以下、添付図面に従って本発明に係る実施形態を詳細に説明する。
[実施形態1]
<画像形成装置>
図1は、画像形成装置9の構成概略図である。光走査手段である光走査装置400内のレーザ駆動部300は、画像信号生成部100から出力された画像信号、および制御部1から出力される制御信号に基づき、走査光(レーザ光)208を発する。不図示の帯電手段により帯電された感光ドラム(感光体)4をレーザ光208で走査し、感光ドラム4の表面に潜像を形成する。そして不図示の現像手段により潜像にトナーを付着させ、潜像に対応したトナー像を形成する。トナー像は、給紙ユニット8から給送されローラ5で感光ドラム4と接触する位置に搬送された紙等の記録媒体に転写される。記録媒体に転写されたトナー像は、定着器6で記録媒体に熱定着され、排紙ローラ7を経て、機外に排出される。
<光学走査装置>
図2は、本実施形態に係る光走査装置400の断面図であり、図2(a)は主走査断面を、図2(b)は副走査断面を示している。
本実施形態において、光源401から出射したレーザ光(光束)208は、開口絞り402によって楕円形状に整形されてカップリングレンズ403に入射する。カップリングレンズ403を通過した光束は、略平行光に変換されて、アナモフィックレンズ404に入射する。なお、略平行光とは、弱収束光及び弱発散光を含むものである。アナモフィックレンズ404は、主走査断面内において正の屈折力を有しており、入射する光束を主走査断面内においては収束光に変換している。また、アナモフィックレンズ404は、副走査断面内において偏向器405の偏向面405aの近傍に光束を集光しており、主走査方向に長い線像を形成している。
そして、アナモフィックレンズ404を通過した光束は、偏向器(ポリゴンミラー)405の偏向面(反射面)405aにて反射される。反射面405aで反射した光束は、走査光208(図1参照)として、結像レンズ406を透過し、感光ドラム4の表面に入射する。結像レンズ406は結像光学素子である。本実施形態においては、単一の結像光学素子(結像レンズ406)のみで結像光学系が構成されている。結像レンズ406を通過(透過)した光束が入射する感光ドラム4の表面は、光束によって走査される被走査面407である。結像レンズ406によって被走査面407上で光束が結像し、所定のスポット状の像(スポット)を形成する。偏向器405を不図示の駆動部により矢印A方向に一定の角速度で回転させることにより、被走査面407上でスポットが主走査方向に移動し、被走査面407上に静電潜像を形成する。なお、主走査方向とは、感光ドラム4の表面に平行で且つ感光ドラム4の表面の移動方向に直交する方向であり、図2(a)での上下方向である。また、副走査方向とは、主走査方向及び光束の光軸に直交する方向であり、図2(b)の上下方向となる。
ビームディテクト(以下BDと称す)センサ409とBDレンズ408は、被走査面407上に静電潜像を書き込むタイミングを決定する同期用光学系である。BDレンズ408を通過した光束は、フォトダイオードを含むBDセンサ409に入射し検知される。BDセンサ409により光束を検知したタイミングに基づいて、書き込みタイミングの制御を行う。
光源401は、半導体レーザチップである。本実施形態の光源401は1つの発光部(図5の参照符号11)を備えている構成である。しかしながら、光源401として、独立して発光制御可能な複数の発光部を備えていてもよい。複数の発光部を備える場合も、そこから発生られる複数の光束は、それぞれカップリングレンズ403、アナモフィックレンズ404、偏向器405、結像レンズ406を経由して被走査面407へ到達する。被走査面407上では副走査方向にずれた位置に各光束に対応するスポットがそれぞれ形成される。
なお、光学走査装置400は上述した、光源401、カップリングレンズ403、アナモフィックレンズ404、結像レンズ406、偏向器405等の各種光学部材は、筐体(光学箱)400a(図1参照)に収納される。
<結像レンズ>
図2に示すように、結像レンズ406は、入射面(第1面)406a及び出射面(第2面)406bの2つの光学面(レンズ面)を有する。結像レンズ406は、主走査断面内において、偏向面405aにて偏向された光束が被走査面407上を所望の走査特性で走査させる構成となっている。また、結像レンズ406は、被走査面407上でのレーザ光208のスポットを所望の形状にする構成となっている。また、結像レンズ406により、副走査断面内においては、偏向面405aの近傍と被走査面407の近傍とを共役の関係となっている。これにより、面倒れを補償(偏向面405aが倒れた際の被走査面407上での副走査方向の走査位置ずれを低減すること)する構成となっている。
なお、本実施形態に係る結像レンズ406は、射出成形によって形成されたプラスチックモールドレンズであるが、結像レンズ406としてガラスモールドレンズを採用してもよい。モールドレンズは、非球面形状の成形が容易であり、かつ大量生産に適しているため、結像レンズ406としてモールドレンズを採用することで、その生産性及び光学性能の向上を図ることができる。
実施形態における結像レンズ406は、所望のfθ特性を有していない。つまり、偏向器405が等角速度で回転している時に、結像レンズ406を通過する光束のスポットを被走査面407上で等速に移動させるような走査特性を有していない。このように、所望のfθ特性を有するfθレンズを介在させる代わりに結像レンズ406を用いることにより、結像レンズ406を偏向器405に近接して(距離D1が小さい位置に)配置することが可能となる。また、所望のfθ特性を有していない結像レンズ406は所望のfθ特性を有する結像レンズよりも、主走査方向(幅LW)及び光軸方向(厚みLT)に関して小さくできる。このようなことから、光走査装置400の筐体400a(図1参照)の小型化を実現している。また、所望のfθ特性を有するレンズの場合、主走査断面で見た時のレンズの入射面、出射面の形状に急峻な変化がある場合があり、そのような形状の制約がある場合、良好な結像性能を得られない可能性がある。これに対して、結像レンズ406は所望のfθ特性を有していないため、主走査断面で見た時のレンズの入射面、出射面の形状に急峻な変化が少ない為、良好な結像性能を得ることができる。
このような本実施形態に係る結像レンズ406の走査特性は、以下の式(1)で表される。
Y = K/Btan(Bθ) …(1)
式(1)では、偏向器405による走査角度(走査画角)をθ、光束の被走査面407上での主走査方向の集光位置(像高)をY[mm]、軸上像高における結像係数をK[mm]、結像レンズ406の走査特性を決定する係数(走査特性係数)をBとしている。なお、本実施形態において、軸上像高は、光軸上の像高(Y = 0 = Ymin)を指し、走査角度θ=0に対応する。また、軸外像高は、中心光軸(走査角度θ=0の時)よりも外側の像高(Y≠0)を指し、走査角度θ≠0に対応している。さらに、最軸外像高とは、走査角度θが最大(最大走査画角)となる時の像高(Y=+Ymax,-Ymax)を指す。なお、被走査面407上の潜像を形成可能な所定の領域(走査領域)の主走査方向の幅である走査幅Wは、W = |+Ymax| + |-Ymax| で表される。所定の領域の中央が軸上像高で端部が最軸外像高となる。
ここで、結像係数Kは、結像レンズ406に平行光が入射する場合の走査特性(fθ特性)Y = fθにおけるfに相当する係数である。すなわち、結像係数Kは、結像レンズ406に平行光以外の光束が入射する場合に、fθ特性と同様に集光位置Yと走査角度θとを比例関係にするための係数である。
走査特性係数について補足すると、B=0の時の式(1)は、Y=Kθとなるため、従来の光走査装置に用いられる結像レンズの走査特性Y=fθに相当する。また、B=1の時の式(1)は、Y=Ktanθとるため、撮像装置(カメラ)などに用いられるレンズの射影特性Y=ftanθに相当する。すなわち、式(1)において、走査特性係数Bを0≦B≦1の範囲で設定することで、射影特性Y=ftanθとfθ特性Y=fθとの間の走査特性を得ることができる。
ここで、式(1)を走査角度θで微分すると、次式(2)に示すように走査角度θに対する被走査面407上での光束の露光走査速度が得られる。
DY/Dθ=K/cos2(Bθ) …(2)
さらに、式(2)を軸上像高における速度DY/Dθ = Kで除すると、次式(3)に示すようになる。
(DY/Dθ)/K−1= 1/cos2(Bθ) −1= tan2(Bθ) …(3)
式(3)は、軸上像高の走査速度に対する各軸外像高の走査速度のずれ量(部分倍率)を表現したものである。本実施形態に係る光走査装置400は、B=0の場合以外においては、軸上像高と軸外像高とで光束の走査速度が異なっていることになる。
図3は、本実施形態に係る被走査面407上での走査位置をY = Kθの特性でフィッティングした際の、像高と部分倍率との関係を示している。本実施形態においては、式(1)に示した走査特性を結像レンズ406に与えたことで、図3に示したように、軸上像高から軸外像高に向かうにつれて徐々に走査速度が速くなるため部分倍率が大きくなっている。部分倍率30%は、単位時間だけ光照射した場合、被照射面407での主走査方向の照射長が、1.3倍となることを意味している。従って、画像クロックの周期によって決めた一定の時間間隔で主走査方向の画素幅を決めてしまうと、軸上像高と軸外像高とで画素密度が異なってしまう。
また、像高Yが、軸上像高から離れて最軸外像高に近づくに連れて(像高Yの絶対値が大きくなる程)、徐々に走査速度が速くなる。これにより、被走査面407上の像高が軸上像高付近の時に単位長さ走査するのにかかる時間よりも、像高が最軸外像高付近の時に単位長さ走査するのにかかる時間の方が短くなる。これは、光源401の発光輝度が一定の場合、像高が軸上像高付近の時の単位長さ辺りの総露光量よりも、像高が最軸外像高付近の時の単位長さ辺りの総露光量の方が少なくなることを意味する。
このように、上述したような光学構成を有する場合、主走査方向に関する部分倍率、及び単位長さ辺りの総露光量のばらつきが、良好な画質を維持する為に適切でない可能性がある。そこで本実施形態では、良好な画質を得る為に、上述した部分倍率の補正と、単位長さ辺りの総露光量を補正する為の輝度補正を行う。
特に、偏向器405から感光ドラム4までの光路長が短くなる程、画角が大きくなるため、上述した軸上像高と最軸外像高とで走査速度の差が大きくなる。このような光学構成の場合、主走査方向に関する部分倍率、及び単位長さ辺りの総露光量のばらつきの影響を受け良好な画質の維持が難しくなる。
なお、走査速度の変化率C(%)は、最も遅い走査速度をVmin、最も速い走査速度をVmaxとすると、C = (( Vmax − Vmin ) / Vmin ) * 100で表される値である。なお、本実施形態の光学構成において、偏向器405は、感光ドラム4の回転軸の長手方向の中央位置に対し、その回転軸に対して直行する面上に位置する。それ故、軸上像高(走査領域の中央部)で最も遅い走査速度となり、最軸外像高(走査領域の端部)で最も速い走査速度となる。
なお、発明者の鋭意検討によれば、画角が52°以上の光学構成の場合、走査速度の変化率が35%以上となることがわかっている。画角が52°以上となる条件としては以下に示す通りである。例えば、主走査方向に関してA4シートの短辺の幅の潜像を形成する光学構成の場合、走査幅W=214mm、走査画角が0°の時の偏向面405aから被走査面407までの光路長D2(図2参照)=125mm以下である。主走査方向に関してA3シートの短辺の幅の潜像を形成する光学構成の場合、走査幅W=300mm、走査画角が0°の時の偏向面405aから被走査面407までの光路長D2(図2参照)=247mm以下である。このような光学構成を有する画像形成装置では、以下に説明する本実施形態の構成を用いることで、所望のfθ特性を有していない結像レンズを使用しても、良好が画質を得ることが可能となる。
<露光制御構成>
図5は、画像形成装置9における露光制御構成を示す電気ブロック図である。画像信号生成部100は、不図示のホストコンピュータより印字情報を受け取り、画像データ(画像信号)に対応するVDO信号110を生成する。また、画像信号生成部100は画素幅補正手段としての機能も有する。制御部1は、画像形成装置9の制御と、輝度補正手段として光源401の光量制御を行う。レーザ駆動部300は、VDO信号110に基づいて電流を光源401に供給することにより、光源401を発光させる。
画像信号生成部100は画像形成のための画像信号の出力の準備が整ったら、シリアル通信113を通じて、制御部1に印字開始の指示をする。制御部1は、印字の準備が整ったら、副走査同期信号であるTOP信号112と、主走査同期信号であるBD信号111とを画像信号生成部100に送信する。画像信号生成部100は、前記同期信号を受信したら所定タイミングで画像信号であるVDO信号110をレーザ駆動部300に出力する。
画像信号生成部100と制御部1とレーザ駆動部300の各々の主な構成ブロックについては後述する。
図6(a)は、記録媒体1ページ分に相当する画像形成動作を行った際の各種同期信号と画像信号のタイミングチャートである。図中左から右に向かって時間が経過する。TOP信号112の「HIGH」は、記録媒体の先端が所定の位置に到達したことを表す。画像信号生成部100はTOP信号112の「HIGH」を受信したら、BD信号111に同期して、VDO信号110を送信する。このVDO信号110に基づいて光源401が発光し感光ドラム4に潜像を形成する。
なお、図6(a)では図の簡略化の為、VDO信号110が複数のBD信号111を跨いで連続的に出力されているように記載している。しかしながら、実際には、VDO信号110はBD信号111が出力されてから次のBD信号111が出力されるまでの間のうちの所定の期間に出力されるものであることに注意されたい。
<部分倍率補正方法>
次に部分倍率補正方法について説明する。その説明に先立って部分倍率の要因及び補正原理について図6(b)を用いて説明する。図6(b)は、BD信号111、VDO信号110のタイミング、被走査面407上の潜像により形成したドットイメージを示した図である。図中左から右に向かって時間が経過する。
画像信号生成部100はBD信号111の立ち上がりエッジを受信したら、感光ドラム4の左端から所望の距離だけ離れた位置に潜像を形成できるよう、所定タイミング後にVDO信号110を送信する。そしてVDO信号110に基づき光源401が駆動されて発光し、被走査面407上にVDO信号110に応じた潜像を形成する。
ここでは、VDO信号110に基づき軸上像高及び最軸外像高において同じ期間だけ光源401を発光させてドット形状の潜像を形成した場合について説明する。このドットのサイズは600dpiの1ドット(主走査方向42.3umの幅)に相当する。光走査装置400は、上述したように、被走査面407上の中央部(軸上像高)に比べて、端部(最軸外像高)の走査速度は速い光学構成である。潜像Aに示すように、軸上像高の潜像dot2に比べて、最軸外像高の潜像dot1が主走査方向に肥大する。そのため、本実施形態では部分倍率補正として、主走査方向の位置に応じてVDO信号110の周期や時間幅を補正する。即ち、部分倍率補正により、最軸外像高の発光時間間隔を軸上像高の発光時間間隔と比べて短くし、潜像Bに示すように最軸外像高の潜像dot3と軸上像高の潜像dot4とを同等のサイズにする。このような補正によって、主走査方向に関して、実質的に等間隔に各画素に対応するドット形状の潜像を形成できるようにする。
次に、図7から図11を用いて、軸上像高から軸外像高に移るに従って部分倍率の増加分だけ光源401の照射時間を短くする部分倍率補正の具体的な処理を説明する。図7(a)および(b)は、画像変調部101の一例を示すブロック図である。濃度補正処理部121は不図示のホストコンピュータから受信した画像信号を適正な濃度で印字するための濃度補正テーブルを格納している。ハーフトーン処理部122は、入力される多値パラレル8ビットの画像信号をスクリーン(ディザ)処理して画像形成装置9で濃度表現するための変換処理を行う。
図8(a)はスクリーンの一例であり、主走査3画素、副走査3画素の200線のマトリクス153で濃度表現を行なうものである。図中の白い部分が光源401を発光させない(オフ)部分(非露光画素)で、黒い部分が光源401を発光させる(オン)部分(露光画素)である。マトリクス153は階調毎に設けられており、矢印で示す順に階調が上がっていく(濃度が濃くなる)。本実施形態において1つの画素157は、被走査面407で600dpiの1ドットを形成するために画像データを区切る単位である。図8(b)に示すように、画素幅を補正する前の状態において、1画素は、1画素の1/16の幅の画素片16個で構成され、画素片毎に光源401を発光のオン・オフを切り替えられる。つまり、1画素で16ステップの階調を表現可能である。PS変換部123は、パラレル−シリアル変換部であり、ハーフトーン処理部122から入力したパラレル16ビットの信号129をシリアル信号130に変換する。パラレル16ビットの各ビットを、画素片(最小露光ON/OFFの区間)に対応させるためである。FIFO124は、シリアル信号130を受信し、不図示のラインバッファに蓄積し、所定時間後に、同じくシリアル信号として、後段のレーザ駆動部300にVDO信号110として出力する。FIFO124のライトおよびリードの制御は、画素片挿抜制御部128aが、CPU102からCPUバス103を介して受信する部分倍率特性情報を基に、ライトイネーブル信号WE131、リードイネーブル信号RE132を制御することで行う。PLL部127はで、1画素に相当するクロック(VCLK)125の周波数を16倍に逓倍したクロック(VCLKx16)126をPS変換部123やFIFO124に供給する。
次に、画素片挿抜制御を用いた図7(a)のブロック図のハーフトーン処理以降の動作を、図9(a)の画像変調部101の動作に関するタイムチャートを用いて説明する。前述した通り、PS変換部123は、ハーフトーン処理部122から多値16ビットの信号129をクロック125に同期して取り込み、クロック126に同期してシリアル信号130をFIFO124に信号を送る。
FIFO124は、WE信号131が有効「HIGH」の場合のみ信号130を取り込む。部分倍率の補正のために主走査方向に画像を短くする場合は、画素片挿抜制御部128aは、部分的にWE信号を無効「LOW」にすることで、FIFO124にシリアル信号130を取り込ませないように制御する。つまり、画素片を抜粋する。図9(a)には、通常1画素当たり16個の画素片から構成する場合において、1st画素から画素片1つ分を抜粋し、15個の画素片で構成した例を示す。
また、FIFO124は、RE信号132が有効「HIGH」の場合のみ蓄積されたデータをクロック126(VCLKx16)に同期して読み出し、VDO信号110を出力する。部分倍率の補正のため主走査方向に画像を長くする場合は、画素片挿抜制御部128aは、部分的にRE信号132を無効「LOW」にすることで、FIFO124は読み出しデータを更新せず、クロック126の1クロック前のデータを継続して出力させる。つまり、直前に処理した主走査方向に関して上流側で隣にある画素片のデータと同じデータの画素片を挿入する。図9(a)には、通常1画素を16の画素片から構成する構成において、2ND画素に画素片2つ分を挿入し、18個の画素片で構成した例を示す。なお、本実施形態で用いたFIFO124は、RE信号を無効「LOW」とした場合、出力がHI-Z状態となるのでは無く、前の出力を継続する構成の回路として説明した。
図10と図11は、ハーフトーン処理部122の入力画像であるパラレル16ビットの信号129からFIFO124の出力であるVDO信号110まで、画像イメージを用いて説明した図である。
図10(a)はハーフトーン処理部122に入力される多値パラレル8ビットの画像信号の一例である。各画素は8ビットの濃度情報(256階調)を有している。画素150はF0h、画素151は80h、画素152は60h、白地部は00hの濃度情報となっている。図10(b)はスクリーンであり、図8で説明した通り、200線で中央から成長するスクリーンである。図10(c)は、ハーフトーン処理後のパラレル16ビットの信号129であるの画像信号の画像イメージであり、上述したように各画素157は16個の画素片で構成されている。
図11はシリアル信号130に対して、図10(c)の主走査方向に8画素のエリア158に着目して、画素片を挿入して画像を伸ばす例と、画像片を抜粋して画像を短くする例を示している。図11(a)は、部分倍率を8%増やす例である。100個の連続する画素片群に対し、均等又は略均等な間隔で、計8個の画素片を挿入することで、部分倍率を8%増やすように画素幅を変更して潜像を主走査方向に伸ばすことができる。図11(b)は、部分倍率を7%減らす例である。100個の連続する画素片群に対し、均等又は略均等な間隔で、計7個の画素片を抜粋することで、部分倍率を7%減らすように画素幅を変更して潜像を主走査方向に短くすることができる。このように部分倍率補正では、主走査方向の長さが1画素未満の画素幅を変更することにより、画像データの各画素に対応するドット形状の潜像を主走査方向に関して実質的に等間隔に形成できるようにする。なお、主走査方向に関して実質的に等間隔とは、完全に各画素が等間隔に配置されていないものも含む。つまり、部分倍率補正を行った結果、画素間隔に多少のバラつきがあってもよく、所定の像高範囲の中で平均的に画素間隔が等間隔となっていればよい。上述したように、均等又は略均等な間隔で画素片を挿入又は抜粋する場合、隣り合う2つの画素同士で画素を構成する画素片の数を比較すると、画素を構成する画素片数の差は0又は1となる。このため、元の画像データと比較した時の主走査方向の画像濃度のバラつきを抑えられるので、良好な画質を得ることができる。また、画素片を挿入、又は、抜粋する位置は、主走査方向に関して、各走査線(ライン)毎に同じ位置としてもよいし、位置をずらしてもよい。
次に、画像クロックを変調する方法を用いた図7(b)のブロック図のハーフトーン処理以降の動作を、図9(b)の画像変調部101の動作に関するタイムチャートを用いて説明する。
FIFO124は、RCLK126bに同期してVDO信号110を出力する。部分倍率の補正のために主走査方向に画像を短くする場合、画像クロック制御部128bは、部分的にRCLK126bを速くすることで、FIFO124はVDO信号110を短い時間で出力する。つまり、画素片の数を変えずに画像を短くする。図9(b)には、1st画素のRCLK126bの周期を15/16に短くし、画素を短くした例を示す。
また、部分倍率の補正のため主走査方向に画像を長くする場合は、画像クロック制御部128bは、部分的にRCLK126bを遅くすることで、FIFO124はVDO信号110を長い時間で出力する。つまり、画素片の数を変えずに画像を長くする。図9(b)には、2nd画素のRCLK126bの周期を18/16に長くし、画素を長くした例を示す。
図11はシリアル信号130に対して、図10(c)の主走査方向に8画素のエリア158に着目して、画像クロックを遅くして画像を伸ばす例と、画像クロックを速くして画像を短くする例を示している。図11(a)は、部分倍率を8%増やす例である。100個の連続する画素片群に対し、均等又は略均等な間隔で、画像クロックを8%遅くすることで、部分倍率を8%増やすように画素幅を変更して潜像を主走査方向に伸ばすことができる。図11(b)は、部分倍率を7%減らす例である。100個の連続する画素片群に対し、均等又は略均等な間隔で、画像クロックを7%速くすることで、部分倍率を7%減らすように画素幅を変更して潜像を主走査方向に短くすることができる。画像クロックの速度を変更することにより、画像データ中の各画素に対応するドット形状の潜像を主走査方向に関して実質的に等間隔に形成できる。なお、主走査方向に関して実質的に等間隔とは、完全に各画素が等間隔に配置されていないものも含む。つまり、部分倍率補正を行った結果、画素間隔に多少のバラつきがあってもよく、所定の像高範囲の中で平均的に画素間隔が等間隔となっていればよい。よって、画像クロックを毎画素変調することにより、理想的な画素間隔に補正しても良いし、複数の画素にわたって平均的な画像クロックにすることで画素間隔を平均的な間隔に補正することも可能である。
部分倍率の補正には、画素片挿抜による制御と画像クロックの変調による制御のどちらか一方、または、両方を組み合わせて補正しても良い。通常、画像クロックを変調する制御のほうが画像形成位置を高精度に補正することができるものの、回路規模は大きくなる。部分倍率を補正する精度と回路規模を鑑みて、ユーザが自由に選択するようにしても良い。両方、もしくはいずれかを用いるかは、不図示のユーザインターフェースや、ディップスイッチ等で設定することが考えられる。
なお上述したように、像高Yの絶対値が大きくなる程、走査速度が速くなる。このため部分倍率補正では、像高Yの絶対値が大きくなる程画像が短くなるよう(1画素の長さが短くなるよう)、上述した部分倍率の補正量を大きくする必要がある。このようにして、主走査方向に関して実質的に等間隔に各画素に対応する潜像を形成し、適切に部分倍率を補正することができる。
<輝度補正>
次に、図5、図12、図13を用いて、輝度補正について説明する。輝度補正を行う理由は、部分倍率補正により、像高Yの絶対値が大きくなる程、1画素の長さが短くなるよう補正を行う為、光源401による1画素への総露光量(積分光量)が像高Yの絶対値が大きくなる程、低下するからである。輝度補正では、光源401の輝度を補正することで、1画素への総露光量(積分光量)が各像高で一定となるように補正する。
図5の制御部1は、CPUコア2と8ビットDAC(DAコンバータ)21とレギュレータ22を内蔵したIC3を有しており、レーザ駆動部300と合わせて輝度補正手段を構成する。レーザ駆動部300は、メモリ304と、電圧を電流に変換するVI変換回路306と、レーザドライバIC9を有し、光源401のレーザダイオードである発光部11へ駆動電流を供給する。メモリ304には、部分倍率特性情報が保存されているとともに、発光部11に供給する補正電流の情報が保存されている。部分倍率特性情報は、主走査方向に対して複数の像高に対応する部分倍率情報である。なお、部分倍率情報に代えて、被走査面上での走査速度の特性情報であっても良い。
次に、レーザ駆動部300の動作を説明する。メモリ304に格納された発光部11に対する補正電流の情報をもとに、IC3はレギュレータ22から出力される電圧23を調整し出力する。電圧23はDAC21の基準電圧となる。次に、IC3は、DAC21の入力データ20を設定し、BD信号111に同期して、主走査内で増加減する輝度補正アナログ電圧312を出力する。そして後段のVI変換回路306で電流値Id313に変換され、レーザドライバIC9に出力する。なお、また、本実施形態では、制御部1に実装されたIC3が輝度補正アナログ電圧312を出力したが、レーザ駆動回路300上にDAコンバータを実装し、レーザドライバIC9の近傍で輝度補正アナログ電圧312を生成しても良い。
レーザドライバIC9は、VDO信号110に応じて、電流ILを発光部11に流すか、ダミー抵抗10に流すかを切り換えることで、光源401の発光のON/OFFを制御する。発光部11に供給するレーザ電流値IL(第3電流)は、定電流回路15で設定した電流Ia(第1電流)から前記VI変換回路306から出力される電流Id(第2電流)を差し引いた電流となる。定電流回路15に流す電流Iaは、発光部11の光量モニタ用に光源401に設けられたフォトディテクタ12が検知する輝度が所望の輝度Papc1となるようにレーザドライバIC9内部の回路によりフィードバック制御することで自動調整する。この自動調整は所謂APC(Auto Power Control)である。発光部11の輝度の自動調整は、レーザ発光量316の主走査毎の印字領域(図13参照)外でBD信号を検知するために発光部11を発光させている間に実施する。VI変換回路306が出力する電流Idの設定方法は後述する。可変抵抗13は、工場組立て時に、発光部11が所定輝度に発光している場合に、所望の電圧としてレーザドライバIC9に入力されるよう値を調整しておく。
以上説明したように、所望の輝度で発光させるために必要な電流Iaに対して、VI変換回路306が出力する電流Idを差し引いた電流をレーザ駆動電流ILとして発光部11に供給する構成となっている。この構成により、レーザ駆動電流ILはIa以上に流れることが無いようなっている。なお、VI変換回路306は輝度補正手段の一部を構成している。
図12は発光部11の電流と輝度の特性を示したグラフである。発光部11を所定輝度で発光するために必要な電流Iaは、周囲温度によって変化する。図12のグラフ51は標準温度環境下の電流−輝度のグラフ、グラフ52は高温環境下の電流−輝度のグラフの一例である。一般的にレーザは、環境温度が変化した場合、所定輝度を出力させるために必要な電流Iaは変化するが、効率(図の傾き)は、ほとんど変化しないことが知られている。つまり、所定輝度Papc1で発光させるには、標準温度環境下では電流IaとしてA点で示した電流値が必要であるのに対し、高温環境下では電流IaとしてC点で示した電流値が必要となるのである。前述した通り、レーザドライバIC9は、環境温度が変化しても、フォトディテクタ12で輝度をモニタすることで所定輝度Papc1となるように発光部11へ供給する電流Iaを自動調整する。効率は環境温度が変化してもほぼ変化しないため、所定輝度Papc1で発光させるための電流Iaから、所定電流△I(N)、△I(H)を差し引くことで、Papc1の0.74倍の輝度に低下させることが出来る。なお、効率は環境温度が変化してもほぼ変化しないため、△I(N)、△I(H)は、ほぼ同じ電流である。本実施形態は、中央部(軸上像高)から端部(最軸外像高)に行く(像高Yの絶対値が大きくなる)に従って、徐々に発光部11の輝度をアップするので、中央部では図12のB点やD点で示す輝度で発光し、端部ではA点やC点で示す輝度で発光することになる。
輝度補正は、所望の輝度で発光させるよう自動調整された電流Iaから所定電流△I(N)、△I(H)に対応する電流Idを差し引くことにより行う。上述したように、像高Yの絶対値が大きくなる程、走査速度が速くなる。そして、像高Yの絶対値が大きくなる程、1画素への総露光量(積分光量)が低下する。このため輝度補正では、像高Yの絶対値が大きくなる程、輝度が大きくなるように補正を行う。具体的には、像高Yの絶対値が大きくなる程、電流値Idが小さくなるように設定することで、像高Yの絶対値が大きくなる程、電流ILが大きくなるようにする。このようにして、適切に部分倍率を補正することができる。
<部分倍率補正と輝度補正の動作の説明>
図13は、上記で説明した部分倍率補正および輝度補正を説明するタイミングチャートである。図5のメモリ304には、光走査装置400の部分倍率特性情報317が記憶されている。この部分倍率特性情報は光走査装置400を組み立て後に個々の装置において測定して記憶しても良いし、個々の装置間のバラツキが少ない場合は個別に測定せずに代表的な特性を記憶しても良い。CPUコア2はシリアル通信307を介してメモリ304から読み出し、画像信号生成部100にあるCPU102に送出する。CPUコア2は、この情報を基に、部分倍率補正情報314を生成し、図5の画像変調部101にある画素片挿抜制御部128に送る。図13では、走査速度の変化率Cが35%であるため、軸上像高を基準としたとき最軸外像高で35%の部分倍率が発生する場合を例にとって説明している。本例では、部分倍率補正情報314は、17%のポイントを倍率補正ゼロとし、最軸外像高を−18%(−18/100)とし、軸上像高を+17%(+17/100)としている。そのため、図のように、主走査方向に関して、像高の絶対値が大きい端部付近では画素片を抜粋し画像長を短くし、像高の絶対値が小さい中央付近では画素片を挿入し画像長を伸ばすエリアとしている。図11を用いて説明した通り、最軸外像高で−18%の補正を行うには、画素片100区画に対し画素片18区画を抜粋し、軸上像高を+17%の補正を行うには、画素片100区画に対し画素片17区画を挿入する。これにより、軸上像高(中央)付近を基準に見た時、最軸外像高(端部)付近では画素片100区画に対して画素片35区画が抜粋されたのと実質的に同じ状態となり、35%分の部分倍率を補正することができる。つまり、レーザ光208のスポットが走査面407上を1画素の幅(42.3μm(600dpi))だけ移動させる期間を、最軸外像高を軸上像高の0.74倍になる。
軸上像高に対する最軸外像高における1画素の幅の走査期間の比率は、走査速度の変化率Cを用いると以下のように合わせる。
100[%]/(100[%]+C[%])
=100[%]/(100[%]+35[%])
=0.74
このような1画素未満の幅の画素片の挿抜により、着目画素の画素幅を補正し、主走査方向に関して実質的に等間隔に各画素に対応する潜像を形成できるようになる。
なお、軸上像高を基準とし、軸上像高付近では画素片の挿入も抜粋も行わず基準の画素幅とし、像高が最軸外像高に近づくにつれて画素片の抜粋割合を増加させても良い。またその逆に、最軸外像高を基準とし、最軸外像高付近では画素片の挿入も抜粋も行わず基準の画素幅とし、像高が軸上像高に近づくにつれて画素片の挿入割合を増加させても良い。但し、上述したように軸上像高と最軸外像高の中間の像高の画素が基準の画素幅(画素片16個の幅)となるように画素片の挿抜を行う方が画質は良くなる。つまり、基準の画素幅と画素片を挿抜した画素の画素幅との差の絶対値が小さい程、主走査方向の画像濃度に関してより元の画像データに忠実なものとなるので、良好な画質を得られる。
輝度補正は、印字動作前にメモリ304の部分倍率特性情報313および補正電流情報を読み出す。そして、IC3の中のCPUコア2が輝度補正値315を生成するとともに、一走査分の輝度補正値315をIC3の中にある不図示レジスタに保管しておく。また、レギュレータ22の出力電圧23を決定しDAC21に基準電圧として入力する。そして、BD信号111に同期して、不図示のレジスタに保管してある輝度補正値315を読み出すことにより、DAC21の出力ポートから輝度補正アナログ電圧312を、後段のVI変換回路306に送り、電流値Idに変換する。電流値Idは、レーザドライバIC9に入力され、電流Iaから差し引かれる。図13に示すように、輝度補正値315はレーザ光の被走査面での照射位置(像高)の変化に応じて異なっていくため、電流値Idもレーザ光の照射位置に応じて変更される。これにより電流ILを制御する。
CPUコア2により部分倍率特性情報313および補正電流情報に基づいて生成される輝度補正値315は、像高Yの絶対値が大きくなる程、電流値Idが小さくなるように設定される。このため、図13に示すように、電流ILは像高Yの絶対値が大きくなる程大きくなる。換言すれば、一回走査する間に電流値Idが変化し、画像中央部にかけて(像高Yの絶対値が小さくなる程)電流ILが小さくなる。その結果、発光部11が出力するレーザ光量は、同図の通り、最軸外像高の輝度はPapc1で発光し、軸上像高の輝度はPapc1の0.74倍の輝度で発光するよう補正される。言い換えると、減衰率26%を減衰させることになる。つまり、最軸外像高の輝度は軸上像高の輝度の1.35倍となる。なお、減衰率R%は走査速度の変化率Cを用いると次のように表せる。
R = ( C / ( 100 + C ) ) * 100
=35 [%] / ( 100 [%] + 35 [%] )* 100
=26 [%]
また、DAC21の入力と輝度の低下率は比例関係にあり、例えばCPUコア2内のDAC21の入力がFFhで光量が26%ダウンするように設定した場合は、80hで13%ダウンすることになる。
<部分倍率補正と輝度補正の効果説明>
図4(a)〜(c)は、光波形と主走査LSF(Line Spread Function)プロファイルを示す図である。これら光波形と主走査LSFプロファイルは、光源401が、軸上像高、中間像高、最軸外像高のそれぞれにおいて、所定の輝度、期間で発光した場合のものをそれぞれ示している。なお、本実施形態の光学構成では、最軸外像高における走査速度は軸上像高におけるそれの135%となり、軸上像高に対する最軸外像高の部分倍率は35%である。光波形は光源401の発光波形である。主走査LSFプロファイルとは、主走査方向にスポットを移動させながら、上述した光波形で発光することにより被走査面407上に形成されたスポットプロファイルを副走査方向に積分したものである。これは、上述した光波形で光源401を発光させた際の被走査面407上での総露光量(積分光量)を示すものである。
図4(a)は、本実施形態と同様の光学構成において、上述した部分倍率補正及び輝度補正を行わない比較例1を示す。この比較例1では、光源が輝度P3で、且つ、軸上像高における1画素(42.3μm)分主走査するのに必要な期間T3発光する。このため、軸上像高から、軸外像高に移るに従って、主走査LSFプロファイルが肥大化して積算光量のピークが低下していることがわかる。
図4(b)は、上述した部分倍率補正を行い、輝度補正を行わない比較例2を示す。部分倍率補正は、軸上像高において1画素(42.3μm)分主走査するのに必要な期間T3を基準に、軸上像高から軸外像高にかけて、部分倍率の増加分だけ1画素分に対応する期間を短くする補正を行う。輝度はP3で一定である。軸上像高から、軸外像高に移るに従って、主走査LSFプロファイルの肥大化は抑制されている。しかしながら、中間像高でT3の0.87倍、最軸外像高でT3の0.74倍と照射時間を短くしているため、積算光量のピークは図4(a)に比べて更に低下していることが分かる。
図4(c)は、上述した部分倍率補正及び輝度補正の両方を行った本実施形態を示す。部分倍率補正について比較例2と同様の処理を行っている。輝度補正として、部分倍率補正により軸上像高から軸外像高に移るに従って1画素に対向する光源401の発光時間を短くすることで低下した積算光量分を補う。つまり、輝度P3を基準に、軸上像高から軸外像高にかけて、光源401の輝度をアップするよう補正する。図4(c)では最軸外像高の輝度をP3の1.35倍としており、図4(b)に比べて、軸上像高から、軸外像高に移るに従って、主走査LSFプロファイルの積算光量のピークの低下は抑制されて、かつ、肥大化も抑制している。図4(c)の軸上像高、中間像高、最軸外像高のLSFプロファイルは、完全に一致はしていないものの、各画素の総露光量は略同じであり、形成される画像に影響の無いレベルで補正できている。
以上の説明したように、本実施形態によれば、分倍率補正及び輝度補正を行うことにより、fθ特性を有する走査レンズを用いることなく画像不良を抑制した露光を行うことができる。
なお、軸上像高から最軸外像高のLSFプロファイルを一致させるためには、例えば図15(b)のように、パルス幅をさらに細く、輝度をより高くすることで可能である。しかしこの補正を行う場合、レーザ光量のダイナミックレンジが4.5倍以上必要となるため、定格の大きい高額なレーザが必要となる。また、パルス幅は0.22倍に細くしなければならないため、使用できるPWMの分解能も0.22倍に低下してしまう。よって、LSFプロファイルの補正は別の手段で行うことが望ましい。
<LSFプロファイル変動により印字濃度が変動する理由>
前記のように、部分倍率補正と輝度補正を行う場合でも、軸上像高のLSFプロファイルと最軸外像高のLSFプロファイルは完全に一致しない。このLSFプロファイル変動が原因で、主走査方向に白抜き文字や細線が潰れる。具体的には、白抜き細線の線幅が細いほど、かつ像高が軸上から遠くなるほど、白抜き細線が細く、黒くなる。この現象について、図16から図20を用いて説明する。
図16は、部分倍率補正と輝度補正した場合の、孤立ドットの露光エネルギー分布を示している。孤立ドットを印字する場合の露光エネルギー分布は、LSFプロファイルと一致する。軸上像高と最軸外像高の露光エネルギーの総和(主走査方向の積分値)は同じであるが、スポット径(光量の分布)が異なる。例えば、図16に示すように、1ドット幅を「濃度に寄与するトナー量が飽和する、露光エネルギーが0.3以上である幅」、トナーが現像され白にならない領域を「露光エネルギーが0.2以上である」と定義する。つまり、感光ドラム4に照射された露光エネルギーが0.2以上の部分からトナーが現像され、0.3以上の部分にトナーが十分に現像されドットが形成される場合、最軸外像高のドット幅W21bは、軸上像高のドット幅W21aと比較して狭くなり、最軸外像高のドット周囲の薄く現像される領域W21b’は、軸上像高のW21a’と比較して広くなる。
図17(a)は、軸上像高において連続する3個のドットを印字する時の露光エネルギー分布を、図17(b)は、最軸外像高での連続する3個のドットを印字する時の露光エネルギー分布を示している。ここでは、連続する3つのドットを、ドット1とドット2とドット3と表現している。連続する3つのドットの露光エネルギーは、各々のドットのLSFプロファイルを積算した値である。このように、複数ドットを連続して印字する時の露光エネルギーは、連続するドット分のLSFプロファイルを時間的に積算した値である。
図18は、連続するドットが1個、3個、5個である場合の露光エネルギー分布を示したものであり、実線が軸上像高の露光エネルギー分布を、破線が最軸外像高の露光エネルギー分布を示している。ここで、図16を説明した時と同じように、ドット幅を「濃度に寄与するトナー量が飽和する、露光エネルギーが0.3以上である幅」、トナーが現像され白にならない領域を「露光エネルギーが0.2以上である」と定義する。連続するドットを印字する場合は、孤立ドットの時と異なり軸上像高と最軸外像高のドット幅は一致するものの、ドット周囲の薄く現像される領域は、孤立ドットの時と同様に軸上像高よりも最軸外像高のほうが若干広くなる。
図19は、連続した3ドット(ドット1、ドット2、ドット3)の内、中央のドット(ドット2)を抜いた(白抜きした)場合の、露光エネルギー分布を示しており、図22はこの時の現像の状態を示している。図19(a)は軸上像高における露光エネルギー分布を示し、図22(a)が軸上像高における現像状態である。図19(b)は最軸外像高における露光エネルギー分布を示し、図22(b)が最軸外像高における現像状態である。露光エネルギー分布は、ドット1およびドット3のLSFプロファイルの時間的な積算値である。ここで図16と同様に、ドット幅やトナーが現像され白にならない領域を定義すると、図19(a)より、軸上像高における露光エネルギー分布において、ドット2のトナーが載らずに白くなる幅はW23aであり、トナーが少なく薄く現像される(例えばブラックの現像剤を使用した場合はグレーとなる)幅はW23bである。また、トナーが十分に載り、濃度が飽和する幅はW23cである。軸上像高では、「W23a > 0、かつ、W23b = W23c」の関係がある。この結果、図22(a)の様に、両端と中央のドットが均等に現像され、また、中央の白抜きドットも正確に現像される。図19(b) より、最軸外像高における露光エネルギー分布において、ドット2のトナーが載らずに白くなる幅はW23d(=0)であり、トナーが少なく薄く現像される幅はW23eである。また、トナーの載り量が飽和する幅はW23fである。最軸外像高では、各々の幅に「W23d = 0, W23f > W23e」の関係がある。この結果、図22(b)の様に、両端の現像が中央のドットに被り、中央のドットが白く現像されない。図19(a)と(b)を比較すると、ドット幅は「W23e < W23b = W23c < W23f」であり、白抜き幅は「W23a > W23d = 0」である。つまり、孤立ドットを白抜きする場合、白抜きドット幅は、最軸外像高になるほど小さくなる。
図20は、白抜きドットが1個、3個、5個である場合の露光エネルギー分布を示したものであり、実線が軸上像高の露光エネルギー分布を、破線が最軸外像高の露光エネルギー分布を示している。ここで図16と同様に、ドット幅やトナーが現像され白にならない領域を定義すると、複数のドットで連続して白抜きをする場合、トナーの載り量が少なく薄くなる領域は、最軸外像高と軸上像高で一致する。一方で、トナーが載らずに白くなる幅は、最軸外像高になるほど小さくなる。
以上より、ドットの連続する期間が短いほど、LSFプロファイルによる画質の差が大きくなる。特に、白抜き孤立ドットは最軸外像高で完全に潰れてしまうため、画質の差が顕著に出てしまう。よって、白抜きドット、特に連続する期間が短い孤立ドットを重点的に補正する必要がある。
<画像処理の説明>
次に、実施形態1の画像処理について説明する。実施形態1の画像処理方法は、像高に応じてLSFプロファイルが主走査方向に変動する場合において、白抜きドットの左右の画素を間引くことを特徴とする。画像処理方法の構成および動作は、基本的に部分倍率補正および輝度補正を説明した時と同じである。異なる点は、像高に応じて白抜き画像の幅を変える点である。
図21は、レーザ光を消灯する場合の露光エネルギー分布を示したものであり、それぞれ、軸上像高、最軸外像高、本実施形態によって補正された最軸外像高の露光エネルギー分布を示している。孤立白抜きドットを軸上と最軸外で一致させるためには、トナーが乗り出す露光エネルギー0.2以上から、濃度に寄与するトナー量が飽和する、露光エネルギー0.3までのLSFプロファイルを近似させれば良い。ここで考慮するLSFプロファイルは、レーザ光が消灯する時の露光エネルギーと、レーザ光が点灯する時の露光エネルギーの重ね合わせたものである。つまり、各露光エネルギーの半分の値のLSFプロファイルを軸上と最軸外で近似させることによって、孤立白抜きドットを軸上と最軸外で一致させることができる。
図19(c)は図21のようにLSFプロファイルを補正した場合における、連続した3ドット(ドット1、ドット2、ドット3)の内、中央のドット(ドット2)を抜いた(白抜きした)場合の、露光エネルギー分布を示している。ドット2のトナーが載らずに白くなる幅はW23g(≠0)であり、トナーが少なく薄く現像される幅はW23hである。また、トナーの載り量が飽和する幅はW23iである。図19(a)と(c)を比較すると、ドット幅は「W23i < W23b = W23c < W23h」であり、白抜き幅は「W23a > W23g ≠0」である。
図22(c)は、図19(c)の露光による現像の状態を示した図である。図19(a)と図19(c)を比較して分かるように、白抜きの幅W23gがW23aより狭いため、中央の白い領域が狭くなる。一方で、トナーが薄く現像されるW23hはW23bより広いため、中央のグレーの領域が広くなる。結果として中央ドットの平均濃度が下がることにより、白抜きを近似的に再現することが可能となる。
<画像処理を行うための構成の説明>
図23を用いて、実施形態1の画像処理を行うための構成を説明する。本実施形態では、PS変換部123の中に本画処理回路を実装する構成の一例である。ハーフトーン処理部122が出力する多値のパラレル信号129を、シリアライザ123aがVCLK125に同期して取り込み、シリアル信号に変換しVCLKx16 126に同期して出力する。この信号をパターン検出部123bが本実施形態の画像処理を行う対象の画像かどうかを判定する。このパターン検出部123bは、D-FFと論理積からなるエッジ検出のみを行うものでもよいし、FIFOやラインメモリなどを使用して、より長期的な画像パターンの検出を行っても良い。LSFプロファイル123dは、本実施形態の画像処理を行う場所と、補正する量を決定する。例えば、本実施形態の画像処理を行わない中央像高においては、パターン検出部123bを無効にし、画像処理を行う軸外像高においては、パターン検出部123bを有効にする。そして、画像処理部123cに対し、像高ごとに必要な補正量を通知する。LSFプロファイル123d は、BDセンサ409に同期するドットカウンタと、LSFプロファイルを記憶するラインメモリで実現することができる。ドット単位におけるLSFプロファイルの変動が小さい場合、複数のドットで同一の補正量にすることで、ラインメモリの容量を節約することができる。また、LSFプロファイルは、予め知られている設計値等を用いることもできるし、光学装置400のLSFプロファイルを予め測定したものを記憶することで、光学装置400によるLSFプロファイルのバラツキを含めて補正することもできる。
次に、図24を用いて、画像処理部123cの処理内容について説明する。図24(a)は、画素片単位で画像処理を行うことにより補正をした場合の画像データを示し、図24(b)は、画像クロック変調を用いて補正をした場合の画像データを示す。また、図24(a)および図24(b)ともに、中央像高は補正なし、軸外像高は補正量6.25%、最軸外像高は補正量約12.5%の例を示している。画像処理部123cは、パターン検出部123bとLSFプロファイル123dの結果に従って、白抜きドットの画素幅を広げる。例えば図24(a)の様に、白抜きドットと境界となる画素片を白に変更することで、図19(c)のような露光を実現することができる。この場合、画像処理部123cの出力となるシリアル信号130は、補正済みのデータとなる。また、部分倍率補正に画像クロック制御部128bを用いる構成においては、図24(b)の様に画像クロックの変調を用いることによって補正をすることもできる。画像処理部123cが、補正をする画素の画像クロックを計算し、画像クロック制御部128bにクロック補正量123eを伝える。この結果をもとに、画像クロック制御部128bはRCLK126bを変調する。FIFO124の読み出しタイミングはRCLK126bに同期するので、VDO110の白抜きドットは、所望の状態に補正される。図24(b)の例では、白抜きドットに隣接しているドットの画像クロックの周波数を106.25%と速くして画像を縮め、白抜きドットの画像クロックの周波数を87.5%に遅くすることで画像を伸ばしている。なお、本実施形態では白抜きドットの左右を均等に補正する例を説明したが、どちらか一方のみを補正しても良いし、場所ごとに選択しても、ランダムに切り替えても良い。
図25(a)は、画素片単位で光源401を点灯/消灯を繰り返すことにより、ドットの濃度を制御する場合の画像の一例を示している。パターン検出部123bがエッジのみを検出する構成の場合、図25(a)の画素片はすべてが補正の対象となる。よって、対象の画素片を白抜きに変える制御を用いた場合、この画像は図25(b)のように全画素片が白抜きとなる。また、画像クロック制御部128bを用いる方法で補正した場合は、図25(c)の様に白抜きドットにはならないものの、濃度が所望のものより薄くなってしまう。つまり、このような濃度制御を行う場合、画素片単位のエッジを補正対象にしないことが望ましい。よって、パターン検出123bにFIFOやラインメモリなどを実装し、数画素片以上のパターン検出を行う必要がある。
<画像処理の効果>
実施形態1の様に、画像データ、および、像高またはLSFプロファイルに応じて白抜きドットの周囲の画素片を白くする、または、画像クロックを変調することにより、白抜きドットへの現像被りを抑制し、特に孤立白抜きドットの再現性を改善できる。
実施形態1ではハーフトーン処理後のPS変換部で実施する構成を説明したが、たとえば、ハーフトーン処理と同時に行う構成や、FIFOの出力後の信号で実施しても同様の効果を得られる。
以上、本発明に係る実施形態1を説明した。上記実施形態では、fθレンズを不使用とする例を説明したが、fθレンズを不使用とすることを要件とするものではない。例えば、fθ特性を持つレンズを使用したとしても、感光ドラム上にてレーザ光のスポット径にばらつきがあれば、そのようなものに対しても適応することが可能である。例えば、fθ特性を有していたとしても、主走査方向の夫々の位置のスポット径を検出して、所定のスポット径よりも大きくなっている位置については適宜補正を行っても構わない。かかる点は、以下に説明する実施形態2でも同様である。
[実施形態2]
実施形態2では、像高に応じてLSFプロファイルが副走査方向に変動する場合において、白の上下(副走査方向)の画素を間引くことを特徴とする。実施形態2の画像処理は、実施形態1と異なり、白抜きドットに隣接する画素片や画素の部分倍率を直接制御できない点にある。以下に、図26および図27を用いて、実施形態2について説明する。なお、部分倍率補正および輝度補正の方法は実施形態1と同じであるため、説明を省略する。
図19は、連続した3ドット(ドット1、ドット2、ドット3)の内、中央のドット(ドット2)を抜いた(白抜きした)場合の、露光エネルギー分布を示しており、図26はこの時の現像の状態を示している。図19(a)は軸上像高における露光エネルギー分布を示し、図26(a)が軸上像高における現像状態である。図19(b)は最軸外像高における露光エネルギー分布を示し、図26(b)が最軸外像高における現像状態である。LSFプロファイルの変動率は実施形態1の時と同じであるため、それによる現像状態の変化も同様である。よって、補正するべき量も同様にすれば良い。しかし、副走査方向に画素を分割、あるいは、画像クロックを変調することはできないため、実施形態1とは異なる手段で補正をしなければならない。よって、白抜きドットに隣接する上下の画素のトナーの量を下げることにより、白抜きドットへ被る量を減らすことを特徴としている。
図27を用いて、実施形態2における処理内容について説明する。図27(a)は、画素片単位で画像処理を行うことにより補正をした場合の画像データを示し、図27(b)は、画像クロック変調を用いて補正をした場合の画像データを示す。図27の様に、白抜きドットに隣接する上下の画素の露光時間を短くすることで、その画素に現像されるトナーの量を抑制する。なお、図27(b)のように画像クロックを変調して補正をする場合は、点灯する画素の画像クロックを速くすることで点灯時間を短くし、その左右の画素との間に空白期間を設ける方法でも良いし、左右の隣接する画素が白抜き画素の場合は、その画素の画像クロックを遅くしても良い。この時、図19(c)のように、濃度に寄与するトナー量が飽和する、露光エネルギーが0.3以上となるため、隣接する画素の濃度への影響を抑えながら、白抜きドットへの現像被りを減らすことができる。以上の様に補正することによって、図19(c)のように、副走査方向への現像被りを抑制することができる。
実施形態2の構成は実施形態1と同様に図23のようにすればよく、パターン検出部123のみを変更することで実現することが可能である。例えば、本実施形態では3ラインの画像を検出する必要があるため、パターン検出部123bは3ライン分のラインメモリを用意して、補正対象の画素(白抜き画素の上または下に隣接する画素)を検出する。なお、本実施形態では、補正対象の画素の補正の方法を図27の様に画素の両端を白くする例を示したが、例えば、図28のように画像の中央で補正しても良い。また、補正する量はLSFプロファイルの変動量によって決まるため、主走査速度に比例して補正量を変えても良いし、予めLSFプロファイルを測定、記憶することで、光学装置400によるLSFプロファイルのバラツキを含めて補正することもできる。
なお、上記実施形態では、偏向器405を、感光体4の回転軸方向における中央位置において、その回転軸に直行する面上に位置するものとしたが、これに限定されるものではなく、いずれかに偏った位置にあっても構わない。要は、感光体4上のレーザ光の主走査速度が既知であれば適用できるからである。