JP2004073012A - 癌の診断方法 - Google Patents

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谷口 直之
Hidetomo Miyoshi
三善 英知
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Abstract

【課題】新規な腫瘍マーカーを用いた新たな癌の診断方法を提供すること。
【解決手段】生体から分離した試料中のGDP−L−フコースを定量することを含む癌の診断方法を提供した。GDP−L−フコースの定量は、公知の方法や、GDP−L−フコシル−N−アセチル−β−D−グルコサミニドα1−6フコシルトランスフェラーゼの存在下で前記試料を標識オリゴサッカライドと反応させてL−フコシル基を該標識オリゴサッカライドに結合させ、次いで、生成物を高速液体クロマトグラフィーにより分析することにより行うことができる。
【効果】癌の診断に有用な新規な腫瘍マーカーを利用した、新規な癌の診断方法が提供された。本発明の方法は、とりわけ、肝臓癌や膵臓癌の検出に有用であり、特に膵臓癌では血清を試料として利用できる利点がある。
【選択図】 図6

Description

【0001】
【従来の技術】
癌は日本人の死因の第1位であり、死亡総数の約30%を占める。死因2位の心疾患や3位の脳血管性疾患が横ばいまたは下降傾向であるのに対してこの数十年増加の傾向にある。
【0002】
癌の診断のため、しばしば胃カメラ・内視鏡等を用いた検査やバイオプシー(組織生検)が行われるが、患者にとっては負担が大きい。一方腫瘍マーカー検査はほとんどが末梢血を検体として用いるので患者負担が少ない。
【0003】
腫瘍マーカーは、癌細胞が産生する特異な成分で、その成分の検査が癌の診断・治療に役立つとされているものである。これまで報告されている腫瘍マーカーは、胎児性蛋白質(AFP、CEA等)、糖鎖抗原(CA19−9、シリアルTn等)、異所産生物質(ホルモンや癌性アイソザイム等)のように、その物質を検出することによって情報が得られるものと、癌遺伝子(ras、erbB等)、癌抑制遺伝子(p53等)、遺伝子再構成(BCR−ABL等)のように遺伝子の変異や組換えを検出することによって情報が得られるものとに分けられる。いずれも遺伝子産物である蛋白質に異常がおこり癌を引き起こすと考えられるが、それぞれどのような機序によるものかは必ずしも明確にはなっていない(臨床検査ガイド2001−2002、文光堂)。
【0004】
一方、糖鎖と癌の関係は以前から示されている。例えば臨床で消化器癌のマーカーとして確立しているCA19−9は、もともと大腸癌培養細胞SW1116を免疫して作成したモノクロール抗体によって認識される物質として見出されたが、その正体は[Gal1−3GlcNAc]の繰り返し構造(I型糖鎖)を基本骨格とするルイスA(Le)にシアル酸が結合したもの(シアリルルイスa;sLe)である。
【0005】
シアリルルイスaは、Galβ1−3GlcNAcのGalにまずシアル酸がα2−3結合で転移され、この反応で作成されたSAα2−3Galβ1−3GlcNAc(sLe)に、GDP−L−フコースをα1−4結合で転移してsLe(CA19−9)エピトープSAα2−3Galβ1−3(Fucα1−4)GlcNAcが合成される。このエピトープがどのような生理的機能を持ち、どのように癌に関わっているのかは長い間不明であったが、血管内皮細胞に発現される接着因子E−セレクチンのリガンドであることが見出され、癌との因果関係が示唆されている。
【0006】
上記sLe(CA19−9)の合成の最終段階でフコースを付加する反応はフコース転移酵素によって行われる。フコース転移酵素にはFUT1からFUT9まで9種類あり、上記反応はそのうちの1種であるFUT3によるものである。9種類のフコース転移酵素の受容基質はそれぞれ異なるが、供与基質はすべてGDP−フコースである(成松 蛋白質核酸酵素 Vol43、No16、2394−2403、1998)。
【0007】
sLe(CA19−9)が腫瘍マーカーであることが示されて以来、研究者らは新たな腫瘍マーカーや癌治療薬の可能性を求めてそのカスケード周辺の探索を行ってきた。特にカスケードの中間生成物やフコース転移酵素の活性を中心とした研究が進められてきたが、これまでに、sLe(CA19−9)の前駆体であるsLe(DU−PAN−2)がやはり膵癌を中心とした消化器癌で上昇することが見られたのみであった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、新規な腫瘍マーカーを用いた新たな癌の診断方法を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本願発明者らは、鋭意研究の結果、GDP−L−フコースが腫瘍マーカーとして有用であり、これを利用して癌に罹患している可能性を判定することができることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明は、生体から分離した試料中のGDP−L−フコースを定量することを含む癌の診断方法を提供する。
【0011】
【発明の実施の形態】
下記実施例において具体的に記載されるように、本願発明者らは、癌細胞や癌患者血清中において、GDP−L−フコース(グアノシンジホスホ−L−フコピラノシド)の濃度が正常細胞中や健常人血清中の濃度よりも有意に高まることを見出した。従って、GDP−L−フコースを腫瘍マーカーとして利用することができ、その濃度を測定することにより癌の診断を行うことができる。
【0012】
本発明の方法により診断できる癌の種類は、特に限定されるものではなく、好ましい例として肝臓癌及び膵臓癌を挙げることができる。
【0013】
本発明の方法に供される、生体から分離された試料は、特に限定されないが、各種組織や血清又は血漿のような血液試料を好ましく用いることができる。固形癌の診断には、癌を診断する対象組織から採取した生検試料を用いることができる。例えば、肝臓癌の診断のためには、肝臓の生検試料を好ましく用いることができる。また、膵臓癌の診断のためには、血清や血漿を好ましく用いることができる。
【0014】
GDP−L−フコースの定量方法自体は、種々の方法が公知であり(例えばJarkko Rabina et al., Analytical Biochemistry 286, 173−178(2000);及びNoboru Tomiya et al., Analytical Biochemistry 293, 129−137(2001)、これらの公知の方法を用いてGDP−L−フコースを定量することができる。これらの公知の方法に加え、本願発明者らが独自に開発した、簡便、正確なGDP−L−フコースの定量方法を用いることもできる。以下、この方法について説明する。
【0015】
この新規な定量方法は、GDP−L−フコシル−N−アセチル−β−D−グルコサミニドα1−6フコシルトランスフェラーゼ(以下、「α1−6フコ−ス転移酵素」又は「α1−6FucT」と言うことがある)の存在下で前記試料を標識オリゴサッカライドと反応させてL−フコシル基を該標識オリゴサッカライドに結合させ、次いで、生成物を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により分析することによりGDP−L−フコースを定量するものである。反応式の一例を図1に示す。図1に示されるように、この方法では、α1−6FucTの作用により、GDP−L−フコース中のフコシル基を、標識オリゴサッカライドに転移させる。フコシル基が結合した標識オリゴサッカライド(フコシル化標識オリゴサッカライド)は、フコシル基が結合していない標識オリゴサッカライドとは分子量が異なるので、高速液体クロマトグラフィーにより分離可能であり、また、高速液体クロマトグラフィーにより検出される分子は、標識されているので、容易に正確に検出することができる。検出されたピークの面積から、定量すべきフコシル化標識オリゴサッカライドの量を測定することができる。試料中に含まれるGDP−L−フコースの量に依存して、生成されるフコシル化標識オリゴサッカライドの量が変化するので、上記方法により試料中のGDP−L−フコースを定量することができる。
【0016】
この新規な定量方法に供される試料としては、特に限定されないが、細胞のミクロソーム画分及び血清又は血漿が好ましい。細胞のミクロソーム画分は、周知の常法により調製することができる。
【0017】
この定量方法に用いられるα1−6FucTは、N−グリカンに、α1−6結合を介してフコースを転移する公知の酵素であり、周知の方法により調製することができるし(例えばYanagidani et al., J.Biochem. 121, 626−633(1997))、市販もされているので、市販品を好ましく用いることもできる。
【0018】
オリゴサッカライドとしては、α1−6FucTの作用によりフコシル基を結合されるものであればいずれのN−グリカンであってもよい。オリゴサッカライドとしては、α1−6FucTのProductのピークを一定にするため、均一のものが望ましい。なお、α1−6FucTの種々のオリゴサッカライドに対する基質特異性は、1991年Voynowによって検討されており(JBC 266, 21572−21577)、それによると、末端のシアル酸やガラクトースが存在するとα1−6FucTの基質とならず、O型糖鎖やハイマンノース型糖鎖にも反応しないので、これらの反応しないサッカライドは用いない。図1には好ましい一具体例が示されているが、これに限定されるものではない。オリゴサッカライドのサイズは、特に限定されないが、あまりに大きいと、フコシル基が転移したものと、未結合のもののピークが分離しにくくなるので、オリゴサッカライドのサイズは、糖単位の数として3〜10程度が適当である。このようなオリゴサッカライドは、一般には天然物から分離して調整する。この場合には、構造が不定で、サイズの異なる分子種の混合物になる場合が多いが、ゲル濾過等で同一サイズのオリゴサッカライドを精製し、検量線の作成又は対照実験と定量試験とにおいて同じオリゴサッカライドを用いれば、問題なく本発明の診断方法に用いることができる。本発明では一例としてウシγグロブリン(糖鎖を有する)を蛋白分解酵素(プロナーゼ)およびアミノペプチド分解酵素(アミノペプチダーゼ)で分解した、サッカライドサイズやアミノ酸残基の異なるオリゴサッカライドをひとまとめに標識し、その後ゲル濾過によって精製する方法をとっている。この方法によるとγグロブリンを修飾しているオリゴサッカライドを利用して、基質を大量に調整することが可能である。
【0019】
オリゴサッカライドに結合される標識は、続く高速液体クロマトグラフィーにおいて検出できる標識であれば何ら限定されるものではなく、好ましい例として蛍光標識を挙げることができる。下記実施例では、好ましい蛍光物質である4−(2−ピリジルアミノ)ブチルアミン(PABA)(図1参照)を用いているがこれに限定されるものではない。このような標識物質をオリゴサッカライドに結合させるのは、周知の方法に基づき容易に行うことができる。例えば、通常γグロブリンをプロナーゼ処理したオリゴサッカライドにはアスパラギン(Asn)が結合しているが、このアスパラギンのアミノ基を介して標識物質を結合することができる。なお、下記実施例に、Asnが結合したオリゴサッカライドを調整し、これにPABAを結合する方法が具体的に記載されている。
【0020】
この定量方法において、細胞のミクロソーム画分を試料として用いる場合、用いる標識オリゴサッカライドの量は、特に限定されないが、測定時の蛋白量150μg以下の条件で、ミクロソーム画分中のタンパク量1μg当たり、0.25pmol〜0.50pmol程度が適当であり、血清や血漿を試料として用いる場合、測定時の使用試料量15μl以下の条件で、試料1μl当たり0.4pmol〜0.8pmol程度が適当である。また、用いるα1−6FucTの量は、ミクロソーム画分中のタンパク量1μg当たり35〜45単位程度が適当であり、血清や血漿を試料として用いる場合、試料1μl当たり40〜80単位程度が適当である。反応温度は、特に限定されないが、酵素の至適温度である37℃近傍(好ましくは37℃±3℃)で行うことが好ましく、また、反応時間は、特に限定されないが、1時間〜3時間程度、特に約2時間程度が適当である。
【0021】
反応後、反応生成物をHPLCにかけ、溶出物の蛍光を測定する。これらは市販の装置を用いる常法により行うことができ、具体的な条件の一例は下記実施例に具体的に記載されている。
【0022】
下記実施例に具体的に記載するように、癌細胞や癌患者血清中において、GDP−L−フコースの濃度が正常細胞中や健常人血清中の濃度よりも有意に高くなっている。特に、肝臓癌では、肝臓細胞中のGDP−L−フコースの含量が周辺正常組織よりも有意に高く、また、膵臓癌患者では、血清中のGDP−L−フコースの含量が健常人よりも有意に高い。従って、試料中のGDP−L−フコースを定量することにより、癌に罹患している可能性の高低を判定すること、すなわち癌の診断を行うことができる。GDP−L−フコースが有力な腫瘍マーカーであることは本発明により見出されたが、他の腫瘍マーカーと組み合わせて利用することにより、診断の感度をより高めることができ、好ましい。
【0023】
【実施例】
以下、本発明を実施例に基づきより具体的に説明する。もっとも、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0024】
実施例1
1  GDP−L−フコースの安定性試験
ラット肝臓サンプルを用いて室温におけるGDP−フコースの安定性を調べた。摘出したラット肝臓を室温(25℃)ないし37℃で30分置いた場合、GDP−フコースは検出感度以下となった。この結果から、サンプル採取後の迅速な測定が必要であることが示された。
【0025】
2  供与基質の調製
供与基質であるGlcNAcβ1−2Manα1−6(GlcNAcβ1−2Manα1−3) Manβ1−4GlcNAcβ1−4GlcNAc−Asn−PABA (以下GnGn−bi−Asn−PABA)は以下のステップの合成によって作成した(Uozumiら、J. Biochem. 120, 385−392, 1996)。その手順を以下に簡単に述べる。
【0026】
ステップ1:蛍光物質であるPABA(4−(2−ピリジルアミノ)ブチルアミン)を合成した。即ち、N−エチルカルボニルファサルイミド(N−Ethylcarbonylphathalimido)(ナカライテスク社製)8.04gを40mlのTHF (tetrahydrofuran) に溶解し、そこに4−アミノブチルアルデヒドジエチルアセタル(4−aminobutylaldehydediethylacetal)(和光純薬)5.63gとトリエチルアミン(triethylamine) 3.89gを加え、2時間反応させた。反応終了後、蒸発させ、エチルアセテート抽出及び水での洗浄後エチルアセテート相を乾燥させて、中間物質Iを9.41g得た。上記中間物質I(9.41g)をアセトン93mlに溶解し、1M塩酸63mlを加え15分還流しながら混和した。溶媒を蒸発後エーテルで抽出、水での洗浄の後、エーテル相を乾燥してこの反応によって生成された中間物質II7.5gを得た。中間物質II(7.5g)をメタノール308gに溶解し、2−アミノピリジン(2−aminopyridine)(和光純薬)3.706gと酢酸13.86mlを加え混和した。4時間の反応の後ボランジメチルアミン(boranedimethylamine)コンプレックスと酢酸12.2mlを加え、中間物質IIIをトルエンとアセトンの混合液(1:1)で抽出し、5.31gを得た。
上記中間物質IIIを104mlのエタノールに溶解し、ヒドラジンヒドレート(hydrazinehydrate)2.52gを加え、2時間還流しながらインキュベーションを行った。溶媒を蒸発させ、生成されたPABAをエチルアセテートで抽出し、濾過後抽出相を蒸発させた。PABA2.28gを得た。
【0027】
ステップ2:オリゴサッカライド−Asn− Alocの作成
ウシγ−グロブリン(Sigma Chemical社製)をプロナーゼ(生化学工業社製)で常法により消化し、オリゴサッカライド−Asn−OHを得た(オリゴサッカライドの構造は不定)。これをジエチルエーテル1ml、トリエチルアミン6.08μl、水1mlに溶解し、アリルクロロフォルメイト(allylchroloformate;Aloc)3.63μlを加え6時間混和した後乾燥させた。乾燥生成物を水で溶解し、TSK gel Amide−80 カラム(21.5mmx30mm)(トーソー社製)に通し、80%アセトニトリルでカラム洗浄した後0.1%TFAでリニアグラジエントによる抽出を行った。オリゴサッカライド−Asn−Alocを含むフラクションを集めたところ、オリゴサッカライド−Asn−Alocを4.2mg得た。
【0028】
ステップ3:オリゴサッカライド−Asn−PABAの生成
1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドハイドロクロライド(1−ethyl−3−(3−dimethylaminopropyl)carbodimide hydrochloride)0.47mg、DMF1ml、上記オリゴサッカライド−Asn−Aloc4.2mg、1−ハイドロキシベンゾトリアゾール(1−hydroxybenzotriazole; HOBt)1.01mg、上記で作成したPABA3.75μmolを混和した。6時間室温で反応させた後TSK gel Amide−80 カラムに通し、80%アセトニトリルでカラム洗浄した後0.1%TFAでリニアグラジエントによる抽出を行った。中間体であるオリゴサッカライド−(Aloc)−Asn−PABAを含むフラクションを集めて乾燥させ、DMF1mlとジエチルアミン100μlに溶解させ、還元触媒Pd[P Ph]を20mg加えてAlocの残渣を取り除いた。生成物の溶媒を蒸発させ、水で溶解して再度TSK gel Amide−80 カラム(商品名)に通し、80%アセトニトリルでカラム洗浄した後0.1%TFAでリニアグラジエントによる抽出を行って、オリゴサッカライド−Asn−PABA1.95mgを得た。
【0029】
ステップ4:GnGn−bi−Asn−PABAの生成
上記オリゴサッカライド−Asn−PABAをTSK gel ODS− 80TM カラム(4.6mmx150mm)(トーソー社製)に通し、0.1%ブタノールを含む20mM酢酸アンモニウムpH4.0で抽出してGnGnF−bi−Asn−PABA (GlcNAcβ1− 2Manα1− 6(GlcNAcβ1− 2Manα1−3) Manβ1− 4GlcNAcβ1− 4(Fucα1−6)GlcNAc − Asn  PABA)を得た。これをウシ腎臓フコシダーゼ(Sigma Chemical社製)で7日間消化して、TSK gel ODS−80TMカラム(4.6mmx150mm)によるHPLCを行い、最終目的物であるGnGn−bi−Asn−PABAを、 0.1%ブタノールを含む20mM酢酸アンモニウムpH4.0で抽出した。
【0030】
3  サンプルの調製
測定対象組織を約100mgを乳鉢で液体窒素を用いて粉状になるまで粉砕し、0.25Mスークロースバッファーを8倍容量入れて、氷上でDouceのホモジナイザーで30回ホモジナイズした。このホモジナイズしたサンプルを4℃で10分間600xgで遠心して固形物を取り除いた後、上澄を4℃で10分間、1000xgで遠心し、沈殿したミトコンドリア部分を取り除いた。最後に上澄を4℃で105000xg、1時間超遠心し(Optima TL Ultracentrifuge及びTLA−45ローター、Beckman社)ミクロソームフラクションを得た。このフラクションをBCAキット(Pierce社)で蛋白量を定量した。また、血液については、末梢血を採取後、4℃で1500回転15分遠心し、血清を分離し、サンプルとした。
【0031】
4 GDP−L−フコースの定量法の検証
(1) 測定方法
組織サンプルについてはミクロソームフラクションを蛋白量として約80μgとり、冷やしたMES−NaOH(MES; 2−(N−Morholino) ethanesulfonic acid)pH7.0で25μlとした。また血清の場合は血清15μlに冷やしたMES−NaOH(pH7.0)を6.5μlと水7μlで25μlとした。これらの組織又は血清サンプルを100℃で20秒ボイルして、サンプル中のα1−6フコース転移酵素、及びGDP−L−フコースを使用するかまたは分解する恐れのあるフコースの受容体または酵素を不活性化した。サンプルをただちに氷につけ、2分間おいた後に4℃で12000xg、10分間遠心した。この上清に10%トライトンX−100を1μl、73.5μM/μlの受容体(GnGn−bi−Asn−PABA)を0.5μl、α1−6フコース転移酵素(250μU/μl)(東洋紡社)を5μl加え、冷水を加えて35μlとして(受容体とα1−6フコ−ス転移酵素の最終濃度はそれぞれ1050nMと35.7μU/μlとなる)、37℃で2時間インキュベートした。時間終了後反応液を100℃で1分間加熱して反応を終了させ、12000xg10分間遠心して上清を得た。そのうちの10μlを、TSK gel ODS− 80TM カラム(4.6mmx150mm)(トーソー社製)によるHPLCで、0.1%ブタノールを含む20mM酢酸アンモニウムpH4.0で55℃で溶出した。溶出液中にPABAによる蛍光が現れる領域を蛍光光度計(モデルRF−10AXL、島津社)を用いて励起光320nm、発光400nmで測定し、溶出パターンを得た。蛍光強度を標準曲線によりGDP−L−フコースの濃度に換算した。
【0032】
(2) HPLC溶出パターンの確認
ラットの肝臓組織を用いて、上記方法でGDP−L−フコースを測定した。負の対照として、反応液中にα1−6フコース転移酵素を入れないものも測定したところ、転移酵素が入ったものは約11分と約23分の二つの部分にピークが、転移酵素なしでは約11分にのみピークが見られ、約23分のピークが、受容体にフコースが転移したものであることが推定された(図2)。またこの結果はこれまでの報告とも一致するものであった(Uozumiら、J. Biochem. 120, 385−392, 1996)。
【0033】
(3) 標準曲線の作成
0から2000μMの範囲で、様々な濃度のGDP−L−フコース(Calbiochem社)を上記方法によって測定し、生成物であるフコシルPABAの標準曲線を作成した。測定可能な最小濃度は20nMで、濃度20nMから1000nMまではGDP−L−フコースの濃度に比例してフコシルPABAが増加することが示された(図3)。
【0034】
(4) α1−6フコース転移酵素の濃度の検証
本測定方法においては、α1−6フコース転移酵素が過剰に反応液に含まれていることが前提である。そこで培養細胞Huh7(ヒト肝癌由来、ATCCより購入)を用いて、反応液中のα1−6フコース転移酵素を0、313、625、1250μU(反応液中の濃度は0、8.9、16.0、35.7、71.4μU/μl)としてそれぞれ生成物の量を測定した。その結果35.7μU/μl以上でフコシルPABAの生成が飽和していることが示され、上記測定方法で用いた濃度は十分に過剰量であることが確認された(図4)。なお培養細胞は氷冷したPBS(pH7.4)で二回洗浄した後、組織に準じてサンプル調整を行った。
【0035】
(5) 反応時間の検証
上記測定法の至適反応時間を調べるために、Huh7培養細胞を用いて上記測定法において反応時間を0、30分、1時間、2時間、3.5時間、4.5時間としたときのフコシルPABAの生成を調べたところ、反応時間1時間以上でほぼ横ばいとなった。従って上記測定法での反応時間2時間は適当であることが判明した。(図5)
【0036】
実施例2  肝臓組織中のGDP−L−フコースの測定
上記検証により、前述のGDP−L−フコースの測定法が定量法として利用できることが判明した。そこで当該方法を用いて健常(非癌)人の肝組織、肝細胞癌及び周辺正常組織のGPD−L−フコース値を測定し、比較した。1mgのミクロソームたんぱく質量あたりのGDP−L−フコース量は、健常人組織と周辺正常組織ではすべて200μM以下であった(中心値163μM)のに対し、肝細胞癌組織では7症例中4例で高値であることが示された(中心値209μM)(図6)。
【0037】
実施例3  血清サンプルでのGDP−L−フコースの測定
血清サンプルを用いてGDP−L−フコース量を測定した(ただし蛋白質量あたりの量とはしていない)。正常人7サンプルではすべて低値であったが、膵癌患者の5症例のサンプルのうち3サンプルで顕著に上昇が見られた(図7)。一方、症例が限られているため詳細は不明であるが肝癌と胃癌患者血清ではGDP−L−フコースは検出されず、特定種類の癌で上昇することが示唆された。
【0038】
【発明の効果】
本発明により、癌の診断に有用な新規な腫瘍マーカーを利用した、新規な癌の診断方法が提供された。本発明の方法は、とりわけ、肝臓癌や膵臓癌の検出に有用であり、特に膵臓癌では血清を試料として利用できる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例において採用した、GDP−L−フコースの定量方法における反応式を示す図である。
【図2】実施例において得られた、HPLCのクロマトグラムを示す図である。
【図3】実施例において作成された、GDP−L−フコースと蛍光強度との関係を示す検量線を示す図である。
【図4】実施例において測定された、α1−6FucTの添加量と蛍光強度との関係を示す図である。
【図5】実施例において測定された、反応時間と蛍光強度との関係を示す図である。
【図6】実施例において測定された、肝臓癌患者の肝臓組織及び周辺正常組織並びに健常者の肝臓組織のミクロソーム画分中のGDP−L−フコース濃度を示す図である。
【図7】実施例において測定された、膵臓癌患者と健常人の血清中のGDP−L−フコース濃度を示す図である。

Claims (6)

  1. 生体から分離した試料中のGDP−L−フコースを定量することを含む癌の診断方法。
  2. 前記試料が肝臓組織であり、前記癌が肝臓癌である請求項1記載の方法。
  3. 前記試料が血清又は血漿であり、前記癌が膵臓癌である請求項1記載の方法。
  4. 前記定量は、GDP−L−フコシル−N−アセチル−β−D−グルコサミニドα1−6フコシルトランスフェラーゼの存在下で前記試料を標識オリゴサッカライドと反応させてL−フコシル基を該標識オリゴサッカライドに結合させ、次いで、生成物を高速液体クロマトグラフィーにより分析することにより行う請求項1又は2記載の方法。
  5. 組織を構成する細胞のミクロソーム画分中のGDP−L−フコースを定量する請求項4記載の方法。
  6. 前記定量は、GDP−L−フコシル−N−アセチル−β−D−グルコサミニドα1−6フコシルトランスフェラーゼの存在下で前記試料を標識オリゴサッカライドと反応させてL−フコシル基を該標識オリゴサッカライドに結合させ、次いで、生成物を高速液体クロマトグラフィーにより分析することにより行う請求項3記載の方法。
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