JP6777520B2 - 空気入りタイヤ - Google Patents

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Description

本発明は、空気入りタイヤに関し、特にトレッド部のブロックに配されるサイプを改良した空気入りタイヤに関する。
従来より下記特許文献1〜4に示されるように、タイヤのトレッド部にサイプを形成した空気入りタイヤが知られている。
下記特許文献1には、ラグ溝に噛み込んだ小石を抜け易くすることを目的として、トレッド面にタイヤ周方向に延びる主溝を設けると共に、タイヤ幅方向に延びるラグ溝をタイヤ周方向に所定のピッチで配置し、それら主溝とラグ溝により多数のブロックを区画形成し、各ブロックにタイヤ幅方向に延びる少なくとも3本のサイプを設けた氷雪路用空気入りタイヤであって、各サイプはブロック表面から溝底側に向けて延びる幅広部をそれぞれ有しており、幅広部は、その深さがタイヤ周方向両側のサイプに設けたものよりも中央領域側のサイプに設けたものの方が深くなっている氷雪路用空気入りタイヤが示されている。
すなわち、サイプの溝底側に幅広部を設け、当該幅広部に関してタイヤ周方向両側のサイプに設けた幅広部よりも中央領域側のサイプに設けた幅広部の方を深くしたことが示されている。
下記特許文献2には、ブロック部の耐摩耗性を維持しつつ、ウェット路面での操縦安定性およびハイドロプレーニング性を向上させることを目的として、周方向に延びる周溝および、幅方向に延びる横溝のそれぞれによりブロックを区画するとともに、ブロック表面に、トレッド幅方向に延びて、両端で周溝に開口するサイプを設けたものであり、前記サイプを、拡幅部を介して周溝に開口させるとともに、その拡幅部の深さを、サイプの最深部のそれより浅くしてなる空気入りタイヤのブロック構造が示されている。
すなわち、両端に拡幅部を設けると共に当該拡幅部の深さをサイプの最深部の深さより浅くした1種類のサイプを配したことが示されている。
下記特許文献3には、ヒール・アンド・トウ摩耗やブロック欠けの発生を抑え、さらに、サイピングエッジからのクラック等を防止することを目的として、トレッド表面に一端が開口して他端が閉鎖した複数のサイプを設けたタイヤにおいて、前記サイプの閉鎖端の厚さを開口端の厚さよりも大となし、サイプの厚さを閉鎖端又はその付近から開口端方向に徐々に小さくすると共に、前記サイプの閉鎖端の深さを開口端の深さよりも大とした空気入りタイヤが示されている。
すなわち、一端が開口し、他端が閉鎖したサイプにおいて、開口端側のサイプの開口幅を閉鎖端側のサイプの開口幅より徐々に狭く、閉鎖端側のサイプの深さを開口端側のサイプの深さより深くしたことが示されている。
下記特許文献4には、カーフ毎の段差摩耗(カーフカッピング)を防ぎ、以って、摩耗中期以降でもトレッドと氷路との良好な接地性を維持させることを目的として、トレッドに多数のブロックを有する氷雪路用空気入リタイヤにおいて、前記ブロックにタイヤ幅方向のカーフを3本以上設けると共に、これらカーフの一端を前記ブロックの両側に隣接するタイヤ周方向の溝に交互に連通させ、更に、タイヤ周方向の両最外端に位置する2枚のカーフは、前記タイヤ周方向の溝と連結する連結部の深さを、ブロック幅中央域の深さより浅くすると共に、前記タイヤ周方向の溝の溝深さの30〜40%に設定し、かつ、前記連結部の幅をブロックの横幅の5〜15%に設定した氷雪路用空気入りタイヤが示されている。
すなわち、3本以上のサイプの一端をタイヤ周方向溝に交互に連通させ、タイヤ周方向両最外端に位置するサイプは、タイヤ周方向溝と連結する連結部の溝深さをブロック幅中央域のサイプの深さより浅くすると共にタイヤ周方向溝の溝深さの30〜40%に設定し、かつ、連結部の幅をブロック横幅の5〜15%に設定したことが示されている。
特開平11−139114号公報 特開2001−233021号公報 特開平2−200503号公報 特開平8−216626号公報
しかしながら、上記特許文献1〜4に記載の公知技術においては、サイプを多く設けることによりブロック剛性が低下するためアイス性能とドライ性能とが両立しないという課題がある。
本発明は、1つのサイプ内において溝深さが異なる2種類のサイプをブロックに配することにより、また、これらのサイプの溝幅を変化させることにより、サイプを多く設けることによるブロック剛性の低下を抑制し、アイス性能とドライ性能とを両立させる空気入りタイヤを提供することにある。
本発明に係る請求項1に記載の空気入りタイヤは、タイヤトレッド部に形成されたタイヤ周方向に延びる主溝とタイヤ幅方向に延びるラグ溝とで区画されるブロックの踏面部に、タイヤ幅方向に延在すると共にその両端が開口する複数のサイプが形成されており、当該複数のサイプは、第1のサイプ及び第2のサイプからなり、前記第1のサイプ及び第2のサイプはいずれもタイヤ幅方向中央領域の溝深さがタイヤ幅方向両端部の溝深さよりも深く、前記第1のサイプは、そのタイヤ幅方向中央領域の溝深さが前記ブロックを区画する主溝の溝深さよりも浅く、前記第2のサイプは、そのタイヤ幅方向中央領域の溝深さが前記第1のサイプのタイヤ幅方向中央領域の溝深さよりも浅く、かつ、当該第2のサイプのタイヤ幅方向両端部の溝深さが前記第1のサイプのタイヤ幅方向両端部の溝深さより深く形成されており、前記第1のサイプは前記ブロックにおけるタイヤ周方向両側部に配されていることを特徴とする。
本発明に係る請求項2に記載の空気入りタイヤは、上記請求項1の構成に加え、前記のブロックにおいて、前記第1のサイプと前記第2のサイプとをタイヤ周方向に交互に配したことを特徴とする。
上記のように2種類のサイプを組み合わせることにより、タイヤ剛性が平均化され、かつ、サイプのエッジを効かせる作用があり、サイプ両端を浅くしたサイプを配置したことによりブロックの倒れ込みを抑制する作用がある。
本発明に係る請求項3に記載の空気入りタイヤは、上記請求項1の構成に加え、前記のブロックにおいて、タイヤ周方向両側部に複数の第1のサイプを配し、タイヤ周方向中央領域に第2のサイプを配したことを特徴とする。
上記のように構成したことにより、上記の作用に加えて、ブロック四隅の剛性が上がることによりドライ路面に対する旋回性能を向上させる作用がある。
本発明に係る請求項4に記載の空気入りタイヤは、上記請求項1〜3の構成に加え、前記第1のサイプ及び第2のサイプは、そのタイヤ周方向のサイプ幅が、タイヤ幅方向中央領域からに両端部かけて、1.5〜3倍の範囲で徐々に広がることを特徴とする。
上記のように中央領域からサイプ両端にかけてサイプ幅を徐々に広くしたことにより、局所的な剛性差をなくすことでサイプのエッジを効かせ、偏摩耗を抑制することができる。
以上のように、本発明に係る空気入りタイヤは、1つのブロックに配置した2種類のサイプの組合せによりブロック剛性が平均化されてブロック剛性の低下が抑制され、このことにより地面にかかる力が均一になり、アイス路面に対するサイプによる適度なエッジ効果が得られ、かつ、ブロック倒れ込み抑制によるドライ路面に対する旋回性能が向上し、アイス路面性能及びドライ路面性能を両立させることができ、しかも偏摩耗の抑制効果がある。
本発明の実施例1に係るブロックT(T1)の概要説明図であって、(a)は平面図、(b)は溝Aの断面図、(c)は溝Bの断面図、(d)はE−E線断面図(ハッチング省略)、(e)はF−F線断面図(ハッチング省略)である。 本発明の実施例2に係るブロックT2の概要説明図であって、(a)は平面図、(b)は溝Aで切断した断面図、(c)は溝Bで切断した断面図、(d)はE−E線断面図(ハッチング省略)、(e)はF−F線断面図(ハッチング省略)である。 本発明の実施例2に係るブロックT3の概要説明図であって、(a)は平面図、(b)は溝A’で切断した断面図、(c)は溝B’で切断した断面図、(d)はE−E線断面図(ハッチング省略)、(e)はF−F線断面図(ハッチング省略)である。 比較例1に係るブロックT4の概要説明図であって、(a)は平面図、(b)は溝Cで切断した断面図、(d)はE−E線断面図(ハッチング省略)、(e)はF−F線断面図(ハッチング省略)である。 比較例2に係るブロックT5の概要説明図であって、(a)は平面図、(b)は溝Aで切断した断面図、(d)はE−E線断面図(ハッチング省略)、(e)はF−F線断面図(ハッチング省略)である。 比較例3に係るブロックT6の概要説明図であって、(a)は平面図、(b)は溝Cで切断した断面図、(c)は溝Dで切断した断面図、(d)はE−E線断面図(ハッチング省略)、(e)はF−F線断面図(ハッチング省略)である。
図1は本発明に係る実施例(図1は実施例1と併用)を表し、図示を省略するが、空気入りタイヤにおいてタイヤトレッド部に形成されるタイヤ周方向に延びる主溝とタイヤ幅方向に延びるラグ溝とで区画形成される複数のブロックであって、図1のTはそのうちの1つのブロックを表している。
本実施例は、図1(a)に示すように、ブロックTの踏面部において、タイヤ幅方向に延在し、両端が開口した7列のサイプA,Bが配置されている。なお、サイプA,Bは7列に限られるものではない。
当該各サイプA,Bは、図1(b)〜図1(e)に示すように、溝深さが異なる第1のサイプAと第2のサイプBとで構成される。すなわち、第1のサイプA及び第2のサイプBはいずれもタイヤ幅方向中央領域の溝深さH1,H3(図1(e))が、タイヤ幅方向両端部の溝深さH2,H4(図1(d))よりも深く形成されている。
第1のサイプAは、そのタイヤ幅方向中央領域の溝深さH1(本実施例においてサイプ溝が最も深いもの)がブロックTを区画する主溝Gの溝深さHよりも浅く形成されている(図1(b))。第2のサイプBは、そのタイヤ幅方向中央領域の溝深さH3が第1のサイプAのタイヤ幅方向中央領域の溝深さH1よりも浅く、かつ、第2のサイプBのタイヤ幅方向両端部の溝深さH4が第1のサイプAのタイヤ幅方向両端部の溝深さH2より深く形成されている(図1(b)(c))。第1のサイプAはブロックTにおけるタイヤ周方向両側部に配されている。
前記の溝深さH2,H4が位置するタイヤ幅方向両端部の一方の長さは、サイプ全体の長さの4〜25%の範囲、すなわち溝深さH1,H3が位置する中央領域の長さはサイプ全体の長さの50〜92%とするのが適切である。
第1のサイプAにおける中央領域の溝深さH1は主溝Gの溝深さHの50〜90%の範囲とするのが適切であり、第1のサイプAにおける両端部の溝深さH2は前記中央領域の溝深さH1の40〜80%の範囲とするのが適切である。また、第2のサイプBにおける中央領域の溝深さH3は、第1のサイプAにおける中央領域の溝深さH1の50〜90%の範囲とするのが適切であり、第2のサイプBにおける両端部の溝深さH4は、第1のサイプAにおける両端部の溝深さH2の110〜150%の範囲とするのが適切である。
本実施例においては、第1のサイプA及び第2のサイプBは、そのタイヤ周方向のサイプ幅が等幅で形成されたものである。そのサイプ幅の範囲は0.3〜0.6mmである。また、以下に詳述する実施例3の図3(a)に示すように、サイプ幅の範囲がタイヤ幅方向中央領域から両端部かけて、1.5〜3倍の範囲で徐々に広がるように構成してもよい。例えば中央領域のサイプ幅が0.3〜0.6mmの範囲であり、両端部のサイプ幅が0.6〜1.5mmの範囲である。
上記のような数値範囲から外れると、ブロック剛性の均一性が低下する可能性があり、アイス路面性能及びドライ路面性能性の両立性が低下する可能性がある。
第1のサイプA及び第2のサイプBの配置に関しては、図1(a)に示すように、第1のサイプAをタイヤ周方向両側部に配置し、その内方の第1のサイプAと第2のサイプBとをタイヤ周方向に交互に配置してもよく、以下に詳述する実施例2の図2(a)に示すように、複数の第1のサイプAをタイヤ周方向両側部に配置し、第2のサイプBをタイヤ周方向中央領域に配置してもよい。
上記のように溝深さが異なる2種類のサイプを組み合わせることにより、タイヤ剛性が平均化され、かつ、サイプのエッジを効かせる作用があり、サイプ両端が最も浅いサイプを配置したことによりブロックの倒れ込みを抑制し、かつ、偏摩耗を抑制する作用がある。
なお、タイヤ剛性を平均化するために、第1のサイプA及び第2のサイプBの各溝を、図1(b),(c)に示す断面形状のように左右対称としたり、第1のサイプA及び第2のサイプBのそれぞれの列数が等しいか又はその差を少なくする構成としてもよい。
上記実施例の説明で使用した図1に基づいて本発明の実施例1を以下に説明する。
本実施例1におけるブロックT1の幅方向外側に位置する主溝Gの溝深さHは9mmである。第1のサイプAにおけるタイヤ幅方向中央領域の溝深さH1は6.5mm、タイヤ幅方向両端部の溝深さH2は3.5mmであり、サイプ幅w1は0.3mmである。第2のサイプBにおけるタイヤ幅方向中央領域の溝深さH3は5.5mm、タイヤ幅方向両端部の溝深さH4は4.5mmであり、サイプ幅は第1のサイプAのサイプ幅w1と同一の0.3mmである。
そして、本実施例1においては、図1(a)に示すように、第1のサイプAをブロックT1におけるタイヤ周方向両側部に1列ずつ配置し、その内方に第1のサイプAと第2のサイプBとをタイヤ周方向に交互に配置してなるものである。すなわち、タイヤ周方向におけるブロックの一方の側部側から、第1のサイプA、第2のサイプB、第1のサイプA、第2のサイプB、第1のサイプA、第2のサイプB、第1のサイプAの順に7列のサイプが配置されている。
本発明の実施例2を図2に基づいて以下に説明する。
本実施例2は、第1のサイプA及び第2のサイプBの溝の構成が上記実施例1と同様であり、上記実施例1とは各サイプA,Bの配置が相違する。
すなわち、本実施例2におけるブロックT2の幅方向外側に位置する主溝Gの溝深さHは9mmである。第1のサイプAにおけるタイヤ幅方向中央領域の溝深さH1は6.5mm、タイヤ幅方向両端部の溝深さH2は3.5mmであり、サイプ幅w1は0.3mmである。第2のサイプBにおけるタイヤ幅方向中央領域の溝深さH3は5.5mm、タイヤ幅方向両端部の溝深さH4は4.5mmであり、サイプ幅は第1のサイプAのサイプ幅w1と同一の0.3mmである。
そして、本実施例2においては、図2(a)に示すように、複数の第1のサイプAをブロックT2におけるタイヤ周方向両側部に2列ずつ配置し、その内方に第2のサイプBをタイヤ周方向中央領域に3列配置してなるものである。すなわち、タイヤ周方向のブロックの一方の側部側から、第1のサイプA、第1のサイプA、第2のサイプB、第2のサイプB、第2のサイプB、第1のサイプA、第1のサイプAの順に7列のサイプが配置されている。
本発明の実施例3を図3に基づいて以下に説明する。
本実施例3は、第1のサイプA’及び第2のサイプB’の配置が上記実施例1と同様であり、各サイプA’,B’の溝の構成は上記実施例1と相違し、タイヤ周方向のサイプ幅が、タイヤ幅方向中央領域からに両端部かけて徐々に広がる構成にしたものである。
すなわち、本実施例3におけるブロックT3の幅方向外側に位置する主溝Gの溝深さHは9mmである。第1のサイプA’におけるタイヤ幅方向中央領域の溝深さH1は6.5mm、タイヤ幅方向両端部の溝深さH2は3.5mmであり、タイヤ幅方向中央領域のサイプ幅w1は0.3mmであり、タイヤ幅方向両端部はタイヤ幅方向中央領域のサイプ幅w1から徐々に広がってサイプ開口端におけるサイプ幅w2はサイプ幅w1の2倍の0.6mmである。第2のサイプB’におけるタイヤ幅方向中央領域の溝深さH3は5.5mm、タイヤ幅方向両端部の溝深さH4は4.5mmであり、タイヤ幅方向中央領域のサイプ幅w1は0.3mmであり、タイヤ幅方向両端部はタイヤ幅方向中央領域のサイプ幅w1から徐々に広がってサイプ開口端におけるサイプ幅w2はサイプ幅w1の2倍の0.6mmである。
そして、本実施例3においては、図3(a)に示すように、第1のサイプA’をブロックT3におけるタイヤ周方向両側部に1列ずつ配置し、その内方に第1のサイプA’と第2のサイプB’とをタイヤ周方向に交互に配置してなるものである。すなわち、タイヤ周方向のブロックの一方の側部側から、第1のサイプA’、第2のサイプB’、第1のサイプA’、第2のサイプB’、第1のサイプA’、第2のサイプB’、第1のサイプA’の順に7列のサイプが配置されている。
なお、図示及び説明は省略するが、実施例2と同様に第1のサイプA’及び第2のサイプB’を配置してもよい。
[比較例1]
比較例1を図4に基づいて以下に説明する。
比較例1におけるブロックT4の幅方向外側に位置する主溝Gの溝深さHは9mmである。サイプCは、その溝深さがタイヤ幅方向の一端から他端まで変化しない均一の深さであって、その溝深さH1は実施例1における第1のサイプAの溝深さH1と同一の6.5mmであり、サイプ幅w1は0.3mmである(比較容易のため、サイプの溝深さ及びサイプ幅は実施例1と同一の符号を付す)。
そして、比較例1においては、図4(a)に示すように、全て同一のサイプCをブロックT4におけるタイヤ周方向に合計7列配置したものである。
本発明に係る各実施例との主たる相違は、比較例1におけるサイプCは、1つのサイプにおいてタイヤ幅方向に溝深さが変化しない均一の深さであり、かつ、各列においては全て同一のサイプCであってタイヤ周方向にも溝深さが変化しないサイプである。
[比較例2]
比較例2を図5に基づいて以下に説明する。
比較例2におけるブロックT5の幅方向外側に位置する主溝Gの溝深さHは9mmである。サイプAは、実施例1における第1のサイプAと同一の溝深さの構成であって、タイヤ幅方向中央領域の溝深さH1は6.5mm、タイヤ幅方向両端部の溝深さH2は3.5mmであり、サイプ幅w1は0.3mmである(比較容易のため、サイプ、溝深さ及びサイプ幅は実施例1と同一の符号を付す)。
そして、比較例2においては、図5(a)に示すように、全て同一のサイプAのみをブロックT5におけるタイヤ周方向に合計7列配置したものである。
本発明に係る実施例1との主たる相違は、比較例2におけるサイプAは、実施例1と同様に1つのサイプにおいて溝深さが変化するが、各列においては全て同一のサイプAのみが配置されていてタイヤ周方向には溝深さが変化しないサイプである。
[比較例3]
比較例3を図6に基づいて以下に説明する。
比較例3におけるブロックT6の幅方向外側に位置する主溝Gの溝深さHは9mmである。サイプCは、比較例1におけるサイプCと同一の溝の構成であり、タイヤ幅方向の一端から他端まで変化しない均一の溝深さであって、溝深さH1は実施例1における第1のサイプAのH1と同一の6.5mmであり、サイプ幅w1は0.3mmである(比較容易のため、溝深さ及びサイプ幅は比較例1と同一の符号を付す)。サイプDは、タイヤ幅方向の一端から他端まで変化しない均一の溝深さであって、その溝深さH3は実施例1における第2のサイプBの溝深さH3と同一の5.5mmであり、サイプ幅w1は0.3mmである(比較容易のため、溝深さ及びサイプ幅は実施例1と同一の符号を付す)。
そして、比較例3においては、図6(a)に示すように、サイプCをブロックT6におけるタイヤ周方向両側部に1列ずつ配置し、その内方にサイプCとサイプDとをタイヤ周方向に交互に配置してなるものである。すなわち、タイヤ周方向のブロックの一方の側部側から、サイプC、サイプD、サイプC、サイプD、サイプC、サイプD、サイプCの順に7列のサイプが配置されている。
本発明に係る実施例1との主たる相違は、比較例3におけるサイプC及びサイプDは、いずれも1つのサイプにおいてはタイヤ幅方向に溝深さが変化しないサイプである。
[比較試験]
次に本発明に係る空気入りタイヤについて、以下の条件の下に、上記の実施例1〜3及び比較例1〜3について比較試験を行った。その結果を下記表1に示す。
テストタイヤのサイズ:195/65R15
テスト項目
アイス性能:車両に各タイヤを装着させて、アイス路面で時速40kmで走行し、時速40kmから停止、すなわち0kmの制動距離を計測した。比較例1の結果を100とする指数で評価し、指数が大きいほど、アイス制動性能が優れていることを示す。
ドライ性能:車両に各タイヤを装着させ、2名乗車条件にてフィーリングテストを実施した。比較例1の結果を100とする指数で評価し、指数が大きいほどドライ路面での操縦安定性が優れていることを示す。
偏摩耗:車両に各タイヤを装着させて、乾燥路面を8000km走行したときの段差摩耗量(摩耗によるサイプとサイプとの段差)を計測した。比較例1の結果を100とする指数で評価し、指数が大きいほど良好な結果を示す。
Figure 0006777520
[比較試験の結果]
(1) アイス性能について
溝深さが変化しないサイプCのみを配置した比較例1に対して、タイヤ幅方向及びタイヤ周方向の溝深さが変化するサイプA,Bを配置した実施例1〜3のアイス性能が向上した。おそらくタイヤ幅方向におけるサイプA,B,A’,B’の両端部及びタイヤ中央領域の溝深さの変化、及び、タイヤ周方向におけるサイプA,B,A’,B’の溝深さの変化により各サイプ間におけるブロックの陸部のエッジ効果が向上したものと考えられる。
タイヤ幅方向の両端部のサイプ幅を広げたサイプA’,B’を配置した実施例3は、実施例1よりもアイス性能がさらに向上した。おそらくタイヤ幅方向のサイプA’,B’のタイヤ幅方向両端部におけるサイプ角が中央領域のサイプ角に対して変化したことによりタイヤ幅方向両端部におけるサイプのエッジ効果がさらに向上したものと考えられる。
タイヤ周方向の両端部に複数のサイプAを配置した実施例2は、比較例1よりもアイス性能は向上するが、サイプA,Bを交互配置した実施例1及びサイプA’,B’を交互配置した実施例3よりアイス性能が低下した。おそらく溝深さが異なるサイプの交互配置によるエッジ角の変化が少なくなったため、エッジ効果の低下によるものと考えられる。
比較例2は、タイヤ幅方向に溝深さが変化するサイプAを配置したため、比較例1よりもアイス性能は向上するが、交互配置ではなく、全て同一のサイプAのみを配置しているため実施例1よりアイス性能が低下している。
比較例3は、異なる溝深さのサイプC,Dを交互配置したものであるが、タイヤ幅方向に溝深さが変化しないため、交互配置であっても比較例1よりアイス性能が低下している。
(2) ドライ性能について
溝深さが変化しないサイプCのみを配置した比較例1に対して、タイヤ幅方向両端部の溝深さがいずれもサイプCより浅いサイプA,B,A’,B’を配置した実施例1〜3のドライ性能が向上した。おそらくブロックT1〜T3のタイヤ幅方向両端部のタイヤ剛性が向上したことによるものと考えられる。
タイヤ周方向の両端部に複数のサイプAを配置した実施例2は実施例1よりもドライ性能がさらに向上した。おそらくブロックT2は、その四隅に、タイヤ幅方向両端部の溝深さの浅いサイプAが集まったことにより、ブロックT2の四隅のタイヤ剛性がさらに向上したことによるものと考えられる。
タイヤ幅方向の両端部のサイプ幅を広げたサイプA’,B’を配置した実施例3は、比較例1よりもドライ性能が向上したが、実施例1及び2よりもドライ性能が低下した。おそらくブロックT3は、タイヤ幅方向の両端部のサイプ幅を広げたことにより、タイヤ幅方向の両端部において実施例1及び2よりもタイヤ剛性が低下したことによるものと考えられる。
比較例2は、タイヤ幅方向の両端部が浅いサイプAを配したことによりタイヤ剛性が向上したため比較例1よりもドライ性能が向上しているが、溝深さが異なるサイプの交互配置ではなく、1種類のサイプAのみを配置しているため実施例1よりもドライ性能が低下している。
比較例3は、溝深さが異なるサイプC,Dを交互配置したため比較例1よりもドライ性能が向上しているが、サイプC,Dはタイヤ幅方向に溝深さが変化しないため比較例2よりもドライ性能が低下している。
(3) 偏摩耗の抑制について
溝深さが変化しないサイプCのみを配置した比較例1に対して、タイヤ幅方向に溝深さが変化し、タイヤ周方向の溝深さが異なる2種類のサイプA,B,A’,B’を配置した実施例1〜3は偏摩耗の抑制効果が向上した。おそらくサイプA,B,A’,B’がタイヤ幅方向に溝深さが変化し、タイヤ周方向にも溝深さが異なるため、タイヤの剛性が分散されて局所的な剛性差をなくすことができたことによるものと考えられる。
サイプA,Bを交互配置した実施例1は、複数のサイプAをタイヤ周方向両側部に配置した実施例2よりも偏摩耗の抑制効果が向上した。おそらくサイプA,Bを交互配置したことにより複数のサイプAをタイヤ周方向両側部に配置した実施例2よりもタイヤの剛性がさらに分散されて局所的な剛性差をなくすことができたことによるものと考えられる。
タイヤ幅方向の両端部のサイプ幅を広げたサイプA’,B’を交互配置した実施例3は、サイプA,Bを交互配置した実施例1よりも偏摩耗の抑制効果が向上した。おそらくタイヤ幅方向の両端部のサイプ幅を広げたためブロックのタイヤ幅方向両端部におけるタイヤ周方向の剛性が低下したことにより中央領域との剛性差が少なくなり、全体的にタイヤの剛性がよりさらに分散されて局所的な剛性差をなくすことができたことによるものと考えられる。
比較例2は、タイヤ幅方向の両端部が浅く、中央領域が深いサイプAのみを配したことによりタイヤ周方向におけるブロック両端部の剛性が高く、ブロック中央領域の剛性が低いために局所的な剛性差が生じたことにより比較例1よりも偏摩耗の抑制効果が低下した。
比較例3は溝深さが異なる2種類のサイプC,Dを交互に配置したことにより、比較例1よりも剛性の分散性が向上して偏摩耗の抑制効果が向上しているが、タイヤ幅方向の溝深さが変化していないためタイヤ剛性が分散されずタイヤ幅方向には局所的な剛性差が生じるので、実施例1よりも偏摩耗の抑制効果が低下した。
以上の試験結果から、実施例1〜3は、アイス性能、ドライ性能及び偏摩耗の抑制の両立性が達せられていることが判明し、比較例1〜3は、アイス性能、ドライ性能及び偏摩耗の抑制のいずれかにおいて実施例1〜3よりも低下しており、アイス性能、ドライ性能及び偏摩耗の抑制の両立性が達せられないことが判明した。
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これら実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
T,T1,T2,T3,T4,T5,T6・・・ブロック
A,B,A‘,B’,C,D・・・サイプ
H1,H2,H3,H4・・・サイプの溝深さ
G・・・主溝深さ
w1,w2・・・サイプ幅

Claims (4)

  1. タイヤトレッド部に形成されたタイヤ周方向に延びる主溝とタイヤ幅方向に延びるラグ溝とで区画されるブロックの踏面部に、タイヤ幅方向に延在すると共にその両端が開口する複数のサイプが形成されており、
    当該複数のサイプは、第1のサイプ及び第2のサイプからなり、
    前記第1のサイプ及び第2のサイプはいずれもタイヤ幅方向中央領域の溝深さがタイヤ幅方向両端部の溝深さよりも深く、
    前記第1のサイプは、そのタイヤ幅方向中央領域の溝深さが前記ブロックを区画する主溝の溝深さよりも浅く、
    前記第2のサイプは、そのタイヤ幅方向中央領域の溝深さが前記第1のサイプのタイヤ幅方向中央領域の溝深さよりも浅く、かつ、当該第2のサイプのタイヤ幅方向両端部の溝深さが前記第1のサイプのタイヤ幅方向両端部の溝深さより深く形成されており、
    前記第1のサイプは前記ブロックにおけるタイヤ周方向両側部に配されている
    ことを特徴とする空気入りタイヤ。
  2. 前記のブロックにおいて、前記第1のサイプと前記第2のサイプとをタイヤ周方向に交互に配した
    ことを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
  3. 前記のブロックにおいて、タイヤ周方向両側部に複数の第1のサイプを配し、タイヤ周方向中央領域に第2のサイプを配した
    ことを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
  4. 前記第1のサイプ及び第2のサイプは、そのタイヤ周方向のサイプ幅が、タイヤ幅方向中央領域からに両端部かけて、1.5〜3倍の範囲で徐々に広がる
    ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
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