次に、図面を参照しながら、本開示の発明を実施するための形態について説明する。
図1は、本開示のダンパ装置10を含む発進装置1を示す概略構成図であり、図2は、発進装置1を示す断面図である。これらの図面に示す発進装置1は、駆動装置としてのエンジン(内燃機関)EGを備えた車両に搭載されるものであり、ダンパ装置10に加えて、エンジンのクランクシャフトに連結されて当該エンジンからのトルクが伝達される入力部材としてのフロントカバー3や、フロントカバー3に固定されるポンプインペラ(入力側流体伝動要素)4、ポンプインペラ4と同軸に回転可能なタービンランナ(出力側流体伝動要素)5、ダンパ装置10に連結されると共に自動変速機(AT)あるいは無段変速機(CVT)である変速機TMの入力軸ISに固定される出力部材としてのダンパハブ7、ロックアップクラッチ8等を含む。
なお、以下の説明において、「軸方向」は、特に明記するものを除いて、基本的に、発進装置1やダンパ装置10の中心軸(軸心)の延在方向を示す。また、「径方向」は、特に明記するものを除いて、基本的に、発進装置1やダンパ装置10、当該ダンパ装置10等の回転要素の径方向、すなわち発進装置1やダンパ装置10の中心軸から当該中心軸と直交する方向(半径方向)に延びる直線の延在方向を示す。更に、「周方向」は、特に明記するものを除いて、基本的に、発進装置1やダンパ装置10、当該ダンパ装置10等の回転要素の周方向、すなわち当該回転要素の回転方向に沿った方向を示す。
ポンプインペラ4は、図2に示すように、フロントカバー3に密に固定されて作動油が流通する流体室9を画成するポンプシェル40と、ポンプシェル40の内面に配設された複数のポンプブレード41とを有する。タービンランナ5は、図2に示すように、タービンシェル50と、タービンシェル50の内面に配設された複数のタービンブレード51とを有する。タービンシェル50の内周部は、複数のリベットを介してタービンハブ52に固定される。タービンハブ52は、ダンパハブ7により回転自在に支持され、当該タービンハブ52(タービンランナ5)の発進装置1の軸方向における移動は、ダンパハブ7と、当該ダンパハブ7に装着されるスナップリングにより規制される。
ポンプインペラ4とタービンランナ5とは、互いに対向し合い、両者の間には、タービンランナ5からポンプインペラ4への作動油(作動流体)の流れを整流するステータ6が同軸に配置される。ステータ6は、複数のステータブレード60を有し、ステータ6の回転方向は、ワンウェイクラッチ61により一方向のみに設定される。これらのポンプインペラ4、タービンランナ5およびステータ6は、作動油を循環させるトーラス(環状流路)を形成し、トルク増幅機能をもったトルクコンバータ(流体伝動装置)として機能する。ただし、発進装置1において、ステータ6やワンウェイクラッチ61を省略し、ポンプインペラ4およびタービンランナ5を流体継手として機能させてもよい。
ロックアップクラッチ8は、油圧式多板クラッチとして構成されており、ダンパ装置10を介してフロントカバー3とダンパハブ7とを連結するロックアップを実行すると共に当該ロックアップを解除する。ロックアップクラッチ8は、フロントカバー3に固定されたセンターピース30により軸方向に移動自在に支持されるロックアップピストン80と、クラッチドラム81と、ロックアップピストン80と対向するようにフロントカバー3の側壁部33の内面に固定される環状のクラッチハブ82と、クラッチドラム81の内周に形成されたスプラインに嵌合される複数の第1摩擦係合プレート(両面に摩擦材を有する摩擦板)83と、クラッチハブ82の外周に形成されたスプラインに嵌合される複数の第2摩擦係合プレート84(セパレータプレート)とを含む。
更に、ロックアップクラッチ8は、ロックアップピストン80を基準としてフロントカバー3とは反対側に位置するように、すなわちロックアップピストン80よりもダンパ装置10およびタービンランナ5側に位置するようにフロントカバー3のセンターピース30に取り付けられる環状のフランジ部材(油室画成部材)85と、フロントカバー3とロックアップピストン80との間に配置される複数のリターンスプリング86とを含む。図示するように、ロックアップピストン80とフランジ部材85とは、係合油室87を画成し、当該係合油室87には、図示しない油圧制御装置から作動油(係合油圧)が供給される。従って、係合油室87への係合油圧を高めることで、第1および第2摩擦係合プレート83,84をフロントカバー3に向けて押圧するようにロックアップピストン80を軸方向に移動させ、それによりロックアップクラッチ8を係合(完全係合あるいはスリップ係合)させることができる。なお、ロックアップクラッチ8は、油圧式単板クラッチとして構成されてもよい。
ダンパ装置10は、図1および図2に示すように、回転要素として、入力要素としてのドライブ部材(第1回転要素)11と、中間要素としての中間部材(第2回転要素)12と、出力要素としてのドリブン部材(第3回転要素)15とを含む。更に、ダンパ装置10は、トルク伝達要素(トルク伝達弾性体)として、ドライブ部材11と中間部材12との間でトルクを伝達する複数(本実施形態では、例えば3個)の第1スプリング(第1弾性体)SP1と、それぞれ対応する第1スプリングSP1と直列に作用して中間部材12とドリブン部材15との間でトルクを伝達する複数(本実施形態では、例えば3個)の第2スプリング(第2弾性体)SP2と、ドライブ部材11とドリブン部材15との間でトルクを伝達する複数(本実施形態では、例えば3個)の内側スプリング(第3弾性体)SPiとを含む。
すなわち、ダンパ装置10は、図1に示すように、ドライブ部材11とドリブン部材15との間に、互いに並列に設けられる第1トルク伝達経路TP1および第2トルク伝達経路TP2を有する。第1トルク伝達経路TP1は、複数の第1スプリングSP1、中間部材12および複数の第2スプリングSP2により構成され、これらの要素を介してドライブ部材11とドリブン部材15との間でトルクを伝達する。本実施形態において、第1トルク伝達経路TP1を構成する第1および第2スプリングSP1,SP2として、同一の諸元(ばね定数)を有するコイルスプリングが採用されている。
また、第2トルク伝達経路TP2は、複数の内側スプリングSPiにより構成され、互いに並列に作用する複数の内側スプリングSPiを介してドライブ部材11とドリブン部材15との間でトルクを伝達する。本実施形態において、第2トルク伝達経路TP2を構成する複数の内側スプリングSPiは、ドライブ部材11への入力トルクが予め定められたトルク(第1の閾値)T1に達してドライブ部材11のドリブン部材15に対する捩れ角が所定角度θref以上になってから、第1トルク伝達経路TP1を構成する第1および第2スプリングSP1,SP2と並列に作用する。これにより、ダンパ装置10は、2段階(2ステージ)の減衰特性を有することになる。なお、トルクT1は、ダンパ装置10の最大捩れ角θmaxに対応したトルクT2(第2の閾値)よりも小さく定められる。
また、本実施形態では、第1および第2スプリングSP1,SP2並びに内側スプリングSPiとして、荷重が加えられてないときに真っ直ぐに延びる軸心を有するように螺旋状に巻かれた金属材からなる直線型コイルスプリングが採用されている。これにより、アークコイルスプリングを用いた場合に比べて、第1および第2スプリングSP1,SP2並びに内側スプリングSPiを軸心に沿ってより適正に伸縮させることができる。この結果、ドライブ部材11(入力要素)とドリブン部材15(出力要素)との相対変位が増加していく際に第2スプリングSP2等からドリブン部材15に伝達されるトルクと、ドライブ部材11とドリブン部材15との相対変位が減少していく際に第2スプリングSP2等からドリブン部材15に伝達されるトルクとの差すなわちヒステリシスを低減化することが可能となる。ただし、第1および第2スプリングSP1,SP2並びに内側スプリングSPiの少なくとも何れかとして、アークコイルスプリングが採用されてもよい。
図2および図3に示すように、ダンパ装置10のドライブ部材11は、ロックアップクラッチ8のクラッチドラム81に連結されると共にダンパハブ7により調心される環状の第1入力プレート部材(第1回転支持部材)111と、第1入力プレート部材111と対向するように連結部材としての複数のリベット113を介して当該第1入力プレート部材111に連結される環状の第2入力プレート部材112(第2回転支持部材)とを含む。これにより、ドライブ部材11、すなわち第1および第2入力プレート部材111,112は、クラッチドラム81と一体に回転し、ロックアップクラッチ8の係合によりフロントカバー3(エンジンEG)とダンパ装置10のドライブ部材11とが連結されることになる。
また、本実施形態では、図2に示すように、ドライブ部材11の第2入力プレート部材112がタービン連結部材55を介してタービンランナ5のタービンシェル50に連結される。タービン連結部材55は、タービンシェル50に溶接により固定される環状部材であり、当該タービン連結部材55の外周部には、周方向に間隔をおいて(等間隔に)配設されると共にそれぞれ軸方向に延びる複数(本実施形態では、例えば3個)の係合凸部55eが形成されている。各係合凸部55eは、第2入力プレート部材112の外周部に周方向に間隔をおいて形成された複数の係合凹部の何れかに嵌合される。これにより、ドライブ部材11とタービンランナ5とは、一体に回転するように連結される。このように、第2入力プレート部材112とタービン連結部材55とを嵌合により連結することで、装置全体のコンパクト化を図りつつ、両者を容易に連結することが可能となる。ただし、第2入力プレート部材112とタービン連結部材55とは、例えばリベットを介して連結されてもよい。
図2および図3に示すように、第1入力プレート部材111は、それぞれ円弧状に延びると共に周方向に間隔をおいて(等間隔に)配設された複数(本実施形態では、例えば3個)の外側スプリング収容窓111woと、それぞれ円弧状に延びると共に各外側スプリング収容窓111woの径方向内側に周方向に間隔をおいて(等間隔に)配設された複数(本実施形態では、例えば3個)の内側スプリング収容窓111wiと、各内側スプリング収容窓111wiの外側縁部に沿って延びる複数(本実施形態では、例えば3個)のスプリング支持部111sと、複数(本実施形態では、例えば3個)の外側スプリング当接部111coと、複数(本実施形態では、例えば6個)の内側スプリング当接部111ciとを有する。各内側スプリング収容窓111wiは、内側スプリングSPiの自然長よりも長い周長を有する(図3参照)。また、外側スプリング当接部111coは、周方向に沿って互いに隣り合う外側スプリング収容窓111woの間に1個ずつ設けられる。更に、内側スプリング当接部111ciは、各内側スプリング収容窓111wiの周方向における両側に1個ずつ設けられる。
第2入力プレート部材112は、それぞれ円弧状に延びると共に周方向に間隔をおいて(等間隔に)配設された複数(本実施形態では、例えば3個)の外側スプリング収容窓112woと、それぞれ円弧状に延びると共に各外側スプリング収容窓112woの径方向内側に周方向に間隔をおいて(等間隔に)配設された複数(本実施形態では、例えば3個)の内側スプリング収容窓112wiと、各内側スプリング収容窓112wiの外側縁部に沿って延びる複数(本実施形態では、例えば3個)のスプリング支持部112sと、複数(本実施形態では、例えば3個)の外側スプリング当接部112coと、複数(本実施形態では、例えば6個)の内側スプリング当接部112ciとを有する。各内側スプリング収容窓112wiは、内側スプリングSPiの自然長よりも長い周長を有する(図3参照)。また、外側スプリング当接部112coは、周方向に沿って互いに隣り合う外側スプリング収容窓112woの間に1個ずつ設けられる。更に、内側スプリング当接部112ciは、各内側スプリング収容窓112wiの周方向における両側に1個ずつ設けられる。
中間部材12は、ドライブ部材11の第1入力プレート部材111よりもフロントカバー3側に配置される環状の第1中間プレート部材(第1回転部材)121と、ドライブ部材11の第2入力プレート部材112よりもタービンランナ5側に配置されると共に複数のリベットを介して第1中間プレート部材121に連結(固定)される環状の第2中間プレート部材(第2回転部材)122とを含む。図2に示すように、第1および第2中間プレート部材121,122は、第1および第2入力プレート部材111,112をダンパ装置10の軸方向における両側から挟み込むように配置される。このように、ドライブ部材11を両側から挟み込むように連結される環状の第1および第2入力プレート部材111,112により中間部材12を構成することで、第1および第2中間プレート部材121,122の内外径や厚みの調整により、中間部材12の慣性モーメント(イナーシャ)の設定の自由度を向上させることができる。
図2および図3に示すように、第1中間プレート部材121は、それぞれ円弧状に延びると共に周方向に間隔をおいて(等間隔に)配設された複数(本実施形態では、例えば3個)のスプリング収容窓121wと、複数のスプリング収容窓121wの外側縁部に沿って延びる環状のスプリング支持部121sと、複数(本実施形態では、例えば3個)のスプリング当接部121cとを有する。スプリング当接部121cは、周方向に沿って互いに隣り合うスプリング収容窓121wの間に1個ずつ設けられる。本実施形態において、第1中間プレート部材121の内周面は、第1入力プレート部材111のスプリング支持部111sにより径方向内側から支持され、それにより第1中間プレート部材121が第1入力プレート部材111により調心される。このように、第1中間プレート部材121の内周面をダンパ装置10の軸心に近接するスプリング支持部111sにより支持して当該第1中間プレート部材121を調心することで、第1中間プレート部材121の調心に伴って発生する摩擦力を低減化することができる。
第2中間プレート部材122は、それぞれ円弧状に延びると共に周方向に間隔をおいて(等間隔に)配設された複数(本実施形態では、例えば3個)のスプリング収容窓122wと、複数のスプリング収容窓122wの外側縁部に沿って延びる環状のスプリング支持部122sと、複数(本実施形態では、例えば3個)のスプリング当接部122cとを有する。スプリング当接部122cは、周方向に沿って互いに隣り合うスプリング収容窓122wの間に1個ずつ設けられる。本実施形態において、第2中間プレート部材122の内周面は、第2入力プレート部材112のスプリング支持部112sにより径方向内側から支持され、それにより第2中間プレート部材122が第2入力プレート部材112により調心される。このように、第2中間プレート部材122の内周面をダンパ装置10の軸心に近接するスプリング支持部112sにより支持して当該第2中間プレート部材122を調心することで、第2中間プレート部材122の調心に伴って発生する摩擦力を低減化することができる。また、本実施形態では、第1および第2中間プレート部材121,122として、同一の形状を有するものが採用され、これにより、部品の種類の数を削減することが可能となる。
本実施形態において、第1および第2中間プレート部材121,122のスプリング当接部121c,122cは軸方向に対向し、両者は、リベットを介して連結される。また、本実施形態において、第1中間プレート部材121は、図2および図3に示すように、スプリング当接部121cよりも径方向外側に周方向に間隔をおいて(等間隔に)に配設された複数(本実施形態では、例えば3個)の連結フランジ部125を有する。同様に、第2中間プレート部材122も、図2および図3に示すように、スプリング当接部122cよりも径方向外側に周方向に間隔をおいて(等間隔に)に配設された複数(本実施形態では、例えば3個)の連結フランジ部126を有する。第1中間プレート部材121の各連結フランジ部125は、第2中間プレート部材122の対応する連結フランジ部126と軸方向に対向し、互いに対をなす連結フランジ部125,126は、複数(本実施形態では、例えば2個)のリベットを介して互いに連結される。
ドリブン部材15は、板状の環状部材として構成されており、第1および第2入力プレート部材111,112の軸方向における間に配置されると共に、複数のリベットを介してダンパハブ7に固定される。図2および図3に示すように、ドリブン部材15は、それぞれ円弧状に延びると共に周方向に間隔をおいて(等間隔に)配設された複数(本実施形態では、例えば3個)の外側スプリング収容窓15woと、各外側スプリング収容窓15woの径方向内側に周方向に間隔をおいて(等間隔に)配設された複数(本実施形態では、例えば3個)の内側スプリング収容窓15wiと、複数(本実施形態では、例えば3個)の外側スプリング当接部15coと、複数(本実施形態では、例えば6個)の内側スプリング当接部15ciとを有する。外側スプリング当接部15coは、周方向に沿って互いに隣り合う外側スプリング収容窓15woの間に1個ずつ設けられる。また、各内側スプリング収容窓15wiは、内側スプリングSPiの自然長に応じた周長を有する。更に、内側スプリング当接部15ciは、各内側スプリング収容窓15wiの周方向における両側に1個ずつ設けられる。
第1および第2入力プレート部材111,112の外側スプリング収容窓111wo,112woと、ドリブン部材15の外側スプリング収容窓15woとには、第1および第2スプリングSP1,SP2が互いに対をなす(直列に作用する)ように1個ずつ配置される。また、ダンパ装置10の取付状態において、第1および第2入力プレート部材111,112の各外側スプリング当接部111co,112coと、ドリブン部材15の各外側スプリング当接部15coとは、互いに異なる外側スプリング収容窓15wo,111wo,112woに配置されて対をなさない(直列に作用しない)第1および第2スプリングSP1,SP2の間で両者の端部と当接する。
更に、第1および第2中間プレート部材121,122のスプリング当接部121c,122cは、それぞれ共通の外側スプリング収容窓15wo,111wo,112woに配置されて互いに対をなす第1および第2スプリングSP1,SP2の間で両者の端部と当接する。また、互いに異なる外側スプリング収容窓15wo,111wo,112woに配置されて対をなさない(直列に作用しない)第1および第2スプリングSP1,SP2は、第1および第2中間プレート部材121,122のスプリング収容窓121w,122wに配置される。更に、第1および第2スプリングSP1,SP2は、フロントカバー3側で第1中間プレート部材121のスプリング支持部121sにより径方向外側から支持(ガイド)されると共に、タービンランナ5側で第2中間プレート部材122のスプリング支持部122sにより径方向外側から支持(ガイド)される。
これにより、第1および第2スプリングSP1,SP2は、図3に示すように、ダンパ装置10の周方向に交互に並ぶ。また、各第1スプリングSP1の一端は、ドライブ部材11の対応する外側スプリング当接部111co,112coと当接し、各第1スプリングSP1の他端は、中間部材12の対応するスプリング当接部121c,122cと当接する。更に、各第2スプリングSP2の一端は、中間部材12の対応するスプリング当接部121c,122cと当接し、各第2スプリングSP2の他端は、ドリブン部材15の対応する外側スプリング当接部15coと当接する。
この結果、互いに対をなす第1および第2スプリングSP1,SP2は、ドライブ部材11とドリブン部材15との間で、中間部材12のスプリング当接部121c,122cを介して直列に連結される。従って、ダンパ装置10では、ドライブ部材11とドリブン部材15との間でトルクを伝達する弾性体の剛性、すなわち第1および第2スプリングSP1,SP2の合成ばね定数をより小さくすることができる。なお、本実施形態において、それぞれ複数の第1および第2スプリングSP1,SP2は、図3に示すように、同一円周上に配列され、発進装置1やダンパ装置10の軸心と各第1スプリングSP1の軸心との距離と、発進装置1等の軸心と各第2スプリングSP2の軸心との距離とが等しくなっている。
また、ドリブン部材15の各内側スプリング収容窓15wiには、内側スプリングSPiが配置される。ダンパ装置10の取付状態において、各内側スプリング当接部15ciは、内側スプリングSPiの対応する端部と当接する。更に、ダンパ装置10の取付状態において、各内側スプリングSPiのフロントカバー3側の側部は、第1入力プレート部材111の対応する内側スプリング収容窓111wiの周方向における中央部に位置すると共に、第1入力プレート部材111のスプリング支持部111sにより径方向外側から支持(ガイド)される。また、ダンパ装置10の取付状態において、各内側スプリングSPiのタービンランナ5側の側部は、第2入力プレート部材112の対応する内側スプリング収容窓112wiの周方向における中央部に位置すると共に、第2入力プレート部材112のスプリング支持部112sにより径方向外側から支持(ガイド)される。
これにより、各内側スプリングSPiは、図2および図3に示すように、流体室9内の内周側領域に配置され、第1および第2スプリングSP1,SP2により包囲される。この結果、ダンパ装置10ひいては発進装置1の軸長をより短縮化すると共に、各内側スプリングSPiに作用する遠心力を低下させ、当該遠心力により各内側スプリングSPiがスプリング支持部111s,112sやドリブン部材15に押し付けられることで発生する摩擦力(摺動抵抗)を小さくすることが可能となる。そして、各内側スプリングSPiは、ドライブ部材11への入力トルク(駆動トルク)が上記トルクT1に達すると、第1および第2入力プレート部材111,112の対応する内側スプリング収容窓111wi,112wiの両側に設けられた内側スプリング当接部111ci,112ciの一方と当接することになる。
加えて、ダンパ装置10は、図1に示すように、ドライブ部材11(第1回転要素)とドリブン部材15(第3回転要素)とに連結されて第1トルク伝達経路TP1と第2トルク伝達経路TP2との双方に並列に設けられる回転慣性質量ダンパ20を含む。本実施形態において、回転慣性質量ダンパ20は、ダンパ装置10の入力要素であるドライブ部材11と出力要素であるドリブン部材15との間に配置されるシングルピニオン式の遊星歯車21を有する。
遊星歯車21は、外周に複数の外歯ギヤ部15tを含んでサンギヤとして機能するドリブン部材15と、それぞれ対応する外歯ギヤ部15tに噛合する複数(本実施形態では、例えば3個)のピニオンギヤ23を回転自在に支持してキャリヤとして機能する第1および第2入力プレート部材111,112と、各ピニオンギヤ23に噛合する内歯25tを有すると共にサンギヤとしてのドリブン部材15(外歯ギヤ部15t)と同心円上に配置されるリングギヤ25とにより構成される。従って、サンギヤとしてのドリブン部材15、複数のピニオンギヤ23およびリングギヤ25は、流体室9内で、ダンパ装置10の径方向からみて第1および第2スプリングSP1,SP2(並びに内側スプリングSPi)と軸方向に少なくとも部分的に重なり合う(図2参照)。
図3に示すように、外歯ギヤ部15tは、ドリブン部材15の外周面(外周部)に周方向に間隔をおいて(等間隔に)定められた複数の箇所に形成される。従って、図2から解るように、外歯ギヤ部15tは、外側スプリング収容窓15woおよび内側スプリング収容窓15wi、すなわちドライブ部材11とドリブン部材15との間でトルクを伝達する第1スプリングSP1、第2スプリングSP2および内側スプリングSPiよりも径方向外側に位置する。なお、外歯ギヤ部15tは、ドリブン部材15の外周部(外周面)の全体に形成されてもよい。
遊星歯車21のキャリヤを構成する第1入力プレート部材111は、図2および図3に示すように、外側スプリング当接部111coよりも径方向外側に周方向に間隔をおいて(等間隔に)に配設された複数(本実施形態では、例えば3個)のピニオンギヤ支持部115を有する。同様に、遊星歯車21のキャリヤを構成する第2入力プレート部材112も、図2および図3に示すように、外側スプリング当接部112coよりも径方向外側に周方向に間隔をおいて(等間隔に)に配設された複数(本実施形態では、例えば3個)のピニオンギヤ支持部116を有する。
第1入力プレート部材111の各ピニオンギヤ支持部115は、図4に示すように、フロントカバー3に向けて軸方向に突出するように形成された円弧状の軸方向延在部115aと、当該軸方向延在部の端部から径方向外側に延出された円弧状のフランジ部115fとを有する。また、第2入力プレート部材112の各ピニオンギヤ支持部116は、タービンランナ5に向けて軸方向に突出するように形成された円弧状の軸方向延在部116aと、当該軸方向延在部の端部から径方向外側に延出された円弧状のフランジ部116fとを有する。第1入力プレート部材111の各ピニオンギヤ支持部115(フランジ部115f)は、第2入力プレート部材112の対応するピニオンギヤ支持部116(フランジ部116f)と軸方向に対向し、互いに対をなすフランジ部115f,116fは、それぞれピニオンギヤ23に挿通されたピニオンシャフト24の端部を支持する。
また、互いに対をなすフランジ部115f,116fは、図3に示すように、複数(本実施形態では、例えば2個)のリベット113を介して互いに連結され、ピニオンシャフト24は、当該2個のリベット113と同一円周上(同径上)に配置される。これにより、キャリヤとしての第1および第2入力プレート部材111、112の剛性を確保することが可能となる。また、本実施形態において、第1入力プレート部材111のピニオンギヤ支持部115(フランジ部115f)は、ロックアップクラッチ8のクラッチドラム81に溶接により固定される。
遊星歯車21のピニオンギヤ23は、図4に示すように、外周にギヤ歯(外歯)23tを有する環状のギヤ本体230と、ギヤ本体230の内周面とピニオンシャフト24の外周面との間に配置される複数のニードルベアリング231と、ギヤ本体230の両端部に嵌合されてニードルベアリング231の軸方向における移動を規制する一対のスペーサ232とを含む。ピニオンギヤ23のギヤ本体230は、図4に示すように、ギヤ歯23tの歯底よりも当該ピニオンギヤ23の径方向における内周側で当該ギヤ歯23tの軸方向における両側に突出すると共に円柱面状の外周面を有する環状の径方向支持部230sを含む。また、各スペーサ232の外周面は、径方向支持部230sと同径、若しくは当該径方向支持部230sよりも小径に形成されている。
複数のピニオンギヤ23(ピニオンシャフト24)は、周方向に間隔をおいて(等間隔に)並ぶようにキャリヤとしての第1および第2入力プレート部材111,112(ピニオンギヤ支持部115,116)により回転自在に支持される。更に、各スペーサ232の側面と第1および第2入力プレート部材111,112のピニオンギヤ支持部115,116(フランジ部115f,116f)との間には、ワッシャ235が配置される。また、ピニオンギヤ23のギヤ歯23tの両側の側面と、第1および第2入力プレート部材111,112のピニオンギヤ支持部115,116(フランジ部115f,116f)との軸方向における間には、図4に示すように間隙が形成される。
遊星歯車21のリングギヤ25は、内周に内歯25tが形成された環状のギヤ本体250と、それぞれ円環状に形成された2枚の側板251と、各側板251をギヤ本体250の軸方向における両側の側面に固定するための複数のリベット252とを含む。ギヤ本体250、2枚の側板251および複数のリベット252は、一体化されて回転慣性質量ダンパ20の質量体として機能する。本実施形態において、内歯25tは、ギヤ本体250の内周面の全体にわたって形成される。ただし、内歯25tは、ギヤ本体250の内周面に周方向に間隔をおいて(等間隔に)定められた複数の箇所に形成されてもよい。また、ギヤ本体250の外周面には、図3に示すように、リングギヤ25の質量を調整するための凹部が周方向に間隔をおいて(等間隔に)複数形成されてもよい。
各側板251は、凹円柱面状の内周面を有し、内歯25tに噛合する複数のピニオンギヤ23により軸方向に支持される被支持部として機能する。すなわち、2枚の側板251は、内歯25tの軸方向における両側で、それぞれ内歯25tの歯底よりも径方向内側に突出して少なくともピニオンギヤ23のギヤ歯23tの側面と対向するようにギヤ本体250の対応する側面に固定される。本実施形態において、各側板251の内周面は、図4に示すように、内歯25tの歯先よりも僅かに径方向内側に位置する。
各ピニオンギヤ23と内歯25tとが噛合した際、各側板251の内周面は、ピニオンギヤ23(ギヤ本体230)の対応する径方向支持部230sにより径方向に支持される。これにより、複数のピニオンギヤ23の径方向支持部230sによりリングギヤ25をサンギヤとしてのドリブン部材15の軸心に対して精度よく調心して当該リングギヤ25をスムースに回転(揺動)させることが可能となる。また、各ピニオンギヤ23と内歯25tとが噛合した際、各側板251の内面は、ピニオンギヤ23のギヤ歯23tの側面およびギヤ歯23tの歯底から径方向支持部230sまでの部分の側面と対向する。これにより、リングギヤ25の軸方向における移動は、少なくともピニオンギヤ23のギヤ歯23tの側面により規制されることになる。図4に示すように、リングギヤ25の各側板251の外面と、第1および第2入力プレート部材111,112のピニオンギヤ支持部115,116(フランジ部115f,116f)との軸方向における間には、間隙が形成される。
更に、ダンパ装置10は、ドライブ部材11とドリブン部材15との相対回転を規制するストッパ17を有する。本実施形態において、ストッパ17は、ドライブ部材11とドリブン部材15との相対回転に伴って当該ドライブ部材11の一部と当接可能となるようにドリブン部材15の外周部に周方向に間隔をおいて(等間隔に)設けられた複数(本実施形態では、例えば3個)のストッパ当接部15stを含む。図2および図3から解るように、各ストッパ当接部15stは、第1入力プレート部材111の軸方向延在部115a(図4参照)の根元付近と当接可能となるように、隣り合う外歯ギヤ部15tの周方向における間でドリブン部材15の外周部から軸方向に延出されている。本実施形態において、各ストッパ当接部15stは、プレス加工等によりドリブン部材15の外周部を第1入力プレート部材111に向けて折り曲げることにより形成されてもよく、プレス加工等によりドリブン部材15の外周部に形成されたダボであってもよい。
ダンパ装置10の取付状態において、ドリブン部材15の各ストッパ当接部15stは、第1入力プレート部材111の隣り合う2つのピニオンギヤ支持部115(軸方向延在部115a)の周方向における中央付近に両者と当接しないように配置される。そして、各ストッパ当接部15stは、ドライブ部材11とドリブン部材15とが相対回転するのに伴って、対応する第1入力プレート部材111の軸方向延在部115aに接近し、入力トルクがダンパ装置10の最大捩れ角θmaxに対応した上記トルクT2に達すると、対応する軸方向延在部115aの根元付近に当接する。これにより、ドライブ部材11とドリブン部材15との相対回転、並びに第1、第2スプリングSP1,SP2および内側スプリングSPiのすべての撓みが規制されることになる。
上述のように構成される発進装置1では、ロックアップクラッチ8によるロックアップが解除されている際、図1からわかるように、エンジンEGからフロントカバー3に伝達されたトルク(動力)が、ポンプインペラ4、タービンランナ5、ドライブ部材11、第1スプリングSP1、中間部材12,第2スプリングSP2、ドリブン部材15、ダンパハブ7という経路を介して変速機TMの入力軸ISへと伝達される。これに対して、発進装置1のロックアップクラッチ8によりロックアップが実行されると、エンジンEGからフロントカバー3およびロックアップクラッチ8を介してドライブ部材11に伝達されたトルクは、入力トルクが上記トルクT1に達するまで、複数の第1スプリングSP1、中間部材12および複数の第2スプリングSP2を含む第1トルク伝達経路TP1と、回転慣性質量ダンパ20とを介してドリブン部材15およびダンパハブ7に伝達される。また、入力トルクが上記トルクT1以上になると、当該入力トルクが上記トルクT2に達するまで、ドライブ部材11に伝達されたトルクは、第1トルク伝達経路TP1と、複数の内側スプリングSPiを含む第2トルク伝達経路TP2と、回転慣性質量ダンパ20とを介してドリブン部材15およびダンパハブ7に伝達される。
また、ロックアップの実行時(ロックアップクラッチ8の係合時)にドライブ部材11がドリブン部材15に対して回転すると(捩れると)、第1および第2スプリングSP1,SP2が撓むと共に、ドライブ部材11とドリブン部材15との相対回転に応じて質量体としてのリングギヤ25が軸心周りに回転(揺動)する。このようにドライブ部材11がドリブン部材15に対して回転(揺動)する際には、遊星歯車21の入力要素であるキャリヤとしてのドライブ部材11すなわち第1および第2入力プレート部材111,112の回転数がサンギヤとしてのドリブン部材15の回転数よりも高くなる。従って、リングギヤ25は、遊星歯車21の作用により増速され、ドライブ部材11よりも高い回転数で回転する。これにより、回転慣性質量ダンパ20の質量体であるリングギヤ25から、ピニオンギヤ23を介して慣性トルクをダンパ装置10の出力要素であるドリブン部材15に付与し、当該ドリブン部材15の振動を減衰させることが可能となる。なお、回転慣性質量ダンパ20は、ドライブ部材11とドリブン部材15との間で主に慣性トルクを伝達し、平均トルクを伝達することはない。
更に、ドライブ部材11への入力トルクが上記トルクT2以上になった場合には、ストッパ17によりドライブ部材11とドリブン部材15との相対回転、並びに第1、第2スプリングSP1,SP2および内側スプリングSPiのすべての撓みが規制される。これにより、回転慣性質量ダンパ20からの慣性トルクを含む過大な荷重が第1および第2スプリングSP1,SP2並びに内側スプリングSPiに作用するのを抑制することができるので、これらの部材を良好に保護することが可能となる。
次に、ダンパ装置10の設計手順について説明する。
上述のように、ダンパ装置10では、ドライブ部材11に伝達される入力トルクが上記トルクT1に達するまで、第1トルク伝達経路TP1に含まれる第1および第2スプリングSP1,SP2と回転慣性質量ダンパ20とが並列に作用する。このように、第1および第2スプリングSP1,SP2と回転慣性質量ダンパ20とが並列に作用する際、中間部材12と第1および第2スプリングSP1,SP2とを含む第1トルク伝達経路TP1からドリブン部材15に伝達されるトルクは、中間部材12とドリブン部材15との間の第2スプリングSP2の変位(撓み量すなわち捩れ角)に依存(比例)したものとなる。これに対して、回転慣性質量ダンパ20からドリブン部材15に伝達されるトルクは、ドライブ部材11とドリブン部材15との角加速度の差、すなわちドライブ部材11とドリブン部材15との間の第1および第2スプリングSP1,SP2の変位の2回微分値に依存(比例)したものとなる。これにより、ダンパ装置10のドライブ部材11に伝達される入力トルクが次式(1)に示すように周期的に振動していると仮定すれば、第1トルク伝達経路TP1を経由してドライブ部材11からドリブン部材15に伝達される振動の位相と、回転慣性質量ダンパ20を経由してドライブ部材11からドリブン部材15に伝達される振動の位相とは、180°ずれることになる。
更に、中間部材12を有するダンパ装置10では、第1および第2スプリングSP1,SP2の撓みが許容され、かつ内側スプリングSPiが撓んでいない状態に対して、2つの固有振動数(共振周波数)を設定することができる。すなわち、ロックアップクラッチ8によりロックアップが実行された状態でエンジンEGからドライブ部材11へのトルクの伝達が開始されると仮定した場合、第1トルク伝達経路TP1では、第1および第2スプリングSP1,SP2の撓みが許容され、かつ内側スプリングSPiが撓んでいない際に、ドライブ部材11とドリブン部材15とが互いに逆位相で振動することによる共振あるいはドライブ部材11と図示しないドライブシャフトとの間で発生する主に変速機TMの共振(第1共振、図5における共振点R1参照)が発生する。
また、第1トルク伝達経路TP1の中間部材12は、環状を呈しており、ドライブ部材11にエンジンEGからのトルクが伝達される際、中間部材12に作用する慣性力が当該中間部材12の振動を妨げる抵抗力(主に回転する中間部材12に作用する遠心力に起因した摩擦力)よりも大きくなる。従って、ドライブ部材11にエンジンEGからのトルクが伝達されるのに伴って振動する中間部材12の減衰比ζは、値1未満になる。なお、一自由度系における中間部材12の減衰比ζは、ζ=C/(2・√(J2・(k1+k2))と表すことができる。ただし、“J2”は、中間部材12の慣性モーメント(本実施形態では、中間部材12およびタービンランナ5の慣性モーメントの合計値)であり、“k1”は、ドライブ部材11と中間部材12との間で並列に作用する複数の第1内側スプリングSP1の合成ばね定数であり、“k2”は、中間部材12とドリブン部材15の間で並列に作用する複数の第2内側スプリングSP2の合成ばね定数であり、“C”は、中間部材12の振動を妨げる当該中間部材12の単位速度あたりの減衰力(抵抗力)である。すなわち、中間部材12の減衰比ζは、少なくとも中間部材12の慣性モーメントJ2と第1および第2内側スプリングSP1,SP2の剛性k1,k2とに基づいて定まる。
また、上記減衰力Cは、次のようにして求めることができる。すなわち、上記減衰力Cによる損失エネルギSc、中間部材12の変位xをx=A・sin(ω12・t)とすれば(ただし、“A”は、振幅であり、“ω12”は、中間部材12の振動周波数である。)、Sc=π・C・A2・ω12と表すことができる。更に、中間部材12の1サイクルの振動における上述のヒステリシスHによる損失エネルギShは、中間部材12の変位xをx=A・sin(ω12・t)とすれば、Sh=2・H・Aと表すことができる。また、上記減衰力Cによる損失エネルギScとヒステリシスHによる損失エネルギShとが等しいと仮定すれば、上記減衰力Cは、C=(2・H)/(π・A・ω12)と表すことができる。
更に、一自由度系における中間部材12の固有振動数f12は、f12=1/2π・√((k1+k2)/J2)と表され、中間部材12を環状に形成することで慣性モーメントJ2が比較的大きくなることから、当該中間部材12の固有振動数f12は比較的小さくなる。従って、第1トルク伝達経路TP1では、第1および第2スプリングSP1,SP2の撓みが許容され、かつ内側スプリングSPiが撓んでいない際には、図5に示すように、ドライブ部材11の回転数が2つの固有振動数のうちの大きい方に対応した回転数に達した段階、すなわち第1共振よりも高回転側(高周波側)で、中間部材12がドライブ部材11およびドリブン部材15の双方と逆位相で振動することによる当該中間部材12の共振(第2共振、図4における共振点R2参照)を発生させることができる。
本発明者らは、上述のような特性を有するダンパ装置10の振動減衰効果をより向上させるべく鋭意研究・解析を行い、ダンパ装置10では、第1トルク伝達経路TP1における振動の振幅と、それと逆位相になる回転慣性質量ダンパ20における振動の振幅とを一致させることで、ドリブン部材15の振動を減衰させ得ることに着目した。そして、本発明者らは、ロックアップの実行によりエンジンEGからドライブ部材11にトルクが伝達された状態にあり、かつ内側スプリングSPiが撓んでいないダンパ装置10を含む振動系について、次式(2)のような運動方程式を構築した。ただし、式(2)において、“J1”は、ドライブ部材11の慣性モーメントであり、“J2”は、上述のように中間部材12の慣性モーメントであり、“J3”は、ドリブン部材15の慣性モーメントであり、“Ji”は、回転慣性質量ダンパ20の質量体であるリングギヤ25の慣性モーメントである。更に、“θ1”は、ドライブ部材11の捩れ角であり、“θ2”は、中間部材12の捩れ角であり、“θ3”は、ドリブン部材15の捩れ角である。また、“λ”は、回転慣性質量ダンパ20を構成する遊星歯車21のギヤ比(外歯ギヤ部15t(サンギヤ)のピッチ円直径/リングギヤ25の内歯25tのピッチ円直径)である。
更に、本発明者らは、入力トルクTが上記式(1)に示すように周期的に振動していると仮定すると共に、ドライブ部材11の捩れ角θ1、中間部材12の捩れ角θ2、およびドリブン部材15の捩れ角θ3が次式(3)に示すように周期的に応答(振動)すると仮定した。ただし、式(1)および(3)における“ω”は、入力トルクTの周期的な変動(振動)における角振動数であり、式(3)において、“Θ1”は、エンジンEGからのトルクの伝達に伴って生じるドライブ部材11の振動の振幅(振動振幅、すなわち最大捩れ角)であり、“Θ2”は、ドライブ部材11にエンジンEGからのトルクが伝達されるのに伴って生じる中間部材12の振動の振幅(振動振幅)であり、“Θ3”は、ドライブ部材11にエンジンEGからのトルクが伝達されるのに伴って生じるドリブン部材15の振動の振幅(振動振幅)である。かかる仮定のもと、式(1)および(3)を式(2)に代入して両辺から“sinωt”を払うことで、次式(4)の恒等式を得ることができる。
式(4)において、ドリブン部材15の振動振幅Θ3がゼロである場合、ダンパ装置10によりエンジンEGからの振動が理論上完全に減衰されてドリブン部材15よりも後段側の変速機TMやドライブシャフト等には理論上振動が伝達されないことになる。そこで、本発明者らは、かかる観点から、式(4)の恒等式を振動振幅Θ3について解くと共に、Θ3=0とすることで、次式(5)に示す条件式を得た。式(5)は、入力トルクTの周期的な変動における角振動数の二乗値ω2についての2次方程式である。当該角振動数の二乗値ω2が式(5)の2つの実数解の何れか(または重解)である場合、ドライブ部材11から第1トルク伝達経路TP1を介してドリブン部材15に伝達されるエンジンEGからの振動と、ドライブ部材11から回転慣性質量ダンパ20を介してドリブン部材15に伝達される振動とが互いに打ち消し合い、ドリブン部材15の振動振幅Θ3が理論上ゼロになる。
かかる解析結果より、中間部材12を有することで第1トルク伝達経路TP1を介して伝達されるトルクに2つのピークすなわち共振が発生するダンパ装置10では、図5に示すように、ドリブン部材15の振動振幅Θ3が理論上ゼロになる反共振点を合計2つ設定し得ることが理解されよう(図5におけるA1およびA2)。すなわち、ダンパ装置10では、第1トルク伝達経路TP1における振動の振幅と、それと逆位相になる回転慣性質量ダンパ20における振動の振幅とを第1トルク伝達経路TP1で発生する2つの共振に対応した2つのポイントで一致させることで、ドリブン部材15の振動を極めて良好に減衰させることが可能となる。
更に、ダンパ装置10では、ドライブ部材11の回転数が低回転側(低周波側)の反共振点A1の振動数に対応した回転数よりもある程度高まった段階で中間部材12の共振が発生し、第2スプリングSP2からドリブン部材15に伝達される振動の振幅は、図5において一点鎖線で示すように、ドライブ部材11(エンジンEG)の回転数が、比較的小さい中間部材12の固有振動数に対応した回転数に達する前に減少から増加に転じることになる。これにより、ドライブ部材11の回転数が増加するにつれて回転慣性質量ダンパ20からドリブン部材15に伝達される振動の振幅が徐々に増加しても(図5における二点鎖線参照)、当該回転慣性質量ダンパ20からドリブン部材15に伝達される振動が第2スプリングSP2からドリブン部材15に伝達される振動の少なくとも一部を打ち消す領域を拡げることが可能となる。この結果、ドライブ部材11の回転数が比較的低い領域におけるダンパ装置10の振動減衰性能をより向上させることができる。
ここで、走行用動力の発生源としてのエンジンEGを搭載する車両では、ロックアップクラッチ8のロックアップ回転数Nlup(エンジンEGの始動後に最初に当該エンジンEGとダンパ装置10とを連結する際の回転数であり、複数のロックアップ回転数の中で最も低いもの、すなわちドライブ部材11からトルク伝達経路TP1を介してドリブン部材15にトルクが伝達される回転数域の最小回転数)をより低下させて早期にエンジンEGからのトルクを変速機TMに機械的に伝達することで、エンジンEGと変速機TMとの間の動力伝達効率を向上させ、それによりエンジンEGの燃費をより向上させることができる。ただし、ロックアップ回転数Nlupの設定範囲となり得る500rpm〜1500rpm程度の低回転数域では、エンジンEGからロックアップクラッチ8を介してドライブ部材11に伝達される振動が大きくなり、特に3気筒あるいは4気筒エンジンといった省気筒エンジンを搭載した車両において振動レベルの増加が顕著となる。従って、ロックアップの実行時や実行直後に大きな振動が変速機TM等に伝達されないようにするためには、ロックアップが実行された状態でエンジンEGからのトルク(振動)を変速機TMへと伝達するダンパ装置10全体(ドリブン部材15)のロックアップ回転数Nlup付近の回転数域における振動レベルをより低下させる必要がある。
これを踏まえて、本発明者らは、ロックアップクラッチ8に対して定められたロックアップ回転数Nlupに基づいて、エンジンEGの回転数Neが500rpmから1500rpmの範囲(ロックアップ回転数Nlupの想定設定範囲)内にある際に低回転側(低周波側)の反共振点A1が形成されるようにダンパ装置10を構成することとした。上記式(5)の2つの解ω1およびω2は、2次方程式の解の公式から次式(6)および(7)のように得ることが可能であり、ω1<ω2が成立する。低回転側(低周波側)の反共振点A1の振動数(以下、「最小振動数」という)fa1は、次式(8)に示すように表され、高回転側(高周波側)の反共振点A2の振動数fa2(fa2>fa1)は、次式(9)に示すように表される。また、最小振動数fa1に対応したエンジンEGの回転数Nea1は、“n”をエンジンEGの気筒数とすれば、Nea1=(120/n)・fa1と表される。
従って、ダンパ装置10では、次式(10)を満たすように、複数の第1スプリングSP1の合成ばね定数k1、複数の第2スプリングSP2の合成ばね定数k2、中間部材12の慣性モーメントJ2、および回転慣性質量ダンパ20の質量体であるリングギヤ25の慣性モーメントJiが選択・設定される。すなわち、ダンパ装置10では、上記最小振動数fa1(およびロックアップ回転数Nlup)に基づいて、第1および第2スプリングSP1,SP2のばね定数k1,k2,と、中間部材12の慣性モーメントJ2と、リングギヤ25の慣性モーメントJiと、遊星歯車21のギヤ比λとが定められる。なお、ダンパ装置10の設計に際し、ピニオンギヤ23の慣性モーメントは上記式(2)〜(9)に示すように無視されても実用上差し支えないが、上記式(2)等において更にピニオンギヤ23の慣性モーメントが考慮されてもよい。そして、最小振動数fa1(およびロックアップ回転数Nlup)に基づいて、第1および第2スプリングSP1,SP2のばね定数k1,k2,と、中間部材12の慣性モーメントJ2と、リングギヤ25の慣性モーメントJiと、遊星歯車21のギヤ比λと、ピニオンギヤ23の慣性モーメントが定められてもよい。
このように、ドリブン部材15の振動振幅Θ3を理論上ゼロにし得る(より低下させ得る)低回転側の反共振点A1を500rpmから1500rpmまでの低回転数域(ロックアップ回転数Nlupの想定設定範囲)内に設定することで、図5に示すように、第1トルク伝達経路TP1で発生する共振のうち振動数が小さい一方(第1共振)をロックアップクラッチ8の非ロックアップ領域(図5における二点鎖線参照)に含まれるように、より低回転側(低周波側)にシフトさせることができる。この結果、より低い回転数でのロックアップ(エンジンEGとドライブ部材11との連結)を許容可能となる。
また、式(10)を満たすようにダンパ装置10を構成するに際しては、第1トルク伝達経路TP1で発生する低回転側(低周波側)の共振(共振点R1)の振動数が上記最小振動数fa1よりも小さく、かつできるだけ小さい値になるように、ばね定数k1,k2と、慣性モーメントJ2,Jiとを選択・設定すると好ましい。これにより、最小振動数fa1をより小さくし、より一層低い回転数でのロックアップを許容することができる。
更に、2つの反共振点A1,A2を設定できるようにすることで、単一の反共振点が設定される場合に比べて(図5における破線参照)、当該2つの反共振点A1,A2のうち、振動数(fa1)が最小となる反共振点A1をより低周波側にシフトさせることが可能となる。加えて、2つの反共振点A1,A2を設定できるようにすることで、図5からわかるように、2つの反共振点A1,A2間の比較的広い回転数域で、ドライブ部材11から第1トルク伝達経路TP1を介してドリブン部材15に伝達されるエンジンEGからの振動(図5における一点鎖線参照)を、ドライブ部材11から回転慣性質量ダンパ20を介してドリブン部材15に伝達される振動(図5における二点鎖線参照)によって良好に減衰させることが可能となる。
これにより、エンジンEGからの振動が大きくなりがちなロックアップ領域の低回転数域におけるダンパ装置10の振動減衰効果をより向上させることができる。なお、ダンパ装置10では、2つめの共振(第2共振、図5における共振点R2参照)が発生すると、中間部材12がドリブン部材15と逆位相で振動するようになり、図5において一点鎖線で示すように、第1トルク伝達経路TP1を経由してドライブ部材11からドリブン部材15に伝達される振動の位相と、回転慣性質量ダンパ20を経由してドライブ部材11からドリブン部材15に伝達される振動の位相とが一致することになる。
また、上述のように構成されるダンパ装置10においてロックアップ回転数Nlup付近での振動減衰性能をより向上させるためには、当該ロックアップ回転数Nlupと共振点R2に対応したエンジンEGの回転数とを適切に離間させる必要がある。従って、式(10)を満たすようにダンパ装置10を構成するに際しては、Nlup≦(120/n)・fa1(=Nea1)を満たすように、ばね定数k1,k2と、慣性モーメントJ2,Jiとを選択・設定すると好ましい。これにより、変速機TMの入力軸ISへの振動の伝達を良好に抑制しながらロックアップクラッチ8によるロックアップを実行すると共に、ロックアップの実行直後に、エンジンEGからの振動をダンパ装置10により極めて良好に減衰することが可能となる。
上述のように、反共振点A1の振動数(最小振動数)fa1に基づいてダンパ装置10を設計することにより、当該ダンパ装置10の振動減衰性能を極めて良好に向上させることが可能となる。更に、本発明者らの研究・解析によれば、ロックアップ回転数Nlupが例えば1000rpm前後の値に定められる場合、例えば900rpm≦(120/n)・fa1≦1200rpmを満たすようにダンパ装置10を構成することで、実用上極めて良好な結果が得られることが確認されている。
そして、ダンパ装置10において、ドライブ部材11は、当該ダンパ装置10の軸方向に沿って対向するように互いに連結されると共に遊星歯車21の複数のピニオンギヤ23を回転自在に支持するキャリヤとしての第1および第2入力プレート部材111,112を含む。また、ドリブン部材15は、それぞれ対応するピニオンギヤ23に噛合する複数の外歯ギヤ部15tを外周部(外周面)に有すると共に、第1および第2入力プレート部材111,112の軸方向における間に配置されて遊星歯車21のサンギヤとして機能する。更に、ダンパ装置10は、ドライブ部材11とドリブン部材15との相対回転を規制するストッパ17を有し、当該ストッパ17は、ドライブ部材11とドリブン部材15との相対回転に伴ってドライブ部材11の一部すなわち第1入力プレート部材111に当接するようにドリブン部材15の外周部に設けられたストッパ当接部15stを含む。
これにより、ドライブ部材11とドリブン部材15との間で大きなトルクが伝達される際に両者の相対回転を規制して、回転慣性質量ダンパ20からの慣性トルクを含む過大な荷重が第1および第2スプリングSP1,SP2並びに内側スプリングSPiに作用するのを抑制することができるので、これらの部材を良好に保護することが可能となる。更に、ストッパ当接部15stをサンギヤとしてのドリブン部材15の外周部に設けることで、ダンパ装置10の軸心からストッパ当接部15stまでの距離を、ダンパ装置10の軸心から第1および第2入力プレート部材111,112におけるピニオンギヤ23の支持部すなわちピニオンシャフト24の軸心までの距離に近づけることが可能となる。これにより、ストッパ当接部15stと第1入力プレート部材111(ドライブ部材11)とが当接してドライブ部材11とドリブン部材15との相対回転が規制される際に、複数のピニオンギヤ23を支持するドライブ部材11に加えられるモーメントを小さくしてドライブ部材11の変形等を良好に抑制することができる。この結果、回転慣性質量ダンパ20を含むダンパ装置10の耐久性をより向上させることが可能となる。
また、ドリブン部材15は、周方向に間隔をおいて形成された複数の外歯ギヤ部15tを外周部(外周面)に有し、ストッパ当接部15stは、隣り合う外歯ギヤ部15tの周方向における間に位置するようにドリブン部材15の外周部に設けられる。すなわち、回転慣性質量ダンパ20に含まれる遊星歯車21のサンギヤであるドリブン部材15において、外歯ギヤ部15tは、各ピニオンギヤ23の移動範囲に応じた範囲に形成されればよく、必ずしもドリブン部材15の外周部の全周に形成される必要は無い。従って、複数の外歯ギヤ部15tがドリブン部材15の外周部に周方向に間隔をおいて形成される場合には、ストッパ当接部15stを隣り合う外歯ギヤ部15tの周方向における間に設けることで、ストッパ当接部15stの設置に伴うドライブ部材11およびドリブン部材15ひいてはダンパ装置10の大型化や構造の複雑化を良好に抑制することが可能となる。
更に、ストッパ当接部15stは、第1および第2入力プレート部材111,112の一方、すなわち第1入力プレート部材111の軸方向延在部115a付近と当接可能となるようにドリブン部材15の外周部から軸方向に延出されている。これにより、ストッパ当接部15stの設置に伴うドライブ部材11およびドリブン部材15ひいてはダンパ装置10の大型化や構造の複雑化を極めて良好に抑制することが可能となる。ただし、ストッパ当接部15stは、第2入力プレート部材112(例えば軸方向延在部116a付近)と当接可能となるようにドリブン部材15の外周部から軸方向に延出されてもよい。
また、図6に示す発進装置1Xのダンパ装置10Xのように、複数のストッパ当接部15stは、第1および第2入力プレート部材111,112を連結するためのリベット113(連結部材)と当接可能となるようにドリブン部材15Xの外周部からダンパ装置10Xの径方向に延出されてもよい。すなわち、ダンパ装置10Xにおいて、各ストッパ当接部15stは、図7に示すように、ドリブン部材15Xの外周部の隣り合う外歯ギヤ部15tの周方向における間から、外歯ギヤ部15tよりも径方向外側に突出するように形成される。これにより、ドリブン部材15Xを平坦に形成することができるので、当該ドリブン部材15Xの加工コストを削減することが可能となる。
更に、ダンパ装置10,10Xにおいて、サンギヤとしてのドリブン部材15,15X、複数のピニオンギヤ23およびリングギヤ25は、ダンパ装置10,10Xの径方向からみて第1および第2スプリングSP1,SP2(並びに内側スプリングSPi)と軸方向に少なくとも部分的に重なり合う(図2,図3および図6参照)。これにより、ダンパ装置10の軸長の増加を抑制すると共に、回転慣性質量ダンパ20の質量体として機能するリングギヤ25の重量の増加を抑制しつつ、リングギヤ25をダンパ装置10の外周側に配置して当該リングギヤ25の慣性モーメント(イナーシャ)をより大きくし、慣性トルクをより効率よく得ることができる。
また、ダンパ装置10,10Xでは、遊星歯車21の作用により、質量体としてのリングギヤ25の回転数をドライブ部材11(キャリヤ)よりも増速させることができる。従って、回転慣性質量ダンパ20からドリブン部材15,15Xに付与される慣性トルクを良好に確保しつつ質量体としてのリングギヤ25の軽量化を図ると共に、回転慣性質量ダンパ20やダンパ装置10,10X全体の設計の自由度を向上させることが可能となる。ただし、リングギヤ25(質量体)の慣性モーメントの大きさによっては、回転慣性質量ダンパ20(遊星歯車21)は、リングギヤ25をドライブ部材11よりも減速させるように構成されてもよい。また、遊星歯車21は、ダブルピニオン式の遊星歯車であってもよい。更に、ドリブン部材15,15Xの外歯ギヤ部15t、ピニオンギヤのギヤ歯23tおよびリングギヤ25の内歯25tは、弦巻線状の歯筋を有するはすば歯であってもよく、軸心と平行に延びる歯筋を有するものであってもよい。
なお、上述のように、2つの反共振点A1,A2を設定できるようにすることで、反共振点A1をより低周波側にシフトさせることが可能となるが、ダンパ装置10,10Xが適用される車両や原動機等の諸元によっては、式(5)の重解(=1/2π・√{(k1+k2)/(2・J2)}を上記最小振動数fa1としてもよい。このように、式(5)の重解に基づいて第1および第2スプリングSP1,SP2のばね定数k1,k2,と中間部材12の慣性モーメントJ2とを定めても、図5における破線で示すように、エンジンEGからの振動が大きくなりがちなロックアップ領域の低回転数域におけるダンパ装置10,10Xの振動減衰効果を向上させることができる。
また、上記ダンパ装置10,10Xでは、第1および第2スプリングSP1,SP2として、同一の諸元(ばね定数)を有するものが採用されているが、これに限られるものではない。すなわち、第1および第2スプリングSP1,SP2のばね定数k1,k2は、互いに異なっていてもよい(k1>k2、またはk1<k2)。これにより、式(6)および(8)における√の項(判別式)の値をより大きくすることができるので、2つの反共振点A1,A2の間隔をより大きくして、低周波域(低回転数域)におけるダンパ装置の振動減衰効果をより向上させることが可能となる。この場合、ダンパ装置10,10Xには、第1および第2スプリングSP1,SP2のうちの一方(例えば、より低い剛性を有する一方)の撓みを規制するストッパが設けられてもよい。
更に、上記回転慣性質量ダンパ20のリングギヤ25は、内周面が内歯25tの歯先よりも僅かに径方向内側に位置するようにギヤ本体250に固定される2枚の側板251を含むが、これに限られるものではない。すなわち、リングギヤ25の各側板251(被支持部)は、内周面が内歯25tの歯底よりも径方向内側に位置すると共に、ピニオンギヤ23を支持するピニオンシャフト24よりも径方向外側に位置するように、ギヤ本体250に固定されればよく、ピニオンギヤ23(ギヤ本体230)の径方向支持部230sは、上述のものよりも縮径化されてもよい。すなわち、リングギヤ25の各側板251の内周面をピニオンシャフト24により近接させることで、ピニオンギヤ23によってリングギヤ25の軸方向の移動を極めて良好に規制することが可能となる。
また、ピニオンギヤ23によりリングギヤ25の軸方向の移動を規制するためには、リングギヤ25から側板251を省略すると共に、ピニオンギヤ23に、ギヤ歯23tの両側で径方向外側に突出する例えば環状に形成された一対の支持部を設けてもよい。この場合、ピニオンギヤ23の支持部は、少なくともリングギヤ25の内歯25tの側面と対向するように形成されるとよく、ギヤ本体250の側面の一部と対向するように形成されてもよい。
更に、タービンランナ5は、図1において二点鎖線で示すように、中間部材12に連結されてもよく、ドリブン部材15に連結されてもよい。また、回転慣性質量ダンパ20Yは、ドライブ部材11とドリブン部材15との相対回転に応じて回転する質量体として、タービンランナ5を含んでもよい。また、ダンパ装置10,10Xにおいて、中間部材12の第1および第2中間プレート部材121,122は、第1および第2入力プレート部材111,112を軸方向における両側から挟み込むように配置されて互いに連結されるが、これに限られるものでない。すなわち、第1および第2中間プレート部材121,122は、第1および第2入力プレート部材111,112の軸方向における間で、ドリブン部材15,15Xを軸方向における両側から挟み込むように配置されて互いに連結されてもよい。加えて、ダンパ装置10,10Xから中間部材12を省略すると共に、ドライブ部材11とドリブン15、15Xとの間に並列に作用する複数のスプリングを配置してもよい。
図8は、本開示の他の実施形態に係るダンパ装置10Yを含む発進装置1Yを示す概略構成図であり、図9は、発進装置1Yを示す断面図である。なお、発進装置1Yやダンパ装置10Yの構成要素のうち、上述の発進装置1やダンパ装置10等と同一の要素については同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
図8および図9に示す発進装置1Yは、単板油圧式クラッチとして構成されたロックアップクラッチ8Yを含む。ロックアップクラッチ8Yは、フロントカバー3の内部かつ当該フロントカバー3のエンジンEG側の内壁面近傍に配置されると共にダンパハブ7に対して回転自在かつ軸方向に移動自在に嵌合されるロックアップピストン80を有する。ロックアップピストン80の外周側かつフロントカバー3側の面には、摩擦材88が貼着されており、ロックアップピストン80とフロントカバー3との間には、作動油供給路や入力軸ISに形成された油路を介して図示しない油圧制御装置に接続されるロックアップ室89が画成される。かかる発進装置1Yでは、図示しない油圧制御装置により流体室9内の油圧をロックアップ室89内の油圧よりも高くすることで、ロックアップクラッチ8Yを係合させてダンパ装置10を介してフロントカバー3とダンパハブ7とを連結することができる。また、図示しない油圧制御装置によりロックアップ室89内の油圧を流体室9内の油圧よりも高くすることで、ロックアップクラッチ8Yを解放してフロントカバー3とダンパハブ7との連結を解除することができる。更に、発進装置1Yにおいて、タービンランナ5のタービンシェル50の内周部は、複数のリベットを介してタービンハブ52に固定されている。タービンハブ52は、ダンパハブ7により回転自在に支持され、当該タービンハブ52(タービンランナ5)の発進装置1Yの軸方向における移動は、ダンパハブ7と、当該ダンパハブ7に装着されるスナップリングにより規制される。
また、発進装置1Yのダンパ装置10Yは、回転要素として、ドライブ部材(入力要素)11Yと、第1中間部材(第1中間要素)12Yと、第2中間部材(第2中間要素)14と、ドリブン部材(出力要素)15Yとを含む。更に、ダンパ装置10Yは、トルク伝達要素(トルク伝達弾性体)として、ドライブ部材11Yと第1中間部材12Yとの間でトルクを伝達する複数(本実施形態では、例えば3個)の第1スプリング(第1弾性体)SP1′と、第1中間部材12Yと第2中間部材14との間でトルクを伝達する複数(本実施形態では、例えば3個)の第2スプリング(第2弾性体)SP2′と、第2中間部材14とドリブン部材15Yとの間でトルクを伝達する複数(本実施形態では、例えば9個)の内側スプリング(第3弾性体)SPi′とを含む。
複数の第1スプリングSP1′、第1中間部材12Y、複数の第2スプリングSP2′、第2中間部材14、および複数の内側スプリングSPi′は、ドライブ部材11Yとドリブン部材15Yとの間でトルク伝達経路TPを構成する。すなわち、ダンパ装置10Yは、実質的に、図1に示すダンパ装置10において、並列に作用する複数の内側スプリングSPi′をドリブン部材15と変速機TMの入力軸ISとの間に配置したものに相当する。ダンパ装置10Yにおいて、内側スプリングSPi′としては、第1および第2スプリングSP1′,SP2′のばね定数(剛性)よりも大きいばね定数(剛性)を有するものが採用されている。
ダンパ装置10Yのドライブ部材11Yは、ダンパ装置10,10Xのドライブ部材11と基本的に同一の構造を有するものであり、回転慣性質量ダンパ20Yの遊星歯車21のキャリヤとして機能する。また、ドライブ部材11Yは、図9に示すように、ロックアップクラッチ8Yのロックアップピストン80に連結される。すなわち、ドライブ部材11Yの第1入力プレート部材111Yは、ピニオンギヤ支持部115の外周部に周方向に間隔をおいて形成された複数の係合凹部115rを有し、各係合凹部115rには、ロックアップピストン80から周方向に間隔をおいて軸方向に延出された複数の係合凸部80eの対応する何れかが嵌合される。これにより、ドライブ部材11Yは、ロックアップピストン80と一体に回転可能となり、ロックアップクラッチ8の係合により、フロントカバー3とダンパ装置10Yのドライブ部材11Yとが連結されることになる。
図9および図10に示すように、ドライブ部材11Yの第1入力プレート部材111Yの内周部には、それぞれ対応する内側スプリングSPi′をフロントカバー3側で径方向外側から支持(ガイド)する複数(本実施形態では、例えば9個)のスプリング支持部111sが周方向に間隔をおいて(等間隔に)形成されている。また、ドライブ部材11Yの第2入力プレート部材112Yの内周部には、それぞれ対応する内側スプリングSPi′をタービンランナ5側で径方向外側から支持(ガイド)する複数(本実施形態では、例えば9個)のスプリング支持部112sが周方向に間隔をおいて(等間隔に)形成されている。更に、第1および第2入力プレート部材111Y,112Yからは、ダンパ装置10等における内側スプリング収容窓111wi,112wiが省略されている。
そして、ドライブ部材11Yは、ダンパ装置10Yの軸心側で、タービンシェル50と共にタービンハブ52に複数のリベットを介して固定された環状のタービン連結部材55Yに連結される。すなわち、図11に示すように、第2入力プレート部材112Yは、隣り合うスプリング支持部112sの間から径方向内側に突出する複数(本実施形態では、例えば9個)の係合凸部112eを有する。各係合凸部112eは、タービン連結部材55Yの外周部に周方向に間隔をおいて形成された複数の係合凹部55rの何れかに嵌合される。これにより、ドライブ部材11Yとタービンランナ5とは、一体に回転するように連結される。
ダンパ装置10Yの第1中間部材12Yは、ダンパ装置10,10Xの中間部材12と基本的に同一の構造を有するものであり、第1中間部材12Yの減衰比ζは、値1未満である。一方、ダンパ装置10Yの第2中間部材14は、ダンパハブ7に固定されない点を除いて、ダンパ装置10,10Xのドリブン部材15と基本的に同一の構造を有するものである。第2中間部材14の減衰比ζも、値1未満である。
第2中間部材14は、板状の環状部材として構成されており、第1および第2入力プレート部材111Y,112Yの軸方向における間に配置されると共に、ダンパハブ7により回転自在に支持(調心)される。また、第2中間部材14の外周面(外周部)には、複数の外歯ギヤ部14tが、第1スプリングSP1′、第2スプリングSP2′および内側スプリングSPi′よりも径方向外側に位置するように周方向に間隔をおいて(等間隔に)形成されており、第2中間部材14は、遊星歯車21のサンギヤとして機能する。なお、外歯ギヤ部14tは、第2中間部材14の外周部の全体に形成されてもよい。
図9および図10に示すように、第2中間部材14は、それぞれ円弧状に延びると共に周方向に間隔をおいて(等間隔に)配設された複数(本実施形態では、例えば3個)の外側スプリング収容窓14woと、各外側スプリング収容窓14woの径方向内側に周方向に間隔をおいて(等間隔に)配設された複数(本実施形態では、例えば9個)の内側スプリング収容窓14wiと、複数(本実施形態では、例えば3個)の外側スプリング当接部14coと、複数(本実施形態では、例えば9個)の内側スプリング当接部14ciとを有する。外側スプリング当接部14coは、周方向に沿って互いに隣り合う外側スプリング収容窓14woの間に1個ずつ設けられ、対応する第2スプリングSP2′の端部と当接する。内側スプリング当接部14ciは、隣り合う内側スプリング収容窓14wiの周方向における間に1個ずつ設けられる。また、各内側スプリング収容窓14wiは、内側スプリングSPi′の自然長に応じた周長を有する。
更に、第2中間部材14の外周部には、ドライブ部材11Yと第2中間部材14との相対回転に伴って当該ドライブ部材11Yの一部と当接可能となるように、複数(本実施形態では、例えば3個)のストッパ当接部14stが周方向に間隔をおいて形成されている。各ストッパ当接部14stは、第1入力プレート部材111Yの軸方向延在部115a(図4参照)の根元付近と当接可能となるように、隣り合う外歯ギヤ部14tの周方向における間で第2中間部材14の外周部から軸方向に延出されている。ダンパ装置10Yにおいて、各ストッパ当接部14stは、ドライブ部材11Yと第2中間部材14とが相対回転するのに伴って、対応する第1入力プレート部材111の軸方向延在部115aに接近し、入力トルクが上記トルクT1に達してドライブ部材11Yの第2中間部材14に対する捩れ角が所定角度θref以上になると、対応する第1入力プレート部材111Yの一部(軸方向延在部115aの根元付近)に当接する。このように、ストッパ当接部14stおよび第1入力プレート部材111Yは、ドライブ部材11Yと第2中間部材14との相対回転、並びに第1および第2スプリングSP1′,SP2′の撓みを規制するストッパ17Yを構成する。
ドリブン部材15Yは、ダンパ装置10の軸方向に間隔をおいて互いに対向するように複数のリベットを介してダンパハブ7に固定される2枚の環状プレート150を含む。各環状プレート150は、ダンパハブ7に固定される内周部から周方向に間隔をおいて(等間隔に)径方向外側に突出する複数(本実施形態では、例えば9個)のスプリング当接部15cを有する。
各内側スプリングSPi′は、第2中間部材14の対応する内側スプリング収容窓14wi内に配置されると共に、ドリブン部材15Yの隣り合うスプリング当接部15cの間に配置される。ダンパ装置10Yの取付状態において、第2中間部材14の各内側スプリング当接部14ciと、ドリブン部材15Yの各スプリング当接部15cとは、周方向に隣り合う内側スプリングSPi′の間で両者の端部と当接する。更に、各内側スプリングSPi′のフロントカバー3側の側部は第1入力プレート部材111のスプリング支持部111sにより径方向外側から支持(ガイド)され、各内側スプリングSPi′のタービンランナ5側の側部は、第2入力プレート部材112のスプリング支持部112sにより径方向外側から支持(ガイド)される。
これにより、各内側スプリングSPi′は、図9および図10に示すように、流体室9内の内周側領域に配置され、第1および第2スプリングSP1′,SP2′により包囲される。この結果、ダンパ装置10Yひいては発進装置1Yの軸長をより短縮化すると共に、各内側スプリングSPi′に作用する遠心力を低下させ、当該遠心力により各内側スプリングSPi′がスプリング支持部111s,112sや第2中間部材14に押し付けられることで発生する摩擦力(摺動抵抗)を小さくすることが可能となる。
更に、第2中間部材14の内周部は、2枚の環状プレート150の軸方向における間で、ダンパハブ7により回転自在に支持される。図10に示すように、第2中間部材14の内周部には、複数の第2ストッパ当接部14zが径方向内側に突出するように周方向に間隔をおいて(等間隔に)形成されている。各第2ストッパ当接部14zは、ダンパハブ7の外周面に周方向に間隔をおいて形成された複数のストッパ凹部7zの対応する何れかに遊嵌される。各ストッパ凹部7zの周長は、各第2ストッパ当接部14zの周長よりも長く定められており、各第2ストッパ当接部14zは、第2中間部材14とドリブン部材15Yとの相対回転に伴って対応するストッパ凹部7zを画成する一対の壁部の一方に当接する。ダンパ装置10Yにおいて、各第2ストッパ当接部14zは、第2中間部材14とドリブン部材15Y(ダンパハブ7)とが相対回転するのに伴って、対応するストッパ凹部7zを画成する一方の壁部に接近し、入力トルクあるいは車軸側からドリブン部材15に付与されるトルク(被駆動トルク)が最大捩れ角θmaxに対応したトルクT2に達すると、対応するストッパ凹部7zを画成する一方の壁部に当接する。このように、第2ストッパ当接部14zおよびストッパ凹部7zは、第2中間部材14とドリブン部材15Yとの相対回転と、内側スプリングSPi′の撓みを規制する第2のストッパ18を構成する。
上述のようなダンパ装置10Yを含む発進装置1Yでは、ロックアップクラッチ8Yによるロックアップが解除されている際、図8からわかるように、エンジンEGからフロントカバー3に伝達されたトルク(動力)が、ポンプインペラ4、タービンランナ5、ドライブ部材11Y、第1スプリングSP1′、第1中間部材12Y、第2スプリングSP2′、第2中間部材14、内側スプリングSPi′、ドリブン部材15Y、ダンパハブ7という経路を介して変速機TMの入力軸ISへと伝達される。これに対して、発進装置1のロックアップクラッチ8Yによりロックアップが実行されると、エンジンEGからフロントカバー3およびロックアップクラッチ8Yを介してドライブ部材11Yに伝達されたトルクは、入力トルクが上記トルクT1に達するまで、複数の第1スプリングSP1′、第1中間部材12Y、複数の第2スプリングSP2′、第2中間部材14および複数の内側スプリングSPi′を含むトルク伝達経路TPと、回転慣性質量ダンパ20Yとを介してドリブン部材15Yおよびダンパハブ7に伝達される。この間、ドライブ部材11Yと第2中間部材14とに連結された回転慣性質量ダンパ20Yは、第2中間部材14および内側スプリングSPi′を介してドリブン部材15Yに主に慣性トルクを伝達する。
また、ドライブ部材11Yへの入力トルクが上記トルクT1以上になると、ストッパ17Yによってドライブ部材11Yと第2中間部材14との相対回転並びに第1および第2スプリングSP1′,SP2′の撓みが規制される。これにより、当該入力トルクが上記トルクT2に達するまで、ドライブ部材11Yに伝達されたトルクは、一体に回転するドライブ部材11、第1スプリングSP1′、第1中間部材12Y、第2スプリングSP2′、第2中間部材14および回転慣性質量ダンパ20Yの構成部材、複数の内側スプリングSPi′、ドリブン部材15Yおよびダンパハブ7を介して変速機TMの入力軸ISへと伝達される。従って、ダンパ装置10Yは、2段階(2ステージ)の減衰特性を有することになる。更に、ドライブ部材11Yへの入力トルクが上記トルクT2以上になった場合には、第2のストッパ18により第2中間部材14とドリブン部材15Yとの相対回転、および内側スプリングSPi′の撓みが記載される。これにより、ドライブ部材11Yからダンパハブ7までの要素が一体となって回転することになる。
そして、ダンパ装置10Yにおいて、回転慣性質量ダンパ20Yは、第1および第2スプリングSP1′,SP2′と第1中間部材12Yと並列に設けられる。従って、ダンパ装置10Yにおいても、少なくとも第1および第2スプリングSP1′,SP2′の撓みが許容された状態のドライブ部材11Yから第2中間部材14までのトルク伝達経路に対して2つ(複数)の固有振動数を設定すると共に、第1共振よりも高回転側(高周波側)で、第1中間部材12Yの共振(第2共振)を発生させることができる。この結果、ダンパ装置10Yにおいても、ドリブン部材15Yの振動振幅が理論上ゼロになる反共振点を合計2つ設定することが可能となる。
また、ダンパ装置10Yは、特に後輪駆動用の変速機TMと組み合わせて用いられると好適である。すなわち、入力軸ISの端部(発進装置1Y側の端部)から図示しない出力軸の端部(車輪側の端部)までの長さが長くなる後輪駆動用の変速機TMでは、ダンパ装置10Yのドリブン部材15Yに連結される入力軸ISや出力軸(更には中間軸)の剛性が低下することから、これらの軸部材の慣性モーメントから定まる固有振動数(共振周波数)が回転慣性質量ダンパ20Y全体の慣性モーメントの影響により小さくなってしまう(低周波化してしまう)。このため、本来ドライブ部材11Y(エンジンEG)の回転数が高い状態で発生する共振が低回転域で発生して顕在化してしまうおそれがある。これに対して、回転慣性質量ダンパ20Yをダンパ装置10Yのドライブ部材11Yと第2中間部材14とに連結することで、回転慣性質量ダンパ20Yと、ドリブン部材15Yに連結される変速機TMの入力軸ISとの間に内側スプリングSPi′を介在させ、両者を実質的に切り離すことができる。これにより、2つの反共振点の設定を可能としつつ、ドリブン部材15Yに連結される軸部材等の慣性モーメントから定まる固有振動数に対する回転慣性質量ダンパ20Y全体の慣性モーメントの影響を極めて良好に低減化することが可能となる。
ただし、ダンパ装置10Yは、前輪駆動車両用の変速機TMと組み合わされてもよいことはいうまでもない。ダンパ装置10Yと前輪駆動車両用の変速機TMと組み合わせた場合においても、ドリブン部材15Yに連結される軸部材等の慣性モーメントから定まる固有振動数に対する回転慣性質量ダンパ20Y全体の慣性モーメントの影響を極めて良好に低減化すると共に、更なる低剛性化によりダンパ装置10Yの振動減衰性能を向上させることが可能となる。また、ダンパ装置10Yは、例えば第1中間部材12Yと第2中間部材14との間に更なる中間部材およびスプリング(弾性体)を含んでもよい。更に、タービンランナ5は、図8において二点鎖線で示すように、第1および第2中間部材12Y,14の何れか一方に連結されてもよく、ドリブン部材15Yに連結されてもよい。
また、回転慣性質量ダンパ20Yは、ドライブ部材11Yと第2中間部材14(ドリブン部材15Y)との相対回転に応じて回転する質量体として、タービンランナ5を含んでもよい。更に、第2中間部材14のストッパ当接部14stは、第2入力プレート部材112(例えば軸方向延在部116a付近)と当接可能となるように第2中間部材14の外周部から軸方向に延出されてもよい。また、複数のストッパ当接部14stは、第1および第2入力プレート部材111Y,112Yを連結するためのリベット(連結部材)と当接可能となるように第2中間部材14の外周部からダンパ装置10Yの径方向に延出されてもよい。更に、第2のストッパ18は、図8において二点鎖線で示すように、ドライブ部材11Yとドリブン部材15Yとの相対回転を規制するものであってもよい。また、ダンパ装置10Yにおいて、中間部材12Yの第1および第2中間プレート部材121,122は、第1および第2入力プレート部材111Y,112Yを軸方向における両側から挟み込むように配置されて互いに連結されるが、これに限られるものでない。すなわち、中間部材12Yの第1および第2中間プレート部材121,122は、第1および第2入力プレート部材111Y,112Yの軸方向における間で、第2中間部材14を軸方向における両側から挟み込むように配置されて互いに連結されてもよい。加えて、ダンパ装置10Yから第1中間部材12Yを省略すると共に、ドライブ部材11Yと第2中間部材14との間に並列に作用する複数のスプリングを配置してもよい。
図12は、本開示の更に他の実施形態に係るダンパ装置10Zを含む発進装置1Zの要部を示す断面図である。なお、発進装置1Zやダンパ装置10Zの構成要素のうち、上述の発進装置1,1Y等やダンパ装置10、10Y等と同一の要素については同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
図12に示す発進装置1Zのダンパ装置10Zは、エンジンからのトルクが伝達されるドライブ部材11Zと、ドリブン部材15Zと、ドライブ部材11Zとドリブン部材15Zとの間でトルクを伝達する複数の外側スプリングSPoおよび複数の内側スプリングSpiと、ドライブ部材11Zおよびドリブン部材15Zの相対回転に応じて回転する質量体としてのリングギヤ25を有する回転慣性質量ダンパ20Zとを含む。ダンパ装置10Zにおいて、内側スプリングSPiは、ドライブ部材11Zへの入力トルクが予め定められたトルク(第1の閾値)T1に達してドライブ部材11Zのドリブン部材15Zに対する捩れ角が所定角度以上になってから、外側スプリングSPoと並列に作用する。これにより、ダンパ装置10Zは、2段階(2ステージ)の減衰特性を有することになる。
ドライブ部材11Zは、ダンパ装置10Zの軸方向に沿って対向するように複数のリベット117を介して互いに連結されると共に回転慣性質量ダンパ20Zの複数のピニオンギヤ23を回転自在に支持する環状の第1および第2入力プレート部材(第1および第2回転支持部材)111Z,112Zを含む。第1入力プレート部材111Zは、それぞれ対応する外側スプリングSPoの端部と当接する複数の外側スプリング当接部111coと、それぞれ対応する内側スプリングSPiの端部と当接する複数の内側スプリング当接部111ciとを有する。また、第1入力プレート部材111Zは、ピニオンギヤ支持部115の外周部に周方向に間隔をおいて形成された複数の係合凹部115rを有し、各係合凹部115rには、ロックアップピストン80から周方向に間隔をおいて軸方向に延出された複数の係合凸部80eの対応する何れかが嵌合される。第2入力プレート部材112Zは、それぞれ対応する外側スプリングSPoの端部と当接する複数の外側スプリング当接部112coと、それぞれ対応する内側スプリングSPiの端部と当接する複数の内側スプリング当接部112ciとを有し、ダンパハブ7により回転自在に支持される。
ドリブン部材15Zは、複数のリベットを介してダンパハブ7に固定されると共に、第1および第2入力プレート部材111Z,112Zの軸方向における間に配置される。図12に示すように、ドリブン部材15Zは、それぞれ対応する外側スプリングSPoの端部と当接する複数の外側スプリング当接部15coと、それぞれ対応する内側スプリングSPiの端部と当接する複数の内側スプリング当接部15ciとを有する。また、ドリブン部材15Zは、それぞれ回転慣性質量ダンパ20Zの複数のピニオンギヤ23の何れかに噛合するように周方向に間隔をおいて外周部に形成された複数の外歯ギヤ部15tを有し、回転慣性質量ダンパ20Zのサンギヤとして機能する。
更に、ダンパ装置10Zは、ドライブ部材11Zおよびドリブン部材15Zの相対回転を規制するストッパ17Zを含む。図12の例において、ストッパ17Zは、隣り合う外歯ギヤ部15tの周方向における間に位置するようにドリブン部材15Zの外周部に設けられた複数のストッパ当接部15stを有する。各ストッパ当接部15stは、ドライブ部材11Zおよびドリブン部材15Zの相対回転に伴って、ドライブ部材11Zの第1および第2入力プレート部材111Z,112Zを連結するリベット117に装着されたカラー118に当接する。
かかるダンパ装置10Zでは、ドライブ部材11Zとドリブン部材15Zとの間で大きなトルクが伝達される際に両者の相対回転を規制して、回転慣性質量ダンパ20Zからの慣性トルクを含む過大な荷重が外側スプリングSPoおよび内側スプリングSPiに作用するのを抑制することができるので、当該外側スプリングSPoおよび内側スプリングSPiを良好に保護することが可能となる。更に、ストッパ当接部15stをドリブン部材15Z(サンギヤ)の外周部に設けることで、ダンパ装置10Zの軸心からストッパ当接部15stまでの距離を、ダンパ装置10Zの軸心からドライブ部材11Zのピニオンギヤ支持部115,116までの距離に近づけることが可能となる。これにより、ストッパ当接部15stとドライブ部材11Zとが当接してドライブ部材11Zおよびドリブン部材15Zの相対回転が規制される際に、複数のピニオンギヤ23を支持するドライブ部材11Z(第1および第2入力プレート部材111Z,112Z)に加えられるモーメントを小さくして当該ドライブ部材11Zの変形等を良好に抑制することができる。この結果、回転慣性質量ダンパ20Zを含むダンパ装置10Zの耐久性をより向上させることが可能となる。
図13は、本開示の他の実施形態に係るダンパ装置10Vを含む発進装置1Vの要部を示す断面図である。なお、発進装置1Vやダンパ装置10Vの構成要素のうち、上述の発進装置1,1Y等やダンパ装置10、10Y等と同一の要素については同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
図13に示す発進装置1Vのダンパ装置10Vは、エンジンからのトルクが伝達されるドライブ部材11Vと、中間部材12Vと、ドリブン部材15Vと、ドライブ部材11Vと中間部材12Vとの間でトルクを伝達する複数の第1スプリングSP1vと、中間部材12Vとドリブン部材15Vとの間でトルクを伝達する複数の第2スプリングSP2vと、ドライブ部材11Vおよび中間部材12Vの相対回転に応じて回転する質量体としてのリングギヤ25を有する回転慣性質量ダンパ20Vとを含む。
ドライブ部材11Vは、ダンパ装置10Vの軸方向に沿って対向するように複数のリベット117を介して互いに連結されると共に回転慣性質量ダンパ20Vの複数のピニオンギヤ23を回転自在に支持する環状の第1および第2入力プレート部材(第1および第2回転支持部材)111V,112Vを含む。第1入力プレート部材111Vは、それぞれ対応する第1スプリングSP1vの端部と当接する複数のスプリング当接部111cと、それぞれロックアップピストン80の対応する係合凸部80eが嵌合される複数の係合凹部115rとを有する。第2入力プレート部材112Vは、それぞれ対応する第1スプリングSP1vの端部と当接する複数のスプリング当接部112cを有する。
中間部材12Vは、第1および第2入力プレート部材111V,112Vの軸方向における間に配置される。図13に示すように、中間部材12Vは、それぞれ対応する第1スプリングSP1vの端部と当接する複数の外側スプリング当接部12coと、それぞれ対応する第2スプリングSP2vの端部と当接する複数の内側スプリング当接部12ciとを有する。また、中間部材12Vは、それぞれ回転慣性質量ダンパ20Vの複数のピニオンギヤ23の何れかに噛合するように周方向に間隔をおいて外周部に形成された複数の外歯ギヤ部12tを有し、回転慣性質量ダンパ20Vのサンギヤとして機能する。ドリブン部材15Vは、中間部材12Vを軸方向における両側から挟み込むようにダンパハブ7に固定される第1および第2ドリブンプレート部材151,152を含む。第1および第2ドリブンプレート部材151,152は、それぞれ対応する第2スプリングSP2vの端部と当接する複数のスプリング当接部(図示省略)を有する。
更に、ダンパ装置10Vは、ドライブ部材11Vおよび中間部材12Vの相対回転を規制するストッパ17Vを含む。図13の例において、ストッパ17Vは、隣り合う外歯ギヤ部12tの周方向における間に位置するように中間部材12Vの外周部に設けられた複数のストッパ当接部12stを有する。各ストッパ当接部12stは、ドライブ部材11Vおよび中間部材12Vの相対回転に伴って、ドライブ部材11Vの第1および第2入力プレート部材111V,112Vを連結するリベット117に装着されたカラー118に当接する。
かかるダンパ装置10Vでは、ドライブ部材11Vと中間部材12Vとの間で大きなトルクが伝達される際に両者の相対回転を規制して、回転慣性質量ダンパ20Vからの慣性トルクを含む過大な荷重が第1スプリングSP1vに作用するのを抑制することができるので、当該第1スプリングSP1vを良好に保護することが可能となる。更に、ストッパ当接部12stを中間部材12V(サンギヤ)の外周部に設けることで、ダンパ装置10Vの軸心からストッパ当接部12stまでの距離を、ダンパ装置10Vの軸心からドライブ部材11Vにおけるピニオンギヤ支持部115,116までの距離に近づけることが可能となる。これにより、ストッパ当接部12stとドライブ部材11Vとが当接してドライブ部材11Vおよび中間部材12Vの相対回転が規制される際に、複数のピニオンギヤ23を支持するドライブ部材11V(第1および第2回転支持部材111V,112V)に加えられるモーメントを小さくして当該ドライブ部材11Vの変形等を良好に抑制することができる。この結果、回転慣性質量ダンパ20Vを含むダンパ装置10Vの耐久性をより向上させることが可能となる。
以上説明したように、本開示のダンパ装置は、第1、第2および第3回転要素(11,11Y,12,12Y,15,15X,14)と、前記第1および第2回転要素(11,11Y,12,12Y)の間でトルクを伝達する第1弾性体(SP1,SP1′)と、前記第2および第3回転要素(12,12Y,15,15X,14)の間でトルクを伝達する第2弾性体(SP2,SP2′)と、前記第1および第3回転要素(11,11Y,15,15X,14)の相対回転に応じて回転する質量体(25)を有する回転慣性質量ダンパ(20,20Y)とを含むダンパ装置(10,10X,10Y)であって、前記第1および第3回転要素(11,11Y,15,15X,14)の相対回転を規制するストッパ(17,17Y)を備え、前記回転慣性質量ダンパ(20,20Y)は、サンギヤ(15,15X,15t,14,14t)、前記サンギヤ(15,15X,15t,14,14t)に噛合する複数のピニオンギヤ(23)、および前記質量体として機能するリングギヤ(25)を有する遊星歯車(21)を含み、前記第1回転要素(11,11Y)は、前記ダンパ装置(10,10X,10Y)の軸方向に沿って対向するように互いに連結されると共に前記複数のピニオンギヤ(23)を回転自在に支持する第1および第2回転支持部材(111,112、111Y,112Y)を含み、前記第3回転要素(15,15X,14)は、前記複数のピニオンギヤ(23)に噛合する外歯ギヤ部(15t,14t)を外周部に有すると共に、前記第1および第2回転支持部材(111,112、111Y,112Y)の前記軸方向における間に配置されて前記サンギヤとして機能し、前記ストッパ(17、17Y)は、前記第1および第3回転要素(11,11Y,15,15X,14)の相対回転に伴って前記第1回転要素(11,11Y)の一部に当接するように前記第3回転要素(15,15X,14)の前記外周部に設けられた当接部(15st,14st)を含むものである。
このダンパ装置の第1回転要素は、当該ダンパ装置の軸方向に沿って対向するように互いに連結されると共に遊星歯車の複数のピニオンギヤを回転自在に支持する第1および第2回転支持部材を含む。また、第3回転要素は、複数のピニオンギヤに噛合する外歯ギヤ部を外周部に有すると共に、第1および第2回転支持部材の軸方向における間に配置されて遊星歯車のサンギヤとして機能する。更に、このダンパ装置は、第1および第3回転要素の相対回転を規制するストッパを有し、当該ストッパは、第1および第3回転要素の相対回転に伴って第1回転要素の一部に当接するように第3回転要素の外周部に設けられた当接部を含む。
これにより、第1回転要素と第3回転要素との間で大きなトルクが伝達される際に両者の相対回転を規制して、回転慣性質量ダンパからの慣性トルクを含む過大な荷重が第1および第2弾性体に作用するのを抑制することができるので、第1および第2弾性体を良好に保護することが可能となる。更に、ストッパの当接部を第3回転要素(サンギヤ)の外周部に設けることで、ダンパ装置の軸心から当接部までの距離を、ダンパ装置の軸心から第1回転要素におけるピニオンギヤの支持部までの距離に近づけることが可能となる。これにより、当接部と第1回転要素とが当接して第1および第3回転要素の相対回転が規制される際に、複数のピニオンギヤを支持する第1回転要素(第1および第2回転支持部材)に加えられるモーメントを小さくして第1回転要素の変形等を良好に抑制することができる。この結果、回転慣性質量ダンパを含むダンパ装置の耐久性をより向上させることが可能となる。
また、前記第3回転要素(15,15X,14)は、前記外歯ギヤ部(15t,14t)を複数有してもよく、前記複数の外歯ギヤ部(15t,14t)は、前記外周部に周方向に間隔をおいて形成されてもよく、前記当接部(15st,14st)は、隣り合う前記外歯ギヤ部(15t,14t)の前記周方向における間に位置するように前記外周部に設けられてもよい。すなわち、回転慣性質量ダンパに含まれる遊星歯車のサンギヤにおいて、外歯ギヤ部は、各ピニオンギヤの移動範囲に応じた範囲に形成されればよく、必ずしも当該サンギヤ(第3回転要素)の外周部の全周に形成される必要は無い。従って、複数の外歯ギヤ部が第3回転要素の外周部に周方向に間隔をおいて形成される場合には、ストッパの当接部を隣り合う外歯ギヤ部の周方向における間に設けることで、当接部(ストッパ)の設置に伴う第1および第3回転要素ひいてはダンパ装置の大型化や構造の複雑化を良好に抑制することが可能となる。
更に、前記当接部(15st,14st)は、前記第1および第2回転支持部材(111,112)の何れか一方と当接可能となるように前記第3回転要素(15,15X,14)の外周部から前記軸方向に延出されてもよい。これにより、当接部(ストッパ)の設置に伴う第1および第3回転要素ひいてはダンパ装置の大型化や構造の複雑化を極めて良好に抑制することが可能となる。
また、前記当接部(15st)は、前記第1および第2回転支持部材(111,112)を連結するための連結部材(113)と当接可能となるように前記第3回転要素(15X)の前記外周部から前記ダンパ装置(10X)の径方向に延出されてもよい。これにより、第3回転要素を平坦に形成することができるので、当該第3回転要素の加工コストを削減することが可能となる。
更に、前記ダンパ装置(10,10X)は、入力要素(11)、中間要素(12)および出力要素(15,15X)を含んでもよく、前記第1回転要素は、前記入力要素(11)であってもよく、前記第2回転要素は、前記中間要素(12)であってもよく、前記第3回転要素は、前記出力要素(15,15X)であってもよい。かかるダンパ装置では、入力要素から第1および第2弾性体を介して出力要素に伝達される振動と、入力要素から回転慣性質量ダンパを介して出力要素に伝達される振動とが理論上互いに打ち消し合うことになる反共振点を2つ設定することが可能となる。従って、2つの反共振点の振動数を当該ダンパ装置により減衰すべき振動(共振)の周波数に一致させる(より近づける)ことで、ダンパ装置の振動減衰性能を極めて良好に向上させることが可能となる。
この場合、前記ダンパ装置(10,10X)は、前記第1および第2弾性体(SP1,SP2)と並列に作用すると共に前記入力要素(11)と前記出力要素(15,15X)との間でトルクを伝達する第3弾性体(SPi)を更に備えてもよい。これにより、ダンパ装置に2段階の減衰特性を持たせることが可能となる。
また、前記ダンパ装置(10Y)は、入力要素(11Y)、第1中間要素(12Y)、第2中間要素(14)、出力要素(15Y)、および前記第2中間要素(14)と前記出力要素(15)との間でトルクを伝達する第3弾性体(SPi′)とを含んでもよく、前記第1回転要素は、前記入力要素(11Y)であってもよく、前記第2回転要素は、前記第1中間要素(12Y)であってもよく、前記第3回転要素は、前記第2中間要素(14)であってもよい。かかるダンパ装置においても、2つの反共振点を設定することが可能であり、2つの反共振点の振動数を当該ダンパ装置により減衰すべき振動(共振)の周波数に一致させる(より近づける)ことで、ダンパ装置の振動減衰性能を極めて良好に向上させることができる。更に、かかるダンパ装置のように、回転慣性質量ダンパをダンパ装置の入力要素と第2中間要素とに連結することで、回転慣性質量ダンパと出力要素に連結される部材との間に第3弾性体を介在させ、両者を実質的に切り離すことができる。これにより、2つの反共振点の設定を可能としつつ、出力要素に連結される部材の慣性モーメントから定まる固有振動数に対する回転慣性質量ダンパ全体の慣性モーメントの影響を極めて良好に低減化することができる。この結果、ダンパ装置の出力要素に連結される部材の剛性が低く、当該部材の慣性モーメントから定まる固有振動数(共振周波数)が回転慣性質量ダンパ全体の慣性モーメントの影響により小さくなったとしても、本来、入力要素の回転数が高い状態で発生する共振が低回転域で発生して顕在化してしまうのを良好に抑制することが可能となる。
更に、前記ダンパ装置(10,10X,10Y)において、前記入力要素(11,11Y)に伝達される入力トルクが予め定められた閾値(T2,T1)以上になるまで、前記第1および第2弾性体(SP1,SP2)の撓みが規制されないとよい。
また、前記エンジン(EG)からのトルクは、クラッチ(8,8Y)を介して前記入力要素(11,11Y)に伝達されてもよく、前記出力要素(15,15X,15Y)は、変速機(TM)の入力軸(IS)に連結されてもよい。
本開示の他のダンパ装置は、エンジンからのトルクが伝達される入力要素(11Z)と、出力要素(15Z)と、前記入力要素(11Z)および前記出力要素(15Z)の間でトルクを伝達する弾性体(SPo,SPi)と、前記入力要素(11Z)および前記出力要素(15Z)の相対回転に応じて回転する質量体(25)を有する回転慣性質量ダンパ(20Z)とを含むダンパ装置(10Z)であって、前記入力要素(11Z)および前記出力要素(15Z)の相対回転を規制するストッパ(17Z)を備え、前記回転慣性質量ダンパ(20Z)は、サンギヤ(15Z、15t)、前記サンギヤ(15Z,15t)に噛合する複数のピニオンギヤ(23)、および前記質量体として機能するリングギヤ(25)を有する遊星歯車(21)を含み、前記入力要素(11Z)は、前記ダンパ装置(10Z)の軸方向に沿って対向するように互いに連結されると共に前記複数のピニオンギヤ(23)を回転自在に支持する第1および第2回転支持部材(111Z,112Z)を含み、前記出力要素(15Z)は、それぞれ前記複数のピニオンギヤ(23)の何れかに噛合するように周方向に間隔をおいて外周部に形成された複数の外歯ギヤ部(15t)を有すると共に、前記第1および第2回転支持部材(111Z,112Z)の前記軸方向における間に配置されて前記サンギヤとして機能し、前記ストッパ(!7Z)は、前記入力要素(11Z)および前記出力要素(15Z)の相対回転に伴って前記入力要素(11Z)の一部(118)に当接するように、隣り合う前記外歯ギヤ部(15t)の前記周方向における間に位置するように前記出力要素(15Z)の前記外周部に設けられた複数の当接部(15st)を含むものである。
かかるダンパ装置では、入力要素と出力要素との間で大きなトルクが伝達される際に両者の相対回転を規制して、回転慣性質量ダンパからの慣性トルクを含む過大な荷重が弾性体に作用するのを抑制することができるので、当該弾性体を良好に保護することが可能となる。更に、ストッパの当接部を出力要素(サンギヤ)の外周部に設けることで、ダンパ装置の軸心から当接部までの距離を、ダンパ装置の軸心から入力要素におけるピニオンギヤの支持部までの距離に近づけることが可能となる。これにより、当接部と入力要素とが当接して入力要素および出力要素の相対回転が規制される際に、複数のピニオンギヤを支持する入力要素(第1および第2回転支持部材)に加えられるモーメントを小さくして当該入力要素の変形等を良好に抑制することができる。この結果、回転慣性質量ダンパを含むダンパ装置の耐久性をより向上させることが可能となる。
本開示の更に他のダンパ装置は、エンジンからのトルクが伝達される入力要素(11V)と、中間要素(12V)と、出力要素(15V)と、前記入力要素(11V)および前記中間要素(12V)の間でトルクを伝達する第1弾性体(SP1v)と、前記中間要素(12V)および前記出力要素(15V)の間でトルクを伝達する第2弾性体(SP2v)と、前記入力要素(11V)および前記中間要素(12V)の相対回転に応じて回転する質量体(25)を有する回転慣性質量ダンパ(20V)とを含むダンパ装置(10V)であって、前記入力要素(11V)および前記中間要素(12V)の相対回転を規制するストッパ(17V)を備え、前記回転慣性質量ダンパ(20V)は、サンギヤ(12V,12t)、前記サンギヤ(12V,12t)に噛合する複数のピニオンギヤ(23)、および前記質量体として機能するリングギヤ(25)を有する遊星歯車(21)を含み、前記入力要素(11V)、前記ダンパ装置(10V)の軸方向に沿って対向するように互いに連結されると共に前記複数のピニオンギヤ(23)を回転自在に支持する第1および第2回転支持部材(111V,112V)を含み、前記中間要素(12V)は、それぞれ前記複数のピニオンギヤ(23)の何れかに噛合するように周方向に間隔をおいて外周部に形成された複数の外歯ギヤ部(12t)を有すると共に、前記第1および第2回転支持部材(111V,112V)の前記軸方向における間に配置されて前記サンギヤとして機能し、前記ストッパ(17V)は、前記入力要素(11V)および前記中間要素(12V)の相対回転に伴って前記入力要素(11V)の一部(118)に当接するように、隣り合う前記外歯ギヤ(12t)の前記周方向における間に位置するように前記中間要素(12V)の前記外周部に設けられた複数の当接部(12st)を含むものである。
かかるダンパ装置では、入力要素と中間要素との間で大きなトルクが伝達される際に両者の相対回転を規制して、回転慣性質量ダンパからの慣性トルクを含む過大な荷重が第1弾性体に作用するのを抑制することができるので、当該第1弾性体を良好に保護することが可能となる。更に、ストッパの当接部を中間要素(サンギヤ)の外周部に設けることで、ダンパ装置の軸心から当接部までの距離を、ダンパ装置の軸心から入力要素におけるピニオンギヤの支持部までの距離に近づけることが可能となる。これにより、当接部と入力要素とが当接して入力要素および中間要素の相対回転が規制される際に、複数のピニオンギヤを支持する入力要素(第1および第2回転支持部材)に加えられるモーメントを小さくして当該入力要素の変形等を良好に抑制することができる。この結果、回転慣性質量ダンパを含むダンパ装置の耐久性をより向上させることが可能となる。
そして、本開示の発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本開示の外延の範囲内において様々な変更をなし得ることはいうまでもない。更に、上記発明を実施するための形態は、あくまで発明の概要の欄に記載された発明の具体的な一形態に過ぎず、発明の概要の欄に記載された発明の要素を限定するものではない。