JP6973680B2 - 純銅板 - Google Patents

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Description

本発明は、ヒートシンクや厚銅回路等の電気・電子部品に適した純銅板であって、特に、加熱時における結晶粒の粗大化が抑制された純銅板に関する。
本願は、2019年9月27日に、日本に出願された特願2019−176835号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
従来、ヒートシンクや厚銅回路等の電気・電子部品には、導電性の高い銅又は銅合金が用いられている。
最近は、電子機器や電気機器等の大電流化にともない、電流密度の低減およびジュール発熱による熱の拡散のために、これら電子機器や電気機器等に使用される電気・電子部品の大型化、厚肉化が図られている。
ここで、半導体装置においては、例えば、セラミックス基板に銅板材を接合し、上述のヒートシンクや厚銅回路として銅板材を具備した絶縁回路基板等が用いられている。
セラミックス基板と銅板を接合する際には、接合温度が800℃以上とされることが多く、接合時にヒートシンクや厚銅回路を構成する銅材の結晶粒が粗大化してしまうおそれがあった。特に、導電性及び放熱性に特に優れた純銅からなる銅板においては、結晶粒が粗大化しやすい傾向にある。また接合する銅板材はプレス加工によって製造される場合、厚板化に伴いかえりの高さが増大する。
接合後のヒートシンクや厚銅回路において結晶粒が粗大化した場合には、結晶粒が粗大化することで、外観上問題となるおそれがあった。
ここで、例えば特許文献1には、結晶粒の成長を抑制した純銅板料が提案されている。
この特許文献1においては、Sを0.0006〜0.0015wt%含有することにより、再結晶温度以上で熱処理しても、一定の大きさの結晶粒に調整可能であると記載されている。
ところで、特許文献1においては、Sの含有量を規定することで結晶粒の粗大化を抑制しているが、熱処理条件によってはSの含有量を規定するだけでは、十分な結晶粒の粗大化を抑制する効果を得ることができないことがあった。また、熱処理後に、局所的に結晶粒が粗大化し、結晶組織が不均一となることがあった。
さらに、結晶粒の粗大化を抑制するために、Sの含有量を増加させた場合には、熱間加工性が大きく低下してしまい、純銅板の製造歩留まりが大きく低下してしまうといった問題があった。
特開平06−002058号公報
この発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、導電率が高く、かつ、熱処理後においても結晶粒の粗大化及び不均一化を抑制することができる純銅板を提供することを目的とする。
この課題を解決するために、本発明者らが鋭意検討した結果、圧延面における結晶粒の平均結晶粒径とAgの含有量を調整し、さらに粒界3重点を構成する粒界を適切に制御することによって熱処理後においても結晶粒の粗大化や不均一化を抑制可能であるとの知見を得た。
なお、以下、明細書において、結晶粒の成長を抑制することと、結晶粒の粗大化を抑制することは同義である。
本発明は、上述の知見に基づいてなされたものであって、本発明の一態様に係る純銅板は、Cuの含有量が99.96mass%以上とされ、圧延面における結晶粒の平均結晶粒径をXμm、Agの含有量をYmassppmとしたときに、以下の関係式が成り立つとともに、
1×10−8≦X−3−1≦1×10−5
圧延の幅方向に対して直交する面を観察面として、母相をEBSD法により10000μm以上の測定面積にて、0.25μmの測定間隔のステップで測定し、測定結果をデータ解析ソフトOIMにより解析して各測定点のCI値を得て、CI値が0.1以下である測定点を除いて、各結晶粒の方位差の解析を行い、隣接する測定点間の方位差が15°以上となる測定点間の境界を結晶粒界とし、Area Fractionにより平均粒径Aを求め、平均粒径Aの10分の1以下となる測定間隔のステップで母相をEBSD法により測定して、総数1000個以上の結晶粒が含まれるように、複数視野で10000μm以上となる測定面積で、測定結果をデータ解析ソフトOIMにより解析して各測定点のCI値を得て、CI値が0.1以下である測定点を除いて、各結晶粒の方位差の解析を行い、隣接する測定点間の方位差が15°以上となる測定点間の境界を結晶粒界とし、Σ29以下の対応粒界を特殊粒界とし、それ以外をランダム粒界とした際、OIMから解析された粒界3重点において、粒界3重点を構成する3つの粒界全てが特殊粒界であるJ3の全粒界3重点に対する割合をNFJ3とし、粒界3重点を構成する2つの粒界が特殊粒界であり、1つがランダム粒界であるJ2の全粒界3重点に対する割合をNFJ2としたとき、
0.30<(NFJ2/(1−NFJ3))0.5≦0.48が成り立つことを特徴としている。
なお、EBSD法とは、後方散乱電子回折像システム付の走査型電子顕微鏡による電子線反射回折法(Electron Backscatter Diffraction Patterns:EBSD)を意味し、またOIMは、EBSDによる測定データを用いて結晶方位を解析するためのデータ解析ソフト(Orientation Imaging Microscopy:OIM)である。さらにCI値とは、信頼性指数(Confidence Index)であって、EBSD装置の解析ソフトOIM Analysis(Ver.7.3.1)を用いて解析したときに、結晶方位決定の信頼性を表す数値として表示される数値である(例えば、「EBSD読本:OIMを使用するにあたって(改定第3版)」鈴木清一著、2009年9月、株式会社TSLソリューションズ発行)。
ここで、EBSD法により測定してOIMにより解析した測定点の組織が加工組織である場合、結晶パターンが明確ではないため結晶方位決定の信頼性が低くなり、CI値が低くなる。特に、CI値が0.1以下の場合にその測定点の組織が加工組織であると判断される。
また、特殊粒界とは、結晶学的にCSL理論(Kronberg et al:Trans.Met.Soc.AIME,185,501(1949))に基づき定義されるΣ値で3≦Σ≦29に属する対応粒界であって、かつ、当該対応粒界における固有対応部位格子方位欠陥Dqが、Dq≦15°/Σ1/2(D.G.Brandon:Acta.Metallurgica.Vol.14,p.1479,(1966))を満たす結晶粒界であるとして定義される。
一方、ランダム粒界とは、Σ値が29以下の対応方位関係があってかつDq≦15°/Σ1/2を満たす特殊粒界以外の粒界である。すなわち、特殊粒界は、Σ値が29以下の対応方位関係があってかつDq≦15°/Σ1/2を満たし、この特殊粒界以外の粒界がランダム粒界である。
なお、粒界3重点としては、3つの粒界がすべてランダム粒界であるJ0、1つの粒界が特殊粒界であるとともに2つの粒界がランダム粒界であるJ1、2つの粒界が特殊粒界であるとともに1つがランダム粒界であるJ2、3つの粒界がすべて特殊粒界であるJ3の4種類が存在している。
よって、粒界3重点を構成する3つの粒界全てが特殊粒界であるJ3の全粒界3重点に対する割合NFJ3(全ての粒界3重点の個数に対するJ3の個数の比)は、J0の総数をΣJ0、J1の総数をΣJ1、J2の総数をΣJ2、J3の総数をΣJ3としたとき、NFJ3=ΣJ3/(ΣJ0+ΣJ1+ΣJ2+ΣJ3)で定義される。
また、粒界3重点を構成する2つの粒界が特殊粒界であり、1つがランダム粒界であるJ2の全粒界3重点に対する割合NFJ2(全ての粒界3重点の個数に対するJ2の個数の比)は、NFJ2=ΣJ2/(ΣJ0+ΣJ1+ΣJ2+ΣJ3)で定義される。
上述の構成の純銅板によれば、Cuの含有量が99.96mass%以上とされ、圧延面における結晶粒の平均結晶粒径をX(μm)、Agの含有量をY(massppm)としたときに、1×10−8≦X−3−1≦1×10−5が成り立つ。このため、Agの一部が粒界に偏析することになり、これにより粒界エネルギーを低下させるため、結晶粒の粗大化を抑制することが可能となる。また、純銅板の導電率を確保することができ、大電流用途の電子・電気機器用部材及び放熱用部材の素材として用いることができる。
さらに、圧延の幅方向に対して直交する面を観察面として、EBSD法により10000μm以上の測定面積にて、0.25μmの測定間隔のステップで母相を測定する。測定結果をデータ解析ソフトOIMにより解析して各測定点のCI値を得る。CI値が0.1以下である測定点を除く。データ解析ソフトOIMにより各結晶粒の方位差の解析を行い、隣接する測定点間の方位差が15°以上となる測定点間の境界を結晶粒界とする。Area Fractionにより平均粒径Aを求める。平均粒径Aの10分の1以下となる測定間隔のステップで母相をEBSD法により測定する。総数1000個以上の結晶粒が含まれるように、複数視野で合計面積が10000μm以上となる測定面積で、測定結果をデータ解析ソフトOIMにより解析して各測定点のCI値を得る。CI値が0.1以下である測定点を除く。データ解析ソフトOIMにより各結晶粒の方位差の解析を行い、隣接する測定点間の方位差が15°以上となる測定点間の境界を結晶粒界とする。Σ29以下の対応粒界を特殊粒界とし、それ以外をランダム粒界とする。OIMから解析された粒界3重点において、粒界3重点を構成する3つの粒界全てが特殊粒界であるJ3の全粒界3重点に対する割合をNFJ3とし、粒界3重点を構成する2つの粒界が特殊粒界であり、1つがランダム粒界であるJ2の全粒界3重点に対する割合をNFJ2とする。
本発明の一態様に係る純銅板は、0.30<(NFJ2/(1−NFJ3))0.5≦0.48を満たしているので、粒界ネットワークがエネルギーの低い特殊粒界で構成されているため、加熱時における再結晶の駆動力が小さく、粒成長を抑制することが可能となる。
ここで、本発明の一態様に係る純銅板においては、MgおよびSnの合計含有量が0.1massppm以上100massppm以下とされていることが好ましい。
この場合、結晶粒の成長を抑制する元素に該当するMgおよびSnを合計で0.1massppm以上含むことにより、熱処理後においても結晶粒の粗大化や不均一化を確実に抑制することが可能となる。また、MgおよびSnの合計含有量を100massppm以下に制限することにより、導電率を十分に確保することができる。
さらに、本発明の一態様に係る純銅板においては、Sの含有量が1massppm以上20massppm以下の範囲内とされていることが好ましい。
この場合、結晶粒の成長を抑制する元素に該当するSを1massppm以上含むことにより、熱処理後においても結晶粒の粗大化や不均一化を確実に抑制することが可能となる。また、Sの含有量を20massppm以下に制限することにより、熱間加工性を十分に確保することができる。
また、本発明の一態様に係る純銅板においては、Pb,Se及びTeの合計含有量が0.3massppm以上10massppm以下であることが好ましい。
不可避不純物として含まれるおそれがあるPb,Se及びTeは結晶粒界に偏析して結晶粒の粗大化を抑制する元素である。このため、これらの元素を合計で0.3massppm以上含むことで熱処理後においても結晶粒の粗大化や不均一化を確実に抑制することが可能となる。一方、これらの元素が多量に存在することによってAgの粒界偏析を抑制する作用も有し、熱間加工性も低下させる元素である。このため、Pb,Se及びTeの合計含有量を10massppm以下にすることで、Agの効果を阻害させず、粒成長抑制効果を十分に発揮することができる。
さらに、本発明の一態様に係る純銅板においては、Sr,Ba,Ti,Zr,Hf,Yの合計含有量が10massppm以下であることが好ましい。
不可避不純物として含まれるおそれがあるSr,Ba,Ti,Zr,Hf,Yといった元素は、結晶粒界に偏析してAgの偏析を妨げると同時に、結晶粒の粗大化を抑制する元素(S,Se,Te等)と化合物を生成し、結晶粒の粗大化を抑制する元素の作用を阻害するおそれがある。このため、Sr,Ba,Ti,Zr,Hf,Yの合計含有量を10massppm以下に制限することにより、結晶粒の成長を抑制する元素による効果(結晶粒の成長を抑制する効果)を十分に発揮させることができ、熱処理後においても、結晶粒の粗大化や不均一化を確実に抑制することが可能となる。
また、本発明の一態様に係る純銅板においては、Al,Cr,P,Be,Cd,Ni,Feの合計含有量が0.3massppm以上10massppm以下であることが好ましい。
不可避不純物として含まれるおそれがあるAl,Cr,P,Be,Cd,Ni,Feといった元素は、銅母相中への固溶や粒界への偏析、さらには酸化物の形成により、粒成長を抑制する効果を持つ。このため、これらの元素を合計で0.3massppm以上含むことで熱処理後においても結晶粒の粗大化や不均一化を確実に抑制することが可能となる。一方で、これらの元素が多量に存在すると、結晶粒界に偏析してAgの偏析を妨げるおそれがある。このため、Al,Cr,P,Be,Cd,Ni,Feの合計含有量を10massppm以下に制限することにより、結晶粒の成長を抑制する元素による効果(結晶粒の成長を抑制する効果)を十分に発揮させることができ、熱処理後においても、結晶粒の粗大化や不均一化を確実に抑制することが可能となる。
さらに、本発明の一態様に係る純銅板においては、800℃で1時間保持の熱処理を行った後の、50mm×50mmの範囲における最大結晶粒径dmaxと平均結晶粒径daveの比率dmax/daveが20以下、平均結晶粒径daveが400μm以下であることが好ましい。
この場合、上記条件で加熱した場合でも、結晶粒が粗大化および不均一になることを確実に抑制でき、外観不良の発生をさらに抑制することができる。
また、本発明の一態様に係る純銅板においては、ビッカース硬度が150Hv以下であることが好ましい。
この場合、ビッカース硬度が150Hv以下であり、十分に軟らかく、純銅板としての特性が確保されているので、大電流用途の電気・電子部品の素材として特に適している。
本発明の一態様によれば、導電率が高く、かつ、熱処理後においても結晶粒の粗大化及び不均一化を抑制することができる純銅板を提供することができる。
本実施形態である純銅板の製造方法のフロー図である。
以下に、本発明の一実施形態である純銅板について説明する。
本実施形態である純銅板は、ヒートシンクや厚銅回路等の電気・電子部品の素材として用いられるものであり、前述の電気・電子部品を成形する際に、例えばセラミックス基板に接合されて使用されるものである。
本実施形態である純銅板は、Cuの含有量が99.96mass%以上とされており、圧延面における結晶粒の平均結晶粒径をX(μm)、Agの含有量をY(massppm)としたときに以下の関係式が成り立つものとされている。
1×10−8≦X−3×Y−1≦1×10−5
そして、本発明の一実施形態である電子・電気機器用銅合金においては、圧延の幅方向に対して直交する面を観察面として、母相をEBSD法により10000μm以上の測定面積にて、0.25μmの測定間隔のステップで測定する。測定結果をデータ解析ソフトOIMにより解析して各測定点のCI値を得る。CI値が0.1以下である測定点を除く。データ解析ソフトOIMにより各結晶粒の方位差の解析を行い、隣接する測定点間の方位差が15°以上となる測定点間の境界を結晶粒界とする。データ解析ソフトOIMを用いてArea Fractionにより平均粒径Aを求める。平均粒径Aの10分の1以下となる測定間隔のステップで母相をEBSD法により測定する。総数1000個以上の結晶粒が含まれるように、複数視野で合計面積が10000μm以上となる測定面積で、測定結果をデータ解析ソフトOIMにより解析して各測定点のCI値を得る。CI値が0.1以下である測定点を除く。データ解析ソフトOIMにより各結晶粒の方位差の解析を行い、隣接する測定点間の方位差が15°以上となる測定点間の境界を結晶粒界とする。Σ29以下の対応粒界を特殊粒界とし、それ以外をランダム粒界とする。OIMから解析された粒界3重点において、粒界3重点を構成する3つの粒界全てが特殊粒界であるJ3の全粒界3重点に対する割合をNFJ3とし、粒界3重点を構成する2つの粒界が特殊粒界であり、1つがランダム粒界であるJ2の全粒界3重点に対する割合をNFJ2としたとき、
0.30<(NFJ2/(1−NFJ3))0.5≦0.48が成り立つものとされている。
以上のように、母相をEBSD法により2回測定する。1回目の測定では、平均粒径Aを得る。得られた平均粒径Aにより、2回目の測定での測定間隔のステップを決める。
ここで、本実施形態である純銅板においては、MgおよびSnの合計含有量が0.1massppm以上100massppm以下の範囲内とされていることが好ましい。
また、本実施形態である純銅板においては、Sの含有量が1massppm以上20massppm以下の範囲内とされていることが好ましい。
さらに、本実施形態である純銅板においては、Pb,Se及びTeの合計含有量が0.3massppm以上10massppm以下であることが好ましい。
また、本実施形態である純銅板においては、Sr,Ba,Ti,Zr,Hf,Y(A元素群)の合計含有量が10massppm以下であることが好ましい。
さらに、本実施形態である純銅板においては、Al,Cr,P,Be,Cd,Ni,Fe(M元素群)の合計含有量が0.3massppm以上10mass以下であることが好ましい。
純銅板の組成は、以下のように説明することもできる。
純銅板は、99.96mass%以上のCuと、Agと、を含み、残部が不可避不純物である。
純銅板は、さらにMg及びSnのいずれか一方又は両方を0.1massppm以上100massppm以下の合計量で含むことが好ましい。
純銅板は、さらに1massppm以上20massppm以下のSを含むことが好ましい。
純銅板は、さらにPb,Se及びTeから選択される1種以上を0.3massppm以上10massppm以下の合計量で含むことが好ましい。
純銅板は、さらにSr,Ba,Ti,Zr,Hf,Yから選択される1種以上を10massppm以下の合計量で含むことが好ましい。
純銅板は、さらにAl,Cr,P,Be,Cd,Ni,Feから選択される1種以上を0.3massppm以上10massppm以下の合計量で含むことが好ましい。
上記のCu以外の元素に関しては、不可避不純物として含まれる場合も、意図的に含まれる場合も、それらの好ましい含有量は上述した範囲である。また、Cu以外の元素は、不可避不純物であると言うこともできる。残部としての不可避不純物は、上記の含有量が特定されている元素以外の元素であると言うこともできる。
なお、本実施形態である純銅板においては、800℃で1時間保持の熱処理を行った後の、50mm×50mmの範囲における最大結晶粒径dmaxと平均結晶粒径daveの比率dmax/daveが20以下であり、平均結晶粒径daveが400μm以下であることが好ましい。
また、本実施形態である純銅板においては、ビッカース硬度が150Hv以下であることが好ましい。
さらに、本実施形態である純銅板においては、導電率が97%IACS以上であることが好ましい。
ここで、本実施形態の純銅板において、上述のように成分組成、結晶組織、各種特性を規定した理由について以下に説明する。
(Cuの純度:99.96mass%以上)
大電流用途の電気・電子部品においては、通電時の発熱を抑制するために、導電性及び放熱性に優れていることが要求されており、導電性及び放熱性に特に優れた純銅を用いることが好ましい。また、セラミックス基板等と接合した場合には、冷熱サイクル負荷時に生じる熱歪を緩和できるように、変形抵抗が小さいことが好ましい。
そこで、本実施形態である純銅板においては、Cuの純度を99.96mass%以上に規定している。
なお、Cuの純度は99.965mass%以上であることが好ましく、99.97mass%以上であることがさらに好ましい。また、Cuの純度の上限に特に制限はないが、99.9999mass%を超える場合には、特別な精錬工程が必要となり、製造コストが大幅に増加するため、99.9999mass%以下とすることが好ましい。
(圧延面における結晶粒の平均結晶粒径XとAgの含有量Yの関係式)
Agは、低温では固溶限が狭くほとんどCuの母相中に固溶することができない。このため、高温で熱処理を施してAgを銅(Cuの母相)に固溶させ、次いで150℃以上350℃以下の温間加工を施すことで、母相に固溶しているAgの一部が粒界に偏析することとなる。この結果、粒界エネルギーが低下し、高温加熱時の一部の結晶粒の粗大化および2次再結晶による異常粒成長を抑制し、さらに結晶粒径の均一化を図ることができる。添加したAgの量に対して平均結晶粒径が十分に小さい場合は、相対的にAgの偏析が少ない、または偏析していない粒界が多数存在することになる。このような粒界は高温加熱時に粗大化または異常粒成長し、粒径のばらつきが大きくなる。
ここで、圧延面における結晶粒の平均結晶粒径をXμm、Agの含有量をYmassppmとした場合において、X−3−1の値が大きいときは、Agの含有量が少なく、平均結晶粒径が小さい場合である。このため、単位体積あたりに含まれる粒界面積が大きくなり、Agが十分に粒界に偏析できない。このため高温加熱時に結晶粒が粗大化し、粒径のばらつきが大きくなる。
一方、X−3−1の値が小さいときは、Agの含有量が多く、平均結晶粒径が大きい場合である。この場合、粒成長の抑制効果は高いが、高価なAg量が多く、さらには熱処理温度も高く長時間となり、著しいコスト増となる。
そこで、本実施形態である純銅板においては、1×10−8≦X−3−1≦1×10−5を満足するものとしている。
ここで、X−3−1の上限は、好ましくは7.5×10−6以下、より好ましくは5.0×10−6以下、さらに好ましくは3.0×10−6以下、最も好ましくは2.0×10−6以下である。一方、X−3−1の下限は、好ましくは5.0×10−8以上、より好ましくは1.0×10−7以上である。
なお、Agの実質的な添加量としては5massppm以上150massppm以下である。Agの含有量が5massppm未満になると、粒径をより粗大にする必要があり、コスト増になるだけではなく、相対的に熱処理後の粒径も粗大になり外観上の問題となる可能性がでてくる。このためAgの実質的な下限は5massppm以上である。下限の好ましい範囲は6massppm以上であり、より好ましい範囲は7massppm以上である。
結晶粒の粗大化を抑制する観点からAgを添加することは望ましいが、Agの添加量が増えるとコスト増になるだけではなく導電率も低下する。このため実質的な上限は150masspm以下になる。上限の好ましい範囲は100massppm以下、より好ましい範囲は60massppm以下、さらに好ましくは50massppm以下、さらには40massppm以下、さらにより好ましくは30massppm以下、最も好ましくは25massppm以下である。
(粒界3重点の割合)
純銅板の高温熱処理時の結晶粒成長は粒界エネルギーの高いランダム粒界の粒界移動速度が速いことによる。このため粒界3重点を構成する3つの粒界のうち2つもしくは3つがΣ29以下で表される粒界エネルギーの小さい特殊粒界とすることで、高温での粒成長を抑制するとともに結晶粒径の均一化をすることができる。
そのため、圧延の幅方向に対して直交する面を観察面として、母相をEBSD法により10000μm以上の測定面積にて、0.25μmの測定間隔のステップで測定する。測定結果をデータ解析ソフトOIMにより解析して各測定点のCI値を得る。CI値が0.1以下である測定点を除く。データ解析ソフトOIMにより各結晶粒の方位差の解析を行い、隣接する測定点間の方位差が15°以上となる測定点間の境界を結晶粒界とする。Area Fractionにより平均粒径Aを求める。平均粒径Aの10分の1以下となる測定間隔のステップで母相をEBSD法により測定する。総数1000個以上の結晶粒が含まれるように、複数視野で合計面積が10000μm以上となる測定面積で、測定結果をデータ解析ソフトOIMにより解析して各測定点のCI値を得る。CI値が0.1以下である測定点を除く。データ解析ソフトOIMにより各結晶粒の方位差の解析を行い、隣接する測定点間の方位差が15°以上となる測定点間の境界を結晶粒界とする。Σ29以下の対応粒界を特殊粒界とし、それ以外をランダム粒界とする。OIMから解析された粒界3重点において、粒界3重点を構成する3つの粒界全てが特殊粒界であるJ3の全粒界3重点に対する割合をNFJ3とし、粒界3重点を構成する2つの粒界が特殊粒界であり、1つがランダム粒界であるJ2の全粒界3重点に対する割合をNFJ2とした場合において、(NFJ2/(1−NFJ3))0.5の数値を規定している。
(NFJ2/(1−NFJ3))0.5は、粒成長抑制の点からは高いほど好ましい。ここで、(NFJ2/(1−NFJ3))0.5が0.30以下の場合は、粒界ネットワークに対するランダム粒界の数が相対的に大きくなり、そのネットワーク長も長くなる。このため、粒成長抑制効果が小さくなるとともに、結晶粒径の大きさも不均一になる。一方、(NFJ2/(1−NFJ3))0.5が0.48を超えると、プレス加工した際のかえり高さが大きくなる。このため、かえりの管理が難しくなり、製造する際のコストが増加するおそれがある。
以上のことから、本実施形態においては、(NFJ2/(1−NFJ3))0.5を0.30超え、0.48以下の範囲内とする。
なお、(NFJ2/(1−NFJ3))0.5の上限は、0.47以下であることが好ましく、0.46以下であることがさらに好ましい。一方、(NFJ2/(1−NFJ3))0.5の下限は、0.31超えであることが好ましく、0.32超えであることがさらに好ましい。
粒界ネットワークを考えたとき、J0やJ1のランダム粒界がJ3を構成する特殊粒界とネットワークを形成するためには、J3の数に応じてJ2の数が増加することとなる。すなわち、NFJ3が増えるとともにNFJ2も増えることとなる。そのため、NFJ3は0.007以上が好ましく、0.008以上がより好ましく、0.010以上がさらに好ましい。また、かえり高さを抑制するためには、NFJ3は0.036以下が好ましく、0.034以下がより好ましく、0.030以下がさらに好ましい。
(MgおよびSnの合計含有量:0.1massppm以上100massppm以下)
MgおよびSnは銅母相中への固溶によって結晶粒の粗大化を抑制する作用を有する元素である。このため、本実施形態においてMgおよびSnの合計含有量を0.1massppm以上とした場合には、Mg及びSnによる結晶粒の粗大化を抑制する効果を奏功せしめることができ、熱処理後においても結晶粒の粗大化を確実に抑制することが可能となる。一方、必要以上の添加により製造コストの増加や導電率の低下が懸念されるため、Mg及びSnのいずれか一方もしくはその合計含有量を100massppm未満とする。
Mg及びSnのいずれか一方もしくはその合計含有量の下限は0.5massppm以上であることが好ましく、1massppm以上であることがさらに好ましい。一方、Mg及びSnの合計含有量の上限は80massppm未満であることが好ましく、60massppm未満であることがさらに好ましく、10massppm未満であることがもっとも好ましい。
(Sの含有量:1massppm以上20massppm以下)
Sは、結晶粒界の移動を抑制することによって、結晶粒の粗大化を抑制する作用を有するとともに、熱間加工性を低下させる元素である。
このため、本実施形態においてSの含有量を1massppm以上とした場合には、Sによる結晶粒の粗大化を抑制する効果を十分に奏功せしめることができ、熱処理後においても結晶粒の粗大化を確実に抑制することが可能となる。一方、Sの含有量を20massppm以下に制限した場合には、熱間加工性を確保することが可能となる。
なお、Sの含有量の下限は、2massppm以上であることが好ましく、3massppm以上であることがさらに好ましい。また、Sの含有量の上限は、17.5massppm以下であることが好ましく、15massppm以下がさらに好ましい。
(Pb,Se及びTeの合計含有量:0.3massppm以上10massppm以下)
Pb,Se及びTeは、Cu中の固溶限が低く、粒界に偏析することによって、結晶粒の粗大化を抑制する作用を有する。一方、多量に存在することによってAgの粒界偏析を抑制する作用も有し、熱間加工性も低下させる元素である。
このため、本実施形態においては、粗大化を抑制する作用を発揮すると同時に熱間加工性を確保するために、Pb,Se及びTeの合計含有量を10massppm以下に制限することが好ましい。Pb,Se及びTeの合計含有量が0.3massppm未満だと、抑制作用効果が小さくなるとともに、精錬によるコスト増を招くだけである。このためPb,Se及びTeの合計含有量の下限は0.3massppm以上とすることが好ましい。
なお、熱間加工性をより向上させる場合には、Pb,Se及びTeの合計含有量の上限を9massppm以下とすることが好ましく、8massppm以下とすることがさらに好ましく、7massppm以下とすることがより好ましい。また、Pb,Se及びTeの合計含有量の下限は、0.4massppm以上とすることが好ましく、0.5massppm以上とすることがより好ましい。
(Sr,Ba,Ti,Zr,Hf,Yの(A元素群)の合計含有量:10massppm以下)
不可避不純物として含まれるSr,Ba,Ti,Zr,Hf,Y(A元素群)は、結晶粒界に偏析して結晶粒の粗大化を抑制する元素(S,Se,Te等)と化合物を生成し、結晶粒の粗大化を抑制する元素の作用を阻害するおそれがある。
このため、熱処理後の結晶粒の粗大化を確実に抑制するためには、Sr,Ba,Ti,Zr,Hf,Y(A元素群)の合計含有量を10massppm以下とすることが好ましい。
なお、Sr,Ba,Ti,Zr,Hf,Y(A元素群)の合計含有量は、7.5massppm以下であることが好ましく、5massppm以下であることがさらに好ましい。下限については特に定めないが、Sr,Ba,Ti,Zr,Hf,Y(A元素群)の合計含有量が0.01massppm未満の場合は精錬にかかるコスト増となるため、Sr,Ba,Ti,Zr,Hf,Y(A元素群)の合計含有量は、0.01massppm以上が好ましく、0.05massppm以上がより好ましい。
(Al,Cr,P,Be,Cd,Ni,Fe(M元素群)の合計含有量:0.3massppm以上10mass以下)
なお、Al,Cr,P,Be,Cd,Ni,Fe(M元素群)は、銅母相中への固溶や粒界への偏析、さらには酸化物の形成により、粒成長を抑制する効果を持つ。
このため、熱処理後の結晶粒の粗大化を確実に抑制するためには、Al,Cr,P,Be,Cd,Ni,Fe(M元素群)を0.3massppm以上の合計量で含有することが好ましい。なお、Al,Cr,P,Be,Cd,Ni,Fe(M元素群)を意図的に含有する場合にはAl,Cr,P,Be,Cd,Ni,Fe(M元素群)の合計含有量の下限を1.0massppm以上とすることがより好ましく、1.5massppm以上とすることがさらに好ましく、2.0massppm以上とすることが一層好ましく、2.5massppm以上とすることが最適である。
一方、Al,Cr,P,Be,Cd,Ni,Fe(M元素群)を必要以上に含有すると、Agの粒界偏析を阻害し、さらに導電率の低下が懸念されるため、Al,Cr,P,Be,Cd,Ni,Fe(M元素群)の合計含有量の上限を10massppm以下とすることが好ましく、8massppm未満とすることがより好ましく、5massppm未満とすることがさらに好ましい。
(その他の不可避不純物)
上述した元素以外のその他の不可避不純物としては、B,Bi,Ca,Sc,希土類元素,V,Nb,Ta,Mo,W,Mn,Re,Ru,Os,Co,Rh,Ir,Pd,Pt,Au,Zn,Hg,Ga,In,Ge,As,Sb,Tl,N,C,Si,Li,H,O等が挙げられる。これらの不可避不純物は、導電率を低下させるおそれがあることから、より少ないことが好ましい。
(800℃で1時間保持の熱処理後の平均結晶粒径dave:400μm以下)
本実施形態である純銅板において、800℃で1時間保持の熱処理後の平均結晶粒径が400μm以下である場合には、800℃以上に加熱した場合であっても、結晶粒が粗大化することを確実に抑制でき、セラミックス基板に接合される厚銅回路やヒートシンクの素材として特に適している。
なお、800℃で1時間保持の熱処理後の平均結晶粒径の上限は380μm以下であることが好ましく、350μm以下であることがさらに好ましい。
800℃で1時間保持の熱処理後の平均結晶粒径の下限は、特に限定されないが、通常であれば200μm以上となる。
(800℃で1時間保持の熱処理後のdmax/dave:20以下)
本実施形態である純銅板において、800℃で1時間保持の熱処理後の50mm×50mmの範囲における最大結晶粒径dmaxと平均結晶粒径daveの比率dmax/daveが20以下である場合には、800℃以上に加熱した場合であっても、結晶粒が不均一化することを確実に抑制でき、セラミックス基板に接合される厚銅回路やヒートシンクの素材として特に適している。
なお、800℃で1時間保持の熱処理後の50mm×50mmの範囲における最大結晶粒径dmaxと平均結晶粒径daveの比率dmax/daveは18以下であることが好ましく、16以下であることがさらに好ましい。
(ビッカース硬度:150Hv以下)
本実施形態である純銅板においては、ビッカース硬度を150Hv以下とすることにより、純銅板としての特性が確保され、大電流用途の電気・電子部品の素材として特に適している。また、十分に軟らかく、セラミックス基板等の他の部材に接合して冷熱サイクルが負荷された場合でも、純銅板が変形することで発生した熱歪を解放することが可能となる。
なお、ビッカース硬度は140Hv以下であることが好ましく、120Hv以下であることがさらに好ましく、100Hv以下であることがより好ましく、95Hv以下であることがより一層好ましい。
ビッカース硬度の下限値は、特に限定されないが、60Hv以上が好ましい。
(導電率:97%IACS以上)
本実施形態である純銅板においては、導電率97%IACS以上とすることにより、純銅板としての特性が確保され、大電流用途の電子・電気機器用部材及び放熱用部材の素材として特に適している。
なお、導電率は98%IACS以上であることが好ましく、99%IACS以上であることがさらに好ましく、100%IACS以上であることがより好ましい。
導電率の上限値は、特に限定されないが、通常、103%IACS以下である。
次に、このような構成とされた本実施形態である純銅板の製造方法について、図1に示すフロー図を参照して説明する。
(溶解・鋳造工程S01)
まず、銅原料を溶解して得られた銅溶湯に、前述の元素を添加して成分調整を行い、銅合金溶湯を製出する。なお、各種元素の添加には、元素単体や母合金等を用いることができる。また、上述の元素を含む原料を銅原料とともに溶解してもよい。また、本実施形態の合金のリサイクル材およびスクラップ材を用いてもよい。ここで、銅溶湯は、純度が99.99mass%以上とされたいわゆる4NCu、あるいは99.999mass%以上とされたいわゆる5NCuとすることが好ましい。溶解工程では、添加元素の酸化を抑制するため、また水素濃度低減のため、HOの蒸気圧が低い不活性ガス雰囲気(例えばArガスやNガス)による雰囲気溶解を行い、溶解時の保持時間は最小限に留めることが好ましい。
そして、成分調整された銅合金溶湯を鋳型に注入して鋳塊を製出する。なお、量産を考慮した場合には、連続鋳造法または半連続鋳造法を用いることが好ましい。
溶湯の冷却速度は0.1℃/sec以上とすることが好ましく、0.5℃/sec以上とすることがさらに好ましい。
(熱間加工工程S02)
次に、組織の均一化のために、熱間加工を実施する。熱間加工温度については、特に制限はないが、500℃以上1000℃以下の範囲内とすることが好ましい。
また、熱間加工の総加工率は50%以上とすることが好ましく、60%以上とすることがさらに好ましく、70%以上であることがより好ましい。
さらに、熱間加工後の冷却方法については、特に制限はないが、空冷又は水冷を行うことが好ましい。
また、熱間加工工程S02における加工方法に特に限定はなく、例えば圧延、押出、溝圧延、鍛造、プレス等を採用することができる。
(粗加工工程S03)
次に所定の形状に加工するために、粗加工を行う。なお、この粗加工工程S03では、150℃以上350℃以下の温間加工を実施する。150℃以上350℃以下の温間加工を実施することで、Agを粒界近傍に偏析させることができ、粒界エネルギーを低くすることができる。この工程では温間加工を冷間加工と組み合わせてもよい。その場合は、最終加工前の複数パスで温間加工を実施すればよい。例えば圧延であれば最終の3パス以上を温間加工とすればよい。
(再結晶熱処理工程S04)
次に、粗加工工程S03後の銅素材に対して、再結晶を目的とした熱処理を行う。ここで、再結晶粒の粒径は10μm以上であることが望ましい。再結晶粒が微細であると、その後に800℃以上に加熱した際に、結晶粒の成長、組織の不均一化が促進されてしまうおそれがある。再結晶後の結晶粒径は15μm以上が好ましく、20μm以上がさらに好ましく、25μm以上がより一層好ましい。
再結晶熱処理工程S04の熱処理条件は、特に限定しないが、200℃以上900℃以下の範囲の熱処理温度で、1秒以上10時間以下の範囲で保持することが好ましい。
また、所望する形状を得るために、粗加工工程S03と再結晶熱処理工程S04を2回以上繰り返して行っても良い。
(調質加工工程S05)
次に、材料強度を調整するために、再結晶熱処理工程S04後の銅素材に対して調質加工を行ってもよい。調質加工の加工率は特に限定しないが、材料強度を調整するために0%超え50%以下の範囲内で実施することが好ましい。加工率を3%以上40%以下に制限することがより好ましい。
また、必要に応じて、残留ひずみの除去のために、調質加工後にさらに熱処理を行ってもよい。
以上の各工程により、本実施形態である純銅板が製出されることになる。
以上のような構成とされた本実施形態である純銅板によれば、圧延面における結晶粒の平均結晶粒径をX(μm)、Agの含有量をY(massppm)としたときに、
1×10−8≦X−3−1≦1×10−5
を満足している。このため、Agの一部が粒界に偏析して粒界エネルギーを低下させるため、結晶粒の粗大化を抑制することが可能となる。
そして、圧延の幅方向に対して直交する面を観察面として、母相をEBSD法により10000μm以上の測定面積にて、0.25μmの測定間隔のステップで測定する。測定結果をデータ解析ソフトOIMにより解析して各測定点のCI値を得る。CI値が0.1以下である測定点を除く。データ解析ソフトOIMにより各結晶粒の方位差の解析を行い、隣接する測定点間の方位差が15°以上となる測定点間の境界を結晶粒界とする。Area Fractionにより平均粒径Aを求める。平均粒径Aの10分の1以下となる測定間隔のステップで母相をEBSD法により測定する。総数1000個以上の結晶粒が含まれるように、複数視野で合計面積が10000μm以上となる測定面積で、測定結果をデータ解析ソフトOIMにより解析して各測定点のCI値を得る。CI値が0.1以下である測定点を除く。データ解析ソフトOIMにより各結晶粒の方位差の解析を行い、隣接する測定点間の方位差が15°以上の測定点間の境界を結晶粒界とする。Σ29以下の対応粒界を特殊粒界とし、それ以外をランダム粒界とする。OIMから解析された粒界3重点において、粒界3重点を構成する3つの粒界全てが特殊粒界であるJ3の全粒界3重点に対する割合をNFJ3とし、粒界3重点を構成する2つの粒界が特殊粒界であり、1つがランダム粒界であるJ2の全粒界3重点に対する割合をNFJ2としたとき、
0.30≦(NFJ2/(1−NFJ3))0.5≦0.48を満足している。このため、粒界ネットワークがエネルギーの低い特殊粒界で構成されており、加熱時における再結晶の駆動力が小さく、粒成長を抑制することが可能となる。またプレス加工時の際にかえり高さを抑制することも可能となる。
本実施形態において、結晶粒の成長を抑制する元素に該当するMgおよびSnの含有量が0.1massppm以上とした場合には、熱処理後においても結晶粒の粗大化や不均一化を確実に抑制することが可能となる。また、MgおよびSnの合計含有量を100massppm以下に制限した場合には、導電率を十分に確保することができる。
また、本実施形態において、Sの含有量を1massppm以上20massppm以下の範囲内とした場合には、結晶粒の成長を抑制する元素の一種であるSが粒界に偏析し、加熱時における結晶粒の粗大化及び不均一化を確実に抑制することが可能となる。また、熱間加工性を確保することができる。
さらに、本実施形態において、結晶粒界に偏析して結晶粒の粗大化を抑制する元素であるPb,Se及びTeの合計含有量を0.3massppm以上とした場合には、熱処理後においても結晶粒の粗大化や不均一化を確実に抑制することが可能となる。加えて、Pb,Se及びTeの合計含有量を10massppm以下とした場合には、Agの効果を阻害させず、粒成長抑制効果を十分に発揮することができる。
また、本実施形態において、Sr,Ba,Ti,Zr,Hf,Y(A元素群)の合計含有量が10massppm以下である場合には、これらA元素群の元素が結晶粒の成長を抑制する元素であるAgの効果を阻害せず、さらにA元素群の元素がS,Se,Te等とが反応して化合物が生成されることを抑制できる。このため、結晶粒の成長を抑制する元素の作用を十分に奏功せしめることが可能となる。よって、加熱時における結晶粒の粗大化及び不均一化を確実に抑制することが可能となる。
さらに、本実施形態において、Al,Cr,P,Be,Cd,Ni、Fe(M元素群)の合計含有量を0.3massppm以上とした場合には、銅母相中への固溶や粒界への偏析、さらには酸化物の形成により、熱処理後においても結晶粒の粗大化や不均一化を確実に抑制することが可能となる。加えて、Al,Cr,P,Be,Cd,Ni、Feの合計含有量を10massppm以下に制限した場合には、Agの効果を抑制せずに結晶粒の成長を抑制する効果を十分に発揮させることができ、加熱時における結晶粒の粗大化及び不均一化を確実に抑制することが可能となる。
また、本実施形態において、800℃で1時間保持の熱処理を行った後の、50mm×50mmの範囲における最大結晶粒径dmaxと平均結晶粒径daveの比率dmax/daveが20以下、平均結晶粒径daveが400μm以下である場合には、熱処理後においても、結晶粒が粗大化および不均一になることを確実に抑制でき、外観不良の発生をさらに抑制することができる。
また、本実施形態において、ビッカース硬度が150Hv以下である場合には、十分に軟らかく、純銅板としての特性が確保されているので、大電流用途の電気・電子部品の素材として特に適している。
以上、本発明の実施形態である純銅板について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、その発明の技術的要件を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、上述の実施形態では、純銅板の製造方法の一例について説明したが、純銅板の製造方法は、実施形態に記載したものに限定されることはなく、既存の製造方法を適宜選択して製造してもよい。
圧延面における結晶粒の平均結晶粒径X、800℃で1時間保持の熱処理を行った後の最大結晶粒径dmax及び平均結晶粒径daveは、後述する実施例に記載の方法により測定される。
以下に、本発明の効果を確認すべく行った確認実験の結果について説明する。
純度99.999mass%以上の純銅からなる銅原料を準備し、これを高純度グラファイト坩堝内に装入して、Arガス雰囲気とされた雰囲気炉内において高周波誘導加熱して溶解した。
得られた銅溶湯内に、各元素を添加してカーボン鋳型に注湯し、表1,3に示す成分組成の鋳塊を製出した。その後、一部を切断・切削加工し、厚さ50mm×幅100×長さ100mmの鋳塊を得た。
その後、Arガス雰囲気中において、電気炉を用いて800℃で4時間の加熱を行い、均質化処理を行った。
均質化熱処理後の鋳塊を自由鍛造にて鍛造比が4以上になるように熱間鍛造し、高さ約25mm×幅約150mmの板材を得た。熱間鍛造は500℃以上で実施するようにし、表面温度が500℃以下になった時点で、800℃に保持した電気炉で再加熱し、表面温度が約600℃になった時点で再度熱間鍛造を実施した。熱間鍛造終了時の温度は500℃以上であった。熱間鍛造終了後、800℃に加熱した電気炉で1minの溶体化熱処理を実施した。
鍛造後の板材は表面の酸化被膜を除去するために表面研削を実施した。
その後、圧延ロールを300℃まで加熱し、表に示した圧延率で粗圧延(温間圧延)を実施した。温間圧延後の銅板材に対して、表2,4に記載された熱処理温度で、電気炉を用いて、再結晶熱処理を実施し、結晶粒径を10μm以上150μm以下となるように調整した。
そして、再結晶熱処理後の銅素材に対して、表2,4に記載された条件で調質圧延を行い、表2,4に示す厚さで幅60mmの特性評価用条材(特性評価用試験片)を製造した。
そして、以下の項目について評価を実施した。
(組成分析)
得られた鋳塊から測定試料を採取し、グロー放電質量分析装置(GD−MS)を用いて各元素の含有量を測定した。なお、測定は試料中央部と幅方向端部の2か所で測定を行い、含有量の多い方をそのサンプルの含有量とした。測定結果を表1,3に示す。
(粒界3重点割合)
圧延の幅方向に対して直交する断面、すなわちTD面(Transverse direction)を観察面として、EBSD測定装置及びOIM解析ソフトによって、次のように結晶粒界(特殊粒界とランダム粒界)および粒界3重点を測定した。耐水研磨紙、ダイヤモンド砥粒を用いて機械研磨を行った。次いで、コロイダルシリカ溶液を用いて仕上げ研磨を行った。そして、EBSD測定装置(FEI社製Quanta FEG 450,EDAX/TSL社製(現 AMETEK社) OIM Data Collection)と、解析ソフト(EDAX/TSL社製(現 AMETEK社)OIM Data Analysis ver.7.3.1)を用いて、電子線の加速電圧20kV、0.25μmの測定間隔のステップで10000μm以上の測定面積にて、母相をEBSD法により測定した。測定結果をデータ解析ソフトOIMにより解析して各測定点のCI値を得た。CI値が0.1以下である測定点を除いて、データ解析ソフトOIMにより各結晶粒の方位差の解析を行った。隣接する測定点間の方位差が15°以上となる測定点間の境界を結晶粒界とした。Area Fractionにより平均粒径Aを求めた。平均粒径Aの10分の1以下となる測定間隔のステップで、母相をEBSD法により測定した。総数1000個以上の結晶粒が含まれるように、複数視野で合計面積が10000μm以上となる測定面積で、測定結果をデータ解析ソフトOIMにより解析して各測定点のCI値を得た。CI値が0.1以下である測定点を除いて、データ解析ソフトOIMにより各結晶粒の方位差の解析を行った。隣接する測定点間の方位差が15°以上となる測定点間の境界を結晶粒界とした。また、各粒界3重点を構成する3つの粒界については、Neighboring grid pointで算出したCSL sigma valueの値を用いて、特殊粒界およびランダム粒界を識別した。Σ29を超える対応粒界についてはランダム粒界とみなした。
(プレス加工性)
特性評価用条材から金型で円孔(φ8mm)を多数打ち抜いて、かえり高さを測定し、プレス加工性の評価を行った。
金型のクリアランスは板厚に対して約3%とし、50spm(stroke per minute)の打ち抜き速度により打ち抜きを行った。穴抜き側の切口面を観察し、かえり高さを10点以上計測し、板厚に対するかえり高さの割合を求めた。
かえり高さの最も高い値が板厚に対して3.0%以下のものを“A”(good)と評価した。かえり高さの最も高い値が板厚に対して3.0%を超えるものを“B”(poor)と評価した。評価結果を表5,6に示す。
(ビッカース硬さ)
JIS Z 2244に規定されているマイクロビッカース硬さ試験方法に準拠し、試験荷重0.98Nでビッカース硬さを測定した。なお、測定位置は、特性評価用試験片の圧延面とした。評価結果を表5,6に示す。
(導電率)
特性評価用条材から幅10mm×長さ60mmの試験片を採取し、4端子法によって電気抵抗を求めた。また、マイクロメータを用いて試験片の寸法測定を行い、試験片の体積を算出した。そして、測定した電気抵抗値と体積とから、導電率を算出した。評価結果を表5,6に示す。
なお、試験片は、その長手方向が特性評価用条材の圧延方向に対して平行になるように採取した。
(熱処理前の結晶粒径)
得られた特性評価用条材から20mm×20mmのサンプルを切り出し、SEM−EBSD(Electron Backscatter Diffraction Patterns)測定装置によって、平均結晶粒径を測定した。
圧延面を耐水研磨紙、ダイヤモンド砥粒を用いて機械研磨を行った。次いで、コロイダルシリカ溶液を用いて仕上げ研磨を行った。その後、EBSD測定装置(FEI社製Quanta FEG 450,EDAX/TSL社製(現 AMETEK社) OIM Data Collection)と、解析ソフト(EDAX/TSL社製(現 AMETEK社)OIM Data Analysis ver.7.3.1)を用いて、電子線の加速電圧20kV、0.25μmの測定間隔のステップで10000μm以上の測定面積にて、母相をEBSD法により測定した。測定結果をデータ解析ソフトOIMにより解析して各測定点のCI値を得た。CI値が0.1以下である測定点を除いて、データ解析ソフトOIMにより各結晶粒の方位差の解析を行った。隣接する測定点間の方位差が15°以上となる測定点間の境界を結晶粒界とした。Area Fractionにより平均粒径Aを求めた。平均粒径Aの10分の1以下となる測定間隔のステップで母相をEBSD法により測定した。総数1000個以上の結晶粒が含まれるように、複数視野で合計面積が10000μm以上となる測定面積で、測定結果をデータ解析ソフトOIMにより解析して各測定点のCI値を得た。CI値が0.1以下である測定点を除いて、データ解析ソフトOIMにより各結晶粒の方位差の解析を行った。隣接する測定点間の方位差が15°以上となる測定点間の境界を大角粒界とし、隣接する測定点間の方位差が15°未満を小角粒界とした。大角粒界を用いて、結晶粒界マップを作成し、JIS H 0501の切断法に準拠し、結晶粒界マップに対して、縦、横の方向に所定長さの線分を所定の間隔で5本ずつ引いた。完全に切られる結晶粒数を数え、その切断長さの平均値を熱処理前の平均結晶粒径として算出した。評価結果を表5,6に示す。
熱処理前の平均結晶粒径は、圧延面における結晶粒の平均結晶粒径Xμmでもある。圧延面における結晶粒の平均結晶粒径をXμm、Agの含有量をYmassppmとしたときのX−3−1の値を算出し、表5,6に示す。なお、算出値が“a×10−b”の場合、表5,6には“aE−b”と記載する。例えば、“1.2E−08”は、“1.2×10−8”を意味する。
(熱処理後の結晶粒径)
上述の特性評価用条材から60mm×60mmのサンプルを切り出し、800℃で1時間保持の熱処理を実施した。この試験片より、50mm×50mmのサンプルを切り出し、圧延面を鏡面研磨、エッチングを行った。そして光学顕微鏡にて、圧延方向が写真の横になるように撮影した。観察部位の中で最も結晶粒が微細かつ、約1mm以上の視野内が均一な粒度で形成される部位を選び、約1mm以上の視野で観察および測定を行った。そして、JIS H 0501の切断法に従い、写真の縦、横の方向に所定長さの線分を所定の間隔で5本ずつ引いた。完全に切られる結晶粒数を数え、その切断長さの平均値を熱処理後の平均結晶粒径daveとして算出した。評価結果を表5,6に示す。
(熱処理後の粒径のばらつき)
上述のように、熱処理を施した試験片から採取したサンプルについて、50mm×50mmの範囲内において双晶を除き、最も粗大な結晶粒の長径と短径の平均値を最大結晶粒径dmaxとした。長径は、粒界(結晶粒の輪郭)上の2点を結ぶ線分のうち最長の線分の長さであり、短径は、長径に垂直に線を引いた時に粒界によって切断される線分のうち最長の線分の長さである。最大結晶粒径と上述の平均結晶粒径daveとの比dmax/daveが20以下の場合を“A”(good)と評価し、dmax/daveが20を超えた場合を“B”(poor)と評価した。評価結果を表5,6に示す。
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比較例1は、X−3−1が本実施形態の範囲よりも大きく、熱処理後の粒径のばらつきが“B”(poor)となり、熱処理後の粒径も400μmを超えた。
比較例2は、(NFJ2/(1−NFJ3))0.5が本実施形態の範囲よりも小さく、熱処理後の粒径のばらつきが“B”(poor)となり、熱処理後の粒径も400μmを超えた。
比較例3は、(NFJ2/(1−NFJ3))0.5が本実施形態の範囲よりも大きく、プレス加工性が“B”(poor)となった。このため、熱処理後の結晶粒径については評価しなかった。
比較例4は、X−3−1が本実施形態の範囲よりも小さく、熱処理前の結晶粒径が400μmを超えていた。このため、その他の評価を実施しなかった。
これに対して、本発明例においては、熱処理後の平均結晶粒径が小さく、かつ、粒径のばらつきの小さくなった。また、導電率も97%IACS以上となった。
以上のことから、本発明例によれば、導電性に優れ、かつ、熱処理後においても、結晶粒の粗大化及び不均一化を抑制することができる純銅板を提供可能であることが確認された。
本実施形態の純銅板は、ヒートシンクや厚銅回路として銅板材を具備した絶縁回路基板等の電気・電子部品に好適に適用できる。

Claims (8)

  1. Cuの含有量が99.96mass%以上とされ、圧延面における結晶粒の平均結晶粒径をXμm、Agの含有量をYmassppmとしたときに、以下の関係式が成り立つとともに、
    1×10−8≦X−3−1≦1×10−5
    圧延の幅方向に対して直交する面を観察面として、母相をEBSD法により10000μm以上の測定面積にて、0.25μmの測定間隔のステップで測定し、測定結果をデータ解析ソフトOIMにより解析して各測定点のCI値を得て、CI値が0.1以下である測定点を除いて、各結晶粒の方位差の解析を行い、隣接する測定点間の方位差が15°以上となる測定点間の境界を結晶粒界とし、Area Fractionにより平均粒径Aを求め、平均粒径Aの10分の1以下となる測定間隔のステップで母相をEBSD法により測定して、総数1000個以上の結晶粒が含まれるように、複数視野で10000μm以上となる測定面積で、測定結果をデータ解析ソフトOIMにより解析して各測定点のCI値を得て、CI値が0.1以下である測定点を除いて、各結晶粒の方位差の解析を行い、隣接する測定点間の方位差が15°以上となる測定点間の境界を結晶粒界とし、Σ29以下の対応粒界を特殊粒界とし、それ以外をランダム粒界とした際、OIMから解析された粒界3重点において、
    粒界3重点を構成する3つの粒界全てが特殊粒界であるJ3の全粒界3重点に対する割合をNFJ3とし、粒界3重点を構成する2つの粒界が特殊粒界であり、1つがランダム粒界であるJ2の全粒界3重点に対する割合をNFJ2としたとき、
    0.30<(NFJ2/(1−NFJ3))0.5≦0.48が成り立つことを特徴とする純銅板。
  2. Mg及びSnの合計含有量が0.1massppm以上100massppm以下の範囲内とされていることを特徴とする請求項1に記載の純銅板。
  3. Sの含有量が1massppm以上20massppm以下の範囲内とされていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の純銅板。
  4. Pb,Se及びTeの合計含有量が0.3massppm以上10massppm以下の範囲内とされていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の純銅板。
  5. Sr,Ba,Ti,Zr,Hf,Yの合計含有量が10massppm以下であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の純銅板。
  6. Al,Cr,P,Be,Cd,Ni,Feの合計含有量が0.3massppm以上10massppm以下の範囲内とされていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の純銅板。
  7. 800℃で1時間保持の熱処理を行った後の、50mm×50mmの範囲における最大結晶粒径dmaxと平均結晶粒径daveの比率dmax/daveが20以下、平均結晶粒径daveが400μm以下であることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の純銅板。
  8. ビッカース硬度が150Hv以下であることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の純銅板。
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