以下、添付の図面を参照して、本発明を実施する形態について説明する。なお、以下の実施例において示す構成は一例に過ぎず、本発明は図示された構成に限定されるものではない。
[実施例1]
<画像形成装置>
図1は、本実施例に係る画像形成装置の構成概略図である。光走査装置400内のレーザ駆動部300は、画像信号生成部100から出力された画像信号、および制御部200から出力される制御信号に基づき、破線の矢印410で示す走査光(レーザ光)を感光ドラム500に向けて発する。そして、不図示の帯電装置により帯電された感光ドラム(感光体)500をレーザ光410で走査し、感光ドラム500の表面に潜像を形成する。そうして形成された潜像に不図示の現像装置によってトナーを付着させ、潜像に対応したトナー像を形成する。トナー像は、給紙ユニット900から給送されローラ600で感光ドラム500と接触する位置に搬送された紙等の記録媒体に転写される。記録媒体に転写されたトナー像は、定着器700で記録媒体に熱定着され、排紙ローラ800を経て、機外に排出される。
<光走査装置>
図2は、本実施例に係る光走査装置400の断面図であり、図2A(a)は主走査断面を、図2(b)は副走査断面を示している。
本実施例において、光源401から出射したレーザ光(光束)410は、開口絞り402によって楕円形状に整形されてカップリングレンズ403に入射する。カップリングレンズ403を通過した光束は、略平行光に変換されて、アナモフィックレンズ404に入射する。アナモフィックレンズ404は、主走査断面内において正の屈折力を有しており、入射するレーザ光を主走査方向に収束する。また、アナモフィックレンズ404は、副走査断面内において偏向器405の偏向面405aの近傍に光束を集光しており、主走査方向に長い線像を形成している。
そして、アナモフィックレンズ404を通過した光束は、偏向器(ポリゴンミラー)405の偏向面(反射面)405aにて反射される。反射面405aで反射した光束は、走査光410(図1参照)として、結像レンズ406を透過し、感光ドラム500の表面に入射する。結像レンズ406は結像光学素子である。本実施例においては、単一の結像光学素子(結像レンズ406)のみで結像光学系が構成されている。結像レンズ406を通過(透過)したレーザ光が入射する感光ドラム500の表面は、光束によって走査される被走査面407である。結像レンズ406によって被走査面407上で光束が結像し、所定のスポット状の像(スポット)を形成する。偏向器405を不図示の駆動部により矢印A方向に一定の角速度で回転させることにより、被走査面407上でスポットが主走査方向に移動し、被走査面407上に静電潜像を形成する。なお、主走査方向とは、感光ドラム500の表面に平行で且つ感光ドラム500の表面の移動方向に直交する方向である。副走査方向とは、主走査方向及び光束の光軸に直交する方向である。
ビームディテクト(以下、BDと称す)センサ409とBDレンズ408は、被走査面407上に静電潜像を書き込むタイミングを決定する同期用光学系である。BDレンズ408を通過したレーザ光は、フォトダイオードを含むBDセンサ409に入射し検知される。BDセンサ409は、レーザ光を受光したことに応じて同期信号を生成する。本実施例の画像形成装置は、BDセンサ409による同期信号の生成タイミングを基準に1走査周期の画像データに基づくレーザ光の露光開始タイミングを制御する。
なお、上述した光源401、カップリングレンズ403、アナモフィックレンズ404、結像レンズ406、偏向器405等の各種光学部材は、筐体(光学箱)に収納される。
<結像レンズ>
図2に示すように、結像レンズ406は、入射面(第1面)406a及び出射面(第2面)406bの2つの光学面(レンズ面)を有する。結像レンズ406は、主走査断面内において、偏向面405aにて偏向されたレーザ光を、被走査面407上を所望の走査特性で走査させる構成となっている。また、結像レンズ406は、被走査面407上でのレーザ光410のスポットを所望の形状にする構成となっている。また、結像レンズ406により、副走査断面内においては、偏向面405aの近傍と被走査面407の近傍とを共役の関係となっている。これにより、面倒れを補償(偏向面405aが倒れた際の被走査面407上での副走査方向の走査位置ずれを低減すること)する構成となっている。
結像レンズ406は、所謂fθ特性を有していない。つまり、偏向器405が等角速度で回転している時に、結像レンズ406を通過する光束のスポットを被走査面407上で等速に移動させるような走査特性を有していない。このように、fθ特性を有さない結像レンズ406を用いることにより、結像レンズ406を偏向器405に近接して(距離D1が小さい位置に)配置することが可能となる。また、fθ特性を有さない結像レンズ406は、fθ特性を有する結像レンズよりも、主走査方向(幅LW)及び光軸方向(厚みLT)に関して小さくできる。これにより、光走査装置400の筐体の小型化が可能になる。また、fθ特性を有するレンズの場合、主走査断面で見た時のレンズの入射面、出射面の形状に急峻な変化がある場合があり、そのような形状の制約によって良好な結像性能を得られない可能性がある。これに対して、fθ特性を有さない結像レンズ406では、主走査断面で見た時のレンズの入射面、出射面の形状に急峻な変化が少ない為、良好な結像性能を得ることができる。
このような、fθ特性を有さない結像レンズ406の走査特性は、以下の式(1)で表される。
上記式(1)では、偏向器405による走査角度(走査画角)をθ、光束の被走査面407上での主走査方向の集光位置(像高)をY[mm]、軸上像高における結像係数をK[mm]、結像レンズ406の走査特性を決定する係数(走査特性係数)をBとしている。なお、本実施例において、軸上像高は、光軸上の像高(Y=0=Ymin)を指し、走査角度θ=0に対応する。また、軸外像高は、中心光軸(走査角度θ=0の時)よりも外側の像高(Y≠0)を指し、走査角度θ≠0に対応している。さらに、最軸外像高とは、走査角度θが最大(最大走査画角)となる時の像高(Y=+Ymax、−Ymax)を指す。なお、被走査面407上の潜像を形成可能な所定の領域(走査領域)の主走査方向の幅である走査幅WはW=|+Ymax|+|−Ymax|で表される。所定の領域の中央が軸上像高で端部が最軸外像高となる。
ここで、結像係数Kは、結像レンズ406に平行光が入射する場合の走査特性(fθ特性)Y=fθにおけるfに相当する係数である。すなわち、結像係数Kは、結像レンズ406に平行光以外の光束が入射する場合に、fθ特性と同様に集光位置Yと走査角度θとを比例関係にするための係数である。
走査特性係数について補足すると、B=0の時の上記式(1)は、Y=Kθとなるため、従来の光走査装置に用いられるfθ特性を有する結像レンズの走査特性Y=fθに相当する。また、B=1の時の上記式(1)は、Y=Ktanθとなるため、撮像装置(カメラ)などに用いられるレンズの射影特性Y=ftanθに相当する。すなわち、上記式(1)において、走査特性係数Bを0≦B≦1の範囲で設定することで、射影特性Y=ftanθとfθ特性Y=fθとの間の走査特性を得ることができる。
ここで、上記式(1)を走査角度θで微分すると、次の式(2)に示すように走査角度θに対する被走査面407上でのレーザ光の走査速度が得られる。
さらに、上記式(2)を軸上像高における速度dY/dθ=Kで除すると、次の式(3)のようになる。
上記式(3)は、軸上像高の走査速度に対する各軸外像高の走査速度のずれ量(部分倍率)を表現したものである。本実施例に係る光走査装置400は、B=0の場合以外においては、軸上像高と軸外像高とで光束の走査速度が異なっていることになる。
図3は、被走査面407上での走査位置をY=Kθの特性でフィッティングした際の、像高と部分倍率との関係を示している。本実施例においては、上記式(1)に示した走査特性を結像レンズ406に与えたことで、図3に示したように、軸上像高から軸外像高に向かうにつれて部分倍率が大きくなっている。これは、軸上像高から軸外像高に向かうにつれて徐々に走査速度が速くなるためである。例えば部分倍率30%は、単位時間だけ光照射した場合、被走査面407での主走査方向の照射長が、被走査面407での基準となる照射長の1.3倍となることを意味している。図3では軸上像高における照射長(走査速度)を基準(部分倍率0%)としている。従って、画像クロックの周期によって決めた一定の時間間隔で主走査方向の画素幅を決めると、軸上像高と軸外像高とで画素密度が異なってしまうことになる。
また、像高Yが、軸上像高から離れて最軸外像高に近づくに連れて(像高Yの絶対値が大きくなる程)、徐々に走査速度が速くなる。これにより、被走査面407上の像高が軸上像高付近の時に単位長さ分を走査するのにかかる時間よりも、像高が最軸外像高付近の時に単位長さ分を走査するのにかかる時間の方が短くなる。これは、光源401の発光輝度が一定の場合、像高が軸上像高付近の時の単位長さ辺りの総露光量よりも、像高が最軸外像高付近の時の単位長さ辺りの総露光量の方が少なくなることを意味する。
さらに走査速度が走査位置によって異なるため、画像クロックの1周期で走査する距離が一定でないことになる。言い換えると、画像クロックの1周期単位での主走査の移動量が主走査位置毎に異なることになる。これは、主走査位置毎の画像クロックの1周期単位での移動量を適切に算出しなければならないことを意味する。図4は、画像クロックの1周期単位の主走査方向の移動量を説明する図である。図4(a)は、走査速度が一定である画像形成装置の1周期単位の主走査移動量を示している。走査速度が一定の場合、BDセンサ409の位置(基準位置)から、レーザ光410による走査を開始する任意の指定位置(走査開始位置)までの距離に対して画像クロックの1周期で進む走査距離(図中の矢印L)が一定である。よって、基準位置から指定位置に到達するまでにかかる画像クロックのサイクル数で表される走査位置の調整量は、基準位置から指定位置までの距離をLで割れば容易に求めることが可能である。一方、図4(b)は、走査速度が一定ではない(走査位置によって異なる)画像形成装置の、画像クロックの1周期単位の主走査移動量を示している。走査速度が走査位置によって異なる場合、図4(b)に示すとおり画像クロックの1周期で進む走査距離Lが一定ではなく、基準位置から遠ざかるにつれてクロック1周期当たりの走査距離Lは短くなる。したがって、走査位置毎の走査速度を考慮しなければ、上記調整量を適切に算出できない。
さらに、走査速度の特性は画像形成装置によって差(個体差)がある。そのため、基準位置から指定位置までの距離に対する適切な調整量は、画像形成装置毎に異なるものになる。なお、走査速度が一定でない場合における、上記調整量の算出方法に関しては後述する。
このように、fθ特性を有さない結像レンズを採用した光学構成を有する場合、主走査方向に関する部分倍率及び単位長さ当りの総露光量のばらつきや、画像クロックの1周期当りの走査移動量の違いによって、良好な記録媒体への画像形成が阻害され得る。そこで、本実施例では、fθ特性を有さない結像レンズを採用した光学構成においても良好な記録媒体への画像形成を実現する為、部分倍率の補正、単位長さ当りの総露光量の補正(輝度補正)及び走査開始位置の調整を行う。中でも、本実施例では走査開始位置の調整が最も重要な要素となっている。
<露光制御>
図5は、本実施例の画像形成装置における、露光制御を担う部分の詳細を示すブロック図である。画像信号生成部100は、画像変調部101、CPU102、CPUバス103を備える。画像変調部101は不図示のホストコンピュータまたは画像形成装置に取り付けられた不図示の原稿読取装置より印字情報を受け取る。画像変調部101は、印字情報に基づいて濃度階調を示す画像データを生成し、生成した画像データをビットパターン(駆動データ)に変換する。画像変調部101がビットパターンに含まれるビットデータを後述する高周波クロックに同期して出力した信号がVDO信号(PWM信号)である。ROM等(不図示)には画像信号生成部100に上記動作を実行させるための制御プログラムが格納されている。CPU102は、制御プログラムに従って画像変調部101を制御する。制御部200は、画像形成装置全体の制御を司る他、光源401が出射するレーザ光の光量制御を行う。レーザ駆動部300は、上述のVDO信号に基づいて電流を光源401に供給することにより、光源401を発光させる。
画像信号生成部100は、画像形成のための画像信号の出力の準備が整った段階で、シリアル通信110を通じて、制御部200に印字開始の指示を送る。当該指示を受けて制御部200は、印字準備が整い次第、副走査同期信号であるTOP信号と主走査同期信号であるBD信号を画像信号生成部100に送る。上記2種類の同期信号を受け取った画像信号生成部100は、所定タイミングで上述のVDO信号をレーザ駆動部300に出力する。
図6は、記録媒体1ページ分に相当する画像形成動作を行った際の上記2種類の同期信号と画像信号のタイミングチャートである。図6において、左から右に向かって時間が経過する。給紙ユニット900と搬送ロータ600との間に設けられたレジストセンサ(不図示)の検知位置にシートの先端が到達したことに応じてレジストセンサ1000の出力であるTOP信号が「HIGH」に切り替わる。画像信号生成部100は、TOP信号の「HIGH」を受信した直後のBD信号に同期して、VDO信号を出力する。このVDO信号に基づいて、光源401が発光し感光ドラム500に潜像が形成される。
なお、図6では、簡略化の為、VDO信号が複数のBD信号を跨いで連続的に出力されているように図示している。しかしながら、実際には、VDO信号はBD信号が出力されてから次のBD信号が出力されるまでの間の所定の期間に出力されるものである。詳細については、後述する。
<部分倍率の補正>
次に、主走査方向における部分倍率の補正方法について説明する。その説明に先立ち、部分倍率の要因及び補正原理について説明する。図7は、レーザ光の1走査周期におけるBD信号とVDO信号のタイミング、及び被走査面407上の潜像により形成したドットイメージを示した図である。レーザ光の1走査周期は、あるBD信号が生成されてから次のBD信号が生成されるまでの期間である。
画像信号生成部100は、受信したBD信号の立ち上がりエッジを基準にレーザ駆動部300へのVDO信号の出力タイミングを制御する。BD信号を基準にVDO信号の出力タイミングを制御することによって、レーザ光の走査方向において上流側の感光ドラム500の端部から所定の距離だけ離れた位置に潜像形成の開始位置を設定することができる。この設定された潜像形成の開始位置から感光ドラム500上で走査するためのタイミングを規定する調整量(走査位置調整量)が両方向矢印701で示されている。この主走査方向における潜像形成の開始位置の調整は、後述する走査位置調整量導出プログラムにて行われる。そして、VDO信号に基づきレーザ駆動部300が光源401に駆動電流を供給することによって光源401が発光し、被走査面407上にVDO信号に応じた潜像が形成される。
以下では、VDO信号に基づき、軸上像高及び最軸外像高において同じ期間だけ光源401を発光させた場合について説明する。ここで、ドットのサイズは600dpiの1ドット(主走査方向42.3um)に相当する。光走査装置400は、上述したように、被走査面407上の中央部(軸上像高)に比べて、端部(最軸外像高)の走査速度は速いという特性の光学構成である。図7において、補正前では、軸上像高の潜像(ドット1)に比べて、最軸外像高の潜像(ドット2)が主走査方向に肥大している。そこで、本実施例では、部分倍率補正として、主走査方向の位置に応じてVDO信号の周期や時間幅を補正する。即ち、最軸外像高における発光時間間隔を軸上像高の発光時間間隔と比べて短くし、最軸外像高におけるドットサイズを補正前のドット2よりも小さくして潜像(ドット2’)のようにし、軸上像高の潜像(ドット1)と同等のサイズに補正する。このような主走査方向におけるレーザ光の複数の露光位置に応じた補正(部分倍率補正)を実行することによって、主走査方向に関してドット幅の不均一性を抑制することができる。
次に、軸上像高から軸外像高へと移るに従って、その各位置における部分倍率の増加分だけ、光源401の照射時間を短くする制御について説明する。図8は、画像変調部101の内部構成を示すブロック図である。
本実施例のPLL部127は、1画素に相当する基準クロック(VCLK)の周波数を16倍に逓倍した逓倍クロック(VCLKx16)を生成する。VCLKは、濃度補正処理部121、ハーフトーン処理部122、PWM変換処理部123、PS変換部124に入力される。VCLKx16は、PS変換部124、FIFO125、及び倍率制御部126に入力される。
濃度補正処理部121は、VCLKに同期して、ホストコンピュータ(不図示)から受信した画像信号を適正な濃度で印字するための濃度補正処理を行なう。また、そのための濃度補正テーブルを格納している。そして、濃度補正処理部121は、濃度補正処理がされた8ビットの画像信号をVCLKに同期してパラレル出力する。8ビットの画像信号は、ハーフトーン処理部122に入力される。
ハーフトーン処理部122は、VCLKに同期して入力された8ビットの画像信号に対しディザ法などによるハーフトーン処理を行って、画像形成装置で濃度表現可能な画像信号(ここでは、多値パラレル4ビットの画像信号)に変換する処理を行う。そして、ハーフトーン処理部121は、ハーフトーン処理された4ビットの画像信号をVCLKに同期してパラレル出力する。4ビットの画像信号は、PWM変換処理部123に入力される。
PWM変換処理部123は、VCLKに同期して入力されたハーフトーン処理後の多値パラレル4ビットの画像信号を複数のビットデータを含むビットパターンに変換する。PWM変換処理部123は、変換処理のためのPWM変換テーブルを内部レジスタに格納している。PWM変換処理部123は、PWM変換処理を行うことにより、4ビットの画像信号光源401をON/OFFさせるための複数のビットデータに変換する。本実施例のPWM変換処理部123は、1画素4ビットの画像信号を16ビットのビットデータに変換する。もちろん、PWM変換処理部123が1画素4ビットの画像信号を32ビットのビットデータあるいはその他のビット数のビットデータに変換するようなPWM変換テーブルを設定しても良い。PWM変換処理部123は、変換したビットパターンをVCLKに同期してPS変換部124にパラレルに出力する。
図9はスクリーン処理を説明する図である。図9(a)の例では、主走査3画素、副走査3画素のマトリクス900内を、グレーで塗り潰す面積によって濃度表現を行なっている。マトリクス900を構成する1つの画素は、被走査面407で600dpiの1ドットを形成するために画像データを区切る単位である。スクリーン処理によって各画素は中間濃度を示す値(ハーフドット)になっている。図9(b)は、画素901を拡大した図であり、1画素が16ビットのビットデータで構成されていることを示している。16ビットのビットデータによって毎に光源401を発光のオン・オフが切り替えられる。つまり、1画素を16ビットのビットデータで構成することによって1画素は16階調で表現されることになる。図9(b)では、発光がオンとなる領域をグレーで、発光がオフとなる領域を白で表現している。図9(b)に示す画素901の場合、1画素幅の8/16を発光オンにすることになる。図8の説明に戻る。
PS変換部124は、パラレル−シリアル変換部である。PS変換部124は、VCLKに同期してPWM変換処理部123からパラレルに入力された16ビットのビットデータをVCLKx16に同期して1ビットずつ順にシリアルに出力する。
FIFO125は、VCLKx16に同期してPS変換部124からのビットデータをシリアルに受信し、ラインバッファ(不図示)に蓄積する。そして、FIFO125は、所定時間経過後に、後段のレーザ駆動部300に蓄積したビットデータをVCLKx16に同期して1ビットずつ出力する。なお、所定時間の計測の基準としてTOP信号及びBD信号が用いられる。これによりFIFO125は、前述の走査位置調整ユニットとしての役割を担うことになる。さらに、倍率制御部126は、CPUバス103を介してCPU102から受信する部分倍率特性情報を基に、ライトイネーブル信号WE、リードイネーブル信号REをFIFO125に出力する。FIFO125は、ライトイネーブル信号WE、リードイネーブル信号REに基づいて、入力されたビットデータの書き込み及び読み出しの制御を行う。
次に、画像変調部101におけるハーフトーン処理以降の動作について説明する。図10は、ハーフトーン処理以降の動作に関するタイムチャートである。図10(a)は、画像変調部101がPWM変換処理部123が生成したビットパターンからビットデータを削除する場合、同(b)は画像変調部101がPWM変換処理部123が生成したビットパターンにビットデータを挿入する場合にそれぞれ対応している。
まず、画像変調部101がビットパターンからビットデータを削除する場合の動作について説明する。上述したように、図10(a)において、PS変換部124は、PWM変換処理部123から16ビットのビットパターンをクロック(VCLK)の立ち上がりエッジに同期して取り込む。そしてPS変換部124は、VCLKx16に同期してビットデータをFIFO125にシリアルに送信する。
倍率制御部126は、CPU102からの部分倍率特性情報に基づいてライトイネーブル信号WEを出力する。倍率制御部126にはVCLKx16が入力されているため、倍率制御部126は、VCLKx16の周波数でライトイネーブル信号WEの出力を切り換えることができる。
FIFO125は、倍率制御部126が出力するWE信号が「HIGH(有効)」の場合のみPS変換部124からビットデータを取り込む。FIFO125に入力されたビットパターンによって形成される画像の縮小補正を行う場合、倍率制御部126は、WE信号を「LOW(無効)」にする。WE信号が「LOW(無効)」の場合、FIFO125はビットデータを取り込まないため、PS変換部124からFIFO125にはビットデータが入力されない。即ち、倍率制御部126がVCLKx16の1周期の期間WE信号を「LOW(無効)」とする場合、WE信号を「LOW(無効)」の期間においてPS変換部124がFIFO125に入力しようとするビットデータはFIFO125には入力されない。そして、次のVCLKx16の周期においてWE信号を「High(有効)」となるため、WE信号を「LOW(無効)」の期間においてPS変換部124がFIFO125に入力しようとするビットデータの次のビットデータがPS変換部124からFIFO125に入力される。倍率制御部126はWE信号の出力をVCLKx16の周期で切り換え可能である。従って、倍率制御部126がWE信号の出力をVCLKx16の周期で切り換えることによってVCLKx16の周期とレーザ光の走査速度の積の分解能で画像幅を縮小することができる。
続いて、画像変調部101がビットパターンにビットデータを挿入する場合の動作について説明する。倍率制御部126は、CPU102からの部分倍率特性情報に基づいてリードイネーブル信号REを出力する。倍率制御部126にはVCLKx16が入力されているため、倍率制御部126は、VCLKx16の周波数でリードイネーブル信号REの出力を切り換えることができる。
上述したように、図10(b)において、FIFO125は、RE信号が「HIGH」の場合のみ蓄積されたビットデータをVCLKx16に同期して読み出すことができる。FIFO125がVCLKx16に同期して1ビットずつビットデータを出力した信号がVDO信号である。画像変調部101は、このとき副走査方向に関して、TOP信号の立ち上がりタイミングを検知し、そのタイミングからBD信号の数をカウントし、所望のカウント数になったラインからビットデータの出力を開始する制御を行う。さらに、画像変調部101は、主走査方向に関して、BD信号の立ち上がりタイミングを検知し、そのタイミングからVCLKx16のサイクル数をカウントし、所定のカウント数になった位置からビットデータの出力を開始する制御を行う。このように、サイクル数をカウントしてからビットデータの出力開始タイミングを制御することで、主走査方向の指定位置(指定のカウント数の位置)から画像形成が行われるように調整される。このときの幅が、前述の図7にて両方向矢印701で示される走査位置調整量である。この際の指定位置は、感光体500への潜像中央位置とその潜像に対応したトナー像を転写する記録媒体の中央位置が揃うように指定される。なお、本実施例においてこの走査位置調整量701は、後述する走査位置調整量導出プログラムを実行する情報処理装置にて求められ、画像形成装置に設定されるものである。FIFO125に入力されたビットパターンによって形成される画像の拡大補正を行う場合は、倍率制御部126はRE信号を「LOW」に切り換える。「LOW」のRE信号がFIFO125に入力された状態において、FIFO125は、VCLKx16の立ち上がりエッジが入力されても読み出すビットデータを更新せず、その前のVCLKx16の立ち上がりエッジにおいて出力したビットデータを出力し続ける。つまり、FIFO125は、「LOW」のRE信号がFIFO125に入力されている限り、「LOW」のRE信号が入力されたときに出力していたビットデータを出力し続ける。倍率制御部126はRE信号の出力をVCLKx16の周期で切り換え可能である。倍率制御部126がRE信号の出力をVCLKx16の周期で切り換えることによってVCLKx16の周期でFIFO125から出力されるビットデータ数を増加させることができる。従って、倍率制御部126がWE信号の出力をVCLKx16の周期で切り換えることによってVCLKx16の周期とレーザ光の走査速度の積の分解能で画像幅を縮小することができる。図10(b)では、1画素が16ビットのビットデータから構成される場合に、1st画素についてビットデータを1ビット分を削除して15ビットのビットデータで構成し、2nd画素についてビットデータを2ビット分を挿入して18ビットのビットデータで構成した例となっている。なお、本実施例で用いたFIFO125は、RE信号を「LOW」とした場合、出力がHi-Z(ハイインピーダンス)状態となるのではなく、前の出力を継続する構成の回路として説明した。
図11は、PS変換部124から出力されるビットデータに対して補正を行う様子を説明する図であり、図11(a)はビットパターンにビットデータを挿入して画像の倍率を拡大する補正の例、同(b)はビットパターンからビットデータを削除して画像の倍率を縮小する補正例を示している。図11(a)は、部分倍率を8%増やす例となっている。100個の連続するビットパターンに対し、均等又は略均等な間隔で、計8ビットのビットパターンを挿入することで、部分倍率を8%拡大することができる。図11(b)は、部分倍率を7%減らす例となっている。100個の連続するビットパターンから、均等又は略均等な間隔で、計7ビットのビットデータを削除することで、部分倍率を7%縮小することができる。このように部分倍率補正では、主走査方向におけるレーザ光の露光位置に応じてビットパターンからビットデータを挿入、あるいはビットパターンからビットデータを削除することによって主走査方向に関してレーザ光の露光位置に関わらず画像の幅を実質的に等しくすることができる。なお、主走査方向に関して実質的に等しいとは、部分倍率補正を行った結果、画像の幅に多少のバラつきがあってもよく、完全に画像の幅が等しくなる必要がないことを意味している。
既に述べたように、走査速度は像高Yの絶対値が大きくなるほど速くなる。このため部分倍率補正では、像高Yの絶対値が大きくなるほど画像が短くなるよう(1画素の長さが短くなるよう)ビットデータの挿入及び又は削除を行う。ここで重要なのは、補正前の画像データの1ドット(1画素)のサイズが、被走査面407上で等しくなるように、ビットデータの挿入及び又は削除が行われるということである。
<輝度補正>
次に、輝度補正について説明する。輝度補正を行う理由は、部分倍率補正により、1画素の長さが変更され、光源401による1画素当たりの総露光量(積分光量)が一定とならないためである。そこで、主走査位置に応じて光源401の輝度を補正することで、1画素当たりの総露光量(積分光量)が各主走査位置で一定となるように調整する。
前述の図5を参照して、本実施例における輝度補正の詳細を説明する。制御部200は、レギュレータなどを内蔵したICを有しており(不図示)、レーザ駆動部300と合わせて輝度補正ユニットを構成する。制御部200内部のICは、BD信号に同期して、主走査内で増加減する輝度補正アナログ電圧をレーザ駆動部300へ出力する。レーザ駆動部300は、メモリ301やレーザドライバIC(不図示)を有し、入力された輝度補正アナログ電圧を利用して光源401の発光部(不図示)へ駆動電流を供給する。ここで、メモリ301には、後述する走査速度プロファイルや部分倍率特性情報が保存されているとともに、発光部に供給する補正電流の情報が保存されている。部分倍率特性情報は、主走査方向に対して複数の像高に対応する部分倍率を記した情報である。制御部200内部のICが有するCPU(不図示)はシリアル通信111を介してメモリ301に記憶されている情報を読み出し、画像信号生成部100のCPU102にシリアル通信110を介して送出する。
このように制御部200が、メモリ301内の補正電流の情報をもとに主走査位置に応じて輝度補正アナログ電圧を増加減させ、レーザ駆動部300が光源401の発光部への駆動電流を各主走査位置で一定となるように制御することで、輝度補正が実現される。
<走査位置調整量の導出>
続いて、走査位置調整量の導出について説明する。図12は、走査位置調整量の導出を行なう情報処理装置のハードウェア構成例を示す図である。情報処理装置1200は、CPU1201、RAM1202、ROM1203、HDD1204、IO部1205、操作部1206、外部IF1207で構成され、それらがバス1208で相互に接続されている。
CPU1201は、OS(Operating System)やアプリケーションソフトなどのプログラムをHDD1204から読み出して実行することで種々の機能を提供する。さらにCPU1201は、後述の走査位置調整量導出処理を統括的に制御する。RAM1202はCPU1201がプログラムを実行する際のシステムワークメモリである。ROM1203はBIOS(Basic Input Output System)やOSを起動するためのプログラム、設定ファイルを記憶している。HDD1204はハードディスクドライブであって、システムソフトウェアや、後述の走査位置調整量導出プログラムが記憶されている。外部IF1207はLANやUSBケーブルに接続され、画像形成装置などの外部機器と通信(データや走査位置調整量の送受信)を行う。IO部1205はディスプレイやマウスなどの入出力デバイス(不図示)とから構成される操作部1206との情報を入出力するインターフェースである。ディスプレイにはプログラムが指示する画面情報に基づき所定の解像度や色数等で所定の情報が描画される。例えば、GUI(Graphical User Interface)画面を形成し、操作に必要な各種ウィンドウやデータ等が表示される。
図13は、走査位置調整量導出プログラムの内部構成を示す機能ブロック図である。本プログラムは、HDD1204内に格納されており、CPU1201がブートプログラムを実行してHDD1204から本プログラムをRAM1202へ読み出し、これをCPU1201が実行することで、走査位置調整量導出処理は実現される。
走査位置調整量導出プログラム1300は、走査速度プロファイル生成モジュール1301、部分倍率特性情報生成モジュール1302、走査位置調整量導出モジュール1303で構成される。
まず、走査速度プロファイル生成モジュール1301について説明する。走査速度プロファイルとは、前述の図3で示したような、走査位置と部分倍率の関係を示したプロファイルである。この走査速度プロファイルは、基本的には前述の式(3)で示されるものであり、前述した結像係数Kや走査特性係数Bなどの光学特性から求まる。よって、画像形成装置で使用されている光走査装置400の光学特性の情報を操作部1206から入力し、前述の式(3)を用いて走査速度プロファイルを生成することができる。
また、走査速度プロファイルは、各レンズの製造時の個体差やレンズといった各部品の組み付け誤差などを考慮するために、光走査装置400で実際に形成したテスト用パターン画像から求めるようにしてもよい。この場合、まず光走査装置400を用いて所定のパターン画像を記録媒体へ出力する。このパターン画像は、例えば主走査方向に一定間隔でドットを配置した画像である。このようなパターン画像を、前述の部分倍率補正処理を施すことなく記録媒体へ出力すると、走査速度の違いにより、主走査位置に応じてドットの幅が変化する。具体的には、主走査端部に近づくにつれてドットの幅が広くなる(図7を参照)。このドットの幅の変化から走査速度を推定することができる。そして、出力されたパターン画像をスキャナなどで読み取り、外部IF1207を介して情報処理置1200へ入力する。情報処理装置1200は、主走査中央部(軸上像高)のドット幅を基準として主走査端部(最軸外像高)までのドット幅の変化量を読み取り、読み取り結果から走査速度プロファイルを生成する。主走査中央部(軸上像高)のドット幅に対する各主走査位置のドット幅の増減分が即ち部分倍率の増減分(速度変化量)となるものである。
図14は、生成された走査速度プロファイルの一例を示す図である。図14の例では、走査速度プロファイルをLUT(ルックアップテーブル)の形で保持している。LUTのアドレスが主走査位置を示し、LUTのデータが主走査中央部(軸上像高)を100%とした場合のそれぞれの位置(アドレス)における部分倍率を示している。ここでは600dpiの1ドットを1画素とし主走査幅(図2AにおけるW)を8192画素としている。
次に、部分倍率特性情報生成モジュール1302について説明する。部分倍率特性情報生成モジュール1302は、前述の倍率制御部126にて、主走査方向のどの位置の画像の倍率補正が必要かを示す情報を、走査速度プロファイルから生成する。部分倍率特性情生成モジュール1302は、各主走査位置における部分倍率を参照し、各主走査位置の倍率補正量を挿入するビットデータ数あるいは削除するビットデータ数に変換する。ただし、本実施例では1画素を16ビットのビットデータで構成しているので、部分倍率を1/16画素に相当するビットデータ数でそのまま換算すると、1画素毎に誤差が累積し最終的に大きな誤差となってしまう。よって、前述の図11の例のように所定間隔(例えば100画素)で主走査を区切り、該所定間隔毎に平均的な部分倍率を算出し、それを均等又は略均等間隔で適用するようにしている。例えば100ビットのビットデータが連続するビットパターンに対して平均的な部分倍率が8%増であった場合に、計8個のビットデータをその区間で均等間隔に挿入するといったようにビットデータの挿入位置とその間隔を決定するものである。
次に、走査位置調整量導出モジュール1303について説明する。走査位置調整量は、走査速度が一定の光走査装置を持つ画像形成装置においては、形成したい画像の主走査方向の幅、BDセンサと感光ドラムとの距離間隔、偏向器(ポリゴンミラー)の角速度などによって決まるものである。しかしながら、本実施例のような走査速度が一定でない(そのために部分倍率補正を実行する)画像形成装置においては、そこに走査速度プロファイルを加味することが必要となる。
既に説明したように軸上像高は、感光ドラム500の中央を意味し、記録媒体の主走査中央位置を示すものである。よって記録媒体は、軸上像高の位置(感光ドラム中央)が主走査の中心となるように給紙ユニット900から給送され、感光ドラム500上に形成された潜像に対応したトナー像が転写される。すなわち、記録媒体の大きさに拠らず感光ドラム中央が潜像(トナー像)の中心位置になるように走査位置調整量を設定することが必要となる。このとき記録媒体のサイズによって、ドラム中央から主走査方向の記録媒体端部までの距離が決まる。次に、走査速度については、前述の式(2)で求めることができる。式(2)から軸上像高における速度dY/dθ=Kを予め求めておき、上述の走査速度プロファイル(図14を参照)における位置毎の倍率をこれに乗算することで、各主走査位置における速度を容易に求めることが可能である。
図15は、本実施例に係る、走査位置調整量導出処理の流れを示すフローチャートである。本フローで導出される走査位置調整量は、上述の基準位置に相当するBD信号の立ち上がりタイミングから記録媒体端部までの、周波数逓倍されたクロック(VCLKx16)のサイクル数で表される。
ステップ1501では、各種変数が初期化される。ここで、変数xは主走査方向における注目画素位置を示すものであり、x=0がBD信号の立ち上がりタイミングを表す。この注目画素位置xの値は、本フローの進行に伴って加算されていき、本フローの終了時点の変数xの値が、求める走査位置調整量となる。また変数totalは、BD信号の立ち上がりタイミングに対応する位置から現在の注目画素位置までの距離を示すものであり、初期値は0である。
ステップ1502では、変数totalの値が、定数WT以上か否かが判定される。ここで、定数WTは、基準位置であるBDセンサ位置から潜像を開始すべき記録媒体端部までの距離を表す値であり、走査位置調整量を距離で表したものである。変数WTは、BDセンサ位置から感光ドラム中央までの距離を予め測定しておき、その距離から記録媒体のサイズ毎に決まる長さを差し引くことで求めることができる。記録媒体のサイズ毎に決まる長さは、感光ドラム中央から記録媒体端部までの距離であり、記録媒体中央と感光ドラム中央が一致しているならば、記録媒体の主走査方向の長さの半分になる。図16に、記録媒体のサイズがA3である場合の定数WTを示す。図16において、BDセンサ位置から感光ドラム中央までの距離は、30mm+(304mm/2)=182mmとなる。そして、記録媒体のサイズ毎に決まる長さは、296mm/2=148mmとなる。したがって、この場合の定数WTは、182mm-148mm=34mmとなる。判定の結果、変数totalの値が定数WTの値未満であった場合は、ステップ1503に進む。一方、変数totalの値が定数WTの値に達している場合は、本処理を終える。変数totalの値が定数WTの値に達するということは、現在の注目画素位置xまでにおける距離の累積値を示す変数totalの値が、潜像を開始すべき記録媒体端部に到達したことを意味する。
ステップ1503では、変数totalの値が更新される。具体的には、LUT(x)×K×T/100を求め、求めた値を新たな変数totalの値とする。ここで、LUT(x)は現在の注目画素位置xにおけるLUTのデータ値(走査速度プロファイルとしてのLUTにおける部分倍率の値)である。図14に示すLUTの場合、例えばx=0ならば、LUT(x)の値は138である。また、定数Kは軸上像高(ドラム中央)における走査速度を示す。いま軸上像高においてVCLKの1サイクルで1画素(600dpiの1ドット)を走査するとすれば、1画素=25.4mm/600=0.042mmなので、定数Kは0.042mm/0.05μsec=0.84mm/μsecとなる。そして、定数TはVCLKの周期を示し、VCLKが20MHzの場合の周期Tは0.05μsecとなる。このように「LUT(x)×K×T/100」は、「VCLK1周期当たりの注目画素位置xの走査距離」を示すことになり、こうして求めた値が変数totalの値へと加算される。
ステップ1504では、注目画素位置xの値がインクリメント(+1)されて更新される。注目画素位置xの値が更新されると、ステップ1502に戻って処理を続行する。
こうして、変数totalの値が定数WTに達するまで注目画素位置をシフトさせながら変数totalの値を加算する処理が実行される。例えば、x=0のとき、上述の条件からtotal=138/100*0.84*0.05=0.058mmとなる。よって、x=1の位置は基準位置から0.058mm進んだ位置であることが分かる。この場合、変数totalの値は定数WT=34mmに達していないため、変数totalの値を加算する処理が続行される。x=1のときLUT(x)の値は137なので、次の変数totalの値は、0.058+137/100*0.84*0.05=0.115mmとなる。よって、x=2の位置は基準位置から0.115mm進んだ位置であることが分かる。この場合も、変数totalの値は定数WT=34mmに達していないため、さらに変数totalの値を加算する処理が続行される。こうして変数totalの値が定数WTの値に到達するまで処理が繰り返され、本フロー終了時における注目画素位置を示す変数xの値が求める走査位置調整量となる。ただし、ここで求まる変数xの値はVCLK単位なので、周波数逓倍されたクロック(VCLKx16)のサイクル数にするため16倍して、最終的な走査位置調整量とする。なお、走査速度プロファイルを周波数逓倍されたクロック(VCLKx16)の単位で準備し、さらに周期Tを周波数逓倍されたクロック(VCLKx16)の周期としてもよい。これにより、さらに精密に走査位置調整量を求めることができる。このようにして各走査位置における走査速度を考慮した調整量を求めることで、記録媒体毎にBDセンサから記録媒体端部までの移動にかかる時間を計測するような工程を省くことが可能となる。
情報処理装置1200で得られた走査速度プロファイル、部分倍率特性情報、及び走査位置調整量は、外部IF1207を介して画像形成装置へと入力され、画像形成装置内のレーザ駆動部300のメモリ301(図5を参照)へ記憶される。そして、画像形成装置において、画像信号生成部100のCPU102は制御部200を介してメモリ301に記憶された走査位置調整量を取得し、画像変調部101のFIFO125からのVDO信号の出力制御に、取得した走査位置調整量を適用する。VDO信号の出力開始位置の調整方法に関しては図10で説明した通りである。
なお、本実施例では、記録媒体のサイズに応じた走査位置調整量を導出しているが本発明はこのように態様に限定されない。例えば、記録媒体のサイズに応じて内部バッファ(最大紙サイズ幅分のバッファ)へのデータ書き込み位置を調整(書き込まない画素位置をすべて白画素扱いとする)し、走査位置調整量自体は最大紙サイズに合わせて固定値としてもよい。この場合、FIFO125内部のバッファサイズが最大主走査幅(最大紙サイズ幅分)あり、出力紙サイズや画像データサイズに応じて、バッファへの画素データ格納位置(書き込み位置)が調整される。すなわち、記録媒体の中央がバッファの中央と同じになるような位置からラインバッファへの書き込みがなされる。そして、書き込まれない位置の画素は、初期値である白画素とされる。その後、FIFO125からの読み出し時に最大紙サイズに応じた位置調整をして、ラインバッファの先頭画素から出力される。
以上のとおり、本実施例によれば、感光体表面でレーザ光の走査速度が一定ではない電子写真方式の画像形成装置において、ずれなく走査開始位置を指定することが可能になり、印字位置のずれを高精度に低減することができる。
[実施例2]
実施例1は、走査位置調整量の導出を画像形成装置とは別の情報処理装置にて実行して、得られた導出結果を画像形成装置に設定する態様であった。しかしながら、印刷画像の中央とドラムの中央とを一致するための走査位置調整量は、画像形成装置における振動などに起因する各部品の装着位置ずれや経年劣化、摩耗などによって変化してしまう可能性がある。そこで、画像形成装置単体で適切な走査位置調整量を導出し、必要に応じて調整することが可能な態様について、実施例2として説明する。
なお、実施例1と共通する部分(画像形成装置の概略図、光走査装置及び画像変調部の構成)については内容を省略ないしは簡略化し、以下では、差異点となる、露光制御の構成や走査位置調整量導出処理を中心に説明するものとする。
図17は、本実施例に係る、画像形成装置における露光制御を担う部分の詳細を示すブロック図である。実施例1の図5のブロック図と比較すると、走査位置調整部1701が画像信号生成部100に追加されている。
<走査位置調整部>
走査位置調整部1701は、画像形成装置内で前述の走査位置調整量導出処理を実行するのに加え、後述するキャリブレーション処理を実行して走査位置調整量の再設定を行なう。走査位置調整部1701は、メモリ301に記憶されている走査速度プロファイルを参照して、走査位置調整量を導出する。なお、メモリ301へのアクセスはCPU102が制御部200を介して行われる。メモリ301から取得した走査速度プロファイルを用いて走査位置調整量を導出する処理については、実施例1の図15のフローと同様である。導出された走査位置調整量は、前述の走査速度プロファイル及び部分倍率特性情報と共に、初期値として画像形成装置の組み立て時に工場などでメモリ301に記憶される。
なお、走査位置調整量導出処理及び後述のキャリブレーション処理は、例えば不図示の不揮発性メモリに記憶されたプログラムに従ってCPU102がこれを実行することで実現される。
<キャリブレーション処理>
続いて、本実施例の特徴である、走査速度プロファイルを再生成し、部分倍率特性情報及び走査位置調整量を、再生成された走査速度プロファイルに応じて変更する処理(キャリブレーション処理)について説明する。このキャリブレーション処理は、画像形成装置が印刷ジョブに基づく画像形成処理を実行していない状態(アイドル状態)のときに、所定の条件下で適宜実行されるものである。所定の条件としては、例えば一定時間の経過や印刷ジョブの処理回数が所定数に到達したときなどが挙げられる。また、ユーザからの明示の指示に従って開始するように構成してもよい。図18は、本実施例に係る、キャリブレーション処理の流れを示すフローチャートである。
ステップ1801では、補正用のドットパターンが形成される。具体的には、まず光走査装置400を用いて、図5(b)で説明したような走査速度によるトナー像の違いを判別可能なドットパターンの潜像を、感光ドラム500の主走査両端部に形成する。そして、現像装置(不図示)により潜像に対応したトナー像を形成することで、補正用ドットパターンが感光ドラム500上に形成される。
ステップ1802では、感光ドラム500上に形成された補正用ドットパターンが読み取られる。例えば、補正用ドットパターンにおける各ドットの幅を測定するためのセンサを主走査両端部の対応する位置に設置しておき、該センサによって各ドットの幅が測定される。こうして得られた各ドットの幅の情報に基づいて主走査両端部の走査速度を推定する。または、各ドットの濃度を測定するためのセンサを同様の位置に設け、該センサによって得られた濃度の程度によって主走査両端部の走査速度を推定するようにしてもよい。これは、単位長さ当たりの最軸外像高付近の総露光量が少なくなることで変化した濃度を測定することで、主走査両端部での走査速度を推定するものである。なお、例えば上記2種類のセンサを双方設置し、各ドットの幅と濃度を測定するように構成して、より正確に各位置の走査速度を推定できるようにしてもよい。ただし、センサを多く設けるとそれだけコストアップにつながるので、コストとのバランスを考慮して決すべきものである。
ステップ1803では、ステップ1802で読み取った補正用ドットパターンの読み取り結果(ここでは各ドットの幅の情報)を基に、メモリ301に記憶されている走査速度プロファイルを修正する。具体的には、まず読み取りによって得られた各ドットの幅の情報からセンサ位置(ここでは主走査両端部の対応する位置)における走査速度を推定する。これは、例えば予め主走査中央に補正用ドットパターンを形成した場合に得られるドットの幅を基準値(例えば100)として記憶しておき、該基準値に対して読み取ったドットの幅がどれだけの大きさであるかを求めることで、主走査両端部における走査速度を推定するものである。或いは、主走査中央が600dpiの1ドット幅(42.3μm)となるような補正用ドットパターンを基準として、それに対してどれだけのドット幅になっているかを求めることで走査速度を推定してもよい。次に、推定された走査速度と現在の走査速度プロファイルに記憶されている走査速度との差を求め、走査速度プロファイルを修正する。例えば、走査速度プロファイルの曲線の傾き(前述の図3を参照)自体が経年変化してしまう可能性は低いとの仮定の下、求めた走査速度の差から現在の走査速度プロファイルの曲線位置を平行移動させることで、修正後の走査速度プロファイルとする。詳細には、主走査両端部の差が共にプラス(端部での部分倍率が共に増加)であれば曲線位置を下方向にシフトし、共にマイナス(端部での部分倍率が共に減少)であれば曲線位置を上方向にシフトする。また、主走査両端部の差が、一方がプラスで一方がマイナスであれば、マイナスが検知された側に曲線位置を横(左右)シフトする。これらは、曲線が下凸であることを前提としたシフト方向である。もちろん、求めた走査速度の差が大きい場合など、必要に応じて曲線自体を微修正するものであってもよい。修正された走査速度プロファイルはメモリ301に記憶され、修正前の走査速度プロファイルと置き換えられる。
ステップ1804では、走査速度プロファイルの修正を受けて、部分倍率特性情報が修正される。これは走査速度プロファイルの内容が変わると部分倍率特性も変化することから、併せて修正がなされる。この修正は、前述のビットデータの挿入あるいはビットデータの削除による倍率補正において、主走査方向のどの位置の画像の倍率補正が必要かを示した特性情報を走査速度プロファイルから再生成する処理である。その内容は、実施例1で述べた部分倍率特性情報生成モジュール1303における処理と同様である。修正された部分倍率特性情報はメモリ301に記憶され、修正前の部分倍率特性情報と置き換えられる。
ステップ1805では、走査位置調整量が再導出される。これはステップ1803で修正された走査速度プロファイルを基として、CPU102が走査位置調整量導出処理を再度実行することで実現される。メモリ301から修正後の走査速度プロファイルを読み出して新たな走査位置調整量を導出するための処理は、実施例1の図15のフローと同様であるので、ここでは説明を省く。
ステップ1806では、ステップ1805で再導出した走査位置調整量が、走査位置の調整を担うFIFO125に設定される。また、修正された部分倍率特性情報も、倍率制御部126へ設定される。
以上が、本実施例に係るキャリブレーション処理の内容である。これにより、走査速度プロファイルの変化に対応した品質の高い画像形成が可能となる。
以上のとおり本実施例によれば、キャリブレーション処理を適宜実行することで、適切な走査位置調整量が再設定される。これにより、感光体表面でレーザ光の走査速度が一定ではない電子写真方式の画像形成装置において、経年変化に耐性を持たせることが可能となる。
(その他の実施例)
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。