JP6785924B2 - 熱硬化性離型コーティング剤及び積層フィルム - Google Patents
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Description
[実施形態1]
熱硬化性樹脂(A)、架橋剤(B)、及び離型剤(C)を含有する熱硬化性離型コーティング剤であって、前記離型剤(C)が、重量平均分子量3,500〜100万の範囲内のアクリル共重合体であって、かつ、前記離型剤(C)の固形分含有量が、前記熱硬化性樹脂(A)及び前記架橋剤(B)の合計樹脂固形分を基準として、0.5〜30質量%の範囲内である、熱硬化性離型コーティング剤。
[実施形態2]
前記離型剤(C)が、炭素数12以上のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(c−1)に基づく構成単位を、共重合成分の総量に対して50〜95質量%含有するアクリル共重合体である、実施形態1に記載の熱硬化性離型コーティング剤。
[実施形態3]
前記離型剤(C)が、水酸基を有する重合性不飽和モノマー及びカルボキシル基を有する重合性不飽和モノマーから選ばれる少なくとも1種の極性官能基を有する重合性不飽和モノマー(c−2)に基づく構成単位を、共重合成分の総量に対して5〜50質量%含有するアクリル共重合体である、実施形態1又は2に記載の熱硬化性離型コーティング剤。
[実施形態4]
熱硬化性樹脂(A)の樹脂SP値(SP1)と、離型剤(C)の樹脂SP値(SP2)が、SP1>SP2であって、かつSP1−SP2が0.8以上である、実施形態1〜3のいずれか1項に記載の熱硬化性離型コーティング剤。
[実施形態5]
前記熱硬化性樹脂(A)が、前記離型剤(C)であるアクリル共重合体以外の水酸基含有アクリル樹脂及び水酸基含有ポリエステル樹脂から選ばれる少なくとも1種の熱硬化性樹脂である、実施形態1〜4のいずれか1項に記載の熱硬化性離型コーティング剤。
[実施形態6]
前記架橋剤(B)が、アミノ樹脂、ポリイソシアネート樹脂、及び金属キレート化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種である、実施形態1〜5のいずれか1項に記載の熱硬化性離型コーティング剤。
[実施形態7]
前記熱硬化性樹脂(A)の重量平均分子量が3,000〜100,000である、実施形態1〜6のいずれか1項に記載の熱硬化性離型コーティング剤。
[実施形態8]
前記熱硬化性樹脂(A)のガラス転移温度Tgが70〜130℃である、実施形態1〜7のいずれか1項に記載の熱硬化性離型コーティング剤。
[実施形態9]
熱硬化性樹脂(A)、架橋剤(B)、及び離型剤(C)を含有する熱硬化性離型コーティング剤であって、その初期の剥離力と加熱処理後の剥離力の差分が下記条件1)及び2)のいずれかを満たす、熱硬化性離型コーティング剤。
条件:
1)初期の剥離力が750mN/25mm未満、かつ、初期の剥離力と加熱処理後の剥離力の差分が5000mN/25mm未満、
2)初期の剥離力が750mN/25mm以上3000mN/25mm未満、かつ、初期の剥離力と加熱処理後の剥離力の差分が4000mN/25mm未満。
[実施形態10]
実質的にシリコーンを含有していない、実施形態1〜9のいずれか1項に記載の熱硬化性離型コーティング剤。
[実施形態11]
樹脂フィルムの少なくとも片面に、実施形態1〜10のいずれか1項に記載の熱硬化性離型コーティング剤から形成された離型層を設けてなる、積層フィルム。
本発明に係る熱硬化性離型コーティング剤は熱硬化性樹脂(A)を含有する。本発明において用いられる熱硬化性樹脂(A)としては、従来から公知の硬化架橋できる被膜形成性樹脂を用いることができ、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン樹脂等であって、水酸基、カルボキシル基、アルコキシシリル基等の架橋性官能基を有している熱硬化性樹脂が挙げられる。これらのなかでも、硬化性の観点から、水酸基含有アクリル樹脂、水酸基含有ポリエステル樹脂などの水酸基含有樹脂や、カルボキシル基含有アクリル樹脂、カルボキシル基含有ポリエステル樹脂などのカルボキシル基含有樹脂が好ましく、水酸基含有アクリル樹脂、水酸基含有ポリエステルが特に好ましい。
式 SP=(√Vml・δH+√Vmh・δD)/(√Vml+√Vmh)
濁点滴定では、試料0.5gをアセトン10mLに溶解した中に、n−ヘキサンを加えていき、濁点での滴定量H(mL)を読み、同様にアセトン溶液中に脱イオン水を加えたときの濁点における滴定量D(mL)を読み、これらを下記式に適用し、Vml、Vmh、δH、δDを算出する。濁点はJIS−K0101(工業用水試験方法)に準じたホルマジン濁度標準で100度になった時とする。樹脂SP値が低いほど、極性は低く、疎水性であることをあらわす。なお、本測定に用いる各溶剤の分子容(mL/mol)は、アセトン:74.4、n−ヘキサン:130.3、脱イオン水:18であり、各溶剤のSPは、アセトン:9.75、n−ヘキサン:7.24、脱イオン水:23.43である。
Vml=74.4×130.3/((1−VH)×130.3+VH×74.4)
Vmh=74.4×18/((1−VD)×18+VD×74.4)
VH=H/(10+H)
VD=D/(10+D)
δH=9.75×10/(10+H)+7.24×H/(10+H)
δD=9.75×10/(10+D)+23.43×D/(10+D)。
1/Tg(K)=W1/T1+W2/T2+・・・Wn/Tn
Tg(℃)=Tg(K)−273
式中、W1、W2、・・・Wnは各モノマーの質量分率であり、T1、T2・・・Tnは各モノマーのホモポリマーのガラス転移温度Tg(K)である。
なお、各モノマーのホモポリマーのガラス転移温度は、POLYMER HANDBOOK Fourth Edition,J.Brandrup,E.h.Immergut,E.A.Grulke編(1999年)による値であり、該文献に記載されていないモノマーのガラス転移温度は、該モノマーのホモポリマーを重量平均分子量が50,000程度になるようにして合成し、そのガラス転移温度を示差走査型熱分析により測定したときの値を使用する。
多塩基酸は1分子中に2個以上のカルボキシル基を有する化合物(ジカルボン酸)であって、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、4,4´−ビフェニルジカルボン酸、ジフェニルメタン−4,4´−ジカルボン酸などの芳香族多塩基酸及びその無水物;ヘキサヒドロイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸などの脂環族多塩基酸及びその無水物;アジピン酸、セバシン酸、スベリン酸、コハク酸、グルタル酸、マレイン酸、クロロマレイン酸、フマル酸、ドデカン二酸、ピメリン酸、アゼライン酸、イタコン酸、シトラコン酸、ダイマー酸などの脂肪族多塩基酸及びその無水物;これらのジカルボン酸のメチルエステル、エチルエステルなどの低級アルキルエステル;トリメリット酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、無水ピロメット酸、トリメシン酸、メチルシクロヘキセントリカルボン酸、テトラクロロヘキセン多塩基酸及びその無水物などの3価以上の多塩基酸などが挙げられる。
本発明に係る熱硬化性離型コーティング剤は架橋剤(B)を含有する。本発明における架橋剤(B)としては、加熱により熱硬化性樹脂(A)の架橋性官能基と反応して架橋硬化を生じるものであれば特に制限なく使用することができる。このような架橋剤としては、例えば、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、尿素樹脂等のアミノ樹脂、ポリイソシアネート化合物、金属キレート化合物、エポキシ樹脂等を挙げることができ、なかでもメラミン樹脂、ポリイソシアネート化合物、金属キレート化合物、ベンゾグアナミン樹脂が好適に用いられる。
上記ベンゾグアナミン樹脂の具体例としては、例えば、マイコート102、マイコート105、マイコート106(以上、いずれもオルネクスジャパン社製)、ニカラックSB−201、ニカラックSB−203、ニカラックSB−301、ニカラックSB−303、ニカラックSB−401(以上、いずれも三和ケミカル社製)などのメチルエーテル化ベンゾグアナミン樹脂;サイメル1123(以上、オルネクスジャパン社製)などのメチルエーテルとエチルエーテルとの混合エーテル化ベンゾグアナミン樹脂;マイコート136(以上、オルネクスジャパン社製)、ニカラックSB−255、ニカラックSB−355、ニカラックBX−37、ニカラックBX−4000(以上、いずれも三和ケミカル社製)などのメチルエーテルとブチルエーテルとの混合エーテル化ベンゾグアナミン樹脂;マイコート1128(以上、オルネクスジャパン社製)などのブチルエーテル化ベンゾグアナミン樹脂などを挙げることができる。
架橋剤(B)として、メラミン樹脂又はベンゾグアナミン樹脂を用いる場合の硬化触媒としては、例えば、カルボン酸、スルホン酸、リン酸のような酸触媒等を挙げることができ、なかでもドデシルベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸等が好ましく用いられる。
架橋剤(B)がポリイソシアネート化合物である場合には、硬化触媒の中でもウレタン硬化触媒として公知のもの(例えば、有機錫化合物、アミン化合物、有機酸など)を用いることができる。
本発明において用いられる離型剤(C)は、アクリル共重合体であり、アクリル重合体は、例えば、重合性不飽和モノマーを、それ自体既知の方法、例えば、有機溶媒中での溶液重合法、水中でのエマルション重合法等の方法により重合せしめることによって得ることができる。
式 CH2=C(R3)−COOR4
〔上記式中R3は水素又はメチル基を示し、R4は炭素数12〜22の直鎖、分岐、環状アルキル基を示す〕で表されるアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。ここで炭素数12以上とはR4の炭素数が12以上であることを意味する。具体的には、ラウリル(メタ)アクリレート〔炭素数12〕、トリデシル(メタ)アクリレート〔炭素数13〕、ミリスチル(メタ)アクリレート〔炭素数14〕、セチル(メタ)アクリレート〔炭素数15〕、ヘプタデシル(メタ)アクリレート〔炭素数17〕、ステアリル(メタ)アクリレート〔炭素数18〕、イコシル(メタ)アクリレート〔炭素数20〕、及びベヘニル(メタ)アクリレート〔炭素数22〕等の(メタ)アクリル酸エステル系化合物が挙げられる。これらの化合物は単独でも2種以上を組み合わせても用いることができる。離型性、製造安定性の観点から、中でも、ラウリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレートが特に好ましい。またさらに特に、炭素数12以上のアルキル基は直鎖状、分岐状のいずれでもよいが、初期からの十分な離型性発現の観点及び製造安定性の観点から直鎖状のアルキル基が好ましく、特に直鎖のステアリルアクリレートが好ましい。
市販品とてしては、「プラクセル FM1」、「プラクセルFM2」、「プラクセルFM1D」「プラクセルFM2D」、「プラクセルFM3」、「プラクセルFM3X」、「プラクセルFM4」、「プラクセルFM−5」「プラクセルFA1」、「プラクセルFA2」、「プラクセルFA1D」、「プラクセルFA1DDM」、「プラクセルFA2D」、「プラクセルFA3」、「プラクセルFA4」、「プラクセルFA5」(いずれもダイセル化学社製、商品名、プラクセル\PLACCELは登録商標)等を挙げることができる。なかでも、得られる共重合体と硬化剤との硬化性の点から、一般式(I)において、R2がエチレン基であるカプロラクトン変性ヒドロキシエチルアクリレートが好ましい。同様に活性エネルギー線硬化性の点から、一般式(I)において、nが1〜3の範囲であるカプロラクトン変性ヒドロキシエチルアクリレートが好ましい。
市販品とてしては、ブレンマーPE−90、ブレンマー200、ブレンマー350、ブレンマーPME−400、ブレンマーAE−400、ブレンマーPME−1000、ブレンマーPME−2000(以上、日本油脂(株)社製、ポリエチレングリコールモノメタクリレート)等が挙げられる。
離型剤(C)として用いられるアクリル共重合体は、離型性、製造安定性の点から、その共重合性モノマーとして、特に好ましくは、炭素数12以上のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(c−1)及び極性官能基を有する重合性不飽和モノマー(c−2)を必須成分として含むものであることが好ましい。
このようにして得られた離型剤(C)を、その固形分含有量が、熱硬化性樹脂(A)及び架橋剤(B)の合計樹脂固形分を基準として、0.5〜30質量%の範囲内で配合することにより、離型性、加熱後の離型性に優れ、貯蔵安定性が向上した非シリコーン系の熱硬化性離型コーティング剤とすることができる。離型剤(C)の配合量は、熱硬化性樹脂(A)及び架橋剤(B)の合計樹脂固形分を基準として、好ましくは1〜20質量%の範囲内であり、さらに好ましくは2〜10質量%の範囲内である。
また、熱硬化性樹脂(A)と、離型剤(C)の使用比率は、加熱後の離型性向上の点から、樹脂固形分を基準として、99/1〜60/40、好ましくは98/2〜70/30、さらに97/3〜80/20、特に96/4〜90/10の範囲内が好ましい。
前記溶媒の含有量としては、熱硬化性離型コーティング剤の全配合成分の合計質量に対して、1〜99質量%、好ましくは30〜95質量%となる範囲内で調整されることが望ましい。
ただし、シリコーンによる汚染等の不具合を防止する観点から、本発明の熱硬化性離型コーティング剤は、実質的にシリコーンを含有しないことが好ましい。実質的にシリコーンを含有しないとは、具体的には本発明の熱硬化性離型コーティング剤による離型層に含まれるシリコーン化合物が、1質量%未満、好ましくは全く含有しないものである。
本発明の熱硬化性離型コーティング剤は、シリコーン化合物を含まなくても、離型性、加熱後の離型性に優れる離型層を形成することができ、シリコーンによる汚染の心配のない非シリコーン系(ノンシリコーン系)離型コーティング剤として用いることができるが、シリコーン化合物を含むことを排除するものではない。
条件:
1)初期の剥離力が750mN/25mm未満、かつ、初期の剥離力と加熱処理後の剥離力の差分が5000mN/25mm未満、
2)初期の剥離力が750mN/25mm以上3000mN/25mm未満、かつ、初期の剥離力と加熱処理後の剥離力の差分が4000mN/25mm未満。
ここで、「初期の剥離力」とは、後述する<評価試験>の「試験項目1:剥離力(初期)」に記載された条件で測定したときの剥離力を意味し、また、「加熱処理後の剥離力」とは、<評価試験>の「試験項目2:剥離力(加熱処理後)」に記載された条件で測定したときの剥離力を意味する。
本発明の熱硬化性離型コーティングを各種公知の基材フィルムの少なくとも片面に塗工して離型層を設けることにより、離型層を有する積層フィルムが得られる。基材フィルムとしては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ナイロン、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリカーボネート(PC)、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレン・ビニルアルコ−ル共重合体(EVOH)、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリイミド樹脂、AS樹脂、ABS樹脂、メラミン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂等の熱可塑型樹脂フィルムなどを挙げることができる。これらの中でも加工性、コスト及び耐熱性の観点から、ポリエチレンテレフタレート(PET)が特に好ましい。またこれら樹脂フィルムは、必要に応じて紫外線吸収剤、充填剤、熱安定剤、着色剤などを含むものであってもよい。更に該樹脂フィルム表面には、例えば、コロナ処理等の表面処理を施すことができる。樹脂フィルムの膜厚は、通常、約1〜350μmの範囲内で適宜選択できる。
本発明の熱硬化性離型コーティング剤による離型層の厚みとしては、初期からの離型性発現の観点及び加熱後の離型性の点から、0.5μm〜10μm、好ましくは0.6μm〜5μmさらに好ましくは0.8〜2μmの範囲内が好ましい。
攪拌機、温度計、還流冷却器、及び滴下装置を備えた反応容器に、キシレン80部を仕込み、液中に窒素ガスを吹き込みながら反応温度135℃で攪拌し、この中にステアリルアクリレート70部、アクリル酸30部、キシレン40部及びV−59(商品名、富士フイルム和光純薬株式会社製、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、重合開始剤)3部の混合物を3時間かけて均一速度で滴下した。同温度で30分間熟成した後、さらにキシレン25部及びV−59 0.5部の混合物を1時間かけて反応容器に滴下し、滴下終了後30分間熟成させた、次いでキシレンで希釈して、固形分30%のアクリル共重合体C−1溶液を得た。得られたアクリル共重合体の各性状値として、酸価は234mgKOH/g、水酸基価は0mgKOH/g、重量平均分子量は9,000、ガラス転移温度は49℃、樹脂SP値は9.2であった。これをこのまま、固形分30%のアクリル樹脂系離型剤No.C−1として用いた。
攪拌機、温度計、還流冷却器を備えた反応容器に、キシレン150部、ステアリルアクリレート70部、アクリル酸30部及びパーブチルO(商品名、日油株式会社製、t−ブチル パーオキシ−2−エチルヘキサノエート、重合開始剤)0.5部を仕込み、液中に窒素ガスを吹き込みながら反応温度65℃で15時間攪拌した。その後、キシレンで希釈して、固形分30%のアクリル共重合体C−2溶液を得た。得られたアクリル共重合体の各性状値〔酸価、水酸基価、重量平均分子量、ガラス転移温度、樹脂SP値〕を表1に示す。これをこのまま、固形分30%のアクリル樹脂系離型剤No.C−2として用いた。
製造例2において、モノマー配合、重合開始剤及び反応温度を表1に示すものとする以外は製造例2と同様にして、固形分30%のアクリル共重合体C−3〜C−11及びC’−1溶液を得た。得られたアクリル共重合体の各性状値を表1に示す。これをこのまま、固形分30%のアクリル樹脂系離型剤No.C−3〜C−11及びC’−1として用いた。
製造例1において、重合開始剤量を12部とする以外は、実施例1と同様に、固形分30%のアクリル共重合体C’−2溶液を得た。得られたアクリル共重合体の各性状値を表1に示す。これをこのまま、固形分30%のアクリル樹脂系離型剤No.C’−2として用いた。なお、表1に示す各成分の配合は固形分質量比である。
製造例2において、反応温度を50℃とする以外は、実施例2と同様に、固形分30%のアクリル共重合体C’−3溶液を得た。得られたアクリル共重合体の各性状値を表1に示す。これをこのまま、固形分30%のアクリル樹脂系離型剤No.C’−3として用いた。
(実施例1)熱硬化性離型コーティング剤 No.1
熱硬化性樹脂No.A−1として水酸基含有アクリル樹脂〔水酸基価60mgKOH/g、ガラス転移温度98℃、重量平均分子量34,000、樹脂SP値10.7、固形分45質量%〕を 26.7部(固形分12.01質量部)、架橋剤No.B−1としてサイメル303LF〔商品名、オルネクスジャパン社製、フルエーテル型メチル化メラミン樹脂、固形分100質量%〕製造例1で得られた固形分30%のアクリル樹脂系離型剤No.C−1 2.0部(固形分0.6質量部)、酸触媒としてパラトルエンスルホン酸2.0部(固形分100質量%)固形分が22%になるようにトルエン/プロピレングリコールモノメチルエーテル(60/40)混合溶液で希釈し攪拌して熱硬化性離型コーティング剤No.1を得た。
前記得られた熱硬化性離型コーティング剤No.1を、ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ100μm)に乾燥塗膜1μmとなるよう塗布し、150℃で2分間乾燥させた。得られたフィルムにアクリル系粘着テープ(日東電工製31Bテープ)を2kgのゴムローラーにて圧着させながら貼り合わせ、23℃、50%相対湿度で1時間静置することにより、熱硬化性離型コーティング剤から形成された離型層を有する積層フィルムNo.1を得た。得られたフィルムを各種試験に供した。試験結果と評価結果をあわせて表2−1に示す。
実施例1において、熱硬化性離型コーティング剤の配合を表2−1、表2−2のとおりにし、得られた各熱硬化性離型コーティング剤を用いて実施例1と同様に各積層フィルムNo.2〜33を作製し、各種試験に供した。試験結果と評価結果をあわせて表2−1、表2−2に示す。
熱硬化性樹脂No.A−1:攪拌機、温度計、還流冷却器を備えた反応容器に、キシレン150部を仕込み、液中に窒素ガスを吹き込みながら反応温度105℃に昇温した。次いで、メチルメタクリレート 87.5部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート 12.5部及びパーブチルO 0.5部の混合液を反応温度105℃に維持しながら5時間かけて滴下した。その後、メチルエチルケトンで希釈して固形分45質量%の水酸基含有アクリル樹脂溶液を得た。得られたメチルメタクリレート/2−ヒドロキシエチルアクリレート系の炭素数12以上のアルキル基を有する重合性不飽和モノマーを含まない共重合体である水酸基含有アクリル樹脂の水酸基価は60mgKOH/g、ガラス転移温度は98℃、重量平均分子量は34,000、樹脂SP値は10.7であった。
熱硬化性樹脂No.A−2:攪拌機、温度計、還流冷却器を備えた反応容器に、キシレン150部を仕込み、液中に窒素ガスを吹き込みながら反応温度110℃に昇温した。次いで、メチルメタクリレート 87.5部、2−ヒドロキシエチルアクリレート 12.5部及びパーブチルO 3.5部の混合液を反応温度110℃に維持しながら5時間かけて滴下した。その後、メチルエチルケトンで希釈して固形分50質量%の水酸基含有アクリル樹脂溶液を得た。水酸基含有重合性不飽和モノマーを必須の共重合成分とする炭素数12以上のアルキル基を有する重合性不飽和モノマーを含まない共重合体である水酸基含有樹脂アクリル樹脂の水酸基価は90mgKOH/g、ガラス転移温度は72℃、重量平均分子量は13,000の、樹脂SP値は10.8であった。
熱硬化性樹脂No.A−3:アルキディアJ−541−IM−60、商品名、DIC社製、アルキド樹脂、樹脂SP値9.6、固形分60質量%
架橋剤No.B−1:サイメル303LF(オルネクスジャパン社製、フルエーテル型メチル化メラミン樹脂、固形分100%)
架橋剤No.B−2:マイコート506(オルネクスジャパン社製、フルエーテル型ブチル化メラミン樹脂、固形分100%)
架橋剤No.B−3:タケネートD−110N(三井化学社製、メタキシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、NCO% 11.5%、固形分75%)
架橋剤No.B−4:サイメル1123(オルネクスジャパン社製、フルエーテル型メチルエーテルとエチルエーテルとの混合エーテル化ベンゾグアナミン樹脂、固形分100%)
試験項目1:剥離力(初期)
熱硬化性離型コーティング剤の塗膜を有する各積層フィルムを25mm幅にカットした試験用積層フィルムを23℃、50%相対湿度の条件下で、引張試験機を用いて剥離角度T型、剥離速度300mm/minの条件にて剥離力を測定した。剥離力(初期)の好ましい値としては、1000mN/25mm未満、特に750mN/25mm未満が良い。
熱硬化性離型コーティング剤の塗膜を有する各積層フィルムを25mm幅にカットした試験用積層フィルムを、無荷重にて乾燥炉にて150℃で1時間加熱した。その後、23℃、50%相対湿度で1時間静置して室温に戻してから、試験項目1と同様にして剥離力を測定した。剥離力(加熱処理後)を下記基準にて評価した。剥離力(加熱処理後)の好ましい値としては、5000mN/25mm未満、特に3000mN/25mm未満が好ましい。
前記試験項目1で測定した初期の剥離力をH1、試験項目2で測定した加熱処理後の剥離力をH2としたときの差分(H2−H1)を算出した。剥離力(初期)と、剥離力(加熱処理後)の測定結果ならびに算出した差分の値から下記基準にて総合評価を行った。(単位mN/25mm)
SS:初期600未満かつ初期と加熱処理後の剥離力の差分が2000以下
S :初期750未満かつ初期と加熱処理後の剥離力の差分が2000を超えて2500以下、
又は、初期600以上750未満かつ初期と加熱処理後の剥離力の差分が2000以下
A:初期750未満かつ初期と加熱処理後の剥離力の差分が2500を超えて4000未満
B:初期750未満かつ初期と加熱処理後の剥離力の差分が4000以上5000未満、
又は、初期750以上かつ初期と加熱処理後の剥離力の差分が4000未満
C:初期750未満かつ初期と加熱処理後の剥離力の差分が5000以上
D:初期750以上かつ初期と加熱処理後の剥離力の差分が4000以上
各熱硬化性離型コーティング剤をポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ100μm)に乾燥塗膜1μmとなるよう塗布し、無荷重にて乾燥炉にて150℃で2分乾燥させたフィルムを4cm×3cmの大きさに2枚裁断し、塗装面と未塗装面を合わせて、6kgの圧力下、温度40℃、50%相対湿度で24時間放置した後の剥れ具合(剥し易さ)を以下の基準により評価した。
〇:抵抗なく剥すことができる
△:剥す際、わずかに抵抗がある
×:剥す際の抵抗が大きい。
本開示には以下の実施形態も開示される。
[実施形態1]
熱硬化性樹脂(A)、架橋剤(B)、及び離型剤(C)を含有する熱硬化性離型コーティング剤であって、前記離型剤(C)が、重量平均分子量3,500〜100万の範囲内のアクリル共重合体であって、かつ、前記離型剤(C)の固形分含有量が、前記熱硬化性樹脂(A)及び前記架橋剤(B)の合計樹脂固形分を基準として、0.5〜30質量%の範囲内である、熱硬化性離型コーティング剤。
[実施形態2]
前記離型剤(C)が、炭素数12以上のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(c−1)に基づく構成単位を、共重合成分の総量に対して50〜95質量%含有するアクリル共重合体である、実施形態1に記載の熱硬化性離型コーティング剤。
[実施形態3]
前記離型剤(C)が、水酸基を有する重合性不飽和モノマー及びカルボキシル基を有する重合性不飽和モノマーから選ばれる少なくとも1種の極性官能基を有する重合性不飽和モノマー(c−2)に基づく構成単位を、共重合成分の総量に対して5〜50質量%含有するアクリル共重合体である、実施形態1又は2に記載の熱硬化性離型コーティング剤。
[実施形態4]
熱硬化性樹脂(A)の樹脂SP値(SP 1 )と、離型剤(C)の樹脂SP値(SP 2 )が、SP 1 >SP 2 であって、かつSP 1 −SP 2 が0.8以上である、実施形態1〜3のいずれか1項に記載の熱硬化性離型コーティング剤。
[実施形態5]
前記熱硬化性樹脂(A)が、前記離型剤(C)であるアクリル共重合体以外の水酸基含有アクリル樹脂及び水酸基含有ポリエステル樹脂から選ばれる少なくとも1種の熱硬化性樹脂である、実施形態1〜4のいずれか1項に記載の熱硬化性離型コーティング剤。
[実施形態6]
前記架橋剤(B)が、アミノ樹脂、ポリイソシアネート樹脂、及び金属キレート化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種である、実施形態1〜5のいずれか1項に記載の熱硬化性離型コーティング剤。
[実施形態7]
前記熱硬化性樹脂(A)の重量平均分子量が3,000〜100,000である、実施形態1〜6のいずれか1項に記載の熱硬化性離型コーティング剤。
[実施形態8]
前記熱硬化性樹脂(A)のガラス転移温度Tgが70〜130℃である、実施形態1〜7のいずれか1項に記載の熱硬化性離型コーティング剤。
[実施形態9]
熱硬化性樹脂(A)、架橋剤(B)、及び離型剤(C)を含有する熱硬化性離型コーティング剤であって、その初期の剥離力及び加熱処理後の剥離力の差分が下記条件1)及び2)のいずれかを満たす、熱硬化性離型コーティング剤。
条件:
1)初期の剥離力が750mN/25mm未満、かつ、初期の剥離力と加熱処理後の剥離力の差分が5000mN/25mm未満、
2)初期の剥離力が750mN/25mm以上3000mN/25mm未満、かつ、初期の剥離力と加熱処理後の剥離力の差分が4000mN/25mm未満。
[実施形態10]
実質的にシリコーンを含有していない、実施形態1〜9のいずれか1項に記載の熱硬化性離型コーティング剤。
[実施形態11]
樹脂フィルムの少なくとも片面に、実施形態1〜10のいずれか1項に記載の熱硬化性離型コーティング剤から形成された離型層を設けてなる、積層フィルム。
Claims (7)
- ガラス転移温度が70〜130℃の範囲内である熱硬化性樹脂(A)、架橋剤(B)、及び離型剤(C)を含有する熱硬化性離型コーティング剤であって、前記離型剤(C)が、重量平均分子量3,500〜100万の範囲内のアクリル共重合体であって、かつ、前記離型剤(C)の固形分含有量が、前記熱硬化性樹脂(A)及び前記架橋剤(B)の合計樹脂固形分を基準として、0.5〜30質量%の範囲内であり、
前記熱硬化性樹脂(A)の樹脂SP値(SP1)と、前記離型剤(C)の樹脂SP値(SP2)が、SP1>SP2であって、かつSP1−SP2が0.8以上かつ2.0以下であり、
前記熱硬化性樹脂(A)が、前記離型剤(C)であるアクリル共重合体以外の水酸基含有アクリル樹脂であり、
前記離型剤(C)が、炭素数12以上のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(c−1)に基づく構成単位を、共重合成分の総量に対して50〜95質量%含有するアクリル共重合体であり、
実質的にシリコーンを含有していない、
熱硬化性離型コーティング剤。 - 前記離型剤(C)が、重量平均分子量9,000〜10万の範囲内のアクリル共重合体である、請求項1に記載の熱硬化性離型コーティング剤。
- 前記離型剤(C)が、水酸基を有する重合性不飽和モノマー及びカルボキシル基を有する重合性不飽和モノマーから選ばれる少なくとも1種の極性官能基を有する重合性不飽和モノマー(c−2)に基づく構成単位を、共重合成分の総量に対して5〜50質量%含有するアクリル共重合体である、請求項1又は2に記載の熱硬化性離型コーティング剤。
- 前記架橋剤(B)が、アミノ樹脂、ポリイソシアネート樹脂、及び金属キレート化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱硬化性離型コーティング剤。
- 前記熱硬化性樹脂(A)の重量平均分子量が3,000〜100,000である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱硬化性離型コーティング剤。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載の熱硬化性離型コーティング剤であって、その初期の剥離力及び加熱処理後の剥離力の差分が下記条件1)及び2)のいずれかを満たす、熱硬化性離型コーティング剤。
条件:
1)初期の剥離力が750mN/25mm未満、かつ、初期の剥離力と加熱処理後の剥離力の差分が5000mN/25mm未満、
2)初期の剥離力が750mN/25mm以上3000mN/25mm未満、かつ、初期の剥離力と加熱処理後の剥離力の差分が4000mN/25mm未満。 - 樹脂フィルムの少なくとも片面に、請求項1〜6のいずれか1項に記載の熱硬化性離型コーティング剤から形成された離型層を設けてなる、積層フィルム。
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