JP6808156B2 - 多孔性フィルター、多孔性フィルターを支持体とする水素分離膜、及び水素分離方法、並びに多孔性フィルターの製造方法 - Google Patents

多孔性フィルター、多孔性フィルターを支持体とする水素分離膜、及び水素分離方法、並びに多孔性フィルターの製造方法 Download PDF

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本発明は、多孔性フィルターと、該フィルターを支持体とする水素分離膜、水素分離方法、前記多孔性フィルターの製造方法に関する。
多孔性セラミックス基材や多孔性金属基材は多孔性フィルターとして気体又は液体の濾過に用いられる他、その上にパラジウムまたはパラジウム合金の薄膜を形成して水素分離膜として用いられたり、その上に多孔性無機薄膜を形成して分子分離膜として用いられたりしている。
多孔性セラミックス基材の表面の細孔径はその用途により異なるが、不純物除去を目的とするフィルター用途では、その不純物粒子に応じて例えば2μm以下の微細孔であることが好ましく、1μm以下の微細孔であることがより好ましい。多孔性セラミックス基材上に水素分離用のパラジウムまたはパラジウム合金の薄膜を形成する場合や、多孔性無機薄膜を形成して分子分離膜とする場合にも10μm以下の薄膜とするためには多孔性セラミックス基材表面の最大細孔径は2μm以下であることが好ましく、1μm以下であることがより好ましい。
何れの用途でも、多孔性セラミックス基材を通過する気体や液体など被処理流体の透過速度を高める為に、透過抵抗を小さくして圧力損失を抑制することが必要である。しかし、細孔の微細化は圧力損失の上昇を招き、その構成厚さを薄くせざるを得ないが、そうした薄膜化は構造材としての必要強度を失う結果をもたらす。
そこで、粗い多孔性セラミックス基材の表面に微細孔を有する多孔性セラミック膜を積層することが通常行われる。しかし、セラミック膜は非常に脆く、取扱いによって破損しやすいことから、作業者への負担が大きく、製作コストの上昇や特殊プロセスが必要となる。また、セラミックス材料の基本的な問題として金属材料への接合性があり、特に高温下での使用では金属製装置へのセラミックスの接合は大きな問題となる。
一方、金属粒子を焼結した焼結金属体や金属線を網状に焼結した金属メッシュ等の多孔性金属基材の場合、当該基材の表面上に開口する細孔の最大細孔径は2μmを超えるのが通常であり、気体または液体の透過速度は高いものの比較的大きな不純物の除去しか可能ではなく、セラミックス多孔体のような微細な不純物の除去には適していない。また、その表面にパラジウムやパラジウム合金でなる水素分離用の薄膜を形成する場合、前記多孔性金属基材によるものでは、表面層には比較的大きな前記細孔を備えることから、その表面上に配置する前記水素分離用の薄膜が、例えば膜厚さ10μm以下のように薄いものでは、前記細孔の凹凸によって破損やクラック形成しやすくなり、水素の選択的分離が得られない。
これを解消するため、前記多孔性金属基材の表面上に微細孔を有する表面平滑な多孔性セラミック膜を形成したものがある(下記特許文献1及び2参照)。この場合、金属製装置への装着が該多孔性金属基材を介して行われる利点がある。
特開2003−135943号公報 特開2006−346621号公報
しかしながら、粗いセラミックス多孔体表面上に形成する場合と同様に、表面が平滑な多孔性セラミック膜を多孔性金属基材の表面に形成する製作コストは上昇し、また、表面状態が平滑なものでは、その表面上に積層形成する水素透過分離用の薄膜材料の十分な密着性が得られず、良好な結果が得られ難いという問題がある。
本発明は、上記した従来技術の現状に鑑みてなされたもので、金属製装置への接合が容易で、しかも安価に製造できる、例えば2μmを超える細孔を表面に有しない多孔性フィルターと、その製造方法の提供を目的とする。
また、本発明は、当該多孔性フィルターを支持体として用いることにより、水素分離膜として有用性が高いパラジウム薄膜またはパラジウム合金薄膜を欠陥無く多孔性フィルター上に形成し、高価なパラジウムの使用量を削減すると同時に、高い水素透過速度と高い水素選択性とを両立させる水素分離膜を提供すると共に、当該水素分離膜を使用して水素を効率よく分離する水素の分離方法を提供することを目的とする。
本発明者は、上記した目的を達成すべく鋭意研究を重ねてきた。その結果、多孔性金属基材の表面に開口する細孔中に金属アルコキシドを満たし、細孔中で金属アルコキシドを加水分解することにより細孔中に金属の水酸化物及び/または酸化物の多孔体を形成すると、表面上に開口する細孔の最大細孔径が2μm以下に微細化でき、金属製装置への接合が容易でしかも安価に製造できる多孔性フィルターが得られること、また、このようにして形成した多孔性フィルターを支持体として、その表面にパラジウム薄膜またはパラジウム合金薄膜を形成すると良好な水素分離膜となることを見出し、ここに本発明を完成するに至った。
即ち、本発明の前記目的は、多孔性金属基材と、前記多孔性金属基材のいずれか一面側に設けたセラミックス多孔体の層を備え、該セラミックス多孔体の層は、その一部が、前記多孔性金属基材の前記一面側に開口する細孔に浸入しており、かつ、該細孔を有する前記多孔性金属基材の構成材の露出表面を連続的に被覆して配設されており、前記セラミックス多孔体の層が形成される前記多孔性金属基材の一面側は、金属短繊維焼結体として形成されており、前記金属短繊維焼結体の表面には、酸化皮膜が形成されており、前記セラミックス多孔体の層の外表面は、前記多孔性金属基材における前記金属短繊維焼結体の前記細孔を含む起伏表面に基づく凹部を備え、金属短繊維焼結体は、10μm以下の繊維径dと該繊維径dの1〜20倍の平均長さLを持つ金属短繊維から形成されており、前記凹部の平均最大径は、前記金属短繊維の繊維径dの0.5倍以上、かつ、20μm以下の大きさであることを特徴とする多孔性フィルターにより達成される。
更に、請求項の発明は、前記セラミックス多孔体は、水酸化ジルコニウム及び/またはジルコニアで構成されるものであること、請求項の発明は、更にイットリウムを含むこと、請求項の発明は、前記多孔性金属基材は、粗大空孔を持つ第一多孔性金属基材と、前記第一多孔性金属基材の一面側上に積層配置され、前記第一多孔性金属基材が有する前記粗大空孔よりも微細な最大孔径が10μm以下の空孔を持つ第二多孔性金属基材との積層焼結体で構成され、前記セラミックス多孔体は前記第二多孔性金属基材に設けられてなる前記多孔性フィルターであることを特徴とする。
また、本請求項5の発明は、前記多孔性金属基材の前記第二多孔性金属基材は、直状の前記金属短繊維のランダムな分布によって、その外表面は非平滑な前記起伏表面を備えるものであることを特徴とする。
また、本発明の前記目的は、前記いずれか記載の多孔性フィルターの起伏表面に、水素分離用のパラジウム薄膜またはパラジウム合金薄膜を備える請求項の発明に係る水素分離膜により達成される。また、本発明の前記目的は、前記水素分離膜の上流側に位置する水素含有混合気体を、下流側に水素透過して分離するにあたり、下流側の水素分圧を前記上流側の水素分圧未満とすることを特徴とする請求項の発明に係る水素含有混合気体からの水素の分離方法により達成される。
また、本発明の前記目的は、
ア)10μm以下の繊維径dと該繊維径dの1〜20倍の平均長さLを持つ金属短繊維から形成される金属短繊維焼結体を表面部分に有する多孔性金属基材を準備する準備段階と、
イ)前記多孔性金属基材を、温度400〜850℃の酸化雰囲気中での加熱処理、又はアルカリ液への浸漬処理によって、その表面に酸化皮膜を形成する表面酸化処理の段階と、
ウ)該酸化皮膜を備える前記多孔性金属基材のいずれか一面側に、外表面に凹部を有し、前記多孔性金属基材が有する空孔よりも微細な空孔を持つセラミックス多孔体の層を複合処理する複合処理段階と、
エ)その複合処理の後に乾燥する乾燥段階とを備え、
前記複合処理段階は、前記多孔性金属基材のいずれか一面側に金属アルコキシド溶液を付与することにより、前記多孔性金属基材の表面における細孔内に前記金属アルコキシド溶液を浸入させつつ、前記多孔性金属基材の構成材の露出表面を連続して覆う工程を有することを特徴とする多孔性フィルターの製造方法に係る請求項8の発明により達成される。

また、請求項の発明は、請求項の発明における前記セラミックス多孔体の層が、金属アルコキシドの加水分解によるものであることを特徴とする。
本発明によれば、比較的簡単な方法によって、多孔性金属基材の表面に開口する細孔内をセラミックス多孔体で被覆した多孔性フィルターを得ることができ、この多孔性フィルターを支持体とする水素分離膜では、表面上に形成される水素分離用の薄膜材料が薄いものでも欠陥のない良好な積層状態が形成できる。
また、この多孔性フィルターは、前記多孔性金属基材の表面上の細孔に浸入し、かつその構成材の露出面を被覆するセラミックス多孔体を備えるとともに、その外表面に前記凹部を備えることから、フィルターとしての異物捕集効率を高め、また更にその表面上に水素分離用の薄膜材料を積層形成する場合にも、前記欠陥がなく且つ薄膜化可能なパラジウムやパラジウム合金の膜材を良好に形成でき、また前記凹部によって、該水素分離用の薄膜材料との密着性は大きく向上することができる。
しかも、その構造は前記多孔性金属基材をベース材料とすることから、これを機械装置として接合や組み立てなどの装置化が容易にできる利点もあり、フィルター装置としてあるいは水素分離用モジュールとして、耐久性に優れ、システム化に有効に利用し得るものである。
本発明に係る多孔性フィルターが有する多孔性金属基材の要部の拡大断面図である。 本発明に係る多孔性フィルターの要部拡大模式断面図である。 本発明に係る水素分離膜の要部拡大模式断面図である。 実施例1において製作した多孔性フィルターの表面を走査電子顕微鏡で観察した画像である。 実施例1において使用したステンレス製焼結金属フィルター(多孔性金属基材)の表面を走査電子顕微鏡で観察した画像である。
以下、本発明に係る多孔性フィルター及びその製造方法について説明する。多孔性フィルター1は、多孔性金属基材2と、当該多孔性金属基材2のいずれか一面側に設けたセラミックス多孔体の層3を備える。
多孔性金属基材2は、図1の拡大模式図(断面図)に示すように、その両面間に通じた複雑流路を持つ多孔質焼結構造体で構成され、その表面上には複数の細孔21を備える。また、前記セラミックス多孔体の層3は、前記多孔性金属基材2の前記細孔21より微細緻密な多孔質構造をなし、本形態は図2のように、該金属基材2の上面側に所定厚さの層状を成すように複合形成したものを示す。
その形成状態は、該金属基材2の少なくとも表面側の前記細孔21内に浸入し、かつこの細孔21を構成する前記多孔性金属基材の構成材2Aの露出表面を含めて連続して被包するとともに、その外表面は、該金属基材2の起伏表面に基づく凹部31を備えるものとしている。なお、図1及び図2は、構成の理解を容易にするためのより好ましい形態の一例であって、実寸比ではなく部分的に拡大又は縮小されているが、本発明はこれに限らず、前記セラミックス多孔体の層3を例えば前記金属基材2の一定深さに亙って形成するものを含み、また前記一面側から他面側に向かって徐々にその分布密度を減じた、勾配分布にすることもできる。
前記多孔性金属基材2は、例えば金属粉末や金属短繊維等を構成材2Aとして、これを所定の空孔特性を備えるように成形した焼結金属体の他、金属メッシュ等を例示することができる。その金属材料には、ステンレス、ハステロイ合金、インコネル合金、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金等を例示できる。本形態の前記構成材は、所定の繊維径dとその繊維径d以上の平均長さLを持つ、直状の前記金属短繊維のランダム方向への分布によって、その外表面の起伏状態を高めた粗表面にすることで、より有効な前記凹部をもたらすことができる。また、その成形体は所定の空孔特性を持つように焼結成形することで多孔性金属基材2として用いられる。
前記細孔21の細孔径は特に制限されず、その用途により適宜選択すべきであるが、例えば最大細孔径が10μm以下、好ましくは5μm以下とし、その計測は例えばバブルポイント試験で決定できる。
また、多孔性金属基材2は、その全体を通じて一種類の前記特性を備えるもので構成できる他、例えば、比較的粗大な空孔特性を持つ支持体を第一の多孔性金属基材2aとし、その上面側により微細な空孔特性の前記細孔径を持つ比較的薄く形成した第二の多孔性金属基材2bを重ね合わせて一体にした複合構造体の使用も好ましい。このような複合構造体では、前記第二の金属基材2bの厚さを必要最小限に薄くすることができ、多孔質構造の金属基材として、微細な空孔特性を有しながらも低い圧力損失で、かつ必要十分な構造強度を備える利点がある。
より具体的なものとして、前記第一の金属基材2aは、例えば粒子径が数十乃至数百μmの比較的粗大粒子の粉末材料で構成した支持体と、その表面上に前記構成の第二金属基材2bを備える。この第二多孔性金属基材2bは、所定の繊維径dと該繊維径d以上の平均長さLを持つ金属短繊維のランダムな分布によって、その外表面は非平滑な起伏表面を形成しており、例えば平均直径dが10μm以下(好ましくは0.01〜5μm)で、かつその径の1〜20倍の範囲の平均長さLを持つ、前記金属短繊維をランダムに分布した焼結体を用いることが推奨される。なお、これら粒子径や平均直径、平均長さは画一的なものではなく、そのロット内ではばらつきを有する。例えば金属短繊維の平均直径は、各短繊維について各々横断面の縦横両方向の寸法を統計学的に平均化したものとし、また平均長さについても、同様に任意の各短繊維について各々繊維長さを求めて統計処理された寸法で示される。
このような複合構造の金属基材は、前記第二金属基材2bの微細表面層で濾過する表面濾過用フィルターとして好適であり、またその構造や種類、成形厚さは制限されず、その構造が安定に保持できれば良い。多孔性金属基材2は、例えば0.3〜3mmの厚さが例示され、前記複合構造では、第2金属基材2bは0.05〜0.5mm程度の厚さが好ましい。またその成形形状も、例えば、板状、中空の管状、有底筒状等の種々形状が例示されるが、これに限るものではない。
セラミックス多孔体の層3を構成するセラミックス多孔体3Aは、例えば水酸化ジルコニウム、ジルコニア、イットリウム、セリウム、チタニウム、アルミニウム、シリコンのいずれか一種又は二種以上から選択される酸化物及び/または水酸化物、乃至これらの混合物や混合酸化物等の多孔質構造体が例示できる。その中で、特に、水酸化ジルコニウム及び/またはジルコニアを主成分とするものは、容易に焼結して良好なセラミックス多孔体が形成でき、熱膨張率が金属に近いので金属との親和性が高い特徴がある。その場合、該セラミックス多孔体はその固化状態において、水酸化ジルコニウム及び/またはジルコニアを、例えば60%以上含有することが好ましい。また、更に前記イットリウムを含有するものは 結晶構造が安定化し耐熱性が向上する効果があるため、より好ましい。その場合の該イットリウムの含有量は、例えば1〜30wt%、好ましくは2〜15wt%とすることが推奨される。これら組成によるセラミックス多孔体は、本発明に好適するものとなる。
従来、例えば、セラミックス微粒子やゾル状やゲル状のセラミックス微粒子前駆体の分散スラリ
ーを多孔性金属基材上へスプレー、スクリーン印刷、浸漬法等の方法でコーティングしたり、泳動電着やガスデポジションのような方法を用いたりしてセラミックスの膜材が形成されて来た。しかしながら、このような方法の場合、多孔性金属基材2の比較的大きい表面細孔21を閉塞するためには多孔性金属基材2表面をセラミックス層で表面が平滑になるまで完全に被覆する必要があり、多大な費用と労力が要求される。
そこで、本発明では、このような微細な多孔質部を形成するものとして、金属アルコキシドを選択し、これを溶媒に溶解したもの(金属アルコキシド溶液)を多孔性金属基材2の表面上に塗布形成するとともに、水蒸気及び/または水が存在する条件下に置くことで金属アルコキシドを多孔性金属基材2表面にある細孔21中で加水分解して金属水酸化物及び/または酸化物を生成させ、一方の反応生成物であるアルコールや金属アルコキシドの溶媒を除去するという方法により、所定のセラミックス多孔体の層3が良好に形成できることを確認したもので、前記多孔性金属基材2の表面上に開口する細孔21と、その細孔21を構成する前記金属基材1の構成材2Aの露出表面を含めて連続して被覆することで構成される。
なお、セラミックス多孔体3Aの前記多孔性金属基材2に対する親和性を高めるため、予め、該多孔性金属基材2の表面に所定の酸化皮膜を形成しておくことが好ましい。その酸化皮膜は、例えばその金属材料が持つ本来の固有金属色以外の特定色を有するものとし、その最適な酸化処理方法としては、例えば該金属基材2を水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ溶液やその他種々の酸化処理用液中に浸漬、乃至は塗布することで生ずる化学反応、乃至は例えば空気のような酸化性雰囲気中での加熱処理による熱反応によって容易に形成することができる。その金属材料が持つ前記固有の金属色は、例えばこれを破砕、切断、乃至は表面洗浄処理等した状態での色彩のものとして確認される。
こうした酸化皮膜は、前記セラミックス多孔体の形成時の処理流体とのなじみ性を向上し、また表面状態はダル仕上げ状態に粗面化でき、両者の結合性が向上する。また、後者の酸化性雰囲気中での加熱処理によるもので、その金属基材2がステンレス鋼のものでは、例えば空気中400〜850℃、好ましくは500〜700℃での加熱により、例えば1分〜5時間程度保持される。その処理によって、該金属基材2は例えばオレンジ系、茶色系、褐色系、赤色系、乃至金色系のいずれかテンパーカラーを持つ酸化被膜が形成される。このような、色彩変化は前記化学反応による場合も同様に見られる現象で、同様の酸化皮膜が形成される。
その色彩は、該金属基材を構成する金属材料の種類やその処理条件、酸化程度によって種々変化し、同時に酸化皮膜の膜厚の変化をもたらす。例えば前記ステンレス鋼の加熱処理では、500℃台でオレンジ乃至金色〜赤色、600℃台では褐色〜赤褐色、700℃では紫褐色のように、テンパーカラーは加熱条件の増大に伴って濃色化し、それに伴って酸化量も増大するが、一方で該色彩は特定数値化がし難いこともあるため、それらの中間色を含むものとする。この酸化皮膜は、前記セラミックス多孔体とのなじみ性の向上以外に、例えば表面保護や処理の識別管理ができるなどの利点もある。
また、上述の金属アルコキシドとしては、ジルコニウムプロポキシド、ジルコニウムイソプロポキシド、ジルコニウムブトキシド、ジルコニウムt−ブトキシド、イットリウムイソプロポキシド、チタンイソプロポキシド、アルミニウムエトキシド、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムブトキシド、メチルシリケートといった化合物が例示されるが、その他の金属アルコキシドでも良い。金属アルコシドの溶媒としては、金属アルコシドと反応性が無いものであれば良く、水分含有量が小さいものが好ましい。このような溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノールといったアルコールの脱水物が例示されるが、その他の溶媒でも良い。
また、溶媒中にイットリウム、セリウム、ジルコニウムといった金属の塩や錯体を溶解しても良い。このような化合物として硝酸イットリウム、硝酸セリウム、イットリウムアセチルアセトナート、ジルコニウムアセチルアセトナートが例示される。これらの化合物には結晶水が含まれることがあるが、そのような場合、溶媒に溶解後、モレキュラーシーブスのような脱水剤により溶媒を脱水すればよい。ここで、金属アルコキシドを溶媒に溶解した金属アルコキシド溶液おける金属アルコキシドの濃度やその付与条件は、これを金属基材に形成する際の浸透深さに影響を及ぼすこととなり、例えば、2〜30重量%の範囲に設定することが好ましい。
多孔性金属基材2の表面に開口する細孔21への前記金属アルコキシド溶液の導入は、例えば多孔性金属基材2を金属アルコキシド溶液に浸漬した後、空気中に引き上げることによって達成できる。また、該セラミック多孔体3Aは、前記溶液中への浸漬方法以外に、例えば塗布やスプレーによってその一面側に設ける他、例えばその毛細管現象や更にその他面側からの減圧吸引によって、所定深さ(H)に浸透させたり、その表面側から徐々に分布量を減じる濃度勾配的に設けたりすることもできる。
その形成厚さは、例えば前記濃度調整によって0.5〜50μm、好ましくは1〜20μm以下とし、その形成厚さHは、例えば図2のように、その厚さ方向の断面を拡大した時の、表面側の凸部と凹部(谷部)を平均化した仮想上面と、該セラミックス多孔体の層3の最下面との間の平均寸法で示すものとし、その計測幅は例えば2mmとする。
こうして、細孔21内に浸入した金属アルコキシド溶液は、空気中にある水分と反応して固化が開始する。空気中に置く時間は、金属アルコキシド溶液の反応性、濃度、空気の湿度、温度により適宜調整すれば良いが、通常30分以上であることが好ましい。これより短いと金属アルコキシド溶液の固化が不十分な場合がある。また、固化を完全なものとするには長時間、空気中に置けばよいが、より完全に加水分解を進行させるためにスチームに接触させたり、水に浸漬したりすることもできる。一方の反応生成物であるアルコールや金属アルコキシドの溶媒の除去は加熱及び/または減圧による脱気によって行えば良い。
更に、ここで形成されたセラミックス多孔体3Aをより強固なものとし、また乾燥するために、例えば400℃以下の比較的低温の加熱(焼結)を更に行うこともできる。加熱温度、加熱時間は得られる多孔性フィルター1に求められる物性に応じて適宜調整すれば良い。また、セラミックス多孔体3Aは、多孔性金属基材2の表面側に開口する細孔21内に浸入し、かつその構成材2Aの露出表面を含めて被覆するとともに、その最外面には、該多孔性金属基材の前記細孔21の表面状態、起伏表面に応じた凹部31が形成される。
この凹部31の大きさを小さくするには、前記の金属アルコキシドへの浸漬に引き続く一連の工程を繰り返せば良い。この時、多孔性金属基材2の他面側から減圧して細孔21への金属アルコキシド溶液の導入を促進してもよい。
ここで、前記凹部31については、例えば所定凹部を観察したときの平均最大径(多孔性フィルター1を平面視で見た場合における凹部31の最大径;図2に示す左右方向の最大寸法)と、その凹部が持つ最大深さ(図2に示す上下方向の最大寸法)で判断される。その検証は、例えば該多孔性フィルターについて任意に抽出した観察視野を拡大観察し、その視野内に確認される前記凹部の有無で行われる。その視野数は、例えば3〜10点程度とし、レーザー顕微鏡やSEM等を用いて計測される。また、簡易法として例えばその凹部を持つ面の表面粗さで検証することもできる。
該凹部31の前記最大径は、例えば該多孔性金属部材を構成する前記金属粉末や短繊維材料の直径の0.5倍以上の大きさで、かつその表面上に配置される水素分離用の薄膜材料を形成する観点から20μm以下となるように設定され、他方、その最大深さは、例えば1〜20μmの範囲、好ましくは上限10μm以下とされる。
この凹部は、ベースの前記多孔質金属基材2の細孔21を含む起伏表面に基づき形成されるもので、例えば図1のような任意の拡大断面図に見られるように、多孔性金属基材2の表面上に開口する細孔21は、その深さが深いものや浅いものが混在していることから、多孔性金属基材2を被包する前記セラミック多孔体3Aにおいて、深さが浅い細孔21上には、当該細孔21に対応する凹部31が形成されない場合が発生し得る。したがって、多孔性金属基材2の表面上に開口する細孔21の個数に対して、多孔性金属基材2の表面上に開口する細孔21に基づくセラミックス多孔体3Aにおける凹部31の個数の比率が小さ過ぎると、多孔性フィルター1の表面上に、更にパラジウムまたはパラジウム合金等の水素分離膜を形成する際に、高い密着性を確保することが困難となる懸念が生じるが、多孔性金属基材2の表面上に開口する細孔21に基づいて形成される前記凹部31の個数が、多孔性金属基材2の表面上に開口する細孔21の個数に対して、例えば、30%以上の個数となるように構成することが好ましい。より好ましくは、例えば50個/mm2以上の前記凹部31を設けることで、多孔性フィルター1上に前記水素分離膜を形成する際の密着性を高めることが可能となる。
こうして得られた多孔性フィルター1は、結果的に、金属アルコキシド溶液に浸漬された多孔性金属基材2の表面層の全面に亙って、前記細孔21及びその構成材2Aの露出表面をセラミックス多孔体3Aが連続して被包する構造を有する。該構成材の露出表面上の被覆厚さは、例えば5μm以下、好ましくは3μm以下、より好ましくは1μm以下である。なお、被覆厚さとは、多孔性金属基材2の構成材2A(短繊維)の最表面を覆う被覆厚さを意味する。
本発明の多孔性フィルター1は、多孔性金属基材2の表面上に開口する細孔21を、更に前記セラミックス多孔体3Aで微細化する層状の前記複合構造によって、被処理流体の流動を円滑化し、耐食性向上に寄与する。また、前記水素分離膜をその表面上に積層形成する場合も、該セラミックス多孔体3Aの介在によって、隣接する金属材料同士の拡散を抑制する遮蔽効果を備え、耐久性を合わせ持つことができる。
次に、前記多孔性フィルターを用いた水素分離膜及びその製造方法について説明する。本発明の水素分離膜5は、図3に示すように、前記多孔性フィルター1を支持体として、その起伏表面上にパラジウム薄膜又はパラジウム合金薄膜4が形成されているものである。なお、図3は、構成の理解を容易にするため、実寸比ではなく部分的に拡大又は縮小されている。
パラジウム合金薄膜としては、パラジウムと、銀、金、銅、ニッケル、白金、ロジウム及びルテニウムからなる群から選ばれる一種または二種以上の金属との合金(パラジウム合金)が好ましい。この様なパラジウム合金中におけるパラジウムの割合は、40重量%以上であることが好ましい。パラジウム薄膜又はパラジウム合金薄膜の平均膜厚は、例えば0.5〜10μm、好ましくは1〜7μmに設定される。膜厚がこれより小さいと膜のピンホールが増加して水素分離膜としての水素選択性が確保され難く、膜厚がこれより大きいと水素透過速度が小さくなって実用性を失う。
多孔性フィルター1の表面への直接のパラジウム薄膜またはパラジウム合金薄膜の形成は、例えば無電解めっき法、化学蒸着法、マグネトロンスパッタリングといった公知の方法によれば良い。パラジウム合金薄膜を形成する場合、パラジウム合金を構成する金属薄膜同士を積層し、その後、加熱により合金化しても良い。多孔性フィルター1への1層目の金属薄膜の形成後は表面が導電性を有するので電気めっき法も製膜に用いることができる。その1層目の金属薄膜はパラジウムを含有する薄膜であることが好ましい。なお、1層目の金属薄膜がパラジウムを含有しない薄膜である場合も、その上方にパラジウムを含有する薄膜が形成されていれば、後段の加熱による合金化により、パラジウム合金薄膜とすることができる。
ここで、多孔性フィルター1の表面にパラジウム薄膜またはパラジウム合金薄膜を形成する前段階として、多孔性フィルター1の表面に存在する欠陥をパラジウム等の金属で予め封止してもよい。封止方法は、従来から公知の方法を採用することができる。例えば、まず、多孔性フィルター1におけるセラミックス多孔体の層3の表面に対して、無電解めっき用触媒を付与した後、当該めっき用触媒の還元を行う。その後、パラジウムイオン等の金属イオンおよび還元剤を含む無電解めっき液を、多孔性フィルター1の多孔性金属基材2側に配置すると共に、セラミックス多孔体の層3側にグルコース等の濃厚溶液を配置して、無電解めっき液をセラミックス多孔体の層3の表面に存在する欠陥に導き、ここで金属(パラジウム等)を析出させることにより欠陥を封止することができる。このように表面の欠陥がパラジウム等の金属により封止された多孔性フィルター1を水素分離膜の支持体として用いる場合、支持体上に形成されたパラジウム薄膜またはパラジウム合金薄膜のピンホール生成を抑制でき、その結果として従来に比べて薄膜化が可能となる。なお、水素分離膜の支持体として多孔性フィルター1を用いる場合、例えば特開2007−90294公報が開示するように、有底筒状にモジュール化することが一般的に行われている。
このように構成された水素分離膜5は、前記公報が開示するようなモジュールを構成し、水素を含有する混合気体から水素のみを分離するために使用できる。例えば、該水素分離膜によって隔離された上流側に水素含有混合気体を供給し、該水素分離膜を介して下流側に透過分離させるもので、該下流側の水素含有混合気体の水素分圧を、上流側の水素分圧未満に設定することで達成される。
これにより水素分離膜中を水素が選択的に透過して、水素含有混合気体側にある水素のみを反対側に移動させて分離することができる。この場合の水素分離膜の温度は、通常150℃〜700℃程度、好ましくは300℃〜600℃程度とすればよい。温度が低すぎるとパラジウムまたはパラジウム合金薄膜の脆化が生じ易くなり、温度が高すぎると膜の劣化が生じ易くなるので好ましくない。
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
<実施例1>
外径15mm、肉厚2mm、長さ45mmの有底筒型に成形したステンレス粉末焼結体を支持体として、その外周表面上に、平均繊維径3μm,平均長さ15μmのステンレス製短繊維を構成材とする微細層を形成し、一体に積層焼結した多孔性金属基材を用いた。該短繊維による微細層は、構成厚さ0.2mmで、その層全体を通じて2.5μm程度の均一な微細細孔を有し、またその外表面には、該短繊維がランダム状に分布することで起伏した起伏表面を成すものであった。そして、この金属基材を空気中600℃で5時間加熱し、表面に茶色〜褐色の酸化皮膜を備えるものであった。(ステップ1)
次に、このステンレス製焼結金属フィルター(多孔性金属基材)を、金属アルコキシドであるジルコニウムプロポキシドを17重量%含有する1−プロパノール溶液(金属アルコキシド溶液)に浸漬した後、これを引き上げ、50rpmの回転速度で5分間軸回転して、付着した溶液を金属基材の外周面側に均一に分散させた(ステップ2)。その後、室温で空気中に1時間放置した。この回転処理は、前記金属基材の細孔内部への過剰の浸入を防ぐとともに、表面側の前記凹部の形成にも寄与する。
次に市販のスチーム洗浄器で表面にスチームを吹きかけて表面を洗浄し、ジルコニウムプロポキシド(金属アルコキシド)の加水分解をより完全なものとした後、アセトンに浸漬し空気中に取り出した(ステップ3)。そして、空気中80℃で1h乾燥した。(ステップ4)。
次いで、ステップ2〜4の工程を繰り返し、そして、空気中、200℃で10時間、加熱することにより実施例1に係る多孔性フィルターを得た。なお、この繰り返し処理によって、前記セラミックス多孔体が金属基材との接合界面での隙間を確実に閉塞し、多孔体としての特性向上を図ることができた。ここで、実施例1に係る多孔性フィルターは、有底筒型のステンレス製焼結金属フィルター(多孔性金属基材)の外表面をセラミックス多孔体の層により被覆される構造を有するものとなる。
<実施例2>
前記実施例1に係る多孔性フィルターに対して、再度ステップ2〜4の工程を2回実施した。但し、この実施例では、前記ステップ2はジルコニウムプロポキシド(金属アルコキシド)を13重量%含有する1−プロパノール溶液(金属アルコキシド溶液)にステンレス製焼結金属フィルターを浸漬し、該ジルコニウムプロポキシドの加水分解による該セラミックス多孔質体を形成した後、空気中200℃で10時間加熱し乾燥した。そして、この得られた成形品に対して今一度ステップ2〜4の工程を2回実施した。但し、今一度実施されるステップ2ではジルコニウムプロポキシドを6重量%含有する1−プロパノール溶液にステンレス製焼結金属フィルター内部を減圧しながら浸漬した。そして空気中、200℃で10時間、加熱することにより実施例2に係る多孔性フィルターを得た。
このようにして形成された多孔性フィルターの表面を走査電子顕微鏡で観察した結果、図4に示すように、多孔性金属基材における表面上の細孔の露出面が層状のセラミックス多孔体で被覆されつつも、多孔性金属基材の表面に開口する細孔に基づく凹部が形成されていることが確認された。
また、図5に示すセラミックス多孔体で被覆する前のステンレス製焼結金属フィルター(多孔性金属基材)の走査電子顕微鏡像にみられるように、ステンレス製焼結金属フィルター(多孔性金属基材)を構成する金属短繊維の線幅との比較により、ステンレス製焼結金属フィルター(多孔性金属基材)上にある層状のセラミックス多孔体の厚みは2μm以下であることがわかる。また、バブルポイント試験によるこの多孔性フィルターにおける表面に開口する細孔の最大細孔径は0.7μmであった。
<実施例3>
実施例1のステップ2にて用いられる溶液として、ジルコニウムプロポキシド(金属アルコキシド)を13重量%含有する1−プロパノール溶液(金属アルコキシド溶液)を使用し実施例1に示したステップ1〜4を行い、さらにステップ2〜4をもう1回行った。その後、空気中、400℃で10時間、加熱した後、再度、ステップ2〜4の工程を2回繰り返した。但し、ステップ2において、ジルコニウムプロポキシドを7重量%含有する1−プロパノール溶液中にステンレス製焼結金属フィルター内部を減圧しながら浸漬した。更に、再度、空気中、400℃で10時間、加熱後、今一度、ステップ2〜4の工程を2回繰り返し実施例3に係る多孔性フィルターを得た。この時、ステップ2において、ジルコニウムプロポキシドを8重量%、硝酸イットリウムを0.1重量%含有する1−プロパノール溶液にステンレス製焼結金属フィルター内部を減圧しながら浸漬した。
次いで、形成された多孔性フィルターの表面(セラミックス多孔体の層の表面)に存在する欠陥を封止するために、以下の封止工程を実施した。まず、実施例3に係る有底筒状の多孔性フィルターを市販のアルカリ触媒液(奥野製薬工業株式会社、OPC−50インデューサー)中に50℃で浸漬して、その外表面(セラミックス多孔体の層の表面)にパラジウムイオンを付着させた。引き続き、市販のジメチルアミノボランを含有する還元液(奥野製薬工業株式会社、OPC−150クリスターMU)に浸漬してパラジウムイオンを還元することにより、その外表面にパラジウムを付与した後、市販の無電解パラジウムめっき液(奥野製薬工業株式会社、パラトップ)を有底筒状の多孔性フィルターの内部に満たし、当該多孔性フィルターの外表面(セラミックス多孔体の層の表面)をグルコース濃度4mol/Lの水溶液中に50℃で浸漬し、無電解パラジウムめっき液を多孔性フィルターの内側から外側に移動させ、多孔性フィルター外表面の欠陥部位を通じて流出させることにより、多孔性フィルター外表面の欠陥部にパラジウム金属を析出させ、外表面に開口する欠陥を金属で閉塞及び/または被覆した。この一連の封止工程を2回実施した。
上記封止工程が完了した実施例3に係る多孔性フィルターを水洗した後、市販のアルカリ触媒液中に50℃で浸漬して、外表面にパラジウムイオンを付着させ、引き続き、市販の還元液中で還元し、引き続き50℃の市販の無電解パラジウムめっき液中に支持体の外表面を浸漬し、多孔性フィルター外表面にパラジウムを析出させた。
得られたパラジウム含有薄膜の平均膜厚は2.5μmであった。そして、パラジウム含有薄膜が外表面に形成された多孔性フィルターを銅のエチレンジアミン錯体からなる電気めっき液に浸漬して銅の電気めっきを行い、パラジウム薄膜上に銅含有薄膜を形成した。これを洗浄・乾燥後にアルゴン気流下で400℃まで昇温し、引き続き、水素気流下400℃で24時間、加熱処理して多孔性フィルターを支持体とする膜厚5μmのパラジウム・銅合金薄膜からなる水素分離膜5を得た。
パラジウムを主成分とする水素分離膜の水素透過速度(k)は一般にシーベルト則に従う。即ち、
k=J/(p10.5−p20.5
となる。ここでJは水素透過流速(mmol/s/m)、p1は入口側水素分圧(Pa)、p2は出口側水素分圧(Pa)である。
そこで、上記方法で得られた水素分離膜の性能を評価するため、水素差圧0〜2気圧の範囲で水素透過試験を行った結果、400℃において0.6mmol/s/m/Pa0.5の水素透過速度を得た。尚、アルゴンの透過試験を行ったところアルゴンの顕著な透過はなかった。また、パラジウム薄膜の剥離等は見られず、良好な密着性を有するものであった。
1 多孔性フィルター
2 多孔性金属基材
2A 構成材
21 多孔性金属基材における表面に開口する細孔
3A セラミックス多孔体
3 セラミックス多孔体の層
31 凹部
5 水素分離膜

Claims (9)

  1. 多孔性金属基材と、前記多孔性金属基材のいずれか一面側に設けたセラミックス多孔体の層を備え、
    該セラミックス多孔体の層は、その一部が、前記多孔性金属基材の前記一面側に開口する細孔に浸入しており、かつ、該細孔を有する前記多孔性金属基材の構成材の露出表面を連続的に被覆して配設されており、
    前記セラミックス多孔体の層が形成される前記多孔性金属基材の一面側は、金属短繊維焼結体として形成されており、
    前記金属短繊維焼結体の表面には、酸化皮膜が形成されており、
    前記セラミックス多孔体の層の外表面は、前記多孔性金属基材における前記金属短繊維焼結体の前記細孔を含む起伏表面に基づく凹部を備え
    金属短繊維焼結体は、10μm以下の繊維径dと該繊維径dの1〜20倍の平均長さLを持つ金属短繊維から形成されており、
    前記凹部の平均最大径は、前記金属短繊維の繊維径dの0.5倍以上、かつ、20μm以下の大きさであることを特徴とする多孔性フィルター。
  2. 前記セラミックス多孔体は、水酸化ジルコニウム及び/またはジルコニアで構成される請求項1に記載の多孔性フィルター。
  3. 前記セラミックス多孔体は、更にイットリウムを含むことを特徴とする請求項2記載の多孔性フィルター。
  4. 前記多孔性金属基材は、粗大空孔を持つ第一多孔性金属基材と、前記第一多孔性金属基材の一面側上に積層配置され、前記第一多孔性金属基材が有する前記粗大空孔よりも微細な最大孔径が10μm以下の空孔を持つ第二多孔性金属基材との積層焼結体で構成され、前記セラミックス多孔体は前記第二多孔性金属基材に設けられてなる請求項1から3のいずれかに記載の多孔性フィルター。
  5. 前記多孔性金属基材の前記第二多孔性金属基材は、直状の前記金属短繊維のランダムな分布によって、その外表面は非平滑な前記起伏表面を備えるものである請求項4に記載の多孔性フィルター。
  6. 請求項1から5のいずれかに記載の多孔性フィルターの前記起伏表面に、水素分離用のパラジウム薄膜またはパラジウム合金薄膜を備える水素分離膜。
  7. 請求項6に記載の水素分離膜の上流側に位置する水素含有混合気体を、下流側に水素透過分離するにあたり、下流側の水素分圧を前記上流側の水素分圧未満とすることを特徴とする水素含有混合気体からの水素の分離方法。
  8. ア)10μm以下の繊維径dと該繊維径dの1〜20倍の平均長さLを持つ金属短繊維から形成される金属短繊維焼結体を表面部分に有する多孔性金属基材を準備する準備段階と、
    イ)前記多孔性金属基材を、温度400〜850℃の酸化雰囲気中での加熱処理、又はアルカリ液への浸漬処理によって、その表面に酸化皮膜を形成する表面酸化処理の段階と、
    ウ)該酸化皮膜を備える前記多孔性金属基材のいずれか一面側に、外表面に凹部を有し、前記多孔性金属基材が有する空孔よりも微細な空孔を持つセラミックス多孔体の層を複合処理する複合処理段階と、
    エ)その複合処理の後に乾燥する乾燥段階とを備え、
    前記複合処理段階は、前記多孔性金属基材のいずれか一面側に金属アルコキシド溶液を付与することにより、前記多孔性金属基材の表面における細孔内に前記金属アルコキシド溶液を浸入させつつ、前記多孔性金属基材の構成材の露出表面を連続して覆う工程を有することを特徴とする多孔性フィルターの製造方法。
  9. 前記セラミックス多孔体の層は、金属アルコキシドの加水分解によるものである請求項8に記載の多孔性フィルターの製造方法。
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