JP6834307B2 - 鏡面化粧シート及び成形品 - Google Patents

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Description

本発明は、鏡面化粧シート及びこれを用いた成形品に関する。
自動車用の内外装部品、家電製品等の曲面を有する部材には、プラスチックシートを基材として用い、これに色彩、模様、凹凸等を施すことにより美観を付与した化粧シートが貼り合わされており、基材の原料としては、主にポリ塩化ビニル(PVC)が使用されている。しかしながら、近年廃棄物処理に関わる処理コストを低減するため、環境負荷の小さい材料への代替が要望されており、ポリオレフィン系樹脂を使用することが検討されている。さらに、これらの部材には、近年の消費者の高級品志向により鏡面性が要求されており、特に加工後においても鏡面性が維持されたものが求められている。
ポリオレフィン系樹脂シートを基材とし、鏡面性及び加工性を有する化粧シートとして、ポリプロピレン樹脂により構成される基材シートと、電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物である表面保護層とを有する化粧シートが提案されている(例えば、特許文献1)。特許文献1には、基材シートの厚さが150〜500μmであり、表面の十点平均粗さ(RzJIS)が5μm以下であり、表面保護層の厚さが7〜17μmであり、所定の方法で測定されるクラック発生伸度が10〜20%であることにより鏡面性及び加工性を有する化粧シートが得られることが記載されている。
また、ロール巻き取り後に擦り傷及びシワを生じにくくするために、加飾シート(化粧シート)の裏面に粗面化処理を施すことが提案されている(例えば、特許文献2)。
国際公開第2015/141781号 特開2012−11676号公報
鏡面性を有する化粧シートは、例えば、自動車用の内外装部品などに用いられる。しかしながら、特許文献1に記載の化粧シートは2R曲げの加工には使用することができるが、自動車用内外装部品のようにさらに厳しい曲面や複雑な曲面形状を有する成形品に用いるには曲げ加工性をさらに向上させることが望まれていた。例えば表面から側面にかけて隅角部を有する被着材に対し、隅角部に追従して化粧シートを折り曲げるように貼着する場合や、被着材の表面、側面及び裏側まで化粧シートを巻き込むように貼着する場合であっても、形状追従性が高く、且つクラックや外観変化が生じないことが求められる。
特許文献2に記載の方法によれば、ロールを巻き取る際に異物を巻き込むことによる表面の凹み及び傷が生じにくく、表面と裏面とが互いに密着することによる擦り傷及びシワが生じにくい加飾シートが得られる。しかしながら鏡面性の高い表面保護層を有し、且つ基材にポリオレフィン樹脂等から構成される柔らかい基材シートを用いた化粧シートにおいては、シートを巻き取った際に表面保護層に裏面の凹凸が賦型されて鏡面性が低下することがある。特に、黒色やダークブラウンなどの暗色の化粧シートでは凹凸の賦型による鏡面性低下が目視で顕著に観察される。
表面保護層へのシート裏面の凹凸賦型を防止するには表面保護層を硬くすることが有効であるが、曲げ加工時に剥がれやクラックが生じやすくなる。そのため鏡面性を有する化粧シートにおいて、従来は優れた曲げ加工性と鏡面性との両立が困難であった。
本発明は、このような状況下、複雑な形状あるいは隅角部を有する被着材の形状に追従して貼着することが可能であり、且つクラックや外観変化も生じず優れた曲げ加工性を有し、並びにシートの巻き取り後も良好な鏡面性を有する暗色の化粧シート、及びこれを有する成形品を提供することを課題とする。
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、下記の発明により解決できることを見出した。すなわち本発明は、下記の鏡面化粧シート及びこれを有する成形品を提供するものである。
1.基材シートと表面保護層とを有する鏡面化粧シートであって、前記基材シートは熱可塑性エラストマーを含有するポリオレフィン基材シートであり、前記表面保護層が電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物であり、前記表面保護層の下記方法で測定したクラック発生伸度が20%超、100%以下であり、JIS B0601:2001に準拠して測定した前記鏡面化粧シートの裏面の十点平均粗さ(RzJIS)が3μm以上、15μm以下であり、且つ、JIS Z8781−4:2013で規定されるL表色系におけるL値が50以下である、鏡面化粧シート。
(クラック発生伸度の測定)
化粧シートをJIS K7127:1999に準拠した短冊型の試験片を用意し、該試験片を、23℃±2℃において、引張試験機を用いて引張速度200mm/分、チャック間距離100mmの条件で、任意伸度で引っ張った後、該試験片をホワイトボード用マーカーでチャック間内を着色し、該着色部を布でふき取り、クラックの発生によりふき取れなくなったときの伸度をクラック発生伸度とした。
2.前記鏡面化粧シートの前記表面保護層面について、JIS Z8741−1997に準拠して測定した20°グロスが40%以上である、上記1に記載の鏡面化粧シート。
3.前記表面保護層の厚さが6〜20μmである、上記1又は2に記載の鏡面化粧シート。
4.前記基材シートが着色基材シートである、上記1〜3のいずれか1項に記載の鏡面化粧シート。
5.上記1〜4のいずれか1項に記載の鏡面化粧シートの裏面に接着剤層を有する、接着剤層付鏡面化粧シート。
6.被着材上に、上記1〜4のいずれか1項に記載の鏡面化粧シートを有する成形品。
本発明によれば、優れた曲げ加工性を有するとともに、シートの巻き取り後においても良好な鏡面性を有する暗色の鏡面化粧シート、及びこれを有する成形品を得ることができる。
本発明の鏡面化粧シートの一つの態様の断面を示す模式図である。 本発明の鏡面化粧シートの別の態様の断面を示す模式図である。
[鏡面化粧シート]
本発明の鏡面化粧シート(以下、単に「化粧シート」と称することがある)は、基材シートと表面保護層とを有する鏡面化粧シートであり、該基材シートは熱可塑性エラストマーを含有するポリオレフィン基材シートであり、該表面保護層が電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物であり、前記表面保護層の下記方法で測定したクラック発生伸度が20%超、100%以下であり、JIS B0601:2001に準拠して測定した前記鏡面化粧シートの裏面の十点平均粗さ(RzJIS)が3μm以上、15μm以下であり、且つ、JIS Z8781−4:2013で規定されるL表色系におけるL値が50以下であることを特徴とする。
(クラック発生伸度の測定)
化粧シートをJIS K7127:1999に準拠した短冊型の試験片を用意し、該試験片を、23℃±2℃において、引張試験機を用いて引張速度200mm/分、チャック間距離100mmの条件で、任意伸度で引っ張った後、該試験片をホワイトボード用マーカーでチャック間内を着色し、該着色部を布でふき取り、クラックの発生によりふき取れなくなったときの伸度をクラック発生伸度とした。
本発明の化粧シートの層構成は、基材シート上に表面保護層を有していれば特に限定されない。
なお、本発明の化粧シートにおいて、表面とは、いわゆる「おもて面」であり、本発明の化粧シートが被着材等に積層して用いられる際に、被着材と接触する面とは反対側の面であり、積層後に視認される面である。また、本明細書では、本発明の化粧シートについて、上記表面の方向を「おもて」又は「上」と称し、その反対側を「裏」又は「下」と称する場合がある。
本発明の化粧シートについて、図1及び図2を用いて説明する。図1及び図2は、本発明の化粧シートの一つの態様の断面を示す模式図である。図1に示される化粧シート10は、基材シート1、及び表面保護層2を順に有している。基材シート1と表面保護層2との間にはプライマー層を設けてもよい。また、図2に示される化粧シートは、基材シート1、プライマー層3、表面保護層2、及びマスキングフィルム5を順に有し、かつ基材シートのプライマー層及び表面保護層を有する側とは反対側(以後、単に裏面と称する場合がある。)に裏面プライマー層4を有している。
図1及び図2に図示の如く、鏡面化粧シート10の「表面10S」とは、表面保護層2の基材シート1側とは反対側の最外面をいう。
また、鏡面化粧シート10の「裏面10R」とは化粧シート10の該表面10Sとは反対側の最外面をいう。図1の如く基材シートに裏面プライマー層4を設けない形態においては、基材シート1の表面保護層2と反対側の最外面1R(基材シート1の裏面ともいう)が化粧シート10の裏面と一致する。また、図2の如く基材シートに裏面プライマー層4を設けた形態においては、裏面プライマー層4の表面保護層2と反対側の最外面4R(裏面プライマー層4の裏面ともいう)が化粧シート10の裏面と一致する。
上記構成を有する本発明の鏡面化粧シートは曲げ加工性に優れており、複雑な形状あるいは隅角部を有する被着材の形状に追従して貼着することが可能であり、且つ曲げ加工時にクラックや外観変化も生じない。
また、熱可塑性エラストマーを含有するポリオレフィン基材シートを用いた化粧シートは曲げ加工性に優れるが、基材シートが柔らかいと、巻き取り後に裏面の凹凸が化粧シートの表面保護層に賦型されやすく、鏡面性が低下しやすい。さらに、暗色の化粧シートにおいては凹凸の賦型による鏡面性低下が目立つという問題がある。しかしながら、特に前記方法で測定した表面保護層のクラック発生伸度が20%超、100%以下であることにより、前記の柔らかい基材シートを用いた化粧シートであってもシート巻き取り後に化粧シートの裏面の凹凸が表面保護層に賦型されるのを防ぐことができる。また、表面保護層に一度凹凸形状が賦型されても、表面保護層の自己修復機能により経時的に回復するので、巻き取りの後においても良好な鏡面性を維持することができる。
本発明において「鏡面化粧シート」とは、化粧シートの表面保護層面について、JIS Z8741−1997に準拠した方法により測定した20°グロスが好ましくは40%以上であるシートをいう。当該20°グロスの値は、光沢度測定器(BYKガードナー社製「マイクログロス」)を用いて、表面保護層の任意の5箇所について角度20°で測定した鏡面光沢度(Specular Glossiness、以下「グロス」或いは「グロス値」とも称する)の平均値である。
本発明の化粧シートは優れた鏡面性を有しているため、その鏡面性の評価には、通常の測定条件(角度60°)よりも厳しい条件である角度20°で測定したグロス値を用いている。すなわち、鏡面性が非常に優れている場合、角度60°での測定では、グロスすなわち鏡面光沢度(Specularglossiness)の数値が飽和して、視覚に基づく鏡面光沢感覚と測定値との相関性及び有意差が低下し、数値上の有意差も見られないためである。当該20°グロスは50%以上であることがより好ましく、60%以上がさらに好ましい。
以下、本発明の化粧シートについて、図1及び図2の層構成の化粧シートを代表例として、具体的に説明する。
本発明の鏡面化粧シートのJIS B0601:2001に準拠して測定した裏面の十点平均粗さ(RzJIS)は、3μm以上、15μm以下である。化粧シート10の裏面の十点平均粗さ(RzJIS)が3μm以上であると、基材シート1の製膜時、及び鏡面化粧シート10を巻き取った際の基材シート1及び鏡面化粧シート10の相互接触した表面と裏面との間に空気を巻き込んだり、対面する表面と裏面とが不用意に密着して巻き戻しが困難となったり、表面(又は裏面)近傍の材料が裏面(又は表面)側に移行したりする現象(いわゆる「ブロッキング」)を抑制しやすい。一方、化粧シート10の裏面の十点平均粗さ(RzJIS)が15μm以下であれば、シート巻き取り後に化粧シート10の表面(表面保護層)が比較的平滑な裏面と接することになるので、表面保護層に裏面の凹凸が賦型されることによる鏡面性低下を抑制することができる。特に、本発明の化粧シートは暗色であることから表面保護層に凹凸が賦型されることによる鏡面性低下が目立つため、本発明の効果を有効に発揮することができる。当該RzJISが15μmよりも大きいと、シート巻き取り後に表面保護層に化粧シートの裏面の凹凸が賦型されることによる鏡面性低下を防止できない。且つ、ブロキング抑制効果も飽和する為、敢えてRzJISをこれ以上高くする必要性もない。
優れた鏡面性が得られ、且つ化粧シートを巻き取った際のブロッキングを抑制する観点から、十点平均粗さ(RzJIS)は3〜13μmであることが好ましく、3〜10μmであることがより好ましい。
化粧シートの裏面の十点平均粗さ(RzJIS)は、例えば、シートの製膜時に使用するロールの材質や表面形状などにより調整することが可能である。また、十点平均粗さ(RzJIS)は、JIS B0601:2001に準拠して測定されるものであり、接触式表面粗さ計を用いて任意の5箇所について測定した平均値である。
なお、本明細書に於いて、数値範囲に附記した記号「X〜Y」は、「X以上Y以下」の意味で使用する。特に、上限値及び/又は下限値を除外する場合は、例えば、「X超Y以下」、「X以上Y未満」、「X超Y未満」等と記載する。
また、本発明の鏡面化粧シートのJIS B0601:2001に準拠して測定した裏面の算術平均粗さ(Ra)は、好ましくは0.3μm以上、2μm以下である。化粧シートの裏面の算術平均粗さ(Ra)が0.3μm以上であると、鏡面化粧シートを巻き取った際のブロッキングを抑制しやすい。一方、当該Raが2μm以下であれば、シート巻き取り後に化粧シートの表面(表面保護層)が比較的平滑な裏面と接することになるので、表面保護層に裏面の凹凸が賦型されることによる鏡面性低下を抑制することができる。優れた鏡面性が得られ、且つ化粧シートを巻き取った際のブロッキングを抑制する観点から、当該算術平均粗さ(Ra)は0.3〜1.8μmであることが好ましく、0.3〜1.4μmであることがより好ましい。
化粧シートの裏面の算術平均粗さ(Ra)は、十点平均粗さ(RzJIS)と同様の方法で測定できる。
本発明の鏡面化粧シートは前記L値が50以下である暗色のシートである。当該L値は、本発明の鏡面化粧シートの表面保護層面において、JIS Z8781−4:2013で規定されるCIE(国際照明委員会)L表色系におけるL値を分光測色計を用いて測定した値であり、数値が小さいほど暗色であることを示す。L値が50以下である暗色の化粧シートでは、表面保護層にシート裏面の凹凸が賦型されると鏡面性低下が目立つため、本発明の効果をより有効に発揮できる。当該L値は、好ましくは45以下、より好ましくは40以下、さらに好ましくは30以下である。
化粧シートのL値を50以下とする方法としては、基材シート、又は、化粧シートを構成する層のうち少なくとも1つの層に暗色の着色剤を含有させるなどして着色する方法が挙げられる。本発明の化粧シートにおいては、隠蔽性を付与して意匠性を向上させる点から、着色基材シートを用いる方法が好ましい。
また本発明の鏡面化粧シートは、2%モジュラスが好ましくは5〜30N/15mmであり、より好ましくは7〜25N/15mmである。2%モジュラスが上記範囲であると、優れた加工性及び鏡面性を有する化粧シートを得ることができる。
なお本明細書において、2%モジュラスは、JIS K7127:1999に準拠した測定方法により、15mm×140mmの短冊型の試験片を用いて、室温環境下で引張速度200mm/min、チャック間距離100mmで、伸度2%の条件で測定した荷重の値(N/15mm)である。
また、本発明の化粧シートは、表面保護層上にさらにマスキングフィルムを有するマスキングフィルム付き化粧シートの態様、及び/又は裏面側にさらに接着剤層を有する接着剤層付化粧シートの態様で実施し得るが、クラック発生伸度は、後述するマスキングフィルム又は接着剤層を有さない状態で測定した値である。
本明細書において、特に断りのない限り、室温とは23℃±5℃であり、室温環境下とは温度が23℃±5℃の実験室環境下を意味する。
本発明の化粧シートの上記2%モジュラスの調整は、基材シートを構成する樹脂の種類又は配合、基材シートの厚さ等を調整することにより行うことができる。基材シートを構成する樹脂に関しては、例えば、基材シートを構成するポリオレフィン系樹脂を複数混合し、且つ配合比を調整する方法や、基材シート中に含まれる熱可塑性エラストマーの種類や配合量を調整する方法が挙げられる。また、基材シートの厚さを薄くすると2%モジュラスが小さくなり、厚くすると2%モジュラスが大きくなる。
あるいは、化粧シートの上記2%モジュラスの調整は、表面保護層の物性を調整することによっても行うことができる。具体的には、表面保護層を形成する電離放射線硬化性樹脂組成物の塗布量、表面保護層を形成する際の電離放射線の放射強度を適宜調整する方法が挙げられる。前記塗布量を多くするほど、前記放射強度を大きくするほど、2%モジュラスは大きくなる。また、表面保護層を形成する電離放射線硬化性樹脂を複数混合し、配合比を適宜調整して表面保護層の硬さを調整する方法も挙げられる。
(基材シート)
本発明の化粧シートに用いる基材シートは、熱可塑性エラストマーを含有するポリオレフィン基材シートである。基材シートが熱可塑性エラストマーを含有することにより、本発明の化粧シートに柔軟性が付与されてシートの曲げ加工時の過剰な伸び、収縮、戻り変形が抑制され、優れた曲げ加工性を有するシートとなる。
熱可塑性エラストマーとしては、ポリエチレン系、ポリプロピレン系などのポリオレフィン系;スチレン系;ポリエステル系;ポリウレタン系;の熱可塑性エラストマーが挙げられる。これらの中でも、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーが好ましく、ポリプロピレン系熱可塑性エラストマーがより好ましい。
基材シート中の熱可塑性エラストマーの含有量には特に制限はないが、曲げ加工性と耐熱性、強度の観点から、好ましくは5〜80質量%の範囲、より好ましくは10〜60質量%の範囲である。
本発明に用いる基材シートとしては、熱可塑性エラストマーとポリオレフィン系樹脂とを主成分として含む基材シートであれば特に制限はない。「主成分」とは、基材シートを構成する全成分の50質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上を占める成分をいう。通常は、熱可塑性エラストマーとポリオレフィン系樹脂とから構成されるフィルムを使用すればよい。
ポリオレフィン系樹脂としては特に限定されず、化粧シートの分野で通常用いられているものを使用することができる。このようなポリオレフィン系樹脂として、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体等が挙げられる。これらの中でも、柔軟性の観点からポリプロピレン樹脂が好ましい。
ポリプロピレン樹脂を採用することにより、基材シートを薄いものとしても糊(接着剤)の塗布ムラ、あるいは被着材表面の凹凸などの、いわゆるダクを拾いにくく、優れた鏡面性が得られる。また生産効率にも優れ、材料費又は輸送費のコストアップを抑えることも可能となる。
ポリプロピレン樹脂としては、ホモポリプロピレン樹脂、ランダムポリプロピレン樹脂、ブロックポリプロピレン樹脂、あるいはポリプロピレン結晶部を有するポリプロピレン樹脂、ポリプロピレン結晶部を有するポリプロピレン樹脂以外の炭素数2〜20のα−オレフィン共重合体などが好ましく挙げられる。その他、エチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテンなどを15モル%以上含むプロピレン−α−オレフィン共重合体、例えばエチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体なども好ましく挙げられる。
ポリプロピレン樹脂は、ガラス転移点(Tg)が−50〜70℃であり、且つ融点(Tm)が130〜220℃である結晶性樹脂を用いることが好ましい。基材シートを構成するポリプロピレン樹脂が結晶性樹脂であると、ガラス転移温度(Tg)よりも高い温度領域でも融点(Tm)以下であれば安定した結晶構造を有するため、温度の変化による柔軟性の変化が少ない、すなわち柔軟性の温度依存性が低く、例えば化粧シートを加温(50〜120℃)しながら被着材にラッピング加工する際に、糊(接着剤)の塗布むら、あるいは被着材表面の凹凸などの、いわゆるダクを拾うことなく、被着材に貼着した後に鏡面性が低下することがなく、また、局所的な加熱による温度むらが生じても、優れた鏡面性を維持することができる。
結晶性樹脂としてのポリプロピレン樹脂のガラス転移点(Tg)は、−50〜70℃であることが好ましい。ガラス転移点(Tg)が−50℃よりも低いと優れた鏡面性が得られないおそれがあり、70℃を超えると鏡面性が得られない、あるいは耐熱性が得られないおそれがある。優れた鏡面性及び耐熱性を得る観点から、−20〜50℃であることがより好ましい。
ここで、ガラス転移点(Tg)は、JIS K7121−1987に準拠して測定される値である。具体的には、ポリプロピレン樹脂を室温から20℃/分の割合で昇温させ、示差走査熱量計(DSC)にて発熱量を測定し、吸熱曲線図又は発熱曲線図を作成し、変曲点前後の直線部分にそれぞれ延長線を引き、2本の延長線間の1/2直線と吸熱曲線又は発熱曲線との交点をTgとする。
結晶性樹脂としてのポリプロピレン樹脂の融点(Tm)は、130〜220℃であることが好ましい。融点(Tm)が130℃以上であれば、優れた鏡面性が得られる。また220℃以下であれば、とりわけ曲面形状を有する被着材に加工した際にも優れた加工性が得られる。優れた鏡面性と加工性とを得る観点から、ポリプロピレン樹脂の融点(Tm)は130〜200℃であることがより好ましい。
ここで、融点(Tm)は、JIS K7121−1987に準拠して測定される値である。具体的には、ポリプロピレン樹脂を室温から10℃/分の割合で昇温させて融解ピーク終了時より30℃高い温度まで加熱し、10分間保った後、10℃/分で40℃まで冷却し、再度同様の加熱及び冷却を繰返して得られたDSC曲線において、融解ピークの頂点の温度を融点(Tm)とする。なお、DSC曲線に複数の吸熱ピークがある場合には、最大面積の吸熱ピークの頂点温度を採用する。
基材シートの形成に用いられる樹脂材料には、必要に応じて、添加剤が配合されてもよい。添加剤としては、例えば、充填剤、難燃剤、酸化防止剤、滑剤、発泡剤、耐候剤などが挙げられる。
上記添加剤のうち、優れた加工性を得る観点から、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、クレー、タルクなどの無機充填剤;耐候性向上のために、紫外線吸収剤(UVA)、ヒンダードアミン系の光安定剤(HALS)等の耐候剤を含有することが好ましい。これらの無機充填剤の含有量は、樹脂材料に対して1〜60質量%の範囲が好ましい。
基材シートの厚さは、50〜250μmが好ましく、90〜150μmがより好ましい。基材シートの厚さが上記範囲であることにより、鏡面性及び加工性に優れた鏡面化粧シートを得ることができる。
暗色の鏡面化粧シートを得る観点から、本発明に用いる基材シートは着色基材シートであることが好ましい。基材シートが着色されたものであると、化粧シートの被着材の下地の隠蔽を行うことができると同時に、優れた意匠性が得られる。
着色基材シートとして、例えば着色剤を含有した基材シートを用いることができる。着色基材シートに用いうる着色剤としては、化粧シートに前記所定のL*値を付与できるものであれば特に制限はないが、暗色の着色剤が好ましい。例えば、カーボンブラック(墨)、鉄黒などの無機顔料の他、有機顔料、染料などを1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
L*値が低い、黒色の鏡面化粧シートを製造する場合は、着色剤としてカーボンブラック、鉄黒などの黒色顔料を用いることが好ましい。
着色剤の使用量は、前記所定のL値を付与できる量であって、基材シートを押出成形して得る際の製膜性や、機械的強度を低下させない範囲であれば特に制限はない。
暗色の鏡面化粧シートを得る観点からは、基材シートのJIS Z8781−4:2013で規定されるL表色系におけるL値は50以下であることが好ましく、より好ましくは45以下、さらに好ましくは40以下、よりさらに好ましくは30以下である。基材シートのL値は、前記と同様の方法で測定できる。
基材シートが化粧シートの最下層である場合には、JIS B0601:2001に準拠して測定した基材シートの裏面の十点平均粗さ(RzJIS)を3μm以上、15μm以下にする。
基材シートの裏面の十点平均粗さ(RzJIS)が3μm以上であると、鏡面化粧シートを巻き取った際のブロッキングを抑制しやすい。一方、基材シートの裏面の十点平均粗さ(RzJIS)が15μm以下であれば、シート巻き取り後に化粧シートの表面(表面保護層)が比較的平滑な裏面と接することになるので、表面保護層に裏面の凹凸が賦型されることによる鏡面性低下を抑制することができる。基材シートが化粧シートの最下層である場合、当該RzJISが15μmよりも大きいと、シート巻き取り後に表面保護層に化粧シートの裏面の凹凸が賦型されることによる鏡面性低下を防止できない。
優れた鏡面性が得られ、且つ化粧シートを巻き取った際のブロッキングを抑制する観点から、基材シートの裏面の十点平均粗さ(RzJIS)は3〜13μmであることが好ましく、3〜10μmであることがより好ましい。
基材シートの裏面の十点平均粗さ(RzJIS)は、例えば、基材シートの製膜時に使用するロールの材質や表面形状などにより調整することが可能である。十点平均粗さ(RzJIS)は、前記と同様の方法で測定できる。
(プライマー層)
基材シートと表面保護層との間にはプライマー層を設けてもよい。プライマー層を設けることで基材シートと表面保護層との密着性を向上させるとともに、加工性を向上させ、また製造工程においてブロッキングを防止することもできる。
プライマー層は、例えばバインダー樹脂とマット剤とを含む樹脂組成物により構成される。バインダー樹脂としては、特に制限はないが、例えばウレタン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン/アクリル共重合体、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、塩素化ポリプロピレン樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂などが好ましく挙げられる。上記の中でも、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン/アクリル共重合体、及びポリエステル樹脂からなる群から選ばれる1種以上が好ましく、ウレタン/アクリル共重合体及びポリエステル樹脂からなる群から選ばれる1種以上がより好ましい。また、優れた密着性と鏡面性とが得られる観点から、上記の樹脂を主剤とし、イソシアネート等を硬化剤とした2液硬化性樹脂が好ましい。
イソシアネート硬化剤としては、従来公知の化合物を適宜使用すればよく、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート(TDI)、キシレンジイソシアネート(XDI)、ナフタレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネートなどの芳香族イソシアネート、あるいは1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、メチレンジイソシアネート(MDI)、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネートなどの脂肪族(ないしは脂環式)イソシアネートなどのポリイソシアネートが用いられる。また、これら各種イソシアネートの付加体又は多量体、例えば、トリレンジイソシアネートの付加体、トリレンジイソシアネート3量体(trimer)なども用いられる。
製造工程におけるブロッキングを防止するため、プライマー層はマット剤を含むことが好ましい。プライマー層がマット剤を含むことにより、基材シート上にプライマー層を形成した後、表面保護層を形成する前に一度ロール状に巻き取る際にブロッキングが生じることを防止することができる。マット剤としては、例えば、アルミナ、シリカ、カオリナイト、酸化鉄、ダイヤモンド、炭化ケイ素などの無機粒子や、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ナイロン樹脂、ポリプロピレン樹脂、尿素系樹脂などの有機粒子が好ましく挙げられ、いずれか1種を用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
マット剤の形状は、球、楕円体、多面体、鱗片形などが挙げられ、特に制限はないが、鏡面性が得られる点で、球状が好ましい。
マット剤の平均粒子径は、0.5〜8μmであることが好ましく、1〜5μmであることがより好ましい。平均粒子径が上記範囲内であると、優れた鏡面性が得られる。ここで、平均粒子径は、レーザー回折式、あるいはレーザー散乱式粒子径分布測定により測定される体積基準の粒子径である。
マット剤の含有量は、バインダー樹脂100質量部に対して0.5〜30質量部であることが好ましく、1〜25質量部であることがより好ましく、3〜20質量部であることがさらに好ましい。含有量が上記範囲内であると、優れた密着性が得られる。
プライマー層には、必要に応じて、マット剤以外の添加剤が配合されてもよい。添加剤としては、例えば、充填剤、難燃剤、酸化防止剤、滑剤、発泡剤、耐候剤などが挙げられる。上記添加剤のうち、耐候性向上のために、紫外線吸収剤(UVA)、ヒンダードアミン系の光安定剤(HALS)等の耐候剤を含有することが好ましい。UVAとしては、紫外線吸収能が高く、また紫外線などの高エネルギーに対しても劣化しにくいトリアジン系紫外線吸収剤がより好ましい。
プライマー層の厚さは、通常0.5〜20μm程度であり、1〜10μmが好ましい。プライマー層の厚さが上記範囲内であると、優れた密着性及び鏡面性が得られる。
また、プライマー層のJIS B0601:2001に準拠して測定した表面の十点平均粗さ(RzJIS)は、好ましくは5μm以下である。5μm以下であれば、優れた鏡面性が得られる。優れた鏡面性と加工性を得る観点から、当該十点平均粗さ(RzJIS)は1〜5μmであることがより好ましく、2.5〜5μmであることがさらに好ましい。プライマー層の表面の十点平均粗さ(RzJIS)は、マット剤の平均粒径、含有量等を変えることにより調整することが可能である。十点平均粗さ(RzJIS)は前記と同様の方法で測定できる。
(表面保護層)
表面保護層は、本発明の化粧シートに耐候性、耐汚染性、耐傷性、耐溶剤性、及び耐熱性などの表面特性を付与し、且つ優れた鏡面性を付与する、電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物で構成される層である。
表面保護層を構成する材料としては、電離放射線硬化性樹脂を含む電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物により構成される。ここで、電離放射線硬化性樹脂組成物は電離放射線を照射することにより硬化する樹脂組成物であり、電離放射線としては、電磁波又は荷電粒子線のうち、分子を重合あるいは架橋し得るエネルギー量子を有するもの、例えば、紫外線(UV)又は電子線(EB)が用いられるほか、その他、X線、γ線などの電磁波、α線、イオン線などの荷電粒子線も用いられる。
電離放射線硬化性樹脂組成物に含まれる電離放射線硬化性樹脂としては、従来電離放射線硬化性の樹脂として慣用されている重合性モノマー及び重合性オリゴマー(ないしはプレポリマー)の中から適宜選択して用いることができる。
例えば、単官能(メタ)アクリレート、多官能(メタ)アクリレートなどの重合性モノマーや、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエーテル(メタ)アクリレートオリゴマー、アクリル(メタ)アクリレートオリゴマーなどの重合性オリゴマー、ないしはプレポリマーの中から単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明においては、電離放射線硬化性樹脂として重合性オリゴマーを用いることが好ましく、官能基数が2以上の多官能重合性オリゴマーが好ましい。所望のクラック発生伸度を得る観点からは、当該オリゴマーの重量平均分子量は、好ましくは500〜8,000、より好ましくは1,000〜7,000、さらに好ましくは1,500〜6,000である。当該オリゴマーは、1種を単独で用いてもよく、得られる表面保護層のクラック発生伸度を調整するためには、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、電離放射線硬化性樹脂組成物の粘度を調整し、塗布適性を向上させる観点から、重合性オリゴマーと重合性モノマーとを組み合わせて使用することもできる。
電離放射線硬化性樹脂として紫外線硬化性樹脂を用いる場合には、光重合用開始剤を樹脂100質量部に対して、0.1〜5質量部程度添加することが望ましい。光重合用開始剤としては、従来慣用されているものから適宜選択することができ、特に限定されず、例えば、ベンゾイン系、アセトフェノン系、フェニルケトン系、ベンゾフェノン系、アントラキノン系などの光重合用開始剤が好ましく挙げられる。
また、光増感剤としては、例えばp−ジメチル安息香酸エステル、第三級アミン類、チオール系増感剤などを用いることができる。
本発明で用いる電離放射線硬化性樹脂としては、電子線硬化性樹脂であることが好ましい。電子線硬化性樹脂の場合は無溶剤化が可能であって、環境や健康の観点からより好ましく、且つ、光重合用開始剤を必要とせず、安定した硬化特性が得られ、優れた表面特性が得られるからである。
電離放射線硬化性樹脂組成物には、各種添加成分として、シリコーン成分、耐摩耗フィラー、マット形成フィラー、耐傷フィラーなどのフィラー(充填剤)、あるいは耐候性向上のために、紫外線吸収剤、光安定剤などの耐候剤を含有させることができる。
シリコーン成分とは、有機基を有するケイ素と酸素とが交互に結合してできた構造を分子中に有する成分をいう。シリコーン成分として、具体的には、ポリシロキサン骨格を主成分とするシリコーンオイルの、側鎖又は末端にアミノ基、ビニル基、エポキシ基、カルボシキル基、アクリル基、メタクリル基等の反応性を有する有機基を導入した反応性シリコーン;側鎖又は末端にアルキル基、エーテル基、高級脂肪酸等の反応性を有さない有機基を導入した非反応性シリコーン;有機樹脂、電離放射線硬化性樹脂等の側鎖又は末端をシリコーンで変性したシリコーン変性樹脂等が挙げられる。シリコーン成分を添加することにより、電離放射線硬化性樹脂組成物を塗工した際のレベリング性が良好となって均一な塗膜を形成することができることに加え、シリコーン成分が塗膜の表面に浮かび上がる作用によって、電離放射線硬化性樹脂組成物がプライマー層に浸み込むことにより生じる平面平滑性の低下が抑制されるため、鏡面性を向上させることができる。
これらの中で、反応性シリコーンは電離放射線硬化性樹脂組成物が硬化する際に、電離放射線硬化性樹脂と反応して一体化し、ブリードアウトによる外観不良を発生しにくいので、長期にわたって鏡面性を保持することができる点で好ましい。
反応性シリコーンの種類としては、変性シリコーンオイルの側鎖型、変性シリコーンオイルの両末端型、変性シリコーンオイルの側鎖両末端型があり、導入する有機基により、アミノ変性、エポキシ変性、メルカプト変性、カルボキシル変性、カルビノール変性、フェノール変性、メタクリル変性、異種官能基変性等がある。
シリコーン成分の含有量は、電離放射線硬化性樹脂組成物に含まれる電離放射線硬化性樹脂に対して0.1〜2質量%であることが好ましい。上記範囲とすることにより、表面に十分な滑性を付与することができるとともに、塗工の際にはじきが発生せず、塗膜面が荒れることがなく、しかも安定性を向上させることができる。該含有量は0.2〜1質量%がより好ましい。
紫外線吸収剤としては、無機系、有機系のいずれも用いることができる。無機系紫外線吸収剤としては、平均粒径が5〜120nm程度の酸化チタン、酸化セリウム、酸化亜鉛などを好ましく用いることができる。また、有機系紫外線吸収剤としては、例えばベンゾトリアゾール系、トリアジン系、ベンゾフェノン系、サリチレート系、アクリロニトリル系などが好ましく挙げることができる。なかでも、紫外線吸収能が高く、また紫外線などの高エネルギーに対しても劣化しにくいトリアジン系紫外線吸収剤がより好ましい。また、紫外線吸収剤として、分子内に電離放射線反応性基を有する紫外線吸収剤を用いることもできる。
光安定剤としては、ヒンダードアミン系の光安定剤(HALS)などが好ましく挙げられる。また、分子内に電離放射線反応性基である(メタ)アクリロイル基を有する光安定剤を用いることもできる。
上記の紫外線吸収剤、光安定剤等を耐候剤として使用することにより、耐候剤のブリードアウトが生じることなく、安定した耐候性を得ることができる。
また、電離放射線硬化性樹脂組成物は、各種添加成分として、得られる化粧シートにおける表面保護層の隠蔽性向上、基材シートの黄変防止や耐光性の向上などを図る目的で、酸化チタン、アルミペースト、カーボンブラックなどの無機系着色剤を適宜添加することができる。
上記電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物である表面保護層は、下記の方法で測定されたクラック発生伸度が20%超、100%以下である。
(クラック発生伸度の測定)
化粧シートを用いてJIS K7127:1999に準拠した短冊型の試験片を作製し、該試験片を、23℃±2℃において、引張試験機を用いて引張速度200mm/分、チャック間距離100mmの条件で、任意伸度で引っ張った後、該試験片をホワイトボード用マーカーでチャック間内を着色し、該着色部を布でふき取り、クラックの発生によりふき取れなくなったときの伸度をクラック発生伸度とした。
また、本発明の化粧シートは、表面保護層上にさらにマスキングフィルムを有するマスキングフィルム付き化粧シートの態様、及び/又は裏面側にさらに接着剤層を有する接着剤層付化粧シートの態様で実施し得るが、クラック発生伸度は、後述するマスキングフィルム又は接着剤層を有さない状態で測定した値である。
なお、上記クラック発生伸度の測定方法においてホワイトボード用マーカーは、Pentelノックル ホワイトボードマーカー、青、丸芯、中字を用いた。また、チャック間内の着色は、引っ張った後のチャック間全体を着色した。
表面保護層の前記クラック発生伸度が20%以下であると、化粧シートの表面に割れを生じる。また、クラック発生伸度が100%を超えると、化粧シートの表面が柔らか過ぎて、シート巻き取りの際に化粧シートの裏面の凹凸を賦型し、鏡面性が低下する。上記クラック発生伸度は、25〜80%が好ましく、25〜75%がより好ましく、30〜60%がさらに好ましい。
また表面保護層の前記クラック発生伸度が20%超、100%以下であると、表面保護層に一度凹凸形状が賦型されても、表面保護層の自己修復機能により経時的に回復するので、巻き取りの後においても良好な鏡面性を維持することができる。
表面保護層の上記クラック発生伸度の調整は、表面保護層の硬さを調整することにより行うことができる。具体的には、例えば、表面保護層を形成する電離放射線硬化性樹脂組成物に含まれる電離放射線硬化性樹脂の官能基数、分子量等を調整することにより行うことができる。電離放射線硬化性樹脂の官能基数を増やすと樹脂が硬くなり、クラック発生伸度が小さくなり、官能基数を減らすと樹脂が柔らかくなり、クラック発生伸度が大きくなる傾向がある。電離放射線硬化性樹脂の分子量を小さくすると樹脂が硬くなり、クラック発生伸度が小さくなり、電離放射線硬化性樹脂の分子量を大きくすると樹脂が柔らかくなり、クラック発生伸度が大きくなる傾向がある。
また、表面保護層のクラック発生伸度の調整は、表面保護層を形成する際の電離放射線の照射強度を調整することによっても行うことができる。電離放射線の照射強度を強くすると表面保護層は硬くなり、クラック発生伸度が小さくなる。一方、電離放射線の照射強度を弱くすると表面保護層は柔らかくなり、クラック発生伸度が大きくなる。更に、表面保護層を形成する電離放射線硬化性樹脂を複数混合し、配合比を適宜調整して表面保護層の硬さを調整することによっても表面保護層のクラック発生伸度を調整することができる。
また、表面保護層を形成する電離放射線硬化性樹脂組成物の塗布量を適宜調整することによってもクラック発生伸度を調整することができる。塗布量を多くするとクラック発生伸度が小さくなり、塗布量を少なくするとクラック発生伸度が大きくなる。
表面保護層の厚さは、6〜20μmが好ましい。表面保護層の厚さが6μm以上であれば優れた鏡面性が得られ、20μm以下であれば曲げ加工性に優れる。
優れた鏡面性、優れた加工性を得る観点から、表面保護層の厚さは、7〜18μmがより好ましく、7〜15μmがさらに好ましい。
表面保護層の表面の、JIS Z8741−1997に準拠して測定した前記20°グロスは前述の通り、好ましくは40%以上であり、50%以上であることがより好ましく、60%以上がさらに好ましい。
上記20°グロスの調整は、表面保護層の厚さを調整することにより行うことができる。具体的には、表面保護層の厚さを薄くすると20°グロスが小さくなり、厚くすると20°グロスが大きくなる。
(裏面プライマー層)
裏面プライマー層は、基材シートと各種被着材との接着性を向上させる目的で必要に応じ設けられる層であり、基材シートのプライマー層及び表面保護層を設ける側の面とは反対側の面(裏面)に設けられる。
裏面プライマー層は、例えばバインダー樹脂とマット剤とを含む樹脂組成物により構成される。バインダー樹脂としては、前記プライマー層の項で記載したものが好ましく挙げられ、被着材の材質などに応じて適宜選択される。
また、マット剤としては、前記プライマー層の項で記載したものが好ましく挙げられ、その好ましい平均粒子径も前記と同様である。裏面プライマー層におけるマット剤の含有量は、好ましくはバインダー樹脂100質量部に対して5〜70質量部、より好ましくは10〜70質量部である。
裏面プライマー層の厚さは、0.5〜5μmであることが好ましく、より好ましくは1〜3μmである。厚さが上記範囲内であると、基材シートと各種の被着材との優れた密着性が得られる。
なお、基材シートの裏面に裏面プライマー層が設けられている場合には、裏面プライマー層の裏面(表面保護層から遠い面)が化粧シートの裏面に相当するので、化粧シートの裏面として、裏面プライマー層の裏面の十点平均粗さ(RzJIS)を3μm以上、15μm以下に設定する。
(装飾層)
本発明の化粧シートには、さらに装飾層を設けてもよい。装飾層は、本発明の化粧シートに装飾性を与えるものであり、均一に着色が施された隠蔽層(ベタ印刷層)でもよいし、種々の模様をインキと印刷機を使用して印刷することにより形成される絵柄層であってもよい。あるいは、隠蔽層と絵柄層とを組み合わせたものであってもよい。装飾層は、通常基材シートと表面保護層との間に設けられる。本発明の化粧シートがプライマー層を有する場合には、装飾層は基材シートとプライマー層との間に設けられる。
隠蔽層を設けることにより、被着材の表面を隠蔽することができ、また、基材シートが着色していたり色ムラがある場合に、意図した色彩を与えて表面の色を整えることができる。
また、絵柄層を設けることで、木目模様、大理石模様(例えばトラバーチン大理石模様)などの岩石の表面を模した石目模様、布目や布状の模様を模した布地模様、タイル貼模様、煉瓦積模様など、あるいはこれらを複合した寄木、パッチワークなどの模様を化粧シートに付与することができる。これらの模様は通常の黄色、赤色、青色、及び黒色のプロセスカラーによる多色印刷によって形成される他、模様を構成する個々の色の版を用意して行う特色による多色印刷などによっても形成される。
装飾層に用いるインキ組成物としては、バインダー樹脂に顔料、染料などの着色剤、体質顔料、溶剤、安定剤、可塑剤、触媒、硬化剤などを適宜混合したものが使用される。該バインダー樹脂としては特に制限はなく、例えば、ウレタン樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル/アクリル共重合体樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ブチラール樹脂、ポリスチレン樹脂、ニトロセルロース樹脂、酢酸セルロース樹脂などが好ましく挙げられ、ポリウレタン樹脂がより好ましい。バインダー樹脂としては、これらの中から任意のものを、1種単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
また、着色剤としては、暗色系の着色剤が好ましく、基材シートに用いられる着色剤として例示したものが好ましい。
装飾層の厚さは、通常0.5〜20μm程度であり、1〜10μmが好ましい。装飾層の厚さが上記範囲内にあれば、化粧シートに優れた意匠性を付与することができる。
(マスキングフィルム)
マスキングフィルムは、化粧シートの被着材への貼着時、化粧シートを貼着、加工して得られた成形品の運搬時又は施工時の傷付き防止のために、化粧シートの表面保護層の上に好ましく設けられるフィルムである。よって、本発明の化粧シートは、化粧シートの表面にマスキングフィルムを有する、マスキングフィルム付き化粧シートとすることができる。なお、表面保護層のクラック発生伸度は、マスキングフィルムを有さない状態の化粧シートでの値である。
マスキングフィルムは、通常、マスキングフィルム基材及び粘着剤層を有する構成をとる。
マスキングフィルム用基材としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムなどのポリエステルフィルム;ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルムなどのポリオレフィンフィルム;ポリカーボネートフィルムなどが好ましく挙げられる。
このマスキングフィルム用基材の厚さについては特に制限はなく、10〜100μmであることが好ましく、30〜70μmであることがより好ましい。厚さが上記範囲内であると、良好な耐傷性が得られ、加工時にめくれや剥がれが生じにくく、またコストを抑えることができる。
粘着剤層を形成する粘着剤としては、保管時に剥離しにくく、使用時に剥離しやすく、また粘着剤残りがしにくくなる観点から、例えば、(メタ)アクリル酸エステル系ポリマーを主体とするアクリル系粘着剤のほか、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤などが好ましく挙げられる。
また、粘着剤層の厚さは、5〜40μmが好ましく、10〜30μmがより好ましい。厚さが上記範囲内であると、保管時に剥離しにくく、使用時に剥離しやすく、また粘着剤残りがしにくくなる。
(化粧シートの製造方法)
本発明の化粧シートの製造方法は特に限定されず、例えば、(1)基材シートを形成する工程、及び(2)基材シート上に、電離放射線硬化性樹脂組成物を塗布し、硬化させて表面保護層を形成する工程、を順に有する方法により製造することができる。工程(1)と工程(2)との間に、必要に応じ前記基材シートにプライマー層及び裏面プライマー層を形成する工程を行ってもよい。
<工程(1)>
工程(1)は、基材シートを形成する工程である。
基材シートは、例えば熱可塑性エラストマーとポリオレフィン系樹脂とを含有する樹脂材料に、所望により暗色を付与するための着色剤、その他添加剤を添加した樹脂組成物を、カレンダー法、インフレーション法、Tダイ押し出し法などの方法によりシート化して得る。ここで、必要に応じて、一軸又は二軸延伸してもよい。
得られた基材シートは、接する層との密着性を向上させる観点から、その表面に所望によりコロナ放電処理、クロム酸化処理、火炎処理、熱風処理、オゾン−紫外線処理法などの酸化法や、サンドブラスト法、溶剤処理法などの凹凸化法といった物理的または化学的表面処理を施して易接着層を設けてもよい。
工程(1)と後述する工程(2)との間に、必要に応じ基材シートにプライマー層及び裏面プライマー層を形成する工程を行うこともできる。
プライマー層及び裏面プライマー層は、これらの層を形成する樹脂組成物を、グラビア印刷法、バーコート法、ロールコート法、リバースロールコート法、コンマコート法などの公知の塗布方法により塗布して形成すればよい。また、プライマー層及び裏面プライマー層の両方を設ける場合、いずれの層を先に形成してもよい。
<工程(2)>
工程(2)は、基材フィルム上に、電離放射線硬化性樹脂組成物を塗布し、硬化させて表面保護層を形成する工程である。
電離放射線硬化性樹脂組成物の塗布は、硬化後の厚さが好ましくは6〜20μmとなるような厚さで、基材シート、又は所望に応じて設けられたプライマー層の表面にグラビア印刷法、バーコート法、ロールコート法、リバースロールコート法、コンマコート法などの公知の方式、好ましくはグラビア印刷法により行う。電離放射線硬化性樹脂組成物の粘度は、基材シートあるいはプライマー層の表面に電離放射線硬化性樹脂組成物を塗布して未硬化樹脂層を形成し得る粘度であれば特に制限はない。
次いで、電離放射線硬化性樹脂組成物を塗布して形成した未硬化樹脂層に、電子線、紫外線などの電離放射線を照射して該未硬化樹脂層を硬化させて、電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物である表面保護層が形成される。
電離放射線として電子線を用いる場合、その加速電圧については、用いる樹脂や層の厚さに応じて適宜選定し得るが、通常加速電圧70〜300kV程度で未硬化樹脂層を硬化させることが好ましい。
電子線の照射においては、加速電圧が高いほど透過能力が増加するため、基材層として電子線により劣化する素材を使用する場合には、電子線の透過深さと樹脂層の厚さが実質的に等しくなるように、加速電圧を選定することにより、基材シートへの余分の電子線の照射を抑制することができ、過剰電子線による基材層の劣化を最小限にとどめることができる。
照射線量は、樹脂層の架橋密度が飽和する量が好ましく、通常5〜300kGy(0.5〜30Mrad)、好ましくは10〜100kGy(1〜10Mrad)、さらに好ましくは30〜70kGy(3〜7Mrad)の範囲で選定される。
また、電子線源としては、特に制限はなく、例えばコックロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、あるいは直線型、ダイナミトロン型、高周波型などの各種電子線加速器を用いることができる。
電離放射線として紫外線を用いる場合には、波長190〜380nmの紫外線を含むものを放射する。紫外線源としては特に制限はなく、例えば高圧水銀燈、低圧水銀燈、メタルハライドランプ、カーボンアーク燈などが用いられる。
このようにして得られる本発明の化粧シートは、優れた曲げ加工性を有し、特に巻き取り後においても良好な鏡面性を有している。この特徴を活かし、本発明の化粧シートは、曲面を有するプラスチック等の被着材を装飾するための化粧シートとして好適に使用することができる。
具体的には、本発明の化粧シートの裏面に接着剤層を有する接着剤層付き化粧シートを、自動車用内外装部品、建築物の内外装、建材、家具、もしくは家電製品用などの様々な部材に適用することができる。
接着剤層付き化粧シートに用いられる接着剤としては特に限定されず、感熱接着剤、感圧接着剤(粘着剤)などが挙げられる。この接着剤に用いられる樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合樹脂、スチレン−アクリル系共重合樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂を使用することができる。また、イソシアネートなどを硬化剤とする2液硬化性ポリウレタン系接着剤又はポリエステル系接着剤も適用し得る。
接着剤層付き化粧シートは、上記の樹脂を溶液、あるいはエマルジョンなど塗布可能な形にしたものを、グラビア印刷法、スクリーン印刷法またはグラビア版を用いたリバースコーティング法などの手段により化粧シートの裏面(基材シートの裏面)に塗布し、必要により乾燥することにより形成することができる。
接着剤層の厚さは特に制限はないが、通常、1〜100μmの範囲である。この範囲とすることで、被着材と、化粧シートとの接着性をより向上させることができる。
[成形品]
本発明の成形品は、被着材上に本発明の鏡面化粧シートを有する。このような成形品としては、被着材、接着剤層、及び本発明の化粧シートを順に有する成形品が挙げられる。当該成形品は例えば、被着材の装飾しようとする面と、化粧シートの裏面とを対向させて、接着剤層を介して積層することにより得られる。
成形品の形状、用途は特に限定されず、自動車用内外装部品、建築物の内外装、建材、家具、もしくは家電製品などの様々な部材に適用することができる。
本発明の化粧シートは鏡面性に優れ、複雑な形状及び隅角部を有する形状に追従して貼着することが可能であり、クラックや外観変化も生じない。そのため本発明の成形品は平板状のものに限定されず、例えば、2Rよりも厳しい曲面形状を有する成形品でもよい。
本発明の成形品に用いられる被着材としては特に限定されないが、例えば成形品が自動車用内外装部品や家電製品等である場合、プラスチック製の被着材が挙げられる。
当該プラスチック製の被着材としては、各種の合成樹脂からなるものを用いることができる。合成樹脂としては、ポリオレフィン樹脂、ビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース系樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリイミド樹脂、ABS樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂などが挙げられる。
また、被着材と化粧シートとの接着性を向上させるために、所望により、その片面または両面に、コロナ放電処理、クロム酸化処理、火炎処理、熱風処理、オゾン−紫外線処理法などの酸化法や、サンドブラスト法、溶剤処理法などの凹凸化法といった物理的または化学的表面処理を施すことができる。
被着材と化粧シートとを接着するための接着層剤に用いられる接着剤としては特に限定されず、感熱接着剤、感圧接着剤(粘着剤)などが挙げられる。この接着剤層を構成する接着剤に用いられる樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合樹脂、スチレン−アクリル系共重合樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂などの中から選ばれる少なくとも1種の樹脂が使用される。また、イソシアネートなどを硬化剤とする2液硬化性ポリウレタン系接着剤又はポリエステル系接着剤も適用し得る。
接着剤層は、上記の樹脂を溶液、あるいはエマルジョンなど塗布可能な形にしたものを、化粧シートの裏面又は被着材の裏面に、グラビア印刷法、スクリーン印刷法又はグラビア版を用いたリバースコーティング法などの手段により塗布、乾燥して形成することができる。なお、上述のように予め化粧シートの裏面に接着剤層を設けた接着剤層付き化粧シートを用いる場合、被着材と接着する直前に接着剤層を形成する必要がなく、作業性又は生産性がよい。
接着剤層の厚さは特に制限はないが、通常、1〜100μmの範囲である。この範囲とすることで、被着材と、化粧シートとの接着性をより向上させることができる。
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
各例で得られた化粧シートについては、下記の測定方法により性状又は特性を評価した。
(1)十点平均粗さ(RzJIS)及び算術平均粗さ(Ra)
JIS B0601:2001に準拠した方法により、表面粗さ計(株式会社東京精密製、ハンディサーフE−35A)を用いて、カットオフ値0.8mm、評価長さ4mmの条件により測定した。
(2)L*値
分光測色計(コニカミノルタ製、分光測色計CM−3700d)を用いて、各例で得られた化粧シート表面におけるL*値を測定した。
(3)クラック発生伸度
化粧シートから、JIS K7127:1999に準拠して短冊型の試験片を切り出し、当該試験片を、23℃±2℃において、引張試験機を用いて引張速度200mm/分、チャック間距離100mm、幅15mmの条件で、任意の伸度で引っ張った。次いで、該試験片のチャック間内をホワイトボード用マーカーで着色し、当該着色部を布でふき取り、クラックの発生によりふき取れなくなったときの伸度をクラック発生伸度とした。
(4)鏡面性(20°グロス)
JIS Z8741−1997に準拠した方法により、光沢度測定器(BYKガードナー社製「マイクログロス」)を用いて角度20°の条件により測定した。測定は、化粧シートを作製した後、及びロールとして巻き取った後に引き出した直後、及び引き出してから24時間経過後のシートについて、表面保護層の任意の5箇所について行い、平均値を測定値とした。
(5)加工性の評価(目視による外観評価)
各例で得られた化粧シートの裏面に接着剤(アクリル系感圧接着剤、三洋化成工業株式会社製、ポリシック470−S)を20g/mの厚さで塗布し、1.0Rの曲率を有する凸部に貼付し、蛍光灯(直管型)の下で化粧シートの外観を目視により観察し、下記の基準で評価した。
○:外観に変化なし(白化又はクラックが認められない)
△:外観に白化又はクラックの軽微な変化はみられるが、実使用上問題なし
×:外観に著しい変化あり(白化又はクラックが認められる)
(6)加工性の評価(追従性)
上記(5)と同様に、各例で得られた化粧シートの裏面に接着剤を塗布し、1.0Rの曲率を有する凸部に貼付したときの追従性を、下記の基準で評価した。
○:端部に剥がれ(スプリングバック)はほとんど発生せず、問題なく追従できる
△:端部に軽微な剥がれが見られ追従しにくいが、実使用上問題なし
×:端部に著しい剥がれが発生し、追従できない
実施例1
着色ポリプロピレン樹脂シート(厚さ:100μm、ポリプロピレン系熱可塑性エラストマー含有)を基材シートとして用意し、その一方の面に、下記組成の2液硬化性プライマー層形成用樹脂組成物を塗布してプライマー層(厚さ:2μm)を形成し、他方の面に2液硬化性ポリエステル−ウレタン樹脂組成物(樹脂成分100質量部に対し、マット剤としてシリカを65質量部含有)を塗布して裏面プライマー層(厚さ:2μm)を形成した。
次いで、プライマー層上に、下記組成の電離放射線硬化性樹脂組成物をグラビア印刷によって塗布量10g/m2で塗布して、塗膜を形成した。次いで、175keV及び5Mrad(50kGy)の条件で電子線を照射して上記塗膜を架橋硬化させ、表面保護層(厚さ:10μm)を形成し、鏡面化粧シートを得た。
得られた鏡面化粧シートを前記方法により評価した。結果を表1に示す。
(プライマー層形成用樹脂組成物)
主剤:ポリカーボネート系ウレタン/アクリル共重合体 100質量部
硬化剤:1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート 5質量部
マット剤(平均粒子径4μm) 15質量部
紫外線吸収剤:2−[4−{(2−ヒドロキシ−3−ドデシルオキシプロピル)オキシ}−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン〔チヌビン400(商品名)、BASFジャパン株式会社製〕 5質量部
紫外線吸収剤:2−(2−ヒドロキシ−4−[1−オクチルオキシカルボニルエトキシ]フェニル)−4,6−ビス(4−フェニルフェニル)−1,3,5−トリアジン〔チヌビン479(商品名)、BASFジャパン株式会社製〕 5質量部
光安定剤:ビス(1−オクチルオキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート〔チヌビン123(商品名)、BASFジャパン株式会社製〕 1質量部
(表面保護層形成用の電離放射線硬化性樹脂組成物)
電離放射線硬化性樹脂:ウレタンアクリレートオリゴマー(官能基数:2、重量平均分子量:3000)とウレタンアクリレートオリゴマー(官能基数:2、重量平均分子量:4500)との混合物(混合比(モル比)4:6) 100質量部
紫外線吸収剤:2−(2−ヒドロキシ−4−[1−オクチルオキシカルボニルエトキシ]フェニル)−4,6−ビス(4−フェニルフェニル)−1,3,5−トリアジン〔チヌビン479(商品名)、BASFジャパン株式会社製〕 2質量部
反応性基を有する光安定剤:1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニルメタクリレート〔サノールLS−3410(商品名)、BASFジャパン株式会社製〕 4質量部
反応性シリコーン化合物:ポリエーテル変性シリコーン〔57ADDITIVE(商品名)、東レ・ダウコーニング株式会社製〕 0.5質量部
実施例2〜6及び比較例1〜3
実施例1において、化粧シートの裏面の十点平均粗さ(RzJIS)及び算術平均粗さ(Ra)、表面保護層の厚さ及びクラック発生伸度を表1に示されるものとした以外は、実施例1と同様にして化粧シートを得た。
得られた鏡面化粧シートを前記方法により評価した。結果を表1に示す。
比較例4
実施例1において、基材シートとして着色ポリプロピレン樹脂シート(厚さ:100μm、熱可塑性エラストマー非含有)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして化粧シートを得た。
得られた化粧シートを前記方法により評価した。結果を表1に示す。
表1に示すように、本発明の鏡面化粧シートは鏡面性及び加工性がともに優れており、さらに、シート巻き取り直後と比較して24時間経過後の方がグロス値が向上している。これは、シート裏面の凹凸が表面保護層に一度賦型された後に、表面保護層の自己修復機能により回復していると考えられる。
本発明によれば、優れた曲げ加工性を有するとともに、シートの巻き取り後においても良好な鏡面性を有する暗色の化粧シート、及びこれを有する成形品を得ることができる。
1 基材シート
2 表面保護層
3 プライマー層
4 裏面プライマー層
5 マスキングフィルム
10 鏡面化粧シート

Claims (6)

  1. 基材シートと表面保護層とを有する鏡面化粧シートであって、前記基材シートは熱可塑性エラストマーを含有するポリオレフィン基材シートであり、前記表面保護層が電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物であり、前記表面保護層の下記方法で測定したクラック発生伸度が20%超、100%以下であり、JIS B0601:2001に準拠して測定した前記鏡面化粧シートの裏面の十点平均粗さ(RzJIS)が3μm以上、15μm以下であり、且つ、JIS Z8781−4:2013で規定されるL表色系におけるL値が50以下である、鏡面化粧シート。
    (クラック発生伸度の測定)
    化粧シートをJIS K7127:1999に準拠した短冊型の試験片を用意し、該試験片を、23℃±2℃において、引張試験機を用いて引張速度200mm/分、チャック間距離100mmの条件で、任意伸度で引っ張った後、該試験片をホワイトボード用マーカーでチャック間内を着色し、該着色部を布でふき取り、クラックの発生によりふき取れなくなったときの伸度をクラック発生伸度とした。
  2. 前記鏡面化粧シートの前記表面保護層面について、JIS Z8741−1997に準拠して測定した20°グロスが40%以上である、請求項1に記載の鏡面化粧シート。
  3. 前記表面保護層の厚さが6〜20μmである、請求項1又は2に記載の鏡面化粧シート。
  4. 前記基材シートが着色基材シートである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の鏡面化粧シート。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の鏡面化粧シートの裏面に接着剤層を有する、接着剤層付鏡面化粧シート。
  6. 被着材上に、請求項1〜4のいずれか1項に記載の鏡面化粧シートを有する成形品。
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