JP6285254B2 - 電子ビーム生成用カソード部材およびその製造方法 - Google Patents

電子ビーム生成用カソード部材およびその製造方法 Download PDF

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本発明は電子ビーム生成用カソード部材およびその製造方法に関する。
電子ビーム生成用カソード(陰極)部材には、従来から電流密度を増大させることとともに、その寿命を長寿命化することが求められてきた。
非特許文献1に示されるように、大電流を取り出す熱陰極方式では、昔からタングステン(W)やタンタル(Ta)などが使用されてきており、最近では、6硼化ランタン(LaB)などが用いられるようになった。LaBは、タングステン等に比べて、陰極温度が低くとも大きな電流密度が得られ、さらに同一電流密度では、使用時の蒸発ロス速度が1/100ほどとなり、長寿命化できることが知られている。さらに、Ir−Ce系合金を用いると、同一電流密度を出力する場合の陰極材の蒸発ロス速度が、LaB陰極のさらに1/100〜1/1000となり、著しく長寿命化が可能になるとの報告がされている。
イリジウム−セリウム(Ir−Ce)系陰極材の成分組成としては、IrにCeなどの希土類元素含有量を5〜30質量%ほど添加した合金が、陰極材として有効であり、特にIrCe化合物組成近傍が優れているとの報告がなされている(特許文献1〜3など参照)。
また、最近では、高エネルギー研究機構において、加速器用の陰極(カソード)部材として、IrCe化合物合金を用い、優れた特性が得られるとの報告が出ている(非特許文献2)。
さらに、1969年に刊行された非特許文献3において、Ir−Ce系材料の仕事関数は2.57eV(1300K)であり、同時にIr−La,Ir−Pr,Ir−Nd,Ir−Smなどもほぼ同等との値を示すことが報告されており、これら化合物が有効な陰極となることが予想される。なお、Ir−Ce系陰極材の中では、同一電流密度での蒸発ロス速度は、希土類元素として、Ce,La,Prを比較すると、IrCe合金において、特に蒸発ロス速度が小さくなり、良好であったことが、非特許文献1で報告されており、カソード部材の中心となる化合物はIr−Ce系になると考えられる。
次に、Ir−Ce系化合物合金陰極(カソード)の製造方法としては、以下のような方法が報告されている。
まず、Irは貴金属系の高融点金属(融点2443℃)であり、蒸気圧は低く溶解時の蒸発ロスが少ないのに対して、Ceは希土類元素であり、活性な金属であり、低融点(融点798℃)で、Irに比べて蒸気圧が高いことから、溶解時の蒸発ロスが顕著になる傾向がある。そのため、溶解法としては、不活性ガス雰囲気下でのアーク溶解法が採用されている。アーク溶解法により、多数回の繰り返し溶解を行うことで、ほぼ成分の均一な合金を溶製する事が可能となることが報告されている(特許文献1)。なお、アーク溶解−凝固法で得られる組織は、多結晶体となる。
凝固時の欠陥発生の問題を解決するため、特許文献1では、Ir−Ce合金(Ce濃度範囲:5〜15重量%)の製造法として、粉末Irと粉末Ceとを原料として、メカニカルアロイング(MA)法により、Ir−Ce合金化して、これを真空下で1300〜1800℃において焼結して、焼結固化体を作製している。この方法により作製された陰極材は、通常のアーク溶解法により作製された陰極材より、同一温度での電流密度を、1.4〜2倍ほど向上できたとの報告がでている。これは、インゴット法における材料に比べて、より微細な結晶組織が得られる効果によるものと推定される。
米国特許5773922号 特表2002−527855号公報 特開2002−260520号公報
G.Kuznetsov、「High temperature cathodes for high current density」、Nuclear Instruments and Methods in Physics Reearch A 340(1994年)204−208頁 T.Natsui,M.Yoshida,et.al、「High Charge Low Emittance RF Gun for SUPERKEK」、Proc.IPAC、2012年、1533−1535頁 S.E.Rozhkov,O.K.Kuktashev,A.A.Gugnin:Technical Characteristics of Thermionic Emitters Based on Alloy Ir with La,Ce,Pr.Techniqe,Ser.16, eneratornye,Modulatornye I Rentgenovskiye Pribory, vol2,1969年,81頁 G.I.Kuznetsov、「IrCe Cathode For EBIS」、J.Physics:Conference Series2(2004年)35−41頁
しかしながら、上述した先行技術にはそれぞれ以下の問題があると考えられる。
本発明者らの研究により、特許文献や非特許文献で示されるアーク溶解法により、IrCe化合物組成(12.7重量%)以上のCe濃度であるIr−Ce化合物結晶を溶製すると、凝固させたインゴットに割れ等の欠陥が入りやすくなることが判明した。これは、結晶相がほとんど全て金属間化合物相になるためと考えられる。
よって、単純に、割れ発生の少ないインゴットを製作するという観点からは、Ce濃度を12.7重量%以下として、IrCe結晶相と共に純Ir結晶相が共存する組成とする事が望ましいこととなる。
しかしながら、一方で、電子ビーム用陰極(カソード)部材としての特性向上には、仕事関数が低いCe元素の濃度は高い方が望ましいとも考えられることから、Ce濃度が12.7重量%以上のIr−Ce系合金陰極材でも、安定して製作できる技術の確立が不可欠となる。
また、実際に、溶解凝固させたインゴットから、カソード部材の形状に機械加工を行ってみると、加工時に端部に割れや欠け等が発生したり、微小な穴欠陥が発生したりすることがわかった。これは、一般的には、凝固インゴットの場合は、凝固時に不可避的に発生する引け巣欠陥やガスブローホール欠陥などが存在するためと考えられる。また、凝固インゴットの場合は、結晶粒が大きくなりやすく、粗大な凝固組織となり、機械加工時に割れや欠け等が発生しやすいという問題がある。
本発明者らが、Ir−14重量%Ceという組成の化合物結晶インゴット(500gほど)を従来法の溶解凝固にて製作し、その凝固組織を観察すると、図1(写真1)に示すように、結晶粒の大きさは2000μm以上もあり、その結晶粒内にデンドライト状の凝固組織となって紐状に成長した結晶は、長手方向に2000μm以上に成長した粗大な凝固組織となることが判明した。また、デンドライト状に成長した結晶間の粒界に沿って500μm以上の割れが発生しており、さらに紐状結晶の内部を横断するような長さ100μm前後の細かな割れも発生していることが確認された。
このため、Ir−Ce合金インゴット材を原料素材としてカソード部材の機械加工を行うと、加工時に結晶粒界やミクロな割れ部を起点として、割れや欠けが発生し、特にひずみの大きくなる円柱状カソードのコーナー部などにおいて、欠けや大きな割れの発生につながると考えられる。インゴット内の比較的に健全な領域から加工すれば、健全なカソード部材が得られる可能性はあるが、安定してカソード部材を製作するのは、インゴットを原料素材とするのは困難であることがわかった。
次に、結晶粒を微細化してカソード部材を作製している上記特許文献1の方法は、インゴットから作製する方式に比べて優れた方法であると思われる。しかしながら、メカニカルアロイング(MA)法では、原料の純Irと純Ceとが完全に化合物化できていない可能性が残る。そのため、もし低融点(融点1180℃以下)のIr−Ce化合物(IrCe,IrCe,IrCe,IrCe,IrCe等)が残留していると、カソードとして使用する際に一部が溶融して形状が変形すること、さらにはCeが蒸発ロスしやすくなり、カソード寿命が短くなること、などの問題が予想される。また、MA法で活性金属を処理すると、長時間のMA時にCe等の活性金属の表面酸化が進行するという懸念もある。
次に、電子ビーム生成用カソード部材の製造方法について、非特許文献1や特許文献1などの先行技術におけるカソード部材用材料合金の溶解法としては、アーク溶解法が報告されている。上述したような高融点合金の溶解では、一般的には、耐火物るつぼの適用が困難となることから、水冷銅るつぼを用いて、不活性ガス雰囲気下でのアーク熱により溶解が行われることになる。ただ、水冷銅るつぼを用いる場合、その表面温度は、水蒸気爆発などのような重大な事故発生を防ぐため、すなわち銅るつぼ材の溶損を防ぐため、十分な水冷を行って、銅るつぼ温度が200℃を大きく超えないようにする必要のあることが知られている。
一方、アーク溶解におけるアーク柱(フレーム)の温度は、5000℃〜10000℃にも達すると言われており、アーク柱からの伝熱などにより溶解原料が溶解されて、アーク柱付近には溶湯プールが形成されることとなる。形成された溶湯は、下方に流れ落ちて水冷銅るつぼ表面と接触し、その溶湯は直ちに凝固して水冷銅るつぼに隣接し、凝固層が形成されることとなる。従って、溶湯プールは、そのような凝固相の上部のアーク柱の直下部においてのみで形成されるような溶解状況となる。このため、高融点を有する合金になればなるほど、凝固層が厚くなり、逆に溶湯プールは小さくなっていくことになる。以上のことから、アーク溶解法を用いると、融点が著しく高くなるIrCe(融点2100℃)やIrCe(融点2250℃)などの合金化合物では、十分な容積を有する溶湯プールの形成が困難となり、初期装入原料の成分均一化が難しくなるという問題が発生すると考えられる。
また、Irと化合物化される前の原料段階での金属Ceの状態では、非常に蒸気圧が高いこともあり、高温のアーク柱によりCe原料がIrと合金化する前に蒸発により失われて、目標とする合金組成から外れやすくなる問題も発生する。
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、電子ビーム生成用カソード部材の成分組成上の均質性を維持しつつ、割れや欠けなどの欠陥の発生を抑制したカソード部材並びにその製造方法を提供することを目的とする。
前記課題を解決するために、本発明者は鋭意検討を重ね、下記構成によって上記課題が解決できることを見出した。
すなわち、本発明の一局面に係る電子ビーム生成用カソード部材は、
セリウムを30重量%以下で含み、かつ残部がイリジウムであり、
前記カソード部材を構成する結晶粒の最長長さが500μm以下であり、
前記結晶粒が、IrCe結晶相、IrCe結晶相、IrCe結晶相およびIrCe結晶相から選択される少なくとも1種類以上の結晶相で構成されることを特徴とする。
上記電子ビーム生成用カソード部材において、さらに、結晶粒の最長長さが500μm以下の純イリジウム結晶相を含むことが好ましい。
また、本発明は、上記電子ビーム生成用カソード部材を製造する方法であって、
イリジウム−セリウム原材料を、水冷銅容器を溶解用るつぼとして使用する溶解方式を用いて、不活性化ガス雰囲気下で溶融混合して凝固させた後、粉砕して最長長さが500μm以下である粉体を作製する工程、
得られた粉体を、温度800℃以上1500℃以下、かつ圧力10MPa以上の高温高圧条件下で成型する工程、並びに
得られた成型体を機械加工する工程、を含む電子ビーム生成用カソード部材の製造方法をも包含する。
また、上記電子ビーム生成用カソード部材の製造方法において、IrCe結晶相、IrCe結晶相、IrCe結晶相およびIrCe結晶相から選択される少なくとも1種類以上の結晶相を晶出させる成分組成に調整したイリジウム−セリウム原材料を用いることが好ましい。
上記電子ビーム生成用カソード部材の製造方法において、粉砕工程後、さらに必要に応じて純イリジウム結晶微粉を添加し、その後、成型工程を行うことがより好ましい。
本発明によれば、電子ビーム生成用カソードの成分組成上の均質性を維持しつつ、割れや欠けなどの欠陥の少なく、高電流密度を有するカソード部材並びにその製造方法を提供することができる。
図1は、従来法の溶解凝固にて製作したIrCe合金の溶融凝固インゴットの組織写真を示す。
〔電子ビーム生成用カソード部材〕
以下、本発明に係る電子ビーム生成用カソード部材の実施形態について具体的に説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
本実施形態に係る電子ビーム生成用カソード部材(以下、単に、カソード部材ともいう)は、セリウムを30重量%以下で含み、かつ残部がイリジウムであり、前記カソード部材を構成する結晶粒の最長長さが500μm以下であり、前記結晶粒が、IrCe結晶相、IrCe結晶相、IrCe結晶相およびIrCe結晶相から選択される少なくとも1種類以上の結晶相で構成されることを特徴とする。
このような構成により、高電流密度かつ長寿命の電子ビーム生成用カソード部材を得ることができる。
本実施形態では、セリウムを30重量%以下で含み、かつ残部がイリジウムであるIr−Ce系合金をカソード部材として用いているが、この合金は、従来の電子ビーム生成用カソード原料として使用されていたLaB材に比べて、電流密度が大きくなり、蒸発ロスが少ない事から、長寿命化できることが期待される。
セリウム(Ce)については、一部をその他の希土類元素(Y,La,Pr,Nd,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Luなど)に置き換えることも可能である。
残部となるイリジウム(Ir)は、酸化されにくい貴金属系元素であり、高融点(融点2443℃)な元素であることから、陰極材を高温にして熱電子放出させる際に、高融点材料と組み合わせればより高温にしやすく、電流密度を大きく取りやすくする効果があると考えられる。従って、Irよりさらに高融点な貴金属系合金をベース金属とすることが有望とも考えられ、候補元素としては、オスミウム(Os:融点3027℃)、レニウム(Re:融点3160℃)等が挙げられ得る。ただ、現状ではOs−希土類元素系、あるいはRe−希土類元素系等では、状態図さえも揃っておらず、それらの元素単体で十分には活用できる状況にはないと考えられる。
しかしながら、Ir−Os系、Ir−Re系などの状態図を見ると、IrにOsやReを添加することにより、Irより液相線温度、固相線温度とも高くできる傾向を示すことから、これら元素を適当量添加することは、陰極としての特性向上に寄与しうる可能性がある。これらの添加量については、Ir結晶構造が残る範囲内が適正と考えられることから、添加濃度上限はそれぞれ30at%(モル分率0.3)以下が適切と考えられる。
一方、希土類元素の中では、Ceは仕事関数が小さく(2.9eV)、同時に沸点が希土類元素の中では最も高いことから、蒸気圧も最も低くなることが期待され、希土類元素の中でも最も適正な元素であると考えられる。Ceに近い仕事関数を有し、かつ蒸気圧も低い元素として、イットリウム(Y(3.1eV)),ガドリニウム(Gd(3.1eV)),テルビウム(Tb(3.0eV))等が置換候補として考えられる。ただ、これら元素についても、仕事関数値がCeよりはやや高くなることや、蒸気圧もやや高いことから、単体でCe以上の特性向上が得られるか否かは不明である。しかしながら、Ceの一部を置き換えることによる複合化合物化の効果などは期待できる可能性があると考えられる。
以上のことから、Ir−Ce系合金・化合物からの電子放出は、基本的に仕事関数の小さいCe原子が担っていると考えられる。従って、より効率よく電子生成し、高い電流密度を得るには、Ce濃度を高める事が原理的に有利と考えられる。陰極材からの電子放出のさらなる高電流密度化には、Ceの高濃度化が望ましいと考えられ、Ce含有量の高いIr−Ce化合物であることが好ましい。
一方で、Ce濃度が高くなるほど、Ir−Ce合金中のCeの活量が大きくなり、Ceの蒸発ロス速度が大きくなる可能性が考えられる。その場合は、電流密度は大きくなっても、陰極の寿命が短くなり、結果として実用的な利用ができなくなる事も考えられる。従って、成分組成としてのCe濃度には上限が存在する。
本実施形態で用いるIr−Ce系合金におけるセリウム濃度は30重量%以下であれば、融点が1880℃以上の高融点なIr−Ce系合金が形成されることが期待され、電子ビーム生成用陰極材として適用できると考えられる。より好ましくは、凝固後に起こる割れ等の欠陥をより抑制し、長寿命化を図るという観点からは、本実施形態のIr−Ce系合金においては、セリウム濃度が27重量%以下、さらには24重量%以下であることが望ましい。
セリウム濃度は30重量%以下であれば特に限定はないが、高電流密度を達成するという観点からは、11重量%以上であることが好ましい。より好ましくは、12重量%以上である。
本実施形態のIr−Ce合金・化合物の結晶相は、IrCe結晶相,IrCe結晶相,IrCe結晶相,IrCe結晶相の中のいずれか1種類以上の結晶相で構成される。これは以下の理由による。
Ir−Ce系状態図から、Ir(融点2443℃)にCe(融点798℃)を添加していくと、最初にIrCe化合物(融点1950℃)が形成され、その後、IrCe(融点2000℃)、IrCe(融点2100℃)、IrCe(融点2250℃)と、添加Ce濃度が高くなるにつれて、融点が高くなる傾向があり、融点が最も高くなる化合物は、IrCeであることが分かる。
つまり、IrCe化合物はかなり安定な化合物であり、その分解には高いエネルギーが必要となることが予想される。従って、Ir−Ce合金中のCe活量は、Ce濃度が高くなっても濃度に比例して上昇するわけではないと推測される。以上のことから、IrCe化合物より添加Ce濃度が低い化合物であれば、Ceの蒸発ロス速度はさほど上昇しないことが期待される。
一方、IrCe化合物を超える濃度にまでCeを添加すると、急激に融点が低下しており、Ce濃度の高いIrCe,IrCe,IrCe,IrCe,IrCeなどの化合物は、カソード材としては不安定になりやすいと推察される。このことは、適正なCe濃度の上限がIrCe化合物であり、ある濃度幅を有するIrCe化合物相におけるCe濃度のある濃度において、上限値となることを示すと考えられる。
よって、本実施形態のIr−Ce合金・化合物の結晶相は、IrCe化合物より添加Ce濃度が低い化合物からなる結晶相で構成されているため、セリウムの蒸発ロス速度を低く抑えることができると考えられる。
前記カソード部材を構成する結晶粒の最長長さは500μm以下である。結晶粒の最長長さが500μm以下であれば、機械加工時の割れや欠けなどの欠陥が少なくなるという優れた利点がある。より好ましくは、250μm以下であり、さらに好ましくは、100μm以下である。
前記結晶粒の大きさは小さいほど好ましいが、小さすぎるとCeが酸化されやすくなるため、酸化を抑えるという観点から、下限は1μm以上であり、より好ましくは、10μm以上である。
さらに、本実施形態のIr−Ce合金・化合物の結晶相は、結晶粒の最長長さが500μm以下の純イリジウム結晶相を含んでも良い。それにより、電子ビーム発生時の効率は、若干低下する可能性はあるが、使用時の熱応力によるカソードの割れなどを抑制するという優れた効果を奏すると考えられる。
なお、前記純イリジウム結晶相の最長長さは、より好ましくは、250μm以下であり、さらに好ましくは、100μm以下である。
前記結晶粒の大きさは小さいほど好ましいが、小さすぎると、各種Ir−Ce化合物結晶との粒度バランスが損なわれるという観点から、下限は1μm以上であり、より好ましくは、10μm以上である。
〔電子ビーム生成用カソード部材の製造方法〕
次に、上述したような電子ビーム生成用カソード部材の製造方法について詳細に説明する。
本実施形態における電子ビーム生成用カソード部材の製造方法は:
イリジウム−セリウム原材料を、水冷銅容器を溶解用るつぼとして使用する溶解方式を用いて、不活性化ガス雰囲気下で溶融混合して凝固させた後、粉砕して最長長さが500μm以下である粉体を作製する工程、
得られた粉体を、温度800℃以上1500℃以下、かつ圧力10MPa以上の高温高圧条件下で成型する工程、並びに
得られた成型体を機械加工する工程、を含むことを特徴とする。
より具体的には、まず、カソード部材加工用素材であるイリジウム−セリウム原材料を溶解する。
溶解方法としては、プラズマアーク熔解法を用いてもよいが、水冷銅容器を溶解用るつぼとして使用する溶解方式を用いることが好ましい。すなわち、プラズマアーク溶解法においては、実用的な規模での量産的な溶解を行うことは難しい場合があるため、本実施形態では、プラズマアーク溶解に加えて、量産規模を想定した溶解技術として、水冷銅容器を用いた誘導溶解法を用いる。
水冷銅容器を溶解用るつぼとして使用する誘導溶解法は、コールドクルーシブル誘導溶解法とも称される溶解方式である。
コールドクルーシブル誘導溶解法とは、具体的には、通常の真空誘導溶解法で使用されている耐火物るつぼの替わりに、高周波コイルが外側に配置されている水冷銅製のセグメントで構成されたるつぼを用い、高周波電源を使用し、水冷銅るつぼ内に装入した溶解材の内部に誘導電流を発生させて、その抵抗発熱を利用する溶解方法である。
また、コールドクルーシブル誘導溶解法以外にも、例えば、電子ビーム溶解法等を使用することができる。ただし、この溶解法では、Ceが蒸発除去されてしまう可能性があるため、溶解時にはCe濃度の適時調整が必要である。
次に、一般的には、完全な金属間化合物相のみの結晶では凝固インゴットなどの固化体が非常に割れやすくなることが知られており、Ir−Ce合金インゴットからのカソード部材の機械加工が困難となることが予想された。
そこで、本実施形態では、水冷銅容器(るつぼ)を用いて、不可性ガス(例えば、Ar)雰囲気下で溶融混合し、それを凝固させて得たインゴットを、一旦破砕・微粉化する。得られた粉体を所定の条件下(後述する)で成型して、焼成ブロックを形成させた後、これを素材として機械加工を行い、カソード部材を製作する。
なお、素材が活性な元素であるセリウムを多量に含有することから、溶融混合時のみならず、粉砕においても、大気雰囲気下ではなく、不活性ガス雰囲気下で破砕することが望ましい。それにより、破砕微粉の発熱燃焼による事故防止を図るとともに、大気雰囲気下で発生するCeの酸化も防止できる。
粉砕する方法については、特に限定はなく、例えば、不活性ガスで満たされたグローブボックス内での粉砕等によって粉砕することができる。
粉砕後、最長長さが500μm以下である粉体を得るためには、例えば、篩による分級を行うことができる。具体的には、例えば、粗粉砕粉となる500μm超粉、100〜500μm粉、100μm以下粉に分離し、500μm超粉を次回以降の溶解原料または再度粉砕等を実施する。
この粉体(結晶粒)の大きさが500μmを超えるカソードでは、コーナー部での割れや欠けが多くなり、500μm以下であるカソードでは、割れや欠けなどの欠陥が少なくなる。
なお、この結晶粒が細かいほど、微小な欠けなどの欠陥が少なくなる傾向があるため、好ましくは、最長長さが250μm以下、さらには100μm以下の結晶粒とすることが望ましいと考えられる。
次に、成型工程では、上記粉砕工程によって得られた最長長さが500μm以下の粉体を原料として、温度範囲:800〜1500℃、加圧条件10MPa以上で成型を行う。このような条件であれば、成型後の素材においても、結晶粒はほぼ原料微粉のサイズと同様となり、焼結時に結晶粒が粗大化することもない。
成型には、例えば、黒鉛製の型を用いたホットプレス成型を使用することができる。ホットプレス法以外では、例えば、放電プラズマ焼結(SPS)法も適用することが可能である。
成型条件の温度については、1500℃を超えると、Ir−Ce材と黒鉛材とが反応して、焼成物と黒鉛型材とが融着し、成形体の取り出しに問題が発生する場合がある。また、800℃以下では、十分な焼結体が得られない傾向がある。圧力については、10MPa以下では、十分に緻密化できない可能性がある。なお、圧力は原理的には高い方が望ましいが、好ましくは、少なくとも50MPaほどの圧力を負荷することが望ましい。それにより、ほぼ真密度に近いカソード部材加工用素材(ホットプレス成型ブロック)が得られると考えられる。
このように、微細な結晶粒を有する固化体を形成させることにより、割れにくく、機械加工をしやすいカソード部材の加工用素材を得ることができる。さらに、凝固時の固液の密度差に伴うミクロシュリンケージ欠陥やガスのブローホール欠陥等も、抑えることができる。
なお、本実施形態では、セリウムを30重量%以下で含み、かつ残部がイリジウムである多結晶体のカソードを製造するため、イリジウム−セリウム原材料としては、最終的に所望のセリウム濃度となるような材料を選択すればよい。
具体的には、例えば、IrCe結晶相,IrCe結晶相,IrCe結晶相,IrCe結晶相などを晶出させる成分組成とすることによって成分調整することができる。IrCe結晶相,IrCe結晶相,IrCe結晶相,IrCe結晶相等は、例えば、市販の純Irや純Ceを溶解原料として、必要な結晶相が得られる割合に調製し、溶解することによって所望の結晶相のインゴットを得ることができる。
一例としては、例えば、IrCe結晶相を100g得る場合、純Irを87.3g、純Ceを12.7g使用し、コールドクルーシブル誘導溶解法で、水冷銅るつぼ内にこれらの原料を装入し、溶解してインゴットを得る。そして、その後の分析(X線回折法)により結晶相の同定を行い、目的の結晶相が得られているかどうかを確認する。
それぞれの結晶を粉砕して紛体の最長長さが500μm以下となるように調整した微粉を作製しておき、セリウム濃度が30重量%以下となるように、IrCe結晶微粉,IrCe結晶微粉、IrCe結晶微粉、IrCe結晶微粉のいずれか1種類以上の結晶微粉を秤量して、次の成型工程に用いることができる。
これらの結晶相の微粉を原料として、上記成型を行う場合、必ずしも単相で成型する必要はなく、これらの混合微粉を作製して、成型を行ってもよい。
さらに、カソードの使用目的によっては、その特性向上のために、上記粉体作製工程の後、成型工程前に、純Ir結晶粉末などをさらに添加して成型を行ってもよく、また、Ir−Os,Ir−Re,Ir−Os−Reなどの微粉を添加してから、これらを十分に混合した後、混合微粉として成型を行うこともできる。
追加で使用し得る純Ir結晶粉末、Ir−Os,Ir−Re,Ir−Os−Reなどの微粉についても、結晶粒の最長長さが500μm以下であることが好ましく、より好ましくは、100μm以下である。添加量については、1〜5%程度であることが望ましい。
次に、得られた成型体(成型ブロック)を素材として、これを機械加工して、各種形状のカソードを製作することができる。
機械加工の手段については特に限定はなく、公知の方法を使用することができる。
例えば、素材ブロックの切断には、ワイヤカット法を適用できる。これにより、円柱体、板状等にすることができる。円形カソードの製作は、円柱体を素材として用いて、例えば、放電加工法、プロファイル研削法、ダイヤモンド研磨法等を適用することで、カソード形状に加工できる。
以上のような本実施形態の製造方法によれば、微細な結晶粒で構成される多結晶体による電子ビーム用カソード(陰極)部材を作製でき、従来法に比べて、より高電流密度が得られ、長寿命化できるカソード(陰極)部材の製作が可能となる。
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
(インゴットの製造)
セリウム含有量が14重量%+残部イリジウムとなる合金(Ir−14重量%Ce合金)と、セリウム含有量が26重量%+残部イリジウムとなる合金(Ir−26重量%合金)となるように溶解原料である純イリジウムおよび純セリウムを配合して、アルゴン雰囲気下で、Φ60mmの水冷銅るつぼを用いるコールドクルーシブル誘導溶解法により、溶融混合して均一化し、各合金のインゴット(固化体)を作製した。その後、所望の結晶相のインゴットであるかを確認するため、少量の試料を採取し、X線回折法にて確認分析を実施した。
なおIr−14重量%Ce合金の溶融凝固インゴットの組織写真は、図1(写真1)に示す通りであり、粗大な結晶粒により構成されており、結晶の内部に微小な割れが認められる状態である。
なお、図1の写真は走査型電子顕微鏡(SEM)によって倍率50倍で撮影した反射電子像写真である。
(比較例1および2)
上記で得られたIr−14重量%Ce合金とIr−26重量%合金のそれぞれのインゴットから円形カソード(Φ8mm,Φ9mm,Φ10mm等)の製作を試みた。
(実施例1)
不活性ガス(アルゴン)雰囲気下で、Ir−14重量%Ce合金のインゴット材を破砕して微粉化し、粉体(結晶粒)を、粗粉砕粉となる500μm超粉、100〜500μm粉、100μm以下粉に分離し、100μm以下粉のみを使用した。
次に、得られた粉体で、黒鉛製型を用いてホットプレス(HP)成型試験を実施した。ホットプレス成型の条件は、温度1500℃、圧力を50MPaとした。
その後、得られた成型体を用いて、ワイヤカットによる円柱体の切出しを行い、プロファイル研削法、ダイヤモンド研磨法等を用いて、円形カソード部材(Φ10mm)への加工を行った。
(実施例2〜3および比較例3〜5)
成型において、温度および圧力を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にしてカソード部材を得た。
(実施例4および比較例6)
粉体(結晶粒)を、粗粉砕粉となる500μm超粉、100〜500μm粉、100μm以下粉に分離した後、100〜500μm粉のみ(実施例4)、あるいは500μm超粉のみ(比較例6)を使用した以外は実施例1と同様にしてカソード部材を得た。
(実施例5)
Ir−14重量%Ce合金の代わりにIr−26重量%合金を用いた以外は実施例1と同様にしてカソード部材を得た。
(比較例7)
Ir−14重量%Ce合金の代わりにIr−26重量%合金を用いた以外は比較例3と同様にしてカソード部材を得た。
(実施例6および比較例8)
コールドクルーシブル誘導溶解法の代わりに、水冷銅るつぼを使用したプラズマアーク溶解法でインゴットを製作し、粉体として100〜500μm粉のみ(実施例6)あるいは500μm超粉(比較例8)を使用した以外は、実施例5と同様にしてカソード部材を得た。
(実施例7および比較例9)
また、Ir−26重量%合金のPAMインゴットを破砕粉砕して分級した粒径100μm以下の粉末を用いて、放電プラズマ焼結(SPS)法にて成型体を作製した。成型条件は、温度800℃(実施例7)および700℃(比較例9)、圧力10MPaで実施した。
(比較例10)
成型条件の温度および圧力を表1に示すように変更した以外は、比較例9と同様にしてカソード部材を得た。
(比較例11および比較例12)
Ir−35重量%Ce合金紛体を、Ir−14重量%Ce合金と、Ir−26重量%合金と同様の方法にて製作し、100μm以下粉を使用し、成型条件は、温度1000℃、圧力10MPa(比較例11)および50MPa(比較例12)で実施した。
(評価方法)
以上の実施例および比較例において、成型体を作製できたか否か、カソード部材を作製できたか否か、並びに、得られたカソード部材の電流密度について評価を行った。
・成型体を作製できたか否かの評価は、焼結後の成型体を黒鉛型から取り出す際、割れや欠け等が無く取り出せた成型体を○、取り出し時に割れや欠けの発生、あるいは黒鉛型と融着してしまった場合を×とする基準によって行った。
・カソード部材を作製できたか否かの評価は、機械加工後に割れや欠け等が無いものを◎、機械加工後に多少の割れや欠けがあるが、カソードの形状に加工出来たものを○、機械加工時(あるいは機械加工前の段階)に、カソード形状にまで加工出来なかったものを×とする基準によって行った。
・電流密度については、Ir−14wt%Ce組成の実施例1カソード(IrCe結晶)及び、溶解釜の溶解材からそのまま製作したIrCeカソード(実施例1のように粉砕工程および成型工程を経ていないもの)を用いて、熱陰極として使用した場合の発生する電流密度と温度との相関を示した結果は、下記の表2に示す通りであった。
以上の結果を、表1および表2に示す。
(考察)
まず、Ir−14重量%Ce合金の溶融凝固インゴットから機械加工して、カソード形状に成形はできたが、円形カソードでは、端部のコーナ部に欠けや割れの多いものとなり、さらに、中央部にも空孔欠陥が発生しており、カソード品質としては、十分ではないものと判定された(比較例1)。また、Ir−26重量%Ce合金では、円形カソードを製作するためのワイヤカットによる円柱体切り出しの段階で、割れなどが発生し、カソード形状にまで加工できなかった(比較例2)。これは、凝固インゴットの結晶粒が粗大であり、ガス起因のブローホールなどもあって、カソードへの機械加工時に、粒界などで割れが発生し伝播した為と推定された。
これに対し、実施例では、セリウムを14重量%および26重量%含んだ合金であっても、健全なカソード部材であった。
特に、800℃および1500℃の条件では両方とも良好な成型体を製作することが出来たが、1500℃の場合は、800℃よりも緻密な成型体が製作出来ていた。そして、その後のワイヤカットによる円柱体の切出しおよびカソード形状への加工においても1500℃の成型体からは、表面品質等が非常に良好なカソード部材を製作することが出来た。
一方、Ir−14重量%Ce合金については、成型条件が、700℃の条件では成型体が上手く成型出来ず、また、1550℃では黒鉛型と成型体が融着し、成型体の取出しに問題が発生した(比較例3、実施例1、実施例2、比較例4)。
そして、セリウムを30重量%を超えて含むカソード部材では、成型条件が本発明の範囲であっても、健全なカソード部材を作製することができなかった(比較例11および12)。
次に、温度を1500℃とし、圧力を10MPaおよび5MPaと変えて、粉末粒径を100μm以下条件にてホットプレス(HP)成形を実施した実施例3と比較例5では、10MPaでは成型体が得られたのに対し、5MPaでは十分に緻密化された成型体が得られず、カソード部材への加工は出来なかった。
次に、温度1500℃、圧力50MPaとし、粉末粒径を100〜500μmおよび500μm超に変えた実施例4と比較例6の比較からは、どちらの粉末においても成型体は製作することは可能であったが、500μm以上の粉末を用いた場合、ワイヤカットにて円柱体を切出し、カソード形状に加工する段階で割れや欠けなどが発生し、健全なカソード部材を製作することが出来なかいことがわかった。
Ir−26重量%合金については、温度を1550℃および1500℃、圧力を50MPa、粉末粒径を100μm以下にした比較例7と実施例5との比較で、1500℃では緻密な成型体が得られ、ワイヤカットにて良好なカソード部材を製作することが出来たが、1550℃ではHP中に粉末の一部が溶融して、黒鉛型材から染み出すという問題が発生し、また黒鉛型との反応もあって、健全な成型体を製作することが出来なかいことがわかった。
また、Ir−26重量%合金のインゴット製作において、水冷銅るつぼを使用したプラズマアーク溶解(PAM)法でもインゴットを製作した場合でも、粉末粒径100〜500μm(実施例6)および500μm超(比較例8)を比較すると、どちらの粒径の粉末においても成型体を製作することは可能であったが、500μm以上の粉末を用いた場合、ワイヤカットにて円柱体を切出し、カソード形状に加工する段階で割れや欠けなどが発生し、健全なカソード部材を製作することが出来ないことがわかった。
次に、Ir−26重量%合金のPAMインゴットを破砕粉砕して分級した粒径100μm以下の粉末を用いて、放電プラズマ焼結(SPS)法にて成型した実施例7と比較例9では、800℃(実施例7)では良好な成型体を製作することが出来たが、700℃(比較例9)では成型体が上手く成型出来なかった。
粉末粒径100μm以下、温度800℃、圧力5MPaの条件でSPSによって成型体の製作を試みた比較例10では、十分に緻密化された成型体が得られず、カソード部材への加工は出来なかった。
また、本発明に関する実施例1のカソード部材では、表2より明らかなように、従来から使用されているLaB、Ta、Wカソードや、溶解法(溶解釜の溶解材)により製造されたIrCeカソードに比べて、低いカソード温度でも、高い電流密度が得られることが示された。

Claims (5)

  1. 電子ビーム生成用カソード部材であって、
    セリウムを30重量%以下で含み、かつ残部がイリジウムであり、
    前記カソード部材を構成する結晶粒の最長長さが500μm以下であり、
    前記結晶粒が、IrCe結晶相、IrCe結晶相、IrCe結晶相およびIrCe結晶相から選択される少なくとも1種類以上の結晶相で構成されることを特徴とする、電子ビーム生成用カソード部材。
  2. さらに、結晶粒の最長長さが500μm以下の純イリジウム結晶相を含むことを特徴とする、請求項1に記載の電子ビーム生成用カソード部材。
  3. 請求項1または請求項2の電子ビーム生成用カソード部材を製造する方法であって、
    イリジウム−セリウム原材料を、水冷銅容器を溶解用るつぼとして使用する溶解方式を用いて、不活性化ガス雰囲気下で溶融混合して凝固させた後、粉砕して最長長さが500μm以下である粉体を作製する工程、
    得られた粉体を、温度800℃以上1500℃以下、かつ圧力10MPa以上の高温高圧条件下で成型する工程、並びに
    得られた成型体を機械加工する工程、を含む電子ビーム生成用カソード部材の製造方法。
  4. IrCe結晶相、IrCe結晶相、IrCe結晶相およびIrCe結晶相から選択される少なくとも1種類以上の結晶相を晶出させる成分組成に調整したイリジウム−セリウム原材料を用いる、請求項3記載の電子ビーム生成用カソード部材の製造方法。
  5. 粉砕工程後、さらに純イリジウム結晶微粉を添加し、その後、成型工程を行う、請求項3または4に記載の電子ビーム生成用カソード部材の製造方法。
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