JP6809649B2 - ハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料、着色組成物及びカラーフィルタ - Google Patents

ハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料、着色組成物及びカラーフィルタ Download PDF

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Description

本発明は、ハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料、着色組成物及びカラーフィルタに関する。
カラーフィルタは、バックライトの白色光を透過させることでディスプレイのカラー表示を実現する部材である。カラーフィルタの緑色画素部に対しては、高輝度化及び高色再現化の要求があり、普及が予測される高色再現ディスプレイの規格(AdobeRGB、DCI−P3等)への適合を可能とするカラーフィルタの検討がなされている。
高色再現化を実現する方法として、例えば、カラーフィルタの膜厚を厚くする方法がある。しかしながら、高輝度が求められるディスプレイ用途で主に用いられているC.I.ピグメントグリーン58等のハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料は着色力が十分でないため、これらの顔料を緑色画素部に使用する場合、上記規格で要求される設計色度では、画素部に必要な厚さが大きくなりすぎる傾向がある。そのため、上記顔料では、露光により十分に硬化した画素部を形成することが難しく、カラーフィルタの膜厚を厚くする方法は、高色再現化のための有効な方法であるとはいえない。このような理由から、高色再現性が求められるディスプレイ用途では、厚みが薄く、十分に硬化した画素部の形成を可能とする、着色力の高い緑色顔料が求められている。
本発明者らの研究の結果、ハロゲン化率が低いハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料が高い着色力を有しており、このような顔料を使用することで、高色再現ディスプレイの規格(AdobeRGB、DCI−P3等)における設計色度であっても、十分に厚みが薄い緑色画素部を形成できることが明らかになっている。例えば、特許文献1には、1分子中のハロゲン原子数が平均10〜14個、臭素原子数が平均8〜12個、塩素原子数が平均2〜5個であるハロゲン化亜鉛フタ口シアニンを使用することにより、輝度が高く、色再現域の広いカラーフィルタを提供することができることが開示されている。
国際公開2015/118720号パンフレット
しかしながら、上記先行技術には、高輝度化の点で更なる改良の余地がある。
そこで、本発明は、輝度及び着色力に優れ、高色再現用カラーフィルタに好適に用いられるハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料、並びに、当該顔料を用いた着色組成物及びカラーフィルタを提供することを目的とする。
本発明の一側面は、下記式(1)で表される化合物から構成されるハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料であって、化合物1分子中のハロゲン原子の数が平均8個以上13個以下であり、化合物1分子中の臭素原子の数が平均11個以下であり、化合物1分子中の塩素原子の数が平均2個未満である、ハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料に関する。
[式(1)中、X〜X16は、各々独立に、水素原子又はハロゲン原子を示す。]
これまで、カラーフィルタの設計においては、使用する顔料の質量が固定される場合が多く、カラーフィルタ中での顔料のモル数が多いほど、言い換えると顔料の平均分子量が小さいほど、顔料の発色が優れると考えられてきた。そのため、例えば特許文献1記載のハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料は、平均分子量を下げることを目的として、臭素原子よりも原子量の小さい塩素原子の数の平均が2個以上となるように設計されていた。しかしながら、本発明者らの検討の結果、驚くべきことに、臭素原子の数を平均11個以下とした場合において、塩素原子の数を2個未満とすることで、優れた輝度が得られることが明らかになった。
すなわち、上記本発明の一側面のハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料は、着色力に優れると共に、輝度にも優れるものである。そのため、上記ハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料によれば、高色再現ディスプレイの規格(AdobeRGB、DCI−P3等)における設計色度であっても、十分に厚みが薄く、当該設計色度において高輝度を示す緑色画素部を形成可能である。
本発明の他の一側面は、ハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料と、溶剤と、を含有する、着色組成物に関する。
本発明の他の一側面は、上記ハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料を含有する画素部を有する、カラーフィルタに関する。
本発明によれば、輝度及び着色力に優れ、高色再現用カラーフィルタに好適に用いられるハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料、並びに、当該顔料を用いた着色組成物及びカラーフィルタを提供することができる。
図1は、実施例及び比較例の顔料が単色で色再現可能なC光源での領域を示した図である。
<顔料及び顔料組成物>
一実施形態のハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料は、1種又はハロゲン原子数の異なる複数種のハロゲン化亜鉛フタロシアニン化合物から構成される。ハロゲン化亜鉛フタロシアニン化合物は、下記式(1)で表される構造を有する。
[式(1)中、X〜X16は、各々独立に、水素原子又はハロゲン原子を示す。]
ハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料において、式(1)で表される化合物1分子中のハロゲン原子の数の平均は8個以上13個以下である。すなわち、ハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料を構成する式(1)で表される化合物の分子数に対する、当該化合物が有するハロゲン原子数の総和の比が、8以上13以下である。また、ハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料において、式(1)で表される化合物1分子中の臭素原子の数の平均は11個以下であり、塩素原子の数の平均は2個未満である。
本実施形態のハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料は、上記のようなハロゲン原子組成を有するため、緑色顔料として優れた着色力を有すると共に、優れた輝度を有する。そのため、本実施形態のハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料によれば、高色再現ディスプレイの規格(AdobeRGB、DCI−P3等)における設計色度で十分に厚みが薄く、当該設計色度において高輝度を示す緑色画素部を形成することができる。なお、高色再現ディスプレイの規格で求められる設計色度は、例えば、C光源を使用した場合に、(x,y)=(0.210,0.670)である(特開2017−16132等参照。)。
本実施形態のハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料により上記効果が得られる理由を、本発明者らは次のように推察している。すなわち、ハロゲン化率の高いハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料では、ハロゲン原子の存在により分子周辺が混み合うことで立体的な効果が大きく吸収特性に影響する。そのため、ハロゲン原子のうち、塩素原子よりも原子半径の大きい臭素原子の透過スペクトルに及ぼす影響が、塩素原子の透過スペクトルに及ぼす影響よりも大きくなる。これに対し、ハロゲン化率の低いハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料では、吸収特性への立体的な効果の影響が弱まり、臭素原子よりも電子吸引性の強い塩素原子の吸収特性に及ぼす影響が、臭素原子の吸収特性に及ぼす影響よりも大きくなる。そのため、臭素原子数が平均11個以下であり、かつ、塩素原子数が平均2個以上であると、塩素原子の置換数及び置換位置が異なる化合物が多様に存在することとなり、スペクトルのブロード化が起こる。その結果、ハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料の輝度が低下し、また、着色力が低下すると推察される。一方、本実施形態のハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料では、塩素原子数が2個未満であることで、上記のようなスペクトルのブロード化が抑制され、優れた輝度と着色力が得られると推察される。
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられる。ハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料は、ハロゲン原子として、臭素原子及び塩素原子の少なくとも一方を有することが好ましく、臭素原子を有することが好ましい。ハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料は、ハロゲン原子として、塩素原子及び臭素原子の一方又は両方のみを有していてもよい。すなわち、上記式(1)中のX〜X16は、塩素原子又は臭素原子であってよい。
ハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料における、式(1)で表される化合物1分子中のハロゲン原子の数の平均は、着色力を更に高める観点から、好ましくは12.5個以下であり、より好ましくは12個以下である。ハロゲン原子の数の平均は、更に優れた輝度が得られる観点から、好ましくは9個以上であり、より好ましくは10個以上である。上述の上限値及び下限値は、任意に組み合わせることができる。例えば、ハロゲン原子の数の平均は、9〜12.5個又は10〜12個であってよい。なお、以下の同様の記載においても、個別に記載した上限値及び下限値は任意に組み合わせ可能である。
ハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料における、式(1)で表される化合物1分子中の臭素原子の数の平均は、更に優れた輝度及び着色力が得られる観点から、好ましくは10.6個以下であり、より好ましくは10.2個以下である。臭素原子の数の平均は、更に優れた輝度が得られる観点から、好ましくは8個以上であり、より好ましくは9個以上である。臭素原子の数の平均は、9.3個以上であってもよい。
ハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料における、式(1)で表される化合物1分子中の塩素原子の数の平均は、更に優れた輝度及び着色力が得られる観点から、好ましくは1.9個以下であり、より好ましくは1.5個以下であり、更に好ましくは1.3個以下である。塩素原子の数の平均は、更に優れた輝度が得られる観点から、好ましくは0.1個以上であり、より好ましくは0.3個以上であり、更に好ましくは0.6個以上であり、特に好ましくは0.8個以上であり、極めて好ましくは1個以上であり、より一層好ましくは1.3個以上である。
上述した観点から、臭素原子の数の平均が8個以上11個以下であり、塩素原子の数の平均が0.1個以上2個未満であることが好ましい。
上記ハロゲン原子の数(例えば、臭素原子の数及び塩素原子の数)は、蛍光X線分析により測定することができる。具体的には、ハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料における、亜鉛原子と各ハロゲン原子の質量比から、亜鉛原子1個あたりの相対値として、各ハロゲン原子の数を算出することができる。
ハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料は、一又は複数の粒子から構成される。ハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料の一次粒子の平均粒子径(平均一次粒子径)は、0.01μm以上、0.015μm以上又は0.02μm以上であってよい。ハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料の平均一次粒子径は、0.20μm以下、0.10μm以下又は0.07μm以下であってよい。ここで、平均一次粒子径は、一次粒子の長径の平均値であり、後述する平均アスペクト比の測定と同様にして一次粒子の長径を測定することにより求めることができる。
ハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料の一次粒子の平均アスペクト比は、より優れたコントラストが得られる観点から、1.0以上、1.2以上、1.3以上、1.4以上又は1.5以上であってもよい。ハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料の一次粒子の平均アスペクト比は、より優れたコントラストが得られる観点から、3.0以下、2.0未満、1.8以下、1.6以下又は1.4以下であってもよい。
一次粒子の平均アスペクト比が1.0〜3.0の範囲にあるハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料は、アスペクト比が5以上の一次粒子を含まないことが好ましく、アスペクト比が4以上の一次粒子を含まないことがより好ましく、アスペクト比が3を超える一次粒子を含まないことが更に好ましい。
一次粒子のアスペクト比及び平均アスペクト比は、以下の方法で測定することができる。まず、透過型電子顕微鏡(例えば日本電子株式会社製のJEM−2010)で視野内の粒子を撮影する。そして、二次元画像上に存在する一次粒子の長い方の径(長径)と、短い方の径(短径)とを測定し、短径に対する長径の比を一次粒子のアスペクト比とする。また、一次粒子40個につき長径と、短径の平均値を求め、これらの値を用いて短径に対する長径の比を算出し、これを平均アスペクト比とする。この際、試料であるハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料は、これを溶媒(例えばシクロヘキサン)に超音波分散させてから顕微鏡で撮影する。また、透過型電子顕微鏡の代わりに走査型電子顕微鏡を使用してもよい。
本実施形態のハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料は、例えば、ハロゲン化亜鉛フタロシアニン化合物から構成される粗顔料(以下、ハロゲン化亜鉛フタロシアニン粗顔料という)を形成する工程と、当該粗顔料を顔料化する工程と、を備える方法により得られる。
ハロゲン化亜鉛フタロシアニン粗顔料を形成する工程は、クロロスルホン酸法、ハロゲン化フタロニトリル法、溶融法等の公知の製造方法によりハロゲン化亜鉛フタロシアニン化合物を合成する工程を含んでいてよい。
クロロスルホン酸法としては、亜鉛フタロシアニンを、クロロスルホン酸等の硫黄酸化物系の溶媒に溶解し、これに塩素ガス、臭素を仕込みハロゲン化する方法が挙げられる。この際の反応は、例えば、温度20〜120℃かつ3〜20時間の範囲で行われる。
ハロゲン化フタロニトリル法としては、例えば、芳香環の水素原子の一部又は全部が臭素の他、塩素等のハロゲン原子で置換されたフタル酸又はフタロジニトリルと、亜鉛の金属又は金属塩を適宜出発原料として使用して、対応するハロゲン化亜鉛フタロシアニン化合物を合成する方法が挙げられる。この場合、必要に応じてモリブデン酸アンモニウム等の触媒を用いてもよい。この際の反応は、例えば、温度100〜300℃かつ7〜35時間の範囲で行われる。
溶融法としては、塩化アルミニウム、臭化アルミニウム等のハロゲン化アルミニウム、四塩化チタン等のハロゲン化チタン、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム等のアルカリ金属ハロゲン化物又はアルカリ土類金属ハロゲン化物(以下、アルカリ(土類)金属ハロゲン化物という)、塩化チオニルなど、各種のハロゲン化の際に溶媒となる化合物の一種又は二種以上の混合物からなる10〜170℃程度の溶融物中で、亜鉛フタロシアニンをハロゲン化剤にてハロゲン化する方法が挙げられる。
好適なハロゲン化アルミニウムは、塩化アルミニウムである。ハロゲン化アルミニウムを用いる上記方法における、ハロゲン化アルミニウムの添加量は、亜鉛フタロシアニンに対して、通常は、3倍モル以上であり、好ましくは10〜20倍モルである。
ハロゲン化アルミニウムは単独で用いてもよいが、アルカリ(土類)金属ハロゲン化物をハロゲン化アルミニウムに併用すると溶融温度をより下げることができ、操作上有利になる。好適なアルカリ(土類)金属ハロゲン化物は、塩化ナトリウムである。加えるアルカリ(土類)金属ハロゲン化物の量は溶融塩を生成する範囲内でハロゲン化アルミニウム10質量部に対してアルカリ(土類)金属ハロゲン化物が5〜15質量部が好ましい。
ハロゲン化剤としては、塩素ガス、塩化スルフリル、臭素等が挙げられる。
ハロゲン化の温度は10〜170℃が好ましく、30〜140℃がより好ましい。さらに、反応速度を速くするため、加圧することも可能である。反応時間は、5〜100時間であってよく、好ましくは30〜45時間である。
前記化合物の二種以上を併用する溶融法は、溶融塩中の塩化物と臭化物とヨウ化物の比率を調節したり、塩素ガス、臭素、ヨウ素等の導入量及び反応時間を変化させたりすることによって、生成するハロゲン化亜鉛フタロシアニン化合物中における特定ハロゲン原子組成のハロゲン化亜鉛フタロシアニン化合物の含有比率を任意にコントロールすることができるため好ましい。また、溶融法によれば、反応中の原料の分解が少なく原料からの収率がより優れ、強酸を用いず安価な装置にて反応を行うことができる。
本実施形態では、原料仕込み方法、触媒種及びその使用量、反応温度並びに反応時間の最適化により、既存のハロゲン化亜鉛フタロシアニン化合物とは異なるハロゲン原子組成のハロゲン化亜鉛フタロシアニン化合物を得ることができる。
上記いずれの方法であっても、反応終了後、得られた混合物を水又は塩酸等の酸性水溶液中に投入し、生成したハロゲン化亜鉛フタロシアニン化合物を沈殿させることで、ハロゲン化亜鉛フタロシアニン粗顔料を得ることができる。ハロゲン化亜鉛フタロシアニン粗顔料としては、これをそのまま用いてもよいが、その後、濾過、水又は硫酸水素ナトリウム水、炭酸水素ナトリウム水、水酸化ナトリウム水洗浄、必要に応じてアセトン、トルエン、メチルアルコール、エチルアルコール、ジメチルホルムアミド等の有機溶剤洗浄を行い、乾燥等の後処理を行ってから用いることが好ましい。ハロゲン化亜鉛フタロシアニン粗顔料を、必要に応じてアトライター、ボールミル、振動ミル、振動ボールミル等の粉砕機内で乾式磨砕してから用いてもよい。
上記工程で得られるハロゲン化亜鉛フタロシアニン粗顔料は、ハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料と同様の組成を有する。
ハロゲン化亜鉛フタロシアニン粗顔料を顔料化する工程では、例えば、ハロゲン化亜鉛フタロシアニン粗顔料を混練することで磨砕し、ハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料を得る。ハロゲン化亜鉛フタロシアニン粗顔料を顔料化する工程は、ハロゲン化亜鉛フタロシアニン粗顔料を、無機塩及び有機溶剤と共に混練する工程であってもよい。混練は、例えばニーダー、ミックスマーラー等を用いて行うことができる。
無機塩としては、水溶性無機塩が好適に用いられる。例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム等の無機塩が好ましく用いられる。無機塩の平均粒子径は、好ましくは0.5〜50μmである。このような無機塩は、通常の無機塩を微粉砕することにより容易に得られる。
上述した範囲の平均一次粒子径を有する顔料が得られやすい点で、粗顔料の使用量に対する無機塩の使用量を多くすることが好ましい。具体的には、無機塩の使用量は、粗顔料1質量部に対して5〜20質量部が好ましく、7〜15質量部がより好ましい。
有機溶剤には、粗顔料及び無機塩を溶解しないものを用いることができる。有機溶剤としては、結晶成長を抑制し得る有機溶剤を使用することが好ましい。このような有機溶媒としては水溶性有機溶剤が好適に使用できる。有機溶剤としては、例えばジエチレングリコール、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコール、液体ポリプロピレングリコール、2−(メトキシメトキシ)エタノール、2−ブトキシエタノール、2−(イソペンチルオキシ)エタノール、2−(ヘキシルオキシ)エタノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル等を用いることができる。有機溶剤(例えば水溶性有機溶剤)の使用量は、特に限定されるものではないが、粗顔料1質量部に対して0.01〜5質量部が好ましい。
無機塩及び有機溶剤を用いる場合、ハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料と、無機塩と、有機溶剤とを含む混合物が得られるが、この混合物から有機溶剤と無機塩を除去し、必要に応じてハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料を主体とする固形物に対して洗浄、濾過、乾燥、粉砕等の操作を行ってもよい。
洗浄としては、水洗、湯洗のいずれも採用できる。洗浄は、1〜5回の範囲で繰り返し行ってよい。水溶性無機塩及び水溶性有機溶剤を用いた場合は、水洗することで容易に有機溶剤と無機塩を除去することができる。必要であれば、酸洗浄、アルカリ洗浄、有機溶剤洗浄を行ってもよい。
上記洗浄及び濾過後の乾燥としては、例えば、乾燥機に設置した加熱源による80〜120℃の加熱等により、顔料の脱水及び/又は脱溶剤をする回分式或いは連続式の乾燥等が挙げられる。乾燥機としては、一般に、箱型乾燥機、バンド乾燥機、スプレードライヤー等が挙げられる。特に、スプレードライヤーを用いるスプレードライ乾燥はペースト作製時に易分散であるため好ましい。また、乾燥後の粉砕は、比表面積を大きくしたり、一次粒子の平均粒子径を小さくしたりするための操作ではなく、例えば箱型乾燥機、バンド乾燥機を用いた乾燥の場合のように顔料がランプ状等となった際に顔料を解して粉末化するために行うものである。例えば、乳鉢、ハンマーミル、ディスクミル、ピンミル、ジェットミル等による粉砕などが挙げられる。
上記方法では、粗顔料を顔料化する際に、樹脂を共存させてもよい。顔料化の際に樹脂を共存させることで、粒子の活性面(活性成長面)が樹脂によって安定化される。これにより、粒子成長の方向の偏りが緩和されるため、平均アスペクト比の小さい顔料を容易に得ることができる。このような顔料を用いることで、画素部のコントラストを向上させることができる。この方法においてハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料は、ハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料を被覆する樹脂(以下、被覆樹脂ともいう)との混合物として得られる。そのため、この方法は、ハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料と、被覆樹脂と、を含む顔料組成物の製造方法と言い換えることができる。
樹脂を共存させる方法において、ハロゲン化亜鉛フタロシアニン粗顔料を顔料化する工程は、ハロゲン化亜鉛フタロシアニン粗顔料を樹脂と共に混練する工程であってよく、ハロゲン化亜鉛フタロシアニン粗顔料を、樹脂、無機塩及び有機溶剤と共に混練する工程であってもよい。
無機塩及び有機溶剤を用いる場合には、上記と同様に、ハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料と、樹脂と、無機塩と、有機溶剤とを含む混合物から有機溶剤と無機塩を除去した後、必要に応じてハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料と樹脂とを主体とする固形物に対して、洗浄、濾過、乾燥、粉砕等の操作を行ってよい。
樹脂としては、酸性基を有する樹脂、例えば、酸性基を有する重合体を含む樹脂が好ましく用いられる。酸性基が活性面(活性成長面)への相互作用を発現するため、樹脂が酸性基を有することで、一次粒子の平均アスペクト比が小さい顔料を容易に得ることができる。酸性基としては、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、及びそのアンモニウム塩基等が挙げられる。これらの中でも、より優れたコントラストが得られやすくなる観点から、カルボキシル基が好ましい。
樹脂は、1種又は複数種の重合体を含む。重合体としては、例えば、ビニル系重合体が挙げられる。ビニル系重合体は、ビニル基を有するモノマー(ビニル系モノマー)をモノマー単位として含んでいる。ビニル系重合体は、より優れたコントラストが得られやすくなる観点から、好ましくは酸性基を有し、より好ましくはカルボキシル基を有する。
ビニル系モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリレート系モノマー、スチレン系モノマー、ビニルエーテル系モノマー、含窒素モノマー、(ハロゲン置換)炭化水素系モノマー等が挙げられる。なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート、及び、それに対応するメタクリレートの少なくとも一方を意味する。ビニル系重合体は、ビニル系モノマーの中でも、(メタ)アクリレート系モノマーをモノマー単位として含むことが好ましい。すなわち、ビニル系重合体は、好ましくは(メタ)アクリレート系重合体である。
(メタ)アクリレート系モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、iso−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、ネオペンチル(メタ)アクリレート、iso−ペンチル(メタ)アクリレート、sec−ペンチル(メタ)アクリレート、3−ペンチル(メタ)アクリレート、tert−ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ラウリル(メタ)アクリレート、n−ステアリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、べヘニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、tert−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、エチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソプロピルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘプチル(メタ)アクリレート、シクロオクチル(メタ)アクリレート、シクロノニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、シクロデシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールベンゾエート(メタ)アクリレート、パラクミルフェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−フェノキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールベンゾエート(メタ)アクリレート、フェニルフェノール(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、ナフチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシブチル(メタ)アクリレート、4,5−エポキシペンチル(メタ)アクリレート、6,7−エポキシペンチル(メタ)アクリレート、β−メチルグリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
重合体がモノマー単位として含むモノマーは、1種であっても複数種であってもよい。例えば、重合体は、(メタ)アクリレート系モノマーと、(メタ)アクリレート系モノマーとは異なる他のビニル系モノマーとを、それぞれモノマー単位として含むものであってよい。すなわち、重合体は、(メタ)アクリレート系モノマーと、他のビニル系モノマーとの共重合体であってよい。他のビニル系モノマーは、酸性基を有するモノマーであってよく、例えば、(メタ)アクリル酸であってよい。他のビニル系モノマーは、例えば、(メタ)アクリロニトリル等のニトロ基含有ビニル系モノマー類、スチレン、α−メチルスチレン等のビニル系芳香族モノマー類、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、ジメチロール(メタ)アクリルアミド又はダイアセトンアクリルアミド等のアミド基含有ビニル系モノマー類、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、又はN−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド等のアルコキシメチル基含有ビニル系モノマー類、エチレン、プロピレン、又はイソプレン等のオレフィン類、クロロプレン、又はブタジエン等のジエン類、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、又はイソブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類、酢酸ビニル、又はプロピオン酸ビニル等の脂肪酸ビニル類、3−(メタ)アリルオキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸、2−(メタ)アリルオキシエチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、p−スチレンスルホン酸、α−メチル−p−スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、ビニルスルファミン酸、(メタ)アリルスルホン酸、イソプレンスルホン酸、4−(アリルオキシ)ベンゼンスルホン酸、1−メチル−2−プロペン−1−スルホン酸、1,1−ジメチル−2−プロペン−1−スルホン酸、3−ブテン−1−スルホン酸、1−ブテン−3−スルホン酸、2−アクリルアミド−1−メチルプロパンスルホン酸、2−アクリルアミドプロパンスルホン酸、2−アクリルアミド−n−ブタンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−フェニルプロパンスルホン酸、2−((メタ)アクリロイルオキシ)エタンスルホン酸等の不飽和スルホン酸類などであってもよい。
ビニル系重合体中の(メタ)アクリレート系モノマーの含有量は、カラーフィルタの輝度を低下させない程度に、(メタ)アクリレート系重合体の長所である高い透明性を発現できる観点から、ビニル系重合体に含まれる全モノマー単位の質量を基準として、好ましくは90質量%以上であり、92質量%以上又は94質量%以上であってもよい。ビニル系重合体中の(メタ)アクリレート系モノマーの含有量は、(メタ)アクリレート系重合体の短所である耐熱性を他のビニル系モノマーで補う観点から、ビニル系重合体に含まれる全モノマー単位の質量を基準として、99質量%以下、97質量%以下又は95質量%以下であってよい。
樹脂中のビニル系重合体の含有量は、樹脂の全質量を基準として、90質量%以上であってよく、100質量%であってもよい。樹脂中の(メタ)アクリレート系重合体の含有量は、樹脂の全質量を基準として、90質量%以上であってよく、100質量%であってもよい。
樹脂の酸価は、より優れたコントラストが得られやすくなる観点から、好ましくは50mgKOH/g以上であり、より好ましくは70mgKOH/g以上であり、更に好ましくは90mgKOH/g以上である。樹脂の酸価は、現像性を担保する観点から、150mgKOH/g以下、170mgKOH/g以下又は200mgKOH/g以下であってよい。樹脂がビニル系重合体を含む場合、ビニル系重合体の酸価が上記範囲であってもよく、(メタ)アクリレート系重合体の酸価が上記範囲であってもよい。
上記酸価は、樹脂pg及びフェノールフタレイン試液1mlを、トルエンとエタノールとを体積比1:1で混合した混合溶液50mlに溶解させた試料液を準備し、0.1mol/Lエタノール製水酸化カリウム溶液(水酸化カリウム7.0gを蒸留水5.0mlに溶解させ、95vol%エタノールを加えることで1000mlに調整したもの)にて試料液が淡紅色を呈するまで滴定を行い、次式により算出できる。
酸価=q×r×5.611/p
式中、qは滴定に要した0.1mol/Lエタノール製水酸化カリウム溶液の滴定量(ml)を示し、rは滴定に要した0.1mol/Lエタノール製水酸化カリウム溶液の力価を示し、pは樹脂の質量(g)を示す。
樹脂の重量平均分子量は、ディスプレイ製造工程における200℃付近での加熱時に揮発しないようにする観点から、好ましくは4000以上であり、8000以上、10000以上又は15000以上であってもよい。樹脂の重量平均分子量は、顔料表面を効率的に被覆する観点から、20000以下、18000以下又は17000以下であってよい。樹脂がビニル系重合体を含む場合、ビニル系重合体の重量平均分子量が上記範囲であってもよく、(メタ)アクリレート系重合体の重量平均分子量が上記範囲であってもよい。なお、上記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフによるポリスチレン換算の重量平均分子量である。
樹脂のガラス転移温度(Tg)は、保管時の安定性を担保する観点から、好ましくは40℃以上であり、45℃以上又は50℃以上であってもよい。樹脂のガラス転移温度(Tg)は、現像性を担保する観点と、工業的原料を容易に入手する観点から、200℃以下、95℃以下又は65℃以下であってもよい。樹脂がビニル系重合体を含む場合、ビニル系重合体のガラス転移温度(Tg)が上記範囲であってもよく、(メタ)アクリレート系重合体のガラス転移温度(Tg)が上記範囲であってもよい。上記ガラス転移温度(Tg)は、熱示差分析(DSC)によって測定することができる。
これらの観点から、カルボキシル基を有するビニル系重合体を含み、酸価が50mgKOH/g以上である樹脂が好ましい。また、(メタ)アクリレート系モノマーをビニル系重合体に含まれる全モノマー単位の質量基準で90質量%以上含み、かつ、酸性基を有する(メタ)アクリレート系重合体を含み、ゲルパーミエーションクロマトグラフによるポリスチレン換算の重量平均分子量が4000以上であり、ガラス転移温度が40℃以上である樹脂が好ましい。
樹脂の使用量は、顔料を十分に被覆することができ、コントラストをより向上させやすくなる観点から、粗顔料100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上であり、0.5質量部以上、1.0質量部以上又は1.5質量部以上であってもよい。樹脂の使用量は、より優れた着色力を有する顔料が得られやすい観点及びコントラストをより向上させやすくなる観点から、粗顔料100質量部に対して、好ましくは10質量部以下であり、7.0質量部以下、5.0質量部以下、3.5質量部以下又は3.0質量部以下であってもよい。樹脂の使用量は、例えば、粗顔料100質量部に対して、0.1〜10質量部、0.5〜7.0質量部、1.0〜5.0質量部、1.0〜3.5質量部又は1.5〜3.0質量部である。本実施形態では、酸性基を有する重合体の使用量が上記範囲であることが好ましい。
次に、一実施形態の顔料組成物について説明する。
一実施形態の顔料組成物は、上述したハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料を少なくとも含有する。顔料組成物中のハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料の含有量は、顔料組成物の全質量を基準として、85質量%以上、90質量%以上又は95質量%以上であってよい。顔料組成物中のハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料の含有量は、顔料組成物の全質量を基準として、99質量%以下、98質量%以下又は96質量%以下であってよい。
顔料組成物は、ハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料を被覆する樹脂(被覆樹脂)を更に含有してよい。この場合、ハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料は、樹脂によって完全に被覆されていることが好ましいが、顔料の一部は、樹脂によって被覆されていなくてもよい。すなわち、ハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料が樹脂によって被覆されている場合、ハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料は、樹脂によって少なくとも一部が被覆された粒子を含んでいればよく、樹脂によって完全に被覆された粒子のみからなっていてよく、樹脂によって一部が被覆され、一部が露出した状態の粒子のみからなっていてもよく、これらの混合物であってもよい。また、ハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料中には、樹脂によって完全に被覆されていない粒子が存在してもよい。
被覆樹脂は、ハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料の製造に使用される上述した樹脂であってよい。顔料組成物中の被覆樹脂の含有量は、コントラストをより向上させやすくなる観点から、ハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上であり、0.5質量部以上、1.0質量部以上又は1.5質量部以上であってもよい。顔料組成物中の被覆樹脂の含有量は、着色力により優れる観点及びコントラストをより向上させやすくなる観点から、ハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料100質量部に対して、好ましくは10質量部以下であり、7.0質量部以下、5.0質量部以下、3.5質量部以下又は3.0質量部以下であってもよい。顔料組成物中の被覆樹脂の含有量は、例えば、ハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料100質量部に対して、0.1〜10質量部、0.5〜7.0質量部、1.0〜5.0質量部、1.0〜3.5質量部又は1.5〜3.0質量部である。本実施形態では、酸性基を有する重合体の含有量が上記範囲であることが好ましい。
顔料組成物は、上述したハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料及び被覆樹脂以外の他の成分を更に含有してよい。他の成分としては、例えば、公知のフタロシアニン誘導体等が挙げられる。他の成分は、例えば、粗顔料を樹脂と共に顔料化する工程で添加されてよく、ハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料を得た後に添加されてもよい。
顔料組成物は、溶剤を実質的に含まず、例えば固体状(例えば粉末状)である。顔料組成物中の溶剤の含有量は、例えば、0質量%以上1.0質量%以下である。顔料組成物を溶剤中に分散させることで、顔料分散体である着色組成物を形成することができる。
以上説明したハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料及びこれを含有する顔料組成物は、従来の高ハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料ほど、黄味の色相ではなく、青味の色相に特異性のあるものであり、従来の高ハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料では、達成できなかった色相を表現できるものである。例えば、ハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料は、膜厚1.5μm〜2.4μmの塗膜としたときに、単体でC光源を使用して測色した時のCIEのXYZ表色系において、下記式(1)〜(4)で囲まれるxy色度座標領域を表示できるものであり、より好ましくは下記式(1)及び(5)〜(7)で囲まれるxy色度座標領域を表示できるものであり、更に好ましくは下記式(1)及び(8)〜(10)で囲まれるxy色度座標領域を表示できるものである。上記塗膜は、具体的には、次の方法で形成することができる。まず、ハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料2.48g(ハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料が上記被覆樹脂によって被覆されている場合、ハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料及び被覆樹脂の合計量2.48g)を、BYK−LPN6919(ビックケミー社製、商品名、固形分:60質量%)1.24g、ユニディックZL−295(DIC株式会社製、商品名、固形分:40質量%)1.86g及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート10.92gと共に0.3〜0.4mmのジルコンビーズを用いて2時間分散して顔料分散体とする。得られた顔料分散体4.0gにユニディックZL−295(DIC株式会社製、商品名、固形分:40質量%)0.98g及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート0.22gを加えて、ペイントシェーカーで混合することで塗液とする。次いで、塗液をソーダガラス基板上にスピンコートし、90℃で3分乾燥した後に、230℃で1時間加熱することで塗膜を形成することができる。色度は、例えば、株式会社日立ハイテクサイエンス製の分光光度計(U−3900)を用いて測定される値である。
式(1):y=−1.766x+0.628
(式中、xは、0.11<x<0.17である。)
式(2):y=2.477x+0.161
(式中、xは、0.11<x<0.17である。)
式(3):y=−3.498x+1.177
(式中、xは、0.17<x<0.21である。)
式(4):y=2.865x−0.159
(式中、xは、0.17<x<0.21である。)
式(5):y=2.477x+0.161
(式中、xは、0.11<x<0.16である。)
式(6):y=−3.583x+1.131
(式中、xは、0.16<x<0.20である。)
式(7):y=2.865x−0.159
(式中、xは、0.17<x<0.20である。)
式(8):y=2.477x+0.161
(式中、xは、0.11<x<0.15である。)
式(9):y=−3.680x+1.085
(式中、xは、0.15<x<0.19である。)
式(10):y=2.865x−0.159
(式中、xは、0.17<x<0.19である。)
本実施形態のハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料及びこれを含有する顔料組成物は公知慣用の用途に使用可能であり、カラーフィルタ用や、塗料、プラスチック、印刷インク、ゴム、レザー、捺染、電子トナー、ジェットインキ、熱転写インキなどの着色用に適する。この中でも、カラーフィルタ用の緑色顔料及び緑色顔料組成物、特にカラーフィルタが有する緑色画素部に用いられる緑色顔料及び緑色顔料組成物として好適に用いられる。
上述したとおり、本実施形態のハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料は、ハロゲン原子の数が平均8個以上13個以下であり、臭素原子の数が平均11個以下であり、塩素原子の数が平均2個未満であるため、着色力に優れると共に輝度にも優れる。そのため、本実施形態のハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料及びこれを含有する顔料組成物は、上記のようなxy色度座標領域を表示できるものであり、当該顔料及び顔料組成物によれば、高色再現ディスプレイの規格(AdobeRGB、DCI−P3等)における設計色度であっても、十分に厚みが薄く、高輝度を示す緑色画素部を形成することができる。
また、本実施形態のハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料及びこれを含有する顔料組成物をカラーフィルタの緑色画素部の形成に用いる場合、特段に黄色顔料を調色のために併用する必要がなく、併用するにしてもより少量で済む。その結果、380〜780nmの全域における光透過率の低下も最小限に防止できる。
<着色組成物>
一実施形態の着色組成物は、上述したハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料と、溶剤と、を少なくとも含有する。
着色組成物は、ハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料を被覆する樹脂(被覆樹脂)を更に含有してよい。被覆樹脂の種類及び含有量は、上述した顔料組成物に含まれる被覆樹脂として説明した樹脂と同じであってよく、好ましい態様も同じである。
溶剤としては、有機溶剤が好ましい。有機溶剤としては、例えばトルエンやキシレン、メトキシベンゼン等の芳香族系溶剤、酢酸エチルや酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の酢酸エステル系溶剤、エトキシエチルプロピオネート等のプロピオネート系溶剤、メタノール、エタノール等のアルコール系溶剤、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、ヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶剤、N,N−ジメチルホルムアミド、γ−ブチロラクタム、N−メチル−2−ピロリドン、アニリン、ピリジン等の窒素化合物系溶剤、γ−ブチロラクトン等のラクトン系溶剤、カルバミン酸メチルとカルバミン酸エチルの48:52の混合物等のカルバミン酸エステルなどが挙げられる。有機溶剤は、好ましくは、極性を有し水に可溶な溶剤であり、より好ましくは、プロピオネート系溶剤、アルコール系溶剤、エーテル系溶剤、ケトン系溶剤、窒素化合物系溶剤、又はラクトン系溶剤である。
溶剤の含有量は、顔料の合計量100質量部に対して、300質量部以上であってよく、1000質量部以下であってよい。
着色組成物は、必要ならば、経済性を考慮して、ハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料以外の有機顔料、有機染料、有機顔料誘導体等を更に含有していてもよい。有機顔料としては、公知慣用の緑色ハロゲン化銅フタロシアニン、その他の緑色ハロゲン化異種金属フタロシアニン顔料等の緑色ハロゲン化金属フタロシアニン顔料を用いることができる。また、調色用の黄色顔料を用いてもよい。黄色顔料としては、例えばC.I.ピグメントイエロー83、同110、同129、同138、同139、同150、同180、同185、同231等の黄色有機顔料が挙げられる。ハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料と黄色顔料との併用割合は、例えば、ハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料100質量部あたり、黄色顔料が1〜400質量部である。有機顔料誘導体は、例えば、公知の有機顔料の一部が、スルホン酸基、カルボキシル基、アミノ基、フタルイミドメチル基等で修飾(置換)された誘導体であってよい。具体的には、例えば、Solsperse(登録商標名)5000、同12000、同22000(ルーブリゾール株式会社製)等が挙げられる。
着色組成物は、上記以外の成分として、分散剤を更に含有していてもよい。分散剤には、アミン価を有する樹脂等の公知慣用の分散剤を用いることができる。分散剤としては、例えばANTI−TERRA(登録商標名)U/U100、同204、DISPERBYK(登録商標名)106、同108、同109、同112、同130、同140、同142、同145、同161、同162、同163、同164、同167、同168、同180、同182、同183、同184、同185、同2000、同2001、同2008、同2009、同2013、同2022、同2025、同2026、同2050、同2055、同2150、同2155、同2163、同2164、同9076、同9077、BYK LPN−6919、同21116、同21324、同22102(ビックケミー株式会社製)、EFKA(登録商標名)46、同47、同4010、同4020、同4320、同4300、同4330、同4401、同4570、同5054、同7461、同7462、同7476、同7477(BASF株式会社製)、アジスパー(登録商標名)PB814、同821、同822、同881(味の素ファインテクノ株式会社製)、Solsperse(登録商標名)24000、同28000、同37500、同76500(ルーブリゾール株式会社製)等が挙げられる。分散剤の含有量は、顔料の合計量100質量部に対して、5質量部以上であってよく、120質量部以下であってよい。
着色組成物は更に、上記以外の成分として、レベリング剤、カップリング剤、カチオン系のロジン、界面活性剤、バインダー樹脂、感光性の化合物(例えば感光性樹脂)、硬化性樹脂等を更に含有していてもよい。
感光性の化合物を含有する着色組成物は、感光性着色組成物ということもできる。感光性の化合物としては、例えばウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド酸系樹脂、ポリイミド系樹脂、スチレンマレイン酸系樹脂、スチレン無水マレイン酸系樹脂等の熱可塑性樹脂や、例えば1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ビス(アクリロキシエトキシ)ビスフェノールA、3−メチルペンタンジオールジアクリレート等の2官能モノマー、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリス−(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等の多官能モノマーなどの光重合性モノマーなどが挙げられる。
感光性着色組成物は、光重合開始剤を更に含有してもよい。光重合開始剤としては、例えばアセトフェノン、ベンゾフェノン、ベンジルジメチルケタノール、ベンゾイルパーオキサイド、2−クロロチオキサントン、1,3−ビス(4’−アジドベンザル)−2−プロパン、1,3−ビス(4’−アジドベンザル)−2−プロパン−2’−スルホン酸、4,4’−ジアジドスチルベン−2,2’−ジスルホン酸等が挙げられる。
感光性着色組成物の製造方法は特に限定されないが、ハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料又はこれを含有する顔料組成物と、溶剤と、必要に応じて分散剤と、を用いて分散液(着色組成物)を調製してから、そこに感光性の化合物等を加えて調製する方法が一般的である。この場合、感光性樹脂の含有量は、上記の分散液100質量部に対して、3質量部以上であってよく、20質量部以下であってよい。光重合開始剤の含有量は、感光性樹脂1質量部に対して、0.05質量部以上であってよく、3質量部以下であってよい。
調色用の黄色顔料等を用いる場合、例えば、黄色顔料と、溶剤と、必要に応じて分散剤と、を用いて分散液を調製してから、ハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料を含む分散液と、黄色顔料を含む分散液と、感光性の化合物等と、を混合することで感光性着色組成物を調製してよい。また、ハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料を含む分散液に感光性の化合物等を加えて緑色調色用組成物を調製し、黄色顔料を含む分散液に感光性の化合物等を加えて黄色調色用組成物を調製し、この緑色調色用組成物と黄色調色用組成物とを混合することで感光性着色組成物を調製してもよい。
<カラーフィルタ>
一実施形態のカラーフィルタは、ハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料を含有する画素部を有する。カラーフィルタは、典型的には、赤色画素部と、青色画素部と、緑色画素部と、を有している。上記ハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料を含有する画素部は、好ましくは緑色画素部である。この場合、緑色画素部の厚さは、例えば、3.6μm以下である。
画素部は、ハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料を被覆する樹脂(被覆樹脂)を更に含有してよい。被覆樹脂の種類及び含有量は、上述した顔料組成物に含まれる樹脂として説明した樹脂と同じであってよく、好ましい態様も同じである。
ハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料を含有する画素部は、上述の着色組成物(感光性着色組成物)から容易に形成することができる。具体的な方法としては、例えば、着色組成物(感光性着色組成物)を、スピンコート法、ロールコート法、インクジェット法等でガラス基板等の透明基板上に塗布し、ついでこの塗布膜に対して、フォトマスクを介して紫外線によるパターン露光を行った後、未露光部分を有機溶剤やアルカリ水等で洗浄して着色パターンを得る、フォトリソグラフィーと呼ばれる方法が挙げられる。画素部の形成方法は特に限定されず、例えば、電着法、転写法、ミセル電解法、PVED(Photovoltaic Electrodeposition)法等の方法で画素部のパターンを形成して、カラーフィルタを製造してもよい。
他の画素部(例えば赤色画素部及び青色画素部)も公知の顔料を使用して、同様の方法で形成できる。
以下、本発明の内容を実施例及び比較例を用いてより詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
<ハロゲン化亜鉛フタロシアニン(粗顔料)の合成>
[合成例1]
300mlフラスコに、塩化スルフリル(富士フイルム和光純薬株式会社製)90g、塩化アルミニウム(関東化学株式会社製)109g、塩化ナトリウム(東京化成工業株式会社製)15g、亜鉛フタロシアニン(DIC株式会社製)30g及び臭素(富士フイルム和光純薬株式会社製)69gを仕込んだ。80℃まで昇温し、得られた混合物を水に取り出した後、ろ過し、水洗し、乾燥することによりハロゲン化亜鉛フタロシアニン(R1)を得た。ハロゲン化亜鉛フタロシアニン(R1)について、株式会社リガク製のZSX100Eを使用した蛍光X線分析を行い、亜鉛原子、塩素原子及び臭素原子の質量比から、亜鉛原子1個あたりの相対値として、平均塩素原子数及び平均臭素原子数を算出した。なお、ハロゲン化亜鉛フタロシアニン1gを加圧成型(25mmφ)したものを測定試料とし、測定径20mmφ、真空雰囲気下にて測定した。その結果、ハロゲン化亜鉛フタロシアニン(R1)では、1分子中のハロゲン原子数が平均12.4個であり、そのうち臭素原子数が平均10.6個、塩素原子数が平均1.9個であった。
[合成例2]
300mlフラスコに、塩化スルフリル(富士フイルム和光純薬株式会社製)70g、塩化アルミニウム(関東化学株式会社製)105g、塩化ナトリウム(東京化成工業株式会社製)14g、亜鉛フタロシアニン(DIC株式会社製)27g及び臭素(富士フイルム和光純薬株式会社製)52gを仕込んだ。110℃まで昇温し、得られた混合物を水に取り出した後、ろ過し、水洗し、乾燥することによりハロゲン化亜鉛フタロシアニン(R2)を得た。ハロゲン化亜鉛フタロシアニン(R2)について、合成例1と同様にして、平均塩素原子数及び平均臭素原子数を算出した。ハロゲン化亜鉛フタロシアニン(R2)では、1分子中のハロゲン原子数が平均11.8個であり、そのうち臭素原子数が平均9.9個、塩素原子数が平均1.9個であった。
[合成例3]
300mlフラスコに、塩化スルフリル(富士フイルム和光純薬株式会社製)70g、塩化アルミニウム(関東化学株式会社製)105g、塩化ナトリウム(東京化成工業株式会社製)14g、亜鉛フタロシアニン(DIC株式会社製)27g及び臭素(富士フイルム和光純薬株式会社製)54gを仕込んだ。80℃まで昇温し、得られた混合物を水に取り出した後、ろ過し、水洗し、乾燥することによりハロゲン化亜鉛フタロシアニン(R3)を得た。ハロゲン化亜鉛フタロシアニン(R3)について、合成例1と同様にして、平均塩素原子数及び平均臭素原子数を算出した。ハロゲン化亜鉛フタロシアニン(R3)では、1分子中のハロゲン原子数が平均11.4個であり、そのうち臭素原子数が平均10.2個、塩素原子数が平均1.2個であった。
[合成例4]
300mlフラスコに、塩化スルフリル(富士フイルム和光純薬株式会社製)70g、塩化アルミニウム(関東化学株式会社製)105g、塩化ナトリウム(東京化成工業株式会社製)14g、亜鉛フタロシアニン(DIC株式会社製)27g及び臭素(富士フイルム和光純薬株式会社製)52gを仕込んだ。80℃まで昇温し、得られた混合物を水に取り出した後、ろ過し、水洗し、乾燥することによりハロゲン化亜鉛フタロシアニン(R4)を得た。ハロゲン化亜鉛フタロシアニン(R4)について、合成例1と同様にして、平均塩素原子数及び平均臭素原子数を算出した。ハロゲン化亜鉛フタロシアニン(R4)では、1分子中のハロゲン原子数が平均10.4個であり、そのうち臭素原子数が平均9.3個、塩素原子数が平均1.2個であった。
[合成例5]
300mlフラスコに、塩化スルフリル(富士フイルム和光純薬株式会社製)91g、塩化アルミニウム(関東化学株式会社製)109g、塩化ナトリウム(東京化成工業株式会社製)15g、亜鉛フタロシアニン(DIC株式会社製)30g及び臭素(富士フイルム和光純薬株式会社製)63gを仕込んだ。130℃まで昇温し、得られた混合物を水に取り出した後、ろ過し、水洗し、乾燥することによりハロゲン化亜鉛フタロシアニン(R5)を得た。ハロゲン化亜鉛フタロシアニン(R5)について、合成例1と同様にして、平均塩素原子数及び平均臭素原子数を算出した。ハロゲン化亜鉛フタロシアニン(R5)では、1分子中のハロゲン原子数が平均13.0個であり、そのうち臭素原子数が平均10.3個、塩素原子数が平均2.7個であった。
[合成例6]
300mlフラスコに、塩化スルフリル(富士フイルム和光純薬株式会社製)90g、塩化アルミニウム(関東化学株式会社製)105g、塩化ナトリウム(東京化成工業株式会社製)14g、臭素(富士フイルム和光純薬株式会社製)14gを仕込み混合した。亜鉛フタロシアニン(DIC株式会社製)22g及び臭素(富士フイルム和光純薬株式会社製)136gを仕込んだ後、50℃に昇温し、2時間撹拌した。得られた混合物を水に取り出した後、ろ過し、水洗し、乾燥することによりハロゲン化亜鉛フタロシアニン(R6)を得た。ハロゲン化亜鉛フタロシアニン(R6)について、合成例1と同様にして、平均塩素原子数及び平均臭素原子数を算出した。ハロゲン化亜鉛フタロシアニン(R6)では、1分子中のハロゲン原子数が平均9.8個であり、そのうち臭素原子数が平均9.5個、塩素原子数が平均0.3個であった。
<実施例1>
ハロゲン化亜鉛フタロシアニン(R1)40g、粉砕した塩化ナトリウム400g及びジエチレングリコール63gを双腕型ニーダーに仕込み、80℃で8時間混練した。混練後、得られた混合物を80℃の水2kgに取り出した。1時間攪拌後、混合物をろ過し、湯洗し、乾燥し、粉砕することにより、緑色顔料として、ハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料(RP1)を得た。
ハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料(RP1)2.48gを、BYK LPN−6919(ビックケミー社製、商品名、固形分:60質量%)1.24g、ユニディックZL−295(DIC株式会社製、商品名、固形分:40質量%)1.86g及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート10.92gと共に0.3〜0.4mmのジルコンビーズを用いて、東洋精機株式会社製のペイントシェーカーで2時間分散して、緑色顔料分散体(RMG1)を得た。
<実施例2〜4、比較例1>
ハロゲン化亜鉛フタロシアニン(R1)に代えてハロゲン化亜鉛フタロシアニン(R2)〜(R5)をそれぞれ用いたこと以外は実施例1と同様にして、ハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料(RP2)〜(RP4)及び(RP6)をそれぞれ得た。
ハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料(RP1)に代えてハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料(RP2)〜(RP4)及び(RP6)をそれぞれ用いたこと以外は、実施例1と同様にして、緑色顔料分散体(RMG2)〜(RMG4)及び(RMG6)をそれぞれ得た。
<実施例5>
ハロゲン化亜鉛フタロシアニン(R3)40g、アクリル樹脂であるTS−1316(星光PMC株式会社製、商品名)1.2g、粉砕した塩化ナトリウム400g及びジエチレングリコール63gを双腕型ニーダーに仕込み、80℃で8時間混練した。混練後、得られた混合物を80℃の水2kgに取り出した。1時間攪拌後、混合物をろ過し、湯洗し、乾燥し、粉砕することにより、アクリル樹脂(TS−1316)で被覆されたハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料(RP5)を含む緑色顔料組成物(RG5)を得た。アクリル樹脂(TS−1316)の含有量は、ハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料(RP5)100質量部に対し、3.0質量部であった。
ハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料(RP1)2.48gに代えて緑色顔料組成物(RG5)2.48gを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、緑色顔料分散体(RMG5)を得た。
<実施例6>
ハロゲン化亜鉛フタロシアニン(R1)に代えてハロゲン化亜鉛フタロシアニン(R6)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、ハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料(RP7)を得た。
ハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料(RP1)に代えてハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料(RP7)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、緑色顔料分散体(RMG7)を得た。
<カラーフィルタ特性の評価(1)>
(評価用組成物(RCG)の調製)
緑色顔料分散体(RMG1)4.0gにユニディックZL−295(DIC株式会社製、商品名、固形分:40質量%)0.98g及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート0.22gを加えて、ペイントシェーカーで混合することで、カラーフィルタ用緑色画素部としての性能を評価するための評価用組成物(RCG1)を得た。また、緑色顔料分散体(RMG1)に代えて緑色顔料分散体(RMG2)〜(RMG7)をそれぞれ用いたこと以外は、上記と同様にして、評価用組成物(RCG2)〜(RCG7)をそれぞれ作製した。
(評価用基板の作製)
評価用組成物(RCG1)〜(RCG7)を、それぞれ、ソーダガラス基板上にスピンコートし、90℃で3分乾燥した後に、230℃で1時間加熱した。これにより、着色膜をソーダガラス基板上に有する、評価用ガラス基板を作製した。なお、スピンコートする際にスピン回転数を調整することにより、230℃で1時間加熱して得られる着色膜の膜厚を調整し、各実施例及び比較例について、着色膜の膜厚が1.5μmである評価用ガラス基板、着色膜の膜厚が1.9μmである評価用ガラス基板及び着色膜の膜厚が2.4μmである評価用ガラス基板をそれぞれ作製した。膜厚は、株式会社日立ハイテクサイエンス製の白色干渉顕微鏡(VS1330)で測定した。
(評価)
各評価用ガラス基板について、株式会社日立ハイテクサイエンス製の分光光度計(U−3900)を用いて、着色膜のC光源における色度(x,y)を測定した。結果を表2に示す。また、図1に示すように、得られた着色膜の色度(x,y)を、CIEのXYZ表色系におけるxy色度座標にプロットした。なお、図1には、下記式(1)〜(4)で囲まれる色度座標領域A、下記式(1)及び(5)〜(7)で囲まれるxy色度座標領域B、下記式(1)及び(8)〜(10)で囲まれるxy色度座標領域Cを示した。
式(1):y=−1.766x+0.628
(式中、xは、0.11<x<0.17である。)
式(2):y=2.477x+0.161
(式中、xは、0.11<x<0.17である。)
式(3):y=−3.498x+1.177
(式中、xは、0.17<x<0.21である。)
式(4):y=2.865x−0.159
(式中、xは、0.17<x<0.21である。)
式(5):y=2.477x+0.161
(式中、xは、0.11<x<0.16である。)
式(6):y=−3.583x+1.131
(式中、xは、0.16<x<0.20である。)
式(7):y=2.865x−0.159
(式中、xは、0.17<x<0.20である。)
式(8):y=2.477x+0.161
(式中、xは、0.11<x<0.15である。)
式(9):y=−3.680x+1.085
(式中、xは、0.15<x<0.19である。)
式(10):y=2.865x−0.159
(式中、xは、0.17<x<0.19である。)
<カラーフィルタ特性の評価(2)>
(調色用組成物(TY)の調製)
C.I.ピグメントイエロー185(BASF株式会社製、Paliotol Yellow D1155)1.65gを、DISPERBYK−161(ビックケミー社製、固形分:30質量%)3.85g及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート11.00gと共に0.3〜0.4mmのジルコンビーズを用いて、ペイントシェーカーで2時間分散して、黄色顔料分散体(MY1)を得た。黄色顔料分散体(MY1)4.0gに、ユニディックZL−295(DIC株式会社製、商品名、固形分:40質量%)0.98g及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート0.22gを加えて、ペイントシェーカーで混合することで調色用組成物(TY1)を得た。
(評価用組成物(RDG)の調製)
評価用組成物(RCG1)〜(RCG7)を、それぞれ、調色用組成物(TY1)と混合して、カラーフィルタ用緑色画素部としての性能を評価するための評価用組成物(RDG1)〜(RDG7)を調製した。調色用組成物(TY)と評価用組成物(RCG)の配合比(TY:RCG、質量比)は、C光源における色度(x,y)が(0.210,0.670)である緑色画素部が得られるように調整した。
(評価用基板の作製)
評価用組成物(RDG1)〜(RDG7)を、それぞれ、ソーダガラス基板上にスピンコートし、90℃で3分乾燥した。これにより、C光源における色度(x,y)が(0.210,0.670)である着色膜をソーダガラス基板上に有する、評価用ガラス基板を作製した。色度(x、y)は、分光光度計(株式会社日立ハイテクサイエンス製のU−3900)によって測定した。
(評価)
株式会社日立ハイテクサイエンス製の分光光度計(U−3900)で輝度Yを測定し、株式会社日立ハイテクサイエンス製の白色干渉顕微鏡(VS1330)で着色膜の膜厚を測定した。なお、膜厚が薄いほど高着色力であるといえる。結果を表3に示す。
本発明に係るハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料は、輝度及び着色力に優れるため、高色再現用カラーフィルタに好適に用いることができる。

Claims (3)

  1. 下記式(1)で表される化合物から構成されるハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料であって、
    前記化合物1分子中のハロゲン原子の数が平均9.1個以上13個以下であり、
    前記化合物1分子中の臭素原子の数が平均9個以上11個以下であり、
    前記化合物1分子中の塩素原子の数が平均0.1個以上2個未満であり、
    膜厚1.5μm〜2.4μmの塗膜としたときに、単体でC光源を使用して測色した時のCIEのXYZ表色系において、下記式(1−1)〜(1−4)で囲まれるxy色度座標領域を表示できる、ハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料。

    [式(1)中、X〜X16は、各々独立に、水素原子又はハロゲン原子を示す。]
    式(1−1):y=−1.766x+0.628
    (式中、xは、0.11<x<0.17である。)
    式(1−2):y=2.477x+0.161
    (式中、xは、0.11<x<0.17である。)
    式(1−3):y=−3.498x+1.177
    (式中、xは、0.17<x<0.21である。)
    式(1−4):y=2.865x−0.159
    (式中、xは、0.17<x<0.21である。)
  2. 請求項1に記載のハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料と、溶剤と、を含有する、着色組成物。
  3. 請求項1に記載のハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料を含有する画素部を有する、カラーフィルタ。
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