JP2009190993A - シアル酸、シアル酸含有糖質、乃至シアル酸含有複合糖質の蛍光標識化方法、及び、前記方法により得られた蛍光標識化されたシアル酸、シアル酸含有糖質、乃至シアル酸含有複合糖質 - Google Patents

シアル酸、シアル酸含有糖質、乃至シアル酸含有複合糖質の蛍光標識化方法、及び、前記方法により得られた蛍光標識化されたシアル酸、シアル酸含有糖質、乃至シアル酸含有複合糖質 Download PDF

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Abstract

【課題】各種クロマトグラフィーや質量分析等、様々な分析手段によるシアル酸含有糖質やシアル酸含有複合糖質の高感度分析を可能とする、効率的なシアル酸、シアル酸含有糖質、乃至シアル酸含有複合糖質の蛍光標識化方法、及び、前記方法により得られる蛍光標識化されたシアル酸、シアル酸含有糖質、乃至シアル酸含有複合糖質を提供すること。
【解決手段】シアル酸、シアル酸含有糖質、及びシアル酸含有複合糖質の少なくともいずれかにおけるシアル酸のカルボキシル基に、下記一般式(1)で表される化合物を結合させることを特徴とするシアル酸、シアル酸含有糖質、乃至シアル酸含有複合糖質の蛍光標識化方法、及び、前記方法により得られた蛍光標識化されたシアル酸、シアル酸含有糖質、乃至シアル酸含有複合糖質である。
【化4】

ただし、前記一般式(1)中、nは2〜4の整数を示す。
【選択図】なし

Description

本発明は、シアル酸、シアル酸含有糖質、乃至シアル酸含有複合糖質の蛍光標識化方法、及び、前記方法により得られた蛍光標識化されたシアル酸、シアル酸含有糖質、乃至シアル酸含有複合糖質に関する。
近年、シアル酸含有糖質やシアル酸含有複合糖質研究の分野においても、分析技術の向上によりこれまで知られていなかった新規の微量成分が検出されるようになってきた。このような成分の生理機能を解析していくために、分析、分離精製、構造解析等を行うためには、シアル酸含有糖質やシアル酸含有複合糖質を、非破壊的に高感度化できる修飾技術が必須である。中でも、実験室で行う高感度化技術としては、蛍光標識化法が適している。
代表的な糖鎖の蛍光標識化技術としては、糖鎖の還元末端に2−アミノピリジンを導入する、ピリジルアミノ化(PA化)が1970年代の終わりに開発された(非特許文献1参照)。PA化糖鎖は高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により分離され、質量分析(LC−MS)や二種類のカラム(C18及びアミドシリカ)での分離パターンを基に作成された糖鎖マッピングにより構造解析が簡易化され、現在も糖鎖の解析には欠かせない技術の一つとして広く採用されている。
しかし、PA化法では糖鎖の還元末端を修飾するために、複合糖質全体としての分析は行えない。またLC−MSでは調べる事のできる分子量の上限が2000程度である、といった問題点もあった。
一方、高分子成分の分析のためにMALDI TOF−MSが利用されるようになってきた。しかし、シアル酸含有糖質やシアル酸含有複合糖質の場合、糖鎖に含まれるシアル酸のカルボキシル基が負のチャージを持つために、飛行しにくい、飛行中に分解するといった分析上の問題点があった。
なお、近年、新たな脱水縮合剤として、DMT−MMが開発された(非特許文献2参照)。DMT−MMを用いたカルボキシアミド合成反応は、カルボキシル基、アミン、縮合剤の混合モル比が1:1.1:1.1で、室温でワンステップで進行し、反応後の精製操作も容易であることが報告されている。シアル酸含有糖鎖のMALDI−MS分析のため、PA化糖鎖のシアル酸カルボキシル基を、このDMT−MMを用い、塩化アンモニウムでアミド化する方法も試みられている(非特許文献3参照)が、この方法はPA化とアミド化の二段階の反応を必須とするため効率的でなく、また、この反応系を構成する成分のモル比は、PA化糖鎖:炭酸水素アンモニウム:塩化アンモニウム:DMT−MM(1:10:10:6x10)であり、反応条件として良好なものではなかった。
Hase,S.,Ikenaka,T.,Matushima,Y.,Biochem.Biophys.Res.Commun.(1978)85,257−263 Kunishimaら,Tetrahedron Lett.1999,40,5327−5330,Tetrahedron 2001,57,1551−1558 Tanakaら,Anal.Chem.2005,77,4962−4968
本発明は、前記従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、各種クロマトグラフィーや質量分析等、様々な分析手段によるシアル酸含有糖質やシアル酸含有複合糖質の高感度分析を可能とする、効率的なシアル酸、シアル酸含有糖質、乃至シアル酸含有複合糖質の蛍光標識化方法、及び、前記方法により得られる蛍光標識化されたシアル酸、シアル酸含有糖質、乃至シアル酸含有複合糖質を提供することを目的とする。
前記課題を解決するため、本発明者らは鋭意検討した結果、以下のような知見を得た。即ち、シアル酸含有糖質やシアル酸含有複合糖質におけるシアル酸のカルボキシル基に、2−(2−ピリジルアミノ)エチルアミン等の蛍光物質を導入することにより、シアル酸含有糖質やシアル酸含有複合糖質を非破壊的に蛍光標識化することができ、これにより、各種クロマトグラフィーや質量分析等、様々な分析手段によるシアル酸含有糖質やシアル酸含有複合糖質の高感度分析が可能となるという知見である。
前記したように、従来の蛍光標識化技術(ピリジルアミノ化(PA化))では、シアル酸含有糖質やシアル酸含有複合糖質の還元末端を標識化するため、例えば、ガングリオシド等のシアル酸含有複合糖質を標識化する場合には、糖鎖のみを切り出して用いる必要があり、そのため、シアル酸含有複合糖質全体を分析することは不可能であった。また、シアル酸含有糖質やシアル酸含有複合糖質は、シアル酸が有するカルボキシル基が負のチャージを持つために、MALDI−TOF MS分析において飛行しにくい、飛行中に分解するといった問題から、質量分析への応用が困難であるとされていた。
一方、本発明では、シアル酸含有糖質やシアル酸含有複合糖質における、シアル酸のカルボキシル基を標識化することから、例えば、ガングリオシド等のシアル酸含有複合糖質を標識化する場合であっても、その構造を破壊する必要がなく、そのため、シアル酸含有複合糖質全体としての分析を可能とすることができる。また、本発明では、シアル酸含有糖質やシアル酸含有複合糖質における、シアル酸のカルボキシル基を標識化するために、カルボキシル基の負のチャージを失くすことができ、そのため、前記したような、高分子量成分の分析に有利なMALDI−TOF MSにおいて、飛行しにくい、飛行中に分解するといった問題点を克服し、シアル酸含有糖質やシアル酸含有複合糖質の質量分析への応用を可能とすることができる。
また、本発明では、シアル酸含有糖質やシアル酸含有複合糖質に導入する蛍光物質として、小さな蛍光発色団を有し、かつ、導入に関与する側鎖として炭素数2〜4のアルキルアミンを有する蛍光物質(2−(2−ピリジルアミノ)エチルアミン等)を使用するため、導入に際して蛍光発色団がシアル酸と隣接する糖との結合で生じる立体障害に影響を受ける懸念がなく、安定に導入を行うことができ、そのため、シアル酸含有糖質やシアル酸含有複合糖質の蛍光標識化を効率的に行うことが可能となる。
本発明は、本発明者らによる前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> シアル酸、シアル酸含有糖質、及びシアル酸含有複合糖質の少なくともいずれかにおけるシアル酸のカルボキシル基に、下記一般式(1)で表される化合物を結合させることを特徴とするシアル酸、シアル酸含有糖質、乃至シアル酸含有複合糖質の蛍光標識化方法である。
ただし、前記一般式(1)中、nは2〜4の整数を示す。
<2> シアル酸、シアル酸含有糖質、及びシアル酸含有複合糖質の少なくともいずれかと、一般式(1)で表される化合物及びその塩の少なくともいずれかと、脱水縮合剤とを、溶媒中で混合する工程を含む前記<1>に記載のシアル酸、シアル酸含有糖質、乃至シアル酸含有複合糖質の蛍光標識化方法である。
<3> シアル酸、シアル酸含有糖質、及びシアル酸含有複合糖質の少なくともいずれかが、シアル酸含有オリゴ糖である前記<1>から<2>のいずれかに記載のシアル酸、シアル酸含有糖質、乃至シアル酸含有複合糖質の蛍光標識化方法である。
<4> シアル酸、シアル酸含有糖質、及びシアル酸含有複合糖質の少なくともいずれかが、ガングリオシドである前記<1>から<2>のいずれかに記載のシアル酸、シアル酸含有糖質、乃至シアル酸含有複合糖質の蛍光標識化方法である。
<5> 一般式(1)で表される化合物が、2−(2−ピリジルアミノ)エチルアミンである前記<1>から<4>のいずれかに記載のシアル酸、シアル酸含有糖質、乃至シアル酸含有複合糖質の蛍光標識化方法である。
<6> 脱水縮合剤が、4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−yl)−4−メチルモルホリニウム塩化物である前記<2>から<5>のいずれかに記載のシアル酸、シアル酸含有糖質、乃至シアル酸含有複合糖質の蛍光標識化方法である。
<7> シアル酸、シアル酸含有糖質、及びシアル酸含有複合糖質の少なくともいずれかがシアル酸含有オリゴ糖であり、かつ、溶媒が水、並びに水及びアルコールの混合溶媒の少なくともいずれかである前記<2>から<6>のいずれかに記載のシアル酸、シアル酸含有糖質、乃至シアル酸含有複合糖質の蛍光標識化方法である。
<8> シアル酸、シアル酸含有糖質、及びシアル酸含有複合糖質の少なくともいずれかがガングリオシドであり、かつ、溶媒がアルコール、並びに水及びアルコールの混合溶媒の少なくともいずれかである前記<2>から<6>のいずれかに記載のシアル酸、シアル酸含有糖質、乃至シアル酸含有複合糖質の蛍光標識化方法である。
<9> 一般式(1)で表される化合物及びその塩の少なくともいずれかを、中性に調整して混合に使用する前記<2>から<8>のいずれかに記載のシアル酸、シアル酸含有糖質、乃至シアル酸含有複合糖質の蛍光標識化方法である。
<10> 弱酸性条件下で混合を行う前記<2>から<9>のいずれかに記載のシアル酸、シアル酸含有糖質、乃至シアル酸含有複合糖質の蛍光標識化方法である。
<11> 前記<1>から<10>のいずれかに記載のシアル酸、シアル酸含有糖質、乃至シアル酸含有複合糖質の蛍光標識化方法により得られたことを特徴とする蛍光標識化されたシアル酸、シアル酸含有糖質、乃至シアル酸含有複合糖質である。
本発明によれば、前記従来における諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、各種クロマトグラフィーや質量分析等、様々な分析手段によるシアル酸含有糖質やシアル酸含有複合糖質の高感度分析を可能とする、効率的なシアル酸、シアル酸含有糖質、乃至シアル酸含有複合糖質の蛍光標識化方法、及び、前記方法により得られる蛍光標識化されたシアル酸、シアル酸含有糖質、乃至シアル酸含有複合糖質を提供することができる。
(シアル酸、シアル酸含有糖質、乃至シアル酸含有複合糖質の蛍光標識化方法/蛍光標識化されたシアル酸、シアル酸含有糖質、乃至シアル酸含有複合糖質)
本発明のシアル酸、シアル酸含有糖質、乃至シアル酸含有複合糖質の蛍光標識化方法は、シアル酸、シアル酸含有糖質、及びシアル酸含有複合糖質の少なくともいずれかにおけるシアル酸のカルボキシル基に、後述する一般式(1)で表される化合物を結合させることを特徴とする。
前記シアル酸、シアル酸含有糖質、及びシアル酸含有複合糖質の少なくともいずれかにおけるシアル酸のカルボキシル基への、前記一般式(1)で表される化合物の結合方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択した方法により行うことができるが、中でも、前記シアル酸、シアル酸含有糖質、及びシアル酸含有複合糖質の少なくともいずれかと、前記一般式(1)で表される化合物及びその塩の少なくともいずれかと、脱水縮合剤とを、溶媒中で混合する工程を含む方法により、好適に行うことが可能である。以下に前記方法の詳細を示す。
<シアル酸、シアル酸含有糖質、シアル酸含有複合糖質>
前記シアル酸、シアル酸含有糖質、シアル酸含有複合糖質は、前記蛍光標識化方法における蛍光標識化の対象物質であり、これらはいずれか1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
ここで、前記シアル酸とは、ノイラミン酸のアシル誘導体の総称であり、例えば、N−アセチルノイラミン酸、N−グライコリルノイラミン酸などが挙げられる。なお、前記シアル酸は、通常糖鎖の非還元末端に存在するが、単糖の状態で前記蛍光標識化の対象物質に使用されてもよい。また、前記シアル酸含有糖質とは、前記シアル酸を含有する糖質であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シアル酸含有オリゴ糖、シアル酸含有多糖などが挙げられる。また、前記シアル酸含有複合糖質とは、前記シアル酸を含有する複合糖質であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ガングリオシド等のシアル酸含有糖脂質、シアル酸含有糖タンパク質、シアル酸含有プロテオグリカン、シアル酸含有ペプチドグリカン、シアル酸含有リポ多糖などが挙げられる。
なお、前記シアル酸、シアル酸含有糖質、シアル酸含有複合糖質は、天然由来のものを使用してもよいし、合成により得られたものを使用してもよい。
前記シアル酸、シアル酸含有糖質、乃至シアル酸含有複合糖質の蛍光標識化方法では、前記シアル酸、シアル酸含有糖質、及びシアル酸含有複合糖質の少なくともいずれかにおけるシアル酸のカルボキシル基に、後述する一般式(1)で表される化合物(蛍光物質)を結合させる。そのため、前記蛍光標識化の対象物質がガングリオシド等のシアル酸含有複合糖質である場合であっても、従来のように蛍光標識化のためにその複合体部分(ガングリオシドの場合はセラミド部分)を切り離す必要がなく、そのため、前記シアル酸含有複合糖質を、全体として分析に供することができる点で、有利である。
また、前記シアル酸、シアル酸含有糖質、及びシアル酸含有複合糖質の少なくともいずれかにおけるシアル酸のカルボキシル基に、後述する一般式(1)で表される化合物(蛍光物質)を結合させることにより、カルボキシル基の負のチャージを失くすことができ、そのため、MALDI−TOF MS分析において飛行しにくい、飛行中に分解するといった従来における質量分析上の問題点を克服し、シアル酸、シアル酸含有糖質、乃至シアル酸含有複合糖質の質量分析への応用を可能とすることができる点で、有利である。
<一般式(1)で表される化合物>
前記シアル酸、シアル酸含有糖質、及びシアル酸含有複合糖質の少なくともいずれかにおけるシアル酸のカルボキシル基に結合させる蛍光物質としては、下記一般式(1)で表される化合物が使用される。
ただし、前記一般式(1)中、nは2〜4の整数を示す。中でも、n=2が好ましい。
前記一般式(1)で表される化合物の具体例としては、2−(2−ピリジルアミノ)エチルアミン、2−(2−ピリジルアミノ)プロピルアミン、2−(2−ピリジルアミノ)ブチルアミンが挙げられ、これらの中でも、2−(2−ピリジルアミノ)エチルアミンが好ましい。
また、前記一般式(1)で表される化合物は、塩の状態で使用してもよい。前記塩としては、例えば、塩酸塩、酢酸塩、硫酸塩などが挙げられる。
これらの中でも、前記一般式(1)で表される化合物としては、2−(2−ピリジルアミノ)エチルアミン・2塩酸(PAEA)が特に好ましい。
前記シアル酸、シアル酸含有糖質、乃至シアル酸含有複合糖質の蛍光標識化方法では、前記一般式(1)で表される化合物のような、小さな蛍光発色団を有し、かつ、結合に関与する側鎖として炭素数2〜4のアルキルアミンを有する蛍光物質を使用するため、結合に際して蛍光発色団が、シアル酸と隣接する糖との結合で生じる立体障害の影響を受ける懸念がなく、安定に結合を行うことができ、そのため、前記シアル酸、シアル酸含有糖質、乃至シアル酸含有複合糖質の蛍光標識化を効率的に行うことができる点で、有利である。また、前記一般式(1)で表される化合物は、アミド結合によりカルボキシル基に結合されるため、エステル結合等より強固に結合できる点でも、有利である。
一般に、蛍光物質として使用されている試薬は、蛍光発色団がピレン型、アントラセン型、ナフタレン型といった多環式化合物が主であるが、これらの蛍光物質では、結合の際に蛍光発色団がシアル酸と隣接する糖との間に生じる立体障害の影響を受けてしまい、蛍光標識化反応の進行が著しく妨げられる等の問題がある。また、一般に、結合にかかるアミノ基を持つ側鎖は、炭素数が環を形成できる数になるにつれ、炭素鎖の折れ曲がりが生じ、直線性が損なわれるために、側鎖のアルキルアミンの炭素数が5以上となると、かえって反応性が乏しくなってしまう等の問題がある。
<脱水縮合剤>
前記脱水縮合剤は、前記シアル酸、シアル酸含有糖質、及びシアル酸含有複合糖質の少なくともいずれかにおけるシアル酸のカルボキシル基と、前記一般式(1)で表される化合物との結合反応(蛍光標識化反応)を促進させる目的で使用される。前記結合反応は、前記脱水縮合剤を使用せずに進行させることも可能であるが、より反応を促進させることができる点で、前記脱水縮合剤を使用することが好ましい。
前記脱水縮合剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−yl)−4−メチルモルホリニウム塩化物(DMT−MM;Kunishimaら,Tetrahedron Lett.1999,40,5327−5330,Tetrahedron 2001,57,1551−1558参照)、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)等が挙げられるが、中でも、DMT−MMが好ましい。前記脱水縮合剤がDMT−MMであると、前記結合反応を促進する効果に優れる点で、有利である。
<混合量比>
前記シアル酸、シアル酸含有糖質、及びシアル酸含有複合糖質の少なくともいずれかと、前記一般式(1)で表される化合物及びその塩の少なくともいずれかと、前記脱水縮合剤との混合量比としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、中でも、モル比で、シアル酸、シアル酸含有糖質、及びシアル酸含有複合糖質の少なくともいずれか:一般式(1)で表される化合物及びその塩の少なくともいずれか:脱水縮合剤=1:1:1〜1:2:2が好ましく、1:1.05:1.05〜1:1.5:1.5がより好ましく、1:1.1:1.1が特に好ましい。
<溶媒>
前記溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水、アルコール、水及びアルコールの混合溶媒などが挙げられる。前記水としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、純水、超純水等が挙げられる。前記アルコールとしても、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノール等が挙げられる。
前記溶媒の種類は、前記蛍光標識化の対象物質(シアル酸、シアル酸含有糖質、及びシアル酸含有複合糖質の少なくともいずれか)の種類に応じて、適宜選択することが好ましい。前記対象物質の種類に応じて適切な溶媒を選択することにより、蛍光標識化反応効率をより向上させることができる。
例えば、前記蛍光標識化の対象物質として、疎水性部を有さないシアル酸含有糖質(シアル酸含有オリゴ糖等)を使用する場合には、前記溶媒としては、水、並びに水及びアルコールの混合溶媒の少なくともいずれかを使用することが好ましい。なお、前記混合溶媒における、水とアルコールとの混合量比としては、体積比で、1:0〜1:1が好ましく、1:0〜1:0.5がより好ましい。
一方、前記蛍光標識化の対象物質として、疎水性部を有するシアル酸含有複合糖質(疎水性部としてセラミドを有するガングリオシド等)を使用する場合には、前記溶媒としては、アルコール、並びに水及びアルコールの混合溶媒の少なくともいずれかを使用することが好ましい。なお、前記混合溶媒における、水とアルコールとの混合量比としては、体積比で、0:1〜1:1が好ましく、0:1〜0.5:1がより好ましい。
<混合>
前記シアル酸、シアル酸含有糖質、及びシアル酸含有複合糖質の少なくともいずれかと、前記一般式(1)で表される化合物及びその塩の少なくともいずれかと、前記脱水縮合剤とを、前記溶媒中で混合する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、マイクロピッペット等の装置を用いて混合を行うことができる。また、前記各成分の添加順序としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記混合は、弱酸性(pH4〜5)条件下で行うことが好ましい。前記一般式(1)で表される化合物及びその塩の少なくともいずれかの好ましい一態様である2−(2−ピリジルアミノ)エチルアミン・2塩酸(PAEA)は、塩酸塩であるために強い酸性を示すが、これを水酸化ナトリウム等のpH調整剤により中性(pH6.5〜7)に調整して使用し、全体としては弱酸性条件下で前記混合を行うことにより、前記蛍光標識化反応効率を著しく向上させることができる。前記PAEAを中和して使用することにより、前記一般式(1)で表される化合物や、前記脱水縮合剤を多量に使用することなしに、効果的に反応効率を向上させることができる。
また、前記混合を行う温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、20〜35℃が好ましく、室温(25〜30℃)がより好ましい。
また、前記混合を行う時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、0.3〜24時間が好ましく、0.5〜4時間がより好ましい。
前記混合により、前記シアル酸、シアル酸含有糖質、及びシアル酸含有複合糖質の少なくともいずれかにおけるシアル酸のカルボキシル基と、前記一般式(1)で表される化合物との結合反応(蛍光標識化反応)を効率的に進行させることができ、その結果、蛍光標識化されたシアル酸、シアル酸含有糖質、乃至シアル酸含有複合糖質を得ることができる。
前記混合によれば、前記シアル酸、シアル酸含有糖質、及びシアル酸含有複合糖質の少なくともいずれかにおけるシアル酸のカルボキシル基に、前記一般式(1)で表される化合物を結合させるのみの、一段階の反応で前記シアル酸、シアル酸含有糖質、乃至シアル酸含有複合糖質の蛍光標識化を行うことができ、したがって、反応効率に優れる点で、有利である。
前記蛍光標識化反応終了後は、通常の精製操作により、前記反応後溶液から前記蛍光標識化されたシアル酸、シアル酸含有糖質、乃至シアル酸含有複合糖質を分離精製することができる。具体的には、後述する実施例に記載の方法等により、分離精製を行うことができる。
また、得られた蛍光標識化シアル酸、シアル酸含有糖質、乃至シアル酸含有複合糖質は、例えば、H−NMR、HH−COSY NMR等の手法によりその構造を確認することができる。前記蛍光標識化シアル酸、シアル酸含有糖質、乃至シアル酸含有複合糖質は、シアル酸のカルボキシル基に、前記一般式(1)で表される化合物(蛍光物質)がアミド結合により結合した新規な構造を有するものであり、したがって、前記蛍光標識化シアル酸、シアル酸含有糖質、乃至シアル酸含有複合糖質も、それぞれ本発明の範囲内に含まれるものである。
<用途>
前記のようにして得られた蛍光標識化シアル酸、シアル酸含有糖質、乃至シアル酸含有複合糖質は、各種クロマトグラフィーや質量分析等、様々な分析手段に適用が可能である。このような蛍光標識化されたシアル酸、シアル酸含有糖質、乃至シアル酸含有複合糖質を用いることにより、より高感度なシアル酸、シアル酸含有糖質、乃至シアル酸含有複合糖質の分析が可能となる。
また、前記蛍光標識化シアル酸、シアル酸含有糖質、乃至シアル酸含有複合糖質は、シアル酸のカルボキシル基を蛍光物質で標識しただけで、その構造を破壊していないため、前記シアル酸、シアル酸含有糖質、乃至シアル酸含有複合糖質の全体をそのまま分析することができる点で、有利である。
また、前記蛍光標識化シアル酸、シアル酸含有糖質、乃至シアル酸含有複合糖質は、シアル酸のカルボキシル基を蛍光物質で標識しているために、カルボキシル基の負のチャージが失われている。したがって、カルボキシル基の負のチャージが原因となっていた、MALDI−TOF MS分析において飛行しにくい、飛行中に分解するといった質量分析上の問題点を克服することができ、従来は困難であったシアル酸、シアル酸含有糖質、乃至シアル酸含有複合糖質の質量分析を可能とすることができる点で、有利である。
以下に実施例及び参考例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例及び参考例に何ら限定されるものではない。
(参考例1:シアル酸含有糖質/シアル酸含有複合糖質の蛍光標識化方法の予備検討)
本発明者らは、まず、以下のようにして、シアル酸含有スフィンゴ糖脂質(ガングリオシド)におけるシアル酸のカルボキシル基を蛍光標識化する方法を予備検討した。
まず初めに、蛍光物質として、脂肪酸分析用蛍光試薬9−Anthryldiazomethane(ADAM,“アダム”、フナコシ社)を用いて検討した。使用説明書に従いラウリン酸を用いて試験したところ、問題なく反応が進行することが確認された。しかし、ガングリオシドでは、様々な反応条件下(ガングリオシド:GM4、GM3、GM1、GD3、GD1a、GD1b、GT1bなど、ガングリオシドとADAMのモル比:1:1〜1:20、溶媒:水、メタノール、エタノール、プロパノール、アセトン、時間:5分〜48時間、温度:20℃〜80℃)で検討したが、標識化反応はほとんど進行しなかった(反応率1%未満)。反応が進行しにくい一番の要因は、シアル酸と結合する隣接糖との間に生じる立体障害により、アントラセンを基本骨格として有するアダム試薬がカルボキシル基に接近できないためであると考えられた。
そこで、本発明者らは、蛍光発色団が小さく、かつ、反応に預かる側鎖としてエチルアミンを持つ蛍光物質、2−(2−ピリジルアミノ)エチルアミン・2塩酸(PAEA)を選択した。PAEAでは、ADAMの場合と異なり、反応後に目的とする反応物が形成されていることが確認できた(反応率1%程度)。
ただし、前記条件ではガングリオシドのPAEA化反応率は1%程度であり、より高い反応率が望まれた。そこで、本発明者らは更に、水やアルコールといった極性溶媒中でも使用できる脱水縮合剤、N,N’−Dicyclohexylcarbodiimide(DCC)、及び、4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−yl)−4−メチルモルホリニウム塩化物(DMT−MM)を用いて、反応の促進化を検討した(ガングリオシドとDCC又はDMT−MMのモル比:1:1〜1:20、溶媒:水、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、時間:5分〜48時間、温度:20℃〜50℃)。
水、メタノール、エタノール、2−プロパノール中で反応を行った結果、DCCでは顕著な反応の促進はみられなかったが、DMT−MMではエタノール、2−プロパノールで反応率は10%に上がった。
更に、PAEA溶液の液性をNaOH溶液で中性に調整(pH6.5〜7)してから使用することで、反応率は更に倍(20%)になった(この際の反応液のpHは4.5前後)。
反応溶液は、ロータリーエバポレーターで濃縮後、少量の水で溶解し、陽イオン交換カラム(CM−Sepharose FF、GEヘルスケア バイオサイエンス社)に負荷し、素通り画分を集め、更に陰イオン交換カラム(Q−Sepharose FF、GEヘルスケア バイオサイエンス社)に負荷し、素通り画分を集め凍結乾燥した。その後、シリカゲルカラム(イヤトロビーズ 6SR 8060、ダイアヤトロン社)を用い、凍結乾燥物から反応成生物を、通常のガングリオシドの精製法に従い、溶離溶媒系のクロロホルムとメタノールの混合体積比を9:1から1:2まで順次変化させることで単離する事ができた。
一方、ガングリオシドのような疎水性部(セラミド)を持たないシアル酸含有オリゴ糖では、様々な反応条件下(シアル酸含有オリゴ糖とDMT−MMのモル比:1:1〜1:20、溶媒:水、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、アセトン、時間:5分〜48時間、温度:20℃〜80℃)で検討したところ、反応溶液として水:エタノール(1:9、体積比)を用いた時に一番良い反応率が得られた(24%)。
(実施例1:3’−シアリルラクトース(シアル酸含有糖質)のPAEA化反応)
図1に示す反応スキームに従い、3’−シアリルラクトースのPAEA化反応を行った。具体的には、3’−シアリルラクトース(3’−SL)(シグマ社)15mg(24μmol)とPAEA(和光純薬工業)5.5mg(26μmol)に、600μLのEtOH/0.32M NaOH(9:1体積比)を加え、更にDMT−MM(国産化学社)(12.90% 水分)8.3mg(26μmol)を加えた後、室温で3時間放置することにより、3’−SL誘導体(PAEA−3’SL)を得た。
PAEA−3’SLの精製は、反応溶液を濃縮乾固後、3mlの水を加え、CM−Sepharose FF(GEヘルスケア バイオサイエンス社)カラム(1.2x5cm)に負荷し、水で溶出した。溶出画分を凍結乾燥した後、Sephadex G−10(GEヘルスケア バイオサイエンス社)カラム(1.5x75cm)を用いて分画した。溶出には水を用いて、5mlずつ集められたフラクションを、薄層クロマトグラフィー(TLC)を用いてモニタリングした。UVランプで蛍光を発し、かつレゾルシノール試薬に陽性であったスポットを含む画分を集め、凍結乾燥した。その画分をTSK GEL AMIDE−80(4μm,4.6x250mm)カラム(TOSOH社)を用いた高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で最終精製を行い、精製PAEA−3’SL画分を得た。HPLCは以下の条件で行った。
溶離液A:50%アセトニトリル−15mMリン酸カリウム緩衝液(pH5.2)
溶離液B:75%アセトニトリル−15mMリン酸カリウム緩衝液(pH5.2)
溶離液B:100%→0%のリニアーグラジエント溶出
検出条件:蛍光検出器(Ex:300nm,Em:360nm)
溶離液に含まれる塩の除去には、Sephadex LH−20(GEヘルスケア バイオサイエンス社)カラム(1.5x60cm)を用いた。
PAEA−3’−SLの反応収率は27%であった。反応生成物の構造は、H−NMR及びHH−COSY NMRを用いて確認した(図2)。
PAEA−3’−SLのHPLC蛍光検出結果を図3に示す。サンプル量は10ng(13pmol)とした。HPLCでは、感度はUV検出(195nm)の数百倍となり、pmolレベルでの分析が可能であることがわかった。反応生成物の蛍光特性は、励起波長Ex:300nm,蛍光極大波長Em:360nmであった。
また、PAEA−3’−SLのMALDI−TOF−MS分析の結果を図4に示す。偽イオンピークの質量数は計算上の理論値と良く一致していた。未修飾成分のマススペクトル(図4中、(a))と比較すると、シアル酸のカルボキシル基の修飾により、飛行しにくい、飛行中に分解しやすい、といった欠点が改善されたことが良くわかる(図4中、(b))。
(実施例2:6’−シアリルラクトース(シアル酸含有糖質)のPAEA化反応)
図5に示す反応スキームに従い、6’−シアリルラクトース(6’−SL)のPAEA化反応を行った。具体的には、6’−シアリルラクトース(6’−SL)(ウシ初乳由来)15mg(24μmol)とPAEA(和光純薬工業)5.5mg(26μmol)に、600μLのEtOH/0.32M NaOH(9:1体積比)を加え、更にDMT−MM(国産化学社)(12.90% 水分)8.3mg(26μmol)を加えた後、室温で3時間放置することにより、6’−SL誘導体(PAEA−6’SL)を得た。
PAEA−6’−SLの反応収率は40%であった。反応生成物の構造は、H−NMR及びHH−COSY NMRを用いて確認した(図6)。
なお、前記実施例1〜2と同様にして得られた各PAEA化シアル酸含有オリゴ糖を、薄層クロマトグラフィー(TLC)により分析した様子を図7に示す(レーン1:3’−SL、レーン2:6’−SLN(6’−シアリルラクトサミン)、レーン3:6’−SL、レーン4:DSL(ジシアリルラクトース)、レーン5:ネガティブコントロール)。なお、図7中、溶媒系1、3、4、5の組成は以下の通りである。
溶媒系1:テトラヒドロフラン/アセトニトリル/1−プロパノール/0.6M酢酸アンモニウム水溶液/28%アンモニア水(5:10:50:35:0.3、体積比)
溶媒系3:アセトン/2−プロパノール/ピリジン/水/酢酸(60:60:10:30:3、体積比)
溶媒系4:テトラヒドロフラン/アセトン/1−ブタノール/2−プロパノール/ピリジン/水/酢酸(10:30:20:60:10:30:3、体積比)
溶媒系5:エタノール/1−ブタノール/ピリジン/水/酢酸(100:10:10:30:3、体積比)
TLC上では、蛍光ランプでの検出と、通常のレソルシノール反応による検出が可能であり、各PAEA化反応物は出発の成分(親成分)より移動度が大きかった(低極性化)(図7)。また、TLCプレートからPVDF膜に転写しても、蛍光は失われることがなかった(図8)。
(実施例3:ガングリオシドGM4(シアル酸含有複合糖質)のPAEA化反応)
図9に示す反応スキームに従い、ガングリオシドGM4のPAEA化反応を行った。具体的には、ガングリオシドGM4(ミンククジラ脳由来)10mg(9μmol)とPAEA(和光純薬工業社)2.3mg(11μmol)に、1mLのPrOH/80mM NaOH(9:1体積比)を加え、更にDMT−MM(国産化学社)7.0mg(22μmol)を加えた後、室温で3時間放置することにより、GM4誘導体(PAEA−GM4)を得た。
PAEA−GM4の精製は、反応溶液を濃縮乾固後、4mlのMeOHを加え、CM−Sepharose FF(GEヘルスケア バイオサイエンス社)カラム(1.2x5cm)に負荷し、MeOHで溶出した。カラム未吸着画分を集め、濃縮後Sephadex LH−20(GEヘルスケア バイオサイエンス社)カラム(1.5x75cm)で分画を行った。溶出はMeOHで行い、3mlずつ分画された各画分をTLCでモニターした。UVランプで蛍光を発し、かつレゾルシノール試薬に反応したスポットを集め、ロータリーエバポレーターで濃縮した。その画分にMeOH/HO(50:50体積比)を少量加え、そこでアルカリ処理を行った。その後、再度濃縮乾固した後、その画分にCHCl/MeOH 9:1を加え、シリカゲル(イヤトロビーズ 6SR 8060、ダイアヤトロン社)カラム(1.2x8cm)に負荷した。そのカラムはCHCl/EtOAc/MeOH 42.5:42.5:15,2:2:1,0:2:1,0:1:1,0:1:2(体積比)と、順にそれぞれ30mlで溶出し、PAEA−GM4を単離した。
PAEA−GM4の反応収率は15%であった。反応生成物の構造は、H−NMR及びHH−COSY NMRを用いて確認した(図10)。
また、PAEA−GM4のMALDI−TOF−MS分析の結果を図11に示す。偽イオンピークの質量数は計算上の理論値と良く一致していた。未修飾成分のマススペクトル(図11中、(a))と比較すると、シアル酸のカルボキシル基の修飾により、飛行しにくい、飛行中に分解しやすい、といった欠点が改善されたことが良くわかる(図11中、(b))。
図11のPAEA−GM4のMSスペクトルは、シアル酸含有複合糖質のシアル酸カルボキシル基を蛍光物質で標識しただけで分解せず、全体そのままを調べた世界で初めての成功例である。そのためM/Z1260のシグナルの前後に観察される分子イオンピークは、セラミドの構成脂肪酸分子種(図12)を良く反映している。
本発明のシアル酸、シアル酸含有糖質、乃至シアル酸含有複合糖質の蛍光標識化方法は、各種クロマトグラフィーや質量分析等、様々な分析手段によりシアル酸含有糖質やシアル酸含有複合糖質を分析、分離精製、構造解析等するための、シアル酸、シアル酸含有糖質、乃至シアル酸含有複合糖質の非破壊的な高感度化技術として、幅広く応用可能である。
図1は、3’−シアリルラクトースのPAEA化反応スキームを示した図である。 図2は、PAEA化3’−シアリルラクトースのH−NMRスペクトルを示した図である。 図3は、PAEA化3’−シアリルラクトースのHPLC蛍光検出結果を示した図である。 図4は、PAEA化3’−シアリルラクトースのMALDI−TOF−MSスペクトルを示した図である。(a)未修飾3’−シアリルラクトース、(b)PAEA化3’−シアリルラクトース。 図5は、6’−シアリルラクトースのPAEA化反応スキームを示した図である。 図6は、PAEA化6’−シアリルラクトースのH−NMRスペクトルを示した図である。 図7は、各PAEA化シアル酸含有オリゴ糖の薄層クロマトグラフィー(TLC)分析像である。レーン1:3’−SL、レーン2:6’−SLN、レーン3:6’−SL、レーン4:DSL、レーン5:ネガティブコントロール。 図8は、PAEA化3’−シアリルラクトースの薄層クロマトグラフィー(TLC)分析像及びTLC−ブロッティング像である。 図9は、ガングリオシドGM4のPAEA化反応スキームを示した図である。 図10は、PAEA化ガングリオシドGM4のH−NMRスペクトルを示した図である。 図11は、PAEA化ガングリオシドGM4のMALDI−TOF−MSスペクトルを示した図である。(a)未修飾GM4、(b)PAEA化GM4。 図12は、図11に示したMALDI−TOF−MSスペクトルから予測されるセラミドの構成脂肪酸分子種を示した図である。

Claims (11)

  1. シアル酸、シアル酸含有糖質、及びシアル酸含有複合糖質の少なくともいずれかにおけるシアル酸のカルボキシル基に、下記一般式(1)で表される化合物を結合させることを特徴とするシアル酸、シアル酸含有糖質、乃至シアル酸含有複合糖質の蛍光標識化方法。
    ただし、前記一般式(1)中、nは2〜4の整数を示す。
  2. シアル酸、シアル酸含有糖質、及びシアル酸含有複合糖質の少なくともいずれかと、一般式(1)で表される化合物及びその塩の少なくともいずれかと、脱水縮合剤とを、溶媒中で混合する工程を含む請求項1に記載のシアル酸、シアル酸含有糖質、乃至シアル酸含有複合糖質の蛍光標識化方法。
  3. シアル酸、シアル酸含有糖質、及びシアル酸含有複合糖質の少なくともいずれかが、シアル酸含有オリゴ糖である請求項1から2のいずれかに記載のシアル酸、シアル酸含有糖質、乃至シアル酸含有複合糖質の蛍光標識化方法。
  4. シアル酸、シアル酸含有糖質、及びシアル酸含有複合糖質の少なくともいずれかが、ガングリオシドである請求項1から2のいずれかに記載のシアル酸、シアル酸含有糖質、乃至シアル酸含有複合糖質の蛍光標識化方法。
  5. 一般式(1)で表される化合物が、2−(2−ピリジルアミノ)エチルアミンである請求項1から4のいずれかに記載のシアル酸、シアル酸含有糖質、乃至シアル酸含有複合糖質の蛍光標識化方法。
  6. 脱水縮合剤が、4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−yl)−4−メチルモルホリニウム塩化物である請求項2から5のいずれかに記載のシアル酸、シアル酸含有糖質、乃至シアル酸含有複合糖質の蛍光標識化方法。
  7. シアル酸、シアル酸含有糖質、及びシアル酸含有複合糖質の少なくともいずれかがシアル酸含有オリゴ糖であり、かつ、溶媒が水、並びに水及びアルコールの混合溶媒の少なくともいずれかである請求項2から6のいずれかに記載のシアル酸、シアル酸含有糖質、乃至シアル酸含有複合糖質の蛍光標識化方法。
  8. シアル酸、シアル酸含有糖質、及びシアル酸含有複合糖質の少なくともいずれかがガングリオシドであり、かつ、溶媒がアルコール、並びに水及びアルコールの混合溶媒の少なくともいずれかである請求項2から6のいずれかに記載のシアル酸、シアル酸含有糖質、乃至シアル酸含有複合糖質の蛍光標識化方法。
  9. 一般式(1)で表される化合物及びその塩の少なくともいずれかを、中性に調整して混合に使用する請求項2から8のいずれかに記載のシアル酸、シアル酸含有糖質、乃至シアル酸含有複合糖質の蛍光標識化方法。
  10. 弱酸性条件下で混合を行う請求項2から9のいずれかに記載のシアル酸、シアル酸含有糖質、乃至シアル酸含有複合糖質の蛍光標識化方法。
  11. 請求項1から10のいずれかに記載のシアル酸、シアル酸含有糖質、乃至シアル酸含有複合糖質の蛍光標識化方法により得られたことを特徴とする蛍光標識化されたシアル酸、シアル酸含有糖質、乃至シアル酸含有複合糖質。
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