JP6828711B2 - チタン酸バリウム粒子粉末の製造方法 - Google Patents

チタン酸バリウム粒子粉末の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、コンデンサーや光学フィルム用途の高誘電率、及び高屈折率を有する微細なチタン酸バリウム粒子粉末、及びその製造方法、並びに分散体に関する。
近年、携帯電話やパソコン等の電子機器の小型・軽量化に拍車がかかり、これらに含まれる電気回路のコンデンサーの小型・大容量化、或いは光学フィルムの小型・高透過率化が進んでいる。前記部品の原料である微細なチタン酸バリウム粒子粉末は、高純度で高結晶が望まれている。また、コストダウンの観点から、前記部品の途中の工程で得られるチタン酸バリウム粒子粉末含有グリ−ンシートの作製において、有機溶媒系から水溶媒系チタン酸バリウム粒子粉末含有スラリーへの変更が期待されている。従って、前述の高純度・高結晶性の性能を有しつつ、水系溶媒で分散性の高いチタン酸バリウム粒子粉末が求められている。
一般に、焼結体のチタン酸バリウムは室温において強誘電性を示し、正方晶系のペロブスカイト型構造として知られている。しかしながら、チタン酸バリウム粒子は粒子自身のサイズ効果の影響を受ける。即ち、前記粒子の一次粒子径が500nm付近を下回ると、前記粒子表面において、結晶性が低下した立方晶系の結晶相の割合が増加し、粒子全体としての結晶性は低下する。該結晶性の低下はBa2+イオンの欠損によることが主であり、チタン酸バリウム粒子は水溶媒中で加水分解に伴いBa2+イオンを容易に溶出させることも知られている。つまり、前記加水分解はチタン酸バリウム粒子粉末を不安定にする化学反応として知られている。また、溶出したBa2+イオンは不純物化合物を形成し、チタン酸バリウム粒子粉末における水酸化バリウム、或いは大気中の炭酸ガスと反応して炭酸バリウムとして検出されることが知られている。電子顕微鏡観察等により、これらの不純物化合物はチタン酸バリウム粒子に付着、或いは、粗大化して単独で存在が確認されている(非特許文献1〜4)。
一方、チタン酸バリウム粒子に対して炭酸バリウムを被覆する方法として、任意のチタン酸バリウム粒子を水に分散させてBa2+イオンを溶出させ、その後、炭酸化剤を添加し、炭酸バリウムとして不溶化させる技術がある(特許文献1)。
また、初めに、チタン酸バリウム粒子を常圧溶液法により合成し、水洗、ろ過、乾燥によってチタン酸バリウム粒子粉末を作製する。次いで、該チタン酸バリウム粒子粉末からの水可溶性Baと炭酸ガスを接触させて、炭酸バリウム被覆チタン酸バリウム粒子を合成する技術がある(特許文献2)。前記チタン酸バリウム粒子粉末は水媒体中でBa溶出が抑えられることが示唆されている。
また、チタン酸バリウム粒子を水溶媒中で長時間撹拌し、溶出したBa2+イオンと水中のCOと反応させて、炭酸バリウム被覆チタン酸バリウム粒子を合成する技術がある。(特許文献3)。
M.del C.B.Lopez等、 J.Am.Ceram.Soc.、Vol.82、1999年、1777−1786頁 A.Neubrand等、 J.Am.Ceram.Soc.、Vol.83、2000年、860−864頁 H.Nakano等、 J.Am.Ceram.Soc.、Vol.86、2003年、741−743頁 T.Hoshina等、 App.Phys.Lett.、Vol.93、2008年、192914頁
特開平3−159903号公報 特開平5−139744号公報 特開2010−215427号公報
高純度、高結晶性、且つ高分散性を有する微細なチタン酸バリウム粒子粉末であって、長期保存可能な水系分散体にも適応できるチタン酸バリウム粒子粉末は、現在最も要求されているが、未だ十分なものは得られていない。
即ち、特許文献1記載の技術では、水溶液中のBa2+イオンを炭酸化剤で炭酸バリウムとして生成させるため、粗大な炭酸バリウムが不純物として生成する。また、アンモニウム塩の炭酸化剤による短時間の化学反応において、生成した炭酸バリウムが、チタン酸バリウム粒子を均一に被覆して、炭酸バリウム被覆層を形成しているとは言い難い。また、溶液反応で炭酸バリウム生成後、濾別のみではアンモニウムイオン等不純物イオンを十分に除去できるとは言い難く、高純度のチタン酸バリウム粒子粉末が得られるとは言い難い。
また、特許文献2記載の技術では、気相法により結晶化した炭酸バリウムをチタン酸バリウム粒子に被覆している。しかしながら、X線回折で検出できる結晶化した炭酸バリウムの粒子サイズは、少なくとも10nm以上が必要と考えられる。そのため、被覆率の高い結晶性のエピタキシャル成長より、寧ろ、粒子状の結晶性炭酸バリウムが被覆していると考えられる。結果、炭酸バリウム被覆層とは言い難い、被覆率の低い炭酸バリウムが生成し、特許文献2記載の技術では、チタン酸バリウム粒子からの水可溶性Ba2+イオン量を十分に低減できるとは言い難い。
また、特許文献3記載の技術では、水中より大気中の方が高い二酸化炭素濃度であり、気液界面での炭酸バリウム生成が優先的であり、粗大な炭酸バリウムが生成すると予測できる。従って、本発明のような炭酸バリウム被覆層を形成するのに、特許文献3記載の技術では、該被覆層の平均層厚は少なくとも10nm以上と見積もられる。また、本発明の炭酸バリウム被覆層の平均層厚は0.08〜2.0nmであり、表面から中心方向に対し数nmの情報が得られるXPSによるBaCO/BaO比は0.55未満である。
そこで、本発明は、水溶媒中安定な、高純度、高結晶性、且つ高分散性を有する微細なチタン酸バリウム粒子粉末、及びその製造方法、並びに分散体の提供を技術的課題とする。
前記技術的課題は、次の通りの本発明によって達成できる。
即ち、本発明は、平均一次粒子径が10〜300nmのチタン酸バリウム粒子粉末において、アモルファス状の炭酸バリウム被覆層の平均層厚が0.08〜2.0nmであることを特徴とするチタン酸バリウム粒子粉末である(本発明1)。
また、本発明は、走査型透過電子顕微鏡観察の明視野像において、チタン酸バリウム粒子表層から第一番目のBaの原子カラムカウント数に対して隣接するTiの原子カラムカウント数の比が1.00以上である本発明1記載のチタン酸バリウム粒子粉末である(本発明2)。
また、本発明は、単独で存在する炭酸バリウムが0.03〜2.0重量%である本発明1又は2記載のチタン酸バリウム粒子粉末である(本発明3)。
また、本発明は、水溶媒中チタン酸バリウム粒子の濃度を5〜60重量%及びBa2+イオン濃度を10〜500ppmに調整する第一工程、温度30〜60℃で3〜96時間保持によりチタン酸バリウム粒子から抽出したBa2+イオンとNaCO又はKCOと反応させてチタン酸バリウム粒子表面をアモルファス状の炭酸バリウムで被覆させる第二工程、前記工程で生成した水可溶性Naイオン又はKイオンを水洗で除去する第三工程を含む本発明1〜3の少なくとも一項に記載のチタン酸バリウム粒子粉末の製造方法である(本発明4)。
本発明1〜3の少なくとも一項に記載のチタン酸バリウム粒子粉末を含有する分散体(本発明5)。
本発明に係るチタン酸バリウム粒子粉末は、平均一次粒子径が10〜300nmと微細である。しかしながら、チタン酸バリウムの結晶性は高く、アモルファス状の炭酸バリウム被覆層の平均層厚が0.08〜2.0nmであり、非常に薄く、均一な炭酸バリウム被覆層を備えている。炭酸バリウム被覆層は水溶媒中でチタン酸バリウムの加水分解を抑制し、チタン酸バリウム粒子からのBa2+イオンの溶出を抑える働きをする。結果として、水溶媒で安定なチタン酸バリウム粒子粉末となり、該粉末を分散させた水系スラリーを用いてできるグリーンシートは高誘電率、或いは高屈折率を有し、コンデンサー、或いは光学フィルム用途として好適である。
本発明の実施例1で得られたチタン酸バリウム粒子粉末の0.8m(mega)倍率の走査型透過電子顕微鏡−明視野(STEM−BF)像である。 本発明の実施例1と比較例1で得られたチタン酸バリウム粒子粉末のフーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)のスペクトル図である。 本発明の実施例1で得られたチタン酸バリウム粒子粉末の3m倍率のSTEM−BF像である。 本発明の実施例1で得られたチタン酸バリウム粒子粉末の10m倍率のSTEM−BF像の解析結果である。 本発明の比較例1で得られたチタン酸バリウム粒子粉末の30m倍率のSTEM−BF像の解析結果である。 本発明の比較例4、及び実施例4〜6で得られたチタン酸バリウム粒子粉末含有スラリーの室温における電気伝導度(CM)の保持時間による変化である。
本発明の構成をより詳しく説明すれば次の通りである。
まず、本発明に係るチタン酸バリウム粒子粉末について述べる。
本発明に係るチタン酸バリウム粒子粉末の平均一次粒子径は10〜300nmである。10nm未満の場合、工業的に生産することが難しく、また、300nmを超えると小型電子部品用途としては不向きある。好ましくは、12〜280nmであり、より好ましくは、15〜260nmである。本発明に係るチタン酸バリウム粒子粉末は粒子間の融着がほとんど観察できなかったため、本発明の平均一次粒子径は後述のBET換算粒径とした。
本発明に係るチタン酸バリウム粒子粉末はアモルファス状の炭酸バリウム被覆層を有する。ここで、アモルファス状とは炭酸バリウム結晶の単位胞が周期的に並んでおらず、X線回折法や電子回折法で前記周期性が認められない程度である。また、炭酸バリウムの被覆層とはチタン酸バリウム粒子に沿って被膜を形成していることを指し、その被覆率は60%以上である。後述するように、同試料で複数箇所の高倍率の電子顕微鏡観察で、チタン酸バリウム粒子へのアモルファス部分の被覆形態を、層厚や被覆率として定量化することできる。
本発明における炭酸バリウム被覆層の平均層厚は0.08〜2.0nmである。0.08nm未満であれば、十分な被覆層を形成することが困難であり、島状に被覆した炭酸バリウムとなり、被覆率は60%未満である。また、2.0nmを超えると、炭酸バリウムの重量%が増加し、誘電率や屈折率に悪影響を及ぼす。好ましくは、0.09〜1.8nmであり、より好ましくは、0.10〜1.6nmである。
本発明に係るチタン酸バリウム粒子粉末の走査型透過電子顕微鏡観察の明視野像において、チタン酸バリウム粒子表層から第一番目のBaの原子カラムカウント数に対して隣接するTiの原子カラムカウント数の比が1以上であることが好ましい。通常のチタン酸バリウム粒子の明視野像において、Tiに対しBaは重たい元素であるため、Baの原子カラムカウント数は隣接するTiの原子カラムカウント数より小さく、その比は1未満であることが好ましい。即ち、Baの原子カラムはTiの原子カラムより黒く写る。しかしながら、本発明に係るチタン酸バリウム粒子は、例えば、NaCO又はKCOとの溶液反応において、チタン酸バリウム粒子表層からBa2+イオンを抽出させ、該Ba2+イオンにより炭酸バリウム被覆層を形成している。そのため、前記粒子表層から第一番目のBaが、炭酸バリウム被覆層の形成に寄与している可能性が高く、結果として、前述の原子カラムカウント数の比が1.00以上となることが好ましい。より好ましくは、前述の原子カラムカウント数の比は1.02以上であり、更により好ましくは、1.05以上である。
本発明に係るチタン酸バリウム粒子粉末において、被覆層の炭酸バリウムを除いて、単独で存在する炭酸バリウム粒子が0.03〜2.0重量%であることが好ましい。0.03重量%未満の単独で存在する炭酸バリウム粒子を検出することは困難であり、また、2.0重量%を超える単独の炭酸バリウム粒子が存在すると、誘電率や屈折率に悪影響を及ぼす。より好ましくは0.04〜1.9重量%であり、更により好ましくは0.05〜1.8重量%である。
本発明に係るチタン酸バリウム粒子粉末のBa/Ti組成比は0.750〜1.020であることが好ましい。0.750未満であれば、結晶性の悪いチタン酸バリウムとなり、誘電率や屈折率に悪影響を及ぼす。1.020を超えると、不純物炭酸バリウムの増加と直結し、同様に、誘電率や屈折率に悪影響を及ぼす。より好ましくは、0.850〜1.015であり、さらにより好ましくは、0.990〜1.010である。
本発明に係るチタン酸バリウム粒子粉末の格子定数比c/aは、平均一次粒子径が50nm以上の場合、1.0040〜1.0250であることが好ましい。1.0040未満であれば、結晶性の悪いチタン酸バリウムとなり、誘電率や屈折率に悪影響を及ぼす。1.0250を超えるチタン酸バリウムを得ることは経験的に困難である。より、好ましくは1.0050〜1.0200である。平均一次粒子径が50nm未満の場合、粒子サイズ効果を受け、格子定数比c/aは1に近づく。
本発明に係るチタン酸バリウム粒子粉末の水溶媒中の煮沸後の可溶性Baは10〜800ppmが好ましい。10ppm未満の試料を作製することは本発明ではなし得ない技術であり、800ppmを超えると水溶媒中で安定な試料とは言い難い。より好ましくは20〜700ppm、さらにより好ましくは30〜600ppmである。
次に、本発明に係るチタン酸バリウム粒子粉末の製造方法について述べる。
本発明に係る炭酸バリウム被覆層形成前のチタン酸バリウム粒子粉末の製造において、後述の水熱法に限定されるものではない。しかしながら、例えば、水酸化ナトリウム水溶液を塩化チタン水溶液に滴下・中和して水酸化チタンコロイドを得、次いで、前記水酸化チタンコロイドを水酸化バリウム水溶液に投入し、得られた混合溶液を加熱してチタン酸バリウムを生成する。冷却後、所定の処理後、密閉容器中の65〜300℃の温度範囲で水熱処理を行い、水洗、乾燥、粉砕することができる。得られるチタン酸バリウムは本発明の芯粒子であり、該粒子の平均一次粒子径は10〜300nmであることが好ましい。また、前述の水熱後の水洗で得られるチタン酸バリウム(芯粒子)含有スラリーとして、後述の炭酸バリウム被覆処理を行っても構わない。
次に本発明4の第一工程について説明する。第一工程ではチタン酸バリウム粒子の濃度を高く、Ba2+イオン濃度を低くすることが好ましい。前述で得られたチタン酸バリウム粒子(芯粒子)粉末を水に分散、或いは、前述の水洗直後のチタン酸バリウム粒子粉末含有スラリーを用いることができる。ここで、水溶媒中チタン酸バリウム粒子の濃度を5〜60重量%に調整することが好ましい。5重量%未満であれば生産性が低く、また、60重量%を超えると流動性の高いスラリーができるとは言い難い。より好ましくは10〜55重量%、さらにより好ましくは15〜50重量%である。
また、同時に、前述のスラリー中のBa2+イオン濃度を10〜500ppmに調整することが好ましい。Ba2+イオン濃度を10ppm未満に抑えることは工業的に困難であり、また、500ppmを超えると単独で存在する炭酸バリウム粒子が増加するため好ましくない。より好ましくは15〜400ppm、さらにより好ましくは20〜300ppm、その上、さらにより好ましくは20〜200ppmである。Ba2+イオン濃度の制御方法として、水洗、濃縮、或いはBa(OH)の添加等が挙げられる。
続いて、本発明4の第二工程について説明する。第二工程では、チタン酸バリウム粒子から抽出したBa2+イオンとNaCO又はKCOと反応させて、チタン酸バリウム粒子表面をアモルファス状の炭酸バリウムで被覆させることが好ましい。第一工程で得られたスラリーを温度30〜60℃に保持することが好ましい。30℃未満ではチタン酸バリウム粒子からのBa2+イオン抽出速度が低く、炭酸バリウム被覆層の形成に時間を要し、生産性に欠ける。一方、60℃を超えると、チタン酸バリウム粒子自身の成長が生じ、チタン酸バリウム粒子の平均一次粒子径の制御が困難となる。より好ましくは35〜55℃、さらにより好ましくは40〜50℃である。
本発明4の第二工程におけるNaCO又はKCOの添加方法は水に溶解させた状態でのチタン酸バリウム含有スラリーへの添加が好ましく、窒素雰囲気下、スラリー撹拌の状態で、前記添加開始は第一工程直後が好ましい。前述の通りスラリー温度を30〜60℃の任意の温度で保持後、3〜96時間かけて反応を終了することが好ましい。3時間未満であれば、アモルファス状の炭酸バリウムの被覆率が低く、炭酸バリウム被覆層を形成することが困難であり、96時間を超えても炭酸バリウム被覆層に影響を及ぼすことは無く、生産性に欠ける。
また、添加するNaCO又はKCOの量はチタン酸バリウム粒子粉末100重量部に対し、0.3〜3.0重量部が好ましい。0.3重量部未満であれば炭酸バリウム被覆層を形成するのに不十分であり、3.0重量部を超えると、第三工程の水洗に負荷がかかり、生産性として好ましくない。より好ましくは0.4〜2.5重量部、さらにより好ましくは0.5〜2.0重量部である。
さらに続いて、本発明4の第三工程について説明する。第三工程で生じる水可溶性Naイオン又はKイオンは水洗により除去でき、高純度粒子粉末を得ることができる。第三工程の水洗前後のチタン酸バリウム粒子粉末のBa/Ti比は測定誤差範囲内で一致する。これは、チタン酸バリウム粒子からのBa2+イオンの溶出が全くと言ってもいいほどないためである。水洗方法は特に限定することなく、デカンテーションによる無限希釈水洗、フィルタープレスによる加圧ろ過式水洗等がある。
本発明4の第三工程の後、適宜、得られたスラリーを乾燥、粉砕することができる。ここでも他の方法と同様に、スラリーの乾燥方法について特に限定することはない。例えば、スラリーを瞬時乾燥させる方法(スプレードライヤー、スラリードライヤ―、ディスクドライヤー等の使用)やスラリーから脱水して、ケーキ作製後、乾燥させる方法がある。乾燥温度も特に限定することはないが、60〜300℃の範囲内が好ましい。粉砕としては、乾式媒体ミル、気流式衝撃粉砕機、等が挙げられる。
次に、本発明に係るチタン酸バリウム粒子粉末を含有する分散体について述べる。
本発明に係る分散媒体としては、水系及び溶剤系のいずれをも用いることができる。
水系分散体の分散媒体としては、水、もしくは、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール等のアルコール系溶剤;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、プロピルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のグリコールエーテル系溶剤;ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール等のオキシエチレン又はオキシプロピレン付加重合体;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール等のアルキレングリコール;グリセリン、2−ピロリドン等の水溶性有機溶剤を用いることができる。これらの水系分散体用の分散媒体は、目的とする用途に応じて1種又は2種以上を混合して用いることができる。
溶剤系分散体用の分散媒体としては、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングルコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のエーテルアルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のエーテルアセテート類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル等の酢酸エステル類;乳酸メチルエステル、乳酸エチルエステル、乳酸プロピルエステル等の乳酸エステル類;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトン等の環状エステル類及び各種モノマー等を用いることができる。これらの溶剤系分散体用の分散媒体は、目的とする用途に応じて1種又は2種以上を混合して用いることができる。
本発明に係る分散体のチタン酸バリウム粒子粉末の濃度は、5〜60重量%に調整することが好ましい。5重量%未満であれば次工程の用途として生産性が低く、また、60重量%を超えると流動性の高いスラリーができるとは言い難い。より好ましくは10〜55重量%、さらにより好ましくは15〜50重量%である。
本発明に係る分散体は、必要に応じて分散剤、添加剤(樹脂、消泡剤、助剤等)等を添加することもできる。本発明における分散剤としては、使用するチタン酸バリウム粒子粉末や分散媒体の種類に応じて適宜選択して使用することができ、アルコキシシラン、シラン系カップリング剤及びオルガノポリシロキサン等の有機ケイ素化合物、チタネート系カップリング剤等の有機チタン化合物、アルミネート系カップリング剤等の有機アルミ化合物、ジルコネート系のカップリング剤等の有機ジルコニウム化合物、界面活性剤あるいは高分子分散剤等を用いることができ、これらは1種または2種以上を混合して用いることができる。
上記有機ケイ素化合物としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、テトラエトキシシラン及びテトラメトキシシラン等のアルコキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ―アミノプロピルトリエトキシシラン、γ―グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ―メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ―メタクロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン等のシラン系カップリング剤、ポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、変性ポリシロキサン等のオルガノポリシロキサン等が挙げられる。
上記有機チタン化合物としては、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチル・アミノエチル)チタネート、トリス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルジオクチルパイロホスフェートチタネート、イソプロピルトリス(ドデシルベンゼンスルフォニル)チタネート、チタンテトラノルマルブトキシド、チタンテトラ−2−エチルヘキソキシド、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスフェイト)チタネート、テトラ(2−2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスフェイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート等が挙げられる。
上記有機アルミ化合物としては、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムジイソプロボキシモノエチルアセトアセテート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、アルミニウムトリスアセチルアセトネート等が挙げられる。
上記有機ジルコニウム化合物としては、ジルコニウムテトラキスアセチルアセトネート、ジルコニウムジブトキシビスアセチルアセトネート、ジルコニウムテトラキスエチルアセトアセテート、ジルコニウムトリブトキシモノエチルアセトアセテート、ジルコニウムトリブトキシアセチルアセトネート等が挙げられる。
上記界面活性剤としては、脂肪酸塩、硫酸エステル塩、スルホン酸塩、リン酸エステル塩等のアニオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアリールエーテル等のポリエチレングリコール型非イオン界面活性剤、ソルビタン脂肪酸エステル等の多価アルコール型非イオン界面活性剤等のノニオン性界面活性剤;アミン塩型カチオン系界面活性剤、第4級アンモニウム塩型カチオン系界面活性剤等のカオチン性界面活性剤;アルキルジメチルアミノ酢酸ベタインなどのアルキルベタイン、アルキルイミダゾリンなどの両性界面活性剤が挙げられる。
高分子分散剤としては、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、ポリカルボン酸及びその塩等を用いることができる。
分散剤の添加量は、分散体中のチタン酸バリウム粒子粉末の総表面積に依存すると共に、チタン酸バリウム粒子粉末の分散体の用途及び分散剤の種類に応じて適宜調製すればよいが、一般的には、分散媒中のチタン酸バリウム粒子粉末に対して分散剤を0.01〜100重量%添加することによって、チタン酸バリウム粒子粉末を分散媒体中に均一且つ微細に分散させることができると共に、分散安定性も改善することができる。また、上記分散剤は、分散媒体に直接添加する他に、チタン酸バリウム粒子粉末に予め処理しておいてもよい。
<作用>
本発明に係るチタン酸バリウム粒子粉末は非常に薄いモルファス状の炭酸バリウム被覆層を形成している。さらには、チタン酸バリウム粒子表層の第一番目のBa、或いは隣接するTiは構造欠陥を有している。即ち、チタン酸バリウム粒子表層の第一番目の正規のBaサイトにおけるBa2+イオンが存在しないサイトがある、または隣接するTiサイトに一部のTi4+イオンに代わって重元素のBa2+イオンが存在する、等である。これらの表面構造がチタン酸バリウム粒子からのBa2+イオン溶出を阻害し、結果として、水溶媒中安定なチタン酸バリウム粒子含有スラリーとなると推定している。得られる粒子粉末は、高容量のコンデンサー、又は高透過率の光学フィルムの原料として好適である。
本発明の具体的な実施の例を以下に示す。
本発明のチタン酸バリウム粒子粉末の粉体評価は以下のように行った。
試料表面、形状、結晶構造、化合物の被覆形態を観察するために電界放出形透過電子顕微鏡(FE−TEM)のJEM−F200[日本電子(株)]を用い、備え付けたエネルギー分散型X線分光器(EDS)で元素分析を行い、電子回折でチタン酸バリウムの結晶方位を同定した。また、走査型モードの透過電子顕微鏡(STEM)でも粒子観察を行った。明視野(BF)像と暗視野(DF)像が得られたが、解析には主にBF像を用いた。
Ba/Ti組成比は、「蛍光X線分析装置Simultix12」((株)リガク製)を使用して測定した。
試料のBET比表面積は試料を窒素ガス下で120℃、40分間乾燥脱気した後、Macsorb[Quantachrome Instruments]を用い、測定した。チタン酸バリウムの密度を6g/ccとし、得られた比表面積(単位:m/g)で1000を割った値をBET換算粒径(単位:nm)とした。
試料の残存炭素量は炭素‐硫黄分析装置(堀場製作所 EMIA−920)にて測定した。試料のその他の分析から、後述の単独の炭酸バリウム粒子が存在しない場合、残存炭素量はアモルファス状の被覆層の炭酸バリウムとみなすことができ、試料のBET換算粒径から、被覆率を100%として、炭酸バリウム被覆層の平均層厚を見積もった。該平均層厚はSTEM−BFでも検証した。後述の単独の炭酸バリウム粒子が存在する場合、該炭酸バリウム粒子による炭素量を考慮する必要がある。即ち、得られた残存炭素量から単独炭酸バリウム粒子の炭素量を差し引いた値がアモルファス状の炭酸バリウム被覆層の炭素量である。ここで、単独炭酸バリウム粒子の炭素量は、芯粒子のチタン酸バリウム粒子粉末の残存炭素量で置き換えることもできる。
試料の結晶相の同定と結晶構造パラメータの算出のため、粉末X線回折装置SmartLab[(株)リガク]を用いて測定した。X線回折パターンはCu−Kα、40kV、200mAの条件下で、モノクロメータを通して測定し、15≦2θ(deg.)≦90、0.02°のステップで、3deg./min.で測定した。格子定数等の結晶情報算出のためRietveld法を採用した。同時に、炭酸バリウム相の重量%を算出し、他の分析結果から、炭酸バリウム単独粒子の重量%とみなすことができた。チタン酸バリウム粒子の結晶性を表わす正方晶系度(Tetragonality)は格子定数比c/aで表わした。
可溶性Ba量は5gの試料のチタン酸バリウム粒子粉末を100ccの純水に分散させ、7分間煮沸した後、室温まで冷却して濾過し、その濾液をICP発光分光分析装置(セイコー電子SPS400)で測定した。得られたBa濃度を20倍した値を、粉体から水溶媒に溶出するBa2+イオンの量、即ち、可溶性Ba量とした。
試料中の炭酸バリウムのFT−IRによる定性は、赤外分光光度計NICOLET iS5(Thermo Scientific製)を用いて、KBr法によって、4000〜400cm−1をスキャンして行った。COの振動モードに由来する波数1440cm−1付近のピークに着目した。
[実施例1]
芯粒子であるチタン酸バリウム粒子粉末は、特開2002−211926号公報、及び特開2005−289668号公報を参考にして、水熱法によって作製した。水酸化バリウム八水塩(関東化学(株)製、97%Ba(OH)・8HO試薬特級)と塩化チタン水溶液を原料として用いた。温水に溶かした水酸化バリウム八水塩を濾別して、不純物の炭酸バリウムを除去した。窒素雰囲気で、塩化チタンを水酸化バリウムで中和し、チタンコロイドを得た。得られたチタンコロイドと残りの水酸化バリウムを各々混合し、撹拌した。ここで、反応温度70℃でチタン酸バリウム粒子を生成させた。220℃、7時間保持して水熱反応を行い、チタン酸バリウム粒子の結晶性を高め、その後、冷却した。
本発明の第一工程の水洗により、芯粒子であるチタン酸バリウム含有スラリーを得た。ここで、前記水洗によって、不純物のClイオンは検出できない程度であり、水溶媒中チタン酸バリウム粒子の濃度を30重量%、Ba2+イオン濃度を250ppmに調整した。前述のスラリーにNaCOをチタン酸バリウム粒子に対し1.5重量部添加し、40℃、4時間保持を行い、抽出Ba2+イオンで炭酸バリウムの被覆を行った(本発明第二工程)。その後、第三工程として、不純物Naイオンの除去のため、水洗を行った。得られたスラリーをスラリードライヤーで乾燥し、本発明のチタン酸バリウム粒子粉末を得た。実施例1〜実施例4の製造条件を表1に示す。
[比較例1]
実施例1における芯粒子を用いた。即ち、実施例1の第一工程で得られたチタン酸バリウム含有スラリーをスラリードライヤ―にて乾燥し、チタン酸バリウム粒子粉末を得た。表2に粉体特性を示す。
実施例1及び比較例1の粉体特性について説明する。実施例1と比較例1のBa/Ti組成比は、各々、0.999と1.000であり誤差範囲内で一致した。これは実施例1の第三工程の水洗でチタン酸バリウム粒子からBa溶出が抑えられたことを意味し、第二工程の炭酸バリウム被覆が十分にできていることと予測ができる。経験的に、NaCO、又はKCOの量が不十分であれば、第三工程の水洗でBaが溶出し、外部に排出され、第三工程前後のBa/Ti組成比は一致しない。図1に実施例1の試料のSTEM−BF像を示す。50nmスケールバーから分かるように、一次粒子径は100nm程度であり、BET換算粒径111nmとほぼ一致した。前記BF像から粒子内のボイドが少ないことも分かった。また、STEMのEDSと電子回折の解析で、前記BF像の粒子はチタン酸バリウムの粒子であることは確認した。
実施例1と比較例1のX線回折パターンから正方晶系のチタン酸バリウム相と僅かな炭酸バリウム相が検出された。このパターンはほぼチタン酸バリウム単一相に近い。実施例1と比較例1の格子定数比はほぼ同じ値であり、同様に、炭酸バリウムの量、即ち、単独炭酸バリウム粒子の量も同じであった。
図2に実施例1と比較例1のFT−IRスペクトル図を示す。炭酸バリウム由来の波数1440cm−1付近のCO振動モード由来のピークを矢印で示すように、実施例1のピーク強度は比較例1のピーク強度よりも高かった。X線回折による、単独炭酸バリウム粒子の量は、実施例1と比較例1、共に同量だったため、前記ピーク強度増加分はアモルファス相の炭酸バリウムに起因すると考えられる。実施例1と比較例1の残存炭素量は、各々、0.083重量%と0.025重量%であり、比較例1の残存炭素量は単独炭酸バリウム粒子に起因するものである。そのため、炭酸バリウム被覆処理による残存炭素量の増加分の0.058wt%がアモルファス相の炭酸バリウムに起因していることになる。被覆率100%で炭酸バリウムが被覆層を形成したとして、BET換算粒径と前記増加分から算出すると、アモルファス状の炭酸バリウム被覆層の平均層厚は0.28nmであった。ここで、炭酸バリウムの密度として、4g/ccの値を採用した。
図3に実施例1の試料のBF−STEM像を示す。粒子の輪郭ははっきりとしておらず、粒子表面全体に表面処理が施されていることが示唆された。図4に更に拡大して解析した実施例1の試料のBF−STEM像を示す。電子回折パターンから、試料はチタン酸バリウム結晶のc軸に垂直方向から観察したものであり、粒子表層は100%の被覆率で0.7nmのアモルファス層を形成しており、前述のアモルファス状の炭酸バリウム被覆層の平均層厚とかなり近い値を示した。従って、観察されたアモルファス層の相は炭酸バリウム相であると推定した。図中の黒い点はBaの原子カラムであった。また、図にチタン酸バリウムの結晶構造を、試料観察方位([001] zone axis)に合わせて挿入した。大きい丸はBa原子、中程度の丸はTi原子、小さい丸は酸素原子である。但し、図4のような原子カラムが観察できる状態で、原子番号の小さい酸素原子の影響は非常に少なく、ここではその影響を無視した。
格子欠陥を観察するため、チタン酸バリウム粒子表層付近の原子カラムカウント数をライン分析した。その結果を図3の右上側に挿入した。穴閉じ丸はBa原子カラムを表わし、穴開き丸はTi原子カラムを示す。白線に沿ってカウント数を計測し、横軸を距離とした図をプロットした。ここで、Ti原子カラム、Ba原子カラムに由来するカウント数の位置を矢印で示した。Baの原子カラムカウント数に対し、隣接するTiの原子カラムカウント数の比を、Ti原子カラム位置の矢印の横に示した。前記比は、チタン酸バリウム粒子表層から、1.09、0.68、0.75、0.70、0.58であり、チタン酸バリウム粒子中央にいくほど減少傾向であった。チタン酸バリウム粒子表層から第一番目の前述のカウント数の比のみ1以上であった。通常、BaはTiに対して重たい原子であるため、前述のカウント数の比は1未満である。しかしながら、該比が1を超えるのは、正規のBaサイトにあったBa2+イオンをチタン酸バリウム粒子から抽出し、アモルファス状の炭酸バリウム被覆層に利用されたためと推定できる。若しくは、何らかの反応により、隣接する正規のTiサイトに重元素のBa2+イオンが置換されている可能性もある。このような格子欠陥は、図4のチタン酸バリウム粒子表層の第一番目のBa原子カラムの隣接するTi原子カラムにおいて、多数確認できた。
同一試料内の複数のチタン酸バリウム粒子において、図4のような解析を複数回繰り返すことによって、アモルファス状の炭酸バリウム被覆層の存在、即ち、高被覆率の、或いは均一なアモルファス状の炭酸バリウム被覆を確認することができる。前述した図4のような解析の複数回繰り返しで、アモルファス状の炭酸バリウム被覆層の平均層厚を算出することもできる。
図5に、図4と同様にして比較例1の試料を解析した結果を示す。観察試料の結晶方位はc軸に垂直方向である。穴閉じ丸はBa原子カラムを表わし、穴開き丸はTi原子カラムを示す。粒子表面はアモルファス状になり掛けてはいるが、Baの原子カラムの確認はできた。白線に沿って原子カラムカウント数を計測し、横軸を距離とした図をプロットした。図にBaの原子カラムカウント数に対し、隣接するTiの原子カラムカウント数の比を挿入したが、該比は1を超えることはなく、明確な格子欠陥は確認できなかった。したがって、炭酸バリウムの被覆層は確認できなかった。
実施例1と比較例1の可溶性Baは各々529ppmと2836ppmであり、実施例1の試料は炭酸バリウムの被覆によって、水の中で安定化することが分かった。実際、実施例1の第三工程直後のスラリーCMは100μS/cm程度であり、1週間後もCMの変化はほとんど観察されず、水の中で安定な粒子粉末であった。一方、比較例1の乾燥前のスラリー、即ち、実施例1の第一工程で得られたスラリーのCMは850μS/cmであり、2日後には2000μS/cmと上昇した。従って、炭酸バリウム被覆が未処理である場合、水の中で不安定な粒子粉末であることが確認できた。
[実施例2]
実施例1に対し、芯粒子作製の水熱条件の反応温度を220℃から230℃と変更する以外、すべて同じ条件で作製した。
[実施例3]
実施例1に対し、芯粒子作製の水熱条件の反応温度を220℃から240℃と変更する以外、すべて同じ条件で作製した。
[実施例4]
実施例1に対し、水熱処理を除いて得られる粒子を芯粒子とし、第一工程でBa2+イオン濃度を350ppmとした。第二工程で用いたNaCOをチタン酸バリウム粒子に対し0.7重量部とし、保持時間を90時間とした。それ以外は実施例1と同様の操作を行い、チタン酸バリウム粒子粉末を得た。
[比較例2〜4]
実施例2〜4の芯粒子、即ち、本発明4記載の炭酸バリウム被覆処理を行っていない、チタン酸バリウム粒子粉末を試料として用いた。但し、比較例2と3は、実施例2と3の第一工程のスラリーをスラリードライヤーで乾燥し、比較例4は実施例4の第一工程のスラリーを濾別後、ケーキを乾燥、粉砕して、粒子粉末を得た。実施例2と比較例2のBa/Ti組成比、及び、実施例3と比較例3のBa/Ti組成比は誤差範囲内で一致した。実施例2と3は炭酸バリウム被覆が十分であることが推定できる。一方、濾別の影響のため、実施例4に比べ、比較例4のBa/Ti組成比は幾分低下した。実施例4と比較例4は共に25nm程度と一次粒子径が小さいが、X線回折では、実施例4のみ単独炭酸バリウム粒子が僅かに検出できる程度であり、チタン酸バリウムがほぼ単一相であった。即ち、実施例4と比較例4は、共に、結晶性の良い試料であった。実施例1と同様なSTEM−BF像の解析を実施例2〜4の試料に適応することで、アモルファス状の炭酸バリウム被覆層を形成するチタン酸バリウム粒子であることが確認できた。
実施例2〜4の試料は、比較例2〜4の試料に比べ、可溶性Baは低く、水の中で安定な試料であった。これは実施例2〜4の試料のチタン酸バリウム粒子がアモルファス状の炭酸バリウムの被覆層を備えているためである。
[実施例5、6]
実施例4に対し、第二工程で用いたNaCOをチタン酸バリウム粒子に対し1.2重量部とした以外、すべて、実施例4と同様の操作を行い、実施例5の試料とした。また、同様に、NaCOをチタン酸バリウム粒子に対し1.5重量部とした以外、すべて、実施例4と同様の操作を行い、実施例6の試料とした。
図6に比較例4、実施例4〜6の第三工程後に得られたチタン酸バリウム含有スラリーの室温におけるCMの経時変化を示す。比較例4は炭酸バリウム被覆処理が行われていないため、初期の段階で急激なCMの上昇が確認できた。ICP測定により、CM上昇とBa溶出は関連付けられた。一方、実施例4〜6は炭酸バリウム被覆処理が十分に行われており、300時間後もCMは1000μS/cm以下であり、十分にBa溶出が抑えられていた。即ち、実施例4〜6の試料は水の中で安定なチタン酸バリウム粒子粉末であった。
また、実施例に示すような炭酸バリウムの被覆は、有機溶媒中にても分散性を高める効果を有することも分かっている。
本発明は、非常に薄く均一な炭酸バリウム層を備えたチタン酸バリウム粒子粉末、即ち、非常に薄く被覆率の高い炭酸バリウム被覆のチタン酸バリウム粒子粉末である。該粒子粉末は高純度、高結晶性、且つ高分散性を有し、且つ、水中で安定なため、コンデンサー、或いは光学フィルムの性能を上げるだけでなく、前記部品の製造コストを下げることにも貢献することができる原料である。

Claims (4)

  1. 平均一次粒子径が10〜300nmのチタン酸バリウム粒子粉末において、アモルファス状の炭酸バリウム被覆層の平均層厚が0.08〜2.0nmであるチタン酸バリウム粒子粉末の製造方法であって、
    水溶媒中チタン酸バリウム粒子の濃度を5〜60重量%及びBa 2+ イオン濃度を10〜500ppmに調整する第一工程、温度30〜60℃で3〜96時間保持によりチタン酸バリウム粒子から抽出したBa 2+ イオンとNa CO 又はK CO と反応させてチタン酸バリウム粒子表面をアモルファス状の炭酸バリウムで被覆させる第二工程、前記工程で生成した水可溶性Na イオン又はK イオンを水洗で除去する第三工程を含むことを特徴とするチタン酸バリウム粒子粉末の製造方法
  2. 走査型透過電子顕微鏡観察の明視野像において、チタン酸バリウム粒子表層から第一番目のBaの原子カラムカウント数に対して隣接するTiの原子カラムカウント数の比が1.00以上である請求項1記載のチタン酸バリウム粒子粉末の製造方法
  3. 単独で存在する炭酸バリウム粒子が0.03〜2.0重量%である請求項1又は2記載のチタン酸バリウム粒子粉末の製造方法
  4. 前記チタン酸バリウム粒子粉末を含む水溶媒中の煮沸後の可溶性Baの濃度が、10〜800ppmである請求項1〜3の少なくとも一項に記載のチタン酸バリウム粒子粉末の製造方法
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