[A.第1実施例]
[A1.装置構成]
次に、本発明の実施の形態を実施例に基づき説明する。図1は、本発明の一実施例としてのプリンタを示す説明図である。プリンタ900は、制御装置100と、タッチパネル等の操作部170と、液晶ディスプレイ等の表示部180と、外部装置との通信のためのインタフェースである通信部190と、印刷実行部200と、を含んでいる。本実施例では、印刷実行部200は、いわゆるカラーレーザプリンタである。印刷実行部200は、CMYK(シアン、マゼンタ、イエロ、ブラック)の4種類のトナーを利用可能である。通信部190は、例えば、いわゆるUSBインタフェース、または、IEEE802.3に準拠したインタフェースである。制御装置100は、CPU110と、DRAM等の揮発性メモリ120と、EEPROM等の不揮発性メモリ130と、を含むコンピュータである。
不揮発性メモリ130は、プログラム132と、後述するディザマトリクスDM(図4)を規定するディザマトリクスデータ134と、後述する複数個のパッチ(図6)を表す複数個のパッチデータを含むパッチデータ群136と、使用すべきハーフトーン処理に関する設定が記録された設定データ138と、を格納している。CPU110は、プログラム132を実行することによって、画像処理部300と、印刷制御部400の機能と、を含む種々の機能を実現する。画像処理部300は、処理対象の画像データ(対象画像データとも呼ぶ)に基づく印刷データを生成するための処理を実行する。印刷制御部400は、生成された印刷データを印刷実行部200に供給することによって印刷実行部200に印刷を実行させる。対象画像データは、例えば、外部装置(例えば、図示しないコンピュータ)から通信部190を介してプリンタ900に供給される画像データである。
画像処理部300は、パッチ決定部310と、露光パターン決定部320と、印刷データ生成部330と、を備えている。パッチ決定部310は、印刷実行部200を用いて印刷される複数個のパッチの中から、印刷に用いるべき最小ドットに対応する特定パッチを含む利用パッチを決定する。パッチ決定部310は、複数個のパッチを印刷するパッチ印刷部312と、印刷された複数個のパッチを、読取部40を用いて読み取ることにより、複数個のパッチのそれぞれの濃度を検出するパッチ濃度検出部314と、を備えている。露光パターン決定部320は、特定濃度より低い濃度を示す複数個の低濃度値のそれぞれに対応する複数個の露光パターンを決定する。印刷データ生成部330は、露光パターン決定部320によって決定された露光パターンを用いて、印刷データを生成する。これらの処理部の詳細については、後述する。
図2は、プリンタ900の概略図である。図2(A)には、プリンタ900の概略断面図が示されている。プリンタ900は、筐体10を有する。筐体10は、印刷実行部200と給紙トレイ30とを収容している。筐体10の上面には、排紙トレイ20(傾斜面)が形成されている。印刷実行部200は、搬送装置90と、露光部51と、プロセスユニット59C、59M、59Y、59Kと、転写ローラ55C、55M、55Y、55Kと、定着部56と、読取部40と、印刷実行部200の各構成要素を制御する制御回路210と、を含んでいる。制御回路210は、印刷制御部400から供給された印刷データに従って印刷実行部200の要素を制御することによって、印刷データによって表される画像を印刷する。制御回路210は、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の専用の電子回路を含む。
搬送装置90は、水平に並んで配置された駆動ローラ57Aおよび従動ローラ57Bと、ローラ57A、57Bに掛けられたループ状の搬送ベルト58と、図示しないモータや他のローラを含んでいる。搬送装置90は、給紙トレイ30から排紙トレイ20に至る搬送経路SR(図2:一点破線)に沿って、印刷媒体Pを搬送する。搬送ベルト58は、駆動ローラ57Aの回転と同期して回転し、搬送ベルト58の上面58A(鉛直上側の面)に印刷媒体Pを載せた状態で、印刷媒体Pを搬送する。
プロセスユニット59C、59M、59Y、59Kは、搬送ベルト58の上面58A側に、搬送経路SRの下流側から上流側に向かってこの順番に並んでいる。プロセスユニット59C、59M、59Y、59Kの下方には、転写ローラ55C、55M、55Y、55Kが、搬送経路SRの下流側から上流側に向かってこの順番に並んでいる。
本明細書では、プロセスユニットを表す符号と、プロセスユニットの構成要素を表す符号と、転写ローラを表す符号と、の末尾に、対応するトナーの種類を識別する符号(CMYKのいずれか)を付加している。以下の説明では、個別の部材を区別する必要のない場合には、末尾のトナーの種類を識別する符号を省略する。
プロセスユニット59は、トナーカートリッジ52と、現像ローラ53と、感光体ドラム54とを、それぞれ、含んでいる。現像ローラ53と感光体ドラム54は、現像のために互いに接触している。感光体ドラム54は、現像によって感光体ドラム54の表面に形成されたトナー像を印刷媒体Pに転写するために、搬送ベルト58に接触している。転写ローラ55は、対応する感光体ドラム54の反対側(下方)に配置されている。感光体ドラム54と転写ローラ55とのペアは、搬送ベルト58を挟んでいる。
露光部51は、プロセスユニット59の上方に配置されている。図2(B)は、露光部51の概略構成を示す説明図である。図2(B)には、1種類のトナーのための構成が示されている。露光部51は、複数のトナー毎に、図2(B)と同様の構成を含んでいる。露光部51は、レーザダイオードなどのレーザ光源51aと、レーザ光源51aからのレーザ光が通過する第1レンズ51b(例えば、シリンドリカルレンズ)と、第1レンズ51bを通過したレーザ光の反射角度を制御することによって感光体ドラム54の表面上の照射位置を制御するポリゴンミラー51cと、ポリゴンミラー51cからのレーザ光LZが通過する第1走査レンズ51d(例えば、fθレンズ)と第2走査レンズ51e(例えば、トーリックレンズ)と、を含んでいる。ポリゴンミラー51cは図示しないモータによって回転駆動される。
制御回路210は、ポリゴンミラー51cを回転させることによって、感光体ドラム54の表面におけるレーザ光LZの照射位置LZeを第1方向D1に移動させる主走査を行う。第1方向D1は、感光体ドラム54の回転軸54axとほぼ平行な方向である。以下、第1方向D1を「主走査方向」とも呼ぶ。1回の主走査によって、露光ラインEL上の照射位置LZeに、レーザ光LZが照射される。露光ラインELは、感光体ドラム54の表面における主走査方向D1に延びるラインである。
制御回路210は、感光体ドラム54を、回転軸54axを中心に、搬送ベルト58(図2(A))の移動と同期して回転させる。第2方向D2は、感光体ドラム54の回転方向の反対方向を示している。制御回路210は、感光体ドラム54を回転させつつ、主走査を行う。これにより、感光体ドラム54の表面上では、第2方向D2の位置が互いに異なる複数の露光ラインELに対する主走査が行われる。感光体ドラム54を回転させて、主走査の対象となる露光ラインELを変更することを副走査とも呼び、第2方向D2を「副走査方向」とも呼ぶ。
副走査と主走査を行って、感光体ドラム54の表面にレーザ光LZを照射する露光工程によって、感光体ドラム54の表面に静電潜像が形成される。より具体的には、制御回路210は、主走査の最中に、印刷制御部400から供給された印刷データに従って、レーザ光LZのオンとオフを切替制御する(例えば、PWM(pulse width modulation)制御)。この結果、後述する現像によってドットが形成されるドット領域と、ドットが形成されない空白領域とが、感光体ドラム54の表面上に形成される。このドット領域と空白領域とによって表される画像が静電潜像である。本実施例では、ドット領域は、レーザ光LZが照射される領域(露光領域)であり、空白領域は、レーザ光LZが照射されない領域(非露光領域)である。
図2(C)は、感光体ドラム54の表面に形成される静電潜像LIの概略図である。図示するように、感光体ドラム54の表面には、第1方向D1に延びる複数の露光ラインELが、第2方向D2に沿って並んで配置されている。これら複数の露光ラインEL上における黒色で示す領域がドット領域であり、白色で示す領域が空白領域である。複数の露光ラインELの間隔によって、第2方向D2の解像度が決定される。主走査の最中に、レーザ光LZのオンとオフを切り換える最小の間隔によって、第1方向D1の解像度が決定される。
現像ローラ53(図2(A))は、トナーを感光体ドラム54の表面に供給することによって、静電潜像LIを現像する。具体的には、現像によって、感光体ドラム54の表面のドット領域には、トナーが付着してドットが形成され、空白領域には、トナーが付着しないことによって、感光体ドラム54の表面にトナー像が形成される。形成されたトナー像は、搬送ベルト58によって搬送される印刷媒体Pに、転写される。
定着部56(図2(A))は、搬送経路SRにおける搬送ベルト58よりも下流側に配置されている。定着部56は、一対のローラを用いて、印刷媒体P上のトナーを加圧・加熱することによって、トナーを印刷媒体Pに定着させる。
読取部40は、例えば、駆動ローラ57Aの近傍に配置されており、駆動ローラ57Aに回転駆動される搬送ベルト58の表面を光学的に読み取る光学センサである。読取部40は、例えば、LEDなどの発光素子と、フォトダイオードなどの受光素子とを含んでいる。読取部40は、発光素子からの光を搬送ベルト58の表面に照射して、反射光を受光素子で検出する。光の照射位置に、後述するパッチなどのトナー像が形成されていれば、読取部40は、そのトナー像の濃度を光学的に検出することができる。
[A2.印刷データとディザマトリクス]
図3は、印刷データによって表される画像の部分画像PD1を概念的に示す図である。この画像は、第1方向D1と第2方向D2とに沿ってマトリクス状に並んだ複数個の画素PXによって構成されている。本実施例では、印刷画像の第1方向D1(主走査方向)の第1解像度は、4800dpi(dot per inch)であり、第2方向D2(副走査方向)の第2解像度は、600dpiである。すなわち、第1解像度は、第2解像度より8倍高い。したがって、1個の画素PXの第1方向D1の長さは、第2方向の長さの(1/8)である。図3には、印刷データによって表される画像のうち、第2方向に6画素分、第1方向に48画素分の領域(6行×48列の領域)の部分画像PD1が示されている。図3では、煩雑を避けるために、第1方向に並んだ8画素分の領域(1行×8列の領域)に対応する正方形の画素ブロックPBによって部分画像PD1を図示し、2個の画素ブロックPBの拡大図を図示した。
図4は、本実施例で用いられるディザマトリクスDMの一例を示す図である。このディザマトリクスDMは、ディザマトリクスデータ134(図1)によって規定されている。ディザマトリクスDMは、図3の部分画像PD1の大きさに対応する領域内の(6×48)個の画素のそれぞれについて、しきい値を規定している。(6×48)個のしきい値は、入力される濃度値(CMYKのいずれかの濃度値)の取り得る範囲(例えば、0〜255)のうち、0を除く全ての値を少なくとも1個ずつ含んでいる。この結果、ディザマトリクスDMは、6行×48列の範囲で、256階調の濃度を表現することができる。
ここで、図3の部分画像PD1は、各画素値(濃度値)が「8」である1成分(CMYKのうちの1個の成分)の画像データに対して、図4のディザマトリクスDMを適用して得られる印刷データによって表される印刷画像の部分画像である。部分画像PD1には、2個のドットDT1、DT2が、配置されている。ドットDT1は、拡大図に示すように、第1方向D1に連続して並んだ6個の画素PXによって構成される。したがって、ドットDT1の第1方向D1の長さは、6(単位は画素)である。ドットDT2は、拡大図に示すように、第1方向D1に連続して並んだ5個の画素PXによって構成される。したがって、ドットDT2の第1方向D1の長さは、5(単位は画素)である。
比較的低い濃度を示す濃度値(例えば、1〜20程度)を画素値とする画像データに図4のディザマトリクスDMを適用して得られる印刷データによって表される画像(ドット画像)では、図3の部分画像PD1のドットDT1、DT2が配置されている位置にドットが現れる。そして、濃度が高くなるにつれて、これらの位置に配置されたドットは、第1方向D1に成長していく、すなわち、ドットの第1方向D1の長さが長くなっていく。すなわち、図3の部分画像PD1のドットDT1、DT2の左端(第1方向D1の反対側の端)の位置は、ドット成長の起点の位置と呼ぶことができる。このようなドットの成長パターンは、ディザマトリクスDM内のしきい値の配置によって決定される。図4のディザマトリクスDMでは、図4の符号SP1、SP2で示す2個の位置がドット成長の起点の位置に対応する。本実施例のように、1個の画素PXの第1方向D1の長さが、第2方向の長さより短い印刷画像のためのディザマトリクスDMは、ディザマトリクスDMのように、比較的低い濃度を示す濃度値の範囲内では、第1方向D1にドットが成長するように規定されることが多い。
印刷データは、図3に示す部分画像PD1から解るように、ドットを構成する画素と、ドットを構成しない画素とを、画素ごとに規定する二値データである。すなわち、印刷データは、上述した印刷実行部200(図2)によって印刷が実行された場合に、感光体ドラム54の表面に形成されるドット領域と空白領域との配置を規定するデータであると、言うことができる。以下では、印刷データによって規定されるドット領域の第1方向D1の長さ(単位は画素)を、「ドット長」と呼ぶ。ここで、ドット長は、印刷データによって規定される目標値(理想的な長さ)であり、実際に印刷原稿に現れるドットの第1方向D1の長さとは異なる。以下では、実際に印刷原稿に現れるドット(印刷ドットとも呼ぶ)の第1方向D1の長さを、「実ドット長」と呼ぶ。
実ドット長は、印刷実行部200の要素(感光体ドラム54、露光部51、搬送ローラなど)の性能や、製造精度によって、ばらつく。また、実ドット長は、トナーの状態(残量、経時変化など)、印刷環境要因(温度、湿度など)によって、ばらつく。特に、ドット長が、比較的短い場合、例えば、ドット長が1画素〜4画素程度である場合には、ドット領域の面積が小さいために、ドット領域に対するトナーの付着が不安的になる。この結果、印刷ドットの実ドット長は、上記の様々な要因によって、短くなりやすい。例えば、ドット長が、比較的短い場合には、印刷ドットがほとんど形成されない場合もあり得る。実ドット長がばらつくと、印刷原稿の画質(例えば、濃度の再現性)が劣化する可能性がある。特に、比較的濃度が低い画像は、ドット長が短くなりやすいので、適切に表現することができない可能性がある。本実施例では、比較的濃度が低い画像を適切に表現するための画像処理が実行される。
[A3.画像処理]
[A3−1.ハーフトーン設定処理]
ハーフトーン設定処理は、利用者の指示に応じて、あるいは、所定の実行条件が満たされた場合に、自発的に実行される。実行条件は、例えば、印刷品質が変動し得るタイミングでハーフトーン設定処理が実行されるように、適宜に設定される。実行条件は、例えば、1)トナーカートリッジ、感光体ドラム54などの消耗品が交換されたこと、2)前回のハーフトーン設定処理の後に、所定期間が経過した、あるいは、所定枚数以上の印刷が実行されたこと、などが挙げられる。また、ハーフトーン設定処理は、プリンタ900の最初の起動時に、実行されても良い。
図5は、ハーフトーン設定処理のフローチャートである。ハーフトーン設定処理は、比較的濃度が低い画像を適切に表現できるように、ハーフトーン処理に関する設定を行う。ハーフトーン処理は、印刷に使用する色成分(例えば、CMYKの各成分)ごとの多階調(例えば、256階調)の画像データを、上述した印刷データに変換する処理である。ハーフトーン設定処理は、モノクロ印刷を対象とする場合には、黒色成分について実行され、カラー印刷を対象とする場合には、CMYKの各成分について実行される。図5は、1個の成分についての処理のフローチャートを示している。
ステップS10では、パッチ印刷部312は、パッチデータ群136を用いて、複数個のパッチを、搬送ベルト58の表面に印刷する。図6は、搬送ベルト58に印刷された複数個のパッチの一例を示す図である。複数個(本実施例では、16個)のパッチPC(n)(nは、16以下の自然数)は、搬送ベルト58の表面における、読取部40の読み取り対象となる領域SA内に、印刷される。パッチデータ群136は、16個のパッチPC(n)を印刷するための16個のパッチデータを含んでいる。
図7は、パッチデータについて説明する図である。16個のパッチPC(1)〜PC(16)は、16種のドット長「1(画素)」〜「16(画素)」にそれぞれ対応している。すなわち、パッチPC(n)の「n」は、対応するドット長を表している。各パッチデータは、対応するドット長のドット領域が配置された画像を表す印刷データである。各パッチデータによって表される画像には、対応するドット長「n」を有する所定個数の部分画像PM(n)がマトリクス状に並べて配置されている。図7(A)〜(C)は、それぞれ、ドット長「1」〜「3」のドット領域D(1)〜D(3)が配置された部分画像PM(1)〜M(3)を示している。部分画像PM(1)〜PM(3)は、パッチPC(1)〜PC(3)を印刷するためのパッチデータによって表される画像の部分画像である。図7(D)〜(F)は、それぞれ、ドット長「14」〜「16」のドット領域D(14)〜D(16)が配置された部分画像PM(14)〜PM(16)を示している。部分画像PM(14)〜MC(16)は、パッチPC(14)〜PC(16)を印刷するためのパッチデータによって表される画像の部分画像である。各パッチデータによって表される画像に含まれる単位面積あたりのドット領域の数は同じである。したがって、各パッチデータによって表される画像の濃度、すなわち、単位面積辺りのドット領域の面積(露光量)は、対応するドット長が長いほど、大きくなる。ただし、実際に印刷される16個のパッチPC(n)の濃度は、パッチデータによって表される画像の濃度(露光画素数)とは、異なり得る。例えば、印刷環境によっては、対応するドット長が短いパッチPC(1)内には、ほとんどドットが形成されない可能性もある。
図5のステップS20では、パッチ濃度検出部314は、搬送ベルト58の表面に印刷された16個のパッチPC(n)のそれぞれを、読取部40を用いて読み取ることによって、各パッチPC(n)の検出濃度S(n)を取得する。
ステップS30では、パッチ決定部310は、16個のパッチPC(n)の中に、検出濃度S(n)が所定のしきい値TH以上であるパッチ(有効パッチ)が有るか否かを判断する。しきい値THは、例えば、パッチ内のドットの実ドット長が、表現すべき最低濃度を表現するために最低限必要な長さ(例えば、1画素分の長さ)である場合のパッチの濃度に設定される。例えば、しきい値THは、パッチ内の印刷ドットの実ドット長の実測データと、パッチの濃度の実測データと、を比較することによって、予め実験的に定められている。上述したばらつきによって、パッチデータ上のドット長が「1」以上であるパッチPC(n)の検出濃度S(n)、すなわち、16個の全てのパッチPC(n)の検出濃度S(n)が、しきい値TH以上となる場合もある。この場合は、16個の全てのパッチPC(n)が有効パッチである。また、パッチデータ上のドット長が「3」以下であるパッチPC(1)〜PC(3)の検出濃度S(1)〜S(3)が、しきい値THより小さくなり、パッチデータ上のドット長が「4」以上であるパッチPC(4)〜PC(16)の検出濃度S(4)〜(16)が、しきい値TH以上になる場合もある。この場合には、13個のパッチPC(4)〜PC(16)が、有効パッチである。
有効パッチがない場合、すなわち、16個のパッチPC(n)の検出濃度S(n)が全てしきい値THより小さい場合には(ステップS30:NO)、画像処理部300は、エラーメッセージを表示部180に表示する(ステップS80)。本実施例では、10個程度の有効パッチがあることが想定されているので、16個のパッチPC(n)の検出濃度S(n)が全てしきい値THより小さい場合は、トナーや感光体ドラム54の過度な劣化や、何らかの故障の発生、などの不具合が考えられる。このため、例えば、これらの不具合の可能性を示唆して、不具合の解消を促すエラーメッセージが表示部180に表示される。続くステップS90では、画像処理部300は、デフォルトの処理、本実施例では、全ての入力値(濃度値)に対して、ディザマトリクスDMを適用する処理を、使用すべきハーフトーン処理として設定する。例えば、画像処理部300は、使用すべきハーフトーン処理がデフォルトの処理であること示す設定データ138(図1)を、不揮発性メモリ130に格納する。
有効パッチがある場合には(ステップS30:YES)、パッチ決定部310は、有効パッチのうち、最小のドット長に対応するパッチを特定パッチとして決定する(ステップS40)。以下では、ドット長「5」に対応するパッチPC(5)が特定パッチに決定された場合を例に説明する。
ステップS50では、特定パッチに対応するドット長以上のドット領域を利用するドット領域に決定する。具体的には、パッチ決定部310は、16個のパッチPC(n)に対応する16種類のドット領域D(n)のうち、ドット長が「5」以上の12個のドット領域D(5)〜D(16)を、利用するドット領域に決定する。
ステップS60では、露光パターン決定部320は、露光パターン決定処理を実行する。図8は、露光パターン決定処理のフローチャートである。
ステップS610では、露光パターン決定部320は、利用するドット領域D(n)を組合わせて、複数個の露光パターンを決定する。
露光パターンのサイズ(初期サイズ)は、図4のディザマトリクスDMのサイズと同じである。すなわち、本実施例の露光パターンのサイズは、6行×48列分の画素に対応するサイズであり、図3の部分画像PD1と同じサイズである。露光パターン決定部320は、このサイズの領域の所定の配置位置に、利用するドット領域D(n)を配置して、露光量が互いに異なるM個の露光パターンEP(m)を決定する(mは、M以下の自然数)。露光パターンの露光量は、露光パターン内に配置されたドット領域の面積に相当し、ドット領域を構成する画素の数で表される。ここで、以下では、単に、露光量と言うとき、単位面積あたりの露光量、例えば、ディザマトリクスDMのサイズ辺りの露光量を意味するものとする。露光パターンの露光量は、露光パターンによって表現される濃度を示している。
所定の配置位置は、上述したディザマトリクスDM(図4)によって決まるドット成長の起点の位置、すなわち、図4のディザマトリクスDMにおいて符号SP1、SP2で示す位置に対応する位置である。
図9は、決定される露光パターンの一例を示す図である。図9では、図3と同様に、6行×48列分の画素の図示に変えて、1行×8列分の画素に対応する画素ブロックを用いて露光パターンを図示している。図9(A)の露光パターンEP(1)には、ドット長「5」のドット領域D(5)が、2個の配置位置にそれぞれ配置されている。図9(B)の露光パターンEP(2)には、ドット長「5」のドット領域D(5)と、ドット長「6」のドット領域D(6)とが、2個の配置位置にそれぞれ配置されている。なお、露光パターンにおいて、ドット領域以外の領域は、空白領域である。
このように、露光パターン決定部320は、12個の利用するドット領域D(5)〜D(16)を、以下のように、2個ずつ組合わせて、23個の露光パターンを決定する。
{D(5)、D(5)}、{D(5)、D(6)}、{D(6)、D(6)}、{D(6)、D(7)}、{D(7)、D(7)}...(途中省略)...{D(15)、D(15)}、{D(15)、D(16)}、{D(16)、D(16)}
図9(A)〜(G)には、これらの23個の露光パターンのうち、{D(5)、D(5)}、{D(5)、D(6)}、{D(9)、D(9)}、{D(9)、D(10)}、{D(15)、D(16)}、{D(16)、D(16)}の6つの組合わせに対応する6個の露光パターンEP(1)、EP(2)、EP(9)、EP(10)、EP(22)、EP(23)が示されている。なお、露光パターンEP(m)(mは、M以下の自然数)は、M個の露光パターンのうち、露光量がm番目の露光パターンを示している。
ステップS615では、露光パターン決定部320は、決定された露光パターンの個数Mを算出する。例えば、12個のドット領域D(5)〜D(16)を利用する場合は、上述したように、M=23である。より一般的に言えば、K種類のドット領域D(n)を利用する場合には、2個の同じドット長のドット領域が配置されるK個の露光パターンと、ドット長が1だけ異なる2種のドット領域が配置される(K−1)個の露光パターンと、の合計(2K−1)個の露光パターンが決定される。すなわち、露光パターンの個数Mは、M=(2K−1)と表すことができる。ここで、Kは2以上の自然数である。M=(2K−1)であるので、M>Kである。
ステップS620では、露光パターン決定部320は、M番目の露光パターンEP(M)の露光量PV(M)を算出する。M番目の露光パターンEP(M)は、決定されたM個の露光パターンのうち、露光量が最大である露光パターンである。露光量は、露光パターン内において、ドット領域D(n)が配置された画素の数で表される。例えば、12個のドット領域D(5)〜D(16)を利用する場合は、23番目の露光パターン、すなわち、図9(G)に示す露光パターンEP(23)の露光量「32」が算出される。
ステップS625では、露光パターン決定部320は、入力濃度値(M+1)に対応するディザマトリクスDMの露光量DV(M+1)を算出する。具体的には、露光パターン決定部320は、ディザマトリクスDMに規定されたしきい値のうち、(M+1)以下のしきい値の数を、露光量DV(M+1)として算出する。ディザマトリクスDMの露光量DV(M+1)は、入力濃度値を画素値とする画像データに対して、ディザマトリクスDMを適用して得られる印刷データによって表現される濃度を示している。例えば、12個のドット領域D(5)〜D(16)を利用する場合は、M=23であるので、入力濃度値「24」に対応するディザマトリクスDMの露光量DV(24)が算出される。図4には、24以下の値を有する33個のしきい値が符号DVAによって示されている。図4から解るように、図4のディザマトリクスDMが用いられる場合には、露光量DV(24)は、「33」である。
ステップS630では、露光パターン決定部320は、入力濃度値(M+1)に対応するディザマトリクスDMの露光量DV(M+1)より、M番目の露光パターンの露光量PV(M)が小さいか否かを判断する。図4のディザマトリクスDMが用いられる場合であって、12個のドット領域D(5)〜D(16)を利用する場合は、上述したように、露光量PV(23)=32、露光量DV(24)=33であるので、入力濃度値(24)に対応するディザマトリクスDMの露光量DV(24)より、23番目の露光パターンの露光量PV(23)は小さいと判断される。
露光量DV(M+1)より、露光量PV(M)が小さい場合には(ステップS630:YES)、露光パターン決定部320は、1以上M以下のM個の入力濃度値のそれぞれに対して、対応する露光パターンを設定して(ステップS635)、露光パターン決定処理を終了する。具体的には、入力濃度値(m)に対して、露光パターンEP(m)を対応付ける(mはM以下の自然数)。例えば、図9に示す6個の露光パターンEP(1)、EP(2)、EP(9)、EP(10)、EP(22)、EP(23)は、入力濃度値1、2、9、22、23にそれぞれ対応付けられる。一般的に言えば、M個の露光パターンは、1以上M以下の比較的低濃度を示すM個の入力濃度値のそれぞれに対して、単位面積あたりの露光量が小さい順番に、1個ずつ設定される。
図10は、露光パターンの決定について説明する第1の図である。図10のグラフのうち、入力濃度値M以下の領域は、1以上M以下の入力濃度値のそれぞれに対して、ステップS635にて設定された露光パターンの露光量をプロットして得られるグラフである。図10のグラフのうち、入力濃度値(M+1)以上の領域は、(M+1)以上の入力濃度値に対応するディザマトリクスの露光量をプロットして得られるグラフである。(M+1)以上の入力濃度値に対応する露光量は、使用されるディザマトリクスにおけるしきい値の設定によって異なる。図10のディザマトリクスAは、例えば、図4のマトリクスDMのように、露光パターンEP(M)の露光量PV(M)が、ディザマトリクスの露光量DVa(M+1)より小さい場合の例である。この場合には、入力濃度値の増加に対して、対応する露光量が単調増加するように、各入力濃度値に対応する露光量が設定される。したがって、上記ステップS635の処理によって、適切な露光パターンが設定される。
一方、図10のディザマトリクスBは、例えば、図4のマトリクスDMとは異なり、露光パターンEP(M)の露光量PV(M)が、ディザマトリクスの露光量DVa(M+1)以上である場合の例である。例えば、M=23である例では、23番目の露光パターンの露光量PV(23)=32に対して、入力画素値(24)に対応する露光量DVの露光量DV(24)=31である場合などである。この場合には、仮に上記ステップS635の処理によって露光パターンを設定すると、入力濃度値の増加に対して、対応する露光量が単調増加せず、入力濃度値(M)から入力濃度値(M+1)への増加に対して、対応する露光量が減少してしまう。
このために、露光量DV(M+1)が、露光量PV(M)以上である場合には(ステップS630:NO)、露光パターン決定部320は、ステップS630の処理に代えて、以下に説明するステップS640〜S660までの処理を実行する。
ステップS640では、露光パターン決定部320は、露光パターンのサイズを2倍に拡大する。図11は、サイズが拡大された露光パターンの一例を示す図である。本実施例では、図11に示すように、露光パターンの第2方向D2方向の長さを2倍に変更している。すなわち、12行×48列分の画素に対応する領域が拡大後の露光パターンのサイズになる。これに代えて、露光パターンの第1方向D1方向の長さを2倍に変更してもよい。この結果、単位面積あたりの露光量を増加させることなく、露光パターン内に配置できるドット領域の数を2倍に増加させることができる。例えば、図11(A)の露光パターンDP(1)の単位面積あたりの露光量は、図9(A)の露光パターンEP(1)と同じであるが、露光パターン内に4個のドット領域D(5)を配置することができる。
ステップS645では、露光パターン決定部320は、利用するドット領域D(n)を組合わせて、Q個の露光パターンを決定する。拡大後のサイズの露光パターン内には、4個のドット領域を配置することができる。このために、12個の利用するドット領域D(5)〜D(16)を利用する場合には、露光パターン決定部320は、以下のように、ドット領域を4個ずつ組合わせて、互いに露光量が異なる45個の露光パターンを決定できる。
{D(5)、D(5)、D(5)、D(5)}、{D(5)、D(5)、D(6)、D(5)}、{D(6)、D(5)、D(6)、D(5)}、{D(6)、D(6)、D(6)、D(5)}、{D(6)、D(6)、D(6)、D(6)}...(途中省略)...{D(15)、D(15)、D(16)、D(15)}、{D(16)、D(15)、D(16)、D(15)}、{D(16)、D(16)、D(16)、D(15)}、{D(16)、D(16)、D(16)、D(16)}
図11(A)〜(D)には、これらの45個の露光パターンのうち、{D(5)、D(5)、D(5)、D(5)}、{D(5)、D(5)、D(6)、D(5)}、{D(6)、D(5)、D(6)、D(5)}、{D(6)、D(6)、D(6)、D(5)}の4つの組合わせに対応する4個の露光パターンDP(1)〜DP(4)が示されている。なお、露光パターンDP(q)(qは、Q以下の自然数)は、Q個の露光パターンのうち、露光量がq番目の露光パターンを示している。
ステップS650では、露光パターン決定部320は、露光量が最小の露光パターンDP(1)を、露光パターンを対応付けるべきM個の入力濃度値のうちの最低濃度値、すなわち、入力濃度値(1)に対して設定する。図11(A)の例では、ディザマトリクスの2倍のサイズの露光パターンDP(1)の露光量は、「20」であるから、ディザマトリクスのサイズ辺りの露光量は、「10」である。
ステップS655では、露光パターン決定部320は、入力濃度値(M+1)に対応するディザマトリクスの露光量DV(M+1)より小さい露光量の露光パターンのうち、露光量が最大の露光パターンを、入力濃度値(M)に対して設定する。例えば、M=23である例において、入力画素値(24)に対応するディザマトリクスの露光量DVの露光量DV(24)=31である場合には、{D(15)、D(15)、D(16)、D(15)}の組合わせに対応する露光パターンDP(42)が、入力濃度値(23)に対応付けられる。ディザマトリクスの2倍のサイズの露光パターンDP(42)、DP(43)の露光量は、それぞれ、「61」、「62」であり、露光パターンDP(42)、DP(43)のディザマトリクスのサイズ辺りの露光量は、それぞれ、「30.5」、「31」であるからである。
図12は、露光パターンの決定について説明する第2の図である。図12に示すように、ステップS650によって決定される入力濃度値(1)に対応する露光パターンのディザマトリクスのサイズあたりの露光量をPd(1)とする。また、ステップS655によって決定される入力濃度値(M)に対応する露光パターンのディザマトリクスのサイズあたりの露光量をPd(M)とする。
ステップS660では、露光パターン決定部320は、2以上(M−1)以下の(M−2)個の入力階調値(s)のそれぞれに対応する露光パターンを、線形補間を用いて決定する(sは、2以上(M−1)以下の自然数)。具体的には、入力階調値(s)に対応付けるべき露光パターンの目標露光量TG(s)を、以下の式(1)を用いて算出する(図12参照)。
TG(s)={(M−s)×Pd(1)+(s−1)×Pd(M)}/(M−1)
...(1)
例えば、M=23、Pd(1)=10、Pd(M)=30.5、の例では、入力階調値(10)に対応付けるべき露光パターンの目標露光量TG(10)は、「約18.4」である。
次に露光パターン決定部320は、選択可能な露光パターンの中から、目標露光量TG(s)に最も近い露光量の露光パターンを、入力階調値(s)に対応する露光パターンに決定する。例えば、上述した例における目標露光量TG(10)=約18.4に最も近い露光量を有する露光パターンは、{D(9)、D(9)、D(10)、D(9)}の組合わせに対応する露光パターンDP(18)である。露光パターンDP(18)のディザマトリクスのサイズあたりの露光量は、「18.5」である。したがって、入力階調値(10)に対して、露光パターンDP(18)が対応付けられる。
このように、(M−2)個の入力階調値(s)のそれぞれに対して、対応する露光パターンが設定されると、露光パターン決定処理は終了される。
図5のステップS70では、画像処理部300は、露光パターン決定処理によって決定された露光パターンを用いる処理を実行するように、ハーフトーン処理に関する設定を行う。具体的には、画像処理部300は、露光パターンが設定された1以上M以下の入力濃度値の範囲(特定の低濃度範囲とも呼ぶ)を規定したデータと、特定の低濃度範囲内のM個の入力濃度値に対応するM個の露光パターンを表すデータと、を含む設定データ138(図1)を、不揮発性メモリ130に格納する。
[A3−1.印刷データ生成処理]
図13は、印刷データ生成処理のフローチャートである。印刷データ生成処理は、例えば、プリンタ900の通信部190を介して、図示しない外部の計算機から印刷ジョブが受け付けられたときに、開始される。または、印刷データ生成処理は、不揮発性メモリ130に格納された画像データの指定と、指定された画像データの印刷指示とが、操作部170を介して、利用者から受け付けられた場合に、開始される。
ステップS105では、印刷データ生成部330は、印刷すべき画像データを取得する。画像データは、例えば、外部の計算機から受け付けられた印刷ジョブから取得される。あるいは、利用者に指定された画像データが、対象画像データとして、不揮発性メモリ130から取得される。
ステップS110では、印刷データ生成部330は、印刷すべき画像データを、RGB値で構成されたビットマップデータ(RGB画像データ)に変換するラスタライズ処理を実行する。RGB画素データは、RGBの各色成分の階調値(例えば、256階調)を含む。RGB画像データの画素数は、印刷解像度(本実施例では、600dpi×4800dpi(図3))に対応した画素数に調整される。
ステップS115では、印刷データ生成部330は、RGB画像データを、印刷に用いるトナーに対応する成分ごとの濃度値を画素値とする濃度画像データに変換する。例えば、濃度画像データは、モノクロ印刷の場合には、黒成分の濃度値を画素値とする1成分の画像データである。濃度画像データは、カラー印刷の場合には、CMYKの4成分の濃度値を画素値とする4成分の画像データである。この色変換処理は、変換前の画素データ(RGBの各成分値)と変換後の画素データ(K成分値、あるいは、CMYKの各成分値)とを対応付ける変換プロファイル(例えば、ルックアップテーブル)を用いて行われる。この濃度画像データは、対象画像データの例である。
ステップS120では、印刷データ生成部330は、処理対象の1個の成分を選択する。モノクロ印刷の場合は、K成分が選択され、カラー印刷の場合は、CMYKの4成分のうちの1個の成分が選択される。
ステップS125では、濃度画像データに含まれる複数個の画素のうち、1個の画素が処理対象画素として選択される。処理対象画素は、所定の処理順序に従って選択される。処理順序は、例えば、行単位では、画像の上端から第2方向D2(下方)に向かう順であり、行内では、左端から第1方向D1(右方向)に向かう順である。
ステップS130では、印刷データ生成部330は、処理対象の画素値、すなわち、処理対象画素の処理対象成分の成分値が、特定の低濃度範囲内であるか否かを判断する。特定の低濃度範囲は、対応する露光パターンが設定されている1以上M以下の範囲である。処理対象の画素値が特定の低濃度範囲でない場合には(ステップS130:NO)、印刷データ生成部330は、処理対象画素に対応する、ディザマトリクスDM内の位置のしきい値と、処理対象の画素値とを比較することによって、処理対象の画素値を二値化する(ステップS145)。すなわち、処理対象の画素値が対応するしきい値以上である場合には、対応する印刷データの画素値として、画素がドット領域を構成することを示す値「1」が生成される。処理対象の画素値が対応するしきい値より小さい場合には、対応する印刷データの画素値として、画素が空白領域を構成することを示す値「0」が生成される。すなわち、印刷データ生成部330は、デフォルトのハーフトーン処理を用いて、処理対象の画素値に対応する印刷データの画素値を生成する。
処理対象の画素値が特定の低濃度範囲内である場合には(ステップS130:YES)、印刷データ生成部330は、処理対象の画素値(1以上M以下の入力濃度値を取る)に対応する露光パターンを規定するデータを、設定データ138から取得する(ステップS135)。
ステップS140では、印刷データ生成部330は、処理対象画素に対応する、露光パターン内の位置を参照して二値化する(ステップS145)。すなわち、処理対象の画素に対応する、露光パターン内の位置が、ドット領域である場合には、対応する印刷データの画素値として、画素がドット領域を構成することを示す値「1」が生成される。処理対象画素に対応する、露光パターン内の位置が、空白領域である場合には、対応する印刷データの画素値として、画素が空白領域を構成することを示す値「0」が生成される。
ここで、処理対象画素に対応する露光パターン内の位置は、例えば、ディザマトリクスDMを用いる周知のハーフトーン処理における、処理対象画素に対応するディザマトリクスDM内の位置と同様に決定される。すなわち、処理対象の画像にディザマトリクスDMを適用する場合と同様に、処理対象の画像上に、露光パターンをマトリクス状に隙間無く並べた場合に、処理対象画素と重なる露光パターン内の位置が、その処理対象画素に対応する露光パターン内の位置である。具体的には、例えば、図9(A)の露光パターンEP(1)内の画素の座標(X1、Y1)を、左上の角の画素の座標を原点(0、0)として表すとする。そして、処理対象の画像内の画素の座標(X2、Y2)を、左上の角の画素の座標を原点(0、0)として表すとする。X1、X2は、第1方向D1に増加する座標値、Y1、Y2は、第2方向D2に増加する座標値である。露光パターンEP(1)は、6行×48列のサイズであるので、例えば、処理対象画素のうち、座標(X2、Y2)=(48×a、6×b)の画素(a、bは自然数)は、露光パターンEP(1)の座標(X1、Y1)=(0、0)の位置に対応する。
ステップS150では、印刷データ生成部330は、全ての画素を処理したか否かを判断する。未処理の画素がある場合には(ステップS150:NO)、ステップS125に戻って、次の処理対象画素について、上述した処理が実行される。全ての画素が処理された場合には(ステップS150:YES)、印刷データ生成部330は、全ての成分を処理したか否かを判断する(ステップS155)。未処理の成分が処理された場合には(ステップS155:NO)、ステップS120に戻って、次の処理対象の成分について、上述した処理が実行される。全ての成分が処理された場合には(ステップS155:YES)、すなわち、成分毎の印刷データが全て生成された場合には、印刷制御部400は、生成された印刷データを、印刷実行部200に供給して、印刷を実行する(ステップS160)。
以上説明した第1実施例によれば、濃度画像データにおける特定の低濃度範囲内の画素値は、露光パターンに基づくハーフトーン処理によって、印刷データにおける画素値に変換される。すなわち、印刷データのうち比較的低い濃度で表現される領域を表すデータは、特定パッチに対応するドット長以上のドット長を有するドット領域が配置された露光パタ−ンに基づいて生成される。この結果、印刷データを用いた印刷によって得られる印刷画像において、比較的低い濃度を示す領域は、特定パッチに含まれるドット以上の実ドット長を有するドットによって、表現される可能性が高くなる。この結果、濃度を適切に表現できるパッチを特定パッチとして選択すれば、印刷画像において、比較的低い濃度の色を適切に表現することができる。
具体的には、特定パッチは、読取部40を用いて、適切に濃度を表現できることが確認された有効パッチのうち、対応するドット長が最小のパッチである。そして、特定パッチに対応するドット長を有するドット領域が、ゼロを除く最低の入力濃度値「1」に対応する露光パターン内に配置される(図9(A)、図11(A))。この結果、印刷画像において最低濃度で表現されるべき領域に現れる印刷ドットの実ドット長(最小実ドット長とも呼ぶ)は、特定パッチ内の印刷ドットの実ドット長に近くなることが期待できる。したがって、最小実ドット長を適正化することができる。仮に特定パッチに対応するドット長より小さいドット長のドット領域が含まれる印刷データに従って、最低濃度で表現されるべき領域が印刷されると、この領域には、有効なドットが形成されない可能性や、過度に小さいドットが形成される可能性がある。この場合には、最低濃度で表現されるべき領域の色を、適切に表現できない可能性がある。また、仮に特定パッチに対応するドット長より大きいドット長のドット領域が含まれる印刷データに従って、最低濃度で表現されるべき領域が印刷されると、この領域には、過度に大きなドットが形成される可能性がある。この場合には、最低濃度で表現されるべき領域の色が濃くなりすぎて、最低濃度より高い濃度で表現されるべき色は、さらに、濃く表現せざるを得なくなる可能性がある。その結果、再現可能は濃度範囲が狭くなる可能性がある。本実施例によれば、最低濃度で表現されるべき領域の色を適切に表現できる。また、再現可能な濃度範囲が狭くなる可能性を抑制することができる。
また、印刷環境や、感光体ドラム54やトナーなどの消耗品の状態などに起因して、トナーの定着特性が変化した場合には、最小実ドット長を実現するために必要な、印刷データ上におけるドット領域のドット長(最小ドット長)が変動する場合がある。この場合に、本実施例のハーフトーン設定処理を実行すれば、その時点でのトナーの定着特性は、複数個のパッチの印刷状態に反映される。したがって、本実施例によれば、適切な特定パッチを決定することによって、その時点でのトナーの定着特性を反映した適切な最小ドット長を決定することができるので、その時点でのトナーの定着特性に応じて、比較的低い濃度の色を適切に表現することができる。
さらに、特定の低濃度範囲内の入力濃度値のそれぞれに、露光量が互いに異なる露光パターンを対応付けるので、比較的低い濃度の色を表現するための階調数を減らすことなく、最小実ドット長を適正化することができる。したがって、比較的低い濃度で表現される領域の階調性を向上することができる。
また、特定の低濃度範囲外の入力濃度値を画素値とする画素に対しては、複数個のパッチとは無関係の所定のハーフトーン処理(デフォルトのハーフトーン処理)が実行される。この結果、印刷画像において、比較的高い濃度の色を適切に表現することができる。
特定の低濃度範囲のうちの最高濃度値(M)に対応する第1の露光量が、特定の低濃度範囲より高い濃度範囲のうちの最低濃度値(M+1)に対応する第2の露光量より小さくなるように、露光パターンが決定される(図8:ステップS630〜S660)。この結果、濃度画像データの画素値が取り得る入力濃度値の増加に対して、入力濃度値に対応する露光量によって表現される濃度が減少する現象を抑制できるので、印刷画像における階調性の低下を抑制しつつ、比較的低い濃度の色を適切に表現することができる。
より具体的には、ディザマトリクスDMのサイズの露光パターンを採用した場合に、上記第1の露光量が、上記第2の露光量より大きい場合には、露光パターンのサイズが、ディザマトリクスDMの2倍のサイズに拡大(変更)される(図8:ステップS630、S640)。そして、拡大後のサイズの露光パターンを採用することで、上記第1の露光量が、上記第2の露光量より小さくなるように、複数個の露光パターンを決定する。露光パターンのサイズが大きいほど、単位面積あたりの露光量の増大を抑制しながら、表現可能な階調数を増加させることができる。このために、露光パターンのサイズを拡大することによって、対象画像データの画素値が取り得る入力濃度値の増加に対して、入力濃度値に対応する露光量が減少する現象を容易に抑制することができる。
また、露光パターン決定部320は、2種のドット領域が配置された露光パターン、具体的には、図9の露光パターンEP(2)、EP(10)、図11の露光パターンDP(2)〜DP(4)を含む複数個の露光パターンを決定する。この結果、露光パターン決定部320は、ドット領域の種類数より多数の露光パターンであって、かつ、露光量が互いに異なる露光パターンを決定することができる。例えば、ディザマトリクスDMのサイズの露光パターンを用いる場合には、上述したように、12種類のドット領域D(n)を用いて、23個の露光パターンを作成できる。また、ディザマトリクスDMの2倍のサイズの露光パターンを用いる場合には、上述したように、12種類のドット領域D(n)を用いて、45個の露光パターンを作成できる。この結果、ドット領域の種類数より多くの階調数を、露光パターンを用いて表現することができるので、表現可能な階調数の低下を抑制しつつ、比較的低い濃度の色を適切に表現することができる。
ここで、図10の露光パターンDPのように、4個のドット領域D(n)が配置される場合には、図10のように、2種のドット領域D(n)を配置する例に限られず、3種まは4種のドット領域D(n)を配置して露光パターンを作成しても良い。また、作成される全ての露光パターンに2種類以上のドット領域が配置されている必要はなく、例えば、図9の露光パターンEP(1)、EP(9)、図11の露光パターンDP(1)のように、1種類のドット領域D(n)が配置された露光パターンが含まれていても良い。一般的に言えば、露光パターン決定部320は、A1(A1は2以上の自然数)種類のドット長に対応するA1種類の前記ドット領域のうちの2種以上のドット領域が配置された露光パターンを含むA2個(A2は、A1<A2の自然数)の露光パターンであって、単位面積あたりの露光量が互いに異なるA2個の前記露光パターンを決定することが好ましい。
また、露光パターン決定部320は、特定の低濃度範囲のうちの最高濃度値(M)に対応する第1の露光パターンを決定し(図8:ステップS650)、特定の低濃度範囲のうちの最低濃度値(1)に対応する第2の露光パターンを決定する(図8:ステップS655)。そして、露光パターン決定部320は、2以上(M−1)以下の濃度値に対応する第3の露光パターンを、第1の露光パターンの露光量と、第2の露光パターンの露光量と、を用いた補間を用いて決定する(図8:ステップS660)。この結果、2以上(M−1)以下の濃度値に対応する第3の露光パターンを、適切な露光量を有する露光パターンに決定できる。この結果、印刷画像において、比較的低い濃度で表される領域の階調を適切に表現できる。
図3に示すように、本実施例の印刷画像は、第1方向D1の解像度が、第2方向D2の解像度より高い。すなわち、画素の第1方向D1の長さが、第2方向D2の長さより短い。したがって、比較的小さいドットでは、第1方向D1のドット長が、第2方向D2のドットの長さより短くなりやすい。この場合には、比較的小さいドットが適切に形成できるか否かは、第1方向D1のドット長に依存しやすい。したがって、第1方向D1のドット長を適切に定めることで、比較的低い濃度の色を適切に表現することができる。
パッチ決定部310は、印刷された複数個のパッチのうち、読取部40(光学センサ)を用いて読み取って得られる検出濃度S(n)がしきい値TH以上である有効パッチの中から特定パッチを決定する。この結果、読取部40を用いて、適切な特定パッチを選択することができる。
また、露光パターンを表すデータは、1画素あたり1ビットのデータ量になるので、露光パターンを表すデータのデータ量は、比較的小さい。この結果、例えば、複数のディザマトリクスDMを保持する必要がある画像処理と比較して、プリンタ900のメモリを節約することができる。複数のディザマトリクスDMを保持する必要がある画像処理は、例えば、基準となるデフォルトのディザマトリクスを修正して、修正済みのディザマトリクスを生成する画像処理が考えられる。
[B.第2実施例]
上記第1実施例のハーフトーン設定処理(図5)では、露光パターン決定部320は、有効パッチのうち、最小のドット長に対応するパッチを特定パッチとして決定する(ステップS40)。そして、露光パターン決定部320は、特定パッチに対応するドット長以上のドット領域を利用するドット領域に決定する(ステップS50)。そして、露光パターン決定処理(ステップS60)では、利用するドット領域が配置された露光パターンを決定する。これに対して、第2実施例では、特定パッチが決定された(ステップS40)後に、露光パターン決定部320は、読取部40によって検出された検出濃度S(n)を用いて、複数個のパッチのうち、特定パッチを含む複数個の利用パッチを決定する。そして、複数個の利用パッチに対応するドット長を有する複数個のドット領域が、利用するドット領域に決定される。そして、露光パターン決定処理(ステップS60)では、第1実施例と同様に、利用するドット領域が配置された露光パターンを決定する。すなわち、第2実施例では、図5のステップS50に代えて、以下に説明する利用パッチ決定処理が実行される。
図14は、利用パッチ決定処理のフローチャートである。ステップS20Aでは、パッチ決定部310は、図5のステップS40にて決定された特定パッチを、利用パッチに決定する。すなわち、複数個の利用パッチには、少なくとも特定パッチが含まれる。
ステップS30Aでは、パッチ決定部310は、直前に決定された利用パッチを新たな基準パッチに設定する。図14から解るように、最初のステップS30Aは、ステップS20Aの後に実行され、2回目以降のステップS30Aは、後述するステップS90Aの後に実行される。したがって、最初のステップS30Aでは、ステップS20Aで決定された利用パッチ、すなわち、特定パッチをが、最初の基準パッチに決定される。2回目以降のステップS30Aでは、直前のステップS90Aで決定された利用パッチが、2回目以降の基準パッチに設定される。
ステップS40Aでは、パッチ決定部310は、現在の基準パッチの次のパッチはあるか否かを判断する。ここで、一のパッチの次のパッチとは、図6の16個のパッチPC(n)(nは、16以下の自然数)を、対応するドット長が短い順に並べた場合に、当該一のパッチの次の順番に位置するパッチを意味する。上述したように、パッチPC(n)の「n」は、対応するドット長(単位は画素)を表しているので、例えば、パッチPC(5)の次のパッチは、パッチPC(6)である。したがって、パッチ決定部310は、現在の基準パッチが、対応するドット長が最大であるパッチPC(16)でない限り、次のパッチはあると判断する。
現在の基準パッチの次のパッチがある場合には(ステップS40A:YES)、パッチ決定部310は、現在の基準パッチの次のパッチを比較パッチに設定する(ステップS50A)。ステップS60Aでは、パッチ決定部310は、現在の比較パッチの検出濃度Sbと、現在の基準パッチの検出濃度Srとの差分ΔS=(Sb−Sr)が、所定のしきい値TH2以上であるか否かを判断する(ステップS60A)。これらの検出濃度は、図5のステップS20で、読取部40を用いて検出された濃度である。しきい値TH2は、例えば、比較パッチ内の印刷ドットの実ドット長と、基準パッチ内の印刷ドットの実ドット長との間に、有意差(例えば、1画素分の長さの差)があると認められる程度の濃度差に設定される。例えば、しきい値TH2は、図5のステップS30で用いられるしきい値THと同様に、パッチ内の印刷ドットの実ドット長の実測データと、パッチの濃度の実測データと、を比較することによって、予め実験的に定められている。しきい値TH2は、しきい値THと同じであっても良い。
差分ΔSがしきい値TH2以上である場合には(ステップS60A:YES)、パッチ決定部310は、現在の比較パッチを、新たに利用パッチに決定(追加)して(ステップS90A)、上述したステップS30Aに戻る。差分ΔSがしきい値TH2より小さい場合には(ステップS60A:NO)、パッチ決定部310は、現在の比較パッチの次のパッチがあるか否かを判断する(ステップS70A)。
現在の比較パッチの次のパッチがある場合には(ステップS70A:YES)、パッチ決定部310は、現在の比較パッチの次のパッチを新たな比較パッチに設定して(ステップS80A)、上述したステップS60Aに戻る。
ステップS40Aにて、現在の基準パッチの次のパッチがない場合(ステップS40A:NO)、または、ステップS70にて、現在の比較パッチの次のパッチがない場合には(ステップS70A:NO)、パッチ決定部310は、その時点までに上述したステップS30A、90Aにて、決定されている複数個の利用パッチに対応するドット長のドット領域を、利用する複数個のドット領域に決定する(ステップS100A)。本実施例では、例えば、16個のパッチPC(n)のうち、6個以上の利用パッチが決定されることが想定されている。利用パッチ決定処理を終了する。利用パッチ決定処理を終了すると、図5のステップS60、S70の処理が実行される。
以上説明した第2実施例によれば、パッチ決定部310は、複数個のパッチPC(n)の中から、特定パッチを含む複数個の利用パッチを決定する(ステップS30A、90A)。複数個の利用パッチは、特定パッチに対応する有効な最小のドット長以上のドット長に対応するパッチである。そして、印刷データ生成部330は、複数個の利用パッチのいずれかに対応するドット長を有するドット領域が配置される複数個の露光パターンを決定する(図5のステップS60)。この結果、複数個の露光パターンには、利用パッチに対応するドット長を有するドット領域が配置される。この結果、濃度を適切に表現できる複数個の利用パッチを決定すれば、印刷画像において、比較的低い濃度の色をより適切に表現することができる。
そして、本実施例では、読取部40を用いて検出された、各パッチPC(n)の検出濃度S(n)に基づいて、互いに有意差がある濃度を有する複数個の利用パッチが決定されるので、濃度を適切に表現できる複数個の利用パッチを決定することができる。この結果、印刷画像において、比較的低い濃度の領域に形成されるドットの実ドット長に、表現すべき濃度差に応じた有意差を生じさせることができる可能性が向上する。したがって、印刷画像において、比較的低い濃度の色の階調性をより確実に表現することができる。
[C.変形例]
(1)上記第1実施例では、図3,図4,図9に示すように、用いられるディザマトリクスDMのサイズと、露光パターンの初期サイズは、同じである。これに限らず、露光パターンの初期サイズは、用いられるディザマトリクスに応じて、適宜に設定される。
図15は、変形例のディザマトリクスDM2と、初期サイズの露光パターンEPbの一例を示す図である。図15(A)のディザマトリクスDM2は、例えば、第1方向D1の解像度が、2400dpiであり、第2方向D2の解像度が、600dpiである印刷画像のためのマトリクスである。ディザマトリクスDM2は、6行×24列の画素に対応サイズを有している。このディザマトリクスDM2を用いて生成される印刷データによって表される画像では、ドット成長の起点の位置は、図15(A)のディザマトリクスDM2において符号SPで示す1個の位置である。
図15(B)の露光パターンEPbの第1方向D1の長さは、ディザマトリクスDM2の第1方向D1の長さの2倍であり、第2方向D2の長さは、ディザマトリクスDM2の第2方向D2の長さと同じである。露光パターンEPbは、ディザマトリクスDM2と同じサイズを有し、第1方向D1に隣合う第1領域PE1および第2領域PE2を含んでいる。露光パターン決定部320は、第1領域PE1におけるドット成長の起点に対応する位置と、第2領域PE2におけるドット成長の起点に対応する位置と、の2箇所に、それぞれドット領域D(n)を配置することによって、露光パターンEPbを生成する。このように、ディザマトリクスDM2のサイズあたりに1個だけドット成長の起点が存在する場合には、露光パターンEPbの初期サイズを、ディザマトリクスDM2と同じサイズの領域を複数個含むサイズに設定することによって、露光パターンEPb内に複数個のドット領域D(n)を配置できるようにすることが好ましい。この結果、利用できるドット領域の種類数より多数の露光パターンを生成することができる。なお、露光パターンEPbの第2方向D2の長さを、ディザマトリクスDM2の第2方向D2の長さの2倍に設定し、第1方向D1の長さを、ディザマトリクスDM2の第1方向D1の長さと同じに設定しても良い。
(2)上記第1実施例の露光パターン決定処理(図8)では、1以上M以下の特定の低濃度範囲を決める特定の濃度値(M)は、利用するドット領域の個数Kによって決定される(M=2K−1)。これに代えて、Mの値は、予め定められていても良い。この場合には、第1実施例の露光パターン決定処理における露光パターンのサイズを拡大した後の処理(ステップS645〜S660)を、露光パターンのサイズを拡大する前に実行しても良い。すなわち、露光パターン決定部320は、予め定められた特定の濃度値(M)に対応付ける露光パターンと、濃度値(1)に対応付ける露光パターンとを、(2K−1)個の露光パターンの中から決定する。そして、露光パターン決定部320は、濃度値(M)および(1)にそれぞれ対応付けられた露光パターンの露光量に基づく線形補間によって、2以上(M−1)以下の濃度値に対応付ける露光パターンを決定しても良い。
(3)上記第1実施例の印刷実行部200は、ドット領域は、レーザ光LZが照射される露光領域であり、空白領域は、レーザ光LZが照射されない非露光領域である。すなわち、プリンタ900は、露光領域にトナーを付着させ、非露光領域にトナーを付着させないタイプのレーザプリンタである。したがって、ドット領域のドット長は、主走査方向に沿ってレーザ光LZが照射される連続露光時間の長さで表すことができる。また、露光パターンの露光量が大きいほど、露光パターンによって表される画像の濃度が高くなる。プリンタ900は、非露光領域にトナーを付着させ、露光領域にトナーを付着させないタイプのレーザプリンタであっても良い。この場合には、ドット領域のドット長は、主走査方向に沿ってレーザ光LZが照射されない連続非露光時間の長さで表すことができる。また、露光パターンの露光量が大きいほど、露光パターンによって表される画像の濃度が低くなる。
(4)上記各実施例では、読取部40によって複数個のパッチの濃度を検出して得られる検出濃度に基づいて、特定パッチや利用パッチが決定される。これに代えて、例えば、用紙に印刷された複数のパッチの中から、利用者が特定パッチや利用パッチを決定して、決定結果を、操作部170を介して、プリンタ900に入力しても良い。この場合には、利用者が適切な特定パッチや利用パッチを決定すれば、印刷画像において、比較的低い濃度の色を適切に表現することができる。
(5)上記各実施例の印刷画像は、第1方向D1の解像度が、第2方向D2の解像度より高い。すなわち、1個の画素の第1方向D1の長さが、第2方向の長さより短い。そして、ドット領域のドット長は、第1方向D1方向の長さである。これに限らず、第1方向D1の解像度が第2方向D2の解像度と等しい印刷画像を印刷するプリンタに対して、本発明を適用しても良い。この場合には、ドット領域のドット長は、第1方向D1方向の長さであっても良いし、第2方向D2の長さであっても良い。ただし、上記各実施例のように、1個の画素の第1方向D1の長さが、第2方向の長さより短い場合には、トナーの定着特性は、ドット領域の第1方向D1方向の長さに依存する。したがって、ドット領域のドット長として第1方向D1方向の長さを採用することで、印刷画像において、比較的低い濃度の色を適切に表現することができる。
(6)上記各実施例では、プリンタ900の画像処理部300が、ハーフトーン設定処理(図5)と、印刷データ生成処理(図8)と、を実行している。これに代えて、プリンタとは、別の計算機、例えば、プリンタドライバがインストールされたパーソナルコンピュータや、プリンタ900と通信可能なサーバが、これらの処理の全部または一部を実行しても良い。
例えば、計算機は、プリンタ900によって実行されたハーフトーン設定処理によって設定された設定データ138を、プリンタ900から受け取って、印刷データ生成処理(図8)を実行しても良い。この場合には、プリンタ900と計算機との全体が、画像処理装置に対応する。
また、計算機は、ハーフトーン設定処理(図5)と、印刷データ生成処理(図8)と、の両方を実行しても良い。例えば、計算機は、プリンタ900に対して、複数個のパッチを印刷するための印刷データをプリンタ900に供給することによって、プリンタ900にパッチを印刷させる。計算機は、プリンタ900にパッチの濃度を検出させて、検出濃度S(n)のデータを、プリンタ900から取得する。計算機は、プリンタ900から取得された検出濃度S(n)のデータに基づいて、ハーフトーン設定処理(図5)を実行することができる。計算機は、ハーフトーン設定処理によって設定されたハーフトーン処理を含む印刷データ生成処理を実行する。この場合には、計算機が、画像処理装置に対応する。
(7)上記実施例では、予め定められたデフォルトのハーフトーン処理として、ディザマトリクスDMを用いたハーフトーン処理を採用している。デフォルトのハーフトーン処理は、例えば、濃度画像データの画素値(入力濃度値)の変化に対して、印刷媒体に印刷される色の実際の濃度がリニアに変化するように、入力濃度値を補正する処理(いわゆるキャリブレーション)を含んでもよい。キャリブレーションは、例えば、補正前の入力濃度値とキャリブレートされた濃度値とを対応付ける1次元ルックアップテーブルを利用して行われる。また、1次元ルックアップテーブルは、例えば、上記実施例の複数個のパッチとは別のキャリブレーション用のパッチを、読取部40を用いて検出して得られる検出濃度に基づいて作成される。
(8)上記第1実施例では、利用するドット領域の候補となる16個のドット領域D(n)は、それぞれ、16個のパッチPC(n)と対応している。これに代えて、パッチ決定部310は、利用するドット領域の候補となる16個のドット領域D(n)より少ない数のパッチだけを印刷しても良い。例えば、第1実施例では、1個の特定パッチを決定するために必要な個数のパッチだけが印刷されればよい。例えば、プリンタ900の性能などを考慮して、最悪の条件下でも十分に形成できる程度に大きいドット長に対応するパッチは印刷されなくても良い。例えば、印刷されるパッチは、第1実施例より少ない6個のパッチPC(1)〜PC(6)とされ、利用するドット領域の候補となるドット領域は、第1実施例と同じ16個のドット領域D(1)〜D(16)とされても良い。例えば、特定パッチが、6個のパッチPC(1)〜PC(6)のうちのパッチPC(5)に決定された場合には、「5」以上のドット長を有する13個のドット領域D(5)〜D(16)が、利用するドット領域に決定される。
(9)印刷実行部200の構成としては、図2の構成とは異なる種々の構成を採用可能である。例えば、露光部51は、1本の露光ラインEL上の各位置を露光するライン光源を含んでもよい。また、印刷実行部200は、感光体ドラム54から印刷媒体Pへトナー像を転写する中間転写体を含んでも良い。
(10)上記実施例と変形例とにおいて、ハードウェアによって実現されていた構成の一部をソフトウェアに置き換えるようにしてもよく、逆に、ソフトウェアによって実現されていた構成の一部あるいは全部をハードウェアに置き換えるようにしてもよい。
(11)本発明の機能の一部または全部がソフトウェアで実現される場合には、そのソフトウェア(コンピュータプログラム)は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体(例えば、一時的ではない記録媒体)に格納された形で提供することができる。「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」は、メモリーカードやCD−ROMのような携帯型の記録媒体に限らず、各種ROM等のコンピュータ内の内部記憶装置や、ハードディスクドライブ等のコンピュータに接続されている外部記憶装置も含んでいる。
以上、実施例、変形例に基づき本発明について説明してきたが、上記した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれる。