JP2023148386A - 磁気記録媒体の軟磁性層用FeCo系合金 - Google Patents

磁気記録媒体の軟磁性層用FeCo系合金 Download PDF

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Abstract

【課題】耐食性及びスパッタリング性に優れたFeCo系合金及びターゲット材の提供。【解決手段】軟磁性層用FeCo系合金は、TCR元素及びTAM元素を含む。残部は、Fe、Co及び不可避的不純物である。各元素の含有率(at%)は、式(1)0.1≦TCR≦10.0、式(2)11.0≦TAM≦25.0、式(3)16.0≦[TCR/2+TAM]≦25.0及び式(4)0.20≦[Fe/(Fe+Co)]≦0.80を満たす。このFeCo系合金は、Fe及び/又はCoを主体とする(Fe,CO)相と、TCR元素又はTAM元素を含む金属間化合物相とからなるミクロ組織を有している。このミクロ組織において、(Fe,Co)相の外部を囲む最小外接円の直径が30μmを超える(Fe,Co)相の数は0個である。【選択図】図1

Description

本発明は、FeCo系合金に関する。詳細には、本発明は、磁気記録媒体の軟磁性層に適したFeCo系合金に関する。
近年、磁気記録媒体の大容量化にともなって、垂直磁気記録方式が採用された媒体(垂直磁気記録媒体)の実用化が進められている。垂直磁気記録媒体では、磁化容易軸は、磁性膜中の媒体面に対して垂直方向に配向する。この垂直磁気記録媒体は、高記録密度に適している。
垂直磁気記録媒体は、磁気記録層と軟磁性層とを有している。垂直磁気記録媒体はさらに、磁気記録層と軟磁性層との間に、シード層、下地膜層等を有している。
軟磁性層は、記録時にヘッドから発生する磁束の広がりを防止して、垂直方向の磁界を確保する。磁気記録媒体の高記録密度化の観点から、飽和磁束密度が高く、非晶質の軟磁性層が求められてきた。このような軟磁性層を形成する材質として、例えば、FeCo系合金が知られている。
一方、軟磁性層には、磁気記録媒体の用途及び使用環境に応じて、高い耐食性も求められている。特開2017-82330号公報(特許文献1)は、飽和磁束密度を著しく低下させることなく、耐食性が改善された軟磁性膜層用合金として、Ge,Ru,Rh,Pd,Re,Os,Ir,Ptを一種以上、Sc,Y,ランタノイド(原子番号57~71)、Ti,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Mo,W,Bを1種以上、残部Fe,Co及び不可避的不純物からなり、各元素の含有率が所定の関係を満たす合金を開示している。
特開2017-82330号公報
FeCo系合金からなる軟磁性層は、通常、その材質がFeCo系合金であるターゲット材を用いたマグネトロンスパッタリングにより得られる。ターゲット材をなす合金の磁気特性が高い場合、スパッタリング時の放電が不安定となり、軟磁性層の生産性が低下する傾向にある。この傾向は、厚肉のターゲット材を使用した場合に顕著である。高い耐食性を有する軟磁性層を効率よく生産することができるターゲット材及びこのターゲット材に適したFeCo系合金は、未だ提案されていない。
本発明の目的は、厚肉のターゲット材においてもスパッタリング性に優れ、かつ、高い耐食性を有する軟磁性層が得られうるFeCo系合金の提供にある。
本発明者らは、所定の組成を有するFeCo系合金において、Fe及びCoを主体とする(Fe,Co)相と、金属化合物相とからなるミクロ組織が形成されており、磁性層である(Fe,Co)相が、非磁性金属元素を含む金属化合物相により分断されることで、磁気特性が低下することに着目した。そして、本発明者らは、鋭意検討の結果、このミクロ組織を制御することにより、厚肉のターゲット材においても安定したスパッタリングが可能となることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明の一実施形態に係る磁気記録媒体の軟磁性層用FeCo系合金は、Ru及びReから選択される1種以上のTCR元素と、Zr、V、Nb、Ta、Mo及びWから選択される1種以上のTAM元素と、を含む。その残部は、Fe、Co及び不可避的不純物である。このFeCo系合金では、TCR元素の合計含有率TCR(at%)、TAM元素の合計含有率TAM(at%)、並びに、Fe及びCoの含有率(at%)が、下記式(1)-(4)を全て満たす。
(1)0.1≦TCR≦10.0
(2)11.0≦TAM≦25.0
(3)16.0≦[TCR/2+TAM]≦25.0
(4)0.20≦[Fe/(Fe+Co)]≦0.80
さらにこのFeCo系合金は、Fe及び/又はCoを主体とする(Fe,Co)相と、TCR元素又はTAM元素を含有する金属間化合物相とから形成されるミクロ組織を有している。このミクロ組織において、(Fe,Co)相の外部を囲む最小外接円の直径が30μmを超える(Fe,Co)相の数は0個である。
本発明の他の実施形態に係る磁気記録媒体の軟磁性層用FeCo系合金は、Ru及びReから選択される1種以上のTCR元素と、Zr、V、Nb、Ta、Mo及びWから選択される1種以上のTAM元素と、を含む。その残部は、Fe、Co及び不可避的不純物である。このFeCo系合金では、TCR元素の合計含有率TCR(at%)、TAM元素の合計含有率TAM(at%)、並びに、Fe及びCoの含有率(at%)が、下記式(1)-(4)を全て満たす。
(1)0.1≦TCR≦10.0
(2)11.0≦TAM≦25.0
(3)16.0≦[TCR/2+TAM]≦25.0
(4)0.20≦[Fe/(Fe+Co)]≦0.80
さらにこのFeCo系合金は、Fe及び/又はCoを主体とする(Fe,Co)相と、TCR元素又はTAM元素を含有する金属間化合物相とから形成されるミクロ組織を有している。このミクロ組織の無作為に選択された面積3250μmの視野において、(Fe,Co)相の内部に描くことができる最大内接円の直径が1.8μm以上であり、かつ、この相の外部を囲む最小外接円の直径が30μm以下である(Fe,Co)相の数は、5個以上である。
他の観点によれば、本発明に係る磁気記録媒体の軟磁性層用スパッタリングターゲット材の材質は、FeCo系合金である。このFeCo系合金は、Ru及びReから選択される1種以上のTCR元素と、Zr、V、Nb、Ta、Mo及びWから選択される1種以上のTAM元素と、を含む。その残部は、Fe、Co及び不可避的不純物である。このFeCo系合金では、TCR元素の合計含有率TCR(at%)、TAM元素の合計含有率TAM(at%)、並びに、Fe及びCoの含有率(at%)が、下記式(1)-(4)を全て満たす。
(1)0.1≦TCR≦10.0
(2)11.0≦TAM≦25.0
(3)16.0≦[TCR/2+TAM]≦25.0
(4)0.20≦[Fe/(Fe+Co)]≦0.80
さらにこのFeCo系合金は、Fe及び/又はCoを主体とする(Fe,Co)相と、TCR元素又はTAM元素を含有する金属間化合物相とから形成されるミクロ組織を有している。このミクロ組織において、(Fe,Co)相の外部を囲む最小外接円の直径が30μmを超える(Fe,Co)相の数は0個である。
さらに他の観点によれば、本発明に係る磁気記録媒体の軟磁性層用スパッタリングターゲット材の材質は、FeCo系合金である。このFeCo系合金は、Ru及びReから選択される1種以上のTCR元素と、Zr、V、Nb、Ta、Mo及びWから選択される1種以上のTAM元素と、を含む。その残部は、Fe、Co及び不可避的不純物である。このFeCo系合金では、TCR元素の合計含有率TCR(at%)、TAM元素の合計含有率TAM(at%)、並びに、Fe及びCoの含有率(at%)が、下記式(1)-(4)を全て満たす。
(1)0.1≦TCR≦10.0
(2)11.0≦TAM≦25.0
(3)16.0≦[TCR/2+TAM]≦25.0
(4)0.20≦[Fe/(Fe+Co)]≦0.80
さらにこのFeCo系合金は、Fe及び/又はCoを主体とする(Fe,Co)相と、TCR元素又はTAM元素を含有する金属間化合物相とから形成されるミクロ組織を有している。このミクロ組織の無作為に選択された面積3250μmの視野において、(Fe,Co)相の内部に描くことができる最大内接円の直径が1.8μm以上であり、かつ、この相の外部を囲む最小外接円の直径が30μm以下である(Fe,Co)相の数は、5個以上である。
本発明に係るFeCo系合金によれば、スパッタリング性に優れたターゲット材が得られる。このFeCo系合金からなるターゲット材は、耐食性の高い軟磁性層の製造に適している。
図1は、本願実施例(No.1)に係るFeCo系合金のミクロ組織が示された走査型電子顕微鏡写真の一例である。 図2は、比較例(No.18)に係るFeCo系合金のミクロ組織が示された走査型電子顕微鏡写真の一例である。 図3は、図1のミクロ組織における(Fe,Co)相の状態を説明するための解説図である。
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。なお、本願明細書において、範囲を示す「X~Y」は「X以上Y以下」を意味する。
[FeCo系合金]
本発明に係る磁気記録媒体の軟磁性層用FeCo系合金は、Ru及びReから選択される1種以上のTCR元素と、Zr、V、Nb、Ta、Mo及びWから選択される1種以上のTAM元素と、を含む。その残部は、Fe、Co及び不可避的不純物である。このFeCo系合金は、成分組成が下記式(1)-(4)を満たし、かつ、Fe及び/又はCoを主体とする(Fe,Co)相のサイズ及び数が適正なミクロ組織を有している。なお、「Fe及び/又はCoを主体とする(Fe,Co)相」とは、実質的にFe又はCo又はその両方から形成され、他の元素の含有量が無視できる程度である相を意味する。
[(1)0.1≦TCR≦10.0]
このFeCo系合金は、Ru及びReから選択される1種以上のTCR元素の合計含有率が0.1at%以上10.0at%以下である。スパッタリングにより得られる軟磁性層の耐食性が向上するとの観点から、TCR元素の合計含有率TCR(at%)は0.5at%以上が好ましく、1.0at%以上がより好ましく、2.0at%以上がさらに好ましい。飽和磁束密度Bsを過度に低下させないとの観点から、合計含有率TCR(at%)は、9.0at%以下が好ましく、7.0at%以下がより好ましく、5.0at%以下がさらに好ましい。
[(2)11.0≦TAM≦25.0]
このFeCo系合金は、Zr、V、Nb、Ta、Mo及びWから選択される1種以上のTAM元素の合計含有率が、11.0at%以上25.0t%以下である。FeCo系合金の非晶質性を高め、かつ、Fe及び/又はCoとの金属間化合物の形成に寄与するとの観点から、TAM元素の合計含有率TAM(at%)は、12.0at%以上が好ましく、13.5at%以上がより好ましく、15.0at%以上がさらに好ましい。飽和磁束密度Bsを過度に低下させないとの観点から、合金含有率TAM(at%)は、23.0at%以下が好ましく、21.0at%以下がより好ましく、20.0at%以下がさらに好ましい。
[(3)16.0≦[TCR/2+TAM]≦25.0]
TCR元素及びTAM元素は、非磁性金属元素であり、いずれも、飽和磁束密度Bsの低下に寄与しうる。TCR元素の合計含有率TCRと、TAM元素の合計含有率TAMとから算出される値[TCR/2+TAM]を16.0at%以上25.0at%以下に制御することにより、磁気記録媒体の軟磁性層に必要とされる磁気特性を確保することができる。適正な飽和磁束密度Bsが得られるとの観点から、値[TCR/2+TAM]は、17.0at%以上が好ましく、18.0at%以上がより好ましい。飽和磁束密度Bsが過度に低下しないとの観点から、値[TCR/2+TAM]は、23.0t%以下が好ましく、20.0at%以下がより好ましい。
[(4)0.20≦[Fe/(Fe+Co)]≦0.80]
FeCo系合金の主成分は、Fe及びCoである。Fe及びCoを主成分として形成される軟磁性層は、飽和磁束密度Bsに優れる。ここで、主成分とは、Fe及びCoの合計含有率が少なくとも50at%であることを意味する。磁気記録媒体に適した軟磁性層が得られるとの観点から、Fe及びCoの合計含有率(at%)に対するFeの含有率(at%)の比[Fe/(Fe+Co)]は、0.20以上0.80以下であり、0.30以上0.70以下が好ましく、0.40以上0.65以下がより好ましい。
[ミクロ組織]
本発明に係るFeCo系合金は、Fe、Co、TCR元素及びTAM元素を、前述した成分組成で含有していることに加えて、磁性相である(Fe,Co)相のサイズ及び数が制御されたミクロ組織を有している。このミクロ組織によって、FeCo系合金の磁気特性が適正な範囲に低下することで、厚肉のターゲット材によっても安定したスパッタリングが可能になる。さらには、厚肉のターゲット材の使用が可能となることで軟磁性層の生産効率が向上し、結果として、磁気記録媒体の生産性が向上する。
具体的には、このFeCo系合金のミクロ組織は、Fe及び/又はCoを主体とする(Fe,Co)相と、TCR元素又はTAM元素を含む金属間化合物相とから形成されている。本願明細書において、「TCR元素又はTAM元素を含む金属間化合物相」とは、その比率によらず、TCR元素又はTAM元素と、Fe及び/又はCoとの反応によって形成される金属間化合物の相を意味する。
このFeCo系合金のミクロ組織を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察するとき、無作為に選択された面積3250μmの視野において、その内部に描くことができる最大内接円の直径が1.8μm以上であり、かつ、その外部を囲む最小外接円の直径が30μm以下である(Fe,Co)相の数は5個以上である。ここで、「その内部に描くことができる最大内接円の直径が1.8μm以上であり、かつ、その外部を囲む最小外接円の直径が30μm以下である(Fe,Co)相の数が5個以上」とは、換言すれば、このミクロ組織では、磁性相である(Fe,Co)相の多くが分断されていて、同相によるネットワーク化が抑制されたミクロ組織に制御されていることを意味する。(Fe,Co)相のネットワーク化が抑制されるとは、相対的に、非磁性相である金属間化合物相のネットワーク化が進行し、金属間化合物相による(Fe,Co)相の分断が促進され、その結果、(Fe,Co)相によるネットワークの全長が短くなることを意味する。形成される(Fe,Co)相の総面積は合金組成により決定されるので、(Fe,Co)相のネットワークの全長が短くなれば、その幅は大きくなる。これは、最小外接円の直径が小さく、かつ、最大内接円の直径が大きい(Fe,Co)相の個数が増加することを意味する。
他の観点から、本発明に係るFeCo系合金のミクロ組織を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察するとき、その外部を囲む最小外接円の直径が30μmを超える(Fe,Co)相の数は0個である。ここで、「その外部を囲む最小外接円の直径が30μmを超える(Fe,Co)相の数は0個」とは、換言すれば、このミクロ組織では、(Fe,Co)相が金属間化合物相により分断され、その結果、(Fe,Co)相の過大なネットワーク化が抑制されていることを意味する。
ここで、「最大内接円」とは、(Fe,Co)相の内部に包含される仮想の円のうち、直径が最大となる円であり、(Fe,Co)相の輪郭と少なくとも2点で内接し、この輪郭と交差せずに描かれうる最大の円として定義される。また、「最小外接円」とは、(Fe,Co)相を内包することができる仮想の円のうち、直径が最小となる円であり、(Fe,Co)相の輪郭と少なくとも2点で外接し、この輪郭と交差せずに描かれうる最小の円として定義される。
以下、図3の走査型電子顕微鏡画像を参照して、本発明に係るFeCo系合金のミクロ組織を具体的に説明する。図3中、黒色部分がFe及び/又はCoを主体とする(Fe,Co)相であり、白色部分がTCR元素又はTAM元素を含む金属間化合物相である。例えば、(Fe,Co)相Bと(Fe,Co)相Cとは、金属間化合物相により分断されている。換言すれば、(Fe,Co)相Bと(Fe,Co)相Cとは、ネットワーク化されていない。また、図3中、符号1で示される破線の円が、(Fe,Co)相Aの最大内接円であり、符号2で示される一点破線の円が、(Fe,Co)相Aの最小外接円である。この(Fe,Co)相Aの内部に描かれる最大内接円の直径は1.8μm以上であり、かつ、(Fe,Co)相Aの外部を囲む最小外接円の直径は、30μm以下である。この(Fe,Co)相Aは部分的にネットワーク化されているが、そのネットワークが過大にならないように制御されている。図3の面積3250μmの視野において、「その内部に直径1.8μm以上の最大内接円を描くことができ、かつ、その外部を囲む最小外接円の直径が30μm以下である(Fe,Co)相」の数Nは5個以上と認められる。また、図3のミクロ組織には、最小外接円の直径が30μmを超える(Fe,Co)相は存在しない。即ち、このミクロ組織では、磁性相である(Fe,Co)相のネットワーク化が抑制されている。
(Fe,Co)相のネットワークが形成されたミクロ組織を有するターゲット材では、(Fe,Co)相のネットワークが磁気回路のように働いて、ターゲット材の内部(即ち、FeCo系合金の内部)で軟磁気特性が向上し、またPTF(Pass Through Flux)が低下するため、マグネトロンスパッタリング時に安定した放電がしにくく、スパッタリング加工が困難になる傾向にある。これに対し、面積3250μmの視野において、その内部に描かれる最大内接円の直径が1.8μm以上であり、かつ、その外部を囲む最小外接円の直径が30μm以下である(Fe,Co)相の数が5個以上のミクロ組織、及び、その外部を囲む最小外接円の直径が30μmを超える(Fe,Co)相の数が0個であるミクロ組織では、Fe及びCo含有率が比較的高い場合でも、(Fe,Co)相同士がネットワーク状に連結することが回避され、かつ、非磁性相である金属間化合物相が(Fe、Co)相により分断されることが回避される。このようなミクロ組織を有するターゲット材では、磁気性能の過剰な増大が抑制され、スパッタリング時の放電安定性が向上する。この観点から、面積3250μmの視野において、その内部に直径1.8μm以上の最大内接円を描くことができ、かつ、その外部を囲む最小外接円の直径が30μm以下である(Fe,Co)相の数は、6個以上が好ましく、8個以上がより好ましく、10個以上がさらに好ましい。
本願明細書において、「その内部に直径1.8μm以上の最大内接円を描くことができ、かつ、その外部を囲む最小外接円の直径が30μm以下である(Fe,Co)相の数」は、試験片のSEM観察をおこなって、視野面積が3250μmとなるように、例えば、縦50μm、横65μmの視野を無作為に選択して、最大内接円の直径が1.8μm以上であり、かつ、最小外接円の直径が30μm以下である(Fe,Co)相を計数することにより得られる。また、「その外部を囲む最小外接円の直径が30μmを超える(Fe,Co)相の数」は、得られたSEM画像において、最小外接円の直径が30μmを超える(Fe,Co)相を計数することにより求めることができる。なお、(Fe,Co)相の内部に描くことのできる最大内接円の直径及びその外部を囲む最小外接円の直径は、SEM画像を画像処理することにより測定される。画像処理には、市販の画像解析ソフトが用いられうる。
[スパッタリングターゲット材]
本発明に係るスパッタリングターゲット材の材質は、前述した成分組成及びミクロ組織を有するFeCo系合金である。このターゲット材は、磁気記録媒体の軟磁性層の製造に適している。
このターゲット材は、例えば、原料である合金粉末をHIP成形(熱間等方圧プレス)して成形体を形成し、この成形体を機械的手段等で適正な形状に加工することにより得られうる。HIP成形の、好ましい圧力は90~150MPaであり、好ましい温度は1000~1200℃である。
本発明に係るFeCo系合金からなる粉末は、アトマイズによって得られうる。好ましいアトマイズは、ガスアトマイズである。この合金粉末に、必要に応じ、分級(例えば、目開き300μmの篩を用いた篩分級)がなされる。この分級後の粉末が、HIP成形に用いられうる。
好ましくは、平均粒子径が10μm以上80μm以下の合金粉末を原料として得られるターゲット材である。平均粒子径が10μm未満の合金粉末では、外周部の酸素値が増加する。そのため、スパッタリング時に、酸化物に起因するパーティクルの発生が増加しやすい。パーティクル発生低減の観点から、より好ましくは15μm以上、さらに好ましくは20μm以上の平均粒子径に調整した合金粉末を原料として得られるターゲット材である。また、平均粒子径が80μmを超える合金粉末を用いて得られるターゲット材では、ミクロ組織に形成される(Fe,Co)相のサイズが小さくなり、磁気性能が低下する場合がある。この観点から、より好ましくは70μm以下、さらに好ましくは60μm以下の平均粒子径に調整した合金粉末を原料として得られるターゲット材である。
本願明細書において、特に記載がない限り、「平均粒子径」は、レーザー回折散乱法により得られる体積基準の累積カーブにおいて、累積体積が50%である点の粒子径D50(メジアン径)である。FeCo系合金粉末の平均粒子径D50は、例えば、市販のレーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置により測定される。この装置のセル内に、合金粉末が純水と共に流し込まれ、得られる粒子の光散乱情報に基づいて、累積カーブが作成され、平均粒子径D50が求められる。この装置の一例として、日機装社の「マイクロトラックMT3000」が挙げられる。
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。なお、特に言及がない限り、試験温度は、全て室温(25℃±5℃)である。
[原料粉末の製造]
表1-2に示される組成となるように、各原料を秤量して、耐火物からなる坩堝に投入して、減圧下、Arガス雰囲気又は真空雰囲気で、誘導加熱により溶解した。その後、溶解した溶湯を、坩堝下部に設けられた小孔(直径8mm)から流出させ、高圧のArガスを用いてガスアトマイズすることにより、実施例No.1-13及び比較例No.14-21のFeCo系合金粉末を得た。
[スパッタリングターゲット材の製造]
実施例No.1-13及び比較例No.14-21のFeCo系合金粉末を、それぞれ、以下の手順によりHIP成形(熱間等方圧プレス)して、スパッタリングターゲット材を製造した。
始めに、得られた合金粉末を、目開き300μmの篩を用いて分級した。分級後の合金粉末の平均粒子径(メジアン径)を前述した方法により測定した結果が、下表1-2に示されている。
次に、篩分級後の粉末を、炭素鋼で形成された缶(直径120mm、長さ20mm)に充填して真空脱気した後、HIP装置を用いて、温度1000~1200℃、圧力90~150MPa、保持時間5~10時間の条件で焼結し、焼結体を作製した。この焼結体を、ワイヤーカット、旋盤加工及び平面研磨により加工して、直径95mm、厚さ5mmの円盤状のスパッタリングターゲット材を作製した。
[走査型電子顕微鏡観察]
得られたターゲット材No.1-21から、それぞれ試験片を採取して、各試験片の断面を研磨した。各試験片の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察し、縦50μm、横65μm(面積3250μm)の領域を無作為に選択して、10視野撮影した。その後、画像解析をおこなって、(Fe,Co)相に描かれる最大内接円の直径と、最小外接円の直径とを測定し、直径1.8μm以上の最大内接円を描くことができ、かつ、最小外接円の直径が30μm以下である(Fe,Co)相の数を記録した。10視野で計測した数値の平均値が、数N1として下表1-2に示されている。同様に、最小外接円の直径が30μmを超える(Fe,Co)相の数を記録した。10視野で計測した結果が、数N2として下表1-2に示されている。
No.1及びNo.18のターゲット材について得られたSEM画像が、それぞれ図1及び図2に示されている。図中、矢印で示された黒色部分が(Fe,Co)相であり、白色部分が、TCR元素又はTAM元素を含む金属間化合物相である。図1に示される通り、実施例であるNo.1のミクロ組織には、その内部に直径1.8μm以上の最大内接円を描くことができ、かつ、その外部を囲む最小外接円の直径が30μm以下の(Fe,Co)相を、面積3250μmの視野中、5個以上確認することができる。また、No.1のミクロ組織には、最小外接円の直径が30μmを超える(Fe,Co)相が存在せず、(Fe,Co)相のネットワーク化が抑制されていることを確認した。一方、図2に示される通り、比較例であるNo.18のミクロ組織では、最小外接円の直径30μmを超える最小外接円を有する(Fe,Co)相が複数確認された。また、No.18のミクロ組織中、最大内接円の直径が1.8μm以上、かつ、最小外接円の直径が30μm以下(Fe.Co)相の数N1は5未満であった。
[スパッタリング性評価]
得られたターゲット材No.1-21(厚さ5mm)を用いて、DCマグネトロンスパッタにて、以下の条件でスパッタリングをおこなって、放電状態の安定性を評価した。評価結果が、下表1-2に示されている。表中、安定して放電したものがA、放電が不安定だったものがB、放電しなかったものがCとして示されている。
基板:ガラス基板(厚さ1mm)
チャンバー内雰囲気:アルゴンガス(純度99.99%)
チャンバー内圧:圧力0.6Pa
[合金薄膜の物性]
前述の条件でのスパッタリングにより作成し合金薄膜(厚さ500nm)の飽和磁束密度Bs(T)、非晶質性及び耐食性を評価した。なお、放電不安定(評価:B)又は放電不能(評価:C)だったNo.14、15及び18-21については、ターゲット材の厚さを2mmに変更してスパッタリングをおこない、合金薄膜(厚さ500nm)を作成して評価した。各評価方法の詳細は、以下の通りである。
[飽和磁束密度Bs]
VSM装置(振動試料型磁力計)を使用し、印加磁場1200kA/mで、室温における飽和磁束密度Bsを測定した。なお、飽和磁束密度Bsの算出に必要な試料の体積は、合金薄膜の面積と、透過型電子顕微鏡(TEM)観察で求めた合金薄膜の厚さとから算出した。得られた結果が、下表1-2に示されている。
[非晶質性]
ガラス板に両面テープで合金薄膜を貼り付け、X線回折装置にて回折パターンを得た。回折の条件は、下記の通りである。
X線源:Cu-Kα線
スキャンスピード:4°/min
非晶質材料のX線回折パターンでは、回折ピークが見られず、非晶質特有のハローパターンが得られる。不完全な非晶質材料のX線回折パターンでは、回折ピークは見られるが、結晶質材料の回折ピークと比較するとピークの高さが低く、かつハローパターンも見られる。そこで、下記の基準に基づき、格付けをおこなった。この結果が、下記の表1-2に示されている。
A:ハローパターンが見られる
C:ハローパターンが見られない
[耐食性]
スパッタリング後の合金薄膜をガラス基板毎10×25mmに切り出して、10質量%の硝酸溶液10mlに浸漬した。60min浸漬後の硝酸溶液を採取して試験液とし、誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析装置により、試験液中のFeイオン及びCoイオンの含有量を定量した。得られたFeイオン及びCoイオンの合計量を、試験液の容積で除すことにより算出した値が、溶出量(mg/l)として下表1-2に示されている。
Figure 2023148386000002
Figure 2023148386000003
表1のNo.1-13は実施例のFeCo系合金であり、表2のNo.14-21は比較例のFeCo系合金である。表1に示される通り、実施例のFeCo系合金によれば、厚さ5mmのターゲット材を用いた安定したスパッタリングが可能であり、耐食性に優れた軟磁性層となりうる合金薄膜を得ることができた。
これに対し、No.14は、TCR元素を含まず、値[TCR/2+TAM]が低く、所定のサイズの(Fe,Co)相の数N1も少なく、大きくネットワーク化された(Fe,Co)相の数N2が多い。そのため、No.14は、飽和磁束密度Bsが高く、厚さ5mmのターゲット材でのスパッタリングが不安定であり、得られる合金薄膜は非晶質性及び耐食性に劣るものであった。
No.15は、TAM元素が少なく、値[TCR/2+TAM]が低く、所定のサイズの(Fe,Co)相の数N1も少なく、大きくネットワーク化された(Fe,Co)相の数N2が多い。そのため、No.15は、飽和磁束密度Bsが高く、厚さ5mmのターゲット材でのスパッタリングが不安定であり、得られる合金薄膜は非晶質性に劣るものであった。
No.16は、TCR元素が過剰であり、値[TCR/2+TAM]が高いため、飽和磁束密度Bsが過度に低い合金薄膜となった。また、No.17は、TAM元素が過剰であり、値[TCR/2+TAM]が高いため、飽和磁束密度Bsが過度に低い合金薄膜となった。
No.18-20は、成分組成が適切であるものの、所定のサイズの(Fe,Co)相の数N1が少なく、大きくネットワーク化された(Fe,Co)相の数N2が多いため、厚さ5mmのターゲット材では放電できなかった。No.21は、Fe含有量が高いために飽和磁束密度Bsが低くなり、所定サイズの(Fe,Co)相の数N1も少なく、大きくネットワーク化された(Fe,Co)相の数N2が多いため、安定したスパッタリングができなかった。
表1及び2に示されるように、本発明に係るFeCo系合金から、諸性能に優れた軟磁性層が得られうる。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。
以上説明されたFeCo系合金は、種々の磁気記録媒体の軟磁性層に適している。
1・・・最大内接円
2・・・最小外接円

Claims (3)

  1. Ru及びReから選択される1種以上のTCR元素と、Zr、V、Nb、Ta、Mo及びWから選択される1種以上のTAM元素と、を含み、その残部がFe、Co及び不可避的不純物であり、
    上記TCR元素の合計含有率TCR(at%)、上記TAM元素の合計含有率TAM(at%)、並びに、Fe及びCoの含有率(at%)が、下記式(1)-(4)を全て満たし、
    (1)0.1≦TCR≦10.0
    (2)11.0≦TAM≦25.0
    (3)16.0≦[TCR/2+TAM]≦25.0
    (4)0.20≦[Fe/(Fe+Co)]≦0.80
    Fe及び/又はCoを主体とする(Fe,Co)相と、上記TCR元素又は上記TAM元素を含む金属間化合物相とからなるミクロ組織を有しており、
    上記ミクロ組織において、(Fe,Co)相の外部を囲む最小外接円の直径が30μmを超える(Fe,Co)相の数が0個である、磁気記録媒体の軟磁性層用FeCo系合金。
  2. Ru及びReから選択される1種以上のTCR元素と、Zr、V、Nb、Ta、Mo及びWから選択される1種以上のTAM元素と、を含み、その残部がFe、Co及び不可避的不純物であり、
    上記TCR元素の合計含有率TCR(at%)、上記TAM元素の合計含有率TAM(at%)、並びに、Fe及びCoの含有率(at%)が、下記式(1)-(4)を全て満たし、
    (1)0.1≦TCR≦10.0
    (2)11.0≦TAM≦25.0
    (3)16.0≦[TCR/2+TAM]≦25.0
    (4)0.20≦[Fe/(Fe+Co)]≦0.80
    Fe及び/又はCoを主体とする(Fe,Co)相と、上記TCR元素又は上記TAM元素を含む金属間化合物相とからなるミクロ組織を有しており、
    上記ミクロ組織の無作為に選択された面積3250μmの視野において、(Fe,Co)相の内部に描くことができる最大内接円の直径が1.8μm以上であり、かつ、その相の外部を囲む最小外接円の直径が30μm以下である(Fe,Co)相の数が5個以上である、磁気記録媒体の軟磁性層用FeCo系合金。
  3. その材質が請求項1又は2に記載のFeCo系合金である、磁気記録媒体の軟磁性層用スパッタリングターゲット材。
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