JP2019176835A - アミド化合物の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】アクロレイン存在下であってもニトリルヒドラターゼを用いるアミド化合物生成反応に対するアクロレインによる阻害を低減できるアミド化合物の製造方法を提供する。【解決手段】ニトリルヒドラターゼ、ニトリル化合物、アクロレイン、塩基性アミノ酸、及び水性媒体を含む溶液中でニトリル化合物を水和させてアミド化合物に変換する工程を含む、アミド化合物の製造方法。【選択図】なし

Description

本開示はアミド化合物の製造方法に関する。
アミド化合物であるアクリルアミドの製造の原料として用いられるアクリルニトリルには、副生成物としてアクロレインが含まれうることが知られている。特許文献1は、アクリロニトリルの製造中に副生成物としてアクロレインが通常発生することを記載している。特許文献1はまた、アクリルアミドモノマー中のアクロレインの存在は、通常、アクリルアミドポリマーの架橋結合を生じ、水溶性ポリマーの調製中に少なくとも部分的に不溶性ポリマーを形成することを記載している。
特許文献2も、アクロレインがニトリルヒドラターゼによるアクリルアミドの合成反応を阻害することを記載している。特許文献2は、イオン交換樹脂などを用いて原料アクリロニトリル中のアクロレインの濃度を1ppm以下とすることで、ニトリルヒドラターゼによる触媒作用に対するアクロレインによる阻害が起こらなくすることができることを記載している。
特開2012−139233号公報 特開2012−29695号公報
特開2012−29695号公報(特許文献2)に記載された方法は、原料アクリロニトリル中のアクロレイン濃度を1ppm以下に制御することによりアクロレインによるニトリルヒドラターゼ活性阻害を回避するものであって、1ppm超のアクロレイン存在下におけるニトリルヒドラターゼ活性に対する阻害を低減するものではない。アクロレイン除去のための操作を必要とせずに、ニトリルヒドラターゼ活性に対する阻害を低減できることが望ましい。そこで、本開示の一実施形態は、アクロレイン存在下においてもニトリルヒドラターゼを用いるアミド化合物生成反応に対するアクロレインによる阻害を低減できるアミド化合物の製造方法を提供する。
本開示は、以下の態様を含む。
<1> ニトリルヒドラターゼ、ニトリル化合物、アクロレイン、塩基性アミノ酸、及び水性媒体を含む溶液中でニトリル化合物を水和させてアミド化合物に変換する工程を含む、アミド化合物の製造方法。
<2> 前記塩基性アミノ酸が、リジン、ヒスチジン、オルニチン、及びポリリジンからなる群から選択される少なくとも1種を含む、<1>に記載の製造方法。
<3> 前記ニトリルヒドラターゼが、シュードノカルディア属由来のニトリルヒドラターゼ又はロドコッカス属由来のニトリルヒドラターゼである、<1>又は<2>に記載の製造方法。
<4> 前記溶液中のアクロレインの質量に対する塩基性アミノ酸の質量が50質量%以上である、<1>〜<3>のいずれか1つに記載の製造方法。
<5> 前記溶液中におけるアクロレインの量が前記ニトリル化合物の量に対して1ppm超である、<1>〜<4>のいずれか1つに記載の製造方法。
本開示によれば、アクロレイン存在下においてもニトリルヒドラターゼを用いるアミド化合物生成反応に対するアクロレインによる阻害を低減できるアミド化合物の製造方法を提供することができる。
本開示において「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても当該工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
本開示において「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
本開示において、記載される各要素は、その数について特に明記されない限りは、一つ存在しても、複数存在しても構わない。
本開示において、組成物中の各成分の量は、組成物中の各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
本開示は、ニトリルヒドラターゼ、ニトリル化合物、アクロレイン、塩基性アミノ酸、及び水性媒体を含む溶液(以下、「反応溶液」とも称する)中でニトリル化合物を水和させてアミド化合物に変換する工程を含む、アミド化合物の製造方法(以下、「本開示に係るアミド化合物の製造方法」とも称する)を提供する。
本開示に係るアミド化合物の製造方法を用いることにより、ニトリルヒドラターゼを用いるアミド化合物生成反応に対するアクロレインによる阻害を低減できる。この理由は必ずしも明らかではないが、次のように推定できる。特開2012−139233号公報(特許文献1)及び特開2012−29695号公報(特許文献2)に記載のとおり、ニトリル化合物を合成する過程では、通常、アクロレインが副生してしまう。アクロレインは高い反応性を有する物質であって、ニトリルヒドラターゼの塩基性アミノ酸残基中の窒素原子に付加して付加体を形成し、ニトリルヒドラターゼの活性を低下させると考えられる。遊離の塩基性アミノ酸が反応溶液中に存在する場合、アクロレインは遊離の塩基性アミノ酸に付加し、ニトリルヒドラターゼに対する付加が減少すると考えられる。このため、ニトリルヒドラターゼ、ニトリル化合物、アクロレイン、塩基性アミノ酸、及び水性媒体を含む溶液中でニトリル化合物を水和させてアミド化合物に変換する工程を含む本開示に係るアミド化合物の製造方法では、アミド化合物生成反応に対するアクロレインによる阻害を低減できると考えられる。
<ニトリル化合物>
本開示に係るアミド化合物の製造方法で用いられるニトリル化合物とは、溶液中でニトリルヒドラターゼによりアミド化合物へ変換される化合物であれば特に限定されない。ニトリル化合物の例としては、アセトニトリル、プロピオニトリル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、n−ブチロニトリル、イソブチロニトリル、クロトノニトリル、α−ヒドロキシイソブチロニトリルなどの炭素数2〜4のニトリル化合物が挙げられる。ニトリル化合物としては、アクリロニトリル及びメタクリロニトリルのうちの少なくとも1種を用いることが好ましい。
原料として用いられるニトリル化合物には、一般的にアクロレインが不純物として含まれている。アクロレインの存在はニトリルヒドラターゼ活性を阻害するものであるが、本開示に係るアミド化合物の製造方法によればアクロレイン存在下であってもアクロレインによるニトリルヒドラターゼ活性への阻害を低減することができる。上述のようにアクロレインは、一般には、意図的に添加する成分というよりはニトリル化合物の添加により付随的に添加されてしまう成分である。
ニトリル化合物中に不純物として含まれるアクロレインの割合は特に限定されない。原料として用いられるニトリル化合物中に含まれるアクロレインの割合が大きい方が、本開示に係るアミド化合物の製造方法がより顕著に発揮される傾向にある。このため、原料として用いられるニトリル化合物中に含まれるアクロレインの割合は、例えば、0.5ppm以上であり、好ましくは1ppm超であり、より好ましくは2ppm以上であり、さらに好ましくは5ppm以上である。アクロレインの割合が高い場合であっても、それに応じた量の塩基性アミノ酸を存在させればよいため、アクロレインの割合の上限は特に限定されないが、原料として用いられるニトリル化合物中に含まれるアクロレインの割合は、例えば、0.5ppm〜10000ppmであり、好ましくは2ppm〜500ppmであり、より好ましくは5ppm〜4000ppmである。ここで、ニトリル化合物中に含まれるアクロレインの割合がXppmであるとは、アクリロニトリルの1kg(不純物も含む質量)中に含まれるアクロレインの質量がXmgであることを意味している。
また、反応溶液中におけるアクロレインの割合は、例えば、0.2ppm〜1000ppmであり、好ましくは1ppm〜800ppmであり、より好ましくは5ppm〜600ppmである。ここで、反応溶液中に含まれるアクロレインの割合がXppmであるとは、反応溶液1kg中に含まれるアクロレインの質量がXmgであることを意味している。
アクロレインの量は高速液体クロマトグラフィー法により測定できる。具体的には、高速液体クロマトグラフ装置をUV検出器波長210nm、カラム温度40℃で用い、分離カラムとしてL−Column(登録商標)ODS Type−Waters(財団法人化学品検査協会製、カラムサイズ:内径4.6mm×長さ250mm)を用い、20%(容積基準)アセトニトリル水溶液(リン酸にてpH2.5に調整)を溶離液として用いた高速液体クロマトグラフィー法により測定できる。例えば、既知濃度のアクロレインを含む複数の標準試料を測定することにより検量線を作成し、この検量線を基にアクロレイン量を求めることができる。
反応溶液中のニトリル化合物の濃度は、ニトリル化合物によってニトリルヒドラターゼが失活しない範囲であれば特に限定されない。反応溶液の全質量に対するニトリル化合物の質量の割合は、好ましくは3質量%〜50質量%以下であり、より好ましくは5質量%〜30質量%であり、さらに好ましくは10質量%〜20質量%である。
<ニトリルヒドラターゼ>
本開示に係るアミド化合物の製造方法におけるニトリルヒドラターゼとは、ニトリル化合物を加水分解して対応するアミド化合物を生成する能力をもつ酵素をいう。本開示に係るアミド化合物の製造方法におけるニトリルヒドラターゼは反応溶液中に含まれているが、反応溶液の調製の過程においては精製されたニトリルヒドラターゼを反応溶液に添加してもよく、ニトリルヒドラターゼ生産能を有する微生物の菌体を反応溶液に添加してもよく、ニトリルヒドラターゼ生産能を有する微生物菌体の処理物を反応溶液に添加してもよい。また、本開示において反応溶液とは、溶質が完全に溶解している溶液のみを指すわけではなく、細胞や細胞内容物などの不溶物が懸濁、沈殿等している液体組成物をも含む意味で用いられる。ニトリルヒドラターゼは、例えば、内在性のニトリルヒドラターゼ遺伝子を有するニトリルヒドラターゼ生産微生物によって生産したものでもよいし、外来のニトリルヒドラターゼをプラスミドなどの発現ベクターに有するニトリルヒドラターゼ生産微生物によって生産したものであってもよい。また、ニトリルヒドラターゼは、天然生物のニトリルヒドラターゼであってもよいし、天然生物のニトリルヒドラターゼに対してアミノ酸配列の改変を加えた改変ニトリルヒドラターゼであってもよい。
天然生物のニトリルヒドラターゼとしては、例えば、微生物のニトリルヒドラターゼが挙げられる。より具体的には、ノカルディア(Nocardia)属、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属、バチルス(Bacillus)属、好熱性のバチルス属、シュードモナス(Pseudomonas)属、ミクロコッカス(Micrococcus)属、ロドクロウス(rhodochrous)種に代表されるロドコッカス(Rhodococcus)属、アシネトバクター(Acinetobacter)属、キサントバクター(Xanthobacter)属、ストレプトマイセス(Streptomyces)属、リゾビウム(Rhizobium)属、クレブシエラ(Klebsiella)属、エンテロバクター(Enterobacter)属、エルウィニア(Erwinia)属、エアロモナス(Aeromonas)属、シトロバクター(Citrobacter)属、アクロモバクター(Achromobacter)属、アグロバクテリウム( Agrobacterium)属、またはサーモフィラ(thermophila)種に代表されるシュードノカルディア(Pseudonocardia)属に属する微生物のニトリルヒドラターゼが例として挙げられる。ニトリルヒドラターゼは、これらの中でも、シュードノカルディア属由来のニトリルヒドラターゼ又はロドコッカス属由来のニトリルヒドラターゼであることが好ましい。
あるいは、ニトリルヒドラターゼ生産微生物は、外来のニトリルヒドラターゼ遺伝子を有する宿主微生物(以下、「ニトリルヒドラターゼ生産組換え微生物」)であってもよい。外来のニトリルヒドラターゼ遺伝子は、天然生物、例えば天然微生物のニトリルヒドラターゼ遺伝子であってもよく、又はこうした天然生物のニトリルヒドラターゼ遺伝子に対してヌクレオチド配列の改変を加えた改変ニトリルヒドラターゼ遺伝子であってもよい。ニトリルヒドラターゼ遺伝子を組み込んだ発現ベクターを宿主微生物内に導入することにより、ニトリルヒドラターゼ生産組換え微生物を得ることができる。
ニトリルヒドラターゼ生産組換え微生物の宿主微生物としては、後述の実施例のように大腸菌(Escherichia coli)が代表例として挙げられるが、とくに大腸菌に限定されるものではなく、枯草菌(Bacillus subtilis)等のバチルス属菌、酵母や放線菌等の他の微生物菌株も挙げられる。ニトリルヒドラターゼ生産組換え微生物の例として、シュードノカルディア・サーモフィラのニトリルヒドラターゼ遺伝子を大腸菌に導入したMT−10822(本菌株は、1996年2月7日に茨城県つくば市東1丁目1番3号の通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所(現 茨城県つくば市東1−1−1 つくばセンター 中央第6 独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センター)に受託番号FERM BP−5785として、特許手続き上の微生物の寄託の国際的承認に関するブダペスト条約に基づいて寄託されている。)が挙げられる。
ニトリルヒドラターゼ生産組換え微生物が、シュードノカルディア・サーモフィラなどのシュードノカルディア属微生物をコードする遺伝子が導入されたニトリルヒドラターゼ生産能を有する組換え大腸菌、又はロドコッカス・ロドクロウスJ−1株(受託番号FERM BP−1478)などのロドコッカス属微生物であることも、また好ましい。
ニトリルヒドラターゼ生産微生物の菌体を、ニトリルヒドラターゼ、ニトリル化合物、アクロレイン及び塩基性アミノ酸を含む水性媒体中でニトリル化合物を水和させてアミド化合物に変換する工程(以後、「アミド化合物生成工程」とも称する)に用いる場合には、菌体は、分子生物学、生物工学、遺伝子工学などの分野において公知の一般的な方法を利用して調製すればよい。例えば、LB培地、M9培地等の一般的な液体培地にニトリルヒドラターゼ生産微生物を植菌した後、適当な培養温度(一般的には、20℃〜50℃であるが、好熱菌の場合は50℃以上でもよい)で生育させ、続いて、ニトリルヒドラターゼ生産微生物を遠心分離によって培養液より分離、回収することにより、菌体を調製することができる。
ニトリルヒドラターゼ生産微生物の菌体処理物をアミド化合物生成工程に用いる場合には、菌体処理物は、1)ニトリルヒドラターゼ生産微生物の菌体の抽出物若しくは磨砕物、2)該抽出物若しくは磨砕物のニトリルヒドラターゼ活性画分を分離して得られる画分、3)前記菌体、前記菌体抽出物、前記菌体磨砕物、若しくは前記画分を適当な担体を用いて固定化した固定化物、などのいずれであってもよい。これらはニトリルヒドラターゼの活性を有している限りはアミド化合物生成工程で使用可能な菌体処理物に相当する。アミド化合物生成工程では、1種類の菌体処理物を用いてもよいし、2種類以上の異なる形態の菌体処理物を同時あるいは交互に用いてもよい。
精製されたニトリルヒドラターゼをアミド化合物生成工程に用いる場合には、例えば、ニトリルヒドラターゼ生産微生物の菌体の抽出物若しくは磨砕物からニトリルヒドラターゼ活性画分を分離する。活性画分中のニトリルヒドラターゼが十分な純度を有している場合には活性画分又はこれに溶媒交換等したものを精製された酵素として用いることができる。活性画分中のニトリルヒドラターゼの純度が十分で無い場合には、液体クロマトグラフィー、ろ過などによりさらに精製したものを精製された酵素として用いることができる。
反応溶液中におけるニトリルヒドラターゼの濃度は、所望の反応速度に応じて、必要なユニット数のニトリルヒドラターゼを与える濃度とすればよい。例えば、ニトリルヒドラターゼ生産微生物の菌体を用いる場合には、乾燥菌体の質量が反応溶液の質量に対し、10ppm〜50000ppm、好ましくは50ppm〜30000ppmとなるようにしてもよい。
<水性媒体>
本開示に係るアミド化合物の製造方法で用いられる水性媒体は、例えば、水、又はリン酸塩等の緩衝剤、硫酸塩や炭酸塩等の無機塩、アルカリ金属の水酸化物、アミド化合物等からなる群から選択される成分を適当な濃度で溶解させた水溶液である。水以外の追加成分については、ニトリルヒドラターゼを用いたアミド化合物生成工程を阻害しない限りは特に限定されない。
<塩基性アミノ酸>
本開示に係るアミド化合物の製造方法において用いられる塩基性アミノ酸は、リジン、アルギニン、ヒスチジン、トリプトファンなどの標準アミノ酸、オルニチンなどの非標準アミノ酸、及びポリリジンなどのアミノ酸重合体からなる群から選択される少なくとも1種とすることができる。反応溶液中における塩基性アミノ酸の濃度は、原料としてのニトリル化合物中におけるアクロレイン濃度に応じて適宜調節可能であるが、例えば、0.5ppm〜1000ppmであり、好ましくは1ppm〜800ppmであり、より好ましくは5ppm〜600ppmである。反応溶液中におけるアクロレイン濃度に対する塩基性アミノ酸の濃度の比(塩基性アミノ酸濃度/アクロレイン濃度)は、アクロレインによるアミド化合物生成反応の阻害をより効果的に低減する観点からは、30質量%以上とすることが好ましく、50質量%以上とすることが好ましく、80質量%以上とすることがさらに好ましく、150質量%以上とすることが一層好ましく、250質量%以上とすることがより一層好ましい。ただし、塩基性アミノ酸の量が増えれば、その分コストが上昇することにもなるので、反応溶液中におけるアクロレイン濃度に対する塩基性アミノ酸の濃度の比(塩基性アミノ酸濃度/アクロレイン濃度)は、例えば30質量%〜500質量%、又は50質量%〜400質量%、又は80質量%〜350質量%、又は150質量%〜300質量%とすることができる。
<アミド化合物生成工程>
アミド化合物生成工程における反応条件は以下の通りである。反応溶液中のニトリル化合物の濃度は、反応を効率的に進ませるためになるべく高いことが好ましく、ニトリル化合物の飽和濃度であってもよい。この場合は、溶けきれないニトリル化合物が存在していてもよく、アミド化合物生成反応の進行と共にニトリル化合物が消費されるため、溶けきれていないニトリル化合物も反応の進行と共に反応溶液中に溶解する。反応溶液中におけるニトリル化合物の濃度を高くすることにより、反応をアミド化合物生成側に進みやすくできる。ただし、あまりに大過剰のニトリル化合物を供給しても、反応を完結させるために必要なニトリルヒドラターゼの量や反応器の容積が増大し、また、除熱のために大能力の熱交換器等が必要となるなど、設備面での経済的負担が大きくなる。このため、反応溶液中におけるニトリル化合物の量(溶けきれていない量も含む)は、ニトリル化合物の全量が対応するアクリルアミドに転化したと仮定した場合のアミド化合物の理論生成量が、反応溶液に対して40質量%〜80質量%の範囲となる量とすることが好ましい。
アミド化合物生成工程における反応時間は、酵素使用量や温度等の条件にも左右され得るが、例えば1時間〜80時間、好ましくは2時間〜40時間である。
アミド化合物生成工程における反応形式については、特に限定するものではなく、回分式、半回分式、及び連続式のいずれであってもよい。また、懸濁床、固定床、移動床などのいずれを用いてもよい。通常は撹拌機を備えた槽型反応器又はプラグフロー反応器での反応がより好ましく、また、複数の形式の反応器を組み合わせて用いてもよい。
また、水和反応であるアミド化合物生成反応は、通常は常圧又は常圧近辺で行われるが、ニトリル化合物の反応溶液中への溶解度を高めるために加圧下で行ってもよい。また、反応温度に関しては、水性媒体の氷点以上の温度であれば特に制限されるものではないが、通常は、0℃〜50℃で行うのが好ましく、10℃〜40℃で行うことがより好ましい。生成物が反応液中に晶出したスラリー状態でも反応を行うことができる。また、アミド化合物生成反応における反応溶液のpHは、ニトリルヒドラターゼ活性が維持されている限りは特に制限されるものではないが、好ましくは6〜10であり、より好ましくは7〜9である。
反応溶液を調製するにあたっては、ニトリルヒドラターゼ、ニトリル化合物、及び塩基性アミノ酸のそれぞれを水性媒体中に存在させる方法は特に限定されず、固体状態で水性媒体に添加してもよく、溶液の状態で水性媒体に添加してもよい。例えば、水性媒体を含むニトリルヒドラターゼ生産微生物の懸濁液にニトリル化合物及び塩基性アミノ酸を添加して、反応溶液を調製してもよい。反応溶液は不均一とならないように撹拌されることが好ましい。
アミド化合物生成工程により得られるアミド化合物は、原料として使用されるニトリル化合物に対応したアミド化合物である。アミド化合物の例としては、アセトアミド、プロピオンアミド、アクリルアミド、メタクリルアミド、n−ブチルアミド、イソブチルアミド、クロトンアミド、α−ヒドロキシイソブチルアミドなどの炭素数2〜4のアミド化合物が挙げられる。
アミド化合物生成工程により得られたアミド化合物は、さらに精製して精製品を作製してもよく、また、アミド化合物が(メタ)アクリロニトリルなどの不飽和化合物の場合には重合してポリマーを作製してもよい。ポリマーを作製する際には、アミド化合物生成工程により得られたアミド化合物以外の単量体も混合することにより共重合体を作製することもできる。
上述のとおり、本開示に係るアミド化合物の製造方法によれば、ニトリルヒドラターゼを用いるアミド化合物生成反応に対するアクロレインによる阻害を低減することができる。
以下、実施例に基づいて実施形態をさらに具体的に説明するが、本開示はこれにより何ら限定されるものではない。以下、特に断りのない限り、%及びppmはいずれも質量基準である。
<ニトリルヒドラターゼを含む微生物触媒の調製>
特開2001−340091号の実施例1に記載された方法に従い、特開平09−275978で得られたpPT−DB1プラスミドDNAを鋳型とし、特開平09−275978の表3にクローンNo.3として示されるニトリルヒドラターゼ生産微生物を取得した。このクローンNo.3は、シュードノカルディア・サーモフィラJCM3095株由来のニトリルヒドラターゼ遺伝子を改変して発現するニトリルヒドラターゼのαサブユニットのN末端から6番目のLeuをAlaに置換した遺伝子(ヌクレオチド上のコドンの変化はCTGからGTGへの変化)を、大腸菌HB101のコンピテントセル(東洋紡績社製)に形質転換した形質転換体である。pPT−DB1プラスミドを保有する大腸菌は、MT−10822株(受託番号FERM BP−5785)として、前述のとおり特許生物寄託センターに寄託されている。得られたニトリルヒドラターゼ生産微生物を用い下記の方法で湿菌体を得た。
500mLのバッフル付三角フラスコに下記の組成の培地100mLを調製し、121℃で20分間のオートクレーブにより滅菌した。この培地に終濃度が50μg/mLとなるようにアンピシリンを添加した後、上記のクローンNo.3の菌体(ニトリルヒドラターゼ生産微生物)を一白金耳で植菌し、37℃で130rpmにて20時間培養した。培養後、遠心分離(15000G×15分)により菌体のみを培養液より分離し、続いて、50mlの生理食塩水に該菌体を再懸濁した後に、再度遠心分離を行って湿菌体を得た。
培地組成 酵母エキストラクト 5.0g/L
ポリペプトン 10.0g/L
NaCl 5.0g/L
塩化コバルト・六水和物 10.0mg/L
硫酸第二鉄・七水和物 40.0mg/L
pH7.5
<実施例1>
上述の湿菌体を20mM−Tris・HCl緩衝液(pH7.5)により希釈した後、アクリルアミド、アクリロニトリル、アクロレイン及びヒスチジンを添加して反応溶液を調製した。反応溶液中におけるアクリルアミドの濃度は30質量%、アクリルニトリルの濃度は15質量%、アクロレインの濃度は387ppm、ヒスチジンの濃度は300ppmとなるように添加量を調整した。反応溶液は、20℃で4時間反応させた。反応後、反応溶液50μlを採取し、50mMリン酸水溶液を950μl添加して反応を停止させ、生成したアクリルアミド濃度をWO2007/040267の実施例1に記載の方法に従いHPLC分析により測定した。具体的には、HPLC分析におけるカラムとしてYMC−Pack ODS−A(150×6φmm、株式会社ワイエムシィ製)を使用し、3%アセトニトリルを含む10mMリン酸水溶液を移動相とした。アクリルアミドは210nmの吸光度により検出し、濃度を測定した。続いて、単位湿菌体及び単位反応時間あたりのアクリルアミドの生成速度(=反応速度)を算出した。
なお、アクリロニトリルからアクリルアミドを生成する場合、ニトリルヒドラターゼの活性がアクリルアミドによる生成物阻害を受け、アクリルアミド生成反応の進行とともにニトリルヒドラターゼ活性が変化してしまう可能性がある。このため、この実験では、反応溶液中にアクリルアミドを最初から添加しておくことでアクリルアミド生成反応における状態をより精度良く再現している。
<実施例2>
反応溶液中におけるヒスチジン濃度を600ppmとなるように添加したこと以外は、実施例1と同様の処理及び測定を行った。
<実施例3>
反応溶液中におけるヒスチジン濃度を1200ppmとなるように添加したこと以外は、実施例1と同様の処理及び測定を行った。
<実施例4>
ヒスチジンの代わりにリジンを添加して、反応溶液中におけるリジン濃度が300ppmとなるようにしたこと以外は、実施例1と同様の処理及び測定を行った。
<実施例5>
ヒスチジンの代わりにリジンを添加して、反応溶液中におけるリジン濃度が600ppmとなるようにしたこと以外は、実施例1と同様の処理及び測定を行った。
<実施例6>
ヒスチジンの代わりにリジンを添加して、反応溶液中におけるリジン濃度が1200ppmとなるようにしたこと以外は、実施例1と同様の処理及び測定を行った。
<比較例1>
ヒスチジンを添加しなかったこと以外は、実施例1と同様の処理及び測定を行った。
<参考例>
ヒスチジン及びアクロレインを両方とも添加しなかったこと以外は、実施例1と同様の処理及び測定を行った。
<活性の評価>
実施例1〜実施例6、比較例1、及び参考例のそれぞれにおけるアクリルアミドの生成速度を下記表1に示す。表1中、「活性」は、参考例におけるアクリルアミドの生成速度に対するそれぞれの実施例又は比較例におけるアクリルアミドの生成速度の比の値である。
表1の結果より、塩基性アミノ酸であるヒスチジン、リジンをニトリル化合物からアミド化合物への反応工程で配合することで、アクロレインによる活性阻害を抑制でき、さらに活性を向上させることがわかった。

Claims (5)

  1. ニトリルヒドラターゼ、ニトリル化合物、アクロレイン、塩基性アミノ酸、及び水性媒体を含む溶液中でニトリル化合物を水和させてアミド化合物に変換する工程を含む、アミド化合物の製造方法。
  2. 前記塩基性アミノ酸が、リジン、ヒスチジン、オルニチン、及びポリリジンからなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記ニトリルヒドラターゼが、シュードノカルディア属由来のニトリルヒドラターゼ又はロドコッカス属由来のニトリルヒドラターゼである、請求項1又は請求項2に記載の製造方法。
  4. 前記溶液中のアクロレインの質量に対する塩基性アミノ酸の質量が50質量%以上である、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の製造方法。
  5. 前記溶液中におけるアクロレインの量が前記ニトリル化合物の量に対して1ppm超である、請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の製造方法。
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