JP5521948B2 - 熱転写フィルム及びその製造方法 - Google Patents
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Description
しかしながら、これらのポリエステル系樹脂フィルムは、前記剥離面にメラミン樹脂離型層等を設ける必要があるため生産性が悪く、また二軸延伸フィルムを用いた場合には成形加工時の形状追随性が不十分であった。
また、段落0011には、転写層として、アクリル樹脂を主成分とした組成物が好適である。とあり、更に、転写後の被転写体の表面に耐擦傷性等が要求される場合に各種硬化性樹脂を選定する必要がある旨が記載されている。
しかしながら、基材フィルムとしてビニルアルコール系重合体樹脂を使用した場合、アクリル樹脂を主成分とした組成物を転写層に使用すると、転写後の剥離強度は低く安定するが、反面剥離強度が弱すぎるために、グラビア印刷等により加飾層を設ける時、フィルムをロール化して保存や搬送時、および、転写加工のためフィルムを巻き出した時に剥離や浮きが生じる場合がある。更に、剥離強度が弱すぎると、フィルムを被転写基材に圧着した後に基材フィルムを剥離する際、被転写基材端末における転写塗膜の箔切れ性(トリミング性)が悪く、非転写部分の塗膜が残滓として加飾成形品に残り、生産性に欠ける場合が多い。一方、活性エネルギー線硬化性樹脂や熱硬化性樹脂を適宜選択したのでは、基材フィルムを剥離する際に、剥離強度が高すぎて基材フィルムが全く剥離できない場合や、転写層の破壊を引き起こす場合がある。
本発明においては、保護層成分が、熱可塑性樹脂を前述量使用することで、未硬化であっても常温下で層膜厚を維持でき、且つ、PVA基材フィルムに対する適度な密着性を維持しており、加熱・転写した際には基材フィルムと容易に剥離できる。
一方、数平均分子量100〜1500の範囲であり(メタ)アクリロイル基を有する重合性化合物は、フィルム製造・保管時および加熱時に転写層内部で流動し、PVA層と保護層との界面付近に移動し、且つ、加熱により(メタ)アクリロイル基が重合反応することで、基材フィルムであるPVA層との界面で離型層として機能することを突き止めた。従って、一般的な熱転写時間内にPVA層との界面で離型層として機能できる程度の量を特定し、更に、フィルム製造・保管時および一般的な成形温度程度で転写層内部における流動が可能な分子量を特定し、加熱による(メタ)アクリロイル基の反応率を制御することで、加熱により容易に基材フィルムを剥離でき、且つ、良好なトリミング性を確保でき、更に、得られる保護層の表面物性に優れる熱転写フィルムが得られることを見出した。
また、前記(メタ)アクリロイル基を有する重合性化合物は、絵柄層・接着層(加飾層)に浸透・透過して、被転写基材と加飾層との界面付近にも存在し、紫外線や電子線を照射することにより硬化することで、被転写基材との密着性を向上させる効果もあることを見出した。
本発明においては、熱可塑性樹脂を特定量添加しているので、未硬化であっても常温下で層膜厚を維持でき、且つ、PVA基材フィルムに対する適度な密着性を維持できる。
本発明では、(メタ)アクリロイル基を有する重合性化合物を、フィルム製造・保管時および一般的な熱転写時間内にPVA層との界面で離型層として機能できる程度の量に特定し、且つ、一般的な成形温度程度において転写層内部で流動が可能な程度の分子量に特定し、更に、加熱時の(メタ)アクリロイル基の反応率を特定しているので、加熱により容易に基材フィルムを剥離でき、且つ、転写塗膜のトリミング性が良好であり、更に、得られる保護層の表面物性に優れる熱転写フィルムが得られる。
本発明の保護層の組成とすることで、(メタ)アクリロイル基を有する重合性化合物は加飾層との界面にも移動し、更に加飾層の被転写基材との接面付近に移動する。従って接着層等を設けない場合であっても、(メタ)アクリロイル基を有する重合性化合物が基材との接着剤としての役割を果たし、転写後に活性エネルギー線硬化させることで、被転写基材との密着性に優れた熱転写フィルムが得られる。
本発明で使用する基材フィルムは、PVA樹脂を主成分とする。本発明で使用するPVAは、未変性PVAであっても、あるいはPVAの主鎖中にエチレン、プロピレンなどのオレフィン類、アクリル酸およびアクリル酸エステル類、メタクリル酸およびメタクリル酸エステル類、アクリルアミド誘導体、メタクリルアミド誘導体、ビニルエーテル類、ハロゲン化ビニル、アリル化合物、マレイン酸およびその塩またはエステル類、ビニルシリル化合物などのモノマーが1種類又は2種類以上共重合された変性PVAであってもよい。
なお本発明の熱転写フィルムは、PVA樹脂基材と転写層との界面に(メタ)アクリロイル基を有する重合性化合物が高濃度で存在した状態で転写されるため、使用する基材フィルムの表面粗さを緩和する効果がある。即ち、本発明の熱転写フィルムを被転写基材上に転写した加飾品の転写面は、前記転写面の最表面に(メタ)アクリロイル基を有する重合性化合物が高濃度で存在するため、活性エネルギー線硬化後の転写面は表面硬度に優れ、使用する基材フィルム表面よりもさらに高光沢となる傾向にある。
本発明の熱転写フィルムにおいて、転写層とは、少なくとも、被転写基材に転写して得られる転写体の、最表層となるラジカル重合性樹脂組成物層と、前記ラジカル重合性樹脂組成物層と被転写基材との間となる加飾層とを少なくとも有する層である。加飾層は、前記ラジカル重合性樹脂組成物層と被転写基材との間となるように、PVA樹脂を主成分とする基材フィルム上には、ラジカル重合性樹脂組成物層と加飾層とをこの順に積層するように設ける。また、ラジカル重合性樹脂組成物層と加飾層の他に、接着層や被転写基材表面の凹凸を隠蔽する中間層等の層を設けてもよい。
本発明で使用するラジカル重合性樹脂組成物層は、ラジカル重合反応により硬化可能な樹脂層である。中でも活性エネルギー線照射により硬化可能な樹脂を含む樹脂層であると、転写後に表面硬度に優れる塗膜が得られ好ましい。該重合性樹脂組成物層は、加飾層の意匠性が良く発現できることから透明であることが好ましいが、転写体の要求特性や意匠性により基本的に得られる転写体の加飾層の色や柄が透けて見えれば良く、完全に透明であることは要しない。即ち、透明から半透明なものまでを含む。また、着色されていてもよい。また、熱転写フィルムは後述する、ラジカル重合性樹脂組成物層を設けた基材フィルムと、加飾層を設けた基材フィルムとを、前記ラジカル重合性樹脂組成物層と加飾層とが接するようにラミネートする方法が好ましく、ラミネート時の1次密着性を付与するために、僅かにタックを有することがより好ましい。
本発明においては、前記ラジカル重合性樹脂組成物層が、全固形分量に対して熱可塑性樹脂を20〜80質量%、数平均分子量100〜1500の範囲であり(メタ)アクリロイル基を有する重合性化合物を10〜70質量%含有し、且つ、前記ラジカル重合性樹脂組成物層のFT−IRを用いた全反射法(ATR)による160℃×10分加熱後の(メタ)アクリロイル基の反応率が5〜30%であることを特徴とする。
本発明で使用する熱可塑性樹脂は、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリエステルなどが挙げられる。これらはホモポリマーまたは複数のモノマーが共重合したものであって良い。
中でも、アクリル系樹脂は、Tgが高く硬化性樹脂層の粘着性低減に適しているために好ましい。これらの樹脂の具体例とは、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸、アクリロニトリル、メタクリルニトリル等の(メタ)アクリル系モノマーからなる単独又は共重合体であり、必要に応じてこれらと共重合可能な重合性二重結合を有するモノマー、すなわち例えばエチレン、ブタジエン、イソプレン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、スチレン、α − メチルスチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン、N − シクロヘキシルマレイミド、N − エチルマレイミド、N − フェニルマレイミド等が共重合成分として添加された共重合体であっても良い。これらの各種のアクリル系樹脂の中でも、(メタ)アクリル酸メチルの単独重合体又は(メタ)アクリル酸メチルを主体とする共重合体が、透明性、耐候性および耐擦傷性に優れる点で好ましい。
具体的には例えば、予め前記共重合成分としてアクリル酸やメタクリル酸等のカルボキシル基含有重合性単量体や、ジメチルアミノエチルメタクリレートやジメチルアミノプロピルアクリルアミド等のアミノ基含有重合性単量体を配合し共重合させ、カルボキシル基やアミノ基を有する前記共重合体を得、次に該カルボキシル基やアミノ基と、グリシジルメタクリレート等のグリシジル基及び(メタ)アクリロイル基を有する単量体を反応させる方法、予め前記共重合成分として2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート等の水酸基含有単量体を配合し共重合させ、水酸基を有する前記共重合体を得、次に該水酸基と、イソシアネートエチルメタクリレートの等のイソシアネート基と(メタ)アクリロイル基を有する単量体を反応させる方法、予め前記共重合成分としてグリシジルメタクリレート等のグリシジル基含有重合性単量体を配合し共重合させ、グリシジル基を有する前記共重合体を得、次にグリシジル基と、アクリル酸やメタクリル酸のカルボキシル基含有重合性単量体を反応させる方法、重合の際にチオグリコール酸を連鎖移動剤として使用して共重合体末端にカルボキシル基を導入し、該カルボキシル基に、グリシジルメタクリレートの等のグリシジル基と(メタ)アクリロイル基を有する単量体を反応させる方法、重合開始剤として、アゾビスシアノペンタン酸の等のカルボキシル基含有アゾ開始剤を使用して共重合体にカルボキシル基を導入し、該カルボキシル基にグリシジルメタクリレートの等のグリシジル基と(メタ)アクリロイル基を有する単量体を反応させる方法等が挙げられる。
中でも、アクリル酸やメタクリル酸等のカルボキシル基含有単量体あるいはジメチルアミノエチルメタクリレートやジメチルアミノプロピルアクリルアミド等のアミノ基含有単量体を共重合しておき、そのカルボキシル基あるいはアミノ基とグリシジルメタクリレートの等のグリシジル基と(メタ)アクリロイル基を有する単量体を反応させる方法、あるいは、予め前記共重合成分としてグリシジルメタクリレート等のグリシジル基含有重合性単量体を配合し共重合させ、グリシジル基を有する前記共重合体を得、次にグリシジル基と、アクリル酸やメタクリル酸のカルボキシル基含有重合性単量体を反応させる方法が最も簡便であり好ましい。
中でも、特に、層膜厚の維持とPVA基材フィルムに対し適度な密着性と加熱・転写時の基体フィルムとの剥離性とに優れることから、重量平均分子量が150000以下の熱可塑性樹脂を使用することが好ましく、重量平均分子量100000以下の熱可塑性樹脂を使用することがなお好ましい。重量平均分子量が150000以下である熱可塑性樹脂は、フィルム製造・保管時および熱転写時にかかる熱により転写層内を(メタ)アクリロイル基を有する重合性化合物が流動する際に一緒に移動し、加飾層に浸透・透過することが確認されている。これにより、被接着基材との密着性を補助する効果もあると推定される。
また、熱可塑性樹脂が80質量%を超えると、PVA基材フィルムとの剥離が軽くなり、塗膜強度も高くなるため、トリミング性が悪化し、また活性エネルギー線硬化後の表面物性も低下する。また、熱可塑性樹脂が20質量%未満であると、PVA基材フィルムとの剥離が重くなり、塗膜強度が弱くなるため、剥離時に塗膜破壊が発生する場合がある。
本発明で使用する数平均分子量100〜1500の範囲であり(メタ)アクリロイル基を有する重合性化合物は、例えば、メチルアクリレート、メチルメタクリレート(以下、合わせてメチル(メタ)アクリレートのように表記する)、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニロキシエチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、フェニルセロソルブ(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−アクリロイルオキシエチルハイドロゲンフタレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、トリメチルシロキシエチルメタクリレート、N−ビニルピロリドン、スチレン等の単官能モノマー、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2,2’−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシポリエチレンオキシフェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシポリプロピレンオキシフェニル)プロパン等の2官能モノマー、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート等の3官能モノマー、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等の4官能モノマー、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等の6官能モノマー等が挙げられる。また、トリブチレングリコールビス(マレイミド酢酸エステル)のようなマレイミド化合物を使用することもできる。また、活性エネルギー線硬化後に、転写面の表面硬度が優れることから、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能モノマーを用いることが好ましい。
中でも、ウレタン(メタ)アクリレートが好ましい。ウレタン(メタ)アクリレートとしては、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート類、メタ−キシリレンジイソシアネート、α,α,α’,α’−テトラメチル−メタ−キシリレンジイソシアネート等のアラルキルジイソシアネート類を主原料とするポリイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、1,5−ペンタメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサメチレンジイソイシアネート、リジンイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添キシレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、1,4−ジイソシアネートシクロヘキサン、1,3−ビス(ジイソシアネートメチル)シクロヘキサン、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネートから得られる脂肪族ポリイソシアネートであるアロファネート型ポリイソシアネート、ビウレット型ポリイソシアネート、アダクト型ポリイソシアネート及びイソシアヌレート型ポリイソシアネート等のイソシアネートと、ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等のヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートとを反応させたものが挙げられ、いずれも好適に使用することができる。活性エネルギー線硬化後の転写面の表面硬度や耐候性に優れる点から、特に、イソホロンジイソシアネートや1,4−ジイソシアネートシクロヘキサン等の脂環式イソシアネートと、ペンタエリスリトールトリアクリレート等の多官能(メタ)アクリレートを反応させたウレタン(メタ)アクリレートがより好ましい。
また、前記熱可塑性樹脂が(メタ)アクリロイル基を含むアクリル樹脂である場合、前記(メタ)アクリロイル基を有する重合性化合物と組み合わせで、160℃×10分加熱後の(メタ)アクリロイル基の反応率を容易に調整することができ、基材フィルムを容易に剥離でき、且つ、転写塗膜のトリミング性が良好となることから更に好ましい。
本発明の熱転写フィルムを活性エネルギー線で硬化させる場合は、光重合開始剤を使用してもよく好ましい。光重合開始剤の例としては、例えば、ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン等のアセトフェノン系化合物;ベンゾイン、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾイン系化合物;2,4,6−トリメチルベンゾインジフェニルホスフィンオキシド等のアシルホスフィンオキシド系化合物;ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル−4−フェニルベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物;2,4−ジメチルチオキサントン等のチオキサントン系化合物;4,4′−ジエチルアミノベンゾフェノン等のアミノベンゾフェノン系化合物;ポリエーテル系マレイミドカルボン酸エステル化合物などが挙げられ、これらは併用して使用することもできる。光重合開始剤の使用量は用いる活性エネルギー線硬化性樹脂に対して、通常、0.1〜15質量%、好ましくは0.5〜8質量%である。光増感剤としては、例えば、トリエタノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル等のアミン類が挙げられる。さらに、ベンジルスルホニウム塩やベンジルピリジニウム塩、アリールスルホニウム塩などのオニウム塩は、光カチオン開始剤として知られており、これらの開始剤を用いることも可能であり、上記の光重合開始剤と併用することもできる。
ATR測定装置としては、(株)島津製作所社製の赤外分光光度計IR−Prestige21で、PIKE社製のMIRACLE ATR(ZnSeプリズム、1回反射45°)を用いた。また(メタ)アクリロイル基の反応率は、アルケンのC−H面内変角振動である1410cm−1付近のピークを、メチレン由来の1460cm−1付近のピークとの補正高さ比から算出した。尚、ラジカル重合性樹脂組成物の塗料をPETなどの基材フィルムにバーコーターで塗工し、60℃で30分間真空乾燥し、完全に溶剤を除去したものをラジカル重合性化合物の(メタ)アクリロイル基の反応率0%とした。
加飾層には、汎用の印刷インキまたは塗料を使用することができ、グラビア印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷、インクジェット印刷、熱転写印刷などを用いて形成することができる。加飾層の乾燥膜厚は0.5〜15μmであることが好ましく、更に好ましくは、1〜10μmである。また絵柄のない着色層や、無色のワニス樹脂層についても塗工によって形成することができる。
また、印刷の場合の印刷柄は、版を起こせるあるいは印字できる模様や文字であればどのような印刷柄も可能である。またベタ版であってもよい。
前記有機顔料としては、たとえば、キナクリドン系顔料、フタロシアニン系顔料、スレン系顔料、ペリレン系顔料、フタロン系顔料、ジオキサジン系顔料、イソインドリノン系顔料、メチン・アゾメチン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、アゾレーキ顔料系顔料、不溶性アゾ系顔料、縮合アゾ系顔料等が挙げられる。
また、無機顔料としては、カーボンブラック、酸化鉄系、酸化チタン系等の無機顔料、アルミニウム粉、ブロンズ粉等の金属粉顔料、酸化チタン被覆雲母等の真珠光沢顔料等が挙げられる。
本発明の熱転写フィルムは、ドライラミネーション(乾式積層法)により、前記ラジカル重合性樹脂組成物層を設けた支持体フィルムと、前記加飾層を設けた任意の剥離性フィルムとを、前記重合性樹脂層と前記加飾層とが相対するように重ねてドライラミネーション(乾式積層法)により貼り合わせる方法が最も好ましい。
基材フィルムの主原料であるPVAは耐熱性が低く、130℃を超える温度条件下では、フィルムの収縮やラミ皺が入りやすくなる問題が生じ易いことから、乾燥、加熱加圧による貼り合わせは、30〜120℃、より好ましくは、40〜100℃の温度範囲で行うことが好ましい。
本願の熱転写フィルムの全体の膜厚は、熱転写方法によるため特に制限されないが、被転写基材への形状追随性の観点から20〜200μmが好ましく、30〜150μmがより好ましい。
その他、本発明の効果を損なわない範囲において、任意の層を更に積層させることもできる。例えば、加飾層の、被転写基材と接する面に、接着層や粘着層を設けることは好ましい。接着層や粘着層は、被着体と接着力を高める目的で付与する層であり、接着剤でも粘着剤でも構わなく、被転写基材と接着する材質のものを適宜選択することが可能である。
また、本発明の熱転写フィルムにおいて、(メタ)アクリロイル基を有する重合性化合物は加飾層との界面にも移動し、更に加飾層の被転写基材との接面付近に移動するので、(メタ)アクリロイル基を有する重合性化合物が基材との接着剤としての役割を果たす効果が得られるが、この効果を最大限生かすためには、接着層や粘着層は、(メタ)アクリロイル基を有する重合性化合物の相溶性あるいは透過性に優れるものが好ましい。これらは、樹脂組成や膜厚で適宜コントロールすることが可能である。
本発明の熱転写フィルムは、公知の転写方法に使用することができる。具体的には、必要に応じ予備成形した熱転写フィルムを、雌型の表面に設置し、両型を閉じ、射出孔から両型間のキャビティ(成形窩洞)内に熔融樹脂を射出し、射出樹脂を冷却固化させた後、両型を開き、成形品とこれに密着した熱転写フィルムとを型から取出し、基体フィルムのみを剥離して、被転写基材上に転写層が転写形成された加飾品を得る、射出成形同時転写法や、成形された被転写基材の上方に熱転写フィルムを、転写層が被転写基材側に向くよう載置しフィルムを軟化温度以上に加熱した後、真空下で、金型を用いずに被転写基材を用いて成形すると同時に、直接被転写基材に貼り付ける、真空成形同時転写法等や、ラッピング同時転写法等の、熱転写時に転写フィルムに伸び、変形が加わる立体形状への成形転写方法に特に好適に本発明の熱転写フィルムを使用することができる。また、ホットスタンプ等、転写フィルムに伸び、変形の加わらない転写法に本発明の熱転写フィルムを用いてもよい。
また、赤外線照射装置を用いてPVA基材フィルム側から間接加熱した場合、加飾層の色調や使用する顔料によっても、前記ラジカル重合性樹脂組成物中に含まれる(メタ)アクリロイル基の反応率が変化する。例えば、アルミニウム顔料を用いた金属調意匠は、通常の木目柄などと比較して反応率が低くなる傾向があり、加飾層の意匠性に応じて、ラジカル重合性樹脂組成物の組成比率や、熱転写時の加熱温度などを(メタ)アクリロイル基の反応率が5〜30%となるよう適宜調整する必要がある。
本発明の熱転写フィルムを転写した加飾品のラジカル重合性樹脂組成物層を、活性エネルギー線等で硬化させる。活性エネルギー線は、通常は可視光や紫外線を使用するのが好ましい。特に紫外線が好適である。紫外線源としては、太陽光線、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等が用いられる。また、熱を併用する場合の加熱源としては、熱風、近赤外線など公知の熱源が適用可能である。
この時の照射量としては、硬化性樹脂層が完全に硬化するような照射量であることが好ましく、具体的には250mJ/cm2〜3000mJ/cm2の範囲が好ましい。特に、加飾層との界面に移動した(メタ)アクリロイル基を有する重合性化合物を充分に硬化させ、被転写基材との密着性を向上させるために、1000mJ/cm2〜3000mJ/cm2の範囲がより好ましい。
本発明の熱転写フィルムが転写できる被転写基材は特に特に限定されず、樹脂、金属、ガラス、木、紙などの各種形状物を用いることができ、前記形状物は、塗装、メッキ、スクラッチ等の常用加飾法により加飾されていてもよい。
また、被転写基材の被着面の材質と、本発明の熱転写フィルムに使用する熱可塑性樹脂やインキバインダーとの材質とが熱接着あるいは熱融着可能な材質同士であると、より密着性に優れ好ましい。例えば被転写基材の被着面の材質がアクリル系樹脂やスチレン系の樹脂である場合には、熱転写フィルムに使用する熱可塑性樹脂の材質はアクリル系樹脂が好ましい。
温度計、攪拌機、還流冷却器および窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、メチルエチルケトンの666部を仕込んで90℃に昇温し、同温度に達したところで、 メタクリル酸メチル320部、アクリル酸ブチル280部、メタクリル酸400部、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)の15部からなる混合物を4時間かけて滴下し、滴下終了後も、同温度に10時間保持して反応を続行した。
反応液の温度を50℃に下げ、t−ブチルピロカテコールの0.8部をメチルエチルケトンの20部に溶解した溶液を加え、さらにメタクリル酸グリシジル666部、ジメチルアミノエタノールの60部を加えた後に、80℃まで昇温し、同温度で10時間反応を行う事でTg50℃、アクリル当量300g/eq、質量平均分子量60000の熱可塑性樹脂Pの溶液を得た。
数平均分子量100〜1500の範囲であり(メタ)アクリロイル基を有する重合性化合物として、「アロニックスM−305」(商品名、東亞合成社製、ペンタエリスリトールトリアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物、数平均分子量約300)12部と、5〜6官能ウレタンアクリレート(DIC社製、商品名「ユニディック17−813」、数平均分子量約800)48部と、熱可塑性樹脂として「パラロイドA−11」(商品名、ロームアンドハース社製、アクリル樹脂、Tg=100℃、重量平均分子量125,000)40部をトルエンとメチルエチルケトンの混合溶剤(混合比1/1)に不揮発分50%となるように溶解した後、光重合開始剤としてBASFジャパン製「イルガキュア184」3部(不揮発分比)と「イルガキュア819」1部(不揮発分比)を溶解することにより、ラジカル重合性樹脂組成物A1の塗料を製造した。
熱可塑性樹脂として、「パラロイドA−11」20部と、「パラロイドB−60」(商品名、ロームアンドハース社製、アクリル系樹脂、Tg=75℃、重量平均分子量50,000)20部を用いた他は、製造例1と同様にして、ラジカル重合性樹脂組成物A2の塗料を製造した。
熱可塑性樹脂として、「パラロイドA−11」20部と、アクリルスチレン樹脂「アクリット7QX−154」(商品名、大成ファインケミカル社製、Tg=85℃、重量平均分子量16,000)20部を用いた他は、製造例1と同様にして、ラジカル重合性樹脂組成物A3の塗料を製造した。
熱可塑性樹脂として、熱可塑性樹脂Pを樹脂固形分量に換算して40部を用いた他は、製造例1と同様にして、ラジカル重合性樹脂組成物A4の塗料を製造した。
数平均分子量100〜1500の範囲であり(メタ)アクリロイル基を有する重合性化合物として、「アロニックスM−305」10部と、「ユニディック17−813」22部と、熱可塑性樹脂として熱可塑性樹脂Pを樹脂固形分量に換算して68部を用いた他は、製造例1と同様にして、ラジカル重合性樹脂組成物A5の塗料を製造した。
数平均分子量100〜1500の範囲であり(メタ)アクリロイル基を有する重合性化合物として、「アロニックスM−240」(商品名、東亞合成社製、ポリエチレングリコールジアクリレート、数平均分子量約300)10部と、「ユニディック17−813」22部と、熱可塑性樹脂として熱可塑性樹脂Pを樹脂固形分量に換算して68部を用いた他は、製造例1と同様にして、ラジカル重合性樹脂組成物A6の塗料を製造した。
基材フィルムとして、東洋紡社製の厚さ50μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルム(以下、OPPフィルムと略す)を用い、該フィルムにウレタン系インキ(DIC社製、商品名:AF−Dシリーズ)をグラビア4色印刷機にて厚さ3μmの木目柄を印刷して、加飾層を設けた基材フィルムB1を製造した。
加飾層として、ウレタン系インキ(DIC社製、商品名:AF−Dシリーズ)をグラビア4色印刷機にて厚さ3μmの金属調柄(シルバー)を印刷した他は、加飾層を設けた基材フィルムB1と同様にして、加飾層を設けた基材フィルムB2を製造した。
ATR測定装置としては、(株)島津製作所社製の赤外分光光度計IR−Prestige21で、PIKE社製のMIRACLE ATR(ZnSeプリズム、1回反射45°)を用いた。また(メタ)アクリロイル基の反応率は、アルケンのC−H面内変角振動である1410cm−1付近のピークを、メチレン由来の1460cm−1付近のピークとの比から算出した。尚、ラジカル重合性樹脂組成物の塗料をPETなどの基材フィルムにバーコーターで塗工し、60℃で30分間乾燥し、完全に溶剤を除去したものをラジカル重合性化合物の(メタ)アクリロイル基の反応率0%とし、熱風乾燥機にて160℃×10分の加熱処理後のラジカル重合成樹脂組成物層の(メタ)アクリロイル基の反応率を測定した。
熱転写フィルムが転写された加飾品が常温になるまで5分間程度放置した後、基材フィルムを剥離し、以下の基準で基材フィルム剥離性を評価した。
○:基材フィルムが容易に剥離できる。
△:基材フィルムを剥離できるが抵抗があり、保護層表面に剥離痕が残る。
×:基材フィルムの剥離強度が高く剥離し難く、転写層の破壊が生じる、または、基材フィルムを剥離できない。
熱転写フィルムが転写された加飾品から基材フィルムを剥離した際の転写部分の端面密着性について、以下の基準で評価した。
○:転写部分の末端まで強く密着しており、末端部の剥がれがない。
△:転写部分の末端の密着性が弱く、基材フィルムを剥離した際に転写部分の末端部に浮きが生じる。
×:基材フィルムを剥離した際に、転写部分の末端部にて剥がれが生じている。
熱転写フィルムが転写された加飾品から基材フィルムを剥離する際の転写塗膜のトリミング性について、以下の基準で評価した。
○:加飾成形品端末において、非転写部分の塗膜が全く残っておらず、綺麗にトリミングされている。
△:加飾成形品端末において、非転写部分の塗膜が僅かに残滓として残り、綺麗にトリミングされていない。
×:加飾成形品端末において、非転写部分の塗膜が残滓として残り、また、剥離した基材フィルムからも塗膜が剥がれ、脱落する。
また、箔切れ性が○で、且つ、剥離した基材フィルムの塗膜面を手でこすっても塗膜剥がれが生じなかった場合を◎とした。
熱転写フィルムが転写された加飾品の外観について以下の基準で評価した。
○:加飾成形品において、印刷した絵柄が鮮明に再現されている。
△:加飾成形品において、僅かにシワ、割れ等が発生し、印刷した絵柄が鮮明に再現されていない。
×:加飾成形品において、シワ、割れ等が発生し、印刷した絵柄が全く再現されていない。
熱転写フィルムが転写された加飾品から基材フィルムを剥離した後、加飾成形品表面のラジカル重合成樹脂組成物層を、160℃×10分加熱後の(メタ)アクリロイル基の反応率測定と同様に、FT−IRを用いた全反射法(ATR)によって(メタ)アクリロイル基の反応率を測定した。
熱転写フィルムが転写された加飾品から基材フィルムを剥離した後、1200mJ/cm2の照射量でUV照射を行い、ラジカル重合性樹脂組成物層を完全に硬化させた。その後、該転写層の密着性をクロスカット法(JIS K5600−5−6)に準じて評価した。
○:塗膜状態に変化がない。
△:転写層内部の凝集破壊により、塗膜の一部が剥離する。
×:転写層が被転写基材から完全に剥離する。
熱転写フィルムが転写された加飾品から基材フィルムを剥離した後、1200mJ/cm2の照射量でUV照射を行い、ラジカル重合性樹脂組成物層を完全に硬化させた。得られた転写層の表面硬度を鉛筆硬度法(JIS K5600−5−4、加重750g)に準じて評価した。
(熱転写フィルムD1の製造)
フィルム基材として日本合成化学社製のPVA樹脂フィルム(膜厚30μm)の光沢面に、製造例1で得たラジカル重合性樹脂組成物A1の塗料をアプリケーターで固形分膜厚30μmになるように塗工し、次いで60℃で5分間乾燥して、ラジカル重合性樹脂組成物塗工フィルムC1を製造した。このフィルムC1のラジカル重合性樹脂組成物塗工面側と、加飾層を設けた基材フィルムB1の印刷面側とが相対するように、加熱ロール温度60℃でラミネートし(ニップ圧力0.2MPa、ロール速度1.2m/分)、ロール状に巻き取って後に、40℃で24時間エージング処理して熱転写フィルムD1を製造した。
前記熱転写フィルムD1のOPPフィルムを剥離し、加飾層側が被転写基材の加飾されるべき面側となるように、布施真空株式会社製の両面真空成形機「FVF−0709」にセットした。ABS樹脂製の被転写基材を用いて、加熱温度160℃で、前記の熱転写フィルムD1と被転写体を真空成形同時貼り付けし、加飾品E1を得た。前記のABS樹脂製の被転写基材では、熱転写フィルムの延伸倍率が110〜230%となり、端面密着性は延伸倍率が約200%の部位、転写層密着性および鉛筆硬度は延伸倍率約120%の部位で評価を行った。
ラジカル重合性樹脂組成物としてA2を用いた他は、実施例1と同様の方法で加飾品E2を得た。この加飾品E2について、実施例1と同様に評価した結果、基材フィルム剥離性が○、端面密着性が○、トリミング性が○、加飾品外観が○、転写層密着性が○、鉛筆硬度が2Hであり優れた表面硬度を有していることが解った。ラジカル重合性樹脂組成物層A2の160℃×10分加熱後の(メタ)アクリロイル基の反応率は22%、加飾品E2の成形後の(メタ)アクリロイル基の反応率は24%であった。評価結果を表1に示す。
ラジカル重合性樹脂組成物としてA3を用いた他は、実施例1と同様の方法で加飾品E3を得た。この加飾品E3について、実施例1と同様に評価した結果、基材フィルム剥離性が○、端面密着性が○、トリミング性が△、加飾品外観が○、転写層密着性が○、鉛筆硬度がHであり優れた表面硬度を有していることが解った。ラジカル重合性樹脂組成物層A3の160℃×10分加熱後の(メタ)アクリロイル基の反応率は28%、加飾品E3の成形後の(メタ)アクリロイル基の反応率は34%であった。評価結果を表1に示す。
ラジカル重合性樹脂組成物としてA3、加飾層を設けた基材フィルムとしてB2を用いた他は、実施例1と同様の方法で加飾品E4を得た。この加飾品E4について、実施例1と同様に評価した結果、基材フィルム剥離性が○、端面密着性が○、トリミング性が○、加飾品外観が○、転写層密着性が○、鉛筆硬度がHであり優れた表面硬度を有していることが解った。ラジカル重合性樹脂組成物層A3の160℃×10分加熱後の(メタ)アクリロイル基の反応率は28%、加飾品E4の成形後の(メタ)アクリロイル基の反応率は24%であった。この結果より、実施例3との比較で、加飾層を木目柄から金属調柄にすることにより、加飾品E4の成形後の(メタ)アクリロイル基の反応率が5〜30%の範囲内となり、トリミング性が向上していることが判る。評価結果を表1に示す。
ラジカル重合性樹脂組成物層としてA4を用いた他は、実施例1と同様の方法で加飾品E5を得た。この加飾品E5について、実施例1と同様に評価した結果、基材フィルム剥離性が○、端面密着性が○、トリミング性が○、加飾品外観が○、転写層密着性が○、鉛筆硬度が2Hであり優れた表面硬度を有していることが解った。ラジカル重合性樹脂組成物層A4の160℃×10分加熱後の(メタ)アクリロイル基の反応率は17%、加飾品E5の成形後の(メタ)アクリロイル基の反応率は19%であった。評価結果を表1に示す。
ラジカル重合性樹脂組成物としてA5を用いた他は、実施例1と同様の方法で加飾品E6を得た。この加飾品E6について、実施例1と同様に評価した結果、基材フィルム剥離性が○、端面密着性が○、トリミング性が◎、加飾品外観が○、転写層密着性が○、鉛筆硬度が2Hであり優れた表面硬度を有していることが解った。ラジカル重合性樹脂組成物層A5の160℃×10分加熱後の(メタ)アクリロイル基の反応率は9%、加飾品E6の成形後の(メタ)アクリロイル基の反応率は12%であった。この結果より、実施例5との比較で、熱可塑性樹脂として、(メタ)アクリロイル基を有するアクリル系樹脂である熱可塑性樹脂Pを高濃度で用いることによりトリミング性が向上することが判る。評価結果を表2に示す。
ラジカル重合性樹脂組成物としてA5、加飾層を設けた基材フィルムとしてB2を用いた他は、実施例1と同様の方法で加飾品E7を得た。この加飾品E7について、実施例1と同様に評価した結果、基材フィルム剥離性が○、端面密着性が○、トリミング性が◎、加飾品外観が○、転写層密着性が○、鉛筆硬度が2Hであり優れた表面硬度を有していることが解った。ラジカル重合性樹脂組成物層A5の160℃×10分加熱後の(メタ)アクリロイル基の反応率は9%、加飾品E7の成形後の(メタ)アクリロイル基の反応率は8%であった評価結果を表2に示す。
ラジカル重合性樹脂組成物としてA6を用いた他は、実施例1と同様の方法で加飾品E8を得た。この加飾品E8について、実施例1と同様に評価した結果、基材フィルム剥離性が○、端面密着性が○、トリミング性が◎、加飾品外観が○、転写層密着性が○、鉛筆硬度が2Hであり優れた表面硬度を有していることが解った。ラジカル重合性樹脂組成物層A6の160℃×10分加熱後の(メタ)アクリロイル基の反応率は19%、加飾品E6の成形後の(メタ)アクリロイル基の反応率は23%であった。評価結果を表2に示す。
ラジカル重合性樹脂組成物としてA6、加飾層を設けた基材フィルムとしてB2を用いた他は、実施例1と同様の方法で加飾品E9を得た。この加飾品E9について、実施例1と同様に評価した結果、基材フィルム剥離性が○、端面密着性が○、トリミング性が◎、加飾品外観が○、転写層密着性が○、鉛筆硬度が2Hであり優れた表面硬度を有していることが解った。ラジカル重合性樹脂組成物層A6の160℃×10分加熱後の(メタ)アクリロイル基の反応率は19%、加飾品E9の成形後の(メタ)アクリロイル基の反応率は18%であった。評価結果を表2に示す。
数平均分子量100〜1500の範囲であり(メタ)アクリロイル基を有する重合性化合物である「アロニックスM−305」をトルエンとメチルエチルケトンの混合溶剤(混合比1/1)に不揮発分50%となるように溶解した後、光重合開始剤として「イルガキュア184」3部(不揮発分比)と「イルガキュア819」1部(不揮発分比)を溶解することによりラジカル重合性樹脂組成物A7の塗料を製造した。
数平均分子量100〜1500の範囲であり(メタ)アクリロイル基を有する重合性化合物である「ユニディック17−813」をトルエンとメチルエチルケトンの混合溶剤(混合比1/1)に不揮発分50%となるように溶解した後、光重合開始剤として「イルガキュア184」3部(不揮発分比)と「イルガキュア819」1部(不揮発分比)を溶解することによりラジカル重合性樹脂組成物A8の塗料を製造した。
数平均分子量100〜1500の範囲であり(メタ)アクリロイル基を有する重合性化合物である「アロニックスM−305」50部と「ユニディック17−813」50部をトルエンとメチルエチルケトンの混合溶剤(混合比1/1)に不揮発分50%となるように溶解した後、光重合開始剤として「イルガキュア184」3部(不揮発分比)と「イルガキュア819」1部(不揮発分比)を溶解することによりラジカル重合性樹脂組成物A9の塗料を製造した。
数平均分子量100〜1500の範囲であり(メタ)アクリロイル基を有する重合性化合物である「ユニディック17−813」60部と、熱可塑性樹脂である「パラロイドA−11」40部をトルエンとメチルエチルケトンの混合溶剤(混合比1/1)に不揮発分50%となるように溶解した後、光重合開始剤として「イルガキュア184」3部(不揮発分比)と「イルガキュア819」1部(不揮発分比)を溶解することによりラジカル重合性樹脂組成物A10の塗料を製造した。
熱可塑性樹脂である「パラロイドA−11」100部をトルエンとメチルエチルケトンの混合溶剤(混合比1/1)に不揮発分50%となるように溶解することにより比較用樹脂組成物A11の塗料を製造した。
基材フィルムとして東洋紡社製の易成形性PETフィルム「A1532」(商品名、膜厚125μm)(以下、PETフィルムと略す)を用いた他は、実施例1と同様の方法で熱転写フィルムHD1および加飾品HE1を得た。次に、基材フィルムであるPETフィルムの剥離を試みたが、剥離強度が著しく高く、転写層の破壊を生じた為、剥離不可能であると判断した。ラジカル重合性樹脂組成物層A1の160℃×10分加熱後の(メタ)アクリロイル基の反応率は20%であったが、加飾品HE1の成形後の反応率は測定不可能であった。この結果から、基材フィルムとしてPVAが好ましいことが判る。評価結果を表3に示す。
ラジカル重合性樹脂組成物としてA7を用いた他は、実施例1と同様の方法で熱転写フィルムHD2の作製を試みたが、モノマー成分のみの組成の為ラジカル重合性樹脂組成物A7が柔軟すぎて印刷層の積層ができなかった。ラジカル重合性樹脂組成物層A7の160℃×10分加熱後の(メタ)アクリロイル基の反応率は35%であった。積層ができない為、熱転写フィルムHD2、及び、加飾品HE2は得られず、加飾品HE2の成形後の(メタ)アクリロイル基の反応率は測定ができなかった。評価結果を表3に示す。
ラジカル重合性樹脂組成物としてA8を用いた他は、実施例1と同様の方法で熱転写フィルムHD3を得た。ラジカル重合性樹脂転写層の硬化が促進しすぎた為、成形に必要なフィルム柔軟性が得られず、転写層全体の破壊が生じた。ラジカル重合性樹脂組成物層A8の160℃×10分加熱後の(メタ)アクリロイル基の反応率は38%であった。加飾品HE3の一部転写できた部分のラジカル重合性樹脂組成物の(メタ)アクリロイル基の反応率を測定したところ44%であった。評価結果を表3に示す。
ラジカル重合性樹脂組成物としてA9を用いた他は、実施例1と同様の方法で熱転写フィルムHD4および加飾品HE4を得た。加飾品HE4からPVAフィルムは容易に剥離でき、1200mJ/cm2の照射量でUV照射を行った後の密着性は良好で、鉛筆硬度は2Hであった。ラジカル重合性樹脂組成物層A9の160℃×10分加熱後の(メタ)アクリロイル基の反応率は19%、加飾品HE4の成形後の(メタ)アクリロイル基の反応率は25%であった。しかし、端面密着性が不十分であり、且つ、加飾成形品の端末における転写塗膜の箔切れ性が悪く非転写部分の塗膜が残滓として残り、更に、加飾層に割れが生じ、印刷した絵柄が全く再現されていなかった。この結果より、熱可塑性樹脂は必須成分であることが分かる。評価結果を表3に示す。
ラジカル重合性樹脂組成物としてA10を用いた他は、実施例1と同様の方法で熱転写フィルムHD5および加飾品HE5を得た。ラジカル重合性樹脂組成物層A10の160℃×10分加熱後の(メタ)アクリロイル基の反応率は33%、加飾品HE5の成形後の(メタ)アクリロイル基の反応率は40%であった。加飾品HE5からPVAフィルムは容易に剥離できたが、印刷層の割れが生じ、外観不良の加飾品となった。さらに、端面密着性が悪く、PVAフィルム剥離時に転写部分の末端が剥がれてしまった。1200mJ/cm2の照射量でUV照射を行った後密着性を評価した結果、転写層の一部が被転写基材から剥離した。転写層の密着性が不充分であるために転写層が破れ、鉛筆硬度の判定はBであった。この結果から、ラジカル重合性樹脂組成物の反応率を5〜30%にする必要があることが分かる。評価結果を表3に示す。
ラジカル重合性樹脂組成物の代わりに比較用樹脂組成物A11を用いた他は、実施例1と同様の方法で熱転写フィルムHD6および加飾品HE6を得た。加飾品HE6からPVAフィルムは容易に剥離でき、外観良好な加飾品が得られたが、端面密着性が悪く、PVAフィルム剥離時に転写部分の末端が剥がれてしまい、且つ、加飾成形品端末において、非転写部分の塗膜が残滓として残り、大部分が綺麗にトリミングされず、また、塗膜が剥離したPVAフィルムからも剥がれ、脱落した。さらに、転写層密着性を評価した結果、被転写基材と転写層の界面での剥離はみられなかったが、転写層の破壊(保護層内での凝集破壊、及び、保護層と加飾層との間の剥離)が生じたので、△と判定した。また、鉛筆硬度も2Bであり、表面硬度が不十分であることが解った。この結果から数平均分子量100〜1500の範囲であり(メタ)アクリロイル基を有する重合性化合物が必須成分であることが分かる。評価結果を表3に示す。
本発明の熱転写フィルムの、ラジカル重合性組成物層のラジカル反応性希釈剤の分布を分析した。
代表例として、本願実施例1で得た熱転写フィルムD1を140℃×5分、160℃×5分、180℃×5分加熱後、PVAフィルムを剥がし、剥がしたPVAフィルムをアセトンに浸積し、日本電子社製ガスクロマトグラフィー/マススペクトロメトリー装置「JMS−K9」を使用し、GC/MS分析を行った。測定条件としては、カラム:DB−5MS、カラム温度:40℃(3min)−15℃/min−300℃、インジェクション温度:300℃、キャリアガス流量:1.0ml/min、イオン化:EIである。
その結果、ラジカル重合性樹脂組成物A1の組成はアロニックスM−305/ユニディック17−813/パラロイドA11=12/48/40であるにも関わらず、ペンタエリスリトールトリアクリレート由来のピーク面積が他のピーク面積の3〜6倍と見積もられ、他のピークはユニディック17−813、パラロイドA11中に含まれる低分子量不純物及び重合開始剤であると同定された。ペンタエリスリトールトリアクリレート由来のピーク比は加熱温度が高くなるほど大きくなった。従って、熱転写によりラジカル反応性希釈剤であるペンタエリスリトールトリアクリレートは加熱時に転写層内部で流動し、ポリビニルアルコール層と保護層との界面付近に移動することが確認できる。
Claims (5)
- ポリビニルアルコール樹脂を主成分とする基材フィルム上に、ラジカル重合性樹脂組成物層と加飾層とをこの順に積層した転写層を有する熱転写フィルムであって、前記ラジカル重合性樹脂組成物層が、全固形分量に対して熱可塑性樹脂を20〜80質量%、数平均分子量100〜1500の(メタ)アクリロイル基を有する重合性化合物を10〜70質量%含有し、且つ、前記ラジカル重合性樹脂組成物層のFT−IRを用いた全反射法(ATR)による160℃×10分加熱後のアクリロイル基の反応率が5〜30%であることを特徴とする熱転写フィルム。
- 前記熱可塑性樹脂がアクリル系樹脂であり、且つ、前記(メタ)アクリロイル基を有する重合性化合物が1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する重合性化合物である請求項1記載の熱転写フィルム。
- 前記熱可塑性樹脂が(メタ)アクリロイル基を有するアクリル系樹脂である請求項2記載の熱転写フィルム。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の熱転写フィルムの製造方法であって、ラジカル重合性樹脂組成物層を設けたポリビニルアルコール樹脂を主成分とする基材フィルムと、加飾層を設けた基材フィルムとを、前記ラジカル重合性樹脂組成物層と加飾層とが接するようにラミネートした後エージングすることを特徴とする熱転写フィルムの製造方法。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の熱転写フィルムを、保持した状態で、前記ラジカル重合性樹脂組成物層中に含まれる(メタ)アクリロイル基の反応率が5〜30%の範囲となるように加熱した後、前記熱転写フィルムを真空成形法により被転写基材に貼り付けて一体化させ、基材フィルムを剥離することを特徴とする、加飾品の製造方法。
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