JP6048340B2 - 糖ペプチドの分析方法 - Google Patents

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Description

本発明は、質量分析装置を用いた糖ペプチドの分析方法に関する。
ペプチド鎖への糖鎖付加は、翻訳後修飾の中で最も重要なプロセスの1つである。ペプチド鎖に糖鎖が付加した糖タンパク質は、様々な生命現象に関わっている。生体内では、糖鎖のわずかな構造の違いが精密に認識されることによって、細胞間のシグナル伝達や分子認識等が制御されていると考えられており、糖タンパク質や糖ペプチドの構造解析は、生命現象の解明や、創薬、バイオマーカー開発等に大きな貢献をもたらすことが期待される。
タンパク質やDNAの構造解析においては、ISD,CID、IRMPD、ECD、ETD等のイオン開裂法を用いた多段階質量分析(MS/MS分析、またはnが2以上のMS分析)の応用が進んでおり、糖鎖の構造解析においても、多段階質量分析の応用が進んでいる。
タンパク質やDNAでは、その構成素材であるアミノ酸や核酸塩基が所定位置で結合して一列に並んでいるのに対して、糖鎖では、構成素材である単糖のヒドロキシ基の全てがグリコシド結合に関与し得る。そのため、糖鎖は分枝構造を有する場合が多く、例えば、アスパラギン残基に結合したN‐結合型糖鎖は、少なくとも1か所の分枝を有している。したがって、糖鎖の構造解析では、分枝構造を同定し得る分析手法の開発が求められている。
また、N‐結合型糖鎖は、非還元末端にシアル酸を有することが多く、糖鎖の構造解析では、糖鎖中のシアル酸の数や、付加位置を同定することも重要である。しかしながら、MALDIをイオン源とする糖鎖の質量分析においては、シアル酸の脱離が容易に起こるため、シアル酸が付加したままの一次イオンの生成量が小さい。さらに、シアル酸が付加したままの一次イオンをプリカーサイオンとしてCID等によりイオン開裂を行うと、シアル酸の脱離が優先的に生じる。そのため、MS分析では、シアル酸が付加した糖鎖フラグメントはほとんど観測されず、糖鎖中のシアル酸の数や付加位置を決定することは容易ではない。
特許文献1および特許文献2では、シアル酸のカルボキシ基をアミド化して、糖鎖の質量分析を行うことが提案されている。特許文献1では、シアル酸付加イオンをプリカーサイオンとしたMSスペクトルと、シアル酸脱離イオンをプリカーサイオンとしたMSスペクトルから、より詳細な糖鎖構造解析を行うことが提案されている。しかしながら、特許文献1では、分枝を有していない直線状のシアル酸含有糖鎖の分析が行われているのみであり、分枝糖鎖の構造解析は行われていない。また、特許文献2では、分枝を有するシアル酸含有糖鎖を質量分析により検出しているが、MSによる糖鎖の構造解析は行われていない。
さらに、特許文献1および特許文献2のいずれも、遊離糖鎖の分析が行われているのみであり、糖ペプチドの分析は行われていない。遊離糖鎖の分析は、糖鎖構造の解析が容易である反面、糖鎖の由来が明確ではない(例えば、夾雑物に由来する糖鎖を分析している可能性が否定できない)との問題がある。これに対して、糖ペプチド分析は、糖鎖の由来が明確である上に、ペプチド中の糖鎖の付加位置に関する情報も得られるため、付加部位ごとのヘテロな糖鎖構造解析が可能である。
例えば、非特許文献1では、正イオンCIDによるMS分析と負イオンCIDによるMS分析とを併用した糖ペプチド分析により、糖鎖構造を解析することが提案されている。しかしながら、非特許文献1では、0,2XイオンやYイオン等のペプチド鎖部分を含むフラグメントイオンが大量に生成しているのに対して、糖鎖部分のフラグメントイオンの生成効率が極めて低い。また、糖鎖フラグメントとして得られているものは、2,42,4R−1等のフラグメントが大半であり、シアル酸の結合位置や、糖鎖の分枝構造を反映するフラグメントは観測されていない。
一方、非特許文献2では、シアル酸含有糖ペプチドのカルボキシ基をピレン修飾してMS分析を行うことにより、シアル酸の2‐6結合と2‐3結合とを区別可能であり、当該手法をシアル酸の結合様式の解析に応用することが提案されている。非特許文献2ではシアル酸の結合様式の判別は可能であるが、MSスペクトルにおいて、シアル酸が結合したままの糖鎖フラグメントは観測されていない。また、糖鎖の分枝構造を反映するフラグメントも観測されておらず、糖鎖の構造解析手法として十分であるとは言い難い。
特開2005−148054号公報 特開2009−162530号公報
Deguchi, K. et al., Rapid Commun. Mass Spectrom., vol. 20, pp. 741‐746 (2006年) Nishikaze, T. et al., J. Chromatogr., vol. 879, pp. 1419‐1428 (2011年)
上記のように、質量分析による糖ペプチドの解析では、遊離糖鎖の解析とは異なり、ペプチド鎖部分のフラグメントイオンが優先的に生じ、糖鎖部分由来のフラグメントの生成量が小さいため、糖鎖の構造解析が容易ではない。特に、N‐結合型糖鎖等の複雑な糖鎖構造を有する糖ペプチドでは、糖鎖の分枝構造を反映したフラグメントを得ることが困難である。また、シアル酸が付加した糖鎖は、質量分析のイオン化の際にシアル酸の脱離が優先的に生じるため、シアル酸が付加した糖鎖フラグメントイオンが得られ難い。
このように、MS分析による糖ペプチドの構造解析には、様々な課題が残されている。このような現状に鑑み、本発明は、複雑な糖鎖構造を有する糖ペプチドの解析にも応用し得る、糖ペプチドの分析方法の提供を目的とする。
本発明者は、糖ペプチドのMS分析において、糖鎖構造を反映したフラグメントイオンを得るためには、ペプチド鎖部分でのイオン化を抑制して、糖鎖部分で優先的にイオン化を起こすことが必要であると考え、種々の検討をおこなった。その結果、ペプチド鎖および糖鎖に含まれる全てのカルボキシ基を除去または修飾することにより、正イオンモードおよび負イオンモードの両方において、糖鎖構造を反映したフラグメントイオンの生成量および種類が増大し得ることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明は、MSの2乗以上の多段階質量分析に供するための糖ペプチド試料の調製方法、および当該方法により調製された試料を用いた糖ペプチドの質量分析方法に関する。本発明の糖ペプチド試料の調製方法は、糖ペプチドのペプチド鎖および糖鎖に含まれる全てのカルボキシ基が除去または修飾され、カルボキシ基を含まない修飾糖ペプチドを得ることを特徴とする。
ここで、「全てのカルボキシ基」とは、糖ペプチド1分子中の全てのカルボキシ基を意味しており、試料中の全ての糖ペプチド分子が、カルボキシ基を有していなことまでは要求されない。カルボキシ基が残存している糖ペプチドに由来する一次イオンは、全てのカルボキシ基が除去または修飾された分子に由来する一次イオンと質量電荷比(m/z)が異なる。そのため、一部のカルボキシ基が残存した糖ペプチドが存在する場合であっても、これらは、MS分析のためのプリカーサイオン選別の段階で容易に離別できる。なお、後に詳述するように、脱水縮合剤および求核剤を適宜に選択することにより、カルボキシ基の修飾率が100%に近づくため、ほぼ全ての糖ペプチドを、カルボキシ基を有していない修飾糖ペプチドとすることができる。
本発明に用いられる糖ペプチドは、糖鎖部分にシアル酸を含むものでもよい。また、糖ペプチドは、糖鎖部分に分枝構造を含むものでもよい。糖ペプチドは、糖鎖部分に酸性官能基を有していないか、またはカルボキシ基以外の酸性官能基を有していないことが好ましい。
本発明の質量分析用糖ペプチド試料の調製方法では、脱水縮合剤の存在下での求核試薬との反応により、カルボキシ基の修飾がおこなわれることが好ましい。脱水縮合剤としては、例えば、PyAOP等のホスホニウム塩が好ましく用いられる。
本発明の糖ペプチドの分析方法では、上記により試料を調製するステップ、および当該試料をMSの2乗以上の多段階質量分析に供して複数種のフラグメントイオンを得るステップを有する。多段階質量分析測定は、正イオンモード、負イオンモードのいずれでもよい。正イオンモードは、糖鎖のシーケンスの構造解析等に適している。一方、負イオンモードは、糖鎖の分枝構造等の解析に適している。
糖ペプチドとして、糖鎖部分にシアル酸が付加した糖ペプチドが分析に供される場合、糖鎖部分にシアル酸が付加した糖ペプチドの一次イオンをプリカーサイオンとして、MS(nは2以上の整数)多段階質量分析が行われてもよい。この場合、正イオンモードでは、シアル酸が付加した糖ペプチドのフラグメントイオンが得られうる。一方、負イオンモードでは、シアル酸が付加した糖鎖のフラグメントイオンが得られうる。
なお、「MSの2乗以上の多段階質量分析」とは、1段階目(n=1)で試料がイオン化され、2段階目(n=2)以降でイオンが開裂され、開裂されたイオン(フラグメントイオン)を検出する分析方法である。後に詳述するように、インソース開裂(ISD)では、イオン化の際に、1段階でフラグメントイオンが生じる。本明細書においては、ISDのように、イオン化(n=1)と開裂(n=2)とが生じるものを2段階であるとみなし、ISDによるMS分析も「MSの2乗の多段階質量分析」に含まれるものとみなす。ISDによるMSによって、イオン化(n=1)と開裂(n=2)が行われ、これによって生じたフラグメントイオンをプリカーサとして、さらにイオン開裂(MS)を行う場合、ISDによるMSの時点で、一般的な質量分析(ポストソース開裂)によるMSと等価のフラグメントが得られていると解釈できる。そのため、ISDによるMSに引き続いてMS分析を行う方法は、擬似多段階質量分析(Pseudo−MS、nは3以上の整数)とも呼ぶことが出来る。本明細書では、このような擬似多段階質量分析も、「MSの2乗以上の多段階質量分析」に含まれるものとみなす。
本発明によれば、ペプチド鎖および糖鎖に含まれる全てのカルボキシ基が除去または修飾された糖ペプチドを質量分析に供することにより、糖鎖構造を反映したフラグメントが、より効率的に得られる。さらに、負イオンMSスペクトルでは、糖鎖の分枝構造を反映するフラグメントも検出される様になるため、糖ペプチドイオンから、直接的に糖鎖部分の詳細な構造解析が可能となる。
また、糖鎖部分にシアル酸を含む糖ペプチドでは、シアル酸のカルボキシ基もペプチド鎖のカルボキシ基と同様に除去または誘導体化されるため、MALDIによるイオン化やCIDによる開裂の際のシアル酸の優先的な脱離が抑制される。したがって、糖鎖部分にシアル酸を含む糖ペプチドを、本発明の方法により調製し、多段階質量分析に供することで、シアル酸が付加した状態の糖鎖フラグメントイオン、特に分枝構造を反映するフラグメントイオンを得ることが可能となり、より詳細に糖ペプチドの構造解析が可能となる。
メチルアミド化されていないdSGPの正イオンMSスペクトルである。 メチルアミド化後のdSGPの正イオンMSスペクトルである。 メチルアミド化後のdSGPのMSスペクトルである。(a)は正イオンモード、(b)は負イオンモード。 メチルアミド化されていないdSGPのMSスペクトルである。(a)は正イオンモード、(b)は負イオンモード。 メチルアミド化後のdSGPのMSスペクトルである。(a)は正イオンモード、(b)は負イオンモード。(c)は、環状ペプチドをプリカーサとして選択した負イオンモードMSスペクトルである。 メチルアミド化後のdSGPのMSスペクトルである。(a)は正イオンモード、(b)は負イオンモード。 メチルアミド化後のトランスフェリンのトリプシン消化糖ペプチド(脱シアル酸処理)のMSスペクトルである。(a)は正イオンモード、(b)は負イオンモード。 メチルアミド化されていないトランスフェリンのトリプシン消化糖ペプチド(脱シアル酸処理)のMSスペクトルである。(a)は正イオンモード、(b)は負イオンモード。 メチルアミド化されていないSGPの正イオンMSスペクトルである。 メチルアミド化後のSGPの正イオンMSスペクトルである。 メチルアミド化後のSGPのMSスペクトルである。(a)は正イオンモード、(b)は負イオンモード。 メチルアミド化後のトランスフェリンのトリプシン消化糖ペプチドのMSスペクトルである。(a)は正イオンモード、(b)は負イオンモード。
本発明の糖ペプチドの分析方法では、ペプチド鎖に含まれるカルボキシ基を除去または修飾する処理(試料調製)が行われた後、カルボキシ基を有していない試料が、MS分析に供される。
[試料の調製]
<糖ペプチドの種類>
本発明では、分析対象として、糖ペプチドが用いられる。糖ペプチドの種類は特に限定されない。特に、本発明の分析方法は、N‐結合型糖鎖のように、複雑な糖鎖構造を有する糖ペプチドの糖鎖の構造解析に有用である。一実施形態において、上記糖ペプチドは糖鎖部分にシアル酸を含む。また、一実施形態において、上記糖ペプチドは糖鎖部分が分枝構造を有している。
本発明では、MSの2乗以上の多段階質量分析に供するために、糖ペプチド中の試料調製が行われる。本発明では、主に、糖ペプチドの糖鎖の構造解析を目的として、糖ペプチドの質量分析が行われる。糖ペプチドが複数の糖鎖を有していると、フラグメントイオンがいずれの糖鎖に由来するか不明確となる場合がある。そのため、本発明に用いられる糖ペプチドは糖鎖を1本のみ有するものが好ましい。例えば、複数の糖鎖を有する糖タンパク質では、プロテアーゼ消化等によってペプチド鎖を所定位置で切断し、目的とする糖鎖以外の糖鎖を含まない糖ペプチドを用いることが好ましい。また、ペプチド鎖のアミノ酸残基数が多いものは、プロテアーゼ消化等により、質量分析に適した長さにペプチド鎖を切断して用いることが好ましい。質量分析に適した長さとは、例えば、アミノ酸残基数が30以下、好ましくは20以下、より好ましくは15以下である。一方、ペプチドの由来を明確とする観点から、ペプチド鎖のアミノ酸残基数は2以上が好ましく、3以上がより好ましい。
通常、プロテアーゼは、アミノ酸配列を認識し、特定の配列の特定の結合を選択的に切断する。プロテアーゼとしては、トリプシン(塩基性アミノ酸残基(ArgおよびLys)のC末端側でペプチドを切断する)、Lys‐C(Lys残基のC末端側でペプチドを切断する)、アルギニンエンドペプチダーゼ(Arg残基のC末端側でペプチドを切断する)、キモトリプシン(芳香族アミノ酸残基(Phe、TyrおよびTrp)のC末端側でペプチドを切断する)、ペプシン(芳香族残基(Phe、TyrおよびTrp)のN末端側でペプチドを切断する)等が用いられる。なお、プロテアーゼは2種以上を組み合わせて用いることもできる。また、サーモリシンやプロテイナーゼK,プロナーゼEのような特異性の低いプロテアーゼを用いても良い。
プロテアーゼ消化の条件は特に限定されず、使用するプロテアーゼに応じた適宜のプロトコールが採用される。例えば、プロテアーゼの至適pH近傍に調製された緩衝溶液中で、通常37℃程度の温度で、4時間〜20時間程度インキュベートすることが好ましい。プロテアーゼ消化に先だって、試料中のタンパク質およびペプチドの変性処理やアルキル化処理が行われてもよい。変性処理やアルキル化処理の条件は特に限定されず、公知の条件が適宜に採用される。
後に詳述するように、本発明では、イオン化されやすいカルボキシ基を除去または修飾することにより、質量分析において、ペプチド鎖や糖鎖のシアル酸が優先的にイオン化されることが抑止され、従来の方法では観測が困難であった糖鎖部分由来のフラグメントイオンが観測される。糖ペプチドの糖鎖部分に、カルボキシ基以外のイオン化されやすい官能基が含まれている場合は、当該官能基のイオン化が優先的に生じ得るため、MS分析において、糖鎖構造を反映したフラグメントの種類や生成量が減少する傾向がある。
例えば、糖ペプチドが、硫酸化糖鎖やリン酸化糖鎖を含んでいると、プロトンが解離することで硫酸イオンやリン酸イオンを生じやすく、その部分がMS分析において優先的に開裂するために、糖鎖構造を反映したフラグメントが生成し難くなる傾向がある。そのため、糖ペプチドは、糖鎖部分に酸性官能基を有していないか、あるいはカルボキシ基以外の酸性官能基を有していないことが好ましい。ここでの「酸性」とは狭義の酸性であり、カルボキシ基以外の酸性官能基としては、(亜)リン酸基、(亜)硫酸基、(亜)硝酸基が含まれる。単なる水酸基は、酸性官能基には含まれない。
硫酸化糖鎖やリン酸化糖鎖等を含む糖タンパク質あるいは糖ペプチドを分析する場合、これらの酸性官能基を、適宜の方法により除去または修飾した上で、質量分析に供することが好ましい。カルボキシ基以外の酸性官能基の除去操作には、プロテアーゼ消化等により、硫酸化糖鎖やリン酸化糖鎖が付加したペプチド部分を除去し、他の糖鎖(例えばシアル酸含有糖鎖)が付加した糖ペプチド部分を分析対象とすることも含まれる。
<カルボキシ基の除去または修飾>
質量分析に供するための糖ペプチド試料の調製では、ペプチド鎖および糖鎖に含まれる全てのカルボキシ基が除去または修飾される。これにより、カルボキシ基を含まない修飾糖ペプチドが得られる。ペプチド鎖に含まれるカルボキシ基とは、ペプチドのC末端および酸性アミノ酸残基(アスパラギン酸およびグルタミン酸)のカルボキシ基である。糖鎖に含まれるカルボキシ基とは、シアル酸やムラミン酸等の酸性糖に含まれるカルボキシ基である。
カルボキシ基の除去としては、例えば、カルボン酸の脱炭酸のように、α炭素とカルボキシ基のC−C結合を切断する処理や、分子内あるいは分子間のアミノ基との脱水縮合により、アミド結合を形成する処理が挙げられる。カルボキシ基の修飾としては、ハロゲン化、酸無水物化、エステル化、アミド化等が挙げられる。反応の容易性および確実性の観点からは、カルボン酸の修飾が好適である。中でも修飾後の官能基の安定性や副反応の少なさを考慮すると、エステル化およびアミド化が好ましく、アミド化が特に好ましい。
カルボキシ基の除去および修飾は、脱水縮合剤の存在下で行われる。脱水縮合剤は特に限定されないが、反応性が高く、かつ副反応が少ないものが好ましく、例えば、ペプチド合成のカップリング試薬として用いられるものが好適に採用される。
脱水縮合剤の具体例としては、(ベンゾトリアゾール‐1‐イルオキシ)トリス‐(ジメチルアミノ)ホスホニウム(BOP)、ベンゾトリアゾール‐1‐イルオキシトリス(ピロリジノ)ホスホニウムヘキサフルオロフォスフェイト(PyBOP)、ブロモトリス(ピロリジノ)ホスホニウムヘキサフルオロフォスフェイト(PyBroP)、(7‐アザベンゾトリアゾール‐1‐イルオキシ)トリス(ピロリジノ)ホスホニウムヘキサフルオロフォスフェイト(PyAOP)、クロロ‐トリス‐ピロリジノホスホニウムヘキサフルオロフォスフェイト(PyCloP)等のホニウム塩が挙げられる。これらは、「BOP試薬」と総称されるものであり、立体障害が大きい部位に存在するカルボキシ基に対しても、高い反応効率をもたらすことができる。そのため、α2‐3結合で結合したシアル酸のカルボキシ基のように、一般には修飾が困難であるカルボキシ基に対しても、100%に近い収率でアミド化等の修飾を行うことができる。
上記の他に、(1‐シアノ‐2‐エトキシ‐2‐オキソエチリデンアミノオキシ)ジメチルアミノ‐モルホリノ‐カルベニウムヘキサフルオロリン酸塩(COMU)等のホスホニウム塩も脱水縮合剤として用いることができる。その他の脱水縮合剤の例としては、N,N’‐ジシクロへキシルカルボジイミド(DCC)、N‐(3‐ジメチルアミノプロピル)‐N’‐エチルカルボジイミド(EDC)、N,N’‐ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)、1‐tert‐ブチル‐3‐エチルカルボジイミド(BEC)、N,N’‐ジ‐tert‐ブチルカルボジイミド、1,3‐ジ‐p‐トルイルカルボジイミド、ビス(2,6‐ジイソプロピルフェニル)カルボジイミド、ビス(トリメチルシリル)カルボジイミド、1,3‐ビス(2,2‐ジメチル‐1,3‐ジオキソラン‐4‐イルメチル)カルボジイミド(BDDC)等のカルボジイミド類や、これらの塩酸塩;2‐(1H‐ベンゾトリアゾール‐1‐イル)‐1,1,3,3ヘキサフルオロフォスフェイト(HBTU)、2‐(7‐アザベンゾトリアゾール‐1‐イル)‐1,1,3,3ヘキサフルオロフォスフェイト(HATU)、2‐(1H‐ベンゾトリアゾール‐1‐イル)‐1,1,3,3‐テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレイト(TBTU)、2‐(5‐ノルボルネン‐2,3‐ジカルボキシイミド)‐1,1,3,3‐テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレイト(TNTU)、O‐(N‐スクシミジル)‐1,1,3,3‐テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレイト(TSTU)等のテトラメチルウロニウム塩類;ならびに4‐(4,6‐ジメトキシ‐1,3,5‐トリアジン‐2‐イル)‐4‐メチルモルフォリニウム(DMT‐MM)等のトリアジン系縮合剤が挙げられる。
脱水縮合剤が存在すれば、ペプチドのN末端のアミノ基や、塩基性アミノ酸残基(リシンおよびアルギニン)のアミノ基とカルボキシ基とが分子内脱水縮合を生じるため、カルボキシ基の除去が可能である。一方、カルボキシ基の除去をより迅速に行い、かつ分子間脱水縮合等の副反応を抑制する観点から、脱水縮合剤と求核剤の存在下で、カルボキシ基の修飾が行われることが好ましい。
糖ペプチドのカルボキシ基をアミド化するための求核剤としては、アンモニウム、メチルアミン等の1級アミン類、ジメチルアミン等の2級アミン類、トリエチルアミン等の3級アミン類あるいはこれらのハロゲン化塩等が好適に用いられる。その他、アセトヒドラジド等のヒドラジド基を有する求核剤によって、カルボキシ基をヒドラジド修飾することもできる。
上記求核剤の中でも反応性の高さおよび副反応の少なさから、メチルアミン塩酸塩が好適に用いられる。求核剤としてメチルアミン塩酸塩が用いられる場合、縮合剤としてPyAOPを用いると、シアル酸のカルボキシ基も容易にアミド化されるため、特に好ましい。
カルボキシ基が除去または修飾された後の糖ペプチド試料は、必要に応じて、精製、脱塩、可溶化、濃縮、乾燥等の処理が行われても良い。これらの処理は、公知の方法を利用して行うことができる。特に、質量分析において、インソース型のイオン開裂法(詳細は後述)を適用する場合は、MSスペクトルの時点でフラグメントが検出されるため、フラグメントがどのプリカーサに由来するかの判別が困難となる傾向がある。そのため、複数の糖ペプチドが含まれる試料や、他のペプチドとの混合物等の複雑な試料の分析を行う場合は、質量分析に供する前に、液体クロマトグラフ(liquid chromatography: LC)や、固相抽出(solid-phase extraction: SPE)等により、糖ペプチドを分離・濃縮することが好ましい。
LCにより試料の分離を行う場合、質量分析の前段としてLCを備えるLC/MSを用い、LCからの溶出液を直接イオン化しイオン開裂に供しても良い。また、LCからの溶出液を一度分取してから、質量分析に供してもよい。LCのカラムやSPEの担体は特に限定されず、ペプチドの分析に一般的に用いられるC30,C18,C8,C4等の疎水カラムや、親水性アフィニティークロマトグラフィー用の担体等を適宜に選択して用いることができる。また、糖ペプチドの異性体を分離する目的で、カーボンカラムやカーボン担体が用いられてもよい。
本発明の分析方法では、糖ペプチドの全てのカルボキシ基を除去または修飾することにより、以下の利点が得られる。まず、カルボキシ基が除去または修飾されることにより、MALDI等による一次イオン生成の際に、ナトリウムイオン付加等の副反応が抑制される(図1B参照)。そのため、MS分析の対象となるプリカーサイオンの生成量が増大し、分析精度が高められる。また、ペプチド鎖のC末端や、酸性アミノ酸残基部分での優先的な開裂が抑止される。そのため、糖鎖部分でのイオン化が相対的に生じ易くなり、MS分析において、糖鎖部分由来のフラグメントの生成量が増大する。これに伴って、MS分析により観測可能な糖鎖部分由来フラグメントの種類が増大し、糖鎖構造に関するより詳細な情報が得られる。
特に、負イオンMS分析では、非還元末端を含むフラグメント(Aイオン,Bイオン,Cイオン等)の生成量が増大するとともに、従来観測されなかったフラグメントも観測されるようになる。そのため、より詳細な糖鎖の構造解析が可能となる。また、糖鎖が分枝構造を有している場合、後の実施例で示すように、負イオンMS分析において、分枝部分から6−アンテナ側非還元末端の糖鎖構造に由来する「Dイオン」と呼ばれるフラグメントが得られる場合がある(例えば、図2(b)、図9(b)、および図10(b)参照)。また、3−アンテナ側の構造を反映する「Eイオン」というフラグメントが得られる場合もある。このDイオンおよびEイオンの質量電荷比(m/z)と、正イオンMSによる解析結果等を総合することにより、分枝を有する糖鎖の構造決定が可能となる。
糖鎖がシアル酸を有している場合、シアル酸のカルボキシ基も除去または修飾されることにより、一次イオン生成の際のシアル酸の脱離が抑止され(図8B参照)、シアル酸が付加した一次イオンの生成量が増大する。そのため、シアル酸が付加した糖ペプチドの一次イオンをプリカーサイオンとする、MS分析の精度が向上する。
また、従来技術においては、正イオンMS分析で、脱離したシアル酸のフラグメント以外はほとんど観測されず、シアル酸の数や付加位置を特定することは困難であった。これに対して、ペプチド鎖およびシアル酸の全てのカルボキシ基を除去または修飾することにより、シアル酸以外の糖鎖構造を反映するフラグメントが観測されやすくなる。さらに、糖鎖が複数のシアル酸を有している場合、一部のシアル酸が脱離し、残部のシアル酸が脱離していない糖ペプチドのフラグメントイオンも観測される。そのため、シアル酸の数や付加位置等の特定が可能となる。
また、負イオンMS分析においても、シアル酸が付加した状態の糖鎖フラグメンの生成量が増大する。さらに、観測される糖鎖フラグメントの種類が増大し、シアル酸が付加したDイオンも観測される場合がある。そのため、糖鎖の分枝構造とシアル酸の数および付加位置の両方を解析することが可能となる。
[質量分析]
上記調製後の試料は、MSの2乗以上の多段階質量分析に供される。質量分析のイオン化法としては、マトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)法、エレクトロスプレーイオン化(ESI)やナノエレクトロスプレーイオン化(nano−ESI)法等が挙げられる。特に、MALDI法が好適である。
多段階質量分析におけるイオン開裂法は、ポストソース型とインソース型に分類される。ポストソース型のイオン開裂法としては、ポストソース分解(Post Source Decay; PSD)、衝突誘起解離(Collision Induced Dissociation; CID)、赤外多光子解離(infrared multiphoton dissociation; IRMPD)、表面誘起解離(surface-induced dissociation; SID)、および光誘起解離(photo-induced dissociation; PID)等が挙げられる。また、電子捕獲解離(electron-capture dissociation; ECD)、電子移動解離(electron-transfer dissociation; ETD)、電子脱離解離(electron-detachment dissociation; EDD)およびそれらに準じる奇数電子誘発型の解離技術が用いられても良い。
CID、IRMPD、PIDおよび上記の奇数電子誘発型の解離を実施可能な質量分析装置としては、衝突室、又は衝突室の機能を持つ四重極もしくはイオントラップを有する質量分析装置が挙げられる。具体的には、イオントラップ型質量分析計、二重収束型質量分析計、三連四重極型質量分析計、四重極飛行時間型質量分析計、四重極−イオントラップ型質量分析計、四重極−フーリエ変換型質量分析計、四重極−オービトラップ型質量分析計、イオントラップ−飛行時間型質量分析計、飛行時間型−飛行時間型質量分析計等が挙げられる。PSDを実施可能な質量分析装置としては、具体的には飛行時間型質量分析計が挙げられる。
インソース開裂(in-source dissociation; ISD)としては、イオン化の際に用いるイオン化補助物質(例えばMALDI法の際のマトリックス等)との相互作用に基づいて開裂させる方法、イオン化の際に用いるレーザーや電圧の付加を高めることによって開裂を誘発する方法、イオン化直後にイオン化室内で残存ガスとの衝突により開裂を誘発する方法等が挙げられる。ISDではイオン化の際に1段階でフラグメントイオンが生じる。そのため、ISDを利用した分析技術は、MSで生じたイオンをプリカーサとして選択してMS以降で開裂を生じさせる多段階質量分析技術とは厳密な意味では異なる。しかし、対象試料の分解物を生成させる点で、ISDはイオン開裂法と等価であるため、本発明においてはISDで生じたフラグメントのMS分析も、「MSの2乗の多段階質量分析」に含まれるものとみなす。
ISDを実施する場合、上記の衝突室または衝突室の機能を有する質量分析装置に加えて、四重極型、飛行時間型質量分析計、磁場型質量分析計等のように衝突室の機能を持たない質量分析計を用いても良い。
ISDにより生じたフラグメントイオンをプリカーサとしてさらにイオン開裂を生じさせ、多段階質量分析(MS、nは2以上の整数)を行うことで、より詳細な構造解析を行うことも出来る。この場合、インソース型とポストソース型を組み合わせても良い。ISDによって生じたフラグメントイオンをプリカーサとしてさらにイオン開裂を行う場合、ISDによるMSの時点で、一般的なMSと等価のフラグメントが得られていると解釈できる。そのため、この方法は、擬似多段階質量分析(Pseudo−MS、nは3以上の整数)とも呼ぶことが出来る。
本発明において、多段階質量分析測定は、正イオンモード、負イオンモードのいずれでもよい。正イオンモードのMS分析は、糖鎖のシーケンスの特定に適している。また負イオンモードのMS分析は、分枝構造や、シアル酸付加位置の特定に適している。一般に、負イオンモードは、正イオンモードに比してイオン化が生じ難いため、脱プロトン化によって負イオンを生じ易いカルボキシ基等の酸性官能基部分でイオン化させることが行われている。これに対して、本発明は、負イオン化を生じ易いカルボキシ基を敢えてブロックすることにより、他の糖鎖部分でのイオン化を生じさせ、従来は観測が困難であった糖鎖構造を反映するフラグメントを観測可能としたものである。
負イオンモードにおいては、イオン化を促進するためにアニオン付加によるイオン化を採用してもよい。例えば、一次イオンとして、糖ペプチド(M)にリン酸イオン(HPO )が付加した[M+HPOイオンや、当該リン酸付加イオンが脱水した[M+POイオンを生じさせ、これをプリカーサイオンとして負イオンMS分析が行われてもよい。
正イオンMS分析では、ペプチド鎖から糖鎖が脱離したペプチドフラグメント(例えば、[Peptide+H]イオン)が得られる。このペプチドフラグメントをプリカーサとして、さらにMS分析(nは3以上の整数)に供することにより、ペプチドのアミノ酸配列を同定することもできる。ペプチド鎖のアミノ酸配列を同定することにより、糖鎖がどの糖タンパク質のどの糖ペプチド由来であるかを確認できる。
これらの多段階質量分析により得られたデータから、糖鎖の構造解析が行われる。例えば、正イオンMSスペクトルと負イオンMSスペクトルを総合して、糖鎖のシーケンスや分枝構造、シアル酸の付加位置等が特定され得る。また、シアル酸を除去した糖ペプチドをプリカーサイオンとしたMSスペクトルと、シアル酸を除去せずそのカルボン酸を除去または修飾した糖ペプチドをプリカーサとしたMSスペクトルを総合して、糖鎖の構造解析が行われてもよい。糖鎖の構造解析は、スペクトルデータを用いたデータベース検索によりおこなうこともできる。
以下に、実施例を示して、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。なお、以下において、%の記載は特に断りがない限り重量%を表す。
[糖ペプチドの調製]
(シアリルグリコペプチド)
シアリルグリコペプチド(SGP)は、東京化成工業より購入したものをそのまま用いた。また、SPGを0.8%トリフルオロ酢酸(TFA)水溶液に溶解し、80℃で45分間処理して、糖鎖のN‐アセチルノイラミン酸を完全に除去することにより、脱シアル酸シアリルグリコペプチド(dSGP)を得た。
(トランスフェリン由来糖ペプチド)
SIGMAより購入したTransferrinを、尿素:6M、重炭酸アンモニウム:50mM、およびトリス(2‐カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩(TCEP):5mMの存在下、室温で45分反応させ、変性および還元を行った。次いで、ヨードアセトアミド(IAA):10mMの存在下、室温遮光条件下で45分反応させアルキル化を行った後、ジチオスレイトール(DTT):10mM存在下、室温遮光条件下で45反応させ、余剰のIAAを不活性化した。その後、トリプシンを加え、37℃で一夜反応させ、プロテアーゼ消化を行った。消化後、カーボンカラムを用いて脱塩を行った。
得られた試料を二分割し、そのうち一方を0.8%TFA存在下、80℃で45分間処理して、糖鎖のN‐アセチルノイラミン酸を完全に除去して、脱シアル酸ペプチドを得た。
[実施例1]メチルアミド化dSGPの質量分析
(セルロースマイクロチップの作製>
200μLのマイクロピペットチップの先端に、少量のコットンを詰め、その上に1mgのセルロースパウダーを加えた。得られたセルロースマイクロチップに上から水100μLを加え、上方からシリンジで空気を送り、下方(チップ先端)から排出した。これを2回繰り返した。さらに50%アセトニトリル(ACN)、0.1%TFA水溶液100μLで2回、80%ACN、0.1%TFA水溶液で2回、同様の操作を行い、セルロースマイクロチップの洗浄および平衡化を行った。
(dSGPのメチルアミド化)
40pmolのdSGPをマイクロチューブ内に乾固し、そこに1Mのメチルアミン塩酸塩および0.5Mのメチルモルフォリンを含むDMSO溶液10μLを加えて、dSGPを溶解させた。次に、100mMの(7‐アザベンゾトリアゾール‐1‐イルオキシ)トリス(ピロリジノ)ホスホニウムヘキサフルオロフォスフェイト(PyAOP)を含むDMSO溶液10μLを加えて混合し、室温で1時間反応させた。
(測定用試料の調製)
反応終了後の試料に、100μLのACNを加えて溶解させ、これを洗浄・平衡化したセルロースマイクロチップに加え、上から空気を送り下から排出した。排出した溶液を再度セルロースマイクロチップに加えて同様に排出し、これをさらにもう一回繰り返した。次に、セルロースマイクロチップに、80%ACN,0.1%TFA水溶液を100μL加え、下から排出して洗浄した。これを3回繰り返した。最後に、50%ACN,0.1%TFA水溶液を20μL加えて、セルロースマイクロチップからdSGPを溶出した。これを2回繰り返し、これらの溶出液をあわせて乾固した。
(質量分析)
得られた試料を水に再溶解し、MALDIプレート上でp−クマル酸と1,1,3,3−テトラメチルグアニジンからなる液体マトリクス(GCA)と混合し、MALDI‐MS分析装置(島津製作所製、AXIMA(登録商標)‐Resonance)により質量分析を行った。
[比較例1]
dSGPのメチルアミド化を行わず、dSGPを水に溶解したものを試料として、上記実施例1と同様にして質量分析に供した。
[実施例1と比較例1の対比]
(MSの対比)
図1Aは比較例1(メチルアミド化なし)のdSGPの正イオンMSスペクトルであり、図1Bは実施例1(メチルアミド化後)のdSGPの正イオンMSスペクトルである。比較例1では、プロトンが付加した一次イオンのm/zが2283であるのに対して、実施例1では一次イオンのm/zが2296に増加している。その差13は、−NHCH基とOH基との質量差に等しい。また、実施例1では、m/z=2283のピークがほとんど観測されなかったことから、ペプチド鎖のC末端(Lys残基)のカルボキシ基がほぼ完全にメチルアミド化されていることがわかる。
さらに、実施例1では、比較例1に比して、Naイオンが2個付加した一次イオンの生成量が減少しており、m/z=2296の一次イオンの生成量が増加していることがわかる。すなわち、実施例1では、カルボキシ基のメチルアミド化によって、MALDIによるイオン化の際のナトリウム付加が抑制され、MS分析に供する一次イオン(プリカーサイオン)の生成量が増大するために、分析精度を向上し得ることがわかる。
(正イオンMSの対比)
図2(a)は、実施例1(メチルアミド化後)のdSGPの正イオンMSスペクトルであり、図3(a)は、比較例1(メチルアミド化なし)のdSGPの正イオンMSスペクトルである。図2(a)の各フラグメントは、図3(a)の各フラグメントに比して、m/zが13増加していることから、実施例1では、ペプチド鎖のカルボキシ基がメチルアミド化されたフラグメントが観測されていることがわかる。実施例1で得られたm/z=673.5のフラグメントをさらにMS分析に供したところ、ペプチドが、アミノ酸配列:KVANKTを有していることが確認された(データ不図示)。
(負イオンMSの対比)
図2(b)は、実施例1(メチルアミド化後)のdSGPの負イオンMSスペクトルであり、図3(b)は、比較例1(メチルアミド化なし)のdSGPの負イオンMSスペクトルである。図3(b)では、ペプチド鎖部分由来のフラグメントである0,2Xイオンの生成量が多く、糖鎖構造を反映するフラグメントとして観測されたのは、2,4イオン、および2,4R−1イオン(R=6)の2種のみであった。一方、図2(b)では、0,2Xイオンは観測されず、2,4イオン、および2,4R−1イオンの生成量が増大している。また、図2(b)では、2,42,4R−1に加えて、糖鎖部分に由来するフラグメントとして0,2R−10,3、B、C、C、およびDイオンが観測された。
このDイオンは、Gal‐GlcNAc‐Man‐Manに相当する質量電荷比m/z=688を有しており、糖鎖の分枝構造を反映するフラグメントである。このDイオンのm/zの値と、図2(a)の正イオンMSスペクトルから得られる分枝部分の糖鎖のシーケンス情報に基づいて、分枝を有する糖鎖の構造の特定が可能となる。
以上、実施例1と比較例1との対比から、糖ペプチドのカルボキシ基を脱水縮合剤の存在下でメチルアミド化することにより、プリカーサイオンとなる一次イオンの生成量が増大して分析精度が向上する。さらに、負イオンMSにおいて観測される糖鎖部分由来のフラグメントが増大するため、糖鎖構造に関するより詳細な情報が得られることが分かる。特に、カルボキシ基を修飾することで、分枝構造を反映するフラグメントであるDイオンが観測されることから、本発明の方法は、分枝構造を有する糖鎖の構造解析に適していることがわかる。
(他の求核試薬を用いた例)
実施例1において、メチルアミン塩酸塩に代えて塩化アンモニウムを用い、カルボキシ基をアミド化して、同様の測定を行った。正イオン測定においてプリカーサイオンのm/zは2282、負イオン測定においてプリカーサイオンのm/zが2280であった。負イオンMS測定では、実施例1と同様に、Dイオンを含む糖鎖構造を反映する多数のフラグメントが観測された(データ不図示)。
また、メチルアミン塩酸塩に代えてジメチルアミン塩酸塩を用いてカルボキシ基をジメチルアミド化した場合も、実施例1と同様に、負イオンMS測定において、Dイオンを含む糖鎖構造を反映する多数のフラグメントが観測された(データ不図示)。ジメチルアミド化の場合、正イオン測定におけるプリカーサイオンのm/zは2310、負イオン測定においてプリカーサイオンのm/zは2308であった。
これらの結果から、求核試薬の種類に関係なく、カルボキシ基が修飾されることにより、プリカーサイオン量の増大、および負イオン測定における糖鎖部分由来フラグメント種増大の効果が得られ、糖ペプチドの糖鎖構造に関するより詳細な情報が得られることが分かる。
[実施例2]
<脱水縮合剤としてDMT‐MMを用いた例>
40pmolのdSGPをマイクロチューブ内に乾固し、そこに1Mのメチルアミン塩酸塩水溶液を20μL加え溶解させた。次いで1Mの塩化4‐(4,6‐ジメトキシ‐1,3,5‐トリアジン‐2‐イル)‐4‐メチルモルホリニウム(DMT‐MM)水溶液を加えて攪拌し、50℃で16時間反応させた。反応終了後の試料に、ACNおよびTFAを、80%ACN、0.1%TFAとなるように加え、実施例1と同様に、セルロースマイクロチップを用いて精製および脱塩を行った後、質量分析を行った。分析結果を図4に示す。
図4(a)は、正イオンMSスペクトルである。図1Bと同様に、ペプチドのC末端がメチルアミド化されたm/z=2296のイオンが観測された。その他に、m/z=2278m/z=2265、およびm/z=2247にピークが観測された。これらのイオンをプリカーサとして正イオンMS分析をおこなったところ、ペプチドのC末端とN末端が脱水縮合した環状ペプチドであり、m/z=2278のイオンはメチルアミド化体からさらに1分子の水が脱離したペプチド、m/z=2265のイオンはメチルアミド化を生じずに分子内脱水のみが生じた環状ペプチドに由来するイオンであることがわかった。また、m/z=2247のイオンは、分子内脱水のみが生じた環状ペプチドからさらに1分子の水が脱離したものに由来するイオンであることがわかった。本例においては、メチルアミンに加えて、ペプチドのN末端またはリジン残基側鎖のアミノ基が求核剤として作用して、分子内脱水縮合が生じたと考えられる。この結果から、DMT−MM等の脱水剤を用いた場合は、ペプチドの分子内脱水によるアミド化が生じ得るため、求核剤を用いることなくカルボキシ基の除去が可能であることがわかる。
図4(b)は、メチルアミド化された糖ペプチドの負イオン(m/z=2294)をプリカーサイオンとして測定したMSスペクトルであり、図4(c)は、メチルアミド化されていない環状ペプチドの負イオン(m/z=2263)をプリカーサイオンとして測定したMSスペクトルである。図4(b)、図4(c)のいずれにおいても、図3(b)と同様に、Dイオンを含む糖鎖構造を反映する多数のフラグメントが観測された。また、メチルアミド化に加えて分子内脱水が生じたペプチドの負イオン(m/z=2276)およびメチルアミド化されず分子内で2分子の水が脱水したペプチドの負イオン(m/z=2245)をプリカーサイオンとして測定したMS2スペクトルにおいても、図4(b)、図4(c)と同様に、Dイオンを含む多数の糖鎖由来フラグメントが観測された(データ不図示)。
また、求核試薬として、メチルアミン塩酸塩に代えて、塩化アンモニウムを用いた場合、およびジメチルアミン塩酸塩を用いた場合も、図4(a)〜(c)に示すのと同様のMSスペクトルが得られた(データ不図示)。
[実施例3]
<脱水縮合剤としてEDCを用いた例>
40pmolのdSGPをマイクロチューブ内に乾固し、そこに1Mのアセトヒドラジド水溶液(pH2.5)を50μL加え溶解させた。次いで4MのN‐(3‐ジメチルアミノプロピル)‐N’‐エチルカルボジイミド(EDC)水溶液を加えて攪拌し、室温で1時間反応させた。その後、再度EDC水溶液を加えて1時間反応させることを3回繰り返し、合計4時間反応させた。反応終了後の試料に、ACNおよびTFAを、80%ACN、0.1%TFAとなるように加え、実施例1と同様に、セルロースマイクロチップを用いて精製および脱塩を行った後、質量分析を行った。分析結果を図5に示す。
図5(a)は、正イオンMSスペクトルである。修飾前よりもm/zが56大きいm/z=2339の一次イオンが得られており、ペプチド鎖のC末端のカルボキシ基がアセトヒドラジド化されていることがわかる。
図5(b)は、カルボキシ基がアセトヒドラジド化された糖ペプチドの負イオン(m/z=2337)をプリカーサイオンとして測定したMSスペクトルである。図2(b)と同様に、Dイオンを含む糖鎖構造を反映する多数のフラグメントが観測された。
[実施例1〜3の対比]
上記実施例1〜3によれば、脱水縮合剤や求核剤の種類に関わらず、糖ペプチドのカルボキシ基を修飾することによって、MALDIによるイオン化の際の副反応が抑制され、MS分析の対象となるプリカーサイオンの生成量が増大することが分かる。これは、MALDIによるイオン化の際にナトリウム付加が生じやすいカルボキシ基が修飾されたことに起因すると考えられる。また、負イオンのMSスペクトルでは、ペプチド鎖部分に由来するXイオンの量が減少し、糖鎖部分由来のフラグメントイオンの種類および量が増大している。これは、負イオン化されやすいカルボキシ基が修飾されたことによって、糖鎖部分でのイオン化が相対的に生じやすくなったことに関連していると推定される。その結果として、従来は観測が困難であったDイオンを含む糖鎖部分由来フラグメントが観測されるようになり、糖鎖構造に関するより詳細な情報が得られるようになった。
中でも、脱水縮合剤としてBOP試薬の一種であるPyAOPを用いた実施例1では、ペプチド鎖部分での副反応がほとんどなく、カルボキシ基のアミド化率が100%に近いため、MS分析に供されるプリカーサイオンの量が増大する。さらに、MS分析において、ペプチド部分のフラグメントイオン(0.2Xイオン)がほとんど生成しておらず、糖鎖部分のフラグメントのシグナル強度が増大するとの結果が得られた。そのため、PyAOP等のBOP試薬の存在下でのカルボキシ基のアミド化は、実用性に優れており、特に好ましい実施形態であるといえる。
[実施例4]
実施例4では、dSGPに代えて、脱シアル酸処理したトランスフェリンのトリプシン消化糖ペプチド用い、実施例1と同様にPyAOPとメチルアミン塩酸塩を用いて、カルボキシ基のメチルアミド化を行い、精製および脱塩を行った後、質量分析を行った。正イオンMSスペクトルを図6(a)、負イオンMSスペクトルを図6(b)に示す。
[比較例2]
比較例2では、メチルアミド化を行わず、脱シアル酸処理したトランスフェリンのトリプシン消化糖ペプチドを水に溶解したものを、質量分析に供した。正イオンMSスペクトルを図7(a)、負イオンMSスペクトルを図7(b)に示す。
[実施例4と比較例2の対比]
正イオンMSスペクトルにおいて、図6(a)の各フラグメントは、図7(a)の各フラグメントに比して、m/zが26増加しており、2個のカルボキシ基がメチルアミド化されている。すなわち、実施例4では、ペプチドのC末端(Lys残基)のカルボキシ基に加えて、Glu残基のカルボキシ基もほぼ完全にメチルアミド化されていることがわかる。
負イオンMSスペクトルにおいて、図7(b)では、糖鎖構造を反映するフラグメントとして観測されたのは、2,4イオン、および2,4R−1イオン(R=6)の2種のみであった。一方、図6(b)では、糖鎖構造を反映するフラグメントとして、2,42,4R−1に加えて、0,2R−1、および2,4R−1/Yイオンが観測されており、糖鎖構造に関するより詳細な情報が得られている。
[実施例5]
実施例5では、dSGPに代えて、脱シアル酸処理されていないSGPを用い、実施例1と同様にPyAOPとメチルアミン塩酸塩を用いて、カルボキシ基のメチルアミド化を行い、精製および脱塩を行った後、質量分析を行った。正イオンMSスペクトルを図8Aに示す。また、正イオンMSスペクトルを図9(a)、負イオンMSスペクトルを図9(b)に示す。
[比較例3]
SGPのメチルアミド化を行わず、SGPを水に溶解したものを、上記実施例5と同様にして質量分析に供した。正イオンMSスペクトルを図8Bに示す。
[実施例5と比較例3の対比]
(MSの対比)
図8Aは比較例3(メチルアミド化なし)のSGPの正イオンMSスペクトルであり、図8Bは実施例5(メチルアミド化後)のSGPの正イオンMSスペクトルである。比較例3では、プロトンが付加した一次イオンのm/zが2865であるのに対して、実施例5では一次イオンのm/zが39増加して、2904となっており、糖ペプチドの3個のカルボキシ基、すなわち、ペプチドのC末端(Lys残基)のカルボキシ基に加えて、2個のシアル酸のカルボキシ基の全てがほぼ完全にメチルアミド化されていることがわかる。
また、図8Aでは、ナトリウムイオン付加体の生成に加えて、1個または2個のN‐アセチルノイラミン酸が脱離した一次イオンが生成している。一方、図8Bでは、ナトリウムイオン付加体の生成量が減少していることに加えて、シアル酸が脱離した一次イオンがほとんど生成していない。この結果から、ペプチド鎖のカルボキシ基およびシアル酸のカルボキシ基の全てが修飾されることにより、糖鎖部分にシアル酸が付加した糖ペプチドの一次イオンの生成量が増大するため、この一次イオンをプリカーサイオンとするMS分析の精度が向上することが分かる。
(正イオンMS分析)
図9(a)では、プリカーサイオンから1個のN‐アセチルノイラミン酸が脱離したm/z=2601のフラグメントイオン、および2個のN‐アセチルノイラミン酸が脱離したm/z=2298のフラグメントイオンに加えて、m/z=2236のフラグメントイオンが観測されている。このことから、N‐アセチルノイラミン酸の還元末端側には、GalおよびGlcNACが付加していることが確認できる。このように、本発明では、糖鎖部分にシアル酸が付加した糖ペプチドの一次イオンをプリカーサイオンとする、正イオンMS分析により、シアル酸が付加した糖ペプチドのフラグメントイオンが得られ、より詳細な糖鎖の構造解析が可能となる。
(負イオンMS分析)
図9(b)では、0,2Xイオンはほとんど観測されず、2個のシアル酸のそれぞれのカルボキシ基がメチルアミド修飾された2,42,4R−1、および0,2R−1イオン、ならびに1個のシアル酸のカルボキシ基がメチルアミド修飾されたBイオン、Cイオン、およびDイオンが観測された。このDイオンは、Neu5Ac‐Gal‐GlcNAc‐Man‐Manに相当する質量電荷比m/z=992を有しており、糖鎖の分枝構造を反映するとともに、分枝の非還元末端にシアル酸(Neu5Ac)が付加していることを示すフラグメントである。このように、本発明によれば、負イオンMS分析よりシアル酸が付加したDイオンが得られることから、シアル酸含有糖ペプチドの解析においては、糖鎖の分枝構造に加えて、シアル酸の付加位置やシアル酸の数の特定も可能となる。
[実施例6]
実施例6では、脱シアル酸処理されていないトランスフェリンのトリプシン消化糖ペプチド用い、実施例1と同様にPyAOPとメチルアミン塩酸塩を用いて、カルボキシ基のメチルアミド化を行い、精製および脱塩を行った後、質量分析を行った。正イオンMSスペクトルを図10(a)、負イオンMSスペクトルを図10(b)に示す。
図10(a)の正イオンMSスペクトルでは、1個のN‐アセチルノイラミン酸とGalが脱離したm/z=3267のフラグメントイオン、およびそこからさらにGLcNAcが脱離したm/z=3064のフラグメントイオンが観測されている。このことから、糖鎖が、非還元末端側から、Neu5Ac‐Gal‐GlcNAcのシーケンスを有していることがわかる。
また、図10(b)の負イオンMSスペクトルでは、2個のシアル酸のそれぞれのカルボキシ基がメチルアミド修飾された、2,4および2,4R−1イオンが観測された。図10(b)では、非還元末端から1個のシアル酸が脱離した2,4/Yイオンも観測されたが、実施例5と同様に、糖鎖の分枝構造を反映し、かつ非還元末端にシアル酸(Neu5Ac)が付加しているDイオンが高ピーク強度で観測された。
以上の結果から、本発明によれば、ペプチド鎖の構造に関わらず、糖ペプチドの全てのカルボキシ基を除去または修飾することにより、多段階質量分析により、より高精度かつ詳細に糖鎖の構造解析が可能であることがわかる。

Claims (7)

  1. 糖鎖部分に分枝構造を含む糖ペプチドの分析方法であって
    脱水縮合剤の存在下で、糖ペプチドのペプチド鎖および糖鎖に含まれる全てのカルボキシ基が除去または修飾され、カルボキシ基を含まない修飾糖ペプチドを得るステップ;および
    前記修飾糖ペプチドを、負イオンモードのMSの2乗以上の多段階質量分析に供するステップを有し、
    前記多段階質量分析において、修飾糖ペプチドの一次イオンをプリカーサイオンとして、糖鎖の分枝部分からその非還元末端の糖鎖構造に由来するフラグメントイオンを得て、
    前記フラグメントイオンのm/zの値に基づいて、糖ペプチドの糖鎖の分枝構造を決定する、分析方法。
  2. 前記糖ペプチドは、糖鎖部分にシアル酸を含む、請求項1に記載の分析方法。
  3. 記フラグメントイオンは、シアル酸が付加した糖鎖のフラグメントイオンを少なくとも1種含む、請求項に記載の分析方法。
  4. 前記糖ペプチドは、糖鎖部分に酸性官能基を有していないか、または糖鎖部分にカルボキシ基以外の酸性官能基を有していない、請求項1〜3のいずれか1項に記載の分析方法。
  5. 脱水縮合剤の存在下での求核試薬との反応により、前記カルボキシ基の修飾がおこなわれる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の分析方法。
  6. 前記求核試薬が、アンモニウム、アミン、およびこれらのハロゲン化塩からなる群から選択される1以上である、請求項5に記載の分析方法。
  7. 前記脱水縮合剤が、ホスホニウム塩である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の分析方法。
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