JP6777348B1 - 合成繊維紡糸工程用処理剤及び合成繊維 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明が解決しようとする課題は、紡糸工程において発生する毛羽を低減させ、紡糸工程での長時間にわたる操業による糸品質の低下を抑制しうる合成繊維紡糸工程用処理剤及び合成繊維を提供する処にある。
1.下記の式(1)に示されるヒドロキシアルカンスルホン酸化合物を含むことを特徴と
する合成繊維紡糸工程用処理剤。
R1:炭素数5〜23のヒドロキシアルキル基。
M1:水素原子、アルカリ金属、アンモニウム、ホスホニウム又は有機アミン塩。)
2.前記式(1)のR1が炭素数9〜19のヒドロキシアルキル基である、1.に記載の合成繊維紡糸工程用処理剤。
3.平滑剤、ノニオン界面活性剤及び前記ヒドロキシアルカンスルホン酸化合物を含む合成繊維紡糸工程用処理剤であって、前記平滑剤、前記ノニオン界面活性剤及び前記ヒドロキシアルカンスルホン酸化合物の含有割合の合計を100質量%とすると、前記ヒドロキシアルカンスルホン酸化合物を0.01〜10質量%の割合で含有する、1.又は2.に記載の合成繊維紡糸工程用処理剤。
4.さらに、リン酸エステル化合物を含有する合成繊維紡糸工程用処理剤であって、前記リン酸エステル化合物が下記の式(2)に示されるリン酸エステルQ1と、下記の式(3)に示されるリン酸エステルQ2及び下記の式(4)に示されるリン酸エステルQ3から選ばれる少なくとも1つ以上とを含み、アルカリ過中和前処理された前記合成繊維紡糸工程用処理剤のP核NMR測定において、前記リン酸エステルQ1、前記リン酸エステルQ2、前記リン酸エステルQ3、リン酸及びその塩に帰属されるP核NMR積分比率の合計を100%としたとき、前記リン酸エステルQ1に帰属されるP核NMR積分比率が15%以上である、3.に記載の合成繊維紡糸工程用処理剤。
R2:炭素数4〜24のアルキル基、又は炭素数4〜24のアルケニル基。
R3:炭素数4〜24のアルキル基、又は炭素数4〜24のアルケニル基。
M2:水素原子、アルカリ金属、アンモニウム、ホスホニウム又は有機アミン塩。)
R4:炭素数4〜24のアルキル基、又は炭素数4〜24のアルケニル基。
R5:炭素数4〜24のアルキル基、又は炭素数4〜24のアルケニル基。
M3:水素原子、アルカリ金属、アンモニウム、ホスホニウム又は有機アミン塩。
M4:水素原子、アルカリ金属、アンモニウム、ホスホニウム又は有機アミン塩。)
R6:炭素数4〜24のアルキル基、又は炭素数4〜24のアルケニル基。
M5:水素原子、アルカリ金属、アンモニウム、ホスホニウム又は有機アミン塩。
M6:水素原子、アルカリ金属、アンモニウム、ホスホニウム又は有機アミン塩。)
5.前記リン酸エステル化合物が前記リン酸エステルQ1と前記リン酸エステルQ2とを含み、前記リン酸エステルQ1、前記リン酸エステルQ2、前記リン酸エステルQ3、前記リン酸及びその塩に帰属されるP核NMR積分比率の合計を100%としたとき、前記リン酸エステルQ2に帰属されるP核NMR積分比率が5〜50%である、4.に記載の合成繊維紡糸工程用処理剤。
6.前記平滑剤に、分岐鎖を有するエステル化合物を含有する4.又は5.に記載の合成繊維紡糸工程用処理剤。
7.さらに、下記の式(5)に示される有機スルホン酸化合物を含む、4.〜6.のいずれか一項に記載の合成繊維紡糸工程用処理剤。
(式(5)中において、
R7:スルホ基(−SO3M7)を少なくとも1つ有する炭素数5〜23の炭化水素基。
M7:水素原子、アルカリ金属、アンモニウム、ホスホニウム又は有機アミン塩。
但し、分子中にM7が2以上ある場合は、それらは互いに同一であっても異なっても良い。)
8.前記ヒドロキシアルカンスルホン酸化合物及び前記有機スルホン酸化合物の含有割合の合計を100質量部とすると、前記ヒドロキシアルカンスルホン酸化合物を50〜99質量部及び前記有機スルホン酸化合物を1〜50質量部の割合で含む、7.に記載の合成繊維紡糸工程用処理剤。
9.前記平滑剤、前記ノニオン界面活性剤及びイオン界面活性剤を含有する合成繊維紡糸工程用処理剤であって、前記イオン界面活性剤が前記ヒドロキシアルカンスルホン酸化合物、前記リン酸エステル化合物、及び前記有機スルホン酸化合物を含み、前記平滑剤、前記ノニオン界面活性剤及び前記イオン界面活性剤の含有割合の合計を100質量%とすると、前記ヒドロキシアルカンスルホン酸化合物を0.01〜10質量%の割合で含有する、7.又は8.に記載の合成繊維紡糸工程用処理剤。
10.1.〜9.のいずれか一項に記載の合成繊維紡糸工程用処理剤が、合成繊維に対し0.1〜3質量%(希釈剤と水を含まない)で付着していることを特徴とする合成繊維。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の合成繊維紡糸工程用処理剤は、下記式(1)に示されるヒドロキシアルカンスルホン酸化合物を必須成分として含有するものである。
R1:炭素数5〜23のヒドロキシアルキル基。
M1:水素原子、アルカリ金属、アンモニウム、ホスホニウム又は有機アミン塩。)
本発明におけるスルホン酸化合物は、式(1)中のR1で示されるヒドロキシアルキル基は、分岐鎖を有していてもよく、ヒドロキシ基の位置は、式(1)中のスルホ基が結合した炭素を1位として、2位、3位、4位の少なくとも1か所にあるのが好ましい。
本発明において、上記式(1)中のR1が、炭素数9〜19のヒドロキシアルキル基であるスルホン酸化合物が好ましく、炭素数11〜18のヒドロキシアルキル基であるスルホン酸化合物がさらに好ましく、炭素数12〜17のヒドロキシアルキル基であるスルホン酸化合物が特に好ましい。
本発明における式(1)に示されるヒドロキシアルカンスルホン酸化合物は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
本実施形態の合成繊維紡糸工程用処理剤に供する平滑剤としては、(1)オクチルステアラート、ラウリルパルミタート、オレイルオレアート、オレイルエルシナート等のモノエステル化合物、(2)ジオレイルアジパート、1,4−ブタンジオレアート、ジラウリルセバテート、ジオレイルフマラート等のジエステル化合物、(3)ラウリルメルカプトプロピオナート、オクチルメルカプトプロピオナート、ジラウリルチオジプロピオナート、ジオレイルチオジプロピオナート等の含硫黄エステル化合物、(4)パラフィン、オレフィン、ナフテン等から成る鉱物油が挙げられる。なかでも分子中に分岐構造を有するエステル化合物を含むものが好ましい。分子中に分岐構造を有するエステル化合物としては、例えば(5)イソブチルステアラート、2−エチルヘキシルオレイン酸エステル、2−エチルヘキシルエルシン酸エステル、イソステアリルオレアート、イソテトラコシルエルシナート等の分岐モノエステル化合物、(6)ジイソラウリルセバテート、ジイソステアリルアジパート、ジイソテトラコシルアジパート、ジ−2−エチルヘキシルマレイン酸エステル、ネオペンチルグリコールジオレイン酸エステル、2−エチルヘキシルアジパート等の分岐ジエステル、(7)グリセリントリオレアート、グリセリントリラウラート、トリメチロールプロパントリオレアート、トリメチロールプロパン大豆脂肪酸エステル、ペンタエリスリトールテトラオクタノアート等の多価アルコールエステル、(8)トリオクチルトリメリタート、クエン酸トリエチル等の多価カルボン酸エステル、(9)大豆油、ヤシ油、ひまし油、パーム油、ナタネ油等の天然油脂、(10)2−エチルヘキシルメルカプトプロピオナート、イソラウリルメルカプトプロピオナート、ジイソラウリルチオジプロピオナート、ジイソステアリルチオジプロピオナート、ジイソパルミチルジチオプロピオナート、トリメチロールプロパントリスメルカプトプロピオナート等の含硫黄分岐エステルが挙げられる。なかでも、2−エチルヘキシルアジパート、イソステアリルオレアート、ナタネ油、トリメチロールプロパントリオレアート、ジイソステアリルチオジプロピオナート、ジイソラウリルチオジプロピオナートがより好ましい。これらの平滑剤成分は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明における合成繊維紡糸工程用処理剤に使用するノニオン界面活性剤としては、特に制限はなく、例えば(1)有機酸、有機アルコール、有機アミン、及び有機アミドから選ばれる少なくとも一種に炭素数2〜4のアルキレンオキサイドを付加した化合物、例えばポリオキシエチレンラウリン酸エステル、ポリオキシエチレンオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンラウリン酸エステルメチルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルエーテル、ポリオキシプロピレンラウリルエーテルメチルエーテル、ポリオキシブチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルアミノエーテル、ポリオキシエチレンラウロアミドエーテル等のエーテル型ノニオン界面活性剤、(2)ソルビタンモノオレアート、ソルビタントリオレアート、グリセリンモノラウラート等の多価アルコール部分エステル型ノニオン界面活性剤、(3)ポリエチレングリコールジオレアート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレアート、ポリオキシブチレンソルビタントリオレアート、ポリオキシプロピレンひまし油、ポリオキシエチレン硬化ひまし油、ポリオキシエチレンプロピレン硬化ひまし油トリオレアート、ポリオキシエチレン硬化ひまし油トリラウラート、ひまし油のエチレンオキサイド(以下、EOという)付加物及び硬化ひまし油のEO付加物から選ばれる少なくとも1種の化合物と、モノカルボン酸及びジカルボン酸とを縮合させたエーテルエステル化合物等のポリオキシアルキレン多価アルコール脂肪酸エステル型ノニオン界面活性剤、(4)ジエタノールアミンモノラウロアミド等のアルキルアミド型ノニオン界面活性剤等が挙げられる。これらのノニオン界面活性剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。本発明では、化合物名の末端にEOおよびPOと記載したものは、それぞれエチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドの付加物を表し、後に続く数字はその付加モル数を示す。
本発明における合成繊維紡糸工程用処理剤は、下記式(2)に示すリン酸エステルQ1と、下記式(3)に示すリン酸エステルQ2及び下記式(4)に示すリン酸エステルQ3から選ばれる少なくとも1つ以上とを含んでいてもよい。
R2:炭素数4〜24のアルキル基、又は炭素数4〜24のアルケニル基。
R3:炭素数4〜24のアルキル基、又は炭素数4〜24のアルケニル基。
M2:水素原子、アルカリ金属、アンモニウム、ホスホニウム又は有機アミン塩。)
R4:炭素数4〜24のアルキル基、又は炭素数4〜24のアルケニル基。
R5:炭素数4〜24のアルキル基、又は炭素数4〜24のアルケニル基。
M3:水素原子、アルカリ金属、アンモニウム、ホスホニウム又は有機アミン塩。
M4:水素原子、アルカリ金属、アンモニウム、ホスホニウム又は有機アミン塩。)
R6:炭素数4〜24のアルキル基、又は炭素数4〜24のアルケニル基。
M5:水素原子、アルカリ金属、アンモニウム、ホスホニウム又は有機アミン塩。
M6:水素原子、アルカリ金属、アンモニウム、ホスホニウム又は有機アミン塩。)
本発明における「アルカリ過中和前処理」とは、合成繊維紡糸工程用処理剤に対して過剰量のアルカリ(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ラウリルアミン)を添加する前処理を意味する。31P−NMRの測定において、この「アルカリ過中和前処理」を行うことで、リン酸エステルQ1、リン酸エステルQ2、リン酸エステルQ3、リン酸及びその塩に帰属されるピークを明瞭に分けることができ、下記数式(1)〜数式(4)による各化合物に帰属されるP核積分比率の計算が可能となる。本発明における31P−NMRの測定では、観測ピークが分かれる程度のアルカリを合成繊維紡糸工程用処理剤に加えるアルカリ過中和処理を行った。
前記リン酸エステルQ1に帰属されるP核NMR積分比率は下記の数式(1)で、前記リン酸エステルQ2に帰属されるP核NMR積分比率は下記の数式(2)で、前記リン酸エステルQ3に帰属されるP核NMR積分比率は下記の数式(3)で、前記リン酸及びその塩に帰属されるP核NMR積分比率は下記の数式(4)に示される。
Q1_P%:リン酸エステルQ1に帰属されるP核NMR積分比率、
Q1_P:リン酸エステルQ1に帰属されるP核NMR積分値、
Q2_P:リン酸エステルQ2に帰属されるP核NMR積分値、
Q3_P:リン酸エステルQ3に帰属されるP核NMR積分値、
リン酸_P:リン酸及びその塩に帰属されるP核NMR積分値。)
Q2_P%:リン酸エステルQ2に帰属されるP核NMR積分比率、
Q1_P:リン酸エステルQ1に帰属されるP核NMR積分値、
Q2_P:リン酸エステルQ2に帰属されるP核NMR積分値、
Q3_P:リン酸エステルQ3に帰属されるP核NMR積分値、
リン酸_P:リン酸及びその塩に帰属されるP核NMR積分値。)
Q3_P%:リン酸エステルQ3に帰属されるP核NMR積分比率、
Q1_P:リン酸エステルQ1に帰属されるP核NMR積分値、
Q2_P:リン酸エステルQ2に帰属されるP核NMR積分値、
Q3_P:リン酸エステルQ3に帰属されるP核NMR積分値、
リン酸_P:リン酸及びその塩に帰属されるP核NMR積分値。)
リン酸_P%:リン酸及びその塩に帰属されるP核NMR積分比率、
Q1_P:リン酸エステルQ1に帰属されるP核NMR積分値、
Q2_P:リン酸エステルQ2に帰属されるP核NMR積分値、
Q3_P:リン酸エステルQ3に帰属されるP核NMR積分値、
リン酸_P:リン酸及びその塩に帰属されるP核NMR積分値。)
上記式(2)〜(4)に示されるリン酸エステルQ1〜Q3におけるリン酸エステルに対する対イオンは、特に制限はないが、例えば、水素、アルカリ金属、アンモニウム、有機アミン、ホスホニウム等が挙げられる。なかでも、ジブチルエタノールアミン、ポリオキシエチレンラウリルアミノエーテル、ポリオキシエチレンオクチルアミノエーテル、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好ましい。
これらリン酸エステルは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
R7:スルホ基(−SO3M7)を少なくとも1つ有する炭素数5〜23の炭化水素基。
M7:水素原子、アルカリ金属、アンモニウム、ホスホニウム又は有機アミン塩。
但し、分子中にM7が2以上ある場合は、それらは互いに同一であっても異なっても良い。)
式(5)中の炭化水素基は分岐鎖であってもよい。炭素数9〜19が好ましい。上記式(5)に示す有機スルホン酸化合物は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明の合成繊維紡糸工程用処理剤は、本発明の効果を阻害しない範囲内において、処理剤の品質保持のための安定化剤や制電剤、つなぎ剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の通常合成繊維の処理剤に用いられる成分をさらに配合してもよい。
本発明の合成繊維は、本発明の合成繊維紡糸工程用処理剤が、合成繊維に対し0.1〜3質量%(希釈剤と水を含まない)で付着している合成繊維である。本発明の合成繊維紡糸工程用処理剤を付着させる合成繊維としては、特に制限はないが、例えば(1)ポリエチレンテレフタラート、ポリプロピレンテレフタラート、ポリ乳酸エステル等のポリエステル系繊維、(2)ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド系繊維、(3)ポリアクリル、モダアクリル等のポリアクリル系繊維、(4)ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系繊維等が挙げられる。製造する合成繊維の繊度としては、特に制限はないが、好ましくは150デシテックス以上であり、さらに好ましくは500デシテックス以上であり、特に好ましいのは1000デシテックス以上である。また、製造する合成繊維の強度としては、特に制限はないが、好ましくは5.0cN/dtex以上であり、さらに好ましくは6.0cN/dtex以上、特に好ましくは7.0cN/dtex以上である。
本発明の合成繊維紡糸工程用処理剤(溶媒を含まない)を合成繊維に付着させる割合は、本発明の合成繊維紡糸工程用処理剤を合成繊維に対し0.1〜3質量%(希釈剤と水を含まない)の割合となるよう付着させる。かかる構成により、本発明の効果をより向上させる。
また、本発明の合成繊維紡糸工程用処理剤を付着させる方法は、特に制限はなく、例えばローラー給油法、計量ポンプを用いたガイド給油法、浸漬給油法、スプレー給油法等の公知の方法を採用することができる。
・スルホン酸化合物(S1−1及び、S2−1)の合成
1−テトラデセンに三酸化硫黄を加え、50℃以下でスルホン化した。これに、過剰量の水酸化ナトリウム水溶液を加えて1時間撹拌した後、オートクレーブ中で150℃、1時間加熱した。これに、石油エーテルおよびエタノールを加えて撹拌・静置した後、油相を取り除くことで油溶性の不純物を抽出除去した。残った水相を蒸発乾固させた。これをクロマトグラフィーで対イオンが水素であるS1−1、S2−1をそれぞれ分取した。次いで、これらのpHが9となるよう、それぞれに水酸化ナトリウムを加えよく撹拌したのち、蒸発乾固させることでS1−1、S2−1を得た。
今回の実施例及び比較例において使用した上記式(1)に示されるヒドロキシアルカンスルホン酸化合物(S1−1〜S1−5)の内容を表1に、上記式(5)に示される有機スルホン酸化合物(S2−1〜S2−5)の内容を表2に示した。
・リン酸エステル化合物(P−1)の合成
4つ口フラスコ内で撹拌下の2−エチルヘキサノールに五酸化二燐を仕込み、70±5℃で3時間反応させた。次いで、中和剤としてジブチルエタノールアミンを仕込み、50℃で1時間撹拌した。(P−2〜P−5)は、表3の原料を使用し、P−1と同様の方法で合成した。尚、P−2及びP−5の中和では、水酸化ナトリウム水溶液にリン酸化物を仕込み、撹拌することで中和を行った。
・リン酸エステル化合物(rP−1)の合成
4つ口フラスコ内で撹拌下のオレイルアルコールに五酸化二燐とポリリン酸を仕込み、60±5℃で3時間反応させた。次いで、中和剤の水酸化カリウム水溶液に、これを仕込み、50℃で1時間撹拌した。
・合成繊維紡糸工程用処理剤(実施例1)の調製
平滑剤としてジオレイルアジパート(A−1)を20部、オレイルオレアート(A−2)を35部、ジイソステアリルチオジプロピオナート(bSA−1)を5部、ノニオン界面活性剤としてポリエチレングリコール(分子量600)とオレイン酸2モルとのエステル化物(B−4)を10部、ソルビタンモノオレアート(B−5)を8部、ひまし油−EO8(B−8)を10部、ひまし油−EO20 1モルとオレイン酸3モルのエステル化物(B−11)を8部、イオン界面活性剤として、上記式(1)に示されるヒドロキシアルカンスルホン酸化合物の(S1−1)を1.0部、上記式(5)に示される有機スルホン酸化合物の(S2−1)を0.3部、リン酸エステル化合物の(P−1)を2.6部、その他成分のオレイン酸カリウム塩(D−1)0.1部を均一混合し、実施例1の合成繊維紡糸工程用処理剤を調製した。
実施例1の合成繊維紡糸工程用処理剤の調製と同様に、実施例2〜11及び比較例1〜3の合成繊維紡糸工程用処理剤を調製し、実施例1〜11の組成を表4に、比較例1〜3の組成を表5に示した。
但し、実施例2は、表4の原料以外に酸化防止剤として1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオンを処理剤100部に対し0.8部の割合で添加した。
A−1:ジオレイルアジパート
A−2:オレイルオレアート
A−3:1,4−ブタンジオレアート
A−4:鉱物油(レッドウッド秒120)
bA−1:ジ(2−エチルヘキシル)アジパート
bA−2:イソステアリルオレアート
bA−3:ナタネ油
bA−4:トリメチロールプロパントリオレアート
SA−1:ジオレイルチオジプロピオナート
bSA−1:ジイソステアリルチオジプロピオナート
bSA−2:ジイソドデシルチオジプロピオナート
B−1:ヤシ脂肪酸−EO12
B−2:オレイルアルコール−EO15
B−3:イソステアリルアルコール−EO8PO10
B−4:ポリエチレングリコール(分子量600)とオレイン酸2モルとのエステル化物
B−5:ソルビタンモノオレアート
B−6:ラウリルアミン−EO6
B−7:ジエタノールアミンオレイン酸アミド
B−8:ひまし油−EO8
B−9:硬化ひまし油−EO12
B−10:硬化ひまし油−EO10PO15
B−11:ひまし油−EO20 1モルとオレイン酸3モルのエステル化物
B−12:硬化ひまし油−EO25 1モルとラウリン酸2モルのエステル化物
B−13:硬化ひまし油−EO15とアジピン酸とステアリン酸の重縮合物(分子量6000)
D−1:オレイン酸カリウム塩
D−2:オクチル酸ナトリウム塩
SD−1:2級アルキルスルホン酸ナトリウム塩(炭素数14〜18)
SD−2:ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム塩
・毛羽の評価
ポリエチレンテレフタラートのチップを常法により乾燥した後、エクストルーダーを用いて溶融紡糸し、口金から吐出して冷却固化した後の走行糸条に、前記処理剤を、計量ポンプを用いたガイド給油法にて付着させた。合成繊維紡糸工程用処理剤の付着量が0.6質量%(希釈剤、水を含まない)となるように給油した。その後、ガイドで集束させた後に、250℃のホットローラーを通過する工程を経て、全延伸倍率5.5倍となるように延伸し、1100デシテックス192フィラメントの延伸糸を10kg捲きチーズとして得た。紡糸工程において、糸をチーズとして巻き取る前に、毛羽計数装置(東レエンジニアリング社製)にて1時間当たりの毛羽数を測定し、次の基準で評価した。結果を表6に示した。
◎◎:測定された毛羽数が0個
◎○:測定された毛羽数が1個
○○:測定された毛羽数が2個
○ :測定された毛羽数が3個以上5個未満
× :測定された毛羽数が5個以上
調製した各合成繊維紡糸工程用処理剤を必要に応じてイオン交換水又は有機溶剤の希釈剤にて均一に希釈し、15%溶液とした。1670デシテックス、288フィラメント、固有粘度0.93の無給油のポリエチレンテレフタレート繊維に、前記の溶液を、オイリングローラー給油法にて不揮発分として付与量0.6質量%となるように付与し、希釈剤を乾燥させ試験糸とした。試験糸を、初期張力1.5kg、糸速度1.0m/分で、表面温度250℃の梨地クロムピンに接触させて走行させ、梨地クロムピン接触後の糸の張力値を測定した。走行20分後の張力値から10%上昇した時点での走行時間を記録し、次の基準で評価した。結果を表6に示した。
◎◎:8時間以上
◎○:6時間以上8時間未満
○○:4時間以上6時間未満
○ :2時間以上4時間未満
× :2時間未満
Claims (10)
- 下記の式(1)に示されるヒドロキシアルカンスルホン酸化合物を含むことを特徴とする合成繊維紡糸工程用処理剤。
R1:炭素数5〜23のヒドロキシアルキル基。
M1:水素原子、アルカリ金属、アンモニウム、ホスホニウム又は有機アミン塩。) - 前記式(1)のR1が炭素数9〜19のヒドロキシアルキル基である、請求項1に記載の合成繊維紡糸工程用処理剤。
- 平滑剤、ノニオン界面活性剤及び前記ヒドロキシアルカンスルホン酸化合物を含む合成繊維紡糸工程用処理剤であって、前記平滑剤、前記ノニオン界面活性剤及び前記ヒドロキシアルカンスルホン酸化合物の含有割合の合計を100質量%とすると、前記ヒドロキシアルカンスルホン酸化合物を0.01〜10質量%の割合で含有する、請求項1又は2に記載の合成繊維紡糸工程用処理剤。
- さらに、リン酸エステル化合物を含有する合成繊維紡糸工程用処理剤であって、前記リン酸エステル化合物が下記の式(2)に示されるリン酸エステルQ1と、下記の式(3)に示されるリン酸エステルQ2及び下記の式(4)に示されるリン酸エステルQ3から選ばれる少なくとも1つ以上とを含み、アルカリ過中和前処理された前記合成繊維紡糸工程用処理剤のP核NMR測定において、前記リン酸エステルQ1、前記リン酸エステルQ2、前記リン酸エステルQ3、リン酸及びその塩に帰属されるP核NMR積分比率の合計を100%としたとき、前記リン酸エステルQ1に帰属されるP核NMR積分比率が15%以上である、請求項3に記載の合成繊維紡糸工程用処理剤。
R2:炭素数4〜24のアルキル基、又は炭素数4〜24のアルケニル基。
R3:炭素数4〜24のアルキル基、又は炭素数4〜24のアルケニル基。
M2:水素原子、アルカリ金属、アンモニウム、ホスホニウム又は有機アミン塩。)
R4:炭素数4〜24のアルキル基、又は炭素数4〜24のアルケニル基。
R5:炭素数4〜24のアルキル基、又は炭素数4〜24のアルケニル基。
M3:水素原子、アルカリ金属、アンモニウム、ホスホニウム又は有機アミン塩。
M4:水素原子、アルカリ金属、アンモニウム、ホスホニウム又は有機アミン塩。)
R6:炭素数4〜24のアルキル基、又は炭素数4〜24のアルケニル基。
M5:水素原子、アルカリ金属、アンモニウム、ホスホニウム又は有機アミン塩。
M6:水素原子、アルカリ金属、アンモニウム、ホスホニウム又は有機アミン塩。) - 前記リン酸エステル化合物が前記リン酸エステルQ1と前記リン酸エステルQ2とを含み、前記リン酸エステルQ1、前記リン酸エステルQ2、前記リン酸エステルQ3、前記リン酸及びその塩に帰属されるP核NMR積分比率の合計を100%としたとき、前記リン酸エステルQ2に帰属されるP核NMR積分比率が5〜50%である、請求項4に記載の合成繊維紡糸工程用処理剤。
- 前記平滑剤に、分岐鎖を有するエステル化合物を含有する請求項4又は5に記載の合成繊維紡糸工程用処理剤。
- さらに、下記の式(5)に示される有機スルホン酸化合物を含む、請求項4〜6のいずれか一項に記載の合成繊維紡糸工程用処理剤。
R7:スルホ基(−SO3M7)を少なくとも1つ有する炭素数5〜23の炭化水素基。
M7:水素原子、アルカリ金属、アンモニウム、ホスホニウム又は有機アミン塩。
但し、分子中にM7が2以上ある場合は、それらは互いに同一であっても異なっても良い。) - 前記ヒドロキシアルカンスルホン酸化合物及び前記有機スルホン酸化合物の含有割合の合計を100質量部とすると、前記ヒドロキシアルカンスルホン酸化合物を50〜99質量部及び前記有機スルホン酸化合物を1〜50質量部の割合で含む、請求項7に記載の合成繊維紡糸工程用処理剤。
- 前記平滑剤、前記ノニオン界面活性剤及びイオン界面活性剤を含有する合成繊維紡糸工程用処理剤であって、前記イオン界面活性剤が前記ヒドロキシアルカンスルホン酸化合物、前記リン酸エステル化合物、及び前記有機スルホン酸化合物を含み、前記平滑剤、前記ノニオン界面活性剤及び前記イオン界面活性剤の含有割合の合計を100質量%とすると、前記ヒドロキシアルカンスルホン酸化合物を0.01〜10質量%の割合で含有する、請求項7又は8に記載の合成繊維紡糸工程用処理剤。
- 請求項1〜9のいずれか一項に記載の合成繊維紡糸工程用処理剤が、合成繊維に対し0.1〜3質量%(希釈剤と水を含まない)で付着していることを特徴とする合成繊維。
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