリカンを分析する方法であって、a)糖タンパク質を含む生体試料を得るステップと、b)a)の試料を変性して糖タンパク質および/または糖ペプチドを変性するステップと、c)b)の糖タンパク質および/または糖ペプチドをグアニジンと反応させて、リシンをホモアルギニンに変換するステップと、d)還元的アミノ化でb)からの変性糖タンパク質および/または糖ペプチドを固体支持体上のアルデヒド基にコンジュゲートするステップと、e)還元的アミノ化で固体支持体上の未反応アルデヒド基をブロックするステップと、f)同位元素またはiARTリガンドを使用してアニリンによってアスパラギン酸基を標識するステップと、g)Asp−N消化を実施していずれの未標識アスパラギン酸残基も除去するステップと、h)PNGase Fを使用してc)の固体支持体に結合した糖タンパク質および/または糖ペプチドからN−グリカンを放出するステップと、i)Asp−Nでビーズ上の糖タンパク質および/または糖ペプチドを消化してグリコシル化モチーフ(黒三角NXT/S)のN−末端のN−糖ペプチドを放出するステップと、j)h)から放出された単離されたグリカンを単離するステップと、j)g)のグリカンを分析するステップとを含む、方法を提供する。別の実施形態では、単離されたグリカンは、分析ステップに付される。
一実施形態によれば、本発明は、シアル酸グリカンを安定化させるために、p−トルイジンを用いたアミド化を介したシアル化グリカンの誘導体化をもたらす。p−トルイジンはまた、負に帯電したシアル酸を中和し、誘導体化されたN−グリカンを質量分析法検出のためにより疎水性にする。いくつかの実施形態では、タンパク質は、還元アミノ化によって固体支持体に最初にコンジュゲートされる。次いでコンジュゲートしたタンパク質上のシアル酸基は、EDCの存在下でp−トルイジンを付加することによって修飾される。次いでグリカンは、固体支持体上でタンパク質から放出され、正モードで質量分析法によって分析される。軽質および安定同位体の重質p−トルイジン試薬が誘導体化反応で使用されるとき、それぞれのシアル酸の軽質タグと重質タグとの間の7質量単位差が質量スペクトルで有効に分割され、グリカン構造中のシアル酸の数の同定、または異なる試料に由来するシアル化グリカンの相対定量を可能にする。いずれの特定の例にも限定されることなく、本発明の方法は、フェチュインおよびヒト血清由来のシアル化N−グリカンの同定に適用され、また、シアル酸生合成経路によって代謝フラックスを増大させるManNAc類似体とともに細胞がインキュベートされた後のN−グリカンシアル化を研究するために、膵がん細胞、SW1990由来のシアル化グリカンの定量分析に使用された。
一実施形態では、本発明は、生体試料中のシアル化グリカンを単離するための方法であって、a)糖タンパク質を含む生体試料を得るステップと、b)a)の試料を変性して糖タンパク質および/または糖ペプチドを変性するステップと、c)還元的アミノ化でb)からの変性糖タンパク質および/または糖ペプチドを固体支持体上のアルデヒド基にコンジュゲートするステップと、d)還元的アミノ化で固体支持体上の未反応アルデヒド基をブロックするステップと、e)非コンジュゲート糖タンパク質および/または糖ペプチド、ならびに残りの成分を除去するステップと、f)p−トルイジンでc)の変性糖タンパク質および/または糖ペプチドを誘導体化するステップと、g)c)の固体支持体に結合した糖タンパク質および/または糖ペプチドからグリカンを放出するステップと、h)g)からの放出されたグリカンを単離するステップとを含む、方法を提供する。別の実施形態では、単離されたグリカンは分析ステップに付される。
本発明の方法は、特定の単離されたグリカン上のシアル酸残基の数を同定することも提供する。さらなる実施形態では、本発明は、生体試料中の単離されたシアル化グリカン上のシアル酸残基の数を判定するための方法であって、a)糖タンパク質を含む生体試料を得るステップと、b)a)の試料を変性して糖タンパク質および/または糖ペプチドを変性するステップと、b1)b)の変性試料を2つ以上のアリコートに分割するステップと、c)還元的アミノ化でb)からの変性糖タンパク質および/または糖ペプチドのそれぞれのアリコートを固体支持体上のアルデヒド基にコンジュゲートするステップと、d)還元的アミノ化で固体支持体上の未反応アルデヒド基をブロックするステップと、e)非コンジュゲート糖タンパク質および/または糖ペプチド、ならびに残りの成分を除去するステップと、f)軽質p−トルイジンでc)の変性糖タンパク質および/または糖ペプチドの少なくとも1つのアリコートを誘導体化し、重質p−トルイジンでc)の変性糖タンパク質および/または糖ペプチドの少なくとも1つの他のアリコートを誘導体化するステップと、g)c)の固体支持体に結合した糖タンパク質および/または糖ペプチドのそれぞれのアリコートからグリカンを放出するステップと、h)g)のそれぞれのアリコートから放出されたグリカンを単離するステップとを含む、方法を提供する。別の実施形態では、単離されたグリカンは、分析ステップに付される。
本発明の別の実施形態によれば、用語「生体試料」または「生体液」は、限定されるものではないが、生きている対象または以前に生きていた対象に由来する任意の量の物質を含むことが理解される。このような物質としては、限定されるものではないが、血液、血清、血漿、尿、細胞、臓器、組織、骨、骨髄、リンパ、リンパ節、滑膜組織、CSF、軟骨細胞、滑膜マクロファージ、内皮細胞および皮膚がある。好適な実施形態では、流体は血液または血清である。
本明細書において、用語「対象」は、限定されるものではないが、マウスおよびハムスターなどの齧歯目の哺乳動物、ならびにウサギなどのウサギ目の哺乳動物を含めた任意の哺乳動物を指す。哺乳動物は、ネコ(Feline)(ネコ(cat))およびイヌ(Canine)(イヌ(dog))を含めた食肉目に由来することが好適である。哺乳動物は、ウシ(Bovine)(ウシ(cow))およびブタ(Swine)(ブタ(pig))を含めた偶蹄目に由来し、またはウマ(Equine)(ウマ(horse))を含めた奇蹄目のものであることがより好適である。哺乳動物は、霊長類目、セボイド目もしくはシモイド目(サル)のもの、または類人猿目(ヒトおよび類人猿)のものであることが最も好適である。特に好適な哺乳動物は、ヒトである。
本発明の方法における試料中の糖タンパク質の変性は、当技術分野で公知の任意の手段を使用して達成されうることが当業者によって理解されることになる。加熱に加えて、変性剤およびタンパク質分解も使用してもよい。「変性剤」は、タンパク質などの分子の構造を変化させる作用物質である。したがって変性剤には、タンパク質などの分子をアンフォールドさせる作用物質が含まれる。変性は、例えば、加熱を用いて、β−メルカプトエタノールおよび/またはSDSの存在下での熱変性を用いて、還元とその後のカルボキシメチル化(またはアルキル化)などによって達成されうる。還元は、ジチオトレイトール(DTT:dithiothreitol)などの還元剤を用いて達成されうる。カルボキシメチル化またはアルキル化は、例えば、ヨード酢酸またはヨードアセトアミドを用いて達成されうる。変性は、例えば、DTT、β−メルカプトエタノールまたはトリ(2−カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP:tri(2−carboxyethyl)phosphine)を用いた還元、その後のヨード酢酸を用いたカルボキシメチル化によって達成されうる。複合糖質試料が血清などの体液の試料であるとき、変性は、EndoFで達成されうる。複合糖質はまた、変性剤、例えば、界面活性剤、尿素または塩酸グアニジウムなどで変性されうる。
一実施形態によれば、本発明のグリカンを分析する方法は、当技術分野で公知の任意の化学的方法もしくは酵素法またはこれらの組合せを使用して複合糖質からグリカンを切断するステップを含む。複合糖質からグリカンを切断するための化学的方法の例は、ヒドラジン分解または水素化ホウ素アルカリである。酵素法としては、N−またはO結合型糖に特異的である方法が含まれる。これらの酵素法は、エンドグリコシダーゼH(Endo H)、エンドグリコシダーゼF(EndoF)、N−グリカナーゼF(PNGaseF)、またはこれらの組合せの使用を含む。いくつかの好適な実施形態では、N−グリカンの放出が望まれる場合、PNGaseFが使用される。グリカン放出にPNGaseFが使用されるとき、タンパク質は、例えば、酵素を使用する前に最初にアンフォールドされる。タンパク質のアンフォールディングは、上記に示した変性剤のいずれかで達成されうる。
本発明の上記方法の一実施形態によれば、a)における試料の変性は、i)試料を十分な時間にわたって加熱すること、ii)i)からの試料をタンパク質分解酵素とともにある時間にわたってインキュベートすること、およびiii)十分な量のPNGase Fをii)の試料に添加してペプチド断片からグリカンを放出することを含む。
本発明の方法で使用されるタンパク質分解酵素は、ペプチド結合を切断することができる任意の酵素でありうることが当業者によって理解される。本発明の方法で有用なタンパク質分解酵素の例としては、トリプシン、キモトリプシン、パパインおよびペプシンがある。
タンパク質を変性および/または消化した後(Endo Hを使用する場合、ペプチド部分は、炭水化物を依然として含有する)、糖ペプチドおよび糖タンパク質断片は、洗浄または当技術分野で公知の様々なカラムベース法の使用によって除去することができる。代わりに、糖ペプチドおよび糖タンパク質断片は、公知の方法を使用して収集し、別個に分析することができる。
一実施形態によれば、本発明の方法は、試料中の遊離グリカンまたは複合糖質から放出されたグリカンを固体支持体にコンジュゲートするステップを含む。一実施形態では、b)における試料の遊離グリカンまたは放出されたグリカンのコンジュゲーションは、i)b)からの試料の少なくとも一部を、超常磁性ヒドラジドナノ粒子を含む固体支持体に添加すること、ii)i)の混合物を混合すること、およびiii)40から60℃の間の温度で十分な時間にわたってii)の混合物をインキュベートすることを含む。これにより、放出されたグリカンがナノ粒子上のヒドラジド部分へのヒドラゾン結合を形成することが可能になる。別の実施形態では、ヒドラジド部分は、任意の公知の固体支持体にライゲーションし、または他の方法で化学的に結合させることができる。
さらなる実施形態によれば、固体支持体への放出されたグリカンのコンジュゲーションは、触媒の非存在下または存在下で実施される。本発明の方法で使用するのに適した触媒は、グリカンの遊離還元末端の固体支持体上のヒドラジド部分との反応におけるシッフ塩基中間体として作用しうる化合物を含むことが当業者によって理解されることになる。本発明の方法では、触媒は、放出されたグリカンおよび固体支持体の混合物に添加することができる。一実施形態によれば、本発明の方法で使用される触媒は、アニリンである。
本発明の方法でグリカンおよび糖ペプチドを結合させるのに使用される固体基板は、グリカンの付着または会合に適切な別個の個々の部位を含有するように修飾されてもよく、少なくとも1種の検出法に適用できる材料でありうる。基板の代表例としては、ガラスおよび改質ガラスまたは官能化ガラス、プラスチック(アクリル樹脂、ポリスチレンおよびスチレンと他の材料とのコポリマー、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブチレン、ポリウレタン、テフロンなどを含む)、ポリサッカリド、ナイロンまたはニトロセルロース、樹脂、ケイ素および変性ケイ素を含めたシリカまたはシリカベース材料、炭素、金属、無機ガラス、ならびにプラスチックがある。
代替の実施形態では、例えばスライドなどの他の支持体を固体支持体として使用することができる。これは、空間的情報を伴うグリカン分析に特に有用であり、組織のグリカンイメージングに適用することができる。さらに別の実施形態では、周知のリガンド、例えば、ビオチン−ヒドラジドまたはアジド−ヒドラジドなどを使用して固体支持体の代わりにタグも使用することができ、リガンドは、溶液中のグリカンをコンジュゲートするのに使用することができ、次いでタグを使用して引き続き捕捉される。この溶液捕捉実施形態は、in vivoでグリカンを捕捉するのに特に有用である。
非コンジュゲート成分を除去した後、グリカンまたは糖ペプチド(N−およびO−糖ペプチドの両方)は、加水分解によってビーズから放出し、分析することができる。一実施形態によれば、ヒドラゾン結合の加水分解は、溶液のpHを3未満に下げることによって達成される。いくつかの実施形態では、pHの範囲は、約pH1から約pH3の間、好ましくは約pH2である。一方で、これを達成するのに任意の酸溶液、例えば、トリフルオロ酢酸(1%v/v未満)、0.01M HCl、または0.005M HSOなどを使用することができることが理解される。一実施形態によれば、10%v/vギ酸が本使用に適している。
本明細書に開示するように、本発明は、複雑な生体試料のグライコミクス捕捉、誘導体化および分析を行うための集積装置を提供する。装置は、マイクロ流体チップの形態でありうる。試料中のグリカンの捕捉および誘導体化は、本発明者らによって開発された、かつ、ともに本明細書に参照により組み込まれる米国特許出願第61/699,178号および同第61/770,151号に記載されている「グリカン抽出のための糖タンパク質固定化」、または(GIG:glycoprotein immobilization for glycan extraction)として公知の化学選択的技法を利用する装置の一部で実施される。
本発明の装置またはチップは、抽出されたグリカンをさらなる分析のために分離するためのマイクロ流体液体クロマトグラフィー分離法を包含する分離部も備える。この分離部は、「チップ−LC」と呼ばれ、その理由は、これがマイクロ流体チップ技術に基づいているためである。したがって、1つまたは複数の実施形態では、少なくとも2つの部分、GIG部およびチップ−LC部が、本発明の装置を構成する。
一実施形態では、装置は、複数の層を有するチップの形態でのポリマー基板を備える。一実施形態では、チップは、流体層およびカバースリップ層を備え、これらは、装置の最終組み立てで一緒に融合される。流体層は、入口および出口を有する複数のチャネルから構成されている。チャネルは、「拘束チャネル」と呼ばれる出口端部の近位のチャネルの一部が、それぞれチャネルの「分離部」と呼ばれるチャネルの残りより小さい深度を有するように製作されている。
一実施形態では、本発明の装置の流体層は、それぞれ分離部および拘束部を有する少なくとも2つのチャネルを備える。分離部は、基板の深度の限界内で任意の寸法を有しうる。一実施形態では、チャネルの分離部は、少なくとも500μm×500μm〜1000μm×1000μmの寸法を有し、好適な実施形態では、チャネルの分離部は、約800μm×800μmの寸法を有する。チャネルの拘束部は、チャネルの分離部内に配置された固定相または分離基板または支持体に対する堰または仮想バルブとして作用するようにより小さい寸法を有する。一実施形態では、チャネルの拘束部は、約25μm×25μmから約100μm×100μmの間の寸法を有し、好適な実施形態では、チャネルの拘束部は、約50μm×50μmの寸法を有する。
一実施形態では、第1のチャネル(図17中の(2))は、分離部内に配置された、グリカンの液体クロマトグラフ分離のための固定層として作用する化合物を有する。この第1のチャネルは、本発明の装置の「チップ−LC」部である。一実施形態では、化合物は、粒子形態での多孔質黒鉛化炭素である。第2のチャネル(図17中の(6))は、分離部内に配置された、グリカンの捕捉、誘導体化および分離のための固定化および反応基板として作用する化合物を有する。この第2のチャネルは、本発明の装置の「GIG」部である。一実施形態では、第2のチャネルの分離部内の化合物は、アルデヒド活性アガロースビーズ樹脂である。一実施形態では、樹脂は、AminoLink樹脂(Pierce、Rockford、IL)である。
次に、分解図で本発明のチップの流体部分の一実施形態を表す図17を参照すると、チップ(1)の流体層は、ポリマー基板から構成されており、この基板は、第1のチャネル(2)を作製するためにミリングされており、このチャネルは、入口または出口の両方として作用する第1の端部またはポート(A)、および同様に入口または出口の両方として作用する第2の端部またはポート(C)を有する。第1のチャネルの拘束部(3)は、ポート(C)の近位にある。第1のチャネルの残りは、第1のチャネルの分離部である。ポリマー基板はまた、第2のチャネル(4)を作るためにミリングされており、このチャネルは、入口または出口の両方として作用する第1の端部またはポート(B)、および第1のチャネルの第1の端部の近位の第1のチャネルの分離部内への出口として作用する第2の端部(5)を有する。第2のチャネルも拘束部(6)を有し、これは、第2のチャネルの第2の端部の近位にある。第2のチャネルの残りは、第2のチャネルの分離部である。
次に、装置のカバースリップ層の一実施形態を表す図17Bを参照する。一実施形態では、カバースリップ層(7)は、装置の流体層の寸法と一致し、流体層の頂部に収まるように形成されている。チップのカバースリップ層(7)は、ポリマーから構成されており、それに穿孔された3つのリザーバー(8)(A、B、C)を有する。リザーバーは、図17Aに示したチャネルの端部と連通している。リザーバーの直径は、特定の直径のチューブがカバースリップ層を通過して、チップの流体層内のチャネルの端部に液体を送達することができるようなものである。一実施形態では、リザーバーの直径は、22ゲージ外科用縫合針が各リザーバー内に確実に収まり、流体層内のチャネルへの入口または出口として作用することを可能にするのに十分である。2つの層は、液封をもたらす公知の方法を使用して一緒に結合されている。装置のチャネル内の流れ方向は、適切な針ポート(A、BまたはC)にキャップをすることによって制御される。
ポートA〜Cは、任意のタイプの適当な外部コンポーネント、すなわち、例えば、シリンジポンプ、シリンジ針および溶出コレクターに接続することができる。
一実施形態では、装置の操作は以下の通りである。試料分析を始めるために、ポートBがポートAおよびCを開放してキャップされ、装置のチップ−LC部内の多孔質黒鉛化炭素(PGC:porous graphitized carbon)および移動相、例えば、80%アセトニトリル(0.1% FA)が、ポートAからポートCに第1のチャネルを通じて流され、その後、0.1% FA洗浄液がさらに流される。次いでポートCがキャップされ、ポートAおよびBが開放され、試料が装置のGIG部の第2のチャネル内に注入される。試料は、アルデヒド活性アガロースビーズ樹脂と十分な時間、例えば、約30分〜3時間、好ましくは約2時間、相互作用させられる。これにより、タンパク質がビーズとコンジュゲートすることが可能になる。次いで試料中のタンパク質は、NaCNBH溶液などの還元液を、約1から3時間の間、好ましくは約2時間、BからAに注入することによって還元される。次いで任意の遊離アルデヒド基が還元液およびTris緩衝液の添加によってブロックされる。シアル化グリカンを修飾するために、次いでp−トルイジンの溶液が注入され、樹脂とともに第2のチャネル内で2から4時間の間、好ましくは約3時間、インキュベートさせられる。次いで第2のチャネルは、水でポートBからポートAに洗浄される。樹脂上の結合タンパク質からグリカンを放出するために、PNGase FがポートBで第2のチャネル内に注入され、約1〜3時間、好ましくは約2時間インキュベートさせられる。次いで放出されたグリカンは、ポートBで第2のチャネル内に洗浄液を注入することによって、装置のチップ−LC部内に装填される。これにより、放出されたグリカンが第1のチャネルに移動し、第2のチャネルの第2の端部(5)と第1のチャネルの分離部との交点で収集されることが可能になる。
装置のチップ−LC部を使用してグリカンをさらに分離するために、ポートBがキャップされ、ポートAおよびCが開放される。次いで移動相がポートA内にポンプ移送され、第1のチャネルからの溶離液が、選択された勾配または濃度の移動相、例えば、アセトニトリルおよび水を使用してポートCから収集される。収集された溶離液は、様々な公知の方法を使用して分画および分析することができる。一実施形態では、溶離液を、MALDI−MSを使用してグリカンについて分析することができる。
一実施形態によれば、本発明のGIG−チップ−LC装置は、他の分離または誘導体化方法を含むように改良することができる。例えば、一実施形態では、本発明の装置は、チップ上でチャネルと互いに連通する他の固定相または支持体で充填された1つまたは複数の他のチャネルを含むことができる。グリカン過メチル化を実施するために、装置を、第2のチャネルが同じ基板もしくはチップ内で、または隣接する基板もしくはチップ上で第3の水酸化ナトリウムが充填されたチャネルと接続されているように作製することができる。装置のGIG部から抽出されたグリカンを、第3の水酸化ナトリウムが充填されたマイクロチップ内に注入し、グリカン過メチル化、その後の装置のチップ−LC部を使用する分離を行うことができる。多くの他のバリエーションが企図されている。
さらなる実施形態によれば、放出されたグリカンの固体支持体へのコンジュゲーションは、触媒の非存在下または存在下で実施される。本発明の方法で使用するのに適した触媒は、グリカンの遊離還元末端の固体支持体上のヒドラジド部分との反応におけるシッフ塩基中間体として作用しうる化合物を含むことが当業者によって理解される。本発明の方法では、触媒は、放出されたグリカンおよび固体支持体の混合物に添加することができる。
本発明の装置を作るのに使用される固体基板は、任意の適当な材料でありうる。基板の代表例としては、ガラスおよび改質ガラスまたは官能化ガラス、プラスチック(アクリル樹脂、ポリスチレンおよびスチレンと他の材料とのコポリマー、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブチレン、ポリウレタン、テフロンなどを含む)、ポリサッカリド、ナイロンまたはニトロセルロース、樹脂、ケイ素および変性ケイ素を含めたシリカまたはシリカベース材料、炭素、金属、無機ガラス、ならびにプラスチックがある。好適な実施形態では、基板内に使用されるプラスチックは、環式オレフィンポリマーである。
一実施形態によれば、溶出されたグリカンを分析する方法は、ある特定の実施形態では、質量分光法、電気泳動法、NMR、クロマトグラフィー法、またはこれらの組合せでグリカンを分析するステップを含む。さらなる実施形態では、質量分光法は、限定されるものではないが、MALDI−TOF、MALDI−TOF/TOF、MALDI−qTOF、およびMALDI−QITを含めたLC−Orbitrap、LC−FTMS、LC−LTQ、MALDI−MSを使用するLC−MSおよびLC−MS/MSである。好ましくは、質量分光法は、最適条件を使用する定量的MALDI−MSまたはLC−MSである。さらに別の実施形態では、電気泳動法はCE−LIFである。さらに別の実施形態では、キャピラリーゲル電気泳動またはキャピラリーゾーン電気泳動などの方法を本発明の方法とともに使用することができる。
他の実施形態では、本発明の装置および方法は、公知のグリカン標準物質の較正曲線を使用してグリカンを定量化するステップを含む。
さらに別の実施形態では、本発明の装置および方法は、診断または予後の目的のための方法を含む。
さらなる実施形態では、本発明の装置および方法は、試料の純度を評価するための方法を含む。
いくつかの実施形態では、使用される装置および方法は、診断の方法であり、パターンは、疾患状態と関連している。好適な一実施形態では、疾患状態と関連するパターンは、がん、例えば、前立腺がん、黒色腫、膀胱がん、乳がん、リンパ腫、卵巣がん、肺がん、結腸直腸がんまたは頭頸部がんなどと関連するパターンである。他の好適な実施形態では、疾患状態と関連するパターンは、免疫学的障害;神経変性疾患、例えば、伝染性海綿状脳症、アルツハイマー病またはニューロパチーなど;炎症;関節リウマチ;嚢胞性線維症;または感染、例えば、ウイルスもしくは細菌感染と関連するパターンである。他の実施形態では、使用される装置および方法は、予後を監視する方法であり、公知のパターンは、疾患の予後と関連している。さらに別の実施形態では、使用される装置および方法は、薬物処置を監視するためであり、公知のパターンは、薬物処置と関連する。特に、使用される装置および方法は、集団指向薬物処置の選択のため、ならびに/または投薬の選択、活動監視および/もしくは有効性エンドポイントの判定についての前向き研究におけるものである(例えば、グライコームプロファイルの分析)。
複合糖質のグリカンを分析する方法は、当技術分野で公知の任意の化学的方法もしくは酵素法またはこれらの組合せを使用して複合糖質からグリカンを切断するステップも含みうる。複合糖質からグリカンを切断するための化学的方法の例は、ヒドラジン分解または水素化ホウ素アルカリである。酵素法としては、N−またはO結合型糖に特異的である方法が含まれる。これらの酵素法は、エンドグリコシダーゼH(Endo H)、エンドグリコシダーゼF(EndoF)、N−グリカナーゼF(PNGaseF)、またはこれらの組合せの使用を含む。いくつかの好適な実施形態では、N−グリカンの放出が望まれる場合、PNGaseFが使用される。グリカン放出にPNGaseFが使用されるとき、タンパク質は、例えば、酵素を使用する前に最初にアンフォールドされる。タンパク質のアンフォールディングは、上記に示した変性剤のいずれかで達成されうる。
タンパク質コアからグリカンを放出した後、またはグリカンが遊離形態(複合糖質の一部でない)に既にあったとき、試料は、例えば、エタノールでタンパク質を沈殿させ、グリカンを含有する上清を除去することによって精製することができる。タンパク質、界面活性剤(変性ステップからの)、および塩を除去するための他の実験的方法には、当技術分野で公知の任意の方法が含まれる。これらの方法としては、透析、クロマトグラフィー法などがある。一例では、精製は、多孔質グラファイトカラムで達成される。いくつかの好適な実施形態では、グリカンを除くあらゆるものが試料から除去される。タンパク質からグリカンを分離するのに使用した化学切断または酵素消化後のクリーンアップのために、市販の樹脂およびカートリッジを用いて試料を精製することもできる。このような樹脂およびカートリッジとしては、イオン交換樹脂および精製カラム、例えば、GlycoClean H、SおよびRカートリッジなどがある。好ましくは、いくつかの実施形態では、GlycoClean Hが精製のために使用される。
精製は、グリカンを含有する試料からのアルブミンおよび/または抗体の除去などの多量のタンパク質の除去も含みうる。いくつかの方法では、精製は、非グリコシル化タンパク質などの非グリコシル化分子の除去も含みうる。多量のタンパク質の除去は、本明細書の他で記載されるいくつかのハイスループット法などのいくつかの方法にとって望ましいステップでありうる。提供される方法のいくつかの実施形態では、豊富なタンパク質、例えば、アルブミンまたは抗体などは、最終組成分析の前に試料から除去することができる。
他の実施形態では、特にMALDI−MSが分析に使用される場合、グリカンのイオン化を改善するためにグリカンを修飾することができる。このような修飾には過メチル化が含まれる。グリカンイオン化を増大させる別の方法は、MSまたは液体クロマトグラフ検出のために、グリカンを疎水性化学物質にコンジュゲートすることである(AA、AB標識など)。諸方法の例は、以下の実施例でさらに記載されている。他の実施形態では、信号強度を改善するためにスポット法を使用することができる。
グリカンを特徴付けるようにグリカンを分析するための任意の分析法をグリカンの任意の試料に対して実施することができ、このような分析法には、本明細書に記載のものが含まれる。本明細書において、グリカンまたは他の分子を「特徴付ける」ことは、その同一性、構造、組成または量を判定するのに使用されうるデータを得ることを意味する。この用語が複合糖質を参照して使用される場合、これは、複合糖質のグリカンおよび/または非サッカリド部分のグリコシル化部位、グリコシル化部位占有率、同一性、構造、組成または量、ならびに特定の糖型の同一性および量を判定することも含みうる。これらの方法としては、例えば、質量分析法、NMR(例えば2D−NMR)、電気泳動およびクロマトグラフィー法がある。質量分光法の例としては、FAB−MS、LC−MS、LC−MS/MS、MALDI−MS、MALDI−MS/MSなどがある。NMR法は、例えば、COSY、TOCSY、NOESYを含みうる。電気泳動は、例えば、CE−LIF、CGE、CZE、COSY、TOCSY、NOESYを含みうる。電気泳動は、例えばCE−LIFを含みうる。
一実施形態では、ライブラリーは、遊離または標識複合糖質、および複合糖質の断片からなり、断片は、複合糖質の非サッカリド部分である。一例では、ライブラリーは、複合糖質もしくは遊離グリカンを単離することによって、または試料中の複合糖質の骨格を切断することによって試料から生じる。次いでグリカンまたは複合糖質を試料から除去することができる。そのように生成されたライブラリーを、本明細書で提供される装置および方法で分析することができる。ライブラリーは、一度特徴付けられた標準物質としても使用することができ、このようなライブラリーを使用する方法も提供される。
一実施形態では、本発明の方法は、グリカンもしくは複合糖質の遊離形態を単離するステップ、または複合糖質からグリカンを酵素的もしくは化学的に除去することによって複合糖質を切断するステップ、および試料を標準物質と混合するステップを含む、複合糖質を含む試料を分析する方法を含む。次いで標準物質と混合された試料を分析することができる。一実施形態では、試料および標準物質の複合糖質および非サッカリド部分の量が比較される。本発明の一態様では、標準物質も提供される。
試料を分析する前に、試料を化学的方法または酵素法で分解させて試料中の任意の複合糖質からグリカンを切断することができる。酵素法の例は、上記に示されており、例えば、PNGase F、エンドグリコシダーゼH、およびエンドグリコシダーゼF、またはこれらの組合せの使用を含む。化学的方法も上述されており、ヒドラジン分解、水素化ホウ素アルカリまたはベータ脱離を含む。
化学的または酵素分解の後、次いで試料をいくつかの実施形態において実施することができる。精製法も上記に示した。特定の精製法の例には、固相抽出カートリッジ、例えば、黒鉛化炭素カラムおよびC−18カラムなどを使用することが含まれる。
上述したように、タンパク質のグリコシル化は、正常または疾患状態の指標となりうる。したがって、本発明の装置および方法は、全グライコームなどのタンパク質またはタンパク質のセットのグリコシル化の分析に基づく診断目的のために提供される。本明細書で提供される装置および方法は、特定のタンパク質グリコシル化またはグリコシル化のパターンの変更を引き起こしているまたはもたらす任意の疾患または状態の診断のために使用することができる。次いでこれらのパターンを、「正常」および/または「疾患」パターンと比較して対象についての診断および処置を展開することができる。例えば、提供した装置および方法を、がん、炎症疾患、良性前立腺肥大症(BPH:benign prostatic hyperplasia)などの診断に使用することができる。
診断は、疾患または状態を有するまたは有すると考えられる人において実行することができる。診断は、疾患または状態のリスクのあると考えられる人にも実行することができる。「リスクのある人」は、疾患もしくは状態を有する遺伝性素因を有する人、または疾患もしくは状態を発症する自分のリスクを増大させうる要因に曝されている人である。
早期でのがんの検出は、その効率的な処置にとって非常に重要である。診断技術の進歩にもかかわらず、がんの多くの症例は、悪性細胞が周囲組織に浸潤し、または体全体に転移するまで診断および処置されない。現在の診断手法は、がんの検出に著しく寄与してきたが、これらは、感度および特異性の問題を依然として提示する。
本発明の1つまたは複数の実施形態によれば、本明細書で提供される装置および方法を使用して行われうるがん診断のタイプは、必ずしも限定されないことが理解される。本明細書での目的に関して、がんは、任意のがんでありうる。本明細書において、用語「がん」は、リンパ系または血流を通じて体の他の部分に広がりうる異常で制御されていない細胞分裂によって引き起こされる任意の悪性増殖または腫瘍を意味する。
がんは、転移性がんまたは非転移性(例えば、局在的な)がんでありうる。本明細書において、用語「転移性がん」は、がんの細胞が転移したがんを指し、例えば、がんは、がん細胞の転移によって特徴付けられる。転移は、本明細書に記載するように、局所転移または遠隔転移でありうる。
用語「処置する」および「防止する」ならびにこれらから生じる単語は、本明細書において、必ずしも100%のまたは完全な処置または防止を暗示しない。むしろ、潜在的な利益または治療効果を有すると当業者が認識する様々な程度の処置または防止がある。この点において、本発明の装置および方法は、哺乳動物におけるがんの処置または防止を含めた、任意の量の任意のレベルの診断、病期分類、スクリーニング、または他の患者管理を提供することができる。
一実施形態によれば、本発明は、対象における疾患または状態を診断するために本明細書に開示の装置および方法を使用して調製されるグリカンプロファイルの使用であって、対象からのグリカンプロファイルを正常試料または疾患試料からのグリカンプロファイルと比較するステップと、対象の試料が疾患または状態を有するか否かを判定するステップとを含む、使用を提供する。
本発明の装置および方法によれば、用語「がん」または「腫瘍」は、限定されるものではないが、副腎がん、胆道がん;膀胱がん、脳腫瘍;乳がん;子宮頸がん;絨毛癌;大腸がん;子宮内膜がん;食道がん;肝外胆管がん;胃がん;頭頸部がん;上皮内新生物;腎がん;白血病;リンパ腫;肝がん;肺がん(例えば、小細胞および非小細胞);黒色腫;多発性骨髄腫;神経芽細胞腫;口腔がん;卵巣がん;膵臓がん;前立腺がん;直腸がん;肉腫;皮膚がん;小腸がん;精巣がん;甲状腺がん;子宮がん;尿道がんおよび腎がん、ならびに他の癌腫および肉腫も含む。
SPGE材料および方法。
シアリルグリコペプチド(SGP:sialylglycopeptide)は、メリーランド大学、薬学部からのL−X Wang博士の研究室によって提供された。トリス(2−カルボキシチル)ホスフィン(TCEP:Tris(2−carboxythyl)phosphine)およびAminoLink樹脂は、Pierce(Thermo Scientific)からのものであり;ペプチド−N−グリコシダーゼF(PNGase F)、変性緩衝液およびノイラミニダーゼは、New England BioLabsからのものであり;ウシ膵臓由来のリボヌクレアーゼB(RNase B:ribonuclease B)、2,5−ジヒドロキシ安息香酸(DHB:2,5−dihydroxybenzoic acid)およびN,N−ジメチルアニリン(DMA:N,N−dimethylaniline)は、Sigma−Aldrichから購入し;μ−Focus MALDIプレートおよびそのホルダーは、Hudson Surface Technologyからのものであり;AXIMA Resonance − MALDI QIT/TOF質量分析法は、Shimadzu Biotechからのものであり;ヒト前立腺がん細胞株(22RV1、LnCap、PC3およびDU145)ならびに細胞培地は、アメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC:American Type Culture Collection)から購入し;RIPA緩衝液は、Milliporeからのものであり;プロテアーゼ阻害剤カクテルは、Rocheからのものであった。血清は、ジョンズホプキンス大学の施設内審査委員会の認可とともに健康な男性から収集し、使用のためにプールした。すべての他の化学物質は、指定されていない限りSigmaから購入した。
SPGEを使用するペプチドまたはタンパク質からのグリカン抽出。コンジュゲーション:SGP糖ペプチドまたは消化されたRNase Bタンパク質由来のペプチドを、還元的アミノ化を使用してビーズにコンジュゲートした。簡単に言えば、AminoLink樹脂50μL(50%スラリー100μL)をpH10.0の緩衝液(40mMクエン酸ナトリウムおよび20mM炭酸ナトリウム)400μL中のペプチドとともに室温で6時間混合しながらインキュベートした。50mMリン酸塩緩衝液(pH7.4)400μLで2回樹脂をすすいだ後、AminoLink樹脂上のペプチドを、50mMリン酸塩緩衝液(pH7.4)中の50mM NaCNBHを室温で4時間混合しながら添加することによってさらに還元した。インキュベートした後、ビーズを1M Tris−HCl(400μL、pH7.6)で2回洗浄した後、1M Tris−HCl(pH7.6)400μL、50mM NaCNBHを添加してビーズ表面上の未反応アルデヒド部位を30分間ブロックした。血清タンパク質をビーズにコンジュゲートするために、20μgからのタンパク質を、10×変性緩衝液(New England Biolabs)10μLおよびpH10.0の緩衝液90μLからなる溶液100μL中で、100℃で10分間最初に変性させた後、AminoLink樹脂にコンジュゲートさせた。ビーズ上に固定化されたタンパク質またはペプチドを、1M NaCl 400μLで3回、HOで3回、および5mM NHHCOで3回洗浄した。
グリカン放出:追加のエキソグリコシダーゼ処理のために、ノイラミニダーゼ0.5μLを、SGP糖ペプチドとコンジュゲートしたビーズに、50mMクエン酸ナトリウム(pH6.0)10μLとともに添加し、37℃で2時間インキュベートしてシアル酸基を除去した。酵素および化学試薬を、1M NaCl 400μL、次いでHO、次いで5mM NHHCOで洗浄することによって除去した。最後に、PNGase F 1μLを5mM NHHCO 39μLとともにビーズ混合物に添加し、37℃で2時間インキュベートしてN−グリカンを放出した。上清を収集し、真空乾燥した。メタノールを使用してグリカン上のシアル酸基を安定化させた。
MALDI−MSを使用するグリカンの分析。SPGEを使用してSGP、RNase B、血清または細胞から抽出したグリカンをAXIMA MALDI共鳴質量分析計(Shimadzu)によって分析した。本発明者らは、シアル化グリカンの検出を増大させるためのマトリックスとしてDHB 200μL(50%アセトニトリル、0.1mM NaCl中100μg/μL)中のDMA 4μLを使用した。DHB−DMAスポットは、均一な結晶を形成し、レーザー出力吸収およびイオン化効率を増大させることによってシアル化グリカン安定性を増大させた。レーザー出力は、1スポット当たり50の場所においてそれぞれ2ショットについて100に設定した。平均MS1スペクトルを、本発明者らの研究室でMALDI−MS/MSによって以前に分析されたN−グリカンのデータベースと比較することによって、グリカンの割り当てに使用した。MS/MSスペクトルを、割り当てられたグリカンを確認するのに使用した。
SPGEおよびレクチンブロットを使用する細胞株由来のタンパク質のグリカン分析。
SPGEを使用するがん細胞由来のグリカン捕捉のために、サブコンフルエンスでの10cm皿内の細胞を1×PBS緩衝液(50mM)500μLで5回すすぎ、pH10.0の緩衝液(40mMクエン酸ナトリウム、20mM炭酸ナトリウム、pH10.0)500μL中で収穫した。細胞を、超音波処理間に氷上で冷却しながら30秒間隔で3分間超音波処理した。溶解したタンパク質をpH10.0の緩衝液で1000μLの最終体積にした。タンパク質試料の濃度をBCAアッセイキット(Pierce)を使用して測定した。それぞれの細胞株について、等量のタンパク質(4μg)を上述したSPGE手順に従ってタンパク質コンジュゲーションに使用した。
レクチンブロット法は、以前に記載した。簡単に言えば、サブコンフルエンスでの10cm皿内の細胞を1×RIPA緩衝液中に溶解し、氷上で10分間インキュベートした。インキュベートした後、試料を15,000×gで15分間遠心分離した。タンパク質濃度をBCAタンパク質アッセイキット(Pierce)を使用して判定した。各試料について、等量のタンパク質(10μg)を4〜12%NuPAGEゲル(Invitrogen)上に走らせ、次いでニトロセルロース膜(Invitrogen)に移した。ゲルをクーマシーブリリアントブルー(CBB:Coomassie Brilliant Blue)によって染色してタンパク質負荷量を判定した。膜を1×非炭水化物ブロッキング緩衝液(Vector Laboratories)を用いて4℃で一晩ブロックし、次いで、TBST中の0.5μg/mlビオチン化Aleuria Aurantiaレクチン(AAL:Aleuria Aurantia Lectin)およびビオチン化コンカナバリンA(Con A)(Vector Laboratory)とともに室温で1時間インキュベートした。TBSTで3回洗浄した後、レクチン反応性タンパク質をVectastain ABCキット(Vector Laboratory)およびECLキット(Invitrogen)を使用して検出した。
シアル化グリカン分析のための材料および方法。
ウシフェチュイン、ヒト血清、p−トルイジン、アニリン、ジメチルアニリン(DMA)、2,5−ジヒドロキシ安息香酸(DHB)およびEDCは、Sigma Aldrich(St Louis、MO)から購入し、p−トルイジン−d9は、CDN isotopes(Pointe−Claire、Quebec、カナダ)から購入した。アセトヒドラジドは、Tokyo Chemical Industry Co.Ltd(東京、日本)から購入した。PNGase Fは、New England Biolabs(Ipswich、MA)から得た。Amino linkカップリング樹脂は、Pierce(Thermo Fisher Scientific Inc.;Rockford、IL)から購入した。
固体支持体へのタンパク質結合。
タンパク質を、還元的アミノ化を介してamino linkビーズに固定化した。簡単に言えば、AminoLink樹脂(200μL)をスナップキャップスピンカラムに装填し、2000gで1分間遠心分離した。樹脂をpH10の緩衝液(クエン酸ナトリウム100mMおよび炭酸ナトリウム50mM)450μLで洗浄し、その後遠心分離した。洗浄ステップを2回繰り返した。pH10の緩衝液に溶解したタンパク質を、1mg/ビーズ200μLの比でスナップキャップスピンカラム中の調製済みAminoLink樹脂に装填した。体積をpH10の緩衝液を使用して450μLに調整した。試料−樹脂混合物を室温で一晩インキュベートした。混合物を2000gで遠心分離していずれの非結合タンパク質も除去した。樹脂を1×PBS緩衝液(Sigma−Aldrich;pH7.4;450μL)で3回すすいだ。50mMシアノホウ水素化ナトリウム(450μL)の存在下のPBS緩衝液を樹脂に添加した(スピンカラムを、各インキュベーションステップ中にキャップした)。4時間インキュベートした後、上清を、遠心分離(2000g)を介して除去し、50mMシアノホウ水素化ナトリウムの存在下で1M Tris−HCl(pH7.6)450μLを添加して樹脂の未反応アルデヒド部位をブロックした。ブロッキングプロセスを1時間後に終わらせ、その後、PBSで2回、1M NaCl 1.5Mで2回、および水で3回樹脂を洗浄した。
固体支持体にコンジュゲートしたタンパク質のシアル酸の誘導体化およびN−グリカンの放出。
固体支持体にコンジュゲートしたタンパク質を、HClを使用して調整したpH4.5にて1M p−トルイジン450μLおよびEDC 40μLと混合した。4時間インキュベートした後、ビーズを、1M NaClおよび水500μLで2回、その後50mM炭酸水素アンモニウムで各溶液について3回洗浄し、50mM炭酸水素アンモニウム0.3mL中の100単位のPNGase Fを用いて37℃で一晩処理してタンパク質からN−グリカンを放出した。上清中に放出されたNグリカンを引き続き収集した。糖タンパク質から放出されたN−グリカンをCarbographカラム(Extract−Clean SPE Carbo 150mg;Grace Division Discovery Science; Deerfield、IL)でさらに精製し、濃縮し、製造者の指示(Grace Davison Discovery Sciences、Milwaukeem、WI)に従って0.1% TFA 50%アセトニトリル/水中で溶出した。次いでグリカンをSavant Speed−Vac(Thermo Scientific、Asheville、NC)内で乾燥させた。
シアル化グリカンの質量分光分析。
グリカンを水20μL中に再懸濁させた。試料1.5μLを384ウェルμFocus MALDIプレート(Hudson Surface Technology、Fort Lee、NJ)で、マトリックス1.5μLと混合した。DHBマトリックス溶液は、水とACNの1:1溶液1mL中にDHB 100mgを溶解させ、その後ジメチルアニリン40μLを添加することによって調製した。グリカンを正モードでShimadzu AXIMA共鳴質量分析計(Shimadzu、Columbia、MD)によって分析した。
GIG−チップ−LCのための材料。AminoLink樹脂は、Pierce(Thermo Fisher Scientific Inc.;Rockford、IL)からのものであった。ペプチド−N−グリコシダーゼ F(PNGase F)、変性緩衝液およびG7は、New England BioLabs(Ipswich、MA)からのものであった。p−トルイジン、ウシ膵臓由来のリボヌクレアーゼB(RNase B)、2,5−ジヒドロキシ安息香酸(DHB)、N,N−ジメチルアニリン(DMA)、および炭素(メソ多孔性;粒径、45±5μm;孔サイズ、100±10Å)は、Sigma−Aldrich(St.Louis、MO)から購入した。マウスの心臓および血清は、ジョンズホプキンス大学の医用生体工学科からXingde Li博士によって提供された。プールされたヒト血清は、ジョンズホプキンス大学の施設内審査委員会の認可とともに健康な男性から収集した。すべての他の化学物質は、指定されていない限りSigmaから購入した。
マイクロチップ製作。本発明のマイクロフルイディックデバイスは、環式オレフィンポリマー(COP:cyclic olefin polymer)(Zeonor 1020R;2mm×50mm×100mm;Zeon Chemicals L.P.;Louisville、KY)から製作した。MDX−650Aコンピューター数値制御(CNC)システム(Roland ASD;Lake Forest、CA)によってドリルエンドミル(直径650μm)を使用して、針挿入のために3つのリザーバー(8)(A、BおよびC、図1B)を基板内にドリル加工した(Lab Chip、2009、9、50〜55)(図1B)。それぞれの針を、キャピラリー(ID:100μm、OD:360μm;Polymicro Technologies;Phoenix、AZ)によって外部コンポーネント、すなわち、シリンジポンプ、シリンジ針および溶出コレクターに接続した。第2のエンドミル(直径150μm)を使用して、50μmの深度で第1(3)および第2(6)チャネルの拘束チャネル部をマイクロ加工した(図1A)。第3のエンドミル(直径800μm)を使用して、800μmの深度で第1(2)および第2(4)のチャネルの残りを製作した(図1A)。機械加工されたチップをDI水中で30分間超音波処理してチャネルエッジに沿った残屑の除去を保証した。
マイクロチャネル機能およびリザーバーを含有するカバーシートを含むCOP基板を、メタノール、イソプロパノールおよび蒸留水で逐次洗浄することによって清潔にし、次いで窒素ガスで乾燥させた。両方のCOPシートを、75℃にて真空オーブン内で一晩脱気した。カバーシートをガラスプレートに固定し、液体シクロヘキサンのレベルがCOP表面の下5cmであるようにシクロヘキサンを含有する4Lのガラスフラスコ(平らなフランジおよびボトム)内でインキュベートした。COPを8分間インキュベートしてシクロヘキサン蒸気を吸着させた。閉じ込められた気泡を手作業で除去して、両方のCOPシートを直接接触させて置いて初期の溶媒結合を形成した。一時的に結合したCOPシートを、結合中のせん断応力を低減するために両方のCOPとガラスの界面の間にテフロンフィルムを用いて2枚のガラスプレートの間に置いた。最終的な結合は、625lbs/in(45kg/cm)、30℃で2分間、ホットプレス(Auto Four;Carver Inc.;Wabash、IN)を使用して実施した。結合したチップを75℃で少なくとも3時間、真空オーブン内で乾燥させた後、ステンレス鋼針(25mm、22ゲージ外科用縫合針、710umのO.D.、400umのI.D.;Hamilton、Reno、NV、USA)を挿入した。次いで針が挿入されたマイクロチップを、75℃で4時間、真空オーブン内でアニールした。さらなる製作の詳細は、文献に見出すことができる(Anal.Chem.、2009、81、2545〜2554)。
第1および第2のチャネルの名目上のチャネル幾何形状は、800μm×800μmであり、チャネルセグメントのそれぞれは、図17Aで(3、6)として示した「拘束部」として識別される、狭められたチャネル断面で設計した。これらの拘束チャネル部は、GIGおよびチップ−LCプロセスの間のビーズ/粒子の移動および損失を防止するための仮想バルブとして機能する。ポートBから界面(5)への第2のチャネル(4)は、AminoLinkカップリングビーズで充填した。ポートAからCへの第1のチャネル(2)は、多孔質黒鉛化炭素粒子で満たした。
(実施例1)
固定化されたグリカンの固相グリカン抽出および修飾(SPGE)。
1つまたは複数の実施形態によれば、本発明の方法は、以下のステップを含む(図1):i)タンパク質/ペプチドのコンジュゲーション:タンパク質またはペプチドを、タンパク質またはペプチドのN−末端および/またはリシン残基の還元的アミノ化によって固体支持体のアルデヒド基にカップリングさせた。カップリング後、ビーズ上の未反応アルデヒドを、同じ還元的アミノ化反応を介してTris緩衝液を使用してブロックし、非コンジュゲートタンパク質および他の混入物を洗い流した。ii)グリカン放出:反応緩衝液を交換し、グリカンを放出した。iii)質量スペクトル分析:収集したグリカンを乾燥させ、追加の試料クリーンアップを用いることなくMSLDIターゲット上にスポットした。全体的に、SPGE法は、複雑な生体試料中のグリカンプロファイリングのための迅速でロバストな分析プラットフォームをもたらす。
本発明の方法を検証するために、本発明者らは、公知のN−グリカン構造を有するシアリルグリコペプチド(SGP:sialylglycopeptide)を最初に使用した。SGPは、6個のアミノ酸(Lys−Val−Ala−Asn−Lys−Thr、図2A)を含有するペプチドのAsn残基に連結された二分岐N−グリカンを有する。SGPは、上述したように処理し、それぞれのステップ後に分析した。図2Aは、コンジュゲーション前の溶液中のSGPの検出を示す(2865.8Daの質量を有する[M+H]+イオン。ビーズへの6時間のコンジュゲーションの後、非コンジュゲートSGPは溶液中にほとんど残っておらず、SGPのビーズへの効率的なコンジュゲーションを示した(図2B)。ビーズを洗浄して非コンジュゲート分子を除去した後、PNGase Fを使用して、37℃にて5mM NHHCO中でSGPからN−グリカンを放出した。PNGase Fで処理した後、シアル酸を含む二分岐N−グリカン(2273.2Daの質量を有する[M+2CH+Na]イオン)がMALDI−MSによって観察された(図2C)。2時間のインキュベーションにより、グリカンの最大回収率がもたらされた。この結果は、SPGE法が糖タンパク質からグリカンを捕捉するのに使用することができることを示した。さらに、SPGE法は、グリカン修飾/誘導体化の固相プラットフォームをもたらす。SGPをビーズにカップリングさせた後、コンジュゲートしたSGPをノイラミニダーゼで処理してSGPからシアル酸を除去し、その後、ビーズ上に固定化された糖ペプチドからグリカンを放出した。ノイラミニダーゼで処理した後、脱シアル化グリカンに対応する1663.5Daでの[M+Na]+イオンの強い信号が観察された(図2D)。
(実施例2)
SPGEを使用するグリカン分析の性能
グリカン分析に対する固相SPGEの感度を調査するために、SGP 0、0.01、0.05、0.1、0.5および1μgをコンジュゲーションおよび放出実験で使用し、単離されたグリカンを三つ組でMSによって分析した。グリカンの検出限界は、SGPペプチド0.1μgから得たものであり、S/N比は、2273.2Daでのシアル化二分岐N−グリカンピークについて20超であった。
SPGEを使用するグリカンの単離が定量的であるか否かを判定するために、三つ組でSGP 1μgから単離されたシアル化二分岐N−グリカンのMSスペクトル(m/z=2273.2)のピーク面積を計算した。ピーク面積を内部標準(アンギオテンシン)に対して正規化した。三つ組の単離からのグリカン分析のCVは、12.87%であった。これは、SPGEがグリカンの定量分析に使用することができることを示す。
複雑な試料からのグリカンプロファイリングに関するSPGE法の潜在性を評価するために、本発明者らは、糖タンパク質由来のトリプシンペプチドの混合物からのグリカン抽出の特異性を最初に判定した。RNase Bは、5種のN結合型高マンノース構造15、Man−5、Man−6、Man−7、Man−8およびMan−9を有する糖タンパク質である。高マンノース構造を有するこれらの以前に報告されたグリカンの5種すべてがSPGE手順を使用して検出された(図3)。これらの結果は、SPGEが、同定されたグリカンの強度および数から判定されるように、糖タンパク質のペプチドの混合物からほとんどのグリカンを特異的に回収するのに使用することができることを示す。
(実施例3)
SPGEを使用する複雑な血清試料からのグリカン抽出。
次いで本発明者らは、非常に複雑な試料、すなわちヒト血清に由来するグリカンの分析にSPGE法を適用した。血清タンパク質20μgを固体支持体にカップリングした後、ビーズを洗浄して試料中に存在する非コンジュゲートタンパク質および他の分子を除去した。ビーズをPNGase Fで処理することによってビーズに結合した糖タンパク質からグリカンを放出した。グリカン溶液を乾燥させ、水40μLに溶解させた。このうち、2μL(血清タンパク質1μgと等価なもの)をMALDI−MSおよびMS/MSによって分析した。追加の試料クリーンアップまたはさらなるグリカン分離を用いることなく、本発明者らは、60種のN−グリカンを同定することができた(図4)。51種のグリカンが血清試料のMS/MS分析によって検証された(データを示さず)。
(実施例4)
がん細胞のフコシル化およびマンノシル化。
フコシル化およびマンノシル化などのグリコシル化変更は、がん進行と関連している。固相グリカン抽出法を異なる表現型を有するがん細胞に由来するフコシル化およびマンノシル化グリカンのプロファイリングに使用することができるか否かを判定するために、本発明者らは、LnCapおよび22RV1、アンドロゲン依存性低侵襲性細胞、ならびにPC3およびDU145、アンドロゲン依存性侵襲性細胞に由来するN結合型グリカンを分析した。細胞可溶化物からのタンパク質(4μg)をビーズ上に固定化し、グリカンをノイラミニダーゼを使用して脱シアル化することによってフコシル化およびマンノシル化N−グリカンの標的とされた分析の複雑性を低減した。N結合型グリカンを放出し、質量分析法によって分析した。MALDI−MSスペクトルでは、本発明者らは、4種すべての細胞株において、それぞれコアフコシル化二分岐、三分岐および四分岐グリカンとして同定された1809.4Da、2174.7Daおよび2539.9Daで3つの主要ピークを観察した(図5の上および下)。本発明者らは、それぞれのコアフコシル化グリカンは、その分岐の枝上でさらにフコシル化されていることも観察した(図5の下)。
異なる細胞株内のフコシル化グリカンの相対存在量を定量化するために、マルトヘプタオース(DP7)(1175.4Da、モノ−Na)を内部標準として添加した。4種の細胞株のそれぞれに由来するフコシル化グリカンの強度を、各分析におけるDP7強度に対して正規化することによって半定量化した(表2)。三分岐および四分岐コアフコシル化グリカンは、4種すべてのがん細胞株内で検出されたが、PC3細胞は、他の3種の細胞株より低いレベルの三分岐および四分岐コアフコシル化グリカンを有していた(表2)。三または四分岐の枝上の1つまたは2つのフコースのフコシル化が低侵襲性のLnCapおよび22RV1細胞内で豊富であった一方、より少ない量の三または四分岐フコシル化グリカンがより侵襲性のPC3およびDU145細胞内で検出された。三分岐および四分岐グリカンと対照的に、より高いレベルの二分岐グリカンが、LnCapおよび22RV1細胞内より、より侵襲性のPC3およびDU145細胞内で検出された(図5の上および表2)。
5種の高マンノースグリカン(Man5、Man6、Man7、Man8およびMan9)が、1000〜2000Daの範囲で4種のがん細胞株内で検出された(図5の上)。高マンノースグリカンを、フコシル化グリカンの分析で使用した手法と同様の手法を使用して定量的に分析した(表3)。高マンノースグリカンのレベルは、より侵襲性のDU145およびPC3細胞より、低侵襲性のLnCapおよび22RV1細胞内で高かった。しかし、小さい高マンノースグリカン(Man5およびMan6)と比較してより高いレベルの大きい高マンノースグリカン(Man9およびMan8)が、より攻撃的なDU145およびPC3細胞内で検出され、異なる種の高マンノースグリカンが各細胞株を特徴付け、より少ない小さい高マンノースグリカンがDU145およびPC3細胞株内でMan5/Man6の形態で存在することを示した。
変化したフコシル化が糖タンパク質内で検出されるか否かを判定するために、細胞可溶化物を、フコシル化糖タンパク質を認識するAALレクチンによって分析した。AALレクチンは、異なる前立腺がん細胞株にある異なるフコシル化を検出した(図6A)。LnCap細胞は、調べた細胞株のうちで最高レベルのフコシル化を有し、フコシル化は、いくつかの糖タンパク質に明らかに存在した。その理由は、広範囲の分子量が検出されたためである。22RV1細胞のフコシル化レベルは、LnCap細胞のものよりわずかに低かったが、主に2種の特定の糖タンパク質にあった。PC3およびDU145はともに、主に単一の大きい糖タンパク質に、より低いレベルのフコシル化糖タンパク質を含有した。これらのデータは、フコシル化グリカンの分析からの結果と一致し、この分析では、LnCapおよび22RV1細胞でより、PC3およびDU145細胞においてより低いレベルのフコシル化グリカンが検出された。
ConAレクチンを使用して細胞可溶化物に由来する高マンノース糖タンパク質を検出した。ConA染色により、LnCapおよび22RV1細胞に由来するいくつかの糖タンパク質で高マンノシル化が示されたが(図6B)、PC3およびDU145細胞で低レベルのマンノシル化糖タンパク質が示された(図6B)。クーマシーブリリアントブルー(CBB)染色では、4種のがん細胞は、同様のタンパク質構成要素およびタンパク質濃度を有することが示された(図6C)。したがって、レクチン分析により、表現型的に異なる前立腺がん細胞株においてSPGE法によって検出されるグリカンの差異が検証された。
(実施例5)
糖ペプチドおよびグリカンの固相抽出のための方法、SPEGAG(solid−phase extraction of glycopeptides and glycans)法を、以下のステップでヒト血清の分析に適用した(図7):
1.ヒト血清1mgをトリプシンによって一晩消化した。
2.標準方法を使用してC18カートリッジで試料をクリーンアップした。
3.グアニジル化(リシンをホモアルギニンに転換する)、試料を、標準プロトコールを使用してグアニジル化する。
4.標準方法を使用してC18カートリッジで試料をクリーンアップした。
5.次いでペプチド混合物を、50mM NaCNBHを含むPBS緩衝液、pH7.4中で還元的アミノ化によって固体支持体にカップリングする。
6.固体支持体上の使用されなかったアルデヒド基のブロッキング。
7.アニリンによる酸性基の標識。(標識効率をチェックするために内部標準ペプチドを添加する)。標識は、グリカンおよび糖ペプチド定量化のために質量差を導入するための同位体または等圧タグでありうる。
8.次いで試料のAsp−N消化を実施していずれの未標識アスパラギン酸基も除去する。
9.次いで試料をPNGase Fで消化して基板からN−グリカンを放出する。
10.MSによって放出されたグリカンを分析してグリカンを同定および定量化する。
11.固体基板上のペプチドをAsp−Nで消化してグリコシル化モチーフ(黒三角NXT/S)のN−末端のN−糖ペプチドを放出する。
12.MSによって放出されたグリカンを分析してグリカンを同定および定量化する。
13.データベースに対するLC−MS/MSの探索:例えば、ipi.HUMAN.v3.87N_KN.fasta(すべてのN−X−S/Tは、K−N−X−S/Tによって置き換えられ、その結果、本発明者は、酵素としてトリプシンを選択することができた)酵素名称:トリプシン(完全)最大未切断部位(Trypsin(Full)Maximum Missed Cleavage Site):1。
動的修飾の使用:ペプチド1つ当たりの最大修飾:7
C−末端修飾:AnilineCtermi/+75.047Da(任意のC−末端)
1.動的修飾:脱アミド化/+0.984Da(N)
2.動的修飾:グアニジニル/+42.022Da(K)リシンをホモアルギニンに改変
3.動的修飾:酸化/+15.995Da(M)
4.動的修飾:AnilineDE/+75.047Da(D、E)
5.動的修飾:グアニジルアニリン/+117.069Da(K)
5.静的修飾:
1.静的修飾:カルバミドメチル/+57.021Da(C)
標的FDR(緩和した):0.05
SPEGAG法によってヒト血清内で同定された45種のN−糖タンパク質に由来する61種のN−糖ペプチドがあった。特異性は、ペプチドレベルで66.30%であり、タンパク質レベルで70.31%であった(64種のタンパク質に由来する92種のペプチドが同定された)。
(実施例6)
図8Aでは、本発明者らは、本発明のSPEGAG法の別の実施形態の一例を見る。このストラテジーを使用して、フェチュインに由来するN−糖ペプチドおよびN−グリカンの両方を単離することができる。加えて、84種のN−糖タンパク質に由来する108種のユニークなN−糖ペプチドが、OVCAR−3細胞株から同定された(図8B)。
(実施例7)
シアル化グリカンの固相標識。
シアル化グリカンの誘導体化を、固相にコンジュゲートしたタンパク質グリカンに対して順調に実施した。標識されたシアル化グリカンを質量スペクトル分析のために固体支持体から引き続き放出した(図10)。第1に、タンパク質を還元アミノ化によって固体支持体にコンジュゲートした。第2に、グリカンは、固体支持体上のタンパク質に依然として付着していながら、シアル酸のカルボン酸基をEDCの存在下でp−トルイジンによって修飾した。第3に、次いでN−グリカンをPNGase F処理によってタンパク質から放出した。第4に、放出されたグリカンを、正モードで質量分析法を使用して分析した。軽質および安定同位体の重質p−トルイジン試薬を使用してシアル酸を誘導体化したとき、それぞれのシアル酸の軽質タグと重質タグとの間の7質量単位差が質量スペクトルで有効に分割することができた。この質量差は、軽質および重質試薬の1:1混合物がグリカン標識に使用されたとき、グリカン構造中のシアル酸の数の同定を可能にした。軽質および重質試薬は、シアル化グリカンの相対定量化のために異なる試料にも適用した。
フェチュインを、シアル化グリカンを分析するための方法を開発するためのモデル糖タンパク質として使用した。フェチュインは、以下の以前に報告されたシアル化グリカンGlcNAc4Man3Gal2NeuNAc1、GlcNAc4Man3Gal2NeuNAc2、GlcNAc5Man3Gal3NeuNAc2、GlcNAc5Man3Gal3NeuNAc3、およびGlcNAc5Man3Gal3NeuNAc4からなる。シアル酸損失が、ウシ無修飾フェチュインN−グリカン10μlをDHB/ジメチルアニリンマトリックスを用いて質量分析法を使用して分析したとき観察された。シアル酸損失を安定化および防止するために、シアル酸を修飾することが必要であった。したがって、アミド化を、EDCの存在下でシアル酸を修飾するのに使用した。タンパク質損失を防止するために、本発明の方法では、アミド化反応の前にタンパク質を固体支持体に連結した。これは、不純物の除去および最小の試料損失を伴う反応条件の変更にも役立つ。フェチュイン10μgをビーズにコンジュゲートした後、アミド化を使用してシアル酸を修飾し、その後、PNGase Fを使用してN−グリカンを放出した。最後に、グリカンを、質量分析法を使用して分析した(図10、図14)。本発明者らは、シアル化グリカンのアミド化をアセトヒドラジド(図15)およびアニリン(図16)と比較した。アセトヒドラジドによって修飾された4種のフェチュインシアル化グリカンの信号強度は、過メチル化フェチュインに対して以前に公開されたデータと同様でないことが観察された。しかし、アニリンによって修飾されたシアル化グリカンは、以前に報告されたのと同様のシアル化グリカンパターンを有する十分な結果をもたらした。アニリンは、アセトヒドラジドよりグリカンを疎水性にし、したがってシアル化グリカンのイオン化を助長し、MALDIにおけるこれらの検出を増強する。しかし、アニリンで修飾されたシアル酸の質量は、ヘキソース+HexNAcの質量は別としてわずかに1.0744Daであり、ピークの重なりをもたらす。この重なりは、定量分析のために質量分析法によって分割することは困難であった。したがって、異なるグリカン間の重なりを防止するのにp−トルイジンを使用した。p−トルイジン修飾は、アニリン修飾と同様の結果を生じ、すべての以前に報告されたフェチュインシアル化グリカンが観察された(図11)。すべてのシアル化グリカンの相対強度は、最も豊富なグリカンである三分岐トリシアル化グリカンを含むエステル化または過メチル化フェチュイングリカンによって以前に観察されたものと同様であった(図11)。したがって、シアル酸の損失は、p−トルイジン修飾で防止され、すべてのグリカンの検出が可能であった。
(実施例8)
血清由来のシアル化グリカンの検出、および各グリカン中のシアル酸の数の判定。次いで本発明者らは、血清由来のN−グリカンを分析するのに上記方法を適用した。この場合、本発明者らは、ヒト血清の2つの等しいアリコート1.6μLを採取し、一方のアリコートを重質p−トルイジン(D9)で標識し、他方のアリコートを軽質p−トルジンで標識した事実を除いて上述したプロトコールに従った。各アリコートからのグリカンを個々にMSで分析した。m/zピークが軽質標識されたスペクトルで観察され、重質標識されたスペクトルに存在しない場合、そのm/z値は、シアル化グリカンピークと見なした(図12A)。重質標識されたスペクトルで観察されたピークが、軽質標識されたスペクトルで存在しない場合、このようなピークは、同じシアル化グリカンからの信号と確認された(図12B)。1:1の比で混合したとき、血清グリカンも各アリコートから分析した(図12C)。ピーク間の差異を使用して特定のグリカン中に存在するシアル酸の数を判定した(図12C)。軽質および重質にシアル化されたピーク間の7.06Daの差異は、1つのシアル酸が軽質および重質p−トルイジンによって修飾されていたことを意味し、それによってグリカンに1つのシアル酸が存在することを示した。14.121Daの差異は、グリカンが2つの修飾されたシアル酸を含有することを示した。異なって標識されたピーク対のピーク対の差異を、7種の軽質−重質イオン対の複数のm/z値について探索した(図12D)。合計45種のN−グリカンが血清タンパク質から同定され、21種のシアル化N−グリカン構造が順調に同定された(表4)。本発明者らの分析で観察されたシアル化グリカン構造は、血清中で以前に報告された結果と同様であった。図12Dで観察された1:1の比も、本方法がシアル化グリカンの定量分析に使用することができることを示した。
観測質量は、軽質p−トルイジンで標識されたグリカンの質量であり、コアは、N−グリカンのコア構造を表し、これは、2つのHexNAcおよび3つのヘキソースである。
(実施例9)
ManNAcで処理された細胞由来のシアル化N−グリカンの定量分析:代謝フラックスによって推進されたN−グリカンシアル化の変更。
グリカンシアル化の程度が、基礎をなすガラクトースまたはGalNAc残基にシアル酸を付加することに関与する生合成酵素であるシアリルトランスフェラーゼに依存することは、十分に立証されている。しかし、本発明者らは、N−グリカンのシアル化がシアル酸生合成経路による代謝フラックスにも依存することを最近示した。以前の研究において、本発明者らは、フラックスにおけるフラックス変更によって影響された糖ペプチドを同定したが、グリカン自体の構造を分析しなかった。この隙間を満たすために、本発明において、本発明者らは、以前に記載したように1,3,4−O−Bu3ManNAcで処理したSW1990内のN−グリカンをプロファイリングした。1,3,4−O−Bu3ManNAcで処理したSW1990細胞および未処理の対照細胞からのタンパク質抽出物を固体支持体にコンジュゲートし、上述したように同位体p−トルイジンで標識した。標識されたグリカンの質量分光分析により、正確な質量に基づいて87種のN−グリカンが同定された(データを示さず)。シアル酸の組成割り当ては、重質および軽質標識されたグリカンの差異に基づいて判定した。21種の重質および軽質グリカンピークが、7のまたは7の倍数の質量シフトとともに同定され、21種のシアル化グリカンの存在が確認された(図13Aおよび図13B)。1:1で組み合わせた試料を用いてシアル化N−グリカンの同位体標識を使用する、ManNAcで処理したおよび処理していない細胞由来のN−グリカンの定性分析により、14種のシアル化グリカンが同定および定量化された(表5)。7種の他のシアル化N−グリカンは、2種の試料がMS分析のために組み合わされたとき、低信号対雑音比に起因して定量化することができなかった。定量的結果により、ほとんどのN−グリカンは、ManNAcで処理された細胞と未処理細胞との間で軽微なまたは明白でない差異を示すが(図13C)、6種のシアル化N−グリカン組成物は、存在量、特にモノシアル化四分岐N−グリカンの存在量の著しい増大を呈することが示された(表5)。細胞を1,3,4−O−Bu3ManNAcで処理したとき、シアル化N−グリカンの著しい減少はまったくなく、代謝フラックスがタンパク質のシアル化の全体的な程度に寄与することを示した。
H:1,3,4−O−Bu3ManNAcで処理された細胞に由来する重質p−トルイジンで標識されたシアル化N−グリカン。L:未処理(対照)細胞に由来する軽質p−トルイジンで標識されたシアル化N−グリカン。コアは、2つのHexNAcおよび3つのヘキソースであるN−グリカンのコア構造を表す。
本発明の方法は、シアル化グリカンを安定化させ、シアル酸の損失を防止する新規の化学的誘導体化ストラテジーを提供する。具体的には、p−トルイジンでシアル酸を標識すると、グリカンが疎水性になり、C18カラムでの保持が可能になり、グリカンのイオン化が改善される。2つの異なる試料に由来する同じシアル化グリカン構造におけるシアル酸1つ当たり7Daの差異を有する同位体標識は、他の低質量シフト技法と比較して非重複対をもたらすのに実質的に十分であり、したがって定量効率を改善する。対の間の差異は、グリカンに存在するシアル酸の数を決定的に判定するのにも役立つ。固相シアル酸標識を使用して、試料をビーズに最初に結合させると、すべての後続のステップで試料損失が最低になる。シアル酸標識は、タンパク質を加工および除去することなくタンパク質レベルで実施される。標識された試料は、試料調製ステップの残りを通じて組み合わされ、加工され、それにより、すべての後続のステップ、例えば、PNGase F消化および試料クリーンアップなどにおける試料の取り扱いに起因する誤差が低減される。グリカンのシアル酸とともに、タンパク質のアスパラギン酸およびグルタミン酸も修飾され、タンパク質分解を使用して固体支持体からペプチドを放出した後、同じ検体からのペプチド/タンパク質定量に使用することができる。
(実施例10)
チップ−LC装置での固相グリカン抽出。簡単に言えば、一実施形態では、タンパク質(10μg/μLのRNase B 20μL;ヒト血清20μL;マウス血清または組織タンパク質400μg)を、結合緩衝液(40mMクエン酸ナトリウムおよび20mM炭酸ナトリウム、pH10)合計200μL中で100℃にて10分間変性させた。本発明のマイクロチップ内に充填されたAminoLinkビーズを、シリンジポンプ(Pump 11 Elite注入/引抜プログラマブルデュアルシリンジ;Harvard Apparatus;Holliston、MA)を使用して、20μL/分の流量で(注:流量は、特に述べられていない限り20μL/分である)結合緩衝液(pH10)400μLで洗浄した。次いでポートCをキャップし、ポートAおよびBを開放し、次いでタンパク質溶液をポートBからAの方向で第2のチャネル内に注入し、2時間インキュベートしてタンパク質をAminoLinkビーズにコンジュゲートした(図18A)。次いでコンジュゲートしたタンパク質を、ポートBからAに第2のチャネル内に1×PBS中の50mM NaCNBHを注入することによって、NaCNBHによって2時間還元した。ポートBからAに第2のチャネル内で50mM NaCNBHの存在下で1M Tris−HClを注入することによって、遊離アルデヒド基をさらにブロックした。シアル酸修飾用溶液を調製するために、p−トルイジン(47mg)をDI 367μLおよびHCl 33μL(36〜38%)中に溶解させた。次いでEDC(40μL)およびHCl(25μL)をp−トルイジン溶液400μLに添加し、その最終pHをEDC(pHを増大させる)またはHCl(pHを減少させる)によって4〜6に調整した。次いでp−トルイジン溶液(460μL)をポートBからAに第2のチャネル内に注入し、3時間インキュベートした。水でポートBからAに第2のチャネルを洗浄した後、PNGase F(4μL)を、DI水32μL中でG7緩衝液(New England Biolabs)4μLと混合した後、第2のチャネル内に注入し、37℃で2時間インキュベートした。次いですべての針をキャップしてインキュベーション中の緩衝液の蒸発を回避した。
(実施例11)
逆相多孔質黒鉛化炭素を使用するチップ−LC。第1のチャネル内の多孔質黒鉛化炭素(PGC)をコンディショニングするために、ポートBをキャップする一方、80%アセトニトリル(0.1% FA)200μLを、ポートAからCの方向に第1のチャネルを通じて流した。次いで0.1%FA400μLを第1のチャネルを通じて注入した(図18B)。このステップは、タンパク質を実施例10に記載のビーズに固定化する前に実施した。実施例10における固体支持体からのグリカン放出の後、洗浄液(400μl、0.1%ギ酸(FA))をポートB内にCをキャップしながら注入した。放出されたグリカンは、さらなる分離のための第1および第2のチャネルの間の交点(5)で濃厚な状態になる。次いで溶出画分を収集するためにポートAおよびCを開放しながらポートBをキャップした。溶出液は、0%アセトニトリルから開始して最大で80%まで、アセトニトリルおよびHPLCグレード水からなる様々な溶液(勾配)中の0.1% FA移動相からなっていた。使用したアセトニトリル濃度の詳細を以下の実施例で示す。
(実施例12)
MALDI−TOF MS分析。ポートCで本発明のマイクロチップから溶出されたグリカン画分を、AXIMA共鳴質量分析計(Shimadzu;Columbia、MD)によって分析した。グリカンのイオン化を増大させるために、MALDIマトリックスを、DHB200μL(50%アセトニトリル、0.1mM NaCl中100μg/μL)中のDMA4μLを混合することによって調製した。このマトリックスは、均一な結晶を形成し、レーザー出力吸収およびイオン化効率の増強によってグリカンの信号を改善することができる。レーザー出力は、1スポット当たり100の場所においてそれぞれ2ショットについて100に設定した。
(実施例13)
概念実証として、標準糖タンパク質、RNase Bを、オンチップタンパク質捕捉、グリカン酵素放出およびMSによる検出前のPGCを使用する精製に使用した。本発明のマイクロ流体チップ上のGIGの性能を実証するために、ビーズ(AminoLink樹脂)100μLをマイクロチップの第2のチャネル内に充填した。RNase B(200μg)をAminoLinkビーズにコンジュゲートさせ、放出されたN−グリカンを、80%アセトニトリル、0.1%FA40μLを使用して第1のチャンネル内でPGCから精製および溶出した。RNase Bから抽出された5種すべてのN−グリカンが観察された(図22)。5種のN−グリカン、Man5〜Man9は、これらの正確な質量に従って観察された。以前の報告と一致して、Man5がRNase Bからの最も支配的なオリゴマンノースであった。これらの結果は、本発明のチップ上での固相タンパク質捕捉ならびにグリカン放出および精製は、N−グリカン分析のために実現可能であることを示す。
グリカンがチップのGIG部を使用して捕捉および放出された後、PGCで充填された第1のチャネルを有するチップ−LC部は、グリカン精製およびLC分離によってグリカン分析の性能をさらに改善するはずである。したがって本発明者らは、複雑な試料、マウス血清(MBS:mouse blood serum)およびマウス心臓組織(MT:mouse heart tissue)からN−グリカンを抽出するのに本発明のGIG−チップLC装置を適用した。MS検出用にシアル酸を安定化させ、これらの疎水性を改善するために、p−トルイジンを使用して固相でシアル化グリカンを修飾した後、本明細書に記載したようにグリカンを放出した。
(実施例14)
MBSおよびMTを、3分にわたって氷上で30秒間隔でRIPA緩衝液中で30秒間超音波処理した。各試料の装填量は、400μgであり、シアル化グリカンを修飾した後N−グリカンを放出した。グリカンを、チップ−LC分離を用いずにおよび用いてMSによって分析した。放出されたグリカンを、チップ−LC分離を用いずに分析した場合、PGCコンポーネントをグリカン精製カートリッジとして使用し、グリカンを、上述したように一画分中80%アセトニトリルでカラムから溶出し、RNase B分析を行った。マウス血清および心臓組織から放出されたグリカンのMS分析に基づいて、いくつかの興味深い結果が観察された。第1に、オリゴマンノースおよび複合N−グリカンが、血清および心臓組織の両方で検出された。第2に、組織は、マウス血清に由来するものより高いレベルのオリゴマンノースを含有していた(図19(A)対図19(B))。第3に、シアル化グリカンのレベルは、心臓組織からのものと比較してマウス血清においてより高かった。これらの豊富なシアル化グリカンのいくつか、例えば、二または三分岐Nen5Gcグリカンは、マウス血清において以前に報告されていた。全体的に、LC分離を用いない場合、グリカンは、MTおよびMBSの両方で検出された。しかし、これらのスペクトルで検出されない低存在量でおそらく提示されている組織または血清特異的グリカンが、グリカンがMS分析の前に分離される場合、検出可能でありうる。
(実施例15)
チップ−LC分離が心臓組織または血清に由来する特異的グリカンの検出を可能にしたか否かを判定するために、上述したMBSおよびMTから抽出したN−グリカンを、40μL/画分(流量:10μL/分)で段階的アセトニトリル溶出勾配(0〜80%の1%ステップ)を使用して装置のチップ−LC部を使用することによって分離した。各画分は、MSを使用して分析した。本発明者らは、最もフコシル化およびシアル化されたグリカンを含めて、MBSおよびMTの両方で一般に検出される65種の異なったN−グリカン質量を観察した。完全なグリカンリストを表6に示す。本発明のGIG−チップLC装置を使用することによって、本発明者らは、MBS中の96種のN−グリカン質量およびMT中の72種のN−グリカン質量を検出した。7種のN−グリカン質量がMT中にのみ検出され、一方、31種のN−グリカン質量がMBSからのみ検出された。これらの結果は、集積されたGIGおよびチップ−LCを有する新規マイクロフルイディックデバイスは、組織の生理的または病理的状態に関連している場合のある組織特異的グリカンの同定を促進することを示す。
いくつかの研究は、血清中の疾患関連グリカンの変更の同定に、その容易なアクセシビリティおよび非侵襲的診断に起因して注力してきたが、血清は、様々な臓器から分泌される多数のN−グリカンを含有する可能性が高い。代わりに、臓器特異的グリカンの変更について対象とする特定の組織に由来するグリカンを研究することがより有益でありうる。したがって、疾患患部組織の特異的グリカン分析は、特定の疾患に関連した異常なグリカンの同定に有効な手段であるはずである。
チップ−LC分画によって異なるパーセンテージのアセトニトリル中で溶出されたN−グリカンを、疑似3Dプロットでチップ−LC分離を用いないN−グリカンと比較した(図20;表6に挙げたグリカンに対応するピーク数)。チップ−LC画分を用いないでMALDI−MSによって検出された高存在量N−グリカンも、オリゴマンノース、二および三分岐シアル酸を含めてチップ−LC分離後に顕著であった(図20)。オリゴマンノースがマウス心臓組織内で支配的なN−グリカンであり(図20A)、一方、シアル化グリカンがマウス血清中で主に豊富であった(図20B)。注目すべきことに、チップ−LCは、グリカン分画に対して高度に再現可能であった(図23)。例えば、2000Da未満の質量を有するMan5〜Man9グリカンは、異なる試料プロセスにわたって21%アセトニトリルの画分中に溶出され、一方、二分岐シアル化グリカン(71)は、30%アセトニトリル画分で溶出され、三分岐シアル化グリカン(98)は、37%アセトニトリル画分で検出された。
チップ−LCからの特定のアセトニトリル画分中の再現可能なグリカン溶出も、本発明のGIG−チップ−LC装置が同じ質量を有するグリカン異性体を分離することができることを示した(図20)。例えば、オリゴマンノース(5、10、23、46、56)は、21%アセトニトリル中で共溶出された。しかし、本発明者らは、高い強度のピーク(5)が22%のアセトニトリル中でも溶出され、かつ少量のピーク10および23が同じ画分(22%)中で溶出されることを見出した。これらの結果は、40μL/画分の溶出(流量:10μL/分)の最後でグリカンはまったく検出されなかったので、21%アセトニトリルによるMan5〜Man7グリカンの不完全な溶出から生じ得なかった。同様に、二分岐シアル酸(71)が画分30%〜34%および37%で観察されたが、34%から36%の間では観察されなかった(図20B)。これらの結果は、これらのグリカンの異性体が異なる画分でおそらく溶出されたことを示す。タンデムMS分析によるオリゴマンノース構造の詳細な研究によれば、Man5、Man6およびMan7は、いくつかの異性体を有する。例えば、RNase B由来のMan5は、1種の三分岐および3種の二分岐構造を含む潜在的に4種の異性体を有する。異なる異性体が21%または22%のアセトニトリル中で溶出されることが可能である。同様に、Man6異性体は、21%および22%画分中で溶出される。グリカン過メチル化後の異なるオリゴマンノース異性体の素性を判定する追加の研究が必要であるはずであり、その理由は、PGCが、メチル置換基との良好な選択的相互作用を有することによってグリカン保持をさらに増大させるためである。さらに、過メチル化グリカンを詳細な構造解析に使用することができる。オリゴマンノース異性体の調査は、疾患におけるオリゴマンノースの変更、例えば、HIVにおけるgp120グリコシル化の変化などの理解に非常に有用となりうる。
(実施例16)
GIGおよびMSによる複雑な生体試料のグライコミクス分析は、低豊富なグリカンを検出することによってグリカンカバー率の増大を示した。GIGをヒト血清由来のN−グリカンの分析に適用したとき、本発明者らは、グリカン分画を用いないで65種のN−グリカン質量を検出した(図21Aおよび表7)。65種のN−グリカン質量のうち40%超がシアル化されており、この中で13種のN−グリカンはまた、フコシル化されていた。チップ−LC画分を用いてヒト血清から単離されたN−グリカンを分析するためにGIG−チップ−LCを使用したとき、MALDI−MSによって検出されたN−グリカン質量の数は、148に増大した(図21Bおよび表7)。本発明者らは、79種のシアル化グリカン質量および追加の41種のフコシル化グリカン質量を検出した。チップ−LC分離後に観察されるN−グリカンの数の増大は、各画分中のグリカン濃度のダイナミックレンジの低減に起因しうる。結果として、低存在量グリカンは、黒鉛化炭素によって特定の画分中に有効に溶出され、他の豊富さが高いグリカンイオンとのイオン競合を伴うことなくMSによって検出された。
N−グリカン構造の数は、血清から検出された148種のN−グリカン質量ピークよりはるかに大きくなりうる(図21B)。各N−グリカン質量は、いくつかの異性体、時折単一の質量に対して12超に潜在的に対応しうる。重要なことに、各異性体は、それ自体の物理的および生物学的特性を有しうる。異なる異性体は、グリカン過メチル化およびタンデムMSによってさらに区別することができる。グリカンの過メチル化は、マイクロチッププラットフォーム内に水酸化ナトリウム粒子を充填することによってマイクロ流体システムで行うことができる。キャピラリー過メチル化は、グリカン誘導体化のために最近発展中の技術である。一実施形態では、GIGから抽出されたグリカンは、水酸化ナトリウムが充填されたマイクロチップ中に注入し、グリカン過メチル化、その後、チップ−LCプロファイリングを行うことができる。したがって、この画期的なプラットフォームは、割り当てられたグリカン構造に対応するリンケージ情報を提供することによってグライコミクス分析にとって有益であるはずである。
本発明に記載のグリカン単離および分離用集積マイクロチップの使用は、伝統的なクロマトグラフィーに対していくつかの利点を実証する。固相グリカン抽出用マイクロチップの利点に加えて、グリカン分離用に使用されるメソ多孔性PGCは、際立って高い表面積を有する。PGCの粒径は、本発明者らの研究では約45μmである。単一の分離チャネル内の表面積は、以下のように推定した:チャネル横断面は、800μm×800μmであり、長さは、20mmである。したがって、総分離チャネル体積は、0.0128cmに等しく、炭素粒子の密度は、0.5cm/gであり、したがって、合計25.6mgの粒子を分離チャネル内に充填することができ、充填された炭素粒子の推定表面積は、その比表面積に基づいて6.4mである。市販のPGC、例えば、Thermo Scientific製のHypercarbは、250Åの平均孔サイズ、および同じ体積の粒子に関して3.1mである120m/gの比表面積を有する。引き続き、製作されたマイクロチップの同じ表面積を実現するのに、より長い市販のカラムが必要とされ、分離中に背圧が増大する。さらに、本発明のマイクロチップは、低コストであり、分離粒子は、分離性能を犠牲にすることなく再充填することができる。
本明細書に引用した刊行物、特許出願および特許を含めたすべての参考文献は、各参考文献が参照により組み込まれるように個々にかつ具体的に示され、その全体が本明細書に示されているのと同じ程度に参照により組み込まれる。
本発明の記載との関連での(特に以下の特許請求の範囲との関連での)用語「a」および「an」および「the」、ならびに同様の指示対象の使用は、本明細書で別段に示されていない限り、または文脈によって明らかに矛盾しない限り、単数形および複数形の両方に及ぶと解釈されるべきである。用語「含む(comprising)」、「有する」、および「含む(including)」、および「含有する」は、別段の注記のない限り、制限のない用語(すなわち、「含むが限定されない」を意味する)と解釈されるべきである。本明細書での値の範囲の記述は、本明細書で別段に示されていない限り、その範囲内に入るそれぞれ別々の値に個々に言及する簡便な方法として機能を果たすように単に意図されており、それぞれ別々の値は、それが本明細書に個々に列挙されているように本明細書内に組み込まれる。本明細書に記載のすべての方法は、本明細書で別段に示されていない限り、または文脈によって別段に明らかに矛盾しない限り、任意の適当な順序で実施することができる。本明細書に示した任意およびすべての例、または例示的な言い回し(例えば、「など」)の使用は、本発明をより良好に明らかにするように単に意図されており、別段に請求されていない限り、本発明の範囲に対して限定事項をもたらさない。任意の請求されていない要素を示す本明細書内のどの言い回しも、本発明の実践に本質的であると解釈されるべきでない。
本発明を実行するのに本発明者らに分かる最良の形態を含む本発明の好適な実施形態が本明細書に記載されている。これらの好適な実施形態の変形は、前述の記載を読むと当業者に明らかとなりうる。本発明者らは、当業者が必要に応じてこのような変形を使用することを予期しており、本発明が本明細書に具体的に記載した以外の方法で実践されることを意図している。したがって、本発明は、適用法によって許与される、本明細書に添付した特許請求の範囲に列挙した主題のすべての改変および均等物を含む。さらに、上述した要素のすべての可能な変形におけるこれらの任意の組合せは、本明細書で別段に示されていない限り、または文脈によって別段に矛盾しない限り、本発明によって包含されている。

Claims (29)

  1. 一実施形態によれば、本発明は、生体試料中の糖タンパク質からグリカンを単離する方法であって、
    a)糖タンパク質を含む生体試料を得るステップと、
    b)a)の試料を変性して糖タンパク質および/または糖ペプチドを変性するステップと、
    c)還元的アミノ化でb)からの変性糖タンパク質および/または糖ペプチドを固体支持体上のアルデヒド基にコンジュゲートするステップと、
    d)還元的アミノ化で固体支持体上の未反応アルデヒド基をブロックするステップと、
    e)非コンジュゲート糖タンパク質および/または糖ペプチド、ならびに残りの成分を除去するステップと、
    f)c)の固体支持体に結合した糖タンパク質および/または糖ペプチドからグリカンを放出するステップと、
    g)f)から放出したグリカンを単離するステップと
    を含む、方法を提供する。
  2. h)g)のグリカンを分析するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
  3. 生体試料中のグリカンを単離する方法であって、
    a)糖タンパク質を含む生体試料を得るステップと、
    b)a)の試料を変性して糖タンパク質および/または糖ペプチドを変性するステップと、
    c)b)の糖タンパク質および/または糖ペプチドをグアニジンと反応させて、リシンをホモアルギニンに変換するステップと、
    d)還元的アミノ化でb)からの変性糖タンパク質および/または糖ペプチドを固体支持体上のアルデヒド基にコンジュゲートするステップと、
    e)還元的アミノ化で固体支持体上の未反応アルデヒド基をブロックするステップと、
    f)同位元素を使用してアニリンによってアスパラギン酸基を標識するステップと、
    g)Asp−N消化を実施していずれの未標識アスパラギン酸残基も除去するステップと、
    h)PNGase Fを使用してc)の固体支持体に結合した糖タンパク質および/または糖ペプチドからN−グリカンを放出するステップと、
    i)Asp−Nでビーズ上の糖タンパク質および/または糖ペプチドを消化してグリコシル化モチーフ(黒三角NXT/S)のN−末端のN−糖ペプチドを放出するステップと、
    j)h)から放出された単離されたグリカンを単離するステップと
    k)g)のグリカンを分析するステップと
    を含む、方法。
  4. 生体試料中のシアル化グリカンを単離するための方法であって、
    a)糖タンパク質を含む生体試料を得るステップと、
    b)a)の試料を変性して糖タンパク質および/または糖ペプチドを変性するステップと、
    c)還元的アミノ化でb)からの変性糖タンパク質および/または糖ペプチドを固体支持体上のアルデヒド基にコンジュゲートするステップと、
    d)還元的アミノ化で固体支持体上の未反応アルデヒド基をブロックするステップと、
    e)非コンジュゲート糖タンパク質および/または糖ペプチド、ならびに残りの成分を除去するステップと、
    f)p−トルイジンでc)の変性糖タンパク質および/または糖ペプチドを誘導体化するステップと、
    g)c)の固体支持体に結合した糖タンパク質および/または糖ペプチドからグリカンを放出するステップと、
    h)g)からの放出されたグリカンを単離するステップと
    を含む、方法。
  5. i)h)のグリカンを分析するステップをさらに含む、請求項4に記載の方法。
  6. 生体試料中の単離されたシアル化グリカン上のシアル酸残基の数を判定するための方法であって、
    a)糖タンパク質を含む生体試料を得るステップと、
    b)a)の試料を変性して糖タンパク質および/または糖ペプチドを変性するステップと
    b1)b)の変性試料を2つ以上のアリコートに分割するステップと、
    c)還元的アミノ化でb)からの変性糖タンパク質および/または糖ペプチドのそれぞれのアリコートを固体支持体上のアルデヒド基にコンジュゲートするステップと、
    d)還元的アミノ化で固体支持体上の未反応アルデヒド基をブロックするステップと、
    e)非コンジュゲート糖タンパク質および/または糖ペプチド、ならびに残りの成分を除去するステップと、
    f)軽質p−トルイジンでc)の変性糖タンパク質および/または糖ペプチドの少なくとも1つのアリコートを誘導体化し、重質p−トルイジンでc)の変性糖タンパク質および/または糖ペプチドの少なくとも1つの他のアリコートを誘導体化するステップと
    g)c)の固体支持体に結合した糖タンパク質および/または糖ペプチドのそれぞれのアリコートからグリカンを放出するステップと、
    h)g)のそれぞれのアリコートから放出されたグリカンを単離するステップと
    を含む、方法。
  7. i)h)のグリカンを分析するステップをさらに含む、請求項6に記載の方法。
  8. c)のコンジュゲーションが、アニリンを使用して実施される、請求項1から7のいずれかに記載の方法。
  9. 生体試料が対象に由来する、請求項1から8のいずれかに記載の方法。
  10. 分析するステップが、MS、HPLCおよびCEからなる群から選択される分析法を使用して実施される、請求項1から9のいずれかに記載の方法。
  11. 試料からグリカンまたは糖ペプチドのライブラリーを調製するための方法であって、対象から試料を得るステップと、請求項1から10のいずれかに記載の方法を使用して試料中のグリカンまたは糖ペプチドを分析することによってグリカンライブラリーを作成するステップとを含む、方法。
  12. 試料からグリカンプロファイルを調製するための方法であって、対象から試料を得るステップと、請求項1から10のいずれかに記載の方法を使用して試料中のグリカンを分析することによってグリカンプロファイルを作成するステップとを含む、方法。
  13. 対象における疾患または状態を診断するための、請求項1から10のいずれかに記載の方法を使用して調製されるグリカンまたは糖ペプチドプロファイルの使用であって、対象からのグリカンまたは糖ペプチドプロファイルを正常試料または疾患試料からのグリカンプロファイルと比較するステップと、対象の試料が疾患または状態を有するか否かを判定するステップとを含む、使用。
  14. 試料中のグリカンを分析するための装置であって、
    a)少なくとも第1および第2の層を有するチップの形態での基板であり、第1の層は、少なくとも第1および第2のチャネルを有する流体層であり、それぞれのチャネルは、入口および出口を有し、チャネルのそれぞれは、分離部および拘束部を有し、第1のチャネルは、グリカンの液体クロマトグラフ分離のための固定相を含み、第2のチャネルは、アルデヒド活性アガロースビーズ樹脂を含み、第2のチャネルの出口は、第1のチャネルと交差し、第1のチャネルの入口に近位の位置で第1のチャネルと連通しており、
    b)第2の層は、流体層の頂部に収められたカバースリップ層であり、入口または出口へのアクセスを閉じる脱着可能なキャップをそれぞれ有する少なくとも3つのリザーバーを有し、第1のリザーバーは、第1のチャネルの入口と連通しており、第2のリザーバーは、第2のチャネルの入口と連通しており、第3のリザーバーは、第1のチャネルの出口と連通しており、
    c)第2の層は、液封を作るように第1の層に結合している
    基板、を備える装置。
  15. 基板がポリマーである、請求項13に記載の装置。
  16. 基板が環式オレフィンポリマーである、請求項13または14のいずれかに記載の装置。
  17. 第1または第2のチャネルの分離部が、800μm×800μmの寸法を有する、請求項13から15のいずれかに記載の装置。
  18. 第1または第2のチャネルの拘束部が、50μm×50μmの寸法を有する、請求項13から16のいずれかに記載の装置。
  19. 少なくとも3つのリザーバーが、22ゲージ鋼針を収めることができる開口部を有する、請求項13から17のいずれかに記載の装置。
  20. グリカンを液体クロマトグラフ分離するための固定相が、多孔質黒鉛化炭素(PGC)を含む、請求項13から18のいずれかに記載の装置。
  21. アルデヒド活性アガロースビーズ樹脂がAminoLink(商標)樹脂である、請求項13から19のいずれかに記載の装置。
  22. 試料中のグリカンを単離するための方法であって、
    a)請求項13から20のいずれかに記載の装置の第2のチャネルの入口内に、第1のチャネルの入口を開放し、第1のチャネルの出口を閉じた状態で、グリカンを含有する試料を注入するステップと、
    b)第2のチャネル内で、試料中の任意のタンパク質をアルデヒド活性アガロースビーズ樹脂にコンジュゲートするステップと、
    c)第2のチャネル内で、b)のコンジュゲートしたタンパク質を還元試薬で還元し、樹脂上の任意の遊離アルデヒド基をブロックするステップと、
    d)水で第2のチャネルを洗浄するステップと、
    e)第2のチャネル内で、放出剤でc)のグリカンを放出するステップと、
    f)第1のチャネルの入口に近位の位置で第1のチャネル内に、第2のチャネルの出口を介してe)のグリカンを流すステップと、
    g)第2のチャネルの入口を閉じ、第1のチャネルの入口内に移動相をポンプ移送しながら、第1のチャネルの出口からf)の放出されたグリカンを含有する溶離液を収集するステップと
    を含む、方法。
  23. h)溶離液中のグリカンを分析するステップをさらに含む、請求項21に記載の方法。
  24. 試料が対象に由来する生体試料である、請求項21または22のいずれかに記載の方法。
  25. 分析するステップが、MS、HPLCおよびCEからなる群から選択される分析法を使用して実施される、請求項22または23のいずれかに記載の方法。
  26. 分析法がMALDI−MSである、請求項24に記載の方法。
  27. 試料からグリカンまたは糖ペプチドのライブラリーを調製するための方法であって、対象から試料を得るステップと、請求項21から25のいずれかに記載の方法を使用して試料中のグリカンまたは糖ペプチドを分析することによってグリカンライブラリーを作成するステップとを含む、方法。
  28. 試料からグリカンプロファイルを調製するための方法であって、対象から試料を得るステップと、請求項21から25のいずれかに記載の方法を使用して試料中のグリカンを分析することによってグリカンプロファイルを作成するステップとを含む、方法
  29. 対象における疾患または状態を診断するための、請求項21から25のいずれかに記載の方法を使用して調製されたグリカンまたは糖ペプチドプロファイルの使用であって、対象からのグリカンまたは糖ペプチドプロファイルを正常試料または疾患試料からのグリカンプロファイルと比較するステップと、対象の試料が疾患または状態を有するか否かを判定するステップとを含む、使用。
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