JP6805306B1 - 電子ビーム生成用カソード部材用の焼結材、該焼結材の製造に用いられる溶製材の製造方法、および該焼結材の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
金属イリジウム、および、
イリジウムとセリウムのうちの1以上の元素の酸化物
のうちの1以上の副成分の含有量が合計で5質量%以下である、態様1または2に記載の電子ビーム生成用カソード部材用の溶製材または焼結材である。
金属セリウム原料の変質部を機械的に除去した後、酸洗処理と水洗処理を1回以上行う金属セリウム原料の前処理工程と、
前記前処理後の金属セリウム原料と、金属イリジウム原料を溶解して溶製材を得る溶解工程と
を含む電子ビーム生成用カソード部材用の溶製材の製造方法である。
金属セリウム原料の変質部を機械的に除去した後、酸洗処理と水洗処理を1回以上行う金属セリウム原料の前処理工程と、
前記前処理後の金属セリウム原料と、金属イリジウム原料を溶解して溶製材を得る溶解工程と、
前記溶製材を粉砕して粉砕物を得る粉砕工程と、
前記粉砕物を高温高圧雰囲気で焼結する焼結工程と
を含む電子ビーム生成用カソード部材用の焼結材の製造方法である。
以下、本発明の溶製材と焼結材の成分組成についてまず説明する。
本発明において酸素濃度を低減するには、イリジウムとセリウムの少なくとも1つを含む酸化物の低減が有効であること、特に、酸化物の中でもCe酸化物が多くを占め、このCe酸化物の低減が、溶製材または焼結材の酸素濃度の低減に大きく寄与すること、そして、溶製材または焼結材にCe酸化物が含まれうる最大の原因が、溶製材または焼結材の製造に用いられる、金属セリウム原料に付着する酸化物等の変質部であることをまず突き止めた。
酸化膜等の変質部を有する金属セリウム原料として、例えば上述した市販の金属セリウム原料が挙げられる。金属セリウム原料は、その形状が、例えば円相当直径で5〜10mm程度の不定形塊状のものが挙げられる。また、その純度が後記の実施例に示す通り3N相当、またはより高い純度のものを用いることができる。
溶解に用いる金属イリジウム原料の態様は特に問わない。後述する実施例に示す通り、粉末状のイリジウムを用いることができる。
前記溶製材を粉砕し、得られた粉砕物を焼結して本発明の焼結材を得る。粉砕前には、必要に応じて、溶製材から粉砕用原料サイズに機械加工で切り出してもよい。また粉砕前に必要に応じて、粉砕用原料の表面を研磨処理し、表面酸化膜、変質層の除去を行ってもよい。粉砕の雰囲気は、素材が、活性な元素であるセリウムを多量に含有しているため、大気雰囲気下ではなく、例えばアルゴン等の不活性ガス雰囲気下とすることが望ましい。粉砕方法は、特に限定されず、例えば、不活性ガスで満たされたグローブボックス内で粉砕すること等が挙げられる。粉砕物のサイズとして、例えば体積基準の平均粒子径が45μm〜90μmの範囲とすることができる。
前記粉砕物を高温高圧雰囲気で焼結する。例えば前記粉砕物を焼結型に充填し、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下で、放電プラズマ焼結法により焼結材を作製することができる。前記放電プラズマ焼結法の条件は、例えば、加熱温度:1400〜1600℃、加圧力:25〜50MPaとすることができる。前記放電プラズマ焼結法の代わりに、ホットプレス焼結法で焼結することもできる。
電子ビーム生成用カソード部材用の溶製材の製造に、オイル中に保管された状態の市販の金属セリウム原料(純度3N)と、金属イリジウム原料としてイリジウム粉末(純度3N相当)を用いた。
まず本発明者らは、金属セリウム原料の表面を、ルータを用いて研削し、酸化膜等の表面変質層を除去した。その後、酸洗処理を行った。酸洗処理では硝酸水溶液(硝酸:水(体積比)=1:6、温度:25℃)に、前記表面研削後の金属セリウム原料を1分間以下浸漬させ、残存する酸化膜等の変質部を除去した。酸洗処理後、純水で水洗処理を行って金属セリウム原料に付着した酸を除去した。この酸洗処理と水洗処理の組み合わせを5回実施して、金属セリウム原料を準備した。
上記前処理を行った金属セリウム原料と、前記イリジウム粉末とを、原料全体に占めるセリウムの含有量が26.71質量%で残部がイリジウムとなるよう配合し、高純度のArガスを用いたプラズマアーク溶解法で溶解し、インゴットを得た。比較例として、金属セリウム原料の前処理を行わなかった以外は上記と同様にして作製したインゴットも用意した。
前記インゴットの酸素濃度を、不活性ガス融解法を用いて測定した。その結果、本発明の製造方法で作製したインゴットの酸素濃度は0.0005質量%であった。一方、前記比較例として作製したインゴットの酸素濃度は0.059質量%であった。これらの結果から、本発明の製造方法で作製したインゴットの酸素濃度は、前処理を行っていないインゴットの酸素濃度よりも1桁以上低くなったことがわかる。
走査型電子顕微鏡(SEM)にて倍率100倍と倍率500倍でインゴットの中央部を観察した結果を、図1に示す。図1(a)の破線囲み部分の拡大写真が、図1(b)の写真であり、図1(a)が倍率100倍、図1(b)が倍率500倍である。また図2に、図1(b)の破線囲み部分の拡大写真とEDX分析結果を示す。詳細には、図2(a)は、図1(b)の破線囲み部分を拡大した倍率2000倍の走査型電子顕微鏡観察写真であり、図2(b)に示す表は、図2(a)に示した符号1〜4の各部位のEDX分析結果を示しており、数値の単位は原子%(atom%)である。
前記図1(a)の倍率100倍の走査型電子顕微鏡写真において、黒色部分であって、円相当直径が1.00ミクロン以上のものを対象に、画像解析ソフト(WINROOF)でカウントした。その結果、副成分の合計個数密度は1mm2あたり1542個であった。
得られたインゴットの中央においてX線回折(XRD)分析を行った。その結果を図3に示す。図3の下方には、Ir2CeとCeO2のそれぞれのX線回折パターンも併せて示す。得られたインゴットのX線回折パターンと、Ir2CeとCeO2のX線回折パターンとの対比から、得られたインゴットの主相はIr2Ceであった。また、この主相以外に、副成分としてごく微量のCeO2が含まれることがわかった。図3に示されたIr2Ceに起因するピークとCeO2に起因するピークとの比率から、得られたインゴットは、所望とするイリジウムとセリウムからなる化合物を90質量%以上含み、かつ副成分は5質量%以下であることがわかった。
本実施例では、溶解バッチが異なるのみで、その他は前記評価に用いたインゴットと製造条件を同じとしたインゴットを用い、焼結材を作製した。この焼結材の製造に使用したインゴットのX線回折(XRD)分析結果を図4に示す。図4から、本実施例の焼結材の製造に用いたインゴットはIr2Ceの単相であり、副成分であるCe酸化物はX線回折では検出されなかった。すなわち本実施例において、焼結材の製造に用いられるインゴットは、イリジウムとセリウムからなる化合物を90質量%以上含むものであり、副成分は合計で5質量%以下であった。
前記焼結材の酸素濃度を、不活性ガス融解法を用いて測定した。その結果、焼結材の酸素濃度は0.029質量%であり、前記酸洗処理を施していないインゴットと比較して十分に低い値であった。すなわち本発明によれば、焼結工程を経て得られた焼結材も、酸素濃度が十分に抑えられていた。
上記焼結材を直径位置で切断し、切断面の組織観察を行った。走査型電子顕微鏡(SEM)にて複数の倍率で切断面の中央部を観察した結果を、図5A〜図5Eに示す。詳細には、図5Aが倍率200倍の顕微鏡観察写真であり、図5Aの破線囲み部分を拡大した、倍率500倍の顕微鏡観察写真が、図5Bと図5Cである。図5Cの破線囲み部分を拡大した、倍率2000倍の顕微鏡観察写真が図5Dである。そして図5Dの破線囲み部分を拡大した、倍率10000倍の顕微鏡観察写真が図5Eである。図5Bに示された黒色部分には、ボイドが多数存在していたが、該視野内に占めるボイドの面積率は約3%であった。更に、図5Eにおける符号A〜CおよびEの各箇所のEDX分析結果を図6A〜図6Dに示す。
Claims (9)
- イリジウムとセリウムからなる化合物を90質量%以上含み、酸素濃度が0.055質量%以下である、電子ビーム生成用カソード部材用の焼結材。
- 前記イリジウムとセリウムからなる化合物は、Ir2Ce、Ir3Ce、Ir7Ce2およびIr5Ceよりなる群から選択される1種以上である、請求項1に記載の電子ビーム生成用カソード部材用の焼結材。
- 金属イリジウム、および、
イリジウムとセリウムのうちの1以上の元素の酸化物
のうちの1以上の副成分の含有量が合計で5質量%以下である、請求項1または2に記載の電子ビーム生成用カソード部材用の焼結材。 - 前記副成分のサイズが円相当直径で100μm以下である、請求項3に記載の電子ビーム生成用カソード部材用の焼結材。
- 前記副成分の合計個数密度が6000個/mm2以下である、請求項3または4に記載の電子ビーム生成用カソード部材用の焼結材。
- 前記副成分の合計個数密度が2000個/mm2以下である、請求項3または4に記載の電子ビーム生成用カソード部材用の焼結材。
- 金属イリジウム、および、イリジウムとセリウムのうちの1以上の元素の酸化物を含まない、請求項1または2に記載の電子ビーム生成用カソード部材用の焼結材。
- 請求項1〜7のいずれかに記載の電子ビーム生成用カソード部材用の焼結材の製造に用いられる溶製材の製造方法であって、
金属セリウム原料の変質部を機械的に除去した後、酸洗処理と水洗処理を1回以上行う金属セリウム原料の前処理工程と、
前処理工程を経た金属セリウム原料と、金属イリジウム原料とを溶解して溶製材を得る溶解工程と
を含む、電子ビーム生成用カソード部材用の溶製材の製造方法。 - 請求項1〜7のいずれかに記載の電子ビーム生成用カソード部材用の焼結材の製造方法であって、
金属セリウム原料の変質部を機械的に除去した後、酸洗処理と水洗処理を1回以上行う金属セリウム原料の前処理工程と、
前処理工程を経た金属セリウム原料と、金属イリジウム原料とを溶解して溶製材を得る溶解工程と、
前記溶製材を粉砕して粉砕物を得る粉砕工程と、
前記粉砕物を高温高圧雰囲気で焼結する焼結工程と
を含む、電子ビーム生成用カソード部材用の焼結材の製造方法。
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EP4270441A4 (en) * | 2020-12-25 | 2024-05-22 | Denka Company Ltd | ELECTRON SOURCE, METHOD FOR MANUFACTURING IT AND DEVICE PROVIDED WITH AN ELECTRON SOURCE |
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