JP2021032701A - 分析用試料の調製方法、分析方法および分析用試料の調製用キット - Google Patents
分析用試料の調製方法、分析方法および分析用試料の調製用キット Download PDFInfo
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Abstract
Description
本発明の第2の態様は、第1の態様の分析用試料の調製方法により分析用試料を調製することと、調製した前記分析用試料を分析することとを備える分析方法に関する。
本発明の第3の態様は、第1の態様の分析用試料の調製方法、または、第2の態様の分析方法に用いられる分析用試料の調製用キットに関する。
図1は、本実施形態の分析用試料の調製方法に係る分析方法の流れを示すフローチャートである。本実施形態の分析用試料の調製方法では、試料に含まれる糖鎖のシアル酸をラクトン化した後、生成されたラクトンをアミド化する。ステップS1001において、糖鎖を含む試料が用意される。
糖鎖を含む試料は、特に限定されず、遊離糖鎖、糖ペプチドおよび糖タンパク質、ならびに糖脂質からなる群から選択される少なくとも一つの分子を含むことができる。ペプチドおよび糖ペプチドは、2以上50未満のアミノ酸からなるペプチド主鎖を備えるとし、タンパク質および糖タンパク質は、50以上のアミノ酸からなるペプチド主鎖を備えるとすることができる。しかし、慣例的な例外もあり、ペプチドとタンパク質の範囲の境界および糖ペプチドおよび糖タンパク質の範囲の境界はこれに限定されない。本実施形態の分析用試料の調製方法では、糖鎖に含まれるシアル酸の結合様式特異的な修飾が行われる。試料中の糖鎖は、N−結合型糖鎖やO−結合型糖鎖、糖脂質型糖鎖等、末端にシアル酸を有する可能性がある糖鎖を含むことが好ましい。また、試料中の糖鎖は、α2,3−シアル酸、α2,8−シアル酸およびα2,9−シアル酸の少なくとも一つを含むか、含む可能性があることがより好ましく、これに加えてα2,6−シアル酸を含むか、含む可能性があることがさらに好ましい。
ステップS1001が終了したら、ステップS1003が開始される。
ステップS1003において、試料をラクトン化のための反応溶液(以下、ラクトン化反応溶液と呼ぶ)と接触させ、糖鎖に含まれるシアル酸の少なくとも一部をラクトン化するラクトン化反応を行う(以下、ラクトン化反応と記載した場合、特に言及が無い限り、ステップS1003のラクトン化反応を指す)。以下では、ラクトン化反応溶液を用いて、結合様式特異的に、シアル酸の一部をラクトン化し、シアル酸の他の一部にラクトン化とは異なる修飾をする例を説明する。しかし、このラクトン化とは異なる修飾を行わなくてもよい。ラクトン化反応において、α2,3−シアル酸、α2,8−シアル酸およびα2,9−シアル酸が好適にラクトン化される。
なお、第1反応剤による、ラクトン化とは異なる修飾を行わない場合には、ラクトン化反応溶液は、脱水縮合剤を含み、第1反応剤を含まなくてよい。
脱水縮合剤は、カルボジイミドを含むことが好ましい。カルボジイミドを用いると、脱水縮合剤としてホスホニウム系脱水縮合剤(いわゆるBOP試薬)やウロニウム系脱水縮合剤を用いた場合に比べて、立体障害が大きい部位に存在するカルボキシ基がアミド化されにくいからである。カルボジイミドの例としては、N,N’‐ジシクロへキシルカルボジイミド(DCC)、N‐(3‐ジメチルアミノプロピル)‐N’‐エチルカルボジイミド(EDC)、N,N’‐ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)、1‐tert‐ブチル‐3‐エチルカルボジイミド(BEC)、N,N’‐ジ‐tert‐ブチルカルボジイミド、1,3‐ジ‐p‐トルイルカルボジイミド、ビス(2,6‐ジイソプロピルフェニル)カルボジイミド、ビス(トリメチルシリル)カルボジイミド、1,3‐ビス(2,2‐ジメチル‐1,3‐ジオキソラン‐4‐イルメチル)カルボジイミド(BDDC)や、これらの塩が挙げられる。
脱水縮合剤による脱水縮合を促進させ、かつ副反応を抑制するために、カルボジイミドに加えて、求核性の高い添加剤を用いることが好ましい。求核性の高い添加剤としては、1‐ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)、1‐ヒドロキシ‐7‐アザ‐ベンゾトリアゾール(HOAt)、4‐(ジメチルアミノ)ピリジン(DMAP)、2‐シアノ‐2‐(ヒドロキシイミノ)酢酸エチル(Oxyma)、N‐ヒドロキシ‐スクシンイミド(HOSu)、6‐クロロ‐1‐ヒドロキシ‐ベンゾトリアゾール(Cl-HoBt)、N‐ヒドロキシ‐3,4‐ジヒドロ‐4‐オキソ‐1,2,3‐ベンゾトリアジン(HOOBt)等が好ましく用いられる。
第1反応剤として用いられるアミンは、炭素原子を2個以上含む第一級または第二級のアルキルアミンを含むことが好ましい。第一級のアルキルアミンは、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン(iPA)、ブチルアミン、sec‐ブチルアミン、tert‐ブチルアミン等が好ましい。第二級アルキルアミンは、ジメチルアミン、エチルメチルアミン、ジエチルアミン、プロピルメチルアミン、イソプロピルメチルアミン等が好ましい。α2,3−シアル酸のカルボキシ基のように立体障害が大きい部位に存在するカルボキシ基がアミド化されにくいようにする観点から、イソプロピルアミンのような分枝アルキル基を有するアミンを用いることが好ましい。ラクトン化反応溶液の第1反応剤にアミンを用いた場合、シアル酸の結合様式に基づいて、α2,6−シアル酸等の一部のシアル酸のカルボキシ基がアミド化される。
なお、第1反応剤は、上述の第1反応剤の塩を含んでもよい。
ラクトン化反応溶液の脱水縮合剤の濃度は、例えば、1mM〜5M(mol/L)が好ましく、10mM〜3Mがより好ましい。カルボジイミドとHOAtやHOBt等の求核性の高い添加剤とを併用する場合は、それぞれの濃度が上記範囲であることが好ましい。ラクトン化反応溶液のアミンの濃度は、0.01〜20Mが好ましく、0.1M〜10Mがより好ましい。ラクトン化反応の際の反応温度は、−20℃〜100℃程度が好ましく、−10℃〜50℃がより好ましい。
ラクトン化反応は、液相でも固相でも行うことができる。試料とラクトン化反応溶液とを接触させることができれば、ラクトン化反応を起こす際の試料の状態は特に限定されない。
ステップS1003が終了したら、ステップS1005が開始される。
ステップS1005において、ステップS1003のラクトン化反応後の試料を乾固させる。試料の乾固の方法は特に限定されない。例えば、遠心エバポレータを用いて遠心力を利用した試料の減圧濃縮を行ったり、凍結乾燥機を用いて、凍結させた試料から溶媒を昇華させて試料を乾燥させてもよい。ステップS1005が終了したら、ステップS1007が開始される。
ステップS1007において、ステップS1005で乾固された試料を、反応溶液(以下、アミド化反応溶液と呼ぶ)と接触させ、ステップS1003でラクトン化されたシアル酸をアミド化するアミド化反応が行われ、分析用試料が取得される。本実施形態では、加水分解によりラクトンを開環してからカルボキシ基をアミド化することを意図した上記特許文献1の方法とは全く異なり、ラクトンを迅速に直接アミド化する。本実施形態に係るアミド化反応は無水条件下でも好適に行われるため、加水分解とは異なる反応であり、アミノ基とラクトンとの相互作用に基づくアミノリシスと考えられる。以下では、アンモニア、アミンまたはこれらの塩によるラクトンの開環およびアミド化をアミノリシスと呼ぶ。このアミノリシス反応は実質的に脱水縮合剤を必要としないので、ラクトン構造が形成されていない通常のシアル酸には影響を及ぼすことなく、ラクトン化しているシアル酸のみを選択的にアミド化することが可能である。以下の実施形態では、ラクトン化反応におけるアミド化を除き、アミノリシスによりアミド化反応を行う例を説明する。
なお、アミド化反応には脱水縮合剤は必要ではないが、アミド化反応溶液に脱水縮合剤が含まれていてもよい。アミド化反応では、試料とアミド化反応溶液とを接触させた後、試料と脱水縮合剤とを反応させる操作を行わないとして説明するが、例えばアミド化以外の目的のため行ってもよい。
以下の実施形態では、「アミン」の語は、ヒドラジン、ヒドラジン誘導体およびヒドロキシアミンおよびこれらの塩を含み、アンモニアおよびアンモニアの塩を含まないものとする。アミド化反応においてアミンを用いる場合、第2反応剤に含まれるアミンは、アミノ基に結合した炭素原子に1以下の炭素原子が直接結合している第一級アミン、ヒドラジン、ヒドラジン誘導体およびヒドロキシアミンならびにこれらの塩から選択される少なくとも一つの化合物である。上述のように、第一級アミンの場合、炭素鎖に分枝を有していても、アミノ基から離れた位置に分枝があればアミド化反応の効率の低下が抑えられるため好ましい。
アミド化反応溶液における第2反応剤の濃度は、特に限定されないが、0.1M(Mはmol/L)以上が好ましく、0.3M以上がより好ましく、0.5M以上がさらに好ましく、1.0M以上がさらに好ましく、3.0M以上が最も好ましい。好適な例として、アミド化反応溶液は、アンモニアまたは上記第一級アミン、特にメチルアミンを含み、当該アンモニア、またはメチルアミン等の上記第一級アミンの濃度は、0.1M以上が好ましく、0.3M以上がより好ましく、0.5M以上がさらに好ましく、1.0M以上が一層好ましく、2.9M以上が最も好ましい。アミド化反応溶液における第2反応剤の濃度が高いほど、より確実にラクトンのアミド化を行うことができる。
アミド化反応溶液の溶媒は、アミド化を確実に起こす観点から水系溶媒または水系溶媒と有機溶媒の混合溶媒が好ましい。アミド化反応溶液の溶媒は、例えば、水、メタノール、エタノール、ジメチルスルホキシド(DMSO)またはアセトニトリル水溶液とすることができる。
アミド化反応溶液のpHは、7.7以上である。アミド化反応溶液のpHは、8.0以上が好ましく、8.8以上がより好ましく、10.3以上がさらに好ましい。アミド化反応溶液のpHが高くなると、加水分解等の副反応が抑制されたり、様々な第2反応剤を用いてより確実にラクトンがアミド化されるため好ましい。
アミド化反応は、数秒〜数分以内に完了する。従って、アミド化反応によりラクトンをアミド化するために、試料をアミド化反応溶液と接触させる時間(以下、反応時間と呼ぶ)は、1時間未満が好ましく、30分未満がより好ましく、15分未満がさらに好ましく、5分未満がさらに好ましく、1分未満が最も好ましい。好適には、試料をアミド化反応溶液で洗浄したり、担体等に保持されている試料に対して一時的に通液するだけでもよい。試料とアミド化反応溶液とが接触する時間は、特に限定されないが、反応を十分完了させる等の観点から適宜0.1秒以上または1秒以上等とすることができる。また、試料とアミド化反応溶液を混合し、そのまま反応時間を設けずに乾固してもよい。このように、アミド化反応は短時間に完了するため、不安定なラクトンが分解し糖鎖の解析における定量性が損なわれることを抑制することができる。また、アミド化反応の反応時間を短く設定することで、より効率的に試料の解析を行うことができる。
ステップS1007が終了したら、ステップS1009が開始される。
ステップS1009が終了したら、処理を終了する。
糖ペプチドまたは糖タンパク質にラクトン化反応溶液およびアミド化反応溶液を加え、上述のようにシアル酸を修飾した場合、糖ペプチドまたは糖タンパク質に含まれるアミノ酸の側鎖、主鎖の末端にあるアミノ基およびカルボキシ基の間で分子内脱水縮合等の副反応が起こる場合がある。この場合、シアル酸修飾の前にアミノ基を化学修飾などで先にブロックしておくことで、シアル酸修飾時にペプチド部分の副反応を抑制出来る。詳細は、以下の文献を参照されたい:Takashi Nishikaze, Sadanori Sekiya, Shinichi Iwamoto, Koichi Tanaka. “A Universal Approach to linkage-Specific Derivatization for Sialic Acids on Glycopeptides,” Journal of The American Society for Mass Spectrometry, 2017年6月, Volume 28, Issue 1 Supplement, ポスター番号MP091。例えば、糖ペプチドまたは糖タンパク質に対してジメチルラベル化またはグアニジル化などのアミノ基をブロックする反応を行い、その後、ラクトン化反応およびアミド化反応を行うことができる。
本実施形態の分析用試料の調製方法に好適に用いられる分析用試料の調製用キット(以下、調製用キットと呼ぶ)が提供される。調製用キットは、試薬若しくは、試薬以外の質量分析またはクロマトグラフィーに用いられる任意の消耗品または、本実施形態における分析用試料を調製するためのプロトコル若しくは当該プロトコルが記載されているWebサイトのURL等が記載された文書を含むことができる。このプロトコルでは、例えば上記ステップS1005の試料の乾固の方法が記載される。調製用キットを用いて分析用試料を調製することにより、より効率的に分析用試料を調製することができる。
上述した複数の例示的な実施形態またはその変形は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
本実施例で試料として用いる糖鎖を、α2,3-シアリルグリコペプチド(Sialylglycopeptide; SGP、伏見製薬所)からPNGase F(SIGMA)を用いて遊離させたN型糖鎖を、脱水縮合剤と反応させることで作成した。
α2,3-シアリルグリコペプチド(SGP)から、PNGase Fを用い、以下の1,2の手順でA2型糖鎖を遊離させた。
1. 1 nmol/μL α2,3-SGP溶液 20μLが分注されたチューブに対して、0.25U/μL PNGase F 溶液 を10μL加えた(2.5U/チューブ)。
2. チューブに対して軽くタッピングと遠心を行い、37℃で一夜(o/n)インキュベーションした。
インキュベーション後、遊離された糖鎖をStage Tip Carbonを用いて以下の1-11の手順で脱塩処理した。Stage Tip Carbonは、エムポアディスクカーボン(3M製)を、直径約1 mmに切り抜き、200 μLのチップに詰めたカーボンカラムである。
1. Stage Tip Carbon を遠心アダプターに通し、2.0 mL チューブに入れ遠心機にセットした。
2. Stage Tip Carbonにアセトニトリル(ACN) 100μLを加え、1800 xgで2.0 min遠心し通液させた。
3. Stage Tip Carbonに80% ACN, 0.1% TFA 溶液を100 μL加え、1800 xgで2.0 min遠心し通液させた。これを二回繰り返した。
4. Stage Tip CarbonにH2O 100 μLを加え、1800 xgで3.0 min遠心し通液させた。
5. インキュベーション後の酵素消化溶液30 μLに対してH2O 120 μLを加えて攪拌した。
6. 撹拌により得られた試料溶液50 μLをStage Tip Carbonに加え、1800 xgで2.0 min遠心し通液させた。
7. Stage Tip Carbonに0.1% TFA 溶液 150 μLを加え、1800 xgで4.0 min遠心し通液させた。
8. Stage Tip Carbonに0.1% TFA 溶液 150 μLを加え、1800 xgで4.0 min遠心し通液させた。これを二回繰り返した。
9. チューブを新しい1.6 mLのものに変更した。
10. Stage Tip Carbonに溶出溶媒である60% ACN 0.1% TFA 溶液を20 μL加え、1800 xgで1.5 min遠心し溶出した。これを三回繰り返した。
11. SpeedVac(Thermo Fisher Scientific)を用いて乾固した。
以下の1-3の手順で、試料中のα2,3-シアル酸をラクトン化する反応を行った。
1. 脱塩精製により得られた33A2 20 pmol をエッペンドルフチューブ内に乾固させた。
2. エッペンドルフチューブに結合様式特異的ラクトン化反応溶液(2M イソプロピルアミン塩酸塩(iPA-HCl), 500mM N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N'-エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC-HCl), 500mM HOBt, 溶媒はDMSO)を20 μL加え、2000 rpmで攪拌しながら常温で一時間反応させた。この条件では、33A2は完全にラクトン化する。
3. 反応後の溶液にACNを120 μL加え、全体で140 μLにした。
以下の1-7の手順で、ラクトン化反応に供した糖鎖のアミド精製を行った。
1. アミドチップ(ジーエルサイエンス)を遠心アダプターに通し、2.0 mL チューブに入れ遠心機にセットした。
2. アミドチップにH2O 100 μLを加え、4000 xgで2.0 min遠心し通液させた。これを三回行った。
3. アミドチップに90% ACN 溶液 100 μLを加え、4000 xgで1.0 min遠心し通液させた。
4. アミドチップに上記ラクトン化反応後、ACNで希釈して得られた溶液を全量加え、4000 xgで2.0 min遠心した。
5. アミドチップに90% ACN 溶液 150 μLを加え4000 xgで2.0 min遠心し通液させた。これを二回行った。
6. 廃液受けの2.0 mLチューブを新しい1.6 mLチューブに交換した。
7. アミドチップに水20 μLを加え、4000 xgで1.0 min遠心し溶出させた。これを二回行った。
アミド精製の溶出液では、ラクトン化した33A2が水に溶解した状態で得られた。この33A2に対して、以下のAおよびBのそれぞれの条件により、アミノリシスによるアミド化反応を行った。
A. 溶出液に等量の20% メチルアミン水溶液を加え、メチルアミンの終濃度を10%とし、軽く攪拌した後SpeedVacで乾固した。
B. 溶出液をSpeedVacで乾固し、溶媒を取り除いたものに10% メチルアミン水溶液を加え、糖鎖を再溶解させた後、SpeedVacで乾固した。
乾固した糖鎖は10 μLの水によく再溶解した。再溶解により得られた溶液 0.5 μLをμフォーカスプレート(Hudson Surface Technology)に滴下した。滴下した溶液に、3AQ/CA (3-アミノキノリン/p-クマル酸)をマトリックスとして50% ACN 溶液に溶解させた100mM 3AQ/CA 2mM リン酸二水素アンモニウム(Ammonium Dihydrogen Phosphate;ADP)溶液を0.5 μL加え、プレートごとヒートブロック上で75℃ 1.5h反応させた(3AQで糖鎖の還元末端をラベル化した)。反応終了後、プレートを室温まで戻し、MALDI-四重極イオントラップ(Quadrupole Ion Trap)-飛行時間型(Time of Flight)質量分析計(MALDI-QIT-TOF-MS)(AXIMA-Resonance, Shimadzu/Kratos) を用い負イオンモードで測定した。この測定条件では、アミド化した糖鎖はリン酸付加体として観測され、加水分解によりカルボキシ基(-COOH)に戻ったシアル酸を一つでも含む糖鎖は脱プロトン化体として観測される。
図2は、33A2糖鎖の構造と、シアル酸の修飾の変化とを示す概念図である。糖鎖33A2は、N-アセチル-D-グルコサミン(GlcNAc)およびマンノース(Man)からなる基本型の構造と、2つの側鎖とを備える。2つの側鎖にはそれぞれGlcNAc、ガラクトース(Gal)およびシアル酸(Neu5Ac)が結合されている。非還元末端にあるα2,3-シアル酸と当該シアル酸が結合しているガラクトースとの結合部分には、ラクトン構造が形成されており、この点を二重線B1で示した。糖鎖33A2はラクトン化反応溶液を用いたシアル酸の修飾によりラクトン化する(矢印A1)。アミド化反応において、アミノリシスが起こるとラクトン構造は直接アミド化され(矢印A2)、加水分解が起こるとラクトン構造は元のシアル酸構造に戻る(矢印A3)。
図3は、本実施例で得られたマススペクトルを示す図である。図3上段(a)は、ラクトン化した33A2糖鎖の水溶液に対して、等量の20% メチルアミン水溶液を加えて終濃度10%にしてアミノリシスを行った場合のマススペクトルである。図3下段(b)は、一度溶媒を取り除き乾固した状態のラクトン化33A2糖鎖に、10% メチルアミン水溶液を加えてアミノリシスを行った場合のマススペクトルである。マススペクトルの横軸は、質量分析において検出されたイオンのm/zを示し、縦軸は各マススペクトルで最もピーク強度の高いピークのピーク強度を100とした場合の相対的な強度である。強度はイオンの検出量に対応する。
Claims (19)
- 乾固された試料を用意することと、
前記乾固された試料を、前記乾固された試料に含まれる分子のラクトン構造と反応させるアンモニア、アミノ基に結合した炭素原子に1以下の炭素原子が直接結合している第一級アミン、ヒドラジン、ヒドラジン誘導体およびヒドロキシアミンならびにこれらの塩からなる群から選択される少なくとも一つの化合物を含むアミド化反応溶液と接触させ、前記ラクトン構造をアミド化するアミド化反応を行うこととを備える分析用試料の調製方法。 - 請求項1に記載の分析用試料の調製方法において、
液体を含む試料を用意することと、
前記試料の乾固を行うこととを備える、分析用試料の調製方法。 - 請求項1または2に記載の分析用試料の調製方法において、
前記アミド化反応は、乾固された前記試料を前記アミド化反応溶液と接触させることのみにより行われる分析用試料の調製方法。 - 請求項1から3までのいずれか一項に記載の分析用試料の調製方法において、
前記アミド化反応溶液は前記ラクトン構造と反応させる脱水縮合剤を含まない、分析用試料の調製方法。 - 請求項1から4までのいずれか一項に記載の分析用試料の調製方法において、
前記アミド化反応では、前記試料を前記アミド化反応溶液と接触させた後、前記試料と脱水縮合剤とを反応させる操作を行わない、分析用試料の調製方法。 - 請求項1から5までのいずれか一項に記載の分析用試料の調製方法において、
前記アミド化反応を行うために前記試料と前記アミド化反応溶液とを接触させる時間は30分より短い、分析用試料の調製方法。 - 請求項1から6までのいずれか一項に記載の分析用試料の調製方法において、
前記化合物は、直鎖炭化水素基を含む、分析用試料の調製方法。 - 請求項7に記載の分析用試料の調製方法において、
前記直鎖炭化水素基はアルキル基である、分析用試料の調製方法。 - 請求項1から8までのいずれか一項に記載の分析用試料の調製方法において、
前記アミド化反応溶液は、有機溶媒を含む、分析用試料の調製方法。 - 請求項1から9までのいずれか一項に記載の分析用試料の調製方法において、
前記アミド化反応溶液のpHは7.7以上である、分析用試料の調製方法。 - 請求項1から10までのいずれか一項に記載の分析用試料の調製方法において、
前記分子は糖鎖を含み、
前記ラクトン構造は、前記糖鎖のシアル酸に形成されている、分析用試料の調製方法。 - 請求項11に記載の分析用試料の調製方法において、
前記ラクトン構造は、前記糖鎖のα2,3−シアル酸、α2,8−シアル酸およびα2,9−シアル酸の少なくとも一つに形成されている、分析用試料の調製方法。 - 請求項2に記載の分析用試料の調製方法において、
前記分子は糖鎖を含み、
前記ラクトン構造は、前記糖鎖のシアル酸に形成されており、
用意された前記試料を、前記乾固を行う前に、前記シアル酸と反応させる脱水縮合剤を含むラクトン化反応溶液と接触させ、前記シアル酸の少なくとも一部をラクトン化することをさらに備える、分析用試料の調製方法。 - 請求項13に記載の分析用試料の調製方法において、
前記ラクトン化反応溶液は、前記糖鎖に含まれる前記シアル酸と結合させる反応剤をさらに含み、
前記反応剤は、前記化合物とは質量が異なり、
前記試料を前記ラクトン化反応溶液と接触させ、前記シアル酸の結合様式に基づいて、前記シアル酸の一部をラクトン化し、前記シアル酸の他の一部に前記反応剤の少なくとも一部を結合させる、分析用試料の調製方法。 - 請求項14に記載の分析用試料の調製方法において、
前記試料を前記ラクトン化反応溶液と接触させ、α2,3−シアル酸、α2,8−シアル酸、またはα2,9−シアル酸をラクトン化し、α2,6−シアル酸に前記反応剤の一部を結合させる、分析用試料の調製方法。 - 請求項13から15までのいずれか一項に記載の分析用試料の調製方法において、
前記脱水縮合剤は、カルボジイミドを含む、分析用試料の調製方法。 - 請求項1から16までのいずれか一項に記載の分析用試料の調製方法により分析用試料を調製することと、
調製した前記分析用試料を分析することとを備える分析方法。 - 請求項17に記載の分析方法において、
調製した前記試料は、質量分析およびクロマトグラフィーの少なくとも一つにより分析される分析方法。 - 請求項1から16までのいずれか一項に記載の分析用試料の調製方法、または、請求項17または18に記載の分析方法に用いられる分析用試料の調製用キット。
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Citations (5)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JPS6329647A (ja) * | 1986-07-23 | 1988-02-08 | 日本パ−オキサイド株式会社 | 消臭剤 |
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2019
- 2019-08-23 JP JP2019153182A patent/JP7255423B2/ja active Active
Patent Citations (5)
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