JP2014104763A - 空気入りタイヤ - Google Patents
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Abstract
【解決手段】タイヤのトレッドの踏面に、タイヤ周方向に波状又はジグザグ状に延びる少なくとも3本の屈曲周溝(2)と、屈曲周溝に交わる複数本の横溝(3)とで区画された多角形ブロック(4)を複数備え、多角形ブロックを、屈曲周溝を挟んで隣接する多角形ブロック同士の位置がタイヤ周方向に相互に異なる千鳥状に密集配置して多角形ブロック群を形成してなる空気入りタイヤであって、トレッドは、ベースゴム層(6)と、ベースゴム層よりタイヤ半径方向外側に配置され且つベースゴム層より低弾性率のゴムからなるキャップゴム層(7)とで構成されており、キャップゴム層及びベースゴム層の境界面(R)は、横溝(3)の溝底(3a)よりもタイヤ半径方向内側に位置する。
【選択図】図3
Description
特許文献1に記載の空気入りタイヤでは、ブロックの接地面積を確保するために、ブロック一つ一つの大きさを比較的大きく形成してブロック剛性を高めるとともに、氷雪上性能の向上のため、サイプ本数を増やすことでトレッドパターン内のエッジ成分を増加させている。しかしながら、ブロック内のサイプ本数を増やしすぎると、接地性が向上する反面、ブロック剛性が低下し、ブロックの曲げ変形により接地面積が減少し、却って氷雪上性能を低下させるという不具合が生じる。
従って、五角形以上の多角形ブロックを密集配置した空気入りタイヤにおいては、上記の問題を解決し、タイヤの耐久性を向上させることが要求されていた。
以上のことから、発明者らは、亀裂が発生する屈曲点P周辺のブロック剛性を調節することで、多角形状の比較的小さなブロックにおいて、蹴出し側の亀裂の発生を抑制することができるとの知見を得た。つまり、i)タイヤのトレッドゴムは、弾性率の異なるキャップゴム層及びベースゴム層の二層からなる場合が多いが、これらゴム層の境界面が、屈曲点P及びその近傍にある場合に亀裂の発生が見られることから、ゴム層の境界面を屈曲点Pから遠ざけることで、亀裂の発生を抑制できること、ii)氷雪上性能をさらに向上させるために、多角形ブロックにサイプを設けた場合にあっては、ブロックが細かく分断されてさらに剛性が低下し、より大きくせん断変形してしまうことから、踏込み側及び蹴出し側間で剛性差を設け、屈曲点P周辺の剛性を適度に確保した状態でサイプを形成することで、亀裂の発生を抑制できること、を見出し、本発明を完成するに至った。
(1)タイヤのトレッドの踏面に、タイヤ周方向に波状又はジグザグ状に延びる少なくとも3本の屈曲周溝と、該屈曲周溝に交わる複数本の横溝とで区画された、各々五角形以上の多角形状を有する多角形ブロックを複数備え、前記多角形ブロックを、前記屈曲周溝を挟んで隣接する多角形ブロック同士の位置がタイヤ周方向に相互に異なる千鳥状に密集配置して多角形ブロック群を形成してなる空気入りタイヤであって、
前記トレッドは、ベースゴム層と、該ベースゴム層よりタイヤ半径方向外側に配置され、且つ該ベースゴム層より低弾性率のゴムからなるキャップゴム層とで構成されており、
前記キャップゴム層及びベースゴム層の境界面は、前記横溝の溝底よりもタイヤ半径方向内側に位置することを特徴とする空気入りタイヤ。
前記トレッドは、ベースゴム層と、該ベースゴム層よりタイヤ半径方向外側に配置され、且つ該ベースゴム層より低弾性率のゴムからなるキャップゴム層とで構成されており、
前記多角形ブロックの蹴出し端側の壁面において、前記キャップゴム層及び前記ベースゴム層の境界面は、前記横溝の溝底から該蹴出し端側の壁面のタイヤ半径方向高さの33%の位置より、タイヤ半径方向外側に在ることを特徴とする空気入りタイヤ。
前記多角形ブロックには、少なくとも踏込み側半領域内に、タイヤ幅方向に延びる1本以上のサイプが設けられており、
多角形ブロック内に設けられるサイプが2本以上の場合には、最蹴出し側のサイプの深さが、最踏込み側のサイプの深さよりも浅いことを特徴とする空気入りタイヤ。
トレッド部においては、カーカスからタイヤ半径方向外側に向かって、順に、ベルト、トレッドゴムが設けられている。
踏面1には、タイヤ周方向に波状又はジグザグ状に延びる少なくとも3本の屈曲周溝2、図示例では10本の屈曲周溝2a〜2jと、これらの屈曲周溝2に交わる複数本の横溝3とで区画された、各々五角形以上の多角形状を有する多角形ブロック4、図示例では八角形の多角形ブロックが、複数設けられている。ここで、波状又はジグザグ状に延びる屈曲周溝2とは、タイヤ周方向又は幅方向に平行な線分やこれらに対して傾斜する線分を組み合わせた種々のパルス形状や、Z字形状の溝のことを言う。
また、溝によってブロックを区画形成することで、ブロックが密集配置しつつも個々に独立に可動となり、接地時に柔軟に変形することができるので、トレッドの接地性が向上し、結果として氷雪上性能をより効果的に向上させることが可能となる。
さらに、多角形ブロック群Gbにおける多角形ブロック4を千鳥状に配置することで、ブロックを密集配置させて、トレッドの踏面上のスペースを有効に利用することができる。これにより、多くの多角形ブロック4の形成下で各ブロックのエッジを逐次作用させることができ、さらに優れたエッジ効果を発揮させることが可能となる。
好ましい形状は、図1に示す八角形である。かかる形状にすることで、多方向に延びるエッジを確実に配置することができるとともに、トレッドの踏面1上に、多角形ブロック4を千鳥状に密に配置し易くなる。
ブロック個数密度Dは、多角形ブロック群Gbのタイヤ幅方向長さをWGb(mm)、多角形ブロック群Gb内の任意の多角形ブロック列Lにおける多角形ブロック4の基準配設ピッチ長さをPL(mm)、多角形ブロック群Gbの幅WGbと基準配設ピッチ長さPLとで仮想的に区画される基準区域Z(図1中、ハッチングで示した区域)内に存在するブロックの個数をa(個)、基準区域Z内のネガティブ率をN(%)としたとき、
D=a/{PL×WGb(1−N/100)}
から算出することができる。但し、各多角形ブロック群Gbの幅WGbは、多角形ブロック群Gbをタイヤ幅方向に沿って計測した距離であり、ブロック個数密度Dは、各ブロック群Gbの実接地面積(溝分を除いた面積)の単位面積当たりに何個の多角形ブロック4が存在するかということを密度として表現したものである。また、基準配設ピッチ長さとは、ブロック群を構成する任意のブロック列におけるブロックの繰り返し模様の最小単位を指すものとし、例えば1つのブロックとそのブロックを区画する溝によってパターンの繰り返し模様が規定されている場合には、ブロック1個分のトレッド周方向長さと、このブロックのトレッド周方向に隣接する溝1つ分のトレッド周方向長さとを合算した長さを言うものとする。なお、基準区域Z内の多角形ブロック4の個数aをカウントするに際して、多角形ブロック4が基準区域Zの内外に跨って存在し、一個として数えることができない場合は、基準区域Zを跨る多角形ブロック4の表面積に対する、基準区域内に残った同多角形ブロック4の残存面積の比率を用いて数えることとする。例えば、ある多角形ブロックが基準区域Zの内外に跨り、基準区域Z内に多角形ブロック4の表面積が半分だけ存在する場合には、1/2個と数えるものとする。
このように、多角形ブロック群Gbのブロック個数密度Dを0.003〜0.04個/mm2の範囲内にすることで、多角形ブロックを密集配置させることによる効果、すなわち、ブロック剛性の確保及びブロックエッジ長の増加の両立を達成することができる。なお、ブロック個数密度Dを0.0035〜0.03個/mm2の範囲内とすれば、ブロック剛性の確保及びブロックエッジ長の増加の両立をさらに高い次元で達成することができる。
ここで、従来の空気入りタイヤでは、ベースゴム層6及びキャップゴム層7の境界面Rは、横溝3の溝底3aから、多角形ブロック4aの蹴出し端側の壁面8のタイヤ半径方向高さhの5%〜25%の位置にあり、屈曲点Pは、これよりも僅かにタイヤ半径方向内側である、横溝3の溝底3aから蹴出し端側の壁面8のタイヤ半径方向高さhの5%〜25%の位置で生じていた。従って、具体的には、第一実施形態では、ベースゴム層6及びキャップゴム層7の境界面Rを、溝底3aよりもタイヤ半径方向内側に配置することで、境界面Rを屈曲点Pから径方向に遠ざけることが肝要である。
なお、横溝3の溝深さは、屈曲周溝2の溝深さと同じ深さである。
また、境界面Rのタイヤ半径方向位置を、溝底3aから蹴出し端m側の壁面8のタイヤ半径方向高さhの33%の位置よりもタイヤ半径方向外側とした場合、従来のタイヤ構成に比べて、蹴出し端m側のブロック剛性を確保することができる。つまり、図1で示す従来の空気入りタイヤにおける屈曲点Pは、弾性率の高いベースゴム層6内に位置することになり、屈曲点Pに対する負荷が軽減される。その結果、亀裂の発生を従来よりも抑制することが可能となるのである。
これに対し、第二実施形態の構成、すなわち、蹴出し端m側の壁面8における境界面Rのタイヤ半径方向位置が、横溝3の溝底3aから蹴出し端m側の壁面8のタイヤ半径方向高さhの33%位置よりもタイヤ半径方向外側である構成によれば、蹴出し端m側のトレッドゴム5において、従来ベースゴム層6が占める割合は従来よりも高くなり、蹴出し端m側のブロック剛性が高くなる。これにより、上述のヒールアンドトゥ摩耗の発生を抑制することが可能となる。
このように、多角形ブロック4の蹴出し端m側において、弾性率の高いベースゴム層が占める割合を増加させることで、蹴出し端側のブロック剛性をより高めることができ、蹴出し端側の亀裂の発生及びヒールアンドトゥ摩耗の発生を、さらに有利に抑制することができるからである。
かかる構成とすることにより、多角形ブロック4の蹴出し側でブロック剛性を十分に確保して、亀裂の発生及びヒールアンドトゥ摩耗の発生を抑制することができる一方で、踏込み側では、剛性が高くなりすぎず、最適な剛性を確保することにより、設置面積を確保でき、氷雪性能を向上できるからである。また、摩耗した際に氷雪性能の良好なキャップゴムが一部に存在しているため氷雪性能を維持できるからである。
なお、サイプ11cのサイプ深さD3は、最も蹴出し側のサイプ11dのサイプ深さD1以上且つ最も踏込み側のサイプ11bのサイプ深さD2のサイプ以下であればよく、図示例では、蹴出し側から踏込み側へ漸増している。
なお、図6(a)、(b)の例では、それぞれサイプが1本、3本の場合を示したが、サイプの本数は、2本又は4本以上であってもよい。
また、上記で説明した第一実施形態及び第二実施形態において、第三実施形態で示したサイプ構成を採用してもよい。
発明例タイヤ3は、各多角形ブロックの蹴出し端側の壁面において、キャップゴム層及びベースゴム層の境界面Rの一部が、横溝の溝底から、ブロック壁高さの50%の位置よりもタイヤ半径方向外側に在ること以外は、発明例タイヤ1の構成と同様である。
さらに、発明例タイヤ4は、図5に示すように、各多角形ブロックの蹴出し端側の壁面におけるキャップゴム層及びベースゴム層の境界面R1が、踏込み端側の壁面における境界面R2よりもタイヤ半径方向外側に在ること以外は、発明例タイヤ1の構成と同様である。
発明例タイヤ5は、タイヤサイズ195/65R15、適用リム6.0J、適用内圧240kPaの乗用車用ラジアルタイヤであり、図2に示すように、多角形ブロックを千鳥状に密集配置して多角形ブロック群を形成してなる空気入りタイヤである。各多角形ブロックの表面輪郭形状は略正八角形であり、各部のサイズは表1に示す通りである。そして発明例タイヤ5の各多角形ブロックには、図6(a)に示すように、踏込み側半領域内に1本のサイプが設けられている。
また、発明例タイヤ6は、各多角形ブロックにおいて、踏込み側半領域内に1本のサイプ、反対側の蹴出し側の半領域内に1本のサイプの計2本のサイプが設けられている。これらのサイプの深さは、踏込み側から蹴出し側に向かって順に、6.1mm、2.0mmである。それ以外の構成は、発明例タイヤ5と同様である。
従来例タイヤ2は、踏込み側半領域内に1本のサイプ、反対側の蹴出し側半領域内に1本のサイプの計2本のサイプが設けられており、これらのサイプの深さは、踏込み側から蹴出し側に向かって順に、6.1mm、6.1mmである。それ以外の構成は、発明例タイヤ5と同様である。
結果は表1の下段に示す通りである。表1中、クラック性状の値は、従来例タイヤ1を100(基準)とした指数で示しており、数値が大きいほど亀裂が発生しにくいことを示している。また、偏摩耗性能の値は、従来例タイヤ1を100(基準)とした指数で示しており、数値が大きいほど、偏摩耗性能が向上していることを示している。氷雪上性能の評価は、氷雪上性能を有することが確認されている従来例タイヤ1を100として、従来例タイヤ1と比較した結果を示している。
Claims (6)
- タイヤのトレッドの踏面に、タイヤ周方向に波状又はジグザグ状に延びる少なくとも3本の屈曲周溝と、該屈曲周溝に交わる複数本の横溝とで区画された、各々五角形以上の多角形状を有する多角形ブロックを複数備え、前記多角形ブロックを、前記屈曲周溝を挟んで隣接する多角形ブロック同士の位置がタイヤ周方向に相互に異なる千鳥状に密集配置して多角形ブロック群を形成してなる空気入りタイヤであって、
前記トレッドは、ベースゴム層と、該ベースゴム層よりタイヤ半径方向外側に配置され、且つ該ベースゴム層より低弾性率のゴムからなるキャップゴム層とで構成されており、
前記キャップゴム層及びベースゴム層の境界面は、前記横溝の溝底よりもタイヤ半径方向内側に位置することを特徴とする空気入りタイヤ。 - タイヤのトレッドの踏面に、タイヤ周方向に波状又はジグザグ状に延びる少なくとも3本の屈曲周溝と、該屈曲周溝に交わる複数本の横溝とで区画された、各々五角形以上の多角形状を有する多角形ブロックを複数備え、前記多角形ブロックを、前記屈曲周溝を挟んで隣接する多角形ブロック同士の位置がタイヤ周方向に相互に異なる千鳥状に密集配置して多角形ブロック群を形成してなる、回転方向が指定された空気入りタイヤであって、
前記トレッドは、ベースゴム層と、該ベースゴム層よりタイヤ半径方向外側に配置され、且つ該ベースゴム層より低弾性率のゴムからなるキャップゴム層とで構成されており、
前記多角形ブロックの蹴出し端側の壁面において、前記キャップゴム層及び前記ベースゴム層の境界面は、前記横溝の溝底から、該蹴出し端側の壁面のタイヤ半径方向高さの33%の位置よりタイヤ半径方向外側に在ることを特徴とする空気入りタイヤ。 - 前記多角形ブロックの蹴出し端側の壁面において、前記境界面は、前記横溝の溝底から、該蹴出し端側の壁面のタイヤ半径方向高さの50%の位置よりタイヤ半径方向外側に在ることを特徴とする請求項2に記載の空気入りタイヤ。
- 前記多角形ブロックの蹴出し端側の壁面における境界面は、踏込み端側の壁面における境界面よりもタイヤ半径方向外側に在ることを特徴とする請求項2又は3に記載の空気入りタイヤ。
- タイヤのトレッドの踏面に、タイヤ周方向に波状又はジグザグ状に延びる少なくとも3本の屈曲周溝と、該屈曲周溝に交わる複数本の横溝とで区画された、各々五角形以上の多角形状を有する多角形ブロックを複数備え、前記多角形ブロックを、前記屈曲周溝を挟んで隣接する多角形ブロック同士の位置がタイヤ周方向に相互に異なる千鳥状に密集配置して多角形ブロック群を形成してなる、回転方向が指定された空気入りタイヤであって、
前記多角形ブロックには、少なくとも踏込み側半領域内に、タイヤ幅方向に延びる1本以上のサイプが設けられており、
多角形ブロック内に設けられるサイプが2本以上の場合には、最蹴出し側のサイプの深さが、最踏込み側のサイプの深さよりも浅いことを特徴とする空気入りタイヤ。 - 前記トレッドゴムの半径方向外側に、発泡ゴムを配置してなることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の空気入りタイヤ。
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