JP5279286B2 - シアル酸、シアル酸含有糖質、乃至シアル酸含有複合糖質の蛍光標識化方法、及び、前記方法により得られた蛍光標識化されたシアル酸、シアル酸含有糖質、乃至シアル酸含有複合糖質 - Google Patents
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Description
しかし、PA化法では糖鎖の還元末端を修飾するために、複合糖質全体としての分析は行えない。またLC−MSでは調べる事のできる分子量の上限が2000程度である、といった問題点もあった。
一方、本発明では、シアル酸含有糖質やシアル酸含有複合糖質における、シアル酸のカルボキシル基を標識化することから、例えば、ガングリオシド等のシアル酸含有複合糖質を標識化する場合であっても、その構造を破壊する必要がなく、そのため、シアル酸含有複合糖質全体としての分析を可能とすることができる。また、本発明では、シアル酸含有糖質やシアル酸含有複合糖質における、シアル酸のカルボキシル基を標識化するために、カルボキシル基の負のチャージを失くすことができ、そのため、前記したような、高分子量成分の分析に有利なMALDI−TOF MSにおいて、飛行しにくい、飛行中に分解するといった問題点を克服し、シアル酸含有糖質やシアル酸含有複合糖質の質量分析への応用を可能とすることができる。
また、本発明では、シアル酸含有糖質やシアル酸含有複合糖質に導入する蛍光物質として、小さな蛍光発色団を有し、かつ、導入に関与する側鎖として炭素数2〜4のアルキルアミンを有する蛍光物質(2−(2−ピリジルアミノ)エチルアミン等)を使用するため、導入に際して蛍光発色団がシアル酸と隣接する糖との結合で生じる立体障害に影響を受ける懸念がなく、安定に導入を行うことができ、そのため、シアル酸含有糖質やシアル酸含有複合糖質の蛍光標識化を効率的に行うことが可能となる。
<1> シアル酸、シアル酸含有糖質、及びシアル酸含有複合糖質の少なくともいずれかにおけるシアル酸のカルボキシル基に、下記一般式(1)で表される化合物を結合させることを特徴とするシアル酸、シアル酸含有糖質、乃至シアル酸含有複合糖質の蛍光標識化方法である。
<2> シアル酸、シアル酸含有糖質、及びシアル酸含有複合糖質の少なくともいずれかと、一般式(1)で表される化合物及びその塩の少なくともいずれかと、脱水縮合剤とを、溶媒中で混合する工程を含む前記<1>に記載のシアル酸、シアル酸含有糖質、乃至シアル酸含有複合糖質の蛍光標識化方法である。
<3> シアル酸、シアル酸含有糖質、及びシアル酸含有複合糖質の少なくともいずれかが、シアル酸含有オリゴ糖である前記<1>から<2>のいずれかに記載のシアル酸、シアル酸含有糖質、乃至シアル酸含有複合糖質の蛍光標識化方法である。
<4> シアル酸、シアル酸含有糖質、及びシアル酸含有複合糖質の少なくともいずれかが、ガングリオシドである前記<1>から<2>のいずれかに記載のシアル酸、シアル酸含有糖質、乃至シアル酸含有複合糖質の蛍光標識化方法である。
<5> 一般式(1)で表される化合物が、2−(2−ピリジルアミノ)エチルアミンである前記<1>から<4>のいずれかに記載のシアル酸、シアル酸含有糖質、乃至シアル酸含有複合糖質の蛍光標識化方法である。
<6> 脱水縮合剤が、4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−yl)−4−メチルモルホリニウム塩化物である前記<2>から<5>のいずれかに記載のシアル酸、シアル酸含有糖質、乃至シアル酸含有複合糖質の蛍光標識化方法である。
<7> シアル酸、シアル酸含有糖質、及びシアル酸含有複合糖質の少なくともいずれかがシアル酸含有オリゴ糖であり、かつ、溶媒が水、並びに水及びアルコールの混合溶媒の少なくともいずれかである前記<2>から<6>のいずれかに記載のシアル酸、シアル酸含有糖質、乃至シアル酸含有複合糖質の蛍光標識化方法である。
<8> シアル酸、シアル酸含有糖質、及びシアル酸含有複合糖質の少なくともいずれかがガングリオシドであり、かつ、溶媒がアルコール、並びに水及びアルコールの混合溶媒の少なくともいずれかである前記<2>から<6>のいずれかに記載のシアル酸、シアル酸含有糖質、乃至シアル酸含有複合糖質の蛍光標識化方法である。
<9> 一般式(1)で表される化合物及びその塩の少なくともいずれかを、中性に調整して混合に使用する前記<2>から<8>のいずれかに記載のシアル酸、シアル酸含有糖質、乃至シアル酸含有複合糖質の蛍光標識化方法である。
<10> 弱酸性条件下で混合を行う前記<2>から<9>のいずれかに記載のシアル酸、シアル酸含有糖質、乃至シアル酸含有複合糖質の蛍光標識化方法である。
<11> 前記<1>から<10>のいずれかに記載のシアル酸、シアル酸含有糖質、乃至シアル酸含有複合糖質の蛍光標識化方法により得られたことを特徴とする蛍光標識化されたシアル酸、シアル酸含有糖質、乃至シアル酸含有複合糖質である。
本発明のシアル酸、シアル酸含有糖質、乃至シアル酸含有複合糖質の蛍光標識化方法は、シアル酸、シアル酸含有糖質、及びシアル酸含有複合糖質の少なくともいずれかにおけるシアル酸のカルボキシル基に、後述する一般式(1)で表される化合物を結合させることを特徴とする。
前記シアル酸、シアル酸含有糖質、及びシアル酸含有複合糖質の少なくともいずれかにおけるシアル酸のカルボキシル基への、前記一般式(1)で表される化合物の結合方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択した方法により行うことができるが、中でも、前記シアル酸、シアル酸含有糖質、及びシアル酸含有複合糖質の少なくともいずれかと、前記一般式(1)で表される化合物及びその塩の少なくともいずれかと、脱水縮合剤とを、溶媒中で混合する工程を含む方法により、好適に行うことが可能である。以下に前記方法の詳細を示す。
前記シアル酸、シアル酸含有糖質、シアル酸含有複合糖質は、前記蛍光標識化方法における蛍光標識化の対象物質であり、これらはいずれか1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
ここで、前記シアル酸とは、ノイラミン酸のアシル誘導体の総称であり、例えば、N−アセチルノイラミン酸、N−グライコリルノイラミン酸などが挙げられる。なお、前記シアル酸は、通常糖鎖の非還元末端に存在するが、単糖の状態で前記蛍光標識化の対象物質に使用されてもよい。また、前記シアル酸含有糖質とは、前記シアル酸を含有する糖質であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シアル酸含有オリゴ糖、シアル酸含有多糖などが挙げられる。また、前記シアル酸含有複合糖質とは、前記シアル酸を含有する複合糖質であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ガングリオシド等のシアル酸含有糖脂質、シアル酸含有糖タンパク質、シアル酸含有プロテオグリカン、シアル酸含有ペプチドグリカン、シアル酸含有リポ多糖などが挙げられる。
なお、前記シアル酸、シアル酸含有糖質、シアル酸含有複合糖質は、天然由来のものを使用してもよいし、合成により得られたものを使用してもよい。
また、前記シアル酸、シアル酸含有糖質、及びシアル酸含有複合糖質の少なくともいずれかにおけるシアル酸のカルボキシル基に、後述する一般式(1)で表される化合物(蛍光物質)を結合させることにより、カルボキシル基の負のチャージを失くすことができ、そのため、MALDI−TOF MS分析において飛行しにくい、飛行中に分解するといった従来における質量分析上の問題点を克服し、シアル酸、シアル酸含有糖質、乃至シアル酸含有複合糖質の質量分析への応用を可能とすることができる点で、有利である。
前記シアル酸、シアル酸含有糖質、及びシアル酸含有複合糖質の少なくともいずれかにおけるシアル酸のカルボキシル基に結合させる蛍光物質としては、下記一般式(1)で表される化合物が使用される。
また、前記一般式(1)で表される化合物は、塩の状態で使用してもよい。前記塩としては、例えば、塩酸塩、酢酸塩、硫酸塩などが挙げられる。
これらの中でも、前記一般式(1)で表される化合物としては、2−(2−ピリジルアミノ)エチルアミン・2塩酸(PAEA)が特に好ましい。
一般に、蛍光物質として使用されている試薬は、蛍光発色団がピレン型、アントラセン型、ナフタレン型といった多環式化合物が主であるが、これらの蛍光物質では、結合の際に蛍光発色団がシアル酸と隣接する糖との間に生じる立体障害の影響を受けてしまい、蛍光標識化反応の進行が著しく妨げられる等の問題がある。また、一般に、結合にかかるアミノ基を持つ側鎖は、炭素数が環を形成できる数になるにつれ、炭素鎖の折れ曲がりが生じ、直線性が損なわれるために、側鎖のアルキルアミンの炭素数が5以上となると、かえって反応性が乏しくなってしまう等の問題がある。
前記脱水縮合剤は、前記シアル酸、シアル酸含有糖質、及びシアル酸含有複合糖質の少なくともいずれかにおけるシアル酸のカルボキシル基と、前記一般式(1)で表される化合物との結合反応(蛍光標識化反応)を促進させる目的で使用される。前記結合反応は、前記脱水縮合剤を使用せずに進行させることも可能であるが、より反応を促進させることができる点で、前記脱水縮合剤を使用することが好ましい。
前記シアル酸、シアル酸含有糖質、及びシアル酸含有複合糖質の少なくともいずれかと、前記一般式(1)で表される化合物及びその塩の少なくともいずれかと、前記脱水縮合剤との混合量比としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、中でも、モル比で、シアル酸、シアル酸含有糖質、及びシアル酸含有複合糖質の少なくともいずれか:一般式(1)で表される化合物及びその塩の少なくともいずれか:脱水縮合剤=1:1:1〜1:2:2が好ましく、1:1.05:1.05〜1:1.5:1.5がより好ましく、1:1.1:1.1が特に好ましい。
前記溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水、アルコール、水及びアルコールの混合溶媒などが挙げられる。前記水としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、純水、超純水等が挙げられる。前記アルコールとしても、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノール等が挙げられる。
例えば、前記蛍光標識化の対象物質として、疎水性部を有さないシアル酸含有糖質(シアル酸含有オリゴ糖等)を使用する場合には、前記溶媒としては、水、並びに水及びアルコールの混合溶媒の少なくともいずれかを使用することが好ましい。なお、前記混合溶媒における、水とアルコールとの混合量比としては、体積比で、1:0〜1:1が好ましく、1:0〜1:0.5がより好ましい。
一方、前記蛍光標識化の対象物質として、疎水性部を有するシアル酸含有複合糖質(疎水性部としてセラミドを有するガングリオシド等)を使用する場合には、前記溶媒としては、アルコール、並びに水及びアルコールの混合溶媒の少なくともいずれかを使用することが好ましい。なお、前記混合溶媒における、水とアルコールとの混合量比としては、体積比で、0:1〜1:1が好ましく、0:1〜0.5:1がより好ましい。
前記シアル酸、シアル酸含有糖質、及びシアル酸含有複合糖質の少なくともいずれかと、前記一般式(1)で表される化合物及びその塩の少なくともいずれかと、前記脱水縮合剤とを、前記溶媒中で混合する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、マイクロピッペット等の装置を用いて混合を行うことができる。また、前記各成分の添加順序としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
また、前記混合を行う時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、0.3〜24時間が好ましく、0.5〜4時間がより好ましい。
前記混合によれば、前記シアル酸、シアル酸含有糖質、及びシアル酸含有複合糖質の少なくともいずれかにおけるシアル酸のカルボキシル基に、前記一般式(1)で表される化合物を結合させるのみの、一段階の反応で前記シアル酸、シアル酸含有糖質、乃至シアル酸含有複合糖質の蛍光標識化を行うことができ、したがって、反応効率に優れる点で、有利である。
また、得られた蛍光標識化シアル酸、シアル酸含有糖質、乃至シアル酸含有複合糖質は、例えば、1H−NMR、HH−COSY NMR等の手法によりその構造を確認することができる。前記蛍光標識化シアル酸、シアル酸含有糖質、乃至シアル酸含有複合糖質は、シアル酸のカルボキシル基に、前記一般式(1)で表される化合物(蛍光物質)がアミド結合により結合した新規な構造を有するものであり、したがって、前記蛍光標識化シアル酸、シアル酸含有糖質、乃至シアル酸含有複合糖質も、それぞれ本発明の範囲内に含まれるものである。
前記のようにして得られた蛍光標識化シアル酸、シアル酸含有糖質、乃至シアル酸含有複合糖質は、各種クロマトグラフィーや質量分析等、様々な分析手段に適用が可能である。このような蛍光標識化されたシアル酸、シアル酸含有糖質、乃至シアル酸含有複合糖質を用いることにより、より高感度なシアル酸、シアル酸含有糖質、乃至シアル酸含有複合糖質の分析が可能となる。
また、前記蛍光標識化シアル酸、シアル酸含有糖質、乃至シアル酸含有複合糖質は、シアル酸のカルボキシル基を蛍光物質で標識しただけで、その構造を破壊していないため、前記シアル酸、シアル酸含有糖質、乃至シアル酸含有複合糖質の全体をそのまま分析することができる点で、有利である。
また、前記蛍光標識化シアル酸、シアル酸含有糖質、乃至シアル酸含有複合糖質は、シアル酸のカルボキシル基を蛍光物質で標識しているために、カルボキシル基の負のチャージが失われている。したがって、カルボキシル基の負のチャージが原因となっていた、MALDI−TOF MS分析において飛行しにくい、飛行中に分解するといった質量分析上の問題点を克服することができ、従来は困難であったシアル酸、シアル酸含有糖質、乃至シアル酸含有複合糖質の質量分析を可能とすることができる点で、有利である。
本発明者らは、まず、以下のようにして、シアル酸含有スフィンゴ糖脂質(ガングリオシド)におけるシアル酸のカルボキシル基を蛍光標識化する方法を予備検討した。
そこで、本発明者らは、蛍光発色団が小さく、かつ、反応に預かる側鎖としてエチルアミンを持つ蛍光物質、2−(2−ピリジルアミノ)エチルアミン・2塩酸(PAEA)を選択した。PAEAでは、ADAMの場合と異なり、反応後に目的とする反応物が形成されていることが確認できた(反応率1%程度)。
水、メタノール、エタノール、2−プロパノール中で反応を行った結果、DCCでは顕著な反応の促進はみられなかったが、DMT−MMではエタノール、2−プロパノールで反応率は10%に上がった。
反応溶液は、ロータリーエバポレーターで濃縮後、少量の水で溶解し、陽イオン交換カラム(CM−Sepharose FF、GEヘルスケア バイオサイエンス社)に負荷し、素通り画分を集め、更に陰イオン交換カラム(Q−Sepharose FF、GEヘルスケア バイオサイエンス社)に負荷し、素通り画分を集め凍結乾燥した。その後、シリカゲルカラム(イヤトロビーズ 6SR 8060、ダイアヤトロン社)を用い、凍結乾燥物から反応成生物を、通常のガングリオシドの精製法に従い、溶離溶媒系のクロロホルムとメタノールの混合体積比を9:1から1:2まで順次変化させることで単離する事ができた。
図1に示す反応スキームに従い、3’−シアリルラクトースのPAEA化反応を行った。具体的には、3’−シアリルラクトース(3’−SL)(シグマ社)15mg(24μmol)とPAEA(和光純薬工業)5.5mg(26μmol)に、600μLのEtOH/0.32M NaOH(9:1体積比)を加え、更にDMT−MM(国産化学社)(12.90% 水分)8.3mg(26μmol)を加えた後、室温で3時間放置することにより、3’−SL誘導体(PAEA−3’SL)を得た。
溶離液A:50%アセトニトリル−15mMリン酸カリウム緩衝液(pH5.2)
溶離液B:75%アセトニトリル−15mMリン酸カリウム緩衝液(pH5.2)
溶離液B:100%→0%のリニアーグラジエント溶出
検出条件:蛍光検出器(Ex:300nm,Em:360nm)
溶離液に含まれる塩の除去には、Sephadex LH−20(GEヘルスケア バイオサイエンス社)カラム(1.5x60cm)を用いた。
PAEA−3’−SLのHPLC蛍光検出結果を図3に示す。サンプル量は10ng(13pmol)とした。HPLCでは、感度はUV検出(195nm)の数百倍となり、pmolレベルでの分析が可能であることがわかった。反応生成物の蛍光特性は、励起波長Ex:300nm,蛍光極大波長Em:360nmであった。
また、PAEA−3’−SLのMALDI−TOF−MS分析の結果を図4に示す。偽イオンピークの質量数は計算上の理論値と良く一致していた。未修飾成分のマススペクトル(図4中、(a))と比較すると、シアル酸のカルボキシル基の修飾により、飛行しにくい、飛行中に分解しやすい、といった欠点が改善されたことが良くわかる(図4中、(b))。
図5に示す反応スキームに従い、6’−シアリルラクトース(6’−SL)のPAEA化反応を行った。具体的には、6’−シアリルラクトース(6’−SL)(ウシ初乳由来)15mg(24μmol)とPAEA(和光純薬工業)5.5mg(26μmol)に、600μLのEtOH/0.32M NaOH(9:1体積比)を加え、更にDMT−MM(国産化学社)(12.90% 水分)8.3mg(26μmol)を加えた後、室温で3時間放置することにより、6’−SL誘導体(PAEA−6’SL)を得た。
溶媒系1:テトラヒドロフラン/アセトニトリル/1−プロパノール/0.6M酢酸アンモニウム水溶液/28%アンモニア水(5:10:50:35:0.3、体積比)
溶媒系3:アセトン/2−プロパノール/ピリジン/水/酢酸(60:60:10:30:3、体積比)
溶媒系4:テトラヒドロフラン/アセトン/1−ブタノール/2−プロパノール/ピリジン/水/酢酸(10:30:20:60:10:30:3、体積比)
溶媒系5:エタノール/1−ブタノール/ピリジン/水/酢酸(100:10:10:30:3、体積比)
TLC上では、蛍光ランプでの検出と、通常のレソルシノール反応による検出が可能であり、各PAEA化反応物は出発の成分(親成分)より移動度が大きかった(低極性化)(図7)。また、TLCプレートからPVDF膜に転写しても、蛍光は失われることがなかった(図8)。
図9に示す反応スキームに従い、ガングリオシドGM4のPAEA化反応を行った。具体的には、ガングリオシドGM4(ミンククジラ脳由来)10mg(9μmol)とPAEA(和光純薬工業社)2.3mg(11μmol)に、1mLのPrOH/80mM NaOH(9:1体積比)を加え、更にDMT−MM(国産化学社)7.0mg(22μmol)を加えた後、室温で3時間放置することにより、GM4誘導体(PAEA−GM4)を得た。
また、PAEA−GM4のMALDI−TOF−MS分析の結果を図11に示す。偽イオンピークの質量数は計算上の理論値と良く一致していた。未修飾成分のマススペクトル(図11中、(a))と比較すると、シアル酸のカルボキシル基の修飾により、飛行しにくい、飛行中に分解しやすい、といった欠点が改善されたことが良くわかる(図11中、(b))。
図11のPAEA−GM4のMSスペクトルは、シアル酸含有複合糖質のシアル酸カルボキシル基を蛍光物質で標識しただけで分解せず、全体そのままを調べた世界で初めての成功例である。そのためM/Z1260のシグナルの前後に観察される分子イオンピークは、セラミドの構成脂肪酸分子種(図12)を良く反映している。
Claims (11)
- シアル酸、シアル酸含有糖質、及びシアル酸含有複合糖質の少なくともいずれかにおけるシアル酸のカルボキシル基に、下記一般式(1)で表される化合物を結合させることを特徴とするシアル酸、シアル酸含有糖質、乃至シアル酸含有複合糖質の蛍光標識化方法。
- シアル酸、シアル酸含有糖質、及びシアル酸含有複合糖質の少なくともいずれかと、一般式(1)で表される化合物及びその塩の少なくともいずれかと、脱水縮合剤とを、溶媒中で混合する工程を含む請求項1に記載のシアル酸、シアル酸含有糖質、乃至シアル酸含有複合糖質の蛍光標識化方法。
- シアル酸、シアル酸含有糖質、及びシアル酸含有複合糖質の少なくともいずれかが、シアル酸含有オリゴ糖である請求項1から2のいずれかに記載のシアル酸、シアル酸含有糖質、乃至シアル酸含有複合糖質の蛍光標識化方法。
- シアル酸、シアル酸含有糖質、及びシアル酸含有複合糖質の少なくともいずれかが、ガングリオシドである請求項1から2のいずれかに記載のシアル酸、シアル酸含有糖質、乃至シアル酸含有複合糖質の蛍光標識化方法。
- 一般式(1)で表される化合物が、2−(2−ピリジルアミノ)エチルアミンである請求項1から4のいずれかに記載のシアル酸、シアル酸含有糖質、乃至シアル酸含有複合糖質の蛍光標識化方法。
- 脱水縮合剤が、4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−yl)−4−メチルモルホリニウム塩化物である請求項2から5のいずれかに記載のシアル酸、シアル酸含有糖質、乃至シアル酸含有複合糖質の蛍光標識化方法。
- シアル酸、シアル酸含有糖質、及びシアル酸含有複合糖質の少なくともいずれかがシアル酸含有オリゴ糖であり、かつ、溶媒が水、並びに水及びアルコールの混合溶媒の少なくともいずれかである請求項2から6のいずれかに記載のシアル酸、シアル酸含有糖質、乃至シアル酸含有複合糖質の蛍光標識化方法。
- シアル酸、シアル酸含有糖質、及びシアル酸含有複合糖質の少なくともいずれかがガングリオシドであり、かつ、溶媒がアルコール、並びに水及びアルコールの混合溶媒の少なくともいずれかである請求項2から6のいずれかに記載のシアル酸、シアル酸含有糖質、乃至シアル酸含有複合糖質の蛍光標識化方法。
- 一般式(1)で表される化合物及びその塩の少なくともいずれかを、中性に調整して混合に使用する請求項2から8のいずれかに記載のシアル酸、シアル酸含有糖質、乃至シアル酸含有複合糖質の蛍光標識化方法。
- 弱酸性条件下で混合を行う請求項2から9のいずれかに記載のシアル酸、シアル酸含有糖質、乃至シアル酸含有複合糖質の蛍光標識化方法。
- 請求項1から10のいずれかに記載のシアル酸、シアル酸含有糖質、乃至シアル酸含有複合糖質の蛍光標識化方法により得られたことを特徴とする蛍光標識化されたシアル酸、シアル酸含有糖質、乃至シアル酸含有複合糖質。
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