WO2023190452A1 - チタン酸バリウム粒子粉末及びその製造方法 - Google Patents

チタン酸バリウム粒子粉末及びその製造方法 Download PDF

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正浩 金光
祐司 三島
守 神垣
真次 植本
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戸田工業株式会社
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    • C01INORGANIC CHEMISTRY
    • C01GCOMPOUNDS CONTAINING METALS NOT COVERED BY SUBCLASSES C01D OR C01F
    • C01G23/00Compounds of titanium
    • HELECTRICITY
    • H01ELECTRIC ELEMENTS
    • H01GCAPACITORS; CAPACITORS, RECTIFIERS, DETECTORS, SWITCHING DEVICES, LIGHT-SENSITIVE OR TEMPERATURE-SENSITIVE DEVICES OF THE ELECTROLYTIC TYPE
    • H01G4/00Fixed capacitors; Processes of their manufacture
    • H01G4/30Stacked capacitors

Definitions

  • Non-Patent Document 1 and Patent Document 1 describe the use of fine, highly dispersible barium titanate particles as a sintering retarder for Ni particles.
  • the present invention is the method for producing the barium titanate particles described above, wherein each of the impurity elements contained in the mixed titanic acid in the first step is 1000 ppm or less.
  • 1 is a scanning electron microscope (SEM) image (25,000 times magnification) of the barium titanate particle powder of Example 1.
  • 1 is a particle size distribution of primary particles of barium titanate particles of Example 1 and agglomerated particles in an aqueous solvent. This is the oil absorption property of 15 g of barium titanate particle powder of Example 1.
  • FIG. 3 is a diagram regarding the dependence of oil absorption amount at maximum torque on the average primary particle diameter in Examples and Comparative Examples.
  • the barium titanate particles according to the present invention have a maximum torque of oil absorption characteristics of 0.2 N ⁇ m or less, preferably 1.9 N ⁇ m or less, and more preferably 1.8 N ⁇ m or less.
  • the barium titanate particles according to the present invention preferably have an oil absorption amount of 45 mL/100 g or less at maximum torque, more preferably 42 mL/100 g or less.
  • the MOH/Cl value [molar ratio] which is the ratio of neutralizing agent MOH to Cl in titanium chloride, is preferably 0.60 to 1.50, more preferably 0.70 to 1. .40, more preferably 0.80 to 1.30.
  • the neutralization reaction to the dehydration reaction are preferably performed while the reaction solution is exposed to a gas in an oxidizing atmosphere. This is because, in the case of an inert gas atmosphere, impurities tend to remain in the titanate obtained after the next water washing step, making it difficult for the obtained barium titanate particles to have high purity.
  • organic aluminum compounds include acetalkoxyaluminum diisopropylate, aluminum diisoproboxymonoethyl acetoacetate, aluminum trisethyl acetoacetate, and aluminum trisacetylacetonate.
  • anionic surfactants such as fatty acid salts, sulfate ester salts, sulfonates, phosphate ester salts; polyethylene glycol type nonionic surfactants such as polyoxyethylene alkyl ether and polyoxyethylene aryl ether; Nonionic surfactants such as polyhydric alcohol type nonionic surfactants such as sorbitan fatty acid ester; cationic surfactants such as amine salt type cationic surfactants and quaternary ammonium salt type cationic surfactants; Examples include amphoteric surfactants such as alkyl betaines such as alkyldimethylaminoacetic acid betaines and alkylimidazolines.
  • the oil absorption characteristics of carbon black SRB D-6 which is a standard material, were evaluated using "S410D".
  • the sample weight was 8.0 g
  • the rotation speed of the kneader was 200 rpm
  • the dropping rate was 1 mL/min.
  • the maximum torque was 0.953 Nm
  • the oil absorption amount at the maximum torque was 71.0 mL/100 g.
  • the oil absorption amount at 70% torque was 66.7 mL/100 g.
  • the barium titanate-containing slurry was cooled, precipitated and concentrated twice, and 5L of the slurry was hydrothermally treated at 170°C for 8 hours.
  • the hydrothermal treatment was carried out at 105° C. for 3 hours, and the other synthesis conditions were the same as in Example 1.
  • Example 10 The hydrothermal treatment temperature in the second step was 85° C., and the other synthesis conditions were the same as in Example 9.
  • the obtained slurry was washed with water, and 1/6 of the obtained cake was dried at 120° C. and evaluated.
  • barium titanate particle powder was obtained through filtration, water washing, cake drying and pulverization.

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Abstract

【課題】 高結晶性で微細であり、水系溶媒及び非水系溶媒共に容易に分散するので小型で高性能な電子部品や光学部品の原料として好適に使用でき、しかも、強熱減量が低いためMLCCにも好適に使用できるチタン酸バリウム粒子粉末及びその製造方法を提供する。 【解決手段】 平均一次粒子径が20nm~150nmのチタン酸バリウム粒子粉末であって、水系溶媒における凝集粒子の累積頻度分布の50%径のD50及び95%径のD95で表されるD95/D50の値が5以下であり、吸油量特性の最大トルクが0.2N・m以下であるチタン酸バリウム粒子粉末。

Description

チタン酸バリウム粒子粉末及びその製造方法
 本発明は、チタン酸バリウム粒子粉末及びその製造方法に関する。詳しくは、該チタン酸バリウム粒子粉末は高結晶性で微細であり、水系溶媒及び非水系溶媒共に容易に分散するので小型で高性能な電子部品や光学部品の原料として好適に使用でき、しかも、強熱減量が低いためMLCCにも好適に使用できるチタン酸バリウム粒子粉末及びその製造方法に関する。
 近年、携帯電話やパソコン等の電子機器の小型・軽量化に拍車がかかり、これらに含まれる電気回路のコンデンサーの小型化・大容量化、或いは、光学フィルムの小型化・高透過率化が進んでいる。
 電子部品及び光学部品の小型化、高容量化、高透過率化に伴い、高結晶性で微細であり、また、水系溶媒及び非水系溶媒共に容易に分散するチタン酸バリウム粒子粉末の要求が高まっている。
 前記のような部品に使用されるチタン酸バリウム粒子粉末含有樹脂膜の薄層化の観点においても、水系溶媒及び非水系溶媒共に容易に分散するチタン酸バリウム粒子粉末の要求が高まっている。
 また、誘電体層と内部電極層とが交互に積層した積層セラミックコンデンサー(以下「MLCC」と言う)においては、誘電体層にチタン酸バリウム粒子粉末が原料として使用され、内部電極層にはNi粒子粉末が原料として使用されている。
 近年、MLCCの小型・大容量化が進み、誘電体層と内部電極層の層厚は、各々1μm以下となっているため、原料であるチタン酸バリウム粒子粉末及びNi粒子粉末の粒子サイズもサブミクロン以下であることを要求される。
 MLCCは、通常、誘電体層形成用及び内部電極層形成用のスラリー又はペーストを作製し、スラリー等の乾燥膜を交互に積層して焼成して製造されるから、内部電極層のNi粒子と誘電体層のチタン酸バリウム粒子は同時に焼結することになる。
 しかし、サブミクロン以下のサイズのNi粒子は、同程度のサイズのチタン酸バリウム粒子に比べて数百℃程度低い温度で焼結するので、Ni粒子とチタン酸バリウム粒子の熱収縮特性の違いから、積層した誘電体層と内部電極層の剥離が生じ易いという問題がある。
 高結晶性で微細なチタン酸バリウム粒子粉末であって、水系溶媒及び非水系溶媒共に容易に分散することが可能であれば、小型の電子部品及び光学部品の原料として好適に使用できる。しかも、前記特性に加えて強熱減量が少ないチタン酸バリウム粒子粉末の場合、MLCCに使用して焼結すれば誘電体層とNi内部電極層の剥離が生じ難くなり、機械的な信頼性の高いMLCCの製造が期待される。
野村 武史 監修、「積層セラミックコンデンサ(MLCC)の材料・製造・実装技術と最新動向」、(株)R&D支援センター 発行、2020年10月30日 科学技術庁 無機材質研究所研究報告書第19号、「酸化チタンに関する研究」、1979年
特開2005-289668号公報
 非特許文献1及び特許文献1には、Ni粒子の焼結遅延材として、微細で、分散性の高いチタン酸バリウム粒子を用いることが記載されている。
 しかしながら、非特許文献1や特許文献1記載の技術では、チタン酸バリウム粒子をNi粒子に分散させる共材として多量の分散剤を用いたり、機械的に強力なシェアをかけて分散させたりする必要がある。
 しかし、多量の分散剤を使用したり、強力にシェアをかけたりすると、チタン酸バリウム粒子及びNi粒子のチッピングが発生する。従って、薄層セラミックコンデンサーの原料や、小型電子部品や光学部品の原料としては使用できない虞がある。
 本発明者らは、前記諸問題を解決することを技術的課題とし、試行錯誤的な数多くの試作・実験を重ねた結果、平均一次粒子径が20nm以上かつ150nm以下であり、水系溶媒における凝集粒子の累積頻度分布の50%径のD50及び95%径のD95で表されるD95/D50の値が5以下であり、吸油量特性の最大トルクが0.2N・m以下であるチタン酸バリウム粒子粉末であれば、高結晶性で微細なチタン酸バリウム粒子粉末であって、水系溶媒及び非水系溶媒共に容易に分散し、しかも、強熱減量が少ないチタン酸バリウムになるという刮目すべき知見を得て前記技術的課題を達成したものである。
 前記技術的課題は次のとおりの本発明によって解決できる。
 本発明は、平均一次粒子径が20nm以上かつ150nm以下であり、水系溶媒における凝集粒子の累積頻度分布の50%径のD50及び95%径のD95で表されるD95/D50の値が5以下であり、吸油量特性の最大トルクが0.2N・m以下であるチタン酸バリウム粒子粉末である。
 また本発明は、前記吸油量特性における二軸混練機の仕事が40J/g以下である前記のチタン酸バリウム粒子粉末である。
 また本発明は、強熱減量が4.0wt%以下である前記のチタン酸バリウム粒子粉末である。
 また本発明は、水溶媒における溶液反応によってオルトチタン酸とメタチタン酸の混合チタン酸を生成する第一工程と、60℃以上かつ105℃以下で前記混合チタン酸とバリウム化合物を混合してチタン酸バリウムを生成する第二工程を少なくとも有するチタン酸バリウム粒子粉末の製造方法である。
 また本発明は、前記第一工程が、塩化チタンと中和剤で生成したオルトチタン酸を50℃以上かつ85℃以下で脱水反応させてオルトチタン酸とメタチタン酸の混合チタン酸を生成する工程である前記のチタン酸バリウム粒子粉末の製造方法である。
 また本発明は、前記第一工程における混合チタン酸が含有する不純物元素は各々1000ppm以下である前記のチタン酸バリウム粒子粉末の製造方法である。
 また本発明は、混合チタン酸をTiO・nHOと表したとき、前記第一工程おける混合チタン酸のnは0.5≦n≦1.5である前記のチタン酸バリウム粒子粉末の製造方法である。
 また本発明は、平均一次粒子径が20nm以上かつ150nm以下であり、水系溶媒における凝集粒子の累積頻度分布の50%径のD50及び95%径のD95で表されるD95/D50の値が5以下であり、吸油量特性の最大トルク時の吸油量が(36-0.08×平均一次粒子径)mL/100g以下であるチタン酸バリウム粒子粉末である。
 また本発明は、前記のチタン酸バリウム粒子粉末を含む分散体である。
 本発明に係るチタン酸バリウム粒子粉末は、平均一次粒子径が20nm~150nmと微細であると共に高結晶性であり、水系溶媒及び非系水系溶媒共に容易に分散し、しかも強熱減量が低いチタン酸バリウム粒子粉末である。
 したがって、MLCCの内部電極層用途のNi粒子を含むペーストに、本発明に係るチタン酸バリウム粒子粉末を共材として添加すると、Ni粒子周辺にチタン酸バリウム粒子を均一に分散させることができる。
 チタン酸バリウム粒子が均一に分散するので、粘度の低いNiペーストを作製することができる。
 また、前述のNiペーストを用いたNi乾燥膜において、Ni粒子周辺に均一に分散したチタン酸バリウム粒子が観察される。従って、前述のNi乾燥膜の焼結による熱収縮は、Ni粒子の粒成長抑制効果により低減される。そのため、各ペースト乾燥膜から得られるNi内部電極層とチタン酸バリウム粒子粉末含有の誘電体層との熱収縮特性の差が少なくなり、Ni内部電極層と誘電体層を同時に焼結してもNi内部電極層と誘電体層の剥離が生じ難くなる。
 また、同時に焼成することができるので機械的強度が高くなり、信頼性の高いMLCCを提供できる。
 さらに、本発明に係るチタン酸バリウム粒子粉末を分散させたスラリーは高誘電率及び高屈折率を備える樹脂膜になり、また、薄膜を形成させることができるためコンデンサーや光学フィルムに好適に使用できる。
実施例1のチタン酸バリウム粒子粉末の走査型電子顕微鏡(SEM)像(25000倍)である。 実施例1のチタン酸バリウム粒子粉末の一次粒子及び水系溶媒中の凝集粒子の粒度分布である。 実施例1のチタン酸バリウム粒子粉末15gの吸油量特性である。 実施例と比較例における最大トルク時の吸油量の平均一次粒子径依存に関する図である。
 本発明の構成をより詳しく説明すれば次の通りである。
 まず、本発明に係るチタン酸バリウム粒子粉末について述べる。
 本発明に係るチタン酸バリウム粒子粉末の平均一次粒子径は20nm~150nmであり、好ましくは25nm~140nm、より好ましくは30nm~130nmである。
 20nm未満の場合、本発明における凝集粒子の累積頻度分布や吸油量特性の最大トルクの要件を満たすチタン酸バリウム粒子粉末を工業的に、即ち、安全に、また、大量に生産することが困難であり、また、150nmを超えると小型電子部品及び光学部品の用途として使用できない虞があるからである。
 本発明に係るチタン酸バリウム粒子粉末は、水系溶媒における凝集粒子の累積頻度分布の50%径のD50及び95%径のD95で表されるD95/D50の値が5以下であり、好ましくは1.9以下、より好ましくは1.8以下である。
 D95/D50の値が5を超えると水系溶媒において容易に分散しない虞があるからである。
 本発明に係るチタン酸バリウム粒子粉末は、吸油量特性の最大トルクが0.2N・m以下であり、好ましくは1.9N・m以下、より好ましくは1.8N・m以下である。
 0.2N・mを超えると非水系溶媒に容易に分散しない虞があるからである。
 本発明に係るチタン酸バリウム粒子粉末は、吸油量特性における二軸混練機の仕事が40J/g以下であることが好ましく、より好ましくは38J/g以下、さらに好ましくは36J/g以下である。
 40J/gを超えると、非水系溶媒に容易に分散しない虞があるからである。
 本発明に係るチタン酸バリウム粒子粉末は、強熱減量が4.0wt%以下であることが好ましく、より好ましくは3.8wt%以下、さらに好ましくは3.6wt%以下である。
 強熱減量の主たる要因としては、試料中の未反応炭酸バリウムの熱分解、結晶水及び化学吸着水の脱離が考えられるため、強熱減量が4.0wt%を超えると結晶性の悪い試料と見做され、電子部品及び光学部品用途の原料として使用できない虞があるからである。
 本発明に係るチタン酸バリウム粒子粉末は高純度であることが好ましい。チタン酸バリウム粒子粉末を用いた電子部品及び光学部品に影響を与える虞があるからである。
 影響を与える虞のある不純物元素として主原料由来のSi、S、Cl、Ca、Fe、Sr、及び、中和剤由来のN、Na、Kを例示する。
 主原料由来の不純物元素は各々500ppm以下が好ましく、より好ましくは400ppm以下、さらに好ましくは300ppm以下である。
 中和剤由来の不純物元素は各々20ppm以下が好ましく、より好ましくは18ppm以下、さらに好ましくは16ppm以下である。
 本発明に係るチタン酸バリウム粒子粉末は、Ba/Ti組成比が0.980~1.020であることが好ましく、より好ましくは0.985~1.015であり、さらに好ましくは0.990~1.010である。
 0.980未満であれば、未反応のチタンが多く残存するので結晶性が低くて誘電率や屈折率が低下する虞があり、1.020を超えると、未反応炭酸バリウムが増加しているので同様に誘電率や屈折率が低下する虞があるからである。
 本発明に係るチタン酸バリウム粒子粉末は、BET比表面積が6.0m/g~70m/gであることが好ましく、より好ましくは6.2m/g~65m/gである。
 BET比表面積が6.0m/g~70m/gの範囲であればBET比表面積及び真密度による換算粒子径と平均一次粒子径とが近いから高結晶性のチタン酸バリウム粒子粉末であるからである。
 本発明に係るチタン酸バリウム粒子粉末は、結晶子サイズが12nm~180nmであることが好ましく、より好ましくは15nm~170nmである。
 結晶子サイズが12nm~180nmであれば一つ一つの粒子が単結晶に近いからである。
 本発明に係るチタン酸バリウム粒子粉末は、最大トルク時の吸油量が45mL/100g以下であることが好ましく、より好ましくは42mL/100g以下である。
 最大トルク時の吸油量が45mL/100gを超えると、非水系溶媒に容易に分散しない虞があるからである。
 本発明に係る粉末は、平均一次粒子径が25nm以上のチタン酸バリウム粒子の場合、格子定数比c/aが1.0010~1.0250であることが好ましく、より好ましくは1.0030~1.0200である。
 1.0010未満であれば、結晶性が低いチタン酸バリウムであるため誘電率や屈折率が低下する虞があり、1.0250を超えるチタン酸バリウムの製造は困難であるからである。
 なお、平均一次粒子径が25nm未満のチタン酸バリウム粒子の場合、粒子サイズ効果を受けるので格子定数比c/aは1に近づく。
 本発明に係るチタン酸バリウム粒子粉末は、吸油量特性の最大トルク時の吸油量が(36-0.08×平均一次粒子径)mL/100g以下である。
 次に、本発明に係るチタン酸バリウム粒子粉末の製造方法について述べる。
 本発明に係るチタン酸バリウム粒子粉末の製造方法を水系溶媒における溶液反応によって説明する。水系溶媒での溶液反応が最も適していると認識しているためである。但し、前記溶液反応に限定されるものではなく、原料を混合、粉砕、仮焼きして得られる固相法、及び金属アルコキシドの加水分解で得られるゾル‐ゲル法であってもよい。
 一般に、チタン酸バリウム粒子粉末の原料として、四塩化チタンTiClがある。
 四塩化チタン中のClが不純物元素となるため、四塩化チタン由来のチタン酸を水洗して、高純度チタン酸バリウムを生成させることが知られている。
 通常、水系溶媒の溶液反応において、TiClを原料としてチタン酸を生成するとき、次の(式A)で示される中和反応及び(式B)で表される脱水反応及び(式C)で表される加水分解反応が代表的である。
(中和反応)
(式A) TiCl+4MOH→Ti(OH)+4MCl
<(式A)中、MはNa、K、NH、等で、MOHは中和剤である。中和剤はCa(OH)等の二価金属の水酸化物でも良く、M’CO炭酸塩であっても良い。>
(脱水反応)
(式B) TiO・nHO→TiO・(n-1)HO+H
<(式B)中、n≦2である。ここで、TiO・nHOにおいて、n=2の場合オルトチタン酸、n=1の場合、メタチタン酸、1<n<2の場合オルトチタン酸とメタチタン酸の混合チタン酸である。オルトチタン酸はTi(OH)、メタチタン酸TiO(OH)でも表される。また、オルトチタン酸はHTiO、メタチタン酸HTiOでも表される。>
 ここで、オルトチタン酸は無定形の非晶質、或いは低結晶性のチタン酸であり、メタチタン酸は結晶性のアナターゼ微結晶の集合体として扱われる。生成するチタン酸のTiO・nHO(n≦2)は白色沈殿物或いは白色分散体の状態である。従って、オルトチタン酸とメタチタン酸の混合チタン酸は、TiO・nHO(0<n<2)で表される。
(加水分解反応)
(式C) TiCl+(m+2)HO→TiO・mHO+4HCl
<(式C)中mは反応溶液における四塩化チタンの濃度、pH、溶液中の不純物などに依存し、ある程度高温で、pHが高いと、m≒1のメタチタン酸が生成する。>
 ここで、四塩化チタンの加水分解反応とは、透明な溶液性の四塩化チタンに水を加えて白色沈殿物或いは白色分散体ができる場合や、四塩化チタンに水を加えた状態で、ある時間を経過後に白色沈殿物或いは白色分散体ができる場合である。
 本発明に係るチタン酸バリウム粒子粉末の製造方法における第一、第二工程について説明する。
 本発明における製造方法は(式A)及び(式B)の反応を基にする。
 本発明における製造方法の第一工程ではオルトチタン酸とメタチタン酸の混合チタン酸を生成することで、その後の第二工程では前記生成した混合チタン酸と60℃~105℃のバリウム化合物を混合して溶液反応でチタン酸バリウムを生成することを特徴とする。
 以下に、本発明における製造方法をより詳細に述べる。
 本発明における製造方法においては、主原料の塩化チタンとして、四塩化チタンTiCl、工業用の塩化チタン(Cl/Ti<4)を用いることができる。
 本発明における製造方法においては、(式A)の中和反応の後、(式B)の脱水反応を進行させることが好ましい。
 即ち、水で希釈された工業用の塩化チタン(Cl/Ti<4)に中和剤を低温で滴下して中和反応させることが好ましく、前記低温は10℃~60℃の範囲であり、より好ましくは20℃~55℃である。
 前記滴下時に(式A)の反応温度が60℃を超えると、塩化チタンの中和時の発熱を伴い、(式C)の加水分解反応が進行することがあり、10℃未満であると工業的に制御が困難だからである。
 本発明に係る製造方法において、塩化チタン中のClに対する中和剤MOHとの比であるMOH/Cl値[mol比]は0.60~1.50が好ましく、より好ましくは0.70~1.40、さらに好ましくは0.80~1.30である。
 MOH/Cl値が1.50を超えるとM含有のチタン酸塩が生成し、水洗でMを取り除くことは困難で、得られるチタン酸バリウム粒子粉末に不純物Mが多量に残存する虞があり、MOH/Cl値が0.60を下回ると未反応の塩化チタンが残存し、水洗中に塩化チタンが洗い流された結果、得られるチタン酸バリウム粒子粉末の収率が低下する虞があるからである。
 本発明に係るチタン酸バリウム粒子粉末の製造方法において、(式A)の中和反応後と(式B)の脱水反応時のTiの濃度は0.2mol/L~3.5mol/Lが好ましく、より好ましくは0.3mol/L~3.2mol/L、さらに好ましくは0.35mol/L~3.0mol/Lである。
 中和反応(式A)を経た後、脱水反応(式B)は50℃~85℃で行うことが好ましく、より好ましくは52℃~83℃である。
 50℃未満の場合、脱水反応は起こり難く、85℃を超えるとバリウムとの反応性が低いチタン酸が生成する虞があるからである。
 脱水反応により、一部のオルトチタン酸はメタチタン酸へと変化し、オルトチタン酸とメタチタン酸を含む混合チタン酸となる。
 中和反応から脱水反応は、反応溶液が酸化性雰囲気のガスに曝された状態で行うことが好ましい。
 不活性ガス雰囲気の場合、次の水洗工程後に得られるチタン酸塩に不純物が残存し易く、得られるチタン酸バリウム粒子粉末が高純度になり難くなるからである。
 酸化性雰囲気とは純粋な酸素雰囲気、又は大気雰囲気でも良い。また、反応溶液中に大気を送り込んでバブリングして積極的に酸化性雰囲気に曝されても良い。
 第一工程で得られるチタン酸は中和反応(式A)で得られるオルトチタン酸と脱水反応(式B)で得られるメタチタン酸の混合チタン酸が好ましく、塩化チタンの強酸雰囲気化で(式C)が進行した加水分解物を含まないことが好ましい。
 一方、(式C)に従って、pHが0.5~3.5、温度40℃~80℃でメタチタン酸を生成し、中和反応(式A)で得られるオルトチタン酸と脱水反応(式B)で得られるメタチタン酸の混合チタン酸と混合して、混合チタン酸を生成することもできる。
 第一工程の直後に得られた混合チタン酸に対し、水洗を行ってもよい。
 第一工程で得られた混合チタン酸に含まれる不純物元素を水洗で洗い落とすことができるからである。
 水洗において、ろ液電導度が200μS/cmを終点とし、水洗後の混合チタン酸に含まれる不純物元素を測定することができる。
 水洗後の混合チタン酸に含まれる不純物元素は各々1000ppm以下であることが好ましく、より好ましくは800ppm以下であり、さらに好ましくは500ppm以下である。
 不純物元素が各々1000ppmを超えると第二工程以降で得られるチタン酸バリウム粒子粉末中に主原料由来の不純物元素Si、S、Cl、Ca、Fe、Srのいずれかが500ppmを超える虞があり、また、中和剤由来の不純物のアルカリ金属元素Na、Kのいずれかが20ppmを超える虞があるからである。
 混合チタン酸をTiO・nHOと表したとき、第一工程における混合チタン酸は0.5≦n≦1.5であることが好ましく、より好ましくは0.55~1.4である。
 nが1.5を超えると水洗が困難で、不純物元素が残り易くなり、得られるチタン酸バリウムの結晶性は低く、粒子表面が平滑でなく、吸油量特性は悪化する傾向にあった。
 また、nが0.5未満の場合、第二工程でのBaとの反応性が低く、反応率の低いチタン酸バリウムが得られ易くなる。
 チタン酸バリウムの溶液反応モデルとして、アルカリ性のバリウム溶液とチタン酸が混ざり合った場合、チタン酸が溶解して、チタン酸バリウム粒子が生成することが知られている。チタン酸中の不純物と生成するチタン酸バリウム中の不純物は前記モデルで説明できることもある。
 第二工程では水溶液中で混合チタン酸とバリウム化合物を反応させてチタン酸バリウム粒子を生成する。
 第二工程は、第一工程で得られた混合チタン酸を含むスラリーと主原料のバリウム化合物を混合して、アルカリ性環境下で60℃~105℃の範囲で反応させることが好ましい。
 バリウム化合物は高純度が好ましい。
 バリウム化合物は特に限定されないが、水酸化バリウムを例示する。
 反応中の溶液と接触するガスは、炭酸ガスを含まない酸化性ガスや高純度窒素などの不活性ガスが好ましい。
 炭酸バリウムが生成しないようにするためである。
 第二工程の後にチタン酸バリウム粒子を水熱処理で結晶化させてもよい。
 得られたチタン酸バリウム粒子を含むスラリーから主原料由来の過剰のBa等の不純物を除去するために水洗してもよい。
 水溶液中で生成されたチタン酸バリウム粒子は、溶液反応に利用された水を取り除くことで、チタン酸バリウム粒子粉末を得ることができる。
 その際、水の架橋によってチタン酸バリウム粒子の強固な凝集を防ぐことが好ましい。
 凝集を防ぐ方法として、常法に従って、チタン酸バリウム粒子を含むスラリーの瞬時乾燥や水より架橋力の低い溶媒に置換して乾燥等を例示する。
 また、スラリーから乾燥されたチタン酸バリウム粒子粉末は、乾式粉砕によって、粒子の強固な凝集を防ぐこともできる。
 得られた粒子粉末はさらに仮焼、粉砕してチタン酸バリウムの結晶性を高めることもできる。
 次に、本発明に係るチタン酸バリウム粒子粉末を含有する分散体について述べる。
 本発明に係る分散媒体としては、水系及び非水系のいずれも用いることができる。
 水系分散体の分散媒体としては、水、若しくは、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール等のアルコール系溶剤;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、プロピルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のグリコールエーテル系溶剤;ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール等のオキシエチレン又はオキシプロピレン付加重合体;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,2,6-ヘキサントリオール等のアルキレングリコール;グリセリン、2-ピロリドン等の水溶性有機溶剤を用いることができる。これらの水系分散体用の分散媒体は、目的とする用途に応じて1種又は2種以上を混合して用いることができる。
 非水系分散体用の分散媒体としては、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等のアミド類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングルコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のエーテルアルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のエーテルアセテート類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル等の酢酸エステル類;乳酸メチルエステル、乳酸エチルエステル、乳酸プロピルエステル等の乳酸エステル類;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、γ-ブチロラクトン等の環状エステル類及び各種モノマー等を用いることができる。
 これらの非水系分散体用の分散媒体は、目的とする用途に応じて1種又は2種以上を混合して用いることができる。
 本発明に係る分散体のチタン酸バリウム粒子粉末の濃度は、5重量%~60重量%に調整することが好ましく、より好ましくは10重量%~55重量%、さらに好ましくは15重量%~50重量%である。
 5重量%未満であれば次工程の用途として生産性が低く、また、60重量%を超えると流動性の高いスラリーができるとは言い難いからである。
 本発明に係る分散体は、必要に応じて分散剤、樹脂、消泡剤、助剤等の添加剤を添加することもできる。
 本発明における分散剤としては、使用するチタン酸バリウム粒子粉末や分散媒体の種類に応じて適宜選択して使用することができ、アルコキシシラン、シラン系カップリング剤及びオルガノポリシロキサン等の有機ケイ素化合物;チタネート系カップリング剤等の有機チタン化合物;アルミネート系カップリング剤等の有機アルミ化合物;ジルコネート系のカップリング剤等の有機ジルコニウム化合物等の界面活性剤或いは高分子分散剤を用いることができ、これらは1種または2種以上を混合して用いることができる。
 有機ケイ素化合物として、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、テトラエトキシシラン及びテトラメトキシシラン等のアルコキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン等のシラン系カップリング剤、ポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、変性ポリシロキサン等のオルガノポリシロキサンを例示する。
 有機チタン化合物として、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、イソプロピルトリ(N-アミノエチル・アミノエチル)チタネート、トリス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルジオクチルパイロホスフェートチタネート、イソプロピルトリス(ドデシルベンゼンスルフォニル)チタネート、チタンテトラノルマルブトキシド、チタンテトラ-2-エチルヘキソキシド、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2-ジアリルオキシメチル-1-ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスフェイト)チタネート、テトラ(2-2-ジアリルオキシメチル-1-ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスフェイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネートを例示する。
 有機アルミ化合物として、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムジイソプロボキシモノエチルアセトアセテート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、アルミニウムトリスアセチルアセトネートを例示する。
 有機ジルコニウム化合物として、ジルコニウムテトラキスアセチルアセトネート、ジルコニウムジブトキシビスアセチルアセトネート、ジルコニウムテトラキスエチルアセトアセテート、ジルコニウムトリブトキシモノエチルアセトアセテート、ジルコニウムトリブトキシアセチルアセトネートを例示する。
 界面活性剤として、脂肪酸塩、硫酸エステル塩、スルホン酸塩、リン酸エステル塩等のアニオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアリールエーテル等のポリエチレングリコール型非イオン界面活性剤、ソルビタン脂肪酸エステル等の多価アルコール型非イオン界面活性剤等のノニオン性界面活性剤;アミン塩型カチオン系界面活性剤、第4級アンモニウム塩型カチオン系界面活性剤等のカオチン性界面活性剤;アルキルジメチルアミノ酢酸ベタインなどのアルキルベタイン、アルキルイミダゾリンの両性界面活性剤を例示する。
 高分子分散剤として、スチレン-アクリル酸共重合体、スチレン-マレイン酸共重合体、ポリカルボン酸及びその塩を例示する。
 分散剤の添加量は、分散体中のチタン酸バリウム粒子粉末の総表面積に依存すると共に、チタン酸バリウム粒子粉末の分散体の用途及び分散剤の種類に応じて適宜調製すればよい。
 一般的には、分散媒中のチタン酸バリウム粒子粉末に対して分散剤を0.01重量%~100重量%添加することによって、チタン酸バリウム粒子粉末を分散媒体中に均一且つ微細に分散させることができると共に、分散安定性も改善することができる。
 分散剤は、分散媒体に直接添加してもよいし、予めチタン酸バリウム粒子粉末に処理してもよい。
 本発明の具体的な実施例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
 本発明のチタン酸バリウム粒子粉末の粉体評価は以下のように行った。
 試料の表面、形状、及び一次粒子を観察するためにSEM「S-4300」[株式会社日立ハイテク製]を用いた。
 得られた像の一次粒子を画像解析式粒度分布測定ソフトウェア「Mac-View」[株式会社マウンテック製]で500個計測し、一次粒子径の個数平均から平均一次粒子径を算出した。
 Ba/Ti組成比は、蛍光X線分析装置「Simultix12」[株式会社リガク製]で測定した。
 BET比表面積は、窒素ガス下で250℃、10分間乾燥脱気した後、全自動比表面積測定装置「Macsorb HM model-1208[株式会社マウンテック製]で測定した。
 水系溶媒における凝集粒子の粒子径は、レーザー回折・散乱法の粒度分布計「マイクロトラック MT3300EXII」[マイクロトラック・ベル株式会社製]、又は動的光散乱法の粒度分布計「FPAR-1000」[大塚電子株式会社製]で測定した。試料の比表面積が30m/gを超える場合、後者の動的光散乱法を採用し、CONTINモードで解析した。
 試料をヘキサメタリン酸ナトリウム分散剤0.2重量%水溶液20mLに、超音波で5分間分散させた後、純水に希釈して凝集粒子径の粒度分布の測定を行った。また、比表面積が30m/gを超える試料において、粒子間の乾燥凝集が強い場合、溶液反応に利用された水を取り除く前のチタン酸バリウム粒子粉末を含むスラリーを試料とした。
 得られた粒度分布の累積頻度分布から、50%径のD50及び95%径のD95で表されるD95/D50の値を算出した。
 試料の結晶相の同定と結晶構造パラメータの算出のため、粉末X線回折装置「SmartLab」[株式会社リガク]を用いて測定した。
 X線回折パターンはCu-Kα、40kV、200mAの条件下で、モノクロメータを通して測定し、15≦2θ(deg.)≦90、0.02°のステップで、3deg./min.で測定した。
 格子定数等の結晶パラメータ算出のためRietveld法で解析した。チタン酸バリウム粒子の結晶性を表わす正方晶系度(Tetragonality)は格子定数比c/aで表わした。
 試料の不純物量の定量化のために高周波誘導結合プラズマ発光分光装置(ICP-OES)「Optima 8300」[株式会社パーキンエルマージャパン]で内標準法を採用した。
 ICP-OESによる不純物元素Si、S、Cl、Ca、Fe、Srが200ppm以下、又は不純物のアルカリ金属元素Na、Kが20ppm以下であった場合〇と評価した。
 試料の吸油量測定には「S410D」(株式会社あさひ総研製)を用いた。
 試料を15g計量し、二軸混練機の中に入れ、一定速度の回転数200rpm(=20.94rad/s角速度)で回転させた後、油成分のフタル酸ジブチル(DBP)を一定速度の1mL/minで滴下した。
 横軸にDBP滴下量、縦軸に混錬時のトルクを取り吸油量特性を得た。
 得られた吸油量特性を5つ以下のガウス関数でフィッティングし、最大トルク、最大トルク時の吸油量、及び吸油量特性の面積を算出した。吸油量特性において、DBP滴下開始時を始点とし、トルク値が0[Nm]になる点を終点とし、前記フィッティングした。
 縦軸のトルク[Nm]と角速度[rad/s]との積は仕事率[J/s]であり、横軸のDBP滴下量[mL]は、滴下速度1mL/minから時間[s]に換算することができる。
 したがって、吸油量特性の面積から、試料1g当たりの二軸混練機の仕事[J/g]を計算することができる。
 本発明においては二軸混練機の仕事[J/g]が少ないほど、非水系溶媒において易分散性と評価した。
JIS K 6217-4を参考にして、「S410D」により標準物質であるカーボンブラックSRB D-6の吸油量特性を評価した。
 試料重量を8.0gとし、混練機の回転数を200rpm、滴下速度を1mL/minとした。
 最大トルクは0.953Nm、最大トルク時の吸油量は71.0mL/100gであった。
 また、70%トルク時の吸油量は66.7mL/100gであった。
 「S410D」によりJIS Z 8901試験用粉体1の12種カーボンブラックの吸油量特性を評価した。
 試料重量を7.5gとし、混練機の回転数を200rpm、滴下速度を1mL/minとした。
 最大トルクは0.856Nm、最大トルク時の吸油量は33.3mL/100gであった。
 また、70%トルク時の吸油量は32.1mL/100gで、二軸混練機の仕事は14.8J/gであった。
 試料重量を7.5gとし、混練機の回転数を125rpm、滴下速度を1mL/minとした。
 最大トルクは0.896Nm、最大トルク時の吸油量は33.6mL/100gであった。
 また、70%トルク時の吸油量は32.4mL/100gで、二軸混練機の仕事は15.1J/gであった。
 試料の強熱減量は1200℃、2時間で測定した。
 試料10gを計量し、その減量分を算出した。
 混合チタン酸を含むスラリーを脱水したケーキの含水率は、該ケーキ5gを50℃、12時間で乾燥して、その減量分を算出した。
 また、混合チタン酸ケーキの強熱減量を700℃、2時間の熱処理による減量分を算出した。
 前記混合チタン酸ケーキの強熱減量を、定量した含水率の水と混合チタン酸TiO・nHOのnHOの脱水によるものとし、nの値を算出した。
 試料のMLCCのNi内部電極層の共材としての評価を、(有)イーシーエルの協力のもと、以下の通り行った。
 Ni粒子として0.2μmサイズ「NFP-201S」(JFEミネラル株式会社製)を用いた。
 Ni100重量部、試料20重量部とし、DHTA溶剤に、分散剤、ECビヒクルを添加して、Niペーストを作製した。
 ここで、30m/g以上の微粒子試料の場合、エタノール溶媒に分散剤を添加し、該試料を2mmφZrOビーズで予備分散させ、チタン酸バリウム粒子粉末を含む分散体を生成した。
 前述の通り、試料20重量部になるよう得られた分散体を添加し、Niペーストを作製した。
 得られたNiペーストの粘度を「条件:10rpmでB型粘度計「DV-2」(ブルックフィールド社製)」で計測した。
 得られたNiペーストをドクターブレード法で製膜し、約40μmの膜厚のNi乾燥膜を得た。
 Ni乾燥膜の密度は形状計測と重量測定で算出した。
 Ni乾燥膜の表面粗さはサーフコム(株式会社東京精密製)を用いた。
 Ni乾燥膜から約14mmφの円板を作製し、600℃~1200℃における円板直径熱収縮率を測定した。
[実施例1]
 主原料は工業用の塩化チタン(Ti濃度16.5wt%、Cl濃度31wt%)を用い、水で希釈して塩化チタン溶液とした。
 溶液反応として、約15Lのチタン製容器を用いた。
 主原料のバリウム化合物として、水酸化バリウム八水塩(関東化学株式会社製、97%Ba(OH)・8HO試薬特級)を用いた。中和剤として工業用のNaOHを用いた。
 水酸化バリウム八水塩は温水に溶かし、フィルターで炭酸バリウムを除去して、水酸化バリウム溶液として用いた。
 Tiが5molになるよう塩化チタンを計量した。
 NaOH/Cl=1.02となるよう、NaOHを計量した。
 第一工程で、大気雰囲気下、水で希釈した塩化チタン溶液4Lに対し、60℃を超えないよう1時間で4LのNaOHを滴下して、中和した。
 塩化チタンの加水分解を経ずに、8Lのオルトチタン酸スラリーを得た後、大気中、80℃、1時間でオルトチタン酸の一部を脱水反応した。
 この時のTiの濃度は0.625mol/Lであった。
 その後、冷却して、オルトチタン酸とメタチタン酸を含む混合チタン酸スラリーを得た。
 得られたスラリーをろ過洗浄し、混合チタン酸からNa及びCl等の不純物元素を取り除いた後、混合チタン酸のケーキから5gを50℃で乾燥し不純物元素と混合チタン酸TiO・nHOのnを定量した。
 また、前記乾燥試料のX線回折パターンからアナターゼの結晶相のメタチタン酸とブロードなピークで低結晶性のオルトチタン酸の混合チタン酸を確認した。
 得られた混合チタン酸TiO・nHOのnは1.2、最大の不純物元素はNaで、410ppmであった。残りの混合チタン酸のケーキは解膠して混合チタン酸スラリーとした。
 第二工程で、各々、高純度窒素雰囲気下、80℃に保った混合チタン酸スラリーと水酸化バリウム溶液をBa/Ti=1.5mol比で混ぜて、80℃、3時間溶液反応を行い、チタン酸バリウム含有スラリーを得た。
 Tiの濃度は0.5mol/L、反応溶液は10Lである。
 チタン酸バリウム含有スラリーを冷却して、2倍に沈降濃縮し、5Lのスラリーを170℃、8時間で水熱処理した。
 ろ過、水洗、ケーキ乾燥・粉砕を経て、本発明のチタン酸バリウム粒子粉末を得た。
 図1に実施例1で得られたSEM像を示す。
 図1のSEM像から一次粒子の粒度分布を計測し、平均一次粒子径を算出した。
 レーザー回折・散乱法で得られた水系溶媒中の凝集粒子の粒度分布も同時にプロットしたものを図2に示す。
 実施例1におけるチタン酸バリウム粒子粉末の平均一次粒子径は83nm、凝集粒子のD10は86.3nm、D50は141.6nm、D95は262.2nmであった。
 得られたD95/D50の値は1.9で、水系溶媒に対し易分散性と評価した。
 蛍光X線によるBa/Ti組成比は0.996、BET比表面積は14.2m/g、粉末X線回折法による結晶子サイズは85nm、格子定数比c/aの値は1.0058であり、正方晶系度は高く、高結晶性であった。
 ICP-OESによる主原料由来の不純物元素Si、S、Cl、Ca、Fe、Srは200ppm以下であり、中和剤由来の不純物のアルカリ金属元素Na、Kは20ppm以下だったので高純度であることが確認できた。
 強熱減量は1.2wt%であったので、高結晶性であることが確認できた。
 試料15gの測定における、横軸をDBP吸油量、縦軸をトルクとした吸油量特性を図3に示す。
 5つのガウス関数f1~f5の総和の近似曲線でフィッティングした。
 実測データと近似曲線の残差の二乗の総和は0.0011であり、高精度にフィッティングできた。
 得られた吸油量特性の最大トルクは0.162N・m、最大トルク時の吸油量は28.3mL/100g、二軸混練機の仕事は26.7J/gであった。
 実施例1のチタン酸バリウム粒子粉末は、吸油量特性において最大トルクは低く、吸油量も少なく、二軸混練機の仕事は少なかったので非水系溶媒において易分散性と評価した。
[実施例2]
 水熱処理温度170℃を130℃に変更した以外、実施例1の条件で実施した。
 得られた平均一次粒子径は62nmで、吸油量特性において最大トルクは低く、吸油量も少なく、二軸混練機の仕事は少なかったので非水系溶媒において易分散性と評価した。
[実施例3~5]
 第一工程における脱水反応温度を85℃として実施例3~5を実施した。
 実施例3は水熱処理温度を175℃とした。
 実施例4は水熱処理温度を175℃とし、水洗後、得られたスラリーを蒸発乾固し、粉砕した。
 実施例5は水熱処理温度を125℃とした。前述に記載のない条件は実施例1と同様であった。
 いずれのチタン酸バリウム粒子粉末も吸油量特性において最大トルクは低く、吸油量も少なく、二軸混練機の仕事は少なかったので非水系溶媒において易分散性と評価した。
[実施例6]
 第一工程における脱水反応温度を70℃とし、第二工程におけるBa/Ti=1.3mol比とし、Tiの濃度は0.59mol/L、反応溶液は9Lであった。
 水熱処理を105℃、3時間とし、その他の合成条件は実施例1と同様とした。
 得られたチタン酸バリウム粒子粉末の平均一次粒子径は35nmであり、微粒子のため吸油量特性における吸油量も少なく、最大トルクは低く、二軸混練機の仕事は少なかったので非水系溶媒において易分散性と評価した。
[実施例7]
 実施例6の第一工程で得られた混合チタン酸の半分の量の2.5mol分と、pH2、温度60℃での(式C)による塩化チタンの加水分解で得られるメタチタン酸2.5mol分をスラリー状で混合し、合計5molの混合チタン酸(n=0.8)スラリーを得た。
 第二工程において、Tiの濃度は0.59mol/L、反応溶液は9Lであった。
 溶液反応後、1.75倍に濃縮し、水熱処理を行った。
 その他の合成条件は実施例6と同様とした。
 得られたチタン酸バリウム粒子の平均一次粒子径は28nm、吸油量特性において最大トルクは低く、吸油量も少なく、二軸混練機の仕事は少なかったため、非水系溶媒において易分散性と評価した。
[実施例8]
 実施例6の第一工程で得られた混合チタン酸の半分の量の1mol分と、pH2、温度60℃での(式C)による塩化チタンの加水分解で得られるメタチタン酸4mol分をスラリー状で混合し、合計5molの混合チタン酸(n=0.6)スラリーを得た。
 第二工程以降、実施例7と同様とした。
 得られたチタン酸バリウム粒子の平均一次粒子径は27nm、吸油量特性において最大トルクは低く、吸油量も少なく、二軸混練機の仕事は少なかったため非水系溶媒において易分散性と評価した。
 また、強熱減量が2.3と低く、結晶性が高かったのは、用いた混合チタン酸のnの値0.6と低かったためと考えられる。
[実施例9]
 実施例7の第一工程で得られた混合チタン酸(n=0.8)スラリーを用いた。
 第二工程において、Tiの濃度は0.625mol/L、反応溶液は8Lであった。
 溶液反応後、水洗と濃縮で電導度25mS/cmの4Lスラリーに調整し、水熱処理を行った。その他の合成条件は実施例6と同様とした。
 得られたチタン酸バリウム粒子の平均一次粒子径は25nm、吸油量特性において最大トルクは低く、吸油量も少なく、二軸混練機の仕事は少なかったので非水系溶媒において易分散性と評価した。
[実施例10]
 第二工程における水熱処理温度を85℃とし、その他の合成条件は実施例9と同様とした。
 得られたチタン酸バリウム粒子の平均一次粒子径は20nm、吸油量特性において最大トルクは低く、吸油量も少なく、二軸混練機の仕事は少なかったため非水系溶媒において易分散性と評価した。
[比較例1]
 特許第5765505号の実施例1を参考に、(式C)に従って、以下の通り、チタン酸を作製した。
 但し、主原料、中和剤、その他実験器具は本発明の実施例1に従った。
 反応容器に4.8Lの純水を60℃に保ち、大気に曝した状態で、塩化チタン溶液2.4L(Ti:5.63mol)、中和剤のNaOH2.4L(NaOH/Cl=1.0mol比)を同時に滴下した。
 反応容器中の反応溶液を終始pH=1.7~2.3、温度60℃に保ち、2時間掛けて一定速度で塩化チタン溶液とNaOHを同時に滴下した。
滴下終了後のTi濃度は0.6mol/Lであった。
 得られたスラリーを水洗し、得られたケーキの1/6を120℃で乾燥して評価した。
 得られたケーキの乾燥物は、粉末X線回折法でアナターゼ型の酸化チタンであり、メタチタン酸であった。
 また、TiO・nHOと表したとき、nは0.5未満であった。即ち、本発明におけるオルトチタン酸とメタチタン酸の混合チタン酸ではなかった。
 但し、得られたケーキの乾燥物の不純物のNaは500ppm以下であり、高純度であったため、以下の通り第二工程を実施した。
 得られた残りの5/6のケーキを純水で解膠し、窒素雰囲気に曝して、85℃に昇温後、85℃に保った水酸化バリウム溶液と混合した。この時のBa/Ti=1.5mol比、Ti濃度は0.5mol/Lであった。窒素雰囲気下、85℃-3hでチタン酸バリウム含有スラリーを得た。得られたスラリーの2倍に沈降濃縮後、170℃-8時間で水熱処理を行った。
 実施例1と同様に、ろ過、水洗、ケーキ乾燥・粉砕を経て、チタン酸バリウム粒子粉末を得た。
 得られたチタン酸バリウム粒子粉末の平均一次粒子径は101nm、D95/D50の値は1.9であったので水系溶媒に対し易分散性と評価した。
 しかしながら、吸油量特性において最大トルクは高く、吸油量も比較的多く、二軸混練機の仕事は大きく、非水系溶媒に対し易分散性とは言い難かった。
[比較例2]
 水熱処理温度170℃を130℃に変更した以外、比較例1の条件で実施した。
 得られたチタン酸バリウム粒子粉末の吸油量特性において最大トルクは高く、吸油量も多く、二軸混練機の仕事は大きい特性であり、非水系溶媒に対し易分散性とは言い難かった。
[比較例3]
 特開2005-289668号公報の実施例6を参考にチタン酸バリウム粒子粉末を作製した。但し、主原料、中和剤、その他実験器具は本発明の実施例1に従った。
 Ti濃度0.5mol/L、反応溶液は10Lである。塩化チタン溶液をBa/Ti=1.5の条件の水酸化バリウム溶液で中和し、オルトチタン酸を得た。その後、Ba/Ti=1.5の条件の水酸化バリウム溶液と混合し、70℃-2時間で反応した。2倍に沈降濃縮したスラリーを200℃-8時間で水熱処理し、水洗、乾燥、粉砕を行った。得られたチタン酸バリウム粒子粉末の平均一次粒子径は96nm、D95/D50の値は2.0と低かったので、水系溶媒に対し易分散性であると評価した。
 しかしながら、吸油量特性において最大トルクは高く、吸油量も多く、二軸混練機の仕事は大きい特性であったので非水系溶媒に対し易分散性とは言い難かった。
[比較例4、5]
 特開2005-289668号公報の実施例1を参考にチタン酸バリウム粒子粉末を作製した。即ち、水酸化バリウムとメタチタン酸を主原料とし、比較例4は水熱処理温度190℃、比較例5は水熱処理温度170℃を採用した。
 得られたチタン酸バリウム粒子粉末の吸油量特性において最大トルクは高く、吸油量も多く、二軸混練機の仕事も大きい特性であり、非水系溶媒に対し易分散性とは言い難かった。
[比較例6、7]
 比較例6は水熱処理温度200℃を105℃に変更した以外、比較例3の条件で実施した。比較例7は比較例3において水熱処理をせず、水洗(ろ液電導度1mS/cm終点)、乾燥を経て得た。
 比較例7のD95/D50の値は18.3と高く、水系溶媒に対し易分散性とは言い難かった。
 比較例6及び7のチタン酸バリウム粒子粉末の吸油量特性において吸油量は多く、二軸混練機の仕事も大きい特性であり、非水系溶媒に対し易分散性とは言い難かった。
 合成条件を表1に、評価結果を表2に示す。
 吸油量と平均一次粒子径の関係を図4に示す。実施例と比較例を区別する、最大トルク時の吸油量=(36-0.08×平均一次粒子径)mL/100gの直線を点線で示した。
 実施例は点線の下に位置し、比較例が点線の上に位置することが分かる。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000001
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000002
 [MLCCのNi内部電極層の共材としての評価]
 実施例1、実施例2、及び比較例3で得られたチタン酸バリウム粒子粉末をNi内部電極層の共材として評価した。
 結果を表3に示す。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000003
 実施例1及び実施例2のNiペーストの粘度は、比較例3のNiペーストの粘度に比べ1割程度低下した。本発明に係る易分散性のチタン酸バリウム粒子粉末の共材がNiペーストの粘度を低下させたと推察している。
 Ni乾燥膜密度はいずれも5.1g/ccであったが、実施例1及び実施例2のNi乾燥膜の表面粗さは、比較例3のNi乾燥膜の表面粗さに比べ1割程度低下した。本発明に係る易分散性のチタン酸バリウム粒子粉末の共材がNiの分散性を向上させたと推察している。
 実施例1及び実施例2のNi乾燥膜の円板直径熱収縮率は600℃の低温から800℃の高温まで、2%~3%程度低い値を示し、焼結時のNiの熱収縮を抑制した。
 また、1200℃の焼成においても、実施例1及び実施例2の方が比較例3に比べ、熱収縮が低く、熱収縮特性に優れていた。これは、本発明に係る易分散性のチタン酸バリウム粒子粉末の共材がNi粒子により均一に分散した結果と推察している。
 実施例7と比較例6の同じ39m/gの試料をNi電極の共材として評価した。
 予備分散により、各々、チタン酸バリウム粒子粉末含有の分散体を得た。分散体中の試料分散状態を評価するため、塗膜化し、表面粗さを測った。
 実施例7と比較例6の分散体の塗膜表粗さは、各々、0.012μmと0.014μmであった。同一条件で作製された分散体の試料分散状態は、比較例6に比べ、実施例7の方が良かった。
 得られた実施例7と比較例6の各分散体を用い、Niペーストを作製した。
 実施例7の方が、比較例6に比べ、ペースト粘度が僅かに高かったものの、乾燥膜の密度が高く、表面粗さは低かった(表3)。実施例7の方が、比較例6に比べ、Ni粒子及び共材がお互いに良く分散していたためである。乾燥膜のSEM観察でも分散状態の違いは確認できた。表3記載の円板の直径熱収縮率の温度依存性から分かるように、実施例7の方が、比較例6に比べ、熱収縮が抑制されており、熱収縮特性に優れていた。
 実施例と比較例との比較により、本発明に係るチタン酸バリウム粒子粉末をMLCCのNi内部電極層の共材として用いると、機械的強度の高いMLCCが得られることが分かる。
 これらの結果は本発明に係るチタン酸バリウム粒子粉末において、バリウムとチタンの未反応物が限りなく少なく、さらには、前記粒子の表面の結晶性が高いためと推定している。
 本発明に係るチタン酸バリウム粒子粉末は、平均一次粒子径が20nm~150nmと微細であるが水系溶媒中の凝集粒子径の粒度分布は狭いため水系溶媒に対し易分散性であると共に吸油量特性のトルクは低いため非水系溶媒にも易分散性である。
 また、強熱減量が低く、高結晶性であるためMLCCのNi内部電極層の焼結時の粒成長抑制材や高容量のコンデンサー又は高透過率の光学フィルムの原料として好適に使用できるチタン酸バリウム粒子粉末である。
 したがって、本発明の産業上の利用可能性は高い。

Claims (9)

  1. 平均一次粒子径が20nm以上かつ150nm以下であり、水系溶媒における凝集粒子の累積頻度分布の50%径のD50及び95%径のD95で表されるD95/D50の値が5以下であり、吸油量特性の最大トルクが0.2N・m以下であるチタン酸バリウム粒子粉末。
  2.  前記吸油量特性における二軸混練機の仕事が40J/g以下である請求項1記載のチタン酸バリウム粒子粉末。
  3.  強熱減量が4.0wt%以下である請求項1又は2記載のチタン酸バリウム粒子粉末。
  4. 水溶媒における溶液反応によってオルトチタン酸とメタチタン酸の混合チタン酸を生成する第一工程と、60℃以上かつ105℃以下でバリウム化合物を混合してチタン酸バリウムを生成する第二工程を少なくとも有するチタン酸バリウム粒子粉末の製造方法。
  5. 前記第一工程が、塩化チタンと中和剤で生成したオルトチタン酸を50℃以上かつ85℃以下で脱水反応させてオルトチタン酸とメタチタン酸の混合チタン酸を生成する工程である請求項4記載のチタン酸バリウム粒子粉末の製造方法。
  6. 前記第一工程における混合チタン酸が含有する不純物元素は各々1000ppm以下である請求項4記載のチタン酸バリウム粒子粉末の製造方法。
  7. 混合チタン酸をTiO・nHOと表したとき、前記第一工程おける混合チタン酸のnは0.5≦n≦1.5である請求項4記載のチタン酸バリウム粒子粉末の製造方法。
  8. 平均一次粒子径が20nm以上かつ150nm以下であり、水系溶媒における凝集粒子の累積頻度分布の50%径のD50及び95%径のD95で表されるD95/D50の値が5以下であり、吸油量特性の最大トルク時の吸油量が(36-0.08×平均一次粒子径)mL/100g以下であるチタン酸バリウム粒子粉末。
  9. 請求項1又は8に記載のチタン酸バリウム粒子粉末を含む分散体。
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