本明細書において、範囲を示す「X〜Y」は「X以上Y以下」を意味する。また、特記
しない限り、操作および物性の測定等は、室温(20〜25℃)/相対湿度40〜50%RHの条件で行う。
なお、本明細書において、「粘着剤層の外周端面」とは、粘着フィルムの外周部分にあたる裁断面に露出している、粘着剤の最表面を表す。ここで、本発明においては、粘着剤層の外周端面の最表面のみが粘着剤の硬化物であることが好ましいが、実際の製造においては、紫外線が粘着剤層内に入り込む距離で粘着剤層の硬化が生じることとなる。この距離は通常1mm未満であるため、「粘着剤層の外周端面が粘着剤の硬化物である」とは、粘着剤層は、その外周端面から内側1mm未満の距離の部分が、粘着剤の硬化物で構成されることを表す。
<粘着フィルム>
本発明の第一の形態は、基材および粘着剤層を含み、前記粘着剤層は、粘着剤から形成されてなり、前記粘着剤は、下記(A)および(B)から選択される少なくとも1種と、下記(C)と、を含み;
(A)(メタ)アクリル酸系重合体および光硬化性化合物、
(B)光硬化性(メタ)アクリル酸系重合体、
(C)光重合開始剤、
前記粘着剤層は、外周端面が前記粘着剤の硬化物である、粘着フィルムである。
すなわち、本発明の第一の形態に係る粘着フィルムは、粘着剤層を形成する粘着剤が上記(A)および(B)から選択される少なくとも1種と、上記(C)と、を含むこと、および粘着剤層の外周端面のみが粘着剤の硬化物で構成されることを含む。
以下、添付した図面を参照しながら、本発明の形態を説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
図1Aは、本発明の一実施形態に係る粘着フィルムの構成を示す断面模式図を表す。
まず、図1Aの粘着フィルム10について説明する。粘着フィルム10は、基材12および粘着剤層13を含む。粘着剤層13は、外周端面が粘着剤の硬化物16である。ここで、図1Bは、粘着フィルム10の粘着剤層13を斜め上方からみた模式図を表す。なお、図1Aにおいては、粘着フィルム10は、被着体14に貼付された状態が示されているが、粘着フィルム10の構成は、上記に限定されず、基材12および粘着剤層13を含み、粘着剤層13の粘着性によって粘着フィルムとして機能しうるものであればよく、例えば、被着体に貼付されておらず、剥離ライナーを有する構造であってもよい。
ただし、本発明の第一の形態に係る粘着フィルムは、図1に示すものに限定されるものではない。
本発明者は、本発明によって上記課題が解決されるメカニズムを以下のように推測している。特許文献1または2に記載のような粘着フィルムは、粘着剤層の外周端面において、粘着性を有する粘着剤層が露出しているため、この部分に異物が接すると、異物が粘着したままの状態となる。この結果、長期間使用することで外周端面に汚れが発生する、すなわち異物が付着し、さらに蓄積されることとなる。特に、自動車塗装鋼板表面に貼付する耐チッピングシート等として用いられる粘着フィルムは美観の観点から貼付されていることが目立たないことが望ましく、一般に高い透明性を有することが好ましい。しかしながら、上記のような異物の蓄積によって、粘着フィルムが高い透明性を有する場合であっても、粘着フィルムの外周端面と被着体との境界が明確に視認されるようになる。このように、粘着フィルムの外周端面における汚れの発生によって、被着体の美観が損なわれることとなる。
一方、本発明の第一の形態に係る粘着フィルムは、粘着剤層の外周端面が粘着剤の硬化物である構成を有している。本発明に係る粘着フィルムは、光重合開始剤を含む粘着剤を用いて粘着剤層を形成するものであり、紫外線硬化によって粘着性が低減することを利用して、粘着剤層の外周端面のみの粘着性を低減させたものである。このため、本発明に係る粘着フィルムは、粘着剤層の外周端面に異物が付着し難いことから、フィルムの外周端面における汚れの発生が低減される。また、このとき、粘着剤層は、外周端面での粘着性は低いものの、層全体としては粘着性が維持される。これより、本発明に係る粘着フィルムは十分な粘着性を有するため、粘着フィルムとしての機能が損なわれない。これは、本発明の第二の形態に係る粘着フィルムの製造方法にて製造された粘着フィルムについても同様である。なお、上記メカニズムは推測に基づくものであり、その正誤が本発明の技術的範囲に影響を及ぼすものではない。
以下、粘着フィルムを構成する各部材について説明する。
なお、本明細書において「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートおよびメタアクリレートの総称である。(メタ)アクリル酸等の(メタ)を含む化合物等も同様に、名称中に「メタ」を有する化合物と「メタ」を有さない化合物の総称である。このため、「(メタ)アクリル」とは、アクリルよびメタクリル双方を包含する。「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸およびメタクリル酸双方を包含する。
(基材)
基材は、粘着剤層を支持し、また粘着フィルムの用途に応じて所望の機能を付与するために用いられうる部材である。例えば、粘着フィルムが耐チッピングシートである場合には、耐チッピング性等を付与しうる。
基材は、特に限定されず、公知の粘着フィルムに用いられる基材を、用途に応じてそのまま使用することができる。基材を構成するフィルム(以下、基材フィルムとも称する)としては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレンに代表されるポリオレフィン樹脂、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、若しくはポリブチレンテレフタレートに代表されるポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニルに代表される塩化ビニル樹脂、合成紙、ポリウレタン、熱可塑性エラストマー、熱可塑性ポリオレフィン、エチレンメタクリル酸共重合体、アイオノマー、塩素化ポリプロピレン、フッ化エチレン−プロピレン共重合体、ポリエーテルイミド等からなるフィルムを用いることができる。また、これらの単層品でも複層品でもよい。特に、耐チッピングシート等は、耐候性を有する基材フィルム、例えば、ポリウレタン、塩化ビニル樹脂、熱可塑性ポリオレフィンまたはアイオノマーからなるフィルムを用いることが好ましく、ポリウレタンまたは塩化ビニル樹脂からなるフィルムを用いることがより好ましい。
ポリウレタンとしては、特に制限されず、公知のポリウレタンを使用することができ、例えば、ポリエステル系ポリウレタンまたはポリエーテル系ポリウレタン等が挙げられる。
塩化ビニル樹脂としては、特に制限されず、公知の塩化ビニル樹脂を使用することができ、例えば、ポリ塩化ビニル、塩化ビニルモノマーおよび塩化ビニルモノマーと共重合可能な他のモノマーの共重合体(以下、塩化ビニル共重合体とも称する)等が挙げられる。塩化ビニル樹脂の平均重合度は、通常300〜5000であることが好ましい。平均重合度は、JIS K 6720−2:1999に記載の平均重合度算出方法による。
基材フィルムは、必要に応じて、安定剤(例えば、Ba−Zn系等)、滑剤、充填剤、着色剤、加工助剤、可塑剤、軟化剤、金属粉、防曇剤、紫外線散乱剤または紫外線吸収剤等の紫外線遮蔽剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難撚剤等を適宜に含有していてもよい。
基材の製造方法は、特に制限されず、公知の方法によって調製することができる。例えば、キャスティング法、カレンダー法、Tダイ押出法、インフレーション法などにより製造することができる。
基材は、基材フィルム表面に、化学的又は物理的処理を施して、基材表面と粘着剤との密着力を向上させることができる。前記の表面処理として、例えば、プライマー処理またはコロナ処理を実施することができる。
基材の厚さは、粘着フィルムの用途によって適宜変化させることができ、特に制限されないが、10〜1500μmであることが好ましく、50〜500μmであることがより好ましく、100〜350μmであることがさらに好ましい。かような範囲であると、耐チッピング性がより良好となり、かつ曲面や段差を有する形状等の立体形状を有する被着体に貼付する用途における、フィルムの反発による剥離をより良好に防止することができる。
基材は、後述する、本発明の第二の形態に係る粘着フィルムの製造方法で用いられうるマスク材としての機能を兼ねていてもよい。かような基材をマスク基材と称する。なお、マスク基材は、紫外線吸収性を有するものであっても、紫外線反射性を有するものであってもよい。なお、本明細書において、紫外線反射性とは、紫外線散乱性を含むものとする。
マスク基材の好ましい透過率は、後述するマスク材における好ましい範囲と同様である。これより、マスク基材の透過率は、紫外線としてUV−Cを用いる場合は、波長254nmにおいて、透過率が1%未満であることが好ましい(下限0%)。上記範囲であると、UV−C(波長200nm以上280nm以下)により粘着剤層の外周端面が粘着剤の硬化物で覆われた構成を実現しつつ、UV−Cによる粘着フィルムの粘着性の低下が極めて良好に抑制されることとなる。同様の観点から、マスク基材の透過率は、波長200nm以上280nm以下の範囲内で、全ての波長の透過率が1%未満(下限0%)であることがより好ましい。また、マスク基材の透過率は、紫外線としてUV−Aを用いる場合は、波長365nmにおいて、好ましくはUV−Aの全ての波長において、透過率が10%未満であることが好ましく、1%未満であることがより好ましい(下限0%)。
マスク基材は、例えば、基材フィルムを構成する樹脂として紫外線吸収性を有するものを用いることや、基材フィルムに紫外線遮蔽剤を含有させること等で製造することができる。
紫外線吸収剤としては、公知のものを用いることができ、所望の波長領域の光を吸収できるものを適宜選択することができる。紫外線吸収剤は、特に制限されないが、例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ハイドロキノン系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤を用いることができる。これらの中でも、耐候性に優れるとの観点から、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、またはベンゾフェノン系紫外線吸収剤であることが好ましい。
また、紫外線吸収剤は市販品を用いてもよく、市販品としては、例えば、Tinuvin(登録商標)P、120、213、234、326、328、329/FL、460、479、571、928、1577(以上、BASF社製)、ADKSTAB(登録商標)LA46(株式会社ADEKA製)、KEMISORB(登録商標)111(ケミプロ化成株式会社製)、SEESORB(登録商標)106(シプロ化成株式会社製)等が挙げられる。
紫外線散乱剤としては、公知のものを用いることができ、所望の波長領域の光を遮蔽できるものを適宜選択することができる。紫外線散乱剤は、特に制限されないが、例えば、酸化チタン等の金属酸化物粒子を用いることができる。
また、紫外線散乱剤は市販品を用いてもよく、市販品としては、例えば、R−820(石原産業株式会社製)等が挙げられる。
なお、これらの紫外線遮蔽剤は一種単独で、または二種以上を組み合わせて用いることができる。
紫外線遮蔽剤の基材フィルム中の含有量は、特に制限されず、所望の紫外線遮蔽性を有するよう適宜添加量を調製することができる。紫外線遮蔽剤の基材フィルム中の含有量は、例えば、基材フィルムの総質量に対して、0.1質量%以上、50質量%以下であることが好ましい。0.1質量%以上であると、十分な紫外線遮蔽性を得ることがより容易となり、50質量%以下であると、紫外線遮蔽剤が基材から染み出す可能性がより低くなり、可視光域における透過率が低下する可能性がより低くなるからである。同様の観点から、紫外線遮蔽剤の基材フィルム中の含有量は、基材フィルムの総質量に対して、0.5質量%以上、30質量%以下であることがより好ましく、1質量%以上、15質量%以下であることがさらに好ましい。
紫外線遮蔽剤の添加は、公知の方法で行うことができる。例えば、基材フィルムが、フィルム形成材料を含む溶液または分散液を使用して製膜される場合は、紫外線遮蔽剤は、当該溶液または分散液中に添加されてもよい。また、例えば、基材フィルムが、フィルム形成材料を加熱溶融させることを経て製膜される場合は、紫外線遮蔽剤は、フィルム形成材料と共に混練されるよう、混練前のフィルム形成材料に添加されてもよい。
なお、本明細書においては、粘着剤層と基材フィルムとの間、または複数の基材フィルムの間、または基材の粘着剤層が配置される面とは反対側の面上に、紫外線吸収層または紫外線反射層を有する場合は、紫外線吸収層または紫外線反射層と、基材フィルムと、これらの間に含まれうる任意の層と、を含む積層体をマスク基材として扱うものとする。
マスク基材は、厚さ方向に垂直な面の面積が、粘着剤層の厚さ方向に垂直な面の面積と同一であり、かつ厚さ方向に垂直な面の形状が、粘着剤層の厚さ方向に垂直な面の形状と同一あることが好ましい。そして、マスク基材の厚さ方向に垂直な面の面積および形状と、粘着剤層の厚さ方向に垂直な面の面積および形状とが同一である場合は、これらの外周部分が一致するよう、マスク基材と粘着剤層とを積層することが好ましい。
(粘着剤層)
粘着剤層は粘着剤から形成される。粘着剤は、下記(A)および(B)から選択される少なくとも1種と、下記(C)と、を含む;
(A)(メタ)アクリル酸系重合体および光硬化性化合物、
(B)光硬化性(メタ)アクリル酸系重合体、
(C)光重合開始剤。
粘着剤は、(A)(メタ)アクリル酸系重合体および光硬化性化合物、および/または(B)光硬化性(メタ)アクリル酸系重合体を含む。光硬化性化合物は、反応性二重結合基を含む。また、光硬化性(メタ)アクリル酸系重合体は、重合体と光硬化性との性質を併せ持つ。
(メタ)アクリル酸系重合体は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを単量体主成分とし、必要に応じて(メタ)アクリル酸アルキルエステルに共重合可能な単量体(共重合性単量体)を用いることにより形成される。ここで主成分とは、(メタ)アクリル酸系重合体を構成する単量体成分のうち、60質量%以上(上限100質量%)であることを指し、好ましくは75質量%以上であり、より好ましくは85質量%以上である。
(メタ)アクリル酸アルキルエステルの例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸パルミチル、(メタ)アクリル酸ステアリルなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、粘着性能の観点から、(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルおよび/または(メタ)アクリル酸ブチルであることが好ましい。
また、共重合性単量体の例としては、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−エトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−(n−プロポキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(n−ブトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸3−メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−エトキシプロピル、アクリル酸2−(n−プロポキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−(n−ブトキシ)プロピルなどの(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル;(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イソクロトン酸などのカルボキシル基含有単量体またはその無水物;ビニルスルホン酸ナトリウムなどのスルホン酸基含有単量体;スチレン、置換スチレンなどの芳香族ビニル化合物;アクリロニトリルなどのシアノ基含有単量体;エチレン、プロピレン、ブタジエンなどのオレフィン類;酢酸ビニルなどのビニルエステル類;塩化ビニル;アクリルアミド、メタアクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N,N−ジメチルアクリルアミドなどのアミド基含有単量体;(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル、グリセリンジメタクリレートなどの水酸基含有単量体;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリルイルモルホリンなどのアミノ基含有単量体;シクロヘキシルマレイミド、イソプロピルマレイミドなどのイミド基含有単量体;(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸メチルグリシジルなどのエポキシ基含有単量体;2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートなどのイソシアネート基含有単量体;トリエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジビニルベンゼンなどの多官能基の共重合性単量体(多官能基モノマー)などが挙げられる。
中でも、(メタ)アクリル酸系重合体に用いられる共重合性単量体として、後述の架橋剤が有する架橋性反応基と反応する官能基を有する単量体を用いることが好ましく、具体的には、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルなどの水酸基含有単量体;(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イソクロトン酸などのカルボキシル基含有単量体;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリルイルモルホリンなどのアミノ基含有単量体;(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸メチルグリシジルなどのエポキシ基含有単量体を用いることが好ましく、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸を用いることがより好ましい。
共重合性単量体は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
共重合性単量体を用いる場合、(メタ)アクリル酸系重合体を構成する単量体成分のうち、0.1〜35質量%であることが好ましく、1〜15質量%であることがより好ましい。
(メタ)アクリル酸系重合体の重量平均分子量は特に限定されるものではないが、10万〜100万であることが好ましく、20万〜100万であることがより好ましく、40万〜80万であることがさらに好ましい。なお、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定したポリスチレン換算の値である。
光硬化性化合物は、重合開始剤の存在下において紫外線を照射することにより重合する不飽和化合物である。具体的には、光重合性モノマー/オリゴマー/ポリマーが挙げられる。紫外線硬化による粘着力低減の効果がより発揮されることから、光重合性モノマーおよび光重合性オリゴマーを組み合わせて用いることが好ましい。
光重合性モノマーとしては、特に限定されないが、(メタ)アクリレートモノマーであることが好ましい。(メタ)アクリレートモノマーとしては、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールアジペートジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、またはテトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
中でも、光重合性モノマーは、多官能(メタ)アクリレートモノマーであることが好ましく、一分子中に(メタ)アクリロイル基を3個以上有する多官能(メタ)アクリレートモノマーであることがより好ましい。かような多官能(メタ)アクリレートモノマーは、UV−C領域の紫外線を照射した際に、粘着剤を3次元架橋により硬化させて粘着力を低下させる機能を有する。
一分子中に(メタ)アクリロイル基を3個以上有する多官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、トリメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、それらのエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイド付加物等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、上記モノマーの中でも、分子量が1000を超えるものは光重合性オリゴマーと分類する。
光重合性オリゴマーの例としては、紫外線照射により重合可能なオリゴマーであれば特に制限はなく、ラジカル重合性、カチオン重合性、アニオン重合性などのオリゴマーを用いることができる。中でも、硬化速度が速く、また、多種多様な化合物から選択することができ、更には、硬化前の粘着性等の物性を容易に所望のものに制御することができるので、ラジカル重合性オリゴマーが好ましい。ラジカル重合性オリゴマーとしては、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリオール(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、シリコーン系(メタ)アクリレート等が挙げられる。
また、光重合性オリゴマーは市販品を用いてもよく、例えば、以下に示すものが例示できる。ウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、第一工業製薬株式会社製のR1204、R1211、R1213、R1217、R1218、R1301、R1302、R1303、R1304、R1306、R1308、R1901、R1150等や、ダイセル・オルネクス株式会社製のEBECRYL(登録商標)シリーズ、新中村化学工業株式会社製のNKオリゴU−4HA、U−6HA、U−15HA、U−108A、U200AX、NKエステル(登録商標)ATM35−E等、東亞合成株式会社製のアロニックス(登録商標)M−1100、M−1200、M−1210、M−1310、M−1600、M−1960等が挙げられる。ポリエステル(メタ)アクリレートとしては、例えば、ダイセル・オルネクス株式会社製のEBECRYL(登録商標)シリーズ、東亞合成株式会社製のアロニックス(登録商標)M−6100、M−6200、M−6250、M−6500、M−7100、M−8030、M−8060、M−8100、M−8530、M−8560、M−9050等が挙げられる。また、エポキシ(メタ)アクリレートとしては、例えば、ダイセル・オルネクス株式会社製のEBECRYL(登録商標)シリーズ等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
光重合性オリゴマーの重量平均分子量(Mw)は、特に限定されるものではないが、1,000〜30,000であることが好ましく、1,000〜10,000であることがより好ましい。なお、重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定した際の、ポリスチレン換算の値である。
粘着剤における光重合性モノマーの配合量は、特に限定されるものではないが、(メタ)アクリル酸系重合体100質量部に対して、光重合性モノマーは0.5〜40質量部であることが好ましく、より好ましくは3〜30質量部である。また、粘着剤における光重合性オリゴマーの配合量は、特に限定されるものではないが、(メタ)アクリル酸系重合体100質量部に対して、光重合性オリゴマーは0.5〜40質量部であることが好ましく、3〜30質量部であることが好ましく、5〜15質量部であることがさらに好ましい。光重合性モノマー/オリゴマーの範囲を上記の範囲とすることで、光照射後の粘着剤層の粘着力の低下が適度なものとなる。光重合性モノマーおよび光重合性オリゴマーの双方を配合する場合の含有質量比は特に制限されるものではないが、光重合性モノマー:光重合性オリゴマー=1:0.1〜10(質量比)であることが好ましい。かような範囲とすることで、光照射後の粘着剤層の粘着力の低下が適度なものとなる。
光硬化性(メタ)アクリル酸系重合体は、重合体の主鎖、側鎖または末端に、光反応性二重結合基が結合されてなる。反応性二重結合基は、アルキレン基、アルキレンオキシ基、ポリアルキレンオキシ基を介して光硬化性(メタ)アクリル酸系重合体の主鎖、側鎖または末端に結合していてもよい。
光硬化性(メタ)アクリル酸系重合体の重量平均分子量(Mw)は、1万〜200万であることが好ましく、10万〜150万であることがより好ましく、40万〜80万であることがさらに好ましい。
光硬化性(メタ)アクリル酸系重合体は、例えば、カルボキシル基、アミノ基、エポキシ基、水酸基等の反応性官能基を含有する(メタ)アクリル酸系重合体と、該反応性官能基と反応する置換基と反応性二重結合基を1分子毎に1〜5個を有する反応性不飽和化合物とを反応させて得られる。
カルボキシル基、アミノ基、エポキシ基、水酸基等の反応性官能基を含有する(メタ)アクリル酸系重合体は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを単量体主成分とし、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに共重合可能な反応性官能基を含有する単量体(共重合性単量体)を用いることにより形成される。ここで主成分とは、(メタ)アクリル酸系重合体を構成する単量体成分のうち、60質量%以上であることを指し、好ましくは70質量%以上95質量%以下である。(メタ)アクリル酸アルキルエステルについては(A)の(メタ)アクリル酸系重合体の欄で述べたものと同様のものを用いることができる。また、反応性官能基を含有する単量体としては、水酸基含有単量体、カルボキシル基含有単量体、アミノ基含有単量体、エポキシ基含有単量体が挙げられ、これらの具体的例示および好適な単量体は、(A)の(メタ)アクリル酸系重合体の欄で述べたものと同様である。
反応性不飽和化合物としては、ヒドロキシスチレン、アミノスチレン、ビニル安息香酸、酢酸ビニルフェニル、ケイ皮酸ビニルフェニル、(メタ)アクリル酸、無水(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸クロライド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルイソシアネート、グリシジルエチル(メタ)アクリレート、またはメタクリロイルオキシエチルイソシアナートなどを挙げることができる。反応性不飽和化合物は1種単独であっても2種以上併用してもよい。
反応性官能基を含有する(メタ)アクリル酸系重合体と、反応性不飽和化合物との配合比は、反応性官能基を含有する(メタ)アクリル酸系重合体100質量部に対し、反応性不飽和化合物が0.5〜40質量部の範囲にあることが好ましく、3〜30質量部の範囲にあることがより好ましい。かような範囲で配合することで、紫外線照射後の粘着性の低下が十分になるとともに、貼付部の粘着性が維持される。
粘着剤は、(C)光重合開始剤を含む。光重合開始剤は、特に制限されるものではなく、硬化に用いる光の波長に応じて適宜選択することができる。
本発明の好ましい一形態で使用される光重合開始剤は、波長254nmでの吸光係数が波長365nmでの吸光係数の50倍以上である光重合開始剤(本明細書においては、UV−C光重合開始剤とも称する)である。ここで、「波長254nmでの吸光係数が波長365nmでの吸光係数の50倍以上である」とは、波長200nm以上280nm以下の領域のUV−C領域での光重合開始剤の吸収が、波長365nmを含むUV−A領域での光重合開始剤の吸収よりも大幅に高いことを意味する。すなわち、UV−C光重合開始剤は、自然光等のUV−A領域の紫外線照射によってはほぼ励起されないが、UV−C領域の紫外線(波長200nm以上280nm以下)照射によっては励起される。そして、重合開始剤の励起により、粘着剤層中の光重合性成分が重合して硬化し、粘着剤層の粘着性が低下する。
本発明者は、地表に到達する紫外線の99%がUV−A領域であるのに対し、UV−Cは、通常は大気を通過することができず、地表にほぼ到達しないということに着目した。上述したように本発明の粘着剤は、自然光等のUV−A領域の紫外線照射によってはほぼ硬化しないが、UV−C領域の紫外線(波長200nm以上280nm以下)照射によっては硬化する。このため、本発明の一形態に係る粘着フィルムによれば、使用時または保管時に、自然光に多く存在するUV−A領域の紫外線による、粘着剤層の外周端面以外の部分における硬化が起きず、粘着性が維持されるべき粘着剤層の外周端面以外の部分の粘着性が低下することが抑制される。このような特性は、粘着フィルム、特に耐チッピングシートの粘着剤層として非常に有利である。
以下、波長254nmでの吸光係数/波長365nmでの吸光係数を吸光係数比とする。吸光係数比は、80倍以上であることが好ましく、200倍以上であることが好ましい。吸光係数比は高ければ高いほどよいため、その上限は設定されないが、通常10000倍以下となる。
UV−C光重合開始剤としては、例えば、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(4.708×104/3.613×102=130倍)、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(3.317×104/8.864×101=3742倍)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(4.064×104/7.388×101=5500倍)、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン(3.033×104/4.893×101=6199倍)、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル−ベンジル]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン(7.340×104/1.070×102=686倍)、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル(9.425×103/3.800×101=243倍)、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾフェノン、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジエチルケタール、α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−フェニルプロパン等が挙げられる。なお、上記においてかっこ内は、吸光係数比を示す。
また、複数の化合物を混合して、UV−C光重合開始剤としてもよい。すなわち、光重合開始剤全体として、吸光係数比が50倍以上であればよい。
UV−C光重合開始剤は、市販品を用いてもよく、市販品としては、例えば、Irgacure(登録商標)651、184、500(1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトンとベンゾフェノンとの共融混合物:吸光係数比6.230×104/1.756×102=355倍)、2959、127、754(オキシ−フェニル−アセチックアシッド2−[2−オキソ−2−フェニル−アセトキシ−エトキシ]−エチルエステルおよびオキシ−フェニル−アセチックアシッド2−[2−ヒドロキシ−エトキシ]エチルエステルの混合物:吸光係数比1.967×104/5.900×101=3334倍)、Darocur(登録商標)1173、MBF(以上、BASF社製)等を挙げることができる。UV−Aに吸収ピークをもたず、UV−Cのみにピークを有する点で、Irgacure(登録商標)2959が好ましい。
波長254nmでの吸光係数(ml/g cm)は、硬化性の観点から、1.0×103(ml/g cm)以上であることが好ましく、5.0×103(ml/g cm)以上であることがより好ましい。なお、波長254nmでの吸光係数(ml/g cm)は、高ければ高いほどよいが、通常1.0×106(ml/g cm)以下である。また、波長365nmでの吸光係数(ml/g cm)は、自然光に含まれる紫外線での硬化を抑制する観点から、8.0×102(ml/g cm)以下であることが好ましく、5.0×102(ml/g cm)以下であることがより好ましい。波長365nmでの吸光係数(ml/g cm)は、低ければ低いほど好ましいが、通常5×100(ml/g cm)以上となる。
本発明の他の好ましい一形態に係る粘着フィルムで使用されうる光重合開始剤は、波長365nmでの吸光係数が4.0×102(ml/g cm)以上である光重合開始剤(本明細書においては、UV−A光重合開始剤とも称する)である。UV−A光重合開始剤を含む粘着剤は、UV−A領域の紫外線(波長315nm超380nm以下)照射によっては硬化し、粘着性が低減する。かような光重合開始剤を含む粘着剤層を有する粘着フィルムにおいては、UV−A光重合開始剤の特性を利用して、粘着フィルムの粘着剤層の外周端面の粘着性を、原反フィルムの粘着剤層の外周端面へ自然光をはじめとするUV−Aを照射することによって低下させる一方、粘着フィルムがマスク基材を有する場合、製造された粘着フィルムの外周端面以外の部分では、UV−Aが粘着剤層まで到達せず、光重合性成分が硬化しない。このため、外周端面以外の部分では粘着性は維持されることとなり、粘着フィルムの粘着性は損なわれることがない。このような特性は、自然光に暴露された環境下で使用され、その中で外周端面に発生する付着抑制効果が高まっていくため、特に耐チッピングシートの粘着剤層として有利である。
波長365nmでの吸光係数(ml/g cm)の波長365nmでの吸光係数(ml/g cm)は、高ければ高いほど好ましいが、通常1×105(ml/g cm)以下となる。
なお、本明細書において、吸光係数とは、各光重合開始剤を溶媒(例えば、アセトニトリルまたはメタノール)に溶解させて、各波長にて吸光係数を測定したものを意味する。
粘着剤における光重合開始剤の含有量は、特に限定されるものではないが、例えば、(メタ)アクリル酸系重合体100質量部に対し、0.001〜10質量部であることが好ましく、0.01〜5質量部であることがより好ましい。
粘着剤は、さらに、架橋剤を含むことが好ましい。架橋剤により、架橋剤と反応し得る官能基を有する(メタ)アクリル酸系重合体や光硬化性(メタ)アクリル酸系重合体等が架橋し、粘着性能が向上する。光硬化性(メタ)アクリル酸系重合体を、反応性官能基を含有する(メタ)アクリル酸系重合体と、反応性不飽和化合物とを反応させて得た場合、架橋剤の架橋性官能基と反応性官能基とが反応することで、光硬化性(メタ)アクリル酸系重合体が架橋され、粘着剤層の凝集力を調整することが可能となる。架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、金属キレート系架橋剤などが挙げられる。
イソシアネート系架橋剤としては、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、1,2−プロピレンジイソシアネート、1,2−ブチレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート)、ペンタメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシネート、2,6−ジイソシアネートメチルカプエート、リジンジイソシアネート、リジンエステルトリイソシアネート、1,6,11−ウンデカントリイソシアネート、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート;トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート;イソホロンジイソシアネートなどの脂環式ジイソシアネート;ならびにジイソシアネート化合物とトリメチロールプロパン等のポリオール化合物とのアダクト体、ジイソシアネート化合物のビウレット体やイソシアヌレート体などのイソシアネート誘導体が挙げられる。
また、エポキシ系架橋剤としてはポリグリシジルアミン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、脂環型エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、臭素化エポキシ樹脂、アルコール型エポキシ樹脂等が挙げられる。具体的には、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン(商品名:TETRAD(登録商標)−X、三菱ガス化学株式会社製)や1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロへキサン(商品名:TETRAD(登録商標)−C、三菱ガス化学株式会社製)などがあげられる。
金属キレート系架橋剤としては、アルミニウム、チタン、ニッケル、クロム、鉄、亜鉛、コバルト、マンガン、ジルコニウム等の金属のアセチルアセトネート錯体等が挙げられる。
架橋剤は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
粘着剤における架橋剤の含有量は、特に限定されるものではないが、(光硬化性)(メタ)アクリル酸系重合体100質量部に対し、0.001〜10質量部であることが好ましく、0.005〜5質量部であることがより好ましい。
粘着剤には、必要に応じ、光安定剤、酸化防止剤、着色剤、充填剤、帯電防止剤、タッキファイヤー、濡れ剤、レベリング剤、増粘剤、消泡剤、防腐剤等を適宜添加することができる。
粘着剤層は、粘着剤を用いて形成される。
粘着剤層の厚みは、特に制限されないが、本発明の一形態に係る粘着フィルムでは30μm以上とすることが好ましく、また本発明の一形態に係る粘着フィルムの製造方法では30μm以上となるよう形成することが好ましい。上記範囲であると、特に耐チッピングシートのように曲面や段差を有する形状等の立体形状を有する被着体に貼付する用途におけるフィルムの反発による剥離防止、または自動車の車体のような凹凸面が存在する被着体への貼付する用途におけるエアーのかみこみ防止の作用がより改善される。また、通常、厚みが大きくなるほど粘着剤層の外周端面の汚れの程度が大きくなるため、かような厚み範囲とすることで、本発明の効果をより顕著に得ることができる。粘着剤層の厚みの上限は、特に制限されないが、薄膜化の観点から、100μm以下であることが好ましい。これより、粘着剤層の厚みは、30μm以上100μm以下であることがより好ましく、40μm以上100μm以下であることがより好ましく、50μm以上100μm以下であることがさらに好ましい。
粘着剤層の形成方法は特に限定されないが、通常粘着剤を剥離ライナーや基材上に塗布する方法が採られる。塗布方法は特に限定されず、例えばロールコーター、ナイフコーター、ロールナイフコーター、エアーナイフコーター、バーコーター、ブレードコーター、スロットダイコーター、リップコーター、グラビアコーターなどの公知の塗布装置を用いて塗布することができる。粘着剤を塗布後、乾燥処理を行うことによって、粘着剤層が形成される。この際の乾燥条件としては特に限定されず、60〜150℃にて10〜60秒の条件で行われることが好ましい。
さらに、粘着剤を基材上に塗布・乾燥して粘着剤層を形成した後、基材上に他のフィルムの粘着剤層を貼り合わせることを繰り返して、基材および粘着剤層を含む構造を複数積層させた積層体としてもよい。また、基材上に粘着剤を連続的に塗布・乾燥して粘着剤層を形成した長尺上のフィルムを巻き取ってロール状としてもよい。この際には、粘着剤と基材との剥離性を向上させるために、基材上にシリコーンなどから構成される剥離剤からなる層を設けることが好ましい。
(粘着フィルムの特性)
本明細書において、粘着力の数値は、フィルム幅25mm当たりの引き剥がし力に換算したもの(N/25mm)を用いている。
本発明の一形態に係る粘着フィルムの粘着力は、1N/25mm以上であることが好ましい。ここで、粘着力が1N/25mm以上であると、粘着フィルムとしてより良好な接着性を得ることができる。粘着フィルムの剥離、特に耐チッピングシートのように曲面や段差を有する形状等の立体形状を有する被着体に貼付する用途におけるフィルムの反発による剥離防止するとの観点から、粘着力は、2N/25mm以上であることがより好ましく、5N/25mm以上であることがさらに好ましい。また、粘着フィルムの粘着力は、上限は特に制限されないが、8N/25mm以下であることが好ましい。粘着力を1N/25mm以上に制御する方法としては特に限定されるものではないが、例えば、粘着剤の処方等によって制御することができる。
また、本発明の一形態に係る粘着フィルムにおいて、粘着剤層の全面に紫外線の照射を行い、硬化させた際の粘着剤層の粘着力は、0.8N/25mm以下であることが好ましい。かような特性を有する粘着剤層を使用する場合は、粘着フィルムの外周端面の汚れがより抑制される。この理由は、粘着剤層の外周端面を覆う粘着剤の硬化物と、粘着剤層の全面に紫外線の照射を行い、硬化させた際の粘着剤層とは、同じ粘着剤の硬化物で構成されるため、これらの粘着力は対応すると考えられるからである。同様の観点から、粘着剤層の全面に紫外線の照射を行い、硬化させた際の粘着剤層の粘着力は、0.6N/25mm以下であることがより好ましい。また、下現は特に制限されないが、0.05N/25mm以上であることが好ましい。粘着力を0.8N/25mm以上に制御する方法としては特に限定されるものではないが、例えば、光重合開始剤の種類と照射する紫外線の波長との関係、光硬化性化合物/光硬化性(メタ)アクリル酸系重合体の量、単位面積当たりの紫外線の積算照射光量(照射時間、照射強度および照射距離)等によって制御することができる。なお、粘着剤層の全面に紫外線の照射を行い、硬化させた際の粘着剤層の粘着力は、粘着剤層に直接紫外線を照射したものを用いてもよいが、粘着剤層の外周端面の硬化に用いられうる紫外線の波長において、透過率が80%以上である部材(例えば、基材等、部材が複数ある場合は、そのすべての透過率が前記値以下)を通して粘着剤層に紫外線の照射を行ったフィルムについて、後述の粘着力測定方法に従い粘着力を測定することによって得ることができる。
本発明の一形態に係る粘着フィルムの粘着力(N/25mm)の、当該方法に用いられる原反フィルムの粘着剤層の粘着力(N/25mm)に対する比(粘着力の維持率)は、80%以上であることが好ましい。かかる範囲であると、粘着剤層の外周端面部分のみが粘着剤の硬化物であり、他の部分は粘着性を維持するため、粘着フィルムとしての機能をより良好に得ることができるからである。同様の観点から、粘着力の維持率は、85%以上であることが好ましく、90%以上であることがさらに好ましく、95%以上であることが特に好ましく、100%であることが最も好ましい(上限100%)。
なお、上記粘着力は、次のように測定することができる。まず、粘着フィルムの粘着剤層面をSUS板に貼付し、24時間後にJIS Z0237:2009に従い、引張試験機により、180°方向に試験速度300mm/分で測定する。より詳細には、粘着力は、以下の方法によって測定された値である;粘着フィルムを1日標準環境下(23℃50%RH)に静置し、必要に応じて設けられる剥離ライナー等を剥がして粘着剤層面を露出させ、SUS304鋼板に粘着剤層面を貼付する。この際、質量2kgのローラを1往復かける。1日標準環境下に静置後、JIS Z0237:2009にしたがい粘着力を測定する。具体的には、引張試験機により、180°方向に試験速度300mm/分で粘着フィルムを引き剥がし、粘着力を測定する。数値は、フィルム幅25mm当たりの引き剥がし力に換算したもの(N/25mm)である。また、原反フィルムの粘着剤層面を上記と同様にしてSUS板に圧着し、被着体上の原反フィルムに紫外線照射を行い、粘着フィルムを形成した後、上記と同様に引張試験機により粘着フィルムを引き剥がし、粘着力を測定してもよい。なお、測定方法の詳細は後述する実施例に記載する。
粘着フィルムは透明であることが好ましい。透明であることで、被着体である色味と同化して、被着体の美観を損なうことをより抑えることができる。特に、耐チッピングシート用途の粘着フィルムとして用いる際には、耐チッピングシートは目立たないことが好ましいことから、粘着フィルムは高い透明性を有することが重要となる。ここで透明であるとは、粘着剤層面をガラス基材に貼付後のヘーズが25%以下であることが好ましい。ヘーズの測定は、ヘーズメーター(日本電色工業株式会社製NDH−5000)によりJIS K7136:2000に従って測定した値を採用することができる。
(剥離ライナー)
本発明の第一の形態に係る粘着フィルムは、剥離ライナーを有していてもよい。
剥離ライナーは、粘着剤層を保護し、粘着性の低下を防止する機能を有する部材である。そして、剥離ライナーは、粘着フィルムを貼付する際に粘着フィルムから剥離される。このため、本発明の一形態係る粘着フィルムは、剥離ライナーを有していないものも包含される。
剥離ライナーとしては、特に限定されるものではないが、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィンフィルムなどのプラスチックフィルム;上質紙、グラシン紙、クラフト紙、クレーコート紙などの紙、これらの紙をポリエチレンラミネートしたポリエチレンラミネート紙、これらの紙をポリプロピレンラミネートしたポリプロピレンラミネート紙等が挙げられる。
剥離ライナーの厚みは、通常10〜400μm程度である。また、剥離ライナーの表面には、粘着剤層の剥離性を向上させるためのシリコーンなどから構成される剥離剤からなる層が設けられてもよい。かような層が設けられる場合の当該層の厚みは、通常0.01〜5μm程度である。
粘着剤層を剥離ライナー上に形成した場合、粘着剤層と剥離ライナーとの積層体における、粘着剤層表面と、基材表面とが接するように、基材と、粘着剤層および剥離ライナーの積層体とを貼り合わせることで、紫外線の照射前の原反フィルムを得ることができる。
また、粘着剤を基材上に塗布・乾燥して粘着剤層を形成した後、基材と粘着剤層との積層体における、粘着剤層表面と、剥離ライナー表面とが接するように、基材および粘着剤層の積層体と、剥離ライナーとを貼り合わせてもよい。
(その他の機能性層)
本発明の第一の形態に係る粘着フィルムは、本発明の効果を妨げない限り、上記以外のその他の機能性層を含んでいてもよい。ここで、その他の機能性層としては、特に制限されず、たとえば、ハードコート層、防汚層、印字印刷層、易接着層(前述した基材のプライマー処理により形成された層を除く)、帯電防止層等の公知の層を挙げることができる。
(ハードコート層)
ハードコート層は、基材(または基材フィルム)の粘着剤層が存在する側とは反対側の面上に形成されることが好ましい。ハードコート層は、特に制限されないが、後硬化ハードコート層を有するものが好ましい。ここで、後硬化ハードコート層とは、未硬化でもハードコート層前駆体膜か、または加熱によって半硬化してハードコート層前駆体膜を形成することができ、かつ紫外線の照射によって完全に硬化してハードコート層を形成するものを表す。また、ハードコート層前駆体膜とは、ハードコード層形成用組成物から形成される完全硬化前のタックフリーである膜を表す。
一般的なハードコート層は曲面追従性に劣るため、ハードコート層を有する粘着フィルムを、曲面や段差を有する形状等の立体形状を有する被着体に貼付することは困難である。しかしながら、上述したような特徴を有するハードコート層は、未硬化または半硬化のタックフリーであるハードコート層前駆体膜の状態でフィルムを被着体の形状に追従させた後に、未硬化または半硬化のハードコート層前駆体膜に紫外線照射を行い、完全硬化させてハードコート層を形成することで、ハードコート層を有する粘着フィルムを平面以外の曲面や段差を有する形状等の立体形状を有する被着体へ適用することができるようになる。
後硬化型ハードコート層を形成するための、ハードコード層形成用組成物としては、紫外線照射によって硬化する硬化性樹脂組成物や、熱で半硬化し、かつ紫外線で完全硬化する硬化性樹脂組成物等を用いることが好ましい。硬化性樹脂組成物としては、公知の化合物を用いることができ、例えば、特開2010−84120号公報、特開2015−104881号公報に記載の化合物等を用いてもよい。
後硬化型ハードコート層形成用組成物は、必要に応じて公知の溶剤や公知の他の添加剤を含んでいてもよい。溶剤としては、有機溶剤が好ましい。
また、後硬化型ハードコート層形成用組成物としては、市販品を用いてもよい。市販品としては、例えば、株式会社トクシキ製のAUP−1380、AUP−1300,AUP−1200、共栄株式会社製のSMP−220A、SMP−250A、SMP−360A、SMP−550A等を用いることができる。
ハードコート層は、鉛筆硬度がH以上であることが好ましく、2H以上であることがより好ましく、3H以上であることがさらに好ましい。
後硬化型ハードコート層を有する粘着フィルムは、紫外線照射による、基材フィルム上の粘着剤層が存在する側とは反対側におけるハードコート層前駆体膜の完全硬化によるハードコート層の形成と、粘着剤層の外周端面の粘着剤の硬化物の形成と、を同時に行うことで製造することができるため、生産性に優れるとの観点から好ましい。また、ハードコート層前駆体膜が完全硬化させる際に、ハードコート層前駆体膜は、紫外線を吸収する。これより、後硬化型ハードコート層は、紫外線遮蔽性能を有していない基材や、紫外線遮蔽性能が十分ではない基材と共に用いられることで、マスク基材を構成することができるため、好ましい。
<粘着フィルムの製造方法>
本発明の第二の形態は、粘着剤層を粘着剤から形成すること、と、
前記粘着剤層上にマスク材を配置すること、と、
前記マスク材の前記粘着剤層が存在する側とは反対側の面上から、前記粘着剤層に向けて、前記粘着剤層の外周端面に紫外線照射を行うこと、と、を含み、前記粘着剤は、下記(A)および(B)から選択される少なくとも1種と、下記(C)と、を含む;
(A)(メタ)アクリル酸系重合体および光硬化性化合物、
(B)光硬化性(メタ)アクリル酸系重合体、
(C)光重合開始剤、
粘着フィルムの製造方法である。
すなわち、本発明の第二の形態に係る粘着フィルムの製造方法は、粘着剤層を形成する粘着剤が上記(A)および(B)から選択される少なくとも1種と、上記(C)と、を含むこと、およびマスク材を用いて粘着剤層の外周端面のみに紫外線が照射されるよう紫外線照射を行うことを含む。
以下、添付した図面を参照しながら、本発明の形態を説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
図2は、本発明の一実施形態に係る粘着フィルムの製造方法における、紫外線の照射およびこの前後のフィルムの構成を示す断面模式図を表す。図2の原反フィルム20’は、紫外線照射前の粘着フィルム20の製造用途のフィルムであり、後述する紫外線を遮蔽する部材(本明細書では、マスク材とも称する)である基材22および粘着剤層23を含む。図2は、原反フィルム20’を被着体24に貼付した後、紫外線25によって粘着剤層23の外周端面に紫外線照射することを含む、粘着フィルム20を製造する方法を示す。本方法においては、まず、原反フィルム20’を、粘着剤層23の表面と被着体24の表面とが接するよう、被着体24に貼付する(図2 左図)。次いで、被着体24に貼付された状態の原反フィルム20’の、基材22の粘着剤層23が存在する側とは反対側の面(すなわち、図2における被着体24が存在する側とは反対側)の面上から紫外線25の照射を行う(図2 中央図)。ここで、基材22はマスク材であることから、紫外線25は基材22によって遮蔽されることで、基材22を通して粘着剤層23へ到達することが妨げられる。しかしながら、粘着剤層23の外周端面は露出された状態で存在しているため、外周端面のみに紫外線が照射されることとなり、外周端面のみで硬化が進行する。そして、紫外線の照射後に得られた粘着フィルム20は、基材22および粘着剤層23を含み、粘着剤層23の外周端面のみが、粘着剤の硬化物26である構成を有することとなる(図2 右図1)。
この方法は、紫外線の照射に際して、原反フィルム20’の表面に、原反フィルム20’を構成する部材とは異なるマスク材を貼付する必要がなく、より容易に本発明の一形態に係る粘着フィルムを得ることができるとの観点から好ましい。また、この方法は、使用部材が少なく、特殊な製造設備を要しないため、経済性により優れるとの観点から好ましい。
図3は、本発明の一実施形態に係る粘着フィルムの製造方法における、紫外線の照射およびこの前後のフィルムの構成を示す断面模式図を表す。図3は、図2の方法とは異なり、基材32とは別に、さらにマスク材31を準備し、これを使用して粘着フィルム30を製造する方法を示す。図2の原反フィルム30’は、紫外線照射前の粘着フィルム30の製造用途のフィルムであり、マスク材31、基材32および粘着剤層33を含む。本方法においては、原反フィルム30’を、粘着剤層33の表面と被着体34の表面とが接するよう、被着体34に貼付する(図3 左図)。次いで、被着体34に貼付された状態の原反フィルム30’の、マスク材31の粘着剤層33が存在する側とは反対側の面(すなわち、図3における被着体34が存在する側とは反対側)の面上から紫外線35の照射を行う(図3 中央図)。ここで、紫外線35はマスク材31によって遮蔽されることで、マスク材31を通して粘着剤層33へ到達することが妨げられる。しかしながら、粘着剤層33の外周端面は露出された状態で存在しているため、外周端面のみに紫外線が照射されることとなり、外周端面のみで硬化が進行する。そして、紫外線の照射後に、得られた積層フィルムからマスク材31を取り除くことで、粘着フィルム30を得る。得られた粘着フィルム30は、基材32および粘着剤層33を含み、粘着剤層33の外周端面のみが粘着剤の硬化物36である構成を有することとなる(図3 右図)。
また、本方法においては、まず、基材および粘着剤層を含み、マスク材を含まない原反フィルムを、粘着剤層の表面と被着体の表面とが接するよう、被着体に貼付し、その後、基材の粘着剤層を有する側とは反対側に、原反フィルムとは別に用意したマスク材を配置することで、同様の積層構造を達成してもよい。この場合、その後の製造方法は上記説明したものと同様となる。
これらの方法は、基材とマスク材とがそれぞれ独立した別の部材であることから、基材は、粘着剤層の硬化に使用する波長域の紫外線吸収性または紫外線反射性を有することを必要としない。これより、これらの方法は、基材の選択範囲が広く、一般的な粘着フィルム用途基材を使用しうることから、汎用性に優れるとの観点からも好ましい。
また、本発明の一形態に係る粘着フィルムの製造方法は、以下の方法であってもよい。まず、粘着剤を基材上に塗布・乾燥して粘着剤層を形成した後、基材上に他のフィルムの粘着剤層を貼り合わせることを繰り返して、基材および粘着剤層を含む構造を複数枚積層させた積層体である原反フィルムを形成する。次いで、かような原反フィルムに紫外線の照射を行うことで、積層構造中に存在する各粘着剤層について、一括して外周端面を硬化させ、外周端面の粘着性を低下させることで、粘着フィルムを製造する。この製造方法の一例としては、図4に示す方法が挙げられる。
図4は、本発明の一実施形態に係る粘着フィルムの製造方法における、紫外線の照射およびこの前後のフィルムの構成を示す断面模式図を表す。すなわち、図4は、原反フィルム40’を用いた、紫外線45によって粘着剤層43の外周端面を硬化することを含む、粘着フィルム40を製造する方法の一例を示す。
本方法においては、まず、基材42、粘着剤層43および剥離ライナー44をこの順に有する繰り返し単位からなる積層構造を複数含む、原反フィルム40’を準備する(図4 左図)。
次いで、原反フィルム40’の最表層に存在するマスク材である基材42の、粘着剤層43が存在する側とは反対側の面上から紫外線45の照射を行う(図4 中央図)。図4は、各基材42はマスク材である場合を表しており、このとき紫外線45は各基材42によって遮蔽されることで、各基材42を通して各粘着剤層43へ到達することが妨げられる。しかしながら、各粘着剤層43の外周端面は露出された状態で存在しているため、外周端面のみに紫外線45が照射されることとなり、外周端面のみで硬化が進行する。
そして、紫外線の照射後に得られた粘着フィルム40は、各基材42および各粘着剤層43を含み、各粘着剤層43の外周端面のみが、粘着剤の硬化物46である構成を有することとなる(図4 右図)。
ここで、図4では各基材42がマスク基材である場合について述べているが、少なくとも原反フィルム40’の最表層に存在する基材42がマスク基材であれば、粘着フィルム40と同様の構成を有する粘着フィルムを製造することができる。ただし、粘着剤層の外周端面を十分に硬化させつつ、粘着剤層の外周端面以外の部分まで硬化範囲が及ぶことをより抑制するとの観点から、各基材42がマスク基材であることが好ましい。
また、本方法において、基材42は、剥離ライナー44としての特性を兼ねるものを用いることが好ましく、この際、図4における基材42および剥離ライナー44の積層部分が基材42のみに置き換えられる。また、この際、最下層に存在する剥離ライナー44は基材42であってもよい。
この方法は、紫外線の照射に際して、積層された各粘着フィルムの各粘着剤層について、一括して外周端面を硬化させ、外周端面のみの粘着性を低下させることができることから、量産性により優れるとの観点から好ましい。
また、本発明の一形態に係る粘着フィルムは、ロールトゥロール方式で製造されることが好ましい。このロールトゥロール方式での製造方法としては、特に制限されず、公知の方法を用いることができるが、好ましい一例としては、シール印刷法が挙げられる。
シール印刷法としては、例えば、以下の方法を使用することができる。まず、剥離ライナー、粘着剤層およびマスク材である基材(マスク基材)をこの順に有する、長尺状の原反フィルムを形成する。次いで、この原反フィルムを搬送しながら、剥離ライナー上で、粘着剤層および基材層のみに対して、所望の形状となるよう、筒状の切り込みを形成する。次いで、切り込みの内側部分である、粘着フィルムとなる部分に相当する粘着剤層と基材との積層体を長尺状の剥離ライナー上に残し、その他の部分に相当する、長尺状の粘着剤層と基材との積層体を、長尺状の剥離ライナー上から除去することを行う(かす上げ)。続いて、剥離ライナー上の粘着フィルムに相当する粘着剤層と基材との積層体の、基材の、粘着剤層が存在する側とは反対側の面上から紫外線の照射を行うことで、粘着剤層の外周端面を硬化することで、本発明の一形態に係る粘着フィルムを形成する。その後、剥離ライナー上に形成された粘着フィルムは、長尺状の剥離ライナーと共に、そのままロール状に巻き取られてもよい。
ただし、本発明の第二の形態に係る粘着フィルムの製造方法は、これらに限定されるものではない。
(粘着フィルムの各構成部材の形成)
基材、原反フィルムの粘着剤層、他の機能性層および剥離ライナー等、粘着フィルムの各構成部材は、前述した粘着フィルムの各構成部材の説明で述べた方法にて形成することができる。
(マスク材)
本発明において、マスク材は、紫外線照射光源と、粘着剤層との間に配置され、粘着剤層の外周端面への紫外線照射に際して、粘着剤層の外周端面以外の部分に向かって照射される紫外線を遮蔽する働きをする。
本発明の好ましい一形態は、粘着剤層は粘着剤から形成され、粘着剤に含まれる光重合開始剤は、波長254nmでの吸光係数が波長365nmでの吸光係数の50倍以上であり、紫外線の照射は、波長200nm以上280nm以下の波長の紫外線を照射する、粘着フィルムの製造方法である。
マスク材は、粘着剤層の硬化が進行しないレベルで紫外線を遮蔽することができれば特に制限されないが、その透過率は、紫外線としてUV−Cを用いる場合は、波長254nmにおいて、全ての波長での透過率が1%未満であることが好ましい(下限0%)。上記範囲であると、粘着剤層が波長254nmでの吸光係数が波長365nmでの吸光係数の50倍以上である光重合開始剤を含む粘着剤層を有する場合に、マスク材は、粘着フィルム製造時の外周端面以外の部分の硬化を極めて良好に抑制しうる。その結果、粘着フィルムは、UV−C(波長200nm以上280nm以下)により粘着剤層の外周端面が粘着剤の硬化物で覆われた構成を実現しつつ、UV−Cによる粘着フィルムの粘着性の低下が極めて良好に抑制されることとなる。同様の観点から、マスク材の透過率は、波長200nm以上280nm以下の範囲内で、全ての波長の透過率が1%未満(下限0%)であることがより好ましい。また、マスク材の透過率は、紫外線としてUV−Aを用いる場合は、波長365nmにおいて、好ましくはUV−Aの全ての波長において、透過率が10%未満であることが好ましく、1%未満であることがより好ましい(下限0%)。
ここで、マスク材の透過率は、紫外・可視分光光度計(株式会社島津製作所製、UV−3100)を用いて、200〜380nmの波長領域における分光透過率(%)を測定することで評価することができる。
なお、マスク材は、紫外線吸収性を有するものであっても、紫外線反射性を有するものであってもよい。
マスク材は、所望の紫外線吸収性または紫外線反射性を有していれば、材料、構造等は特に制限されず、公知の部材を用いることができる。マスク材としては、例えば、金属製のマスク材や、樹脂フィルム等を用いることができる。また、マスク材は、紫外線を遮蔽する機能を有する部材に加えて、他の機能を有する部材を含んでいてもよい。他の機能を有する部材は、本発明の機能を損なわない限り、その種類は特に制限されない。例えば、マスク材を原反フィルムの基材の表面に貼付して使用する場合は、他の機能を有する部材として、原反フィルムに貼付するための粘着剤層を設けることができる。
紫外線の照射に際して、原反フィルムの表面に、原反フィルムを構成する部材とは異なるマスク材を貼付する必要がなく、より容易に本発明の一形態に係る粘着フィルムを得ることができるとの観点から、原反フィルムがマスク材を含むものであることが好ましい。これより、原反フィルムは、マスク材が基材である(すなわち、マスク基材である)か、または原反フィルムが基材とは異なるマスク材を含むことが好ましい。ここで、原反フィルムが基材とは異なるマスク材を含む場合は、粘着フィルムは、マスク材を設けたままの状態で粘着フィルムとして使用されてもよく、紫外線の照射後に、得られた積層フィルムからマスク材を取り除かれ、マスク材を有しない状態で粘着フィルムとして使用されていてもよい。また、原反フィルムがマスク材を含むものである場合、マスク材が基材である(すなわち、マスク基材である)ことが最も好ましい。すなわち、本発明の好ましい一形態は、マスク材が基材である、粘着フィルムの製造方法である。
(紫外線照射)
紫外線照射は、原反フィルムの粘着剤層表面と、被着体の表面とが接するように、被着体上に原反フィルムを貼付した後に行ってもよいし、被着体に貼付前に行ってもよい。被着体に貼付する場合には、必要により配置される剥離ライナーを剥がす。なお、紫外線を照射する前の(原反フィルムにおける光硬化性成分が重合する前の)粘着剤層は、基材上に略全面に配置されることが好ましい。
紫外線の照射は、粘着剤層の外周端面に紫外線が入射するが、粘着剤層の外周端面以外の部分に紫外線が入射しないように行う。この理由は、粘着剤層は外周端面のみではなく、接着面の一定以上の面積で硬化が進行して、粘着フィルムとしての十分な接着性を損なうことがないようにする必要があるからである。粘着剤層の外周端面への紫外線の照射方法は、特に制限されないが、粘着剤層の上部の最表面をマスク材でマスクし、粘着剤層の外周端面のみに紫外線が直接入射するよう照射を行うことが好ましい。マスク材と粘着剤層の関係としては、マスク材の厚さ方向に垂直な面の面積と、粘着剤層の厚さ方向に垂直な面の面積とが同一であり、かつマスク材の厚さ方向に垂直な面の形状と、粘着剤層の厚さ方向に垂直な面の形状とが、同一となるように両者を選択することが好ましい。ここで、マスク材の厚さ方向に垂直な面の面積および形状と、粘着剤層の厚さ方向に垂直な面の面積および形状とが同一である場合は、これらの外周部分が一致するよう積層することが好ましい。マスク材の厚さ方向に垂直な面の形状と、粘着剤層の厚さ方向に垂直な面の形状とを同一とする方法としては、粘着剤層と同一形状のマスク材を別途準備してマスクとして使用する方法や、マスク基材と粘着剤層を含む原反フィルムを所望の形状に裁断する方法等が挙げられる。これらの中でも、マスク基材と粘着剤層を含む原反フィルムを所望の形状に裁断する方法が好ましい。
ここで、粘着剤が波長254nmでの吸光係数が波長365nmでの吸光係数の50倍以上である光重合開始剤を含む場合は、粘着剤層の外周端面を硬化させるための紫外線の照射は、波長200nm以上280nm以下の紫外線(UV−C)を生じる光源を用いて実施することが好ましい。UV−C照射に用いる光源には、例えば、低圧水銀ランプ、水銀キセノンランプ、誘電体バリア放電ランプ等を使用することができる。
UV−C照射条件は、特に限定されることなく、光重合性成分や照射後の粘着力に応じて変化させることができる。照射距離は、通常、積算光量が100〜800mJ/cm2となるように、紫外線を照射することが好ましい。
また、粘着剤が波長365nmでの吸光係数が4.0×102(ml/g cm)以上である光重合開始剤を含む場合は、粘着剤層の外周端面を硬化させるための紫外線の照射は、波長315nm超380nm以下の紫外線(UV−A)を生じる光源を用いて実施することが好ましい。UV−A照射に用いる光源は、特に制限されないが、例えば、自然光を用いることができる。この際、原反フィルムは、自然光の下で粘着フィルムとして使用された状態で、徐々に外周端面部分が硬化され、本発明の一形態に係る粘着フィルムを形成してもよい。
紫外線の照射は、原反フィルムと被着体とを貼付させた後に行っていてもよいし、また原反フィルムを被着体に貼付する前、たとえば剥離ライナーを含む原反フィルムの状態で行ってもよい。ここで、本発明の好ましい一形態は、被着体へ貼付した後に、前記紫外線の照射を行う、粘着フィルムの製造方法である。この方法は、ユーザーが自由に粘着フィルムの形状を決定しうることから、応用範囲が広いとの観点からも好ましい。当該方法によれば、粘着フィルムをその用途に応じて所望の形状に裁断した後、その形状における粘着剤フィルムの粘着剤層の外周端面を硬化することができるからである。
<用途>
本発明の一形態に係る粘着フィルムは、一般の粘着フィルムとして使用できるものであり、特に、自動車の塗装面貼付用として使用することができるものである。より詳細には、本発明に係る粘着シートは、耐チッピングシート、マーキングシートや、ペイントプロテクションフィルム等の表面保護シート等として利用することができ、これらの中でも耐チッピングシートとしての用途に最適なものである。
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。
<粘着フィルムの製造>
(実施例1)
〔粘着剤の製造〕
アクリル酸ブチル42質量部、アクリル酸2−ヒドロキシエチル45質量部、酢酸ビニル5質量部、アクリル酸6質量部およびメタクリル酸2−ヒドロキシエチル2質量部をランダム共重合させたアクリレートポリマー(重量平均分子量=600,000)100質量部に酢酸エチル300質量部を加えてポリマー溶液を調製した。このポリマー溶液400質量部にメタクリロイルオキシエチルイソシアナート5質量部を添加し、反応させて光硬化性(メタ)アクリル酸系重合体を生成し、更に架橋剤としてのトリレンジイソシアナートトリメチロールプロパン付加物0.7質量部と、光重合開始剤としてのIrgacure(登録商標)2959(1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン)3質量部とを加えることにより、粘着剤Aを製造した。
〔基材の製造〕
塩化ビニル樹脂(平均重合度1800)100質量部に対して、ファインサイザーNS−4070(アジピン酸ポリエステル系可塑剤、大日精化工業株式会社製、重量平均分子量4000)を35質量部、Ba−Zn系安定剤(アデカスタブ(登録商標)AC−167、株式会社ADEKA製)を3質量部、酸化チタン(R−820、石原産業株式会社製)を20質量部、および溶剤としてエチルセロソルブを40質量部の割合で混合し、オルガノゾルを得た。続いて、得られたオルガノゾルを厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートからなる工程フィルムに塗布し、80℃1分さらに190℃2分加熱した後、工程フィルムを剥離することにより、基材として厚さ300μmの塩化ビニル樹脂フィルムを製造した。
ここで、基材について後述する透過率測定を行ったところ、基材は、波長200nm以上280nm以下の範囲における最大透過率は1%未満であった。これより、このフィルムはマスク基材である。
〔原反フィルムの製造〕
上記で得られた粘着剤Aを、乾燥後の厚さが55μmとなるように、ポリエチレンラミネート紙にシリコーンで剥離処理した剥離ライナー(厚さ70μm)上に塗工し、100℃1分間乾燥して、粘着剤層と剥離ライナーとの積層体を得た。次いで、得られた積層体の粘着剤層表面に上記得られた基材の一方の面を貼り合せて、基材、粘着剤層および剥離ライナーを含む、原反フィルムを製造した。
〔粘着剤層への紫外線の照射〕
23℃環境下に1週間静置し、その後、1日標準環境下(23℃50%RH)に静置した原反フィルムから長さ75mm、幅25mmの粘着力測定用サンプルを切り出し、原反フィルムの粘着剤層から剥離ライナーを剥離した。次いで、原反フィルム(剥離ライナーなし)と、被着体であるSUS板とを、原反フィルムの粘着剤層表面と被着体表面とが接するようにして、圧着した。この際、質量2kgのローラを1往復かけた。次いで、被着体上の原反フィルムの基材(マスク基材)の粘着剤層が存在する側の面とは反対側の面上から、粘着剤層に向けて、誘電体バリア放電ランプを用いて、積算光量が250〜500mJ/cm2となるように、粘着剤層の外周端面に紫外線が入射するよう波長200〜280nmの紫外線を照射して、粘着剤層の外周端面が硬化された粘着フィルムを製造した。
(実施例2)
実施例1において、粘着剤Aを下記の方法によって製造された粘着剤Bに変更した以外は同様にして、粘着フィルムを製造した。
〔粘着剤の製造〕
アクリル酸ブチル42質量部、アクリル酸2−ヒドロキシエチル45質量部、酢酸ビニル5質量部、アクリル酸6質量部、およびメタクリル酸2−ヒドロキシエチル2質量部をランダム共重合させたアクリレートポリマー(重量平均分子量=500,000)100質量部に、酢酸エチル300質量部を加えてポリマー溶液を調製した。このポリマー溶液400質量部に光重合性オリゴマーとしてのポリエステルアクリレート樹脂(新中村化学工業株式会社製 NKエステル(登録商標)ATM−35E、分子量1892)18質量部、および光重合性モノマーとしてのトリメチロールプロパントリアクリレート5質量部を加えた。更に、架橋剤としてのトリレンジイソシアナートトリメチロールプロパン付加物1質量部と、光重合開始剤としてのIrgacure(登録商標)2959(1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン)3質量部とを加えることにより、粘着剤Bを製造した。
(比較例1)
実施例1において、粘着剤Aを下記の方法によって製造された粘着剤Cに変更した以外は同様にして、粘着フィルムを製造した。
〔粘着剤の製造〕
アクリル酸ブチル42質量部、アクリル酸2−ヒドロキシエチル45質量部、酢酸ビニル5質量部、アクリル酸6質量部、およびメタクリル酸2−ヒドロキシエチル2質量部をランダム共重合させたアクリレートポリマー(重量平均分子量=500,000)100質量部に、酢酸エチル300質量部を加えてポリマー溶液を調製した。このポリマー溶液400質量部に架橋剤としてのトリレンジイソシアナートトリメチロールプロパン付加物1質量部を加えることにより、粘着剤Cを製造した。
(参考例1)
実施例1において、酸化チタンを添加せずに厚さ300μmの塩化ビニル樹脂フィルムを製造した以外は同様にして、基材を製造した。当該基材を用いた以外は実施例1と同様にして、粘着剤(粘着剤A)の製造、原反フィルムの製造、および粘着剤層への紫外線の照射を行い、粘着剤層の全面が硬化された粘着フィルムを製造した。
ここで、基材について後述する透過率測定を行ったところ、基材は、波長200nm以上280nm以下の範囲における最大透過率は80%以上であった。
本製造においては、基材が紫外線遮蔽剤を含有せず紫外線の透過率が高いため、粘着剤層の全面に粘着剤層の硬化に十分な紫外線が照射された。
(参考例2)
参考例1において、粘着剤Aを粘着剤Bに変更した以外は同様にして、粘着剤層の全面が硬化された粘着フィルムを製造した。
<分光透過率測定>
上記製造した基材について、紫外・可視分光光度計(株式会社島津製作所製、UV−3100)を用いて、200〜380nmの波長領域における分光透過率(%)を測定した。
<粘着力測定>
上記製造した、被着体に圧着された原反フィルムおよび粘着フィルムについて、それぞれ、1日標準環境下に静置した後にJIS Z0237:2009に従い、引張試験機により、180°方向に試験速度300mm/分で測定した。より詳細には、被着体への粘着力は、以下の方法によって測定された値である;被着体に圧着された原反フィルムおよび粘着フィルムを、1日標準環境下(23℃50%RH)に静置後、JIS Z0237:2009にしたがい粘着力を測定した。具体的には、引張試験機により、180°方向に試験速度300mm/分でフィルムを引き剥がし、粘着力(N/25mm)を測定した。
<暴露汚染試験>
上記製造した、被着体に圧着された原反フィルムおよび粘着フィルムについて、それぞれ、圧着後、屋外環境下に180日暴露した後、外観を目視で観察した。ここで、評価基準は以下のものを用いた;
○:フィルムの外周端面にほとんど汚れが付着しておらず、フィルムの外周端面と被着体との境界は注視しなれば確認できない、
△:フィルムの外周端面の一部、または全体で汚れの付着が確認されるが、フィルムの外周端面と被着体との境界は注視しなければ確認できない、
×:フィルムの外周端面で全体に汚れの付着が確認され、フィルムの外周端面と被着体との境界は明確に確認できる。
これらの結果を表1に示す。
以上の結果より、実施例1または実施例2の、本発明の第一の形態に係る粘着フィルムは、粘着フィルムとして十分な粘着力を有することが確認された。そして、かような粘着フィルムは、比較例1のような本発明の要件を満たさない粘着フィルムと比較して、屋外環境下で長期間使用した際に、粘着フィルムの外周端面への汚れの付着が顕著に低減することが確認された。
なお、実施例1または実施例2の粘着フィルムは、本発明の第二の形態に係る粘着フィルムの製造方法にて製造された粘着フィルムでもある。ここで、実施例1および2に係る粘着フィルムを製造する方法は、より容易に粘着フィルムを得ることができ、かつ使用部材が少なく、特殊な製造設備を要しないため、より好ましいものであった。
さらに、本発明者は、実施例1または実施例2に係る粘着フィルムは、自動車用耐酸性雨クリヤー塗料(KINO 1200TW:関西ペイント株式会社製)が施された耐酸性雨塗装鋼板に対して良好な粘着力を有することを確認した。これより、実施例1または実施例2に係る粘着フィルムは、自動車用の耐チッピングシートとして特に好ましく用いることができることを確認した。ただし、本発明はこの用途に限定されるものではない。