JP6135710B2 - 分析用試料の調製方法および分析方法 - Google Patents

分析用試料の調製方法および分析方法 Download PDF

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Description

本発明は、分析用試料の調製方法、および得られた分析用試料を用いた分析方法に関する。
ペプチド鎖への糖鎖付加は、翻訳後修飾の中で最も重要なプロセスの1つである。ペプチド鎖に糖鎖が付加した糖タンパク質は、様々な生命現象に関わっている。生体内では、糖鎖のわずかな構造の違いが精密に認識されることによって、細胞間のシグナル伝達や分子認識等が制御されていると考えられており、糖タンパク質や糖ペプチドの構造解析は、生命現象の解明や、創薬、バイオマーカー開発等に大きな貢献をもたらすことが期待される。
タンパク質のアスパラギン残基に結合したN‐結合型糖鎖は、少なくとも1つの分枝を有しており、非還元末端にシアル酸を有することが多い。糖鎖非還元末端のシアル酸は分子認識に直接関与するため、シアル酸の有無(シアル酸の数)やその結合様式を分析することは、糖タンパク質や糖ペプチドの構造解析において重要である。
シアル酸は負電荷を有し、不安定で分解や糖鎖からの脱離が生じ易いため、シアル酸を化学修飾して安定化した後に、分析を行う方法がいくつか提案されている。例えば、特許文献1では、遊離糖鎖の還元末端を固相担体に固定し、縮合剤としてPyAOPを用い、メチルアミン塩酸塩を求核剤として、糖鎖非還元末端のシアル酸のカルボキシ基をメチルアミド化する方法が開示されている。また、特許文献1では、メチルアミド修飾後の試料を質量分析に供することにより、糖鎖の定量や構造分析を行った例が示されている。
特許文献2では、ホスホニウム塩等の脱水縮合剤存在下での反応により、糖ペプチドに存在する全てのカルボキシ基を修飾化(または除去)することにより、質量分析(イオン化)の際のシアル酸の脱離が抑制されることが記載されている。また、特許文献2では、修飾後の試料を多段階の質量分析に供することにより、糖鎖がシアル酸を含む糖ペプチドの糖鎖分枝構造の解析が可能であることが記載されている。
質量分析は糖鎖の構造解析に有効な分析法であり、上記のように非還元末端のシアル酸を修飾して構造を安定化することにより、シアル酸の有無や糖鎖の分枝構造を分析することも可能である。一方、上記特許文献1および特許文献2に記載の方法は、シアル酸の結合様式とは無関係にメチルアミド化が行われるため、シアル酸の結合様式を識別することはできない。
糖鎖非還元末端へのシアル酸の結合様式としては、主にα2,3‐とα2,6‐の結合異性が存在する。生体では、シアル酸の結合様式の相違が様々な生命現象に関与することが知られており、例えば、癌化に伴ってシアル酸の結合様式が変化することが知られている。そのため、シアル酸の結合様式の違いを識別することは、バイオマーカーとしての利用や、バイオ医薬品の品質管理等においても注目されている。
質量分析によりシアル酸の結合様式を識別するためには、結合様式により異なる質量をもつように、結合様式特異的な修飾を行う必要がある。例えば、特許文献3では、1‐メチル‐3‐p‐トリルトリアゼン(MTT)を用いてシアル酸のメチルエステル化を行った後、酸性条件にする方法が提案されている。この方法では、酸性条件下でα2,3‐シアル酸のみが選択的に脱メチル化されるため、α2,3‐シアル酸とα2,6‐シアル酸を識別できることが記載されている。
また、脱水縮合剤の存在下において、α2,3‐シアル酸が分子内脱水縮合によりラクトン環を生成しやすいことを利用して、質量分析によりシアル酸の結合様式を識別する方法も提案されている。例えば、非特許文献1および非特許文献2では、メタノールやエタノール中に糖鎖試料と脱水縮合剤とを存在させることにより、α2,6‐シアル酸は優先的にエステル化され、α2,3‐シアル酸は優先的に分子内脱水によりラクトン環を生成することが開示されている。非特許文献3では、糖鎖試料と塩化アンモニウムとの反応により、α2,3‐シアル酸およびα2,6‐シアル酸を、ラクトン化およびアミド化した後、これらを完全メチル化する方法が開示されている。これらの修飾方法を利用すれば、α2,3‐シアル酸の修飾化合物とα2,6‐シアル酸の修飾化合物とが異なる質量をもつため、質量分析によるシアル酸の結合様式の識別が可能となる。
特開2013−68594号公報 特開2015−34712号公報 特開2013−76629号公報
Wheeler, S. et al., Rapid Commun. Mass Spectrom., vol. 23 pp. 303-312 (2009年) Reiding, K. et al., Anal. Chem., vol. 86, pp. 5784-5793 (2014年) Alley Jr, W. et al., J. Proteome Res. vol. 9, pp. 3062-3072 (2010年)
上記非特許文献1や非特許文献2に開示されているシアル酸のエステルは、エステル修飾部位が外れやすいという問題がある。非特許文献3に開示されているアミド化合物はエステルに比べて安定である。しかし、非特許文献3の修飾法は、緩やかな条件でアミド化を行う必要があるため、反応に時間を要する。
また、従来の方法では、α2,3‐シアル酸の修飾反応とα2,6‐シアル酸の修飾反応の特異性が十分とは言い難く、α2,3‐シアル酸のみを含む糖鎖試料でも、α2,6‐シアル酸を反応に供した場合と同様の修飾化合物を生じる比率が高い。そのため、複数のシアル酸を含む糖鎖試料では、α2,3‐シアル酸とα2,6‐シアル酸の数の正確な把握が困難である等の問題がある。
さらには、上記の従来技術は、遊離糖鎖のα2,3‐シアル酸とα2,6‐シアル酸とを識別するために開発された手法であり、これまで糖ペプチドのα2,3‐シアル酸とα2,6‐シアル酸とを識別可能な修飾方法に関する報告はない。糖ペプチドでは、ペプチド部分の存在により様々な副反応が誘発されやすいため、遊離糖鎖に比べて解析が困難となる傾向がある。実際、本発明者が非特許文献2の修飾方法を糖ペプチドに適用し、質量分析を行ったところ、多数の副反応シグナルが観測され、解析に耐えるものではなかった(図9(B)参照)。そのため、遊離糖鎖だけでなく、糖ペプチドにも適用可能な手法の開発が望まれている。
上記に鑑み検討の結果、糖鎖を含む試料に特定の修飾化反応を行うことにより、シアル酸の有無やシアル酸の数、シアル酸結合様式の識別およびその比率の定量が可能であるとともに、糖ペプチドへの適用も可能であることが見いだされた。
本発明は、試料中に含まれる糖鎖の分析を行うための分析用試料の調製方法に関する。試料としては、遊離糖鎖や糖ペプチドを含む試料が好ましく用いられる。本発明の分析用試料の調製方法では、分析対象物質の糖鎖にシアル酸が結合している場合に、シアル酸の結合様式に応じて異なる修飾体を生成する反応(第一反応)が行われる。
上記第一反応では、糖鎖を含む分析対象物質(糖鎖や糖ペプチド等)と、炭素原子を2個以上含むアミンおよび脱水縮合剤との反応が行われる。第一反応では、脱水縮合剤としてカルボジイミドを用いることが好ましい。アミンとしては、分枝アルキル基を有するアルキルアミンまたはその塩が好ましく、第一級アルキルアミンまたはその塩が好ましい。中でもイソプロピルアミンまたはその塩が特に好ましい。
分析対象物質の糖鎖にシアル酸が結合している場合、第一反応により、シアル酸の結合様式に応じて異なる修飾体が生成する。例えば、糖鎖がα2,3‐シアル酸を有している場合は修飾体としてラクトンが生成し、糖鎖がα2,6‐シアル酸を有している場合は修飾体としてアミドが生成する。
上記の第一反応後の分析対象物質をさらに別の反応に供してもよい。例えば、分析対象試料がα2,3‐シアル酸を含んでいる場合、第一反応により生成したラクトンから別の修飾体を生成するように第二反応を行ってもよい。
この第二反応では、例えば、アミンを用いた反応が行われる。第一反応によりα2,3‐シアル酸からラクトンが生成している場合、第二反応を行うことによりアミド修飾体が得られる。この場合、第一反応においてα2,6‐シアル酸から生成し得るアミドと、第二反応においてα2,3‐シアル酸由来のラクトンから生成し得るアミドとが異なる質量を有するように、第二反応に用いられるアミンが選択されることが好ましい。また、第二反応では、上記アミンに加えて、ホスホニウム系脱水縮合剤またはウロニウム系脱水縮合剤が用いられることが好ましい。
上記第一反応および第二反応は、分析対象物質を固相担体に固定した状態で行ってもよい。
さらに、本発明は上記方法により調整された試料を分析に供する、試料の分析方法に関する。分析方法としては、質量分析が有用である。
また、本発明は、ペプチドやタンパク質にも適用できる。上記の第一反応をペプチドやタンパク質に適用することにより、シアル酸部位が優先的に修飾体に変化する。すなわち、本発明の分析用試料調整方法の態様の1つは、分析対象物質にシアル酸が結合している場合に、シアル酸部位を優先的に修飾体に変化させる方法である。この態様は、ペプチドやタンパク質におけるシアル酸の有無等の構造解析に適用することができる。シアル酸の有無の識別が可能であることから、本発明は、シアル酸を含まないペプチドやタンパク質の分析にも利用可能である。この態様における分析対象試料はペプチドまたはタンパク質であり、好ましくは糖ペプチドまたは糖タンパク質である。なお、この態様では、炭素原子数が2個未満のアミンが用いられてもよい。
糖鎖を含む試料に上記の修飾化反応を行い、得られた試料を分析することにより、シアル酸の結合様式の識別やその比率の定量が可能となる。また、上記の修飾化反応は、遊離糖鎖だけでなく、糖ペプチドにも適用可能であり、糖ペプチドのシアル酸の結合様式の識別等にも応用できる。
シアリルラクトースとアミン塩酸塩との反応生成物の正イオンマススペクトルである。(A1)は6’‐シアリルラクトースとメチルアミンとの反応生成物、(B1)は6’‐シアリルラクトースとイソプロピルアミンとの反応生成物、(A2)は3’‐シアリルラクトースとメチルアミンとの反応生成物、(B2)は3’‐シアリルラクトースとイソプロピルアミンとの反応生成物。 37℃でアミン塩酸塩との反応を行った場合の修飾体の生成比を表すグラフである。(A)は3’‐シアリルラクトースとアミンとの反応、(B)は6’‐シアリルラクトースとアミンとの反応。 氷浴上でアミン塩酸塩との反応を行った場合の修飾体の生成比を表すグラフである。(A)は3’‐シアリルラクトースとアミンとの反応、(B)は6’‐シアリルラクトースとアミンとの反応。 2個のシアル酸を有するバイアンテナ型のPA化糖鎖とアミン塩酸塩との反応生成物の正イオンマススペクトルである。(A1)〜(A4)はエチルアミン塩酸塩を用いたもの、(B1)〜(B4)はイソプロピルアミン塩酸塩を用いたもの。 フェツインから切り出した遊離糖鎖とアミンとの反応生成物の負イオンマススペクトルである。(A)はメチルアミン塩酸塩との反応のみを行った場合、(B)はイソプロピルアミン塩酸塩との反応後にメチルアミン塩酸塩との反応を行った場合である。(C)は、イソプロピルアミン塩酸塩との反応後に加水分解によるラクトンの開環を行い、その後にメチルアミン塩酸塩との反応を行った場合である。 フェツインから切り出した遊離糖鎖を担体に固定して、イソプロピルアミン塩酸塩との反応およびメチルアミン塩酸塩との反応を行った反応生成物の負イオンマススペクトルである。(A)はイソプロピルアミン塩酸塩との反応後にメチルアミン塩酸塩との反応を行った場合、(B)はイソプロピルアミン塩酸塩との反応後に加水分解によるラクトンの開環を行い、その後にメチルアミン塩酸塩との反応を行った場合である。 (A)は2,3‐SGPとイソプロピルアミンとの反応生成物の負イオンマススペクトルであり、(B)は2,6‐SGPとイソプロピルアミンとの反応生成物の負イオンマススペクトルである。 (A)は2,3‐SGPとイソプロピルアミンとの反応生成物の正イオンマススペクトルであり、(B)は2,6‐SGPとイソプロピルアミンとの反応生成物の正イオンマススペクトルである。 (A)は2,3‐SGPとイソプロピルアミンとの反応生成物のインソース分解マススペクトル(低m/z領域)であり、(B)は2,6‐SGPとイソプロピルアミンとの反応生成物のインソース分解マススペクトル(低m/z領域)である。 (A)は2,3‐SGPとメチルアミンとの反応生成物の正イオンマススペクトルであり、(B)は2,6‐SGPとメチルアミンとの反応生成物の正イオンマススペクトルである。 (A)は2,6‐SGPとイソプロピルアミンとの反応生成物の正イオンマススペクトルであり、(B)は2,6‐SGPとエタノールとの反応生成物の正イオンマススペクトルである。 RNase B消化物とイソプロピルアミンとの反応生成物の正イオンマススペクトルである。 IgG消化物とイソプロピルアミンとの反応生成物の正イオンマススペクトルである。
本発明は、液体クロマトグラフィーや質量分析等による分析のために、糖鎖や糖ペプチド等を修飾化して、分析用試料を調製する方法に関する。
[試料の調製]
<糖鎖を含む試料>
本発明では、分析対象として、遊離糖鎖や糖ペプチド等の糖鎖を含む試料が用いられる。特に、本発明の方法により調製された分析用試料は、シアル酸の有無やシアル酸の結合様式の分析に有用であるため、糖鎖を含む試料としては、N‐結合型糖鎖やO‐結合型糖鎖のように、非還元末端にシアル酸を有する場合が多い糖鎖を含むものが好ましい。
分析対象が糖ペプチドである場合、ペプチド鎖のアミノ酸残基数が多いものは、プロテアーゼ消化等により、分析に適した長さにペプチド鎖を切断して用いることが好ましい。例えば、質量分析用の試料を調製する場合、ペプチド鎖のアミノ酸残基数は30以下が好ましく、20以下がより好ましく、15以下がさらに好ましい。一方、糖鎖が結合しているペプチドの由来を明確とすることが求められる場合には、ペプチド鎖のアミノ酸残基数は2以上が好ましく、3以上がより好ましい。
通常、プロテアーゼは、アミノ酸配列を認識し、特定の配列の特定の結合を選択的に切断する。プロテアーゼとしては、トリプシン、Lys‐C、アルギニンエンドペプチダーゼ、キモトリプシン、ペプシン等が用いられる。なお、プロテアーゼは2種以上を組み合わせて用いることもできる。また、サーモリシンやプロテイナーゼK,プロナーゼEのような特異性の低いプロテアーゼを用いてもよい。プロテアーゼ消化の条件は特に限定されず、使用するプロテアーゼに応じた適宜のプロトコールが採用される。プロテアーゼ消化に先だって、試料中のタンパク質およびペプチドの変性処理やアルキル化処理が行われてもよい。変性処理やアルキル化処理の条件は特に限定されず、公知の条件が適宜に採用される。なお、プロテアーゼ処理は、糖鎖を修飾化した後に行ってもよい。
分析対象が遊離糖鎖である場合、糖タンパク質や糖ペプチドから糖鎖を遊離させる方法としては、N‐グリコシダーゼやO‐グリコシダーゼを用いたグリコシダーゼ処理、ヒドラジン分解、アルカリ処理によるβ脱離等の方法を用いることができる。ペプチド鎖からN‐結合型糖鎖を遊離させる場合は、ペプチド‐N‐グリコシダーゼF(PNGase F)やペプチド‐N‐グリコシダーゼA(PNGase A)等によるN‐グリコシダーゼ処理が適している。グリコシダーゼ処理に先立って、上記のプロテアーゼ消化を行ってもよい。糖鎖の還元末端は、ピリジルアミノ化(PA化)等による修飾が行われてもよい。
<脱水縮合剤およびアミン存在下での修飾化>
糖鎖含有試料は、脱水縮合剤およびアミンの存在下で化学修飾が行われ、糖鎖非還元末端のシアル酸の結合様式に応じて異なる修飾体を形成する。具体的には、非還元末端にα2,3‐シアル酸を有する糖鎖は、優先的に脱水によりラクトン化し、非還元末端にα2,6‐シアル酸を有する糖鎖は、優先的にアミド化される。
(脱水縮合剤)
脱水縮合剤としては、カルボジイミドが好ましく用いられる。カルボジイミドの例としては、N,N’‐ジシクロへキシルカルボジイミド(DCC)、N‐(3‐ジメチルアミノプロピル)‐N’‐エチルカルボジイミド(EDC)、N,N’‐ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)、1‐tert‐ブチル‐3‐エチルカルボジイミド(BEC)、N,N’‐ジ‐tert‐ブチルカルボジイミド、1,3‐ジ‐p‐トルイルカルボジイミド、ビス(2,6‐ジイソプロピルフェニル)カルボジイミド、ビス(トリメチルシリル)カルボジイミド、1,3‐ビス(2,2‐ジメチル‐1,3‐ジオキソラン‐4‐イルメチル)カルボジイミド(BDDC)や、これらの塩が挙げられる。
脱水縮合剤としてカルボジイミドを用い、求核剤としてアミンを用いアミド化反応は、脱水縮合剤として、ホスホニウム系脱水縮合剤(いわゆるBOP試薬)やウロニウム系脱水縮合剤を用いた場合に比べて、立体障害が大きい部位に存在するカルボキシ基がアミド化され難くなる傾向がある。α2,3‐シアル酸のカルボキシ基は、立体障害の大きな位置に存在するため、脱水縮合剤としてカルボジイミドを用いた場合は、アミド化が進行し難いため、分子内脱水によるラクトン化が優先的に生じやすい。一方、α2,6‐シアル酸のカルボキシ基は、脱水縮合剤としてカルボジイミドを用いた場合でも、アミド化が進行しやすい。また、α2,6‐シアル酸のカルボキシ基の分子内脱水により生じるラクトンは7員環であり、α2,3‐シアル酸の分子内脱水により生じるラクトンに比べて構造が不安定であるため、α2,6‐シアル酸のカルボキシ基は優先的にアミド化される。
脱水縮合を促進させ、かつ副反応を抑制するために、カルボジイミドに加えて、求核性の高い添加剤を用いることが好ましい。求核性の高い添加剤としては、1‐ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)、1‐ヒドロキシ‐7‐アザ‐ベンゾトリアゾール(HOAt)、4‐(ジメチルアミノ)ピリジン(DMAP)、2‐シアノ‐2‐(ヒドロキシイミノ)酢酸エチル(CHA; 商標名:OxymaPure)、N‐ヒドロキシ‐スクシンイミド(HOSu)、6‐クロロ‐1‐ヒドロキシ‐ベンゾトリアゾール(Cl-HoBt)、N‐ヒドロキシ‐3,4‐ジヒドロ‐4‐オキソ‐1,2,3‐ベンゾトリアジン(HOOBt)等が好ましく用いられる。
(アミン)
アミンとしては、炭素原子を2個以上含む第一級または第二級のアルキルアミンが用いられる。炭素原子を2個以上有するアミンを用いた場合、炭素原子数が0の場合(アンモニア)や1の場合(メチルアミン)に比べて、α2,3‐シアル酸のカルボキシ基のアミド化の進行が抑制され、ラクトンの生成特異性が高くなる傾向がある。そのため、シアル酸の結合様式の識別の正確性が高められるとともに、α2,3‐シアル酸とα2,6‐シアル酸の存在比等の定量性が高められる。脱水によるα2,3‐シアル酸のラクトン化およびα2,6‐シアル酸のアミド化を促進し、反応時間を短縮するためには、アミンの炭素原子数は5以下が好ましく、4以下がより好ましい。
好ましいアミンの例としては、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、sec‐ブチルアミン、tert‐ブチルアミン等の第一級アルキルアミン;ジメチルアミン、エチルメチルアミン、ジエチルアミン、プロピルメチルアミン、イソプロピルメチルアミン等の第二級アルキルアミン、あるいはこれらの塩が挙げられる。
上記のアミンの中でも、第一級アミンを用いた場合に、反応時間を短縮できるとともに、α2,3‐シアル酸からのラクトンの生成特異性が高くなる傾向がある。また、分枝アルキル基を有するアルキルアミン、特に、イソプロピルアミンを用いた場合に、α2,3‐シアル酸からのラクトンの生成特異性が高くなる傾向がある。
なお、アルキル基が分枝を有していないアミンを用いる場合でも、脱水縮合剤の濃度や反応温度を調整することにより、ラクトンの生成特異性を高めることができる。例えば、後に実施例を示して詳述するように、第一反応の反応温度を低くすることにより、α2,3‐シアル酸からのラクトンの生成特異性が高くなる傾向がある。また、脱水縮合剤の濃度を高めた場合も、α2,3‐シアル酸からのラクトンの生成特異性が高くなる傾向がある。
(反応条件)
上記の糖鎖含有試料、脱水縮合剤およびアミンを反応させることにより、糖鎖のシアル酸が化学修飾され、シアル酸の結合様式に応じて異なる修飾体が生成する。反応は液相でも固相でも実施できる。液相で反応を行う場合、ジメチルスルホキシド(DMSO)やジメチルホルムアミド(DMF)等の非水系溶媒中で反応を行うことが好ましい。非水溶媒中で反応を行うことにより、副反応が抑制される傾向がある。そのため、本発明の方法は、遊離糖鎖だけでなく、糖ペプチドや糖タンパク質等へも適用が可能である。
液相反応における各成分の濃度は特に限定されず、脱水縮合剤やアミンの種類等に応じて適宜に決定できる。脱水縮合剤の濃度は、例えば、1mM〜5Mが好ましく、10mM〜3Mがより好ましい。カルボジイミドとHOAtやHOBt等の求核性の高い添加剤とを併用する場合は、それぞれの濃度が上記範囲であることが好ましい。アミンの濃度は、0.01〜20Mが好ましく、0.1M〜10Mがより好ましい。反応温度は、−20℃〜100℃程度が好ましく、−10℃〜50℃がより好ましい。反応温度を低くすると、α2,3‐シアル酸からのラクトンの生成特異性が高くなる傾向がある。一方、反応温度が過度に低いと、反応速度が低下し、未反応成分が残存しやすくなる。そのため、アミンの種類等に応じて、生成特異性が高く、かつ未反応成分の残存量が小さくなるように、反応温度や時間を調整することが好ましい。
反応時間は、試料や試薬の濃度、反応温度等に応じて決定すればよい。本発明の方法は、従来公知の手法に比べて、修飾化を短時間で行い得るため、反応時間が1時間程度でも、シアル酸の結合様式を識別可能な試料を調製できる。
固相で反応を行う場合、固相担体としては、糖鎖、糖ペプチド、糖タンパク質等の分析対象物質を固定可能なものであれば、特に制限なく用いることができる。例えば、糖ペプチドや糖タンパク質を固定するためには、エポキシ基、トシル基、カルボキシ基、アミノ基等をリガンドとして有する固相担体を利用可能である。また、糖鎖を固定するためには、ヒドラジド基やアミノオキシ基等をリガンドとして有する固相担体が利用可能である。
固相担体に固定された分析対象物質に、脱水縮合剤およびアミンを作用させて化学修飾を行った後は、化学的手法や酵素反応等により、担体から試料を遊離させて回収すればよい。例えば、担体に固定された糖タンパク質や糖ペプチドを、PNGase Fやトリプシンにより酵素的に切断し回収してもよく、ヒドラジド基を有する固相担体に結合している糖鎖を、弱酸性溶液により遊離させて回収してもよい。
分析対象物質を固相担体に固定した状態で反応を行うことにより、反応試薬の除去や脱塩精製がより容易となり、試料の調製を簡素化できる。また、固相担体を用いる場合、糖タンパク質や糖ペプチドの状態で分析対象物質を固定し、アミンおよび脱水縮合剤との反応後に、PNGase F等による酵素反応を行えば、反応後の試料を遊離糖鎖として回収することもできる。
脱水縮合剤とアミンによる反応後の試料は、必要に応じて、精製、脱塩、可溶化、濃縮、乾燥等の処理が行われてもよい。これらの処理は、公知の方法を利用して行うことができる。
(修飾体の分析によるシアル酸結合様式の識別)
上記のように、脱水縮合剤および2個以上の炭素原子を有するアミンの存在下で糖鎖含有試料を反応させることにより、α2,3‐シアル酸は選択的に分子内脱水によるラクトンを生成し、α2,6‐シアル酸は選択的にアミド化される。これにより、α2,3‐シアル酸を有する糖鎖とα2,6‐シアル酸を有する糖鎖は、異なる官能基を有する化合物に修飾化される。そのため、液体クロマトグラフィー(LC)等により、両者を分離することができ、シアル酸の結合様式を識別できる。
また、α2,3‐シアル酸由来のラクトン修飾体と、α2,6‐シアル酸由来のアミド修飾体は、異なる分子量を有する。例えば、エチルアミンを用いた場合は、アミド修飾体の方がラクトン修飾体よりも分子量が45大きく、イソプロピルアミンを用いた場合はアミド修飾体の方がラクトン修飾体よりも分子量が59大きい。このように、分子量が同一の結合異性体に上記の修飾反応を行うことにより、分子量の異なる修飾体が得られるため、質量分析により両者を分離して、シアル酸の結合様式を識別できる。
また、LC-MSのように、クロマトグラフィーと質量分析とを組み合わせた分析により、シアル酸結合様式を識別することもできる。例えば、LC-MSでは、LCで各結合異性体の完全な分離が達成できていなくても、質量で区別することができるため、より正確な定量が可能となる。
<ラクトン修飾体のさらなる修飾(第二反応)>
脱水縮合剤およびアミンとの反応による修飾化の後に、さらに別の反応(第二反応)を行ってもよい。α2,3‐シアリル糖鎖の分子内脱水により生じるラクトン修飾体は、不安定であり、水に溶解すると50時間で分解することが知られている(例えば、Wheeler, SF et al., Rapid Commun. Mass Spectrometry, 23 (2009) 303-312)。質量分析に液体マトリックスを用いると、測定前にラクトンが一部開環し、定量性が損なわれる場合がある。
第二反応により、α2,3‐シアル酸由来のラクトンからさらに別の修飾体を生成させ、構造を安定化させることができる。ラクトンから生成する別の修飾体は、α2,6‐シアル酸由来のアミド修飾体と異なる質量を有するものであれば特に制限されない。中でも、ラクトン修飾体との反応性が高く、ほぼ完全に別の修飾体を生成可能であることから、アミンを用いたアミド化が好ましい。
第二反応に用いられるアミンとして、先に行った修飾化(第一反応)の際と異なる分子量のアミンを用いれば、第一反応により生成するα2,6‐シアル酸由来のアミド修飾体とは質量の異なるアミド修飾体が得られる。また、第一反応あるいは第二反応のいずれか一方に、同位体ラベルされたアミンを用いれば、第一反応と第二反応で同一構造あるいは構造異性のアミンを用いた場合でも、質量の異なるアミド修飾体が得られる。
第二反応に用いられるアミンは、第一反応に用いられるアミンと質量が異なるものであれば特に限定されない。反応の簡便性や、定量性を高める観点からは、α2,3‐シアル酸由来のラクトンとの反応性の高いアミンが好ましく用いられる。開環アミド化は、ラクトンのカルボニルへのアミンの求核反応により生じる。α2,3‐シアル酸由来のラクトンのカルボニルは、立体障害が大きい部位に存在するため、カルボニルへのアミンの求核反応効率を高めるためには、分子体積の小さいアミンを用いることが好ましい。したがって、ラクトンの開環アミド化に用いられるアミンは、アンモニアまたは炭素原子数が5個以下のアルキルアミン、あるいはこれらの塩が好ましい。
第二反応に用いられる好ましいアミンの例としては、アンモニウム塩、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、sec‐ブチルアミン、tert‐ブチルアミン等の第一級アルキルアミン;ジメチルアミン、エチルメチルアミン、ジエチルアミン、プロピルメチルアミン、イソプロピルメチルアミン等の第二級アルキルアミン、あるいはこれらの塩が挙げられる。アルキルアミンの炭素数は4以下が好ましく、3以下がより好ましい。上記アミンの中でも、第一級アルキルアミンあるいはその塩が好ましく、第一級直鎖アルキルアミンあるいはその塩がより好ましく、メチルアミンまたはエチルアミンあるいはこれらの塩が特に好ましい。
ラクトンのアミド化は、脱水縮合剤の存在下で行われることが好ましい。脱水縮合剤としては、立体障害が大きい部位に存在するカルボニルに対しても、高い反応効率を示すものが好ましく、ホスホニウム系脱水縮合剤や、ウロニウム系脱水縮合剤が好ましい。
ホスホニウム系脱水縮合剤としては、(ベンゾトリアゾール‐1‐イルオキシ)トリス‐(ジメチルアミノ)ホスホニウム(BOP)、ベンゾトリアゾール‐1‐イルオキシトリス(ピロリジノ)ホスホニウムヘキサフルオロフォスフェイト(PyBOP)、ブロモトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフフェイト(BroP)、ブロモトリス(ピロリジノ)ホスホニウムヘキサフルオロフォスフェイト(PyBroP)、(7‐アザベンゾトリアゾール‐1‐イルオキシ)トリス(ピロリジノ)ホスホニウムヘキサフルオロフォスフェイト(PyAOP)、クロロ‐トリス‐ピロリジノホスホニウムヘキサフルオロフォスフェイト(PyCloP)等が挙げられる。これらは、「BOP試薬」と総称されるものであり、立体障害が大きい部位に存在するカルボキシ基に対しても、高い反応効率をもたらす。そのため、α2,3‐シアル酸のカルボキシ基や、α2,3‐シアル酸由来のラクトンのカルボニルのように、立体障害が大きい部位に対しても、高い反応率でアミド化を行うことができる。
ウロニウム系脱水縮合剤としては、(1‐シアノ‐2‐エトキシ‐2‐オキソエチリデンアミノオキシ)ジメチルアミノ‐モルホリノ‐カルベニウムヘキサフルオロリン酸塩(COMU)、2‐(1H‐ベンゾトリアゾール‐1‐イル)‐1,1,3,3ヘキサフルオロフォスフェイト(HBTU)、2‐(7‐アザベンゾトリアゾール‐1‐イル)‐1,1,3,3ヘキサフルオロフォスフェイト(HATU)、2‐(1H‐ベンゾトリアゾール‐1‐イル)‐1,1,3,3‐テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレイト(TBTU)、2‐(5‐ノルボルネン‐2,3‐ジカルボキシイミド)‐1,1,3,3‐テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレイト(TNTU)、O‐(N‐スクシミジル)‐1,1,3,3‐テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレイト(TSTU)等が挙げられる。これらのウロニウム塩の中では、COMUが特に好ましい。
上記の中でも、ラクトンのアミド化効率を高める観点からは、ホスホニウム系脱水縮合剤が好ましく用いられる。また、反応を加速させるために、N-メチルモルホリン等の塩基を、反応系全体に対して0.01〜80重量%程度の濃度となるように加えることが望ましい。反応系に上記濃度範囲の塩基を加えることにより、反応効率が向上するとともに、副反応や他の試薬の析出等を抑制できる。反応系中に塩基としてN-メチルモルホリンが含まれる場合、その濃度は1〜50重量%が好ましく、10〜50重量%がより好ましく、15〜30重量%がさらに好ましい。アミド化の条件(反応温度や反応時間等)は特に限定されず、従来公知のシアル酸のアミド化の条件をそのまま適用できる。
第二反応に用いられるアミンとしては、反応性の高さおよび副反応の少なさから、メチルアミン塩酸塩が特に好ましい。中でも、メチルアミン塩酸塩とPyAOPおよびN‐メチルモルホリンを用いれば、ラクトンをほぼ完全にメチルアミドに変換することができるため、定量性の高い分析が可能となる。
上記の第一反応後、第二反応におけるアミド化の前に、α2,3‐シアル酸由来のラクトンの開環反応を行ってもよい。上述のように、α2,3‐シアリル糖鎖の分子内脱水により生じるラクトン修飾体は、水中でも加水分解することが知られている。そのため、脱水縮合剤およびアミンを用いた第一反応後の試料を水に溶解(あるいは水で溶出)すれば、そのまま経時的にラクトンが加水分解により開環する。
ラクトンの開環を促進するためには、酸または塩基を用いることが好ましい。特に、ラクトンは塩基により加水分解しやすいことから、塩基が好ましく用いられる。なお、ラクトンの開環後にアミド化が行われる際に、残存した塩基がアミド化の阻害や、副反応を生じないことが好ましい。塩基として、開環後のアミド化に用いられるアミンと同一のアミンを用いれば、開環反応の残存塩基に起因する上記の問題を排除できる。なお、アミド化の際は塩酸塩が好ましく用いられるが、ラクトンの開環を促進するための塩基としては塩を形成していないアミンが好ましく用いられる。
第二反応においてアミド化の前にラクトンの開環を行うことにより、立体障害が低減し、シアル酸のカルボニルへのアミンのアクセスが容易となる。そのため、アミド化の前に開環を行うことにより、アミド化の反応効率が高められ、残存ラクトンが減少することから、分析の定量性がさらに高められる。
上記のアミド化、およびアミド化前の加水分解によるラクトンの開環反応は、固相で行うこともできる。分析対象物質を固相に固定した状態で第一反応が行われる場合、第一反応後の分析対象物質を固相に固定した状態を維持して、第二反応を行ってもよい。また、第一反応後の分析対象物質を固相に固定して第二反応を行ってもよい。固相担体としては、第一反応に関して前述したものと同様のものを使用できる。固相担体への試料の固定や遊離についても、第一反応に関して前述した条件を採用できる。
[試料の分析]
上記方法により調製後の分析用試料を、液体クロマトグラフィー(LC)や質量分析に供することにより、シアル酸の結合様式の識別や、結合様式の比率、シアル酸の有無等の情報が得られる。
例えば、LC分析では、α2,3‐シアル酸由来のラクトンとα2,6‐シアル酸由来のアミドとが異なるピークとして検出され、これによりα2,3‐シアリル糖鎖とα2,6‐シアリル糖鎖を識別できる。また、ピーク面積を指標に、その比率を定量することができる。
また、α2,3‐シアル酸由来のラクトンとα2,6‐シアル酸由来のアミドとは異なる質量を有するため、質量分析において、異なるm/zにシグナルが検出される。さらに、第二反応によりラクトンのアミド化を行った場合も、第二反応でアミド化されたα2,3‐シアル酸由来のアミドと第一反応でアミド化されたα2,6‐シアル酸由来のアミドは、分子量の異なるアミンとの反応により得られたものであるため、両者は、質量分析において、異なるm/zにシグナルが検出される。
質量分析においては、m/zの値はピーク強度(ピーク高さ、ピーク面積等)に基づいて、糖鎖の定量や糖鎖の構造分析を行うこともできる。質量分析のイオン化法としては、マトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)法、エレクトロスプレーイオン化(ESI)やナノエレクトロスプレーイオン化(nano−ESI)法等が挙げられる。特に、MALDI法が好適である。本発明の方法により得られる分析用試料は、正イオンモードおよび負イオンモードのいずれでも、シアル酸の結合様式を識別できる。
また、LCで分離されピークとして検出された試料を質量分析に供してもよい。LCにより試料の分離を行う場合、質量分析の前段としてLCを備えるLC-MSを用い、LCからの溶出液を直接イオン化し分析に供してもよい。また、LCからの溶出液を一度分取してから、質量分析に供してもよい。LCのカラムは特に限定されず、ペプチドの分析に一般的に用いられるC30,C18,C8,C4等の疎水カラムや、親水性アフィニティークロマトグラフィー用の担体等を適宜に選択して用いることができる。
質量分析は、MS以上の多段階で行ってもよい。MS以上の多段階質量分析を行うことにより、シアル酸の結合様式以外の糖鎖の構造や、糖鎖が結合しているペプチド部分の構造の解析を行うこともできる。糖鎖や糖ペプチドの構造解析は、スペクトルデータを用いたデータベース検索等によりおこなうこともできる。
[ペプチドおよびタンパク質への適用]
前述のように、本発明の方法は、遊離糖鎖だけでなく、ペプチドやタンパク質にも適用可能である。本発明の調製方法を糖ペプチドや糖タンパク質に適用した場合、シアル酸の結合様式の識別だけでなく、シアル酸の有無等を同定することもできる。
前述の特許文献2(特開2015‐34712号公報)にも記載されているように、従来のシアル酸の修飾化法では、シアル酸のカルボキシ基だけでなく、ペプチドC末端のカルボキシ基や酸性アミノ酸残基(グルタミン酸およびアスパラギン酸)のカルボキシ基等もアミド化される。そのため、構造解析なしでは糖鎖のカルボキシ基とシアル酸のカルボキシ基のいずれがアミド化されているかを知ることが困難である。また、従来の修飾化法では、ペプチド部分のN末端のアミノ基とグルタミン酸残基側鎖との脱水アミド化(ピログル化)により、ペプチド部分の質量変化が生じる場合があった。
これに対して、アミンおよび脱水縮合剤を用いる上記の第一反応は、副反応が生じ難く糖ペプチドに適用できることに加えて、ペプチドのカルボキシ基がアミド化され難く、シアル酸のカルボキシ基が選択的に修飾(アミド化またはラクトン化)される傾向がある。そのため、試料がシアル酸を有していない場合(糖鎖を有していない場合も含む)は、修飾反応がほとんど起こらず、質量分析において、修飾反応前と同一のm/zを有するピークが観測される。試料がα2,6‐シアル酸を有する場合は、アミド化による分子量の増加がみられる。また、試料がα2,3‐シアル酸を有する場合は、脱水による分子量の減少がみられる。そのため、シアル酸の結合様式の識別に加えて、シアル酸の有無の判別にも有用である。すなわち、本発明の分析用試料調製方法は、糖鎖にシアル酸が結合していない試料(シアル酸の有無が未知の試料)の分析にも有用である。
さらには、反応の前後でペプチド部分の質量が変化しないため、分析結果の解析やデータベースとの照合が容易である。また、ペプチド部分が反応し難く、C末端や酸性アミノ酸残基のカルボキシ基が修飾化されずに残存しているため、第一反応を行った後のペプチドやタンパク質に対しても、適切に酵素反応を行うことができる。例えば、Glu-CやAsp-Nのように酸性アミノ酸残基が関与するプロテアーゼを用いる場合でも、適切にプロテアーゼ消化を行うことができる。そのため、糖タンパク質に対して第一反応を行った後に、酵素反応を行い、得られた糖鎖や糖ペプチドを分析に供することもできる。
また、従来の修飾化法では、シアル酸のカルボキシ基だけでなく、ペプチドC末端のカルボキシ基や酸性アミノ酸残基のカルボキシ基も修飾されるため、負イオンモード質量分析でのイオン化効率が低く、解析が困難あるいは不可能となる場合が多い。これに対して、上記の第一反応では、ペプチド部分の修飾化がほとんど生じず、ペプチドC末端や酸性アミノ酸残基のカルボキシ基が残存しているため、試料が負イオン化されやすい。そのため、負イオンモード質量分析でも感度の高い分析が可能であり、正イオン化され難いペプチドを負イオンモード質量分析により分析することもできる。後述する実施例に示すように、本発明の方法により修飾化を行った糖ペプチドは、正イオンモード、負イオンモードのいずれの質量分析によっても、シアル酸の結合様式の識別が可能である。
なお、脱水縮合剤存在下での糖ペプチドとアミンとの反応条件によっては、ペプチドのカルボキシ基の一部または全部がアミド化される場合がある。この場合でも、炭素原子を2個以上含むアミンを用いれば、糖鎖部分のα2,3‐シアル酸は選択的にラクトン化され、糖鎖部分のα2,6‐シアル酸は選択的にアミド化されるため、両者結合様式の違いにより質量差が生じ、シアル酸の結合様式を識別可能である。
上記のように、第一反応をペプチドやタンパク質に適用することにより、シアル酸部位が優先的に修飾体に変化するため、ペプチドやタンパク質におけるシアル酸の有無等の構造解析に適用できる。すなわち、本発明の分析用試料調整方法の態様の1つは、分析対象物質にシアル酸が結合している場合に、シアル酸部位を優先的に修飾体に変化させる方法である。この態様に用いられる分析対象試料は、ペプチドまたはタンパク質であり、好ましくは糖ペプチドまたは糖タンパク質である。
ペプチドやタンパク質試料の第一反応は、糖鎖試料と同様の条件で実施できる。すなわち、液相で反応を行う場合は、DMSOやDMF等の非水系溶媒中で、脱水縮合剤およびアミンを反応させればよい。この反応により、糖鎖のシアル酸が優先的に化学修飾される。前述のように、ペプチドやタンパク質を固相担体に結合させた状態で、脱水縮合剤およびアミンを作用させてもよい。ペプチドやタンパク質と固相担体とは、例えば、N末端、C末端、SH基等を介して固定することができる。
ペプチドやタンパク質を第一反応に供する場合、脱水縮合剤およびアミンは、前述のものが好ましく用いられる。なお、シアル酸の結合様式を識別する目的においては、前述のように炭素原子を2個以上含むアミンが用いられるが、シアル酸の結合様式の識別を必要としない場合は、炭素原子数が2未満のアミン、すなわち、アンモニウム塩や、メチルアミンあるいはその塩等のアミンを用いてもよい。シアル酸の有無のみを解析する場合は、シアル酸の結合様式に応じて異なる修飾体を生成させる必要がないため、炭素原子数が2未満のアミンを用いた場合でも、その目的を達成し得る。一方、炭素数が2以上のアミンを用いた場合は、シアル酸の有無の分析に加えて、試料がシアル酸を含有する糖タンパク質または糖ペプチドである場合には、シアル酸の結合様式の識別や、その存在比等も同時に分析が可能となる。
以下に、実施例を示して、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。なお、以下において、%の記載は特に断りがない限り重量%を表す。
[実施例1]シアリルラクトースの修飾化
実施例1では、α2,3‐シアル酸を有する遊離糖鎖試料として3’‐シアリルラクトース、α2,6‐シアル酸を有する遊離糖鎖試料として6’‐シアリルラクトースを用い、アミンの種類および反応条件による修飾化の影響について検討を行った。
(糖鎖試料の調製)
3’‐シアリルラクトースおよび6’‐シアリルラクトース(いずれも東京化成より購入)を、それぞれ水に溶解した後分注し、遠心濃縮(SpeedVac)により溶媒を除き乾固させた。
(アミンとの反応)
糖鎖試料に、各種アミンの塩酸塩(アンモニウム塩酸塩、メチルアミン塩酸塩、エチルアミン塩酸塩、ジメチルアミン塩酸塩、プロピルアミン塩酸塩、イソプロピルアミン塩酸塩、およびブチルアミン塩酸塩)をDMSOに溶解したもの(アミン塩酸塩濃度:1M〜4M)を、それぞれ10μL加えた。次いで、脱水縮合剤として、ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)および1‐ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)をそれぞれの濃度が500mMとなるようにDMSOに溶解したものを10μL加え、室温で2分間撹拌した後、37℃で1時間反応させた。反応後の溶液に、93.3%アセトニトリル(ACN)、0.13%トリフルオロ酢酸(TFA)溶液を120μL加えて希釈した。
(反応物の精製)
精製用の担体として、cotton HILIC microtipを用いた。まず、200μLチップの先端にコットンを詰めた。ピペッティングにより200μLの水の吸引と排出を3回繰り返し、洗浄を行った。次に、60μLの99% ACN, 0.1% TFA溶液の吸引と排出を3回繰り返し、平衡化を行った。希釈後の反応溶液中で10回ピペティングし、反応溶液中の糖鎖をコットンに吸着させた。次に、150μLの99% ACN, 0.1% TFA溶液の吸引と排出を3回繰り返し、洗浄を行った。最後に、水20μL中で5回ピペッティングし、水中に糖鎖を溶出させた。
(質量分析)
水中に溶出した試料1μLをフォーカスプレートに滴下し、マトリックスとして、50% ACNに溶解させた10mg/mL 2,5‐ジヒドロキシ安息香酸(DHB), 1mM NaClを0.5μL加えた。乾燥後、0.2μLのエタノールを滴下して再結晶化させた。この試料を、MALDI-QIT-TOF-MS (AXIMA-Resonance, Shimadzu/Kratos) により、正イオンモードで質量分析を行った。
6’‐シアリルラクトースを、メチルアミンと反応させた試料のマススペクトルを図1(A1)、イソプロピルアミンと反応させた試料のマススペクトルを図1(B1)に示す。3’‐シアリルラクトースを、メチルアミンと反応させた試料のマススペクトルを図1(A2)、イソプロピルアミンと反応させた試料のマススペクトルを図1(B2)に示す。
(分析結果)
α2,6‐シアル酸を有する6’‐シアリルラクトースを、脱水縮合剤存在下でメチルアミンと反応させた試料は、m/z 669に正イオンマススペクトルのピークを有し(図1(A1))、ほぼ100%メチルアミド化されていた。また、6’‐シアリルラクトースを、脱水縮合剤存在下でのイソプロピルアミンと反応させた試料は、m/z 697に正イオンマススペクトルのピークを有し(図1(B1))、ほぼ100%イソプロピルアミド化されていた。
α2,3‐シアル酸を有する3’‐シアリルラクトースを、脱水縮合剤存在下でアミンと反応させた試料は、イソプロピルアミンとの反応では、m/z 638に正イオンマススペクトルのピークを有し(図1(B2))、ほぼ100%脱水によりラクトン化されていた。一方、メチルアミンとの反応では、m/z 638のラクトン化修飾体のピークに加えて、m/z 669のメチルアミド化修飾体のピークが確認された(図1(A2))。これらの結果から、非還元末端にα2,3‐シアル酸を有する糖鎖を脱水縮合剤の存在下でアミンと反応させた場合、脱水によるラクトン化とアミンの求核反応によるアミド化とが競争的に生じ、アミンの種類により、修飾体の生成比が異なることが分かる。
3’‐シアリルラクトースとアミンとの反応による、修飾体の生成比を図2−1(A)に示す。6’‐シアリルラクトースとアミンとの反応による、修飾体の生成比を図2−1(B)に示す。図2−1(B)に示すように、6’‐シアリルラクトースは、アミンの種類によらず、ほぼ100%アミド化されていたのに対して、3’‐シアリルラクトースは、アミンの種類によってラクトン化とアミド化の比率が異なっていた。アンモニアやメチルアミンを用いた場合は、ラクトン化の比率が80%未満であったのに対して、炭素数が2以上のアミン(エチルアミン、ジメチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミンおよびブチルアミン)を用いた場合は、ラクトン化の比率が高く、選択性に優れることが分かる。特に、分枝アルキル基を有するイソプロピルアミンを用いた場合、ラクトン化の比率が95%以上であり、反応の特異性が高いことが分かる。
[実施例2]反応条件の検討
実施例2では、実施例1と同様にシアリルラクトースを試料として、脱水縮合剤の存在下でアミンとの反応を行った。反応時のアミン塩酸塩の濃度、脱水縮合剤の濃度および温度を変更して、反応条件の修飾化への影響を検討した。
(アミン濃度の検討)
アミン塩酸塩としてイソプロピルアミン塩酸塩を用い、反応時のイソプロピルアミン塩酸塩の濃度を0.5M〜4.5M(DMSO溶液調製時の濃度1M〜9M)の範囲で変化させた以外は、上記実施例1と同様にして、脱水縮合剤(DICおよびHOBt)の存在下でシアリルラクトースとアミンとの反応を行った。各反応溶液を精製し、実施例1と同様に正イオンモードで質量分析を行った。いずれの試料も反応特異性は実施例1と同様であり、アミン濃度に関係なく、3’‐シアリルラクトースは95%以上の効率でラクトンを形成し、6’‐シアリルラクトースはほぼ100%イソプロピルアミド化されていた。
(脱水縮合剤濃度の検討)
アミン塩酸塩としてイソプロピルアミン塩酸塩を用い、反応時の脱水縮合剤(DICおよびHOBt)の濃度をそれぞれ50mM〜250mM(DMSO溶液調製時の濃度100mM〜500mM)の範囲で変化させた以外は、上記実施例1と同様にして、脱水縮合剤の存在下でシアリルラクトースとアミンとの反応を行った。各反応溶液を精製し、実施例1と同様に正イオンモードで質量分析を行った。いずれの試料も反応特異性は実施例1と同様であり、アミン濃度に関係なく、3’‐シアリルラクトースは95%以上の効率でラクトンを形成し、6’‐シアリルラクトースはほぼ100%イソプロピルアミド化されていた。
(脱水縮合剤の種類の検討)
アミン塩酸塩としてイソプロピルアミン塩酸塩を用い、脱水縮合剤として、DICに代えてジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)を用い、DCCとHOBtの組み合わせで反応を行ったが、反応特異性に変化はみられず、3’‐シアリルラクトースは95%以上の効率でラクトンを形成し、6’‐シアリルラクトースはほぼ100%イソプロピルアミド化されていた。また、HOBtに代えて1‐ヒドロキシ‐7‐アザベンゾトリアゾール(HOAt)、2‐シアノ‐2‐(ヒドロキシイミノ)酢酸エチル(OxymaPure)、あるいは4‐(ジメチルアミノ)ピリジン(DMAP)を用い、DICあるいはDCCと組み合わせて反応を行ったが、反応特異性に変化はみられなかった。
(反応温度の検討)
アミン塩酸塩としてイソプロピルアミン塩酸塩を用い、反応時のアミン塩酸塩濃度2M(DMSO溶液調製時の濃度4M)、反応時の脱水縮合剤(DICおよびHOBt)の濃度をそれぞれ500mM(DMSO溶液調製時の濃度1M)とし、糖鎖試料にアミン塩酸塩および脱水縮合剤を加えた後、氷浴上(約0℃)で2時間反応を行った。それ以外は、実施例1と同様にして、反応溶液を精製し、正イオンモードで質量分析を行った。6’‐シアリルラクトースは、実施例1と同様にほぼ100%イソプロピルアミド化されていた。一方、3’‐シアリルラクトースはラクトン生成特異性(アミド化修飾体とラクトンの合計に対するラクトンの割合)が約99%であり、実施例1よりも高い特異性を示した。
アミン塩酸塩として、イソプロピルアミン塩酸塩に代えて、メチルアミン塩酸塩、エチルアミン塩酸塩、ジメチルアミン塩酸塩、プロピルアミン塩酸塩、およびブチルアミン塩酸塩を用い、上記と同様に氷浴上で2時間反応を行った後、反応溶液を精製し、正イオンモードで質量分析を行った。
氷浴上での3’‐シアリルラクトースとアミンとの反応による修飾体の生成比を図2−2(A)に示す。氷浴上での6’‐シアリルラクトースとアミンとの反応による修飾体の生成比を図2−2(B)に示す。
図2−1(A)と図2−2(A)との対比から、脱水縮合剤存在下、低温で3’‐シアリルラクトースとアミンとの反応を行うことにより、ラクトン生成特異性が向上し、特に炭素数が2以上のアミンを用いた場合は、98%程度あるいはそれ以上の高い特異性が認められた。なお、氷浴上での反応は反応速度が小さいため、図2−2に示すように、反応開始から2時間では、2〜9%程度の未反応成分が確認された。反応時間の延長や、アミンあるいは脱水縮合剤の濃度上昇等により反応速度を大きくすれば、未反応成分を減少できると考えられる。
[実施例3]複数のシアル酸を有する分枝糖鎖の修飾化
実施例3では、結合様式が既知のシアル酸を2つ有するバイアンテナ型のピリジルアミノ(PA)化糖鎖4種類を試料として、実施例1と同様に、脱水縮合剤(DICおよびHOBt)の存在下でアミン塩酸塩との反応による修飾化を行い、反応溶液を精製後、正イオンモードで質量分析を行った。
アミン塩酸塩としてエチルアミン塩酸塩を用いて修飾化を行った試料の正イオンマススペクトルを図3(A1)〜(A4)に示す。また、アミン塩酸塩としてイソプロピルアミン塩酸塩を用いて修飾化を行った試料の正イオンマススペクトルを図3(B1)〜(B4)に示す。
修飾化を行う前の4種類の糖鎖は、いずれも同一のm/zにピークが観測される。これに対して、アミン塩酸塩を用いて反応させると、分子内に存在するシアル酸の結合様式とその数に応じて、異なるm/zを有するピークが観測された。具体的には、エチルアミン塩酸塩を用いた場合、2つのシアル酸がともにα2,3‐シアル酸である場合、両者がラクトン化され、m/z 2288にピークが観測され(図3(A1));α2,3‐シアル酸とα2,6‐シアル酸を1つずつ有する場合、一方のシアル酸がラクトン化され他方のシアル酸がエチルアミド化され、m/z 2333にピークが観測され(図3(A2)および(A3));2つのシアル酸がともにα2,6‐シアル酸である場合、両者がエチルアミド化され、m/z 2378にピークが観測された(図3(A4))。イソプロピルアミン塩酸塩を用いた場合、2つのシアル酸がともにラクトン化された場合は、エチルアミン塩酸塩を用いた場合と同様にm/z 2288(図3(B1));一方のシアル酸がラクトン化され他方のシアル酸がイソプロピルアミド化された場合は、m/z 2347(図3(B2)および(B3));2つのシアル酸がともにイソプロピルアミド化された場合は、m/z 2406(図3(B4))にピークが観測された。
これらの結果から、本発明の方法により、糖鎖のシアル酸の数および結合様式の識別が可能であることが分かる。なお、エチルアミン塩酸塩を用いた場合、α2,3‐シアル酸のみを有する糖鎖であっても、エチルアミド化修飾体由来のm/z 2333にもピークが観測され(図3(A1))、α2,3‐シアル酸を1つしか有していない糖鎖であっても、m/z 2338にもピークが観測され(図3(A2)および(A3))、一部のα2,3‐シアル酸がエチルアミド化されていることが分かる。これに対して、イソプロピルアミン塩酸塩を用いた場合は、シアル酸の結合様式による反応特異性が高いため、いずれの糖鎖試料についても、ほぼ1本のシグナルが観測された(図3(B1)〜(B4))。これらの結果から、糖鎖の種類が異なっても、上記実施例1や実施例2で検討を行ったアミンの種類等による生成特異性が保持されることが分かる。
[実施例4]糖タンパク質から切り出した糖鎖の修飾化
実施例4では、α2,3‐シアリル糖鎖を多く含むフェツインから切り出した遊離糖鎖の修飾化を行った。
(糖タンパク質からの糖鎖の切り出しおよび精製)
糖タンパク質(フェツイン)を、20mM 重炭酸アンモニウム、10mM DTT, 0.02% SDSに溶解し、100℃で3分間処理して、変性・還元させた。その後、室温に冷却し、PNGase Fを加えて、37℃で終夜インキュベーションし、糖鎖を遊離させた。翌日100℃で3分間熱処理を行い、PNGase Fを失活させることにより酵素反応を停止させた。
酵素反応により切り出した糖鎖を、カーボンカラムを用いて脱塩精製した。カーボンカラムとして、エムポアディスクカーボン(3M製)を、直径約1mmに切り抜き、200μLのチップに詰めたStage Tip Carbonを用いた。Stage Tip Carbonに100μLのACNを加えた後、遠心により排出した。その後、1M NaOH、 1M HCl、水、60% ACN, 0.1%TFA溶液、および水を用い、同様の操作を順に行い、カラム担体の洗浄と平衡化を行った。その後、酵素反応溶液をカラムに加え、遠心により溶液を排出した。さらに水200μLを加えた後、遠心により排出することを3回繰り返し、洗浄を行った。最後に、20μLの60% ACN, 0.1% TFA溶液を加え、遠心により排出することを2回繰り返し、糖鎖を溶出させた。2回分の溶出液を合わせて、SpeedVacにより溶媒を除き乾固させた。
<比較例4−1:メチルアミド化>
乾固した試料に、DMSOに溶解した4M メチルアミン塩酸塩を10μL加えた。次いで30% N‐メチルモルホリン(NMM)に溶解した250mM PyAOPを10μL加え、室温で1時間撹拌した。反応後の溶液に、93.3% ACN, 0.13% TFA溶液を120μL加えた。その後、GL-Tip Amideを用いて、イソプロピルアミンとの反応後と同様に精製および溶出を行い、溶出液をSpeedVacにより乾固させた。
乾固した試料を10μLの水に再溶解させ、1μLをフォーカスプレートに滴下し、マトリックスとして50% ACNに溶解させた100mM 3AQ/CA, 2mM硫酸アンモニウムを0.5μL加えた後、75℃のヒートブロック上で1.5時間反応させ、3AQによる糖鎖の還元末端のラベル化を行った。反応終了後、プレートを室温まで冷却し、MALDI-QIT-TOF-MS (AXIMA-Resonance, Shimadzu/Kratos) により、負イオンモードで質量分析を行った。マススペクトルを図4(A)に示す。
<実施例4−1:イソプロピルアミンを用いたラクトン化後のメチルアミド化>
(イソプロピルアミンとの反応)
脱水縮合剤としてDICおよびHOBt、アミン塩酸塩としてイソプロピルアミン塩酸塩を用い、実施例1と同様に糖鎖の修飾化を行った後、反応後の溶液に、93.3% ACN、0.13% TFA溶液を120μL加えて希釈した。
精製用の担体として、GL-Tip Amide (GLサイエンス製)を用いた。まずGL-Tip Amideに水100μを加え、遠心して排出することを3回繰り返し、洗浄を行った。次に、100μLの90% ACN, 0.1% TFA溶液を加え、遠心して排出することを3回繰り返し、平衡化を行った。次いで希釈した反応溶液を全量加えて担体に糖鎖を吸着させ、遠心した。その後、200μLの90% ACN, 0.1% TFAを加え、遠心して排出することを3回繰り返し、洗浄を行った。最後に水10μLを加え遠心により排出することを2回繰り返し、糖鎖を溶出させた。2回分の溶出液を合わせて、SpeedVacにより溶媒を除き乾固させた。
(メチルアミド化)
乾固した試料に、DMSOに溶解した4M メチルアミン塩酸塩を10μL加えた。次いで60% N‐メチルモルホリン(NMM)に溶解した100mM PyAOPを10μL加え、室温で1時間撹拌した。さらに30% NMM/DMSOに溶解した500mM PyAOPを5μL加え、室温で1時間撹拌した。反応後の溶液に、93.3% ACN, 0.13% TFA溶液を120μL加えた。その後、GL-Tip Amideを用いて、イソプロピルアミンとの反応後と同様に精製および溶出を行い、溶出液をSpeedVacにより乾固させた。
(質量分析)
乾固した試料を10μLの水に再溶解させ、1μLをフォーカスプレートに滴下し、上記比較例4−1と同様に、負イオンモードで質量分析を行った。マススペクトルを図4(B)に示す。
(分析結果)
PyAOPを用いたメチルアミド化のみを行った比較例4−1では、シアル酸の結合様式を区別できず、シアル酸の数に応じたシグナルのみが観測された。一方、脱水縮合剤としてDICおよびHOBtの存在下でイソプロピルアミン塩酸塩との反応を行い、その後PyAOPの存在下でメチルアミン塩酸塩との反応を行った実施例4−1では、シアル酸の結合様式とシアル酸の数に応じて、異なるm/zにピークが観測された。これらは、イソプロピルアミド化された糖鎖とメチルアミド化された糖鎖、さらにはその両方を一分子の中に有する糖鎖が生成していることを示している。この結果から、誘導体化により、シアル酸の結合様式の識別だけでなく、各糖鎖の比率の相対定量も可能であることが分かる。
なお、図4(B)中のX/Yは、Xがα2,3‐シアル酸の数、Yがα2,6‐シアル酸の数を表している(図4(C)および図5においても同様である)。例えば、トリアンテナ型で3つのシアル酸を有する糖鎖由来のピークはm/z 3200付近に観測され、3つのシアル酸の全てがα2,3‐シアル酸であるもの(3/0)が最も小さなm/zを示し、3つのシアル酸の全てがα2,6‐シアル酸であるもの(0/3)が最も大きなm/zを示す。
イソプロピルアミド化体とラクトン化体の質量差は59Daであるのに対して、第一反応としてイソプロピルアミンとの反応を行った後に第二反応としてメチルアミンとの反応を行った実施例(図4(B))では、α2,3‐シアリル糖鎖の修飾体とα2,6‐シアリル糖鎖の修飾体とのm/zの差は、28であった(例えば、バイアンテナ型の2/0と1/1のm/zの差は28であり、2/0と0/2のm/zの差は56であった)。この28Daの差は、イソプロピル基とメチル基との差(=エチレン:C2H4)に等しいことから、α2,3‐シアリル糖鎖は、イソプロピルアミンとの反応によりラクトン化された後、PyAOP存在下でのメチルアミンとの反応により、ラクトンが開環し、メチルアミド化されていることが分かる。一方、α2,6‐シアリル糖鎖は、イソプロピルアミンとの反応によりイソプロピルアミド化された後、PyAOP存在下ではメチルアミンと反応せずに、イソプロピルアミド修飾体から変化していないことが分かる(後述の実施例4−4も参照)。
この結果から、糖鎖を脱水縮合剤の存在下でアミンと反応させて、α2,3‐シアリル糖鎖をラクトン化、α2,6‐シアリル糖鎖をアミド化した後、さらに第二反応として別のアミンと反応させることにより、α2,3‐シアリル糖鎖由来のラクトンが開環アミド化され、α2,6‐シアリル糖鎖由来のアミド修飾体とは異なる分子量を有するアミド修飾体が生成し、質量分析により、糖鎖の結合様式を識別できることが分かる。また、図4(B)では、ラクトンに由来するシグナルはほとんど観測されなかったことから、この方法により、ラクトンが高反応率でアミド化されていることがわかる。
<実施例4−2:ラクトンの加水分解による開環後のメチルアミド化>
上記実施例4−1と同様にして、DIC、HOBtおよびイソプロピルアミン塩酸塩を用いて糖鎖の修飾化およびGL-Tip Amideを用いて精製を行い、20μLの溶出液を得た。
(ラクトンの開環およびメチルアミド化)
溶出液20μLに、4.0 %メチルアミン水溶液を5μL加えて撹拌した後、室温で10分間静置して、ラクトンの加水分解による開環を行った。その後SpeedVacにより溶媒を除き乾固させた。アルカリ環境でのラクトンの開環を行った後、上記実施例4−1と同様に、NMMおよびPyAOPの存在下で撹拌することによりメチルアミド化を行い、精製および試料の乾固を行った。
(質量分析)
乾固した試料を10μLの水に再溶解させ、実施例4−1と同様に、負イオンモード質量分析を行った。マススペクトルを図4(C)に示す。
(分析結果)
図4(C)のマススペクトルは、図4(B)と類似していたが、図4(B)に比べて観測されるシグナルの数が減少していた。ラクトンの開環反応に用いるメチルアミン水溶液の濃度を、4.0%(反応溶液中のメチルアミン濃度:0.8%)から40%(反応溶液中のメチルアミン濃度:8%)に変更した場合も、図4(C)とほぼ同様のマススペクトルが得られ、図4(B)に比べてピークの数が減少していた。これは、ラクトン由来のシグナルが完全に消失したことによるものであり、脱水縮合剤およびイソプロピルアミンによるラクトン化(第一反応)と第二反応でのメチルアミド化との間に、加水分解によるラクトンの開環(すなわち、加水分解によりラクトン化前の状態に戻す反応)を行うことにより、α2,3‐シアリル糖鎖のメチルアミド化の反応効率が上昇し、定量性等の分析精度を向上できることが分かる。
メチルアミン水溶液の濃度を0.4%(反応溶液中のメチルアミン濃度:0.08%)に変更した場合のマススペクトルは、図4(B)に比べるとラクトン由来のピーク強度が減少していたが、完全には消失していなかった。反応時間を長くすることにより、ラクトンを完全に加水分解することは可能であるが、効率の観点からは、ラクトン開環時のアミン濃度は、0.1%以上が好ましいといえる。
<実施例4−3:固相担体に固定された糖鎖試料の修飾化>
酵素反応により切り出したフェツイン由来糖鎖を、ヒドラジド基をリガンドとして有する固相担体(BlotGlyco 住友ベークライト製)に結合させた。糖鎖の結合は、BlotGlycoの標準プロトコールに準じて行った。
(イソプロピルアミン塩酸塩との反応およびメチルアミン塩酸塩との反応)
糖鎖を結合後の担体を、200μLのDMSOで3回洗浄した。100μLのイソプロピルアミド化反応溶液(2M イソプロピルアミン塩酸塩、250mM DIC、250mM HOBt)を加え、ピペットで軽く混ぜた後、37℃で1.5時間反応させた。遠心により液体を除去した後、200μLのDMSOで3回洗浄を行った。その後、100μLのメチルアミド化反応溶液(2M メチルアミン塩酸塩、50mM PyAOP、30% NMM)を加え、室温で1時間撹拌した。さらに、PyAOP溶液(500mM PyAOP、30% NMM)を5μL追加し室温で30分撹拌した。その後、200μLのDMSO、200μLのメタノール、および200μLの水で、それぞれ3回ずつ洗浄を行った。その後、標準プロトコールに準じて反応後の糖鎖試料を担体から遊離させ、Stage Tip Carbonで脱塩精製を行い、SpeedVacにより乾固させた。
(質量分析)
乾固した試料を10μLの水に再溶解させ、実施例4−1と同様に、負イオンモード質量分析を行った。マススペクトルを図5(A)に示す。
(分析結果)
図5(A)のスペクトルは、図4(B)のスペクトルとほぼ同じであることから、固相担体に糖鎖を固定した状態でも、液相状態で反応を行う場合と同様に修飾化を実施できることが分かる。
<実施例4―4:固相担体への固定状態でのラクトン開環ステップの追加>
上記実施例4−3と同様にフェツイン由来糖鎖を固相担体に結合させ、イソプロピルアミド化反応溶液を用いた反応およびDMSOによる洗浄を行った。その後、200μLの1%メチルアミン水溶液で3回洗浄を行うことにより、アルカリ環境でのラクトンの開環を実施した。その後、上記実施例4−3と同様に、メチルアミド化反応溶液を用いてアミド化を行い、固相担体から遊離した試料を精製し、負イオンモード質量分析を行った。マススペクトルを図5(B)に示す。
(分析結果)
図5(B)のスペクトルは、図4(C)のスペクトルと類似しており、図5(A)に比べて観測されるシグナルの数が減少していた。この結果から、糖鎖を固相に固定した状態でも、ラクトン化(第一反応)と第二反応でのメチルアミド化との間に、加水分解によるラクトンの開環を行うことにより、α2,3‐シアリル糖鎖のメチルアミド化の反応効率が上昇することが分かる。また、図5(A)と5(B)で全体的なシグナル強度に変化がみられないことから、ラクトン開環のためにアミンによる洗浄を行った場合でも、pHの上昇に起因する担体のヒドラゾンの開裂は生じず、担体に糖鎖が固定された状態を維持できることがわかる。
<実施例4―5>
糖タンパク質として、フェツインに代えて、α2,6‐シアリル糖鎖が主成分であるトランスフェリンを対象として、PNGase Fを用いた酵素反応により糖鎖を切り出した。上記実施例4−1〜4−3と同様に、イソプロピルアミン塩酸塩との反応を行った後、メチルアミン塩酸塩との反応を行い、負イオンモード質量分析を行った。
トランスフェリンから切り出した糖鎖を用い、実施例4−1と同様に液相で反応を行った場合、および実施例4−3と同様に糖鎖が担体に固定された固相状態で反応を行った場合のいずれにおいても、マススペクトルでは、シアリル糖鎖のイソプロピルアミド化修飾体のピークのみが観測された。実施例4−2と同様に、イソプロピルアミン塩酸塩を用いた反応とメチルアミン塩酸塩を用いた反応との間にメチルアミン水溶液中で静置した場合も、イソプロピルアミド化修飾体のピークのみが観測された。これは、脱水縮合剤としてDICおよびHOBtを用いてイソプロピルアミン塩酸塩と反応させることにより、ほぼ全てのα2,6‐シアリル酸がイソプロピルアミド化され、その後にPyAOPおよびメチルアミンを加えても、イソプロピルアミド修飾体は反応しないことを示している。
[実施例5]シアリルグリコペプチドの修飾化
実施例5では、糖ペプチドとしてシアリルグリコペプチド(SGP)を用い、糖ペプチドの修飾化を行った。
<実施例5−1:イソプロピルアミンによるシアリルグリコペプチドの修飾化>
(糖ペプチドの修飾化および精製)
2,3‐SGPおよび2,6‐SGP(いずれも株式会社伏見製薬所の糖ペプチド標準品;2865.8Da)を、それぞれ水に溶解し、100 pmolずつ分注して、SpeedVacにより溶媒を除去した。そこに、4M イソプロピルアミン塩酸塩のDMSO溶液を10μL加えた後、100mM DIC, 100mM HOBtのDMSO溶液を10μL加え、室温で2分間撹拌した後、37℃で1時間反応させた。反応後の溶液に、93.3% ACN、0.13% TFA溶液を120μL加えて希釈した。その後、実施例1と同様に、cotton HILIC microtipを用いて精製を行い、水中に糖鎖を溶出させた。
(質量分析)
水中に溶出した試料1μLをフォーカスプレートに滴下し、マトリックスとして、50% ACNに溶解させた10mg/mL 2’,4’,6’‐トリヒドロキシアセトフェノン一水和物(THAP)を0.5μL加えた。MALDI-QIT-TOF-MS (AXIMA-Resonance, Shimadzu/Kratos) により、負イオンモードで質量分析を行った。2,3‐SGPの反応物の負イオンマススペクトルを図6−1(A)に示す。2,6‐SGPの反応物の負イオンマススペクトルを図6−1(B)に示す。
マトリックスを、50% ACNに溶解させた10mg/mL 2,5‐ジヒドロキシ安息香酸(DHB),0.1mM メチレンジホスホン酸(MDPNA)に変更して、正イオンモードで質量分析を行った。2,3‐SGPの反応物の正イオンマススペクトルを図6−2(A)に示す。2,6‐SGPの反応物の正イオンマススペクトルを図6−2(B)に示す。
(分析結果)
2,3‐SGPの反応物の負イオンマススペクトル(図6−1(A))では、m/z 2827にピークが観測され、2,6‐SGPの反応物の負イオンマススペクトル(図6−1(B))では、m/z 2945にピークが観測された。両者のm/zの差は、イソプロピルアミン2個に相当する118であることから、2,3‐SGPでは、2個のシアル酸がいずれもラクトン修飾化され、2,6‐SGPでは、2個のシアル酸がいずれもイソプロピルアミド修飾化されていることが分かる。これらの結果から、本発明の方法は、遊離糖鎖だけでなく、糖ペプチドにおける糖鎖のシアル酸の結合様式の識別および定量にも有用であることが分かる。
2,3‐SGPの反応物の正イオンマススペクトル(図6−2(A))では、m/z 2829にピークが観測され、2,6‐SGPの反応物の正イオンマススペクトル(図6−2(B))では、m/z 2947にピークが観測された。両者のm/zの差は、負イオンマススペクトルの場合と同様に118であった。なお、2,3‐SGPの反応物の正イオンマススペクトルでは、m/z 2847 ([MH]++18)のピークが確認され、イオン化の際に2個のラクトンのいずれか一方が加水分解により開環したものと考えられるが、その強度は[MH]+のピークと比べて十分低いものであった。また、2,6‐SGPの反応物の正イオンマススペクトルでは、m/z 2929 ([MH]+−18)およびm/z 2988([MH]++41)にもピークが確認されたが、前者はイソプロピルアミド修飾体の脱水化物、後者はペプチドC末端のカルボキシ基がイソプロピルアミド化されたものであり、いずれも同定可能であった。
これら結果から、本発明の修飾化法は、糖ペプチドの正イオンモード質量分析、負イオンモード質量分析のいずれにも適用可能であり、正イオンモードおよび負イオンモードのいずれによっても、糖鎖のシアル酸の結合様式を識別できることが分かる。
なお、本実施例のマススペクトルにおけるピークのm/zの値と修飾化前のシアリルグリコペプチドのm/zとの差は、正イオンおよび負イオンのいずれにおいても、2個のシアル酸が脱水によりラクトン化された場合(図6−1(A)および図6−2(A))は−36、2個のシアル酸がイソプロピルアミド化された場合(図6−1(B)および図6−2(B))は+82であった。これらの結果から、脱水縮合剤の存在下で、アミン塩酸塩との反応を行っても、ペプチドのC末端のカルボキシ基はほとんど修飾化されていないことが分かる。
<実施例5−2:インソース分解質量分析による修飾部位の確認>
上記実施例5−1において、イソプロピルアミンにより修飾化された部位が糖鎖のシアル酸部分であり、ペプチド部分が修飾化されていないことを確認する目的で、糖ペプチドの分解イオン測定を行った。具体的には、正イオンモード質量分析の際のレーザー強度を上げることによりインソース分解を促進して、分解イオンを生成させ、低m/z領域のフラグメントを確認した。2,3‐SGPの反応物のインソース分解マススペクトルを図7(A)、2,6‐SGPの反応物のインソース分解マススペクトルを図7(B)に示す。
2,3‐SGPの反応物および2,6‐SGPの反応物のいずれも、低m/z領域にm/z 863.5の明瞭なシグナルが観測され、両者の間に分解イオンのm/zの差は見られなかった。m/z 863.5のピークは、ペプチドにGlcNAcが一残基付加したイオンであり、糖ペプチドの分解イオンとして観測されやすいフラグメントである。図6−2に示すように、2,3‐SGPの反応物と2,6‐SGPの反応物とのm/zの差は118であり、図7に示すように両者のペプチド部分のm/zには差がないことから、ペプチド部分はほとんど修飾されていないことが分かる。
なお、図7(A)および(B)では、ペプチドC末端のカルボキシ基がイソプロピルアミンによりアミド化されたフラグメントに由来するm/z 904.5のシグナルが検出されたが、その強度は、ペプチド部分が修飾されていないm/z 863.5のシグナル強度の3%にも満たないものであった。これらの結果から、脱水縮合剤の存在下で糖ペプチドとアミン塩酸塩との反応を行った場合には、ペプチドのC末端のカルボキシ基はほとんど修飾化されず、糖鎖のシアル酸部分が選択的に修飾化されることが分かる。
<比較例5−1:メチルアミンによるシアリルグリコペプチドの修飾化>
2,3‐SGPおよび2,6‐SGPを、それぞれ水に溶解し、100 pmolずつ分注して、SpeedVacにより溶媒を除去した。そこに、DMSOに溶解した4M メチルアミン塩酸塩を10μL加えた。次いで30% NMMに溶解した250mM PyAOPを10μL加え、室温で1時間撹拌した。上記実施例5−1と同様に反応物の精製を行い、正イオンモードで質量分析を行った。2,3‐SGPの反応物のマススペクトルを図8(A)、2,6‐SGPの反応物のマススペクトルを図8(B)に示す。
2,3‐SGPおよび2,6‐SGPのメチルアミンとの反応物のマススペクトルでは、いずれもm/z 2904にピークが検出され、シアル酸の結合様式に応じたm/zの差はみられなかった。このピークは、修飾化前のシアリルグリコペプチドに比べてm/zが39大きく、シアリルグリコペプチドに含まれる3個のカルボキシ基がメチルアミド修飾化されたものに相当する。
実施例5−2と同様の方法で、2,3‐SGPおよび2,6‐SGPのメチルアミンとの反応物のインソース分解質量分析を実施したところ(データ不図示)、低m/z領域では、ペプチドにGlcNAcが一残基付加したイオンよりも13大きいm/z 876.5に明確なシグナルが確認され、ペプチド部分の1箇所(C末端のカルボキシ基)がメチルアミド化されたフラグメントが生成していることが分かった。一方、m/z 863.5のシグナルはほとんど観測されなかった。
これらの結果から、シアリルグリコペプチドとメチルアミンとの反応では、シアル酸の結合様式に関わらず2個のシアル酸部分とペプチド部分C末端の計3個のカルボキシ基の全てがメチルアミド化されており、シアル酸の結合様式の識別は困難であるといえる。
<比較例5−2:エタノールによるシアリルグリコペプチドの修飾化>
Reiding, K. et al., Anal. Chem., vol. 86, pp. 5784‐5793 (2014) (上記非特許文献2)に記載の方法により、脱水縮合剤として1‐エチル‐3‐(3‐(ジメチルアミノ)プロピル)カルボジイミド(EDC)およびHOBtを加えたエタノール中で、2,6‐SGPの修飾化を行い、実施例5−1と同様に正イオンモードで質量分析を行った。エタノールによる2,6‐SGPの修飾化物のマススペクトルを図9(B)に示す。なお、対比のため、図9(A)には、イソプロピルアミンによる2,6‐SGPの修飾化物(上記実施例5−1)のマススペクトルを示している。
エタノールによる修飾化試料のマススペクトル(図9(B))では、想定されるエチルエステル修飾化物のm/z 2394には、シグナルが観測されず、多数の副反応シグナルが観測された。この結果から、シアル酸のエステル修飾化は、遊離糖鎖の分析には利用可能であるが、糖ペプチドの分析への応用は困難であることが分かる。
[実施例6]シアル酸を含まない糖ペプチドとアミンとの反応
実施例6では、脱水縮合剤存在下での糖ペプチドとイソプロピルアミンとの反応において、糖鎖のシアル酸部位が選択的に修飾化されペプチド部分がほとんど反応しないこと(上記実施例5の結果)を確認するために、シアル酸を含まない糖ペプチドを用いて検証を行った。糖ペプチドとしては、RNase Bの消化物およびIgGの消化物を用いた。
(糖ペプチド試料の調製)
RNase BおよびIgG(いずれもSIGMAより購入)のそれぞれを、6M 尿酸、20mM 重炭酸アンモニウム、および5mM トリス(2‐カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩(TCEP)の存在下、室温で45分間処理して、変性および還元を行った。次いで、10mM ヨードアセトアミド(IAA)の存在下、室温遮光条件で45分間反応させアルキル化を行った後、濃度10mMとなるようにDTTを加え、室温遮光条件で45分間反応させ、余剰のIAAを不活性化した。その後、トリプシンを加え、37℃で終夜インキュベーションし、プロテアーゼ消化を行った。消化後、カーボンカラムを用いて脱塩を行い、SpeedVacにより乾固させた。
(イソプロピルアミンとの反応および質量分析)
(反応物の精製および質量分析)
上記実施例5−1と同様の条件で、得られたトリプシン消化物(糖ペプチド)とイソプロピルアミンとを脱水縮合剤の存在下で反応させ、反応物の精製を行い、正イオンモードで質量分析を行った。RNase B消化物の反応物のマススペクトルを図10、IgGの反応物のマススペクトル(拡大図)を図11に示す。
(RNase B断片反応物の分析結果)
RNase Bは、シアル酸を有しておらず、ハイマンノース型の糖鎖が付加している糖タンパク質である。RNase Bのトリプシン消化では、配列SRNLTKのアルギニンC末端が消化されないミスクリベッジが生じており、図10に示すように、2種類のペプチド断片(NLTKおよびSRNLTK)が確認された。また、これらのペプチド断片のそれぞれに、ハイマンノース型のグライコフォームが5種類(マンノース数:5〜9)存在し、これらのグライコフォームが162Da間隔で観測された。
本実施例では、実施例5−1と同様の条件、すなわち2,3‐SGPの2個のシアル酸がいずれもラクトン修飾化され2,6‐SGPの2個のシアル酸がいずれもイソプロピルアミド修飾化される条件で反応を行ったが、反応前のRNase B断片と同じm/zにシグナルが観測された。これは、RNase B断片がシアル酸を含んでいないためである。また、図10では、反応前のRNase B断片よりもm/zが41大きいシグナル([MH]++41:ペプチドのC末端がイソプロピルアミド(iPA)修飾化されたもの)も観測されたが、そのシグナル強度は、ペプチドのC末端が反応していないもの([MH]+)の10%程度であった。
(IgG断片反応物の分析結果)
図11のマススペクトルは、シアル酸を含まない2種類の糖ペプチド(IgGのサブクラスに由来してペプチド部分のアミノ酸配列の一部が異なるもの)に由来するシグナルを含んでおり、反応前のIgG断片と同じm/z 2602および2634に強いシグナルが観測された。また、図11では、反応前のIgG断片よりもm/zが41大きいシグナルも観測されたが、そのシグナル強度は、ペプチドのC末端が反応していないものに比べて、20%程度あるいはそれ以下であった。
実施例5に示したように、糖ペプチドの糖鎖にシアル酸が存在する場合には、シアル酸が優先的に修飾化されるため反応前と同一のm/zを有するシグナルはほとんど観測されなかった。一方、実施例6に示したように、糖ペプチドの糖鎖にシアル酸が存在しない場合には、ペプチド部分の酸性アミノ酸の有無に関わらず、反応前と同一のm/zを有するシグナルが高い強度で観測された。これらの結果から、本発明の方法を糖ペプチドに適用することにより、シアル酸の有無の解析が可能であるとともに、試料がシアル酸を含んでいる場合には、その結合様式の識別が可能であることが分かる。

Claims (12)

  1. 試料中に含まれる糖鎖の分析を行うための分析用試料の調製方法であって、
    分析対象物質の糖鎖にシアル酸が結合している場合に、シアル酸の結合様式に応じて異なる修飾体を生成する第一反応が行われ、
    前記第一反応において、糖鎖を含む分析対象物質と、炭素原子を2〜5個含むアミンまたはその塩、およびカルボジイミドを含む脱水縮合剤とを反応させ、前記糖鎖がα2,3‐シアル酸を有している場合は前記修飾体としてラクトンが生成し、糖鎖がα2,6‐シアル酸を有している場合は前記修飾体としてアミドが生成することを特徴とする、分析用試料の調製方法。
  2. 前記アミンが分枝アルキル基を有するアルキルアミンである、請求項1に記載の分析用試料の調製方法。
  3. 前記アミンが第一級アルキルアミンである、請求項1または2に記載の分析用試料の調製方法。
  4. 前記アミンがイソプロピルアミンである、請求項1〜のいずれか1項に記載の分析用試料の調製方法。
  5. 前記分析対象物質が固相担体に固定された状態で前記第一反応が行われる、請求項1〜のいずれか1項に記載の分析用試料の調製方法。
  6. 前記第一反応後の分析対象物質をさらに第二反応に供するステップを有し、
    前記第二反応は、前記第一反応により前記分析対象物質から生成したラクトンが存在する場合に、前記ラクトンから別の修飾体を生成する反応である、請求項1〜のいずれか1項に記載の分析用試料の調製方法。
  7. 前記第二反応は、前記ラクトンと、アンモニア、炭素原子数が5個以下のアルキルアミン、およびこれらの塩からなる群から選択されるアミンとからアミドを生成する反応であり、
    前記第一反応においてα2,6‐シアル酸から生成し得るアミドと、前記第二反応においてラクトンから生成し得るアミドとが異なる質量を有するように、前記第二反応に用いられるアミンが選択される、請求項に記載の分析用試料の調製方法。
  8. 前記第二反応において、アミンに加えて、ホスホニウム系脱水縮合剤またはウロニウム系脱水縮合剤が用いられる、請求項に記載の分析用試料の調製方法。
  9. 前記第一反応後の分析対象物質が固相担体に固定された状態で前記第二反応が行われる、請求項6〜8のいずれか1項に記載の分析用試料の調製方法。
  10. 前記分析対象物質が糖ペプチドまたは糖タンパク質である、請求項1〜のいずれか1項に記載の分析用試料の調製方法。
  11. 請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法により試料を調製し、さらに、調製した試料を分析することを特徴とする、分析方法。
  12. 前記分析が質量分析である、請求項11に記載の分析方法。
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